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アニメキャラ・バトルロワイヤル 作品投下スレ10

1 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/30(金) 22:26:24 ID:FYdMN6nr
ここは
「アニメ作品のキャラクターがバトルロワイアルをしたら?」
というテーマで作られたリレー形式の二次創作スレです。

参加資格は全員。
全てのレスは、スレ冒頭にあるルールとここまでのストーリー上
破綻の無い展開である限りは、原則として受け入れられます。

「作品に対する物言い」
「感想」
「予約」
「投下宣言」

以上の書き込みは雑談スレで行ってください。
sage進行でお願いします。

現行雑談スレ:アニメキャラ・バトルロワイアル感想雑談スレ16
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1175096706/



【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」

 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前がのっている。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


【バトルロワイアルの舞台】
ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/34/617dc63bfb1f26533522b2f318b0219f.jpg

まとめサイト(wiki)
http://www23.atwiki.jp/animerowa/

2 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 01:07:46 ID:OEwTxh67
投下予約延長な為に、念のための保守

3 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 01:17:45 ID:rclvWhSI
俺も保守

4 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 01:59:15 ID:seeYtBea
更に念を入れる。保守

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 03:15:28 ID:l/A9zfGW
s スレを
a あげまいと
g がんばる
e えりまきとかげ

6 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:07:04 ID:iTrrKrDo
『カズく〜ん!』

 ……んあ?
 なんだ、かなみか。どうしたよ、大声出して。

『どうしたよ、じゃないよ。今日は牧場で牛さんの世話をするって約束だったのに、なんでこんなところでお昼寝してるの?』

 あー……それはだな…………ワリィ!
 急用思い出しちまってさぁ。パスさせてもらうわ。

『もう、またそんなこと言って。いつになったら真面目に働いてくれるの?』
『働かざる者食うべからずって、昔の偉い人も言ってたよ』
『カズくんが働いてくれないと、お米も野菜も買えなくなっちゃうんだから』
『カズマさんが働かないと、私たちが苦労するんだからね』
『ねー』
『ねー』

 あぁ、だから悪かったって。この埋め合わせは今度必ず……って、かなみが二人!?

『? 何言ってるのカズくん。私はかなみで、こっちは――』
『――高町なのは。声は似てるけど、別人だよ。どうしちゃったの?』

 かなみとなのは……あれ? いや、なんか違和感が……

『寝すぎで頭がボーっとしてるんじゃないの? ウチは私とカズくんとなのはちゃんの三人家族だったじゃない』
『そうそう』

 そうだったっけ? そうだった気もするな……ん? そうなのか……?

『――カッズマく〜ん。どうしたんだ? 珍しく頭使ってるような顔しちゃってよ』

 珍しくは余計だ! ……っと、君島か。何の用だ?

『おいおい忘れちまったのか? 仕事だよ。お前向けの、とびきりヤベー仕事。忘れちまったんならもっかい説明してやろうか?』

 ――いや、いい。思い出した。たしか今日だったな……HOLY野郎共との決戦は。

『ああ。HOLYのネイティブアルター狩り……俺たちはそれを止めるために、今日襲撃をかける』

 そこに奴もいるんだろ。おもしれぇ。やってやろうじゃねぇか。

『ったくHOLYのこととなると目の色変わるなお前は。まぁいいや。じゃ、仲間のところに案内するぜ』

 仲間――か。
 どんな面子が揃おうが関係ねぇ。俺は、あの男をぶっ飛ばす。ただそれだけだ。
 足手まといになるような奴なら置いてくし、使える奴だとしても邪魔はさせねぇ。
 そう……あいつとの決着だけは!

7 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:07:54 ID:iTrrKrDo
『――さ、紹介するぜみんな。こいつが、あのHOLYに正面からケンカ吹っかけたことで有名なカズマくんだ』
『へぇー。あんたがカズマさんか。俺は八神太一。よろしくな』
『俺は石田ヤマト。あんたの噂は聞いてるよ。なんでも、HOLY内部にまで潜入して大暴れしたとか』

 ……おい、君島。こいつらガキだぞ。

『歳で力量見んのか、カズマくんは? かなみちゃんやなのはちゃんに生活支えられてる身で』

 ……ま、いいさ。どんな奴が仲間にいようが関係ねぇ。邪魔にさえならなきゃ――

『おいおいお前ら、誰かを忘れちゃいねぇか? この全てを打ち崩すアルター使い、ビフ君を――げふっ!?』
『――デケェ図体して道塞いでんじゃねーよ。通れねぇだろうが』

 ……おい、君島。今度はかなみくれぇの女の子が現れたぞ。あれも仲間か。

『もちろんだとも』
『……鉄槌の騎士ヴィータだ。ま、せいぜいあたしの足手まといにならないよう気をつけな』

 ……頭痛がしてきたぞオイ。

『文句言ってる暇はねぇぜ。さっそく敵さんのご登場だ』

 おうおう、いるねぇHOLYの制服着た連中がわんさかと。
 だが眼中にねぇ。俺の狙いはただ一人……あの男だけだ。

『カズマさんがいかないなら俺が先陣を切るぜ! アグモン、進化だァ――ッ!』
『太一に遅れるな! ガブモン、こっちも進化だ――ッ!』

 うおッ!? なんだ、怪獣が出てきやがったぞ!? あれが太一とヤマトのアルターか!?

『あいつらばっかいいカッコさせるかよ! ――グラーフアイゼン!』

 今度は巨大ハンマーかよ! 思ったよりやるじゃねぇかあいつら。
 いいぜ……これならこっちも集中できる。あの野郎との喧嘩によぉ。

『――また性懲りもなく俺の前に現れたか。この社会不適合者が』

 ――見つけた、劉鳳!!
 俺はこの数日間、ずっとテメェに借りを返すことだけを考えてたんだ。
 前のようにはいかねぇ。今度こそ見せ付けてやるよォ……この俺の、カズマの!

『やはり毒虫はどう足掻いたところで毒虫だな。低俗な考えしか持たぬから社会に適合することも敵わない――絶影!』

 言ってろ! 衝撃のファーストブリットォォォォォ!!!

『――ぐっ! どうやら少しは腕を上げたようだな。それでこそ俺も本気を出せるというものだ』

 気にいらねェな……その上から見下すような目つき、ムカつくんだよ!

8 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:08:44 ID:iTrrKrDo
『何を怒る。これが俺とお前の立つ位置、その力の差だ。それよりもいいのか? お前の仲間が苦戦しているようだぞ』

 仲間? ――――なッ!?

『うわあああああああ!』
『太一!? 太一、太一ィィィィィ!』
『悪いなボウズ共。お前らには死んでもらわにゃならん』

『恨みはない。ですが貴方にはここで潰えてもらいます……風王結界!』
『チクショウ! 踏ん張れグラーフアイゼン…………ぐ、あああああああああ!!』

 太一! ヤマト! ヴィータ!?

『皆、貴様の身勝手さが原因で死んでいく。貴様ほどの力があれば、守ることもできたはずなのにだ』

 うるせェ! 守るなんざ俺の性に合わぇんだよ!

『そうだったな。お前はそういう男だ。――なら、あいつらが死んでも同じことが言えるな』

 なに――あれはっ、かなみ! なのは! 君島!?
 なんで、なんであいつらまでこんなところに!?

『全ての死は貴様が招いた。誰が死のうが関係ない――貴様のその身勝手な考えが、周りの人間を死に至らしめるのだ! 絶影!』

 やめろ、やめ――――……かなみ? なのは? 君島ああぁぁぁぁぁ!
 太一! ヤマト! ヴィータ! 誰か、誰でもいいから返事をしやがれ!
 なんで、なんでこんな……

『――速さだな。速さが足りなかった。ただそれだけさ』

 ――兄貴? なんでアンタがここに……

『いいかカズヤ? 俺がここで言う速さってのは、肉体的なスピードのことじゃない。決断力の速さだ。
 お前の周りの人間がどんどん死んでいくのは誰のせいだ? それは殺した人間のせいじゃない。お前の遅さが原因だ。
 お前が慕っていたあの子が死んだ時、お前は何をやっていた?
 ウサギの少女が死んだ時、お前が彼女の名前を刻んだのはなんのためだ?
 ゴーグルの少年が死んだ時、お前は何を決断した?
 思い出せカズヤ。お前はこんなところで燻ってるような男じゃあない。
 やることは遅いが地の力は強い。それは時として速さを捻じ伏せるほどにな。
 考えろカズヤ。お前は今何がしたい? お前がするべきことはなんだ? 
 少なくともこんなところで眠って夢見てる場合じゃない。そもそもだな――』

 うるせぇ……長ぇよ兄貴……


 ◇ ◇ ◇



9 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:10:17 ID:iTrrKrDo
 ドガッ……。
 重厚な破壊音を目覚ましに、カズマは閉じ切っていた両瞼を開眼させた。
 起き抜けの虚ろな脳が、頭痛を訴えてくる。頭部になにやら痛みと水気を感じ、触れてみるとそこには赤い液体が付着していた。
 血ではない。血よりももっと水っぽく、ところどころに実と種も付いている。それに皮も。
 カズマが周囲の残骸から西瓜で頭を殴られたのだと推測する頃には、おぼろげな視界も前方に定まりつつあった。
 そしてその場には、カズマの脳天に西瓜を投下した張本人がいる。

「よぉ、やっと起きたか大将。随分とご機嫌な頭してるな」
「テメェは――」

 記憶の糸を辿ってみると、そのホットパンツにタトゥーの女はカズマの知人に分類された。
 知人と言っても、それはかなり最悪な部類。大切な人の仇と誤解してドンパチを繰り広げ、それ以降はろくに会話もしていない、怒りを売りあった仲だった。
 名前はたしか、レヴィ――カズマがその名を呼ぼうとした刹那、レヴィの手によって身体が後方に押し倒された。
 そのままの勢いで圧し掛かられ、マウントポジションを取られる。
 胸ぐらを乱暴に掴まれたかと思うと、彼女の怒り全開のしかめっ面が視界に飛び込んできた。
 不思議と抵抗する気は起きない。まだ起き抜けで頭がボーっとしているせいだろうか。
 周囲では「レヴィさん!」「おい、何を」などの男声が上がるが、どちらもカズマにとっては親しみの薄い声だった。
 ふと気づけば、回りの情景も随分と見慣れぬ景色に変わっている。
 いくつもの椅子に大きなスクリーン。部屋と称すにはあまりにだだっ広いスペース。
 ロストグラウンドの崩壊地区で育ったカズマには馴染みが薄いが、ここが映画館であるということは辛うじて理解できた。
 などと暢気に周囲に目をやっている時点で、目の前の彼女の怒りを増長させていることには気づけない。

「……西瓜クセェ」
「たりめェだ。そりゃあたしがぶつけてやったんだからな。
 しかし失敗したぜ。テメェみてぇな寝ぼすけ起こすんなら、鉛弾ぶち込んでやった方が手っ取り早かった」

 レヴィは眉間に皺を寄せ、これでもかと言わんばかりに睨みを利かせていた。
 その怒りを行動で再現しようと、所持していた銃をカズマのこめかみに捻じ込む。
 しかし、カズマは動じない。怯えるでも抵抗するでもなく、銃のことなどまるで意に関さずレヴィを見つめていた。
 生気の抜け落ちた死霊のような眼差しは、彼を知る者から見れば違和感を感じずにはいられないほど異質なもの。
 何があったのか、問い質すのも躊躇われる雰囲気だった。しかしレヴィは、

「ふざけんじゃねェぞ!」

 カズマの様子などお構いなしに、眠たげな顔面を鉄拳で殴りつけた。
 本気のパンチに弾け飛んだカズマは受け身を取ろうともせず、無様に床を転がる。

「おら、立てよコラ。あたしゃあこの一日、ずっとテメェに借りを返すことだけを考えてたんだ。いつまでも腑抜けてんじゃねェぞ」

 カズマという男は、いかに相手が女とはいえ頬っ面を殴られて大人しくしているほど温厚な性格ではない。
 即座に立ち上がり反撃の意志を示すのが当たり前――であったはずなのだが、彼は痛みを堪えるかのようにゆっくりと立ち上がった。
 そこに気迫や威圧感はない。レヴィの言うとおり、正に『腑抜け』という言葉がお似合いの惨めな姿を晒していた。

10 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:11:25 ID:iTrrKrDo
「へへっ……チンピラだな、まるで。あいにくよ、俺はテメェみてぇなのを相手にしてる暇はねぇんだわ。やらなきゃいけねぇことがあるからよ」
「さっきまで寝てた野郎がナマ言ってんじゃねェぞ。テメェが腑抜けてるせいで、あたしのテールランプはとっくのとうに真っ赤っ赤だ。
 もうな、収まりがつかねェんだよ……どっかの馬鹿を蜂の巣にでもしなけりゃな」
「やるってのか? あの時の続きをよ……おもしれぇ」

 いつかのように、銃と拳を突きつけ合うカズマとレヴィ。
 傍目から見ても一触即発と取れる光景だったが、その場にいた二人の傍観者――トグサとゲイナーは、止めようとはしなかった。
 いや、正確にはトグサは止めようとしたのだが、ゲイナーが先にそれを押し止めたのだ。
 少し前の彼だったら、トグサと一緒になってレヴィを羽交い絞めにしたことだろう。
 だが、今はあの時とは違う。安心できる、と言ってしまうのはどこか悔しいが、この場面はレヴィに任せられるだけの信頼感があった。
 現に、一触即発と思われた状況はいつまで経っても暗転しない。
 レヴィはいつでも引き金を引ける体勢ではあったが、向かい合うカズマはいつまで経ってもアルターを発現しない。丸腰でレヴィと向かい合う。
 単にアルターを駆使するだけの余力がなかったのか、それとも頭に西瓜をぶつけられたダメージが残っているのか。それは定かではない。
 ただ事実として闘争は起こらず、睨み合ったままの状態に嫌気のさしてきたレヴィはついに――

「だァァーッ! なんッなんだテメェは!」

 ――キレた。
 同時に、構えていた銃を撃つ、ではなく投げつける。
 回転しながら飛んでいくべレッタを正面から受け、カズマはまたその場に倒れこんだ。

「死んだ魚みてェな眼しやがって! いいか、テメェは一回あたしに喧嘩売ってんだぞ!? その決着はまだついてねェ!
 だけどな、こちとら弱虫小僧を甚振る趣味はねェんだよ! ピーピー泣き叫ぶガキ撃ったって面白くもなんともねェからな!」

 再びカズマの胸ぐらを掴み上げ、大きく突き飛ばす。
 やることは乱暴だが、それはひとえにカズマに対する憤慨、そして失望の表れだった。
 レヴィが『借りを返す』と誓ったのは、銃弾を拳で弾き、右腕一本で森林破壊をやってのけるような天までイカシてるカズマだ。
 間違っても、目の前にいるような腑抜けとは違う。

(死んだ魚の目……? この、俺が?)

 レヴィの心境など知ったことではないカズマだったが、朦朧としていた意識はレヴィの挑発と罵声により徐々に変化を見せ、今の自分に疑問を抱きつつあった。
 かなみが死んだ。君島が死んだ。ヴィータが死んだ。太一が死んだ。なのはが死んだ。クーガーが死んだ。ヤマトが死んだ。
 カズマに関わった人間は、皆どこかで先に逝ってしまう。守れるはずだった存在が、カズマの身勝手さのせいで消えていく。
 そんなことは知ったこっちゃない。俺に関わった奴には悪いが腹括ってもらう――以前、カズマが自分で言った言葉だった。
 なのに、今の有様はなんだ。目の前で死んだ石田ヤマト、その姿が脳裏をうろついて離れない。
 彼を救えなかった後ろめたさが、カズマにこんな眼をさせているとでもいうのだろうか。

(……違う。そんなんじゃねぇ。俺には足りなかったんだ。速さとか以前に、一番大事なものが足りてなかった)

 悔しかった。
 何もしない内に死んでいった仲間たち。目の前で別れることになってしまった仲間たち。自分の身の周りで起こる死の連続が。
 もうあんな思いはしたくない。だから、守ろうとしてしまった。カズマという人間の本質に逆らって。
 カズマは誰かを付きっ切りで守るようなタイプではない。大切なものが奪われたら、それを即行で奪い返すのが性に合っている。

11 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:12:24 ID:iTrrKrDo
(――『決意』だ。
 こうと決めたら絶対に曲がらねぇ、道を逸れたり止まったりもしねぇ、何がなんでも突き進むっていう意志が足りなかったんだ。
 一度こうと決めたら、自分が選んだんなら決して迷うな。迷えばそれが他者に伝染する。選んだら進め。進み続けろ)

 今のカズマは、ヤマトの死によって止まってしまっている。太一に突き進むと約束し、それを破ったばかりに止まってしまった。
 それがなんだって言うんだ。カズマにはまだ、やりたいことが残っている。
 ムカツク奴はまだいるし、劉鳳に会ったらブチのめすつもりもある。
 欲しいものは奪ってでも手に入れる――それが既に失われたものだとしても、止まったり退き帰したりはしない。
 進む。ただ前を向き、ただ上を目指す。それしかできないし、それしかする気もない。
 だから、

「立ち止まってるヒマなんか――ねェ!」

 カズマは立ち上がった。咆哮と一緒に、瞳に魂を再燃させた。

「俺は進めぜ! 他人のことなんざ知ったことか! 着いて来てぇ奴だけ着いてくりゃあいい!
 それでどうなろうが文句は言わせねぇ! あぁそうだ、俺は昔からそうやってきた! これからだって変わらねぇ! 
 かなみと君島とヴィータとなのはと太一とヤマト! ついでに兄貴もだ!
 あいつらの名前はみんな刻んだ! ああそうだ、だから進むぜ俺は!」

 死んだ魚は、一転して獣へと生まれ変わる。
 それは絵に描いたような馬鹿で、愚直という言葉がピッタリ当てはまるような馬鹿で、馬鹿だった。
 だが、それが素晴らしくカズマらしい。

「おい、一つだけ聞かせてくれ。君が気絶する直前に首輪が爆発して死んだ参加者がいるだろう? それはまさか」
「ヤマトだよ。石田ヤマト。太一のダチだった奴だ。詳しいことが知りたいんなら病院へ行きな。ドラえもんとのび太って奴らがいるからよ」

 トグサの問いに対し最低限の返答を済ませ、カズマは映画館を出ていこうとした。
 後を追おうとする者はいない。トグサもゲイナーも彼を止めようとはせず、レヴィに至っては完全に見限ったのか、そっぽ向いてしまっている。
 そのレヴィに向かって、カズマは退室の間際にこう言い残した。

「そこのテメェ、レヴィっつったな! テメェの名前も刻んだからな! さっきの借りはいつかぜってェ返す! 覚えとけ!」
「あーウルセー。腰抜けのボウヤはさっさとどこかへ行っちまえタコ。
 もしノコノコとあたしの前に姿見せてみろ。そんときは、今度こそその脳天に鉛弾ブチ込んでやるよ」

 両者、最後まで顔を向け合うことはなく――だが二人とも密かに笑い、別の道を行った。
 もし三度顔を合わせる時が来るとしたら、その時こそお互いがお互いの借りを返す時なのだろう。
 今はただ、その時を待てばいい。自己の尊重とぶつけ合いは後回しで、今はただ、進み続ければいい。
 映画館に残った西瓜の匂いはどこか甘ったるく、どこか刺激的だった。


 ◇ ◇ ◇



12 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:13:14 ID:iTrrKrDo
 カズマが去り、トグサとゲイナー、レヴィの三人は情報交換を再開することにした。
 映画館へ移動する際鉢合わせた両名は、トグサがカズマを背負っていたこととゲイナーがレヴィをうまく抑制したこともあり、無駄に争うこともなく交流を得ることができた。
 カズマが目覚めるまでに提供を済ませたのは、この世界に連れて来られてからの簡単な情報のみ。
 それぞれの知人関係とこれまでの経緯等、トグサはその中でタチコマの名を聞くことになった。
 そして今、話題は首輪を中心とした脱出方面へと向いている。薄暗い映画館の事務室で、ゲイナーとトグサはペンを走らせていた。

『これが、その時の戦闘で燃え残った首輪です』
『首輪か。焼け焦げてはいるが、中身は問題はなさそうだな。技術手袋を試すいい機会だが、問題は起爆装置がまだ機能してるかどうかだな』

 ゲイナーの提案により、会話は盗聴を考慮して筆談で進められている。
 首輪は記されたネームが擦れるほどに焦げてしまっていたが、原型を留めている以上中身に変化はないだろう。
 トグサが技術手袋による解体を決行するかどうか決めかねていると、筆談には参加していなかったレヴィが徐に近づいてきた。

「ったくいつまでウダウダやってんだよ。ようするに、こいつを使えば首輪は解体できんだろ? さっさと試しゃいいじゃねェか」
「な!? おい、ちょっと待て!」

 筆談の意味を台無しにした上で、レヴィはトグサから技術手袋と問題の首輪を取り上げる。
 そして躊躇いもなしに技術手袋を機動させ、首輪はものの数秒でバラバラに解体された。

「おぉ! スゲェじゃねーかコレ。どうだゲイナー、テメェの首輪でも試してみねェか?」
「やめてくださいよ! 既に外れた首輪だったからいいものを、普通に使ってたら絶対に爆発してますよ!」

 レヴィの大胆な行動に、トグサは肝を冷やした。
 だが、結果オーライではある。人の首から外れた首輪は既に機能を停止し、技術手袋の性能どおり無事解体できることが証明された。
 もちろん、人の首に嵌ったままのものはまた別の話。あくまでも、首から外れた首輪の解体に成功したに過ぎない。

「どうしますトグサさん? もしこの現場がギガゾンビに監視されていたとしたら――」
「どの道、俺たちには引き返すことなんてできないさ。コソコソせずに堂々と中身を調べさせてもらう」

 ホテルでセラスに説明した考察の件に続き、今回は首輪の解体にも成功したというのにギガゾンビ側からのアプローチはない。
 やはり、トグサの『技術手袋で人の首から首輪を解除するには、それに加えて何か他の要因が必要になってくる』という推理は当たっているのだろう。
 だからギガゾンビはまだ手出しをせず、悠々と傍観を決め込んでいる。
 重要なのは、その『別の要因』だ。技術手袋で首輪を解除する際、仕掛けられている罠を外すようなパスが必要なはずなのである。
 それは何なのか。首輪の中身を調べ推理していく。

「この小型機械の数々、どれが何の役割をしているか分かるか?」
「このマイクみたいなのは、盗聴のためのものでしょうね。それとこの配線が繋がってるのは爆弾、このアンテナっぽいの二つは受信装置で、
 この超小型の計器は……何かを計測するためのもの?」
「それが何か、が問題だな。だが、これらはどれも機能を停止しているようだ。収音器具と思われる小型マイクは、何故か壊れてすらいる」
「解体したから機能が停止したのか、それとも参加者の首から外れた時点で機能を停止したのか……それによって考え方も変わってきますね」
「これらの機械を一つ一つ調べていくには、俺たちじゃ知識が足りない。それこそギガゾンビと同等の技術力を持った人間にしか分かり得ないだろうな」
「小難しいったらありゃしねェな。あたしはメシでも食うかね」

13 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:14:19 ID:iTrrKrDo
 一人グルメテーブルかけを敷くレヴィはを尻目に、ゲイナーも空腹に耐えかね食料を取り出す。
 しかし首輪の解体には成功したものの、考えは深まるばかり。
 トグサとゲイナーという知恵者二人が合わさっても、専門的な未来技術の前では手も足も出ない。せいぜいそれらしい推測を並べるだけだ。

「とりあえず、首輪の中に監視道具は入っていないみたいですね。小型のカメラが搭載されている可能性も考えたんですけど」
「それなら監視可能範囲が参加者の視点に限定されるし、マフラーか何かで首元を覆えば簡単に監視を封じ込める。
 中にはアーカードっていう心臓に首輪を取り付けられていた参加者もいるくらいだしな。それより気になるのはこの盗聴道具だ。
 見たところ小型化を重視するあまり、性能は随分と低く抑えられているようだ。しかもこの首輪の場合、解体する以前に壊れていて使い物にならなくなってる」
「たぶん、フェイトちゃんとの戦闘の衝撃で壊れたんでしょうね。所持者の人が跡形もなく消し飛ぶほど、壮絶だったらしいですから」
「だが、盗聴機以外の機具に破損は見当たらない。これだけが壊れたのは、盗聴機の耐久度だけが低かったからだ。
 そんな粗末なものを、監視道具の一環として用意するだろうか。殺し合いなんてしてれば、すぐに壊れるのは明白だ」
「僕ならしませんね。監視が外部から行われているとするなら、盗聴もそれとセットでやるのが普通だと思います。
 それでも首輪に盗聴機を仕込みたいって言うなら、せいぜいそれは何かあった時の保険代わりにしかならない」
「保険……例えば監視機具に不具合が生じたり、参加者が監視の目の届かない場所に隠れてしまった時のための処置か。確かに有り得るな」
「なんか話がダリィな。寝てていいかゲイナー?」
「ご勝手にどうぞ」

 さっそく寝息を立て始めたレヴィを無視し、ゲイナーとトグサは考察の海に沈む。
 首輪の解体により分かったことは、監視と盗聴は外部から行われている。ただし、首輪には保険代わりの低性能盗聴機が仕掛けられている。まずこの二つ。
 さらに受信装置はおそらく、外部からの起爆電波を受信するためのもの。片方はギガゾンビによる手動電波、もう片方は禁止エリアから発せられる電波を受信するのだろう。
 小型計器が何を計測しているのかは、見当もつかない。そもそもこれら全ては推測の域を出ないものであり、確証を得るには機械工学についての知識が足りなさすぎた。

『問題は技術手袋を使った際、すんなり解除成功といくにはどうすればいいかだ』
『中の爆弾についた配線から推測するに、外部から干渉を受けるとすぐに起爆する仕組みになってるみたいです』

 レヴィが寝に入り、考察の内容が首輪の確信に触れると判断した二人は、話し方を再び筆談に戻す。

『なら、爆弾の機能を一時的に停止させ、その隙に技術手袋で首輪を解除すればいいわけだ』
『問題はその方法ですね。この配線を断てばそれも可能でしょうけど、外側からではまず不可能だ』
『起爆しないようにうまく首輪を解除する方法……技術手袋でも無理となると、かなり難しくなってくるな』
『そんな方法、あるんですかね』

 ゲイナーがそう記してから数分間、トグサの持つペンは動かなくなった。
 爆弾の解体なら多少の心得もあるが、そこに未来技術が絡んでくるとなるとどうにも勝手が変わってくる。
 難しい顔をするトグサ、すっかり就寝モードのレヴィ、両者の顔を見回した後、ゲイナーがペンを走らせる。

『トグサさん。唐突なことを聞きますが、「時間を止める方法」に心当たりはありませんか?』

 それは、あまりに突拍子のない質問だった。

14 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:15:23 ID:iTrrKrDo
『時間を止める? どういうことだ?』
『僕のいた世界には、オーバーマンっていう巨大ロボットがいて、それらはオーバースキルという特殊な能力を秘めていました。
 その中のラッシュロッドという機体は、「時間を止める」オーバースキルを持っていたんです。
 時間を止めた範囲にいる人間は動くこともできないし、もちろん機械も一切の機能を停止します。
 もし「時間を止める方法」があるとすれば、時間を止めてその隙に首輪を解除することが可能なんじゃないか……と』
『時間を止める……か。なるほど。だがあいにく、そんな非科学的な現象を起こす方法には心当たりがないな。
 まぁ、数ある不思議な支給品の中にそういった道具が紛れ込んでいないとも限らないし、そのラッシュロッド自体がこの場に存在している可能性だってある』
『だとしたら、ラッシュロッドで時間を止めて首輪の機能を停止、その間に解除っていう理想が実現できます。
 でも、たぶんオーバーマンが支給品として紛れ込んでいる可能性はない』
『巨大ロボなんて代物、殺し合いの武器として支給したらバランスを崩しかねないからな。
 だがその発想はイエスだ。一時的に首輪の、最低限爆弾の機能だけでも止めることができれば、その隙に技術手袋が使える』
『今後の方針としては、それを可能にするための能力、もしくは道具の探索ですね』
『ああ。俺の推理としては、ネットワーク上に何かヒントが転がっているんじゃないかと思ったんだが……肝心の情報端末はまだ見つからないしな』
『どちらにしても、根気よく探すしかないですね。できれば僕たち以上に機械に詳しい人も』
『所詮は推測の上での推理。都合のいい仮定を並べて引いた線上の戯言でしかないからな』

 それを境に、トグサとゲイナーの首輪に関する筆談は終了を迎えた。


 ◇ ◇ ◇


「バラバラにした首輪は、トグサさんが持っていてください。技術手袋もあるし、重要なアイテムは一箇所に纏めておいた方がいい」
「了解した。それで、ゲイナーたちはこれからどうする?」

 レヴィを叩き起こした後、トグサたちはそれぞれの目的を果たすために一度映画館を出ることにした。

「僕は、六時にフェイトちゃんと駅で待ち合わせをしているんです。今から行かないと間に合わないだろうし、合流しだいすぐに病院へ向かいます」
「そうか。俺は一度病院へ行って、カズマの言っていた二人と接触してみようと思う。ヤマトが絡んでるということは、そこにハルヒとアルルゥもいるはずだからな。
 ……それにもし彼女たちと合流できたら、長門やヤマトのことも報告しなくちゃいけない。首輪関連以外にも、やらなきゃいけないことは山積みだ」
「あんまり無茶はしないでください。もう残り人数も少なくなってきてるし、トグサさんみたいな大人は希少だと思いますから」

 横目で欠伸をするレヴィを見つつ、ゲイナーは呆れ顔で溜め息をつく。
 トグサも彼の苦労を察したのか、複雑な面持ちで「頑張れよ、少年」と元気付けた。

「それじゃあ、僕たちは行きます。トグサさんもどうか気をつけて。ほら、レヴィさんも挨拶くらい」
「あぁ? メンドクセェな……ま、せいぜい頑張りな」
「ああ。じゃあな二人とも。またあとで落ち合えることを願ってるよ」

 イイロク駅を目指して、ゲイナーとレヴィの姿が南へと遠ざかる。
 それを見送ったトグサもマウンテンバイクに跨り、進路を病院へと定めた。

15 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:16:25 ID:iTrrKrDo
(タチコマ……お前の築いた交友関係は、無駄になんてならなかった)

 ペダルを漕ぎマウンテンバイクを走らせる一方で、トグサは星空を見上げながら同僚達のことを思った。
 残った者はただ一人。だがその一人は一番の新米であり、それ故に皆の意志を一身に受け継ぐ者でもあった。
 トグサは進む。彼もまたカズマと同様に、立ち止まったりはしないのだろう。

(公安9課は俺やみんなが望む限り、犯罪に対して攻勢の組織であり続ける。これから先もずっとな)

 ――この意志を少佐へ。バトーへ。タチコマへ。



【B-4/2日目/黎明(2〜3時範囲)】
【カズマ@スクライド】
[状態]:中程度の疲労、全身に重度の負傷(一部処置済)、西瓜臭い
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:気にいらねぇモンは叩き潰す、欲しいモンは奪う。もう止まったりはしねぇ、あとは進むだけだ!
1:変装ヤローを見つけ次第ぶっ飛ばす!
2:ドラえもんやのび太とはあとで合流。
3:気にいらねぇ奴はぶっ飛ばす!
4:レヴィにはいずれ借りを返す!


