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アニメキャラ・バトルロワイヤル 作品投下スレ6

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/11(日) 01:51:05 ID:faUI8DL0
ここは
「アニメ作品のキャラクターがバトルロワイアルをしたら?」
というテーマで作られたリレー形式の二次創作スレです。

参加資格は全員。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

「作品に対する物言い」
「感想」
「予約」
「投下宣言」

以上の書き込みは雑談スレで行ってください。
sage進行でお願いします。

現行雑談スレ:アニメキャラ・バトルロワイアル感想雑談スレ 12
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1170327563/l50

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/11(日) 01:51:50 ID:faUI8DL0
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」

 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


【バトルロワイアルの舞台】
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/34/617dc63bfb1f26533522b2f318b0219f.jpg

まとめサイト(wiki)
http://www23.atwiki.jp/animerowa/


3 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(1/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 01:59:19 ID:GRu51MJ3
「あったです」

翠星石がD-4で探していたもの、それは裏切りの証拠であるスタンガンであった。
吹き飛ばされたスタンガンは破損こそしているものの、スイッチを入れるとパチリと電撃が流れることを確認できた。
梨花が使っていたスタンガンはおもちゃの様な生易しいものでなく、人間を殺す立派な武器だった。

「チビ女にデカ女、あいつらやっぱりグルだったですか……」

チビ女こと古手梨花が翠星石に向かって突きつけようとしたスタンガン、それは翠星石の仮説が正しいことを証明していた。
お互いに仲良く接していた魅音と梨花、梨花の不可解な言動、そして魅音が水銀燈が逃れてきた訳、銃を欲しがっていた訳
そして梨花が翠星石に襲い掛かってきた理由、これらを繋ぎ合わせると出てくる結論。

『園崎魅音と古手梨花はローゼンメイデンの関係者で、水銀燈の協力者である』

翠星石がそう結論付けると、その人形の可愛らしい顔が憎しみに歪む。

「なあんだ、そういうことだったです……水銀燈……」

翠星石があの時ジュンを救えなかったのも、つまり水銀燈の協力者である魅音と梨花の二人がグルになって妨害したということになる。
翠星石は考える、じゃあ何のためにこんなことを?
翠星石と桜田ジュンが再会して困る人物、それは水銀燈以外に居るはずが無い。
とするとあの爆発は水銀燈の仕業ということになるのだが、いかに姉妹の中でも強力な水銀燈の力を持ってしてもあのようなことは不可能であるはずだ。

「スィドリーム」

翠星石がその名を呼んでも、今までと同様に人工精霊を呼び出すことが出来ない。翠星石は明らかにおかしいと感じていた。
翠星石がここに来てから何度試しても人工精霊のスィドリームを呼び出せない。
それに雑貨店の鏡からnのフィールドに移動しようとしてもできない等、明らかに自分達ローゼンメイデンの力は制限されていると想像が付く。
ローゼンメイデン全てが制限を受けるならば、当然水銀灯もその能力を制限されるはずである。
仮に水銀燈がその制限を受けないとしても、受けたのならなおさら大爆発を起こす程の力を行使することは不可能だと考える。
じゃあ水銀燈の仕業じゃなく、仮説が間違っているのだろうか。でもそれにしては不可解な点が多すぎた。
とはいえ真紅にジャンクにされたはずの水銀燈は一度復活したこともあるし、水銀燈ならこのぐらいはやってしまうかもしれないという思考が頭に残る。

「……さっぱり訳が分からないです」

ため息をついた翠星石は、こういう推理は自分には不向きと考えて頭を切り替える。
こういうことはチビ人間や真紅、それに自称ローゼンメイデン一の頭脳派の……えーっと誰だったっけ?

「あーん、もう訳がわかんな過ぎてむかつくですぅー! 」

翠星石は頭を掻き毟って薔薇乙女とは言いがたい動作で一人わめくが、ここがどういう場所だったか思い出して動きを止める。
翠星石は状況を整理することにし、名簿を開く。
警戒しなければいけないのは魅音と梨花が知り合いといっていた前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、そして園崎魅音。
魅音と梨花がグルだった以上、奴らの知り合いも当然危険と考えられる。この中に水銀燈のミーディアムも居るかもしれない。

「水銀燈のミーディアム、ミーディアム…」

水銀燈のミーディアム、何かが引っかかる。そしてもう一つのフレーズを思い出す。
それが正しければこの大爆発にも説明がつく。水銀燈を従えるだけの力を持つ人間。

「カレイドルビーですか……」

4 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(2/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:00:19 ID:GRu51MJ3
水銀燈を従わせられるだけの力を持つカレイドルビー、魅音の証言が本当ならばこの大爆発にも説明は付く。
元々強力だった水銀燈にそれだけ有能なミーディアムからの力が供給され、しかも本人もその水銀燈を抑えるほどの力を持つ。

しかし、魅音の言うカレイドルビーというのは何者なのか? 名簿に名前が無かった所から考えて偽名で間違いないだろう。
カレイドルビーは何故偽名で、それは一体誰なのか。
アリスゲームにおいて翠星石達は結局の所、水銀燈のミーディアムは知ることはできなかった。
つまり、水銀燈が意図的に隠していると考えれば魅音の証言には筋が通る。
ならば翠星石を含むローゼンメイデンの関係者は十人、つまりカレイドルビーは前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、…あるいは園崎魅音か

カレイドルビーがそれだけの力を持つとすれば、あの大爆発でチビ人間を焼き殺すことだけの力があるとしても何もおかしくない。
そして大爆発を起こす間に翠星石達が邪魔にならないように隔離する魅音と梨花、彼らはあわよくば翠星石を殺そうとすらしていた。

「とんでもねえ奴らばっかですぅ……」

背筋が薄ら寒くなるとともに、心配になるのは妹の蒼星石。
翠星石じゃとてもかなわないような強者、カレイドルビーと水銀燈。もしあいつらに蒼星石が会ったら……
なおさら心配になる。真紅はともかく、蒼星石はこの庭師の鋏が無い。
水銀燈と以前戦った時にはあった鋏が今は無い。そのような状態では水銀燈相手に戦いにならないだろう。
翠星石はまず、自分がやらなければいけないことを定める。

「デブ人間は翠星石がついていてやらないといけないですが…まずは蒼星石ですぅ」

も、勿論デブ人間も心配だから後で探してやるです! と心の中で付け加えてから行動を開始する。
向かう先は人間が集まりそうなホテル。水銀燈を初めとする危険人物が居るかもしれないが関係ない。
そんな危ない奴らは殺すまで、と手元の銃を見る。
庭師の如雨露が無い以上、不安ではあるが頼れる武器はこれしかない。
やれるかどうかは分からない、でもやるしかない。
翠星石にとっては嫌な奴で、翠星石のミーディアムとしての自覚が足りなかったチビ人間、桜田ジュンのことを思う。
そんな嫌な人間ではあったが、それでも人間にしては見所のある奴だから、殺されたのは今でもとても悲しい。

「水銀燈、絶対に殺してやる……です」

そうして人形は市外を低空で飛行しながら移動を始めた。
頭にあることはただ一つ、チビ人間の敵討ち。





ジャーッという水音とともに、野原みさえはその場所から出てくる。

「本当にトイレが使えてよかったわ」

みさえは手を洗い、鏡に映った自分の顔を見る。まだ半日も立っていないのにだいぶ疲れたように感じている。
といっても、みさえがイトーココノカドーのバーゲンセール行う争奪戦の終了後ほどではなかったが

「まさか、こんなところで三日ぶりのお通じが来るとはあたしも神経が太くなったもんね〜 」

はははと能天気に笑い飛ばしたかった所だが、しんのすけがどうなっているかを考えたら笑う気にはならなかった。
お通じが来てこれだけ気分が悪いのは初めてだが、ここは無理してでも笑っておこうと思い、いつものように笑ってみることにした。
みさえが必死につくろった馬鹿笑いは、ほんの僅かな時間で破られることになった。

「ホールドアップ、動くなです人間」

5 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(3/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:01:35 ID:GRu51MJ3
みさえは素直に従って手を上げる。後頭部に当てられた金属のひやりとした感触がそうせざるを得ないと判断したからだ。

「翠星石の質問に正直に質問に答えろです。嘘なんか付いたらどうなるか分かるですか? 人間」
「ううう嘘なんか付く気無いわよ、ええ! 全然!!!! 」

明らかに動揺した声でみさえが答える。翠星石は質問をする。

「最初の質問です人間、水銀燈を知っているですか? 」

銃口を更に押し込み、反応を見る。

「ししし知らない! なによ水銀燈って、灯りのこと? 」
「水銀燈の奴はランプなんかじゃなくて、最低の性悪人形です」

みさえの動揺は更に強くなる、この状態で嘘をつけるとは思えないと翠星石は判断する。

「二つ目の質問です。カレイドルビー、前原圭一、竜宮レナ、園崎魅音、北条沙都子の名前に心当たりはないですか? 」
「……沙都子って子なら知ってるわ」
「そいつとどういう関係ですか? 」
「金髪の小さな女の子だったわね。最初は私達を襲ってきたけど、ガッツに殺されそうになったところを助けたのよ。
 その後、…色々あってお寺に一人残してきたの」
「賢明な判断です。まったく、水銀燈の知り合いにはろくな奴が居やがらないです」
「だからその水銀燈ってのは何?沙都子ちゃんとどういう関係」
「水銀燈は水銀燈です。沙都子の奴は水銀燈の仲間で、殺人者です」
「確かに沙都子ちゃんは私達のことを襲ってきたけど…」
「黙れです、無駄口叩かず次の質問に答えるです」

さっぱりなみさえをよそに、翠星石は次の質問を投げかける。

「…知らないと思いますが、真紅と蒼星石という人形に心当たりはあるですか? 」
「知らないわよ、さっきから変な質問ばかりして、本当に私は何も知らないわよ! 」
「無駄口を叩くなです、お前はただ黙って翠星石の質問に答えればいいのです」

そう言って翠星石は後頭部のそれに力を込め、ヒステリック気味だったみさえを黙らせる。

「次の質問です、庭師の如雨露について心当たりは無いですか? 」
「知らないわ、ガッツが何やら色々弄ってたみたいだけど、如雨露みたいなのは見なかったわね」
「それは本当ですか? 」
「そういわれても私は遠目で見ただけだから、ちゃんと確認しないと分からないわね」

翠星石は嘘かどうか考えるが、みさえの反応からしてまず嘘では無いだろうと判断する。
それより気になったのは先ほどから頻出しているガッツという単語である。恐らく同行者だろうと考える。

「次の質問です、お前の仲間のことを教えるです」
「…ガッツって大男に、キャスカって女の人、ゲインさんって重症の男の人、これが今ホテルにいる私の同行者ね。
 それとは別にセラスっていう婦警さん、クーガーって馬鹿、光ちゃんになのはちゃんって女の子が今人探しに出ているわ」
「なるほどです、ではその仲間の所に翠星石を案内するです」
「…どうするつもり」
「別にお前ら人間をどうするつもりは無いです。水銀燈の仲間を殺すのに協力してくれればいいだけです」
「殺すってあんた! 」
「無駄口叩かずにさっさと案内しやがれです、お前は翠星石に逆らうとどうなるか本当に分かってるですか? 」
「わ、分かったわよ…」

さすがのみさえも後ろの感触の前では逆らうことが出来ず、そのままホテルの一室に翠星石を誘導する。
そのうち後頭部の感触は消え、横を見れば銃を構えた人形が空をふわふわと漂っていた。

「それにしてもお前、よく見るとばば臭い奴です」

ばばという言葉に怒りを募らせるみさえだったが、銃口が目の前ではその怒りは発散することが出来ない。
ただ黙ってこの銃を向けた人形を案内するほか無かった。

6 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(4/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:02:38 ID:GRu51MJ3
隻眼隻腕の男ガッツは気絶したきり動かない、小型化したキャスカをホテル備え付けの机の上で眺め、たまに手で弄んでいた。
ガッツの目から見たそのキャスカは、ガッツの目の狂いなどではなくキャスカにしか見えなかった。
不可解な点は一つ、何故目の前のこいつは鷹の団時代の甲冑を着ているのか。
鷹の団はあの蝕で崩壊してから、キャスカとリッケルト以外の生き残りは居ないはずであり、この甲冑が誰かの予備とは考えられない。
そしてキャスカ自身の甲冑は、……あの時に無くなったはずであった。

甲冑だけでも不可解なのに、蝕で病んだキャスカの心が元通りになっていること。これも腑に落ちない点であった。
グリフィスやゴットハンドへの復讐は重要であったが、それとはまた別に重要なのがキャスカの精神だった。
あの蝕から救出された後、言葉も記憶も、…そして全てを失った白痴状態のキャスカ。
それが何故か他者とコミュニケーションを取り、あろうことか自分の意思で戦闘まで行っている。
キャスカはゴドー達の手厚い看護を受けたが、砕け散ったその精神は決して元には戻らない。
そのキャスカの心と甲冑、両方を元通りにするだけの力を持つあの仮面の男は相当ヤバイ存在だということが容易に理解できる。
その力はゴットハンドにも匹敵、……もしかするとゴットハンドよりも強力な力を持っているかもしれない。
ガッツは仮面の男について考えるがただ虫の好かない野郎だということでしかなく、考えはまとまらなかった。

ガッツがもう一つ不可解に思っていた点、キャスカがガッツのことを知らないこと
これはつまり、文字通り"元通り"にしたとしか考えられなかった。今目の前に居るキャスカは俺のことを知る前にまで元通りにされた。
そう考えるとあの対応にも理解が出来る。目の前のキャスカはまるで鷹の団として戦場を駆けていたときの表情をしていた。
その表情こそがガッツにこの結論を裏付けるだけの証拠となっていた。

そこへドアノブの回る音がする。ガッツの思考はみさえへと移る。
みさえの奴がトイレへと行くとき、契約だし危険だから付いていくといった。
しかしみさえの奴はキャスカとゲインを見てろ、私は一人でも大丈夫と言ってしまった。
確かにトイレへと付いていくのはやりすぎかもしれないが、この殺し合いの中では絶対という確証はない。
戦場とは違い敵がはっきりしないからこそ、油断をせずに石橋を叩いて渡る戦略を取っただけなのであった。

ドアが開かれ、目の前に現れたのはみさえ、そしてみさえに銃を突きつけ、空中浮遊している小さな少女。

「あっはっはー、……ドジ踏んじゃった」
「ドジどころじゃねえだろうが、まったくよ……」

みさえの乾いた笑いに対する対応は、ガッツの悪態で切り替えされた。

「そこのデカ人間、動くなです」
「ああ、言われなくたって動けねえよ」

ガッツは黙って手を上げ、降参のポーズを取る。

「ガッツって男はお前のことですか? 」
「ああ、ガッツは俺だが」

達観した表情のガッツは、もうどうにもならないといった趣で翠星石の質問に答える。

「ゲインと、キャスカはどこですか? 」
「そこのベッドでぐっすりしてるのがゲインだ、そしてこいつがキャスカだ」

そういってガッツは手のひらサイズのキャスカを翠星石に見せる。

「たしかに、嘘ではなかったようですぅ」
「嘘ってそんな、嘘を付くなって言ったのはあなたじゃない! 」
「黙れです」

そう言って翠星石は銃口を再び後頭部へと突きつける。そこへガッツが言葉を投げる。

「で、あんたは結局の所どうしたい訳だ?そこの女は殺されたら困るから開放してもらいたいんだけどよ」
「翠星石の命令に従うなら、こいつを開放してやってもいいです」


7 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(5/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:04:01 ID:GRu51MJ3
「で、命令とやらはどんなもんだ?俺の命を取るとかは止めてくれよ」
「簡単な話ですデカ人間、水銀燈の知り合いを殺す手伝いをしてくれればいいです」
「水銀燈?誰だそいつは」
「お前達は水銀燈には会って無いみたいですが、翠星石もお前達もそいつの知り合いにひでえ目に会わされましたからね」
「俺たちが水銀燈の知り合いに会ったって? 誰だそいつは」

疑問だらけのガッツ、何かいいたそうなみさえの疑問に答えるように翠星石は言葉を続ける。

「北条沙都子ですよ。お前達も一度死にそうな目にあったと聞いてるのです」
「…ああ、確かに殺されかけたよ。んでそのクソガキと水銀燈にどんな関係があるって言うんだ? 」
「まったく、人間はバカで困るです。物分かりの悪いお前達にも分かるように、翠星石が特別に説明してやるです」

みさえの様子は更に変化する。その中に詰まった文句は一つ二つで済まない様な表情をしていた。
一方ガッツはというと、もうどうなってもいいと言った様子で翠星石の話を聞くことにした。

「翠星石がデブ人間を助けてやった後、やたらコソコソしてるチビ女の奴を拾ってやったのです」
「ちょっと待ってくれ、デブ人間やらチビ女とか言われても俺にはまったく訳が分からないぞ」
「黙って聞くですデカ人間、質問はあとでまとめて答えてやるです」

そういって翠星石は知る人にしか分からない、要領を得ない説明を続ける。

「…その後チビ女の知り合いのデカ女が現れて、水銀燈とカレイドルビーとかいう奴に襲われたと嘘を付いたのです」
「デカ女の捜している知り合いの中に、北条沙都子、前原圭一、竜宮レナという奴がいたです」
「デカ女とチビ女は翠星石を騙してミーディアムの、…チビ人間から翠星石を遠ざけ、水銀燈に殺させる手伝いをさせたです」
「水銀燈とカレイドルビーはでっけえ爆発を起こして、…アホで間抜けなチビ人間の奴を、…殺しやがったです」

翠星石がその部分を話す時、チビ人間の件には特に強い感情を込められていたのを二人は感じる。

「それがあの大爆発だったって訳か」
「そうです、翠星石達が爆発音を聞きつけた時、……チビ人間の奴が、……動かないのを発見してやったです」
「それからチビ女の奴が翠星石を殺そうとしたので、逆にぶっ殺してやったです」
「その後デカ女も翠星石を殺そうとしたので逆にぶっ殺そうとしたら、デブ人間の奴が翠星石をふっ飛ばしやがったのです」
「お前、翠星石という名前か? 残念だが全く話が掴めないし、水銀燈と俺達にどう関わりがあるんだ? 」
「話は最後まで聞きやがれです」

ガッツの一言を押しとめ、翠星石は疑問に答えるかのように次の言葉を進める。

「翠星石を殺そうとしたチビ女とデカ女は水銀燈とグルで、そいつが話した知り合いの中に北条沙都子がいやがったのです」
「聞けばお前達も沙都子に襲われたとかいうじゃないですか。奴らはグルで水銀燈と一緒に人間を殺しまわってるです」
「話はこれで終わりです、分かったですかデカ人間」

ガッツはというと達観を通り越して、諦めの表情で翠星石を眺めていた。

「全く訳が分からないぜ、まずデカ人間とかチビ人間とか言われても誰なのか俺には分からん。
 それに空中に浮んでるお前は何者なんだ? 翠星石」
「そっから説明しなけりゃいけないですか、まったくデカ人間は本当に物分りが悪いです」
「あーあーそうですか、じゃあ翠星石様に人間に分かるように説明してもらえますか? 」

嫌味たっぷりにガッツが受け答えし、翠星石が説明を始める。

8 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(6/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:05:05 ID:GRu51MJ3
要約すると、翠星石はローゼンメイデンという人形で、その姉妹である水銀燈は殺人狂で得体の知れない奴。
そして圭一、レナ、沙都子、魅音、梨花という奴が水銀燈の協力者で皆やる気満々。
それでやる気満々の梨花が襲い掛かってきたので返り討ちにしたということだ。
そしてカレイドルビーの正体は梨花を除いたこれらのうちの誰かで、水銀燈を従えるほどの強力な力を持っているという話らしい。

「……というわけです。いい加減に理解できたですかデカ人間」
「理解は出来たが、それでどうするんだ? 」
「決まってるですデカ人間、翠星石に協力するかしないかさっさと選びやがれです」
「協力しなきゃ殺すんだったら、協力するしか無いだろうが……」
「…なんかいまいち煮え切らない返事ですぅ」

ぶつくさ言いながらも翠星石はみさえに突きつけていた銃口をはずし、空中から地上へと着地する。
みさえは銃口のプレッシャーから開放されたというのに、ぷるぷる震えたまま次の動作をしようとしていなかった。
一目で見たそれはまさに爆発寸前という表現がぴったりであった。

「じゃあデカ人間、そこのどでかい剣と荷物を持ってさっさとついてくるです」
「あのなぁ……俺達は一応人待ちでこの場所にいるんだが……」
「そんなの関係無いです。蒼星石が今この瞬間誰かに襲われてるかもしれないのに、一々お前達人間の都合聞いてやれるかです」

ガッツは何度目になるかわからない盛大なため息をつき、いつでも使えるように壁に立てかけていたカルラの剣を手に取る。
次から次へと訳の分からない単語で意味の得ない説明され、デカ人間と馬鹿にされたガッツが怒っていない訳が無かった。
結局の所ガッツはこの状況を打開する手段として翠星石に協力したふりをして後ろから真っ二つにし、黙らせようという結論に至った。

しかしガッツが制裁を下すまでもなく、動いたのは野原みさえその人であった。

「いぎゃああああああ、痛い痛い痛いですぅーーーー」
「さっきからうだうだうだうだ訳の分からない話ばっか話しおってーー何様だおまえはーーーーー」

ぎゃーぎゃー喚きながら野原みさえ必殺のぐりぐり攻撃を受け、翠星石は頭の痛みにもがき苦しんでいた。
ガッツはその二人をわき目に、ぐりぐり攻撃に耐え切れず地面へと落下した拳銃、FNブローニングM1910を回収する。
更に酷くなるその喚きを止める為、ガッツは一言。

「おい、もういいぜ。こいつは没収だ糞人形」

それから数秒後、ようやくみさえのぐりぐり攻撃がやみ、翠星石は開放された頭を押さえる。

「はぁ〜、痛かったです……マジで死ぬかと思ったですぅ。……ん? 」

翠星石がおかしな点に気が付く、手にはあるべき物が無い。
ガッツの方をみれば、手には先ほどまで脅しに使っていた拳銃が

「ああああー、この泥棒人間、さっさと返せですぅーーー」


9 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(7/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:06:13 ID:GRu51MJ3
と、翠星石がガッツの手元目掛けて飛び上がるが……

「話はまだ終わってないのよ、翠星石ちゃん」

みさえが翠星石の腕を掴み、がっちりとその場に押さえる。
翠星石が不満タラタラで後ろを振り向くが、その烈火のごとき表情を見て逆に萎縮する。

「いやあああ、暴力人間に殺されるですーーー」
「暴力人間とは何よ性悪人形、さっきから人質にババアだのフケだの、私はまだピチピチの29歳じゃ! 」

と、怒りの火山が再度火を噴こうとしたところで、ガッツが一言。

「もう止めとけみさえ、糞人形苛めたって何も出てこないだろ。
 今度はこっちが質問する番だ。」
「でも、この収まりきらない怒りはどうすればいいんじゃーーーー」
「た、たた助けてくれですデカ人間」

と、今度はガッツの後ろに隠れてプルプル震える翠星石。ガッツはどうどうといった様子で暴れるみさえをなだめる。
それから数分して、どうにかみさえの怒りを一旦止める事に成功する。

「ふうー、助かったですデカ人間」
「それじゃあ情報交換といきたいところだが……」

と、ガッツは翠星石の頭を鷲掴みにし、顔の前へと持ってくる。

「俺の名前はさっき言ったと思うがガッツだ、間違ってもデカ人間なんて呼び方するんじゃねえぞ糞人形」
「ひぃぃぃぃ、わわわ分かったですぅぅぅ……」

ガッツが作った表情に本気で怯える翠星石に構わず、ガッツはさらに話を続ける。

「知っていることを全部話して貰おうか、まず蒼星石ってのは何なんだ? 」

と、それからガッツの質問攻めが続き、翠星石がその質問に答える。
嘘の一つもついてよかった翠星石は、ガッツの怖い顔による脅し文句のせいですっかり逆らう気はなくなっていた。

「これで全部話したです。もう翠星石を逆さにして引っぱたいても何も出てこないです」

と、宙ぶらりんにされていた翠星石はようやくガッツの手から開放され、その場にへたり込む。
ガッツはというと翠星石にはもう興味が無いといった様子で、ベッドで寝ているゲインの様子を見た後、再び机の上のキャスカを見つめる。
ようやくガッツから開放された翠星石はというと、次はみさえのお説教を受ける羽目になってしまった。

「…大体殺す殺さないとか物騒な話ばっかりして、一体絶対どういうつもりよ! 」
「話を聞いて分からなかったですかf…人間
 翠星石はチビ人間の敵は取ってやらなきゃいけないし蒼星石を探してやら無いといけないです」
「だからそれが間違ってるって言うのよ!
 どうして殺す殺さないなんて過激な話になるわけ、普通誰も殺し合いなんてする訳無いでしょ! 」
「あー、はいはいそうですそうですぅ」

みさえの説教は暖簾に腕押しといった様子で、翠星石の興味は別の方向へと向かっていた。
当然みさえもその様子には気が付き、しんのすけを黙らせるために使っていたあの技を繰り出す。


10 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(8/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:07:17 ID:GRu51MJ3


げん
こつ


「いったああああい、ななな何をするですか人間! 」
「人の話は真面目に聞きなさい! 」
「ううう助けて蒼星石、人間に苛められている哀れな姉を早く助けてください……」

みさえ必殺のげんこつを受けた翠星石は頭をさすり、ついには助けるはずだった妹に逆に助けを呼ぶほどに落ちぶれていた。

「大体あんたの話は根本からおかしいのよ! 沙都子ちゃんが殺人者? 水銀燈の協力者?
 そんな話は沙都子ちゃんの口からは一言もでなかったわよ! 」
「だから話を聞いてなかったですか人間、あいつらはグルになって水銀燈のミーディアムが誰か分からないように工夫してるです」
「ミーディアムとかローゼンメイデンとか言われても、高卒の私には分からないんじゃーー」
「ひぃぃぃっ! 」

みさえの怒りがまたふつふつと湧き上がるそのさなか、ガッツが一言口を挟む。

「…だが糞人形が言ってることが全部おかしいとは考えにくいぜ、クソガキに殺されそうになったのはどこのどいつだ? 」
「た、たしかに沙都子ちゃんは私達に襲い掛かってきたけど、こんな場所に居て平然としてる方がおかしいのよ! 」
「だからって人殺しに走るのか? 実際に殺されかけた身として言うが、そんな奴は遅かれ早かれ殺しをやるんだよ……」
「殺し合いとか何とか言われて、平然としているあんたたちのほうがおかしいのよ! 私はSFとかファンタジーとかそういうのが大嫌いなんだから! 」
「どちらかと言えば、あの状況でクソガキを助ける気になるお前の方がむしろおかしいぜ」
「クソガキクソガキって、沙都子ちゃんって名前があるんだからちゃんと読んであげなさいよ!
 それにあんたの思考はドライすぎるのよ!デリカシーってものがないわね! 」
「そのデリカシーのせいで人質になった奴の言葉とは思えないな……」
「うっ…、それはその……」

みさえの怒りの矛先はガッツへと向き、翠星石は一旦開放される。

「翠星石のことを無視するなです、このバカ夫婦! 」

「ば…、」「バカ夫婦だと……」

一瞬沈黙、そして爆発。

「何言いいやがるんだ糞人形……」「何言ってんのよ!この性悪人形! 」

口は災いの元という言葉を今身をもって知りつつある翠星石に、二人が近づいてくる。
それぞれが脅し文句とともに、翠星石から見ればこの世のものとは思えない表情で近づいてくる。
ああ、翠星石はチビ人間の敵も討てずに、蒼星石を守ることなく死んでしまうのですね。
蒼星石、こんなおバカな姉を許してください。
…と心の中で自省の句を読み上げながら、プレッシャーに耐え切れずバタンと気絶。

「「あらま」」


11 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(9/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:08:27 ID:GRu51MJ3
「はぁ、疲れたぁー……」
「俺はもっと疲れたぜ……」

それぞれが思い思いに溜息をつく。

「…でも、脅迫から開放してくれたのには礼を言うわ、ちゃんと仕事はするのね」
「当然だ、受けた仕事はちゃんとする」

ガッツは翠星石からディパックを回収した後、再びキャスカの元へと戻る。
みさえはゲインの様子を見るべく近くの椅子へと腰掛ける。

「…キャスカさん、まだ目覚めないの」
「……ああ」

それきり会話は止み、ガッツはキャスカの様子を、みさえはゲインの様子を見る。

ガッツは考えていた。キャスカの気絶が未だ解けないことに
あれだけギャーギャー喚いていたのだからゲインかキャスカ、どちらかの意識が取り戻されてもおかしくは無かった。
重病人であり絶対安静必須、深い眠りの中に付いたゲインはともかく、かなり時間が立ったにもかかわらず目覚めないキャスカ。
戦場で意識が飛ぶこと、それはすなわち死を表す。だから傭兵は仕事柄意識の回復が早いはずだったが、キャスカは目覚める気配すらない。
あまりに一発が重すぎたかもしれないキャスカを目覚めさせるために一度水をたらしたが、それでもキャスカは目覚めなかった。
ガッツの知るキャスカだったら、水をかけた時には飛び上がってくるものだった。

しかし現実に目の前の小さな女は目覚める気配は無い、この人物はキャスカではなくキャスカによく似た別人なのか?
そんな考えすら沸き起こるが、やはりガッツにはキャスカそのものにしか見えなかった。
ガッツは再び、目の前の縮小化されたキャスカについて考えを巡らせていた。

12 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(10/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:09:23 ID:GRu51MJ3
【D-5/ホテル3階の一室/1日目/夕方】



[共有道具]:
 バトーのデイバッグ:支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱、煙草一箱(毒)、
 爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類
 茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている)(茶葉を一袋消費)
 ロベルタのデイバッグ:支給品一式(×6) マッチ一箱、ロウソク2本、
 9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線 、医療キット(×1)、病院の食材
 ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの

 支給品一式四人分、オレンジジュース二缶、ロベルタの傘@BLACK LAGOON、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に
 ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING、ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ



【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)、精神的疲労(中)
[装備]:カルラの剣@うたわれるもの、ハンティングナイフ、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:エクスカリバー@Fate/stay night、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ)
     FNブローニングM1910(弾:5/6+1)@ルパン三世、首輪、支給品一式、デイバック2人分
[思考]
1:ホテルでセラスらの帰りを待つ
2:契約により、出来る範囲でみさえに協力する。
他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。
3:まだ本物かどうかの確証が得られてないが、キャスカを一応保護するつもり。
キャスカに対して警戒、恐怖心あり。
4:殺す気で来る奴にはまったく容赦しない。
ただし相手がしんのすけかグリフィスなら一考する。
5:ドラゴン殺しを探す
6:首輪の強度を検証する。
7:ドラえもんかのび太を探して、情報を得る。
8:翠星石の証言どおり、沙都子達ひぐらしメンバーが殺人者か疑っている。
9:グリフィスがフェムトかどうか確かめる。
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集
最終行動方針:ギガゾンビを脅迫してゴッド・ハンドを召還させる。


【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:睡眠中、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、峠は越した
[装備]:パチンコ(弾として小石を数個所持)、トンカチ
[道具]:支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)
[思考・状況]
1:まだ安静にすべき。
2:市街地で信頼できる仲間を捜す。
3:ゲイナーとの合流。
4:ここからのエクソダス(脱出)


13 :復讐少女 〜rachen Sie Madchen〜(11/11) ◆qwglOGQwIk :2007/02/11(日) 02:10:20 ID:GRu51MJ3
【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:中度の疲労
[装備]:スペツナズナイフ×1、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)
[道具]:基本支給品一式、糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
    ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ)
[思考]
1:本心では居ても立ってもいられない。
2:翠星石が起きたらお説教の続きをする。
2:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
3:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。
4:しんのすけ、無事でいて!
5:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。


【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:気絶?、左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大
    10分の1サイズ、鼻血(鼻穴に布を突っ込んで処置している)、両手を縛られている。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(一食分消費)
[思考・状況]
1:不明
2:混乱
3:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
4:グリフィスと合流する。
5:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。


【翠星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:気絶、全身に軽度の打ち身 左肩は若干強い打ち身、頭が痛い、服の一部がジュンの血で汚れている
     左肩の服の一部が破れている、人間不信
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考・状況]
1:この凶暴で約束も守れない人間達からさっさと逃げるです、でもむかつくから隙を見て殺してやるです。
2:真紅や蒼星石と合流するです。
3:まずは魅音を殺してやるです。
4:水銀燈達が犯人っぽいから水銀燈の仲間は皆殺しです。
5:水銀燈とカレイドルビーを倒す協力者を探すです、協力できない人間は殺すです。
6:庭師の如雨露を探すです。
7:デブ人間は状況次第では、助けてやらないこともないです。
基本:チビ人間の敵討ちをするため、水銀燈を殺してやるです。


※ガッツ、みさえは翠星石の話を話半分ですが信じています。

14 :【黒禍】 1/3  ◆S8pgx99zVs :2007/02/12(月) 02:10:14 ID:an0tQR3Z
殺戮の舞台の中央。
一際高く、そして細く長く、突き立てられた剣のように聳える石。
――レジャービル。その頂上に彼――吸血鬼アーカードは立っていた。

押し込まれた無粋な廃屋から寝床を此処へと移した彼は、ただ静かに西の空を見ていた。
吸血鬼にとって最も忌まわしき存在、そして日常の象徴でもある太陽。
それはもう半ばまで沈んでおり、半分の赤い光だけが舞台に、彼の目に届いていた。
もう間も無くでそれは全て消え去り、そうすれば彼――夜族の時間である。

高まる期待を胸に、吸血鬼はざわめく身体を抑え静かにその時を待つ。


――と、吸血鬼は何かに気付いた。身体を反しビルの反対側――東の空を見る。
人間が飛んでいる。只の人間ではない。狂った人間だ。狂った人間が空を飛んでいる。

「……魔女か。契約し、使役し、束縛され、求めて、捨てて、人であり人でない」

しかも、吸血鬼の眼が捉えた彼女の姿は――、

「狂っているな。クカッ! 堕ちた魔女か。此れは是非もなし」

吸血鬼は顔面に喜色を浮かべると、魔女の行く先を見やった。
彼女が一直線に向かう先にはこの舞台の中で一際大きく、その存在を城と例えることも
できるホテルがあった。そこが目的地であるだろうことを察するのは容易だ。

「そうか。其処がお前の夜宴の舞台か。
 いいだろう。いいだろう。
 お前がその石に魔方陣を刻むのなら、私が其処に血の化粧を施してやろう」

吸血鬼はククッと声を漏らすと、魔女を追って眼下の闇の中に身体を翻らせた。

15 :【黒禍】 2/3  ◆S8pgx99zVs :2007/02/12(月) 02:11:05 ID:an0tQR3Z
血色の空を往く魔女――ルイズは手の平にのせた眼球を眼前のホテルへと向けた。

「サイトには見える? アレを壊せばサイトは生き返るんだよ」

壊れた笑いを口の端から零しながらルイズはサイトと一緒にホテルを観察し考える。
一思いに直接建物を倒壊させてしまうこともできる。いつかのように。
だが、それでは中に人が居たのか、それを殺せたのかが確認できない。
それではあの男は納得しないかも知れない――となると。

ルイズは静かにホテルの屋上へと降り立つと、サイトを懐に忍ばす。
――私を守って。心の中でそう囁くと彼女は、彼女自身の暗い両眼で屋上の端にある扉を見た。


そして、今一つの災厄が上よりホテルの中に入り込んだ。


それより僅か後、先程の吸血鬼がホテルの足元にいた。
彼はその魔眼でホテルの中を観察する。どうやらすでに幾度かの闘争があったようだ。
彼の傍らには壊れた傀儡と、傀儡のように壊れた死体が転がっている。
この建物のは人の死を集める魔性でもあるのか?
ク、と一言口から漏らすと、彼は意気揚々と正面の扉へと向い破壊され玻璃の牙を剥く
その顎門を潜った。


そして、今二つ目の災厄が下よりホテルの中に入り込んだ。


幾度の闘争に曝されたホテルが僅かに震え埃を落とした。
それはこれから起きる惨劇を前にしての身震だったのかもしれない。

16 :【黒禍】 3/3  ◆S8pgx99zVs :2007/02/12(月) 02:12:00 ID:an0tQR3Z
 【D-5/ホテル/1日目-夕方(※放送直前)】

 【アーカード@HELLSING】
 [状態]:全身に裂傷/中程度の火傷 ※回復中
 [装備]:鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:0/0発)
 [道具]:無し
 [思考]:
  1.魔女やホテルにいる人間と闘争を楽しむ。
  2.夜まで回復に努める。
  3.カズマ、劉鳳とはぜひ再戦したい。

 【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
 [状態]:精神完全崩壊/グリフィスへの絶対的な忠誠/全身打撲(応急処置済み)/左手中指の爪剥離
 [装備]:グラーフアイゼン(強力な爆発効果付きシュワルベフリーゲンを使用可能)
 [道具]:平賀才人の眼球
 [思考・状況]
  1.ホテル内にいる人間を殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺スこロすぅ。
  2.ホテルを壊してペシャンコにすル。
  3.グリフィスに従う。
  4.そして才人と一緒また一緒才人が戻ってくるるるるるるるるるるるる。

17 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:13:03 ID:pWVrQIMZ
「うっほほ〜い! オラが一番乗りだゾー!」

 元気の良い声と同時に、盛大な水飛沫が上がる。
 舞い上がった湯のシャワーを浴びながら、ワイシャツ姿のままのロックは疲れ気味に失笑した。

 ここは良いとこエイハチ温泉。
 仮にも殺し合いをするはずのバトルロワイアル会場、その最北東に位置する参加者憩いの場であった。
 門前ではツチダマなる土偶が対応してくれ、サウナやマッサージ器具などの充実した設備を完備。
 お年寄りから子供まで、どんなお客様にも満足頂ける快適なスペースをもっとうにしております。

(……んな馬鹿な)

 広大絶景な露天風呂と、その水面に元気よく飛び込んでいったしんのすけを見て、ロックは笑うしかなかった。
 殺し合い会場に温泉があるなんて、ひょっとしたら何かあるんじゃないだろうかとも思ったが、なんてことはない。
 中身は至って平凡な娯楽施設。日本で経営していけば事業としても十分通用するレベルだった……接客をちゃんと人間がやってくれれば。

(ま、しんのすけもすっかり元気を取り戻してくれたようだし、別にいいか)

 裸で温泉を泳ぎ回るしんのすけを見ていると、自然と笑みが零れてきた。
 マップの端に位置する辺境施設……そこに辿り着くまでの山中は、孤高の吸血鬼や騎士王の存在を忘れさせるほどの静けさが続いた。
 市街地方面の雑踏が嘘に思えるくらい、人気がなかったのである。
 中心地である都市部の方が、人と接触する機会は増える――皆、考えることは同じなのだろう。
 しんのすけの母親やレヴィと合流するにも、こんな山の中で燻っているよりは都会に出たほうがよっぽど懸命だ。
 だが、今のところそっちはキョンやトウカに任せておけばいい。
 ロックにとって今一番大切なことは、しんのすけの身柄を守りきること。
 彼から大事なものを奪った、贖罪とも言えるだろうか。
 ヘンゼルが殺されても文句を言えないほどの悪人であろうがなかろうが、しんのすけが悲しんだことには変わりない。

 ロックには責任があるのだ。
 もうこれ以上、しんのすけに涙を流させるわけにはいかないという、責任が。

「おーい! お兄さんも温泉入ろうよぉー!」
「いや、俺はいいよ」

 しんのすけの誘いをやんわりと断り、ロックはまた失笑気味に声を漏らした。
 いつ何処で誰が襲ってくるとも分からない。
 いざという時になって、二人とも裸でいてしまっては対処が追いつかないだろう。
 故にロックは温泉に来ても湯に浸からず、いつものビジネススタイルのまましんのすけを見守ることに徹していたのだ。

「…………」

 そんなロックの思いなど露知らず、純粋無垢な子供はその綺麗で大きな瞳を一心に向けてくる。
 突き刺さるような視線。しんのすけの瞳から何やらキラキラした星のような光線が発射されているふうに見えるのは、幻覚だろうか。
 子供を持たないロックにも分かる。これは、両親におもちゃを買ってもらう時などに用いられる、おねだりの眼差しだ。
 ただダダを捏ねて親の機嫌を悪くするのではなく、子供が持つ特有の愛らしさによって、親に「な、なんて健気なの……分かったわ! 買ってあげる!」と思わせる。
 ようはぶりっ子アイドルと同じ理論だ。自分が可愛い生物であるというアドバンテージを最大限に自覚し、利用する。
 利口かつずる賢い手法だった。それを五歳児がやってのけるというのだから、大物の気質を感じざるを得ない。

18 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:15:03 ID:pWVrQIMZ
「…………」
「……分かった、分かりましたよ。俺も入ればいいんでしょ入れば」

 無言の眼差しに良心を揺さぶられ、ロックは陥落した。
 レヴィたちラグーン商会のメンバーに加わってからというもの、こういった平和を生きる子供とのふれあいはとんと少なくなってしまった。
 貧民街にいるのはストリート・チルドレンばかりだし、しんのすけぐらいの歳で銃器を扱える子供も少なくはない。
 そんな世界を見続けてきた。だから余計に、しんのすけの純粋さに弱い。

「ほらほらぁ〜、オラがお着替え手伝ってあげるゾ」
「い、いいってば。一人で脱げるって」
「よいではないか〜よいではないか〜」

 湯上りでびしょびしょになっているしんのすけにシャツを掴まれ、ロックは身動きを封じられる。
 小さな指がボタンに掛かり、覚束ない手つきでそれを外していく。
 湿った指の温もりが生地を通して肌に伝わり、ロックの身体を熱く穿つ。
 全身が火照るような感覚に襲われ、胸が高まり出した。
 おかしい……この鼓動の速さはなんなのか。静まれと命令しても受け付けない、この気持ちはなんなのだ。
 しんのすけのやや乱暴な手つきによりロックのシャツははだけ、貧相とも逞しいとも言いがたい胸板が露出する。
 その両脇にはちょこん、と突起した二つのピンク色の盛り上がりが。
 僅かに震えたその突起を見て、ロックの鼓動はまた加速する。
 そして、その突起以上に鮮やかなピンク色をした、小さな小さな蕾のようなルージュが――かぷっ。

「あふんっ」

 顔全体を一瞬の内に赤面で覆い、ロックは力なくその場にヘタレこんだ。
 その胸元では、しんのすけが「アハァ〜」と怪しく笑っている。

「もぉ〜お兄さんも好きねぇ。まるでカザマくんみたいだったゾ」
「…………(恥ずかしさのあまり声が出ない)」

 いったい何をやっているんだろうか、自分。
 五歳児に受けたセクハラ紛いの辱めに、ロックはこの上ない崩落を見せた。
 ガックリと項垂れ、顔は未だ真紅に染まっている。仲間たちには到底見せられないような姿だった。

 まぁ、これもしんのすけが心を開いてくれたのだと解釈すればどうということはない。
 むしろ喜ばしい結果だ。恥ずかしげもなく冗談が交わせるようになったのなら、これ以上の幸運はないではないか。
 湯に浸かりながら、ロックはそう自分自身に言い聞かせていた。

「ねぇねぇお兄さん」
「うーん、なんだい」

19 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:15:59 ID:pWVrQIMZ
 極楽を味わっている最中、ロックの後方からしんのすけの呼びかけが届いた。
 何の気なしに振り向いてみると、

「ぶほっっ!」

 そこには、湯船からお尻だけを出した奇妙な半ケツ浮遊物体の姿があった。
 衝撃映像に思わず吹いてしまったロックだったが、これには見覚えがある。
 そう、たしかあの病院での一件の時だ。ヘンゼルを襲おうとしたロックの注意を引くため、しんのすけが取った苦肉の策。
 五歳児だからこそ許される神技の如き宴会芸。その名も、

「えぇーと…………ケツだけ星人、だったかなたしか」
「当たりぃー。ブリブリーブリブリー」

 器用なものだ。しんのすけは尻以外の全身を湯に沈めているというのに、まったく苦しそうにせず水面を泳いでいる。
 潜水士の才能でもあるのか、いやそれよりも芸人としての方がやっていけるだろうか。
 しんのすけの将来に淡い幻想を見るロックは、また力なく失笑した。疲れている、と正直に言ってしまっていいものだろうか。
 楽しいのは、否定しないが。

「ねぇ、お兄さんもやってみて」
「ん? 何をだい」
「ケツだけ星人」

 ――時は止まった――

(ケツだけ星人……それはしんのすけ君が得意とする宴会芸であり、純粋無垢、恥を知らない男性児童だからこそ許される所業だ。
 それを俺にやれと? まだ若いとはいえ、二十歳過ぎのいい大人である俺に半ケツを晒せと!?
 いや、だがまぁここは風呂だ。風呂で裸でいることはおかしなことじゃない。半ケツくらいどうってことないさ。
 だがやっていいものなのか? 年甲斐もなく、そんな恥ずかしい真似が俺にできるのか?
 くっ、これが子供の無邪気さというものなのか……なんて恐ろしいスキルなんだ!
 しんのすけ君も俺にケツだけ星人やらせていったいどうしようと……うぉっ、またあの眩しい眼差しがっ!)

「やってくれなきゃ……お兄さんとは絶交だゾ」

(……か、核が動いたァー! ダメだ、もうミサイルでも対戦車ライフルでも太刀打ちできない!
 レヴィがカトラス二挺持ったって敵わない! これが子供の戦力、バラライカさんだってひれ伏すぞ!
 戦争をおっぱじめるには火力が足りない。どうする、どうするロック。降伏するしか道は残されていないのか?
 ……いや、ここは逆に考えるんだ。見ているのはしんのすけ君ただ一人、ここは童心に返ったと思って自分を納得させるんだ。
 考えても見ろ。今までの人生、こんな辱めは初めてじゃないだろう。それこそ社員時代は上司の靴の垢を嘗めるような思いだったんだ。
 忘年会と考えるんだ。上司連中を楽しませるための宴会芸だと割り切るんだ。
 媚売ったり謝ったりするのはお前の得意技だったろうロック、いや、岡島禄郎!)

 ――そして時は動き出す――

20 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:16:51 ID:pWVrQIMZ
「こ、こうかい?」
「違う違う、もっとこう、おケツを上のほうに突き出すんだゾ」

 風呂から上がって。
 全裸の男児と大人が二人、湯気に包まれた石敷きタイルの上で、ケツだけ星人講習会を開いていた。
 ロックは開き直ったのか、しんのすけのレクチャーに親身に耳を貸している。
 顔は依然赤面したままだったが、動作はぎこちないながらもやる気に満ち溢れていた。
 スキンシップだ。たまの休日を子供に付き合わされるお父さんのつもりで臨めばいい。
 相手は子供。恥はかなぐり捨てろ。どうせ誰も見ちゃいないんだから。
 何べんも何べんもそう言い聞かせ、やがてロックは羞恥心のリミッターを解除することに成功したのだった。

「んじゃあいくぞ…………ブリブリーブリブリー」
「まだテレが見えるゾ! もっと激しく腰を振って!」
「ぶ、ブリブリーブリブリーブリブリーブリブリー」
「そうそう、なかなか上手になってきたゾ! もう一息!」
「ブリブリーブリブリー! ブリブリーブリブリー! ブリブリーブリブリー!」
「おお、お兄さん筋がいいゾ! これでオラのケツだけ星人も将来安泰ですな」

 しんのすけのお墨付きを貰えるまで、ロックは尻を振り続けた。
 次第に楽しくなってきたような錯覚にも陥り、汗迸る笑顔には羞恥心の欠片もない。
 しがない商社マンから命懸けの運び屋に転職し、そして今、ロックはまた新たな領域へと足を踏み入れたのだ――ガララ。

「ブリブリーブリブリー…………え?」

 恍惚を感じつつあった、そんな時だった。
 露天風呂の入り口であるレール式の引き戸が、音を立てて開けられたのである。
 ロックはケツだけ星人のまま引き戸の方を見やり、そして対面した。

 入り口には、白い裸身を晒す少女の姿があった。

 時は止まっている――ロックは翳した尻を引っ込めることも出来ず、妙に冷たい汗をかきながら少女の姿に釘付けなる。
 時は止まっている――少女もまさか中に人が、しかもおケツ丸出しの男性がいるとは思っていなかったのだろう。石像のように硬直して身動きが取れない。
 時は止まっている――しんのすけはしんのすけで、ただ「おぉ〜」と他人事のように声を漏らすことしか出来ない。

 時は動き出す。同時に、入ってきた少女の全身がわなわなと震え出す。
 ロックは本能的に逃げ出そうとも思った。だが逃げてどうする。そもそも今の自分は素っ裸、このまま逃げてしまえば思いっきりアレではないか。
 両者互いに汗をダラダラ流し、硬直状態が解かれる瞬間を待った。
 やがて、時を進めたのは少女の方だった。

「――きぃっっっやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ヘンッッッッタイですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 ロックは泣いていた。


 ◇ ◇ ◇



21 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:17:47 ID:pWVrQIMZ
 空から降ってきた謎の箱。その中身は、多種多様な薬の詰め合わせだった。
 もっとも薬といっても、その効能は治癒に役立つものではない。
 幻覚作用に麻酔効果……どちらかというと患者を貶めるタイプの薬物ばかり。
 沙都子はこれを、『にーにーからの贈り物』だと解釈した。
 まだ圭一が雛見沢にやって来る前のこと――沙都子の兄、北条悟史は謎の失踪を遂げた。
 敬愛していたにーにーが、突然いなくなってしまったのだ。
 いつでも沙都子を守ってくれた、ヒーローみたいに頼れる存在。その消失。
 ショックから立ち直った後も求め続けた。圭一ににーにーの影を重ねながらも、求め続けた。
 求め続ければ、いつかにーにーは駆けつけてくれる。だってにーにーは、沙都子にとってそういう存在だから。

(トラップに応用できそうですわね……)

 手に入れた薬物の数々を見て、沙都子はこれからの作戦を練り始めた。
 先ほどの蜘蛛型ロボットの来襲は不運なケースであった。足を負傷し、満足な物資もないこの場では、あれほどの敵を討ち取れる罠は作り出せない。
 見つからなかったから良いものを、あのまま寺の中を捜索されていたら、沙都子は間違いなく*されていたことだろう。

「いや……」

 小さな身体が小刻みに震える。
 沙都子の本領は『罠』だ。教室のドアに挟んだ黒板消しから誘導地雷まで、ありとあらゆるトラップを駆使する自信がある。
 だがやはり――素材が足りない。
 山の中は物資の宝庫であると言えたが、力の弱い沙都子では精々落ちている木々を拾い集めるくらいかできないし、それをスムーズに行うための足も不足している。
 第一、この人気のない寺ではチャンスが少ない。それでなくても、あの蜘蛛ロボが寺を警戒するように噂を流す可能性だってある。
 このままここに居続ければ、終盤まで生き残ることは可能かもしれない。だが、やがて終焉は来るだろう。
 準備は早い内に整えておく。それこそが勝者の条件なのだ――と、トラップマスターの称号を冠さす沙都子は考えた。

「足さえ動けば、この山全体に罠を張ることだって可能ですわ……!」

 トラップ材料として確保しておいた竹竿に木々を組み合わせ、即興の松葉杖を作り上げる。
 片足で歩くよりは幾分かマシになった。とはいえ、この状態で資材を調達しに行くのは自殺行為。
 人気の多い場所には迎えない。どこか、役立つ資材が調達できるような場所はないか――

「……温泉」

 地図を広げて、沙都子は北東に位置する施設に目をつけた。
 フィールドの端っこ、しかも山中。ここならば、人が来ることも少ないだろう。
 殺し合いから逃れる目的で避難してくる者もいるかもしれないが、そういう人物との接触ならむしろ好都合だ。
 それに、足の怪我もある。温泉に浸して完治するような怪我でないことは承知していたが、それでも気持ちは幾分か和らぐかもしれない。
 どんなゲームだって、何より精神が壊れてしまえば終わりだ。気持ちを癒す意味は実に大きい。

 沙都子は寺に新たな竹槍トラップを仕掛け、負傷した足で進路を温泉に向けた。
 歩き慣れた山道。しかしそれをを松葉杖で歩くというのはさすがに難儀なもので、途中何度か転ぶこともしばしば。
 そのせいで、身体は土に汚れてしまった。気持ち悪い、早く身体を洗いたい――そんな年頃の女の子が抱く当然の思考のもとに、沙都子は温泉に着いた途端、早々に湯船を目指した。
 引き戸の向こうは白い湯気で何も見えない。防音も完璧のようであり、中の声が漏れてくることもなかった。
 だから、何の警戒もなくその戸を開けてしまったのだ。そして、見てしまった。
 大人の男性の、アレとかコレとかソレとかを。

『言い忘れてたけど、露天風呂は混浴ギガ〜』

 ツチダマ談。


 ◇ ◇ ◇



22 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:18:43 ID:pWVrQIMZ
 足の不自由な女の子を背負って、ロックとしんのすけは山中を行く。
 温泉で知り合った少女の名は、北条沙都子。ゲームに乗っていることはまず有り得ない、人畜無害な子供だった。

「まったく、恥ずかしいったらありゃしない! レディの前であんな汚いものを見せるなんて、デリカシーが足りませんわ!」
「きたな……いや、うん、君の言うとおりだと思うよ……ホント。ごめん」
「もぉ〜お兄さんったらあんなにはしゃぐから〜」

 あの沙都子のヘンタイ発言の後。
 ロックは桶やら石鹸やらタオルやらをぶつけられたあげく、変態に間違われて湯船の中に突き落とされた。
 口や鼻から大量の湯が流れ込み、溺れかけた時は本気で死ぬかと思ったほどだ。
 唯一幸運だったのは、沙都子がその場からすぐ逃げ出そうとしなかったこと。
 本当のところはすぐにでも逃げたかったのだが、足を負傷していた彼女は満足に走ることも出来ず、しばしその場でロックへの抵抗を続けるしかなかった。

(まったく……いきなり中に人がいた時はどうなることかと思いましたけれど、無害そうな人で安心しましたわ)

 自分の悪運の強さに安堵する沙都子だったが、よくよく考えてみれば温泉などに殺人者が好んで訪れるはずもない。
 それどころかロックは超善人――尻丸出しで踊るような変態だが――で、うまく立ち回れば『足』として利用できる逸材だった。
 しかも彼に付き添っていた幼稚園生くらいの子供は、沙都子にとってとても因縁深い人物だったのだ。

(野原しんのすけ……この子がみさえさんの捜していた息子さんですのね)

 毬栗頭に調子の良さそうな顔、聞いていた外見的特徴から見ても明らかだろう。
 沙都子は悩んだ。この五歳児に、母のことを伝えるべきか否か。
 見る限りではしんのすけは元気そうな態度を保っているが、本当は母に会えなくて心細く思ってるかもしれない。
 沙都子だって、にーにーと会えなくなった時には心が押し潰されるような思いだった。
 歳が近いというのもあるのだろう。家族と離れ離れになっている子供の心境というのは、痛いほどによく分かる。

(でも――)

 それを知ってなお、沙都子はしんのすけに母のことを伝えなかった。
 沙都子はもう、決心を済ませた後だったから。
 自分を助けてくれたみさえ、そして彼女が守りたいと願ったしんのすけすらも、にーにーのために犠牲にしようと誓ったのだから。
 今さら引くことはできない。良心に揺さぶられ、下手な安心を与えてはいけない。
 しんのすけにみさえのことを告げれば、彼はきっと母に会いに行くだろう。
 だがそれでは困る。物資の調達と安全圏の確保を目的とする沙都子は、まだ人の集まる場所には向かえないのだ。

「それで――沙都子ちゃんを襲ったっていう、ガッツだっけ? その男はまだ山の出入り口辺りでうろついているのかい?」
「ええ。何か目的があってのことだろうとは思いますけれど、今山を降りるのは危険ですわ。何か、役立つものを調達してからでないと」

 足の怪我については、『ガッツという大男に潰された』と説明してある。
 大男は山の麓辺りを根城にし、見かけた参加者を襲っていくハンティングスタイルを取っているのだそうだ。
 大男に襲われ、支給品を駆使して命からがら逃げ出した沙都子は、今の今まで山の中で足の治療に専念していたらしい。
 だから、そのガッツという大男以外には会ってない。他の参加者に会うのは、ロックとしんのすけが初めてだと――そう嘘の説明をした。

23 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:19:48 ID:pWVrQIMZ
「山の麓にはゲームに乗った大男……下山するには川を越えて、俺たちがやって来た西側から迂回するしかないか」
「そちらの方が安全でしょうね。それと、出切れば材料集めに協力してくださいまし」
「材料? 材料って何に使う材料だい?」
「罠ですわ。わたくし、こう見えても村では凄腕の罠師として名を馳せていましたのよ」
「罠師……ねぇ。ははっ、へぇ〜そりゃスゴイな」

 ロックから若干冷めた笑いが飛ぶ。
 所詮は子供の言うこと、大げさに話しているだけで実際は大したことはないのだろう。
 普通の大人ならば、そう受け取ることだろう。だが、それでいい。その反応こそが沙都子の狙い通り。
 変に警戒されるよりは、無害な子供であるという認識でいてもらった方が都合がいい。
 資材集めの人足として、またその名の通り『足』として、ロックには活躍してもらわねばならない。
 と、沙都子を背負いながら山道を行くロックの足が急に停止した。
 しんのすけと沙都子が何事かと聞くと、ロックは「しっ」と二人に静かにするよう指示した。

「……誰か、女の子の泣き声が聞こえる」

 マイクロ補聴器を付けた耳が、森の奥から聞こえてくる少女の声を察知したのだった。

「女の子の泣き声? 本当ですの?」
「ああ、間違いないよ。どこかで聞いたことのあるようなないような……ともかく、放っておくわけにもいかない。行こう」
「えぇ〜オラ歩き疲れちゃったゾ〜。お兄さんの背中は沙都子おねいさんが一人占めしてるしぃ」
「ああ、もう。だったらしんのすけ君は抱っこだ。胸にしがみ付いてていいから、落ちないようにしっかり掴んどくんだぞ」
「ほーい」

 ロックの胸板に飛び込み、首にしがみ付く。
 おんぶとだっこを同時にこなし、ロックは母親と母コアラの気分を一片に味わっているようだった。

「さすがに、重……」
「まぁー! レディに対してなんて口を利きますの! この口がぁ〜!」
「んまぁー! れでぃーに対してなんて口を利きですますの! この口がぁ〜!」
「やへ、くひをひっはるほはやめほっへ!(やめ、口を引っ張るのはやめろって!)」

 二人の子供に翻弄されながら、ロックは泣き声の下へと向かっていった。
 その道中、あの仮面の男が三回目の参上を見せる。

24 :「ブリブリーブリブリー」 ◆LXe12sNRSs :2007/02/12(月) 21:21:19 ID:pWVrQIMZ
【A-7/1日目/夕方(放送直前)】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:若干疲労
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
[道具]:支給品三人分、黒い篭手?@ベルセルク?、どんな病気にも効く薬@ドラえもん、現金数千円
   :びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]
1:泣き声のする方へ向かう。
2:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る。
3:山の麓にいるというガッツを警戒。
4:しんのすけ、君島、キョン、トウカの知り合いを探す。
5:しんのすけに第一回放送のことは話さない。
[備考]※ケツだけ星人をマスターしました。

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、歩き疲れ
[装備]:ニューナンブ(残弾4)、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2、ipod(電池満タン。中身不明)
[思考・状況]
1:お兄さん(ロック)について行く。
2:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する。
3:ゲームから脱出して春日部に帰る。
[備考]放送の意味を理解しておらず、その為に君島、ひろしの死に気付いていません。

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:若干疲労、右足粉砕(一応処置済み)
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:基本支給品一式、ロープ、紐、竹竿他トラップ道具、 簡易松葉杖
   :エルルゥの薬箱@うたわれるもの(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考・状況]
1:ロックとしんのすけを『足』として利用し、罠を作るための資材を集める。
2:十分な資材が入手できた後、新たな拠点を作り罠を張り巡らせる。
3:準備が整うまでは人の集まる場所には行きたくない。
4:生き残ってにーにーに会う。
5:ひぐらしメンバーとは会いたくない 。


※寺に竹槍トラップ(フェイトとタチコマに仕掛けたのと同じもの)を残してきました。
※女の子の泣き声の正体はエルルゥです。

25 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:11:45 ID:wrmRiHYV
『警告します。禁止区域に抵触しています。あと30秒以内に爆破します』

既に禁止エリアに指定されていた地区A-4に足を踏み入れた瞬間に聞こえたのはそんな警告音。
「――ったく、どこまでも俺達を追い詰めて遊ぶ気かい……」
これで、地図の外へ出た時と同じ警告がされることを次元は確認したことになる。
警告音に従い、スタコラと禁止区域を出ると、次元は近くにあった電柱に寄りかかった。
「さて、これからどうするかだが……」
地図の範囲外、及び追加指定された禁止エリアに進入した場合の首輪の反応は確認した。
埋葬までは行かないが、ソロモンや圭一の遺体を弔うこともした。
蒼星石の残骸ごとだが首輪のサンプルも回収した。
とすれば、ここに留まっている理由は無い。
脱出の鍵を握ってあるであろう青狸やその仲間と思われる少年達を探す為にも、移動すべきだろう。
だが脇腹を負傷している以上、激しい動きは出来ない。
ならば、なるべく敵に会わないように移動しなくてはならない。
次元はそう考えると、幹線道路を一本外れた道を警戒しながら南下しはじめた。

そのように、歩き始めてから少しして。

――だから! あたし一人で行くからいいって言ってるでしょ!!――

突如、耳にそんな若い女性の声が飛び込んできた。
「……こりゃあ、何の騒ぎだってんだ?」
音源は幹線道路の方向。
次元は声の主の正体を確かめるべく、幹線道路に繋がる路地へと入ると、その影からその様子を見始める。
すると、彼の目に映ったのは一台の軍用トラックと、そこに乗る複数の男女。
「参加者……だろうな」
首で鈍く光るそれを確認すると、次元は彼らの正体を見極めるべく、観察を続ける。

――危険といったら危険だ。絶対に行かせる訳には――
――それじゃ、誰がルパンを弔ってあげるのよ! まさか放ったらかしにしておく気!?――
――ルパン、なかま! アルルゥもルパンの所行く!――

「ルパン……だと!?」
次元の耳が捉えたのは、常に自分の隣にいた頼れる相棒の名前。
どうやら、会話から察するに彼女らはルパンと接触していたようだ。
「あいつが……ねぇ」
彼女らがルパンと接触していたのなら、その居場所を聞き出して是非合流したいところだ。
――もし彼が生きていたとしたら、の話だが。
現実では、ルパンは既に死んでしまったという。
ならば、合流が叶うはずもなく、路上で堂々大声を上げるという危険行為を行う彼らに接触する必要も無い。

――だが。

「――あー、お取り込み中悪いんだがなぁ、ちょっといいかい?」
気付けば次元の足は彼女らのいるトラックへと向いていた。

26 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:13:24 ID:wrmRiHYV


時はやや遡り。
赤いコスプレ少女、そして金髪青服の剣士の襲撃から何とか脱出したトグサ達を乗せたトラックは道路を北へと走っていた。
そして、そのトラックの中で襲撃によって肩を負傷したヤマトはアルルゥに手当てをしてもらっていた。
「…………ありがとう」
「……ん!」
アルルゥはハルヒや長門の持っていたハンカチを細く千切ったものを包帯代わりにして、黙々とヤマトの肩に巻いていく。
そんな姿を見て、ハルヒは感心する。
「ふぅん……アルちゃん、随分手馴れてるね」
「……ん。。おねえちゃんのやつ見てたから慣れてる」
「しっかりしてるのねぇ、アルちゃんは」
ハルヒがそう言って頭を撫でてやると、アルルゥは「んふ〜」と気持ち良さそうな声を出して鳴く。
……そして、一通り手当てが終わると、ハルヒは今度はヤマトの方を向く。
「……それに引き換え、あんたはねぇ……まったく! 子供の癖にあんな大見得切って飛び出しちゃって無謀にも程があるわ」
セイバーを引き止めるために一度セイバーに立ち向かったことを指してハルヒは半ば非難するような形で喋る。
「ああ言うのは、勇気じゃなくって蛮勇、無謀って言うのよ! 車が間に合ったからいいけど、もし少しでもタイミングがズレたら……」
「ヤマトをあまり責めないでやってくれ」
ハルヒの言葉を遮ったのは、運転席のトグサだった。
「本来あそこであの剣士に立ち向かうべきだった俺だった。つまり、君の責めを受けるのは俺のはずだったんだ」
「だ、だけど……」
「それに……今はそっとしておいてくれないか」
ちらりとトグサは後部座席の向こう、荷台にいるヤマトの顔を見る。
その顔は、痛みや疲労から来るものとは違う、悲しい表情をしていた。
「ぶりぶりざえもん…………」
ヤマトが思うは、身を挺して剣士をトラックから退けてくれた役立たず――いや、かけがいのない仲間であり、自分たちにとって真の救いのヒーローだった豚のこと。
彼の脳裏にはその豚が最後に見せた勇者の眼差しが焼きついていた。
その表情を見て、ハルヒも言葉を詰まらせる。
「そ、それは分かってるけど…………」
流石のハルヒも、先程の一連の出来事を見て、そんなヤマトとぶりぶりざえもんの並々ならない関係は察していた。
自分だって、みくるの死をあんな形で見せられたら、こうなって、いやもっと酷いことになるかもしれない。
だが、それでも彼女は――
「涼宮ハルヒは、あの時金髪の剣士に立ち向かった石田ヤマトの事が心配だった。……だからこそ多少乱暴な物言いになっている。そう私は推測する」
「――ゆ、有希!!」
つまりはそういうわけだった。
結局はハルヒも出会って間もないとはいえ、行動を少しでもともにした仲間が危険な目に遭って平然としていられるほど薄情ではない。
「ま、そ、そういうわけだから、次からは自分の身の事もちゃんと考えなさい、いいわね!?」
「…………」
ハルヒの問いかけに、ヤマトは黙ったまま。
そんな彼を見ていて、彼女はふと思い出した。
自分にも離れ離れになったままの仲間がいたことを。
「ねぇ……そういえばルパンはどうしたの? さっき病院にいたってことは橋を渡ってきたはずでしょ。あそこにいたはずのルパンはどうしたの?」
口ではそう言いつつも、薄々と気づいていた。
橋にいたはずの彼が、橋を渡ってきたこのトラックにいないという事は……。
すると、運転席からその答えが聞こえてきた。
「橋の途中には確かに君がルパンと呼んでいたと思われる男性がいたよ。…………ただし、遺体の状態でね」
トグサは直接生前のルパンを見たわけではなかった。
だが、橋を通過時に見たその男の遺体は、ハルヒの話を聞いていたヤマトから伝えられた特徴と一致する部分が多すぎた。
それゆえ、彼は橋の男をルパンと確定した。
「昼の放送でも、ルパンという名前が呼ばれていた。…………彼の死は確実だろう」
「……そう」
そして、それを聞いたハルヒの口から漏れたのは、そんな溜息ともつかない言葉。
彼女の中で予感は確信へと変わった。
ハルヒは自分が間に合わなかったことに悔しさを覚えると同時に、ある決意をした。
「――ねぇ、えっとトグサさん、だったっけ。車止めてくれない?」