【B-4/2日目/黎明(3〜4時範囲)】
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾6/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク
[道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S&W M19の弾丸(34発)、警察手帳(持参していた物)
    技術手袋(使用回数:残り16回)@ドラえもん、首輪の情報等が書かれたメモ1枚(内部構造について追記済み)
    解体された首輪、フェイトのメモの写し
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:病院へ向かいドラえもん、のび太と合流。カズマの行動についての経緯を問い質す。
2:病院にハルヒとアルルゥがいるかを確認。いないようなら彼女らを捜索。
3:病院に人が集まったら、改めて詳しい情報交換を行う。
4:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。
5:ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。
6:情報および協力者の収集、情報端末の入手。
7:エルルゥの捜索。
[備考]
※風、次元と探している参加者について情報交換済み。

16 :「選んだら進め。進み続けろ」 ◆LXe12sNRSs :2007/03/31(土) 12:17:22 ID:iTrrKrDo
【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
    腹部と後頭部と顔面に相当なダメージ
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料一日分消費)、ロープ、フェイトのメモ、画鋲数個、首輪の情報等が書かれたメモ1枚
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。
1:E6駅でフェイトと合流。できなければ電話をかける。
2:フェイトと合流後、病院で再びトグサと合流する。
3:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。
4:フェイトのことが心配。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。
※トグサから聞き逃した第四放送の情報を得ました。
※顔面の腫れは行動に支障がない程度には回復しました。

【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:殺る気満々。腹部に軽傷、頭にタンコブ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い。
[装備]:イングラムM10サブマシンガン、ベレッタM92F(残弾15、マガジン15発、マガジン14発)
    グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2、予備弾薬(イングラム用、残弾数不明)、NTW20対物ライフル(弾数3/3)
    グルメテーブルかけ(使用回数:残り17品)@ドラえもん、テキオー灯@ドラえもん、ぬけ穴ライト@ドラえもん
    バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:不本意だが駅に向かいフェイトと合流。
2:フェイトと合流後、病院で再びトグサと合流する。
3:見敵必殺ゥでゲイナーの首輪解除に関するお悩みごとを「現実的に」解決する。
4:魔法戦闘の際はやむなくバリアジャケットを着用?
5:カズマとはいつかケジメをつける。
6:ロックに会えたらバリアジャケットの姿はできる限り見せない。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※トグサから聞き逃した第四放送の情報を得ました。

17 :◆/1XIgPEeCM :2007/03/31(土) 16:25:29 ID:Oqvru7eh
「……ここまで来れば大丈夫かしら」
軽く息を切らせながら今一度後ろを振り向いて、そのような独り言を呟き、峰不二子は大木の陰に腰を下ろした。
彼女は先程、トラックと一緒に気絶した少年を捨て、その隙にカズマという化け物から逃げて来たところである。
はっきりとした現在地は分からないが、地図上で言うC-5辺りには入っているだろう。
C-5は先の放送で禁止エリアに指定されていたが、発動は5時からである。時計を見ると1時前だ。まだ時間的余裕はたっぷりある。
病院での出来事や、肝を冷やす逃走劇により多少の疲労を感じた不二子は、休憩も兼ねて戦利品の確認をすることにした。
奪ったデイパックは全て一つのデイパックにまとめてある。マトリョーシカ人形と似たような感じだ。
それぞれのデイパックを順に開いていくと、食料やら何やらが出るわ出るわ。
対戦車火器などの強力な武器から、いかにも胡散臭そうな不思議道具、一見すると何の役にも立たなそうなガラクタまで様々。
下劣な方法を働いてまで奪った甲斐があったというものだ。
不二子はその中のいくつかの物品に目を留めた。

まず一つ目は、携帯電話。
各施設の電話番号が登録済み。どこでも使用できるというメリットがあり、これを使えば仲間内で連絡を取ることも可能だろう。
この場において情報は非常に便利な上、貴重な存在だ。上手く使えば……離れた場所から声だけで人を殺すことだってできなくもない。
無論、そう簡単なことではないのだが。
二つ目は、暗視ゴーグル。
こういった暗闇の中で、少しでも視界を確保できる道具は本当に有り難いものである。おまけに望遠機能まで付いているらしい。
これを使わない手はない。不二子はすぐに暗視ゴーグルを着用した。
三つ目は、誰かが書いたメモ。
内容は、首輪は禁止区域に入ってから30秒で爆発する、といったものだ。
こんなことが実際に分かるということは、このメモを書いた人物は実際に禁止区域に入って調べたということだろう。
勇気があるのか、それともただの無謀なのか。とりあえず、覚えておいて損は無い。
トラックを飛び降りてから首輪の爆発音が聞こえたのが予想よりも遅かったのは、この30秒の猶予のせいだったのか……。
爆音が聞こえた方角を眺めながら、不二子はそう納得した。
四つ目は、ワルサーP38。
ルパンの愛用銃がこんなところで手に入るとは、一体何の因果だろうか。
しかしこんな物はいらない。
まず弾切れで役に立たない。デイパックの中を隈なく探してみたが、予備の弾は見付からなかった。
あの眼鏡の少年が撃ち尽くしてしまったということだろうか? 何だか変な話だ。
弾薬を手に入れることができれば使えないこともないが、そうそう都合良く見つかるはずがない。
それに。

もう彼と会うつもりはない。

不二子はワルサーP38を引っ掴むと、眼前を流れる川へ向かって投げ捨てた。
少し遅れて、ぽちゃんという音。
「…………」
何故か、妙な虚しさだけが残った。

18 :◆/1XIgPEeCM :2007/03/31(土) 16:26:46 ID:Oqvru7eh
とその時、北方から銃声が一発、微かに聞こえたきた。場所はそれほど離れていない。すぐ上のエリアからだろうか?
「とりあえず、もう少し離れた方がいいわね……」
不二子は誰にでもなく言い、早々に荷物をまとめると、その場を後にした。
他にも気になる道具はあったが、それらは後でゆっくり確認していけば良いだろう。

川沿いに南下しながら、暗視ゴーグルを通した視界で地図を眺め、不二子は考える。
それは、どうすれば参加者を効率良く、且つ安全に減らせるかである。
第四回放送の時点で残り人数は自分を含め29人。先程の出来事でヤマトという少年は首輪が爆発し死んだだろうから、現時点では少なくとも28人以下だ。
ゲームは既に終盤に差し掛かっている。ここまで生き残るために戦ってきた者は多くいるだろう。ということは、必然的に怪我人も増えるはずだ。
地図を見る限り、この会場はE-2からA-7にかけて走る川により南北に分断されている。
そしてその南北を繋いでいるのが、E-2とD-3にある橋だ。
病院は怪我の治療には最適の施設。怪我人が増えるゲーム終盤、南エリアから橋を渡って病院へ向かおうとする参加者がいる可能性は高い。
ならば、そこを狙うのだ。橋の付近で待ち伏せして、怪我を負い弱っている参加者が通りかかったところを仕留めてやれば良い。
例え無傷の参加者が通りかかったとしても、単体では何の力も持たない子供程度なら十分に勝算はある。
こちらには大量の武器。暗視ゴーグルのおかげで視界も良好。建物の影に身を潜め、何も知らずにやって来た参加者を射殺する……。
安全であり、確実な方法だ。
万が一襲撃に失敗したとしても、逃げ足には自信がある。ついでに言えば、色々あったが何とかここまで生き残ってこれた運の良さもあるのだ。
だが、相手が複数だった場合はどうする?
不二子は暫し黙考するが……。なに、簡単なことだ。
例えば、複数人の内誰か一人を殺せば、突然の襲撃で残りの仲間も混乱するだろう。その隙に皆殺しにしてやればいい。
カズマという例外はあったものの、群れを作る者は大抵が弱者である傾向にある。
戦闘慣れしていない一般人ばかりの集団なら、不二子の力量を以ってすれば壊滅させることは容易だ。
あるいは、その集団に接触して色々とデマを吹き込み、潰し合いを狙うのも良いかもしれない。
無視するという手もあるが……これは後々面倒なことになる可能性がある。
いずれにしろ、相手が複数の場合はより慎重な対応が必要となりそうだ。

全部が全部上手くいくとは思えないが……試してみる価値は、ある。

今後の方針は決まった。
D-3の橋近くまで行き、待ち伏せする。そして、通りかかった参加者を殺す。
ただし、相手の力量を見極め、慎重な判断を下した上で、だ。

闇に乗じて不意打ちすることも、弱った者や元々弱い者を襲うことも、今の不二子には微塵の躊躇いも無かった。
あの子供……確か名前は、太一と言ったか。彼を殺した時から、不二子のタガは完全に外れてしまったのだ。
だから、その勢いでもう一人の少年……ヤマトも殺した。どちらも無抵抗の、小学生くらいの子供であった。
しかし、全ては生き残るため。
外道と叫ばれようが、小物と罵られようが構わない。
他人を殺し、利用し、どれだけ汚い手を使ってでも、絶対に生き残る。

それが、峰不二子という女が選んだ道なのだから。




19 :◆/1XIgPEeCM :2007/03/31(土) 16:27:56 ID:Oqvru7eh
【D-4・北東部川沿い/2日目・深夜】

【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:軽度の擦過傷、生き残ることへの執念
[装備]:コルトSAA(弾数:4/6発/予備弾:12発) 、コルトM1917(残り3発/予備弾6発)、
    銭型変装セット@ルパン三世(付けているのは衣服のみ)、暗視ゴーグル(望遠機能付き)
[道具]:デイバック×7、支給品一式×7(食料6食分消費、水1/5消費)、ダイヤの指輪、
    高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、のろいウザギ@魔法少女リリカルなのはA's
    鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ボディブレード、かなみのリボン@スクライド
    ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
    スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、USSR RPG7(残弾1)
    RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)、スコップ、
    ハーモニカ、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、真紅のベヘリット@ベルセルク、ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
    タヌ機(1回使用可能)、クロスボウ、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)、トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
[思考]
基本:優勝して生き残る。自己の安全を最優先。利用できるものはなんでも利用する。
1:D-3の橋付近で待ち伏せし、通りかかった参加者を殺す。もしくは利用する。
2:参加者を殺害し人数を減らす。
  ※弱者優先。闇討ちなどの効率の良い手法を取りたい。
3:カズマや劉鳳など、人間を超越したような輩には手出ししない。
4:F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
[備考]
※E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
※「なくても見つけ出す!」にて、ドラえもんたちがしていた会話の一部始終を盗聴していました。
※着せ替えカメラの効果により、本来身に付けていた服は一時的に消失しています。
※戦利品を大まかに確認しました。
※不二子が聞いた銃声はレヴィの発砲音です。

20 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:02:17 ID:ME+D0JPF
『ギガ〜。エフイチ行き列車の発車までもうしばらくかかるので、のんびりと待つギガ〜』
イイロク駅のホームから停車していた列車に乗り込んだゲインを待っていたのは、そんなツチダマのアナウンスだった。
この地にて列車に乗るのは初めてであったが、中にツチダマがいることはモールダマからの情報により確認済み。
よって、いきなりのアナウンスにも全く驚きはしない。
『本列車は侵入禁止区域を通過する事があるギガガ〜本車両内に限り皆様の安全を約束するギガ〜。
なお走行中の途中下車は大変危険なので止めるギガ〜車内での殺し合いは一切責任負わないギガ〜』
「そりゃ後丁寧にどうも、っと」
ゲインは勝手に流れるアナウンスを他所に、そそくさと先頭車両に進むと運転席の扉を何のためらいもなく開く。
『ギガ〜? お客さん、勝手に入られては困るギガ〜』
「……なぁ、せっかく客が乗ってるんだ。発車時間を早めてくれてもいいんじゃないかい?」
『そうはいかないギガ〜。列車の運行ダイヤはダイヤモンドの如く硬く守られなければいかないギガ〜』
運転席のある位置にたたずむツチダマは、ゲインの方を振り返ることもせずに答えた。
「……ほう? ダイヤモンドねぇ」
『そうギガ〜。ダイヤを守ることは鉄道マンとして当然の義務ギガ〜。それを邪魔するって言うのなら――――』
ツチダマの鉄道トークはゲインの放った一発の銃弾によって強制終了させられた。
今、ゲインの目の前にあるのは頭部を失った哀れな土偶のみ。
「悪いが、鉄道の運行を邪魔するのはあっちの世界でもしていたことでね」
ゲインはそんなツチダマを見下ろしながら、放った分の銃弾を補充する。
すると、その時足元に二つの物体が落ちてきた。
それはゲインにも見覚えのある目玉と耳の形をした物体で……。
「なるほど。ツチダマが機能を停止するのと同時にこっちの制御も止まるってわけか」
その物体――スパイセット――を拾い上げながら、ゲインは納得したような表情をする。
「……さてと。監視役を潰したところで目的のブツでも捜すとするか」
ゲインは、そう言うと運転席を後にした。
そこに胴体だけの土偶と無数の破片を残して。

列車の内部は、極めて単純な構造となっていた。
一両目と三両目の先頭部に運転席が設置されている以外は、ボックス式の座席とつり革、それに網棚くらいしか存在せず、そこには他の乗客が乗った、乗っているという痕跡すら見当たらない。
「これじゃ装置を設置する場所なんてどこにもないよな……」
亜空間破壊装置とやらがモールで見つけたような大掛かりな機械であるのだとするならば、それが車内にあれば極めて異端な存在になるはず。
もし車内に設置してあったとすれば、列車に乗り込んだ誰もが気付くはず。
――ならば、車内にうまく隠してあるのだろうか。
ゲインはそう考えると、座席のシートを剥がそうとしてみたり、運転席の内部を調べてみるが、やはり装置は見当たらない。
「おいおい電車の中にあるって言ってたのは嘘なのか……?」
一向に装置が見当たらないことに、モールダマの発言自体が嘘だったのではと疑い始めるゲイン。
……だが、嘘をつく余裕があるのならば、ギガゾンビにでもスパイセットで映した映像を送信するなりのアクションがあり、とっくに自分は胴体と首がサヨナラをしてるはず。
ならば、やはりモールダマの発言は真実と捉えて支障のないものであり、電車に装置が設置されているのは確かなのだ。
「だがなぁ……車内にない以上、どこに装置が仕掛けて………………………………ん、車内? 待てよ……」
確かにモールダマは“電車”に隠されていると言った。
だが、その設置場所は車内に限定していなかった。……言っていたのは、あくまで“電車”のどこかに隠してあるということ。
ならば、車内に存在しない装置がある場所は…………。

「――ビンゴ、だな」
線路に降りたゲインは、そこにある見慣れた装置を見て思わず顔が綻ばせる。
装置の隠してある場所――それは、二両目の電車の下部、本来ならばモーターなどが設置されている部分であった。

21 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 23:02:55 ID:3vzjdE8G
原作未見なのにいつの間にかゲインがお気に入りキャラな俺

支援!

22 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:03:32 ID:ME+D0JPF
「さてと。これで件の装置も見つかったわけだ」
そんなわけで、亜空間破壊装置を見つけたゲインは、その手に持つウィンチェスターの引き金を――――
「――というわけにもいかないよな」
銃口を装置から逸らすと、ゲインは苦笑する。
――確かに装置の設置場所を突き止めた以上、装置を破壊することは容易だ。
だが、つい2,3時間前にモールの装置を破壊してしまった以上、立て続けに装置を破壊してしまってはギガゾンビに怪しまれる可能性がある。
ここは、別の誰かに事故に見せかけて破壊してもらうのが最適なのだろう。
そう、これから見つけなければならない信頼できる仲間の誰かに。
幸い、装置が設置されている電車は移動する機能を持っており、たとえ駅が後に禁止エリア化されても、線路上で待ち伏せして破壊することが出来る。
今回はどこに装置があるのかを確認できただけでも御の字だろう。
ゲインは自らが書いたメモに、電車の亜空間破壊装置の位置を書き加えると、ホームへとよじ登った。
そして、ホームの掲示板に書かれた時刻表を見ると、0時30分から4時間置きに列車が運行しているのが分かる。
「……てことは次の発車は4時半か」
出来ることならば、それまでに志をともにする仲間を見つけて、その仲間に破壊してもらいたい。
「タイムリミットまであと1時間弱……。躊躇ってる時間は無いな」
時計を見やると、ゲインはホームを後にした……。


――仲間を探す。
そうは言っても、たたでさえ参加者が少なくなっている現状、簡単に見つかるわけではない。
駅を出て、駅前の商店街を歩いていたゲインは、人の気配を探るべく細心の注意を払っていた。
「いきなりツジギリでバッサリ――なんてことになったら洒落にもならないしな……」
夜の街は、街灯も疎らでいつどこで何が飛び出てくるか分からない。
それが、仲間になりうる参加者ならば万々歳だが、殺戮を好む参加者ならば最悪の事態だ。
そのどちらの可能性も考えながら、ゲインは歩いていた。
そして、そうやって歩いていると彼は一つのこじんまりとした店の前でふと立ち止まる。
「……カフェか」
少し古いたたずまいのそれは、きっと女性とともに訪れれば、素敵なひと時が送れる事だろう。
――当然、今のような状況ではそんな機会など得られる筈もないが。
彼はそんなことを考えつつ、そのドアを開く。
そのドアの向こうに仲間と呼べるようになりそうな参加者がいることを望みつつ。
すると、ドアに付いたベルがなる中で、彼が見たものは……。
「……おっと、これはこれは……」
店の奥、ゲインの立つ位置の丁度正面に金髪に黒衣を纏った幼き少女が立っていた。
その手には、なにやら黒光りする斧のようなものを構えたままで。
だが、相手は女性と分かったのなら話は早い。
どんな状況であれ、ゲイン・ビジョウが初めて会った女性にすることは唯一つだ。
「……やぁ、こんな夜更けにこんばんは。小さなご婦人」

23 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/31(土) 23:03:41 ID:3vzjdE8G
支援で誤爆orz
本当にすみません、吊ってきます……

24 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:05:10 ID:ME+D0JPF


フェイトの大親友である高町なのは。
その両親である士郎と桃子は、翠屋という地元でも評判の喫茶店を経営していた。
勿論フェイトも、その店になのはや学校の友人であるアリサやすずかとともに何度も訪れ、そしてその度に楽しい談笑をして時を過ごしていた。
そう、それは何者にも代えがたく、甘く、優しく、そしてもう二度と作ることの出来ない思い出…………。
ホテルから離れ南下し、イイロク駅方面に向かっていたフェイトはその甘美な思い出を思い出そうとしているかのごとく、喫茶店に吸い寄せられるように入っていた。
「なのは…………」
その彼女にとっては特別な意味を持つその名前を呼びながら、彼女は窓から零れる月明かりに照らされた店内のカウンターに触れる。
目を瞑ると浮かぶのは、自分という他とは異なる存在を優しく受け入れてくれたアリサやすずか、義母や義兄、そしてなのはの笑顔。
あの頃の自分がどれだけ幸せだったのかを改めて認識する。
そして、そのままカウンターのテーブルを撫でていると、彼女はふと何かの紙切れのようなものを触った。
「……何だろう」
その紙切れを拾ってみると、それにはどうやら伝言のようなものが書いてあるようだった。

――朝比奈みくるは無事です。ここには戻りません

朝比奈みくる……その名前にフェイトはかすかに聞き覚えがあった。
その名前を聞いた場所。
それは、あのギガゾンビが行っている放送であり、ということはみくるという人物は既に――――
「……………………」
メモを残した当時は“無事”だったのかもしれないが、結果としては彼女(彼?)もまた既にここにはいないということになる。
……その人物が一体どんな風にしてここで行動を起こしてきたかどうかはフェイトの知る由ではない。
だが、彼女もまた、このバトルロワイアルという狂ったゲームに巻き込まれて死んでしまったことは確かだ。
そう、それはなのはやはやて、ヴィータ、カルラ、タチコマ、それに恨むべき敵であった桃色の髪の少女も勿論同じこと。
ならば、彼女がするべきことは唯一つしかない。
「……もう、これ以上ギガゾンビの好き勝手にはさせたくない……。あなたもそう思うでしょう?」
『Yes,sir』
黒き戦斧は、力強く答える。
そして、その戦斧は普段の寡黙さからは珍しく、間髪いれずにフェイトへ声を掛ける。
『Sir』
「どうしたの、バルディッシュ?」
『There are someone approachig here outside of this store(店の外にこちらに接近する何者かがいます)』
バルディッシュのエリアサーチによる結果の報告。
フェイトはそれを聞いて、立ち上がるとバルディッシュを入口に向けたままでそちらの方を見据える。
目を閉じて耳を澄ましてみると、確かにこちらに近づく足音が。
その足音は確実に大きくなっている。
さらに、足音は大きさがピークを迎えたところで――具体的には、喫茶店入口前でぴたりと止まる。
「……………………」
正面を見据えるフェイトの顔に一筋の汗が流れる。
一体、誰がここに入ろうとしているのだろうか。
助けを求める者か? 志を同じくする同志か? それとも殺戮を求める者なのか?
しかし、どれにしてもフェイトがここで退く気は全くない。
相手が誰でどんなアクションを起こしてこようと、彼女にはそれを全力で受け止める覚悟は出来ていた。
その覚悟こそが、このゲームを止める為に必要な行動であると彼女は知ったから。
そして、ついにドアが開くと――――そこにはショットガンを手に持ったコート姿の褐色の肌の美丈夫が立っていた。
「……やぁ、こんな夜更けにこんばんは。小さなご婦人」


25 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:06:46 ID:ME+D0JPF
目の前の男は、肩にショットガンを抱えながらも、友好的な口調で自分に挨拶をしてきた。
今のところ、その銃を自分に向けようとする気配は無い。
それを確認すると、フェイトはバルディッシュを下げて返事をする。
「こんばんは。……えっと…………」
「ゲインだ。ゲイン・ビジョウ。以後お見知りおきを」
恭しく頭を下げながら、男は名を名乗る。
――相手に名前を名乗られた以上、自分も名乗らなくては無礼になる。
例えこのような場所であっても、かつて家庭教師だった女性に教わったその礼儀作法を蔑ろにする訳にはいかない。
「こんばんは、ゲイン。私はフェイト・テスタロ――ううん、フェイト・T・ハラオウンです」
「フェイト、か。いい名前だ」
「ありがとうございます」
2人は距離を置いたまま、そんな会話を続ける。
すると……。
「さて。そろそろ本題に入りたいのだが……」
と、ゲインの表情が不意に今までの穏やかなものから、険しい面持ちに変わる。
「フェイト、君に簡潔に尋ねる。……お前さんはここからエクソダスをする気はあるか?」
「エクソダス……ですか?」
エクソダスという聞いたことのない単語にフェイトは戸惑う。
「あぁ。何か強い力を持った連中に束縛された状態から脱出して希望ある未来を目指す、それがエクソダスだ。俺が言っている意味が分かるかい?」
強い力を持った連中――この場合は勿論、ギガゾンビを指すのだろう。
そして、彼の束縛からの脱出という事は即ち――――
「つまり、ゲインはここから脱出しようとしているのですか?」
「あぁ、そうだ。俺はエクソダスの請負人として、それを成し遂げようとしているところだ」
そう言うゲインの目には確かに、なにやら確信じみたものが映っている。
まるで、既に脱出するための手立てを見つけたかのように。
すると、フェイトはメモを取り出し、そこにペンで文字を書くと、それをゲインに見せる。
『盗聴されている可能性があるので筆談で尋ねます。――脱出方法を知っているのですか?』
ゲインは頷くと、そのメモに自分のペンを使って返答を書いてゆく。
『脱出に繋がるかなり重要な情報を握っている。協力をして欲しい』
その答えを見て、フェイトは脱出への希望を見出し、綻んだ顔で思わずゲインを見やる。
すると、ゲインは力強く頷き、笑顔になる。
「――というわけなんだが……俺と一緒にエクソダス、するかい?」
彼の言うエクソダスが、フェイトの目指すものと同じである以上、断る理由はない。
答えは勿論、決まっている。
「はい、ゲイン。喜んで協力します」

26 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:08:04 ID:ME+D0JPF


フェイトという少女、見た目はまだアナ姫くらいかそれより少し上かくらいの幼いものであったが、相当しっかりした性格のようだった。
最初から首輪に盗聴機能がついていると踏んで筆談を始めたのも、中々の機転であったし、その礼儀正しく落ち着いた口調は歳不相応のものだ。
そして、そこに加え更に……
「なるほど、魔術ねぇ……」
フェイトに即興で作ってもらった脱出に関する考察メモを読んで、ゲインは改めて目の前の少女に感心していた。
「それじゃ、フェイトも魔術を使えるってことか」
「――えぇ。……とは言っても、大部分の魔術はこのバルディッシュのようなデバイス無しでは使えませんが」
「バルディッシュ……この斧のことか」
『Yes』
「――うおっ! 会話する機能があるのか、これ!?」
いきなり男の渋い声を発した斧に、ゲインは違う意味で驚く。
「……そういえば、今さっきフェイト“も”と言いましたが、ゲインは他に魔術を使う人を見たことがあるのですか?」
「ん? まぁ、あれが君の使う魔術と同列なのかどうかは分からないけど、一人そういう参加者と出会った。……いや、いたと言うべきなのかもな」
炎を弾丸にして発していた獅堂光は既にこの世に存在しない。
自分が意識を失っている間に、どこかで命を落としてしまったのだ。
「……すみません。何か悪いことを聞いてしまったみたいで……」
「いや、いいんだ。君が気にすることはない。悪いのはあのギガゾンビという男なんだからな。――それよりも、だ。俺のメモには目を通してもらえたかい?」
「――はい。全ての考察についてざっと読んでみましたけど…………」
そこで、フェイトは再びメモ用紙を使って、筆談を再開する。
『首輪の盗聴機能が、大きな音を関知することで故障するという話は確証のある話ですか?』
フェイトはそう書き終えるとゲインの顔を見やる。
すると、ゲインはペンを走らせて答えた。
『この話をツチダマから聞きだした俺が、今でもまだ無事に生かされていることが何よりの証拠だ』
もし、あの時のような自分にとって不都合な話が盗聴されていたとすれば、それこそギガゾンビは慎重を期してゲインを遠隔操作で爆殺するはずだ。
それなのに生かされているという事は…………。
「確かにそうですね。……なら、きっと私の首輪の盗聴機能も故障しているはずです」
「何か大きな物音がする出来事にでも巻き込まれたのか?」
「はい。色々ありましたから…………」
フェイトの顔が暗くなるのを見て、ゲインも何があったのかを大体察する。
故に、余り多くは聞かない。
そして彼はその話題を避けるように、次なる問いかけをフェイトにした。――筆談ではなく口頭で。
「――首輪といえば、トグサっていう参加者について心当たりはないか? どうやらそいつも首輪に関して何らかのアクションを起こそうとしてるみたいなんだが……」
「トグサ………………あ、そういえば……」
「知ってるのか!?」
ゲインは、思わず身を乗り出してフェイトに聞き質す。
そんなゲインを見て、フェイトは頷くものの、顔はやや暗い。
「直接知っているわけじゃありません。……私の友達のタチコマが信頼できる仕事仲間だったと言っていただけで……」
タチコマ――確か少し前の放送で死亡者として呼ばれた名前だ。
そして、そのタチコマを友達と呼ぶという事は……。
「……こっちも変な事を聞いて悪かった。やなことを思い出させたみたいだな」
「いいえ、あなたこそ気にしないでください。それに私もいずれそのトグサという方に会おうと思っていたので……」
悲しい色を瞳に映しながらフェイトはゲインに寂しい笑みを返す。

――ミサエに負けず劣らず強いご婦人だ。

ここに来るまでに様々なことを乗り越えたであろう目の前の少女を見て、ゲインは改めてそう感じた。


27 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:09:27 ID:ME+D0JPF
「んで、話は変わるが、肝心の脱出方法についてはどう思った?」
「――はい。亜空間破壊装置についての情報が正しいのだとすれば、これはきっと脱出の鍵になると思います」
喫茶店内。
相変わらず話を続けるゲインとフェイトは、いよいよ本題に入っていた。
「装置全てが破壊されて、この空間が外部と接することが出来るようになれば、そのタイムパトロールが介入したり、もしかしたら時空管理局も干渉する余地が出てくるかもしれません」
「時空管理局、だと?」
聞きなれない言葉に、ゲインは思わず問い返す。
すると、フェイトはそんなゲインの問いに丁寧に答え始める。
「タイムパトロールが時間軸を管理する組織であるとすれば、時空管理局はこの世に並列して存在するあらゆる世界を管理する――いわば平面軸を管理する組織です」
――平面軸を管理する。
その言葉はあまりに突拍子もないものであったが、自分の知るシベリアや、ヒカルの知るトーキョー、ミサエの知るカスカベがそれぞれ違う世界なのであるとすれば、その意味もおのずと分かってくる。
ゲインは頷くと、話を進める。
「なるほどな。……とにかく外部との接触が行えれば希望は見えてくると考えてよさそうだ」
「はい。それは間違いないと思います」
その希望の光が見えるまで、残っている壊すべき亜空間破壊装置は3つ。
それがあるのは、A-8の温泉施設と、B-7、C-7の境目にある寺、そして……
「あそこの駅に停まってる電車に……その装置はあるんですよね?」
「あぁ。もう既に俺が確認済みだからそれは間違いない」
では何故、確認しただけで壊さなかったのか?
ゲインがその理由について簡潔に述べると、フェイトは何かを決意したように彼に向き直った。
「つまり、ゲイン以外の誰かが装置を破壊すれば、ギガゾンビに勘付かれにくくなるんですよね?」
「ま、そういうこった。しかも、出来れば意図的な破壊じゃなくて、偶然や事故を装えれば最高なんだが…………」
「――なら、電車の装置の破壊は私に任せてもらえませんか?」
その名乗り出に、ゲインは思わず驚き、フェイトの顔を見やる。
すると、既に彼女は固い決意を胸に秘めたような表情をしており……
「……いいのか? もしかしたら意図を勘付かれてドカンかもしれないんだぜ?」
「そんなことで一々怯えていたら何も始まりません。それに、目の前にやるべき事があるのにそれから逃げるなんてこと、私には出来ない」
断言口調で語られる言葉に対し、ゲインはそれを断る術を持っていなかった。


28 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:10:31 ID:ME+D0JPF


「……これが亜空間破壊装置」
駅ホーム下。
線路に下りたフェイトは電車の底部を覗き込み、装置の存在を確認した。
その傍らにいるのはバルディッシュのみで、ゲインはいない。
破壊の傍に2度も立っていては、怪しまれる可能性があると踏んだ彼の判断だった。
彼は現在、駅付近のビルの一室から双眼鏡を使って、彼女の様子を見守っているはずだ。

――装置を壊す、って言ってるが、それができるだけの武器や力は持ってるのか?
――デバイスを介した魔法なら、装置どころか建物一つを破壊することも可能かもしれません。
――そ、そりゃスゴいな……。
――出来るだけ不自然じゃないように、事故や偶然を装えばいいんですよね?
――まぁな。

そして、彼が見ているであろうビルの方を見やりながら、フェイトは駅へと向かう間際に交わしたそんな会話を思い出す。
そう、必要なのは不自然さの隠滅。
それを行う為には、ピンポイントでの装置の破壊ではなく、もっと広範囲の破壊――それこそイライラが募ったからという理由で行ったような滅茶苦茶な破壊を行うことが一つの手として考えられるわけで――
「それじゃ、バルディッシュ。全力全開でいくよ」
『Yes,sir!』
掛け声と共に、カートリッジが一発ロードされ、金色の魔法陣がフェイトの足元に現れる。
そして、彼女が持つバルディッシュはその形状を斧から光の刃を持つ鎌のように変化させた。
『Haken Form』
これが、近接戦闘に特化したバルディッシュの姿、ハーケンフォーム。
そして、その鎌を構えたフェイトは、一呼吸置いて、それを一気に振り下ろした。
「はぁぁぁっ!!」
『Haken Slash』
大振りに振り下ろされたその鎌は、亜空間破壊装置を含む電車の2両目を熱した飴のように容易く縦断、それから少し遅れて列車は轟音を立てて、文字通り二つに“折れた”。
勿論、これによって、ここの亜空間破壊装置は完璧に破壊されたわけである。
「……これで、残りは2つ…………」
フェイトは目の前で鉄塊と化した物体を見ながら、感慨深げに呟く。

――そう、残る亜空間破壊装置はあと2つ…………。

29 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:13:26 ID:ME+D0JPF


フェイトによる電車の装置の破壊後。
2人は、今後の事を話すべく再度喫茶店にて合流した。
「……それにしても、列車ごと一刀両断とは……君も無茶をする」
「不自然さがないように壊せと言ったのはあなたでしょう」
「だからって、まさか俺だってあんな風にするとは思わなかったしなぁ……」
身の丈ほどある光の鎌を自在に操り、巨大な車両を破壊する。
――ゲインの知る限りでは、そのようなこと戦闘用のシルエットマシンやオーバーマンでない限りできないような芸当であった。
そんな芸当を生身のまま、しかも自分より遥かに年下の少女が行ったのだから、ゲインは驚くばかりだ。
「これで残りの動いている装置は2つになったんですよね?」
「あぁ、そうだ。残るのは寺と温泉の2箇所のみ。……だが、ここに俺たちは迂闊には近づかない方がいいだろうな」
「そうですね……」
ゲインの言葉にフェイトも賛同する。
「ここで功を急いて、ギガゾンビに俺達の目的がバレたら身も蓋もない。出来れば他の2箇所は、俺達と目的が一緒の仲間に協力して破壊してもらいたいところだ」
「仲間……」
「そうだ。少なくとも、このメモを残したトグサって男やその仲間と思われる連中は、文面から察するにそんな意志を持った連中に違いない。そいつらと上手い具合に接触できれば……」
メモに書かれていた名前の殆どは、まだ放送で名前を呼ばれておらず、この地のどこかで生きている。
ならば、彼らが生きているうちに接触をして、協力を仰ぎたいところだった。
そして、ゲインはまだ見ぬトグサらとの合流に思いを馳せていると、フェイトもまた、仲間について口を開いた。
「――それに、仲間ならまだいます」
「何……? それは本当か? 一体どんな連中だ?」
「二人組の男女で、一人はレヴィっていうちょっと口が悪いけど、強い女の人で、もう一人はゲイナーっていう――」
「ゲイナーだと!? あのゲイナー・サンガか!?」
不意に知人の名前を聞いたゲインは、思わず聞きなおす。
すると、フェイトは頷き、そして何かを思い出したかのように口を開く。
「そういえば、ゲイナーがゲインって名前を何度か口にしていました……。ごめんなさい、今までそのことを思い出せずにいて……」
「いや、そのことは今はどうでもいい。……で、あいつは無事なのか?」
「えぇ。私が二人と別れたときは、元気でした」
「別れた……って、何かあったのか? あのゲイナーと。……! まさかあいつ、君に何か性的に酷いことを……」
「ち、違います! 違いますから!!」
フェイトは顔を赤くして、全力でそれを否定する。
そして、ゲイナー達と一度別れた理由について詳しく話すと、ゲインはやっと納得したように頷いた。
「――なるほどな。それじゃ、朝6時にあの駅であいつとは合流するってわけか」
「はい。無理でも電話を入れることになっています」
――ということは、つまり駅にいればどちらにせよゲイナーと接触することができるようだ。
ゲイナーがゲイン同様に脱出への手がかりを探している以上、彼とその仲間であるというレヴィは協力者になりうる人材だ。
ならば、ゲイナーとは是非接触を試みるべきであろう。
現在、時刻は4時を回ったところ。
6時にゲイナーと接触するために駅へ向かうとしても、まだ周囲を見て回る余裕は残っている。
時計を見ながら、そんなことを考えていると、フェイトが声を掛けてくる。
「あの……ゲイン。一つ聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「……ん? あぁ、勿論。ご婦人、しかも仲間の質問とあらば、趣味からスリーサイズまで何なりと……」
「いえ、そういうのではなくて……。あの、私の知り合いも、ここにいるんです。その人について知っているかどうか聞きたくて」
「君の知人か。……どんな人だい?」
「はい。名前はシグナムといって、ピンク色の髪をポニーテールにした凛々しい女の人で――」
――剣を得意武器としていて、場合によっては甲冑のようなものを身に纏っている。
そこまで聞いて、ゲインは思い当たる節が一つだけあった。

――……の、ぶたの……で……ひかっている……あれ、を……とってく……れ

髪はざんばらで、凛々しかったであろうその顔も酷く損壊、全身を血に濡らした亡者のようないでたちであったが、ゲインには何となく分かった。
彼女こそが、フェイトの言う清廉な守護騎士シグナムなのであろう、と。
シグナムという女性に一体何があったのかはゲインの知る由ではない。
知るのは、彼女が二人の参加者を無残な方法で殺害した事実のみ。
非情な言い方になるかもしれないが、これも現実なのだ。


30 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:15:20 ID:ME+D0JPF
「思い当たる節が一つだけある。……だが、それはお前さんにとって聞く覚悟が必要だ。それでも聞きたいかい?」
ゲインの問いに、フェイトはただ黙って頷く。
「……そうか」
ゲインは彼女の意志の固さを確認すると、自分が知るその事実を語り始めた…………。



――シグナムは参加者を殺害する側に立っており、ゲインの目の前で壮絶な最期を遂げた。
そんな話を聞いて、フェイトは驚き半分、納得半分といった思いだった。
自分の知る心優しいあのシグナムが、外道に堕ちたことは衝撃的であったが、それと同時に闇の書事件にてはやての命を救うために彼女が行ってきたことを思えば、ある種納得のいく行動だったのかもしれない。
きっと今回もはやての死を聞いて、彼女の中で何かが壊れてしまったのだろう。
思えば、ギガゾンビは優勝者には一つだけ願いをかなえてやるといった甘言を漏らしていた。
主を失った騎士はその言葉を信用して、藁をも掴む思いでがむしゃらに動いていた可能性がある。
しかし、これはあくまで憶測。
実際に彼女が何を考えていたかは、最早知る術もない。
今、彼女に判ることと言えば……
「これで私一人、か…………」
なのは、はやて、ヴィータ、シグナム。
これで、元の世界での知人は自分以外に誰もいなくなってしまった。
――それだけが、今彼女が手に入れた揺るがない事実だ。
「教えてくれてありがとうございます、ゲイン」
「……もう、大丈夫なのか?」
「完全に……とはいきませんが、大丈夫です」
――とは言うものの、フェイトだってまだ少女なのだ。
元々の知人の全滅、という事実を知って、全く動揺しないわけがない。
だが、それでもここで立ち止まるわけにはいかない。
折角、ゲインが脱出の為の情報を持って、仲間になってくれたのだ。
この機を逃すわけにはいかない。
後ろを振り返る前に、前を――未来を見なくてはならないのだ。
バトルロワイヤルという闇を打ち砕く光を手に入れるために。
そして、そんなフェイトを見て、ゲインは感心したように声を掛ける。
「……強いな、フェイトは」
「私は強くならないといけませんから。……死んでいったカルラやタチコマ、はやてにヴィータ、シグナム……それになのはの為にも」
自分の為に死んでいった者達の為に、ゲームのシステムに無念にも殺されていった参加者達の為にも、自分は身も心も強くならなければならない。
強くなければ、今後の脱出など叶わないのだから。
「ゲイン。私も協力します。もっともっと強くなります。――だからあなたの作戦、必ず成功させてください」
フェイトの真剣な眼差しに答えるのは、ゲインの力強い眼差し。
「俺は請負人だ。一度頼まれた仕事は、皆の希望を照らす為にも絶対に成功させて見せるさ」

31 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:17:10 ID:ME+D0JPF


(まったく……ヒカルといいミサエといい、何でここにはこんなに強いご婦人が揃ってるんだ)
ゲインは、目の前でお茶を淹れている少女の背中を見ながら、今まで出会った女性の事を思い返していた。
思えば、自分が出会った女性達はことごとく心が強い者ばかりだった。
それは、元々そういう人達が多く集められていた為なのか、このゲームの中で心が鍛え上げられていったのか、それとも自分の女性運のせいなのか。
その真相はわからないが、今自分が行おうとしていることを考えれば、それは好都合だ。
エクソダスには、勿論人員や技術、それに状況判断力などといったものが重要となってくるが、その根幹を支えるのは、エクソダスをする一人ひとりの気の持ちよう。
そう、心が強い者が集まれば、それだけ脱出への道も拓きやすくなるのだ。
(中々頼もしい、小さなご婦人を仲間にひき入れることが出来た。朝まで待てばゲイナーの奴とも話が出来る。……さて、問題はここからか)
装置は残り二つとなり、フェイトに加えゲイナーを含めた二人とも近々合流予定……。
一見、順調に見えるゲインのエクソダス計画であったが、まだ大きな問題がある。
それが、やはりこの特殊な空間に並んで、自分達の脱出を拒む要因になっている首輪についての件だ。
ゲインは首輪の機能こそ知っているが、その機能の解除方法については未だ不明瞭なまま。
たとえ、亜空間破壊装置を全て壊してこの空間を外部に曝したとしても、自分達の命を首輪一つで操れる立場にあるギガゾンビの大きなアドバンテージは揺るがない。
エクソダスのためには、装置の破壊と同時に首輪の解除も必要不可欠なのだ。
そして、その解除に関して最も近い立場にいるであろう人物が、首輪に関する考察を書いたトグサという人物。
つまり、彼と接触することがエクソダス成功への近道になる。
「……なぁ、フェイト。少しいいか?」
「はい、なんですか?」
「これからの事についてなんだが……」
ゲインは、フェイトにこれからの行動方針について話をする。
――まず、6時まではこの周囲を歩き回り、仲間を探したり、脱出に関する情報を手に入れたりする。
――そして6時になったら、駅に向かってゲイナー達と直接もしくは間接的に合流、可能であれば寺か温泉の装置の破壊を頼む。
――ゲイナーにそれを任せた後は、連絡を取る手段を探すなり、直接市街を歩くなりして、トグサを合流を図る。
その内容を簡単に言うと、このようなものであった。
「そうですね。ゲインの言う方針で問題ないと思います」
「ま、問題はどうやってトグサって奴を探すかだな」
メモには、それを書いた当初は映画館に彼が向かう旨であったことが書かれている。
だが、それがいつの話であるかは分からない以上、その情報は不確かだ。
被害が拡大する前に一秒でも早く見つけたいとすれば、どのような方法が有効なのだろうか。
それを考えた時、ふと彼の脳裏に思い浮かんだのは、先程シグナムに殺された男の亡骸の傍に落ちていたデイパックに入っていたとある道具の存在。
“アレ”があれば、遠くにいる相手にも声を届かせることが出来る。
相手に自分の声が届きさえすれば、合流も叶いやすくなるだろう。
――だが、それは同時に優勝狙いの参加者にも自分の存在をアピールすることになる。
(希望と死が隣り合わになった道具かもな、アレは……)
ゲインがデイパックにしまったままの道具――拡声器について考えていると、フェイトはふと湯気の立つ湯のみを出してきた。
「……これ、他にお茶の葉が見当たらなかったので、申し訳ないですが……どうぞ」
「この香り……ヤーパンティーか。――って、何だこの角砂糖の瓶は?」
「あ、ご、ごめんなさい!! いつもの癖で……」
ヤーパンティーは砂糖や牛乳をいれずに飲むのが普通と聞いていたゲインには、そんなフェイトはおかしく見えた。
そして、慌てて瓶を別の場所へ移すフェイトを見ながら、ゲインは湯飲みを顔に近づけた。
――すると、彼はその湯のみの中に、一つの物体を見つけた。それは……
「お、チャバシラ」
チャバシラといえば、吉兆の証と聞く。
……ならば、このチャバシラは一体、ゲインにどんな幸運をもたらしてくれるのだろうか。

ゲインは茶を飲みながら、これからの事について思いを馳せた。

32 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:18:50 ID:ME+D0JPF
【E-6・駅前の喫茶店/2日目・早朝】
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、ギガゾンビへの怒り
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[道具]:デイパック、支給品一式×10(食料3食分消費)、鶴屋さんの首輪 サングラス(クーガーのもの)
     9mmパラベラム弾(40発)、ワルサーP38の弾(24発)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(25発)
     極細の鋼線 、医療キット(×1)、マッチ一箱、ロウソク2本
     ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
     スパイセットの目玉と耳@ドラえもん(×2セット)、13mm爆裂鉄鋼弾(21発) デイバッグ(×4)
     レイピア、ハリセン、ボロボロの拡声器(使用可)、望遠鏡、双眼鏡
     蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、ローザミスティカ(蒼)(翠)
     トグサの考察メモ、トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ 、『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[思考・状況]
基本:ここからのエクソダス(脱出)
1:フェイトと行動を共にする。
1:信頼できる仲間を捜す。
(トグサ、トラック組み、トラック組みの知人を優先し、この内の誰でもいいから接触し、得た知識を伝え、情報交換を行う)
2:しんのすけを見つけ出し、保護する。
3:エクソダスの計画が露見しないように行動する。
4:場合によっては協力者を募る為に拡声器の使用も……?
5:ギガゾンビを倒す。
※その他、共通思考も参照。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。
    :首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。
    :モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。
    :メモに電車での装置の位置が追記されました。

【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に中程度の傷(初歩的な処置済み)、背中に打撲、魔力大消費/バリアジャケット装備
[装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム、残弾4/6)、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、タチコマのメモリチップ
[思考・状況]
基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。
1:ゲインと行動を共にする。
2:ゲームの脱出に役立つ参加者と接触する。
3:カルラの仲間やトグサ、桃色の髪の少女の仲間に会えたら謝る。
※その他、共通思考も参照。
[備考]:襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。
    :首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。


33 :自由のトビラ開いてく ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:19:46 ID:ME+D0JPF
[共通思考]
基本:信頼できる仲間を探す
1:6時までは駅周辺を探索する
2:6時になったら、ゲイナー・レヴィと合流、可能であれば装置(寺or温泉)及びツチダマの破壊を頼む。
3:ゲイナーらと別れた後は、トグサやその知人達を探す。


【運転士ダマ@ドラえもん 機能停止】
【電車の亜空間破壊装置 機能停止】

※列車運休のお知らせ
本日未明、フェイト・T・ハラオウンの襲撃を受け、車両が著しく破壊された影響で4時30分発の列車の運行が絶望的となりました。
運転再開時刻は不明の模様。
詳しくは、お近くのツチダマ係員に(ry

34 : ◆lbhhgwAtQE :2007/03/31(土) 23:56:07 ID:ME+D0JPF
下記の部分を訂正いたします。

>>25

「エクソダス……ですか?」
その言葉は、どこかで聞いたことのあるものだった。
あれは確か、あの眼鏡の少年と出会って間もない時に……

――平たく言えば、みんなでここを脱出してさっさと帰ろうってことかな。

そんなことを言っていたような気がした。
即ち、ゲインの言っていることの意味は――
「つまり、ゲインはここから脱出しようとしているのですか?」


>>32

[思考・状況]
基本:ここからのエクソダス(脱出)
1:フェイトと行動を共にする。
2:信頼できる仲間を捜す。
(トグサ、トラック組み、トラック組みの知人を優先し、この内の誰でもいいから接触し、得た知識を伝え、情報交換を行う)
3:しんのすけを見つけ出し、保護する。
4:エクソダスの計画が露見しないように行動する。
5:場合によっては協力者を募る為に拡声器の使用も……?
6:ギガゾンビを倒す。

35 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:08:14 ID:1TX5/KdD
ネコという動物の主な特徴についてご存知だろうか。
俊敏性に優れ体は柔軟、夜目が利き鼻も利くが、何よりも優れているのは聴覚である。
それはネコ型ロボットであるドラえもんも例外ではなかった……あくまで、なかっ「た」だ。
とある事件から彼の聴覚は普通の人間並みまで落ち、
常人の20倍の嗅覚を持つ「強力鼻」、周囲の物体を感知する3対の「レーダーひげ」も故障中。
つまり、彼の五感は普通の人間と変わりはしない。
それでも、今までドラえもんはそれで困ったことはあまりなかったのだ。

そう――今までは。



36 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:09:00 ID:1TX5/KdD

私は思わず歯を噛み締めていた。私が人間なら、確実に音を周囲に漏らしているだろうと思うほどに。
だが現実には音は出ていない。なぜなら、私は魔道書だから。

「なにしてるの! ぐずぐずしてる時間なんてないんだからね!」

活発そうな女学生――確か、ハルヒと言ったか――が声を上げる。
その言葉に、私は少なからず安堵した。二人きりになっていればきっと殺されていたから。
それでも、苛立ちはこの身から離れはしなかった。

――ふふ、でもあなたも酷いわねぇ、『魔法の本』さぁん?
あなたが強情張ってないで何か喋ってれば、この子を逃がせたかもしれないのにねぇ……
ま、そうなればあの子達みんな皆殺しになってただけだろうけど――

言葉を思い返して、再び感情が爆発しそうになる。
私には、何も出来ない。誰かに話しかける?できたらとっくの昔にしている。
今の私が話しかけられるのは、持ち主だけ。
こんな時に限って、プロテクトの解除は最悪な部分から進んでいた。
……この書に眠る、数多の魔法から。

「……ちょっと待って。外に誰かいるみたいねぇ」

物思い……というよりは寧ろ怒りに沈んでいた私を現実に引き戻したのは、その怒りの対象だ。
どうやら外にいる人物に気付いたらしい。他の二人と一体に先んじて捉えたようだ。……当然の摂理ではある。
私がユニゾン・デバイスである以上、融合された者は身体能力が上昇する。
普段は歩けないものの私を使うことで健常者同様に動いた主はやてがいい例だ。
デバイスと使用者、二人分の力が加算されるのだから当たり前だが。

「……僕には見えないなぁ」
「僕も……」
「私も見えないわね」
「ま、それもそうでしょうねぇ。
 実はね。私は、魔法使いなのよぉ」

見えないと声を上げる三人に対して、得意げに人形はそんなことをほざいている。
いったい誰の力だと思っているのだ。
そんな私の感情を露知らず、ハルヒという女学生は喜色満面といった様子だ。

37 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:09:47 ID:1TX5/KdD

「ほ、ホントに! 見せて見せて!」
「ほら」
『Photon Lancer get set』
「す、すごい……!」

こんな人形に従っているこの身を焼き尽くしたい衝動に駆られたが、できるはずもなく。
私にできたのはフォトンスフィアを浮かび上がらせて女学生を喜ばせることだけだ。

「ねえ、それでアルちゃんを探したりとかできないの!?」
「それは無理ねえ。
 私、そういうの得意じゃないもの」

相変わらずよくもまあぬけぬけと。貴様が殺したのだろう。
そのまま人形は続けていく。虚りに装飾された言葉を。

「その代わり、攻撃魔法とかは得意だから。
 だから皆はここに残ってなさい。私が外にいる人達を見てきてあげるわよ。
 私を襲った奴が来たのかもしれないしぃ」
「……逃げ回ってたのに大丈夫なの?」
「前に襲われた時は不意打ちで手ひどくやられちゃってねえ。
 それで、逃げ回りながら回復に努めてたってワケ。
 でももう回復したし、ちゃあんと警戒してるから大丈夫よぉ」

人形がぺらぺらと喋った内容を要約すると、一人で外にいる人物を見てこようということだろう。
……悪寒が走る。こんなことを言い出した理由なんてはっきりしすぎている。

「何か爆発音とかが聞こえたら、病院のどこかの部屋に隠れること……いいわねぇ?」

その後青狸やのび太少年と適当に会話があったものの、結局人形に誤魔化されて終わった。
そのまま見えないように笑みを浮かべて、人形は外へと歩き出す。
これからこの人形が何をするかなんて、分かりきってる。
だから。
お願いだから、逃げて――



38 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:10:34 ID:1TX5/KdD

そんなリインフォースの悲哀と憤怒など露知らず。

「あ〜、やっと到着」

ん〜、とセラスは満月の中伸びをした。
もっとも、到着と言うには少々遠い距離だ。まだ数百mは離れている。
劉鳳とジャイアンが起きていれば、「本当に着いたのか?」と声を上げていただろう。
この夜闇の中でも軽々と視認できる辺り、さすがは吸血鬼と言ったところか。

だから、中から出てきた相手を視認できたのも当たり前のこと。

(……うわ、すご。もう慣れてきたけど)

セラスの水銀燈――もっとも今の姿はリインフォースのものだが――への第一印象がそれだった。
主にファッションセンスとか背中の翼とか真っ赤な目とか。あと、胸がでかい。

(もしかして、お仲間?)

この場合、お仲間とは吸血鬼などそういった類の物を指す。
つまり、ろくな者ではないという判断でもある。
できるだけ悟られないように身構えながら、セラスは正面から歩み寄ってくる相手を凝視した。
しかし、水銀燈はというとセラスの存在が目に入っていないかのように歩いてくる。
鞄を引き摺りながらのんびりと。

(気付いてない……割には、まっすぐこっちに来てるし)

相手の意図を測りかねて唸るセラス。無用心なのかそうではないのか分かりにくい。
もっとも、種を明かせば単純な話。水銀燈としてはただテストをしたかっただけ。
相手がゲームに乗っているかどうか、ちょっとした確認である。
怪我人を二人引き連れている時点で乗って無さそうだと思ってはいたが、
念には念をというやつだ。
結局セラスが何をすることもなく両者の距離は詰まっていき、
だいたい20m程度のところで水銀燈は立ち止まって、口を開いた。

「こんばんはぁ」
「こ、こんばんは」

慌ててセラスは挨拶を返した。もっと他に言うことがあると思うが。
どうしようかセラスは考え込むしかない。劉鳳達を起こすべきなのだろうか……
一方水銀燈はというと、リアカーへと視線を移して……こちらもリアカーを見つめたまま黙り込む。
微妙な空気といびきだけが流れるのに耐えかねたのか、セラスは慌てて口を開いた。

「あの〜、劉鳳さんの顔になんか付いてます?」
「そうね……
 その様子だと、貴女って、ゲームに乗ってないのよねぇ?」
「?」

水銀燈は劉鳳の制服を見て、考え込んでいただけ。
真紅のローザミスティカを持っていったという男はこいつではないのか、と。
だから、迷っていた。あの女の言葉は真実なのか、それとも虚言か。
力を温存するべきか、それとも力ずくで奪い取るべきか……?

――もっとも、病院に辿り着く前に追い払うという結論は決定済みだったが。

「その制服着てる奴は、人殺しよ」
「は、はあ!?」

39 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:11:20 ID:1TX5/KdD

そして出した方法が、適当に嘘でも吐いてみること。
当然説得力の欠片もない。いきなり見知らぬ他人からこんなことを言われて、素直に信じる馬鹿はいない。いないが。

「ちょ、ちょっと待ってって! なんか勘違いしてるんじゃ……」

驚いたり、困惑したりはする。セラスも例外ではなかった。
心の中で水銀燈はほくそ笑みながら、二の句を告げる。
……羽根を風に散らせながら。

「嘘だと思うなら、そいつを起こして聞いてみるぅ?」
「…………」

水銀燈はできるだけ無愛想な表情を取り繕っていた。いかにもその男を憎んでいます、といった様子で。
半身半疑ながらも、セラスが劉鳳を起こすために水銀燈から注意を逸らした、その瞬間。

『Blutiger Dolch』
「へ?」

周囲に撒き散らされていた羽根が、赤い刃へと姿を変えた。



40 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:12:08 ID:1TX5/KdD

「…………」
『マスター、二時です』
「……ん。あいつが戻ってきた様子は?」
『まだありません』
「……そう」

橋から少し離れた場所。
ぽつんと佇んでいた民家で寝転んでいた凛は、レイジングハートの声に目を開けた。
脇には皿などの食事の跡が残されている。

「……この格好も久しぶりかも」

そう呟きながら伸びをする彼女の姿は、いつもの赤い服を着た姿だった。
流石に仮眠をとる時まであんな格好をしたくはない、というのが主な理由である。
……魔力消費の削減という意味も、一応はあるが。

『これからどうしますか、マスター。
 もうしばらく仮眠をとるか、それとも……』
「…………」
『マスター?』

音が止まる。ただ電灯だけが、か細く点滅する。
レイジングハートの声に、凛は黙り込んでいた。その顔は、悲哀に満ちていて。
しばらくして、ぽつりと彼女は呟いた。

「悲しく……ないの?」
『…………』
「貴女の『マスター』は高町なのはでしょう、レイジングハート。
 私じゃ……ない」

いつも強気な彼女らしくない、弱気な言葉。
これだけ死人が出ている状況の中、何もできていなかったから。
自分の無力さを思い知って。自分がちゃんと使いこなせているとは思えなくて。

だから、こんな弱音を吐いてしまって。

『あなたは、脱出を諦めたとでも言うのですか?』
「え?」

そんな凛に返ってきたのは今まで聞いたことのない、強い口調。
目を瞬かせる凛を無視して、レイジングハートは詰問していく。

『答えてください!』
「あ、諦めてない」
『なら、できるだけ多くの人を助け出して、「マスター」の仇を討ってくれることに変わりはありませんか?』
「……う、うん」
『なら……今は貴女が私のマスターです、凛』

41 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:12:54 ID:1TX5/KdD

呆然とする凛。それっきり何をいう事もなく黙り込んだ。
もしレイジングハートが人間だったなら、口を尖らせてそっぽを向いていただろう。
うっかりでも、おっちょこちょいでも……結局、レイジングハートは凛の人柄に好感を持っていたから。
だから、彼女は言っていたのだ。『マスター』と。
昔ユーノに、そしてなのはに言っていた言葉を。

「……ごめん」

そうして、互いに話すこともなくただ佇んでいた、数分後。
突然、凛はハッとなったようにその顔を上げた。

『どうかしましたか?』
「水銀燈からのパスが切れた……何かあったのかも」

パスとは使い魔とマスターを繋ぐ、魔術的な繋がりの事だ。
もちろん遠くに行くということは、それに合わせて魔力供給の具合も悪くなることを意味する。
だが、それでもパスそのものが無くなることはない。一度生まれた互いの結びつきはそうそう消えはしない。
使い魔と主の関係とはそういうものだ……普通の、使い魔は。
だからこそ――レイジングハートは声を上げた。
今をおいて好機は他にないと。

『待ってください。話しておきたいことがあります』



42 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:13:39 ID:1TX5/KdD

リアカーが宙を舞う。
とっさにセラスによって投げ飛ばされたリアカーは綺麗に近くの家屋に叩きつけられていた。乗っていた二人ごと。

「い、いってぇ!」
「セラス、一体何が……」
「説明は後で!」

目覚まし代わりと言うにはきつすぎる衝撃に不満を上げる二人の不平不満は、
セラスによって一言で強引に終わらせられた。
目を擦りながら二人が視線を向けた先にいたのは……腹部から血を流しているセラス。
そして、空に舞う黒い天使だった。

「始めからこういう魂胆で……」
「人殺しを匿うような奴に手加減する義理も無いでしょ?」

いきり立つセラスの言葉と視線は、水銀燈にあっさりとあしらわれた。
この期に及んでも嘘八百を貫くあたりは流石と言ったところか。
もう躊躇わずにセラスが銃を抜いたのと、水銀燈が再び能力を行使したのはほぼ同時。

『Blutiger Dolch』
「っのお!!!」

夜天の書が言葉を紡ぐと同時に6つの赤い刃が浮かびあがり、敵を討つべく急襲する。
だがそれが本来の責を果たすことは無い。全てセラスのジャッカルに撃ち落とされ、宙で爆散する。
六点連射。吸血鬼の並外れた能力があってこそ成り立つ高速連射だ。
本当は、セラスは撃ち落とすことではなく敵を撃つことを優先するつもりだった。
一発貰う代わりに敵を倒せるなら問題ない。多少の負傷は吸血鬼なら平気だ。

……しかし、凶器が劉鳳たちを狙っていたとなれば話は別となる。

「お前は敵への攻撃に集中しろ! 自分の身ぐらい自分で守れる!」
「俺だってちょっとくらい……!」
「いいから無茶しないで休んで!」

次弾を装填しながらセラスは二人を怒鳴りつけていた。
ジャイアンは足を折ってまともに動けそうになく、劉鳳に至っては顔面蒼白。絶影も出せそうな様子は無い。
そもそもセラスが吸血鬼だからこそ水銀燈の刃を途中で撃ち落とすという真似が可能なのであって、
あの刃が奔る様子は常人にはまともに視認することさえできないのだ。
今の二人が防げるとはセラスには思えない。

『Plasma Lancer』

次に行使したのはフェイトの魔法、光の槍。
セラスは劉鳳たちの目前へと跳びながらも、高速で飛ぶ槍を次々に撃ち落としていく。
撃ち落とされたプラズマランサーはそのまま地面へと突き刺さり、

43 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:14:26 ID:1TX5/KdD

「ターン」

水銀燈が腕を振るのと同時に、セラス達へと再び狙いを定めた。
更に。

『Blutiger Dolch』

新たな血染めの刃が水銀燈の前面に展開する。その数4。
セラス達へと向き直った光の槍の数も4、そして再びジャッカルに込め直した弾の数は6。
明らかに、足りていない!