27 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:15:25 ID:wrmRiHYV
「どうした? 具合でも悪くなったのか?」
ミラーで追跡が無いことを確認してトラックを路肩に停車したトグサは、後ろを振り返る。
すると、後部座席にいたハルヒは、先程とは違う面持ちをしたまま口を開いた。
「あたし、ちょっと用事があるから、ここで降りるわ」
「……は?」
いきなりの言葉に、トグサは言葉を失う。
「一体どうしたんだ? 何でわざわざ降りるなんてことを……」
「言ったでしょう、用事が出来たのよ」
「だからその用事っていうのは何なんだ? 君が助けようとしたルパンという男はもう――」
「その話は聞いたわよ。……聞いたからこそ、私はあいつに会いたいのよ。――そしてちゃんと弔ってあげたいの」
ハルヒは俯き加減に言葉を紡ぐ。
「あいつはね……ルパンはね、仮にもSOS団の団員なの。そして団長であるあたしは、団員をちゃんと弔う義務がある。……あいつの体、橋にいるまんまなんでしょ?」
「あぁ。あの時は病院行くのに忙しかったから――って、そうじゃなくって! そんなのを認められるわけが無いだろう! 
 後ろからはまだ襲撃してきた連中が追いかけてきてるかもしれないんだぞ」
「だから! あたし一人で行くからいいって言ってるでしょ!! あたし一人で行くだけなら、あんた達に迷惑が掛かる訳でもないし」
そんな言い分を聞いて、トグサは更に語気を強めた。
「尚更駄目にだ! 君はまだ重傷患者なんだ。そんなふらついた体で一人にするわけにはいかない」
「――それに、先程自身で言っていた“自分の身の事もちゃんと考えなさい”という注意事項に抵触する。……明らかな矛盾」
長門もそう言いながら、静かにだが反論する。
――だが、それでもハルヒは意志を曲げない。
「……そ、それはそれ! これはこれよ! 誰が何といっても私は――」
ハルヒが車を出るべくドアに手をかけようとするが、その手をトグサが掴んで止める。
「危険といったら危険だ。絶対に行かせる訳にはいかない」
「それじゃ、誰がルパンを弔ってあげるのよ! まさか放ったらかしにしておく気!?」
「ルパン、なかま! アルルゥもルパンの所行く!」
そして、ここで更に荷台でヤマトの手当てをしていたアルルゥが加わるものだから、話は更にややこしくなる。
「おいおい、君までそんな――」
「……いいの?」
「ん! ルパンなかま! ハルヒおねーちゃんが行くならアルルゥも行く!」
「アルちゃん――!!」
ハルヒは、アルルゥの小さな体を抱き寄せる。
――が、一方でトグサは抗議を続ける。
「今の状況が分からないのか!? 武器も無い、襲撃者に追われてる可能性がある、夜が近い、それに何よりその頭の怪我。……何一つ安心できる余地が無いんだぞ!」
「そ、そんなの何とかしてみせるわよ! それに武器ならこのカメラだってあるんだし!」
ハルヒはデイパックから着せ替えカメラを取り出すと、それを掲げる。
だが、何も知らないトグサにとってはそれはただの変わった形をしたカメラにしか見えない。
――そもそも、着せ替えカメラは武器としてはとても利用できた代物ではないわけだが。
「おいおい、そのカメラのどこが武器――」
トグサの苦言が続きそうになったその時だった。
「――あー、お取り込み中悪いんだがなぁ、ちょっといいかい?」
トラックに乗る誰のものとも違う、渋い男の声が車外からしてきた。

28 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:17:09 ID:wrmRiHYV
トラックに乗る面々に声を掛けてきたのは、黒に身を包み、帽子を目深に被った男。
いかにも怪しいその男に、皆はすぐに警戒をする。
トグサは銃に手をかけ、長門は眼鏡を掛けてタヌ機の使用準備をする――が。
「おっと、そんな警戒しなさんな。……俺はゲームに乗ってねえよ」
男は早々に両手を軽く挙げて、警戒を解くように呼びかけてきた。
だが、彼らは構えを解かない。
トグサ達にとって、あくまで今の次元は突然の闖入者。
出来ればトグサもこのような疑心暗鬼になるような真似はしたくなかったが、先程の襲撃があったばかりである以上、警戒するに越したことは無かった。
「……あんたは誰だ?」
「俺は次元大介。――さっき、お前さん方らの話の中で出来たルパンって男の知り合いさ」
「……ルパンの知り合いですって!?」
次元の自己紹介に一番驚いた顔をしていたのは他ならぬハルヒだ。
「それじゃ、あんたが早撃ちが得意だっていう次元大介ってわけ!?」
「他に同姓同名の参加者がいない以上、その次元大介が俺なのは確かだろうな」
「――――で、その早撃ちが得意なあんたが、どうして俺達に近づいてきた?」
その問いを聞くと、次元は帽子に手を当てて顔を下へ向ける。
「ま、やっぱそこが気になるだろうな。……正直、俺も隙だらけで格好の的になりそうなお前さん達に近づくリスクが高いことは承知していたよ」
「……? だったら何故?」
「――ルパンの野郎がどんな連中と行動していたのか……それが知りたかったのかもなあ、あいつの相棒を長年してきた俺としてはよ」
そんな次元の言葉に一同が黙る中、ハルヒが口を開いた。
「――あんた、本当に戦う気は無いのね?」
「そっちから襲ってこない限りはな。それにあの仮面野郎のいう事を聞くほど俺だって馬鹿じゃあない」
すると、ハルヒは何か納得したように頷く。
「そう……。だったら信じてあげる。敵じゃないってね」
「お、おい、そんな安易に――!!」
「前にルパンから聞いた事があるのよ。次元っていう相棒がどんな男なのかってね。……それを聞く分だと、私にはこいつがあたしたちを襲うとは思えないわけ」
「そりゃどうも、っと」
おどけてみせる次元を見て、トグサも観念したように銃から手を離す。
長門は依然、眼鏡を装着したままだったが。
「名乗ってなかったな。……俺はトグサ。一応、元の世界では警察に所属していた」
警察手帳を見せて自己紹介をするトグサに、次元は一瞬怯む。
彼は今までに警察から追われるような事を少なからず……もとい大いにしてきた。
反射的に警察と聞いて、足が逃げようとしたが……今はそうもいってられない状況だ。
いつぞやのルパンと銭形のように共闘関係を結ぶ他ないだろう。
「あぁ、こっちこそよろしく頼むよ」

29 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:18:54 ID:wrmRiHYV


ホテルで何ががあったこと、市外中心地で巨大な爆発があったこと、病院にて赤いコスプレ少女や金髪青服の剣士に襲われたこと。
次元がトグサ達と接触して手に入れた情報はどれも明るくないものばかりだった。
そして、何より知りたかったルパンの動向については――
「なるほど、お前さん方を庇ってねぇ……あいつらしいな」
女の為に身を犠牲にする――まさにルパン三世という男の生き様の集大成のようだ。
「……私達がもっと早く助けを呼んでればルパンも――」
ハルヒは俯きながらも、言葉を続ける。
だが、そんな彼女の肩に次元は手を置く。
「いんや、お前さんが気に病むことはない」
「…………」
「それにお前さんとそこの……アルルゥだっけか? お前らを結果的に助けられたんだ。あいつだって本望だろうよ」
それを聞いて、ハルヒは黙ったまま涙を流しはじめる。
今まで我慢していた分も含めて、堰を切ったようにそれは流れる。
「……ハルヒおねーちゃん、また泣いてる?」
アルルゥがそんなハルヒの顔を見て尋ねるが、彼女は答えない。
今のハルヒはただ泣くばかりであった。
次元はいきなりの落涙に戸惑うが、そんな彼へ今度はトグサが問いかけてきた。
「……それで、さっき言っていた話は本当なのか?」
「さっきの話? ――あぁ、小次郎の事か? こんなところで嘘つくわけないだろ。んなことしたらお前さん方に何されるやら」
トグサが問いただしたのは、次元が話した佐々木小次郎がこの道の先で襲撃をしてきたという話。
ルパンの話をする前に、交換条件として先に話していたのだ。
「本当だとしたら、この先にはまだその小次郎という男がいるということになるが……」
「それはどうだろうな。あいつ、戦いが終わったら東の方に行っちまったみたいだから、今はいないんじゃないか?」
「そうか……」
子供達を運んでいる以上、ゲームに乗った参加者のいる方角へ車を走らせることは出来るだけしたくない。
「小次郎って奴はよ、どうも兵を探してるらしい。だから子連れのあんたらを見ても襲う気は起こんないかもな」
「兵……か」
トグサはちらりと長門の方を見る。
強化義体である彼女の力を見たことのある彼からすれば、彼女はいわゆる兵に部類する存在だ。
もし、彼女の力量をその小次郎という男が見極めたとすれば……。
「大丈夫。私がボロを出さなければいいこと」
「……え、いや、しかし――」
「このまま南下しても敵がいる可能性がある。……それにもう少し北上すれば映画館がある。そこで休憩できる」
トグサが迷っている間に、長門が新たな提案をしてくる。
「映画館か。……ま、怪我人もいることだし、休憩するにはもってこいかもな。いざって時の避難口も多そうだしよ」
「怪我人って……そういえば、あんたも大怪我してるじゃないか」
トグサが指差した先は、次元の脇腹。
布を巻いても尚血が滲むそこは、ソロモンに食らわされた一撃による傷のある場所。
決して軽傷とはいえないが、次元はそれを隠すように笑う。
「これか? ま、かすり傷だ、たいしたことはねぇ。……んじゃ、あんた方は大人しく映画館にでもとっとと行って体力を回復させてな」
「……あんたはどうするんだ?」
「俺か? 俺は少しばかり用事が出来たわ」
「用事……だと?」
次元は頷く。
「ああ。相棒の顔を一度拝んでやりたくてな。……こんなところで死んじまった馬鹿な相棒の顔をな」

30 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:20:27 ID:wrmRiHYV
次元の言葉に真っ先に反応したのはついさっきまで泣いていたハルヒだった。
「拝むって……あんたもしかして……」
「お前さんのその体じゃ、こっから橋まで行くのも大変だろ。……だから、俺が代わりに行って、あいつを弔ってきてやるよ」
「……そう。なら、あんたに任せるわ。相棒のあんたが行った方があいつも喜ぶだろうし」
「ま、俺より不二子や他の女が行った方が喜びそうだけどな、あいつの場合」
――と、おどけて見せるとハルヒも「そうね」とその泣きはらした顔に笑みを浮かべる。
だが、その言葉に驚いたのはトグサだった。
「――本気か? 怪我してるっていうのにそんな……」
「だから言ったろ、かすり傷だって。それに俺は小次郎に兵って認められていてね。あんたらと行動してたら迷惑を掛けることになる」
確かに次元が小次郎から狙われているとするならば、連れて北上することは危険だ。
ならば、この措置もやむなしか……。
そう悟ると、彼はおもむろにメモ用紙を取り出し何かを走り書きして、それを次元へと手渡した。
「……これは?」
「首輪やこのゲーム自体に対する俺の考えをまとめた考察だ。道中、もしタチコマという名の青い蜘蛛みたいな戦車を見つけたらこれを渡して欲しい」
「蜘蛛みたいな戦車……ねぇ」
訝しげにする次元であったが、腕が槍になる人間や意思を持った人形とつい先程まで一緒だったことを思い出し、ありえない話だと考える。
「それとセラスという金髪の婦警がいたら、俺が無事だと伝えてやってくれ」
「あぁ、了解了解」
するとハルヒやアルルゥも身を乗り出して、次元に声を掛ける。
「――あ、それならあたしもキョンっていうぱっとしない男子学生がいたら、『勝手に死んだら許さない!』って――」
「――アルルゥもおねーちゃん達に無事だって――」
「あぁ、待った待った!! 俺は電話交換手でも郵便屋でもないんだ、そんな一度に伝えられても覚えきれないぞ!」
矢継ぎ早に伝言を伝えられ、流石の次元も戸惑ってしまう。
次元はひとまずメモ用紙を取り出すとそれに順にトグサらが口にした知人の名前をメモしてゆく。
そして、それが終わると彼はトラックの荷台にいたままになっていた少年に声を掛ける。
「よぉ、ボウズ。お前さんはいいのか? 何か伝えておくことがあるなら聞いておくぞ」
そんな次元の声に顔を上げると、ヤマトは力無い声で呟く。
「……八神太一っていうゴーグルつけてる俺と同い年くらいの子供がいるので、見つけたら俺が無事だってことを伝えてください」
「八神太一ねぇ……了解了解」
メモを一通り終え、次元はそのメモをポケットへと突っ込む。
そして、それと同時に別のメモ用紙を二枚、トグサに手渡した。
「……こいつは俺が実際に禁止エリアに入って調べた情報だ。……なんかの形で役立ててくれや」
「ああ、そうさせてもらう」
すると、メモを見ながら、トグサは気付いたように問う。
「――そういえば、お前の知り合いは誰かいないのか?」
「いるにはいる……峰不二子っちゅう女がな。だけど気をつけろ、あいつは心の底で何考えてるか分からないから」
「あぁ、承知した」
「――んじゃ、日が完全に沈まないうちに、とっとと出発するかね」
大きく伸びをして、次元は道路の南方を見据える。
「そんじゃ、ガキ共は任せたぜ、トグサ」
「ああ。そっちも無事でいろよ」
「――分かってるさ。……そんじゃ、また会えたらな」
次元がトラックから離れ、南へと――橋へと向かって歩き出す。
すると、ハルヒがトラックから身を乗り出して次元へと叫ぶ。
「次元――!! ルパンを頼んだわよ!!」
夕陽が差し、黒一色の影となった男の背中はその声を聞いて、片手を挙げて答えた。

その男の背中はハルヒ達にはとても大きく見えた――。

31 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:22:38 ID:wrmRiHYV
【C-4/幹線道路上  一日目/夕方(放送近し)】

【次元大介@ルパン三世】
[状態]:疲労(小)、ショック、わき腹にケガ(激しく動き過ぎると大出血の恐れあり・一応手当て済み)
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ、454カスール カスタムオート(弾:7/7)@ヘルシング  ズボンとの間に挟んであります
[道具]:支給品一式4人分(水食料二食分消費)、13mm爆裂鉄鋼弾(34発) 、レイピア、
    蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、双眼鏡(蒼星石用)、
    ハリセン、望遠鏡、ボロボロの拡声器(運用に問題なし) 、蒼星石のローザミスティカ
    トグサの考察メモ、トラック組の知人の名前宛てのメッセージを書いたメモ
[思考・状況]
1:周囲を警戒しながらD-3の橋へ行き、ルパンを弔う。
2:トグサらの知り合いを見つけたら伝言を伝える。
3:殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す
4:圭一と蒼星石の知り合いを探す。蒼星石の遺体については慎重に取り扱う。
5:怪我の治療ができる場所(できれば病院以外)を探す。
6:ギガゾンビを殺し、ゲームから脱出する。
7:仲間を見つけられたら、首輪を回収する。
基本:こちらから戦闘する気はないが、向かってくる相手には容赦しない
[備考]
情報交換により、ピンク髪に甲冑の弓使い(セイバー)、赤いコスプレ東洋人少女(カレイドルビー)、
羽根の生えた黒い人形(水銀燈)、及び金髪青服の剣士(セイバー)を危険人物と認識しました。


【トラック組(SOS団) 運転:トグサ】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:自分の不甲斐なさへの怒り
[装備]:73式小型トラック(運転席)
    :S&W M19(残弾1/6)、暗視ゴーグル(望遠機能付き)/刺身包丁/ナイフ×10本/フォーク×10本
[道具]:デイバッグ/支給品一式/警察手帳(元々持参していた物)/技術手袋(残り17回)@ドラえもん
    首輪の情報等が書かれたメモ2枚
[思考]:
基本:子供達を護りつつ、脱出の手立てを模索
1、進路を北へ。目指すは映画館。
2、情報および協力者の収集、情報端末の入手。
3、タチコマ及び光、エルルゥ、八神太一の捜索。
[備考]
風・次元と探している参加者について情報交換しました。
情報交換により佐々木小次郎という名の侍を危険人物と認識しました。

【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
[状態]:人を殺した罪を背負っていく覚悟、重度の疲労、右腕上腕に打撲(ほぼ完治)、右肩に裂傷(手当て済)、SOS団特別団員認定
[装備]:クロスボウ、スコップ(元トラックのドア)、73式小型トラック(荷台)
[道具]:支給品一式、ハーモニカ@デジモンアドベンチャー、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、
    :クローンリキッドごくう@ドラえもん(残り3回)、真紅のベヘリット@ベルセルク、ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
[思考・状況]
1、ぶりぶりざえもん…………
2、ハルヒとアルルゥにグレーテルのことを説明。
3、八神太一、長門有希の友人との合流。
基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。
[備考]
ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。
ぶりぶりざえもんは死亡したと思い込んでいます。

32 :孤独な笑みを夕陽にさらして ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:24:05 ID:wrmRiHYV
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に重度の打撲(意識は回復。だがまだ無理な運動は禁物)、左上腕に負傷(ほぼ完治)
    心の整理はほぼ完了、回復直後による疲労感
[装備]:73式小型トラック(後部座席)
[道具]:支給品一式、着せ替えカメラ(残り19回)@ドラえもん、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
[思考・状況]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームからの脱出。
1、ひとまず映画館に到着したら作戦会議
[備考]
腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:左腕骨折(添え木による処置が施されている)、思考にノイズ(活性化中?)、SOS団正規団員
[装備]:73式小型トラック(後部座席)
[道具]:デイバッグ/支給品一式/タヌ機(1回使用可能)
[思考・状況]:
1、涼宮ハルヒの安全を最優先。
2、小次郎に目を付けられないように注意する
[備考]
癒しの風による回復力促進に伴い、添木等の措置をして安静にしていれば半日程度で骨折は完治すると思われます。

【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:右肩・左足に打撲(ほぼ完治)、SOS団特別団員認定
[装備]:ハクオロの鉄扇@うたわれるもの、ハルヒデザインのメイド服、73式小型トラック(後部座席)
[道具]:無し
[思考・状況]
1、トグサ達についていく

[共通思考]:映画館で休息をとる。佐々木小次郎を最優先に警戒。
[共同アイテム]:おにぎり弁当のゴミ(後部座席に置いてあります)
      RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)、マウンテンバイク (荷台に置いてあります)

33 : ◆lbhhgwAtQE :2007/02/13(火) 01:54:07 ID:wrmRiHYV
訂正
>>30
誤:訝しげにする次元であったが、腕が槍になる人間や意思を持った人形とつい先程まで一緒だったことを思い出し、ありえない話だと考える。

正:訝しげにする次元であったが、腕が槍になる人間や意思を持った人形とつい先程まで一緒だったことを思い出し、ありえない話ではないと考える。

>>31
誤:ピンク髪に甲冑の弓使い(セイバー)

正:ピンク髪に甲冑の弓使い(シグナム)


34 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:39:16 ID:4RCwWA7u
夕闇に支配されつつある市街に、二本の足で地を蹴る小さな豚の姿があった。
その豚、ぶりぶりざえもんの影は、長く伸びている。
彼の進行方向は、南だ。
豚は、石田ヤマトと合流すべく、つい先ほどまで病院を目指していた。
だが、地を揺るがしそうなほどの轟音が響いてきたことをきっかけに、ぶりぶりざえもんの駆ける方角は変わっていた。

少し前までのぶりぶりざえもんならば、鼓膜が破れそうな激音があれば、そこから背を向けていただろう。
だがヤマトの友情を受け、真の意味で「救いのヒーロー」の心を宿した彼に、音から逃げ出すという選択肢は存在しなかった。
あの轟音の渦中に、救いを求める者がいる。
そう直感したぶりぶりざえもんは、腹の鳴き声を無視して走っていた。
豚の蹄がアスファルトを叩く。
その度に、救いのヒーローの小さな体は前へと跳ぶ。
真っ赤な夕焼けが、何故かぶりぶりざえもんを焦らせていた。
だから、ぶりぶりざえもんはひた走る。真っ直ぐに音のした方へ。

そして、見つける。
全身を水で濡らし、傷だらけで、おぼつかない足取りの、たった一人の男を。
ボロボロになり、満身創痍といった形容が余りにも似合ってしまう男を。

そんな状態になりながら、それでも確かに歩いている、カズマという名の男を。

「おい、大丈夫か!」
ぶりぶりざえもんは、思わず声を掛けた。返答を待つことなく、急ぎ駆け寄る。
すると、カズマがだるそうに顔を動かした。その左目が、ぶりぶりざえもんの姿を捉える。
「……タヌキの次はブタかよ」
ぽつりと呟いた男の足元まで辿り着き、ぶりぶりざえもんはようやく走る速度を緩めた。
だがカズマは、ぶりぶりざえもんからすぐに視線を外す。彼はまるで重い荷物を背負っているかのような足取りで、ただ歩いていた。
いくらカズマの歩みが遅いとはいえ、ぶりぶりざえもんとは歩幅が違いすぎる。
置いていかれないよう、ぶりぶりざえもんは早足でカズマに並ぶ。
「何があった? 救いのヒーローであるこの私に話してみろ」
カズマを、見上げる。彼の顔は前だけを向いていた。
横顔は夕日に照らされていて、その表情を窺い知ることはできない。
足音が、二つ分。
溶けては現れ、生まれては無くなる。
そうやって音の間断が、繰り返される。
少し前に、余りに大きな音を聞いたせいか、やけに静かだとぶりぶりざえもんは思う。
「喧嘩だ。とびっきり派手な、喧嘩だった」
消えた足音をなぞるように、カズマが呟いた。
精一杯の呟きのようなその声も、簡単に消えていってしまう。
まるで、夕闇に吸い込まれてしまったかのように。

35 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:41:22 ID:4RCwWA7u
◆◆

「太一くん! 早く、早く治療しなきゃ!」
「本当に大丈夫だって。俺より、カズマさんとヴィータの様子を……」
慌てふためくドラえもんに、八神太一が必死で笑顔を向ける。
しかしその笑みは、どう見ても大丈夫なものではない。
その証拠に、太一の顔からは赤みが薄れていた。
その痛々しい太一の姿は、ますますドラえもんから冷静さを奪っていく。
「大丈夫なわけないよ! そんなに血が出てるんだからっ!」
ドラえもんは四次元デイバックに手を突っ込み、中身を次々と取り出しては放り投げていく。
地図、コンパス、ペットボトル、筆記用具、名簿、ランタン、食料。
その全てがあたりに散らばったとき、デイバックの中の手応えがなくなったことに気付く。
だからドラえもんは、もう一つのデイバックに手を入れようとする。
その手が、そっと止められた。太一の小さな左手が、ドラえもんの腕を掴んでいた。
思わず太一の顔を見る。
太一は、ゆっくりと首を横に振っていた。
表情は変わらず微笑んでいるのに、血色はますます悪くなったような、そんな気がして。
ドラえもんは、自分の視界が急激に滲んでいくのを感じた。
泣いちゃダメだと、言い聞かせる。太一が笑っているのに、泣くわけにはいかないと言い聞かせる。
「太一くん……」
涙を堪えて呼びかけたとき、力が抜けたのか、太一が寄りかかってきた。
その体を、ドラえもんはそっと抱きしめる。そうして、ドラえもんは感じた。
太一の体温を、拍動を、呼吸を。
生きようとする太一を、ドラえもんは感じ取る。
死なせるわけにはいかない。こうやって、前へと進もうとしている少年を、死なせるわけにはいかない。
だから、ドラえもんは太一を背負う。その軽さが、どうしようもなく不安だった。
「ドラえもん……?」
太一の呼び声に答えるように、ドラえもんは少し振り返って、笑う。
太一に負けないよう、一生懸命笑う。
「もう少しの辛抱だよ、太一くん。ぼくが絶対、助けてあげるからね……!」
そう告げて、ドラえもんは駆け出す。
命の聖火を、消さないように。真っ直ぐ、病院を目指して。

◆◆

俺、誰かに迷惑かけてばっかりだ。
ドラえもんの背中に身を預けた太一の胸に浮かんできたのは、そんな自己嫌悪だった。
この世界が、ただのデータだと思って人を殺した。そのせいで、悲しむ人を作ってしまった。
安易な思い込みで、とりかえしのつかないことをしてしまった。
太一はその罪を認め、それを必死で償おうとしている。その意志に曇りも翳りもない。
それなのに、と太一は思う。思ってしまう。
もっと何か出来ることがあったんじゃないか、と。
力があれば、素子さんや真紅は死なずに済んだんじゃないか、と。
戦うことができたなら、カズマさんやヴィータに任せっきりにならなかったんじゃないか、と。
俺が強かったなら、こうやってドラえもんに迷惑をかけなかったんじゃないか、と。
考えれば考えるほど、泣き出したくなる。右手の痛みと心の痛みが、太一を強く責め苛む。
だから、太一は歯を食いしばる。心を折らないように、強くあろうとする。

36 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:43:50 ID:4RCwWA7u
泣いちゃ駄目だ。
辛くても、絶対に泣いちゃ駄目だ。
多くの人が、自分のために戦ってくれたし、助けてくれた。
泣くことはその人たちに失礼だ。
きっと、泣いてもらうために、助けてくれたわけじゃないのだから。
だから。
泣くもんか。絶対に泣くもんか。
湧き上がってくる自己嫌悪と涙を、そうやって塗りつぶそうとしていたときだ。
「……太一くん。ごめんね」
ドラえもんの声が、太一へと届いてきた。
「なんで、ドラえもんが謝るんだ?」
純粋に分からなかった。
太一自身がドラえもんに謝ることはあっても、謝られるような心当たりが太一にはなかったのだから。
「ぼくがもっとしっかりしてれば、太一くんが怪我することもなかったんだ……」
泣きそうなドラえもんの声が、返ってくる。
ドラえもんは振り向かない。しかし、その表情を想像することは難しくなかった。
「泣くなよ、ドラえもん。俺はホントに大丈夫だから」
ドラえもんに泣いて欲しくなくて、太一はそう告げる。
友達が泣いているところなんて見たくない。そんなの、絶対に見たくなかった。
「でも……」
言いかけて、ドラえもんが口を噤む。それと同時に、足も止まった。
疑問の声を放とうとして、太一は気付く。ドラえもんが、ただ一点を見つめていることに。
つられるように、太一もそちらを見る。
そこには、全身を引きずるようにして歩く男の姿があった。
ボロボロでも、彼は生きている。その事実が、太一を少し元気付けた。
だから気付けば、太一は彼の名前を呼んでいた。
「カズマさん!」
「カズマくん!」
太一の呼び声と、ドラえもんの呼び声が重なる。
すると、カズマはゆっくりと太一たちの方を向き、少しだけ笑みを見せて、答えた。
「……あいよ」

◆◆

歩くことさえも辛く、何度も倒れそうになったカズマに、ドラえもんが駆け寄ってくる。
二人の無事を確認したとき、カズマは体から力が抜けていくのを感じた。
倒れる。
そう分かっていても、止めることは出来ない。
重力に引かれ、仰向けに倒れたカズマは空を見る。
目が痛くなるほどに紅い、夕焼け空を。
「おい、どうした!?」
ずっと付いてきていた豚が、カズマを揺さぶる。
それを振り払ってやろうとしたとき、カズマの視界に影が差した。
ドラえもんが夕日を遮り、今にも泣き出しそうな顔で、倒れるカズマを覗き込んでいた。
「カズマくん! 大丈夫!?」
大丈夫、とは言いがたい。だが、自身にのしかかる痛みに逆らうように、彼は頷いた。
「ああ、大丈夫だ。それより――」
カズマは、ドラえもんの背中に目を向ける。
すると、右手首から先を失い、血液を流す太一と目が合った。
「俺も、大丈夫だから」
微笑を作り、顔に貼り付けて、太一はそう口にした。
カズマは思う。
どう見ても大丈夫じゃねぇだろうが、と。
そのことを口にしかけたとき、彼より先にドラえもんが口を開いた。
「血が、止まらないんだ。止血してあげたいんだけど、何か布とか持ってないかなぁ……?」
心配そうなドラえもんの声。それを聞きながら、カズマは思い出す。
刻んだ名前を。彼女の意志を。

37 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:46:07 ID:4RCwWA7u
だからカズマは、仰向けのまま、デイバックに手を入れた。
柔らかな手応えを握り締めながら、カズマは胸中で告げる。ここにはいない、それの持ち主へと。
――ごめんな、わりぃ、すまねぇ、許せ。
そして、緑色の布を取り出す。
由詫かなみの形見であるリボンを、握り締めるように取り出し、ドラえもんに差し出した。
「ありがとう、カズマくん!」
「……別に。お前らのためじゃねぇよ」
その呟きを聞いていないのか、ドラえもんは太一を降ろす。
「太一くん、じっとしててね」
太一の止血点に、かなみのリボンがくくりつけられる。
その作業を手早く終えると、ドラえもんは再び太一を背負い上げた。
「これで血は止まると思うけど、病院へ行くからね。」
「でも……」
「いいから行くの!」
太一の言葉を遮り、ドラえもんが走り出そうとする。
「おい、待て」
その動きを止めたのは、カズマではなく、ぶりぶりざえもんの呼び声だった。
スタートダッシュをくじかれたドラえもんは、非難するようにぶりぶりざえもんを見やる。
「何だよ! ぼくは急いでるんだぞ!」
その叫びを完全に無視するかのように、ぶりぶりざえもんは答えない。
大きさの違う彼の目は、ドラえもんではなく、背負われている少年に向けられていた。
「お前、八神太一か?」
「ああ、そうだけど……?」
語尾上がりの太一の声を聞くと、ぶりぶりざえもんは腕を組む。
そして何かを思い出したように、二、三度頷いた。
「太一。お前の怪我、もしかしたらなんとかできるかもしれん」
「ホント!?」
太一より早く、ドラえもんが反応する。
「ああ。あれは、私が吐き気に苦しんでいたときだ。
 共に行動していた奴らの怪我を癒し、去っていった者がいた。そいつにまた会えれば――」
ふと、ぶりぶりざえもんは押し黙る。太一の右腕を見て、そして彼は俯いた。
「ただ、失った手が戻ってくるかどうかは分からんがな」
場に、重い沈黙が広がる。沈んでいく太陽が、重みを与えているように。
その重さは心や体に乗り移り、動きを阻害しようとする。
それが堪らなく辛くて、嫌で、カズマは口を開いた。
「……グダグダ考えていたって何も始まらねぇんだ。行こうぜ。そいつを捜しによ」

38 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:48:39 ID:4RCwWA7u
起き上がる。
体が悲鳴を上げるが、意識でそれを弾き飛ばす。
痛みと疲れが意識を蝕もうとするが、意地でそれを吹き飛ばす。
「いや、お前たちは病院で待っていろ。私が必ず、そいつを連れてきてやる」
「そんなの危険だ! お前、バックも何も持ってないじゃないか!」
声を荒げる太一に、ぶりぶりざえもんは不敵な笑みを見せて、言う。
「大丈夫だ。なにせ私は、救いのヒーローなのだからな」
断定の口調だった。口元に浮かぶ笑みと相まって、言いようのない自信が見て取れる。
小さなその体とは対照的な自信を放つぶりぶりざえもんは、頼もしささえ醸し出していた。
だから誰も、ぶりぶりざえもんを止める言葉を紡げなかった。
「おい、豚。高町なのはってガキを見つけたら、そいつも連れて来い。必ずだ」
制止する代わりのように、カズマが言葉を投げかける。
すると、ぶりぶりざえもんは鼻を鳴らすと彼らに背を向けた。
「ふん、全く物を頼む態度がなっていないな。そんな奴には救い料を貰っても助けてはやらんのだが……まあいい。
 今の私は寛大だ。見つけたら連れてきてやろう。感謝しろ」
「あんだと? てめぇ、焼き豚にして食われてぇのか?」
凄むカズマから逃げるように、ぶりぶりざえもんは走り出す。そうやってカズマから少しだけ距離を取ると、ふと立ち止まった。
「もしも病院が禁止エリアになったら、北へ向かえ。ヤマトたちが、そっちへ向かっているはずだ」
「ヤマトが!?」
思わず叫ぶ太一に、ぶりぶりざえもんは背中を向けたまま大きく首を縦に振る。
それに合わせ、東へと伸びる影も動いた。
「お前、何者なんだ? ヤマトのこと、知ってるのか?」
痛みを忘れたような太一の声に、ぶりぶりざえもんは首だけで振り返る。
「私は救いのヒーロー、ぶりぶりざえもん。そして」
ぶりぶりざえもんは言う。西からの斜光を浴びながら、高らかに、堂々と。

「――ヤマトの、仲間だ」

◆◆

ぶりぶりざえもんを見送り、カズマたちは病院へと移動を開始していた。
止血できたことで少し安堵したのか、カズマに気を遣ってか、ドラえもんは先のような爆走を行ってはいなかった。
「よかったね、太一くん。友達の手がかりが見つかってさ」
「ああ。だけど……」
ヤマトの手がかりを見つけたのに、太一の返答は重かった。
カズマは横目で太一を見る。すると、同じように太一もカズマを見ていた。
「何だよ?」
少し鬱陶しそうにカズマが尋ねると、太一は申し訳なさそうに呟きを漏らす。
「カズマさん、ごめん。なのはって子、捜しに行かなきゃなんないのに……」
「あぁ、構わねーよ。兄貴も一緒にいるだろうし、大丈夫だろ。それにな」
カズマは、つい先ほど刻んだ少女を思い出す。
彼女の名前を、意志を、忘れまいとするかのように。
「あいつに、頼まれちまったからな。お前らから離れるわけにはいかねぇんだよ」
「あいつって、ヴィータちゃんだよね? あの子は……?」
尋ねてきたドラえもんに答えるよう、カズマはウサギの人形を取り出す。
ヴィータの帽子に付いていたそのウサギを見せると、二人は目を見開いた。
「逝ったよ。逝っちまった」
出来るだけ何でもないことのように、カズマは伝える。
それが功を奏したのか、太一もドラえもんも、泣き声を上げることはなかった。
カズマはぼんやりと、太一の様子を見る。視線の先、太一は強く唇を噛み結んで固く目を閉ざしていた。
その顔をドラえもんの頭に押し付け、わなないていた。

それでも、太一は涙を流していなかった。

39 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:51:15 ID:4RCwWA7u
その姿が、カズマをイラつかせた。
腕を斬られて、血を流して、仲間を失って。
痛いに決まっている。辛いに決まっている。悲しいに決まっている。
それなのに、その全てを呑み込み、耐えて、我慢して。
そうする方が、ずっと苦しいというのに。

「おい、お前。何を、我慢してる?」
だから、カズマは口を開いていた。太一とドラえもんの視線がカズマに集中するが、構わない。
答えを待たず、太一を睨むようにして、カズマは続ける。
荒々しく、しかし、力強く伝えるように。

「お前は今、泣いていいッ! 泣いて、いいんだ……ッ!!」

呆然として、太一はカズマの言葉を聞いていた。
カズマへと向けられていた太一の表情は、呆けたようなものだ。
しかし、それはすぐにくしゃりと歪んでいく。
カズマの言葉が、徐々に染み込んでいったかのように。
太一の瞳に、みるみる涙が溜まっていく。
あっという間に許容量を超えた涙は、瞬き一つの後に一気にあふれ出した。
それに連なり、彼の口から声が漏れる。悲しみで満ちた声が、津波のように流れ出ていく。
「太一、くん……」
呼びかけるドラえもんにも、涙は伝染していた。
もともとの太い声は悲しみで彩られ、大きな目からは液体が零れ落ちていた。

二人にそれ以上声をかけることもなく、カズマの目はぼんやりと太一たちに向けられていた。
だが、カズマの意識が向けられるのは太一やドラえもんではない。
カズマは、記憶を見ていた。

それは、かなみとの何気ない日常風景。
それは、君島と共にこなした仕事。
それは、霧消していくヴィータの姿。

そういった、もう話すことの出来ない人物たちとの記憶で、カズマの意識は埋め尽くされていく。

そして。

――カズマの左目から、一筋の雫が、伝い落ちた。

40 :Infection of tears ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 18:53:23 ID:4RCwWA7u
【D-2とE-2の境界 1日目・夕方(放送前)】
方針:病院を目指し、太一の治療をしつつぶりぶりざえもんを待つ。
    そこが禁止エリアとなった場合、石田ヤマトを探し北へ。

【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右手首より先喪失(止血処置済み) 失血により貧血気味 ドラえもんに背負われている
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:治療が必要だと思うが、一刻も早くヤマトと合流したい。
2:ぶりぶりざえもん、ルイズが気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※アヴァロンによる自然治癒効果に気付いていません。
※第一回放送の禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
1:病院に着いたら、ぶりぶりざえもんを待ちながら太一の怪我の治療に役立ちそうなものを探す。
2:ヤマトとの合流
3:のび太、ジャイアン、なのはを捜す
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。

【カズマ@スクライド】
[状態]:疲労大、全身大程度の負傷(打身・裂傷・火傷)
    気絶一歩手前だが気力で抑え込んでいる。いつ倒れてもおかしくはない。
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
    のろいウザギ@魔法少女リリカルなのはA's、支給品一式
    鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード
[思考・状況]
1:病院に着いたら、とりあえず休みたい
2:なのはが心配というわけではないが、ヴィータの名前を刻んだこともあるし子供とタヌキを守る。
3:かなみと鶴屋を殺した奴とか劉鳳とかギガゾンビとか甲冑女とかもう全員まとめてぶっ飛ばす。


【D-3南東 1日目・夕方(放送直前)】
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:頭部にたんこぶ、ヤマトとの友情の芽生え、正義に対する目覚め
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:鳳凰寺風、高町なのはを捜して病院(太一たちのもと)へ連れて行く
2:ヤマトたちとの合流。
3:救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。
基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。


※E-3に、取り乱したドラえもんがばら撒いた支給品一式(一人分)が散らばっています。

41 :時は戻せなくても ◆2kGkudiwr6 :2007/02/13(火) 19:33:44 ID:pYH9BFuP

乗り物を走らせるというコトは、それだけで多大な労力を必要とする。動力がなんにせよ、だ。
わざわざそこまで再現する必要もないし利益もない、そう判断していた。

しかし、それは間違いだったと目の前の光景が教えている。

装甲で固めた列車が轟音と共に、目前を走り抜けていく。
後ろで束ねた髪が吹き飛ばされそうになるのを押さえながら、線路の脇に私は立っていた。
どうやら予想とは違い、動いていたようだ。
わざわざこんなことまで作っている辺り、ギガゾンビは余程神経質なのか、それとも暇人なのか。

「……もしくは、よほど強大な力があるのか」

そこまで考えて頭を振る。
いくら考えても答えは出ないし意味はない。今考えるべきことは生き残るためのこと。
列車はこの駅から発車した。もし列車目当てに参加者が駅に集まっていたとしても、それは列車に乗って去ったはず。
駅の内部を探るとすれば今のうちだろう。

そう決めて、私は駅へ歩き出した。
さっきまで戦っていた相手のことは考えなかった。
あれはもう自分の敵であり、私はあれの敵。気遣う理由などない。

――あれはきっと敵に情けをかけられることを、屈辱だと思うだろうから。



42 :時は戻せなくても ◆2kGkudiwr6 :2007/02/13(火) 19:34:46 ID:pYH9BFuP
……駅前はひどい荒れ様だった。倒壊したとおぼしき建物に何かの爆発の痕。そして死体。
もっともおかしな結果ではない。むしろ当然の結果だ。
それなりに参加者が集まるであろう場所だ、戦火の火種があって当たり前だろう。

「……探索は手早く行うべきだな」

そう呟いて構内に入る。
無論まだ参加者がいる、もしくは集まってくる可能性はある。
しかし、それを考慮した上で私は駅の調査を行うことに決めた。
あらかじめ調査しておけば、状況次第で逆に人が集まるという事を利用して待ち伏せや罠をかけることも可能だ。
虎穴に入らずんば虎子を得ず――もっとも、無謀と勇気の違いはしっかりと履き違えるべきだが。
クラールヴィントに警戒させながら内部を探索すること十五分ほど。
だいたいのことは把握できた。

「まず、発車は四時間おき。速度はそれほどでもない。
 駅自体はそれほど大きな部類ではない……まあ、無人駅としては大きいほうか」

――そして、隠れる場所はそれなりにある。
おそらく、もう一つある駅も同じか、大して変わらない構造だろう。
待ち伏せによる奇襲にはそれなりに適していると言える。
ただ、それなりに消耗している今はまだ行うべきではないが……

「……む?」

そこまで考えた所で、私は眉を顰めた。
クラールヴィントに反応がある。生命反応ではない。むしろアーティファクトが発するものに近い。
発生源は倒れている赤毛の少年。当然、とうに息絶えている。
調べてみれば、正体はあっさりと見つかった。

「――ペンダント、だな」

ポケットから見つかったのは赤いハートのペンダント。
ただし、ただのペンダントではない。魔力を貯蔵するための物のようだ。
本来の許容量からは相当減ってしまっているようだが、それでも魔力は残っている。
ベルカ式のカートリッジに直して一発分、といった所だろうか。
この状況ではありがたい拾い物だ。切り札になる。それにこのデザイン――
そこまで考えたところで、ふと笑っていた。

43 :時は戻せなくても ◆2kGkudiwr6 :2007/02/13(火) 19:35:34 ID:pYH9BFuP

「死体から物さえ漁るか。大した身分だ」

嘲笑う対象は自らの行い。
死体から物を漁ると言うのは、騎士ではなく賊が生業とすることに違いあるまい。
何より。死者を冒涜するような真似をした挙句、女の子に、
――主はやてに似合いそうだなどと考えた自分は馬鹿にしか思えない。

「…………」

黙したままクラールヴィントに魔力を流す。目的は癒し。
幸い傷はどれも浅い。自分でも十分に治すことが可能だ。
もちろん魔力はそれなりに消費してしまうが……予備の魔力タンクとなる物を手に入れた今は気兼ねする必要はない。
ひとまずはペンダントの魔力を使わずに治し、誰かが来たらこのペンダントから魔力を吸い上げ完全な状態にして応戦、と言ったところか。
……とはいえ、できれば温存したいのも確かだ。

「……列車が走っているとなれば、ここに留まるのは危険だな」

向こうの駅から何者かが列車に乗ってくる可能性もある。
待ち伏せをするには消耗が大きすぎる。一旦駅を出て、近くの民家で眠ることに決めた。
しばらく歩き、駅の出口からは死角となっている家へ入る。
そのまま入り口に家具を置いて即席のバリケードを作った後、クラールヴィントで結界を展開。
結界とは言うものの、封鎖結界のように周りとこの家を遮断するものではない。
この家に侵入しようとする者がいた場合知らせるという簡易的なものだ。
魔力消費も少なく、放って置いてもクラールヴィントが維持してくれる程度のもの。
置いてあった目覚まし時計を放送前の時刻に合わせて、私は眠りに付いた。



44 :時は戻せなくても ◆2kGkudiwr6 :2007/02/13(火) 19:36:22 ID:pYH9BFuP
かけておいた目覚まし時計の音に目が覚めた。窓から入ってくる夕日が眩しい。

「……もう五時半か」

目を擦りながら状況を確認する。
誰かが入ろうとした形跡はない。バリケードを作った意味もなかったらしい。まあ、無いほうがいいのだが。
そのままデイパックから食料を取り出した。睡眠の次は食事。
味わう気もないし、味わえるような食事ではなかった。
孤独で、味も無く、あるのは栄養補給という最低限のものだけ。

――かつてのような食卓は、ここにはない。

口に入れたコッペパンを噛み締める。
……必要以上に力が入ったのは否定できない。
食事を終え、言葉もなくその場から立ち上がるまでに数分も掛からない。
そのまま家を歩き回り、目的の部屋を見つけた。
騎士甲冑を解除し、服を脱いでいく。髪を解き、長髪を重力のままに流す。
一糸纏わぬ姿になったあと扉を開け、温度調節をした後コルクを捻る。
同時にシャワーヘッドから出てきたのは、冷たい水。
どうやら、ガスの通りが悪いらしい。程よい熱さになるまで時間が掛かった。

「…………」

逆に恐ろしくなるほど静かだ。するのは自分がシャワーを浴びる音だけ。
壁という障害物があることを抜きにしても、戦いの気配は全くない。いや、人の気配すらしない。
代わりに水蒸気が充満する。髪から、肩から、腿から、水が流れ落ちていく。
前にヴィータにからかわれた事もある、豊満な胸から水滴が落ちる。
汗と――返り血と、自分の業を洗い流せるような錯覚。
しかしそれはあくまで錯覚に過ぎない。これはこんな水では洗い流せない。

――過去は、決して簡単に逃げ出せるようなものではない。決して。

窓から差し込む夕日に肢体を照らされながら、シャワーを止めた。
体を拭って服を着、再び騎士甲冑を具現化する。そのままリビングに戻ってソファに座り込んだ。
当分、ここから動くつもりはない。ペンダントの魔力も温存しておきたい。
18:30までひとまず休み、まだ完全に回復したわけではない魔力の自然回復を待つ。
その後は駅に行き、列車に乗って中心部を目指す。
後は状況次第だ。駅から出て積極的に狩るか、駅で待ち伏せを行うか。
考えるのはそんなことだけだ。

――余計なことは考えない。

敵対することになったヴィータのことなど考えない。考えても意味がない。
時は戻せない。自分は独りで戦い抜く、この事象は決定された。どう足掻いてもこれは変えられない。

――だから、せめて。未来で在りし姿を取り戻せるように願う。

そのためには。
下らない情など、邪魔だ。
だから、考えない。考えては、いけない。



考えないように意識すると言うことは考えるのと同義だと――そんな声も、聞こえた。

45 : ◆2kGkudiwr6 :2007/02/13(火) 19:37:15 ID:pYH9BFuP
【F-1/駅周辺の民家/夕方】
【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:魔力消費小/騎士甲冑装備
[装備]:ルルゥの斧@BLOOD+
    クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's
    鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢20本)
    コルトガバメント(残弾7/7)
    凛のペンダント(残り魔力カートリッジ一発分)@Fate/stay night
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、スタングレネード×4
    ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
[思考・状況]
1 :駅に行って列車に乗り、中心部へ。
2 :無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す。
基本:自分の安全=生き残ることを最優先。
最終:優勝して願いを叶える。
[備考]
※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。
 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」
 という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。
※第二回放送を聞き逃しました。
※士郎の遺体からペンダントを回収しました。

46 :Infection of tears:状態表修正願い ◆7jHdbD/oU2 :2007/02/13(火) 20:41:13 ID:4RCwWA7u
>>40
八神太一の状態表の、道具欄に追加をお願いします。

×[道具]:支給品一式

○[道具]:支給品一式、かなみのリボン@スクライド(止血に使用中)

47 :決闘―A fight for a friend.― ◆fOi8gMcFwI :2007/02/14(水) 01:05:32 ID:nNAgyCLH
誰も居なかった。
鳳凰寺風はE-4とF-8の捜索を行ったが、どちらも空振りに終わってしまった。
だけどF-8には、人が縛られたであろう痕跡のロープと、ロープの切断に使ったと思われるガラス瓶の欠片が残されていた。
きっと動けない人が居たのはF-8で、自分より一足早く誰かが救出してくれたのであろう。
もしくは自分自身の手で自力脱出を図ったのかもしれない。
そう信じて、約束のホテルへと風は足を進める。


◇◇◇


一人街を歩く。
ゆっくりと。
焦ることはない。
ルイズがホテルを破壊した頃に到着すればいいのだから。

…グリフィスはある光景を見て、足を止めた。
刀を持った少女が歩いていた。
若干特殊な形ではあったが、それでも十分だ。
グリフィスは少女に接触を試みる。



48 :決闘―A fight for a friend.― ◆fOi8gMcFwI :2007/02/14(水) 01:06:25 ID:nNAgyCLH
◇◇◇

「少しいいかな?」
「誰でしょうか?」
「私はグリフィスという者です。あなたは?」
「わたくしは鳳凰寺風と申します。それでわたくしに何か御用でしょうか?」
「いえ、ただ騎士として女性を守るのは当然と思いまして。あなたの剣、頂ければ私はあなたの剣となりあなたを守ります」

紳士的な口調でグリフィスは話しかける。
雰囲気から、彼女もルイズと同じような身分の者であるとは察しが着いたからである。
しかし、風はグリフィスの予想以上に勘が鋭かった。

「いいえ、お断りします。だってあなた…血のにおいがしますもの。そのような御方には、武器は差し上げられません」

風はそれだけいうと後ろを向けて歩き出した。
それでもグリフィスは食い下がる。

「待ってください。血のにおい?多分襲われた時に正当防衛で相手を傷つけた時にうけた返り血と思います。誤解ですよ」

グリフィスの言葉に、風はゆっくり振り返る。

「そうですか、本当に人を傷つけたんですね。嘘だったんですけど。血のにおいなんて」

笑顔でばっさり。グリフィスを言い訳を斬って捨てる。

「嘘なんて人が悪い。でもこれで…」
「ですが剣は渡せません。これはわたくしの物、信用できない人間には渡しません」

グリフィスの言葉を遮ると、風は後ろを向いて歩き出す。

「待ってください。話を聞いては頂けませんか?」

風は無視をして歩き続ける。
あなたには興味が無い、といわんばかりに。
その態度は、グリフィスの癇に障る態度だった。

「待てと言ってるだろ!」

グリフィスはロープを取り出し、それを投げる。

「本性を出しましたか」

風はゆっくり振り返ると、すぐに戦闘態勢にはいる。
左腕を突き出してロープに結ばせる。
そして、そのまま引っ張られるより早く刀でロープを両断した。

49 :決闘―A fight for a friend.― ◆fOi8gMcFwI :2007/02/14(水) 01:07:10 ID:nNAgyCLH
「わたくしは鳳凰寺風。あなたのような人には絶対に負けませんわ」
「…面白い。先ほどのルイズもそうだったが、お前も本当に面白い。ここは本当に素晴らしいところだ」
「ルイズ?あなたわたくし以外にも…」
「その通りだ。儀式を行えば簡単に狂った。今頃捨て駒としてホテルを壊滅させているだろう」
「狂わせた…そうですか。ではその御方も救わなければいけませんね。私の名誉にかけてでも」
「残念だが無理だ。君はここで俺に殺されるか、服従するか。どちらか以外の選択肢は無い」
「それなら…第三の選択をさせてもらいます!」

風は一気にグリフィスに詰め寄り、刀で横薙ぎの一閃を繰り出す。
グリフィスはそれをジャンプでかわす。
そのまま風に向けて引き金を引く、風はそれを後ろに飛んで避ける。
そして、果物ナイフを投げる。
グリフィスの回避は間に合わず、左手に鋭く突き刺さる。

「…強いな。その動き、時が違えば鷹の団として共に戦えたものを」

グリフィスは手に刺さったナイフを抜くとそのまま左手に持つ。

「残念ですがわたくしはあなたのような御方とは、どのような状況でも手を組みはしないと思います」

風は刀を、グリフィスは銃口とナイフをむける。
そこにちょうど、ギガゾンビの映像が映し出された。



50 :決闘―A fight for a friend.― ◆fOi8gMcFwI :2007/02/14(水) 01:08:40 ID:nNAgyCLH
【E-5 中部市街地 1日目 夕方(放送直前)】

【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康、強い正義感
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、 マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク
包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:光と合流して、東京へ帰る。
1:グリフィスさんを倒す(どうしようもない場合殺す。勝てそうに無ければ撤退)
2:1を終了後、ホテルへ急行してルイズさんの凶行を阻止する。(出来る限りルイズを救う。救う手段がなければ…)
3:消えたエルルゥさんが心配。
4:怪我人を見つけたら出来る範囲で助けます。
5:自分の武器を取り戻します。
6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。
[備考]

「癒しの風」について
風の魔法である「癒しの風」はいわゆる回復魔法です。
基本的に人間の自然治癒力を高める効果を持っており、傷や疲労の回復を促進します。
ただし、魔法により傷が完治するということはなく、あくまで回復の補助をするだけに留まります。
よって、切断された部位の接合や死者の蘇生は効果の範疇の外にあることになります。
また、病気や食中毒、疲労を回復することは不可能です。

また、発動には魔力と一定の時間を要し、対象が一箇所に固まっていた場合はそこにいた全員に効果があります。
消費した魔力は睡眠等の休憩で回復することができます。


【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:全身に軽い火傷  若干の苛立ち 左手に深い刺し傷
[装備]:マイクロUZI(残弾数38/50)、耐刃防護服、果物ナイフ
[道具]:ターザンロープ@ドラえもん(二割ほど切断されている) 、支給品一式×2(食料のみ三つ分)、ヘルメット
[思考・状況]
1:風から刀を奪う。
2:風が利用出来る様なら利用する。出来ない場合殺す。
3:ルイズが戻ってきた場合は殺害。これ以上駒として使うつもりはない。
4:手段を選ばず優勝する。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる。
5:キャスカを探して、協力させる。
6:ガッツ……

51 :へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ◆g3BDer9VZ6 :2007/02/14(水) 22:31:31 ID:9Nyx0m0O
「何人たりとも俺は止められない! そう、なぜならソレは俺だから! 地球最速宇宙最速銀河最速神をも越えたスピードを持つ俺に、制止がかかることなどありえなァーイッ!!」

F-8に侵入して約一時間が経過しただろうが。
ストレイト・クーガーとセラス・ヴィクトリアの捜索コンビはクーガーのアルター能力、『ラディカルグッドスピード(脚部限定)』の力を借り、入り組んだ森の中を縦横無尽に駆け回っていた。
当たり前だが、ラディカルグッドスピード(脚部限定)はクーガーの両足に取り付けられている。
園崎魅音をエスコートした時のような便利な乗り物、即ちカブ・クーガースペシャルは手元にはなく、移動手段は徒歩による走行しか残されていなかった。
ここで一つの疑問が出てくる。
クーガーが足にラディカルグッドスピード(脚部限定)を装着して走っているというのなら、相方のセラスはいったい何処にいったのだろうか。
その答えは、クーガーのすぐ後ろ。背中にあった。

「何故だ、何故誰も出てこない! まさか俺の速さに恐れをなして出て来れないというのか!? いやいやそんなはずはない! 
 速さというのは誰にとっても憧れ焦がれ羨望の眼差しを向けるべき対象のはずだ! シャイなのか? シャイなんだな!?
 よし分かった! ならばさらにスピィィィィドアァァァァァッップ!!」

傍目から見れば、彼が何をしたいのかは理解に苦しむところだろう。
F-8に取り残されているかもしれない参加者を捜し、セラスを背負った状態でエリア中を隈なく爆走していった。
しかし目に映るのは木木木木木、ひとっこ一人転がっちゃいない。
――全ては、意地悪な歯車の悪戯だった。
クーガーとセラスがF-8に辿り着き、ちょうど捜索を開始した時刻はまだ午後四時前。
その時点でならばまだ縛られ人であったゲイナー・サンガはF-8にいたのだが、クーガーは一つ、致命的なミスを犯していたのだ。
そのミスとは至極単純、それでいて馬鹿としか言いようがないつまらないもの。

クーガーがF-8と思って捜索していたそこはF-8ではなく、一つ上のF-7だったのだ。

何しろ、ホテルからここまでラディカルグッドスピードで直進を続けてきたのだ。
コンパスや地図で現在地を確かめるなんて気の利いたことを、この自称止まれない男がするはずもなく。
ただテンションの赴くままに、森林だから大体この辺だろうという理由で捜し続けた。
言い方は悪いかもしれないが、自分の速さに絶対の自信を持つクーガーは、走り回っていればそのうち出会うべき人間には出会うだろうと踏んでいたのだ、
結果として、その間にゲイナーを救出したフェイト等と擦れ違いになってしまったのだが。

52 :へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ◆g3BDer9VZ6 :2007/02/14(水) 22:34:16 ID:9Nyx0m0O
E-8から逸れて、現在は目的地であるF-8エリアをちゃんと捜索しているクーガー。
だが既に保護対象の姿はなく、それを知らないクーガーは次第に焦りすら感じ始めた。
そして、遂に一時間以上続いた爆走劇の幕が閉じられる。

『警告します。禁止区域に抵触しています。あと30秒以内に爆破します』

「けいこくぅ〜!? あと少しで首輪が爆発するだと!? あとたった30秒で、いや逆だ! あと30秒もあると考えるんだ!
 これはつまり俺に対する挑戦! あと30秒の内に捜し人を見つけ出し、首輪が爆発する前にここから脱出しろと、つまりそういうわけか!
 おもしろい! その挑戦買ったァー! このラディカルグッドスピードがものの数時間数分数秒数コンマ数刹那の内に目的を果たしてみせようじゃないかさらに加速!」

首輪の発する警報に後押しされ、クーガーはさらに脚を速めた。
そのスピード、もはやカモシカやチーターすら敵ではない。
本人の言うとおり、神を超越した速度。疑う必要もない、彼こそが史上最速の称号を持つに相応しい人物だった。

「3分1秒……また世界を縮めてしまったぁ……」

本来なら3分31秒かかるであろう距離を、クーガーはものの30秒で脱出してみせた。
禁止エリアから外れ恍惚な達成感に浸るクーガーだったが、目的である捜し人は見つかっていない。
「エリア内をあれだけ捜索して尚見つからない……とくれば導き出される答えは一つ。ここはハズレだった。つまりそういうことになります。ねぇセナスさん――」
単にニアミスしただけという真実も知らず、クーガーは「いやはやツキがありませんでしたねぇ」と背中の相棒に笑ってみせる。
咎めるべき失態も結果から言えば無駄足の限りで終わったわけだが、もしゲイナーをフェイト達が救わなかったら、それこそクーガーのミスが救われない。
幸運な馬鹿。と外野からは微笑ましい野次が送られるだろう。当事者達も笑い話で済ませられる。
ただ、この捜索による一番の被害者はクーガーでもゲイナーでもなく。
「おやぁ、どうしましたセナスさん?」
視界を覆っていたサングラスを上げ、背負っていたセラスを降ろす。
自力で立ち上がることのできない彼女はその場にぐったりと倒れ込み、口から盛大な嘔吐物を吐き出した。
そう言えば、彼女は日光が苦手だと言っていたような。
「気分が優れませんか? 無理もない、日中は日差しが強かったですからねぇ。ですがそろそろ日も落ちます。もうひと頑張りして――セナスさん?」
クーガーがセラスを抱き起こし、様子を確認する。
セラスは口元から異臭を発し、意識を完全に失っていた。

 ▼▼▼

『セラスさん』
『うん? なになのはちゃん』
『クーガーさんと一緒に行くなら……その、いろいろ気をつけてください』
『? いろいろってどういうこと?』
『その……いろいろです』
『んんん?』

53 :へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ◆g3BDer9VZ6 :2007/02/14(水) 22:35:09 ID:9Nyx0m0O
今なら、別れ際になのはが残した忠言の真意が読み取れる。
クーガーに背負われての超速体験……それは常人では到底馴染めない、彼のみが侵入できる不可侵の絶対領域だった。
クーガー号という媒体によって激しい乗り物酔い程度で済ませられた魅音、日頃から超高速戦闘と訓練を積んできたなのは等ならともかく、日光に照らされ弱った体調のままのセラスが、あのスピードに耐え切れるはずもなかった。
しかも背負われての疾走、その振動と衝撃は常人の意識を軽く吹き飛ばすほどの威力である。
吸血鬼だからってなんでもかんでも強化されているわけではない。意外にデリケートな部分だってあるのだ。

「お目覚めですかセナスさん!」
「ぅわあっ!?」
――気絶している間にまたウィンダム(手持ちからして次はカラシニコフの精あたりが来そうな気もするが)の悪夢を見るわけにもいかない。
セラスは半ば、意地のようなものの効果で早期覚醒し、傍ら、いや眼前にいたクーガーと対面した。
辺りを嗅ぐわす樹木の臭い。濃い茶色の壁が、セラスに現在地を知らしめてくれた。
どうやらここは、森林の片隅に建てられた小さなログハウスのようである。
口元を拭い寝ていたベッドから起きると、津波のような吐き気に全身を揺さぶられる。

(……そうだ、私はクーガーさんのラディカルグッドスピードに酔って気を失ったんだ)

自覚し、思い出す。
あの得体の知れぬ嘔吐感……脳を含め全身の体躯が振動する、不快な現象。
それが全て味わったことのない速度によるものだと考えると、吐き気とは別に頭痛がしてきた。
「大丈夫ですかセナスさん? いやしかしいきなり倒れるとはよほど日差しがお嫌いなようで。ですが安心してください。もう日は落ちましたし、そろそろ夜も更けてくる頃でしょう」
「あーそーなんですかー。それはそうと私の名前はセラス……って、今何時!?」
窓から覗く黒めいた夕闇を捉え、セラスは慌てて時計を確認する。
時刻は午後五時五十九分……放送まであと一分を切っていた。
「うっそ! はっ、そういえば例の身動きの取れない参加者は!?」
「残念ながら俺たちの捜した場所にはいませんでしたねぇ。何しろこの俺がラディカルグッドスピードを駆使して各所隅々に渡り捜索しましたから。
 おそらく他の二つのエリアに居たんでしょう。それにしてもセナスさんはあの絶好のスピード感の中心に身を置きながらそれを味わっていないとは実に残念。
 いやいやですが気を落とさないでください機会さえあればこの俺がいつでもラディカルグッドスピードを即日即刻即発動させセナスさんを速さの限界点まで誘いま――」

「あ、六時だ」

クーガーのマシンガントークに掛かれば、一分なんてものは刹那の刻だった。

54 :へんじがない。ただのしかばねのようだ。 ◆g3BDer9VZ6 :2007/02/14(水) 22:37:48 ID:9Nyx0m0O
【F-7/ログハウス/1日目/夕方(放送直前)】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:放送を聴き終えた後、糸無し糸電話でみさえと連絡。
2:セラスが回復するまで待つ。もしもの時はクーガー一人でもホテルへ帰還。
3:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおねがいします。
4:なのはを友の下へ連れてゆく。
5:証明が終わったら魅音の元へ行く。

【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ残っています)、激しい嘔吐感
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@ヘルシング、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:うぷっ……思い出しただけで気持ち悪っ……。
2:ホテルへは『徒歩』で帰還する。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
6:Q、もう一度ラディカルグッドスピードの速さを体感したいと思いますか? A、いいえ。
[備考]:※セラスの吸血について。
   大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
   原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。



早くも修正
>>51
クーガーがF-8と思って捜索していたそこはF-8ではなく、一つ上のF-7だったのだ。

クーガーがF-8と思って捜索していたそこはF-8ではなく、一つ上のE-8だったのだ。

55 :上手くズルく生きて ◆lbhhgwAtQE :2007/02/14(水) 23:08:27 ID:L0OaqYny
「これは……どういうことだ?」
劉鳳は目の前に突如現れた女に声をぶつける。
……いや、正確には突如現れたわけではない。
ついさっきまで中年男性だった目の前の参加者が顔の皮膚を掴んだかと思うと、それを剥がして突如、妙齢の美女に化けたのだ。
そして、その女性は劉鳳が自分を睨んでいるのに気付いてか、慌てたように答える。
「ちょ、ちょっと待って! そんな睨まないで!」
「姿を偽り、俺を騙したことは事実だ。……騙すという事は相手を侮辱するも同然。ならばお前を断罪しなくてはならない……!!」
「い、今まで変装していたのは謝るから、まずは話を聞いて。そうしたら、きっと納得してくれるから。――ね!」
「今更弁解の余地など!!」
女は取り繕うに矢継ぎ早に言葉を紡ぐが、劉鳳の中で彼女は既に“自分に対して姿を欺いた女”と認定されている。
劉鳳は絶影を呼び出す構えで、女を見据える。
だが、そこで女は更に言葉を続けた。
「あなたの言う正義って言うのは、人の話を聞かないほど了見の狭いものなのかしら?」
「……なに!」
「だってそうでしょう? 何かあった時に問答無用で力を使おうとするなんて、気の短い小悪党のすることでしょ」
女に言われ、劉鳳は眉をぴくりと動かす。
確かに女のいう事はもっともかもしれない。
今まで自分はHOLYの隊員としてインナーやネイティブアルターの犯罪を取り締まることもしばしばあったが、彼らは大抵自分達の制止を聞こうとはせずにすぐに武力行使に出た。
自分もそれと同じことをしているのかもしれない。
そんなしばしの思考の後、劉鳳は絶影を呼び出すのを止め、構えを解く。
「……分かった、ならば聞かせろ。お前が何故、姿を偽っていたのかを」
「え、えぇ! 是非!」
女は安堵した表情を見せ、口を開き始めた。
――そしてこの時、女の口元が妖しく歪んだ事に劉鳳は気付かなかった。


峰不二子――そう名乗った女は、どうやら自分が力の無い存在であることを隠す為に男に変装していたらしい。
ちなみに変装道具は支給品として支給されたもののようだ。
「ここには観覧車やらビルやらを簡単に破壊する人達もいるみたいだし、そんな人からすれば私みたいな女なんて格好の餌食でしょ?」
「確かにな……」
劉鳳は俯き加減に答える。
観覧車を破壊したのはまさに自分であったが、そのようなことを正直に言える筈がなかった。
もし言ってしまえば、紅い人形のときよろしく、誤解され危険人物扱いされる可能性が高い。
更に言えば、彼女が変装していた事は自分の行為にも起因しているということになる。
そこまで考えると、彼は彼女の今回の行いに対して、一つの結論を導き出す。
「繰り返しになるが、お前はこのゲームに乗っていないんだな? そして、先程言っていた悪の話も……」
「それは間違いないわ。斧の女と紅いお人形のことも勿論真実よ」
「――事情は理解した。……今回の件は許そう。ただし、今後は俺がお前を守るからそのような小ざかしい真似は二度とするな」
「聡い判断をありがとう、劉鳳さん。助かるわ」
不二子は微笑みを劉鳳に投げかける。
その笑みからはシェリスのものとも水守のものとも違う雰囲気を感じるが、今の劉鳳にはそのような事は些末な事象。
目の前にいる女がゲームに乗っておらず、保護すべき対象である以上、自分の正義を貫くべく彼女を保護することが最優先であった。
すると、そんな決意をした劉鳳に不二子が声を掛ける。
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
「……どうした?」
「そういえば、さっきアルター能力がどうのって言っていたけど、それって何なのかしら?」
「……アルター能力とは周囲の物質を分解、再構成する能力の総称の事だ。巨大な銃やロボットといった兵器を生み出す者、オリジナルの車両を作り出す者、思い通りのシナリオを描く力を得る者……その能力は多岐に渡る」
「ふぅん。…………それで、あなたの能力はどのようなものなのかしら? 見せてくれない?」
不二子は期待するような目で劉鳳を見る。
劉鳳はジュンの時と同じようなまどろっこしい状況にややいら立つが、自分を信用してもらう為にはそれしかないと判断する。
「分かった。…………絶影!」
劉鳳がそう呼びかけるのと同時に、周囲の舗装やガードレール、街路樹が霧散し、彼の前で人型に再構築されてゆく。
そうして姿を現したのが――――