「二人とも、頭伏せて!」
「え」
「うおっ!?」

警告と同時に、セラスは片手でリアカーを引っつかんだ。劉鳳とジャイアンの頭をとんでもない質量が掠めていく。
四方から迫るプラズマランサーと、正面から迫るブラッディダガー。
それらを全て視界に納めたまま、セラスは右手でジャッカルを連射しながら左手でリアカーを振り回した。
赤い刃は全てセラスが振り回したリアカーと衝突して爆発し、
光の槍はジャッカルの銃弾によって軌道を逸らされる。
ジャッカルの弾、残り二発。それが何を狙うものかは言うまでも無いことだ。
完全にバラバラになったリアカーを放り投げながら、セラスは敵へとジャッカルの狙いを定めようとして。

「旅の鏡」
「え……?」

その口から、息とも声とも付かない音が漏れた。
劉鳳もジャイアンも、呆然とするしかない。

何も無い虚空から、水銀燈の腕が生えて。
セラスの手から、ジャッカルを奪い取っていた。



44 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:15:12 ID:1TX5/KdD

夜空に響く銃声と爆発音。
病院の玄関脇に隠れて覗いていたのび太とハルヒは、慌てて首を引っ込めた。
そんな二人に呆れたように声を掛けるのはドラえもんだ。

「隠れてる方がいいよ、二人とも。だいたい、ここからじゃ全然見えないじゃないか」
「そ、それはそうだけどさ……」
「冗談じゃないわ! SOS団新団員を放っておくなんて団長のやることじゃないわよ!」

ハルヒの脳内では、どうやら遠坂凛もとい水銀燈は団員認定されたらしい。
魔法使いという響きが大層気に入ったようだ。

「だいたいね、私達が目を離したからアルちゃんがどっかにいっちゃったんでしょ!
 おんなじ間違いをするわけにはいかないのよ、青ダヌキ!」
「!!!
 僕はタヌキじゃな〜い!!!」

ハルヒの言葉に激怒するドラえもん。
これで何回目か数える気にもならない騒動を尻目に、のび太は外を見つめ続けていた。
理由は簡単。彼は目が悪いため、注視しないとよく見えないから。

「なんかあの格好、どこかで見たような気がするなぁ……」

そして……はっきりと見たいものがあるから。



45 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:16:06 ID:1TX5/KdD

何も無いところから腕が生える。向こうでは、肘から先の腕が消えている。
そんな異様な光景から一番早く立ち直ったのは、セラスだった。

「あ、ちょっと待……!」
「待ってあげない」

セラスが咄嗟に反応するより早く、水銀燈は腕を引っ込める。
鏡を跨いでいた腕は元の場所に戻っていた……ただし、先程とは違ってジャッカル付きで。

「ふ〜ん、どれどれ……」
「づうっ!?」

そうして、水銀燈はジャッカルをセラスへと向けた。
銃声が奔り、鮮血が飛ぶ。苦悶の声が響く。

ただし、声は二人分。

予想以上の反動に、水銀燈は思わず指を押さえていた。
ジャッカルはというと、反動でどこかへと飛んでいってしまっている。

「い、いったぁ……!?」
「ふんだ。仮にもマスターの銃だもん、そうそう簡単に撃てるもんですか!」

指を赤くしながら呻く相手に、セラスは肩を押さえながら言ってやった。
とはいえ、セラス自身も分かっている。これは強がりに過ぎないことに。
ジャッカルを奪い取られた以上……もう、セラス達に飛び道具は無いのだ。

「言ってくれるじゃない……!」

水銀燈が目を吊り上げると共に、周囲に無数の光弾が浮かび上がり始めた。
それはまるで、夜空を染め上げる照明だ。もっとも、水銀燈の意志で自由に落ちてくる照明だが。
このまま放っておけば全滅は確実だろう。

「……あんまり使いたくなかったんだけどなぁ、これ」

そう愚痴りながら、セラスはデイバッグに手を突っ込んだ。
しばらくして取り出された手に握っているのはバヨネット。
メモ帳越しとはいえ、微かにセラスの肌が焦げるような匂いがする。

「二人とも、ここは私に任せて全力で走って」
「ふざけるな! そんな真似ができる……ぅ」
「ほら、叫んだだけで足にきてるし。武くん、悪いけど」
「分かった……けど、セラス姉ちゃんもちゃんと逃げてくれよな」
「大丈夫、まっかせなさい!」
「く……」

そうして、セラスは水銀燈へと向き直る。
その後ろから劉鳳を抱えたジャイアンが走り出した、その瞬間。

「それは困るのよ……旅の鏡」
「ぐっ!?」

再び水銀燈の腕が虚空から生えた。
反応する間もない。今度掴み取ったのは……劉鳳のデイバッグ!

「くそっ!」

46 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:16:53 ID:1TX5/KdD

とっさに劉鳳が生えた腕を掴もうとしたものの、間に合わない。
今度はデイバッグを奪い取って、腕が消える。
劉鳳のデイバッグを手元に引き寄せた水銀燈は、中から目的の物を取り出した。

「ふふ、見〜つけた」

笑みと共に取り出されたのは、赤く輝く宝石――ローザミスティカ。
水銀燈が何よりも追い求めていたモノ。

「貰っちゃった♪ 貰っちゃった♪
 真紅のローザミスティカ貰っちゃったぁ♪
 あんた達ったら本当にお馬鹿さぁん――ああ、力が溢れる――!!!」

まるで童女に笑いながら、くるくると水銀燈は宙を舞う。
同時に、宙に浮かぶ光弾が更に光を増し始めた。術者に呼応したかのように。
突然の事態に呆気に取られるセラスとジャイアンだったが、劉鳳だけは違う反応を見せた。

「……真紅を知っている、のか!? 貴様一体!」

劉鳳の言葉に、水銀燈の笑みが消える。
そう……この言葉は下手をすれば正体がバレかねない失言だ。
少しまずいかもしれない……水銀燈は悩んだものの、あっさりと結論を出した。

そう、答えは単純。目撃者を全て消せばいいだけの話。

「……というわけでぇ。消えて」
「キサ、マ……」
「劉鳳君!?」
「兄ちゃん!?」

怒りに燃えた言葉は最後まで紡がれず。劉鳳は無様にその場に倒れ込んだ。
それを見てほくそ笑んだのは水銀燈だ。まるで狙い通りと言わんばかりに。
いや、これは実際に彼女の狙い通りなのだ。水銀燈は劉鳳から魔力を吸い上げていたのだから。
戦闘開始同時に水銀燈は凛との契約を強制的に断ち、契約相手を劉鳳に切り替えていた。
これは契約とは名ばかりの強制的な魔力蒐集。誰から吸うかなんてことは思いのまま。
そして夜天の書を装備したことにより、魔力吸収量は更に強化されている。
その補給を頼りに、この戦闘で水銀燈は高ランクの魔法を連発していた。
そして劉鳳はアルター使いではあるが、魔術師ではない。体力は人並み外れているが、魔力は無い。
そんな彼が水銀燈に魔力を奪われればどうなるか。当然、魔力がない分を体力で賄う羽目になる。
劉鳳がアルターを出せなかったのも、そして段々と弱っていったのもそれが原因だ。
ただでさえ満身創痍だったのに、魔力蒐集の追い討ちを喰らってはまともに動けはしない。
そしてここにきて水銀燈は大規模な魔力蒐集を行ったために、ついに耐え切れずに劉鳳は倒れてしまったのだ。

――そして大規模な魔力蒐集は、水銀燈が大技の準備を始めたという事でもある。

『Photon Lancer Genocide Shift』

夜天の書の声は、正真正銘の死刑宣告。
セラスたちが逃げ出す暇も無い。百を越える金色の魔弾だけが、闇を明るく照らしだした。

47 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:17:42 ID:1TX5/KdD


「――そんな」
『全て真実です、マスター』

呆然とする凛に、レイジングハートはそう念押しした。
彼女は全てを話した。
スネ夫を助けるフリをして盾にしたこと。
病院の魔力反応が、水銀燈が探す前と後で明らかに変わっていたこと。
その他、疑念を全て。

『マスターとその妹との間にあったことは聞きました。
 ですが、あの人形が貴女のようなお人よしである保証は全くありません。
 むしろ疑わしいというべきです』

そして、最後にレイジングハートはそう断言した。
あれは決して味方などではない、敵だと。
それを最後に、また音が死んだ。ただ微かに、凛がレイジングハートを強く握り締める音がしただけ。

「分かった……水銀燈を探しにいく」

そうしてやっと、凛はそう口を開く。
唇を噛み締めながらも、凛はレイジングハートにそう告げた。
その怒りは水銀燈に対してのものか……それとも、迂闊な自分に対してのものか。
そのまま凛は家屋から出たものの……パスが切れている以上、手がかりはない。
目に強化魔術を掛けて周りを見渡すにしても、障害物が多いこの周辺では役に立つかどうか。
実際はたずね人ステッキなるものが彼女のデイバッグにあるのだが、
エルルゥが説明書を紛失していたため凛は全く使い道を分かっていない。
従って結局。

「レイジングハート、エリアサーチ」
『All right』

凛の命令と同時に魔術式が起動。夜闇の間を縫って魔力が奔り、すぐに答えが返ってきた。

『マスター、北に魔力反応です』
「水銀燈?」
『いえ、何らかのアーティファクトかと』

怪訝に思った凛はその方角を見やって……絶句した。

「あれ、は……」



48 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:18:31 ID:1TX5/KdD

――重い。

なんとか再び意識を取り戻した劉鳳が始めに感じたことがそれだった。
ただでさえだるい体に、何かが覆いかぶさっている。

――なんだ、この匂いは。

煮えたような匂いに顔を顰めながらも、劉鳳は目を開いた。
靄が掛かったような視界でも、なんとか周囲の状況を捉えられる。
煙を上げる地面。光弾によって生み出されたいくつもの小さなクレーター。
――無数の光弾を切り払った結果へし折れたバヨネット。精根尽きて倒れ込んでいるセラス。

「ッ……!!!」

劉鳳の目が見開かれる。
そうして、はっきりとした視界は……覆いかぶさっていたものの正体をようやく知らせていた。

「た、武……!?」
「……すまねえ、劉鳳兄ちゃん」

劉鳳は、絶句した。絶句するしかなかった。
ジャイアンの体は、血は出ていない。ただ、体中が焼け焦げ炭化していた。だから血は出ない。
そう。始めに感じた異臭は、目の前にいたジャイアンの体が焼け焦げたもの。

そうして、ジャイアンの体は崩れ落ちた。

「キッサマァァァァァアアアアアアアア!!!」

劉鳳が叫ぶ。
絶影が具現化する。第一段階を省略して生み出された真・絶影が敵を討つべく踊りかかる。
だが。

「脆いわね」
『Schwarze Wirkung』

明らかに動きが鈍っていた真・絶影は易々とカウンターを叩き込まれた。
その拳の名はシュヴァルツェ・ヴィルクング。
単純明快に言えば、強力なパンチ。そう、かつて真紅が水銀燈に放ったような。
絶影は粉砕され、劉鳳もまた再び吹き飛ばされた。
それでも、劉鳳は立ち上がろうとすることをやめない。

「許、さん……許さんぞ……ッ!!!」
「蟲みたいね。見苦しいわ。
 絆とかいう下らないユメに縋るのはやめたほうがいいわよぉ?」

ただ言葉を繰り返す劉鳳をそう嘲笑って、水銀燈は翼を展開した。
羽根が舞う。
それは魔力によって一箇所に集い……水銀燈の体を超えるほどの巨大な金槌を編み上げた。

『Gigantschlag』
「轟天爆砕ギガントシュラーク――三人揃って光になりなさい」

それは、鉄槌の騎士・ヴィータの魔法。グラーフアイゼンを巨大化させ敵を潰す奥義。
完成の際に守護騎士を取り込んだ夜天の書は、守護騎士全ての魔法の使用を可能とする。
――例え、主が外道の者であろうと。
そうして、その鉄槌が振り下ろされる――その直前だった。

49 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:19:17 ID:1TX5/KdD

「ジャイアンーッ!!!」
「ちょっと、待ちなさいって!」
「のび太くん、危ないってば〜!」

聞こえた声に水銀燈が目を向けて見れば、そこには走り寄ってくるのび太達の姿。
彼がジャイアンを視認できたのは単純な理由。多数の光弾が、照明の役割を果たしたから。
ジャイアンを殺した魔法であるフォトンランサー・ジェノサイドシフトが同時にこの役を果たしたと言うのは、これ以上ない皮肉である。

「よくも、よくも……」
「のび太くん、下がって!」
「勘違いかもしれないし、襲ってきたのはあっちからかも……」
「うるさーい!!!」

ドラえもんとハルヒの制止を振り切って、のび太が構える。
その手に握られているのは……先ほど水銀燈が落としたジャッカル!
それを見て、水銀燈は溜め息を吐いた。馬鹿にしたように。

(全く、目障りな……いいでしょ。全員纏めて消し飛ばしてあげる)

どうせ子供にはあんな反動の強い銃はまともに撃てはしまい……
そう判断して、水銀燈は金槌を振り下ろした。

50 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:20:08 ID:1TX5/KdD


――否。あくまで、振り下ろそうとしただけだった。


凶器が、その場にいる全てを押しつぶすその寸前。
桜色の流星が、奔った。

「――――Sechs(六番), Funf(五番), Es last frei(解放)!」
『Load cartridge. Divine Buster Extension』
「なっ……!?」

長距離からの狙撃。急ごしらえの鉄槌は撃ち抜かれ、無残に霧散する。
思わず、水銀燈は相手を睨みつけていた。
今、この殺し合いの場においてこの砲撃魔法が使えるのは一人しかいない。
レイジングハートの「マスター」は一人しかいない。

「……ふざけた真似してくれてるんじゃない。覚悟は出来てるんでしょうね」
『敵は最強の魔導書です。注意して下さい、マスター!』

水銀燈の視線の先。満月が輝く空の下で。
赤い外套を纏った魔導師が水銀燈を睨みつけていた。

誰かなんて、言う必要も無い。そう、あの砲撃魔法を使えるのは――遠坂凛ただ一人!

(よりにもよって、最悪のタイミングで――!!!)

思わぬ事態に、水銀燈の目が吊りあがる。
だが、怒りを覚えている余裕は無い。銃声が響く。
反動に吹き飛ばされながらも、のび太が銃弾を撃ち出していた。
とっさに防御したものの、その隙に凛が接近してきている。

「Es ist gros(軽量), Fixierung(狙え), EileSalve(一斉射撃)!」
『Flash Move, Divine Shooter Full Power』
「ええいもう……寝てなさい!」
『Photon Lancer』

撃ち出された桜色の魔弾と、それを迎撃すべく奔る金色の魔弾がぶつかり合う。
しかし、数が違った。凛が撃ち出したディバインシューターの数は8、水銀燈が撃ち出したフォトンランサーの数は9。
残った一つはどうなるのか?もちろん、凛に衝突し、盛大な煙を上げるだけだ。
もっとも、水銀燈は手加減していた。まだ本来の姿を晒していない以上、凛を利用することはまだ可能だと判断したのである。
せいぜい気絶して落ちる程度でいい――だからこその、フォトンランサー。

だが――気絶するどころか、凛には傷一つなかった。

「利きはしないわね、こんな程度じゃ」
「……ッ!」

晴れた煙の中から、凛の声が響く。
阻んだのは、凛が新たに纏った赤い聖骸布。かつて、アーチャーが着ていたもの。
それは風に吹かれて、凛の近くまで辿り着いていたのだ。まるで、彼女を導くかのように。
仮にも英霊が着ている物である以上、その効果も半端なものではない。
バリアジャケットの効力と合わせればフォトンランサー一発くらい十分に防ぎきれるし……事実防ぎきって見せていた。

『マスター、彼女は手加減して勝てる相手ではありません!』
「分かってる! レイジングハート、もう一回でかいの行くわよ!」
『All right, Divine Buster Full Burst stand by』

51 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:20:59 ID:1TX5/KdD

凛の言葉に呼応したレイジングハートが桜色の羽根を展開する。
どちらも手加減する様子は無い。当然だ。
凛には知らない誰かがのび太を襲っているようにしか見えないし、
レイジングハートに至っては暴走した闇の書が暴れているようにしか見えない。
その事実に、思わず水銀燈は歯噛みしていた。相手が水銀燈だと気付いていないのがせめてもの幸運か。

「この役立たず……大人しく待っていればいいものを……!」
『Divine Buster Full Burst stand by』

苛立ちを露にした水銀燈が、凛同様に桜色の魔法陣を投射する。
ディバインバスターは夜天の書にも入っている魔法だ。
撃ち方を見れば水銀燈もデバイスの手助けを借りて真似できる。
……だが。

「させるかァ! 絶影ッ!!!」
「私達を忘れたら、困るって!」

下から声が響く。
投擲されたバヨネットが水銀燈の頬を掠め、絶影の鞭がその体勢を崩す。
魔法陣から術者は引き離され、集束しかけた魔力はそれで霧散した。
そうして、その間にも凛の詠唱とレイジングハートのカウントは進んでいる。
そこまで来て始めて、リインフォースは水銀燈に口を開いた。

『因果応報だな、ガラクタ人形』
「……ッ!!!」

一瞬で怒りが沸点にまで達したものの、なんとか抑え付けて現状を冷静に分析する。
別に、このまま戦っても負ける気はしない。
下にいる連中はブラッディダガーやプラズマランサーを連発すればいいだけだ。
だが……ディバインバスターを喰らえば死にはしないまでも少しは削られる。
それはまだだ。今は、力を使い果たす時ではない。
そう、水銀燈は判断した。腹立たしいが。

『Eisengeheul』

屈辱に歯を噛み締めながら水銀燈は閃光呪文を起動した。
つんざくような音と激しい閃光が世界を埋め尽くし、周囲の建物の間を強風が吹き荒れていく。

「くっ、これは……!?」
『魔力感知に異常、ジャミングです!』

とっさに目を庇った凛に、かろうじてレイジングハートの警告が吹き荒れる。
しばらくして、やっと視界が戻った頃には……
地面に置いてあった鞄と共に、黒い天使の姿は完全に消えていた。

52 :人形裁判 〜 人の形弄びし少女 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:21:45 ID:1TX5/KdD

「レイジングハート、周囲に反応は?」
『ありません』
「そう……」

そう呟いて、凛はディバインバスターの魔法陣を消した。集束していた魔力も同様に霧散する。
そのまま足元の羽根を羽ばたかせて着地した凛を出迎えたのは、のび太だった。

「お姉さん、ジャイアンが、ジャイアンが……!!!」
「…………」
「治せるんでしょ!? 僕の足みたいに!」

まるでいつもドラえもんにしているように、のび太は凛に泣きついた……
もっとも、普段とは深刻さに相当な開きがあるが。
しばらくして凛が紡いだ言葉は。

「……死者蘇生は魔法よ。私じゃできない」

非常な、現実。
まるでよろめくように、のび太は足を動かして。

「うそだあああああああ!」
「のび太くん……」

そのまま、ジャイアンの亡骸に泣きついていた。
その後には、同じように泣きそうな顔をしているドラえもんと。

ずっと凛を睨みつけている、ハルヒ。

「…………?」

思わず凛が首を傾げる。
実は一度最悪な出会いをしているのだが、長門の背に隠れていたこともあり凛はハルヒをはっきりと覚えていない。
だが、ハルヒは覚えていた。しっかりと。
のび太の泣く声だけが響く気まずい空気が流れる中、それを遮ったのは。
声ではなく、ばたり、と倒れこむ音だった。

「りゅ、劉鳳君!?」
「あ……ちょっと!」



53 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:22:53 ID:1TX5/KdD
暗い。
そう、劉鳳は思った。
何も無い暗い空間。そこに漂っているような幻覚。
武の姿が浮かび上がる。声と共に。

――すまねえ

(何故だ。なぜ謝るんだ。
 謝るのは俺のほうであるべきだ。
 お前を救えなかった俺の方こそが……)

「……くん」

声は届かない。届かないまま、劉鳳は自問し続ける。
次に浮かんだのは、一匹の豚の姿だった。

――救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんだ

ただの自己紹介。
そんな言葉でさえ、今の劉鳳には自責の念を思い起こさせる。

(俺には人を救うことなどできない。
 それどころか俺には……敵を討つことさえ……)

「劉鳳君!」
「……う」

突如聞こえた声に、劉鳳の意識は現実へと引き戻された。
真っ白い壁、真っ白いベッド、真っ白い照明。
どうやらここは病室らしいと劉鳳にも検討がついた。
隣のベッドには彼と同じようにセラスがベッドに寝転んでいる。

「何かうなされてたけど……」
「……大丈夫だ」

心配そうなセラスの言葉にそう答えて、すぐに劉鳳は質問を返した。

「あの少年達はどうした? 助けに来たあの女は……」
「それが、色々問題があったみたいで。
 実は助けてくれた子が偽名使ってました〜、とか
 キョン君の友達のハルヒちゃんが凛ちゃん……あ、助けてくれた子、に襲われたことありました、とか」
「なんだと? だが、彼女は殺し合いに乗っているようには」

今までの彼ならばこれだけ凛を断罪対象に認定していただろうが、劉鳳はそれをしなかった。
もちろん怪我をしているという事もあるが、ぶりぶりざえもんの言葉と……そしてそれ以上に、落ち込んでいたことが大きい。

54 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:23:42 ID:1TX5/KdD

「うん、実際乗ってたら私達、みんな殺されてたと思うし、そもそも怪我を治してなんかくれないだろうし。
 けどハルヒちゃんがこんな奴と一緒にいたくないって主張して、
 おまけに凛ちゃんが助けた私たちまで疑ってたみたいで。
 凛ちゃんと私達だけこの部屋にいることにしたわけ」
「凛……か。彼女はどうした?」
「紅茶を淹れに行ってる」

セラスの口調は決して暗くは無い。だが、それは虚飾に過ぎない。
劉鳳自身も分かっている。自身もまた明らかに、その話題を避けていたから。
そうして、劉鳳はやっと言葉に出した。一番聞きたかったことを。

「……武は」
「……埋めてきた」

セラスの口調もまた、重くなる。
わざわざ仲間を生き埋めにする馬鹿はいない。つまり……

「……くそっ!」

劉鳳の拳が握り締められる。指先から血が滲むほどに。
慰めることもできず、セラスはぽつりと呟いていた。

「私のせいだよ。
 私が劉鳳君が人殺しだなんて嘘に惑わされてなければ……」
「なんだと!?」
「え!?」
「あの女は、俺が人殺しだと言っていたのか!?」

突然顔色を変えた劉鳳に、セラスは戸惑うしかない。
慌てて口を開こうとしたものの、それは途中で止まる。劉鳳の表情に止められる。
彼の顔に浮かんでいるのは、怒りだった。しかし、その怒りの対象は明らかに……

「真紅だけではなかったのか。俺は浅慮でなんてことを……!」
「バリアジャケット、アーチャーフォームってところかしらね」
「……あれ」

何があったか困惑するセラスだったが、突然聞こえてきた声にふと顔の向きを変えた。
声が聞こえてきたのは扉の外。

「全く、最初からこうデザインしてくれればよかったのに」
『私に言われましても、困ります』
「はいはい、分かった分かった」

その言葉と共に、扉が開いた。
そこに立っているのは紅茶を淹れて戻ってきた凛。
但し服装は大幅に新調されていた。今のバリアジャケットは、黒い革鎧。
その上から赤い外套を羽織るその姿は、まさしくあの赤い弓兵のものだ。
言うまでも無く、ネコミミネコしっぽはない。

55 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:24:29 ID:1TX5/KdD

「君が凛か。治療もしてくれたらしいな……それについては、礼を言う」
「ああ、別に構わないから。セラスからいい物もらったし」

劉鳳の感謝の言葉――ただし、それについてはという言葉付きだが――への返答はあっさりとしたものだった。
凛の言葉は事実だ。もしセラスから物を分けて貰っていなければ、カートリッジを消費してまで治療はしなかっただろう。
劉鳳の治療に二発、セラスの治療に二発……正確には一発半。余った魔力はハルヒの治療に使用した。
凛がこんなにあっさりとカートリッジの大盤振る舞いを決行したのは、
セラスの予備弾丸セットにデバイスのカートリッジも含まれていたためだ。
その数は四十発。普段宝石魔術の費用に悩む凛としては嬉しい臨時収入である。

「はい、どうぞ」

凛がそう言ってカップを置くと同時に、セラスがカップを取り上げて一気に飲み干した。
マナーの悪さはセラス自身も先刻承知だ。それでもこうしたのは毒見のためである。

「うん、おいしい」
「……そうか。すまん、頂く」

セラスの言葉を確認して、劉鳳もまた紅茶に口を付けた。
もっとも劉家の跡取りということもあり、ちゃんと作法に従って飲んだが。
同様に凛も自分で淹れた紅茶にゆっくりと口を付ける。
どちらとも、上質な紅茶を味わっていた。

(……毒見とは言っても、飲み干しちゃったのは失敗だったかも)

二人の様子を見て微妙に後悔しながらも、セラスは口を開いた。

「それで、あの子の言ってたことについてなんだけど……」
「こっちから襲った覚えは無いわよ。一回も。
 襲い掛かってきたのを追い払った覚えはあるけど」
「凛、ハルヒという少女に襲われたことはあるのか?」
「覚えてないわね」

セラスが言うあの子とはハルヒ、言ってたこととは凛には襲われたという事だ。
凛の言葉に少し考え込んだものの、セラスはすぐに言葉を返した。

「まぁ、私は凛ちゃんの言う事を信じるかな。
 ゲームに乗ってるならあそこで私達を放っておいた方が早いだろうし」
「……偽名の件は聞かなくていいのか、セラス?」
「あれは不可抗力。
 劉鳳君が寝てる時に見せてもらったけど、女の子ならだってあんな格好したら本名名乗りたくないって。
 そもそも着たくないけど」
「う、うるさいわね! 着たことこそ不可抗力よ!」
「いったいどんな……い、いや、いい。すまん」

劉鳳の好奇心は凛の視線によって一瞬にして圧殺された。
いくら劉鳳でも、露骨にレイジングハートを光らされれば言ってはいけないことは分かる。

56 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:25:25 ID:1TX5/KdD

「セラスさん……だったっけ? ハルヒって子が言ってたことはどう思う?」
「う〜ん、幻覚とかよく似た他人とか……」
「……それに、ちょっとした行動が誤解を招くことはありうる」

逆に聞き返してきた凛に、首を傾げながら答えるセラスと妙に重い調子で言う劉鳳。
その様子に、思わず凛は疑問を抱いていた。

「何か、妙に重いわね」
「……正直に言う。
 ゲームを開始したときに、俺はギガゾンビへの怒りに任せて遊園地を破壊した。
 それで真紅と言う人形に、殺し合いに乗っていると勘違いされた経験がある……」

場に微妙な空気が流れ出す。
セラスも凛も「なんで壊したのよ?」とか「遊園地壊す位の怒りって……」とか
「そもそもそれちょっとした行動じゃないし」とか突っ込みたいのだが、
あまりに劉鳳の表情が暗いために突っ込めない。
結果、ツッコミは入らずに劉鳳はそのまま話し続けることになった。

「セラス。確か、相手の女は俺が人殺しだと言っていたそうだな」
「ま、まあ」
「もしかすると、襲ってきたあの女も俺が遊園地を破壊したところを見たのかも知れん。
 だとすれば、武を殺したのは……」
「ストップストップ!
 絶対あいつは嘘吐いただけだって。
 思いっきり悪役っぽい笑い方してたしさ」
「それに私の名前騙ってたんでしょ、あいつ。ろくな奴じゃないわよ」
「…………」

セラスと凛が慌ててフォローを入れるものの、劉鳳は今までの様子が嘘のように暗い。
自分の行為が元で人を死なせてしまったかもしれないとなれば当然の反応だろう。
正義を自称する劉鳳ならば尚更だ。
溜め息を吐きながらセラスは紅茶のカップを取り上げて……中身がないことを思い出した。

「凛ちゃん、紅茶もう一回淹れてきて」
「わかった」

落ち込んだままの劉鳳を背に、凛は病室の扉を開けて歩き出した。
そうして給湯室へと向かう道すがら。手元にある愛杖に、彼女はこっそり口を開いた。

「レイジングハート、一発ロードしておいてくれる? 魔力を回復しておきたいから。
 ……なんか知らないけど、水銀燈へのパスがまたしっかりと繋がってるのよね」

いくら劉鳳から魔力を吸い上げていたとはいえ、水銀燈はそれなりに魔力を消耗している。
魔力補給のために、水銀燈は先ほどの戦闘で密かに魔力蒐集の対象を凛に戻していたのだ。
そんなことは凛たちに知る由もないが、それでも疑念を抱くには十分に足る。

『All right, load cartridge』

57 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:26:19 ID:1TX5/KdD

意を汲んだレイジングハートが弾丸を排出、魔力を主へと流す。
凛は使った分のカートリッジを新たに籠めなおしながら、給湯室の扉を開けた。
そのままポッドを取り出して、紅茶を淹れていく。
その様子は……どこかが感慨深げだった。

『どうしました?』
「いや、ね。
 これを着てた奴は、まるで執事みたいに紅茶を淹れるのが上手くて」

そう返して、凛は聖骸布を握り締めた。
アーチャーのことはよく覚えている。
大英雄ヘラクレスを食い止めるために、一人残って戦い散っていった彼を、忘れることなどできるはずがなくて。

「やってみせるわ。士郎の分も高町ちゃんの分も。絶対にここから脱出してみせる。
 そうじゃなきゃ、あいつに何を言われるか分からないもの」
『それでこそ、私のマスターです』

そう呟いたレイジングハートから返ってきたのは、簡潔な言葉。
今、凛に言葉を返せるのは、レイジングハートだけだ。
けれど、凛は。

それでこそ――私のマスターだ。

皮肉げな、それでいて子供っぽい弓兵の声が、聞こえたような気がしていた。

「さて、到着と」

そうして、決意を新たに。凛は紅茶を手に病室の扉を開けた。

「淹れてきたわよ。ついでに、食事にしましょ。
 武って子のデイバッグはのび太に預けたんだけどね、ちょっと食料を貰ってきたのよ」
「サンキュ。ま、私は輸血パックの方がいいのかもしれないけどね〜」
「……すまない」

空気を変えるべく、凛は話題を切り替えた。
それを素早く察知したセラスが、適当に冗談を飛ばす。
どこか暗かった雰囲気も、和やかなものに変わっていく。
それに安心しながら、凛は食料の蓋を開いた。

ちなみに、凛が持ってきたその食料とは、ジャイアンシチューとシュールストレミングである。
結末は、言うまでも無い。



58 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:27:08 ID:1TX5/KdD

ある意味平和な劉鳳たち三人とは対照的に。
ロビーで待機していたハルヒ達の空気は最悪だった。
理由は単純。凛を全く信用しないハルヒと、凛を信用するのび太が口論を繰り広げていたのだ。
ジャアインの死という悲しむと、行方不明のアルルゥという不安。
それは、雰囲気を簡単に険悪なものに変えてしまっていた。

「仮に本当にあいつが本物の『遠坂凛』だとして……あいつは偽名を使ってんでしょ!
 そんな奴、信じられるわけ無いじゃない!」
「ハルヒお姉さんだって凛お姉さんに怪我を治してもらったんじゃないか!」
「もう〜、二人とも落ち着きなよ……」

ドラえもんが制止に入るものの、
ジャイアンが死んで怒りの矛先を探すのび太と元々勝気なハルヒは止まらない。
口を休めるどころかいよいよ声は大きくなっていく。

「だいたい、アルちゃんがいなくなったのもあの女の人が来てからじゃないか!」
「……っ!!! なによそれ! アルちゃんがもう殺されてるとでもいいたいわけ!?」
「そ、それは……」

ハルヒの言葉には、さすがにのび太も口ごもった。
普通の子供である以上、もうあの子は死んでいるなどということを言うのは躊躇って当然だろう。
もっとも……ハルヒ自身そんなことを信じたくないから、強引に否定したのだが。

「ともかく、絶対に私はあんな奴信用しないからね! いい!?」

そう一方的に突きつけて、ハルヒはのび太から視線を外した。
その後のび太が何を言ったとしても、全く聞く気はないと言わんばかりに。
結局のび太の怒りのはけ口は無くなり――そんな彼に襲ってきたのは、悲しみだった。