56 :上手くズルく生きて ◆lbhhgwAtQE :2007/02/14(水) 23:09:58 ID:L0OaqYny


「これが俺のアルター、絶影だ」
劉鳳の目の前にいる人型のソレは、確かに突如現れた。
まるで霧散したアスファルト達が凝結して生まれたの如く――いや、実際そうなのだろう。
不二子はその一連の事象にあっけにとられつつも、彼の能力の見極めを続ける。
「そ、それでその絶影……というのは、強いのかしら?」
「絶影は俺の信念を貫くための存在。悪には絶対に負けるはずがない」
その自信ありげな口調、そして今までの彼の気配からして、それは本当なのだろう。
「それは頼もしいわね。あなたがいればこんな場所からもすぐに出られそうね、劉鳳」
「当然だ。俺は俺の中の正義に基づいて悪を断罪し、そして……ギガゾンビを討つのだからな!!!」
こちらが何か一言言えば勝手に熱くなってくれる性格。
強すぎる正義感。
そして何よりそのアルターの絶影とかいう強大な力。
――彼は……劉鳳は不二子が利用するに十分すぎる人材だった。
あとは、彼を上手くコントロールする話術があれば良いだけ。
不二子は心の中でほくそ笑む。
そして、彼を駒として使うことに決めた不二子は次のステップに入る。
「それじゃあ、せっかくだから私を守ってくれるお礼がしたいのだけど……」
「礼など必要ない。それよりも俺は早くここに存在する悪を――」
「そんな事言わないで! こんなに体がボロボロなのに……」
力む劉鳳の腕を掴むと、それを軽く握る。
それは彼の全身に走る打撲及び裂傷を刺激し、劉鳳は思わず顔をしかめる。
「ほら、やっぱり」
「この程度……問題な――」
「体調は常に万全にしていた方が良いわ。……私が手当てしてあげる」
「手当て……だと?」
不二子は頷く。
彼女はここに来る道中、商店街らしき商店が並ぶ通りにて、“薬”と大きく書かれた看板を掲げた店舗を発見していた。
そこに行けば、恐らく病院ほどとまでは行かないだろうが、手当てできる道具が揃うはずだ。
その旨を不二子は劉鳳に伝えると――
「……確かに体を治すのも大事だ。……ならば甘えさせてもらうか」
「そうこなくっちゃね」
彼はそんな不二子の誘いに乗った。

57 :上手くズルく生きて ◆lbhhgwAtQE :2007/02/14(水) 23:12:23 ID:L0OaqYny


破壊、そして殺戮の痕跡が残る商店街。
劉鳳達は、その光景を目の当たりにしていた。
「遅かったのか……くそっ!」
「悔いていても仕方ないわ。……今は出来る事をしましょう」
この惨劇を止められなかった事を悔いる劉鳳に不二子は優しく声を掛け、そして彼を薬局へと導く。

薬局内部は、静寂が保たれていた。
そして、その静寂の中で劉鳳は不二子から治療を受けていた。
「……まったく、こんなに傷だらけになって……一体どんなドンパチをやったの?」
そう問いながら、店内においてあった包帯を劉鳳の腕に不二子は巻いていく。
劉鳳はそんな手当てを受けながら、今までの事を振り返る。今までの出会いの記憶を――。
思えば、この地での彼の出会いのうちの殆どが戦いを意味していた。
宿敵であるカズマは勿論、紅いコートの男や長門有希、老人を殺した犯人、更に不二子が襲われたという斧を持った女や紅い人形……。
この地には断罪すべき存在があまりに多すぎる。
だが、己の正義を貫くためにはその全てを自分は打ち倒さねばならない。
その中には勿論、あの仮面の男も含まれているわけで――。
「――ねぇ、ねぇってば! 聞いてるの!?」
――と劉鳳が一人考えに耽っていると、いきなり不二子が声を掛けてきた。
いや、ずっと声を掛けていたのだが今まで聞こえなかったという方が正しいだろうか。
「あ、あぁ。すまない」
我に返った劉鳳が上半身裸になった自分の体を見てみると、そこかしこが湿布なり包帯なり塗り薬なりで手当てされていた。
「……終わったのか?」
「一応はね」
「そうか。……礼を言う」
手当ても終わったという事で劉鳳はHOLYの制服に改めて腕を通す。
すると、その背中に不二子が言葉をかける。
「ねぇ、さっきの質問にまだ答えてもらってないんだけど」
「質問……? 何のことだ?」
「――はぁ。やっぱり聞いてなかったのね。……いい? もう一度聞くわよ。あなたのその傷はどうしたの? 何か一悶着でも起こしたの?」
そのボロボロの体を、不二子は訝しげに見る。
確かに、ここまで傷つくような戦闘をしていたのだとしたら、自分もまた好戦的な人物と見なされてしまうかもしれない。
だが、これは自分の信念を貫いた結果として傷ついたものだ。
そのこところを誤解の無いようにしてもらわなくてはならない。
劉鳳は、当時の事を思い出しながら、あの住宅街での戦いのことを説明し始めた。
「二回目の放送が終わってすぐだろうか、俺は――」

58 :上手くズルく生きて ◆lbhhgwAtQE :2007/02/14(水) 23:14:09 ID:L0OaqYny


不気味に笑う格闘術に長けた怪力の男。
アルター能力のようなものを持ち、市街地を爆発させた女子高生。
そして、右腕をアルター化して暴力を振るう彼の宿敵とも言える男……。
劉鳳の口から漏れ出たのは、そんな者達との戦いの話であった。
「俺は……奴らをいずれ断罪せねばならない」
そう言うと、劉鳳はいきり立ち、握り拳に力を入れる。
不二子はそのような様子を見て、彼の沸点の低さを再確認する。
そして、この場所にやはり自分の力だけでは対処しきれないとんでもない化け物が複数いるという事も。
それを踏まえて考えると、不二子は自分が劉鳳という力のある参加者と出会えた事が幸運であったのだと、改めて感じる。
劉鳳さえ上手く扱えれば、そのような化け物に十分対処可能であるし、最悪の場合でも自分が逃げるために時間稼ぎになる。
そう、上手く扱えすれば……。
「劉鳳、頼りにしているわ」
「……あぁ、任せておけ」
彼の傷の手当をしたのも、全ては彼に万全の態勢でいてもらいたいから。
いざという時、傷が元で全力を出せないなんて事は勘弁してもらいたい。
しかも、手当てをすることで信頼関係を深めることが出来る。
そもそも女であることをカミングアウトしたことも、彼の保護欲を高められるだろうという目論見に基づいている。
……全ては計算ずく。
劉鳳を完全に自分の手駒とするための作戦。
(劉鳳、私はあなたを信用しているわよ。私を守ってくれるって……。だから死んでも恨まないで頂戴ね)
不二子は劉鳳に見えない場所で妖しい笑みを浮かべた。



――正義を貫こうとがむしゃらに不器用に動く男。
――その心を自分の為に利用しようとする女。



そんな二人が薬局でひと時の休息を取る中、陽は沈み、また闇がこの地を支配しようとしていた。


59 :上手くズルく生きて ◆lbhhgwAtQE :2007/02/14(水) 23:16:44 ID:L0OaqYny
【F-3/商店街・薬局内部 1日目/夕方(放送間近)】

【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康
[装備]:コルトSAA(装弾数:6発・予備弾12発)、銭形変装セット
[道具]:デイバック、支給品一式(パン×1、水1/10消費)、ダイヤの指輪
[思考・状況]:
1:青年のアルター能力が有用なら口八丁で騙し利用する。
2:F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグを後で回収。
3:ルパンが本当に死んでいるか確認したい。
基本:ゲームからの脱出。
[備考]
※E-2の戦闘について、少年少女達(ドラ、ヴィータ、太一)は全滅、
 女(シグナム)か人形(真紅)のどちらかが勝ち残ったと判断しています。
※E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。


【劉鳳@スクライド】
[状態]:中程度の疲労、全身に中程度の負傷(手当て済)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式、斬鉄剣@ルパン三世、SOS団腕章『団長』@涼宮ハルヒの憂鬱
    真紅似のビスクドール(目撃証言調達のため、遊園地内のファンシーショップで入手)
[思考・状況]
1:不二子を守る。
2:カズマと決着をつける。
3:主催者、マーダーなどといった『悪』をこの手で断罪する。
 ※現在のところの断罪対象: 赤いコートの男(アーカード)、長門有希(朝倉涼子)、ポニーテールの女(シグナム)
                    老人(ウォルター)を殺した犯人
4:ゲームに乗っていない人たちを保護し、この殺し合いから脱出させる。
5:そのためになるべく彼らと信頼を築く。
6:真紅を何とかする。やむを得なければ断罪も。
7:余裕が出来次第ホテルに向かう。
基本:必ず自分の正義を貫く。
[備考]
※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。

60 :「何人たりとも俺は止められない!」/「まぁ、速い」:2007/02/17(土) 18:24:52 ID:Z63+OlUq
 ずっと考えていたことがある。
 八十人もの大人数で行われる殺し合い大会、そんな暴挙を中断させるためには、どうするのが最良か。
 答えは、最初から持っていた。
 誰も殺さず、誰にも殺させず、誰にも殺されない。
 たった三つの行動を完璧にこなす。それだけで殺し合いは食い止められる。
 そのたった三つが、難しかった。
 誰も殺さない――これは自身の気の持ちよう、『覚悟』だけでどうとでもなる。三つの中では一番簡単な要項だ。
 誰にも殺させない――これが一番難しい。何しろこれを厳守するためには、広大なフィールド全ての殺害現場に立ち会わなければならないのだ。
 誰にも殺されない――これが一番重要だった。先に挙げた二つを守るためには、それを遂行する『自身』の安全が第一となる。
 最優先すべきは自分の身。聞こえは悪いかもしれないが、自己犠牲の精神で挑んでは誰かを守ることなどできはしない。

 ――と、鳳凰寺風は考える。

「次は、F-8……」

 15時を過ぎ、禁止エリアの捜索を終えた風は――収穫がなかった結果も重なり足早に――次なる目的地へと向かう。
 歩を進めながら、思う。君島邦彦は何故死んだのか。
 ぶっきら棒な態度の裏で常に仲間の安否を願い、臆病な気質を漂わせながらもやる時にはやる、男らしい度胸を持っているのが彼だった。
 冷酷に言ってしまえば、存在自体が危なっかしかった。
 自分の力が周りの人間の中で劣っているという事実を認め、なら弱いなりに頑張ってやろうじゃないか、という意地のもとに行動する。
 典型的な自己犠牲精神の持ち主であるように思えた。仲間のためなら平気で自身を犠牲にする……君島邦彦は、きっと自分の意地を貫いて死んでいったのだろう。
 そういう思考の人間を卑下するわけではないが、風はそうあってはならない、と心に言い聞かせていた。
 彼女が持つ『癒しの風』は、光や海でも持ち得ない、他者を治癒する特異な魔法だった。
 同時に、他者を救える希少な手段でもある。その使い手が自己犠牲で我が身を棒に振るうような真似をしては、多くの参加者の救いの道を途絶えさせることに他ならない。
 故に、風は自身を犠牲にしてはならない。それは癒しの力を持った者の使命であり、義務でもあった。
 それを自覚しているからこそ、風は癒しの力を手に入れたのであり、それを仲間のために行使しようとも思うのだった。
 自己犠牲ではなく、まず自己を生かして他者を生かす。
 君島とは違った手段を持つからこそ、彼女は献身的なまでに他者の命を重んじる。

「はぁ、はぁ…………間に、合わなかった……」

 E-4捜索後、まだ時間が残されていることを確認した風は、疲れた足で懸命に南東のF-8を目指した。
 身動きの取れない参加者がいるとしたら、もうここしか残されていない。
 最悪、捜索は不可能なほどに離れていたB-1や、廃墟と化したE-4の瓦礫の下に埋もれていた場合もあるが、それはあくまで最悪のケースであり、捜索を諦める理由にはならない。
 希望が残されているのなら、それに縋ってでも食いついていこうではないか。
 たとえそれが、藁のようにか細い小さな希望だとしても。

 ――その希望は、17時の経過という覆しようのない現実のもとに打ち崩された。

 疲労の溜まっていた身で走り続けてきたのが災いしたか、目的地には到着したものの、タイムリミットはすぐに訪れてしまった。
 放送で目覚め、エルルゥの不在を知り、アルルゥを助け、そしてハルヒ等を治療……そしてここに至るまでの5時間、風は動きっ放しだった。
 自分の不甲斐なさを苦く思い、トボトボとF-8から離れた風は、その途中で不審な奇声を耳にする。

61 :「何人たりとも俺は止められない!」/「まぁ、速い」:2007/02/17(土) 18:25:58 ID:Z63+OlUq
「――これは一大事! まさか日の光に当てられただけでここまでグロッキーになってしまうとは!
 だが俺のラディカルグッドスピードをもってすれば救助救難救出救命全て一瞬の内に完了!
 慌てることはない慎重に事態を捉え最適最速なルートを計算! すぐにお助けしますから安心してグロっててくださいセナスさぁ〜ん!」

 やたら早口なその男は、背に病人らしき人物を抱えて風の視界の奥を猛スピードで駆け抜けていった。
 まるでジェット機が通り過ぎたような爆音と爆風にキョトンとする風だったが、すぐに思考を再開する。
 あの男性、こちらには気づいていないようだったが、なにやら救助がどうとか口にしていた。

「もしかして、彼が『身動きの取れない参加者』を救ってくれたのでしょうか……?」

 男性の影は既になく、確認を取ろうにも何処へ行ったのかが分からない。まさかあのスピードを止めることもできまい。
 それでも、彼が背負っていた人物こそが『身動きの取れない参加者』である可能性は十分にある。
 なにしろ彼が走ってきたのは、先ほど禁止エリアの仲間入りを果たしたF-8だ。
 風は全域を捜すことはできなかったが、先に彼が要救助者を見つけていたという場合も考えられた。

「ここは一つ、彼に確認を取ってみることに致しましょう」

 そして風は、再び動き出す。
 駆け抜けていった早口の男については向かった方向くらいしか分からないが、それでも近くを捜せばまだ接触の余地はあるかもしれない。
 そう考え、風はその早口の男――ストレイト・クーガーのあとを追った。


 ――先に結果を述べてしまうと、風は三回目の放送が流れるその瞬間までクーガーとの接触は果たせていない。
 その後の彼女の動向は――――


【F-7/1日目/夕方(放送直前)】
【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康、魔力中消費(1/2)
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、果物ナイフ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク
   :包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:光と合流して、東京へ帰る。
1:凄い速度で駆け抜けていった早口の男(クーガー)を捜し、背負っていた人物が誰かを確認する。
2:1の後、ホテル方面へ向かい、出来ればセラスと接触したい。
3:消えたエルルゥが気がかり。
4:怪我人を見つけた場合は出来る範囲で助ける。
5:自分の武器を取り戻したい。
6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。
[備考]
※「癒しの風」について
風の魔法である「癒しの風」はいわゆる回復魔法です。
基本的に人間の自然治癒力を高める効果を持っており、傷や疲労の回復を促進します。
ただし、魔法により傷が完治するということはなく、あくまで回復の補助をするだけに留まります。
よって、切断された部位の接合や死者の蘇生は効果の範疇の外にあることになります。
また、病気や食中毒、疲労を回復することは不可能です。

また、発動には魔力と一定の時間を要し、対象が一箇所に固まっていた場合はそこにいた全員に効果があります。
消費した魔力は睡眠等の休憩で回復することができます。

62 :【薄暗い劇場の中で】 1/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:36:20 ID:KhOjKwo7
破壊されたショーウィンドウ。ひび割れたアスファルト。へし折れた街灯。
血をぶちまけた様な色の夕日に染められたその光景は見る者に地獄を思わせた。
そこを一台の軍用トラックが北へと進路を向けゆっくりとしたスピードで走っている。

フロントガラスの向こうに見えるその風景に運転席のトグサは緊張を高める。
市街中央から病院へと向かった道とは打って変わって、そこから先はバッファローの群れが
通り過ぎたかと思うような酷い有様だった。
――また選択を誤ってしまったのか?彼の頭にそんな考えが過ぎる。
知らず知らずの内に猛獣の住処へと入り込んでしまっているのではないかと。

先刻出会った男――次元大介からの情報だと、この先にいて脅威になる相手は佐々木小次郎
という侍風の男だけのはずで、しかもそいつは自分達には興味を持たないだろうと推測されている。
だが、それはあくまでそいつしか確認できていないということだ。全く感知していなかった何者かに
襲われるという可能性は常に否定できない。

トグサはバックミラーに目をやり後部座席に座っている二人の少女の様子を見る。
一人はやや緊張した面持ちで、もう一人は無表情に窓の外を見ていた。
彼女達もこの風景を見て、自分達が地獄に踏み込んでいる様を幻視しているのか?
口を利かぬ二人の少女を見て彼はそんな風なことを考えた。


それから間もなくして一行を乗せて走るトラックの前に映画館が現れる。
シネマコンプレックスからは程遠い、こじんまりとした趣の名画座と呼ばれる類のものだった。
そこは周りとは異なり戦闘の被害を受けたような気配は見当たらず、凄惨な舞台の中にポツンと
現れたノスタルジー溢れる建物にトグサは少し安堵する。

トグサはスピードを落とし周りの気配に気を使いながらトラックを正面の入り口に横付けすると、
一人トラックから降りて後部座席で置物のように固まっている長門の声をかけた。
「長門。運転席に移っておいてくれ。俺が先に中を確認してくる」
彼女の些細な頷きを肯定と受け取ると、彼は手に拳銃を構え映画館の中へと滑り込んだ。
残された長門は指示の通り、ゆっくりだが無駄のない動きで運転席へと移動する。

63 :【薄暗い劇場の中で】 2/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:37:12 ID:KhOjKwo7
「有紀。あんた、車の運転なんてできたの?」
質問したのは同じく車内に残された涼宮ハルヒだ。彼女の問いに長門はただ「できる」とだけ答えた。
「ふーん……。まぁ、あんな子供にもできるぐらいなんだから簡単なんだろうけど。
 ……そうね。私も元気が戻ったら一度運転してみようかな。ここじゃ法律も気にしなくていいだろうし」
ここに仮に同じSOS団員であるキョンがいれば、「お前がいつ法律を気にしたことがあるんだ?」などと
突っ込んだだろうが、彼はここにはいない。いるのは寡黙な長門だけだ。
「それは推奨しない。あなたは運転すべきではない」
だがその寡黙な彼女が珍しく二言以上の言葉でそれを否定した。彼女の中で情報がどう処理されたかは
余人には解らないことだが、案外彼女も同じようなことを考えたのかもしれない。

珍しい長門の否定にハルヒが眉を寄せていると、その頭の後ろでコツコツと音がした。
振り返ると、荷台に乗っている石田ヤマトとアルルゥがガラス越しに車内を覗き込んでいる。
「どうしたの?」
ドアの窓から頭だけを出してハルヒが後ろの二人に問いかける。
「それはこっちのセリフだよ。なんでみんなで中に入らないんだ」
同じく荷台から顔を覗かせてヤマトが問い返す。
「今は中の安全を確認中よ。さっきみたいに中で化け物と遭遇なんてもう御免でしょ」
その言葉を受けてヤマトの顔に陰が差した。ハルヒも自身の失言に気づき表情を歪める。
「し、死んでなんかないわよ! あーいうのは殺そうとしても死なないようなヤツなんだから。
 どーせ今頃はどっかで暢気にブーブー言ってるわよ」
取り繕うものの、ハルヒの中でも彼の生存は絶望的だった。そして、どう思おうが次の放送が
来ればそれははっきりしてしまうのである。

ブ〜〜〜〜……

静寂の内に、か細い豚の鳴声……ではなく、かわいらしいアルルゥのお腹の音が鳴った。

64 :【薄暗い静寂の中で】 3/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:38:03 ID:KhOjKwo7
一足先に映画館の中へと入ったトグサは、かろうじて非常灯だけが灯った、薄暗いロビーの中を
拳銃片手に探索していた。外と同じく戦闘があったような気配はない。あまり広くないその空間を
彼は慎重に、そして手早く確認していく。
ロビーの中をあらかた確認すると、彼は最後にチケットカウンターの中を覗き込んだ。
だが残念ながらそこに彼が期待したものはなかった。その手に受話器は握られていたが、
「内線か……」
それはこの館内で連絡を取り合うための内線だった。彼の探す電話はこのロビーにはないようだ。
となると、考えられるのは従業員のみが立ち入れる区画。おそらくは事務所だろう。
そう当たりをつけると、トグサは電話を探すのを一旦止めて映画館の入り口へと戻った。


「ロビーまでの安全は確認した。全員入ってくれ」
館内から戻ってきたトグサに誘導されて四人は映画館の中へと入る。
だがそれとは逆にトラックに入り込む彼に、それを訝しがったハルヒが声をかける。
「あんたはどうすんのよ? まさか一人でどっかにいったりするんじゃないでしょうね?」
「いや、車を目立たない場所に動かすだけだ」
トグサは運転席からそう答えを返すとそのままトラックを発進させた。
そしてそのまま映画館脇の路地の中にトラックを滑り込ませる。偽装には程遠いがかろうじて
不自然ではないぐらいだ。キーをそのままにトラックから降りると荷台に放置されていた
ロケットランチャーを自身のデイバッグに回収してトグサは映画館へと小走りに戻った。


――!?
トグサが映画館の中に戻ってくると、そこは最初の時と同じように静かだった。
先に入ったはずの四人の姿が見当たらない。まさかこの短い時間の内に何かトラブルが?
「……嘘だろ?」
湧き上がった焦燥感に駆られロビーの中を駆ける。だが四人の姿は影も形もない。
と、トグサが彼女達を呼びかけようとした所で不意に開いた扉から長門の顔が覗いた。

吸い込んだ息が大きく吐き出される。
「あんまり驚かせないでくれ。ロビー以外はまだ……って、映画か?」
音を通さない分厚い扉の向こうでは映画が上映されていた。
擬人化された動物による人形劇。
この状況とはそぐわない牧歌的な――いやそうでもない。何故ならその内容は連続殺人事件を
扱ったミステリーサスペンスなのだから。

場面は物語のクライマックス。十二角館連続殺人事件の犯人が探偵によって追い詰められ
その動機を明かすというシーン。

『ただ、思いついて面白そうだと思ったからやったんだ。それの何が悪い』

…………そんなのありかよ。と、トグサは心の中で突っ込んだ。
彼の隣に立つヤマトも同様の感想らしい。苦虫を噛んだ様な表情をしている。
逆にハルヒは、「それでいいのよ!」と言わんばかりの得意げな表情だ。
姿が見えないアルルゥをトグサが探すと彼女は椅子の陰にしゃがみこんでいた。
どうやら初めて見る映画とその内容に恐怖したらしい。

……ともかく。
「お前達。そんなものを見ている余裕は俺達にはないんだぞ。さぁ出るんだ」
トグサの当たり前の提案で、四人はまだ続く映画を後にロビーへと戻った。

65 :【薄暗い劇場の中で】 4/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:38:54 ID:KhOjKwo7
一行はロビーの片隅。ソファがコの字に並んだ休憩所に腰を下ろした。
今後の対策を練ることも重要だったが、この悪趣味なゲームが始まってすでに約18時間。
全員疲弊しており、柔らかいソファに座って気を抜くとそれまでの疲れがドッと彼らを襲っていた。
トグサ以外の四人はソファに身体を預け、不味そうにパンをボソボソと食べている。
というか……、
「本当にマズいわねぇ……」「……うん」「不味いな」「うー……」「………………」
食えないほどではないが、微妙に気に障る絶妙にいやらしい不味さであった。
だがポップコーンもホットドッグも機械の中には無く、ドリンクサーバーも空。
五人は文句を言いながらも空腹を満たすためにパンを水で流し込んだ。


トグサは一人手早く食事を済ませるとソファから立ち上がり、、電話を探すべくロビーの奥に見える
『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた扉へと向かって歩き出した。

途中、横目に観客席への扉の前を通り過ぎたところで思いつく。
――何故、映画が流れているのか?
ここは映画館なのだから当たり前なのだがそれに違和感がある。何故か?すぐに思い当たった。
トグサは足早に扉を潜るとまずは映写室へと足を向けた。
――映写機を動かした誰かがいたのかもしれない。可能性は低いがもしそうだったとしたら
その痕跡から情報を得られるかもしれない。
薄暗く細い通路をトグサは走る。


映写室の中には、引き出し一つ無い簡素な机の上に映写機と一つのフィルム缶があるだけだった。
――考えすぎだったか。
常に脱出へのヒントがないかと気を配っていたが、そうそう簡単に見つかるものでもない。
軽い嘆息と共に緊張を解くとトグサは何気なく机のフィルム缶を手に取った。

それは、ただ今上映中の映画のタイトルがなんなのか、それが気になったというそれだけの
些細な理由だったのだが、彼は手にかかる以外な重さに一瞬戸惑った。
――フィルムが入っている?
てっきり今上映しているフィルムの空き缶かと思いきやそうではなかったらしい。

――まさか!? いやもしかして。
ラベルにタイトルはない。この中には一体何が収められているのか……?
ヒントを見つけられたのかもしれない。その期待にに再び彼の中に高揚と緊張が高まる。

フィルム缶を開く前に時計を確認する。
もう6時寸前だ。予定通りなら間もなく例の放送が始まるだろう。
それに電話を探してホテルに残っているだろうセラスに連絡を取らなければならない。
フィルムの中身を確認するのはその後でも遅くは無い。

トグサは謎のフィルムを脇に抱えると、全員で放送を迎えるべくロビーへと駆け戻った。

66 :【薄暗い劇場の中で】 5/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:39:48 ID:KhOjKwo7
 ※ハルヒ、長門、トグサ、ヤマトら四人分の食料、二食分ずつを五人で分け合って食事しました。


 【B-4/映画館/1日目-夕方(※放送直前)】


 【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
 [状態]:疲労と眠気
 [装備]:S&W M19(残弾1/6発)/刺身包丁/ナイフ×10本/フォーク×10本
 [道具]
   :デイバッグ/支給品一式(食料-2)/警察手帳(元々持参していた物)
   :暗視ゴーグル(望遠機能付き)/技術手袋(使用回数:残り17回)
   :RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)
   :首輪の情報等が書かれたメモ2枚/タイトル不明のフィルム
 [思考]
   基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
   1.全員で放送を聞く。
   2.電話を探しホテルのセラスと連絡を取る。
   3.タイトルのないフィルムの中身を確認。
   4.その後で今後の方針を決める。
   5.全員に休憩を取らせる。
   6.情報および協力者の収集、情報端末の入手。
   7.タチコマ及び光、エルルゥ、八神太一の捜索。
 [備考]
   風・次元と探している参加者について情報交換しました。
   情報交換により佐々木小次郎という名の侍を危険人物と認識しました。


 【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
 [状態]
   :人を殺した罪を背負っていく覚悟/SOS団特別団員認定
   :疲労と眠気/右腕上腕に打撲(ほぼ完治)/右肩に裂傷(手当て済)
 [装備]:クロスボウ/スコップ
 [道具]
   :デイバッグ/支給品一式(食料-2)/ハーモニカ/デジヴァイス/真紅のベヘリット
   :クローンリキッドごくう(使用回数:残り3回)/ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
 [思考]
   基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。
   1.ぶりぶりざえもん…………
   2.ハルヒとアルルゥにグレーテルのことを説明。
   3.八神太一、長門有希の友人との合流。
 [備考]
   ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。
   ぶりぶりざえもんは死亡したと思い込んでいます。

67 :【薄暗い劇場の中で】 6/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/17(土) 21:40:42 ID:KhOjKwo7
 【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
 [状態]
   :疲労と眠気/頭部に重度の打撲(意識は回復。だがまだ無理な運動は禁物)
   :左上腕に負傷(ほぼ完治)/心の整理はほぼ完了
 [装備]:なし
 [道具]
   :デイバッグ/支給品一式(食料-2)/着せ替えカメラ(使用回数:残り19回)
   :インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
 [思考]
   基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。
   1.みんなで作戦会議をする。
 [備考]
   腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。


 【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
 [状態]:思考に軽いノイズ/左腕骨折(添え木による処置が施されている)/SOS団正規団員
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ/支給品一式(食料-2)/タヌ機(1回使用可能)
 [思考]
   基本:涼宮ハルヒの安全を最優先し、状況からの脱出を模索。
   1.涼宮ハルヒを休ませる。
   2.小次郎に目を付けられないように注意する
 [備考]
   癒しの風による回復力促進に伴い、添木等の措置をして安静にしていれば半日程度で
   骨折は完治すると思われます。


 【アルルゥ@うたわれるもの】
 [状態]:疲労と眠気/右肩・左足に打撲(ほぼ完治)/SOS団特別団員認定
 [装備]:ハクオロの鉄扇/ハルヒデザインのメイド服
 [道具]:無し
 [思考]
   基本:ハルヒ、トグサ達と一緒に行動。エルルゥに会いたい。
   1.眠たい……


 [共通思考]:映画館で休息をとる。佐々木小次郎を最優先に警戒。
 [共同アイテム]
   :73式小型トラック(※映画館脇の路地に止めてあります。キーは刺さったまま)
   :おにぎり弁当のゴミ(※トラックの後部座席に放置されています)
   :マウンテンバイク(※トラックの荷台に残されたままです)

68 :第三回放送 ◆q/26xrKjWg :2007/02/17(土) 23:08:38 ID:V2w4mR/9
 いくら血を吸っても決して満足しない、真っ赤な空。
 三度その姿を現すは、仮面の男ギガゾンビ。
 彼の者の飽くなき欲望が満たされることはない。この空のように。

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 まずは悲しい知らせからしておこう。

 遂に禁止エリアに留まって爆死する者が出た。今まで散々忠告した上に、懇切丁寧に警告までしてやっているというのに、だ。
 おまえ達のような言っても分からない愚民にはほとほと呆れさせられる。
 愚かな死に様はつまらん。どうせなら、騙し! 裏切り! 戦って! そうやって殺し合って死ね。

 では改めて、禁止エリアを告知する。おまえ達の容量の足りない脳みそには難しい注文かもしれないが、それでも必死になってしっかりと覚えておけ。

 禁止エリアは――

   19時より F-6
   21時より H-1
   23時より C-8

 ――だ!

 死亡者は――

   朝倉涼子
   前原圭一
   竜宮レナ
   古手梨花
   桜田ジュン
   真紅
   蒼星石
   ヴィータ
   ソロモン・ゴールドスミス

 ――以上9名!

 何だかんだでペースを落とさず頑張っているではないか!
 最初に言った通り、1名は愚かな爆死者だが……残り8名は殺し合いの果てにその命を儚く散らした! 私を楽しませてくれたことに礼を言ってやろう!
 生き残っているのは43名。折り返し地点も近い。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうと言うが、まさにその言葉通りだな。

 間もなく日が沈む。
 闇が怖いか? 常に怯えながら一人で夜を過ごさなければならないのが心細いか? むしろ一人の方が幸せなのかもしれないぞ?
 群れている羊共。群れているからといって安心などできるはずがあるまい。
 宵闇の到来を待ち焦がれていた狼共はいくらでもいる。中には羊の皮を被った狼もいるだろう。背後から脾腹を一突きされないよう、せいぜい気を付けることだ。

 では我がディナーの添え物として、引き続き頑張ってくれたまえ!
 ワハハハハ――

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆

 そして、ギガゾンビの姿が消える。
 残された血の赤は、ゆっくりと、だが確実に、どす黒く変色していった。

69 :強者の資格たる欠損 ◆pIrIQ8gGz. :2007/02/18(日) 22:35:27 ID:jaxDQeU6


宵の蒼を経て夜の黒に染まった学校の中から、幾つもの音が聞こえる。
割り砕かれる石材の悲鳴。
踏み込みが大地を打ち据える音。
幾度と無く響くそれは、着実に変化していく。

割り砕くのではなく斬り裂くように。
打ち据えるのではなく、ただ最小限の力で叩くように。

隻腕の剣士は、左腕の虚無に早くも順応しつつあった。



放送に流れた名前。その中に剣の英霊が入っていない事に安堵した。
禁止区域とやらは地図に記しておく。

日が沈むまでのささやかな休息。それによって回復した体力は鍛錬に充てる。
たとえ強者と出会ったとしても、自身が弱者では意味が無い。
物干し竿、或いはそれに類する長刀なら片腕でも問題なく振るえるが、この大剣では無理がある。
自らの剣技に固執するなら短刀や鉈という選択もあったが、どちらにしろあまりに短い。
結論。得手とする長刀に近い戦力を発揮できるのは、この大剣である。
よって、再びこの鉄塊を選んだ。
だが、自らの腕力ではこれを操るのは難しい。
技巧によって自在に振るえていたのも左腕があればこそ。
新たな方法を模索する必要があった。
自らの剣技は元より邪剣。本来為し得ぬ事こそを為す異形の業。
ならば、この剣を片手で扱う技を得ることも出来よう。

左腕の損失による重心の狂い、そして剣の重量に試行錯誤を重ねる事一時間余り。
おおよその感覚は掴んだ。
簡単な話。
左腕が落ちたのならば、左腕以外の部分で剣を振るえば良い。それだけだ。
全身を連動させ遠心力を最大限に利用し、重量に引き摺られるように前後左右へと身を跳ばす。
剣速は極力殺さず旋回、但し斬線は逃さない。
代償として動作は大振りとなり初速は落ち、燕返しなど撃てよう筈も無いが、これはこれで利点がある。
即ち―――間合いと威力。
跳躍するが故に斬撃半径は大きく、速度と遠心力が乗る分だけ威力は跳ね上がる。

そして何より―――この剣の特長が活きるのだ。

物干し竿に匹敵する長さと桁外れな重量、そして圧倒的な強度は、防護ごと力尽くで叩き斬るためのもの。

軽く身を捻り、構える。
さながら、鞘の無い居合いのように。

膝を曲げ身を沈め前傾姿勢。

―――標的たる石壁まで、物干し竿ならば三歩を要する。だが、

まずは爪先、そして足首膝腿腰腹背肩肘手首と動作を連ね、一気に振り抜く。

大気のみを斬り裂く黒い切先。
空振りだ。
構わない。この空隙はあくまで布石。
右脚を軸に半回転、弧を描いた左の足で地面を噛み更に半回転。
再び、剣先が前方へ。

「――――――ッ!!」


70 :強者の資格たる欠損 ◆pIrIQ8gGz. :2007/02/18(日) 22:36:16 ID:jaxDQeU6


鋭く呼気。
一気に右脚を伸ばす。
剣の慣性に負け前方に流れる動きを助長。
その結果として生まれるのは―――跳躍だ。
燕じみた速度は、一瞬にして三歩の距離を消し飛ばす。
石壁へ一撃。斬線は正確に捉えた。故に、響く音はただ軽い。
そして速度を落とさない剣身、更に大地を踏み抜かんとする一足。
右へと跳ぶ体。空中で姿勢制御し地に突く足は屈曲によって衝撃を吸収、回転運動へと転化。
旋回する刃が庭木を両断。沈み撓んだ全身から、抑え込んだ莫大な運動量を解き放つように跳躍。
今度は背面へ。殺した距離は実に三間。豪風よりも強く疾風よりも速い、荒野にて吹き荒ぶ烈風の如き一閃。

――大地を叩く足、跳躍、斬撃。砕けることすら赦されない板硝子。
―――大地を叩く足、跳躍、斬撃。鋼の遊具を一挙に切断。
――――大地を叩く足、跳躍、斬撃。抵抗など皆無。

―――――隻腕の剣士は刃を振るう。強者と、存分に死合う為だけに。
――――――花鳥風月。
―――――――咲き誇る花を散らし、虚空舞う鳥を落とし、形無き風を断ち、上弦の月を穿つ。
――――――――彼にとって、あらゆるモノは斬る為だけに存在する。
―――――――――或いはそれは、この世界の中で最も純粋な想いだった。




71 :強者の資格たる欠損 ◆pIrIQ8gGz. :2007/02/18(日) 22:37:04 ID:jaxDQeU6

【A-2・校舎内/一日目/夜】

【佐々木小次郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(一度は回復しましたが、修行によって蓄積中)
   右臀部に刺し傷(ほぼ完治)、左腕喪失(肘から先)、右腕に怪我
[装備]:ドラゴンころし
[道具]:コンバットナイフ、鉈、支給品一式2人分(水食料二食分消費)
[思考・状況]
1:この剣技に練熟する。
2:セイバーが治癒し終わるのを待ち、再戦。
3:ドラゴンころしの所持者を見つけ、戦う。
4:物干し竿を見つける。
基本:兵(つわもの)と死合いたい。戦闘不能と判断した者は無視。

※ソロモン、圭一、レナの死体は草むらに隠されてます。
※蒼星石のローザミスティカは尚も光り輝いています。しかし誰かの元へは向かいません。
※佐々木小次郎の左腕(肘から先)はB-4エリア内に放置されています。


72 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/18(日) 22:41:58 ID:lZZTp/uO
つ  ま  ら  ん
なぁ、この文章に一体何の意味があるってんだ?
キチガイ月厨がよ。チラシの裏にでも書いてろや。
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73 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/19(月) 10:41:06 ID:aubiCPfH
別段つまらなくはないけどなにやってるのかどういう体勢なのかがよくわからない文章ではある

74 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/19(月) 16:19:37 ID:/M0pQx5v
お前の読解力不足

75 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/19(月) 16:48:19 ID:2rXJnFHi
著者乙

76 :【背中で泣いてる 男の美学】 1/5  ◆S8pgx99zVs :2007/02/20(火) 02:09:35 ID:tmmSAW6e
赤色に覆われた空から、その殺戮の舞台へと下卑た声が轟き落ちる。
その声の下、人気の無い道路の上を次元大介はただ一人、黙々と南へ向かい歩いていた。
東に向かって長く伸びた影を共に、次元大介は思考を巡らせる。

今回発表された死者は九人――
ギガゾンビは変わらぬペースでと、言い表したが次元大介の印象はその逆だ。
次元大介は知っている。その内の約半分が自分の目の前で死んだことを。

「前原圭一」「竜宮レナ」「蒼星石」「ソロモン・ゴールドスミス」

惨劇は避けられなかった。
元々、蒼星石とソロモンに関しては後に殺しあうことも織り込んだ上での利害の一致による
協力関係だったが、圭一とレナに関しては違う。
彼らのこと、むざむざと死なせてしまったことを思うと次元大介の心に苦いものが走る。

だが感傷はともかくとして、今回死亡した内の四人の死を知っているわけだ。
これらは一組の結果であり、他の死者がすべて別の組で行われていたとしても計六組。
前回までの死者がどういう経緯で死んだのまでは解り様がないが、やはり順当に参加者同士の
遭遇は減っているように印象を受ける。加えてこのゲームが始まってからの時間。真っ当な人間、
それも圭一やレナのような戦闘の経験がない人間ならば疲労は相当蓄積しているはず。
そしてさらに先程出会った集団のことを思い返す。彼らもそうだが、彼らが襲われたという連中も
徒党を組んでいたらしい。これも当然の流れだろう。

道なりに進み東へと進路を変えた次元大介はその先の藍色の空を見ながら思う。

今、このゲームはギガゾンビの言葉とは裏腹に膠着状態に近づいている。
生存者はいくつかのグループに別れ、そしてそれらはこれから休憩に入るだろう。
残りの生存者はおよそ半数。
今から0時までの六時間。おそらくその間に今まで以上の大きな動きはないはずだ。

ならば、今こそが最初で最後の大多数の反ギガゾンビ集団を結成するチャンスなのかも知れない。

77 :【背中で泣いてる 男の美学】 2/5  ◆S8pgx99zVs :2007/02/20(火) 02:11:12 ID:tmmSAW6e
次元大介は背負ったデイバッグの中にある拡声器のことを思い出す。
これを使用すれば人を集めるのは容易い――が、ただそれを使うのは馬鹿のやることだ。
先に聞いた話にある通り、好戦的な集団も存在するのである。
ならば、まず確保しなければならないのは自身の安全。それからそれと併せて呼び掛けが
しやすい場所の確保。
頭の中に叩き込んだ地図の内容を思い浮かべ検討する。

ここから道なりに東、舞台の中央に位置するレジャービル。
とりあえず考えられるのはそこか。ある程度の高さがあり、位置も申し分ない。
内部に隠れる場所は多いだろうし、真ん中当たりの階から呼びかければ声だけではどの階に
いるかは判別できないだろう。逆にこちらからは近づいてくる相手を認識しやすい。

次元大介は柄にも無いと思う。ここまでお節介なのはアイツの役目だろうと。
長い付き合いのうちにこちらにもそれが移ったのか、それとも圭一とレナの死の感傷のせいか。


コツリコツリと刻まれていたアスファルトを踏む音がふと止んだ。
赤い夕日を背中に受けて足元から伸びた長い影。

その先にアイツが――ルパン三世が横たわっていた。

78 :【背中で泣いてる 男の美学】 3/5  ◆S8pgx99zVs :2007/02/20(火) 02:12:03 ID:tmmSAW6e
「女を庇ったんだって?」
次元大介は軽く、いつものようにルパンへと歩み寄りながら話しかける。

「しかも、それで女にやられちまったそうだな」
ルパンは言葉を返さない。

「普段から忠告してるだろう? 女には気をつけろって」

次元大介はルパンの傍らにまで到着すると、彼の顔を見ずに話しかける。
「……立てよ。ここにいるのは俺だけだ。死んだふりはもういいぜ」
ルパンの目は閉じたままピクリともしない。

「あの嬢ちゃん。お前が死んだと思って泣いてたぜ。なぐさめに行ってやれよ」
それでもルパンは起き上がらない。

「そーか、そうやって最後まで死んだふりで通すつもりなのかてめえは」
次元大介はしゃがみこみ、ルパンの顔を覗きこむ。
「てめえが死んだなんて、俺がそう易々と信じると思ってるのか? ルパン」

答えを返さないルパンに次元大介は一つ溜息をつくと、背負ったバッグから一本のスコップを
取り出す。ここに来る途中、園芸屋の店先から拝借してきたものだ。
「死んだふりを続けるってなら、そこの土手の下に埋めちまうぞ」
それでもやはりルパンは起き上がらない。

「……てめえも意地っ張りだな」
次元大介は自身が血濡れになるのにもかまわずルパンを背負い上げると、歩き始めた。

ゆっくりと、ルパンを背負い次元は橋を渡る。
「………………重ぇな」

79 :【背中で泣いてる 男の美学】 4/5  ◆S8pgx99zVs :2007/02/20(火) 02:12:57 ID:tmmSAW6e
長い時間をかけて橋を渡りきると次元大介は土手の下へと降り、ルパンを土の上へと横たえた。
その隣に墓となる穴を掘り始める。
「起き上がるっつーなら今の内だぞ、ルパン? 埋められてから謝ったって許さねえからな」
ルパンはただ川の方から吹く風にさらされているだけだ。

十数分ほどしてルパンがすっぽりと入る穴ができた。そこに次元大介はルパンを丁寧に下ろす。
「……埋めるぞ」
カチカチ、カチカチと震えるスコップの先と地面の小石がぶつかる音が鳴る。

次元大介は歯を食いしばり、一心不乱にルパンへと土を被せる。
すぐに、ルパンはその顔の部分を残して土の中へと埋まった。

土をすくったスコップをルパンの顔の上へと移す。
「……ルパン。いいんだな?」
サラサラと少しずつスコップから土がこぼれルパンの顔を覆い、……そして覆いきった。
さらに土を被せ、緩やかな土の盛を作り簡素な墓に仕立てる。


次元大介はスコップ片手にただ立ち尽くす。
諦めるでも、諦めきれないでもないその中途半端な気持ちで。
真っ赤だった空は藍色へと変わり、夜の帳が落ちるのも間近い。
川岸は少しの風に揺れる草の音だけでとても静かだった。

「この大馬鹿野郎ッ!! てめえ勝手に逝きやがってッ!!」

怒声と共に手にしたスコップを墓に突き立てると踵を返し土手を上る。
と、その中程で足を止めてもう一度ルパンの墓を振り返った。

「先に逝ったんなら、むこうでの酒代はてめえ持ちだからな。
 俺が行くまでに上等のバーボンを用意しておけよ!」

行こうとしてもう一度振り返る。

「煙草もだ!」
今度こそ、次元大介は土手を上りその場を離れた。

80 :【背中で泣いてる 男の美学】 5/5  ◆S8pgx99zVs :2007/02/20(火) 02:13:48 ID:tmmSAW6e
「……糞ッ」
毒づきながら雑居ビルの隙間を縫うように次元大介は歩く。自身の影を追うように東へ東へと。
目指すのは先程の案にあったレジャービルだ。
拡声器を使うかどうかはともかく、隠れて身体を隠すには丁度よい、そう判断した。

それからどうするかはそこに着いてから考えればいい。
ただ……、

(ルパン。てめえの仇だけは取ってやる。今回だけは義理でロハだ)

ルパンの死によって最早、次元大介はルパン一味の次元大介ではなくなった。
今ここにいるのは、傭兵であり、殺し屋であり、ただのガンマンである次元大介だ。

帽子の鍔の影から射抜くような目を覗かせ、次元大介は闇の中を一人歩く。




 【D-4/市街地/1日目-夜】

 【次元大介@ルパン三世】
 [状態]:疲労/脇腹に怪我(手当て済み、ただし傷口は閉じていない)
 [装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ/454カスール カスタムオート(残弾:7/7発)
 [道具]
   :デイバッグ(+3)/支給品一式(×4)(-2食)/13mm爆裂鉄鋼弾(34発)/
   :レイピア/ハリセン/ボロボロの拡声器(使用可)/望遠鏡/双眼鏡
   :蒼星石の亡骸(首輪つき)/リボン/ナイフを背負う紐/蒼星石のローザミスティカ
   :トグサの考察メモ/トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ
 [思考]
   基本:1.女子供は相手にしないが、それ以外には容赦しない。
   基本:2.できるだけ多くの人間が脱出できるよう考えてみるか……
   1.レジャービルで傷の手当てをしなおし、休息する。
   2.その後、拡声器を使ってみるか検討する。
   3.ハルヒ、長門、アルルゥ、トグサ、ヤマトの知り合いに会えたら伝言を伝える。
   4.ルパンの仇>ピンクの髪の女(シグナム)を殺す。
   5.殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す。
   6.圭一と蒼星石の知り合いを探す。(※蒼星石の遺体は丁重に扱う)
   7.ギガゾンビの野郎を殺し、くそったれゲームを終わらせる。
 [備考]
   トグサとの情報交換により、
   『ピンク髪に甲冑の弓使い(シグナム)』『赤いコスプレ東洋人少女(カレイドルビー)』
   『羽根の生えた黒い人形(水銀燈)』『金髪青服の剣士(セイバー)』
   を危険人物と認識しました。

81 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:44:05 ID:5zikRWmH
「……ミス・ヴァリエール! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」

 教員の怒鳴り声に刺激され、ルイズは机に突っ伏していたその身をがばっと引き起こした。
 涎の垂れた口元を拭おうともせず、ぼやけた頭を振って周囲の光景を確認する。
 そこは、無数の椅子や机と黒板の置かれた教室内。タバサやキュルケ、ギーシュやモンモランシーといった級友の姿が窺える。
 ……どうやら、こともあろうに授業中に居眠りをしてしまったらしい。
 恥ずかしさに口を噤みながら、ルイズはクラスメイトたちの笑い声を浴びせられて顔を赤面させる。
 その笑いの渦中に、やたらと聞き慣れた男の声が混じっていた。
 異変を感じ取るように訝しげな顔で横を向くと、隣の席には黒い短髪に平凡な様相を構えた、平民の少年がいた。

「ルイズは相変わらずドジだな。迂闊者っていうかさ」
「な、なんでアンタがここにいるのよ!」
「いちゃ悪いかよ。俺はルイズの使い魔だぞ」
「いちゃ悪いのよ! アンタは私の使い魔で平民! ここは貴族の学び舎よ! 犬は外で洗濯でもしてなさいよ!」

 晒してしまった失態からくる恥ずかしさを怒りに変えて、まるでその少年が全ての元凶であるかのようにルイズは非難を浴びせた。
 少年はちぇっ、と言い捨て、素直に教室を退出していく。
 そうなのだ。使い魔は主人の命令には逆らえない。
 召喚された時点でその主従関係は絶対であり、例外が生まれることはないのだ。

「だから、アンタはこの私に絶対服従でいなければいけないの! 分かった!?」
「はいはい分かりましたよ御主人様。俺は平民であって使い魔、ルイズは貴族であって主人。近いようで遠い関係だよなコレ」

 場所を寄宿舎の外に移し、少年は洗濯をしながらあーあと空に向けて溜め息を吐く。
 その横顔を見て、ルイズは自分の頬が薄紅色に染まっていることも気づかずこう発言した。

「で、でもまぁアンタも使い魔にしちゃ結構やるほうだし、そんなに遠くはないんじゃないかしら」
「? 遠くないってなにが?」
「だ、だからその…………カ、カ、カカカカンケイ…………とか」
「カンケリ? ルイズ、カンケリがしたいのか? つーかこの世界にもカンケリなんて遊びあるんだ……」
「な、なななななななななな違うわよ耳腐ってんじゃないのこのバカ犬!」
「イタっ、イタタタタ!? 耳引っ張るなよ!」

 茹蛸みたいに顔を火照らせて、ルイズは少年の耳を力いっぱい引っ張った。
 ……何故だろう。この少年の前に立つといつもこうだ。
 言いたいことが言えなくて、発言を失敗するたびに胸が締め付けられるように苦しくなる。
 病のようで怪我のようで、そのどちらでもなくて。
 ルイズは純真な瞳に笑う少年の素顔を映し、正体の掴めぬ感情に胸を焦がすのだった。

「……ったく、こんなガサツで乱暴な性格だから、みんなに『ゼロのルイズ』なんて呼ばれるんだよ。少しはシエスタとかを見習えよな」
「そ、それは昔の話じゃない! っていうかなんでそこでシエスタの名前が出てくるのよ!」
「え? い、いやぁ〜なんでだろうなぁ……ハハハ」

 冷めた笑いではぐらかす少年の胸ぐらを揺さぶりながら、ルイズはまた怒り出す。さっきから顔を真っ赤にさせっぱなしだった。
 ……少しは素直にならないとね。
 表の思考ではなく、本能でルイズはそう思った。
 このまま意地を張ってばかりでは、いつかきっと後悔してしまう……そんな予感を本能が感じ取っていたから。

「……もう、ゼロのルイズなんかじゃない」
「分かってるよ。ルイズはもう立派な――」
「そうじゃない! そうじゃなくて……その……私には…………才人、がいるから」
「へ? オレ?」

 おどけた表情で言葉の意味を探る少年に、ルイズは依然赤面したまま、思いのたけをぶつける。

「……私には、『才人』がいるから! だから……だからもう『ゼロ』じゃない。才人が、才人さえいれば私は……」

 意を決した反動で涙まで流す健気な少女に、少年――平賀才人は優しく微笑み、その小さな頭にそっと手を置いた。

82 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:45:00 ID:5zikRWmH


 ◇ ◇ ◇


 今宵の城は、漆黒ではなく真紅に染め上がることだろう。
 爆砕か、炎上か、血染か、それとも――真紅を超越した『虚無』か。

「我が名はルイズ! ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!」

 杖である戦鎚を振り、唱える。

「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!」

 サモンサーヴァントだけは自信があった。

「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」

 あの召喚の儀式の日が、全ての始まりだった。

「私は心より求め、訴えるわ!」

 ルイズと、才人の。

「我が導きに、答えなさい!」

 運命の出会い――。



83 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:46:37 ID:5zikRWmH


『…………まずは悲しい知らせから――!』

 バトルロワイアル会場の中心地に位置するホテルという名の巨城。
 その最上階にて、ルイズはグラーフアイゼンを振るい、破壊の力を行使する。
 爆音が木霊し、壁が、天井が、床が崩壊。ほぼ同時に始まったギガゾンビの定時放送すら、その轟音で掻き消した。
 横に、縦に、斜めに自由自在に振り回し、まるでウサ晴らしをするようにありったけの魔力をぶち撒ける。
 これまでの激戦で損傷が進んでいた巨城はすぐにその身を揺るがし、ボロボロと破片を零していく。

『――涼子、前原圭一、竜宮レナ、古手――』

 放送は既に、ルイズの耳には入っていなかった。
 ギガゾンビの声を掻き消すほどの音も原因の一つだが、ルイズにはもはや、誰が死のうがどこが禁止エリアになろうがどうでも良かったのだ。
 ホテルを壊して、目に入った人間は殺して、グリフィスの下へ、才人と一緒に帰る。
 それだけ。たったそれだけで、才人は帰ってくる。
 誰にも邪魔はさせない。朝倉涼子も問題じゃない。
 才人と一緒にいれば、なんだって出来る。
 だって才人は、ルイズが召喚した世界でたった一人の平民の使い魔だから。
 神聖で、美しく、そして強力なゼロの使い魔だから。

「私はもう――ゼロじゃない!」

84 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:47:30 ID:5zikRWmH
 懐に忍ばせておいた才人の眼球を取り出し、屋外へと飛翔する。
 天高く舞い上がったルイズは手の平に才人を転がし、同じ視点で崩壊していくホテルを見下ろした。
 未だ鳴り止まぬ轟音は、依然として破壊が続いている象徴でもある。
 スプーンで半分だけ掬ったアイスのように、ホテルは中途半端な半壊状態を迎えたところで鳴動を止めた。
 このコンクリートの巨城は、ルイズにとっては砂の城だ。
 そう形容するくらいに脆く、崩れやすく、壊しやすい。
 才人と再び出会うための、単なる糧に過ぎない。

「見て、才人。お城が崩れていくわ」

 地上から舞い上がってくる突風を受けて、ルイズの桃色の髪が揺れた。
 生気を宿さない眼球は何も言わず、ただ死んだ瞳に崩壊寸前の巨城を映す。

「召喚魔法は一生で一度きりのもの。使い魔は生涯添い遂げるべきパートナー。私にはもう、才人しかいない」

 ルイズが召喚した使い魔は、人間だった。
 ルイズが召喚した使い魔は、平民だった。
 ルイズが召喚した使い魔は、才人だった。

「もう一度やり直そう、才人。あの召喚の儀式から、私たちの出会いから――」

 グリフィスはそれを叶えてくれる。
 壊して、殺して、ぶっ壊して、皆殺しにすれば、才人は戻ってくる。
 ルイズはグリフィスの虚言に一欠けらの疑念も持たず、ただ単純に――すごい、と思った。

「帰ろう、才人」

 ――そこにはいないはずの才人と交わす、二度目のファーストキス。
 突き出した唇は空を捉え、ただ唯一といえる彼の象徴は、何も返してはくれなかった。
 今は、まだ。
 でも、これが終われば、きっと。
 グラーフアイゼンを頭上高く振り上げ、彼女の内に眠る潜在魔力を解放させる。
 生み出された特大の鉄球の数は、一発。その一発に、ルイズの魔法の特性である『虚無』の力を加える。

「これが、決まれば!」

 鉄球を狙い、グラーフアイゼンを当てんと振り被る。
 虚無により強化された、本来の使い手であるヴィータのものを越えるシュワルベフリーゲン。
 命中すれば半壊状態のところで食い留まったホテルも爆発と共に弾け、辺り一帯は焦土と化すことだろう。
 そこに、ルイズ以外の生存者はいない。

「――っぉわれろおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 呂律の回らない口ぶりで叫び、ルイズはグラーフアイゼンを振り下ろした。

85 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:49:04 ID:5zikRWmH
「やめなさあぁぁぁぁぁぁいっ!!」
「――ッ!?」

 鉄槌が鉄球を穿つ――その直前だった。
 ルイズの横合いから飛び込んできた黒い斧が、振り下ろされたグラーフアイゼンを弾き、同時に鉄球を空高く打ち上げた。
 ホテルを狙うはずだったシュワルベフリーゲンは空中で花火のように霧散し、黒味がかってきた空を茜色に染める。
 バランスを崩したルイズはなんとか体制を立て直し、謎の乱入者へと矢庭にハンマーを向けた。

 その場にいたのは、ルイズと同様に魔法の杖を持った、飛翔する女の子。
 白を基調としたロングスカートは、平凡な小学三年生の女子児童が思い描く、典型的な魔法少女の兵装。
 胸元で結ばれた大き目のリボンが際立ち、またそのリボンのイメージとは対極に位置する厳格な瞳を、ルイズに向ける。

「なによ……なんなのよアンタ!」

 歳相応とはいえない殺気の込めれらた睨みを利かせ、ルイズは少女を牽制する。
 だが少女はそれをものともせず、怯むでもたじろぐでもなく真っ向から視線を合わせていった。

 純白の清楚なバリアジャケットに、使役するは親友が愛用していたインテリジェントデバイス。
 闇を貫く雷神の槍、夜を切り裂く閃光の戦斧――その名は、バルディッシュ・アサルト。
 そして使い手は、『魔砲少女』、『管理局の白い悪魔』など、呼び名を悪名の如く周囲に認知させ、若輩を意識させないほどの実力を持った一流の魔導師。

「高町なのはとバルディッシュ・アサルト――これ以上の破壊は見過ごせない!」

 杖とは形容しがたい戦斧を構え、飛翔する少女は高らかにその名を宣言した。

 ――狂った。邪魔が入って、何もかもが狂ってしまった。
 直感でなのはを外敵と捉えたルイズは、奥歯を噛み締め、憤怒の思いを逆巻く風に乗せた。
 あと少し、あと少しで終わったのに。いつも、いいところでいつもいつもいつも、邪魔が入る。

「どうしてホテルを破壊しようとするの? それに、なんであなたがヴィータちゃんのグラーフアイゼンを……」
「……キュルケにシエスタに、アンリエッタにタバサ……こっちに来てからは朝倉涼子! みんな、みんな才人と私の邪魔をする!」

 慟哭を鳴らし、ルイズが雄叫びを上げた。
 子供とも女とも思えない、獣性を帯びた咆哮はなのはを唖然とさせ、身を引き締めさせた。
 同時に、虚無の力を更に行使する。
 グラーフアイゼンにこれでもかというくらい魔力を込め、その形状を変えていった。
 ハンマーヘッドの片方に推進剤噴射口が現れ、もう片方にはスパイクが取り付けられる。
 通常のハンマーフォルムに比べ、近接戦闘に特化した変形形態ラケーテンフォルム。
『鉄の伯爵』と呼ばしめる戦鎚型アームドデバイス、グラーフアイゼンのもう一つの姿である。

「殺して、壊すだけで終わるの! だから、だから……だから大人しく殺されなさいよぉぉぉぉぉ!!!」
『Raketenhammer』

 貴族の優雅さなど欠片も見せず、ルイズは感情のままになのはへと突進した。
 ロケット噴射による推進力がルイズの速度を加速させ、回転。遠心力も味方に付け、グルグルと円盤のように回りながら大気を巻き込む。
 なのはは咄嗟に防壁を張るが、グラーフアイゼンのラケーテンハンマーは基礎的なプロテクションなどで防げるものではない。

(すごい勢い……! ひょっとしたら、ヴィータちゃん以上――!?)

86 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:50:23 ID:5zikRWmH
 絶大な威力を防ぐには敵わず、魔力防壁はガラスのように砕け、飛び散った。
 破壊力は強大でもそのコントロールはまだ不完全なのか、空中でグルグル回り続けたままのルイズの隙をつき、なのはは距離を取る。

「バルディッシュ、お願い!」
『Haken Form』

 なのはの声に答えた機会音声がスイッチとなり、バルディッシュ・アサルトの形状を変えていく。
 変形前を斧と言い表すならば、この変形後のハーケンフォームはその名の通り鎌。
 グラーフアイゼンのラケーテンフォルム同様、近接戦闘に特化した直接攻撃タイプの形態である。

「うわぁあぁああああぁぁあぁあああぁぁぁあぁぁあぁぁあっぁぁ!!」

 力任せに突っ込んでくるルイズはグラーフアイゼンを使いこなしているというより、武器として利用しているだけのように思えた。
 デバイスと意思疎通を図り、共に戦略を組み立てるなのはとレイジングハートのような関係とは違う。
 グラーフアイゼン本来の使い手であるヴィータ以上にムチャクチャな攻撃方法――それを見て、なのはは再度思う。
 ヴィータは、いったいどうなってしまったのだろうか。
 主である八神はやての死亡と同時に、彼女の守護騎士であるヴィータとシグナムの二人も消滅したものだと思っていた。
 しかし先ほどのホテル倒壊と同時期に行われた放送――告げられた死亡者の中には、確かにヴィータの名前があった。
 真相が分からない。シグナムはまだこの世界に存在しているのか、ヴィータは誰かに殺されてこの世から消えたのか。
 ルイズの持つグラーフアイゼンに訊けば、何かが分かるかもしれない。が、今はまだ。
 そもそも、悲しんだり考えたりする暇はないのだ。

(ホテルには、まだみさえさんやガッツさんがいる。これ以上壊させるわけにはいかない……全力で止めてみせる!)

 なのはは向かってくるルイズと真っ向から対峙し、加速するハンマースパイクをバルディッシュの刃で受け止めた。
 圧し掛かってくる力は過去ヴィータと交戦した時と等しく、重い。
 でも、挫けたり諦めたりすることはできない。普通の少女みたいな甘えは、なのはには許されない。
 守りたいものがある。友達と、仲間の、大切な命。失うわけには、いかない!

「死ね! 死ね! 死になさいよォォォォォ!!」
「……ぜったい、ダメェー!」

 何度も何度も打ち込まれる鉄槌を、バルディッシュの一薙ぎで全て振り払った。
 どうにかしてルイズからグラーフアイゼンを奪取し、無力化しなくてはならない。
 故になのはは不得手な近接格闘戦に挑むが、使い慣れない鎌は振るうだけで疲労が溜まる。
 そのため、隙も生じやすい。

「!」

 がむしゃらに振り回され続けてきたグラーフアイゼンが不意に軌道を変え、なのはの顎下を狙ってきた。
 バルディッシュの間合いを縫うように潜り込まれた一撃は、バリアジャケットに包まれていない頭部を掠めようとしている。
 反射的に身を引いてそれを回避するが、そこからさらなる隙が生まれてしまった。
 横合いから、真っ直ぐな軌道で振るわれるグラーフアイゼン。
 バルディッシュのか細い柄がそれを防ぐが、発生した衝撃はなのはの小柄な身体を容易く吹き飛ばした。
 流星のように煌びやかに、暗闇を帯びてきた市街地へとなのはが落下する。
 受身として即席の防御魔法を展開するが、それでも落下の勢いを減少させるほどの効果しかなく、音を立ててビルの壁へと衝突した。

87 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:51:10 ID:5zikRWmH
「――っいたた……大丈夫、バルディッシュ?」
『Yes, it is safe』
「にゃはは……やっぱり、フェイトちゃんみたいにうまくはいかないね」

 コンクリートでできた壁に激突――常人、しかも小学三年生の少女ともあれば、笑って済ませられるものではない。
 だがなのはは、普通なら大怪我のところを掠り傷程度で抑え、バルディッシュも目だった損傷はなかった。
 戦いは始まったばかり、これからが本番。泣き言を言う暇も、言うつもりも、なのはとバルディッシュにはない。

(接近戦で対応するのは不利……かといって遠距離攻撃を仕掛ければ、あの子はシュワルベフリーゲンで攻撃してくる。
 もし流れ弾が一発でもホテルに命中すれば、中にいるみさえさんたちが危ない……なら!)

 なのは立ち上がり、再び飛翔した。
 空中で待ち構えていたルイズは未だ牙を剥き出しにした状態。
 戦意を治めず、むしろ高ぶらせて、まずは目の前の邪魔者を排除しようと躍起になっていた。
 ホテルからの注意は逸れている――引き離すなら、今がチャンス。

「あとで絶対、お話は聞かせてもらうから。でも今は――」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 再び突進してきたルイズに対し、なのはバルディッシュで受けようとも範囲攻撃で反撃しよともせず――身を翻し、急加速で撤退した。
 頭に血が上っているルイズは逃げる敵に意識を奪われ、闘争本能のままになのはを追跡していく。
 高速で飛行する魔法少女が二人、戦地をホテルの外周へと移す。
 ――これは、序章のほんの一部。


【D-6・上空/一日目/夜】
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態]:精神完全崩壊/グリフィスへの絶対的な忠誠/全身打撲(応急処置済み)/左手中指の爪剥離
[装備]:グラーフアイゼン(ラケーテンフォーム)(カートリッジ二つ消費)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:平賀才人の眼球
[思考・状況]
 1.殺す(なのはを)
 2.壊す(ホテルを)
 3.生き返らせる(才人を)
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に軽傷(掠り傷程度)、友を守るという強い決意、やや疲労
[装備]:バルディッシュ・アサルト(ハーケンフォーム)(カートリッジ一つ消費)@魔法少女リリカルなのはA's、バリアジャケット
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)、テキオー灯@ドラえもん、支給品一式
[思考・状況]
1:ルイズをホテルから引き離し、無力化する。
2:グラーフアイゼンを奪取し、ヴィータがどうなったかを訊く。
3:シグナムが存在しているかを確認する。
4:フェイトと合流。フェイトにバルディッシュを届けたい。
5:はやてが死んだ状況を知りたい。
6:カズマが心配。

88 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:53:18 ID:5zikRWmH
 ◇ ◇ ◇


 破壊神が通り過ぎた跡は、それはそれは無残なものだった。
 八階建てという、高く堅牢な誇りを掲げていたホテルという名の巨城は面影もなく崩れ落ち、今や元の半分、四階フロアまでを残すのみとなっていた。
 五階から上は既に残骸として地に落ち、周囲に散らばっている。
 ガッツや野原みさえがホームとしていた三階フロアも、上の階層から雪崩れ落ちてくる天井やら何やらによって、凄惨な有様となっていた。
 壁に穴が空いているのも別段珍しくはなく、中からでも日の落ちた世界が一望できる。
 崩れゆく鳴動は止まった。だが、これで崩壊が終わったとはとても思えない。
 三階フロアの天井は現在進行形でパラパラと崩れ落ち、なおも残骸の数を増していっている。
 いつのことだったか――野原みさえは、家族の住まうマイホームがガス爆発により崩壊した時のことを思い出した。
 あれは一瞬の内に弾け飛んだ分ジリジリと迫る恐怖は感じ取れなかったが、このホテルの状況は違う。
 いつ来るかは分からないが、いつか必ず来るであろう完全倒壊の時。一秒後か、一分後か、一時間後か、考えるほどに怖くなってくる。
 関東大震災などがこんな感じだったのだろう。日頃テレビのニュースで見る被災者の方々の気持ちになり、みさえはその身を震わせた。

「ガッツ……それに、ゲインさんやキャスカさんは……?」

 身体が満足に機能するのを確認した後は、改めて周囲を見渡した。
 確認できるのは、乱雑に散りばめられた瓦礫の山々のみ。ベッドやら電話やら冷蔵庫やら、室内にあったはずのものは全て埋もれ、その姿を隠している。
 見当たらないのはホテルの備品ばかりではない。ガッツやベッドで寝ていたはずのゲインもまた、その影をどこかに潜めたままだった。
 まさか、彼等も生き埋めになってしまったのだろうか……渦巻く嫌な予感に駆り立てられ、みさえは足場の整わない残骸の上を歩く。

「あっ……痛ッ!?」

 そこでようやく、自分の足が負傷しているという事実に気づいた。
 瓦礫の破片に足を躓かせ、転倒。原因となった左足は青く膨れ上がり、今頃になって痛みを訴えかけてくる。
 どうやら軽い打撲のようだ。これしきの怪我、ホテルの負った被害状況を考えれば随分と程度が低い。
 みさえは意識を奮い立たせ、立ち上がろうと力を込める。その背後から、

「フリーズ。動くなです人間」

 土埃に塗れた人形が、銃を突きつけてきた。

「あなた……どうして!?」
「まったく、あんな大爆発が起こったっていうのにしぶとい人間ですぅ。まぁ、そのおかげで翠星石も自由になれたわけですけど」

 その人形――翠星石は、取り上げたはずの銃を構え、今にもみさえの後頭部を打ち抜かんと牽制している。

「爆発……? 爆発って……あ」

 翠星石の言葉で、みさえはようやく思い出す。
 あれはたしか六時丁度、ギガゾンビの声がしたと思った瞬間の出来事だった。
 凄まじい怒号と地震のような波に襲われ、すぐに天井が崩壊してきたのだ。
 おかげでみさえも翠星石も、放送での死者や禁止エリアの情報を聞き逃してしまった。
 しんのすけは無事なのだろうか、蒼星石は無事なのだろうか、考える暇もなく、自分の命を拾うことに精力を注がなくてはならない状況に陥る。
 結果として、二人はホテルの倒壊にあっても即死は免れた。その際翠星石は意識を回復させ、同時に強奪された銃も奪還することに成功したのだ。
 みさえは微かに振り向き、翠星石のやや後方に目を向ける。
 そこに転がっていたのは、引き裂かれ、使い物にならなくなっていた誰かの四次元デイパック。
 おそらく翠星石は、あのデイパックから零れた銃を回収したのだろう。だとすれば、あのデイパックは銃を取り上げていたガッツのものに他ならない。
 彼のデイパックがあのような無残な姿を晒しているということは、つまり――

89 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:54:23 ID:5zikRWmH
「ガッツ……ねぇ、ガッツはどうしたのよ!」
「あんなデカ人間しらねーです。ま、大方この瓦礫の下のどこかで野垂れ死んでるんじゃないですか。翠星石には関わりのないことです。それよりも」

 翠星石は突きつけた銃口をみさえの旋毛にグリッと押し付け、覇気を込めた声で言う。

「よくも! よくも翠星石をあんな目にあわせてくれやがりましたねぇ! 人間如きにあんな仕打ちを受けるなんて屈辱ですぅ!」
「仕打ちって……あなたがトンチンカンなことを言ってるからお仕置きしただけよ! それの何がいけないわけ!?」
「あーもう! これだから知能の低い人間の相手をするのは嫌なんですぅ! 今の状況が分かっていないですか!? お前は今から翠星石に殺される運命にあるのです!!」

 癇癪を起こしたように顔を染め上がらせ、翠星石は力の限り銃の引き金を引いた。
 銃声が鳴り、黒く開いた口から殺意の弾丸が飛ぶ――が、それは狙っていたみさえの後頭部を逸れ、天井へと放たれる。
 何が起こったか理解できない翠星石は、同時に自分の身体がみさえの手によって乱暴に振り回されていることを知った。
 隙を突き、小さな人形の身体を捕縛した――このまま投げ飛ばし、抵抗するつもりか。
 翠星石は考えたが、答えはまるで見当違いであり、みさえの行動の真意も一瞬が過ぎる内に知ることとなる。

「――危ない!」

 時間差で届いたみさえの危機を知らせる声は、翠星石に事態を把握させた。
 振り回された体勢のまま、視覚でも確認する。

 翠星石とみさえの後方に、剣を振るう褐色肌の女剣士がいた。

 みさえに気を取られている間に、この女は翠星石の背後に忍び寄っていたのか――ようやく自分がとんでもない窮地にあったことを自覚した翠星石は、遅すぎる恐怖に身を震わせる。
 あと数秒遅れていたら真っ二つという状況だった。げんこつの恨みは消えないが、この時ばかりはみさえの機転に感謝せざるを得ない。
 というか、この女剣士はいったい誰だ。翠星石は一瞬考え、すぐにキャスカという名のミニ人間がいたことを思い出した。

「……スモールライトの効果が切れたのね。それにその剣も……最悪」
「うっ…………ぐぅぅぅ……」

 キャスカが握っているのは、翠星石の銃と同じくガッツが預かっていたはずのエクスカリバーだった。
 あれが彼女の手に渡っているということは、やはりあのズタズタに引き裂かれたデイパックはガッツのものなのだろう。
 だとしたら、なおさら彼の安否が気に掛かる。みさえは未だ姿の見えぬ仲間を捜したい衝動に駆られるが、どうやら眼前の女騎士はそれを見逃してはくれないようだ。

 獰猛な獣のように声を漏らし、現状が把握できていないのであろうキャスカは、混乱気味にみさえと翠星石を襲った。
 グリフィス以外は敵。これはキャスカが定めたルールのようなものであり、目に付く人間、殺せるチャンスがあれば、深く考えずに襲えという本能からくるものだった。
 女と人形のように小さな子供……戦力的に見てもなんら問題ない。右足は骨折により使い物にならなくなっていたが、腕さえ動けば十分に殺せる。
 キャスカはエクスカリバーの柄を握る力を強め、片足で跳躍してみさえに飛びかかった。
 巻き起こる剣風は、みさえのような平凡な主婦には到底回避し切れぬ代物だったが、キャスカが満身創痍なこともあってこれは難なく回避する。

「ねぇ、ちょっと落ち着いてよ! おち……落ち着きなさいってば、ねえ!」

 攻撃を回避しつつキャスカを宥めようとするみさえだったが、混乱の度合いが強いのか、彼女は剣を収めようとしない。
 朝比奈みくるという少女を殺害し、ゲインやセラスに手傷を負わせた凄腕の女剣士――ガッツは保護対象として捉えていたが、やはりセラスの言うとおり彼女は殺し合いに乗ってしまったようだ。
 相手が刃物を持っている以上、翠星石のようにげんこつやぐりぐり攻撃で鎮圧することは難しい。大人しく逃げるのが得策かと考えたが、みさえ自身も怪我人の身。
 いつ崩壊するとも分からないホテル内を、キャスカの剣をかわしつつ負傷した足で脱出する自信はなかった。
 何より、ここにはまだガッツやゲインがいるはずである。彼等の安否を確かめるまでは、安心して避難などできるはずがない。

90 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:55:28 ID:5zikRWmH
「くあああああああああああああッッ!!」
「――ッ!?」

 気合の咆哮と共に、キャスカはエクスカリバーを大きく振り上げた。
 その奇声に一瞬怯んだみさえは瓦礫の足場につんのめり、転びそうになった身体を寸でのところで制御する。
 その間、回避行動はままならず、停止したみさえの上空から真っ直ぐな一閃が振り下ろされた。

「――――」

 目を瞑り、覚悟を決めた。
 これはもう避けようがない。恐れから来る痺れが身体を固めさせるが、死にたくないという強い意識はまだ保っている。
 たとえどうしようもない窮地だとしても、みさえは願った。
 助けを。ピンチを救ってくれる、ヒーローみたいな誰かを待ち望んだ。
 ――その脳裏に荒くれた大男の姿がよぎったのは、否定しない。

「お前はッ!」
(……え?)

 突如、キャスカの驚きに満ちた声を耳にし、みさえはそっと瞼を開けた。
 気づけば、両断されるはずだった我が身は五体満足のまま存在している。
 いったいどうして――答えを求めた視界の先で、キャスカの剣を一心に防いでいる男の姿があった。

「ガ――」

 その名を呼ぼうとして、みさえは異変に気づく。
 目の前で自身を守る障壁のように君臨している男は、脳裏をよぎった彼ほど大柄な体躯ではない。
 晒した上半身に包帯を巻きつけ、荒い息遣いでなんとか立っているその男は――ゲイン・ビジョウだった。

「ゲイン・ビジョウ!」
「よぉキャスカ。一度は撤退したかと思ったが出戻りか? そんな傷まで負って、そこまでして生き残りたいか?」

 ――昼に起こった闘争を再びなぞるかのように、ゲイン・ビジョウとキャスカの二人は対峙する。
 ゲインはみさえがベッドの傍に立てかけて置いたバットを得物とし、キャスカの剣を防いでいた。
 調子が万全ならば両断することも容易かったであろう代物だったが、キャスカ自身もいっぱいいっぱいらしい。
 エクスカリバーを握る手はどこか弱々しく、数多の兵士を率いていた頃の力強さは感じられない。

「驚かせてしまってすまない、ご婦人。少し尋ねたいんだが、君はシドウヒカル、もしくはセラス・ヴィクトリアの知り合いか?」
「両方よ! 二人は今外に出てていないけど、あなたの看病をしていたら突然ホテルが崩れ出して、っていうか今も崩れてる真っ最中で……」
「なるほど……なんとなくだが、状況は把握した。ここにキャスカがいる理由は後でゆっくり聞くとして、とりあえず彼女には眠ってもらわないと……な!」

 降りかかる刃の切っ先をバットで流し、ゲインはキャスカを沈静化させようと腹部に蹴りを放つ。
 だが負傷している身とはいえ、剣を持った傭兵に安易に隙が生まれるはずもなく、ゲインの一撃は空振りで終わった。

「相変わらず鋭いな。女性のものとは思えぬ剣捌きだ。……それだけの力を持ちながら、自分のことしか考えていないってのがマイナスだがな」

 見た目にそぐわぬ豪快さもまた、女性のステータスの一部。ゲインはそう捉えていた。
 だがその力を自分のため『のみ』に使うとあっては、とても褒められたものではない。
 血気盛んなレディは嫌いではないが、少々痛い目を見てもらう必要がありそうだ……ゲインは疼く脇腹を押さえ、キャスカの剣とバットを交わした。

91 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:56:15 ID:5zikRWmH
(自分の命に、興味などはない……。私は決めたんだ。グリフィスを優勝させ、鷹の団を再興する)

 囁くように発した言葉は、ゲインの耳には届いていなかっただろう。
 ゲインは思い違いをしている。キャスカは決して自分が生き残りたいがために戦っているのではなく、ただ一人、敬愛した男の無事を祈り剣を振るっているだけなのだ。

(グリフィス……ジュドー……ピピン……リッケルト……コルカス)

 誰にも思いつかないような知略と、カリスマ性溢れる指揮でみんなを率いてくれたグリフィス。
 投げナイフを得意とし、何事もそつなくこなす参謀役でもあったジュドー。
 巨漢を盾にして何度も敵兵の応酬を食い止め、白兵戦の要として活躍していたピピン。
 幼いながらも常に皆のことを思い、鷹の団を支えていてくれたリッケルト。
 身勝手ではあるが、いざという時には誰よりも果敢に敵に攻めていったコルカス。
 何ものにも変えがたい、鷹の団の戦友たち。

(……ガッツ!)

 一年前に鷹の団を去り、仲間を、グリフィスを裏切り我が道を進んだ――今はもういないガッツ。

(ガッツも、私も、いらない。グリフィスが、いれば……)

 ふと、自分でも驚くくらい仲間に対して献身的な思いを抱いていることに気づく。
 その正体は、あの一年を無駄にしたくないという意地か、未だ潰えぬグリフィスへの思いか、傍を離れていったガッツへの怒りか――。

(深く……考えるなキャスカ。私はただ、敵を斬る。それ、だけでいい……!)

 エクスカリバーの握り手に再度、力を込める。
 グリフィス以外の敵を消す。ガッツであろうと、誰であろうと。そのためにもまず、この場を生き延びてやるんだ。

「いくぞ……ゲイン・ビジョウ!」
「やれやれだな……」

 鷹の団の千人長たる女戦士は、たった一人の男と残してきた仲間のために剣を振るう。
 黒いサザンクロスの通り名を持つエクソダス請負人は、その肩書きの誇りに掛けて、脱出を願う者たちでのエクソダスを目指す。
 観戦するしか道が残されていなかった主婦は、自分でき得る最善の行動を模索し、そして速やかに取り掛かる。
 他者を恨んでばかりの人形は、いつの間にか姿を消していた。
 ――これは、序章のほんの一部。

92 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 20:57:13 ID:5zikRWmH
【D-5/ホテル3階(倒壊寸前)/1日目/夜】
【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大
   :疲労大、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、軽い混乱症状
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]
1:目に付く者は殺す
2:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
3:グリフィスと合流する。
4:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:疲労大、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)
[装備]:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
[道具]:なし
[思考・状況]
1:キャスカを止め、ホテルからエクソダス。
2:市街地で信頼できる仲間を捜す。
3:ゲイナーとの合流。
4:ここからのエクソダス(脱出)
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:中度の疲労、全身各所に擦り傷、左足に打撲
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:なし
[思考・状況]
1:ガッツ本人と、戦闘中のゲインの援護になるような物を掘り起こし、キャスカを止める。
2:ホテルが完全に崩壊する前に逃げる。
3:セラスら捜索隊と合流。
4:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。
5:しんのすけ、無事でいて!
6:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

93 :「ゼロのルイズ」(前編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:00:17 ID:5zikRWmH
【翠星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:全身に軽度の打ち身(左肩は若干強い打ち身)、頭が痛い、全身各所に擦り傷
   :服の一部がジュンの血で汚れている、左肩の服の一部が破れている、人間不信
[装備]:FNブローニングM1910(弾:4/6+1)@ルパン三世
[道具]:無し
[思考・状況]
1:あんなバカな人間共は放っておいて、さっさとここから逃げるです!
2:真紅や蒼星石と合流するです。
3:まずは魅音を殺してやるです。
4:水銀燈達が犯人っぽいから水銀燈の仲間は皆殺しです。
5:水銀燈とカレイドルビーを倒す協力者を探すです、協力できない人間は殺すです。
6:庭師の如雨露を探すです。
7:デブ人間は状況次第では、助けてやらないこともないです。
基本:チビ人間の敵討ちをするため、水銀燈を殺してやるです。
[備考]:第三放送は聞き逃しました。


※ゲインのデイパック:
【支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)】
 みさえのデイパック:
【糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ) 】
 バトーのデイパック:
【支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱、煙草一箱(毒)、 爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類、茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている、茶葉を一袋消費)】
 ロベルタのデイパック:
【支給品一式×6、マッチ一箱、ロウソク2本、9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線 、医療キット(×1)、病院の食材、ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの】
 翠星石のデイパック:
【支給品一式×4、オレンジジュース二缶、ロベルタの傘@BLACK LAGOON、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に、ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING、ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ】
 パチンコ、パチンコの弾用の小石数個、トンカチ、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)、支給品一式、空のデイパック、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ)、首輪
 がホテル内、もしくはホテル周囲の瓦礫の下に埋もれています。全て破損状態は不明。

※ガッツの持っていたデイパックが崩落により損傷、中身が全て吐き出され、使い物にならなくなりました。

94 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:01:26 ID:5zikRWmH
 ◇ ◇ ◇


 園崎魅音と接触し、情報交換を進めながらホテルに帰る道中のこと。
 ちょうど第三放送で死者の名が読み上げられたあたりで、目指していたホテルの上層部分が音を立てて崩れ始めた。
 何事か、と外界から様子を窺う光、なのは、魅音の三名だったが、別段外部から攻撃を受けたようには見えなかった。
 と、視線を注いでいたホテル最上階から、杖か何からしい長物を持った少女が飛び出した。
 あの少女がホテル破壊を行ったのだろうか。
 突然の出来事に混乱する面々だったが、少女が持っているものがどうやら小振りなハンマーらしいと悟ったなのはは、即座にバルディッシュを起動。
 万人が思い描くイメージ通り『変身』して見せた彼女は、ホテルの状況確認を他の二人に託し、一人謎の少女の下へと飛び去っていった。
 そこから、二人の魔法少女による壮絶なバトルが始まる。
 地上からその光景を目にしていた光は、援護できない歯がゆさから奥歯を噛み締めた。
 残念だが、この中で空中戦を行えるのはなのはしかいない。光は任されたとおり、魅音と共にホテルの被害状況を確認するしかなかった。

「よし。いこう、魅音ちゃん!」
「……」

 光は意気揚々とホテルへ歩を向けるが、仏頂面を掲げたままの魅音はその場から動こうとしない。
 巨大な建物が崩れる様を見て衝撃を受けているのかとも思ったが、どうやら違うようである。
 無言を貫く佇まいは貫禄に溢れ、思わず声を掛けるのを躊躇ってしまうほどだった。

「その前に、もう一度約束して。翠星石を殺すのに協力するって」

 ――出会ってすぐに、魅音が光たちに求めたのは友達の仇を討つ『力』だった。
 古手梨花を、部活の仲間を、あんな幼い女の子を銃殺した非道な極悪人形、翠星石。
 あの人形を討つためならば、魅音はどんな試練だって乗り越えてみせる。そう言わんばかりの覚悟の色が、瞳に満ちていた。
 園崎本家次期当主が持つ独特の迫力とでも言おうか、魅音が漂わせるオーラに光は気圧され、若干後ずさる。

「……たとえ相手がどんな悪人だからって、命を奪う気にはなれないよ」
「なんで!」

 魅音が怒鳴るが、光は今回一歩も引かない。

「あいつは……翠星石は! 梨花ちゃんを殺したんだ! 私が仇を討ってやらなきゃいけない……そうしなきゃ、梨花ちゃんの無念は晴れないんだよっ!」
「けど!」

 怒鳴る魅音に反発するように、光は声を張り上げた。

「もしその子が仲間を傷つけるような奴なら……私も容赦しない」

 静かだが、力漲る声。
 無用な殺人などしたくはない、だからといって、仲間を傷つけるような輩に慈悲を与えるつもりはない。
 敵と定めた者は、絶対に倒す。それが魔法騎士の勤めであり、これ以上海のような犠牲を出さないための方法だから。

95 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:02:35 ID:5zikRWmH
「……それでいいよ。あんたも翠星石に会えば、あいつがどんなに非道で救えない奴か分かるからさ」

 光の言葉に一応は納得の意を示し、覇気を治める魅音。
 同時にエスクードも譲り渡し、二人は晴れて本当の仲間と認識し合うことできた。
 翠星石は梨花を殺した、憎むべき『敵』だ。彼女に会いさえすれば、光もその危険性に気づくことだろう。
 今はまだ決断を求めなくていい。そもそも、光が言う『仲間』の中に翠星石の関係者がいないとも限らないのだ。
 いざ頼れるのは自分だけ……ここは殺し合いの現場、裏切りなんてものは付いていて当然なエッセンスなのだから。

「よし、じゃあいこう魅音ちゃん! 早くゲインたちの無事を確かめないと」
「あーその魅音ちゃんってのはちょっと……オジさん照れちゃうかなぁ」
「えぇ? じゃあなんて呼べばいい? 園崎さん? 魅音?」
「んーとねぇ」

 先ほどとは打って変わって、魅音は歳相応の少女らしい仕草を表に出し始める。
 魅音から圧倒されるような威圧感がなくなったことに安堵した光は、それに合わせて少女らしい会話を求めた。
 数秒考えて、魅音はこう口にする。

「……みぃちゃん、なら可。」

 そう発言した時の表情がどこか寂しげな風だったことに、光は気づけず――。

「うん、分かった。じゃあこれからはみぃちゃんって呼ぶことにするよ!」
「なはは……あーこれはこれでちょっと恥ずかしかったかな? まぁいいや、さっさと行こうか」

 両者共に曇りのない笑みを見せ、ホテルへ向かう足を加速させた。

 ――道中で、魅音は思う。かつて自分のことを『みぃちゃん』と呼んでいた、可愛いもの好きの少女のことを。
 ホテル崩壊を目の当たりにしたせいで頭から飛びそうになってしまったが、同タイミングに聞き届いた第三放送では、確かに仲間の名前が呼ばれた。
 前原圭一、竜宮レナ。翠星星に殺された梨花の他に、雛見沢出身の部活メンバーたちが一片に二人も死んでしまった。
 そして、呼ばれた名はそれだけではない。真紅に蒼星石……あの翠星石が姉妹と言っていた、ローゼンメイデンたちの名前も呼ばれていた。

(ざまぁみろ。早くも天罰が当たったんだよ)

 心の中で毒づき、魅音は死んでしまった仲間のことを思う。
 圭一とレナはどこで、誰にどんな風に殺されてしまったのだろうか。

(考えるまでもないさ。どうせあの水銀燈とかいう性悪人形と、カレイドルビーとかって奴がやったに決まってる)

 圭一やレナは人を信用しやすい。圭一などは日頃経験してきたカードゲームの戦略パターンから見ても、相手の裏を読むのが苦手なタイプだ。
 大方、翠星石みたいな潜伏型の殺人者に騙されてしまったのだろう。
 部活仲間を卑下するわけではないが、なんて馬鹿な死に方をしたんだ、とさえ思った。
 相次ぐ友達の死。それに関わるローゼンメイデンという名の人形たち。
 圭一とレナの死を悲しまなかったわけではない。翠星石という宿敵がいるからこそ、悲しめなかったのだ。
 今は悲しむより怒る時……怒って、怒って、これでもかというくらい怒って、怒りに身を任せる。
 良心に従ってなどいたら、翠星石を殺すことはできない。薄情かもしれないが、圭一とレナを弔うのはそれからだ。

96 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:03:51 ID:5zikRWmH
(あんたはもうしばらく、身内が死んだ不幸を味わうがいいさ。たっぷり悲しんだ後に、私が殺してやる。翠星石、あんたを殺してやる!)

 復讐心は潰えることなく、ただ一時だけその身の内に潜めるのだった。



 ――程なくして、光と魅音の二人はホテルの正面玄関まで辿り着いた。
 豪華絢爛を絵に描いたような高級感漂う入り口は見る影もなく崩れ、倒産企業が残した廃ビルのごとく廃れている。
 辺り一帯も凄惨という二文字がピッタリ当てはまるような有様で、ゴミ山と言い表してもいいほどだった。

「酷いねこりゃ……」

 宙には崩落の際に巻き上がった砂埃が依然として漂い、空気を悪くさせている。
 魅音は口元を押さえながら入り口付近の状況を詳しく調べるが、その足取りは重い。
 光も同様で、予想を遥かに超える被害状況に唖然としているようだった。
 これはいよいよ、中にいるであろうゲインたちの安否が怪しまれてきた。

「とにかく、早く中に入ろう」
「うん……いや光、ちょっと待って。この下に何か……」

 急かす光を制し、魅音は玄関脇に転がっていた瓦礫に目を着けた。
 ちょうど人の大きさくらいをカバーできるコンクリート片。その下には、何やら黒い液体のようなものが滲んでいる。
 ペンキや雨露の類ではない。魅音はその正体を本能で感じつつも、確証を得るために瓦礫の撤去作業に入る。
 比重のバランスが傾いていたせいか、瓦礫は前方に押し出すと簡単に転がってくれた。
 そして、魅音は瓦礫の下に埋もれていた一人の人間の姿を確認する。
 滲んだ液体の正体はやはり血で、時間経過と暗がりのせいもあって黒く見えていたらしい。
 見る限り全身の骨は砕け、内臓も外に飛び出ているようだった。
 出血の規模も盛大なもので、頭部からも脳漿と一緒に悪臭が蔓延している。
 一気に顔が青ざめ、気分が悪くなる。
 無理もない。その光景はホテル倒壊の映像などよりも凄惨で、目まぐるしい勢いで胃液を逆流させるには十分な威力だった。
 なにしろ、魅音が見つけたそれは――既に*んでいたのだから。

「う……おげぇえええぇええぇっ」

 溜まっていた内容物を一斉に吐き出し、魅音はその場に崩れ落ちた。
 建物が崩れる様なんかよりよっぽど酷い、壊れた人間を見てしまったのだ。
 視覚から受け取るショックは脳を激しく揺さぶり、途絶えることのない嘔吐感を生み出す。
 光もグシャグシャになった人間の死体を確認し、意気消沈しながら魅音の背中を摩ってやった。

97 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:05:51 ID:5zikRWmH
「これ、光の知り合い?」
「ううん。この人は私たちがホテルに到着する前から、ここで死んでたんだ。その時はこんなに酷くはなかったけど……振ってきた瓦礫に潰されちゃったんだね」

 大量の血液のせいで判別が難しくなっているが、死体はどうやらメイド服を着ているようだ。
 エンジェルモートの制服のような派手のものではなく、もっとシックな西洋風侍女のスタイルを取っているのが分かる。
 圭ちゃんの趣味とはちょっと違うかな……などと思いつつ、魅音は一度は振り払ったはずの友人の姿を再度思い浮かべてしまう。
 刺殺、射殺、毒殺、斬殺、絞殺――圭一やレナは、いったいどんな殺され方をしたのだろう。
 血はどれくらい流したのか、肉体の損傷はどの程度だったのか、苦しかったのか、安らかだったのか。

(駄目だな私……悲しんでる暇なんてないって、さっき言い聞かせたばっかりなのにさぁ……)

 悲しみは全部、復讐心へと転化させる。それが一番楽で、みんなの仇を討つには効果的だったから。
 でも駄目だ。死んだ二人は――特に圭一は――魅音にとって大事な、とても大事な存在だった。
 そんな二人の死を、イメージしてしまったのだ。
 ひょっとしたらこのメイドのような、いやそれ以上に無残な目にあって死んだのではないだろうか、と。
 涙が止まらない。俯いてる暇があれば、その時間を使って仇敵である翠星石を捜せるのに。
 クーガーだって言っていた。迅速に行動すれば、後の予定に余裕が持てると。だから人は速さを求めるのだと。
 さっさと見つけて、さっさと仇を討ってしまえば、その分早く二人を弔えるのに。なのに。

「う……」

 涙の洪水に耐え切れず、魅音はその場に崩れ落ちた。
 翠星石は憎い。水銀燈やカレイドルビーも憎い。憎しみからくる復讐心も強い。
 だがそれ以上に、悲しみが勝ってしまった。二人の死を無視して狂気に身を寄せるような真似が、できなかった。
 仇敵と対面すれば気持ちは変わるかもしれない。でも、今この時だけは。せめて――

「――危ない! みぃちゃん!」

 泣き崩れる魅音の身を、光の不意な警告が届いた。同時に、光が魅音に飛びかかってその身を庇う。
 覆い被さった光の背中に、ホテル玄関口から高速で打ち出されてきた謎の物体が飛来した。

「がぁぅっ!?」
「光っ!?」

 魅音を狙ったそれは光の背中を穿ち、悲鳴を上げさせる。
 落ちたそれを確認したところ、どうやら飛んできたのは何の変哲もない五百円玉くらいの小石のようだった。
 たかが小石と侮ってはならない。その速度は銃弾の勢いに迫るものがあり、命中した箇所から血を滲ませるには十分な威力だった。

「くっ……炎の――」

 痛みを訴える背中に活を入れ、光は即座に反撃の意を示した。
 両の手の平に炎の力を宿し、投石を放ってきた敵へとその矛先を定め、撃つ。

「――矢ァァーーーーー!!」

98 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:07:59 ID:5zikRWmH
 燃え盛る炎の弾丸が、投石の洗礼とも言わんばかりに逆襲の火の粉を巻き上げた。
 既に機能しなくなった自動ドアを突き抜け、内部にいる標的を猛火で襲う。
 悲鳴が返ってくるような反応は得られなかったが、手応えはあった。
 反撃の恐れがないかと外から身を構える光と魅音は、やがて、

「フフフ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」

 奇怪な笑い声を耳にするのと同時に、入り口から出てくる赤い怪物の姿を目にした。

「――ただの人間ではない。この私を楽しませるに十分な素質を持った者……いや、先の洗礼を見るに魔女の同類と言ったところか」

 赤いコートに長身の体躯を包み、男はただ、二人の少女を前に笑っていた。
 全身に漂う異質な波動、見る者に恐怖を与える邪の風格。
 太陽を制し、夕闇を越え、吸血鬼は今、深淵の世界を迎えようとしている。
 それ即ち、戦の本領。何者にも遮ることは出来ない、戦闘本能が活性化を迎える時。

「今宵も満月。魔女と夜宴を迎えるには絶好の空だ。もう一人の方の魔女も捨て置くには惜しいが、ククク……まずは」

 銃弾切れしジャッカルの口火を向け、至高の吸血鬼――アーカードは楽しそうに微笑む。
 少なからずホテルの倒壊に巻き込まれていたであろうその身は何故か無傷のまま健在し、高すぎる障壁としてその場に君臨する。
 仲間の下に向かうには、この高く険しい壁を越えていかねばならない。
 光は窮地を理解し、それでも退くことはなかった。魅音もまた、同様に。
 背筋が感じる恐怖に屈することなく、未知の存在に立ち向かう。それが勇敢な行為なのか愚かな所業なのかは、答え出ず。
 戦いが、始まろうとしていた。
 ――これは、序章のほんの一部。


【D-5/ホテル正面玄関付近/1日目/夜】
【アーカード@HELLSING】
[状態]:全身に裂傷/中程度の火傷(※回復中)
[装備]:鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:0/0発)
[道具]:無し
[思考]:
 1.目の前にいる魔女と闘争を繰り広げる。
 2.ホテルを崩壊させた方の魔女にも興味。
 3.カズマ、劉鳳とはぜひ再戦したい。

99 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:08:53 ID:5zikRWmH
【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(大)、圭一・レナ・梨花の死に精神的ショック、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り)
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている)
[思考・状況]
1:目の前の怪人(アーカード)を倒し、ホテルに入る。
2:どんな手段を使ってでも翠星石(と剛田武)を殺す。
3:圭一とレナの仇を取る(水銀燈とカレイドルビーが関係していると思いこんでいる)。
4:沙都子と合流する。
5:2、3に協力してくれる人がいたら仲間にする。
基本:バトルロワイアルの打倒。
[備考]:光からスぺツナズナイフ×1、支給品一式×1を譲り受けました。

【獅堂光@魔法騎士レイアース】
[状態]:全身打撲(歩くことは可能)軽度の疲労、背中に軽傷 ※服が少し湿っている
[装備]:龍咲海の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(炎)@魔法騎士レイアース
[道具]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(風)@魔法騎士レイアース、、支給品一式、デンコーセッカ@ドラえもん(残り1本)、オモチャのオペラグラス
[思考・状況]
1:目の前の怪人(アーカード)を倒し、ホテルに入る。
2:風と合流。
3:キャスカを警戒。
4:ゲインとみさえが心配。
5:状況が落ち着いたら、面倒だがクーガーの挑戦に応じてやる。
6:翠星石と剛田武を悪人かどうか見極め、危険なようなら対処する(なるべく命は奪いたくない)。
基本:ギガゾンビ打倒。

100 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:10:24 ID:5zikRWmH
 ◇ ◇ ◇


「うわうわぁ〜、なになに地震災害? それとも爆破テロ?」
「ビルが崩壊していく!? まさか、本当にシルエットマシンかオーバーマンでも支給されているっていうのか?」

 放送により禁止エリア指定されたF-6の路上。
 会場内でも屈指の全長を誇る巨大ビルが倒壊していく様を、タチコマとゲイナー・サンガは遠目から確認していた。

「距離から推測するに、あれはD-5エリアに位置する大型ホテルのようだね。倒壊の原因はここからじゃ確認不能っと……」
「何を悠長な! ひょっとしたら中に人がいるかもしれない、僕たちもあそこへ向かおうフェイトちゃん」

 ゲイナーはタチコマの中から傍らを飛ぶ少女――フェイト・T・ハラオウンに呼びかける。
 タケコプターといった特殊な道具を用いることなく、自身が持つ魔法の力のみで浮遊する彼女もまた、巨大な建造物が崩れる様を目の当たりにして呆然としていた。
 その視線の先に、二つの小さな光を捉える。

「!」

 双眼鏡を構え、改めて確認する。
 それは蛍のように淡く空中に点在し、倒壊していくホテルの周囲を飛び回っていた。
 遠すぎてそれが何なのかはハッキリ掴めなかったが、高速で動き回る飛行物体ときてフェイトが真っ先に思い浮かべるものは一つしかない。

(まさか……なのは!?)

 フェイトの知る限りでは、空中をあれだけのスピードで飛行できる存在など他になかった。
 ほんの数秒前、第三放送で知ったヴィータの死……衝撃を覚えたのは確かだが、それでも悲しみを押し込めて、懸命に考える。
 ヴィータが死んでしまった今、このゲーム内で高速飛翔などができるのは、フェイトの他にはなのはとシグナムの二人しかいない。
 もちろんフェイトの知らぬ飛行手段を持つ者がいるかもしれないが、なのはが市街地へ向かったというのなら、あれが親友である可能性は大いにある。

「ごめんタチコマ……先に行く!」

 予感がしたら、居ても立ってもいられなくなった。
 フェイトは仲間の二人に先行する旨を伝えると、抑えていたスピードを全開にし、なのはらしき飛行物体を追跡していった。

「フェイトちゃん、はっやー……。くっそー、ボクにおーばーすきるが使えればー」
「何を言ってるんだタチコマ。それより、僕たちも早くホテルへ向かおう!」
「うん。でもフェイトちゃんの飛んで行った先、ホテルとはちょっと方向がズレてるね。彼女を追うべきか、被災地へ向かって要救助者がいないか確認すべきか……むむむ」
「悩んでいる暇はない! ここも禁止エリアに指定されてしまったし、考えるよりも先にまず動くんだ!」
「おお〜、なるほどー。ようし、分かったよゲイナー君。それでは、『タチコマイナー』ホテル方面へ向け急行しまーす!」

 急旋回フルドライブ。進路をとにかく北へ。
 超高速で飛んでいったフェイトにやや遅れ、タチコマとゲイナーもまた、ホテルを中心に巻き起こった闘争の渦へと飲み込まれる。
 ……ちなみにタチコマイナーの名称は、ゲイナーが元の世界で乗り回していたオーバーマン、キングゲイナーの名に肖ったものである。
 ――そしてこれも、序章のほんの一部。

101 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:11:18 ID:5zikRWmH
【E-6/上空/夜】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に軽傷、背中に打撲、決意
[装備]:S2U(デバイス形態)@魔法少女リリカルなのは、バリアジャケット、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド
[思考・状況]
1:ホテル外周を飛んでいた存在(なのは?)の確認。
2:市街地に向かい、なのはの捜索を行う。
3:カルラの仲間に謝る。
4:なのは以外の友人、タチコマの仲間の捜索も並行して行う。
5:眼鏡の少女と遭遇したら自分が見たことの真相を問いただす。
基本:シグナム、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。

【F-6/幹線道路上/夜】
【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:装甲はぼこぼこ、ダメージ蓄積、燃料を若干消費、飛行中
[装備]:タチコマの榴弾@攻殻機動隊S.A.C
    タケコプター@ドラえもん(故障中、残り使用時間6:25)
[道具]:支給品一式×2、燃料タンクから2/8補給済み、お天気ボックス@ドラえもん、西瓜46個@スクライド
    龍咲海の生徒手帳、庭師の如雨露@ローゼンメイデンシリーズ
[思考・状況]
1:とにかく北上! フェイトを追うか、ホテルへ向かって救助を優先するかは移動しながら考える。
2:フェイトを彼女の仲間の元か安全な場所に送る。
3:トグサと合流。
4:少佐とバトーの遺体を探し、電脳を回収する。
5:自分を修理できる施設・人間を探す。
6:薬箱を落とした場所がそこはかとなく気になる。
[備考]
※光学迷彩の効果が低下しています。被発見率は多少下がるものの、あまり戦闘の役には立ちません。
 効果を回復するには、適切な修理が必要です。
※タケコプターは最大時速80km、最大稼動電力8時間、故障はドラえもんにしか直せません。
※レヴィの荷物検査の際にエルルゥの薬箱を落とした事に気付きました。

【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ロープ、さるぐつわ
[思考・状況]
1:とにかく北上! フェイトを追うか、ホテルへ向かって救助を優先するかは移動しながら考える。
2:フェイトのなのは捜索に同行させてもらう。
3:タチコマの後部ポッドで暖を取る。
4:二人の信頼を得て、首輪解除手段の取っかかりを掴む。
5:さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※タチコマの後部ポットの中にいます。
※タチコマの操縦機構、また義体や電脳化などのタチコマに関連する事項を理解しました。

102 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:12:16 ID:5zikRWmH
 ◇ ◇ ◇


「みなえさんからの連絡が途絶えて既に五分……糸無し糸電話は未だにウンともスンとも言わない」

 すっかり暗み掛かってきた森の中。ストレイト・クーガーはログハウスのドアを開け、一人外の夜空を見上げていた。

「五分ですよ五分。五分もあれば何ができると思います?
 炊事、洗濯、出勤、掃除、洗車、買い物、睡眠。たかが五分と侮ってはいけない。
 そもそも人間は何故速さを求めるのか? それは時間を無駄にしないためです。
 時間を有効的に活用するには、たとえ五分といえど決して無駄にすることはできないのです。
 そう思いませんかセナスさん?」
「……ぅあー、そうですねぇ。そうかもしれませんねー」

 病人のような呻きを上げ――実際本当に体調不良なわけだが――セラス・ヴィクトリアもまた、ログハウスの中から外に顔を出した。
 クーガーの背中で体感した超スピードの悪夢がまだ蔓延しているのか、視点は覚束ず、立っていながらもフラフラと身体を揺らす有様。
 とてもではないが長距離移動、それも高速によるものは無理だろう。本人が絶対に拒否する。

「思えば、俺はどうにもこの世界に来てから時間を無駄にしすぎている。
 イオンさんのお仲間もなのかちゃんやひばるちゃんの友達もみなえさんの御子息もどれもこれも未だに発見できていない。
 知人との合流を素早く果たせばその分あとの脱出作戦に掛けられる時間が倍増するというのに俺の速さはまだその助力すらできていない!
 何故か! それは俺が遅かったから? 俺がスロウリィだったから? いやいやそれは違うぞ結果論だ!
 速さとは唯一無二絶対信憑揺ぎ無く世界を縮めるための最適手段に他ならない! その速さが功を成していないということは
 そこに速さを越えた運命的な何かが介入し俺の進行を邪魔したとしか考えられないよってみなえさんとの通信妨害もまた等しく!
 速さとは文化だ! 人間は常に速く速く行動することでより多くの時間を獲得しより多くの文化を体験することができる!
 速さイコール文化! 実に分かりやすい世界のシステム! 故に俺は立ち止まることができなぁいッ!
 ラディカルグッドスピィィィィィィィィィィィド脚部限定ッッ!! 音信不通だというのなら俺がすぐさま現地に赴きその原因を究明!
 トラブルが起きていようものなら俺のラディカルグッドスピードを駆使して迅速かつスピーディーにそれを解決!
 立ちはだかる者は何人たりとて容赦はしない! そして俺は極めてみせる――文化の真髄を!」

 ログハウスの壁が所々抉り取られ、クーガーのアルター能力『ラディカルグッドスピード(脚部限定)』を形成するための糧となる。
 上げていたサングラスをスチャッと装着し、クラウチングポーズ。鉄砲でも鳴らせば、すぐにでも飛び出していきそうな体勢だった。

「と、いうことでセナスさん。俺は先にホテルへ帰還し状況を確認してきます。
 なーに心配はいらない。この俺にかかれば4000m程度の距離などたかが知れています。
 すぐにセナスさんの下までお戻りし俺がラディカルグッドスピードでスピードの絶頂臨界点までご案内いたしま――」
「結構ですッ!」

 セラスは力強く拒否を示し、クーガーはやれやれと首を振った。
 無駄話はこの辺にしておこう。今は一刻も早く、連絡の取れなくなったホテル待機組の安否を確認しなくては。

「それではストレイト・クーガー…………行って参りむぁぁぁぁぁぁっすッッ!!!」

 怒涛のスタートダッシュを見せたクーガーの背中はあっという間に遠ざかっていき、その速度を見たらセラスはまた気分が悪くなった。

「ぅぷ……みさえさんたち大丈夫かなぁ……てか私も大丈夫かなぁ……おぅっ」

 仲間の窮地は心配だ。だがそれ以上に、あのスピードに対する拒否信号が強すぎた。
 セラスは未だ回復の目処が立たぬ吐き気を治めるため、いそいそとログハウス内のベッドになだれ込んだ。
 ――これもまた、序章のほんの一部。

103 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:13:24 ID:5zikRWmH
【F-7/1日目/夜】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:健康
[装備]:ラディカルグッドスピード(脚部限定)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:ホテルへ急行。状況を確認する。
2:1が終わったらセラスを迎えに戻る。
3:そのあと宇宙最速を証明する為に光と勝負さしてくださいおねがいします。
4:なのはを友の下へ連れてゆく。
5:証明が終わったら魅音の元へ行く。


【F-7/ログハウス/1日目/夜】
【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ少し残っています)、激しい嘔吐感
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@ヘルシング、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:うぷっ……思い出しただけで気持ち悪っ……しばらく休もっ……。
2:ホテルへは『徒歩』で帰還する。
3:キャスカとガッツを警戒。
4:ゲインが心配。
5:アーカードと合流。
6:Q、もう一度ラディカルグッドスピードの速さを体感したいと思いますか? A、いいえ。
[備考]:※セラスの吸血について。
  大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
  原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。

104 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:14:55 ID:5zikRWmH
 ◇ ◇ ◇


 押し寄せてきたのは数多の瓦礫。
 攻め立ててきたのは巨大な重圧。

(俺は……)

 自分の身がどうなったのか、それすらも分からない。
 誰かを庇って必要以上に傷を負ったような気もするし、運悪く足元の崩落に巻き込まれたような気もする。

(俺は……終わったのか?)

 居場所も、傷の度合いも、意識の途絶える直前の状況も分からない。
 そんな気弱にならざる得ない状態で男が思ったのは、大柄な体躯に似合わぬ絶望的な結果だった。

(……いや、違うな。終わってなんかいねぇ。これはまだ始まったばかりだ)

 そんな絶望は、すぐに頭で掻き消した。
 今こうやって思考をしているということは、脳が終わっていない――つまり、生きていることに相違ない。

(始まったばかり、か。……それも違うな。まだ始まってすらいねぇんだ。俺にとっちゃな)

 そう、これはまだ序章とも言えぬ書きかけのページの一部に過ぎない。
 誰が主役となるか、どんな結末を迎えるか、誰にスポットライトが当たるのか――それはまだ未知数なのだ。

(俺は、俺がやるべきことをやるだけさ…………グリフィス!)

 闇の中に宿敵の幻影を捉え、男は奮い立った。


 ――序章が終わり、第二幕が始まる。

105 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:15:43 ID:5zikRWmH
【D-5/詳細位置不明(瓦礫の下?)/夜】
【ガッツ@ベルセルク】
[状態]:詳細不明【元の状態:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)、精神的疲労(中)】
[装備]:カルラの剣@うたわれるもの、ハンティングナイフ、ボロボロになった黒い鎧
[道具]:なし
[思考]
0:???
1:ホテルでセラスらの帰りを待つ。
2:契約により、出来る範囲でみさえに協力する。他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。
3:まだ本物かどうかの確証が得られてないが、キャスカを一応保護するつもり。キャスカに対して警戒、恐怖心あり。
4:殺す気で来る奴にはまったく容赦しない。ただし相手がしんのすけかグリフィスなら一考する。
5:ドラゴン殺しを探す。
6:首輪の強度を検証する。
7:ドラえもんかのび太を探して、情報を得る。
8:翠星石の証言どおり、沙都子達ひぐらしメンバーが殺人者か疑っている。
9:グリフィスがフェムトかどうか確かめる。
基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集。
最終行動方針:ギガゾンビを脅迫してゴッド・ハンドを召還させる。

106 :「ゼロのルイズ」(後編) ◆LXe12sNRSs :2007/02/20(火) 21:16:49 ID:5zikRWmH
 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、愛する男の子のことで頭がいっぱいだった。
 高町なのはは、ホテルを壊そうとする女の子を宥めるのに必死だった。
 キャスカは、戻るべき場所と帰すべき男のことだけを思い、剣を振るった。
 ゲイン・ビジョウは、自分の犯した失態にケリをつけようと躍起になっていた。
 野原みさえは、崩落の恐怖に怯えながら自分にできることを模索していた。
 翠星石は、姉妹たちの死を知ることなく過ちを犯し続けていた。
 アーカードは、迫り来る強者たちとの戦いにただその身を焦がすのみだった。
 園崎魅音は、悲しみに抗いながら一心不乱に復讐を果たそうとしていた。
 獅堂光は、大切な仲間を守るために友が残してくれた剣を構えた。
 フェイト・T・ハラオウンは、今は亡き女傑のためにも親友との再会を強く望んだ。
 タチコマは、新たな相方と共にただひたすら北へと爆走を続けていた。
 ゲイナー・サンガは、チャンプとしての腕を有効に使おうと再度マニュアルを眺め始めた。
 ストレイト・クーガーは、速さ=文化を証明するため走り続けた。
 セラス・ヴィクトリアは、押し寄せてくる嘔吐の波と壮絶な戦いを繰り広げていた。
 ガッツは、いずれ訪れるであろう宿敵に戦意を湧き立てていた。



【ホテル現状】
※現在五階から上の階層が完全に倒壊状態。
 四階以下のフロアも現在進行形で倒壊が進んでおり、予断を許さぬ状態です。
 外壁にも無数に穴が空いており、そこからの侵入、脱出も可能です。
 長く見積もっても夜中(20時〜22時)に突入する頃には完全に崩壊します。

107 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:14:15 ID:h2IRlyHf
「真紅……」
「ヴィータ……」
見知った参加者の名前を呼ばれ、カズマ達一行の足は自然と止まる。
そして太一とドラえもんは真紅の死に際の言葉を、カズマはヴィータとともに戦った記憶を思い出す。

『こんなことになってしまったのは、きっと今まで散々逃げ回ってきたことに対する報いなのでしょうね』
『人形に死ぬということはないわ。ただ、遠くに行ってしまうだけ』

その人形は喋らなくなる最期まで、気高く美しかった。

『あたし、これ撃ったら消えっから。だから、その二人頼む』
『これが、あたし達の全力全開!!!』

あの少女は、その幼い見た目とは裏腹に覚悟を決めた者の目をしていた。

「真紅もヴィータも……死んじゃったんだな……」
「太一君……」
太一は泣きはらした顔を再びゆがめ、悲痛な表情になる。
ドラえもんもその声を聞いて、俯いてしまう。
……すると、そんな二人にカズマが言葉をかける。
「……確かにヴィータは死んだ。その真紅ってやつも死んだ。……こいつは揺るがねぇ」
「…………」
「だったらな、そいつらがここに確かにいたことを忘れないようにする為に名前を刻んでおけ、お前らの中にな」
「名前を……刻む……」
太一はカズマの言葉を反芻しながら、目を瞑る。
まぶたの裏に移るのは、真紅や士郎、そして素子の姿……。
太一は彼女らの姿を目にしっかり焼き付ける。
「……うん、刻んだ。素子さん、士郎さん、真紅、それにヴィータの名前を……」
「あぁ、それでいい」
カズマはそのボロボロの右腕を太一の上に乗せる。
そして、先ほどまで主催者の顔を映していた空を睨みつける。
「オラァ! どこのどいつはしらねーが、お前はこのシェルブリットのカズマがお前をぶっ飛ばす!!! 覚悟しとけよ!!」
いきなり叫んだカズマに、太一とドラえもんが驚く。
だが、その声に驚いたのは、彼らだけではなかった。

――そう、彼らに近づく者達の耳にも届くわけで……。

108 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:16:38 ID:h2IRlyHf


「――な、なんなの!? 野獣の雄叫び!?」
『いえ、人間の叫び声だと思われますが……』
「僕もそう思う……」
いきなり聞こえてきた声に慌てる凛は、そんな冷静なレイジングハートとのび太のツッコミに顔を赤くする。
「わ、分かってるわよ!! いわゆる比喩表現って奴よ、比喩表現!」
「くすくす……。あんまり怒っているとシワが出来るわよぉ」
水銀燈は、そんな凛を愉快そうに横目で見ていたが、声のした前方をすぐに見据えた。
「それにしても、こんなところであんな大声を出すなんてどこのお馬鹿さんなのかしらぁ?」
『…………前方に参加者らしき人達がいる模様です。人数は三名。こちらに接近してきます』
レイジングハートが自らエリアサーチ能力を使って報告をする。
凛はそれを聞き、顔を強張らせる。
「……三人、ね。あんな馬鹿みたいに叫ぶってことはゲームに乗ってるってことはなさそうだけど……」
「どうするの? 近づいてみるぅ?」
「う〜ん、こっちの戦力も絶対的に強いわけじゃないし、念に念を押す意味でも、ここで待機してここにくるそいつらの様子を見てみるべきだと思うわ」
『慎重な判断ですが、それが最善だと思います』
歴戦の猛者であるレイジングハートも凛の作戦に同意する。
元々、気が小さいのび太も勿論、それには頷く。
――ただ一人、水銀燈だけはやや不服そうな顔をしていたが。

通りに面した住宅。
その室内に入り込んだ凛達は、そこの窓から近づいてくる参加者達が通過するのを今か今かと待ち構えていた。
そして、そんな待機している中、凛は外に聞こえないようにやや小さい声で口を開く。
「……で、あんた達はそんな平然としてるけど本当に大丈夫なわけ?」
「大丈夫って……」
『何のことですか?』
「いや、何って…………」
凛の聞き間違いでなければ、先程の放送ではレイジングハートが話していたヴォルケンリッターの一人であるヴィータの名前と、
水銀燈の知り合いである真紅、蒼星石、それに桜田ジュンという名前が呼ばれたはずであった。
凛は知人の死を知ってなお、平然としていた彼女達(杖の人格を女性とするならば)が不思議だったのだ。
「仮にも見知った仲なんでしょ? 少しくらい何か戸惑っても……」
『確かにヴィータは元のマスターの良き戦友であったので、亡くなったことは驚きでした。……ですが、ここで取り乱してしまっては仮マスターの妨げになってしまいますから』
「いや、でもねぇ……」
言葉を詰まらせた凛は、今度は水銀燈の方を見る。すると彼女は――
「言ったでしょう? 私にとって他のドール達は、アリスゲームで戦うべき相手だもの。感傷的になる必要なんて無いわぁ」
「そ、そういうもんなの……?」
「そんなものなのよ。それに――――と、どうやら来たみたいよぉ」
水銀燈は笑みを浮かべたその顔を、窓へと移す。
凛とのび太もそれにつられて、窓を見やると…………。

――ったく、病院ってのはあとどれくらいあるんだよ……!

確かに聞こえた。
それは間違いなく、先程雄たけびを上げていた声と一致しており――

――おい、大丈夫か?
――大丈夫、平気だよ。血も止まったみたいだし……

見れば、道を歩くのはレイジングハートの報告どおり、3名のようだった。
1人は、凛と同じかそれより年上かに見える青年。
もう1人はのび太位の歳の少年。
そして、あと1人は…………

――それよりもずっと俺を背負ってるけど大丈夫か? 重くない?
――大丈夫さ。何たって僕は、未来から来た子守り用ロボットだからね! 力仕事ならお任せだよ。

青くて丸い狸のようなダルマのような生物。
凛がそんな不思議な参加者の姿を見て、どこかで聞いた特徴と一致することを思い出すのと、のび太が窓から飛び出すのはほぼ一緒であった。
「ドラえもん!! ドラえもーん!!!」

109 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:19:14 ID:h2IRlyHf


懐かしい声だった。
その声を聞くのをどれだけ待ち遠しく思っていただろうか。
ドラえもんは、声のした方向を即座に振り向き、そしてその名を呼ぶ。
「のび太君!!!!」
「ドラえもん!!!」
声に応える様に、道路にはその少年が飛び出してきた。
そして、二人は再開を果たす。
「のび太君!! 元気だったかい!?」
「う、うん! 僕は大丈夫だよ! ドラえもんは?」
「僕も何とかね。伊達に頑丈にはできてないよ、うふふふ」
安堵の笑みを浮かべる二人。
それは二人がもといた世界では当たり前の光景であった。
だが、この離れ離れになって殺戮を強要された状況下では、それは何よりも彼らが望んでいたものなのかもしれない。
二人はそんな待望していた再会に興奮し、なおも会話を続けようとするが、それは置いてけぼりにされていた二人によって遮られる。
「……ドラえもん。こいつが……前に言ってたのび太って友達か?」
「――どういうことか説明してくれ。俺にはさっぱりわからん……」
「だったら、こっちにも説明してもらおうかしら?」
そして更に、そんな声とともにのび太の飛び出してきた方向から二人の少女がやってくる。
太一とカズマは、そんないきなりの出来事にただ困惑するしかなかった……。


――カレイドルビーと水銀燈、及びのび太は揃って病院で襲われたところを逃げてきた。
カズマ達が少女たちからもたらされたのはそんな情報だった。
(……ちなみに、3人とも名簿を隈なく見ていたわけではなかったので、カレイドルビーという名に違和感を持たなかったようだ)
「――おいおい、それじゃ病院に行っても敵がいるってことかぁ?」
カズマはそんな情報を聞いて、苦そうな顔をする。
「うぅん。そいつらトラックに乗って逃げちゃったから、もういないとは思うけど…………あ、そうだ! 病院といえば……!」
カレイドルビーはセイバーという騎士の少女を探しているという話をする。
彼女が自分の知人で、病院では彼女に助けられたと教えつつ。
――すると、カズマには当然ながら思い当たる節があるわけで、途端に表情を変える。
「助けてもらっただとぉ? ふざけんな! こっちはそいつに危うくぶっ飛ばされるところだったんだぞ!?」
「ちょ、ちょっと、どういうこと!? セイバーがあんた達を襲ったってこと!?」
「そうだって言ってるだろ!? 太一が腕切り落とされたのだって、あいつが喧嘩売ってきたからで……。それにあいつ……ヴィータはそいつのせいでよぉ……」
カズマはそこまで言うと顔を逸らす。
そして、その話を聞いて今度はカレイドルビーは酷く驚いた表情をする。
「あのトラックの連中を追っ払ってくれたセイバーが一方では参加者を襲った……? どうして……? 何か心変わりでもあったの?」
「んなの知らねぇよ! ――でもな、あいつは覚悟を決めた目をしてた。人を殺すことに躊躇しない覚悟をした目をな」
「で、でもどうして……」
「だから知らないっつってんだろ! とにかくそいつは俺達を有無を言わさず襲ってきた。それだけは確かだ!」
カレイドルビーはカズマの言葉の一言一言を聞いて、セイバーが何を考えているのか分からなくなってゆく感覚に襲われる。
そして、頭を抱えてしまう。
「あぁーもう! どうなってるのよ! 訳分かんない!!」
『仮マスター、落ち着いてください』
「そうよぉ、そんなにすぐにカリカリするなんてちゃんと乳酸菌とってるぅ?」
仲間だというのに小馬鹿にするような口調で水銀燈は喋る。
そして、ドラえもんの背中でそんな水銀燈を見ていた太一はふと彼女に声を掛けた。
「……なぁ、水銀燈だっけか? ちょっといいか?」
「……ん? 何かしらぁ、ボウヤ」
「あのさ、水銀燈って人形みたいにちっちゃいけど、そのさ……真紅の知り合いか?」


110 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:20:58 ID:h2IRlyHf


はっきり言って、カズマ達との接触は水銀燈にとって時間の浪費に他ならなかった。
水銀燈がしたいのは、凛に他の参加者を敵として認識させること。
よって今のように、これ以上彼女が味方と認識する人間を増やすような真似はしたくはなかったのだ。
セイバーという騎士の見解の食い違いを利用して双方を仲違いさせることも出来ないことはなかったが、向こうにはのび太の親友だというドラえもんもいる。
迂闊に唆そうとすれば、のび太が絶対反発するだろうし、凛も疑問を抱くだろう。
つまり、彼らをこれ以上いても彼女には何の得も無かったのだ。
そう、太一という少年が水銀燈に声を掛けるその時までは……。
「ボウヤ、真紅を知ってるの? ここに来て出会ったのかしらぁ?」
「あ、あぁ。真紅は…………」
太一が話すに、真紅は彼らが見知らぬ女に襲われた際に颯爽と現れ、窮地を救い、そしてその時の傷が元で亡くなったらしい。
水銀燈は思った。
戦いを止める為に戦い、そして散った――――実に彼女らしいと。
「……それで、真紅は今、どこにいるのかしら?」
「ここから南のほうにある島へ行く為の橋の近くだよ。…………道の脇に寝かせてある」
「そう。……それじゃ、真紅はそのままになってるってことなのねぇ?」
「俺達、ボロボロだったから埋めてやることも出来なくて…………」
申し訳なさそうに太一は頭を垂れる。
だが、それは水銀燈が期待していた通りの言葉だった。
真紅というローゼンメイデンがジャンクになり、その体がそのまま放置されているという事はつまり、そこにはあるべきものがあるということで――
「ねぇ、カレイドルビー? 私、真紅のところに行きたいのだけれど……いいかしらぁ?」
未だに困惑する凛に、水銀燈は声を掛ける。
すると凛は、その抱えた頭をこちらに向ける。
「どうせ、この後もここを南下するつもりだから、別に構わないけど…………その真紅って子を埋葬してあげるつもり?」
「まぁ、そういうことよ」
「ふぅん。……何だかんだ言って、あんたも仲間を思う心ってのはあるみたいね。……いいわ。そうしましょ」
凛がなにやら勝手に解釈してくれたお陰で、水銀燈の提案は何一つ疑われることなく許諾された。
そして、更に彼女は凛に一つの提案をする。
「それで、この子の事なんだけど、折角お友達に会えたのだから、この人たちに引き取ってもらわなぁい?」
「この子って……のび太君の事? ………………そうね。ようやく知り合いに会えたんだし、私たちといるより安心できるかもしれないわね。
 ……ってことで、私達はもっと南に行くんだけど、あんたはどうする?」
凛がのび太の方を向き、彼に尋ねる。
このままついていくか、ドラえもん達についていくか。
どちらにするのかということを。
するとのび太は、少し戸惑うが、最終的には一つの決断を下した。
「僕は……ドラえもん達と一緒に行きます。ドラえもんとはもう離れ離れになりたくないから……」
――そして、それは水銀燈の思惑通りの答えであった。

111 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:22:28 ID:h2IRlyHf


「……そう、スネ夫君と一緒にいたんだ」
「うん……」
のび太を加え四人になったカズマ達一行は、再び病院へ向け足を進めていた。
そして、その道中、のび太はドラえもんに合えた安堵からか、今まで自分の周りでどんなことがあったのかを話していた。
「しずかちゃんもスネ夫も先生も……キートンさんも銭形のおじさんも皆死んじゃった……。僕はもう誰か死ぬのを見たくないんだ……」
「のび太君……」
「ドラえもん、僕達の力でギガゾンビを倒せるのかな……?」
その言葉にドラえもんは答えられなかった。
首輪によって生殺与奪権が向こうに握られている現状、何か脱出の為のアクションを起こせば、
ギガゾンビはすぐにそれを阻止すべく爆弾を起動させるだろう。
それゆえに、首輪を何とかしたり、タイムパトロールに連絡したいとは思うものの、頼みの綱のひみつ道具も無い状態ではそれも叶わない。
そう、道具が無い現状ではどうにもならない。
それがドラえもんの出した答えだった。
……だが、ここにはたとえどんな現状であろうと“諦める”という言葉を知らない男が二人いた。
「何言ってやがる。倒せるのか、じゃねぇだろ。俺たちはあいつを倒すんだよ! 二度と起き上がれなくらいボコにしてよ!」
「そうだよ。俺達がそんな弱気じゃどうにもならない。だからもっと前向きにいこうぜ、のび太!」
例え相手がどれだけ強大であろうとも決して屈しない向こう見ずの男、カズマ。
そして“勇気”の紋章を持ち、手首を切り落とされた今でも決してくじけない少年、太一。
二人の無謀とも果敢とも取れる言葉を聞いてのび太は、凛に言われたことを思い出した。

――まだ友達、生きているんでしょう? なら、やるべきことは残っているはずよ。

そうだ、やるべきことはまだある。
ドラえもんやジャイアン、カレイドルビーや水銀燈、それに太一やカズマ、その他の参加者達を死なせない為にも、何かをしなくてはならない。
ギガゾンビがどんな人間か知っている自分だからこそ、出来ることもあるかもしれない。
のび太はドラえもんに会えた安堵で忘れかけていたそんな事を思い出し、そして強く頷いた。
「……僕は絶対にギガゾンビの思い通りになんかさせない!」
「のび太君……」
「そうそう、その調子その調子。一緒に頑張ろうぜ、のび太!」
立ち直ったのび太、そんな親友を見て嬉しそうなドラえもん、そして手首を失ってなお絶望しない太一。
そんな三人を満足げに見ていたカズマが正面を見ると、そこには病院の影が。
「……やれやれ。どーやら無事についてみてぇだな。少しでも寝れるといいんだけどな……」

112 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:23:49 ID:h2IRlyHf


「本当に一体どういうことなのかしら……」
カズマ達と分かれて南下して尚、凛はセイバーの行動について悩んでいた。
のび太に荷物を預け、助けを求める声に応えたかと思えば、一方では参加者を急襲する……凛からすれば行動理念が支離滅裂だった。
これでは、接触すべきか否かすら判断に困る。
「まさかセイバーが二人いるわけでもないし…………」
「まだ考えているのぉ? 随分しつこい性格なのねぇ」
そんな悩む凛を水銀燈はさもおかしそうに笑う。
「うるさいわねぇ。仕方ないでしょ、知り合いが訳わかんない行動とってるんだから……」
「あら? でもこうも考えられなぁい? あのカズマって男が嘘をついていて、実はセイバーっていう騎士を襲っていたとか」
「――な! そ、それじゃ、あんたはそれを分かっていてあの子をあっちに引き渡したっていうの!?」
「くすくすくす……冗談よ、冗談。向こうがゲームに乗っていたとしたら、私達は今頃戦いに巻き込まれていたはずでしょ」
言葉一つで表情を変え、右往左往する凛の姿を見て水銀燈はまた笑みを浮かべる。
そう、彼女にとって、今なお思い出すと笑みをこぼしてしまうほど今回のカズマ一行との接触は有益であった。
その理由の一つは、のび太を向こうに押し付けられたから。
水銀燈の目的遂行の為には、戦力外で足手まといなその少年は邪魔者に他ならず、いつか自分達の迷惑になることは必至であった。
だが、彼がいなくなった今、そのような邪魔者も消え去り、心置きなく凛を煽動し戦わせることが出来るようになった。
そして、何よりもう一つの理由は、真紅のローザミスティカの所在が分かったことにあった。
ローザミスティカはアリスゲームにおいて勝ち残る為に絶対不可欠なもの。
しかも、それがあの真紅のものであるとするならば、水銀燈の気分が高揚するのは必然であった。
あのローゼンメイデン有数の戦闘能力を持った真紅のローザミスティカさえ手に入れれば自分の力が数段向上することに加え、
今まで何があっても屈する事の無かった彼女の核というべきそれを手にいいれることで彼女を内部から汚すことが出来る――。
真紅に執着していた彼女にとって、これほどの喜びがあっただろうか。
「とりあえず、そういう難しいことを考えるのは後にして、今は早く行きましょ。真紅が待っているあの橋へ……」
「そ、そうね。このまま路頭にあんたの仲間を晒しておくのも忍びないし……」
動揺する凛は、水銀燈にとっては格好の駒である。
動かしやすくなった駒、消えた邪魔者、そして居場所の分かった真紅のローザミスティカ……。
全ては自分にとっていい方向に物語が進んでいる。
そう、最初からそう脚本に描かれていたように……。

(真紅ぅ、待っていなさいよぉ。今すぐ私があなたのローザミスティカを貰ってあげるからねぇ……)



『………………』
そして、そんな水銀燈の様子を見ていたレイジングハートは言語化こそしないものの、何か彼女が再び不穏な動きをするのではと警戒していた。
彼女が想定する最悪のシナリオを描かせないように――と。

113 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:25:29 ID:h2IRlyHf
【D-3・病院正面 1日目・夜】
【チーム「主人公」】
[方針]:病院を目指し、太一の治療をしつつぶりぶりざえもんを待つ。
    そこが禁止エリアとなった場合、石田ヤマトを探し北へ。
[共通備考]:全員、凛の名をカレイドルビーだと思っています。
      トラックに乗った参加者達を危険人物であると認識しました。

【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:右手首より先喪失(止血処置済み) 失血により貧血気味 ドラえもんに背負われている
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、かなみのリボン@スクライド(止血に使用中)
[思考・状況]
1:治療が必要だと思うが、一刻も早くヤマトと合流したい。
2:ぶりぶりざえもん、ルイズが気がかり。
基本:これ以上犠牲を増やさないために行動する。
[備考]
※アヴァロンによる自然治癒効果に気付いていません。
※第一回放送の禁止エリアはヴィータが忘れていたのでまだ知りません

【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況]
1:病院に着いたら、ぶりぶりざえもんを待ちながら太一の怪我の治療に役立ちそうなものを探す。
2:ヤマトとの合流
3:ジャイアン、なのはを捜す
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:ギガゾンビ打倒への決意/左足に負傷(行動には支障なし。だが、無理は禁物)
[装備]:コルトM1917(残り3発)、ワルサーP38(0/8)
[道具]:支給品一式×2(パン1つ消費、水1/8消費)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、コルトM1917の弾丸(残り6発)
  :スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、USSR RPG7(残弾1)、
[思考・状況]
1:ドラえもん達と行動しつつ、ギガゾンビ打倒の方策を模索する。
2:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
3:ジャイアンを探す

【カズマ@スクライド】
[状態]:疲労大、全身大程度の負傷(打身・裂傷・火傷)
   気絶一歩手前だが気力で抑え込んでいる。いつ倒れてもおかしくはない。
[装備]:なし
[道具]:高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
   のろいウザギ@魔法少女リリカルなのはA's、支給品一式
   鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)ボディブレード
[思考・状況]
1:病院に着いたら、とりあえず休みたい
2:なのはが心配というわけではないが、ヴィータの名前を刻んだこともあるし子供とタヌキを守る。
3:かなみと鶴屋を殺した奴とか劉鳳とかギガゾンビとか甲冑女とかもう全員まとめてぶっ飛ばす。

114 :最悪の/最高の脚本 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/21(水) 00:27:42 ID:h2IRlyHf
【E-2北部・幹線道路上 1日目・夜】
【魔法少女カレイドルビーチーム】
【遠坂凛(カレイドルビー)@Fate/ Stay night】
[状態]:カレイドルビー状態/水銀橙と『契約』/動揺
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式(パン0.5個消費 水1割消費)、ヤクルト一本
  :エルルゥのデイパック(支給品一式、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
  :市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り4パック)
[思考]
1:真紅を弔いに行く。
2:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
3:セイバーについては捜索を一時保留する。
4:高町なのはを探してレイジングハートを返す。
5:ドラえもんを探し、詳しい科学技術についての情報を得る。
6:アーチャーやセイバーがどうなっているか、誰なのかを確認する。
7:知ってるセイバーやアーチャーなら、カレイドルビーの姿はできる限り見せない。
8:自分の身が危険なら手加減しない。
[備考]:
※緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音。名前は知らない)を危険人物と認識。
※レイジングハートからの講義は何らかの効果があったかもしれませんが、それらの実践はしていません。
※レイジングハートは、シグナム戦で水銀燈がスネ夫をかばうフリをして見捨てたことを知っており、水銀燈を警戒しています。
 現在もその疑心は少しずつ深まっている状態です。

【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷/『契約』による自動回復
[装備]:ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、
[道具]:透明マント@ドラえもん、ストリキニーネ(粉末状の毒物。苦味が強く、致死量を摂取すると呼吸困難または循環障害を起こし死亡する)
  :デイパック(支給品一式(食料と水はなし)、ドールの鞄と螺子巻き@ローゼンメイデン、夜天の書(多重プロテクト状態)、ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー、照明弾)
[思考・状況]
1:真紅のローザミスティカを奪いに行く。
2:カレイドルビーとの『契約』はできる限り継続、利用。最後の二人になったところで殺しておく。
3:カレイドルビーの敵を作り、戦わせる。
4:あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。
5:真紅達ドールを破壊し、ローザミスティカを奪う。
6:青い蜘蛛はまだ手は出さない。
[備考]:
※凛の名をカレイドルビーだと思っている。
※透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。また、かなり破れやすいです。
※透明マントとデイパック内の荷物に関しては秘密。
※病院のダストBOXから拾った夜天の書他は、全てデイパックに収納し、凛たちに悟られないよう透明マントで隠しています。
※レイジングハートを少し警戒。
※デイパックに収納された夜天の書は、レイジングハートの魔力感知に引っかかることはありません。