「ジャイアン……」
「…………」

のび太の泣く声が再び響き出す。それにハルヒが振り向く様子は無い。
ドラえもんはただ、のび太の肩を支えてやることしかできない。それが何よりも、彼には歯がゆい。
ジャイアンの死はドラえもん自身ショックなことだったが……彼は泣かなかった。
恐らくはのび太の存在があったからだろう。
のび太の保護者を自称するドラえもんとしては、その前で情けない様子をすることは極力避けたかった。
だから、激情は内に秘めて……理性を働かせる。

(あんな杖は、見たことない。少なくとも秘密道具じゃない……)

ドラえもんの頭にまず浮かんだのは、レイジングハート。
ひみつ道具ではない、正真正銘の魔法の力。
ギガゾンビを捕まえるために何かしらの役に立つかもしれない。

(聞いてみたい……所なんだけど)

頭の中ではそんな結論が出たものの。
ドラえもんはちらり、とのび太とハルヒの方を交互に見やって、溜め息を吐くしかなかった。

(今行ったらまた口喧嘩を始めそうだ……)

露骨に暗いのび太に、こちらを睨みつけているハルヒ。
ギスギスした空気の中で、ドラえもんは明らかな居心地の悪さを感じていた。



59 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:27:55 ID:1TX5/KdD

ドラえもん達は気付かない。
透明な監視者の存在に。
いつのまにか病院に戻っていた水銀燈の存在に。

(……便利よねぇ、これ)

透明マントを身に纏っているため外からは見えないが、その姿は元の人形の姿に戻っていた。
わざわざ襲撃した時のままで来るような馬鹿な真似はしない。
とりあえず言い争いが終わったのを見計らって、水銀燈はのび太達のいるロビーから離れた。

(上手く誤魔化して凛と合流しないと……それにしても、偽名を使ってたなんて大した役者ね)

会話の内容を思い返しながら、水銀燈は唇を噛み締めた。
もっとも凛の名前を騙って勝手に自爆したのは水銀燈の方だが。
ともかく内容と現状を整理しながら、水銀燈は今後の行動方針を立てていく。

(ハルヒって子はどうやら私の方が本物だと思って信用してるみたいねぇ。
 ほんとお馬鹿さぁん。人を見る目が無いにも程があるわね。
 ま、利用しがいがあるけど……)

思考内容と反して、その表情は苦々しい。
人間としての姿を早くも封印されてしまったのだから当然と言える。
少なくとも、凛の前で人間としての姿を晒すわけにはいかないだろう。
最悪、晒した後の主も考えておく必要が出てきてしまった――
もっとも、まだできる限り利用し続けるつもりだが。

(……少なくとも、一般人は駄目ね。あっさりと魔力切れしちゃう。
 魔力を持ってそうな奴を最優先で残しておかないと)

先ほどの戦いと今の状況を鑑みて、水銀燈はそう結論した。
魔力を吸収して相手をじわじわと追い詰めるのも有りだが、その前に自分が倒される可能性もある。
だが相手が魔力を持っていればいるほど、自分の魔力が多くなる。
つまりベストなのは、戦場に魔導師がいる状況下で戦うことだ。
魔力を吸収できる相手は自由に選択できるのだから、それが敵だろうと味方だろうと問題は無い。
となると凛を裏切る際にも、凛以外の人間を優先して殺すべきだということになる。

(となると、やっぱり狙うべきはあの男ね……)

水銀燈の頭に浮かんだのは劉鳳の姿。
何かしら不思議な力を持っているらしいが、魔力の類ではない。
力を取り戻す前にさっさと殺しておくべきだろう。そう水銀燈は結論を出した。

(とりあえず凛の所に戻りましょうかぁ。
 できるだけ力は温存しておきたいものねぇ……そう、今はまだ)

ハルヒ達に見られない所まで来たところで、水銀燈は透明マントを脱いで歩き出した。
――凛に芽生えつつある疑心を知らずに。



60 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:28:52 ID:1TX5/KdD

いくらどれほど今を取り繕っても、過去のミスは清算されない。
それは誰にも言えること。
過去を誤魔化し、今を思いのままに動かせるのは誰なのか。
それは、ギガゾンビさえ知らないことだ。

【D-3 病室 2日目・黎明】
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:魔力小消費、疲労、水銀燈と『契約』
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード・全弾再装填済)@魔法少女リリカルなのは
   バリアジャケットアーチャーフォーム(アーチャーの聖骸布+バリアジャケット)
   デバイス予備カートリッジ残り33発
[道具]:支給品一式(食料残り二食。水4割消費、残り1本)、ヤクルト一本
:エルルゥのデイパック(支給品一式(食料なし)、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、
:五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
:市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り2パック)
[思考]基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
0:く、くさ!?
1:劉鳳とセラスの治療を続行。ついでに劉鳳を慰める。
2:ドラえもんから詳しい科学技術についての情報を得る。
3:水銀燈が何をしているのか、気になる。
4:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
5:セイバーについては捜索を一時保留する。
6:リインフォースとその持ち主を止める。
7:自分の身が危険なら手加減しない。
[備考]:
※凛もレイジングハート同様、水銀燈に対して疑心を持ち始めました。
※それに伴い緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音。名前は知らない)の判断も保留。
※夜天の書の持ち主が水銀燈だとは気付いていません。
※カレイドルビー&レイジングハートの主催者&首輪講座 済
[推測]:
ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い(推測)
膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能(推測)
首輪には盗聴器がある
首輪は盗聴したデータ以外に何らかのデータを計測、送信している

【劉鳳@スクライド】
[状態]:全身に大程度のダメージ、かなり疲労、病院のベッドに横たわっている
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(-2食)、SOS団腕章『団長』、ビスクドール
[思考] 自信喪失ぎみ。
基本:自分の正義を貫く。
   仲間、闘う力のない者を守ることを最優先。
   悪の断罪は、守るべき者を守るための手段と認識。
0:こ、これは……
1:不二子が悪か見極める。
2:病院で凛の手当てを受ける。
3:悪を断罪する。(ウォルターを殺した犯人、朝倉涼子※名前を知らない、シグナム)
4:ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
[備考]
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
※朝倉涼子については名前(偽名でなく本名)を知りません。
※凛についてはひとまず信用していますが、自責の念に駆られているためあまり深く考えてはいません。
 ジャイアンの死の原因となった戦闘は自分の行為が原因ではないかと思っています。

61 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:29:39 ID:1TX5/KdD

【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:全身打撲、裂傷及び複数の銃創(※50%回復、現在も回復中)、疲労
[装備]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:6/6発)、アーカードの首輪
    13mm炸裂徹鋼弾×36発、スペツナズナイフ×1、ナイフとフォーク×各10本、中華包丁
     銃火器の予備弾セット(各40発ずつ、※Ak-47、.454スカール、
    S&W M19を消費。デバイスカートリッジはなし)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(×2)(メモ半分消費)、糸無し糸電話
[思考]
基本:トグサに従って脱出を目指す。守るべき人を守る。
0:は、鼻が曲がりそう……
1:劉鳳のフォロー。
2:食べて休んで回復する。
3:病院を死守し、トグサ達を待つ。
[備考]
※セラスの吸血について
・通常の吸血
その瞬間のみ再生能力が大幅に向上し、少しの間戦闘能力も向上します。
・命を自分のものとする吸血
少しの間、再生能力と戦闘能力が向上し、その間のみ吸った相手の力が一部使用できます。
吸った相手の記憶や感情を少しだけ取り込むことができます。
※現在セラスは使役される吸血鬼から、一人前の吸血鬼にランクアップしたので
初期状態に比べると若干能力が底上げされています。
※凛を全面的に信用しています。偽凛は敵だと判断。

【D-3 ロビー 2日目・黎明】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況] ジャイアンの死にかなり動揺したものの、のび太がいることもあり外見上は落ち着けている。
1:ハルヒとのび太の仲をなんとかして取り持つ。
2:アルルゥを探す
3:自分の立てた方針に従い首輪の解除に全力を尽くす
4:凛の魔法の力に興味。
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※第一回放送の禁止エリアについてのび太から話を聞きました。
※凛とハルヒが戦ってしまったのは勘違いに基づく不幸な事故だと思っています。
偽凛については、アルルゥがどうなっているか分かるまで判断を保留。

【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:ギガゾンビ打倒への決意/左足に負傷(行動には支障なし。だが、無理は禁物)
[装備]:強力うちわ「風神」
[道具]:デイバッグ、支給品一式、翠星石の首輪、エンジェルモートの制服
[思考・状況] ジャイアンの死により精神不安定。ハルヒに八つ当たりぎみ。
1:凛を悪者扱いするハルヒが許せない。
2:ドラえもん達と行動しつつ、首輪の解除に全力を尽くす。
3:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]
※凛を全面的に信用しており、偽凛は敵だと判断しています。
そのため凛に襲われたというハルヒへの疑念や反感を持ち始めています。

62 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:30:25 ID:1TX5/KdD

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し)
[装備]: なし
[道具]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り3回) 、
   着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、
[思考]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。
1:のび太とドラえもん以外の病院組は絶対に信用しない。場合によっては二人も……
2:アルルゥや凛(実際は水銀燈)の捜索。
3:知り合いを探す。
4:キョンと合流したい。
5:ろくな装備もない長門(とトグサ)が心配。
6:ペットショップを探して、アルルゥの能力で色々やってみる。
[備考] :
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※ハルヒは第4放送の内容を知りません。
※偽凛が本物の遠坂凛であり、本物の凛はその名前を騙る偽者だと思っています。
 劉鳳達がやられたのも偽凛の正当防衛だと思っているため、劉鳳とセラスも信用していません。

63 :過去の罪は長く尾を引く ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 02:31:29 ID:1TX5/KdD

【D-3 病院廊下 2日目・黎明】
【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷、消毒液の臭い、魔力小消費、疲労、凛との『契約』による自動回復
[装備]:真紅のローザミスティカ
[道具]: デイパック、支給品一式(食料と水はなし)
    ストリキニーネ(粉末状の毒物。苦味が強く、致死量を摂取すると呼吸困難または循環障害を起こし死亡する)
    ドールの螺子巻き@ローゼンメイデン、ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー、照明弾
    ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、夜天の書(多重プロテクト状態)
    くんくんの人形@ローゼンメイデン、ドールの鞄@ローゼンメイデン
   透明マント@ドラえもん

[思考・状況]基本:魔力補給を考慮して、魔力を持たない強者を最優先で殺す。
1:なんとか上手く誤魔化して平穏無事に合流。
2:凛が偽名を使っていたことや見解の相違を最大限利用して仲たがいさせる。今のところはハルヒに着目。
3:チャンスがあれば誰かを殺害。しかし出来る限りリスクは負わない。
4:凛との『契約』はできる限り継続、利用。殺すのは出来る限り後に回す。
5:ローザミスティカをできる限り集める。
6:凛の敵を作り、戦わせる。
7:あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。現在は劉鳳を最優先。
8:青い蜘蛛にはまだ手は出さない。

[備考]:
※透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。また、かなり破れやすいです。
※透明マントとデイパック内の荷物に関しては誰に対しても秘密。
※レイジングハートをかなり警戒。
※デイパックに収納された夜天の書は、レイジングハートの魔力感知に引っかかることは無い。
※夜天の書装備時は、リインフォース(vsなのは戦モデル)と完全に同一の姿となります。
※夜天の書装備時は、水銀燈の各能力がそれと似たベルカ式魔法に変更されます。
 真紅のローザミスティカを装備したことにより使用魔法が増えました。
※リインフォースは水銀燈に助言する気は全くありません。ただし馬鹿にはします。
※水銀燈の『契約』について:省略
※水銀燈ver.リインフォースの『契約』について
魔力収奪量が上昇しており、相手や場合によっては命に関わります。
※水銀燈の吐いた嘘について。
・名前は『遠坂凛』。
・病院の近くで襲われ、デイバックを失った。残ったのはドールの鞄とくんくん人形だけ。
・一日目は、ずっと逃げたり隠れたりしていた。

【剛田武@ドラえもん 死亡】

64 : ◆2kGkudiwr6 :2007/04/01(日) 03:23:15 ID:1TX5/KdD
修正
>>55
「あれは不可抗力。
 劉鳳君が寝てる時に見せてもらったけど、女の子ならだってあんな格好したら本名名乗りたくないって。
 そもそも着たくないけど」

「あれは不可抗力。
 劉鳳君が寝てる時に見せてもらったけど、女の子なら誰だってあんな格好したら本名名乗りたくないって。
 そもそも着たくないけど」

65 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:22:33 ID:fDCMMh+/
『ギガ〜。エフイチ行き列車の発車までもうしばらくかかるので、のんびりと待つギガ〜』
イイロク駅のホームから停車していた列車に乗り込んだゲインを待っていたのは、そんなツチダマのアナウンスだった。
この地にて列車に乗るのは初めてであったが、中にツチダマがいることはモールダマからの情報により確認済み。
よって、いきなりのアナウンスにも全く驚きはしない。
『本列車は侵入禁止区域を通過する事があるギガガ〜本車両内に限り皆様の安全を約束するギガ〜。
なお走行中の途中下車は大変危険なので止めるギガ〜車内での殺し合いは一切責任負わないギガ〜』
「そりゃ後丁寧にどうも、っと」
ゲインは勝手に流れるアナウンスを他所に、そそくさと先頭車両に進むと運転席の扉を何のためらいもなく開く。
『ギガ〜? お客さん、勝手に入られては困るギガ〜』
「……なぁ、せっかく客が乗ってるんだ。発車時間を早めてくれてもいいんじゃないかい?」
『そうはいかないギガ〜。列車の運行ダイヤはダイヤモンドの如く硬く守られなければいかないギガ〜』
運転席のある位置にたたずむツチダマは、ゲインの方を振り返ることもせずに答えた。
「……ほう? ダイヤモンドねぇ」
『そうギガ〜。ダイヤを守ることは鉄道マンとして当然の義務ギガ〜。それを邪魔するって言うのなら――――』
ツチダマの鉄道トークはゲインの放った一発の銃弾によって強制終了させられた。
今、ゲインの目の前にあるのは頭部を失った哀れな土偶のみ。
「悪いが、鉄道の運行を邪魔するのはあっちの世界でもしていたことでね」
ゲインはそんなツチダマを見下ろしながら、放った分の銃弾を補充する。
すると、その時足元に二つの物体が落ちてきた。
それはゲインにも見覚えのある目玉と耳の形をした物体で……。
「なるほど。ツチダマが機能を停止するのと同時にこっちの制御も止まるってわけか」
その物体――スパイセット――を拾い上げながら、ゲインは納得したような表情をする。
「……さてと。監視役を潰したところで目的のブツでも捜すとするか」
ゲインは、そう言うと運転席を後にした。
そこに胴体だけの土偶と無数の破片を残して。

列車の内部は、極めて単純な構造となっていた。
一両目と三両目の先頭部に運転席が設置されている以外は、ボックス式の座席とつり革、それに網棚くらいしか存在せず、そこには他の乗客が乗った、乗っているという痕跡すら見当たらない。
「これじゃ装置を設置する場所なんてどこにもないよな……」
亜空間破壊装置とやらがモールで見つけたような大掛かりな機械であるのだとするならば、それが車内にあれば極めて異端な存在になるはず。
もし車内に設置してあったとすれば、列車に乗り込んだ誰もが気付くはず。
――ならば、車内にうまく隠してあるのだろうか。
ゲインはそう考えると、座席のシートを剥がそうとしてみたり、運転席の内部を調べてみるが、やはり装置は見当たらない。
「おいおい電車の中にあるって言ってたのは嘘なのか……?」
一向に装置が見当たらないことに、モールダマの発言自体が嘘だったのではと疑い始めるゲイン。
……だが、嘘をつく余裕があるのならば、ギガゾンビにでもスパイセットで映した映像を送信するなりのアクションがあり、とっくに自分は胴体と首がサヨナラをしてるはず。
ならば、やはりモールダマの発言は真実と捉えて支障のないものであり、電車に装置が設置されているのは確かなのだ。
「だがなぁ……車内にない以上、どこに装置が仕掛けて………………………………ん、車内? 待てよ……」
確かにモールダマは“電車”に隠されていると言った。
だが、その設置場所は車内に限定していなかった。……言っていたのは、あくまで“電車”のどこかに隠してあるということ。
ならば、車内に存在しない装置がある場所は…………。

「――ビンゴ、だな」
線路に降りたゲインは、そこにある見慣れた装置を見て思わず顔が綻ばせる。
装置の隠してある場所――それは、二両目の電車の下部、本来ならばモーターなどが設置されている部分であった。

66 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:23:27 ID:fDCMMh+/
「さてと。これで件の装置も見つかったわけだ」
そんなわけで、亜空間破壊装置を見つけたゲインは、その手に持つウィンチェスターの引き金を――――
「――というわけにもいかないよな」
銃口を装置から逸らすと、ゲインは苦笑する。
――確かに装置の設置場所を突き止めた以上、装置を破壊することは容易だ。
だが、つい2,3時間前にモールの装置を破壊してしまった以上、立て続けに装置を破壊してしまってはギガゾンビに怪しまれる可能性がある。
ここは、別の誰かに事故に見せかけて破壊してもらうのが最適なのだろう。
そう、これから見つけなければならない信頼できる仲間の誰かに。
幸い、装置が設置されている電車は移動する機能を持っており、たとえ駅が後に禁止エリア化されても、線路上で待ち伏せして破壊することが出来る。
今回はどこに装置があるのかを確認できただけでも御の字だろう。
ゲインは自らが書いたメモに、電車の亜空間破壊装置の位置を書き加えると、ホームへとよじ登った。
そして、ホームの掲示板に書かれた時刻表を見ると、0時30分から4時間置きに列車が運行しているのが分かる。
「……てことは次の発車は4時半か」
……時間が来た時、運転士亡き列車はダイヤを守るのだろうか。
そんなことに興味を持ち、発車時間まで待ってみてみたい気もするゲインであったが――
「……こんなところで時間を潰してる暇があったら、同志を探すべきだろうな、と」
時計を見やると、ゲインはホームを後にした……。


――仲間を探す。
そうは言っても、たたでさえ参加者が少なくなっている現状、簡単に見つかるわけではない。
駅を出て、駅前の商店街を歩いていたゲインは、人の気配を探るべく細心の注意を払っていた。
「いきなりツジギリでバッサリ――なんてことになったら洒落にもならないしな……」
夜の街は、街灯も疎らでいつどこで何が飛び出てくるか分からない。
それが、仲間になりうる参加者ならば万々歳だが、殺戮を好む参加者ならば最悪の事態だ。
そのどちらの可能性も考えながら、ゲインは歩いていた。
そして、そうやって歩いていると彼は一つのこじんまりとした店の前でふと立ち止まる。
「……カフェか」
少し古いたたずまいのそれは、きっと女性とともに訪れれば、素敵なひと時が送れる事だろう。
――当然、今のような状況ではそんな機会など得られる筈もないが。
彼はそんなことを考えつつ、そのドアを開く。
そのドアの向こうに仲間と呼べるようになりそうな参加者がいることを望みつつ。
すると、ドアに付いたベルがなる中で、彼が見たものは……。
「……おっと、これはこれは……」
店の奥、ゲインの立つ位置の丁度正面に金髪に黒衣を纏った幼き少女が立っていた。
その手には、なにやら黒光りする斧のようなものを構えたままで。
だが、相手は女性と分かったのなら話は早い。
どんな状況であれ、ゲイン・ビジョウが初めて会った女性にすることは唯一つだ。
「……やぁ、こんな夜更けにこんばんは。小さなご婦人」

67 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:24:22 ID:fDCMMh+/


フェイトの大親友である高町なのは。
その両親である士郎と桃子は、翠屋という地元でも評判の喫茶店を経営していた。
勿論フェイトも、その店になのはや学校の友人であるアリサやすずかとともに何度も訪れ、そしてその度に楽しい談笑をして時を過ごしていた。
そう、それは何者にも代えがたく、甘く、優しく、そしてもう二度と作ることの出来ない思い出…………。
ホテルから離れ南下し、イイロク駅方面に向かっていたフェイトはその甘美な思い出を思い出そうとしているかのごとく、喫茶店に吸い寄せられるように入っていた。
「なのは…………」
その彼女にとっては特別な意味を持つその名前を呼びながら、彼女は窓から零れる月明かりに照らされた店内のカウンターに触れる。
目を瞑ると浮かぶのは、自分という他とは異なる存在を優しく受け入れてくれたアリサやすずか、義母や義兄、そしてなのはの笑顔。
あの頃の自分がどれだけ幸せだったのかを改めて認識する。
そして、そのままカウンターのテーブルを撫でていると、彼女はふと何かの紙切れのようなものを触った。
「……何だろう」
その紙切れを拾ってみると、それにはどうやら伝言のようなものが書いてあるようだった。

――朝比奈みくるは無事です。ここには戻りません

朝比奈みくる……その名前にフェイトはかすかに聞き覚えがあった。
その名前を聞いた場所。
それは、あのギガゾンビが行っている放送であり、ということはみくるという人物は既に――――
「……………………」
メモを残した当時は“無事”だったのかもしれないが、結果としては彼女(彼?)もまた既にここにはいないということになる。
……その人物が一体どんな風にしてここで行動を起こしてきたかどうかはフェイトの知る由ではない。
だが、彼女もまた、このバトルロワイアルという狂ったゲームに巻き込まれて死んでしまったことは確かだ。
そう、それはなのはやはやて、ヴィータ、カルラ、タチコマ、それに恨むべき敵であった桃色の髪の少女も勿論同じこと。
ならば、彼女がするべきことは唯一つしかない。
「……もう、これ以上ギガゾンビの好き勝手にはさせたくない……。あなたもそう思うでしょう?」
『Yes,sir』
黒き戦斧は、力強く答える。
そして、その戦斧は普段の寡黙さからは珍しく、間髪いれずにフェイトへ声を掛ける。
『Sir』
「どうしたの、バルディッシュ?」
『There are someone approachig here outside of this store(店の外にこちらに接近する何者かがいます)』
バルディッシュのエリアサーチによる結果の報告。
フェイトはそれを聞いて、立ち上がるとバルディッシュを入口に向けたままでそちらの方を見据える。
目を閉じて耳を澄ましてみると、確かにこちらに近づく足音が。
その足音は確実に大きくなっている。
さらに、足音は大きさがピークを迎えたところで――具体的には、喫茶店入口前でぴたりと止まる。
「……………………」
正面を見据えるフェイトの顔に一筋の汗が流れる。
一体、誰がここに入ろうとしているのだろうか。
助けを求める者か? 志を同じくする同志か? それとも殺戮を求める者なのか?
しかし、どれにしてもフェイトがここで退く気は全くない。
相手が誰でどんなアクションを起こしてこようと、彼女にはそれを全力で受け止める覚悟は出来ていた。
その覚悟こそが、このゲームを止める為に必要な行動であると彼女は知ったから。
そして、ついにドアが開くと――――そこにはショットガンを手に持ったコート姿の褐色の肌の美丈夫が立っていた。
「……やぁ、こんな夜更けにこんばんは。小さなご婦人」

68 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:25:29 ID:fDCMMh+/
目の前の男は、肩にショットガンを抱えながらも、友好的な口調で自分に挨拶をしてきた。
今のところ、その銃を自分に向けようとする気配は無い。
それを確認すると、フェイトはバルディッシュを下げて返事をする。
「こんばんは。……えっと…………」
「ゲインだ。ゲイン・ビジョウ。以後お見知りおきを」
恭しく頭を下げながら、男は名を名乗る。
――相手に名前を名乗られた以上、自分も名乗らなくては無礼になる。
例えこのような場所であっても、そのかつて家庭教師だった女性に教わった礼儀作法を蔑ろにする訳にはいかない。
「こんばんは、ゲイン。私はフェイト・T・ハラオウンです」
「フェイト、か。いい名前だ」
「ありがとうございます」
2人は距離を置いたまま、そんな会話を続ける。
すると……。
「さて。そろそろ本題に入りたいのだが……」
と、ゲインの表情が不意に今までの穏やかなものから、険しい面持ちに変わる。
「フェイト、君に簡潔に尋ねる。……お前さんはここからエクソダスをする気はあるか?」
「エクソダス……ですか?」
その言葉は、どこかで聞いたことのあるものだった。
あれは確か、あの眼鏡の少年と出会って間もない時に……

――平たく言えば、みんなでここを脱出してさっさと帰ろうってことかな。

そんなことを言っていたような気がした。
即ち、ゲインの言っていることの意味は――
「つまり、ゲインはここから脱出しようとしているのですか?」
「あぁ、そうだ。俺はエクソダスの請負人として、それを成し遂げようとしているところだ」
そう言うゲインの目には確かに、なにやら確信じみたものが映っている。
まるで、既に脱出するための手立てを見つけたかのように。
すると、フェイトはメモを取り出し、そこにペンで文字を書くと、それをゲインに見せる。
『盗聴されている可能性があるので筆談で尋ねます。――脱出方法を知っているのですか?』
ゲインは頷くと、そのメモに自分のペンを使って返答を書いてゆく。
『脱出に繋がるかなり重要な情報を握っている。協力をして欲しい』
その答えを見て、フェイトは脱出への希望を見出し、綻んだ顔で思わずゲインを見やる。
すると、ゲインは力強く頷き、笑顔になる。
「――というわけなんだが……俺と一緒にエクソダス、するかい?」
彼の言うエクソダスが、フェイトの目指すものと同じである以上、断る理由はない。
答えは勿論、決まっている。
「はい、ゲイン。喜んで協力します」

69 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:26:47 ID:fDCMMh+/


フェイトという少女、見た目はまだアナ姫くらいの幼いものであったが、相当しっかりした性格のようだった。
最初から首輪に盗聴機能がついていると踏んで筆談を始めたのも、中々の機転であったし、その礼儀正しく落ち着いた口調は歳不相応のものだ。
そして、そこに加え更に……
「なるほど、魔法ねぇ……」
フェイトに即興で作ってもらった脱出に関する考察メモを読んで、ゲインは改めて目の前の少女に感心していた。
「それじゃ、フェイトも魔術を使えるってことか」
「――えぇ。……とは言っても、大部分の魔法はこのバルディッシュのようなデバイス無しでは使えませんが」
「バルディッシュ……この斧のことか」
『Yes』
「――うおっ! 会話する機能があるのか、これ!?」
いきなり男の渋い声を発した斧に、ゲインは違う意味で驚く。
「……そういえば、今さっきフェイト“も”と言いましたが、ゲインは他に魔術を使う人を見たことがあるのですか?」
「ん? まぁ、あれが君の使う魔法と同列なのかどうかは分からないけど、一人そういう参加者と出会った。……いや、いたと言うべきなのかもな」
炎を弾丸にして発していた獅堂光は既にこの世に存在しない。
自分が意識を失っている間に、どこかで命を落としてしまったのだ。
「……すみません。何か悪いことを聞いてしまったみたいで……」
「いや、いいんだ。君が気にすることはない。悪いのはあのギガゾンビという男なんだからな。――それよりも、だ。俺のメモには目を通してもらえたかい?」
「――はい。全ての考察についてざっと読んでみましたけど…………」
そこで、フェイトは再びメモ用紙を使って、筆談を再開する。
『首輪の盗聴機能が、大きな音を関知することで故障するという話は確証のある話ですか?』
フェイトはそう書き終えるとゲインの顔を見やる。
すると、ゲインはペンを走らせて答えた。
『この話をツチダマから聞きだした俺が、今でもまだ無事に生かされていることが何よりの証拠だ』
もし、あの時のような自分にとって不都合な話が盗聴されていたとすれば、それこそギガゾンビは慎重を期してゲインを遠隔操作で爆殺するはずだ。
それなのに生かされているという事は…………。
『なら、きっと私の首輪の盗聴機能も故障しているはずです』
『何か大きな物音がする出来事にでも巻き込まれたのか?』
『はい。色々ありましたから』
ペンを走らせるフェイトの顔が暗くなるのを見て、ゲインも何があったのかを大体察する。
故に、余り多くは聞かない。
そして彼はその話題を避けるように、次なる問いかけをフェイトにした。
『一度、駅に行かないか?』
『駅、ですか?』
『あっちなら俺が壊した列車のツチダマの監視範囲になってるだろうから、盗聴や監視の目から逃れられるはずだ』
『そこでなら、筆談をしなくても、脱出に関する会話が出来るということですか?』
『そういうことだ』
ペンでそう書くと、ゲインはフェイトを見て頷く。
すると、フェイトも黙ったまま首を縦に振って、それに同意を示す。
「……それじゃ、とりあえず移動だ」
「はい」
二人は立ち上がると、その暗き喫茶店を後にした。
……残されたのは、今は亡き少女が遺していった書置きのみ。

70 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:27:41 ID:fDCMMh+/
そして、再びイイロクの駅舎内。
そこに足を踏み入れると、不意にゲインは何かを蹴っ飛ばしてしまった。
「……ん? これは――――」
拾い上げてみると、それは目と耳のような小さな機械――スパイセット――であった。
フェイトは興味あり気に、それを見やる。
「何ですか、それは?」
「こいつが俺達を監視する為の機械ってわけさ。……どうやら、駅には車内とは別に用意してあったみたいだな」
つまり、電車のツチダマが監視をしていたのは車内及び駅舎ということになる。
ならば、もしかしたらエフイチの駅舎の方にも機能しなくなったスパイセットがあるのでは――そう考えつつ、ゲインはそのスパイセットをデイパックにしまった。
そして彼らはそのまま駅舎を進み、プレートに“駅長室”と書かれたドアを開き、中に入る。
「さて、ここの監視も今は行われてないってことが分かったところで、本題に入るとするか」
「本題……エクソダスの事ですね?」
ゲインは頷く。
「そうだ。……そのために、ひとまず俺は亜空間破壊装置ってやつの破壊を考えてるわけだが、これについてはどう思う?」
「――はい。亜空間破壊装置についての情報が正しいのだとすれば、これはきっと脱出の鍵になると思います」
フェイトは確かな口ぶりで、言葉を進めてゆく。
「装置全てが破壊されて、この空間が外部と接することが出来るようになれば、そのタイムパトロールが介入したり、もしかしたら時空管理局も干渉する余地が出てくるかもしれません」
「時空管理局、だと?」
聞きなれない言葉に、ゲインは思わず問い返す。
すると、フェイトはそんな彼の問いに丁寧に答え始める。
「タイムパトロールが時間軸を管理する組織であるとすれば、時空管理局はこの世に並列して存在するあらゆる世界を管理する――いわば平面軸を管理する組織です」
――平面軸を管理する。
その言葉はあまりに突拍子もないものであったが、自分の知るシベリアや、ヒカルの知るトーキョー、ミサエの知るカスカベ、フェイトの知るウミナリやミッドチルダがそれぞれ違う世界なのであるとすれば、その意味もおのずと分かってくる。
ゲインは頷くと、話を進める。
「なるほどな。……とにかく外部との接触が行えれば希望は見えてくると考えてよさそうだ」
「はい。それは間違いないと思います」
「……となると、次は首輪の事か……」
亜空間破壊装置を破壊したところで、問題はまだ山のようにある。
それが、やはりこの特殊な空間に並んで、自分達の脱出を拒む要因になっている首輪についての件だ。
ゲインは首輪の機能こそ知っているが、その機能の解除方法については未だ不明瞭なまま。
たとえ、亜空間破壊装置を全て壊してこの空間を外部に曝したとしても、自分達の命を首輪一つで操れる立場にあるギガゾンビの大きなアドバンテージは揺るがない。
エクソダスのためには、装置の破壊と同時に首輪の解除も必要不可欠なのだ。
そして、その解除に関して最も近い立場にいるであろう人物が、首輪に関する考察を書いたトグサという人物。
つまり、彼と接触することがエクソダス成功への近道になる。
「やっぱりトグサって奴に会ってみなくちゃ話は進まない……か」
「トグサ、さん……」
その名前を聞いて、フェイトも複雑な表情をする。
「……ん? どうした? まさかトグサと知り合いか?」
「ち、違います。……ただ、ここでタチコマからの信頼できる仕事仲間だったと聞いていたので……」
タチコマ――確か少し前の放送で死亡者として呼ばれた名前だ。
そして、そのタチコマを友達と呼ぶという事は……。
「……変な事を聞いて悪かった。やなことを思い出させたみたいだな」
「いいえ、あなたこそ気にしないでください。それに私もいずれそのトグサという方に会おうと思っていたので……」
「……そうか」
フェイトとタチコマの間で何があったかは分からない。
ただ分かるのは、目の前にいる少女も、仲間と悲しい別れをしたという事だ。
自分とヒカル、ミサエのように……。
そして彼は同時に思う。まだこの地のどこかにいるヤーパンの天井時代からのエクソダス仲間の事を。
「……それにしてもゲイナーの奴も今頃何してるのやら……」
すると、その半ば独り言のような言葉に、フェイトが反応する。
「ゲイナー……。あなた、ゲイナーの仲間なんですか?」
「……え? あぁ、そうだ。ゲイナーは俺と同じシベリアから来た…………って、何だって!? お前さん、ゲイナーの事知ってるのか!?」
ゲインは出会ったばかりの少女から出たその名前に、思わず身を乗り出していた。