水銀燈の『契約』について
厳密に言うと契約ではなく、水銀橙の特殊能力による一方的な魔力の収奪です。
凛からの解除はできませんが、水銀橙からの解除は自由です。再『契約』もできます。
ただし、凛が水銀橙から離れていれば収奪される量は減ります。
通常の行動をする分には凛に負荷はかかりません。
水銀橙が全力で戦闘をすると魔力が少し減少しますが、凛が同時に戦闘するのに支障はありません。
ただしこれは凛の魔力量が平均的な魔術師より遥かに多いためであり、魔力がない参加者や
平均レベルの魔力しかない魔術師では負荷が掛かる可能性があります。
逆に言えば、なのは勢やレイアース勢などは平気です。

115 :苦労人 ◆/1XIgPEeCM :2007/02/21(水) 01:11:02 ID:9N0H5rNS
時刻は遂に18時を迎え、窓から覗く外の景色もすっかり薄暗くなっていた。
ジャイアン少年の話を聞こうとしていた俺とトウカさん。だがそれよりも先に、本日三度目となる定時放送を聞くことになるのであった。

『まずは悲しい知らせからしておこう。
 遂に禁止エリアに留まって爆死する者が出た。今まで散々忠告した上に、懇切丁寧に警告までしてやっているというのに、だ。』
第三回目の放送で最初に流れた内容はそれだった。
そういえば、第二回目の放送で禁止エリアに指定された場所に、身動きのとれない参加者がいるとか言ってたな。
結局その参加者は禁止エリアから脱出することができず、首輪を爆破されてしまったということだろうか。何とも痛ましいことだ。
その人を助けてあげられなかったことによる悔しさと、ギガゾンビに対する怒りをひしひしと感じながらも、俺は放送に耳を傾けた。
禁止エリアをメモし終え、遂に死亡者の発表となる。

『朝倉涼子』
俺の知っている人物がまた一人呼ばれた。まあ、予想はしていたからさして驚きもしなかった。
ここには市街地を容赦無く破壊するスーパーマンや、一エリア丸々ぶっ飛ばすようなとんでもない奴が存在するのだ。
いくら朝倉でも、そんな奴に襲われたりしたら普通に死ぬわな……。朝倉を追い詰めたアーカードとかいう吸血鬼も、相当ヤバイ奴に違いない。
俺が今こうして生きていられるのも、実はすごい偶然の積み重ねなんじゃないか? と、そんなことを考えてしまう。
何度も言うが、もしトウカさんがいなかったら俺はとっくに甲冑女騎士に葬られていたであろう。本当にここは地獄だぜ。
さて、朝倉の名前も呼ばれたことだし、トウカさんには後でハクオロさんの死について教えてあげなければならないな。

「蒼星石だって!?」
と突然、俺の隣に座っていたジャイアン少年が血相を変えて立ち上がった。
その動揺ぶりはさながら、現在入院中の母上様の病状が急激に悪化したとの報を電話で伝えられたかのようなものだった。
「ど、どうした?」
「くそっ! 翠星石!」
そんな俺の問いを無視して、彼は部屋の出口へ向かって走って行く。
何でそんなに慌ててるんだ? 察するに、蒼星石って奴の死が関与してるみたいだが。
って、そんなことよりまずはこいつを止めなければ!
「待て!」
だが、そんな俺よりも早くトウカさんが立ち上がり、彼の腕を捕まえてそれより先には行かせまいとした。
「離してくれよ! 翠星石を探しに行かないといけねぇんだよ!」
ジャイアン少年は必死に自分の腕を掴むトウカさんの手を引き剥がそうとするが、瞬間接着剤で接着されているかのようにその手は離れない。
トウカさんは女性だが、こう見えても立派なお侍様である。剣を振るうことが多いから、多分握力とか俺より強いかもしれん。
妙に肩身が狭くなったような感覚に陥ってしまうが、今はそんなことを考えている場合じゃない。
俺はトウカさんと同じように彼に近付き、言った。
「どういうことか分からんが、まず落ち着いてくれ。そして話を」
「これが落ち着いていられるかよっ!」
「だから落ち着けって! まだ話を聞いていない!」
俺がそう怒鳴りつけると、彼は一転してぽかんとした表情で俺を見つめた。
「……話?」
「ああ、そうだ、話だ。お前がどうして翠星石ってのを探しているのか、話してくれるんじゃなかったか?」
まさか、忘れたとは言わせないぞ。
パソコンや掲示板で得ることができる情報は増えたが、まだまだ足りない。
できるだけ多くの参加者の情報が得るため、彼のここまでに至る経緯は是非是非聞いておきたいのだ。
「……そうだった、すまん……」
ジャイアン少年は急激に熱を冷まし、申し訳無さそうな顔でそう呟いた。
ふぅ、何とか引き止めることはできたようだが、この少年、少々ハルヒに似て感情の起伏が激しいようだ。仲間想いの良い奴だが。
俺は、トウカさんから開放された彼をソファに座るように促し、話してもらうことにした。
これまでに、一体何があったのかを。






116 :苦労人 ◆/1XIgPEeCM :2007/02/21(水) 01:11:56 ID:9N0H5rNS
「そうか、そんなことが……」
ジャイアン少年が5分ほどの時間をかけて話してくれた事実をまとめるとこうだ。
彼はこの糞ゲームの会場に来て殆どすぐの時、翠星石という動く人形に出会った。
それから暫く二人は知り合いを探すために歩き回っていたわけだが、そこで古手梨花という少女と出会う。
さらにその後、古手梨花の友人であるらしい園崎魅音とも合流することに成功する。
増えていく女性陣。ハーレム気取りか、良い御身分だな少年。
いや、俺も似たようなもんか……?
まあそれは置いといて、だ。悲劇は突然やって来たのである。
第二回目の放送後、動けない参加者の情報を聞いた一行は、近くのE-4を捜索することとなった。
そこで見つけたジュンと言う少年の死体。親しい関係にあったのだろう、それを見つけた翠星石は随分と悲しんだそうな。
ここまではまだ分かる。問題はここからだ。
仲間の一人である梨花がそんな翠星石を慰めようとしたところ、翠星石は突然持っていた銃で彼女を撃ち殺したらしいのだ。
さっきの放送でも、古手梨花という名前はしっかり呼ばれていた。本当に死んでしまったと見て間違いない。
一方、友人を目の前で殺されて怒り狂った魅音は翠星石に襲い掛かったが、反撃されて肩を負傷。
それらを見てジャイアン少年は何とかしなければと思い、翠星石を持っていたうちわで吹き飛ばしたという。
因みに、うちわとは言っても、夏の暑い日に扇いで使うようなただのうちわじゃなく、結構強力な物らしい。
しかし何を誤解したのか、魅音はそれを見て逃げ出してしまい、翠星石とも離れ離れになり……。
ジャイアン少年は一人翠星石を探し続け、今に至るという訳だ。

「どうしてあんなことになっちまったんだよ……ちきしょう……」
悲しみやら悔しさやら怒りやらが入り混じった表情で、無念そうにジャイアン少年は嘆いた。
仲間だと思っていた奴が、急に同じ仲間を殺す瞬間を間近で見たんだ。無理もないよな。
俺はもう一つ、気になっていたことを聞いた。
「そういえば、さっき蒼星石って名前にえらく反応してたよな。その蒼星石ってのは誰なんだ?」
自分で聞いておいてなんだが、大方予想はつく。
翠星石と蒼星石。この二つの名前はよく似ている。恐らく、何かしら深い関係があるはずだ。
「蒼星石は、翠星石の双子の妹なんだ……翠星石の奴、今頃すっげぇ悲しんでるに違いねぇよ……」
ジャイアン少年の口から出た答えは、俺の予想が概ね的を射ていたことを示していた。
妹か。確かに、血の繋がった実の妹が死んだら、普通は悲しみに暮れるであろう。
俺にも妹がいるが……って、待て待て待て! そんな縁起でも無いこと考えるんじゃない!
……と言うか、今頃どうしてるんだろうな、あいつ。まさか、俺が突然居なくなって泣いたりしてないだろうな。
「気持ちは分かるが、あまり勝手な行動は起こさぬようにしてくれ」
トウカさんが強い口調でそう言った。
彼はその言葉を受けて俯き、「ごめん、キョン兄ちゃん、トウカ姉ちゃん……」と謝罪表明。
ま、別に謝られるほどのことじゃないとは思うんだがな。俺は、別に気にしてないと返した。

そうこうしている内に少年も話すことが無くなったのか、俺達三人の間に沈黙が訪れる。
しかしどういうことであろうか。不思議なことに、彼は立ち上がろうとしなかった。
「探しに行かないのか?」
俺がジャイアン少年に向かって問うと、彼は意を決したようにこう言った。


117 :苦労人 ◆/1XIgPEeCM :2007/02/21(水) 01:12:52 ID:9N0H5rNS
「キョン兄ちゃん、トウカ姉ちゃん! 俺と一緒に翠星石を探してくれ!」
「え?」
あまりに唐突。
俺がその言葉に呆気にとられていると、彼は両膝と両手のひらを床に付き、土下座するための姿勢をとった。
「頼むよ二人共! 力を貸してくれ! この通りだ!」
懇願するように言って、ジャイアン少年は深ーく頭を下げた。
既に人一人殺している奴を探すのに協力する。常識的一般的普遍的に考えて、そんな危なっかしい取引はどんなに大金を積まれたって迷うだろう。
そいつが完全に正気を失って、手当たり次第に殺し回ってる可能性もあるなら尚更だ。
俺だって自分の命は大事だし、できればそんなこと御免蒙りたいものである。
しかし。しかしだ。
SOS団に加入(と言っても強制的にだが)してからというもの、宇宙人、未来人、超能力者など、俺の知っていた現実を遥かに超越したものを俺は数多く見てきた。
命に関わるような厄介事に巻き込まれることもあったし、ある時には全世界の危機だって体験した身だ。今更そんなことを恐れてどうする。
それによくよく考えてみたら、こんな子供を一人で行かせる訳にもいかないじゃないか。
おまけに、これだけ必死にお願い申し上げるときたもんだ。ジャイアン少年のこの行動は、俺の中の良心を揺さぶるには十分すぎる威力を持っていた。
俺はこいつを助けてやりたい。つくづく自分の甘さに嫌気がさしながらも、俺はそう思った。
だが、俺は良くても……。

「トウカさんはどう思います?」
俺は、この忌々しいゲームが始まって約18時間、ずっと一緒に行動してきた仲間であるトウカさんに意見を求めた。
彼女は少し考えるような表情をした後、こう返してくる。
「エヴェンクルガの誇りにかけ、キョン殿をお守りするのが某の役目。
 しかし、やはりこのような幼子を放っておく訳にもいかぬ。某は武殿もお守りし、同時に人探しにも最大限の協力をしたいと思う」
その意外な返答に、俺はちょっぴり驚いた。
彼女は俺を自らの命に賭けてでも守り通すと言ってくれた人だ。
てっきり俺は『キョン殿を危険な目に遭わせるわけにはいかぬ』と反対するかとも思ったんだが……。
まあ、結果オーライだ。良かったな少年。
俺はトウカさんに一度頷いてから、未だに頭を下げ続けているジャイアン少年に声をかけた。
「頼むから頭を上げてくれ。協力してやるから」
俺がそう言った途端、少年は瞬時に頭を上げた。その反応の速さに俺は思わずたじろぐ。
沸騰してピーピー言ってるヤカンを触って、あまりの熱さに反射的に手を引っ込めるのと同じくらいの速さだ。
と、今度は両肩を激しく揺さぶられる。
「本当か!?」
「あ、ああ。俺達にも探し人がいる。仲間は多いに越したことがないしな」
俺の言葉を受けて、彼の表情は見る見る内に希望に満ち溢れていく。何故だか俺はそれを見て、いやぁな予感がした。
「ありがとう! 心の友よー!」
「うおっ!」
なんと言うことだろうか、ジャイアン少年は感涙混じりの声で叫びながら俺に抱きついてきた。
ちょっと待ってくれ。こう言うとなんかアレだが、俺はお前の友達じゃない。 出会ってまだ一時間も経ってないんだぞ?
だのに、そんな大それた称号を進呈されてしまうとは、嬉しいやら迷惑やら……。
と言うかそんなに強く抱きしめられると、く、苦しい! 苦しいっての!
「は、離せ……!」
「キョン殿!」
「あ……」
ジャイアン少年の豊満なボディから開放された俺は、直後盛大に咳き込んだ。
はぁ、やれやれ……また、大変なことになりそうだ。






118 :苦労人 ◆/1XIgPEeCM :2007/02/21(水) 01:13:53 ID:9N0H5rNS
【D-4・雑居ビル/1日日 夜】

【剛田武@ドラえもん】
[状態]:健康 仲間の分裂に強い後悔、額にこぶ 焦り
[装備]:虎竹刀@Fate/ stay night、強力うちわ「風神」@ドラえもん、
[道具]:支給品一式、エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、
    ジャイアンシチュー(2リットルペットボトルに入れてます)@ドラえもん 、
    シュールストレミング一缶、缶切り
[思考・状況]
1:翠星石が非常に心配。キョン達と共に一刻も早く探し出し、落ち着かせる。梨花の件についての理由も聞きたい。
2:手遅れになる前に、のび太とドラえもんを見つける。
3:逃げた魅音もかなり心配。必ず探し出し、守る。
基本:誰も殺したくない
最終:ギガゾンビをギッタギタのメッタメタにしてやる

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:全身各所に擦り傷、ギガゾンビと殺人者に怒り、強い決意
[装備]:バールのようなもの、わすれろ草@ドラえもん、ころばし屋&円硬貨数枚
[道具]:支給品一式×4(食料一食分消費)、キートンの大学の名刺、ロープ、ノートパソコン
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る
1:武の翠星石探しに協力してやる。
2:トウカにハクオロを殺した犯人について話す。
3:掲示板が気になる。
4:『射手座の日』に関する情報収集。
5:トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合い及び、ハルヒ達を捜索する。
6:アーカードを警戒する。
7:あれ? そういえばカズマってどこかで聞いたような……
[備考]
※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照ということで

【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:左手に切り傷、全身各所に擦り傷、額にこぶ
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(食料一食分消費)、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
基本:無用な殺生はしない
1:武の翠星石探しに協力する。
2:キョンと共にキョン、君島、しんのすけの知り合い及びエルルゥ達を捜索する。
3:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンと武を守り通す。
4:ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す。

119 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:43:28 ID:oS5i1Nn8
 ヴィータが死んだ。

 昔――もう思い出せないほど遙か昔から、常に共にあった仲間。
 そして、道を違えた敵。
 どのような形であろうとも、違えた道が交わることは、もう、ない。

 ヴィータから奪ったデイパックに入っていた、濡れた彼女の服。はやてが自分達にと与えてくれたものだ。
 騎士甲冑と同じように。あるいは、もっと大切な何かと同じように。
 何の因果か、それが今は自分の手元にある。

(死力を尽くさねばならない敵が一人減った。ただそれだけのことだ)

 そんな思いとは裏腹に、服を握りしめる拳に力が入る。
 濡れた服から雫が垂れた。

 ヴィータが死んだということは、レヴァンティンを振るうヴィータすらも屠った猛者がいるということでもある。
 そんな相手と正面切って戦うことになれば、確実に勝てるとはとても言い切れない。
 生き残るためには、自分の持ち手を慎重に使っていく必要がある。

 近接戦闘で用いる斧が一本。
 遠距離からの狙撃を可能にする弓矢。矢は残り二十本。
 銃が二丁。引き金を引くだけの力で人を殺し得る兵器。扱いに長けていなくとも、いざとなれば弾を当てる術はいくらでもある。
 奇襲にも撤退にも使えるスタングレネードが四個。
 切り札たるペンダント。カートリッジ一発分の魔力を有する。
 そして、全ての戦術の要となるクラールヴィント。

 今まで自分達が何の気兼ねもなく戦うことに集中していられたのは、シャマルの支援があったからこそだ――それをこの戦いの中で改めて思い知った。
 対象の位置を把握する。
 姿を隠す。
 通信を傍受、あるいは阻害する。
 傷を治療する。
 クラールヴィントは多くのことを賄える。とはいえ、自分が使えばシャマルほどの効果は期待できないが。空間制御に至っては扱うことすら難しい。旅の鏡のような高度な術式は望むべくもない。
 それでもなお、極めて有用なものであることには違いない。これからも最大限に活用していかねばならない。

 索敵の感度と範囲とを増して、周囲の様子を伺う。
 やはり生命反応はない――が、代わりにそれとは異なる何かに気付いた。魔力の反応ではない。反応がないわけでもない。ただ一点、反応がないという結果すらもないのだ。
 幸い、電車の出発までにはまだ時間の余裕がある。
 備えを少しでも充実させられる可能性があるならば、調査しておくのもいいだろう。先程のペンダントのような思わぬ収穫があれば儲けものだ。

(少し早いが……出るか)

 そして、シグナムは立ち上がった。
 ヴィータの服をその場に残して。





120 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:47:28 ID:oS5i1Nn8
 ほど近い場所にあったビル――であったもの。
 それを瓦礫の山に変えたのは何なのか、もう伺い知ることはできない。あまりに時が経ちすぎている。

 奥にそびえる鉄柱が二本。
 鉄柱の下には、人一人”分”の屍。
 少なくとも、これは自分とは違う生き方を選んだ人物だ。
 何者かが瓦礫を掘り返し、屍を見付けだし、埋葬し、墓碑代わりの鉄柱を立てた。ただの殺人者がこのように弔われることなどあるはずがない。
 一方でその何者かも、ここまで瓦礫を掘り返しておきながら、屍を押しやってまで他の何かを探そうとはしなかった。
 やはり自分とは違う。
 今の自分は、必要とあらば何だってできる。人殺しだろうが、死体漁りだろうが、墓暴きだろうが。

 埋められていたのはただの肉塊ではない。むしろ、肉と呼べるようなものはほとんどないと言っていい。赤い液体を滴らせる金属や繊維の塊を、何の感情も抱かずに脇へと避けていく。
 屍のさらに下。
 瓦礫をいくつか取り除いて、ようやっとそれらを見付けた。

 奇怪な形の短刀と、デイパックが一つ。

(原因はこの短刀だな)

 ビルの倒壊に巻き込まれて無事だったことを考えれば、相当頑丈な代物ではある。いくら頑丈だとはいえ、どう見ても斬り合いには向かない形状だが。
 この短刀が、魔法による探知そのものを完全に無効化している。故に結果すらない。
 所謂ロストロギアのような、不可知の道具なのだろう。それも、AMF――アンチマギリンクフィールドと同質の何かを局所的に発生させる機能を有した。
 この特殊な効果には何かしらの使い道がある。
 とりあえず自分のデイパックに放り込んでおく。

 続けて、血を吸って変色したデイパックに手を突っ込む。
 まず出てきたのは、二つの真っ新なデイパック。
 どちらも中身は大して役に立ちそうにもないがらくたばかりだ。それらは脇に捨て置いて、さらに中を漁る。

(これは――)

 上等な拵えの柄に、すらりと伸びる鞘が現れた。またも日本刀である。
 さすがに呑気に真贋を確かめているほどの時間はない。
 持っていく価値がありそうなのはこのデイパックだけだ。それがよりにもよってどす黒く血に染まったデイパックだというのは、何とも自分にはお似合いの話ではある。
 シャワーで洗い流したばかりの両手も、すっかり血で汚れてしまった。
 大したことではない。
 既に己が両手は業にまみれている。血の汚れなど、気にすることはない。





121 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:50:39 ID:oS5i1Nn8
 車内は閑散としていた。無論、乗客が自分一人だけだからというのが一番の理由だが、それだけが理由だというわけでもなかった。
 妙に真新しい内装からは、人々の生活というものが全く感じられない。
 スピーカーからは耳障りな放送がだだ漏れている。
 聞かずに済むなら済ませたいものだが、そういうわけにもいかない。さりげなく重要な情報を流している。

『本列車は侵入禁止区域を通過する事があるギガガ〜本車両内に限り皆様の安全を約束するギガ〜』

 参加者の自爆死ではなく殺し合いをこそ望むギガゾンビにとって、こんなことで嘘を吐いて首輪の爆破を誘発させても何ら面白くはあるまい。信用して問題ないだろう。
 第二回放送を聞き逃している以上、この先にあるかもしれない禁止エリアの存在を無視できるのは有り難い。
 そのままシグナムは腰を落とした。
 座席ではなく、床の隅に。
 座席に座って外から丸見えというのは、あまりに間の抜けた話だ。電車に乗っていることを誰かに気取られでもしたら、無駄に危険を抱え込むことになる。

 そして、わずか数分の電車の旅が始まった。
 鈍行をも下回る速度で、電車はのんびりと進んでいるようだ。周囲が田園風景ならばともかくとして、このような殺伐とした場所にはあまりに不似合いではある。
 目を閉じ、周囲の気配を探りながら、そんなことを考えていた。

 唐突に悪寒が走る。
 シグナムは目を見開いた。
 何者かの殺気、あるいは魔力を感じたわけではない。わざわざ傍受するまでもなく、クラールヴィントを通して流れ込んでくる情報の嵐。
 その内容を即座に理解することはできない。が、意図を察することぐらいはできる。

(禁止エリアか!)

 首輪に警告を与え、そして警告の後に爆破させるための通信。
 にも関わらず、首輪が警告を発する気配はない。車内放送で言っていた通り、電車の中は安全なようだ。
 出発してからの時間から察するに、今はちょうどE-4のあたりだろう。
 もしクラールヴィントがなければ、自分が禁止エリアに突入したと気付くことすらできなかった――

(……何故だ?)

 電車の外壁が通信を遮断しているわけではない。クラールヴィントに伝わっているのと同様に、この首輪にも伝わっているはずだ。
 なのに首輪は警告を発しない。突然爆発することもない。

 首輪の爆弾や禁止エリア自体がブラフだったのか。
 この殺し合いが始まるその時に、二人の人間が爆死させられたのをこの目で見た。たまたまギガゾンビに楯突いた二人の首輪にだけ、たまたま本当に爆弾が付けられていた――それではあまりに都合が良すぎる。
 禁止エリアに留まって爆死した者が出たと、先の放送にもあった。実際に何かしら仕掛けてきている以上、禁止エリアは有効だと見るべきだ。
 それらを勘案すれば、ブラフの可能性は捨てざるを得ない。

 では、どうして電車の中にいれば安全なのか?

 加えて、先の短刀を思い出す。クラールヴィントによる探知を一切合切無効化していた短刀。
 そのようなものを支給品として参加者に配るぐらいだ。普通に考えれば、禁止エリアでの探知を同じように無効化しない手はない。この通信に対して逆探知をされて、出元を暴かれるような危険性を残す理由がない。
 探知しても無駄だとタカを括っているのだろうか。
 それとも、わざと探知させているのだろうか。
 あるいは――

 ――そこで、情報の嵐が途切れた。
 E-4を抜けたのだろう。
 ふと沸いた疑問に少しだけ熱くなっていた好奇心が、急激に醒めていくのを感じる。

 E-4が第二回放送で聞き逃した禁止エリアのうちの一つである。
 電車の中にさえいれば禁止エリアの影響は受けない。

 重要なのは、たった二つの事実だけ。それ以外のことについてどれだけ考えようとも、今の自分にとってはもう無意味なことだ。
 故に、シグナムは考えるのを止めた。





122 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:53:20 ID:oS5i1Nn8
 電車は予定通りにE-6の駅へと到着した。
 ホームには薬莢が散らばっているが、それはもう過ぎ去った台風の跡だ。駅の構内およびその周辺にかけて、誰もいないことを既に確認している。
 予想していたように、F-1の駅とほぼ同じ構造になっている。待ち伏せに使うのも悪くないだろう。
 急いて事をし損じてはならない。
 十分に状況を吟味して、それから駅を出るか待ち伏せるかを決めればいい。

 ビルの倒壊現場で入手した刀を、今度はデイパックから完全に取り出した。
 その抜き身を空気に晒し、じっくりと眺める。
 幾分小振りの刀で、本来の使い手の体格と太刀筋に合わせてあるようだ。自分にとっては少々物足りないが、それでも実戦で使い込まれてきた風格は確かなものであろう。真贋で言えば、間違いなく真に当たる。
 ――と。
 足下に一枚の紙が舞い降りた。
 刀をデイパックから引き抜いた際に、一緒に出てきたもののようだ。ひとまず刀は鞘に収め、その紙を拾う。

   ――獅堂光の剣:獅堂光以外の”人”が触れたら対象を燃やす――

 そう書かれている。
 刀ではなく、剣と。
 デイパックの中を覗き込むと、確かにもう一本、剣の柄らしきものが見える。
 刀の存在だけを確認してこのデイパックを選んだが、これは嬉しい誤算だ。その特殊な仕様から鑑みるに、魔法に類する品である可能性が高い。

 幸か不幸か、シグナムは”人”ではない。
 死ねば何も残らない。
 この地に数多く晒されているような屍すら。あるいは誰の記憶にさえも。

(高町なのは、それにテスタロッサは――)

 たとえ二人がまだ生きていたとしても、二人が自分のことを記憶に残すはずがない。
 死ぬ人間は記憶を残せないのだから。
 二人とも死ぬのだ。殺されて。それが誰かの手によるものか、我が手によるものか。その程度の違いでしかない。
 互いに好敵手と認め合ったフェイトとの決着も、もう果たされることはないだろう。偶然相見えることがあったとしても、真っ当な決闘とはいくまい。
 殺せるならば確実に殺す。
 己の身に危険が及ぶ前に逃げる。
 自分に許されているのは、そんな戦い方だけだ。



123 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:55:28 ID:oS5i1Nn8
 ともあれ、死を超えて存在し続ける心などというものは有り得ない。
 もしそれが実在するのであれば――

(……私の前に、ヴィータが立ち塞がったはずだ。何度でも)

 ――はやての心が、死を超えてなおここにあると証明するために。

 もはや恐れるものなど何もない。何人たりとも己の信念を覆すことはできない。
 唯一人、それを為し得たかもしれなかったヴィータは、もういないのだから。
 はやての心が死によって失われたように、ヴィータの心もまた死によって失われた。死ねば何も残らない。意志は継がれず、ただ消えてゆく。皮肉なことに、ヴィータ自身の死によってそれは確かなこととなった。

 なれば、あとは己の信念を貫き通すのみ。
 必ず生き残る。最後の一人として。

「……剣よ。私は”人”か? それとも”人”あらざるものか?」

 全ての想いを振り払って――振り払った気になって、抱え込んで――剣の柄を掴む。
 そして一気に引き抜いた。

 真っ赤な柄に、複雑な形状の鍔。長大な両刃の刀身。
 燃やされることはない――いや、燃えるような何かだけは、確かに伝わってくる。

 アームドデバイスではない。デバイスのような魔法補助装置ですらない。
 匠の技で鍛え上げられ、実戦を潜り抜けてきた業物とも違う。
 では何なのか。
 これは、純然たる炎の意志だ。
 炎の魔剣レヴァンティンに勝るとも劣らない一振り。己が炎の魔力を全て受け止められるだけの器だと確信する。

「そう、私は”人”あらざるものだ。ならば私は、一体何だ?」

 剣は答えない。
 身を焦がすほどの烈火を内に秘め、その刃に鈍い輝きを湛えるだけである。






124 :永遠の炎 ◆q/26xrKjWg :2007/02/21(水) 01:56:48 ID:oS5i1Nn8
【E-6/駅/夜】

【シグナム@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:ほぼ全快/騎士甲冑装備
[装備]:獅堂光の剣@魔法騎士レイアース
    クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはA's
    鳳凰寺風の弓@魔法騎士レイアース(矢20本)
    コルトガバメント(残弾7/7)
    凛のペンダント(残り魔力カートリッジ一発分)@Fate/stay night
[道具]:支給品一式×3(食料一食分消費)、スタングレネード×4
    ルルゥの斧@BLOOD+、ルールブレイカー@Fate/stay night
    トウカの日本刀@うたわれるもの
    ソード・カトラス@BLACK LAGOON(残弾6/15)
[思考・状況]
1 :様子を見て、駅を出るか待ち伏せるかを決める。
2 :無理をせず、殺せる時に殺せる者を確実に殺す。
基本:自分の安全=生き残ることを最優先。
最終:優勝して願いを叶える。
[備考]
※放送で告げられた通り八神はやては死亡している、と判断しています。
 ただし「ギガゾンビが騎士と主との繋がりを断ち、騎士を独立させている」
 という説はあくまでシグナムの推測です。真相は不明。
※第二回放送を聞き逃しました(禁止エリアE-4については把握)。
※シグナムは『”人”ではない』ので、獅堂光の剣を持っても燃えません。



【F-1/ビル倒壊現場】アイテム状況

※以下については、シグナムに回収されました。
 素子のデイパック(支給品一式、トウカの日本刀@うたわれるもの、獅堂光の剣@魔法騎士レイアース )
 ルールブレイカー@Fate/stay night

※以下については、役に立たないと判断されてその場に残されています。
 ルイズのデイパック(支給品一式、水鉄砲@ひぐらしのなく頃に、もぐらてぶくろ@ドラえもん、バニーガールスーツ@涼宮ハルヒの憂鬱)
 士郎のデイパック(支給品一式、瞬間乾燥ドライヤー@ドラえもん)

※以下については、シグナムには発見されませんでした。
 ジュンのデイパック(支給品一式)
 ベレッタ90-Two、物干し竿 ベレッタM92F型モデルガン、
 弓矢(矢10本)@うたわれるもの、オボロの刀(1本)@うたわれるもの


125 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:17:02 ID:V7svAaoU
赤い陽と共に仮面の男が虚空に消える。
木々の合間からその光景を眺めていたロックは、強くほぞを噛み締めた。

それは泣き声の聞こえる方向に向かって歩いていた時だった。
夕闇の迫る空に現れたのはギガゾンビ。三回目の定時放送だった。
放送の中にはレヴィや、しんのすけの母の名前は無かった。だが・・・
「うそ、ですわ・・・圭一さん、レナさん・・・・・・・梨花・・・」
背負った少女――北条沙都子が小さな呟きを漏らす。
呆然とした面持ちで紡がれたのは先程、死者として読み上げられたもの。
ここまで来る道すがら、彼女に教えて貰っていた大切な仲間達の名前だった。
「沙都子ちゃん・・・」
「う・・・あ・・・ぁああああああああああ!」
身を案ずる言葉を掻き消し、沙都子が涙を流しながら叫ぶ。
そして、背中の上で我武者羅に手足をばたつかせ始めた。
「お、落ち着くんだ、沙都子ちゃん」
泣きながら暴れる少女を、ロックは何とか支えようとする。
しかし、子供とはいえ二人の人間を抱えた状態ではそれも難しく。
少女の身体は、広い背中から取り落とされた。
木の根が浮かぶ地面に身体を勢いよく打ち付けながら、それでも沙都子は泣きつづける。
不安げな眼差しを向けるしんのすけを大丈夫と言うように抱きしめながら、ロックは少女にかける言葉を探していた。



薄暗くなってきた森の中に少女の泣き声が響く。
三度目の放送が終わった後も、川沿いの地面に蹲りエルルゥは涙を流し続けていた。
幸い、放送に見知った名前は無く、ここも禁止エリアでは無さそうだった。
アルルゥを探しに行かなければいけない。だが、せめてもう少しの間だけ・・・
そんな思いを胸に泣きつづけていたエルルゥの動きが、ふと止まる。
声が。自分以外の泣き声が、木々の向こうから流れ出てきていた。
自分よりも幼い少女の泣き声。それを耳に受け、エルルゥはゆっくりと、しかししっかりとした足取りで立ち上がる。
目の前の茂みを抜け、声のする方向へと向かう。
・・・そこには、幼い男の子を抱き抱えた成人男性と、地面に寝転び泣き叫ぶ幼い少女の姿があった。
「・・・エルルゥ?」
驚いたような表情を向ける男性――ロックに軽く頷くと、エルルゥは改めて少女へと目を向ける。
年はアルルゥと同じくらいだろうか、大きな声を上げながら泣き叫ぶ少女。
彼女の片足は何かに叩き潰されたように酷い有様になっていた。
その惨状に顔を歪めながらも、エルルゥは思う。彼女は足の痛みで泣いているのではない、と。
「貴方も、誰か大切な人を亡くしたのね」
自らも涙を流しながら・・・エルルゥはそっと少女に手を伸ばす。
そして、地面に転がっていた彼女を抱き起こすと、そのまま胸に体を持たれかからせた。
腕や脚を振り抵抗する少女を無言で抱きしめ、エルルゥはその背中を撫で続ける。
やがて、少女の抵抗は徐々に小さくなり、それに比例して彼女の泣き声も収まってゆく。そして・・・
「・・・これで、いいんだよね。お婆ちゃん・・・」
エルルゥがそう呟く頃には、少女は疲れ果て、寝息を立て始めていた。

126 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:21:16 ID:V7svAaoU
眼を開けると、そこは見慣れた場所だった。
「ここは、梨花のお気に入りの・・・」
「そうなのです、今晩は月がとっても綺麗なのですよ」
背後からの声に沙都子は振り返る。そこには・・・とても、とても大切な、親友の姿があった。
「りかぁ! 心配させないでくださいまし!
 やっぱり・・・やっぱり、あれは間違いだったんでございますわね!」
「にぱー」
沙都子の怒鳴り声に、梨花は誤魔化すような笑みを返す。
思えば彼女の親友はいつもこうだった。
いつも、いつも変わらぬ笑顔で・・・それでいて、時々何かを諦めたかのような顔をするのだ。
沙都子はそんな親友が心配でもあったし、
何の相談もされない自分は、本当に彼女の親友なのだろうかと不安に思っていた。

「そういえば、圭一やレナから沙都子に伝言なのです」
「伝言? 圭一さんもレナさんも、明日の学校で言えばよろしいのに・・・
 圭一さん達はどうかしたんですの?」
沙都子のその言葉に、梨花はいつものように笑みを浮かべる。
「みー、圭一達は魅ぃの所に行ってるのかもです」
「・・・答えになっていませんわよ、梨花」
「それではまず圭一からの伝言なのです。
 おまえはまだ、ここに来ちゃ駄目だ。得意のトラップワークを見せてくれ」
「な、何を、言ってるんですの?」
沙都子の言葉を意に介さず、梨花の言葉は続く。
「レナからは、つらい時は我慢するだけじゃなくて、誰かに頼るのも悪くないよ・・・なのです」
・・・もう気付いていた。これはお別れなのだと。
今、自分は眠っていて、そして目が覚めればもう梨花達とは会えないのだと。
「・・・圭一さんに、レナさんらしいですわ」
「そうなのです、実に圭一達らしいのです」
その呟きを最後に二人の言葉は止まる。
熱を奪うような夜風を体に受け、二人の少女は無言で佇む。
「私は、このゲームに乗ったんですのよ?
 にーにーに会いたくて・・・皆を殺す覚悟までしたんですのよ?
 そんな私に、本当に生きる資格なんてあるんですの?」
唐突に沙都子の言葉が静寂を破る。
呟かれた疑問――懺悔の言葉に、古手神社最後の巫女は慈しむような笑みを沙都子に向けた。
「それでも・・・皆、沙都子に生きていて欲しいのですよ」
「梨花・・・」
俯いて涙を流す沙都子の頭を、まるで母親のように少女は撫でる。
「もう、お別れなのですよ・・・」
その呟きに、沙都子は顔を慌てて上げようとする。その動きを制し、古手梨花は言葉を紡いだ。
「最後に、私からの伝言。生きなさい、沙都子。生きて、幸せになるの。
 ・・・私が言うのも、なんだけどね」
含んだような笑みを最後に、彼女の手の感触が消える。
北条沙都子が顔を上げた時、そこにはもう、誰もいなかった。

127 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:22:12 ID:V7svAaoU
「・・・そんな事があったのか」
沙都子が寝息を立て始めてから・・・
ロックとエルルゥは木の根元に座り、互いが別れた後の出来事について情報を交換していた。
協力できそうな仲間、ゲームに乗った危険人物、互いの経験した事・・・
病院で起こった一件は口にしなかったものの・・・その他の事については殆ど話し終え、二人は一息吐く。
「それにしても・・・沙都子ちゃんの脚は非常にまずい状況ですね」
「ああ、まったく酷い事をする」
彼女の足の骨は完璧に粉砕され、松葉杖を使っても移動が困難な状態だった。
「出血に対する応急手当はされているんですけど、このまま放っておくと・・・この子は、一生歩けなく・・・」
エルルゥの消え入るような言葉に、ロックはガッツという男に対して、改めて憤りを覚える。
そして、それと同時に沙都子を救う方法が無いか模索する。
「ギプスができれば一番いいんだが、医者が居ない現状じゃあな・・・とりあえず、病院に行ってみるか」
「ロックさんが、トウカさん達にお会いした場所ですか?」
エルルゥの言葉にロックは頷きで肯定する。
「ああ。それに、あいつ等も戻ってきてるかもしれないからな」
その言葉と共に二人は立ち上がろうとして・・・
「おねいさ〜ん!!!」
五歳児がものすごい勢い勢いで飛んできた。
その奇襲に驚愕しながらも、エルルゥは即座にロックの背中に身を隠す。
「え?あ、その、ロック防壁!」
「がふぉっ!」
ロックの鳩尾に幼児――しんのすけが頭から飛び込む。低い呻き声と共に、ロックは陥落した。

128 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:23:43 ID:V7svAaoU
時間は数十分前に遡る。
沙都子が泣き疲れ眠り始めると同時に、大人二人は神妙な顔をして話を始めた。
そのため、しんのすけはせっかく知り合えた美人のお姉さんと、話をすることも出来ずに居た。
「うう、オラもおねいさんとお話がしたいんだゾ・・・」
そうは言っても、二人は大事な話をしている最中。
あの雰囲気の時は話しかけないほうがいいと言うことを、しんのすけは理解していた。
「ああいうお話をしているときは、静かにしとかないとかーちゃんに起こられるんだゾ」
自らにそう言い聞かせ、話が終わるのをじっと待つ・・・しかし・・・
「なんだかノドが渇いてきたゾ・・・けど、オラの鞄はどれだかわからないし・・・」
少年の目の前には三つの鞄。しんのすけ、ロック、そして沙都子の物だ。
しんのすけは迷ったあげく、適当に一つ開けてみることにした。
「ぅんしょ、うんしょ・・・ふう・・・おぉ! なんか変な腕があるゾ!」
開けた鞄の一番上にあったのは、鋼の義手。
「うほーい! カンタムロボごっこ〜!」
喜びの言葉と共に、義手を取り出そうとするしんのすけ。
しかし、黒い義手は五歳児の腕力で持ち上がるような物ではなく。
「ふんぬ〜! ふんぬ〜〜!! だめだ、ぜんぜん持ち上がらないゾ」
あまりの重さに肩を落とすしんのすけ。
しかし、急に何かを思いついたように顔を上げると、その小さな手を鞄の下へと入れた。
「これをひっくりかえせば・・・ふんぬ〜〜〜〜〜〜!!!!」
両手を鞄と地面の間に入れ、思いっきり持ち上げる。
しんのすけが全力をかけるまでも無く・・・鞄は引っ繰り返り、その中身はぶちまけられた。
びくりと首を竦ませて、しんのすけは恐る恐る背後を振り返る。
・・・二人は話に夢中になり、気づいていないようだった。
胸を撫で下ろしながら、地面に目を向ける。そこには様々な物が転がっていた。
「え〜っと・・・あった! カンタムロボの腕!」
そういって、近くに転がっていた義手に手を伸ばす。
「ふんぬ〜〜〜〜〜!!!!!」
しかし、やはり持ち上がらない。
数分の時間を費やした後、しんのすけは肩で息をしながらあきらめた。
そして、鞄の近くへと改めて目を向けて、そこに転がったペットボトルで本来の目的を思い出す。
「おお、そうだった、そうだった」
そう呟きながら、ペットボトルの水を飲む。
少し飲んで一息。キャップを行儀よく閉めて、鞄に戻し・・・
「お?」
開いた口の、その深遠に目を奪われた。
鞄へとそっと近づき、手を入れてみる。
何も恐ろしい感触が無いことに安心した後、しんのすけはゆっくりと自らの頭を鞄の中に入れた。
「おぉ!」
瞬間、ものすごい力で、しんのすけの頭が弾き出された。
その感覚に目を輝かせ・・・無垢な少年は、自らの身体をそれへと入れる。
目指すは綺麗なお姉さんの胸元。すでに話は終わり、二人はその場から立ち上がろうとしていた。
「おねいさ〜ん!!!」

129 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:25:34 ID:V7svAaoU
そして、今に至る。
そこかしこに散らばった荷物を掻き集めながら、ロックはしんのすけに説教をしていた。
「まあまあ、もういいじゃないですか」
「そうだゾ!」
収集を手伝いながらエルルゥが言うと、しんのすけが大きく頷きながら同意する。
その様子に溜息を吐きつつ、ロックは先程からの疑問を繰り返していた。
『どうしてだ? どうして跳ね飛ばされる?』
参加者が鞄に入るという行為。それ自体は確かにゲームに水を注す行為だ。
たとえば、子供の参加者が鞄の中に隠れてしまえば、それだけで生存確率が上がってしまう。
全員が死亡して、最後に残ったのが鞄に隠れていた参加者・・・そんな事態を主催者は望んじゃいないだろう。
だが、ならば何故、弾き飛ばす? 首輪を爆発させれば済むことではないのか?
いや、それ以前に・・・何故、奴は何も言わなかった? 鞄に入るのは禁止されていると、一言言えば済むだろうに。
「考えすぎか・・・?」
確かに、鞄には入れるような参加者は、相当小柄な体型じゃないといけない。
そんな体型の参加者が、しんのすけ以外に何人存在するのか?
存在したとしても、鞄に入ろうと考える人物が何人も居るのか?
「いないよな、やっぱり」
そう呟いて、ロックは頭を掻き毟る。
『まあ、何かのヒントにはなるかも知れないな・・・』
そんな風に考えながら、荷物の回収に意識を切り替える。

―――無数に散らばった道具の中から一つの物品が消えていることに、ロックは未だに気づいていなかった。



その道具、『どんな病気でも治す薬』は樹木の側で横になっている少女の、その懐に存在していた。
『・・・あの方々はいったい何をやっているんですの?』
ロック等が荷物を拾っているのを薄目を開けて伺いつつ思う。
先程の騒ぎで目を覚ましていた沙都子は、眠ったふりをして場の混乱した様子を観察していた。
『まったく・・・殺し合いの真っ最中だって事を忘れてるんじゃありませんの?』
そう、ここはあくまでも殺し合いの場なのだ。
その事を忘れた先には・・・死しか待っていない。今までに名前を読み上げられた人達のように。
『圭一さん、レナさん・・・梨花・・・私は生き残って見せますわ。
 貴方達の分まで生き延びて、そして雛見沢に帰ってにーにーを・・・』
少女は決意を胸に眠り続ける。その想いが正しいか否かは・・・オヤシロさまだけが知っていた。

130 :WHEN THEY CRY ◆FbVNUaeKtI :2007/02/22(木) 03:26:38 ID:V7svAaoU
【A-7川付近/1日目/夜】

【ロック@BLACK LAGOON】
 [状態]:若干疲労
 [装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  1:道具を拾う
  2:一旦、病院へ向かう
  3:沙都子を助けたい
  4:ギガゾンビの監視の方法と、ゲームの目的を探る
  5:山の麓にいるというガッツを警戒
  6:しんのすけ、君島、キョンの知り合い及びアルルゥと魅音を探す
  7:しんのすけに第一回放送のことは話さない
  8:一応、鞄の件について考えてみる
 [備考]※ケツだけ星人をマスターしました
    ※病院での一件をエルルゥにまだ話していません
    ※支給品三人分、黒い篭手?@ベルセルク?、現金数千円
     びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)が周囲に散乱しています

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、歩き疲れ
 [装備]:ニューナンブ(残弾4)、ひらりマント@ドラえもん
 [道具]:支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2、ipod(電池満タン。中身不明)
 [思考・状況]
  1:お兄さん(ロック)とお姉さんについて行く
  2:お姉さんとお話をする
  3:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する
  4:ゲームから脱出して春日部に帰る。
 [備考]放送の意味を理解しておらず、その為に君島、ひろしの死に気付いていません。

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
 [状態]:若干疲労、右足粉砕(一応処置済み)
 [装備]:スペツナズナイフ×1
 [道具]:基本支給品一式、ロープ、紐、竹竿他トラップ道具、 簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬@ドラえもん
     エルルゥの薬箱@うたわれるもの(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
 [思考・状況]
  1:ロックとしんのすけを『足』として利用し、罠を作るための資材を集める
  2:十分な資材が入手できた後、新たな拠点を作り罠を張り巡らせる
  3:準備が整うまでは人の集まる場所には行きたくない
  4:生き残ってにーにーに会う、梨花達の分まで生きる
  5:魅音とは会いたくない

【エルルゥ@うたわれるもの】
 [状態]:かなりの肉体的、精神的疲労(若干回復)
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  1:道具を拾う
  2:一旦、病院へ向かう
  3:沙都子を助けたい
  4:トウカ、アルルゥ等を探す
[備考]※ハクオロの死を受け入れました。精神状態は少し安定しました。
   ※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました。

131 :紅のブタ 1/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:04:47 ID:6a7MUvC1
峰不二子の劉鳳への応急手当が終わった後、二人は午後六時の放送までの僅かな時間を
狭い薬局の中で過ごすことにした。
劉鳳はこの殺戮ゲームが始まって以来一度も採っていなかった食事の時間に当て、
その一方で峰不二子はカウンターの奥に並んだ薬棚を漁っていた。

「何を探しているんですか?」
口の中のパンを飲み込み劉鳳が彼女に尋ねる。
「何って、色々よ。鎮痛剤とか解熱剤とか……」
返ってきた答えに劉鳳は商品棚を指し問いを繰り返す。
「薬だったら、こちらにもあるようですが……」
再びの問いに峰不二子は棚を漁る手を止めずに答えを返す。
「そちらは一般用のでしょ。こっちにあるのは処方が必要な医療用医薬品。
 同じ薬ならより効果の高い方を探して持っていくべきだわ」
劉鳳をなるほどと肯く。
劉鳳が食事を進めながら見ている前で、彼女はいくつかの種類の薬を紙袋に小分けにし
それぞれに何か記しながらてきぱきと作業を進めている。
「薬に詳しいんですね」
劉鳳のその問いを峰不二子は軽く否定した。
「そんなことないのよ。もし、私に医者並の知識があればここにあるものを全部持っていくわ」
と、無限に物を収めるデイバッグを指差す。
「今集めているのは、職業柄よく世話になるよく知ったものだけよ」
答えながら、また一つ薬を紙袋の中に収める。
「そういえば、聞いていませんでしたね。不二子さんの職業は?」

「探検家。世界中のお宝を求めて旅をしているの。トレジャーハンターと言ってもいいわ」
真顔でしれっと嘘をつく。それが峰不二子だ。
だが、劉鳳はそれを信じたようだ。彼女の冷静な振る舞いに合点がいったという顔である。

彼はこの殺戮ゲームの舞台に降り立ってからその後、幾人もの他の参加者と出会いながらも
そのたび恐れられ逃げられ裏切られた。そして激しい闘い。心身ともに疲労していた。
そこで出会った、彼にとっては初めてまともなやり取りのできる人間――峰不二子。
彼女を頼れる仲間と錯覚し、嘘に振り回され利用されようとも彼を責めることはできないだろう。
なにしろ相手は人を利用することに関しては人一倍長けている峰不二子である。

一通りの作業を終えた峰不二子が、劉鳳の方へといくつかのアンプルを投げる。
「これは?」
劉鳳の問いに彼女は目の前で彼に渡した物と同じ物を開け、飲みながら答えた。
「ビタミン剤に滋養強壮剤。そんなパンよりはよっぽどエネルギーになるわ」
なるほどと、劉鳳も手にしたアンプルを口にする。

そして、二人がそれを飲み終えた時、ちょうど午後六時の――三回目の放送が流れ始めた。

132 :紅のブタ 2/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:05:40 ID:6a7MUvC1
――桜田ジュン。そして真紅。
その二人の名が呼ばれたところで劉鳳は強く拳を握った。

劉鳳は自身の不甲斐なさに憤る。
どちらも自分が殺してしまったと言っても過言ではない。
両者とも一度は接触できたのだ。ならば自分には彼らを保護する責任があった。
そして、長門有紀。彼女の名前は呼ばれなかった。どうやらまだ生き延びているらしい。
弱者を装って自分を襲い、そして桜田ジュンの命を奪った。絶対に許せない悪。
劉鳳は再び心の内に激しい怒りの炎を吹き上がらせる。

そして、猛る劉鳳とは逆に冷静なのは峰不二子。
今回は彼女が知る人間――と言っても次元大介ただ一人であるが――は死んでいない。
それよりも気になるのは禁止エリアで死亡した人間が出たということか。
放送だけでは詳しくは解らないが、実際に禁止エリアで人が死んだというのは重要なことだろう。

放送を聞き終わり心身共に奮い立たせた二人は薬局を出て次の目的地へと足を運んだ。

133 :紅のブタ 3/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:06:30 ID:6a7MUvC1
そして程なくして二人は真紅の亡骸が横たわるその場所へと到着した。
わざわざここまで足を運んだのは劉鳳の提案だ。戦闘があったと言うのなら、そこで要救助者が
発生している可能性がある。また、戦闘が持続していればそれを止めなければいけない。
だが、そのどちらもここにはいなかった。ただ一つの壊れた人形が転がっているだけ。

「本当に普通の人形だったのね」
峰不二子が半壊した真紅の頭部を覗き込んで感想を漏らす。
動かなくなった彼女は最早ただの人形と変わる所は無い。だが首に嵌った枷が彼女が参加者の
一人であったことを証明している。
「で、これはなんなのかしら?」
峰不二子は視線を人形の頭から胴体の上へと移す。
そこには淡く光る何かが浮かんでいた。
「さあ? 僕が前に会った時は見ませんでしたが……」
劉鳳は真紅との出会いを思い出すが、確かにその時にはこの光は見なかった。

峰不二子は考える。
この人形――真紅のデイバッグがここに置き去りにされており、他の人間も全くいなくなって
いると言う事は、戦闘がどこかへと移行したと考えるのが妥当か?

「これは支給品かしら?」
とりあえずはそれぐらしか思いつかない。
「アルター化もできませんし、おそらくはそうでないかと」
劉鳳も消極的だが賛同する。

「だったら、私達が貰っちゃいましょうか。ただ捨て置いても勿体無いわ」
これが残された罠。そうである可能性は低いとして峰不二子はその光を手に取った。
それは重さも暖かさも無いただの光だった。その光が何なのかは全く解らない。
「本当に、何なのかしら?」
峰不二子はとりあえずその光をデイバッグへとしまい込んだ。
光の正体はこの場所で戦っていた連中と出会った時に聞けばよい。そう考えて。

残されたデイバッグも回収すると、二人は再び次の目的地を目指してその場を離れた。

134 :紅のブタ 4/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:07:20 ID:6a7MUvC1
「そうあなたの出会った少年が言ってたのね?」
「ええ、ホテルに人を集めている人物がいると」

二人は渡った橋を戻ると、今度はホテルへと足を向けていた。
進路の途中にあるE-4エリアは禁止エリアと指定されているので、その北側を迂回しようと
今は線路に沿って北東へと歩いている。

「集まっているかしら?」
「少なくとも、ホテルに人を集めようとしている何人かはそこにいるはずです」

人を集める……。
自殺行為だと峰不二子は考える。確かに人は集まるかもしれないが、無差別に集めてしまっては
どんな化け物がやってくるかわからない。
正直、彼女一人だったら決してホテルには近づかなかっただろう。だが、劉鳳は他の参加者との
接触に積極的だ。無理に水を差して気分を――……?

「どうかしましたか?」
足を止めた峰不二子に劉鳳が問いかける。
「……いや、アレは?」
峰不二子が指差した先、一つ通りをはさんだ向こう側をブタが歩いていた。

「……豚ですか?」
「……豚、よねえ」

先程、真紅の亡骸を見てこのゲームには人間以外の者も参加していると実感したばかりだが、
ブタとは二人共予想外だった。しかも二本の足で歩くブタだ。

「……アレも参加者でしょうか?」
「……でも、何も持ってないわよ」

ブタの方は二人に気づいてないらしい。短い足でテクテクと歩いている。
とても害のある存在には見えないが……。

「とりあえず声をかけて見ましょう。――おい。そこの豚ッ!!」

そんな声のかけ方はないでしょう。峰不二子がそう思った時には遅かった。
ブタは二人に気づくと頭に湯気を立ててこちらへと走ってくる。

「誰が豚だッ!!」

いや、ブタには違い無いと思うんだけど。と、心の中で峰不二子はツッこんだ。

135 :紅のブタ 5/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:08:11 ID:6a7MUvC1
「で、あなたの名前はぶりぶりざえもんなわけね」
「そうだ。正確には救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんと言う」

立って歩くだけでなく、喋りもする目の前のブタはやはり参加者だった。その首にそれを示す輪が
嵌っている。

「で、あなた荷物はどうしたの? なくしちゃった?」
「む。……あ、あんなものはこのわたしには必要ないからな。捨ててしまったのだ」

要領を得ない相手に峰不二子と劉鳳の二人は質問を繰り返し、時には彼からの問いに答える。

「で、病院に怪我をした仲間がいて。あなたは風という女の子を捜しているわけね」
「そういうことだ。やっとわかったか」

ブタによると、途中で出会った仲間の中に怪我人がおり、それを治すために彼が以前世話になった
”魔法”が使える少女を探している途中だと言う。その少女は今は禁止エリアに指定されている
E-4エリアへと向かっていたらしく、このブタはそのE-4エリアの周りを探していたらしい。
彼の言う病院へと向かった仲間は、おそらくその特徴から峰不二子があの橋の近くで見た者達だ。
彼女の予想とは違い、どうやら逃げおおせていたらしい。

「……では」
話が一段落つくと、ぶりぶりざえもんは歩き出して行ってしまおうとする。
峰不二子はその後頭部をむんずと掴むと彼を持ち上げて引き止めた。
「な、なにをする!?」
峰不二子は喚くブタを無視して隣の劉鳳へと話しかける。
「劉鳳。あなたこの豚と一緒に行ってあげてくれる?」

「「な、なんだって!!」」
ぶりぶりざえもんと劉鳳の言葉がハモる。

136 :紅のブタ 6/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:09:02 ID:6a7MUvC1
「お前、何を言ってるんだ?」
「不二子さん。どういうことですか?」
二人が一緒に峰不二子へと質問を投げかける。

それに対し、彼女は子供にそうするようにわかりやすく答えを返した。
「この豚だけで風という子を見つけられると思う? だから劉鳳には彼を手伝って欲しいの。
 私は一人で病院の方へと向かうわ。いくら病院と言っても医者がいるわけじゃないんだから
 怪我人達だけでは治療もままならないでしょう。
 だから、そこには私が行くの。私の手当ての腕は劉鳳も知っているわよね?
 それに、腕を切断しているというならこっちは急を要するわ。
 私の言いたいこと解った?」

劉鳳は少し考え、そしてブタの顔を見て決心した。
「そうですね。この豚が嘘をついているようには見えませんし、それがベストでしょう」
そして彼女からブタを受け取る。
「私はその風という少女を探してみます。不二子さんは病院の方をお願いします」
その手の中でブタが暴れる。
「おいこら! ちょっと痛いぞ。もっとやさしくしろっ!」
劉鳳はそれを無視すると絶影を顕現化し跳躍、通りに面するビルの壁面を登っていく。
「それでは病院で落ち合いましょう」
そして、その言葉を残して峰不二子の前から姿を消した。

劉鳳が姿を消すと、残った峰不二子は一人ほくそ笑んだ。
うまくあの青いタヌキと接触できるチャンスがめぐってきた。しかも、相手側は重症だと言う。
ならば、治療して恩を売るもよし。情報を引き出して殺してしまうのもよし。
生殺与奪の権利はこちら側にあると言えるだろう。

峰不二子は踵を返すと病院へ向かい、道を北へと駆けた。


 【E-3/市街地(北東)/1日目-夜】

 【峰不二子@ルパン三世】
 [状態]:健康
 [装備]:コルトSAA(弾数:6/6発/予備弾:12発)
 [道具]
   デイバック(×2)/支給品一式(×2、(パン×1、水1/10消費))/ダイヤの指輪
   銭型変装セット/ローザミスティカ(真紅)/くんくんの人形
   【薬局で入手した薬や用具】
   鎮痛剤/解熱剤/睡眠薬/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
   抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ)/虫除けスプレー
   ※種類別に小分けにしてあります。
 [思考]
   基本:ゲームからの脱出。
   1.D-3の病院へ向かいぶりぶりざえもんの仲間と会う。
   2.そして彼らから情報を得る。(特にドラえもんの話と謎の光について)
   3.利用できそうなら彼らを治療して恩を売り印象をよくする。
   4.病院で劉鳳とぶりぶりざえもんの帰りを待つ。
   5.F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
   6.ルパンが本当に死んでいるか確認したい。
 [備考]:E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。

137 :紅のブタ 7/7  ◆S8pgx99zVs :2007/02/22(木) 19:09:53 ID:6a7MUvC1
立ち並ぶビルの上を、劉鳳は真の形態へと発展させた絶影の背に乗り飛翔する。
彼の背の上にはさらにぶりぶりざえもんだ。
峰不二子と別れた場所からぶりぶりざえもんが向かっていた方角――つまりは南に向かい
その後、E-4エリアとの境界に沿って東へと進路を取っていた。

眼下に広がる道や建物に目を走らせながら劉鳳が背中のブタに話しかける。
「救いのヒーローと言ったなッ!?」
「ああ、そのとおりだ。困っている人を見つけてはおたすけしている」
劉鳳はその答えに満足すると話を続ける。
「俺は劉鳳。対アルター特殊部隊HOLYの隊員だ」
「HOLY?」
「いたずらに世を乱す悪を排し、絶対正義の秩序を築くための組織だ」
「……正義」
大仰な物言いの劉鳳にぶりぶりざえもんは少したじろいだ。
「お前もおたすけしているのか……?」
「そうだ! 貴様は正義かっ!?」
「正義? ああもちろんだ。なんと言っても救いのヒーローだからな!」
ぶりぶりざえもんの回答に劉鳳は大いに満足し、この舞台で出会った初めて自分と同調する
仲間ができたことに高揚した。相手はブタかもしれないが大切なのは志だ。

「俺達二人で悪を断罪するぞぶりぶりざえもん!」
「ああ! そしてみんなをおたすけする!」

沈む夕日を背に二つの正義が空を翔る。



 【F-4/市街地(北)/1日目-夜】


 【劉鳳@スクライド】
 [状態]:少し高揚している/軽い疲労/全身に中程度の負傷(手当て済)
 [装備]:なし
 [道具]:デイバッグ/支給品一式/斬鉄剣/SOS団腕章『団長』/真紅似のビスクドール
 [思考]
   基本:自分の正義を貫く。
   1.ぶりぶりざえもんと共に鳳凰寺風を探す。
   2.風を見つけたら病院へと戻る。
   3.悪を断罪する。(※現在確認している断罪対象)
    ※赤いコートの男(アーカード)、長門有希(朝倉涼子)、ポニーテールの女(シグナム)
    ※老人(ウォルター)を殺した犯人
   4.ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
   5.ホテルに向かう。
 [備考]
 ※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。
 ※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
 ※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。


 【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:頭部にたんこぶ/ヤマトとの友情の芽生え/正義に対する目覚め
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考]
   基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。
   1.鳳凰寺風、高町なのはを捜して病院(太一たちのもと)へ連れて行く。
   2.ヤマトたちとの合流。
   3.救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。

138 :FOOLY COOLY 1 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:34:00 ID:Q1rtGrke
月が昇る。丸い満月だ。
昨晩と変わらない綺麗な球体が、今夜も俺の姿を煌々と照らし出す。
改めて思えば、この奇妙な世界に来てから早くも一日が経過したことになる。
一日。正確には18時間23分56秒間。長い。長すぎる。
一日あればゲーテの詩集を完読できる。1/1のガ○プラだって出来上がる。
光の粒子ははもう200億km彼方の先だ。
だが一方の俺は何を成した。ほんの数十kmを走っただけではないか。
時速に換算すれば実に数km/h程度。遅い。遅すぎる。
加速が、更なる加速が必要だ。


俺は市街地に立つビルの上から彼方を見つめていた。
その視線の先にあるのは歪に崩れたコンクリートの塊。自分がつい先ほどまで居た、仲間達が待つホテルだ。
そのホテルには、此処からでも一目で分かる、明らかな異変が生じていた。
何者かによる襲撃……それしか考えられない。
ホテルは今にも崩れそうだ。一刻の猶予も無いだろう。
一刻か…… だが、それだけあれば十分だ!

「風力、温度、湿度、一気に確認。ならば、やってやりますか!」



≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡☆  
  


139 :FOOLY COOLY 2 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:35:27 ID:Q1rtGrke
「光の矢ッ!」
光の叫びと共に、数個の火の玉が打ち出される。
それら真っ赤に燃える火の玉は、狙い通り目標に命中した。
火の玉は当たる瞬間に一際大きく燃え上がる。
あれがもし私に当たったなら、火傷なんかでは済まないかもしれない。
……だと言うのに。
「どうした? 追撃はしないのか、紅い魔女よ?」
当の目標である筈の男は、光の攻撃を全て受けても尚悠然と立っている。
火の玉を全く避けようともしない。
直撃した火の玉の残り火が燻っていると言うのに、男はそれを意にも介していない。
「ふむ、威力だけを取れば中々のものだ。だが、再装填の時間も長く弾幕を張れるだけの連射性も無い。
 現行のライフル銃でも十分代用が効くレベルだな」
それどころか、冷静に光の攻撃を分析、解説しだしている。
自分の体で光の魔法の性能を見定めているのだ。
――狂っている。
「光! 今はあんな奴放って置いて今は避難しよう! このビルだって何時崩れるか分からないよ! 」
そう叫んだ私は、本能的にこの男の恐ろしさを感じ取っていたのかもしれない。
今はまず、この脅威から逃げるべきだと。でも。
「駄目だよみぃちゃん! こいつを放っておいたら、ホテルにいる皆が危ない! 」
光はそれを良しとはしなかった。
でも、私は見た。光の瞳の中にある暗い影を。私の中にも居るソレを。
恐怖を。
ああ、光だって怖いんだ。
でも、仲間のために、恐怖に敢えて向かって行くつもりなんだ。
強いな、光は。

140 :FOOLY COOLY 3 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:36:15 ID:Q1rtGrke
「……わかったよ。でも、無理しちゃ駄目だからね? 光に何かあったら、仲間だってきっと悲しむよ。
 危なくなったらすぐに逃げるんだからね?」
「うん、分かってる。それにここで時間を稼いでおけば、ホテルにいる皆が避難してくるだろうし……
 そうしたら、きっと皆であいつをやっつけられるよ! 」
しかし勇ましい言葉とは裏腹に、光はとても不安そうだった。
当然だ。光だって、不思議な魔法が使えるといっても自分と同年代の女の子。
私がこんなに怖いのに、光だけが平気なワケが無い。
恐怖に負けない勇気……言葉にすれば陳腐なのに、体現するのはとても難しいモノ。
光が持っているソレが、私はなんだか羨ましかった。

「さて、おしゃべりは済んだか? 別れの言葉は? 神への祈りは終わったか? ならばそろそろ……始めるとするかッ!」
男の咆哮にビクリと体が硬直する。私が必死に積み上げた勇気が吹き飛んで行く。
そして私は悟った。『逃げる』だなんて甘いことをこの男が許してくれるはずが無い。
だがその時、恐怖に魅入られ立ち竦んでいる私を尻目に光が走り出した。
「みぃちゃん! 危ないからどこかに隠れていて! 」
「光……! 」
『私も戦う』『援護する』 その言葉が喉下まで来ていたが、どうしても口には出せなかった。
私が持っているのはナイフ1本。銃も無い。戦闘能力が皆無なのだ。
でも、もし私が武器を持っていたとしても、果たして光と共に戦えるかどうか?
私は密かに、自分が武器を持っていないことに安堵していた。
自分の卑屈さに嫌気がした。



141 :FOOLY COOLY 4 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:37:43 ID:Q1rtGrke
「はああああああっ! 光の矢――ッ!!」
雄叫びを上げながら、光が再度男に攻撃を仕掛けた。
だが男は飛来する火球をものともせずに、ゆっくりと光の方へ向かってゆく。
「この程度では私の足を止めることすらできんぞ。もっと強力な攻撃手段は無いのか?」
そう言いながら男は、退屈そうに、そして少し苛ついているかのように光を睨みつけた。
おぞましい。身の毛もよだつとはこのことを言うのだろう。
光もどうやら私と同じ気持ちのようだ。この男の目を見ていると、体の奥から震えてくる。
「く、くそっ……ならこれでどうだっ! 紅き――稲妻ッ!!」
光が呪文を唱えると、今度は火の玉ではなく赤い色の光線が発射された。
紅い光が奔る。次の瞬間、爆音が周囲に響き渡った。
爆煙が上がる。
「やった! 光!!」
「駄目だ、まだ来ちゃ駄目だみぃちゃん!」
思わず駆け寄ろうとした私を光が制止した。
もうもうと立ち込める煙の中から、黒い影が姿を現したからだ。

「これが全力か……まあ、人外の力を行使できるのは素晴らしい。だが、ただ『それだけ』だ」
男は、尚もゆっくりと光に向かって歩いてゆく。
まるで光の攻撃が効いていない。いや、効いているのかもしれないが、アイツを倒すのには不十分だ。
駄目だ。私たちでは無理だ。早く逃げないと……

「うわああああああっ!! 」
――えっ?
光の叫び声だった。光が剣を構えて、男に向かって突進して行く。
「ほう、小細工は止めて正攻法か。いいだろう」
男が嗤う。
だ、駄目だよ光、あんな化け物に向かっていくなんて、※されちゃうよ……!
危なくなったら逃げるって言ったのに、なんで!?