71 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:29:04 ID:fDCMMh+/
――フェイトとゲイナー、それにレヴィという女性は少し前まで行動を共にしていたが、今は一時的に別行動を取っている。

それが、フェイトの話してくれたゲイナーの現状だった。
「――なるほどな。それじゃ、朝6時にあの駅であいつとは合流するってわけか」
「はい。無理でも電話を入れることになっています」
――ということは、つまり駅にいればどちらにせよゲイナーと接触することができるようだ。
ゲイナーがゲイン同様に脱出への手がかりを探している以上、彼とその仲間であるというレヴィは協力者になりうる人材だ。
ならば、ゲイナーとは是非接触を試みるべきであろう。
現在、時刻は4時を回ったところ。
6時にゲイナーと接触するために駅へ向かうとしても、まだ周囲を見て回る余裕は残っている。
時計を見ながら、そんなことを考えていると、フェイトが声を掛けてくる。
「あの……ゲイン。一つ聞きたいことがあるのですが、いいですか?」
「……ん? あぁ、勿論。ご婦人、しかも仲間の質問とあらば、趣味からスリーサイズまで何なりと……」
「いえ、そういうのではなくて……。あの、私の知り合いも、ここにいるんです。その人について知っているかどうか聞きたくて」
「君の知人か。……どんな人だい?」
「はい。名前はシグナムといって、ピンク色の髪をポニーテールにした凛々しい女の人で――」
――剣を得意武器としていて、場合によっては甲冑のようなものを身に纏っている。
そこまで聞いて、ゲインは思い当たる節が一つだけあった。

――……の、ぶたの……で……ひかっている……あれ、を……とってく……れ

髪はざんばらで、凛々しかったであろうその顔も酷く損壊、全身を血に濡らした亡者のようないでたちであったが、ゲインには何となく分かった。
彼女こそが、フェイトの言う清廉な守護騎士シグナムなのであろう、と。
シグナムという女性に一体何があったのかはゲインの知る由ではない。
知るのは、彼女が二人の参加者を無残な方法で殺害した事実のみ。
非情な言い方になるかもしれないが、これも現実なのだ。
「思い当たる節が一つだけある。……だが、それはお前さんにとって聞く覚悟が必要だ。それでも聞きたいか?」
ゲインの問いに、フェイトはただ黙って頷く。
「……そうか」
ゲインは彼女の意志の固さを確認すると、自分が知るその事実を語り始めた…………。

72 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:30:26 ID:fDCMMh+/


――シグナムは参加者を殺害する側に立っており、ゲインの目の前で壮絶な最期を遂げた。

そんな話を聞いて、フェイトは驚き半分、納得半分といった思いだった。
自分の知る心優しいあのシグナムが、外道に堕ちたことは衝撃的であったが、それと同時に闇の書事件にてはやての命を救うために彼女が行ってきたことを思えば、ある種納得のいく行動だったのかもしれない。
きっと今回もはやての死を聞いて、彼女の中で何かが壊れてしまったのだろう。
思えば、ギガゾンビは優勝者には一つだけ願いをかなえてやるといった甘言を漏らしていた。
主を失った騎士はその言葉を信用して、藁をも掴む思いでがむしゃらに動いていた可能性がある。
しかし、これはあくまで憶測。
実際に彼女が何を考えていたかは、最早知る術もない。
今、彼女に判ることと言えば……
「これで私一人、か…………」
なのは、はやて、ヴィータ、シグナム。
これで、元の世界での知人は自分以外に誰もいなくなってしまった。
――それだけが、今彼女が手に入れた揺るがない事実だ。
「教えてくれてありがとうございます、ゲイン」
「……もう、大丈夫なのか?」
「完全に……とはいきませんが、大丈夫です」
――とは言うものの、フェイトだってまだ少女なのだ。
元々の知人の全滅、という事実を知って、全く動揺しないわけがない。
だが、それでもここで立ち止まるわけにはいかない。
折角、ゲインが脱出の為の情報を持って、仲間になってくれたのだ。
この機を逃すわけにはいかない。
後ろを振り返る前に、前を――未来を見なくてはならないのだ。
バトルロワイヤルという闇を打ち砕く光を手に入れるために。
そして、そんなフェイトを見て、ゲインは感心したように声を掛ける。
「……強いな、フェイトは」
「私は強くならないといけませんから。……死んでいったカルラやタチコマ、はやてにヴィータ、シグナム……それになのはの為にも」
自分の為に死んでいった者達の為に、ゲームのシステムに無念にも殺されていった参加者達の為にも、自分は身も心も強くならなければならない。
強くなければ、今後の脱出など叶わないのだから。
「ゲイン……まだ、ここの装置は破壊していないんですよね……?」
「ん? あぁ、そうだ。俺が無闇矢鱈に壊して回ってたら、流石に奴さんも俺が何をしようか勘付きそうだしな」
「……なら、私にその装置の破壊、任せてもらえませんか?」
「……何?」
いきなりの提案にゲインはやや驚いたような顔になる。
「いきなりどうした? 装置の場所が分かってるんだ。別にそんなに慌てなくても――」
「私も……私も皆の為に何かがしたいんです。……だから、私にあの装置を壊させてください」
今までは誰かに守られっぱなしであった。
あの森の中での銃撃の時はカルラが、桃色の髪の魔法使いとの戦いの時は、なのはとタチコマが身を呈してくれた。
だから、今度は自分の番だ。
この手で、この悲しいゲームに終止符を打って、今まで助けてくれた皆に報いたかったのだ。
ゲインは、そんな彼女を見て、やや気持ちが走り気味だと思うものの、その何かを決めた瞳を見てしまっては、阻止する気にはなれなかった。
「…………本当にいいんだな? もしかしたら意図を勘付かれてドカンかもしれないんだぜ?」」
「そんなことで一々怯えていたら何も始まりません。それに、目の前にやるべき事があるのにそれから逃げるなんてこと、私には出来ない」
彼女の決意は固かった。
ならば、ゲインが下す決断も一つしかなかった……。

73 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:31:36 ID:fDCMMh+/


「……これが亜空間破壊装置」
駅ホーム下。
線路に下りたフェイトは電車の底部を覗き込み、装置の存在を確認した。
その傍らにいるのはバルディッシュのみで、ゲインはいない。

――それでは、装置を破壊するのでゲインは駅から離れていてください。
――離れる、って……、ご婦人を一人にしていくなんてこと……
――ここにゲインがいては、装置を破壊した時に、計画に勘付かれる可能性があるはずです。
――いや、しかし……
――私なら平気です。ですから……お願いします。
――………ご婦人きっての願いとあらば仕方あるまい。分かった、俺はしばらくそこらを歩いて回ったら喫茶店に戻る。それでいいな?

フェイトの提案によって、一時的に分かれたゲインは、今頃市街地を歩いているはずだ。
よって、今彼女の傍にいるのは愛用するデバイスのバルディッシュのみ。
「それじゃ、バルディッシュ。全力全開でいくよ」
『Yes,sir!』
掛け声と共に、カートリッジが一発ロードされ、金色の魔法陣がフェイトの足元に現れる。
そして、彼女が持つバルディッシュはその形状を斧から光の刃を持つ鎌のように変化させた。
『Haken Form』
それが、近接戦闘に特化したバルディッシュの姿、ハーケンフォーム。
「装置だけを壊しに来たと思われないように破壊するには一気に大きく破壊すること……」
今回の破壊において、必要なのは不自然さの隠滅。
それを行う為には、ピンポイントでの装置の破壊ではなく、もっと広範囲の破壊――それこそイライラが募ったからという理由で行ったような滅茶苦茶な破壊を行うことが一つの手として考えられるわけで――
「なら、この車両ごと壊すのみ……!!」
そして、その鎌を構えたフェイトは、一呼吸置いて、それを一気に振り下ろした。
「はぁぁぁっ!!」
『Haken Slash』
大振りに振り下ろされたその鎌は、亜空間破壊装置を含む電車の2両目を熱した飴のように容易く縦断、それから少し遅れて列車は轟音を立てて、文字通り二つに“折れた”。
勿論、これによって、ここの亜空間破壊装置は完璧に破壊されたわけである。
「これで、脱出に一歩前進したんだよね…………」
フェイトは目の前で鉄塊と化した物体を見ながら、感慨深げに呟く。

――残る亜空間破壊装置はあと2つ…………。

74 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:33:14 ID:fDCMMh+/


(まったく……ヒカルといいミサエといい、何でここにはこんなに強いご婦人が揃ってるんだ)
ゲインは、駅の方から聞こえる轟音を背に、今まで出会った女性の事を思い返していた。
思えば、自分が出会った女性達はことごとく心が強い者ばかりだった。
それは、元々そういう人達が多く集められていた為なのか、このゲームの中で心が鍛え上げられていったのか、それとも自分の女性運のせいなのか。
その真相はわからないが、今自分が行おうとしていることを考えれば、それは好都合だ。
エクソダスには、勿論人員や技術、それに状況判断力などといったものが重要となってくるが、その根幹を支えるのは、エクソダスをする一人ひとりの気の持ちよう。
そう、心が強い者が集まれば、それだけ脱出への道も拓きやすくなるのだ。
(中々頼もしい、小さなご婦人を仲間にひき入れることが出来た。朝まで待てばゲイナーの奴とも話が出来る、か)
彼はひとまず、自分の中で今後の行動について大まかな予定を組み上げる。
以下が、その大まかなスケジュールだ。

――まず、6時まではこの周囲を歩き回り、仲間を探したり、脱出に関する情報を手に入れたりする。
  この際、途中で喫茶店に戻り、フェイトと合流を図る。
――そして6時になったら、フェイトと共に駅に向かってゲイナー達と直接もしくは間接的に合流、可能であれば寺か温泉の装置の破壊を頼む。
――その後は引き続きフェイトに同行、連絡を取るなり直接市街を歩くなりして、同志を増やしつつ、トグサを合流を図る。

(ま、予定通りに進むなんてこと、あるはずがないがな……)
自分に都合のいい予定を組み上げたことに、ゲインは思わず苦笑してしまう。
……恐らく、こんなに上手くいくはずがない。
それは、ドームポリスからのエクソダスを行うのと同じ。
必ずどこかで邪魔が入るはずだ。
それは、何者かの襲撃かもしれないし、仲間内での疑心暗鬼かもしれないし、何かの天変地異かもしれない。
それに何よりエクソダスの為に必要であろう仲間が、まだ圧倒的に足りない。
このままでは、もしゲインが倒れた際に、全てが終わってしまう。
……そうならないためにも、フェイトのように自分の意志をついでくれるような仲間をもっと探さなければならなかった。
(仲間…………。さて、どうやって集めたらいいものか……)
被害が拡大する前に一秒でも早く多くの見つけたいとすれば、どのような方法が有効なのだろうか。
それを考えた時、ふと彼の脳裏に思い浮かんだのは、先程シグナムに殺された男の亡骸の傍に落ちていたデイパックに入っていたとある道具の存在。
“アレ”があれば、遠くにいる相手にも声を届かせることが出来る。
相手に自分の声が届きさえすれば、仲間を増やすという目標も叶いやすくなるだろう。
――だが、それは同時に優勝狙いの参加者にも自分の存在をアピールすることになる。
(希望と死が隣り合わになった道具かもな、アレは……)
ゲインはデイパックにしまったままの道具――拡声器について考えながらゲインは夜の街を歩いてゆく……。

75 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:34:07 ID:fDCMMh+/
【E-6・市街地/2日目・早朝】
【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:右手に火傷(小)、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、ギガゾンビへの怒り
[装備]:ウィンチェスターM1897(残弾数5/5)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[道具]:デイパック、支給品一式×10(食料3食分消費)、鶴屋さんの首輪 サングラス(クーガーのもの)
    9mmパラベラム弾(40発)、ワルサーP38の弾(24発)、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(25発)
    極細の鋼線 、医療キット(×1)、マッチ一箱、ロウソク2本
    ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの
    スパイセットの目玉と耳@ドラえもん(×3セット)、13mm爆裂鉄鋼弾(21発) デイバッグ(×4)
    レイピア、ハリセン、ボロボロの拡声器(使用可)、望遠鏡、双眼鏡
    蒼星石の亡骸(首輪つき)、リボン、ナイフを背負う紐、ローザミスティカ(蒼)(翠)
    トグサの考察メモ、トラック組の知人宛てのメッセージを書いたメモ 、『亜空間破壊装置』『監視』『首輪』に関するメモ
[思考・状況]
基本:ここからのエクソダス(脱出)
1:市街地を適当に探索後、喫茶店でフェイトと合流。
2:信頼できる仲間を捜す。
(トグサ、トラック組み、トラック組みの知人を優先し、この内の誰でもいいから接触し、得た知識を伝え、情報交換を行う)
3:しんのすけを見つけ出し、保護する。
4:エクソダスの計画が露見しないように行動する。
5:場合によっては協力者を募る為に拡声器の使用も……?
6:ギガゾンビを倒す。
※その他、共通思考も参照。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。
   :首輪の盗聴器は、ホテル倒壊の轟音によって故障しています。
   :モールダマから得た情報及び考察をメモに記しました。
   :メモに電車での装置の位置が追記されました。


【E-6・駅ホーム/2日目・早朝】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に中程度の傷(初歩的な処置済み)、背中に打撲、魔力大消費/バリアジャケット装備
[装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム、残弾4/6)、双眼鏡
[道具]:支給品一式、西瓜1個@スクライド、タチコマのメモリチップ
[思考・状況]
基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。
1:喫茶店でゲインと合流。
2:ゲームの脱出に役立つ参加者と接触する。
3:カルラの仲間やトグサ、桃色の髪の少女の仲間に会えたら謝る。
※その他、共通思考も参照。
[備考]:襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。
   :首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。
   :亜空間破壊装置、首輪、監視システムについてのゲインのメモを読みました。

76 :自由のトビラ開いてく(修正) ◆lbhhgwAtQE :2007/04/02(月) 21:35:24 ID:fDCMMh+/
[共通思考]
基本:信頼できる仲間を探す
1:6時までに喫茶店で合流する。
2:6時になったら、ゲイナー・レヴィと合流、可能であれば装置(寺or温泉)及びツチダマの破壊を頼む。
3:ゲイナーらと別れた後は、二人で行動し、トグサやその知人達を探す。


【運転士ダマ@ドラえもん 機能停止】
【電車の亜空間破壊装置 機能停止】

※列車運休のお知らせ
本日未明、フェイト・T・ハラオウンの襲撃を受け、車両が著しく破壊された影響で4時30分発の列車の運行が絶望的となりました。
運転再開時刻は不明の模様。
詳しくは、お近くのツチダマ係員に(ry

※監視システム一部ダウンのお知らせ
ゲイン・ビジョウによる運転士ダマ襲撃に伴い、電車内及びイイロク駅のスパイセットが機能を停止、没収されました。
同ツチダマにより制御されていたエフイチ駅のスパイセットについては、詳細不明。

77 :『転』 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/03(火) 22:08:48 ID:9dhxgdFh
両断された列車。主催者への反逆。
それを、しっかりと目で捉えていた者がいた。

(――全く、派手なことをする)

その名はグリフィス。鷹の目は標的を鋭く見通し逃さない。
そう。彼はずっとフェイトを付けまわし、観察していたのだ。
いくら住宅街とはいえ、一歩間違えば自分の身を危機に晒しかねない愚行。
だが、それをうまくやってのけるのがグリフィスである。
もっとも、そろそろ日が出る時間帯。観察もそろそろ打ち切りにすべきだと彼は判断し始めた頃合いだったが……
ここに来て、大きな動きが来た。

(先ほど男としっかり会話をしていたのを見る限り、ミス・ヴァリエールのように狂っているわけではないはず。
 ならば、あの行為も何かしらの理由がある)

フェイトが飛び去っていくのを確認し、グリフィスは素早く車内に侵入した。
切れ味などをじっくり観察しながらも、彼は元・電車だった物の内部を探索していく。

(見事なまでに真っ二つだな。
 まともに戦うと危険だ……それだけ分かっただけでも十分だが)
「どこでもドア〜ギガ……っておうわ!?」
「更に調べがいのある物が存在するようだな」

グリフィスは音の発信源へと、躊躇いなく歩き出して扉を開けた。
そこにいたのは、ツチダマが二体。正確に言えば、五体満足なツチダマと頭部を撃ち抜かれたツチダマがそれぞれ一体ずつ。
その後ろにはかの有名などこでもドアが立っている。

「ギ、ギガ!?
 あんた何したギガ! これをやったのはあんたギガか!?」
「お前はなぜここにいる?
 さっき現れたばかりと言った風情だが」
「えっと、ちょうど今は運転手役を交代する時間で……
 って、そんなことこそどうでもいいギガ!
 質問を質問で返す奴はテスト0点ギガ!」

思わずグリフィスの凄みに圧倒されながらも、ツチダマは何とか虚勢を張る。
もっともこの虚勢は、仲間を破壊した相手がグリフィスならば自分もただではすまないかもしれないという恐怖に基づくものだ。
そんなものでは彼は動じない。

「あいにくだが、違う。
 電車を破壊したものならちらりと見たが、中でお前の仲間を破壊した者は違うようだ」
「……本当ギガか?」
「ゲームの様子を見ている貴様らなら分かるだろう。
 オレにこんなことをする理由は無い」
「そ、それはそうギガが……」

口ごもりながらも、ツチダマはスパイセットを再起動させた。
いつでも首輪を爆破してもらえるよう準備するためだ。
目や耳を象った物体が浮かび上がる様はある種不気味だが、やはりグリフィスに臆した様子は無い。

78 :『転』 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/03(火) 22:09:38 ID:9dhxgdFh
「オレからも質問させてもらう。お前は主催者の手先で間違いないな?」

それどころか、参加者の身でありながらツチダマへの質問を開始した。
その態度に戸惑いながらも、哀れな下僕はそれを肯定する。

「まあ……作ったのはギガゾンビ様だからそうなるギガ」
「つまり、お前は主催者の部下であり。
 そしてそのお前達に攻撃を仕掛けた参加者がいる。そういうことか?」
「……そ、それは確かギガ。
 で、でもお客さん一体何を……」
「オレが求めるのは『契約』だ」

ツチダマの動きが止まる。いったい何を言いたいのか分かっていない様子だ。
もっともグリフィスの口は止まらない。止まらずに、ツチダマに、空気に響いていく。

「恐らくお前達は何らかの手段で参加者を監視しているはずだ。
 ならば、オレがこの殺し合いに乗っていることも分かるはず。
 しかし、一部には殺し合いを良しとしない参加者もいる……」

グリフィスの言葉は完全に推測だが、完全に的を射ている。
もっとも、これくらいは少し考えれば分かることだ。
しかし、それを踏まえてグリフィスがした行動は、常人からかけ離れていた。

「その参加者を駆逐する役割を俺が請け負おう。
 報酬はオレが勝ちやすくなるような装備の追加。
 但し、まず最初に前払いで何か貰う」

そう。彼は主催者・ギガゾンビと取引しに来たのだ。
ゲームを破壊されるのが怖いならば自分に力を貸せ、と。
これは賭けであったが、分の悪い賭けではない。
この程度で首輪を爆破されるならば、あの魔女の首輪はとっくの昔に爆破されている。
ツチダマは考え込んでいたものの、しばらくして答えを返してきた。

「……支給品の追加は駄目ギガ」
「どうしてもか」
「きっとギガゾンビ様の許可が下りないギガ」
「聞いてみる気は」
「ないギガ」

その言葉に、グリフィスの舌打ちが漏れる。
だがまだ終わりではない。ちらりと彼はツチダマの後ろのドア……どこでもドアを見やった。

79 :『転』 ◆2kGkudiwr6 :2007/04/03(火) 22:11:32 ID:9dhxgdFh
「ならば、直接ギガゾンビに謁見しよう」
「ちょ!?」
「見る限り、その扉を使ってお前はここに来たのだろう?」
「まままま待つギガ!
 そんなことされればギガの責任問題に!」
「なるほど、警告をしない辺りオレが首輪を吹き飛ばされる恐れは無いというわけか」
「い、いや違うギガ! 首輪吹っ飛ばされるギガ!」
「もう遅い」
「ギガァ!?」

迷いながらもひとまず止めようとするツチダマを強引に押しのけ、グリフィスはどこでもドアのノブに手をかける。
そして亜空間へと繋がる扉を開け――叫んだ。

「――ギガゾンビよ! 先ほどまでの会話は聞こえていたか! そしてオレのこの声が聞こえているか!?
 オレの意志を反逆とみなし、首輪を爆破させるのもいい!
 だがその前に一つ、俺の我侭を叶えて欲しい! どうせ死ぬ命、王として粋な計らいを見せる気はないか!?」

――それは、あまりにも恐れ多い『主催者への挑発』だった。
恐怖で身を竦めながらも、ツチダマはグリフィスに対して言葉を上げる。

「え、謁見とかいうのは嘘だったギガか……?」
「嘘ではない。
 聞こえているのならば今ここにその姿を現し、オレと謁見するのは不可能ではないはずだ。
 貴様にはそれだけの力がある。違うか、ギガゾンビよ!!!」

そうして声を張り上げるグリフィスの頭には、「勇猛」と「計算」が同居していた。
さすがに主催者の居城までに襲来すれば、ギガゾンビと言えど許してはおくまい。
だからこそ、ここに留まって挑発する。ここから、主催者との交渉を開始する。
この扉越しには聞こえていなくとも構わない。どの道ツチダマ経由で聞こえているのだろうと分かっている。
道具の効力を勘違いしたピエロと見なされるのもよかろう。恥辱の分、力を手にすればよいだけだ。
それがグリフィスの結論。恐れを知らぬ無謀な行為でありながら、同時に死を恐れた計算高き行為。
故に、だからこそ。

『その願い、叶えてやろうではないか!』

ギガゾンビはグリフィスの狙い通りに、その姿を眼前に披露したのである。

80 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/03(火) 22:40:17 ID:Ng1CXYXk
「……ったくもう、後一歩だってのにさっ!」
 腹立たしそうに魅音が悪態をついた。
「けど仕方ないぜ。射手座なんて単語、普通は知らん」
 ため息をつきつつキョンは答えた。
「そりゃ確かにターゲット1900には乗ってないけどさ……」
 魅音の言葉にキョンは目を丸くした。
「園崎……。もうあれ全部覚えてんのか?」
「そりゃ完璧にって言われたら自信ないけど。まあ、大体は覚えたかな」
「マジかよ……」
 キョンは感嘆を滲ませた声を漏らした。
「けど、あれをやっても定期試験に出んからなあ……。やらなきゃならんと分かっちゃいるんだが」
「そりゃそうだけどね。でも、キョンだって目標は大学受験でしょ? それを考えたらどっちを優先しなきゃならないかってことだよ。
 定期試験はほどほどでいいって、割り切っちゃえばいいじゃない?」
 割り切った場合、定期試験がどんな惨状になるか検討がつくキョンは、苦笑するしかなかった。

 突然、キョンは猛烈に頬をつねりたい衝動に駆られた。

『定期試験』、『受験』。そう、昨日までは確かにそっちが現実だったはずなのに。
 
 ――これはひょっとして夢なんじゃないか?
  
 その思いが猛烈に込み上げてくる。
 慌ててキョンは首を振った。
(逃げるなってんだ。このクソったれたな状況は夢じゃない。現実だ!)
 俯きながらキョンは唇を噛んだ。
「こーこうせいというのは、中々大変なのだな」
 何やら感心したように腕組みをするトウカに、
「そんなことないよ。大変なのは、どこの世界だっておんなじだよ、きっと。
 それに、学校行けば友達もいたしさ……。そんなに……」
 魅音の声が急速に弱まっていき、キョンも胸が締め付けられるように痛むのを感じた。

 ――学校へ行っても、もう死んでいった者達に会うことはない。

 会えるのが、話せるのが、当然だと思っていた。
 いつでも会える、いつでも話せる、そう思っていた。
(もう会えない、って分かった途端に、何でこうもたくさん、あれをしておけばよかったとか、
 言っとけば良かったて思うんだろうな……)
 振り払っても振り払っても、ふとした瞬間に、喪失感と悲しみの波は押し寄せ、何もかも押し流そうとする。
 魅音とキョンにとって、失ったものはあまりにも大きすぎた。
 そして当たり前の日常を思い出してしまったことが、それに拍車をかけた。
 今は前に進む時だとわかっていても、それが死んでいった者達に報いる行為だとわかっていても、それでも……。

81 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:41:32 ID:Ng1CXYXk
「もう少しだ! キョン殿! 魅音殿!」
 トウカの力のこもった言葉に、キョンは顔を上げた。
(何か、ずっと力づけてもらっちゃってるな……。俺も、園崎も)
 病院までの道行きの間、何度この覇気ある声に助けられたことか。
 景気づけにどんな話題を口にしても、すぐに暗い気分になった。
 肉体的な、精神的な疲れで、足が止まりそうになった。
 
――その度に励ましてもらった。

(しかも、それだけじゃなかったよな……)
 途中D−4エリアの川付近を通った時、トウカが殺気を感じたと言い出した時はヒヤリとした。
 もっとも、結局その殺気の主からの攻撃はなかったのだが。
 警戒した3人が相手では分が悪いと考えたのか、多少人間離れした容貌であるトウカの未知の能力を警戒したのか、
 他に理由があるのか分からないが……、
(まあ、トウカさんにビビッたんだろうけどな。俺達ですら、正直怖かった……)
 あれが超一流の剣客の剣気というものであろうか? 人食い虎でも、ダッシュで逃げ出したに違いない。
 その上で後戻りし、南下して浅瀬を渡って渡川したのは少しやりすぎのような気もするが。
 とにかく、何事もなく辿り着けて何よりだ。だが、しかし。
「ちゃんとみんな、揃ってるといいんだけど……」
「……ああ」
 心配そうにそうに魅音は呟き、キョンもまた、声に不安の響きを宿さずにはいられなかった。
(セラスさんたちからも連絡がなかったってのが気になるんだよな。もう、病院についていてもおかしくないはずなんだが)
 病院には、ジャイアン少年の友人であるのび太という少年、ドラえもんというロボット、
 カズマという青年がいるはずだ。

――そして本来はあともう一人、八神太一という少年も「いた」はずなのだ。

(大怪我をしてたらしいから、手当てが間に合わずにっていう可能性。
 次元さんの言ってた峰不二子って人が何かしたっていう可能性。
 まったく違う別の何者かが病院を襲撃したという可能性……。
 どれもあって欲しくないもんだが、とりわけこれは勘弁して欲しいぜ)
 そしてその原因となった者が、劉鳳やセラス達に襲い掛かっていたとしたら?
 キョンは自分の顔が険しくなるのを感じた。
(さっきのあのクレーター……)
 来る途中にあった破壊の後がキョンの脳裏に浮かぶ。
 セラスと劉鳳、特に劉鳳の強さは際立っているが、二人とも疲れの極地にあり、怪我も負っている。
 ゆえに万が一、ということも考えられるのだ。
 隣の魅音もどうやら考えていることは同じようで、銃に手をやって厳しい表情をしている。
(何でだ!? 何で邪魔をするんだよ!?)


82 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:42:38 ID:Ng1CXYXk
 自分達は必死で脱出の方法を模索しているというのに、何故邪魔をするのか。
 苛立ちが募り、心の中で怒りが荒れ狂うのをキョンは感じた。その時、
「キョン殿、魅音殿、ご安心召されい! このトウカのいる限り、お二人には指一本ふれさせませぬ!」
 凛とした声が響いた。
「……アテにしてますよ、トウカさん」
「私もだよっ!」
 表情を和らげ、キョンと魅音は異口同音に言った。
 つくづくこの声には救われる。
「まかされよ! この剣を手に入れた某に、もはや斬れぬもの無し!」
 そう言って、トウカは白鞘からギラリと刀を抜き放ち、天に翳してみせた。
「……なんかスゴそうですね、その刀」

 ――トウカさん、ちょっとハイになってやしないか?
  