142 :FOOLY COOLY 5 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:38:33 ID:Q1rtGrke
「いやあッ!!」
光が剣を振る。女の子としては意外なほどの剣捌きだ。
鋭い剣閃が男を襲う。
でも、当たらない。
男はその全てを巧に躱している。
……いや、避けているというよりも、『攻撃が当たらない所に体を動かしている』と表現した方がいいのかもしれない。
男は、全く危なげもなく光の攻撃を凌いでいるのだ。
レベルが違う。違いすぎる。
「剣術も達者とは言え、凡庸なレベルだな。それ一ツだけで戦況を覆せるほどのものでもない」
男は、先ほどと同じように光の観察を続けているようだ。
「うるさいッ!!」
しかし光の突きはするりと避けられてしまう。
男はそんな光を眺めながらも、淡々と喋り続ける。
「だが、貴様にとって最も致命的なのは『戦術』だ。貴様は自らの技能を全く生かせてはいない。
 重要なのは、敵と己の能力を見極め、最善の手を模索することだ。
 だというのに貴様は己の特殊技能に頼りきり、それを如何に活用するか、という命題をお座成りにしている。
 それではまるきり、宝の持ち腐れだ」
男の目が細る。
「まあ、私は唯ひたすらに向かってくる輩も大好きだがね」
そしてその目じりが歪む。
なんて禍々しい笑顔なんだ。

「さて、ではそろそろこちらからも往かせてもらおうか!」
「うわっ!?」
言うと同時に、男の手元から何かが発射された。
光の剣と当たったソレは、鈍い音を立てながら光の後方へ飛んでゆく。
鎖……? 分銅の突いた、時代劇で鎖鎌の先についてるような類のものだろうか。
それを男は投げつけたのだ。恐るべきスピードで。
恐らく、偶然そこにあった光の剣に鎖が当たり、さらに偶然にも奇跡が変わった鎖が光の体から逸れたのだろう。
この土壇場で、光は確かについていた。

143 :FOOLY COOLY 6 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:39:27 ID:Q1rtGrke
だが、偶然も三度は続かない。
くいっ、と男は手首を捻る。すると、鎖はまるでそれ自身が生きているかのように大きくうねる。
そしてそのうねりは光の体を中心とした円運動へと変化し、鎖が光の体に巻きついてゆく。
「し、しまった……!」
「覚えておけ。これが『活用する』ということだ!」
そう言うと同時に、男は再び右手を捻る。
すると光の体が、まるで玩具の様に宙を舞った。
「あうっ!」
強烈な勢いでコンクリートの壁に叩きつけられた光の口から、悲痛な呻き声が漏れる。
光の体は、そのまま地面に崩れ落ちた。

「紅き魔女もこの程度か……正直がっかりだな」
男が残念そうに呟く。もう光に対する興味を失ってしまったのだろうか。
なら、早く光を介抱しないと。
そう思った私の体を、鋭い殺気が突き抜けた。

「では貴様はどうだ? 貴様は人か? 狗か? それとも唯の臆病者か?」
男の冷たい目が、私を射抜いていた。

「ひっ……」
掴まった。体ではなく、心が。
もう一歩も動けない。立っているのも不可能だ。
私は力なく、その場にへたり込んでしまった。
蛇に睨まれた蛙っていうのは、きっとこういうことを言うのだろう。
私は必死に、唯一の武器であるナイフを両手で握り締めていた。
「あ……あっ……」
言葉すら出てこない。ヒューヒューと息だけが気道を行き来する。

144 :FOOLY COOLY 7 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:40:15 ID:Q1rtGrke
そんな私を見下しながら、男が叫ぶ・
「どうした? 貴様の友は及ばずながらも懸命に戦ったぞ? 
どうした?? まだ仲間がひとりやられただけだ。
どうした!? 早く立て。武器を構えろ。私に一矢報いて見せろ!
HURRY! HURRY! HURRY!! 」


「……助けて、圭ちゃん……」
その言葉が無意識に私の口から零れ落ちた。
怖かった。唯々死ぬのが怖かった。助けて欲しかった。唯それだけだった。
でも、それが男にとっては気に食わなかったようだ。
「……なんだ、貴様は戦うことも出来ない只の糞か。つまらん。全く以ってつまらん」
心底落胆した、といった素振りで私を見る男の目は、侮蔑の感情で満ちていた。
でも、もし命が助かるのならそれでも良い。そのときは本当にそう思っていた。

「つまらん。貴様には生かしておく価値も感じない。ならば、此処で死なせてやるのも情けのうちか」
「ひィッ! 」
思わず悲鳴が漏れる。
男がこちらに向かって歩いてくる。
私は必死に逃げようとするのに、体が言うことを聞かない。
一歩、また一歩。死神が私に向かって歩いてくる。
嫌だ。死ぬのは嫌だ。嫌だ嫌だ嫌嫌嫌いやァ……。

「――それ以上みぃちゃんに近寄るなッ! 」
突如、光の声が木霊した。
「むっ!?」
それと同時に、男の右肩が裂ける。
周囲には光の姿はおろか、人影一つ見当たらない。風が吹いているだけだ。

145 :FOOLY COOLY 8 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:41:05 ID:Q1rtGrke
何? 何が起こっているの?? 余りの恐怖に気が狂ってしまったのだろうか!?
状況が全く理解できない私とは違い、男は可笑しそうに微笑んでいる。
「ほう、超加速か……中々面白いことをする」
男がそう呟く間にも、新たな傷が男の体に刻み込まれる。
超加速……!? 
そうか、光の持っていた『デンコウセッカ』だ。
それを飲めば凄まじいスピードで動けるようになるって光が言っていた。
でも、それにしたって桁違いのスピードだ。文字通り、目にも止まらない。
今の光を捕まえることなんか、きっとどんな化け物でも不可能だろう。
それはまるで風そのもの、旋風だ。
明確な意思を持ったカマイタチが、男とその周囲の物を切り刻んでゆく。
「やるじゃあないか、紅い魔女よ。あれで終わりかと思っていたが、意外と打たれ強いのだな」
……そうだ。光はさっき、思いっきり壁に叩きつけられたんだ。
なのに、光は今も戦い続けている。
その姿は見えないけれど、きっと光だってボロボロの筈なんだ。
それでも必死に、臆することなく男に立ち向かっている。
何故なの? どうして光はそんなに強くいられるの?

だが、次々と斬りつけられながらも男は怯むそぶりすら見せない。
「土壇場の最後の足掻きにしては上出来だぞ、紅い魔女。
だが、残念だ。貴様はもう少し私の助言を真面目に聞くべきだったな」
男は光が居るであろう空間に向かって叫びかける。
「超加速、大いに結構。だが、それも貴様には過ぎた長物のようだな。
 高速で移動すると言うことは、即ち周りのものが高速で通り過ぎてゆくということ。
 今の貴様の目は、ちゃんと私を捉えられているのか?
 否。それにしては攻撃が乱雑すぎる。
 貴様は自身のスピードを制御しきれてはいまい。
 その証拠に……」

146 :FOOLY COOLY 9 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:42:20 ID:Q1rtGrke
男は手にした鎖を、近くの電柱に投げつける。
鎖は電柱に巻きついて、男との間に縄跳びのようなループを作る。
――そこに光が飛び込んだ。
「うわあっ!?」
鎖に躓いた光の体が、アスファルトの地面の上を派手に滑ってゆく。
「ほうら、この通り。簡単に足元を掬われる」
そして光の姿を確認すると同時に、男が跳んだ。
着地点は光の背中。
「ぐはっ」
「そら、捕まえたぞ、紅い魔女。だから私は言ったのだ。『重要なのは戦術』だと。
 己の力を正しく認識し、単一能としてで無く、自らの理知(ロジック)を持って力を行使することだと。
 貴様の敗因は、己の力に対する『認識不足』というところか」
男は独り言のように喋り続けている。
その間も光は男から逃れようと?いているが、光の背中にがっちりと食い込んだ男の足がそれを許さない。

助けないと。早く光を助けないと。
そう心では思っているのに、私の体は全く動いてくれない。
怖い。恐ろしい。嫌だ。死にたくない。
光は私のことを守ってくれたのに。光はあんなに強いのに。
……どうして私は、こんなにも弱いの?
「――ッ!」
瞬間、這い蹲る光と目が合った。
疚しい、後ろめたい気持ちでいっぱいの私とは対照的に、
光の目は未だ強い輝きで満ちている。
光の唇が動いている。何かを伝えようとしているんだ。
肺を圧迫された光の口からは何の声も聞こえなかったけれど、
口の動きで光が何を言っているのかが、何故かその時ははっきりと分かった。

147 :FOOLY COOLY 10 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:43:12 ID:Q1rtGrke

「 に げ て  み  ぃ  ち  ゃ  ん  」

男の足が、光の頭にかかる。
「では、さようなら。紅き魔女よ」


ぐしゃっ。




「あ…………」
光の頭が、トマトのように潰れるのが見えた。
不思議と悲しくは無かった。いや、悲しみも恐怖も、何も感じられなくなっていた。
喉下から何かがこみ上げてきたけれど、涙も何もかもが枯れ果てていたのか、何も出てこなかった。
もう何も出来なかった。何もしたく無かったし、何も考えたくなかった。
「何だこの剣は? 水なのか剣なのか……? まあいい。こちらの重剣ならば使い道もあろう」
男が、光の遺体から一本の剣を取り出した。
風の剣……だっただろうか。私じゃ重すぎて持てなかった剣。それをあの男は軽々と持ち上げている。
あれで私は切り※されるのかな?
……うん、もうそれでもいいや。
富岳さんも、レナも、梨花ちゃんも、圭ちゃんも、光もみんな※んじゃったんだ。
みんなを守ろうと思ってたのに、私は何も出来なかった。
それどころか、逆に私が守られてばっかりだった。
もういいよね。私なんかが生き残ってても、また誰かの足手まといになるだけだよね。
それなら、ここで※んでしまった方がよっぽどいい。 
男がこちらに歩いてくる。
そして私の目の前まで来ると、男はゆっくりと剣を振り上げた。

148 :FOOLY COOLY 11 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:44:11 ID:Q1rtGrke
「紅き魔女も独りきりでは寂しかろう。健闘を讃えて、せめてもの手向けだ」
剣が振り下ろされる。
その時の私は何故か、とても穏やかな気持ちだった。
圭ちゃん、みんな、そっちに行ってもまた仲良くしてね……。
そんなことだけを考えていた。



――風が、吹いた。



「衝撃のォッ……ファーストブリッドぉッ!!!!」
何処からともなく聞こえてきた叫び声と共に、男の体が吹き飛んだ。
そして私の目の前には、別の男の背中があった。
ピンチに駆けつけるヒーロー。
年甲斐も無くそんなフレーズが頭を過ぎる。
恐怖も悲しみも無力感も、その一瞬だけは吹き飛んでしまっていた。

「すご……」
思わずそう呟いてしまってから、しまったと思った。
でもそのときは、ただ純粋に凄いって、そう思ったんだ。

「1分11秒38……いかんいかん、世界を縮めすぎてしまったァ〜〜、
 ところでご無事でしたか? イオンさん!」

「みっ……魅音だよ!」
そこには、背が高くて変な髪形で、趣味の悪いグラサンをしたあの男、
ストレイト・クーガーが立っていた。 

149 :FOOLY COOLY 12 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:45:01 ID:Q1rtGrke

「……私としたことが、少々遅れてしまったようですね。お怪我はございませんか? 」
「私は……私なんかより、光が、光が……」
クーガーが振り向いた先には、光が変わり果てた姿で横たわっている。
「光さん……逝ってしまわれたのですか。決着は永遠にお預けですね……光さん、ゴッドスピード」
「光だけじゃないよ、 梨花ちゃんもっ、私の、目の前でっ……」
視界が滲む。
今頃になって、私の目からは涙が溢れてきた。
「それに、レナも、圭ちゃんもっ、みんなっ、し、し、死んじゃったんだよっ」
涙が止まらなかった。
それまでに溜まっていた悲しみが、堰を切ったように流れ出す。
「なのにっ、私は誰も守れなくてっ、そ、それどころか守ってもらってばっかりでっ、
 仇を取ろうとしてもっ、出来なくてっ、
 そんな私なんて、み、皆の代わりにっ、し、し、死んだ方が良かったんだよっ」
悲しかった。仲間の死が、自分の弱さが、唯ひたすらに悲しかった。
クーガーは珍しく無口で、静かに私の話を聞いていた。
でも。
「……失礼します」

パァン

一瞬、何が起こったのか分からなかった。
クーガーの手と、遅れて来た頬の痛みから、自分がぶたれたことに気が付いた。
「何、すんのよっ」
「いい加減になさい!」
いきり立つ私の両肩を、クーガーの両手ががっしりと掴む。
「どうしたんですか、 貴方らしくも無い。
昨晩初めてお会いした時、貴方は自分の身の安全よりも仲間の身の危険を案じていた。違いますか?
なのにその貴方が自らのことを『死んだ方がいい』だなんて……
しっかりなさい。貴方はもっと強い人だ!」

150 :FOOLY COOLY 13 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:45:49 ID:Q1rtGrke
一瞬、クーガーが何を言っているのか理解できなかった。
強い? 私が?? この人は本当に何を言っているんだろう。
「私は、強くなんかないよ……っ。
 梨花ちゃんが死んだときも、怖くなって逃げ出したし、
 光が一人で戦ってる時も、一緒に戦えずに、ただ震えてるだけで……
 怖いんだよ。殺されるのが怖かったんだよ。戦いたくなかったんだよっ!
 でも、そのせいで光は死んじゃったんだ。私のせいで、光が……っ!」
「だから貴方も死ぬと? それは全くのナンセンスですよ」
「でもっ、私が助けられなかったからっ!」
「だが、貴方は戦っていた」
「えっ……?」
クーガーが私を見つめている。何時に無く真剣な表情で。
「恐怖を感じる、というのは大切なことです。
恐怖とは生存本能であり、最悪のケースを想定するリスクマネージメントそのもの。
恐怖を知らずに敵に向かうのは唯の馬鹿です。鈍感なだけです。それならノミにだって出来る。
いいですか? 大切なのは、『恐怖を知り、そしてそれに立ち向かうこと』なのです。
貴方は確かに恐怖した。何も出来なかったのかもしれない。逃げたこともあったかもしれない。
でも、貴方は確かに戦った。恐怖に向き合い、目を背けずに、必死に抗っていたんでしょう?
これを強いと、勇敢だと言えないわけが無い!」

「私が……強い?」
意外だった。まさか自分のことを『強い』と形容されるだなんて、思っても見なかった。
「ええ。貴方は強い方だ。
 それにまだ貴方には仲間が居るじゃないですか。
 光さんに守られた命で、貴方がまた別の仲間を守ればいいのです。
 そうしなければ、折角の光さんの頑張りが無駄になってしまう。
 貴方は前に進まなければならないのです。戦わなければいけないのです。
 もっと、もっと強くならなければならないのです。
 そして戦って戦って、勝つまで戦い続ける……
 それが、光さんのためでもあり、仲間のためでもあり、そして貴方自身のためでもある。そうでしょう?」

151 :FOOLY COOLY 14 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:46:43 ID:Q1rtGrke
…………。
強さ。
負けない強さ。負けても尚戦おうとする強さ。
怖くても、挫けても、それでも立ち上がって戦う強さ。
何度でも何度でも戦って、最後に勝つまで戦う強さ。
そうだ。クーガーの言うとおりだ。
私にはまだ沙都子がいる。それにこのまま私が死んだんじゃ、光はまるで無駄死にだ。
私は死んだりしちゃ駄目なんだ。光のためにも、生きて、戦わないといけないんだ。
怖いけど、それでも立ち向かわないといけないんだ。
それが光に対する、せめてもの恩返しなんだ……。
「……ありがとう、クーガー。お陰で……目が覚めたよ」
「お役に立てて光栄です。
 ああ、それともう一つ。貴方には、俺という心強い仲間がいるじゃあありませんか。
 貴方の前に立ち塞がる障壁など、この俺が粉砕して御覧に入れましょう!」
クーガーはそう言ったとたんに立ち上がり、遠くを見据えた。
その先には、あの男が静かにこちらを眺めていた。
「イオンさん、危ないですから少し離れていてください」
「魅音だよっ! ……で、でも一人で大丈夫なの? あいつ、凄く強いんだよ……!?」
不安そうな私に向かって笑いかけるクーガーの顔は、以前に見たとおりの巫座戯た笑顔だった。
「心配はご無用! なんといっても俺は、世界最速の男ですから!」

 

152 :FOOLY COOLY 15 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:47:32 ID:Q1rtGrke
私が物陰に隠れると、クーガーが男の方へ歩き出した。ゆっくりと。ゆっくりと。
男との距離がどんどんと狭くなってゆく。
3m……2m……1m……って、え? まだ止まらない!?
そしてクーガーは、男の眼前……高い鼻が触る程の近さで、立ち止まった。
静かな睨み合い。
本能的な恐怖を喚起させるようなあの男の眼光にも、クーガーは全く怯まない。
「なんだ、もうお別れの挨拶は済んだのか?」
「ほう、最低限のマナーは弁えているようだな。驚きだ。だが、その程度では光さんと魅音さんの痛みには釣り合わないな」
「ならばどうする? 貴様がその差を埋めるとでも?」
「ああ、そうだ。貴様の罪には、それ相応の罰が必要だ。断罪してやろう、この俺が!」
「貴様にそれが出来るのか!?」
「愚問だな!」
その刹那、限界まで張り詰めていたものが、弾けた。
男が剣を振るった。
信じられないスピードだ! 本当にあの剣は、あの重い風の剣なの!?
盛大な音を立てて、小規模なクレーターが地面に出現する。
だがクーガーはそこにはいない。
上だ!
鈍い音を立てて、強烈な回し蹴りが男の顔面を直撃する!
「フフ、やるじゃあないか。素晴らしいスピードだ。そしてそれを完全に我が物にしている。
 よくぞ人の身でここまで練り上げたものだ」
「お褒めに預かり光栄だが、まだまだこんなものじゃあないぞ。この俺の速さは! この俺の怒りは!!」
クーガーが足を振りぬくと、男の体が一直線にビルの壁に突き刺さる。
だが、次の瞬間には男は立ち上がり、再度クーガーに突撃してゆく。
化け物だ。クーガーも、男も。
「中々のタフネスだ。パワーも申し分無い。だがこれでは俺を倒すには不十分! NOT ENOUGH!!
まだまだ足りない! 足りないぞ!」
クーガーが吼える。


153 :FOOLY COOLY 16 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:48:22 ID:Q1rtGrke
「貴様に足らないもの、それは――」 クーガーが跳んだ。
「情熱!」――――男に強烈なドロップキックが炸裂する。
「正義!」――――だが男は倒れない。
「友情!」――――男が高速で剣を薙ぐ。
「理念!」――――だが、やはりクーガーには掠りもしない。
「人情!」――――しかし男はもう一方の手で鎖を放つ。男を中心に、放射状に鎖が拡散する。
「優しさ!」――――全方位攻撃! 死角はあるの!?
「勤勉さ!」――――クーガーは何処に!? 右か? 左か? 上か? 背後か?
「そして何より――――速さが足りない!!!」
――――正面だ!! 円形に広がる鎖の間合いの、更に内側にクーガーの姿が現れる!

「撃滅のぉッ! セカンドブリットぉッッ!!」

クーガーの強烈な一撃が男に直撃する。
男の体が、まるでミサイルのようにビルの壁に飛び込んでいった。
2……いや、3軒向こうのビルにまで貫通しただろうか。
流石にこれで決まり……?
いや、クーガーはまだ戦闘態勢を解除していない。
男は、まだ健在だ……!


パン、パン、パン……
瓦礫の奥から、乾いた拍手が聞こえてくる。
「ブラヴォー。最高だ。最高だぞヒューマン。こんなに楽しいのも久しぶりだ」
もうもうとした粉塵の中から、男が歩き出てくる。
その姿はボロボロなのに、その威圧感は全く衰えてはいない。
この男は、一体何度立ち上がるのか。
まさか……本当に不死身なの?

154 :FOOLY COOLY 17 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:49:13 ID:Q1rtGrke
「強がりのつもりかぁ? さっきから一方的に攻撃させてもらって、少し申し訳ないぐらいだぞ!」
「ならば、一発殴らせてくれるのか? それでずいぶんとお釣りが貰えそうだがな」
「御免だね。生憎とそういった趣味は持ち合わせていない」
「では、このまま続けるとするか。私が力尽きるのが先か、貴様に一撃くれてやるのが先か……
 クク、長くなりそうだな」
「消耗戦と言う訳か。まあ、何度やろうが貴様の攻撃が俺に触れることは無いだろうが……」
クーガーの目が妖しく光る。
「……だが、それだけは絶対にノゥ!!」
クーガーの周囲の空気が変わった。

「『ゆっくりじっくり着実に』等、この俺の美学に反すること甚だしい!!
 漢たるもの、速攻即決一撃必殺、スピードの無い答えなど答えに非ず!
 そう、速度こそ力! 速度こそ美!! そして速度こそ――――『文化』だッ!!」

風が舞う。
瓦礫が舞う。
そしてそれが次々と光の欠片へと分解されてゆく。
その中心に立つクーガーの体が光る。
それまで足だけに纏われていたプロテクターが、膝に、腰に、胸にと広がってゆく。
そして遂には、クーガーの全身がプロテクターに包まれた。
紫色の、流線型のフォルム。
きっと、きっとこれがクーガーの正真正銘のフルパワーなんだ。
「ほう、それが貴様の全力か。面白い。いいだろう、見せてみろ、貴様の力を!」
「ああ、見せてやろうとも! ヒトの、この俺の……『文化』をッッ!!」

155 :FOOLY COOLY 18 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:50:03 ID:Q1rtGrke
クーガーが走り出した。
今までに増して、凄まじいスピードだ。
まるで……光!?
対する男は、手にした剣を振りかぶる。
男は動かない。
迫り来る一瞬に、自分の全てを賭けているんだ。
私は必死に目を開いて、2人の姿を凝視する。
瞬きする間に終わってしまう、その瞬間を見届けるために。 

「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッ」」
二つの点が、交叉する。


「瞬殺のッ!! ラストブリットォォォオオッッッ!!!!!」 




                 ☆



「しかし、イオンさんがご無事で何よりでした」
「魅音だよ! ……ま、あたしも怪我してるし、丸っきり無事ってワケでも無いんだけどね。
 ……でも、生きてるってだけでも儲けモンかな?」
「ハハ、イオンさんが元気になって下さって俺も嬉しいですよ」
「魅音だって言ってんだろ!」
そんな殺し合いの場には不似合いな会話を、私たち2人は交わしていた。 
本当は、現状ではそんな暇なんて無いのだろうけれど。

156 :FOOLY COOLY 19 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:50:53 ID:Q1rtGrke
だけど次の行動を起こすためには、私にはもう少しだけ時間が必要だった。心の整理をつけるための時間が。
それぐらいはクーガーも察してくれているのだろうか?
「しかし、また2人でタンデム出来る機会が来ようとは! さて、次は何処へ行きましょうか!?」
前言撤回。無いな。 

「……ところでさ、クーガー。あいつ……アレでやっつけたんだよね?」
「ええ。アレで生きているのは正真正銘の化け物だけでしょう」
私は確かに見ていた。
クーガーの必殺の一撃をまともに受けたあの男の体が、まるで爆発するみたいに四散するのを。
あれだけの衝撃を受けて無事な筈は無いけれど、心の片隅に僅かな不安がまだこびり付いていた。
あの男の威圧感に毒され過ぎたのだろうか。

「イオンさん?」
「だから魅音だって何べん言ったら!」
「ああ、スイマセ〜ン。ところで、これからの予定はどうなされるおつもりなんですか?」
「え? この後……?」
そう言われた私は、今にも崩れそうなホテルと、私の傍らで横たわる光を見比べる。
「私は、光を埋めてあげたい。このまま放っておくのはあんまりだもん。
 でも、ホテルの中にはまだ光の仲間も居るだろうし……その人たちも放っては置けないよ」
「ふむ……私もホテルの中にいる仲間のことが気がかりです。ですが、怪我人が居るとは言えそれなりの大所帯。
 彼らだけでも対処できるとは思いますが……。
 それに、別の仲間を余所で待たせているのですが、彼女も迎えに行ってあげなければならない。
 ホテルを攻撃した者となのかちゃんの行方も気になりますし……一度この場から非難するのも手ではありますね」
……ん? 何だこの違和感。クーガーが何時に無く弱気じゃないか?
『全てを一気にスピーディにやり遂げましょう!』とか言って走りだすかと思ってたけれど……。
やっぱりクーガーも私に気を使ってくれてるのだろうか? イヤイヤ、やっぱりそれは無いな。
「なんにせよ、早急にこれからの行動指針を決めないといけません。
 なあに心配は要りません! 俺が貴方を安ッ全! にエスコートして差し上げますからね!」
「むしろ、そっちの方が不安だよ……」

157 :FOOLY COOLY 20 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:51:42 ID:Q1rtGrke



「……素晴らしい」

「え? クーガー何か言った?」
「ですから俺とイオンさんの将来についてをですねっ!」
「その前にちゃんと名前を覚えろッ!」
「痛いっ! バイオレーンス!!」



【D-5/ホテル正面玄関付近/1日目/夜】

【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(大)、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り)
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている)
[思考・状況]
1:迷い(※) 。
2:沙都子と合流し、護る。
3:圭一、レナ、梨花の仇を取る(翠星石、水銀燈、カレイドルビーが対象)。
4:2、3に協力してくれる人がいたら仲間にする。
基本:バトルロワイアルの打倒。
[備考]: ※光の埋葬・ホテル内への進入・ホテルからの退避のどれをするか迷っています。
 

158 :FOOLY COOLY 21 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:52:49 ID:Q1rtGrke
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[状態]:消耗大(これ以上の戦闘は命に影響。だがその素振りは一切見せない)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:魅音に同行 。
2:セラスを迎えに戻る。
3:なのはを友の下へ連れてゆく。

【アーカード@HELLSING】
[状態]:四肢が千切れる等損傷極大( 心臓は辛うじて無事)
[装備]:鳳凰寺風の剣@魔法騎士レイアース、鎖鎌(ある程度、強化済み)、対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:0/0発)
[道具]:無し
[思考]:
1:肉体の再生を待つ。
2:ホテルを崩壊させた方の魔女にも興味。
3:カズマ、劉鳳、クーガーとはぜひ再戦したい。

【獅堂光@魔法騎士レイアース  死亡】
※ 光の所持品は光の遺体の傍に放置されています。
詳細:支給品一式、龍咲海の剣@魔法騎士レイアース、エスクード(炎)@魔法騎士レイアース エスクード(風)@魔法騎士レイアース、オモチャのオペラグラス



159 :修正  ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 18:54:08 ID:Q1rtGrke
光の矢 →  炎の矢

でした。失礼。

160 :修正 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 19:09:12 ID:Q1rtGrke
「撃滅のぉッ! セカンドブリットぉッッ!!」

「壊滅のぉッ! セカンドブリットぉッッ!!」

劇中未使用ながら、調べてみれば名前設定がありました……迂闊。

161 :修正 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 19:12:13 ID:Q1rtGrke
「瞬殺のッ!! ラストブリットォォォオオッッッ!!!!!」

「瞬殺のッ!! ファイナルブリットォォォオオッッッ!!!!!」


速さ以外にもイロイロ足りない……>orz

162 :修正 ◆B0yhIEaBOI :2007/02/24(土) 19:19:06 ID:Q1rtGrke
×ブリッド
○ブリット

生まれてこの方、ずっとブリッドだと勘違いしてますた。
修正連投真に失礼。また後で纏めて修正します。
m(_ _)m

163 : ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:19:43 ID:VfmQxx4+
>>131-137の【紅のブタ】を以下の【正義×正義】に差し替えます。

164 :正義×正義 1/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:20:36 ID:VfmQxx4+
傷ついた劉鳳への手当てが終わった後、峰不二子と劉鳳は午後六時――予定されている
三回目の放送までの短い時間を狭い薬局の中で過ごしていた。

劉鳳はこの悪趣味なゲームの舞台に立って以来採っていなかった食事を採っている。
義憤と焦燥に駆られ忘れていたが手当てを受け一度落ち着いたところで、思い出したかのように
身体がそれを欲求した。バッグに収められていた簡素な食事を、敵にするように喰らい飲み込む。

食事を続ける劉鳳の視線の先には、カウンター奥の薬品棚を漁っている峰不二子の姿がある。
棚の中身を一つ一つ確認しては時々その中身を取り出し、紙袋に小分けにしてペンでそこに
何かを書き記していた。
「……何をしている?」
劉鳳の問いに彼女は振り返ることなく、作業を続けながら答える。
「薬を調達しているのよ。鎮痛剤とか解熱剤とか……
 これから先長丁場になるかもしれないし、それに怪我をするたびにここへと戻ってくるわけにも
 いかないでしょう?」
峰不二子の意見は真っ当な物だ。それには劉鳳も納得した。だが、
「薬だったら表にも出ているが?」
店内に並んだ商品棚にはカラフルな箱に入った薬が数多く並んでいる。
続く質問にも彼女は作業を止めることなく答えた。
「そっちに出ているのは一般医薬品でしょう? それではこの場じゃ効果が薄いわ。
 私が今出しているのは医療用医薬品。同じ薬ならより効果の高い方を持っていくべきよ」
劉鳳は再び納得する。つまり、
「薬に詳しいんだな」
そう感じた劉鳳の言葉を峰不二子は軽く否定した。
「そうでもないわ。自分の知っている物を集めているだけ。職業柄よくお世話になるからね。
 もし、知識が十分にあるのならここにあるもの全部持っていくわ。コレがあるんだから」
そう言うと、彼女は棚から振り返り無限に物を飲み込む不可思議なデイバッグを指した。
そして必要な物は揃ったのか、カウンターの上に並んだ紙袋をそのバッグの中に収めていく。

「そういえば聞いていなかった。おまえの職業は何なんだ?」
劉鳳は先の彼女の発言から、それをまだ確認していなかったことを思い出し質問した。
薬品に馴染みがあるなど、医者でなければ思いつくのは荒事関係だ。
先の変装の件もある。相手の素性はしっかりと確認しておかねばならない。
一度はそれで痛い目にあっているのだから。
「探検家。世界中のお宝を求めて旅をしているの。トレジャーハンターと言ってもいいわ」
予想外の答えが返ってきたが、劉鳳はなるほどと納得した。
よく観察すれば彼女の立ち振る舞いは素人のそれでは無い。それにこの状況下での冷静さ。
それなりに修羅場を潜った経験があるということだ。
まだ信用しきれはしないが、頼りになる人間だと劉鳳は結論付けた。

作業を終えた峰不二子がいくつかのアンプルや瓶を手にして劉鳳の元へと戻ってくる。
彼女はその半分を劉鳳の前に置き、残った中から一本蓋を開けて口に運びながら言った。
「ビタミン剤に滋養強壮剤よ。飲んでおきなさい。そんなパンよりかはエネルギーになるわ」
峰不二子は一つを飲み終わるとすぐに残りに手をつける。劉鳳もそれにならい薬に手を出した。

そして二人が全てのアンプルを空にした時、ちょうど午後六時の――三回目の放送が始まった。

165 :正義×正義 2/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:21:33 ID:VfmQxx4+
――桜田ジュン。そして真紅。
続けて呼ばれた二人の名に劉鳳は拳を強く固めた。

どちらの死にも彼に責任があると言える。少なくとも彼はそう思う。

桜田ジュン――彼の死については自身の不甲斐なさが原因だ。保護を謳っておきながら
目を離しその間に殺されてしまった。しかも彼を殺害したのは自分が見逃してしまった、あの
長門有希である。HOLYの隊員としてはあるまじき失態だ。

真紅――峰不二子が戦っている所を目撃したと言うが、どうやら殺されてしまったらしい。
今となっては彼女が正義だったのか悪だったのかは不明だが、少なくとも自分が最初の時に
捕まえていればこの結果は防げただろう。

劉鳳は自責の念を断罪の炎へと転化し床から立ち上がった。この場の悪を駆逐せんがために。
だが、それと同じように重要なことがある。弱者を守ることだ。

「――不二子。俺を真紅が戦っていた場所まで案内してくれ。
 まだ襲われている人が残っているかもしれない。そして、悪がまだそこにいたならば
 俺はそれを断罪しなければならない」

二人は休息の場であった薬局を出ると、沈む夕日に向かって道を西へと進んだ。


激しい戦いの痕跡が残るその場所にそれはあった。
薔薇の色のドレスは埃に塗れ色を失い。金色だった長い髪は光を返さない。
そして気品と誇りを湛えていた蒼い目はその片方が失われていた。
――壊れた人形。それはまるで誰かの忘れ物のようにそこへと転がっていた。

劉鳳は真紅との邂逅に思いを返すが、地に落ちたそれにあの時の面影は見られない。
そっと手を触れてみるが、その感触は生きていたとは思えないほどに空虚だった。
だが、この人形――彼女が生きていたことは皮肉にも首に嵌った枷が証明している。

「劉鳳。これは何かしら?」
峰不二子が指差しているのは真紅の胸の上に浮かんだ淡い光だ。
何か中心にあるというわけでもなく、ただ光が浮かんでいる。
「さぁ……、前に会った時には見なかったが……」
劉鳳はその光へと手を伸ばす。手が近づくと光は吸いよせられるようにその手のひらに収まった。
重さも温度も感じないが、何か不思議な感触がある。

「これが何かは解らないが、……何らかの意志がある」
ような気がする。と、劉鳳は感じた。
「……意志? じゃあ、その光はこの人形の魂だとか言うのかしら?」
峰不二子の言葉にはそれがナンセンスだというニュアンスがある。確かにそうだが、
「どちらにしろ捨て置けはしない」
謎の光をバッグへと収めると、劉鳳は真紅の躯を抱きかかえる。
子供程の大きさだが重さはその半分にも満たない。その軽さが不在――死をより実感させた。

166 :正義×正義 3/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:22:32 ID:VfmQxx4+
埃を払い、水で煤を落とし着衣の乱れを正すと、劉鳳は真紅の躯を再びその場へと横たえる。
失われた部分はどうしようもなかったが、彼女は再び生きていた時の気品を取り戻した。
いや、戦いによって一部を失ったその猟奇的な姿はまた別の――倒錯的な魅力を得ている。

沈む夕日によって色を紅から蒼へと変える彼女をしばらくの間見ていたが、峰不二子に急かされ
劉鳳はその場を後にした。
今必要なのは感傷ではない。正義と行動だ。

渡った橋をまた戻り、今度は先程とは逆の北東の方角へと足を進める。
劉鳳が死なせてしまったもう一人の少年――桜田ジュンの言葉によればその方角にあるホテルに
人を集めている人間がいるはずである。

「集まっているかしら? それに罠だということも考えられない?」
峰不二子は最もな疑問を呈する。此処は安易に人を信用できる場所で無い事はすでに明白だ。
「少なくとも、そこに人を集めようとしていた人間がいることは確かだ」
それが善人か悪人かは解らない。
だが、劉鳳は前に進むだけだ。正義に回り道や逃げ道は存在しない。ただ真っ当するのみ。

隣を歩く峰不二子は嘆息する。
想像以上に融通が利かない。思いのほか真っ直ぐな男で、そして単純であるが故にブレにくい。
彼を操作するには理由――なんらかの媒介。つまりは餌が欲しい。
このままでは諸共に玉砕しかねない――と、そこまで考えたところで彼女の思考は停止した。

歩みを止めた同行者に劉鳳は訝しがる。
「……どうした?」
彼女は通りを挟んだ反対側の歩道を指差す。その先にあったものは、
「……豚?」
二本の足で道を歩く子ブタの姿であった。

167 :正義×正義 4/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:23:24 ID:VfmQxx4+
「……アレもこのゲームの参加者かしら?」
二人とも、真紅の亡骸を見てこの悪趣味なゲームには人間以外の者も参加していると実感した
ばかりであったが、ブタとは予想外であった。しかもただの獣ではなく人の様に歩いている。

……どうしたものか。その突拍子の無さに逡巡する二人をよそに、ブタはその短い足を交互に
繰り出してこの場を去ろうとしている。
「声をかけよう」
それが何であれもう目の前から逃すわけにはいかない。そういった後悔はもう繰り返さないと
誓ったばかりだ。そう意を決し、劉鳳は目の前を横切るブタに声をかけた。

「――おい、そこの豚ッ!!」

そんな声のかけ方はないだろうと、隣の峰不二子は心の中でツっこむ。
案の定、二人に気づいたブタは顔を真っ赤にしてこちら側へと駆けて来た。

「誰が豚だッ!!」

いや、ブタには違いないだろうとと、峰不二子はもう一度心の中でツっこんだ。

劉鳳はまじまじと目の前のブタを観察する。歩くだけではなく言葉も理解するとは……。
そしてやはりと言っていいのかこのブタも参加者の一人(?) であったらしい。その首にそれを示す
環が嵌っているのが見える。

それから数分。取り留めの無いブタに対し二人が繰り返し言葉を重ねた結果、ブタの名前と
目的が判明した。
「つまりぶりぶりざえもんは、怪我した仲間を助けるために魔法を使う少女を探しているのね?」
「そういうことだ。やっとわかったか」
尊大な態度のぶりぶりざえもんに、峰不二子は辟易とした表情だ。

ブタ――ぶりぶりざえもんと言う名前らしい――によると、途中で出会った仲間の中に重傷者がおり、
それを治療するために彼が以前世話になった"魔法"を使う少女を探している途中だと言う。
その少女は今は禁止エリアに指定されているE-4エリアへと向かっていたらしく、ぶりぶりざえもんは
それを手がかりにE-4エリアの周りを回っていたらしい。彼の言う病院へと向かった仲間は
おそらくその特徴から峰不二子が橋の近くで見た者達だろう。怪我を負ったが逃げ果せたらしい。

先程とは一転し、状況が複雑になった。
劉鳳は考える。選択の誤りによる犠牲はもう出したくない。病院に向かったという重傷者は手を
失っていたとぶりぶりざえもんは答えた。ならば、そちらにはもう猶予はないだろう。適切な処置が
施さなければ人事不省に陥るのも近いはずだ。
そしてもう一方の魔法を使うという少女。魔法というものが何なのかは解らないが、ここまでくれば
理解できなくともそれがあると信じられる。問題は目の前のブタに任せておけるかということだ。
先程の歩いている様を見た限りでは到底探しえるとは思えない。こちらが間に合わなければ先の
重傷者も間に合わないだろう。

優先順位が高いのは魔法を使う少女だ。協力をあおげればこの先幾人もの人を救えるはず。
しかし、すでに猶予のない人間もいる。ならばどうするか……?

168 :正義×正義 5/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:24:17 ID:VfmQxx4+
「私が病院へと向かいましょうか?」
峰不二子の唐突な提案に劉鳳は驚く。
「何故って? あなたが考えていることぐらいお見通しよ」
彼女も同じ思考をし、同じ結論に達したと劉鳳は覚る。
「おまえを危険にさらすことになるが……」
ここで彼女に死なれれば元の木阿弥だ。失敗を繰り返すことになる。
「でも、それ以外にベターな方法はないわ。事は一刻を争う」
最良の結果だけを残したいが、理想と現実にはいつもギャップがある。
「解った。……だが、気をつけろ」
峰不二子は余裕の微笑みを返す。
「まかしておいて。そう簡単にやられたりはしないわ。それに怪我人の手当てもね」
二人の意志が決定したところで劉鳳はぶりぶりざえもんの方へと向き直る。

「いくぞぶりぶりざえもんッ!」
言うが早いか、ぶりぶりざえもんを掴んで跳躍。ビルの壁面を駆け上がりながら絶影を顕現化し、
それをさらに真・絶影へと進化。壁を蹴ってその背に乗ると、二人を乗せた影は空気を切って
その場から飛び去った。

劉鳳が去るのを確認してそこに残った峰不二子はほくそえんだ。
病院に向かえば、劉鳳を操るのに必要な手札――「弱者」が手に入るだろう。
その手札をうまく切れば、あの正義馬鹿を操ることも容易いはずだ。
しかも、それは接触を狙っていたあの青いタヌキの集団である。彼らが誰かに討ち取られる前に
接触できるというのは幸運だ。
踵を返し病院がある北の方角へと向く。すでに日は姿を消しあらゆる所に影が落ちている。
これならば隠れて進むのも容易い。

峰不二子は影から影へ身を隠しながら、音一つ立てずに病院へと向かい路地を駆けた。

 【E-3/市街地(北東)/1日目-夜】

 【峰不二子@ルパン三世】
 [状態]:健康
 [装備]:コルトSAA(弾数:6/6発/予備弾:12発)
 [道具]
   デイバック/支給品一式(パン×1、水1/10消費)/ダイヤの指輪/銭型変装セット
   【薬局で入手した薬や用具】
   鎮痛剤/解熱剤/睡眠薬/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
   抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
   ※種類別に小分けにしてあります。
 [思考]
   基本:ゲームからの脱出。
   1.D-3の病院へ向かいぶりぶりざえもんの仲間を手当てする。
   2.そして青いタヌキ(ドラえもん)から情報を得る。
   3.病院で劉鳳とぶりぶりざえもんの帰りを待つ。
   4.F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
   5.ルパンが本当に死んでいるか確認したい。
 [備考]:E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。

169 :正義×正義 6/6  ◆S8pgx99zVs :2007/02/24(土) 23:25:21 ID:VfmQxx4+
立ち並ぶビルの上を、大きな影が疾走する。
疾走する影のその背には劉鳳。そしてさらに彼の背にはぶりぶりざえもん。

眼下に流れる道や建物にくまなく目を走らせながら劉鳳は背中のぶりぶりざえもんに話しかける。
「ぶりぶりざえもんッ!! お前は何者だッ!!」
その質問にぶりぶりざえもんは誇らしげに答えを返した。
「救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんだ」
その義勇ある行動から自分と同じものを感じていた劉鳳はその答えに得心する。
そして自身の素性を明らかにした。
「俺は対アルター特殊部隊HOLYの劉鳳だ」
聞きなれない言葉にぶりぶりざえもんは混乱する。劉鳳は改めて自身を表す言葉を紡いだ。
「いたずらに世を乱す唾棄すべき悪を断罪し、絶対正義の秩序を築くために活動している」
劉鳳の大仰な物言いにぶりぶりざえもんは少したじろぐ。
「お前もおたすけしているのか……?」
その問いに間髪入れずに劉鳳は答える。
「そうだッ! 貴様は正義かッ!?」
劉鳳の問いにぶりぶりざえもんもすぐに答える。
「正義? ああもちろんだ。なんといっても私は救いのヒーローだからな!」

殺戮と不安と疑心。弱者の心を蝕むこの最悪の舞台で、今二つの正義の意志が同調しその強さを
増している。それはこの舞台そのものを切り裂かんとする一条の矢と成ろうとしていた。

「俺達二人で悪を断罪するぞぶりぶりざえもん!」
「ああ!そしてみんなをおたすけする!」

いつの時代、どの場所でも正義の志は普遍だ。そしてそれは人に限らない。
それを確信すると、劉鳳は絶影を駆るスピードを増し、正義を成すべく暗闇を疾走した。


 【F-4/市街地(北)/1日目-夜】

 【劉鳳@スクライド】
 [状態]:少し高揚している/軽い疲労/全身に中程度の負傷(手当て済)
 [装備]:なし
 [道具]
   デイバッグ/支給品一式(-2食)/斬鉄剣/SOS団腕章『団長』
   真紅似のビスクドール/ローザミスティカ(真紅)
 [思考]
   基本:自分の正義を貫く。
   1.ぶりぶりざえもんと共に鳳凰寺風を探す。(※とりあえずE-4エリア周辺)
   2.風を見つけたら病院へと戻る。
   3.悪を断罪する。(※現在確認している断罪対象)
    ※アーカード、長門有希(朝倉涼子)、シグナム、ウォルターを殺した犯人。
   4.ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
   5.機会があればホテルに向かう。
 [備考]
 ※朝倉涼子のことを『長門有希』と誤認しています。
 ※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
 ※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。

 【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
 [状態]:頭部にたんこぶ/ヤマトとの友情の芽生え/正義に対する目覚め
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考]
   基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。
   1.鳳凰寺風、高町なのはを捜して病院(太一たちのもと)へ連れて行く。
   2.ヤマトたちとの合流。
   3.救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。

170 :鷹の眼――舞台裏に潜む男 ◆F1pei9kSU6 :2007/02/24(土) 23:49:27 ID:vOraBFMH
崩壊していくホテルの裏側で、一人暗躍していた男がいる。
鷹の名を持つ彼は深淵に身を寄せ、闇を彷徨い歩いた末に光へと生還した。
誰が彼を導いたのか――仲間か? 神か? それとも存在すら分かり得ぬ未知なる何か?
ギガゾンビの正体に繋がるであろう導き手の秘密。知るよしもなければ、知る必要もないそれ。
考えるでもなく、悩むでもなく、鷹はただ、勝ち残るための真理に徹した。

「ルイズと同様の力を持つ者、か」

小高いビルの屋上から、鷹は空を眺める。
この鷹は空を飛ぶことができない。鷹とは名ばかりで、その実態は単なるヒトであるからだ。
――内の存在まで「ヒト」と呼べるかどうかは、別の問題として。
鷹は空を飛ぶ二人の少女と、崩れていく巨城を見つめる。
自らが考案した策、その成果が、目に映って時を繋いでいく。
勝利への、栄光への手順は、順調に、滞りなく進んでいた。

「――何時の時代も、黒幕というのは得てして表舞台には立たないものだ」

それが、紡がれてきた歴史の必定。
戦乱を始め政治に至るまで、裏側で暗躍する繰り手というのは、決して顔を見せようとはしない。
それは、80名の人間による殺し合いなどという小事においても適用される。ギガゾンビが正にそれだ。
だが時として、真の黒幕は劇中の参加者に紛れ込んでいるパターンもある。

「行くか――」

鷹は静かに呟き、大地へと飛翔した。
城が落ちたのち、王の首を取る役目は刺客を放った将その者にある。
鷹の眼は遠くの山々を見渡し、戦況も的確に捉えてみせる。
そんな鷹の名を、群がる仲間たちは信頼を込めてこう呼んだ。
――グリフィスと。

171 :鷹の眼――舞台裏に潜む男 ◆F1pei9kSU6 :2007/02/24(土) 23:50:21 ID:vOraBFMH
【E-5/1日目/夜】
【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:全身に軽い火傷
[装備]:マイクロUZI(残弾数50/50)、耐刃防護服
[道具]:ターザンロープ@ドラえもん、支給品一式×2(食料のみ三つ分)、ヘルメット
[思考・状況]
1:ホテル周辺まで近づき、状況に応じて行動。
2:ルイズが戻ってきた場合は殺害。これ以上駒として使うつもりはない。
3:やっぱり剣が欲しい。
4:手段を選ばず優勝する。殺す時は徹底かつ証拠を残さずやる。
5:キャスカを探して、協力させる。
6:ガッツ……

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/02/25(日) 00:07:44 ID:blg8E9WW
で?

173 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:44:20 ID:gnYj7PIq
 駆け去った男の後を辿るのは、風にとってそれほど難しくは無かった。
舗装などされていない森の地面には、なにか暴力的ともいえるほどの
力を持ったものが駆け抜けた跡がくっきりと残されていたからである。
 ただ。問題なのは自身の肉体的疲労だった。目覚めてからずっと動
き続けていた無理がたたって目は霞み、体は重く、足はもつれる。
そして精神的疲労も。今かかったばかりの放送の中で告げられた、
禁止エリアに留まって爆死する者がいたという事実は風を打ちのめした。
(助けられなかった・・・・・・)
あれだけの労力を費やした行為が無駄に終わったという思考が、無
力感と徒労感を呼ばぬはずはない。心を蝕む暗い思いは気力を萎えさ
せ、疲労感を倍化させた。
 しかし、それでも風の瞳に宿る意志の光は消えてはいなかった。
『信じる心の強さが未来を決める』それがセフィーロでの戦いで風が
学んだこと。
 確かに、自分の力が足りなかったせいで犠牲者が出てしまった。だ
が、光もエルルゥもまだ生きている。ならばこそ、ここで信じることを
やめるわけにはいかない。
 戦いを止められると、自分は光と共に東京に帰ることが出来ると、
信じることをやめるわけにはいかない。

174 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:46:07 ID:gnYj7PIq

 ――海ちゃん、風ちゃん、3人一緒に東京に帰ろうね!

 光の声が聞こえた気がして、風は口の端に微笑を浮かべた。セフィ
ーロにいた頃、光が口癖のように言っていた言葉。3人でかわした誓いの言葉。
いきなり右も左も分からない異世界に召還され、世界を救ってくれと言われ、
それからは襲ってくる刺客や徘徊する魔物との戦いの連続だった。
 一人だったら絶対に耐えられなかった。でも、3人一緒だったから、
かけがえのない、生まれて始めて自分の命を賭しても守りたいと思っ
た友達、光と海と一緒だったから頑張れた。
 危なっかしい所があるけれど真っ直ぐで明るい光。高飛車に見えて
実は繊細で仲間思いだった海。
これからずっと、三人で一緒に同じ時をすごしていくつもりだった。
 それなのに、海はもうこの世にいない。だからもうこれ以上、
絶対に失いたくない。失うわけにはいかない。
(帰りましょうね、光さん。一緒に、東京へ……)
 風は決然と顔を上げ、強く前を見据えた。
 歩く。闇の中を、どこからか聞こえる虫の声だけを友としてひたす
らに風は歩く。
 唐突に視界が開けた。
 森の中にぽっかりと開いた空間に出現したそれは――
「ログハウス・・・・・・」
 誰か負傷した人間が、ひょっとしたら先ほど具合が悪そうに見えた
人間が休んでいるかもしれない。誰もいなくても何か役に立つものが
あるかもしれない。光やエルルゥの行方を知る手がかりになるものが
あるかもしれない。仮にそれら全てが存在しなくても、十分な休息が
取れる場所というのはありがたい。
 風は躊躇なくログハウスに向かって歩を進めた。


175 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:47:00 ID:gnYj7PIq
 辺りに人の気配は無い。窓からそっと中の様子をのぞき込んでみる。
 
 ――いた。

 若い女性が一人、ベッドに横たわっている。服装からして、先ほど
奇声を上げながら高速で駆け去った男に背負われていた人間と同一
人物に間違いない。そして、さらに観察を続けるうちに、眠っている
女性が、トグサの言っていた『セラス・ヴィクトリア』の特徴を多く
備えていることがは分かった。
(金色の髪、今見えた長い犬歯、体格、服装・・・・・・多分、間違いない)
 ホテルにいるはずの『セラス』が何故ここにいるのかという疑問はあるが、
トグサと『セラス』が分かれてから経過した時間を考えれば、
『セラス』がホテルにとどまらずに何らかの行動を起こしていたとし
ても何ら不自然ではない。最低でも情報交換は行っておきたい人物で
ある。
(それにどうも、体調があまりよろしくないみたいですわ・・・・・・)
 先ほどから『セラス』は何度も顔をしかめたり、身をよじったりし
ている。
 ほうってはおけない。
 風は、ログハウスの入り口へと向かった。


176 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:48:36 ID:gnYj7PIq
 *  *

「セラスや・・・・・・起きなさい! セラスや・・・・・・」
 気がつくとセラスの目の前には、眼鏡をかけた天使の格好の
オジサン(小太り)がふよふよと空中浮遊していた。
 本来なら驚嘆してしかるべき光景なのだろうが、3度目となると多
少免疫もつく。
「・・・・・どちら様ですか?」
「私はあなたの銃、カラシニコフの精です」
「そーですかー・・・・・・。ちなみにここはどこdeathか?」
 ボロいビルとボクシングリングとサッカー場が不毛の荒野に林立
してるというマジメに考えると脳細胞が半分くらい死滅しそうな光
景を見渡しながら、声に諦めと疲れを等分に含有させ、セラスは目の
前の男に尋ねた。
「ここはこの私、カラシニコフの精空間タイプ2、スタローン空間
なのでスタローン」
「なるほどぉ。じゃ、起きますねー。どーせまた私の身に、ゴイスー
なデンジャーが――」
「お前はもうここから出られないんだスタローン。ここで一生、一作
目は名作なのに、シリーズを重ねるにつれて微妙になっていく作品に
出まくるのだスタローン」
「なっ!?」
 聞き捨てならない言葉に、セラスは足を止めた。
「お前はこれから、テーマソングが鳴り響くとパワーアップするボク
サーと戦ったり、マイケルケインとナチス相手にサッカーやったり、
ハインドを弓矢で打ち落として、ゴールデンラズベリー賞を総ナメに
したりするのだスタローン」
「ちょっ・・・・・」
 
 ――ぐさ。



177 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:49:26 ID:gnYj7PIq
 どこからともなく飛んできた木製の手投げナイフのようなものが、
カラシニコフの精の目に突き刺さった。
「GAAAAAAAAAAAAAAAA」
 悲鳴が轟く中、
「そいつは偽者だ! 起きるんだ、セラス。仲間が君を待っている!」
 ノートに悪人の名前を書いていそうなカラシニコフを持った黒髪
の少年が、セラスに向かって叫んだ。
「えっと・・・・・・」

 ――びし。

 唐突に黒髪の少年の額に穴が開いた。
「地獄で会おうぜ、ベイビー」
 ビルの陰から現れた、これまたカラシニコフを手に提げた未来から
来たサイボーグに守られていそうな少年が叫ぶ。
「AHHHHHHHHHHHHHHHHHH」
「軍曹! 教則217、ケース5だ。カラシニコフの裁きのもと、5.45ミリ弾で
奴等の顎を喰いちぎれ!!」」
「カシムカシムと・・・・・・。馴れ馴れしいんだクソ野郎!!」
「誰だ貴様!!」
「誰だ、誰だ、誰だ〜♪」
「完全無欠にカンケーないから帰れ!!」
「AHHHHHHHHHHHHHHHHHH」
「うっせー!!」
「パンがないのなら糞便を食べればいいじゃない」
「わけわかんねーよ!!」
「―――!!」
「―――!!」


「――あの、大丈夫ですか?」
「!!」


178 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:50:48 ID:gnYj7PIq
 セラスは目を開いた。
 その目に映ったのは、自分を見下ろす少女。反射的にセラスは全身
の筋肉に機動命令出を出した。命令に反応して、セラスの全身の筋肉
がたわむ。だが、少女の瞳の中には目の前の相手を真摯に心配する感
情しかなく、それを見て取ったセラスは、ホッとして力をぬいた。
(よかったぁ。積極的に殺して回るタイプの人間じゃないみたい)
 まあ、目の前の少女がそのタイプの人間なら、今頃セラスは塵にな
っているはずであるから、当然といえば当然なのだが。
セラスはゆっくりと身を起こしながら、少女に目を走らせた。
 髪は最上級の紅茶を薄く入れたような色、歳はみくると同じくらい
か。やわらかな印象を与える顔立ちをしており、優しい碧の瞳が印象
的だ。同時に、大分疲労しているのが見て取れるにもかかわらず、ど
こか毅然とした所作からは、芯の強さも感じられる――
「・・・・・・ん?」
 今更ながらにセラスは自分の額にのった、湿ったハンカチに気づく。
「これ、あなたが?」
「はい」
「あ、ありがとう」
 ――どう考えても悪人の類ではない。というより、積極的に参加者
を殺しまわる類の人間であるかもしれない初対面の自分を、これほど
心配している所をみると、どちらかといえばお人よしの部類に入りそ
うだ。
「いえ、当然のことをしたまでですわ。それより、起きて大丈夫なのですか?」
「うん、体は別に問題ないから。ちょっと悪い夢を見てただけだし」
 心配そうに問いかけてくる少女に、セラスは笑顔で応じた。
 本当は完全に吐き気やらがおさまったわけではないが、何でもない
風を装えるくらいには回復している。夜の住人、吸血鬼の面目躍如と
言った所か。
(それにしてもあの状態で寝れちゃうなんて・・・・・・。ハードな一日だ
ったもんなぁ)
 吐き気の不快感を、戦闘によって消耗した肉体と精神の回復欲求が
凌駕した結果ということだろう。
「そうなんですの? でも、本当に無理はなさらないでくださいね・・・・・・。
申し遅れましたが、私、鳳凰寺風と申します。失礼とは存じますが、あなたは――」
「ちょーっと待ったぁ!」
 セラス・ヴィクトリアさんではないですか? と続けようとした風
の言葉をセラスは大声で遮った。
 驚いたように目をしばたかせる少女に、
「今あなた、ほうおうじふうって言ったよね? ひょっとしてあなた、ひかるっていう子、
知ってるんじゃない?」
 少女の瞳が一気にその大きさを増した。


179 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:52:32 ID:gnYj7PIq
 *  *

 夜の森を風は駆けていた。
 足が軽い、心が軽い。さっきまでの重さが嘘の様だ。さ迷うのでは
なく、明確な居場所が分かるだけでこうも違うものか。
(光さんに会える。今度こそ、会える)
 そう思うだけで、心が湧き立つ。
 光の向日葵のような笑顔が脳裏に浮かぶ。
「風ちゃん」という自分を呼ぶ元気な声が聞こえてくる。
(会いたい。早く光さんに会いたい)
 思いは既に彼方に飛んでいるのに、体はまだ此処にある。
 それがたまらなくもどかしい。
 だから、風は必死に足を動かす。そうすれば、光との距離がそれだけ
近づいてゆくから。一分、一秒でも速く、大切な人に会いたから。
 

 そんな風を横目で見て、セラスはやれやれと小さくかぶりを振った。
『ひかるっていう子、知ってる?』
 この一言は、風に劇的な効果をもたらした。
 風はそれまでの落ち着いた態度をかなぐり捨てて身を乗り出し、光
の特徴を矢継ぎ早に挙げ、それが一致すると分かると歓喜の表情を
浮かべ、感極まったようにセラスに何度も礼を言い、トグサが病院に
向かった事をセラスに告げると風の如く、走り去ったのだ。
 この間、わずか十数秒。
 風に無視できない疲労を感じていたセラスは慌てて追いかけ、待っ
ていれば、今すぐにでも超スピードで走れる仲間が来るかもしれない
し、仮にホテルにまだいたとしても、その仲間と連絡をつけて連れて
行ってもらう方が絶対に速いと説得を試みた。だが風は、セラスの気
遣いに対して礼こそ丁寧に述べたが、待ってなどいられないと言って
頑として聞き入れようとせず、走り去ってしまったのだ。
 元の職業柄なのか生来の気のよさなのか、危険人物が多数徘徊して
回っている空間に少女が一人で突っ込んでいくのを見過ごす、などと
いうことがセラスにはできなかった。慌ててログハウス戻り、クーガー宛に
ホテルに戻る旨を書いたメモを残し、吸血鬼の超感覚と走力を動員して
なんとか風に追いつき、今にいたるというわけである。


180 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:54:27 ID:gnYj7PIq
(ログハウスならともかく、ここで糸無し電話でクーガーさんを呼ん
だら逆に面倒かぁ。行き違いになっちゃう可能性あるし、分かりやす
い待ち合わせ場所を決めて、そこまで移動すんのは手間だし。
にしても、嵐みたいなひかると違って、おしとやかっぽい子だと思った
んだけどなぁ。この子もなかなか・・・・・・)
 小さく笑みを浮かべ、セラスは改めて風の様子をうかがった。
 やはりというべきか、気持ちは大分先に行っているようだが、体が
あまりついていっていない。だが、休めといっても、聞かないだろうと
いうことは先ほどのやりとりで良く分かっている。
 一つため息をつき、
「よいしょっと!」
 セラスは手を伸ばし風をひょいと担ぎ上げた。
「な、何を、なさるんですの!?」
「こらこら、暴れない! さっきもいったけど、ふうはこれ以上無茶すると
マジで倒れちゃうって」
 頬を赤らめて抗議する風に、たしなめるようにセラスは言った。
「で、でも、セラスさんだってお疲れになっているはずですわ。
迷惑をかけるわけには――」
「だ〜いじょうぶだって、お姉さんに任せときなさい!」
 完調でなくともセラスにとって女の子一人ぐらいそれほど大した
荷物ではない。
それにしても、とセラスは思う。
(女の子を抱えて走るのはこのゲームが始まってからこれで二度目
だなぁ)
 一度目はキャスカに襲われて、みくるを抱えた逃げた時だったはず
だ。守って上げられなかった、優しく、愛くるしかった少女の顔が
脳裏に浮かび、セラスは顔をしかめた。
 みくるのことを思い出すとやはり心がしめつけるように痛む。
「ねえ! ひかるとは長い付き合いなの?」
 しめつけるような胸の痛みを振り切ろうと、セラスは努めて明るい声で
風に尋ねた。ほんの少しでも待つのが嫌だというくらい会いたいという友達だ、
浅い関係のはずはないが――
「いいえ。時間ということだけを考えるならそれほどでは」
「そ、そうなの?」
 意外な言葉に思わずセラスは風の顔を直視した。
「心に時間は関係ありませんわ。光さんは、私の大切な親友です」
 調子は穏やかだったが、風の声には確固たる確信の響きがあった。
「そっか・・・・・」
 セラスは呟くように言い、視線を前に戻した。


181 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:56:23 ID:gnYj7PIq
(心に時間は関係ない、か)
 隠れていろといった自分の言葉を無視して、どう考えても戦いに不向きな
みくるが恐怖を抑え込み、あの時あの場に姿を現したのは何故だ?
 決まっているではないか。

 ――仲間のことが心配だったから、だ

 会って間もない、言葉を少しかわしただけの、セラスのことが心配
だったからだ。
 ぎりっとセラスの奥歯が軋みを上げた。
 地獄そのものの環境におかれながら、他者を思いやることができる
みくるや風のような人間は、闘争の場に居るべき存在ではない、
いてはいけない。
 それを無理矢理こんなクソったれなゲームに巻きこむなんて。
(何か・・・・・・。すっごくムカついてきた)
 セラスの犬歯が主の怒りに反応し鋭く伸び、瞳が漆黒の闇の中で
爛々と光を放つ。
(まず、ふうをひかるに合わせて、ふうにゲインを直してもらって、
トグサさんと合流して、そんで・・・・・・)
 
 ――ギガゾンビをやっつける

 怒りの火花はいつしか決意の炎へと変わり始めていた。
 やっつけるといっても現時点ではどうやったらいいのか分からな
いが、トグサがあれから何か掴んでいるかもしれない。生き残りの中
に誰か分かる人間がいるかもしれない。
 何と言っても自分の運は、珍しく登り調子なのだ。
(トグサさんと合流可能になったし、ゲインさんの傷も、もっとよく
なるだろうし、ひかるはふうと再会できるし、ふうは自分の持ち物を
手にいれることができるし・・・・・)
 セラスは左手に持ったカラシニコフをしげしげと見た。
 ナントカの精に出会った後は、いつもゴイスーなデンジャーがやっ
てきたが、今回はふうというラッキーがやってきてくれた。
(Thanks! これからもよろしくね)
 軽く銃身に口づけた後、セラスは脚に力を入れた。


182 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 00:59:00 ID:gnYj7PIq
 セラスは知らない。
 確かに今回はセラスのいう所のゴイスーなデンジャーの方から迫
ってきてはいない。
 だが、ホテルで起きている事を知っていたならラッキーなどと思え
ただろうか?
 糸無し電話を使っていたら、その異変に気づく事ができたと知って
いたなら? トグサが既に病院から移動していると知っていたなら? 
何より、ホテルで起こっている災禍の原因の一つが自分の主だ
であり――

 ――自分の主が風の親友を殺したと知っていたら?

 だが、セラスは知らない。
 故にセラスは、ホテルに向かって疾走する。
 夜を切り裂いてホテルへと突撃していく。
 少女の願いをかなえるために。
 決意の一歩を踏み出すために。

 

 セラスと風を待つもの、それはゴイスーな――




183 :「ゴイスーな――」 ◆WwHdPG9VGI :2007/02/25(日) 01:02:22 ID:gnYj7PIq
【F-7/1日目/夜】
【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:腹部に裂傷(傷は塞がりましたが、痛みはまだ少し残っています)、嘔吐感は大分おさまりました
[装備]:AK-47カラシニコフ(29/30)、スペツナズナイフ×1、食事用ナイフ×10本、フォーク×10本、中華包丁
[道具]:支給品一式(×2)(バヨネットを包むのにメモ半分消費)、糸無し糸電話@ドラえもん、バヨネット@ヘルシング、AK-47用マガジン(30発×3)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)
[思考・状況]
1:速くホテルに戻って、風と光を再会させる。
2:風にゲインを直してもらう
3:トグサと合流して情報交換をし、ギガゾンビを倒す方法を模索する
4:キャスカとガッツを警戒。
5:アーカードと合流。
[備考]:※セラスの吸血について。
  大幅な再生能力の向上(血を吸った瞬間のみ)、若干の戦闘能力向上のみ。
  原作のような大幅なパワーアップは制限しました。また、主であるアーカードの血を飲んだ場合はこの限りではありません。

【F-7/1日目/夜)】
【鳳凰寺風@魔法騎士レイアース】
[状態]:健康、魔力中消費(1/2) 疲労が溜まっている
[装備]:小夜の刀(前期型)@BLOOD+、スパナ、果物ナイフ
[道具]:紅茶セット(残り5パック)、猫のきぐるみ、マイナスドライバー、アイスピック、包丁、フォーク
   :包帯(残り3mぐらい)、時刻表、電話番号のメモ(E-6駅、F-1駅)
[思考・状況]
基本:光と合流して、東京へ帰る。
1:光に会いたい
2:消えたエルルゥが気がかり(ただし、現時点では光との再会のことで頭が一杯なので一時的に忘却中)
4:怪我人を見つけた場合は出来る範囲で助ける。
5:自分の武器を取り戻したい。
6:もし、人に危害を加える人に出会ったら、出来る範囲で戦う。
[備考]
※「癒しの風」について
風の魔法である「癒しの風」はいわゆる回復魔法です。
基本的に人間の自然治癒力を高める効果を持っており、傷や疲労の回復を促進します。
ただし、魔法により傷が完治するということはなく、あくまで回復の補助をするだけに留まります。
よって、切断された部位の接合や死者の蘇生は効果の範疇の外にあることになります。
また、病気や食中毒、疲労を回復することは不可能です。

また、発動には魔力と一定の時間を要し、対象が一箇所に固まっていた場合はそこにいた全員に効果があります。


184 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:24:24 ID:4o8cG+PS
「ぁぁぁあああああああああああああ!!!」
『Blitz Action』
「くっ!」

フェイトの十八番である高速移動魔法で加速するなのはに、魔力を推進剤と化したルイズが追いすがる。
ラケーテンハンマーによる加速はまだ続いていた。
元々高機動戦を不得手とするなのはだ、このままでは追いつかれてしまう。

「これ以上は離せない……なら戦って、撃ち落とす!」
『Haken Slash』

機械音と共に、光の鎌に魔力が満ちていく。
同時に急停止したなのはは、そのままルイズへ向けバルディッシュを振り上げた。
もっとも、ルイズに止まる様子はないし止まれないし止まる気も無い。少しも怯まずにグラーフアイゼンを振りかざす。
攻撃態勢に入ったのは、お互い同じ。だが、大きな違いがある。

『Defenser Plus』

なのはの目の前に防御壁があることが、その一つ。
ほんのコンマ数秒もてばいい。その一瞬、防御している間に相手を地面に叩き落す。
それがなのはの狙いだった。

――だが、それはあっさりと破られる。

「きゃっ……!?」

なのはの口の中に錆びた鉄の匂いが満ちる。
ルイズとなのは、両者は全く同じタイミングで攻撃を受け、同時に地面に叩きつけられた。
防壁が何の意味も無く、ルイズの手によって一瞬で破壊された結果である。

しかし、両者のダメージの重さは全く違う。

血を吐くなのはに対し、ルイズには外傷一つさえない。
これはもう一つの大きな違いに起因している――ルイズは、非殺傷設定ではなく物理設定の魔法を使用していること。
故に……同じ魔法をぶつけ合っても、なのはの方がダメージが重くなる。
魔力ダメージと肉体への直接的なダメージ。どちらがより相手を死に近づけるか、などということは自明の理。
それを理解したのか、バルディッシュが声を上げた。

『設定の変更は?』

設定の変更。何の設定か、なのはが改めて聞くまでもない。
理解したからこそ、言う。はっきりと、思いを乗せて。

「しないよ、私は」
『……愚かな質問でした。お許しを』

絶対に一線は越えない。それが高町なのはの「決意」。
いつだって、どんな時だって、相手が人間である限り非殺傷設定の魔法しか使わない。
そして、これからも。

185 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:25:12 ID:4o8cG+PS

「リリカル・マジカル――」

なのはの口が、言葉を紡ぎ出す。
唱えるのは、魔法の言葉。浮かび上がるは、四つのスフィア。

「――フォトンランサー、シュートッ!」

生み出されるのは、光の槍。
黄金の魔弾がルイズへ向けて直進する。

『Hammer Form』
「テートリヒ・シュラーク!」

それをルイズは粉砕した。
グラーフアイゼンがフォトンランサーを切り払い、全てがあらぬ方向へと飛んでいく。
同時に、ルイズは魔力で編み上げた三つの鉄球を作り出す。

「シュワルベフリーゲン!」

仮初の主の命を受けた燕が、白い少女の命を狩るべく飛翔する。
対する光の鎌は黒き戦斧へと姿を変え、それが生み出すのは桜色の魔法陣。

『Assault Form』
「アクセルシューター!」

素早く反応したなのはがスフィアを生成、射出。その数6。
かつてヴィータと戦ったとき同様に、アクセルシューターは易々とシュワルベフリーゲンを撃ち落とす。
撃ち落とす、はずだった。

「なっ!?」

なのはの表情が驚愕に染まる。
アクセルシューターは確かにシュワルベフリーゲンに命中した。命中したのに。

撃ち負けたのは、アクセルシューター。

アクセルシューターを霧散させ――赤い魔力光に染まった鉄球がなのはへ迫る。
焦りながらもなのはは残り三つのアクセルシューターを引き戻し、シュワルベフリーゲンにぶつけさせた。
それでさえ……アクセルシューターとシュワルベフリーゲン両方が砕ける、相討ちと言う結果に終わる。

「一体どういう……って、迷ってる場合じゃないね」
『Yes』

接近してくるルイズを見て、考えるよりも先になのははバルディッシュを向けた。
現れるのは桃色の魔法陣。光がバルディッシュの先端に収束していく。

「ディバイン――」

186 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:25:58 ID:4o8cG+PS

紡ぐは彼女が最初に編み出した呪文にして……もっとも信頼を置く呪文。

「――バスタァーッ!!!」

生み出されるのは、桜色の光の帯。
戦艦の主砲さえ凌駕する、文字通りの砲撃が夕闇を裂いてルイズへと奔る。

「何にも知らない平民なんかが、私とサイトの世界を邪魔するなッ!」
『Schwalbefliegen』

迎え撃ったのは、砲丸さえ上回る大きさの緋色の鉄球。
それでさえなお砲撃と言う暴力の嵐の前には明らかに弱弱しい。何よりも、籠められた魔力が違う。

それにも関わらず、ディバインバスターの閃光とぶつかりあい、爆発し……桜色の魔力の帯を霧散させた。

後に残るのは、掠れきった魔力の残滓だけ。その事実の前に、流石のなのはも愕然とするしかなかった。

(まさかAMF……!? でもそれを付与された魔法なんてありえない!)