 剣を抜くのはいささかやりすぎだ、と思いつつもキョンは相槌を打った。
 もう少しの所まで来たせいで、多少精神が高揚しているのだろうが……・
「うむ、素晴らしい剣なのだ……」
 トウカは嬉しそうに頷き、
「むっ、そういえば――」
続いてどこか悪戯っぽい表情を浮かべた。
「キョン殿には昨日、少しみっともない所を見せてしまっていたな……」
 そう言いながらトウカは、大きめの街路樹の一本へと歩み寄っていく。
「出刃包丁では無理だったが……」
(何をするつもりだ? ……ってまさか!?)
 慌ててキョンが静止しようとするよりも早く、キョンの視界の中でトウカの像がぶれ、
チィンという子気味よい音が響いた。
 一瞬遅れて木がズレ始め――

 数秒後、轟音が夜空を渡った。





「……ふう」
 Ipodの調査をひとまず休憩し、ロックこと岡島禄郎は、後ろ手にドアを閉めると小さく息を吐いた。
 涼やかな夜風が心地よい。コメカミと瞼に手をやり揉み解し、大きく息をする。
 エルルゥには、「大丈夫だ」といったものの、やはりロックとて疲れていた。
 徹夜仕事をしたことは数あれど、流石にここまでヘヴィな一日をこなした後、徹夜した経験は無い。
 そこまで考えて、ロックは自分の手が胸元を探っていることに気づき、苦笑を漏らした。
 外へ行って煙草を吸うのは商社時代についた癖だが、まだ抜けない。
 欧米では煙草を吸うヤツ、イコール、自己管理の出来ないダメな人間、とみなされるため、
 何度も上司から「上へ行きたければ止めろ」と忠告された。


83 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:43:34 ID:Ng1CXYXk
 怒鳴られたこともあった気がする。
(結局止められなかったよな……)
 それは心の奥底で眠る、サラリーマンとして平々凡々な生き方を送ることに対する些細な抵抗であったのか、
 などと、今や表街道を歩けぬ身の上になったことを鑑みて、思い返してみるが……。
(そんなわけないよな……)
 頭をかきかきロックは、自嘲の笑みを漏らす。
 そんな大げさなものではない、強いていうなら、

 ――趣味、だったから

 というのが近いかもしれない。
 どんなくだらない、他人にとっては紙屑同然にみえることでも、何故か心がそれを捨てることを拒否する。
 そういうものが誰にもあるのではないか。
 漆黒の中に浮かぶ黄金の真円を見ながらロックはそんなことを取りとめも無く考え……。

 ずうん……

 夜を響いて伝わってきたかすかな衝撃音に、ロックは思わず身を硬化させ、耳をそばだたせながら
 頭の中で地図を広げる。
 ロック達の今いる場所はC-4・山間部から市街地へ入ったところだ。まあ、C―4といっても限りなくD−4に近い。
この先にあるのは、大通りであり、病院である。
(何てこった……。考えてみりゃ病人は怪我人の集まる場所、つまり、優勝狙いのヤツにとって絶好の狩場じゃないか……)
 ロックの眉間に深い皺が寄った。
 全神経を耳に集中させて音を探る。心臓の鼓動がやたらと煩く聞こえた。
 しかし、それ以降音はまったく聞こえてこない。
(どういうことだ?)
 これだけの人間が死んでいる中、今の今まで生き残っているような人間同士だ。
 幾らなんでもいきなり全滅ということがありえるだろうか?
 ドアを開けて居間にとって返し、ロックは眠っているエルルゥの肩をゆすった。
「……ん……どうし……たんですか? ロックさん」
 寝ぼけ眼のエルルゥの瞳が、覚醒の色を取り戻すのを待って、ロックは口を開いた。
「……病院の方角で大きな音がした」
 ピクリとエルルゥの耳が動いた。
「そ、そんな……」
 せっかくここまで辿り着いたと言うのに、何ということだろうか。
 エルルゥの顔が、みるみる困惑と恐怖に染まっていく。
「落ち着いてくれ、エルルゥ。まだ、物騒なことが起こってると決まったわけじゃない」
 宥めるようにロックはいった。
「……そう、ですね」
 気を落ち着けようと大きく深呼吸するエルルゥに、ロックの表情がすこし和らいだ。


84 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:44:39 ID:Ng1CXYXk
 だが、すぐに顔を引き締め、
「俺は今からいって、ちょっと様子を見てくる」
「えぇ!?」
 小さく悲鳴を上げるエルルゥに、ロックは押し殺した声で続けた。
「行き先に何があるのか、それが確かめないまま、病院に向かうっていうのは、あまりにも危険すぎる」
「でも、ロックさん……」
 思わずエルルゥは、ロックの腕を震える手で握り締めた。
 この世界に飛ばされて以来、エルルゥは何人もの人間に出合った。
 そして、その中の何人かの命は、永遠に失われてしまった。
 喪失の恐怖と不安が、エルルゥの胸を締め付けた。
 揺れるエルルゥの黒い瞳を見て、ロックはエルルゥの手に自分の手を添えた。
「大丈夫。ちょっと見てくるだけだから……。無理はしない、約束するよ」
 手に少し力を込め、エルルゥの瞳を見つめながら、ゆっくりとロックは言葉を紡いでいく。
「万が一、俺がいなくなった後、何か物音が聞こえたら、その時は動かずにここに留まるんだ。その方が多分、安全だ。
 それと、朝までに俺が戻らなかったら、しんのすけ達と一緒にもう一度山の中へ戻ること。いいね?」
「分かりました……。でもっ!」
 エルルゥは顔を上げた。
「そんなことにならないって、私、信じてますから! きっと……。ロックさんはきっと戻ってくるって、信じてますから!」
 ロックの脳裏に、ハクオロという人の名を呼びながら号泣していたエルルゥの姿がよぎった。
(エルルゥにはこれ以上、悲しい思いをさせたくない)
 誰かを失う悲しみを、目の前のこの子に味あわせたくない。
 エルルゥの鈍い悲しみの光を宿した瞳を見ていると、つくづくそう思う。

 ――もう誰も、悲しませたりなんかしない。俺が、絶対に

 自分は確かにそう誓ったのだ。だから。
「心配しないでくれ、エルルゥ。俺は臆病だから、危ない橋は渡りたくても渡れないんだ。
 危ないと思ったら、すぐ逃げ帰ってくるさ」
 穏やかに笑うと、ロックは再び戸口へと向かった。
「ロックさん。どうか、気をつけて……」
 後ろ手に手を振り、ロックは闇の中へと駆け出していく。
残されたエルルゥは手を胸元で強く握り締めるとロックの無事を祈った。



「それにしても、私の名前を使うなんて……。腹立つわね!」
 遠坂凛は苛立たしげにその豊かな黒髪をかきあげた。
「まぁまぁ……。でも、気持ちは分かるけどね〜。自分の名前を語ってるヤツが非道なことして回ってるんじゃあ……」
 言っているうちに、本当に冗談ごとではないという思いが強くなり、セラスの口調も自然と苦いものになった。
 その凛に化けた偽者が暴れれば暴れるほど、凛は襲撃を受けた者達から恨まれ、ことによれば命を狙われることになるのだ。


85 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:45:45 ID:Ng1CXYXk
「……ヤツはどういわけだか、真紅という人形の上に浮いていた宝石のことを知っていた。
 ひょっとしたら俺達が襲われたのは――」
 俺がその宝石を持っていたせいなのかもしれない、と自罰的に劉鳳は続けようとするが、
「ちょっと待って」
 凛の底冷えするような声に遮られた。
 驚いて顔を上げると、そこには眉間に深い皺を寄せた凛の顔があった。
 顔立ちが整っているだけに、えもいわれぬ迫力があり、思わず劉鳳はたじろぐ。
「あなた今、『真紅という人形』って言ったわね? その人形って赤いドレスに金色の髪ってデザインじゃなかった?」
 劉鳳が頷くと、凛の眉間の皺は更に深さを増し、目の端が吊り上った。
「……他には何か言ってなかった?」
 いまや氷点下にまで下がった声音で凛は言った。
「そ、そうだな……。ロー……ミスティがどうとか、言っていた気がする」
「へえ……。そのローザなんとかを手に入れて、そいつはどうしたの?」
「だ……断言はできないが……。力を増したように俺には、見えた」
 不穏な空気を全身から立ち昇らせる凛に劉鳳は顔面を引きつらせ、セラスは思わず腰を引いた。
 だが、凛はそんな二人の様子も目に入らない様子であった。
 ぎしり、と握り締められたレイジングハートの柄が音を立てた。
 峰不二子と情報交換をした時のことが、凛の頭に蘇り始める。

 ――その人形から浮かんだ結晶を、青い制服を着た男が持っていったわ。 遠目で見たからよく分からなかったけど

 凛は劉鳳の制服に目を走らせた。
 制服は青い。

 ――ローザミスティカはとっても大切なものよぉ

 そして出合った時、水銀燈は言っていた。
 ローゼンメイデンは『核となる物を奪って強くなる』、と。

(パスまで絶って、水銀燈が消えたほぼ同じ時間帯に、
 劉鳳の所に劉鳳が『真紅』という人形の『ローザミスティカ』を持っていることを知っている者が現れ、
 しかもそいつは『ローザミスティカ』を手に入れてパワーアップしたと……。
 これを全て『偶然』で片付けられるヤツがいたらお目にかかりたいくらいね)
 そして、『ドール』はただ一人を除いて全滅しているはず。
 黒々とした炎が胸の中で燃え上がるのを凛は感じた。
(でも……。私が戦った相手は、どうみても水銀燈には見えなかった。あまりにも姿形が違いすぎる)
 胸の炎が一瞬火勢を弱めた。
 いやまて。
(あいつが使った魔術は、間違いなくレイジングハート達の世界のものだった……)
 凛は身に纏ったジャケットに目を落とした。


86 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:47:00 ID:Ng1CXYXk
「……レイジングハート。いくつか質問に答えてくれる?」
『何でしょう。マスター』
「さっき戦った、敵の格好なんだけど――」
 凛が口を開きかけたまさにその時、
「やっと会えたわぁ……。捜したのよぉ?」
 水銀燈がドアを開け、室内に入ってきた。
 凛は無言で水銀燈に視線を叩きつけた。
 その視線は、ゲームが始まって一番長く行動を共にしてきた相方に向けるにしては、あまりにも冷たかった。
 部屋に入ろうとする水銀燈を外に押し出し、セラスと劉鳳がいる部屋からある程度はなれた廊下で凛は口を開いた。
「……どこいってたの? それに、よくここが分かったわね」
「だって、私はあなたの使い魔だものぉ」
「そうだっけ? すっかり忘れてたわ」
 凛の声音は酷薄であり、物言いは辛辣極まるものだった。
 だが。
「やっぱり……。怒ってるわよねぇ」
 見たことのない水銀燈のしおらしい言葉と表情に、凛の眉がわずかに緩んだ。
 その眉をすぐに引き締めなおし、
「理由をいいなさい。パスまで絶って私から離れた理由を!」
 すると、水銀燈は力なく嘆息し、
「本当は、カレイドルビーのところには戻らないつもりだったわぁ……」
「えっ……」
 少し驚いたように声を上げる凛に、水銀燈はしおらしい態度で続けた。
「私、覚悟したつもりだったわぁ……。アリスゲームが始まった時、絶対に勝ち残って、『アリス』になることを……。
どんなに仲の良かった妹だって、姉だって倒してみせるって誓ったのぉ
それが私の宿命なんだからって……。そうずっと自分に言い聞かせてきたわぁ」
 沈黙したままの凛に、水銀燈は切々と言葉を綴る。
「でも、一番仲が良かった真紅が死んでるのを見て、何だか力が入らなくなっちゃったぁ……
こんなのが私の望んでたことなのかって思えてきてぇ……。
こんな思いまでしてアリスになってどうするんだろう? そう思っちゃったわぁ……」
 そう言った水銀燈の顔は、凛が今まで見てきた不敵なものを全く感じさせないほど、弱弱しいものだった。
「私は失敗作だったんだわぁ……。アリスを目指すことが私たちローゼンメイデンの全てなのに。
 こんな私じゃ、きっとカレイドルビーの側にいたら足を引っ張っちゃうって――」
「そんなこと、ないわ」
 気が付くと凛はそう口にしていた。
「どんな理由があろうが、血のつながった物同士が殺しあうなんてあっちゃいけないのよ」
キャスターに生贄にされかけ、暴走した桜を止める羽目になった時のことを凛は思い出す。
 あの時、自分は桜を殺そうとした。
 だが、殺せなかった。
 甘いと分かっていても、自分の行動がキャスターのシナリオ通りのものかもしれないと分かっていても、できなかった。
「あんたは、正しいわ、水銀燈。失敗作なんかじゃない!」


87 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:47:57 ID:Ng1CXYXk
 静かだったが、その声音には優しさと確信の響きがあった。
「カレイドルビー……」
 水銀燈の紫の瞳が大きく見開かれた。
「こんな私でも……。カレイドルビーの側に……」
「2つ条件があるわ」
 おずおずと言いかける水銀燈を、凛はきっぱりした声で遮った。
「1つ。私の名前はカレイドルビーじゃなくて遠坂凛よ。だからカレイドルビーって呼ぶのを即刻やめること。
 2つ。そのしおらしい態度を改めることよ! あんたは……」
 一度言葉を切り、凛は小さな微笑を唇の端に上らせた。
「生意気で、嫌味ったらしいくらいの方が、あってるわよ。水銀燈」
「……酷い……言い草ねぇ……」
 搾り出すように言って、水銀燈は顔を手で覆い、俯いた。
「ありがとう……」
 水銀燈の肩が震えているのをみて、凛は視線を逸らした。

 凛は見るべきだった。
 人形の目を。
 嘲りと黒い炎が浮かぶその禍々しい瞳を。
(ありがとぉう、凛。やっぱり、あなたは最高のパートナーだわぁ……)
 
――搾り取れるだけ搾り取らせてくれる、最高の操り人形よ。
 
 彼女に目をつけた自分の判断は間違っていなかった。
 悪魔のような歪んだ笑みを掌の中に隠し、人形は嗤った。

 レイジングハートは歯噛みしていた。
 目の前の人形は、マスターである遠坂凛の泣き所を熟知している。
 どのボタンを押せば、自分の望む答えを引き出せるか知っている。
 今の凛に何を言っても、彼女は躍起になって水銀燈を弁護するだろう。
 それでも言い募れば、彼女はレイジングハートに助言を求めなくなるかもしれない。
 故に、沈黙するしかない。
 それがレイジングハートにはたまらなく歯がゆかった。
 
「……部屋に戻るわよ。新しい仲間、紹介するわ」
 涙を拭くような仕草をして、水銀燈はコクリと頷いてみせた。
(もう知ってるけどねぇ)
 という本音は、表情の下に隠して。
 その時、
 
 ずうん……。
 
という衝撃音が小さく聞こえきたのだった。


88 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:48:59 ID:Ng1CXYXk


「――じゃあ、確認するわよ? セラスさんと私と水銀燈が様子を見に行く。劉鳳は、この部屋で
 のび太とドラえもんと、ハルヒって子を守る。これでいいわね?」
「オッケー。つーか、早く行こうようっ!」
 気が気ではないというようにセラスが言う。
 ここに向かってきているはずのキョン達に、さっきのアイツが襲い掛かっているのかもしれないと思うと、
心配でたまらないのだ。
 魅音の銃の扱いはなかなかのものだったし、トウカの強さも知っている。
 しかし、さっきの魔法使いはデンジャーすぎる。
「……任せてくれ。何があろうと俺が守り抜く。俺の、命にかえてもな」
 部屋の隅にいるのび太とドラえもんを見ながら、劉鳳は言った。
 だが、その声はどこか空ろで弱弱しかった。
 セラスの眉が上がった。
「劉鳳君、大丈夫?」
「……アルターなら発動可能だ……。君達が戻ってくる時間くらいは稼いでみせる」
「そう……。なら、いいんだけどさ」
 セラスの眉間の皺は取れなかった。
(『時間くらいは』、って……。出会った頃と違いすぎでしょ!?)
 あの自信に満ち、己のやることに絶対の確信を持っているように見えた彼は、一体何処へ消えたのか?
(あんな話聞いた後じゃ、無理もないけど……)
 水銀燈と凛が二人で消えた後、ドラえもんを呼んで、峰不二子が起こした騒動についての話を聞いたのだ。
 劉鳳は始め信じたくないという風だったが、美女と呼んでもいい女が中年男性に化けたと聞いてがっくりと肩を落とした。
 そのまま、劉鳳がただうな垂れるばかりだったのが、セラスには凄まじくひっかかる。
(断罪する! って喚いて飛び出していくと思ったんだけどなぁ……)
 それが杞憂に終わったのは喜ばしいが、あまりにも元気がなさすぎる。
 きっと、全ての行動が裏目裏目に出ているように感じ、自信を喪失しているのだろう。
 力づけてやりたいのだが、今は時間が無い。
「慌てないで、セラスさん。物音はあれ一つだけで、その後が無い。罠の可能性だってあるわ」
「それは……。わかってるけど」
「そうよぉ……。イライラしちゃいけないわぁ。ちゃんと乳酸菌とってるぅ?」
 セラスは声のした方に視線を移した。
「な、なぁにぃ? 私の顔に何かついてるぅ?」
 険しいセラスの視線に驚いたように人形が――水銀燈というそうだ――言う。
「べつに……」
 ぷいっとセラスは顔をそらした。
(なんっか気に入らないのよね……。この人形)
 どうも吸血鬼のカンが、騒ぐのだ。この人形は碌なヤツではないと。
 それに、このしゃべり方、仕草。
(似てんのよねぇ。さっき襲ってきた、あの女に)
 大きさと顔からして、そんなはずはないのは分かっている。


89 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:49:54 ID:Ng1CXYXk

 ――だが、どうにもひっかかる
 
 セラスが短い金髪を乱暴にかき回したその時、

「なにもたもたしてんのよ!?」
 
怒声を上げながら黒髪の少女が蹴り砕かんばかりの勢いでドアを蹴り開け、部屋に飛び込んできた。
「あたしの団員と、あんた達の仲間が襲われてるかもしれないのよ!?」
「あのね……。はるひちゃん」
「るさいわねっ! 気安くさわんないでよ!!」
 セラスの手をハルヒは振り払った。
「今行こうとしてたところよ……」
 ため息をついて凛は言った。
「……あなたと違って私たちは命張らなきゃならない。慎重に行動するのは当たり前でしょ。
 それくらい分からない?」
 その声音に険が含有していた事に関して、凛を責めることはできないだろう。
 一貫して脱出を模索してきたにも関わらず、優勝狙いの殺し屋扱いされ、いい加減凛も頭に来ていたのである。
 それに。
(まったく……。カートリッジ一つ使って治療してあげたっていうのに! なによ? この態度)
 赤の他人同然の関係にもかかわらず回復魔法を施してやったのに、感謝の言葉一つ発せずにこの態度。
 恩知らずにも程がある。
 もっともハルヒからすれば、自分達の命を一度狙ったことがある人間と同じ空間にいるだけでも我慢しているといえたのだが。
 ハルヒを押しのけて廊下へと歩き出す凛に、ハルヒはふんっと鼻を鳴らした。
「どうかしらねえ? 本当に命張る気があるのか怪しいもんだって言ってんのよ!」
「何ですって?」
 凛の剣呑な眼光に怯みもせず、
「一人でも参加者が減れば、優勝するのが楽になるものねえ……。分かりやすい発想だわっ!!」
「あんた……。いい加減に――」
「まっ、まあまあ。凛ちゃんもハルヒちゃんも落ち着いて……。ね!? ほらっ……早く行かないと」
 殺気に似たものすら漂わせて睨み合う二人の間に、慌ててセラスは割って入った。
「……分かってるわ」
 怒りのオーラを発しながら凛は大股で玄関に向かって歩き出し、セラスもそれに続いた。
その後ろ姿を睨むハルヒの目の前に、
「確かにあなたの気持ちも分かるけどねぇ。仕方がないわぁ」
 人形が現れた。
 一瞬驚いたように目をしばたたかせたハルヒだったが、見る間にその顔は険しくなっていく。
 かまわずに水銀燈は続けた。
「ルビーは基本的にメリットのあることしかやらないし、あんまり人を信用しないものぉ……。
だから貴方のお友達を助けに行くのは、あんまり気が進まないんじゃないかしらねぇ」
「そんなもん、見ればわかるわよっ!」
 怒りと共にハルヒは吐き捨てた。


90 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:51:00 ID:Ng1CXYXk
「……なにっ!? あんた。消毒液くさいわよ!?」
 何もかも気に入らないといった調子で怒りを爆発させるハルヒに、水銀燈は困ったような表情を浮かべてみせる。
「さっき間違えてかぶっちゃったのよぉ。なのに、ルビーがシャワー浴びる時間もくれいから……。
ホント、困ったものだわぁ……。人形使いが荒くて」
「そこまで言うんなら、さっさと使い魔なんかやめればいいでしょ!!」
「それができないのよぉ……」
 水銀燈は大げさに肩をすくめて見せた。
「いったん契約しちゃうとねぇ……。使い魔は、ご主人の言うことを聞くしかないのよぉ
 主人が契約を解くその日までね」
「人を見る目がなかったあんたが悪いんでしょ!」
「それを言われると返す言葉がないわぁ……」
 一言のもとに斬って捨てるハルヒに、水銀燈は苦笑してみせた
「何してるの!? 水銀燈。早く来なさい!」
「はぁい! ただいまぁ!!」
 玄関の方から飛んだ鋭い声に向かって返事をしながら、水銀燈はハルヒに手を振って歩き出す。
その背中に ハルヒの声が飛んだ。
「ま、せいぜい頑張ることね……。辛い年季だっていつか明けるものよ」
「ありがとぉう」
 ハルヒの声がわずかに和らいでいたことに、水銀燈はほくそ笑む。
(ちょろいもんねぇ……。これでまた一人、凛の敵が作れたわぁ……)
 スピードを上げるために飛翔して水銀燈は半壊した正面玄関へと向かう。
「何を話してたの?」
 トゲトゲしく尋ねてくる凛に、
「あのねぇ……。あんな言い方をしたら、いつまで立っても誤解されたままでしょぉう?」
「いいわよ、別に。ハナから信じようとする気がない人間に何言っても、無駄だもの。
けどまあ、あんたの気遣いには感謝しとくわ……。ありがと」
「どういたしましてぇ……」
 本当にチョロイものだと水銀燈は心の中で舌を出した。

 しかし、水銀燈は勘違いをしていた。
 涼宮ハルヒが信用しているのは、『人間の形をした水銀燈』であって、人形の姿をした水銀燈ではない。
 ハルヒにとって水銀燈は、凛と同じく自分達を襲撃した明確な『敵』だったのである。
 先ほどの会話もハルヒがわざと水銀燈に警戒心をもたれないように自制しただけであって、
ハルヒはまったく水銀燈のことなど信用していない。
 それどころか、さらに怒りを強めてすらいた。
(最っ低ね。自分の親玉がいないところで、悪口言うなんて。下をみれば上が分かるっていうけどまさにその通りだわ)

 やはり二人とも全く信用ならない。

 それが涼宮ハルヒの出した結論だった。


91 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:52:04 ID:Ng1CXYXk
「ハルヒちゃん……。そろろそ部屋に入った方が……」
 ドラえもんが部屋から顔を出して言ってくるが
「っさいわね! ほっといてよ!」
 ハルヒの拒絶が聞こえたのか、劉鳳も部屋から姿を現した。
「そうはいかない。まとまっていてくれなければ、今の俺では守れない。俺は、君達を守らなくてはならない」
 ハルヒは、劉鳳の全身をじろじろと眺めた後、
「結構よ! あんた、なんか頼りにならなさそうだし」
 そう言い放った。
「なっ……」
 思わず劉鳳は沈黙する。
 普段の劉鳳なら、何も言わずに襟首を引っつかんで部屋の中に放り込んでいただろう。
 だが、今の劉鳳にはできなかった。
 みすみす多くの人間を死なせ、見る目を誤って殺人者を病院に送り込んで犠牲を増やし、
守りたいと思った少年に逆に庇われ、命をつないでいる自分。

――俺の心の友は、もっと、もっと優しいんだぞ

リヤカーの上で誇らしげに言っていた武。
あんなに会いたがっていた友達と会わせてやることができなかった。

――武。お前は俺が必ず守ってやる。

自分は確かに、武にそう言ったのに。
守るどころか守られ、おめおめと生き延びている。
(そんな俺に……。何ができる? 何が守れる?)
劉鳳はただ、立ち尽くすことしかできなかった。
「ねえっ……。あんた何か便利な道具持ってないの? 物によっては私の着せ替えカメラと交換してあげるわよ?」
 立ち尽くす劉鳳を無視し、ハルヒはドラえもんと交渉を始める。
 クローンリキッドごくう、の他に何か決め手が欲しい所だ。
「ボクの持ち物は、竹刀と変なディスクだけだよ……。他のはみんな取られちゃったんだ」
「そうだったわね……。ったく、あの年増女!」
 ハルヒは腹立たしそうに悪態をついた。
 あの女のせいで、ヤマトとアルルゥという二人の特別団員と別れ別れになってしまった。
 ドラえもん達の仲間が助けに言ってくれているというが、果たして……。
「とにかく……。危ないから、部屋に入っていたほうがいいよ。ハルヒちゃん!」
「そうはいかないわ! あたしの目の届かない所であの女が――」
「そんなに僕達のことが信用できないなら、勝手にしなよっ!!」
 突如、部屋の中から大声が響いた。
「の、のび太くん?」
「治療してくれた凛お姉さんに酷いこと言って、今度は劉鳳さんにまで……。酷すぎるよっ!!
 膝を抱えてうずくまりながら、のび太は絶叫した。


92 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:52:56 ID:Ng1CXYXk
誰も彼も死んでいく。
 友達が、信頼した人が、みんな死んでいく。
 あの強かったジャイアンまで、無残な死体になっていた。
 これ以上ないほど傷つき、ささくれ立ったのび太の心は悲鳴を上げ、安らぎを欲していた。
 今ののび太にとって、仲間を罵る言葉を吐き散らすハルヒは、耐え難いほど目障りな存在だった。
「……勝手にするわよ」
 言い残してハルヒは何処かに消え、劉鳳は空ろな目で力なくベッドに腰を下ろし、のび太は部屋の隅で膝小僧を抱えている。
(どうしてこうなっちゃたんだろう……)
 ドラえもんは悲しげにため息をつくばかりだった。



警戒しながら進み、病院にある程度近づいたところで足を止め、三人は周囲を警戒していた。
 
――もう何分こうしているだろう? 

 数時間にも感じられる。
キョンの背中を嫌な汗が流れ落ちた。心臓の音がやたらとうるさい。
トウカが刀に手をやって、辺りを睨み、魅音が銃を構えている。
(あれだけ盛大に響いちまったからな……)
 誰に気づかれてもおかしくない。それに。
(誰も病院から出てこないってことは……。やっぱり何かあったのか!?)
 その元凶がそこらに潜んでいるかもしれないと思うと、自然と目があちこちを行き来する。
 あの暗い影から今にも誰かが出てきそうで……。
 キョンはごくりと唾を飲み込んだ。
「……すまぬ。キョン殿、魅音殿……」
 その声は本当に苦しげだった。
「どうして某はこう、やることが雑で、短慮で……浅薄なのだ。本当に……すまぬ」

「謝るのは私たちのほうだよっ」

 油断無く銃を構えながら魅音が言った。
「私たち、ホテルを出てからずっとトウカさんにオンブ抱っこしてた……。
 トウカさんだって、大切な人をなくして、悲しくて、疲れてるのに。
 自分ばっかり辛そうな顔してさ……。ごめんね、トウカさん」
 まったくだ、とキョンは心の中で自嘲を漏らした。
 トウカは、一回目の放送を聞いた後、トウカは本気で腹を切ろうとしていた。

 ――そこまで思いつめてた人が、すぐに立ち直れるとでも思ったのかよ?

 キョンはケンカ手袋で自分を殴りたい衝動に駆られた。
(トウカさんだって、死ぬほど傷ついてるに決まってるだろう!)
 それなのに必死で自分達を励まし、労わってくれた。
 魅音はともかく、どう考えても戦力になりそうもない自分を守ろうと、ずっと気を張りすぎるほど張って、
ここまで連れてきてくれた。


93 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:54:14 ID:Ng1CXYXk
沈みがちの自分や魅音を励まし、勇気付け続けてくれた。
「……園崎の言う通りですよ。ずっと一人で頑張らせちゃってすいません、本当に」
「キョン殿……。魅音殿……」
「そうそう! だからさっ、トウカさんだって辛かったら私やキョンに言ってよ。
 私たちは……仲間なんだからさっ。ねっ! キョン」
「だな!」
 力強くキョンが答える。
 ややあって、
「本当に……。本当に某は、よい仲間を、もった……」
 一言一言噛み締めるようなトウカの言葉に、こんな状況だというのにキョンは胸が熱くなるのを感じた。
 それは魅音も同じだったようで、グスっと鼻をすする音がした。
「……でもまぁ、確かにちょっとうっかりさんだなって、おじさん思ったかな」
「すいません、トウカさん。俺もです」
 冗談めかした二人物言いに、トウカが少し笑い、
「あいすまぬ……。某としたことが」
 いつものフレーズを口にした時、病院の中から人影が走り出た。

「お〜い!! トウカさ〜ん! 魅音ちゃ〜ん!! キョンく〜ん!!」

 聞こえてきた声に、三人は安堵の表情を浮かべた。


94 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:55:15 ID:Ng1CXYXk


「だから、間違いねーってのに」
 吸血鬼の超感覚、第三の目で三人を視認したセラスは凛と水銀燈にいった。
 セラスが、『見よう』とすれば何百メートル先だろうと見える。
 それは夜だろうと変わらない。
「待って! 今、魔法で辺り全部を索敵するから」
「だからぁ、間違いなく、ホテルで一緒に戦った仲間だってば……」
 セラスはため息をついた。
「でもぉ……。じゃあ、どうして木を倒したりしたのかしらぁ?」
「しらねーわよ、そんなの」
 そっぽを向きつつセラスは言った。どうにもこの人形はカンに触る。
「とにかく私、行くから!」
「ちょっ……」
凛が静止する間もなくセラスはそう言って駆け出していく。
 気を揉んでいた仲間が無事辿り着けたのだから、少しでも早く迎えてやりたいと思ったのだ。
 それに、やたらと警戒する水銀燈と凛に対するあてつけのような気持ちも少しあった。
「あらあらぁ……。短気な人ねぇ。どうするのぉ? 凛」
「放っておくわけにもいかないでしょ! 私たちもいくわよ」
 そう言って凛は足早にセラスの後を追った。




「セラス殿!」
「セラスさん!」
 キョン達はセラスに駆け寄った。
「よかったぁ、無事で……」
 大きく息を吐きながら笑顔を浮かべるセラスに、キョン達も笑い返す。
「セラス殿も無事でよかった……。劉鳳殿や、武殿は病院の中に?」
 3人を代表して、トウカが尋ねると、セラスは顔を曇らせた。
「ちょっと長くなるから……。とにかく3人とも中に入ってよ。疲れてるでしょ?」
 煮え切らないセラスの言葉に、3人が顔を見合わせたその時、
「セラスさん、その人達なの?」
「そんなに早く走らないで欲しいわぁ……」
 2つの影が近づいてくる。
 その小さな影が視認できる近さまで近づいた時、
 
 魅音の顔が驚愕に染まった。

 慌てて魅音は銃をかまえようとする。
 だが、一刹那先んじた無数の黒羽が、魅音に殺到した。


95 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:56:45 ID:Ng1CXYXk


――まずい

 電光の如くその思いが水銀燈の脳裏を掠めた。
 あの緑色の髪の少女は、温泉近くで自分がカレイドルビーの悪名をばら撒こうと襲った少女だ。
 少女も気づいたようで慌てて銃を構えようとしている。

 ――遅い

 自分の方が速い。
 そう確信した水銀燈の顔に悪魔の笑みが浮かぶ。
 だが、その顔はすぐに凍りついた。
 
 疾風のごとく黒い影が少女の前に走りこんだかと思うと、銀光が闇のなかで煌いた。
 爆裂音が連続して轟き、一呼吸おいて、粉砕された羽が闇の中をひらひらと舞い散った。
 舞い散る羽の後ろに見えるのは、刀を構えた獣耳の女。

 水銀燈は愕然とする。
 真紅のローザミスティカを得た、今の自分の黒羽が叩き落とされるなど、予想外にも程があった。
 しかし、トウカの剣は特殊合金に隕石と虎徹、良兼、正宗の三大名刀を合成させた至高の名刀、『斬鉄剣』であり、
 今は無きその刀の持ち主も居合いの達人であったせいか、斬鉄剣は長年の愛刀よりもトウカの手に馴染んでいた。

 ――某に斬れぬもの無し!