もちろん、なのはの考えは外れだ。しかしその考えは、ある意味では当たっていた。
単純な出力ではなのはの方が遥かに上。だがルイズの魔法には、「虚無」の特性が付加されている。
その特性の前には、生半可な魔法防御は紙同然。そして砲撃においても、こと相殺することにおいてルイズに並ぶ者はいはしない。
魔力のぶつけ合いになれば、「虚無」の魔法を打ち消す力が最大限に発揮されるのだから。
そこまではなのはに知る由もない。ないが、少なくとも相手は砲撃魔導師である自分との相性は最悪だと彼女にも理解できた。

『Schwalbefliegen』

冷たい機械音が、なのはを思考の海から引き戻した。
加速して横に飛ぶ。その脇をシュワルベフリーゲンが掠め、あらぬ方向へ飛んでいく。
防御、もしくは撃ち落としという対策は消え去っている。
相手に魔法を打ち消す力がある以上、まともなぶつかり合いで勝てはしない。
勝つための策を考えようとしたなのはは、後ろで轟音を立ててビルが崩れていくのを見た。
言うまでもない、さっき避けた魔弾の仕業だ。

「…………!」

ぞっとするしかない。
もし当たったのがビルではなく、ホテルだったら……
それでもなのはは素早く頭を切り替え、叫ぶ。

187 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:27:23 ID:4o8cG+PS

「スターダストフォール!」

瓦礫に魔力が付与され、まるで生き物のように浮遊していく。
崩れ落ちたビルの破片が不自然に加速され、ルイズ目掛けて飛翔する。
ルイズも黙って見ているわけではない。その手に鉄球を具現化し、撃ちだす。
爆発と土煙が互いの姿を覆い隠す中、なのはは再び魔法陣を編み上げた。

(単純な攻撃じゃ無効化されるだけ! 相殺できない攻撃をするしかない!)

そう決断してなのはは戦斧を向ける。
生み出すのは先ほどと似た、だが決定的に違う魔法。

「ディバインバスター・フルバースト!」

撃ちだすのは砲撃。けれど、それは同じ砲撃ではない。
発射された桃色の砲撃が拡散、炸裂する。
一つの方面からの攻撃でありながら、それは全方位からルイズを包み込もうとする文字通りの光の檻だ。
それらを全てを撃ち落とすのは、相当な魔力を消費させられるだろう。

「こいつ!」
『Pferde』

故に、暗色の理性の中でルイズは離脱を選択した。
旋風がルイズを吹き飛ばし、先ほどまで彼女がいた空間にディバインバスターが炸裂する。
それでもなおルイズを追わんとする光の帯は、赤い燕によって撃ち落とされ……
――なのはの姿は、忽然と消えていた。

「!?」
『Flash move』
「てぇぇぇーい!」

とっさに見上げたルイズが見たのは、上空から急降下するなのはの姿。
フラッシュインパクト。デバイスに魔力を圧縮して相手へ叩き込む、
物理設定では相手の頭蓋さえ砕きかねない強力無比な打撃攻撃であり……
だからこそ、ルイズには防げない。
バルディッシュとグラーフアイゼンが爆ぜる。それは正面からの、純粋な力の激突だ。
防ぎきれず、地面に落ちていくルイズに。

『Photon Lancer』

更に、なのはの放った黄金の槍が直撃した。
服から煙を上げて落下していくルイズを見ても、なのはは攻撃の手を緩めない。
目を閉じて精神を集中、前面に魔法陣を投射。
同時に、周囲から光が集い出す。

188 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:28:09 ID:4o8cG+PS

『9……8……7……』

バルディッシュがカウントを開始する。
生み出されるのは、沈みかけた太陽さえ凌駕する桜色の新星。
威力だけならばあらゆる魔法を凌駕する、高町なのはの切り札!

『6……5……4……』
『Schwalbefliegen』

だがその声を遮るかのように、紅い夕日の中を赤い魔弾が翔る。
魔力集束を行っているなのはに、それを回避するのは不可能。
今までの戦闘の中でも最大級の爆発が発生し、爆風が周辺の建物を揺らし、砕く。
その様はまるで隕石か何かでも落ちたかのよう。少なくとも、まともな人間が耐え切れるものではない。
必殺の確信と共に、笑みを浮かべてルイズは上空を見上げ。

――その煙の中に、全身に火傷を負ってなおもカウントを続けるなのはの姿を確認した。

『3……2……1』
「全力全開! スターライト――」

自らの傷を意に介することなく、なのはが自分の最強魔法の名を紡ぐ。
そう、なのはの出した答えはただ一つ、簡単なもの。
相殺されると言うのなら、相殺されないほどの強力な攻撃をすればいいだけ。
彼女らしい、実に単純で常識外れで……そのくせ、これ以上なく的確な判断だった。

「――ブレイカー!!!」

なのはがバルディッシュを掲げ、振り下ろす。それを合図に、夕闇の中を桜色の流星が翔けた。
打ち出されるは、星の光。相殺など叶うはずもなく――
流星はルイズを完全に飲み込み、吹き飛ばした。



189 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:28:54 ID:4o8cG+PS

「……やりすぎちゃったかな?」

なのははスタンバイフォームに戻したバルディッシュとグラーフアイゼンを握り締めながら、
地面に降りてルイズを抱き上げていた。
スターブレイカーの衝撃で頭を打ったのか、魔力を削られすぎたのか、ルイズに意識はない。
もっとも、当然の結果ではある。
本来より威力は落ちているとはいえ、スターライトブレイカー+が直撃したら普通はただではすまない。

「どうしようか……ったた!」
『大丈夫ですか?』
『申し訳ありません、このようなことを許してしまい……』
「大丈夫だよバルディッシュ、グラーフアイゼン。
 それにね、私もあの子もどっちも無事だったんだから気にしないの!」

申し訳なさそうなグラーフアイゼンに、笑顔でなのははそう返す。
もっとも、なのは自身もボロボロだ。
無防備な状況で「虚無」の直撃を受けたのだから、こちらも当然の結果だろう。
事実彼女がこうやって元気そうに振舞っているのは実際のところグラーフアイゼンを気遣う、
言わば空元気的な意味も多く含まれていたのだ。
デバイスをスタンバイフォームに戻しバリアジャケットを解除したのも、自分の状態を悟らせないためである。

――それが、致命的なミスだった。

190 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:29:40 ID:4o8cG+PS

「なのはー!」
「あ、フェイトちゃ……」

空から響く声。
振り返ったなのはが見たのは、空を飛んで近づいてくる大切な親友。
親友同士の、暖かい再会。

けれど、殺戮を求められて作られたこの場で、そんなことを許されるはずもなく。

「……なのは!」
「え……」

フェイトの顔色が変わる。バリアジャケットがソニックフォームへと変わる。
その視線の先には……突如目を開いたルイズの姿。
突然の事態に、なのはは対応さえできなかった。
その喉に、ルイズは喰らい付いて。
まるで獣のように、噛み切った。

「…………!?」
「っはぁ……!!!」

あふれ出た鮮血に顔を染め、自分の歯を数本折って、それでもなおルイズは止まらない。
なのはの手から、グラーフアイゼンとバルディッシュが零れ落ちる。
再び奪い取ったグラーフアイゼンとバルディッシュをルイズが具現化する――刹那。

「なのはあああああああああああああああ!!!」
『Blaze Cannon』

フェイトの放った砲撃魔法がルイズをその場から吹き飛ばし、近くの民家へと叩き込んでいた。
身に纏っているのは何よりも速度を重視したバリアジャケット、ソニックフォーム。
あっという間になのはの前に降り立った。

――喉から血を吹き出し、死にゆくなのはの前に。

「ふぇ……い……とちゃ」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ、こんなのってない……!
 嫌だよ、嫌だよ私は……!!!」

恥も外聞もない。
年相応の子供らしく、ただひたすらフェイトは涙を浮かべていた。それしかできなかったから。

――なのはのミスは三つ。
グラーフアイゼンとバルディッシュさえ没収すれば相手は何も出来ないと思ったこと。
グラーフアイゼンに負い目を感じさせないため、ろくにバリアジャケットの再構築も治療も行わなかったこと。
そして、何より――最後までルイズを気遣って、バインドで拘束するなどの行為を行わなかったこと。

彼女は最後まで、人を傷つけると言う選択ができず。
それ故に、狂った少女の行動を予測できなかった。

「今までみたいに私の……私の名前を呼んでよ……!」

191 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:30:33 ID:4o8cG+PS

フェイトは目の前の光景を認められない。認めたくない。
だから、S2Uをかざして治癒魔法を行使する。
フェイトにとって、なのはは全てだった。
自分の存在を母親に否定されても、なのはがいたから立ち直れた。
闇の書の中で見た幻想も、なのはがいないからこそ捨てられた。

それが、死ぬ。

「なんで、なんで、な、んで……っ!!!」

治療は全く進まない。当然だ。死者蘇生なんてできる魔法はない。
それはフェイトの母親も同じように挑み、そして潰えた、無残な幻想だ。
なのはは声も出せずに、フェイトを見ることしか出来ない。
当たり前だ。頚動脈も声帯も噛み千切られて、その命も消える前の蝋燭に過ぎない。
それでも、なのはは声を出した。
フェイトは、泣いて、泣いて、泣くしかできなくて。
そんな親友を、最期まで守ろうとして。

「でぃばいん……ばすたー……」
「え?」

なのはの手から、桃色の光が奔っていた。
フェイトの脇を潜り抜けて、それは。

『Thunder Smasher』

ルイズが放った雷光と、打ち消しあう。
振り返ったフェイトは、確かに見た。

バルディッシュとグラーフアイゼンをこちらに突きつけている、ルイズの姿を。

「……そう、だね。あなたが、いたんだった」

ゆらり、と幽鬼のようにフェイトが立ち上がる。
それは、今まで彼女が一度見せた事のない表情だった。

――その表情は、正真正銘の、憎悪。

「殺して、やる」

今まで……母親の元にいたときでさえ一度も使わなかった言葉を、フェイトは言った。
その言葉を現実のもととすべく、フェイトは歩き出そうとして。
その足を、止める物があった。

192 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:31:42 ID:4o8cG+PS

「なの、は……?」
「…………」

親友を止めるように握り締めながら、なのはは首を振る。
もう、その目が言葉を紡ぐことはない。それでも、その目が悲しげに言葉を紡いでいた。
殺しちゃだめだよ、と。

「なのは……」

なのはが瞳を閉じていく。
後に残るのはただのモノだ。
もう喋らない。時は戻らない。死人は生き返られない。

なのはが、フェイトのなまえを呼ぶことはない。

「…………っ!!!」

フェイトの目から、涙が零れ落ちる。
それでも、歯を食いしばって。悲しみに耐えるように目を瞑って。血が出るほどきつくS2Uを握り締めて。

「分かったよ、なのは」

それでも、しっかりと一歩踏み出した。

「だけど、後悔させてやる」

相手を睨みつけて、フェイトは言った。
自分の大切な魔杖を手にしている相手へ。
自分の大切な親友の命を奪った相手へ。

「なのはを殺したことを!
 一生償いながら生きさせる!」

193 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:32:28 ID:4o8cG+PS

殺さずの誓いと勝利の誓いを、共に宣言した。
それに答えるかのようにS2Uに魔力が集中し、魔術式を組み上げていく。言うまでもなく、非殺傷設定で、だ。
同様にルイズもバルディッシュを突きつける。だが、フェイトが冷静なら気付いただろう。

バルディッシュに、カートリッジシステムがないことを。

そう。バルディッシュは自分から一時的にカートリッジシステムを排除したのだ。
ルイズはもはや本能的に魔法を行使しているに過ぎない。
だから、アサルトフォームではなくデバイスフォームに戻せば、誤魔化せる。
自らの主に害なしその親友を殺したルイズへの、バルディッシュのせめてもの抵抗だった。

「消えろ!」
「貫け、雷神!」
『『Thunder Smasher』』

二つの声が唱和する。紡がれるは全く同じ術式。
S2Uとバルディッシュ、それぞれが同じ雷光を撃ちだす。
フェイトとルイズ、同じ魔法を使えば本来の術者であるフェイトが打ち勝つのが当然の摂理だ。

――本来ならば。

しかし、虚無の属性を付属されたサンダースマッシャーはフェイトのそれを相殺した。
混乱したフェイトだったが、いちいち考える余裕もない。
彼女の頭にあるのは、どうやってルイズを吹っ飛ばすか、それだけだ。

(――理由は分からないけど、砲撃で互角なら!)

フェイトの体が一気に前進する。
彼女の目的はただ一つ。ソニックフォームの本領を発揮できる場……接近戦!



194 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:33:17 ID:4o8cG+PS

一方。戦いとは全く関係ないところで息を切らしている女性がいた。レヴィである。

「くそったれ……少しはのんびり動けっての……」

明らかに疲労困憊、肩で息をしながら歩く今の彼女を見たらロックは自分の目を疑うだろう。
船を飛び移りながら銃撃を行うなどということを平気でこなす彼女には似つかわしくない姿だ。
しかし、これも仕方のないことだ。なにせ競争する相手が悪すぎた。
普通の人間の足を使って動くレヴィに対し、相手は空を飛ぶ魔法少女とそもそも人間ではない思考戦車である。
おまけに、通り道となるエリアがもうすぐ禁止エリアとなると来た。のんびりしている余裕は無い。

「ったくどいつもこいつも……ん?」

愚痴りながら歩くレヴィだったが、ふと爆音に気付いて視線を空を向けていた。
小規模な爆発。もっとも、小規模とはいえまともに巻き込まれればただでは済みそうにはない。
それが向こうの空で何度も起きている。

「いったいなん……」

だ、と言う暇はない。
突如レヴィの目前に、ルイズが叩きつけられた。

「!!!?」
「避けてください!」

警告に飛びのいたレヴィの目前に、蒼い劫火が降り注ぐ。
いつものレヴィだったらブチギレて喧嘩を売っているところだったが、
それよりも事態の推移する方がよっぽど早い。

「フライ!」
『Blitz Action』

ルイズはバルディッシュの高速移動魔法を使用し、素早く退避。
そして。

『『Thunder Smasher』』

再びデバイスが呪文を唱え、二つの雷光が爆ぜあう。
それはレヴィの目が眩むほどの爆発を起こし……
やっと閃光が止んだ時には、二人は森に向かって飛んでいったのが確認できただけ。
思わず、レヴィは呆けたまま呟いていた。

「……夢でも見てんのか、あたしは?」



195 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:34:05 ID:4o8cG+PS

木々が弾け飛び、地面は抉れて行く。
二人の魔法少女の熾烈な戦いの舞台は、F-7エリアに移っていた。

「スプライトザンバァァァァァァァ!!!!!!」

フェイトが叫ぶ。
S2Uが魔力を具現化し、3m近い長大な光の剣を生み出した。
非殺傷設定にも関わらず、軌道上の木々を軽々と両断しながら刀身はルイズへ迫っていく。
しかし、ルイズは避けない。

「切り刻めぇぇぇ!!!」
『Scythe Slash』

『虚無』の特性を付加されたサイズスラッシュが、スプライトザンバーの魔力刃そのものを両断する。
更にそれでは飽き足らず、ルイズはバルディッシュに魔力を再び充填していく。
フェイトも同様に魔力をS2Uに流し、叫んだ。

「「フォトンランサー!!!」」

二つの光弾がぶつかり合う。
互いの視界が光に包まれる中、先手を取ったのはフェイトだ。

「S2U、剣を!」
『Stinger Blade』

煙の中をソニックセイル――ソニックフォーム時に現れる黄金の羽根――で何の躊躇いをなく突っ切り、
生み出した魔力刃を左手に握り締め、振り下ろす!

「くう!?」

とっさにルイズは転がって回避した。代わりにその背後にあった木が紙切れのように切断される。
しかしそれが倒れるよりも早く彼女は飛び上がり、グラーフアイゼンを振り下ろした。
それを舞うように受け流し、フェイトはスティンガーブレイドをルイズへ向けて突き出す。
肩口、脇腹、胸――1秒のうちに三つ。魔力で自らの身体能力を強化したことによる高速打撃!
ルイズの技術ではそれらを全て防ぐことなど到底叶うはずもない。
強烈な衝撃に悶絶しながら吹き飛ばされたルイズに、とどめを刺そうとフェイトがS2Uを突きつけるその寸前。

『Photon Lancer』

吹き飛ばされながらルイズが放ったフォトンランサーが、フェイトに直撃した。
当たったのは一発。だが、防御を捨てて速さを追及した形態であるソニックフォームのフェイトには十分すぎる攻撃。
フェイトもまた吹き飛ばされ……体勢を直したのはルイズとほぼ同時。
互いに魔力で加速し、そのまま相手へ向けて、突進する。

「たああああああああ!」

斬り合い。
ルイズのバルディッシュがフェイトの頬を掠める。

閃光。
フェイトのスティンガーブレイドがグラーフアイゼンとぶつかり合う。

爆音。
魔力の奔流が二人を吹き飛ばす。

「くっ……」
「この……」

196 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:34:57 ID:4o8cG+PS

二人の視線が交差する。どちらも、強烈なまでの敵意をそれに乗せて。
衝突で互いに吹き飛んだのと、砲撃の構えを取ったことも、同じ。

「いい加減目障りよ!!!」
『Thunder Smasher』
「なのはを殺したくせに……偉そうなこと言うなっ!」
『Blaze Cannon』

雷光と轟炎が衝突する。
またも砲撃が爆ぜあい、相殺しあう。
互いを視認することさえ困難な魔力のぶつかり合いの中、
一旦離脱したフェイトは大樹の陰で息を吐いていた。
エリアにすればE-7北部。ソニックフォームなら、この程度の距離は大した事はない。「……はぁ、はぁ」

彼女の息は荒い。
本来カートリッジを消費して行使する大技・スプライトザンバーをS2Uで使用した代償だ。
だが今彼女の頭にあるのは、後悔でもなければ敵への憎悪でもなく……疑問だった。

(おかしい!
 あれだけなのはにやられて、まだ二つのデバイスを同時使用できるなんて……
 魔力消費が大きすぎて普通はもたない。
 実際、相当苦しそうに見えたし……いったい何を考えて)

疑問。あれだけ魔力ダメージを受けながら、未だ衰えずに魔法を行使し続ける敵への疑問。
フェイトの思考が回答に辿り着くことはない。その前に、堕ちた魔女が天から降り注いでいた。

「見ぃ〜つけた」
「!?」
『Schwalbefliegen』

強烈な爆発が、周囲一帯ごとフェイトを吹き飛ばす。
落下していくフェイト目掛け、更にバルディッシュが叩きつけられる!
とっさにS2Uで受けたフェイトをあざ笑うかのように、S2Uに亀裂が走り。

「くぅぅぅぅぅっぅ!!!」
『Defenser』

とっさに開放した魔力が、ルイズを吹き飛ばした。
その一瞬の隙を突きフェイトはソニックセイルを機動、距離を取る。
コンマ数秒遅れてテートリヒ・シュラークが地面の岩を完膚なきまで粉々に砕いていた。

「げほっ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」

二人の少女は着地と同時に膝を付く。
フェイトは体中に走る痛みから。
ルイズは限界を超えた魔法の行使から。
互いにデバイスを地面に突き刺し、息も絶え絶えとなりながら、決して戦うことをやめようとはしない。

――休憩は、それこそ一瞬だけ。

三つのデバイス、二人の魔法少女が再びぶつかり合い、周囲の木々を全て吹き飛ばした。



197 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:35:55 ID:4o8cG+PS

呆然としながらも、もうすぐ今いる場所が禁止エリアとなることを思い出したレヴィが橋出した数分後のこと。
駅の近くまで辿り着いた彼女は、タチコマイナーと遭遇する羽目となる。
ゲイナーとレヴィが再会して最初に行ったのは、挨拶でも戦闘でもなく。

「あなたのせいで僕がどんな目に遭ったと思ってるんですか!?」
「おーおー、怒ったかい? 無事だったんだからいいだろうが、ゲイナー坊や」
「大人って奴は……!」

下らない口喧嘩だった。まあ、あわや死ぬところだったゲイナー少年にしてみれば当然だが。
タチコマも興味深げに眺めるだけだったので、数分近く時間を浪費してやっと本題に入ることになった。

「ともかく、僕たちの上空をフェイトって子が通り過ぎていったんです」
「うん。それこそ見たことないおかしな戦闘しながらね」
「……あれか」
「知ってるんですか!?」
「ああ、見たよ……」

ゲイナーに答えるレヴィの声は、明らかに憂鬱そうだ。
気に食わない相手はぶっ潰す、それが彼女のスタイルだが……
ああまで現実離れした戦闘を見せられるとまず自分の頭を疑うしかない。
その彼女の心情を露知らず、タチコマが疑問の声を上げる。

「どうしたんだい?」
「だってよぉ、かなりの速さで空飛ぶんだぜ、あんなガキが。しかも二人。
 おまけに手榴弾なんて馬鹿らしくなる爆発を何回も起こすし……
 あたし、ヤク使った覚えはねえんだけどな」
「……それは心の底から同意しますけど」
「僕はとても興味深いことだと思うけどね。
 そんなことより、現状把握が先じゃないかい?」
「……ああ、てめえの言うとおりだよ戦車野郎」

残念なことに、レヴィは話す相手が悪かった。
同じく非現実に接しているにも関わらずそれを受け入れるゲイナーと、
今まで見たことのない魔法に興味津々なタチコマ。
レヴィは心底頭痛を感じながらさっきの二人が飛び去った方向を言おうとして……
その瞬間、北――D-6エリアから轟音が響いた。
三人(正確には二人と一機)が振り返ってみれば、空を飛びながら斬りあう二人の少女。

「……あそこだ」
「あそこだな」
「あそこだね」

198 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:36:54 ID:4o8cG+PS

起こっているのはこれ以上なく現実離れした派手な戦闘。
もっとも、もはやレヴィでさえ限界を通り越して何も感じなくなっていたが。
流れ弾で民家が崩れていくのを、まるで野球の試合でも見ているかのようにのんびり眺めながらレヴィは呟いていた。

「ガキのくせにあのクソッタレメイドよりやること派手だな」
「クソッタレメイド? 誰だい?」
「てめえには関係ねえよ戦車野郎。
 ったく、どうすっかな……」
「……何考えてるんです?」
「いや、あいつらに思い知らせる手段があるとすればどんなモンかと……」

珍しく、ゲイナーの質問にレヴィは大人しく答えていた。もっとも考えに没頭していたからだが。
しかし、それをタチコマはルイズ対策の検討中だと受け取った。
実際は「あたしの前で派手な真似しやがって」というレヴィらしい思考に基づいた発言であることは言うまでもない。

「まあ、確かに速いねフェイト。僕でも全速力じゃないと追いつけないか。
 じゃ、ボクはあの子を援護に行ってるから、その間ゲイナー君は君に任せるよ。
 その様子ならフェイトと戦ってる子が狙いを変えて君を襲いに来ても大丈夫そうだからね」
「「はぁ!?」」

ゲイナーとレヴィは、タチコマの声に思わず声を上げていた。それもかなり間抜けな。
それこそ犬猿の仲と言ってもいい二人だが、この時は珍しく発言内容もタイミングも一致していた。
そのままタチコマを制止すべく二人とも声を上げる、が。

「待ってください、誰かこんな人と……」
「おい、人に物を頼むときは何か代価を……待てコラァ!?」

思考戦車が土煙を上げる。
怒鳴り上げる二人を放置してタチコマはその場から走り去っていく。
二人をその場に――駅前に残して。



199 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:37:40 ID:4o8cG+PS

時は、もう夜。

フェイトが月光を背に、後ろ宙返りの要領で後ろに跳ぶ。
その下をサンダースマッシャーの雷光が通り過ぎていったのはほぼ同時。
標的を見失った魔力は近場にあった民家を貫通し、瓦礫の山と化していく。

「まだっ!!!」
『Blaze Cannon』

天地を逆さまにしたままS2Uが炎を放つ。
それを。

『Thunder Smasher』
「っ……ラウンドシールド!」

雷光が「飲み込んでいく」。
相殺どころの話ではない。バルディッシュから放たれた砲撃がフェイトに直撃した。
なんとか防御できたものの、フェイトは驚愕するしかない。

(レベルアップしてきてる――!?)

フェイトとルイズの激闘は既に開始から一時間にも達している。
だからこそ相手もデバイス慣れしてきているのかとも思ったのだが、フェイトはある物を見てその考えを否定した。

(いや、違う。私とS2Uが弱くなってるんだ!)

フェイトの視線に先にあるのは、義兄の愛用しているデバイス。
S2Uは僅かに、だが確かに亀裂が走っていた。そして、それは着実に大きくなっている。
もともと近接戦闘用のデバイスでないS2Uは、バルディッシュやグラーフアイゼンとの打ち合いに耐え切れなくて当然なのだ。
故障している以上、砲撃の出力は落ちるし……そもそも、機動力自体も落ちてしまう。
フェイトにとって、それは致命的なことだ。
そもそも、フェイト自身もかなりダメージが蓄積されて来ている。
ルイズが不自然なスタミナを発揮している以上、長期戦に対し楽観的な思考を持つことなどフェイトにはできない。

(これ以上はS2Uで接近戦はできない……でも短期決戦を挑むしかない。
 遠距離じゃジリ貧な以上、方法はこれしかない!)
『Stinger Blade』

だからこそ、決断は早い。行使するは剣を生み出す魔法。
S2Uが生み出した剣は二つ。S2Uを腰にかけ、代わりにそれを両手に握り締めて新たな武器とし。

『Sonic drive. Ignition』

本来ならば撃ち合いを行うべき距離を、一瞬で詰めた。
しかし、この策でフェイトが有利になったわけではない。むしろ不利だ。
スティンガーブレイドは、本来射出して使う魔法だ。本来はたった一撃のためだけの魔法。
奇襲ならともかく、それでまともな白兵戦を挑むのは無謀の一言に尽きる。
デバイスに籠められた膨大な魔力と打ち合えば、どちらが押し負けるなどということは一目瞭然。
事実、バルディッシュの鎌がスティンガーブレイドをあっさりとかき消して……

200 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:38:26 ID:4o8cG+PS

『Stinger Blade』
「!?」

再び、フェイトの手に剣が生み出された。
打ち合いが開始される。フェイトの剣に限りはない。魔力とS2Uがある限り存在する無限の剣。
確かに、ルイズもただの少女にしては速い打撃を見せた。
だが、一息の間に何度もの打撃を繰り出すフェイトの方が遥かに速い――!
三合でバルディッシュが跳ね上がり、
五合でグラーフアイゼンが逸れていき、
六合に至りルイズがフェイトに弾き飛ばされ。

『Arc Saber』

曲がりなりにも距離を取ったルイズがバルディッシュを振った。
フェイトの頭蓋を両断し、脳漿を月光の元に晒さんと光の刃が射出される。

「ファイア!」

それを迎え撃ったのは、フェイトの手にあったはずの剣。
言葉通りにスティンガーブレイドは本来の用途に従って撃ち出され、刃と衝突し打ち消しあう。
爆煙が上がる中で、二人の少女は違う対応を見せた。

『Thunder Smasher』

煙で互いの視界が一瞬遮られた隙に、ルイズは再び砲撃を放つ。
どこまでも力任せで、理性の欠片もない攻撃で。

『Sonic drive』

だから、それを見越していたフェイトは既に上空へ飛び上がり、砲撃の隙を突いていた。

「サンダー……バスタァーッ!!!」

晴れた月夜に、特大の雷が奔る。
夜闇を照らす雷光は、綺麗に、何の障害もなくルイズに直撃し、近くの民家へと彼女を叩き込んだ。
数秒後に動いていたのは、月の下、光の羽根を輝かせるフェイトだけ。

「……やった?」

それでも、肩で息をしながらフェイトは眼下の光景を注意深く観察する。
なのはと同じように殺されては、それこそ笑い種だ。
そのまましばらく見下ろしていたフェイトだったが、煙の中に愛用の杖を確認した。

「……バルディッシュ!」

呟くのと降下はほぼ同時。
ルイズの姿を確認するより先に、フェイトは大切な養母の形見を拾い上げていた。
まるで、抱きしめるように。

『……申し訳ありません。私の力が及ばず』
「いいんだよ、バルディッシュ……でも、もう離れないでね」
『Yes, sir!』

フェイトの言葉と共にカートリッジシステムが再び現れ、具現化する。
そのまま、フェイトはルイズが吹き飛んでいった民家を睨みつけた。
出てくる様子はない。魔力反応もない。それでも警戒しながらフェイトは自らの愛杖に話しかける。

201 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:39:15 ID:4o8cG+PS

「バルディッシュ、あの子はどうなった?」
『……そろそろ命に関わる頃でしょう』
「え?」

彼女としては、気絶したかどうかぐらいのつもりの質問だった。
だがバルディッシュの答えは意図していたものと全く違うもの。
愕然とするフェイトをよそに、バルディッシュは続けていく。

『彼女は限界を超えて魔法を行使しています。
 このままいけば、リンカーコアどころか他の臓器まで影響が出るかと……』
「な……」

フェイトが絶句するのも当然だろう。
これが意味することは、いくら魔力ダメージを与えたところで魔法を行使し続けるということで。
つまり、非殺傷設定の魔法は何の意味も成しはしない。
だが、悩んでいる時間はフェイトにはなかった。

『Explosion』
「っ……!?」

突如生み出される強力な魔力の奔流。誰のものかは言うまでもない。
ルイズはただ黙っていたわけではない。民家に埋もれながら詠唱を続けていた。
なのはとフェイトの攻撃で失い続けた魔力も、カートリッジをロードしたことにより強引に補給して。
放つは正真正銘の、虚無の魔法!

「消えなさいッ――エクスプロージョン!!!」
「バルディッシュ!」
『Round Shield』

グラーフアイゼンに魔力が凝縮し、撃ち出される。
とっさにラウンドシールドを展開したフェイトだが、無駄な足掻きでしかなかった。
こと突破力において、虚無の魔法はスターライトブレイカーに勝るとも劣らない。
防壁が打ち消され、フェイトを吹き飛ばそうと風が唸りを上げる。

(なのは、ごめん……)

フェイトは目を閉じて、覚悟を決めた。
だが……その後いつまでも立っても、自分が死んだ様子はない。
それどころか、痛みさえ感じない。

(……即死したから、痛みを感じなかったのかな?)

ひとまずフェイトを目を開け、目の前の光景を――それが、現実世界のものかは別にして――確認した。
そこは天国ではなかった。幻想的な花畑も先に逝った友人達も母親もいはしない。
目の前には、まるで廃墟のような光景と。

「タチコ、マ……!?」
「や、やあ、無事、かい……」

爆風を直接浴びて……全身から煙と火花を散らしている、タチコマがいた。



202 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:40:32 ID:4o8cG+PS

「安心して、いい……ゲイナー、君は、ちゃんと置いてきた、から……」
「そんなんじゃ……そんなんじゃない!」

タチコマが最初に言い出したことは、そんなことで。
思わず、私は怒鳴っていた。なんで、タチコマは分からないんだろう。

「なんて……なんて馬鹿なことを……!」
「だからさ……言ったろ、僕は半不死だって……」

その言葉に、前にした会話を思い出す。
自分が機械だから、メモリを移せばいい。それがタチコマが言っていたこと。

だけど、そんなのおかしい……!

「けど……ここにいるタチコマは……ここにしかいないじゃない!」

私は、思わず叫んでいた。
正真正銘、胸のうちから出した言葉だった。

私の体は私のものじゃない。母さんの娘、アリシア・テスタロッサのものだ。
だけど、私はアリシアじゃない。だから、母さんに捨てられた。だから、なのはに会えた。
体が同じだからって、中にある心が同じだ、なんてことはきっとない。

私の声に、タチコマは何か疑問を持ったみたいで。
何か、言おうとして。

けれでも、その言葉が紡がれることはなかった。
答えを、知ることはなかった。

もう一度、爆発音。
あの子が、なのはを殺した奴が、何の感慨もなく、タチコマにとどめを刺していた。

「あ……!」

炎が上がる。煙が出る。地面が抉れる。伸ばした手は、届かない。
いつか母さんに伸ばした手と同じように、届かない。
タチコマは何の言葉も発しない。もう、ただの残骸でしかないから。

民家の瓦礫を押しのけながら出てきた相手の左腕は、変な方向に曲がっていた。
口からは血を吐いている。リンコーコアに異常をきたし始めたのか。
だけど、戦いをやめる様子は微塵も無い。
ボロボロの体で、再びグラーフアイゼンを振り上げようとしていた。

「そこまで、して殺したい、んだ」

もう、涙さえ流せない。
タチコマは私を庇って死んだ。私が甘いから。
もう誰も、敵でさえ決して死なせないようにしようと思ったのに。なのはのために。
結果はどうだ。どれだけ追い込んでも相手は立ち上がる。命を削って。
そうして、また失った。
なんて、愚か。
カルラさんを、殺しておいて。また、目の前で、人を死なせた。

――今の私は、たった、一人。

「ゆる、せ、ない」

203 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:41:24 ID:4o8cG+PS

言葉が冷えていく。表情が死んでいく。自分の、大切な世界が毀れていく。
そんな中でそんな言葉を言っていた。こんな言葉しか、言えなかった。
許せないのは甘かった自分か、非道な相手か、それともどちらともか。分からない。

分かるのは。これから私は、あいつを殺すということだけだ。

きっと、君は怒るよね、なのは。
人殺しなんか駄目だって。ちゃんとお話聞いてあげなきゃ駄目だって。

(だけど――私は。君達を殺したコイツを、絶対に許せない――!)

――そのためだったら、ただの人形にも戻る。

「バルディッシュ、物理設定に」
『……Yes, sir』

バルディッシュが帯びていた魔力が変わっていく。
目の前には、理性の欠片もない野蛮な笑みを浮かべた敵がいる。

そう、敵だ。殺すべき相手だ。私は無貌のまま、空へ飛び上がって、呪文を紡いだ。

「アルカス・クルタス・エイギアス――」

光が走る。
S2Uとバルディッシュ、二つのデバイスが共鳴し、雷光を生み出していく。

「――ダブルサンダースマッシャー、ファイア!」



204 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:42:14 ID:4o8cG+PS

二つの雷光は、ルイズの全身に深い火傷を負わせていた。
それでも、彼女は止まらない。フェイトを殺そうと前進する。
フェイトの表情は変わらない。彼女にも分かりきったことだ。
誘き寄せるように……いや、真実誘き寄せるためにフェイトは飛び上がった。
もちろん、ルイズはそれを追っていく。

次の戦いの場は、ビルの屋上。
月光を背に、フェイトは静かに佇んでいた。

「……満月」

ぽつりと、そうフェイトは呟いていた。
手入れの行き届いた髪と黒いマント――バリアジャケット・ライトニングフォームをなびかせて、
屋上のフェンスの上に、まるで自分の存在を誇示するかのように。
その瞬間、後ろからルイズが現れた。

「……狂ってる割に、頭は働くんだね。でも」

そう呟いて、フェイトは横へ跳ぶ。当然、ルイズは追おうとして……
瞬間、魔法で編み上げられた縄に絡め取られていた。
ディレイドバインド。範囲内に侵入した相手を拘束する設置型の補助魔法。
猪突猛進な相手には、何より効果を発揮する。

「レイデン・イリカル・クロルフル――」

悶えるルイズを尻目に唱える言葉は義兄の呪文。反応するのはS2U。
蒼き光弾がその先端に生み出される。

「――疾風なりし天神よ、今導きのもと撃ちかかれ」

暴れる敵を抑えて唱える呪文は自分の言葉。反応するのはバルディッシュ。
黄金の電撃がその先端に宿る。
リンカーコアが脈動し、術者の意志が外に出ようと暴れ出す。
それを抑え込みながら、フェイトは二つの杖を掲げた。

「スティンガースナイプ――」

S2Uから放たれるのは蒼き光弾。
だが、ルイズも黙って見ているわけではない。
バインドを振りほどき、スティンガースナイプを迎撃する。
刹那……スティンガースナイプが上空へ飛び上がった。

「プラズマランサー――」

フェイトの前方に、黄金の槍が具現化する。
同時に、スティンガースナイプはルイズの後ろへ回りこむ。
ここに来て、ルイズもフェイトの意図を理解した。
フェイトの狙いはただ一つ……
とっさに飛び上がろうとするルイズ、それを遅いと言わんばかりに。

205 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:43:00 ID:4o8cG+PS

「スナイプ・ショット――ブリッツラッシュ!!!」

蒼い光弾と、黄金の槍が加速する。
二つの光弾がルイズを足を貫き、切断し、鮮血が迸る。
それでも二人の少女の表情は変わらない。
ルイズは笑い、フェイトは無表情で。

『Schwalbefliegen』

足を失ってなお、ルイズが魔法を行使する。
強烈な爆発。月夜に生まれる赤い光。
二人ごとビルの屋上が吹き飛び、二人はその中に落ちていく。
どちらも脱出をしようとはしない。ただ墜ちるだけ。

ただし、二人の間に大きな違いがある。
フェイトは攻撃に集中するために脱出しようとせず、墜ちながらも魔法を紡ぎ。
ルイズは全身の傷で動けず、ただ墜ちるだけ。

それでも、ルイズは笑う。
サイトが、近くに見えてきていたから。



206 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:43:46 ID:4o8cG+PS

私が一階部分に軟着陸するのと、相手が同じ階に墜落したのは全く同時だった。

「バルディッシュ?」
『……まだ、生きています』
「そう」

デバイスからの報告は、驚きべきものだったけど予想していたもの。
最期まで油断しない。敵が生きていると言うのなら、完全に跡形も無くすまで安心しない。
今の私にすべきことは、それだけ。それ以外は考えられない。

悲しげなバルディッシュの声も、気にならない。
今はそれを考えるべき時ではないから。

「バルエル・ザルエル・ブラウゼル――」
『Stinger Blade Execution Shift』
『Thunder Blade』

再び、二つのデバイスが唱和して。
瞬間。
突如、周囲一体が雷光に包まれた。

光源は、魔力によって生み出された雷の剣……サンダーブレイド。
だが……その数、通常のサンダーブレイドの比ではない。
S2Uに登録された魔法に、スティンガーブレイド・エクスキューションシフトと言うものがある。
大量の魔力剣を虚空に浮かべ、敵へ向けて放つ魔法だ。
そして私は、スティンガーブレイドの代わりにサンダーブレイド――雷で編み上げた剣を配置した。

私の狙いは、最初からコレだ。
サンダースマッシャーを二つ放った時から、もうこの魔法を構築すべく呪文を紡いでいた。
……この魔法が、この相手には一番いい。

無数の剣が宙に浮かび、常世とは思えない光で世界を満たす。
その光景があの子にはどう見えていたのか。

「これが私の全力全開――
 怯えればいい。後悔してもいい。謝ってもいい。勝手にすればいい。だけど」

私はそう、無表情のまま告げる。
黒衣を広げ、太陽の光以上に輝く雷光に照らされながら。

――その瞳に、黒い泥のような感情を燃え滾らせて。

「どんなことをしても、どれくらい謝っても、どんなに償おうとしても!
 あなたは……もう許さない!」

207 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:44:32 ID:4o8cG+PS

ありったけの殺意を込めて、手を掲げる。人はこれを、死神の宣告だとさえ思うだろう。
それと同時に、殺すために降り注ぐ無限の剣。
回避も防御も相殺も、何もかもが間に合わない。間に合わせない。
まるで墓標のように、十を越える雷剣が相手に突き刺さる。

「あ、あは……」

それでもなお、あの子は生きていた。
簡単だ。私は急所を外していた。

助けるためではなく……苦しめて殺すために。

なのはの苦しみを教えるために。タチコマの痛みを教えるために。私の悲しみを晴らすために。
……それなのに。あの子は苦しもうとしなかった。

「あははははははははははははははは!!!」

笑う。嗤う。哂う。嘲笑う。狂人はただ、異常な笑みを浮かべるのみ。
明らかに異常な光景だった。そもそも、今の相手の体自体も異常だ。
全身を剣で貫かれ、皮膚は焼けただれ、周囲には異臭が満ちている。
それでもゾンビのように動き出そうとするあの子に、私は、一瞬顔をしかめた。
しかめただけだった。しかめて。

「ファイア」

冷たく呟いて、バルディッシュを掲げた。
無表情のまま、憎き相手が死んでいくのを「観察」していく。
どれほど痛いだろうと、どれほど後悔するだろうかと。
なのに。

「サイトとぉ……」

痛みを見せない。後悔もしない。苦しまない。笑っている。
更に剣が突き刺さっていく。
無限に。容赦なく。罪人を裁くかのように。

それなのに。

「ずっとぉ……」

もはや言葉さえ不明瞭。
明らかに痛覚は肉体の許容量を超えた痛みを感じさせているはず。
流れていく血は意識をバラバラにしていっているはず。
それなのに。

――なんで、哂って、いるの?

「っ…………!」

許せない。
許せない許せない許せない。
なのはを殺して、タチコマを殺したコイツが、苦しまないのが許せない――!

――シンデ、シマエ。

208 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:45:51 ID:4o8cG+PS

「ファイアッ……!」

残る全ての剣を相手に突き刺した。
脳漿に眼球に臓物に四肢に関節に
特に喉は念入りに。なのはの苦しみを思い知らせてやるために。
どこまでも無慈悲に、どこまでも冷酷に。

「い、しょ、にぃ……」
「ブレイク」

それが、最期のキーワード。
私の言葉と共に百を越える剣は全てが雷光へ還り。
相手の体を、跡形も無く吹き飛ばす。

それを私は、じっと見ていた。
気持ちは晴れるだろうかと思って。何か変わりはしないかと思って。

なんにも、変わりはしなかった。

なのはは死んだままで。
タチコマは帰ってこなくて。
気持ちは、晴れないで。

そのまま、その場に膝を付いていた。

小さく音がした。見れば、S2Uが砕けていた。
まるで、私を見限ったかのように。
ただ、酷使に耐え切れずに壊れただけ。そう理性で分かっていても、見限られたかのようにしか思えなかった。

「わた、し……」

俯いた。
こんなはずじゃなかった世界なんて、見たくなかった。
なのはがいない世界なんて、考えたくもなかった。
手を差し伸べてくれるものは、もう、いなかった。



ただ一つだけ分かったことがある。
自分がさっきまで、ただ一つの目的に機械のように集中できたのは。
壊れないように、ただ一つのことだけを見て。
現実と向き合わずに済むための、自衛の策だったんだ、って。

209 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:46:38 ID:4o8cG+PS
【D-6 ビル内 夜中】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に中程度の傷、背中に打撲、魔力大消費
[装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム・カートリッジ一発消費)、バリアジャケット、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド
[思考・状況] 激しい虚脱感

【E-6 駅周辺 夜】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ロープ
[思考・状況]
1:なんでこんな人と!?
2:フェイトのなのは捜索に同行させてもらう。
3:寒い。タチコマの後部ポッドに戻りたい。
4:二人の信頼を得て、首輪解除手段の取っかかりを掴む。
5:さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※タチコマの後部ポットの中にいます。
※タチコマの操縦機構、また義体や電脳化などのタチコマに関連する事項を理解しました。

【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、相変わらずイライラ
[装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)
    NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)、ぬけ穴ライト@ドラえもん
[道具]:支給品一式、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、バカルディ(ラム酒)1本@BLACK LAGOON、割れた酒瓶(凶器として使える)
    西瓜1個@スクライド
[思考・状況]
1 :ゲイナーから用心棒代でもせびるか。
2 :どうやったらあのガキ共に思い知らせられるかねえ……
3 :カズマ? 借りは返す!
4 :ロック? まぁあいつなら大丈夫だろ。
5 :気に入らない奴はブッ殺す!
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。

【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】
【タチコマ@攻殻機動隊S.A.C 死亡】

※三人の所持品はそれぞれ遺体の側に置かれています。
ただし、タチコマとルイズの所持品は破損している可能性もあります。

210 : ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 01:52:08 ID:4o8cG+PS
修正
>>209
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※タチコマの後部ポットの中にいます。
※タチコマの操縦機構、また義体や電脳化などのタチコマに関連する事項を理解しました。

[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※タチコマの操縦機構、また義体や電脳化などのタチコマに関連する事項を理解しました。

211 :なまえをよんで Make a Little Wish ◆2kGkudiwr6 :2007/02/25(日) 02:06:45 ID:4o8cG+PS
修正その2

雷光と轟炎が衝突する。
またも砲撃が爆ぜあい、相殺しあう。
互いを視認することさえ困難な魔力のぶつかり合いの中、
一旦離脱したフェイトは大樹の陰で息を吐いていた。
エリアにすればE-7北部。ソニックフォームなら、この程度の距離は大した事はない。「……はぁ、はぁ」

彼女の息は荒い。

雷光と轟炎が衝突する。
またも砲撃が爆ぜあい、相殺しあう。
互いを視認することさえ困難な魔力のぶつかり合いの中、
一旦離脱したフェイトは大樹の陰で息を吐いていた。
エリアにすればE-7北部。ソニックフォームなら、この程度の距離は大した事はない。

「……はぁ、はぁ」

彼女の息は荒い。

212 :此方の岸 1/3  ◆GHwqlpn0oc :2007/02/25(日) 03:12:39 ID:WN5a48a8
 2時間。
 凡人であれば、剣に慣れるのが精一杯であろう短い暇で、小次郎は鉄塊を振るうための骨子を掴もうとしていた。
 空気が熱と湿り気を帯び、剣の球状結界に触れた雑物が、その姿を著しく歪めて跳ね飛んでいく。
 手に届くあらかたを瓦礫に帰したところで腕を下ろす。
 顎から滴る汗を手の甲で拭い、そろそろ一時の休息としようと思い立った。
 この鉄塊は、置き場所すらままならない。
 右腕は、肘以上に持ち上げようとすると、小刻みに震えて命令を拒否するようになった。
 鉄塊の柄に指をしっかり絡めつかせ、引き摺って歩く。
 肘が外れそうだったが、何ほどのものでもない。肘を外さない程度の腕力は残っている。
 憩いと安寧を求めてこの石の館に踏み入ったが、結局は夜風に当たりたくなるだけだった。


 つくりものの光も、その刺さるような激しさを鬱陶しくも思ったが、日が昇るにつれてその便利さに感心し、
 悪くないと思うようになってからは、宵闇に突き立つ光の柱にも風情を覚えるようになった。
 ただ惜しむらくは、今宵は佳い月であることだった。
 白い光で無粋に塗りつぶされた砂の広場を避け、塀の内から出た。
 耳を澄ませば、涼やかな空気がさやさやと流れている。
 川がある。
 その音のする方向には、光がある様子はない。
 月明かりであれば見つかりづらいという理由もあったが、ただ単純に、小次郎はやはり月光の幽玄な薫りの方を好む。
 鉄塊を引き摺って、堤に来た。
 川の流れは無数の波飛沫を煌かせながら、そ知らぬ顔で過ぎ去っていく。
 見渡す限りの水の絨毯を、仄かに照らす淡い光。
 身も心も軽く保てば、この川を歩いて渡れそうな気さえしてくる。
 対岸に目を向け、同じように土手になった上に、ふと違和感を覚えた。
 目を凝らす。目だけでは見えないが、サーヴァントとなって鋭さを増した勘が、その姿を捉えた。
 月影に輪郭を描かれて、人の影が幽かに浮かび上がっている。
 うずくまって、こちらの様子を窺っているようだった。顔は見えない。
 暗闇もあるが、相手も小次郎に顔を向けていてなお面貌がわからない最大の理由は、顔を覆った飾り気のない兜のせいだった。
 見れば、ひどく身動きに難渋している様子だった。
 小次郎もまた見ていることに、相手も気づいたらしい。
 しばし身に針鼠のような戦慄を走らせ、それが静かに収まっていったところで、こちらへ棒板状のものを掲げて見せた。
 暗く遠いためよく見えないが、あの形状から考えるに、中身のない鞘だろう。
 ほう、と思わず声が出た。
 そんな言霊を寄せてくる者は、一人しかいない。
 兜など被って身じろぎもしないから、気づかなかった。 
 どうせまた何処かで傷でも負ったのだろう。こちらも、肩にかかるばかりの左袖を舞わせてみせる。
 壁面のように張り詰めた相手の警戒に、ひびが入って斜めに傾いだ。

213 :此方の岸 2/3  ◆GHwqlpn0oc :2007/02/25(日) 03:13:41 ID:WN5a48a8
 いっそ本当に水面を歩こうか、と思ったことは心のうちに押しとどめた。
 共に、死合うに十全の状態ではない。
 そんなことをしているうちに、小次郎はここで修練の続きをやってやろうと思い立った。
 水の音を含んだ夜風が、汗の引きつつある体を爽やかに撫でていく。条件としても申し分ない。
 川の流れに逆らうように身を構え、僅かに過ぎなかった休息に不足を申し立てる右腕へ気を入れる。
 剣を抜いて向き合っておらずとも、敵手がいるということは、身の活力を湧き上がらせる。
 あれほど疲労に腫れ上がっていた腕は、いともあっさりと鉄塊を再び持ち上げた。


 先刻苦心した甲斐が、十二分に発揮されていく。
 一太刀ごとに迅さを増し、鋭さを増し、そして鉄塊はその重さを存分に発揮していく。
 十数度の試しを経て、身の丈ほどの鉄塊が、ついに存在せぬ燕を斬った。
 対岸に目をやる。騎士王はまんじりともせずこちらの挙動を見ていた。
 その姿に満足し、小次郎は煮立つように熱い右腕に目を落とす。
 奥義の再現は叶わなかった。縦を割り、横を薙ぎ、円を刳る。その動作のいずれもが、ほんの刹那ほどに、ずれを生じている。
 いや、身の程に合わない重量を片腕で振り回すという暴挙に及んで、刹那で済んだことはむしろ誇るべきとも言えるだろう。
 これであれば、並の燕なら問題ない。
 並であれば。
 再び視線を対岸へ。
 並の燕が抜け得ぬ間隙を、鮮やかにすり抜ける者がいる。
 この不完全の奥義で、あの竜を斬れるか。
 鉄塊の鑑定書には、この鉄塊が剣であることが記されていた。
 銘なき剣の名は、竜ころし。まさしく折り紙つきであった。
 ならば後は、使い手の腕が追いつくのみ――。

 鉄塊を地に突き立て、その腹に背を預ける。
 荷から水を出し、味気ない麺麭を肴に並べる。
 月見と洒落込もうというところだが、揃うものは生憎とつれない素振りのものばかり。
 この水も酒であれば少しは違ったであろうが、と警戒が無粋に張り詰めた対岸を見やる。
 見立ての杯を眺めながら、そうそう悲嘆することもないことに気がついた。
 樹脂瓶の蓋を猪口代わりに、水を少し注いで指でつまむと、かの好敵手へ小さく向ける。
 日本には水杯という風習があってな、と声に出さず異国の剣士へ語りかける。
 この馬鹿馬鹿しい宴には、相応しい趣向ではないか。
 しばらく待っていると、対岸はこちらを見据えながらも、荷から同様に酒肴を並べ始める。
 杯までは真似をする気はないらしく、蓋を開けた樹脂瓶を手に持ってこちらへ顔を向けた。
 小次郎は、それでよい、と口元を緩ませ、手に持った蓋を目元まで軽く掲げた。
 折角の夜明かしである。一人で呑むのは味気ない。
 何しろ今宵は佳い月なのだ。

214 :此方の岸 3/3  ◆GHwqlpn0oc :2007/02/25(日) 03:14:31 ID:WN5a48a8
【C-2北岸/一日目/夜中】
【佐々木小次郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労、左腕喪失(肘から先)、右腕に怪我
[装備]:ドラゴンころし
[道具]:コンバットナイフ、鉈、支給品一式2人分(水食料二食半分消費)
[思考・状況]
1:今しばらく、宵涼み。
2:セイバーが治癒し終わるのを待ち、再戦。
3:ドラゴンころしの所持者を見つけ、戦う。
4:物干し竿を見つける。
基本:兵(つわもの)と死合いたい。戦闘不能と判断した者は無視。
※佐々木小次郎の左腕(肘から先)はB-4エリア内に放置されています。


【C-2南岸/一日目/夜中】
【セイバー@Fate/ Stay night】
[状態]:腹2分、疲労、全身に中程度の裂傷と火傷、両肩に中程度の傷、右腕に銃創、魔力消費
[装備]:アヴァロン@Fate/ Stay night 
[道具]:支給品一式(食糧2/3消費)、スコップ、なぐられうさぎ@クレヨンしんちゃん (黒焦げで、かつ眉間を割られています)
[思考・状況]
1:もうしばらく傷と魔力の回復を待つ。
2:できれば剣が欲しい。エクスカリバーならば尚良い。
3:優勝し、王の選定をやり直させてもらう。
4:エヴェンクルガのトウカに預けた勝負を果たす。
5:迷いは断ち切った。この先は例え誰と遭遇しようとも殺す覚悟。
※アヴァロンが展開できないことに気付いています。
※防具に兜が追加されています。ビジュアルは桜ルートの黒セイバー参照。

215 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/25(日) 23:51:35 ID:pJ8Mp+cp
「な、何だありゃ……」
「何という事だ……」
ジャイアン少年の頼みを受けて、喋る人形の翠星石探しを始めることになった俺達3人が捜索の為に立ち寄ったレジャービル。
その屋上で俺達が見たのは思わず目を疑ってしまうような光景だった。
「な、なぁ、キョン兄ちゃん。あれってホテルだよな……」
「言うな、少年。俺も今、何が起こってるのか整理しているところだ」
目の前に見えたのは、市街地でもひときわ目立っているはずだった高層建築。
だが、それは何があったのか知らないが今までの半分ほどの高さになっていたのだ。
あんな見た感じ堅牢そうな建物が何故崩壊してる? ホワイ?
そんな自問をしていてまっさきに思い出したのは、あの大震災の記憶。
絶対に壊れることが無いと思っていたビルが次々と崩れ、堅牢そうに見えた高速道路の高架が横倒しになり、多くの人が犠牲になった忘れもしない記憶……。
あの時のような巨大な地震があれば、鉄筋コンクリート造のビルだって崩壊するだろう。
しかし、だとしたら俺達にもその揺れが伝わっているはず。よってこの案は却下だ。
そして、次に思いつくのは爆弾等による意図的破壊。
ニュースでやる海外の発破解体や飛行機で突っ込む自爆テロみたいなやりかたをすれば、局地的に建物を崩壊させることが出来る。
天災を原因とするよりもよっぽど現実味のある案だ。
だが、もしそうだとすると…………。
「あっちでは、ビルを壊せるだけの力、もしくは武器を持った奴が暴れてるってことか? そうなのか、おい」
ここに至るまでにバカみたいに強い西洋騎士やらバカみたいに叫びながら殴りあう男達やらを見てきたわけだし、
あそこにその類のトンデモ人間がいても全くおかしくない。
――というか、プラスチック爆弾やら大砲やらが支給されてれば俺だって、ビル一つ壊すことくらい出来るかもしれない。
「翠星石…………まさかあいつ!!」
「お、おい! どうしたんだ、急に!」
俺は、いきなり何か思いついたように踵を返して階段の方へと向かうジャイアン少年を呼び止める。
すると、少年は焦ったような表情でこちらを向いて口を開く。
「あいつ……もしかしたらあのホテルにいるのかもしれない! だったら、急いで助け出してやんねぇと!!」
「いや、まだあそこにいるって決まったわけじゃないだろう」
「だけどよ、こんなところでもたもたしてても始まらないし…………」
と、立ち止まりながらも足踏みをし続けるジャイアン少年。
どうやら、見た目どおりに考えるよりも先に体が動くタイプのようだ。
……だが、今は無鉄砲に動けるような状況じゃないだろう。
まずは翠星石とやらが本当にホテルにいるのかどうかを確かめるのが先だ。
幸い、俺にはそれを調べられる手段があることだし。
「とりあえず落ち着け、少年。……まず、本当に翠星石があそこにいるのか、そして行動するのはホテルで何が起ってるのかを調べてからだ」
「し、調べるっていっても、そんな事できる訳が……」
「いや、不可能ってわけじゃないぞ。世の中には人類数千年の文明が生み出した便利な利器って物があってだなぁ――」
そう言いつつ、俺はデイパックからノートパソコンを取り出す。
「キョン殿……それは?」
「ノートパソコンっていう……まぁ、簡単に言ってしまうと色々出来る便利な道具です。情報収集も出来るくらい便利な、ね」
「では、その“のーとぱそこん”とやらのお陰で、キョン殿は聖上の死について知ったのですか?」
俺は黙って頷く。
ちなみに、放送を聞いたビルを出てここに来る途中でトウカさんにはハクオロという人が朝倉に殺されたという事実は喋っていた。
トウカさんはしきりにどうして俺がそんなことを知ってたのか疑問に思ってたようだが。
「とにかく、だ。
 何の因果か、こいつは一部ネットに繋がってるみたいで、放送の度に死んだ奴らの名前やら禁止エリアの情報が更新されていくみたいだ。
 それに加えて、誰かが俺たちの事実況してるみたいでな、誰がどうしたっていう情報も逐一書き込まれている」
「ネ、ネットってあれだろ? 電話線使って色んなこと調べる奴。……それで翠星石の居場所も分かるのか!?」
「ま、何もしないでがむしゃらに進むよりは有効だと思うぞ」
俺の言葉に、ジャイアン少年はようやく足踏みをやめた。
そして、静に頷く。
「分かった。……それじゃ、早くそれを調べてみようよ」
「そうだな。――んじゃ、ちょっとこいつで試したいこともあるから、一旦1階まで降りるぞ」
「おう!」
落ち着きを取り戻した少年の姿を見て、一安心した俺は階段へと向かう。


216 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/25(日) 23:53:34 ID:pJ8Mp+cp
レジャービルの階段を非常灯を頼りにひたすら下へ降りてゆく。
目指すは、1階の入口正面にあった総合カウンターだ。
行きがけにぱっと見ただけだったのだが、あそこには電話があった。
あそこの電話回線を使えば、この超局地的にしかネットと繋がってないノートパソコンを外部の広大なネットワークに接続できるのではないかと考えたのだ。
もしそれが実現すれば、両親なり警察なり自衛隊なり果ては国連にだって救助を要請できるかもしれない。

――そんな期待を胸に俺達は1階まで降り、電話の前にまで来たのだが…………。
「――って、モジュラージャックになってないのかよ……」
LANケーブルを出せとまで言っているのではない。
せめてモジュラージャックに対応していてほしかったのだが…………俺のささやかな期待はここで打ち砕かれた。
だが、そんな俺の軽いショックに背後の少年と時代錯誤な侍ガールが気付くはずのない。
「……どうなされたキョン殿?」
「翠星石がどこにいるのか早く調べようぜ!」
ま、仕方ないわな。
俺はノートパソコンを開くと電源を入れようとする。
だが、そんな時に限って横槍というものは入るようだ。
「……おや? 先客がいたのかい。そんじゃおじゃましますよ、っと」
入口のガラスドアが開く音が聞こえたかと思えば、聞こえてきたのはそんな渋い男の声。
俺が声のするほうを振り返ろうとすると、それよりも先にトウカさんが刀に手を当てて俺と少年の前に立った。
「某、エヴェンクルガのトウカと申す者。……そなたは何者か?」
「おいおい、五ェ門みたいな喋り方するお嬢ちゃんだな。……それにトウカって名前……」
「答えになっていないぞ! 答えよ、そなたは何者だ!? ここにいる者を傷つけようとするなら、容赦は――」
警戒する気持ちは分かるがトウカさん、それはちょっと喧嘩腰過ぎないか?
いや、確かに俺も最初は首に包丁当てられたりしたから、これがトウカさんのやり方なのか?
すると、目の前の男は両手を上げて敵意が無いことを示してきた。
「降参だ降参。俺はこんな下らないゲームになんざ乗ってないよ。……これでいいんだろ、お嬢ちゃん」
「お、お嬢ちゃんではない! 某は誇り高きエヴェンクルガのトウカだ!」
「わ、悪かった悪かったって。……俺は次元大介だ。よろしくな」
次元と名乗ったその男は、少しよれたダークスーツを身に纏い、黒い帽子で目を隠した…………そんな一見悪人な感じの男だった。
だがゲームに乗ってない以上、ここでは敵ではないという事になる。
それに名乗られた以上、こっちも名前を言わないと心象が悪くなるだろうな。
「……キョンだ。言っておくが本名じゃないぞ? 何故か知らんがこの名前で名簿には載ってる」
「俺、剛田武」
「キョンに武、か。――っておいおい、これまた都合よく……」
俺達の顔を見て、次元さんは驚いたような表情を(目が隠れてたので本当にそうかは分からないが)した。
「……お前達、涼宮ハルヒに長門有希、それにアルルゥって奴らと知り合いだな」
――今、何と言った?
次元さんはハルヒと長門の名前を口にしなかったか?
「お、おい。どうしてハルヒと長門の名前を……」
「アルルゥ殿の事を知ってるのか!?」
俺とトウカさんは次元さんに詰め寄る。
すると、次元さんは静に頷いた。
「ま、ここに来る途中にちょっと会ってな。……伝言を頼まれてる」
「伝言……だって?」
「あぁ。ま、すぐにそれを伝えてもいいんだけどよ、その前に…………」
次元さんはそう言いながら、ジャイアン少年の方を向いた。
「ちょっくら、そこのボウズに聞きたいことがある。……この糞ったれなゲームを考えたギガゾンビの野郎についてな」

217 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/25(日) 23:55:16 ID:pJ8Mp+cp
どうやら次元さんはギガゾンビを見つけ出して倒す手段を探しているらしい。
そして、その為にはギガゾンビについての情報が必要と考え、そのギガゾンビと面識があるであろう青狸とその仲間を探していたそうだ。
――言われてみれば、確かにこのジャイアン少年、あの時見せしめに殺された少女のそばに立っていた気がする。
あの時、それどころじゃなかった俺に比べて、どうやらこの次元さんはどんな状況でも冷静でいられるらしい。
「――ってなわけでよ、あの野郎について何か分かってる事があったら、俺に教えてくれ。
 それがそいつをここに引き摺り下ろす糸口になるかもしれないからな」
「……それで、キョン兄ちゃんとトウカ姉ちゃんの友達の伝言を教えてくれるんだな?」
「あぁ。男に二言はねぇ。――それにそこの姉ちゃんがいる限り嘘なんざつけそうにねぇよ」
ちらりとトウカさんを見やり、次元さんは苦笑する。
「……分かった。俺が知る限りで教えてやるよ。……俺もあいつはギッタギタにしないと気がすまないしな」
すると、ジャイアン少年は一呼吸置いて喋りだした。
ギガゾンビについてのその正体についてを――
俺達の為に手を……いや口を煩わせてもらってすまんな、少年よ。

「――っていうわけで、俺達はギガゾンビを倒したんだよ」
要領を得ない喋りや脱線が多かったものの、何とかジャイアン少年によるギガゾンビ講釈は終わった。
――で、纏めるとだ。
まず、それっぽい言葉から推測していたギガゾンビが未来から来たという推測はどうやらアタリのようだ。
どうやらあいつは、過去の世界で未来の道具を使って世界を支配していた時間犯罪者であるらしい。
……まったく、未来から来たのに謙虚に俺達の時代で生きていた朝比奈さんの爪の垢を煎じて一万回ほど飲ませてやりたいぜ。
そして、肝心のギガゾンビの打倒法だが、最終的にはタイムパトロールと言う時間に関する警察組織とやらが助けに来てくれ、それによりあいつは逮捕されたようだ。
勿論、ジャイアン少年らによる必死の抵抗が功を奏したのは言うまでもないが。
「なるほど。するってぇと、そのタイムパトロールとやらに通報する事があいつを何とかする為の近道になるってこった」
「う、うん。そうだと思う……」
「警察に通報ねぇ……人に頼るって方法が気に食わないが、あちらさんがどこに隠れてるか分からん現状だと、それが手っ取り早いっちゃ手っ取り早いな……」
通報か……。
こいつがSOS団ホームページ以外の外の世界のページに繋がりゃ、すぐにでもするんだけどな。
そういえば、俺がさっき送ったメールはちゃんと届いてるのだろうか。
もし、古泉のアホがあれを読んでくれれば、機関とやらが対処法を考えてくれるかもしれないし、もしかしたら朝比奈さん(大)の耳に届くかもしれない。
古泉の機関が何とか出来なくても、未来人の朝比奈さん(大)ならば可能性は……。
いやいや、でも待て。
こっちにいる朝比奈さん(小)が死んでしまった今、彼女は存在するのか?
これはいわゆる親殺しのタイムパラドックスとやらに相当するのではないか?
――って、ここで色々考えていてもどうにもならんよな。
とにかく今はあのメールに賭けるしかない。
「話は終わったか、次元殿? ならば……」
「ん? あぁ、そうだな。そろそろ…………と悪いな、手当てしてもらってよ」
次元さんは脇腹を負傷していた。
それは血の滲む布を見ても一目瞭然だ。
――そして、ジャイアン少年の話を聞いている間、トウカさんが巻かれた布を交換していたのだ。
「怪我をしている者を見過ごすほど某は腐っていない。――って、それよりもアルルゥ殿は無事なのか!? それで某に何と!?」
「落ち着いてくれ、嬢ちゃん。そうせかさなくても話すからよ。俺があいつらと出会ったのは――――」

218 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/25(日) 23:57:21 ID:pJ8Mp+cp
ハルヒと長門それにアルルゥという少女は現在、トグサという警察の人らとともに軍用トラック乗って行動しているらしい。
次元さんが見たところ、ハルヒは頭に包帯を、長門は腕に添え木をしていたという。
……あいつら、一体どんな無茶をしたって言うんだ。
しかし、そんな怪我をしておいて、俺に「死んだら死刑」などと矛盾にも程があることを言うあたりがあいつらしいな……。
まぁ、元気そうだったって話だから、何はともあれ良かったが。
トウカさんも探していた少女の片割れが元気にしていると聞いて、安堵の溜息をついていた。
「……それじゃ、ハルヒ達は今のところ、そのトグサさんっていう人に保護されているということでいいんですね?」
「あの後、何も起ってなければな。……今頃は映画館で休憩でもしてるんじゃないか?」
「映画館……」
今朝方通過してきた場所ではないか。
……何というすれ違いだ。こんな時に限っていい方に働かない俺の運を今日はいつもより多めに恨む。
「今から行っても遅くは無いかもな。……ハルヒって嬢ちゃん、お前さんの事凄く心配してたぞ?」
あのハルヒが?
俺を奴隷か何かのようにコキ使いまわしてくれちゃったりしてくれるあのハルヒが、俺の心配を?
これは、明日は大雨だろうか――――と冗談はさておき。
今、俺は岐路に立たされたわけだ。
今すぐ映画館に向かってハルヒや長門と合流するか、ここにいるジャイアン少年の人探しを続行するか。
……いや、岐路と言うほどのものではないか。
俺の中では既に答えは出ていたのだから。
「トウカさん……ハルヒや長門、それにアルルゥって子は信頼できる人の元にいるようです。ですから……」
「ですから武殿の人探しを続ける――そう申されるのですね?」
「あ、あぁ。……やっぱり行きたいですか? 映画館へ」
すると、トウカさんは首を横に振った。
「キョン殿が残るのであれば、某もそれに従うまで。……それに一度交わした約束を反故にするのは武人として恥ずべき事。
 アルルゥ殿が無事でいることが確認できた今は、武殿の人探しを手伝い続けるべきだと思っております」
そう言うトウカさんの顔は凛としていた。
――というわけで、方針が決まったところで、今度はジャイアン少年の方を向く。
「ま、そういうわけでだ。待たせたな、翠星石探しは続行だ少年」
「キョ、キョン兄ちゃん!! キョン兄ちゃんはやっぱり心の友だぁぁ!!!」
って待て! だからその抱きつきは危険なんだって!!
……とか言いつつも、俺はまたも少年の抱きつきの餌食になる。学習能力を身に付けようぜ、俺。
「そ、そろそろ離してくれ…………。俺はか弱い男子学生なんだ。そんな丈夫には………………ん?」
カウンターに寄りかかって抱きつきから離れようとしていた俺の目に、ふと例の電話が映った。
電話……………………そうか!
「――うわっ! キョン兄ちゃんどうしたんだ!?」
「キョン殿……?」
俺は体をひねってジャイアン少年のホールディングから離脱すると即座にカウンターを飛び越えて電話の受話器に手をかける。
「……悪いが、少年。あともう少し待ってくれないか」
「……え? それって……」
「次元さん。あんた、確かさっきハルヒ達は映画館にいるだろうっていたよな?」
俺の問いに次元さんは首肯する。
「あぁ。あの後、無事に到着して、何事も無かったらな」
その答えが聞ければ十分だ。
俺は、電話の横に置かれていた“主要施設電話番号一覧”を指でなぞり、映画館の番号を確認する。
「キョン殿……一体何を?」
「電話ですよ、電話。俺達が直接行ってやることはできませんが、電話で声でだけでも直接伝えるくらいのことはしてやらないと」
どんな理由で、あのギガゾンビが電話を設置したのかわからないが、こんな形で役立つとは。
俺は、一覧に書かれていた番号をしっかりとプッシュしていった。

219 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/25(日) 23:59:23 ID:pJ8Mp+cp
俺が、番号をプッシュし終えると、コール音が鳴りはじめた。
そして、コール音が聞こえる中、俺は心の中で「頼む、通じてくれ」と何度も唱える。
――すると、その願いが通じたのか、ついに不意にコール音が途切れ、人の声がした。
『……はい、もしもし』
通じた! ハルヒや長門のものではない男の声だったが、とにかく通じた!
俺の心臓が大きく跳ねた……気がした。
「も、もしもし。えっと、そちらは映画館でしょうか?」
『あ、あぁ。確かに映画館だ。そっちはどこからかけてる? で、君は何者だ?』
「えっとレジャービルです。俺は名簿だとキョンって書かれてる参加者です」
『ふむ、キョンか。遅れたが俺はトグサだ。この馬鹿げたゲームには乗っていない。そっちもか?』
俺は、その問いに短い返事で肯定の意を示す。
どうやら、電話越しにも男前な声を出すこの人がハルヒ達を保護しているというトグサさんらしい。
『そうか。――で、君はどうしてここに電話を? 仲間を探す為に虱潰しに各施設に電話をかけてるのか?』
「いえ、実は――」
俺はトグサさんに俺が次元さんと出会い、そこにハルヒ達がいる事を聞いたという旨を伝える。
するとトグサさんは納得したように返事をする。
『なるほど。それで、声を聞こうとここに電話を』
「はい。……それで、そのハルヒは……」
『元気にしてるよ。すぐにでも代わってやりたいが――――その前に一つ聞きたいことがある』
――またか。
次元さんといい、何で今日はこうも勿体ぶられるんだ。
『君のいるレジャービルから見て、ホテルは大分近い位置にあると思うが何か変わった動きはあるかい?
 そこに俺の仲間がいるはずなのだが……』
ホテルってあの上の方がひっちゃかめっちゃかになってたあのホテルか?
――って他にホテルって名前の建物が地図には書かれてない以上、あれがここにおける唯一無二のホテルってことだよな。
何を考えてるんだ一体……。
俺は、屋上から見たままの状況を報告してやった。
それを聞いてトグサさんは唖然としているようだった。……が、次の瞬間には口を開いていた。
『……そうか。情報提供ありがとう。それじゃ、ハルヒと長門を呼んでくるから少し待っててくれ』
そう言うと、トグサさんはどうやら受話器を置いたようだ。
そして、それからすぐに受話器越しにこちらに何かが向かってくる足音が聞こえてきて――
『キョン! キョンなのよね、あんた!』
いやはや、なんとも懐かしい団長様の声がいきなり俺の耳に痛いくらいに飛び込んできた。
「ハルヒ、元気か? 何か怪我したって聞いたが……」
『こんなの大した事ないって! それよりもあんたは無事なの?』
「あぁ。色々あったが問題ないさ。何とか無事に生きてる」
ハルヒに言われて思い出したが、本当に色々あったよな……。
それでも生きてる俺ってもしかして意外と強運の持ち主だったりするのか?
そして俺の答えに、ハルヒは安堵したような声を出す。
『そう、良かった……。――あ、それじゃ有希にも代わるわね!』
場所がどこだろうと相変わらずのハイテンションぶりだ。……ま、それがあいつのいいところなのだろうが。
『……電話を代わった』
こいつも相変わらずのローテンションだことで。
「おぅ、久しぶりだな。……で、無事か? 骨折ったっぽいが」
『問題ない。回復には時間を要するが、自然治癒可能なレベル』
「……そうか、それはよか――いや、よくないか。骨折だもんな……」
『現在は体力の温存に専念している。私も涼宮ハルヒも徐々にだけど回復の傾向にある。……心配しなくていい』
長門に言われると何故か安心感があるような気がするのは俺だけか?


220 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:00:40 ID:ktj0wEJk
「……ま、声を聞く分には大丈夫そうだな。――と、そうだ。そっちにアルルゥって子がいるだろ?
 こっちにその子の知り合いのトウカさんっていう人がいるんだ。話をさせてやりたいから代わってくれないか?」
『分かった…………』
それだけ言うと受話器が再びどこかに置かれたようだ。
遠くから、ハルヒがアルちゃんアルちゃんと叫ぶ声が聞こえる。
すると俺も受話器から顔を離し、それを目をぱちくりとさせるトウカさんへと渡した。
「……キョン殿、さきほどなら独り言を言っていたようだがこれは一体……」
「いや、これは電話といってですね、要するに離れた場所にいる人と会話できる道具なんです。
 これを使えばアルルゥさんの声が聞こえてくるはずですよ」
「あ、アルルゥ殿が!? か、是非貸してくだされ!!」
俺の言葉を聞いた途端に受話器をひったくるように奪うトウカさん。
……だけどそれ、持ち方逆です。
俺がそれを言うと、いつもどおり「某としたことが!」と言いながら持ち直す。
すると、すぐにトウカさんの嬉しそうな声が聞こえてきた。
「ア、アルルゥ殿! 無事でしたか!? 某……某はアルルゥ殿が無事かどうかばかりが気になっていた次第で……」
嬉しそうな、それでいて涙ぐむような声でトウカさんは喋り続ける。
そして、それが終わると俺に受話器を返してきた。
「……かたじけない。このような機会を設けてもらって」
「いや、無事なことが確かめられたなら何よりですよ。……さてと、誰が今は受話器の向こうに――」
『こぅら! キョン! 返事しなさいってばキョン!!!』
受話器に耳を当てるなり大声は勘弁してください。鼓膜の振動が痛いです。
「聞こえてるさ。……だから、んな大声はよせ」
『そんなことよりも! ――で、あんたはいつこっちに来れるの? 一時間後? それとも二時間後?
 トグサさんに頼んで、出来るだけ長くここで待てるように頼むからトウカさんって人と一緒に早く――』
「悪い。俺達はまだそっちに行けそうにない」
『……え? それってどういう……』
「こっちでの用事が残ってるんだ。それが終わるまではそっちには行けないって事だ」
『用事って……そんな! 今度はいつ声聞けるか分からないのよ! それなのにどうし――あ、有希、何してるの! 返してってば!』
受話器越しに何やらハルヒの声が遠くなっていく。
そして、その代わりに聞こえてきたのは……。
『電話を代わった。……こちらにまだ来れないのは決定事項?』
「ん? まぁ、まだ時間がかかりそうだな」
『……そう』
高揚するハルヒの声を聞いた後だからか、長門の声の落ち着き振りが妙に浮いて聞こえる。
「ま、用事が済んだら、そっちに行きたいとは思うけどな。――で、お前らはこの後、どっちの方に行く気だ?」
『まだ分からない。……だけど、移動することが決まったら移動先を留守番電話でそのレジャービル宛に残しておく』
「だがな、そんなことして他のやつがそれを聞いたら……」
『問題ない。他の人には分からないように別の言葉に置き換えて伝言する』
――長門曰く、移動する際はその移動する方角を真逆にして伝えるそうだ。
北へ行くつもりなら“南へ”、東へ行くつもりなら“西へ”といった要領で。
たしかにこれなら、誰かに聞かれてもバレないだろうな。
「……分かった。それじゃ、そろそろ切るぞ」
『……そう』
「ハルヒ達の事、頼んだぞ」
『……任せて』
何度も言うが、今回ばかりはこいつの冷静な声がこれほど頼もしく思えたことはない。
俺はあいつらの無事を祈りつつ、受話器を置いた。


221 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:02:02 ID:ktj0wEJk
さて、電話も終わったし、そろそろ本題に入るとするか。
「……長らく待たせたな、少年。ついにこいつの出番が来たようだ」
「お、おう! そうだよ、早く見てみようぜ!」
俺は、ジャイアン少年の声にせかされ、開いていたノートパソコンの電源を入れる。
すると次元さんがそのパソコンを後ろから覗き見てきた。
「――お、こいつはどうしたんだ? 支給品か?」
「えぇ。――とは言っても誰かの遺品みたいですが」
そう言ってる間に、画面はたちまち例の趣味の悪い土偶壁紙のデスクトップに変わる。
俺はポインタを動かし、インターネットのブラウザを開く。
「……おい、ネットと繋がってるってことは、外と連絡が――」
「いや、これとんでもないローカルネットワークみたいでして、全然外のホームページと繋がらないんです」
繋がるのがギガゾンビ様ホームページとツチダマ掲示板、それに我らがSOS団のページだけというのだからお笑い草だ。
だが、今必要な情報はその僅かに開かれたネットワークで十分回収できる。
俺はSOS団のページを開くと、すぐにツチダマ掲示板へと移動する。

そこで俺達が見た内容は――――――


【D-5・レジャービル/1日日・夜中】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:全身各所に擦り傷、ギガゾンビと殺人者に怒り、強い決意
[装備]:バールのようなもの、わすれろ草@ドラえもん、ころばし屋&円硬貨数枚
[道具]:支給品一式×4(食料一食分消費)、キートンの大学の名刺、ロープ、ノートパソコン
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る
1:武の翠星石探しに協力してやる。
2:1を行うに際して、掲示板をひとまず調べる。
3:1が終わり次第、ハルヒらの元へ急行する。
4:『射手座の日』に関する情報収集。
5:トウカと共にトウカ、君島、しんのすけの知り合いを捜索する。
6:アーカードを警戒する。
7:あれ? そういえばカズマってどこかで聞いたような……
[備考]
※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照ということで

【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:左手に切り傷、全身各所に擦り傷、額にこぶ
[装備]:物干し竿@Fate/stay night
[道具]:支給品一式(食料一食分消費)、出刃包丁(折れた状態)@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況]
基本:無用な殺生はしない
1:武の翠星石探しに協力する。
2:1の後、直ちにアルルゥの元へ。
3:キョンと共に君島、しんのすけの知り合い及びエルルゥを捜索する。
4:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョンと武を守り通す。
5:ハクオロへの忠義を貫き通すべく、エルルゥとアルルゥを見つけ次第守り通す。

222 :以心電信 ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:03:14 ID:pJ8Mp+cp
【剛田武@ドラえもん】
[状態]:健康 仲間の分裂に強い後悔、額にこぶ 焦り
[装備]:虎竹刀@Fate/ stay night、強力うちわ「風神」@ドラえもん、
[道具]:支給品一式、エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、
    ジャイアンシチュー(2リットルペットボトルに入れてます)@ドラえもん 、
    シュールストレミング一缶、缶切り
[思考・状況]
1:翠星石が非常に心配。キョン達と共に一刻も早く探し出し、落ち着かせる。梨花の件についての理由も聞きたい。
2:翠星石の手がかりを探す為に掲示板を調べる。
3:手遅れになる前に、のび太とドラえもんを見つける。
4:逃げた魅音もかなり心配。必ず探し出し、守る。
基本:誰も殺したくない
最終:ギガゾンビをギッタギタのメッタメタにしてやる


【次元大介@ルパン三世】
[状態]:疲労/脇腹に怪我(手当て済み、ただし傷口は閉じていない)
[装備]:朝倉涼子のコンバットナイフ/454カスール カスタムオート(残弾:7/7発)
[道具]:デイバッグ(+3)/支給品一式(×4)(-2食)/13mm爆裂鉄鋼弾(34発)/
    レイピア/ハリセン/ボロボロの拡声器(使用可)/望遠鏡/双眼鏡
    蒼星石の亡骸(首輪つき)/リボン/ナイフを背負う紐/蒼星石のローザミスティカ
    トグサの考察メモ/トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ
[思考]
基本:1.女子供は相手にしないが、それ以外には容赦しない。
基本:2.できるだけ多くの人間が脱出できるよう考えてみるか……
1:休息しつつ、掲示板の様子を見てみる。
2:その後、拡声器を使ってみるか検討する。
3:アルルゥ、トグサ、ヤマトの知り合いに会えたら伝言を伝える。
4:ルパンの仇>ピンクの髪の女(シグナム)を殺す。
5:引き続き、殺された少女(静香)の友達と青い狸を探す。
6:圭一と蒼星石の知り合いを探す。(※蒼星石の遺体は丁重に扱う)
7:ギガゾンビの野郎を殺し、くそったれゲームを終わらせる。
8:翠星石って確か蒼星石の双子の姉さんとか言ってたよな……。どうするか……。
[備考]
トグサとの情報交換により、
『ピンク髪に甲冑の弓使い(シグナム)』『赤いコスプレ東洋人少女(カレイドルビー)』
『羽根の生えた黒い人形(水銀燈)』『金髪青服の剣士(セイバー)』
を危険人物と認識しました。


223 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:06:22 ID:ktj0wEJk
映画館のロビーにて、トグサ達一行は放送を聞き終えた。
そこで呼ばれた名前の中にはトグサやヤマト、アルルゥの知人の名前は無かった。
そう、西洋騎士に果敢に立ち向かっていったあの自称“救いのヒーロー”の豚の名前もそこには無かった。
「ぶりぶりざえもん……無事でいろよ……」
ヤマトが安堵とともに、彼の安否を気遣うように呟く。
……だがその一方で。
「朝倉さん…………死んじゃったんだね」
「……放送が虚偽でない限り、そのはず」
「あの人、何も言わないでいきなり転校しちゃったから、一度その真相についてSOS団で調べたかったんだけどなぁ……」
それほど仲が良かったわけではなかった。
だが、仮にも面識のあるクラスメートが死んだのだ。
それを知って、何も思わないほどハルヒも冷徹ではなかった。
そして長門もその時、自らの思考のどこかに新たなノイズを感じていた。
一度独断専行でキョンを殺害しようとした反乱分子のバックアップ如きの死に何を感じるのか……。
長門はそのノイズの正体にまだ気付けないでいた。
するとそんな長門を横目に、ハルヒがいきなり立ち上がり、声高らかに宣言する。
「……よし! それじゃ、放送が終わったところでSOS団特別ミーティングを始めるわよ!
 議題は勿論、どうやって皆でここから脱出するか!
 これ以上、朝倉さんやみくるちゃん、それに鶴屋さん達みたいな犠牲者を出さない為にもこれは重要な議題よ!」
その声は、ついさっきまで暗い面持ちだった少女のものとは思えないほど溌剌としていた。
トグサやヤマトはその変わりように驚きつつも、その言葉から彼女の決意じみた何かを感じ取っていた。
「それじゃ、まず最初は――」
「……と、ちょっと待ってくれ」
ここで、トグサは挙手をして発言を求める。
「……何? どうかしたの、トグサさん」
「いや、つまらないことかもしれないが、一つ気になったことがあるんで……質問してもいいかい?」
「別にいいけど……」
話の腰を折られて、やや不満そうなハルヒの表情を見ながらも、トグサは今まで気になっていてそれを尋ねた。
「さっきから、何度か口にしてる“SOS団”っていうのは何だ? 俺達のチーム名か?」
「え? あぁ、そういえばまだあんた達には説明してなかったわね。SOS団って名前はね――

 S 世界を
 O 大いに盛り上げるための
 S 涼宮ハルヒの
 団

 っていう正式名称の略称な訳! どう、センスいいでしょ?」
そんな真相を聞いて、思わず絶句するトグサ、そしてヤマト。
「あ、言い遅れてたけど勿論トグサさんも特別団員に認定よ!」
「え、あ、はぁ……そりゃどうも……」
……状況が状況だったら、笑っていたかもしれないが、今の彼らはただただ唖然とすることしかできなかった。
「……はい! そんなわけでミーティングを続行するわよ!」


224 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:07:50 ID:ktj0wEJk
ハルヒを議長とするSOS団ミーティングはそれからしばらく続いた。
その中では、トグサが推測した情報端末や首輪に関する考察、今まで出会ってきた参加者の危険性の有無等、様々な情報が交わされてきた。
また、その中で各人の行動も振り返り、ハルヒやアルルゥはそこで始めてグレーテルについて知ることとなった。
そして、今彼女達が話しているのは……
「ふぅん、それじゃこの技術手袋ってのがあれば、どんな機械でもいじったり出来るって事?」
「時間さえあればな。……だが、さっきも言ったように首輪を直接解体することはよした方がいいだろう。起爆装置が作動しかねないから」
「わ、分かってるわよ、それくらい!」
現在は所持してる支給品について再確認をしていた。
もしかしたら、それらを複合して使うことで脱出の手がかりを見つけられるかもしれないからだ。
「でも、これさえあれば、あんたが言ってた情報端末……要するにパソコンみたいのも作れるかもってことでしょ?
 だったら無くさないように持ってないとね」
「それは承知の上さ」
そう、承知の上なのだが、不運にもトグサが今まで見てきた中で情報端末を作るのに適した材料や機械はこれといって見当たらなかった。
これではいつまで経っても組み立てることは出来ないし、宝の持ち腐れ状態である。
トグサは、そんな自分の運の無さを心の中でボヤく。
「……で、有希。話は変わるけど、あんたのそのタヌ機って道具の説明書見たけど、すごい効果じゃない。
 これさえあれば、あの金髪剣士も撃退できたんじゃないの?」
「…………以前、これを使った時、相手は確かに怯んだ。……だけど、すぐに幻覚から脱した。
 相手の精神力が人並み外れて強い場合、効果はないと考えられる。そして、あの騎士はその部類に相当すると判断した」
「――ふぅん。精神が強いと効かない、かぁ。……でも、いざって時は迷わず使ったほうが良さそうね。……有希、頼んだわよ」
「分かった…………」
長門はいつもどおり、無表情のまま受け答えをしていた。
ちなみにヤマトとアルルゥの年下組はというと、先程からうつらうつらと舟を漕いでいる模様だ。
今日はあれだけ色々あったのだ、疲れて眠気が襲ってきても当然だろう。
「あとは、残る不思議な道具といえば……やっぱりこれよね、これ!」
そう言いながらハルヒが取り出したのは、四角い古いカメラのような物体。
「それは?」
「着せ替えカメラって言ってね、これに被写体に着せたい衣装を描いた紙を入れて撮影すると被写体の服がその絵通りに変わっちゃうって訳よ」
「――な、そんな道具まであるのか……」
「そうよ! 見てなさい……ほら!」
ハルヒがそう言いながら、長門にレンズを向けた状態でシャッターを切る。
すると、長門は瞬時に黒い三角帽に黒いローブという典型的な悪い魔女のような格好になる。
「……なるほどな。……で、これは服の材質は変えられるのか? 例えば甲冑や防弾チョッキみたいな絵を入れて着せ替えさせれば……」
「私もそれは考えたけど、それは無理みたい。服の素材は元の服の素材からしか作られないって説明書に書いてあるし」
と、トグサはハルヒから説明の描かれた紙を受け取るとそれを読む。
すると、その道具は元々の衣類の構成分子を分解、再構成することで着せ替えを実現しているとかかれていた。
――ようするに、木綿からは木綿、合繊からは合繊の服しか作れないという事だ。
しかも、このカメラをちゃんと使うには、被写体にしっかりとピントを合わせる必要があるという。
「戦闘には不向きな代物だな」
「一応、相手へのこけおどしには使えるかなって思ったけど…………」
「そんなのが通じる相手ばかりじゃない。……あの剣士がまさにそうだっただろう。あの目は人殺しを厭わない目だった」
「わ、分かってるわよ、それくらい!!」
そう言って、トグサから説明メモをひったくると、そっぽを向いてしまう。
「あー、もう! このままじゃ脱出方法なんて見つかりはしないわ! もう一回最初から考え直すわよ!!」
「……そう」
長門は魔女のコスチュームになったというのに至極冷静だ。
そして、ヤマトとアルルゥは既に二人でもたれかかるように寝息を立てている。
(……やれやれ)
いつから自分は子供達の引率をする立場になったんだ……。
そんな事を思いつつ、トグサは立ち上がり、ハルヒに声を掛けた。
「――すこしばかり席を外す。……何かあったら子供たちを頼むぞ」
「……分かった」
「まっかせなさい!!」
そんな元気な返事を背に、トグサは歩き出した。

225 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:08:41 ID:ktj0wEJk
ハルヒ達と別れてから十分程度。
やや時間がかかったが、トグサは従業員が詰めていたであろう事務所を見つけ出した。
事務所を探していた目的は、勿論この地の別の施設に連絡できる電話を使うため。
そして、さっそく受話器をとるとホテルの番号をプッシュする。
……だが。
『お客様のかけた電話番号は現在使われておりませんギガ〜』
聞こえてくるのはそんなメッセージばかり。
トグサは何度も番号をプッシュしなおしては繋がるのを待つが結果は同じ。
「…………どういうことだ?」
番号が合っている以上、誰かその場にいたなら受話器を取るだろうし、受話器を取らないもしくは不在の場合でも留守電に繋がるはずだ。
それなのに、受話器の向こうから聞こえる機械合成音は、電話番号が使われていないと告げる。
つまり、これはホテルまでの電話回線が不通になってしまった事を意味する。
朝方電話をした時は何も不都合の無かった電話回線が突如、不通になる――――その理由はただ一つだ。
「……ホテルで何かあったのか」
思えば、セラスとホテルで別れてから、6時間ほどは時間が経過している。
バトーの件も目撃したことだし、誰かしらゲームに乗った殺戮者がホテルで戦闘を行い、その余波で電話や回線が破壊されてもおかしくはない。
……とすると、義体とはいえ女性のセラスを1人置き去りにしたのは、やはり間違いだったのではないか?
トグサは、自分の判断ミスを改めて悔いる。
「無事でいてくれよ、セラス…………」
誰に言うでもなく、トグサは事務所の窓からホテルの方角に向かって呟く。
すると――――

――プルルルルルルルル!!!!

背を向けていた電話が突如、鳴り響いた。
当然の事だが、電話が鳴るという事は誰か知らがこの地のどこかから電話をかけているという事。
即ち、こことは違う場所の誰かと情報交換を出来るのだ。
現在の状況を少しでも知りたかったトグサは急いで受話器に手をかける……がここで一度手を止める。
今までの考えは、相手が協力的だった場合のもの。
もし、相手が頭の働く殺戮者だったら?
電話を取ったが最後、相手に殺害対象の居場所を伝えることになってしまう。
ここには戦闘能力を持たない子供が多くいる。
もし、そんな殺害目的の参加者がやってきたらひとたまりもない。
どうする……。取るべきか取らないべきか。

……逡巡の末、彼は決断した。

226 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:09:42 ID:ktj0wEJk
「……はい、もしもし」
自分は仮にも元刑事だ。
相手が嘘をつく素振りを見せるようだったら、見抜いてみせる。
……トグサは自分の今まで培ってきた経験を技術に賭けた。
すると、自分の応答に答えるように向こうからも声がしてきた。
『も、もしもし。えっと、そちらは映画館でしょうか?』
――男の声だ。
だが、その喋り方からは焦りのような緊張のようなものが汲み取れる。
ここは、相手の素性と居場所を聞き出すのに格好の機会だろう。
「あ、あぁ。確かに映画館だ。そっちはどこからかけてる? で、君は何者だ?」
『えっとレジャービルです。俺は名簿だとキョンって書かれてる参加者です』
レジャービル。
胸ポケットにしまっていた地図を広げ、即座に位置を確認すると、それはホテルから比較的近い位置にあることが分かる。
そして、キョンと言う名前……ハルヒが何度か口にしていたクラスメートの名前だ。ということは高校生か。
ということはここにいる参加者に違いないはずだ。
相手の口振りからして、ここまでの発言に恐らく虚偽はないとトグサは推測する。
『ふむ、キョンか。遅れたが俺はトグサだ。この馬鹿げたゲームには乗っていない。そっちもか?』
電話の向こうでキョンは肯定の意を短く示した。
……ということは、彼は自分達にとって、協力者になりうる人物だ。
「そうか。――で、君はどうしてここに電話を? 仲間を探す為に虱潰しに各施設に電話をかけてるのか?」
ハルヒと長門という彼の仲間であろう人物がいることはあえてここで伏せておく。
もし先に言ってしまうと、そちらに気を取られかねないからだ。
『いえ、実は――』
すると、キョンは意外なことを口にしだした。
何と、あの次元が今、キョンとともにレジャービルにいるというのだ。
ということは、ハルヒや長門を含めた自分達がここいいることを承知の上で電話をしてきたことになる。
「なるほど。それで、声を聞こうとここに電話を」
『はい。……それで、そのハルヒは……』
「元気にしてるよ。すぐにでも代わってやりたいが――――その前に一つ聞きたいことがある」
仲間との再会を取引道具にはしたくなかったが、彼には電話を代わる前にどうしても聞きたいことがあった。
それがホテルに関する情報。
ホテルから近い場所にいる彼らならば、自分達よりも最新の情報が飛び込んでくるに違いない。
そんな期待を胸にトグサがキョンに尋ねると、彼はトグサですら予想出来なかったことを口にしだした。
『……さっき屋上で見たんですが、ホテルは上半分が崩落してるみたいです』
「……ほ、崩落だと!?」
あの堅牢な鉄筋コンクリート造の高層建築で大規模な破壊が起っている……。
ロケットランチャーか高性能爆弾でも使ったのだろうか。
破壊状況を直接見ていないので、彼には推測しかねたが、とにかくホテルで予想以上に危険な何かが起っている事は確かなようだった。
「……そうか。情報提供ありがとう。それじゃ、ハルヒと長門を呼んでくるから少し待っててくれ」
必要な情報を聞き終えたトグサは、そう言って受話器をデスクの上に置くと、小走りでロビーに戻っていった。
少女達を電話の向こうの彼と再会させる為に。

227 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:12:16 ID:ktj0wEJk
電話の向こうにキョンがいる。
そんな言葉をトグサから聞くや否や、ハルヒはロビーを飛び出していた。
「有希!! 早く来なさいよ! キョンが電話の向こうにいるのよ!! ――って、何でそんなところで立ち止まるわけ?」
「……ここが事務所。電話はこの中にある」
それだけ言うと、長門はドアを開け、中へと入っていく。
「――!! 待ちなさい有希!! 電話は私が先だからね!!」
後を追いかけるように慌てて部屋に飛び込むハルヒ。
そして、彼女は置かれていた受話器を乱暴に取る。
「キョン! キョンなのよね、あんた!」
『ハルヒ、元気か? 何か怪我したって聞いたが……』
その声は、紛う事なき雑用専用の団員の声だった。
懐かしさの余り、ハルヒは気持ちが緩むが、ここは団長として威厳を保たなくてはならない。
彼女は毅然とした口調で団員に応える。
「こんなの大した事ないって! それよりもあんたは無事なの?」
本当は今もいきなり走った影響か頭がふらふらするが、ハルヒはそのような事は微塵にも口にしない。
『あぁ。色々あったが問題ないさ。何とか無事に生きてる』
いつも通りの溜息交じりの声。
その声が、今のハルヒには何よりも嬉しかった。
「そう、良かった……」
胸を撫で下ろすように声を出す彼女が、ふと首を動かすとそこには三角帽を被ったままのもう1人の団員が立っていた。
そう、彼女もまた、キョンとの再開を心待ちにしているであろう人物の1人だった。
「――あ、それじゃ有希にも代わるわね!」
ハルヒもそれを悟ったのか、受話器を彼女へと手渡した。
すると、彼女はそれをゆっくりとした動きで顔にあて、言葉を発する。
「……電話を代わった」
『おぅ、久しぶりだな。……で、無事か? 骨折ったっぽいが』
そう尋ねられて、長門は添木で固定された左腕を見やる。
「問題ない。回復には時間を要するが、自然治癒可能なレベル」
『……そうか、それはよか――いや、よくないか。骨折だもんな……』
電話越しのキョンの声のトーンが落ちる。
……すると、長門はそんな彼の感情を悟ったのか、自ら口を開いて言葉を発した。
「現在は体力の温存に専念している。私も涼宮ハルヒも徐々にだけど回復の傾向にある。……心配しなくていい」
それは、彼の不安を消し去ろうとして発した言葉。
だが彼女自身は、このような誰かを励ますような事を言うような人間ではなかった。
それなのに何故――――
これもまた、彼女の中に生まれたノイズが起こした行動なのかもしれなかった。
そしてそれを聞いてか、キョンの声のトーンは元に戻る。
『……ま、声を聞く分には大丈夫そうだな。――と、そうだ。そっちにアルルゥって子がいるだろ?
 こっちにその子の知り合いのトウカさんっていう人がいるんだ。話をさせてやりたいから代わってくれないか?』
アルルゥ――アルちゃんと呼ばれている少女。
トウカ――アルルゥが何度か口にしていた名前。
名簿においても、二人の名前は極めて近い場所に記されていた。
長門はそれを瞬時に把握すると、意味が無いと分かっていながら受話器を持って頷く。
「分かった…………」

228 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:14:40 ID:ktj0wEJk
それからが少し大変だった。
長門から話を聞いたハルヒは慌しくロビーに戻り、熟睡していたアルルゥを無理矢理起こしだした。
そして、その騒ぎで先に起きたヤマトが文句を言うが、ハルヒに一蹴され、それに寝起きでやや苛立っていたヤマトが反論した。
ヤマトの反論にハルヒは更にヒートアップし、二人が険悪なムードになっていたところで、トグサが仲介に入る。
……と、その頃になってようやくアルルゥが目を覚まし、ハルヒは急いで彼女を抱えて事務所へと戻っていったのだ。
ヤマトやトグサにとっては、ハルヒがまさに台風のように映って見えた。
「……な、何なんだよ、あの人は……」
「ま、元気でいるなら何よりなんだけどな……」
ちなみに、この一連の騒動の中、長門はずっと事務所で待機していた。
そして、そんな事務所にハルヒは再度飛び込んでくる。
「アルちゃん! ほら、電話よ! トウカって人が待ってるわ!」
「んー? でんわ? トウカおねーちゃんいない……」
「あぁっ、もう! だから電話の向こうにいるんだって! ほら!」
もどかしくなったのか、ハルヒはアルルゥの顔に受話器を押し当てる。
すると、タイミングよく受話器から声がしてきた。
『ア、アルルゥ殿!? アルルゥ殿でございますか!?』
「……! トウカおねーちゃんの声!」
押し当てられた受話器から聞こえてきた声に、アルルゥは驚くと同時に嬉しそうな声を出す。
そして、ハルヒから受話器を受け取る。
『ア、アルルゥ殿! 無事でしたか!? 某……某はアルルゥ殿が無事かどうかばかりが気になっていた次第で……』
「ん! アルルゥ平気! ハルヒおねーちゃん達と一緒だから平気!」
『そうですか。それは何よりでございます……。某、今しばらくそちらにはいけませぬが、どうかこれからもご無事で――――』
トウカの長ったらしい言葉をアルルゥは理解しているのかしていないのか、うんうんと相槌を打ってゆく。
そして、その会話はしばらく続いた後……
「――ん!」
アルルゥは受話器をハルヒに差し出した。
「……もう、いいのね」
「ん! おねーちゃん、ありがとう」
「私は別に何もしてないわよ。ま、礼を言うなら馬鹿キョンにでも会った時にしなさい」
ハルヒはやや顔を紅くしながらも、受話器を受け取る。
「……もしもし? キョン? 今電話に出てるのはキョンなの?」
『…………』
返事はない。
すると息を大きく吸って、今一度彼女は受話器に叫ぶ。
「こぅら! キョン! 返事しなさいってばキョン!!!」
『…………聞こえてるさ。……だから、んな大声はよせ』
今度こそ通じたようだ。
「そんなことよりも! ――で、あんたはいつこっちに来れるの? 一時間後? それとも二時間後?
 トグサさんに頼んで、出来るだけ長くここで待てるように頼むからトウカさんって人と一緒に早く――」
居場所が分かったからには、こっちに来るのだろう。
そんな期待を胸に、ハルヒは尋ねるが、その答えはその期待を打ち砕く。
『悪い。俺達はまだそっちに行けそうにない』
「……え? それってどういう……」
『こっちでの用事が残ってるんだ。それが終わるまではそっちには行けないって事だ』
用事……それは団長命令よりも大事なものなのか。
この涼宮ハルヒと合流する事よりも重要な用事なんてあるのだろうか……ハルヒは胸は締め付けられるとともに、顔をかぁっと熱くした。
「用事って……そんな! 今度はいつ声聞けるか分からないのよ! それなのにどうし――あ、有希、何してるの! 返してってば!」
まだ言いたいことはあった。
だが、長門が彼女から受話器を奪ったことにより、その機会は失われることとなる。

229 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:16:09 ID:ktj0wEJk
「電話を代わった。……こちらにまだ来れないのは決定事項?」
『ん? まぁ、まだ時間がかかりそうだな』
「……そう」
長門はハルヒと異なり、いつも通りに受け答えする。
そして、長門はその後キョンと自分達が移動する場合の移動先の連絡法について説明した。
『……分かった。それじゃ、そろそろ切るぞ』
「……そう」
『ハルヒ達の事、頼んだぞ』
涼宮ハルヒの保護は、長門有希にとっては最優先すべき行為。
言われなくてもそうするつもりだ。
だが、ここであえて彼女はいつもより語気を強めて、こう言った。
「……任せて」
そして、キョンとの電話は切れた。


すると、それと同時にハルヒが長門の前に立つ。
「……ねぇ、あんたはキョンがこっちに来れなくても構わないの?」
その顔は、明らかに怒気を含んでいた。
無理もないだろう。彼女は会話の途中に受話器を奪われたのだから。
だが、長門はあくまで冷静に答える。
「……用事があるのだから仕方ない。……向こうには向こうの都合がある」
「で、でも! 今度はいつ会えるか分からないのよ!? それなのに会える機会を棒に振るなんて……!」
「……あなたは彼を信じられないの? 彼とまた会えるという可能性はまだ閉ざされたわけではない」
長門は珍しくハルヒに反論するように立ちはだかる。
そしてハルヒは、そんな彼女の言葉に戸惑う。
「そ、そうだけど、あいつらだっていつ誰に襲われるか分からないし……」
「大丈夫! トウカおねーちゃん強い! 敵が来ても絶対やっつてけくれる!」
そこでアルルゥが自信満々にハルヒに言う。
……そう、キョンの傍にはアルルゥ曰く、剣術使いのトウカという女性がいる。
「次元大介……彼も負傷しているものの、戦力としては大きいと思われる」
「次元……」
ルパンの相棒で早撃ちの名手……そんな男もキョンの傍にいる。
「信じて……。彼を、彼らの仲間を」
「信じる……。…………そうね、今更何を言っても意味が無いか。今はキョン達を信じる方が建設的ね!」
その時、彼女はふとルパンの無事を信じた自分を思い出す。
……だが、すぐに彼女はその回想を拭い去る。
今度こそは……今度こそは信じた事が実現して欲しい――――ハルヒはそう願うのであった。

230 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:17:29 ID:ktj0wEJk
「……お、丁度いいところに」
女性陣3名が休憩所に戻ってくると、ソファに座っていたトグサとヤマトは立ち上がった。
ハルヒは何事かとトグサに問う。
すると、彼女は平べったい円形の缶を手渡される。
「……映画のフィルム缶? 中身は…………って、タイトル書かれてないじゃない。これ何のフィルムなの?」
「見てもないのに分かるわけないだろ」
ヤマトがやや仏頂面で答える。
さきほどの口論の件をまだ引きずっているようだ。
「ふん、あんたには聞いてないわよ。……で、中身が分からないフィルムなんか持ってどうしてるの?」
「だから、今からその中身を確認するんだ。ここの映写機を使ってね」
「……こんな非常時に映画鑑賞? 随分暢気な提案ね」
「ま、そう言わないでくれ。ラベルも貼られずに置かれてたんだ。何か脱出の手がかりが隠れてるのかもしれない」
苦笑気味にトグサは笑う。
「これで何も意味が無かったら笑うしかないだろうがな。……だが今まで色々会ったんだ、まとまった休憩時間を取るのに最適だろう」
「……適度な休憩は今後の活動を良好にする」
「……そういうことだ。――って訳だから、俺は映写機にこれを入れてくる。観客席で待っていて欲しい」
と、トグサはハルヒ達に背を向け、映写室のある方へと歩いてゆく。
――が、それをハルヒが呼び止める。
「……あんたはどうするの? 映写室にずっといるの?」
「君達を観客席に置き去りに出来るわけないだろう。フィルムをセットし終えたら、そっちに急いでいくよ。
 ……あ、そうそう、中に入ったら正面入口以外のドアをロックしておいてくれ。
 誰かが来た時、観客席への侵入ルートを一ヶ所にしておいた方がいいから」
「分かったわ。……ってことであんた達頼んだわよ」
「いや、あんたもやってくれよ……」
ヤマトは溜息をつきつつ、ハルヒの後をついていく。


そして観客席内。
正面入口のドア一枚を除いてドアロックを済ませたハルヒ達は席に座る。
「さぁて、どんな映画なのかしらねぇ」
「……うー、あれこわかった……」
ハルヒの横に座るアルルゥは、一つ前の席の背もたれに顔を隠しながら前を見る。
「大丈夫よ、アルちゃん。すぐに慣れるわ!」
何に慣れるんだよ……とヤマトは心の中でツッコミを入れつつ、何も映されていないスクリーンを見ていた。
ここに来るまでの間に本当に色々あった。
自称ヒーローの豚に出会い大人の階段を登ったり、女の子を撥ねてしまったり、変な女に指図されたり、金髪の少女に襲われたり……。
だが、そんな中で常に行動を供にしていた豚は今は自分の横にいない。
あの後、どこに行ってしまったのだろうか……。
ヤマトは彼の無事を祈り、そして信じつつ、目の前を見続ける。


――そして上映開始のブザーが鳴り響く。

231 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:18:43 ID:ktj0wEJk
【B-4・映画館/1日目・夜中】

【新生SOS団】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気/SOS団団員特別認定
[装備]:S&W M19(残弾1/6発)/刺身包丁/ナイフ×10本/フォーク×10本
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料-2)/警察手帳(元々持参していた物)
    暗視ゴーグル(望遠機能付き)/技術手袋(使用回数:残り17回)
    RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)
    首輪の情報等が書かれたメモ2枚
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:上映中の第三者の侵入を警戒する。
2:その後で今後の方針を決める。
3:全員に休憩を取らせる。
4:情報および協力者の収集、情報端末の入手。
5:タチコマ及び光、エルルゥ、八神太一の捜索。
[備考]
風・次元と探している参加者について情報交換しました。
情報交換により佐々木小次郎という名の侍を危険人物と認識しました。


【石田ヤマト@デジモンアドベンチャー】
[状態]:人を殺した罪を背負っていく覚悟/SOS団特別団員認定
    疲労と眠気/右腕上腕に打撲(ほぼ完治)/右肩に裂傷(手当て済)
[装備]:クロスボウ/スコップ
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料-2)/ハーモニカ/デジヴァイス/真紅のベヘリット
    クローンリキッドごくう(使用回数:残り3回)/ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
[思考]
基本:これ以上の犠牲は増やしたくない。生き残って元の世界に戻り、元の世界を救う。
1:ぶりぶりざえもんと合流する
2:八神太一、長門有希の友人との合流する
[備考]
ぶりぶりざえもんのことをデジモンだと思っています。

232 :I believe you ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:20:11 ID:ktj0wEJk
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:疲労と眠気/頭部に重度の打撲(意識は回復。だがまだ無理な運動は禁物)
    左上腕に負傷(ほぼ完治)/心の整理はほぼ完了
[装備]:なし
[道具]
  :デイバッグ/支給品一式(食料-2)/着せ替えカメラ(使用回数:残り18回)
  :インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
[思考]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。
1:映画鑑賞後、今後の方針を考える。
2:キョンと合流したい
[備考]
腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。

【長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:思考に軽いノイズ/左腕骨折(添え木による処置が施されている)/SOS団正規団員。
[装備]:ハルヒデザインの魔女服(映画撮影時のもの)
[道具]:デイバッグ/支給品一式(食料-2)/タヌ機(1回使用可能)
[思考]
基本:涼宮ハルヒの安全を最優先し、状況からの脱出を模索。
1:涼宮ハルヒを休ませる。
2:小次郎に目を付けられないように注意する
3:キョンとの合流に期待
[備考]
癒しの風による回復力促進に伴い、添木等の措置をして安静にしていれば半日程度で
骨折は完治すると思われます。

【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:疲労と眠気/右肩・左足に打撲(ほぼ完治)/SOS団特別団員認定
[装備]:ハクオロの鉄扇/ハルヒデザインのメイド服
[道具]:無し
[思考]
基本:ハルヒ、トグサ達と一緒に行動。エルルゥに会いたい。
1:“えいが”怖い……
2:眠たい……

[共通思考]:映画館でフィルムの中身を確認しつつ、休息をとる。佐々木小次郎を最優先に警戒。
[共同アイテム]
  :73式小型トラック(※映画館脇の路地に止めてあります。キーは刺さったまま)
  :おにぎり弁当のゴミ(※トラックの後部座席に放置されています)
  :マウンテンバイク(※トラックの荷台に残されたままです)


233 : ◆lbhhgwAtQE :2007/02/26(月) 00:55:47 ID:ktj0wEJk
「以心電信」及び「I believe you」におけるホテルに関する情報に誤りがあったので、以下のように訂正いたします。

>>215
目の前に見えたのは、市街地でもひときわ目立っていたはずの高層建築。
だが、それは何があったのか知らないが俺達の目の前から消え去っていたのだ。
正確に言うと、薄暗い下の方を見ると何やら瓦礫のような山が見えないでもない。
――ま、要するに倒壊したのだろう。
では、あんな見た感じ堅牢そうな建物が何故崩壊してる? ホワイ?
そんな自問をしていてまっさきに思い出したのは、あの大震災の記憶。


>>215
「翠星石…………まさかあいつ!!」
「お、おい! どうしたんだ、急に!」
俺は、いきなり何か思いついたように踵を返して階段の方へと向かうジャイアン少年を呼び止める。
すると、少年は焦ったような表情でこちらを向いて口を開く。
「あいつ……もしかしたらあの瓦礫の中にいるのかもしんない。だったら、急いで助け出してやんねぇと!!」
「いや、まだあそこにいるって決まったわけじゃないだろう」


>>219
『君のいるレジャービルから見て、ホテルは大分近い位置にあると思うが何か変わった動きはあるかい?
 そこに俺の仲間がいるはずなのだが……』
ホテルっていうと、あったはずなのについさっき見たら瓦礫の山に大変身していたあのホテルか?
――って他にホテルって名前の建物が地図には書かれてない以上、あれがここにおける唯一無二のホテルってことだよな。
何を考えてるんだ一体……。
俺は、屋上から見たままの状況を報告してやった。


>>226
そんな期待を胸にトグサがキョンに尋ねると、彼はトグサですら予想出来なかったことを口にしだした。
『……さっき屋上で見たんですが、ホテルはその……無くなってます。恐らくですが倒壊したみたいです』
「……と、倒壊だと!?」
あの堅牢な鉄筋コンクリート造の高層建築が倒壊した……?
ロケットランチャーか高性能爆弾でも使ったのだろうか。
破壊状況を直接見ていないので、彼には推測しかねたが、とにかくホテルはもう彼の知っている姿を保っていないことは分かった。


234 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 02:52:31 ID:oBDzEdlr
『……タチコマを追いましょう』
『このレヴィ様に指図するったぁ、随分お偉い立場になったもんだな? タダ働きなんざまっぴらご免だね』
『いいんですか? それじゃフェイトちゃんやタチコマに舐められっぱなしですよ』
『あぁ!?』
『まあまあ落ち着いて。ここで援護でもして恩を売りつつ、レヴィさんの実力と有り難みを思い知らせてやるってのもありなんじゃないですかね』
『うーん……そうだな、まぁそれもアリかもしれねぇな』

 そんなやりとりを経て、ゲイナーはレヴィを連れ立って北上を続けている。

(何というか、慣れればコントロールしやすいな、この人も……)

 少し落として一気に持ち上げてやるだけで、あっさりと食い付いてくれる。
 大人は大人でも、外っ面と腕っ節が大人なだけで、中身は子供だ。その行動原理さえ分かればどうとでもなる。

「ちょっと待ちな。足下見てみろ」

 そのレヴィに唐突に呼び止められた。
 言われた通り、足下を見やる。
 水色の鉄片と、鉄塊がいくつか。そこに散らばっているものが何かを認識する。

「そんな、まさか……タチコマイナー!?」

 これで自分は何の力もない子供に逆戻りだが、そんな損得勘定だけでは推し量れない感情も湧き上がってくる。
 ほんの短い間だったが、それでも相棒は相棒だ。
 少しぐらいはその死を悲しんでやりたい。
 機械の冥福は誰に祈ればいいのだろうか。機械の神様などというものが都合良くいてくれれば有り難いのだが、とりあえず思い当たる節はない。

「そりゃそうだ。いくら自力で動く戦車だろうが、あんなの相手にすりゃ保たねぇよ」

 そう呟く彼女の視線を追った。
 レヴィ曰くところのトンデモ連中のドンパチは、まだ続いている。オーバーマン同士の戦闘にも匹敵する戦いを繰り広げている。それも生身で。
 自分がブラックメールのコートを羽織って巨大化していたとしても、キングゲイナーに乗っていたとしても、まともにやり合えばあっさり負かされるのではなかろうか。

「こりゃ援護どころの話じゃねぇや。本当に無茶苦茶やりやがる」
「……そうですね」

 否定のしようもない。だからゲイナーは同意する。
 ビルの屋上から、また閃光が漏れて――そして消えた。
 タチコマイナーには申し訳ないが、まだ嘆いている暇はない。

「あのビルですね。レヴィさん、とにかく急がないと」
「あたしらが着く前に、またどっか飛んでいったりしなきゃいいんだがな」
「……そうですね」

 やはり、否定のしようもない。だからゲイナーは同意した。

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



235 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 02:54:02 ID:oBDzEdlr
「入っていいぞ、ゲイナー」
「あ、はい」

 緊張感のないゲイナーの返事にうんざりしながらも、レヴィはビルの中にゲイナーを招き入れた。危険はないと判断したからだ。
 だからといって、万事上手くいっているとは限らないのだが。

「フェイトちゃん! 無事だったか――」

 ゲイナーがフェイトに駆け寄ろうとしたが、自分の横を通り過ぎたあたりで立ち止まった。そして言葉を詰まらせる。
 近寄りがたい雰囲気というものをちゃんと察したらしい。

 フェイトはただ、そこに佇んでいた。
 その袂には、ぼろぼろになってしまった杖と、それとは別に黒い杖がもう一本。
 こちらを見向きもせずに、淡々と言葉を発する。

「なのはは殺されました。タチコマも、私を庇って」

 別段驚きはしなかった。ここはそういう場所だ。
 元より、誰かが死ぬことには慣れている。それが知り合いであろうがなかろうが。特に感慨があるわけでもない。
 この沈黙の気まずさに耐えかねたのか、ゲイナーが切り出した。

「タチコマは道中で見付けたよ。もしかして……君が戦っていた相手が?」
「彼女は――殺しました。私の手で。考えられる限りの痛みと苦しみを与えて、最後には跡形もなく消し飛ばしました」

 ごくりと息を呑む音が聞こえる。隣でゲイナーがビビっているのだろう。
 天井が綺麗さっぱりなくなっているこのビルの有様を見れば、フェイトの言葉をそのままの意味で受け取らざるを得ない。

「もしかしたら、私があの時すぐに市街地に向かってさえいれば、なのはは死なずに済んだのかもしれません。結局、私のすることは間違ったことばかりなんです。私には誰も助けられなくて、みんな私のせいで死んでいくんです。
なのはも、タチコマも、カルラさんも、それに元を質せば母さんだって私のせいで――」

 フェイトの独白は止まらない。

(気に入らねぇな。何もかも気に入らねぇ)

 レヴィは黙って、その場に座り込んだままのフェイトに近寄っていった。
 そして告げる。

「……立てよ」

 フェイトは立ち上がらない。未だにこちらを向こうとする素振りすら見せない。
 一層苛立ちが募る。

「立てっつってんだよ」

 その襟首を掴んで、無理矢理フェイトを立たせた。手を振り解いてまたその場にうずくまるかとも思ったが、どうやら立たせられることにすら抵抗する気はないらしい。
 ようやっとフェイトの顔がこちらを向く。
 しかし、彼女はこちらを見てはいない。
 まるで死んだ魚のような眼で――

 レヴィは拳を握った。
 敵を跡形もなく吹き飛ばして殺せる奴だろうが何だろうが、知ったことか。

「ナメてんじゃねぇぞこのクソガキが!」

 そして、フェイトの顔面目掛けてその鉄拳を叩き込んだ。

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



236 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 02:56:33 ID:oBDzEdlr
 フェイトは吹っ飛ばされ、地面を転がり、倒れ伏した。その小さな身体でレヴィの拳を受け止めきれようはずがない。
 レヴィは暴れ続けているようだ。
 では、どうして襲ってこないのか――しばらくして、ようやっと分かった。

「レヴィさん、いきなり何やってんですか!」
「うるせぇ! 離せゲイナー!」

 ゲイナーが必死になって、背後からレヴィを取り押さえているからだ。
 もっとも、レヴィの口から出てくる言葉は留まることを知らなかったが。

「人のこと薄情だとか抜かして馬鹿にしてくれやがった奴が、いざ大事なお友達が死んじまったらそのザマか! 
ゲイナー助けに行かなきゃなのはは死なずに済んだかも、だって!? あぁその通りだろうよ! 
だけどな、それはテメェで決めたことだろうが! 今更他人のせいにしてグダグダ言ってんじゃねぇ! 
それと、みんな自分のせいで死んじゃいました、お友達を殺した奴は私が殺しちゃいましたってなぁ、テメェだけが悲劇のヒロイン気取りか、あぁ!? 
そうやって形だけ自分を責めるならテメェは楽だよな! フザけんのも大概にしとけ!」

 遂にゲイナーが振り解かれた。もうレヴィを止めるものは何もない。
 今度は馬乗りでもされて、何度も殴られるのだろうか――フェイトは他人事のようにそんなことを考えていた。
 だが、そうはならなかった。
 彼女は自由を力で勝ち取りながらも、その場を動かなかった。散々まくしたてて乱れた呼吸を、肩で息をしながら整えているだけだ。
 動かないのはレヴィだけではない。ゲイナーも、自分も、一歩も動かなかった。動くことができなかった。

 そして、レヴィが一息で言い放つ。
 それまでのような熱い調子ではなく、冷めきった口調で。

「言い直してやる。テメェなんざクソガキ以下だ。そこらに転がってる死体と同じだ。死体なら死体らしく、ずっとそこで死んでろ」

 憐憫の情は一切ない。
 ただひたすらに侮蔑だけを湛えた眼差しで、レヴィが自分のことを見下ろしている。見下している。
 それがかつて自分が彼女に投げかけた視線と同じようなものだということに、フェイトは気付かなかった。

「……あー胸糞悪ぃ、ちと外の空気吸ってくるわ。後は勝手にしな」
「ちょ、ちょっとレヴィさん!?」

 ゲイナーが背を向けたレヴィを追おうとしたが、追えなかったようだ。先程動けなかったのと同じ理由で。
 彼女の背中越しに伝わってくるもの。
 どんなに鈍感な人間でも、それが恐ろしいほどに静かな怒気だと分かるはずだ。

 やがて、レヴィの姿が見えなくなって。

 フェイトは上半身を起こし、自分の頬に手をやった。
 殴られても何も感じなかったはずの頬が、熱を帯び始めている。同時に痛みも。口の中には血の味が広がっていた。

(私は――何を言っていたの?)

 感情に任せて吐露し続けていた言葉。
 その一字一句をようやっと認識し、そして青ざめる。

「あの、大丈夫かい? フェイトちゃん」

 ゲイナーを直視することができない。
 自分が何を言っていたのか、理解してしまったから。
 そんなこちらの様子を拒絶と受け取ったのか、彼は自分から少し離れたところで立ち止まった。



237 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 02:58:59 ID:oBDzEdlr
「……ごめんなさい。私、ひどいことを言いました。とてもひどいことを」
「いや、いいんだ。実際僕にも一因はある。それに君の言ってたことも分かるよ」

 ゲイナーはかぶりを振って、そう答える。

「例えば、僕の判断のせいでサラの身にもしものことがあれば、それまでの自分の行いは全て間違いだったと思うかもしれない。それとは逆に、自分以外の何かに責任を押し付けたくなるかもしれない」
「……サラ?」
「ああ、サラ・コダマって言うんだ。幸いここにはいないけど」

 わざわざ引き合いに出すほどだ。きっとゲイナーにとって一番大切な人なのだろう。
 その一番大切な人が、この殺し合いに参加させられていない。
 フェイトは心底羨ましく思った。

「だけど、どうしたものかな。もっと後で切り出そうと思ってたんだけど、もうそんなこと言ってられない状況か……っと、ちょっとごめんね」

 そう言って、ゲイナーは自分の横を通り過ぎた。
 何やらぶつぶつと呟きながら、捜し物をしているようだ。
 場所は、ちょうど自分が――

(私が、あの子を、消し飛ばしたあたり――)

 そこを直視することもまた、できない。
 目を背けているうちに、程なくしてゲイナーが戻ってきた。

「もしかしたら、何か残ってるかもしれないと思ってね。何かペンダントも落ちてたから一応拾ってはおいたけど、本命はこれさ」

 ぼろぼろになった首輪だった。
 たまたま魔法の直撃を免れて燃え残ったのか、それともとんでもなく頑丈なだけか。どちらにしても、それが誰のものかは聞くまでもない。
 こんな首輪でさえ、死者には無用の長物だということなのだろう。

「僕は、この首輪を解除する方法を探すつもりだ。ここからエクソダスするにしても、ギガゾンビをどうにかするにしても、絶対に避けては通れないことだからね。
タチコマの技術と君の魔法とを合わせれば、それも可能かもしれないと踏んでた。タチコマはもういないけどね……」

 ゲイナーの声に、少しだけ寂しげな感情の色が混じったのを聞き取って、フェイトは少しだけ安堵した。
 彼はタチコマの死を悲しんでくれている。

「それでも、望みが潰えたわけじゃない。タチコマからいろいろ話を聞いたんだ。まだ公安九課のトグサって人がいる。公安九課の技術力なら、首輪を何とかできる手がかりを掴んでるかもしれない。
そりゃ僕は頼りないし、この頭だって頼りにできるかどうか正直怪しくなってきたけど、それでも出来ることはしていこうと思う。君にも協力を仰ぎたい。でも――」

 ゲイナーは、その続きを言うべきかどうか悩んでいるようだった。実際に言葉を継ぐまでに、逡巡と呼べるほどの長い時間を要しはしなかったが。

「――もし君が、悲しみのあまりもう立ち上がれないのなら……一度助けられておいてこんなことを言うのも何だけど、ここでお別れだ」
「…………」
「フェイトちゃんは、確かに僕達から見ればとんでもない力を持ってる。でも、もし全てに絶望してしまったなら、どんな力だってもう何の意味もないんだ」

 多くのものを失った。
 代わりに多くのものを背負った。

 カルラ、タチコマ、なのは。自分の力及ばずに死なせてしまった人達。
 はやて、ヴィータ。再び会うこと叶わず死んでしまった人達。
 己の憤怒を全て受け止めて、砕け散ったS2U。
 そして、自分が殺した、あの狂った少女さえも。

 そうやって背負ってきたものを、全てを投げ捨てる。
 そうすれば楽にはなれる。甘美な誘惑だ。自分はそれに負けそうだった――いや、もう負けていて、捨て鉢になっていた。何もかもがどうでもよくなっていた。



238 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 03:00:47 ID:oBDzEdlr
 レヴィにゲイナー。
 この人達は優しくない。

『その子の名前を呼んであげなさい。わたくしに聞かせてみせなさい。あなたには、悲しむ必要性なんてないのですから』

 カルラのように、優しく導いてはくれない。

『ほら、選択肢は沢山あるよ。君が出来ることは非常に多い。だからその理屈はおかしい、僕はそう言ったんだよ』

 タチコマのように、優しく諭してはくれない。

『フェイトちゃん!』

 そして、なのはのように――

『飛んで! こっちに!』

 ――優しく手を差し伸べてはくれない。

(……けれど、同じなんだ)

 優しさであれ、厳しさであれ、あるいはもっと単純な怒りだったとしても、同質のものであることには違いない。
 そう、思い出させてくれた。
 自分がこれまでに背負ってきたものの意味を。

 ふと見やる。
 バルディッシュ・アサルト。リニスが遺してくれた雷神の槍。自らの意志でカートリッジシステムを求めた閃光の戦斧。
 今は、手の届かないところにある。

(私は……)

 手を差し伸べてくれる人はいない。
 ならば――

(……まだ、終わっていないよね?)

 ――自分で立ち上がらなければ。

「私に、できることが、あるなら――」

 立ち上がろうとして、無様に倒れる。
 いざ自力で立とうとしてみれば、身体が決意に追いつかない。
 そんな自分が、ただひたすらに情けなく思える。
 先程の戦闘による消耗があまりにも激しいのか、レヴィに殴られたのがそれほど効いているのか。どちらなのかはよく分からなかった。



239 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 03:03:19 ID:oBDzEdlr
「試すようなこと言って、ごめん。僕だって人のこと言えた義理じゃないのにさ」

 それまでは一定の距離を置いて立っていたゲイナーが、いつの間にか側に寄って屈み込んでいた。
 そして気付く。
 ようやっと、彼のことを真っ直ぐに見ることができた。

「ゲイナーさんは、絶望した?」
「そう。僕は全てに絶望して、世界の何もかもをカチンコチンに凍らせてしまおうとしたんだ――なんて言ったら、君は信じる?」

 真偽は分からない――いや、きっと本当のことだ。
 そして、こんな調子でそんなことを語れるということは、きっとゲイナーは絶望を乗り越えることができたのだ。

 こちらがどう思っているかは、ゲイナーにとっては大した問題ではないのだろう。彼は回答を待たずに続けた。

「ともあれ、フェイトちゃんにできることは、まず休むことだ。傷の手当もしたいけど、応急処置が精々か。あとはさっき言った通り、やれることからやっていこう」

 ゲイナーの言っていることは正論だ。
 それが最善だと思う。異を唱えるつもりもない。
 だが、どうしても一つだけ、言っておきたいことがあった。叶わなくてもいい。それでも自分の口から言っておくことに意味がある。

「……一つだけ、我が儘を言ってもいいですか?」
「ん?」
「弔わせてほしいんです。タチコマと、なのはのことを」

 心情的には理解してもらえるかもしれないが、それ以上に状況は差し迫っている。自分さえいなければ、休憩の時間すら惜しんでいたかもしれない。
 断られることは覚悟の上だった。

「……そうだね。僕もレヴィも、なのはちゃんやタチコマとは面識がある。そうしよう。ただし、しっかり休んで、ちゃんと動けるようになってからだよ。ふらふらのまま出歩かせるわけにはいかないからね」

 だから、ゲイナーの返答を聞いてフェイトは驚いた。

「あ、ありがとう、ござ、い――あ、れ?」

 咄嗟に礼を言おうとするが、言葉が続かない。
 ゲイナーがおろおろする理由も見当が付かない。

 自分の掌にぽろぽろ落ちてくるそれの感触で、ようやく分かった。

(私、泣いているんだ)

 よかった。
 まだ泣ける。
 散々泣いてばかりだったけれど、それでもまだ泣ける。
 失ったという現実を背負って、泣くことができる。
 自分の心は枯れてはいない。

 そして、フェイトは泣いた。声を押し殺さずに。

   ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



240 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 03:04:53 ID:oBDzEdlr
 ビルを出てすぐ脇の壁に、レヴィは背を預けていた。
 そして耳をそばだてている。

(こんなんガラでもねぇってのに、何やってんだ? あたしは。ロックの病気が伝染っちまったかね)

 胸中でぼやきながら、レヴィは頭を掻いた。
 そして今後のことを考える。

 なのはは死んだ。ついでに言えばその仇も。
 カズマがそれを知る由もあるまい。未だに探し回っていることだろう。知ったところで怒りをぶつける相手すらいない。そう考えると本当に救えない話だ。救えない話だらけのこの場所では珍しくともなんともないが。
 それを理由に手加減をするつもりはない。
 手加減できるような相手でもない。
 相見えたならば全力で戦い、そして借りはきっちりと返す。それ以上でも、それ以下でもなく、ただそれだけのことだ。

 問題は、その次。
 あのチキンな仮面野郎をブッ殺すためには、この爆弾付きの悪趣味な首輪をどうにかする必要がある。
 今まで深く考えていなかったが、確かに言われてみればその通りだ。
 何も考えずに突っ込めば、最初に見せしめにされた哀れな二人のように、派手にケチャップをまき散らすことになる。

 頭脳労働はダッチやベニー、あとついでに付け加えてやるならロックの担当だ。自分にはとことん向かないことぐらいは自覚している。
 それをゲイナーにやらせるというのも、まあ悪い話ではないだろう。

(用心棒代は『首輪を何とかする』ってことで手打ちにしてやるよ、ゲイナー坊や)

 とことん金にならない仕事ばかりだ。
 レヴィは深く溜息を吐いた。



241 :転んだり迷ったりするけれど ◆q/26xrKjWg :2007/02/28(水) 03:06:24 ID:oBDzEdlr
【D-6/ビル/夜中】


【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に中程度の傷、背中に打撲、魔力大消費/バリアジャケット装備
[装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム、残弾5/6)、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド
[思考・状況]
1 :まずは休息を取る。
2 :なのはとタチコマを弔いたい。
3 :ゲイナーによる首輪解除方法探しを手伝う。
4 :カルラの仲間やトグサに会えたら謝る。
基本:シグナム、眼鏡の少女や他の参加者に会い、もし殺し合いに乗っていたら止める。


【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ロープ、焼け残った首輪、
    グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)
[思考・状況]
1 :とにかくフェイトを休ませる。手当を終えたらついでに自分も休む。
2 :休息後はフェイトによる弔いに付き合う。
3 :トグサと接触し、協力を仰ぎたい。
4 :首輪解除の取っかかりを得たい。
5 :さっさと帰りたい。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。


【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:腹部に軽傷、頭に大きなタンコブ、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い、相変わらずイライラ
[装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾16、マガジン15発、マガジン14発)
    NTW20対物ライフル@攻殻機動隊S.A.C(弾数3/3)、ぬけ穴ライト@ドラえもん
[道具]:支給品一式、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、バカルディ(ラム酒)1本@BLACK LAGOON、割れた酒瓶(凶器として使える)
    西瓜1個@スクライド
[思考・状況]
1 :あー胸糞悪ぃ、ガキのお守りなんてガラじゃねぇよ。
2 :用心棒代は『首輪を何とかする』で手打ちにしてやるか。
3 :カズマ? 借りは返す!
4 :ロック? まぁあいつなら大丈夫だろ。
5 :気に入らない奴はブッ殺す!
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。


242 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/02(金) 01:40:50 ID:l+n2NYnr






243 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/02(金) 01:42:27 ID:l+n2NYnr
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244 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/02(金) 01:43:20 ID:l+n2NYnr
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245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/02(金) 01:44:08 ID:l+n2NYnr
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