 トウカ自身は戯れに口にしただけだったが、実は本当にその域に達しつつあったのだ。
 そしてトウカが知らぬことを水銀燈が知るはずも無く、水銀燈はただ唖然として硬直するばかり。
「何てことすんのよっ!?」
そこへ怒声と共にセラスが跳躍し、掴みかかった。
 慌てて避けようとするが避けられず、水銀燈はセラスに捕獲されてしまう。
 頭に血が上りかけるが、必死で水銀燈は頭を巡らし、
「それはこっちの台詞だわぁ!? なんてヤツをつれてくるのよ!?」
「はぁぁ!?」
「あいつは、私に山の中で私に襲い掛かっ――」
「ふざけんなっ!!」
 セラスと水銀燈の怒号に魅音の怒号が加わった。


96 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 22:59:06 ID:Ng1CXYXk
「セラスさん、そいつらから離れてっ! そいつらは敵だよっ!!」
「み、魅音も待って! ト、トウカさんもぉぉっっ!!」
 悲鳴染みたセラスの絶叫に、凛に斬りかからんとしていたトウカは動きを止めた。
「し、しかしセラス殿! こやつらは、かれいどるびーなる悪漢どもではないのか!?」
「それ誤解っ!! 全部誤解だからっ!!」
 二つの勢力の激突を止められるのは自分しかいない。
 セラスは喉も枯れよとばかりに絶叫した。
「凛!! トウカさん!! 魅音ちゃん!! キョン君!! 水銀燈!!
 みんな落ち着いて!! 話せばわかるって!!」
「セラスさん信じてよっ! 私はその人形に襲われたんだっ! そいつは敵なんだよっ!!」
 魅音が苛立ちと絶望を滲ませて絶叫すれば、
「カレイドルビー、あの女の言ってることは嘘っぱちよぉ!!」
 水銀燈が、凛に訴えかける。
 凛は沈黙したまま、それでも水銀燈と緑色の髪の少女にせわしなく視線を走らせた。
「黙れっ!! この性悪人形っ!!」
 逆上した魅音がライフルを構え、
「ばっ……。やめろ園崎! セラスさんに当たっちまうぞ!!」
 キョンが慌てて抑えつける。
「そっちの人も騙されちゃだめよぉ! その女は悪党よぉ! ほらぁっ!! 
今も仲間ごと撃とうとしたでしょぉ!?」
「人形風情がぁっ!! 魅音殿を侮辱すると許さんぞっ!! 」
「だからみんな落ち着けっつーのにぃぃっ!!」
 セラスの必死の努力は報われず、場は混乱の坩堝と化していた。
「トウカさん落ち着いてくれ! 園崎! 言いたいことはあるだろうが、とにかく相手の話――」
 言いかけてキョンは口を半開きにして、体を停止させた。
 その波は魅音、トウカにも広がっていく。
 つられるように、セラス、凛、水銀燈も後ろを振り返り、あまりの光景に体を硬化させた。

 15人の同じ顔、同じ格好をした少女が、一斉に彼らに突進してきた。


97 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:00:06 ID:Ng1CXYXk


(とうとう尻尾を出したわね!!)
 水銀燈が、キョン達と一緒にいた仲間に攻撃するのを見た瞬間、ハルヒは決断した。
 クローンリキッドゴクウを頭にふりかけ、15体の分身を作り出す。
「GO!!」
 号令と共に、全員で突撃。
 10人の自分が、人形と偽凛に殺到していく。
『Wide area Protection』
 しかし、その10人が襲い掛かる寸前、気味の悪い声と共に、透明な壁が展開される。
(それぐらい予想のうちよ!) 
 あれぐらいの芸当は出来ると思っていた。
 元々10人は囮。
(団長たるあたしが、特別団員の使った手を真似するのは気に入らないけど……)
 本命は。
「「くらえっ!!」」
 2人の自分が、偽凛、セラス、水銀燈の前に回りこみ消火器を噴射。
 白煙が3人を包み込んだ
 その隙に、本体の自分は。
「は、ハルヒか!?」
「ったりまえでしょっ!! こっちよっ!!」
 少年の声が耳に届いた瞬間、涙が出そうになった。
 少年の腕を掴み、強引に引っ張りながらハルヒは地を蹴った。
 途中から重さがなくなった、少年も走り出したのだ。
 何も聞かずに同じ方向へ走ってくれる。そのことがたまらなく嬉しい。
 住宅地へと向かい走る、走る。
「キョン殿!」
「キョン!」
「あんた達もっ!!」
 ハルヒの絶叫に釣られるように、後ろの二人も走り出す。
 何やら後ろでセラスの声が聞こえたような気がしたが、完全無欠に無視。
 市街地に走りこみ、後ろの2人がついてきているのを――
「そなた、涼宮ハルヒ殿か!?」
「そ、そうよ!
「なるほど、キョン殿から聞いている通りだ……。こんな状態ですまぬが、聞きたいことが――」
「後よ! 後にしてっ!!」
 いつの間にか自分の横を並走している獣耳の女性に答えながら、滅茶苦茶に角を曲がる。
「ちょっ……と……。待って……くれ」
 手を引っ張っている相手の呻き声にハルヒは足を止めた。
 荒い息を吐きながらうずくまるキョンに、
「何よ! なさけないわねぇ……」
 ハルヒは腰に手を当てると鼻を鳴らした。
 女の子より先にへばるとは情けない。
「まあまあ、キョンはホテルからずっと歩いてきて、疲れてるんだからさ」
 一人の少女がハルヒに近づいてきた。
「私は園崎魅音。あんたが涼宮ハルヒさんだね。キョンから聞いてるよ」
 その頭の後ろで揺れるポニーテールが、ハルヒにはほんの少し羨ましい。
 続いて獣耳の女性が進み出た。


98 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:01:05 ID:Ng1CXYXk
「先に名を名乗る礼を失したが、某の名は――」
 ダンっという音と共に獣耳の女性が、ほとんど瞬間移動したかと思うような速度で、曲がったばかりの角に向って高速で走る。
(は、はやっ!?)
 目を見開くハルヒの視界で、女性が剣を抜き放とうと……。
「おわっと……。俺だよ!」
「……ロック殿!?」
「久しぶり……って言ったほうがいいのかな、この場合……」
 ワイシャツ姿の見知らぬ男が角から姿を現した。



 ハルヒの分身が消え、白い煙が晴れた頃には当然というべきか、人っ子一人残っていなかった。

「キョンくーん!! 魅音ちゃーん!! トウカさーん!! カムバーックっ!!」
 
 返事はなかった。
 
 セラスの膝ががくんと落ちた。
(なんつーことに……)
 キョンの腕を引っ張って逃げたハルヒが、自分達のことを何と言っているかは見当がつきすぎるほどつく。
 今でも十分こじれているようなのに、これ以上こじれたら……。
(これはもう、ダメかもしれねーわ)
 どっと疲れが込み上げてくる。
「ちょっとぉ……。いい加減、離して欲しいわぁ……」
 ギラリとセラスの目が光った。
「そもそもあんたが……。攻撃なんかしたから!!」
「言いがかりはよして欲しいわぁ! あの緑髪の子が銃を構えようとしたの、見たでしょう?」
「そ、それは……」
 口ごもるセラスに、
「セラスさん……。とにかく、水銀燈を離してくれない?」
 凛に言われ、不承不承と言ったように、セラスは水銀燈を離した。 
「水銀燈……。一つ聞くわよ?」
 水銀燈に向かって凛は鋭い視線を叩きつけた。
「なにかしらぁ?」
「あんたの言ってた、山で襲ってきたっていうポニーテールの子、それがさっきの子なのね?」
「そうよぉ……。ねえ、まさか凛まで私を疑うつもりなのぉ?」
 心細げに水銀燈が問いかけると、それには答えず、
「セラスさん……。そういうことよ」
「……凛、あんた……」
「大して力を持たない人間が優勝を狙うとしたら、集団の中に身を隠すっていうのは効果的だわ。
 そう思わない?」
 何度か口を開きかけた後、セラスは苛立たしげに左右に首をふり、
「……凛、あんたがそれを心の底から信じてるっていうなら、何も言わないわ」


99 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:02:01 ID:Ng1CXYXk
 鋭い眼光で水銀燈を睨みつけた後、セラスは踵を返した。
 無論納得など、欠片ほどもしていない。
(水銀燈と魅音ちゃんのどっちを信じるか……。そんなもん、決まってるっつーの!)
 劉鳳達がいる部屋のドアを開けると、そこには案の定と言うべきか、力無くベッドに腰掛ける劉鳳がいた。
「お帰りなさい、セラスちゃん」
 駆け寄ってくるドラえもんに軽く片手を上げて答え、セラスは劉鳳に歩み寄った。
「劉鳳君、ちょっと来てくれない?」
「……何だ?」
「いいから!」
 強引に劉鳳の手を引っ張り、セラスは病院の裏口へと歩き始めた。
 


 自己紹介を一通り終えた後、待ちきれないというように、トウカがハルヒに尋ねた。
「ハルヒ殿、アルルゥ殿はどうしているだろうか? ハルヒ殿と一緒ではなかったのか?」
 ハルヒの顔が曇った。
「それが……。あたし、ずっと病院で眠らされてて――」
「……ちょっと待て」
 ハルヒの言葉をキョンは遮った。
「何よ!?」
 話を遮られて目をつりあげるハルヒに、
「ずっとってお前……。それいつからだ?」
「いつからって……。12時少し前からずっとだけど」
 キョン、トウカ、魅音の表情が変わった。
「じゃあ、お前……。4回目の放送、聴いてないんだな?」
「……いらつくわね! はっきり言いなさいよ!」
 えもいわれぬ不安に駆られ、ハルヒは怒声を上げた。
 しばらく逡巡の表情を浮かべた後、キョンは話し始めた。


「……有希が……」
 ハルヒの声は空ろでひび割れていた。
 信じられなかった。あの、長門有希が死ぬなんて。
 何でも出来て、どことなく神秘的な雰囲気を漂わせていたあの有希が。
 ぐらり、と世界が揺れるのをハルヒは感じた。
 朝比奈みくる、鶴屋さん、そして今度は長門有希。
 自分の大事なものが次々と失われていく。
 あれほど望んで、ようやく手に入れたものが無くなっていく……。
 悲しみと喪失感がハルヒを打ちのめした。
「長門殿は、立派な、本当に立派な最期を遂げられた」
「本当だよ、彼女のおかげで私達、ここにいられるんだ」
 トウカと魅音が口々に言う。
 ハルヒは力の無い笑みを浮かべた。
「……そうでしょうね 何たって有希は、博識で、勉強も、野球も、コンピューターもギターもこなす、
 SOS団随一のオールラウンダーなんだ……から……」
 声が詰まり、ハルヒの視界がぼやけた。


100 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:02:58 ID:Ng1CXYXk
(どうして私のいないとこで無茶したのよ!? 有希の馬鹿……)
 拭っても拭っても、涙はとめどなく溢れた。
 手を伸ばし、隣にいる少年の肩にハルヒはすがりついた。
 みっともないと分かってはいたが、そういしないと倒れてしまいそうだった。
 
 どれだけそうしていただろうか。

「……ごめんなさい……。まだ、話の途中だったわね」
 少年の肩から顔を離し、ハルヒは周りを見渡し、話し始めた。
 それは逃避だった。
 辛い現実から目を逸らし、他のことをやることで気を紛らわせようとする行為だった。
 だが、話すうちにハルヒの心の壁を、恐怖が這い登り始めた。
 今まで目を逸らしていた事実が、目に入ってきてしまう。
 分かってしまう。それでも。
「だ、だから、アルちゃんを出来るだけ早く捜しにいかないといけないのよ!」
 そう言って、ハルヒは話を締めくくった。
 嫌な沈黙が満ちた。
 キョンは頭を抱えて拳を握り締め、トウカの顔は真っ青だった。
 慌てたように魅音が口を開いた。
「ト、トウカさん、さっきも言ったけど、あの人形とカレイドルビーって女は悪党なんだ。
 だからきっと、ハルヒ達と一緒にいた方の『遠坂凛』の方が……」
「そ、そうだ……。そうだな、魅音殿……。そうだ、そうに決まっている……」
 空ろな目でトウカは何度もそう繰り返した。
まるで魅音の言葉に縋りつくかのように。しかし。
「ハルヒちゃん……。その二人の『凛』についてなんだけど……。どんな容貌だったか、聞いてもいいかい?」
 それまで沈黙していた、ワイシャツ姿の青年が静かな口調で言った。
 問われるままにハルヒが答えていくと、青年は深いため息と共に天を仰いだ。
 不安に襲われてハルヒは体を震わせ、トウカは狂おしい目でロックを見つめた。
「一ついえることは、そのハルヒちゃんといた方の女は『遠坂凛』じゃない。
 後から来た、黒髪の女の子が『遠坂凛』だ」
「ど、どうしてそんなこと分かるのよ!?」
 ハルヒの声はほとんど悲鳴に近かった。
 逆に淡々とした声でロックは言った。
「俺が持ってる支給品の中に、全員の顔写真付名簿を見られる機械があった……。
まあ、そういうことさ」
 ハルヒの体の震えが大きくなり、トウカはペタリと地面に座り込んだ。
 人の名を語った人物が乗り込んできて、『いなくなった』と口にしたということ。
 このゲームにおいて、それがどういう意味を持つのか、分からないものはいなかった。
「それに、その『凛』を名乗った女は、消毒液臭かったんだって? 
 大量の消毒液なんてそこらにあるもんじゃない。それこそ病院でもなければね。
 何のために匂うほどたくさん、消毒液を使う必要があったんだろうな……。
 例えば――」
「と、途中で逃げられた可能性だって……」
 ハルヒの声は消え入りそうなほど小さかった。


101 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:04:16 ID:Ng1CXYXk
「その場合、『自分の目の前でいなくなった』といって君達を起こす理由が無いな。
 露見を恐れるなら君たちを連れて行く必要はないし、3人とも殺す気なら寝ている所を殺したほうが速い。
次のステップに移ろうとするってことは、完全にやり終えたってことだ」
「おいっ!!」
 怒声と共に、キョンがロックの胸倉を掴み上げた。
「何なんだよ得意げに!? 名探偵気取りかよ!?」
 八つ当たりだと分かっていても止められなかった。
 あの時、映画館に向かってさえいれば、トウカとアルルゥは合流できていたのだ。
 キョンの胸を悔恨の刃がえぐっていた。
「……るせぇな」
 それまで抑えた口調でしゃべっていた青年の声に憤怒の色が混じった。
「じゃあ、都合のいい夢みてりゃぁ、状況が変わってくれんのか!?」
 抑えていた怒りを一気に吐き出すようにロックは怒鳴った。
 年長の者として怒りを抑えなければならないと分かっていても抑えられなかった。
 何てザマだと思う。
 エルルゥをこれ以上悲しませたくないと思っていたのに、一番悲しませるであろうことを防ぐために、何も出来なかった。
 また、あんな風にエルルゥは泣くのだと思うと、やりきれなかった。
「だって!!」
 ハルヒは絶叫した。
 信じたくない。絶対に認めたくない。
 アルルゥが死ぬなんてことは、あっちゃいけない。
「アルちゃんは、とってもいい子だわ!! こんな所で、死んでいい子じゃないのよ!!
 可愛くて、健気で、優しくて、お姉さん思いで……。まだあんなに……あんなに、ちっちゃいのに!!」
「聖人だろうが悪人だろうが、大人だろうが子供だろうが……。死ぬときゃ……死ぬんだよ」
 自分の目の前で死んでいった、あまりにも不幸な少年を思い出しながら、ロックは声を絞り出した。
 血を吐くようなロックの言葉がハルヒを貫いた。

 ――ハルヒおねーちゃん

 アルルゥの声が耳の奥に蘇った瞬間、何かが決壊した。
 地に伏して、ハルヒは号泣する。
 アルルゥの笑顔が、困ったような顔が、心配そうな顔が、得意そうな顔が……
 出会ってからのことが走馬灯のように、ハルヒの頭を駆け巡る。
 いつしかその光景に長門有希の顔も加わっていた。
 部室での日常、野球大会、ゲーム大戦、映画撮影、一緒にステージに立った文化祭……。
 
 ――失った

 自分は取り戻せないものをまた失ってしまった。
 声を上げて泣きながら、それをはっきりとハルヒは悟った。


102 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:06:19 ID:Ng1CXYXk
 目の前で少女が泣いている。
 少し離れた場所で、トウカが何度も何度もその子の名前を呼びながら泣いている。
(クソっ。もうたくさんだ! とっくに腹いっぱいだ! 誰かが泣くのも! 失うのも!
 こいつは一体何の冗談だ!? 
 何で死ぬべきじゃない人間が死んで、ギガゾンビみたいなヤツがまだ生きてるんだ!?)
 ギガゾンビへの怒りを募らせる一方で、ロックは無力感に打ちのめされる。

 ――もう誰も、悲しませたりなんかしない。俺が、絶対に

 満月に向かって格好良く誓っておいてこのザマだ。
(俺がヒーローじゃないのは知ってたが、まさかコメディアンだったとはな)
 何も出来なかった。
 エルルゥの妹の死という事態に対して、自分はあまりにも無力だった。

 ――当然だ。
 
 自分がやっていたのは、逃げ回り、隠れていることだけだったのだから。

 ――自分の力ではそれが精一杯だった

 大人になるということは限界を知るということだ。
 自分の能力をフルに使った結果がこの事態だとはっきりわかるだけに、余計に腹が立つ。
(……あの子に、エルルゥに……。どうやって、伝えりゃいいんだ……)
 ロックはもう一度天を仰いだ。

 月はただ光っているだけで、何も答えてはくれなかった。



 セラスに置き去りにされた後、凛はセラスたちとは違う部屋に入り、ベッドに横たわった。
 劉鳳の治療をしに行かなくてはならないと思ったが、足が進まなかった。
「どうしたのぉ? 凛」
「……少し、疲れただけよ」
「ふぅん……。じゃあ、ちょっと出てきていいかしらぁ?」
「何処へ行くの?」
 凛の表情が少し険しくなった。
「ちょっとシャワーを浴びてくるだけよぉ……。すぐに戻るわぁ」
「あっそ……。確かにあなた、消毒液臭いわね……。いいわよ、行ってきなさい」
 凛の承諾を得ると水銀燈は部屋から出て行き、部屋には凛だけが残された。
『マスター』
 「何? レイジングハート」


103 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:07:22 ID:Ng1CXYXk
『先ほど中断された質問ですが、マスターはおそらく使用した際に、所有者の姿形を変えるディバイスはあるのか?
 と質問するつもりであったのではと推測いたしました』
 凛の目が鋭くなった。
「……あるの?」
『あります。マスターにお話したことがある、『夜天の書』と呼ばれるユニゾン・デバイスがそれ
です。
『夜天の書』には、姿が設定されていますから、誰が使用しても先ほど我々と戦闘したあの女の姿になります。
あの姿こそ、私が話したリィンフォースの姿そのものです』
「誰でも……?」
『はい。仮にそれが人ならざるものであろうとも、です』
 ため息をつき、凛はコメカミに手を当てた。
「何か他にも言いたいことがありそうじゃない」
『いえ、別に。質問は以上でしょうか?』
「ええ。ありがとう」
 それきり杖は沈黙し、凛はベッドに横たわって天井を見上げた。
 魅音という少女に関しては、今の所保留しておいていいだろうと思う。
 本心を隠し、集団の中に巧妙に溶け込むことに長けた人間なら、こういっては何だが、
 お人よしのセラスや直情径行型の劉鳳を欺くのはそれほど難しくない。
 また魅音という少女と一緒にいた仲間も、一人は明らかに劉鳳と同じ直情径行型、
 もう一人は凡庸な少年にしか見えなかった。
 彼らでは魅音という少女の正体を見抜くことは無理だろう。
(可能性があるとしたら、あの子だけど……)
 頭がそこそこ切れそうで抜け目なさそうな、ハルヒとかいう子ならばあるいは、と思うが、
彼女も先入観で相手を見すぎるきらいがある。
 正直な所、合流しなくてツイていると凛は思っていた。
 不確定要素を抱えた人間とチームを組むなんて、ぞっとする。
(結局の所、問題は一つね……)
 水銀燈がレイジングハートの言っていた、『夜天の書』を使って劉鳳達を襲ったと仮定すると、
 多くのことに説明がついてしまう。
 これが問題。いや、大問題だ。
 ゆえに問い詰めるか、持ち物を検査するべきなのはわかっているのだが……。
 それでも、凛には後一歩を踏み出すことができなかった。
 戻ってきた時に見せた水銀燈の弱弱しい態度が頭をよぎる。
 何といっても、水銀燈はゲーム開始以来行動を共にしてきた相方なのだ。
 それに、ここまで皆から疑われていると、逆に水銀燈を庇ってやりたい気持ちも起こる。
(どうしよ……本当に……)
 だが、仮に水銀燈が劉鳳達を襲ったのと同じようなことをあちこちで行っているのだとしたら、
 自分は取り返しのつかないミスを犯していることになる。
(とにかく、水銀燈の行動には常に目を光らせておく必要があるわ)
 また、勝手に消えることがあればその時は追いかけ、闘うことも覚悟して徹底的に追求しよう。
 凛はそう決めて目を閉じた。


104 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:08:32 ID:Ng1CXYXk
 ■

「うふふふふ……。上手く行き過ぎて逆に怖いくらいだわぁ」
 水銀燈はご満悦だった。
 魅音という少女に加え、凛を敵視していたハルヒも加わったことで、あの集団は完全に凛ごとこちらを敵視しているだろう。
(あの女に羽を撃ち落されたのは少し驚いたけど、あの程度なら本気を出せば敵じゃないしぃ……)
 夜天の書を使えば、難なくとはいかなくても倒せる相手だ。
 それに、ハルヒを使って行おうとしていた集団を仲違いさせる計画は、魅音のお陰で自分の手を下さずとも勝手に進行してくれた。
 凛がセラス達の部屋に行かなかったのもその現れだ。
 魅音が出てきた時はヒヤリとしたが、凛が魅音を信じることはなかったようだ。
 状況は水銀燈の思い通りに進んでいる。
(劉鳳って男、どうしようかしらぁ……。集団戦になったら、こっちにも強い手駒がいた方が都合がいいしぃ……)
 凛の目の前で、全力を出すのは最後の最後までとっておきたい。
 力を制御した状態でうっかりバッサリ、などという事態は避けたいものだ。
 さて、どうしたものか……。
 唇を吊り上げながら、水銀燈は考えを巡らせたのだった。

【D-3 病院の病室(劉鳳たちとは別室) 2日目・黎明】
【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:魔力小消費、疲労、水銀燈と『契約』
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード・全弾再装填済)@魔法少女リリカルなのは
  バリアジャケットアーチャーフォーム(アーチャーの聖骸布+バリアジャケット)
  デバイス予備カートリッジ残り33発
[道具]:支給品一式(食料残り二食。水4割消費、残り1本)、ヤクルト一本
:エルルゥのデイパック(支給品一式(食料なし)、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、
:五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
:市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り2パック)
[思考]基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
0:水銀燈を監視する
1:劉鳳とセラスの治療を続行(だが、水銀燈のことがあるので、あまり二人と顔を合わせていたくないとも思っている)
2:ドラえもんから詳しい科学技術についての情報を得る。
3:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
4:セイバーについては捜索を一時保留する。
5:リインフォースとその持ち主を止める。
6:自分の身が危険なら手加減しない。
7:
[備考]:
※レイジングハート同様、水銀燈に対して強い疑心を持ち始めました。
 ただし、水銀燈を信じたいという気持ちもあり、中途半端な状態です。
※緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音)の判断は保留。
※夜天の書の持ち主が水銀燈ではないかと疑い始めています
※カレイドルビー&レイジングハートの主催者&首輪講座 済
[推測]:
ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い(推測)
膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能(推測)
首輪には盗聴器がある
首輪は盗聴したデータ以外に何らかのデータを計測、送信している


105 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:09:31 ID:Ng1CXYXk
【D-3 病院(シャワー室) 2日目・黎明】
【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷、消毒液の臭い、魔力小消費、疲労、凛との『契約』による自動回復
[装備]:真紅のローザミスティカ
[道具]: デイパック、支給品一式(食料と水はなし)
   ストリキニーネ(粉末状の毒物。苦味が強く、致死量を摂取すると呼吸困難または循環障害を起こし死亡する)
   ドールの螺子巻き@ローゼンメイデン、ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー、照明弾
   ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、夜天の書(多重プロテクト状態)
   くんくんの人形@ローゼンメイデン、ドールの鞄@ローゼンメイデン
  透明マント@ドラえもん

[思考・状況]基本:魔力補給を考慮して、魔力を持たない強者を最優先で殺す。
1:凛が偽名を使っていたことや見解の相違を最大限利用して仲たがいさせる。
2:チャンスがあれば誰かを殺害。しかし出来る限りリスクは負わない。
3:凛との『契約』はできる限り継続、利用。殺すのは出来る限り後に回す。
4:ローザミスティカをできる限り集める。
5:凛の敵を作り、戦わせる。
6:あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。劉鳳に関しては、戦力にするか始末第一候補とするか思案中
7:青い蜘蛛にはまだ手は出さない。

[備考]:
※透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。また、かなり破れやすいです。
※透明マントとデイパック内の荷物に関しては誰に対しても秘密。
※レイジングハートをかなり警戒。
※デイパックに収納された夜天の書は、レイジングハートの魔力感知に引っかかることは無い。
※夜天の書装備時は、リインフォース(vsなのは戦モデル)と完全に同一の姿となります。
※夜天の書装備時は、水銀燈の各能力がそれと似たベルカ式魔法に変更されます。
真紅のローザミスティカを装備したことにより使用魔法が増えました。
※リインフォースは水銀燈に助言する気は全くありません。ただし馬鹿にはします。
※水銀燈の『契約』について:省略
※水銀燈ver.リインフォースの『契約』について
魔力収奪量が上昇しており、相手や場合によっては命に関わります。
※水銀燈の吐いた嘘について。

名前は『遠坂凛』。
病院の近くで襲われ、デイバックを失った。残ったのはドールの鞄とくんくん人形だけ。
一日目は、ずっと逃げたり隠れたりしていた。


106 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:10:47 ID:Ng1CXYXk


「元気だしなよ。のび太くん……」
 劉鳳が出て行き、二人きりになってしまった部屋で、ドラえもんはのび太に言った。
「……ねえ、ドラえもん」
「なんだい? のび太くん」
「僕……。誰を信用したらいいのかな……?」
 セラスの仲間達と合流できなかったと聞いて、のび太の心は再び揺れていた。
 みんないい人ばかりなら、ケンカになったり分かれてしまったりするはずがない。
 でも、セラスは気さくでいい人だし、元気はないが劉鳳もマジメな人に見える。
 何より、セラスと劉鳳はジャイアンと仲間だった人たちだ。
 信用できるし、信用したいと思う。
 凛は言うまでもない。
 あんなにギガゾンビに怒ってて、足を直してくれたし、ドラえもんと会うまでずっと一緒だった。
 悪い人のはずがない。
 ちょっと変なところもあるけど、凛の仲間なのだから水銀燈もいい人、というか人形のはずだ。
 よくよく考えてみれば、ハルヒもそうだ。
 死んでしまった太一の友達のヤマトが、必死で助けようとした人だ。
 いなくなってしまったアルルゥって女の子が、あんなに懐いていた人だ。
 悪い人じゃないはずなんだ。

 ――それなのに

(どうして、ケンカ別れになっちゃうの?)
 セラスは、合流する仲間はみんないい人だと言っていた。
 それなのに、ケンカになってしまったという。
 セラスがあんなに合流したがっていた仲間とケンカするはずがないから、凛が原因なのだろうということくらい、
 のび太にも分かる。
(誰かが嘘をついてるんだ……。でも、一体誰が……?)
 頭が変になりそうだった。
 みんな味方に見えるのに、誰かが裏切っている。
 笑顔を作りながら、裏では目を光らせて、隙あらば殺そうと狙っている。
 怖気を感じて、のび太は自分の体を抱きしめた。
「……のび太くん。何があっても、ぼくだけはずーっとのび太くんの味方だよ」
 隣で響いた暖かい声が、のび太の心を癒してくれた。
 隣をみると、ドラえもんの笑顔があった。まん丸な、いつもの優しい笑顔が。
「ドラえもん……。いなくなっちゃ……いやだよ」
 ドラえもんは、また笑った。
「だいじょうぶだよ、のび太くん。ぼくは、いつも君の側にいるよ」
「うん……」
 幼子のように頷くのび太の頭を、ドラえもんはそっと撫でてやった。



107 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:11:54 ID:Ng1CXYXk
【D-3 病院(劉鳳たちがいた部屋) 2日目・黎明】
【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況] ジャイアンの死にかなり動揺したものの、のび太がいることもあり外見上は落ち着けている。
1:神経磨耗気味なのび太を見守る
2:アルルゥを探す
3:自分の立てた方針に従い首輪の解除に全力を尽くす
4:凛の魔法の力に興味。
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※第一回放送の禁止エリアについてのび太から話を聞きました。
※凛とハルヒが戦ってしまったのは勘違いに基づく不幸な事故だと思っています。
偽凛については、アルルゥがどうなっているか分かるまで判断を保留。



【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:ギガゾンビ打倒への決意/左足に負傷(行動には支障なし。だが、無理は禁物)
[装備]:強力うちわ「風神」
[道具]:デイバッグ、支給品一式、翠星石の首輪、エンジェルモートの制服
[思考・状況] 精神が不安定。疑心暗鬼に陥り始めている
1:誰が信用できるのか見極めたい
2:ドラえもん達と行動しつつ、首輪の解除に全力を尽くす。
3:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]
※凛もひょっとしたら? と思い始めている。ただし、偽凛は敵だと判断している。
 ハルヒへの反感は少し緩和。


108 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:13:03 ID:Ng1CXYXk
 病院の裏口から出た所に劉鳳とセラスの二人はいた。
「――というわけなんだけど、どう思う? 劉鳳君」
 二集団の衝突の顛末を語り、劉鳳に意見を求めるセラスに、
「どう……。と言われてもな」
 空ろな瞳のまま、劉鳳は答えた
「だからっ! 水銀燈の言うことをどう思うかって聞いてるんだけど!?」
「分からない……。俺には、何も……」

 ――また、間違うに決まっている。失敗するに決まっている

 その思いが劉鳳から、彼を彼としていた全てを失わせていた。
 今の劉鳳の心からは、信念も、正義への思いも、どこかへ消えてしまっていた。
 
「っの腑抜け野郎!!」

 怒声と共に劉鳳の体は壁まで吹き飛ばされた。
「腑抜けか……。まったくもってその通りだ……。腑抜けで、間抜けで、無力な男だ。俺は……」
 自虐的な笑いを浮かべる劉鳳の胸倉をセラスは掴み上げた。
「この期におよんで、ふざけたこと言うんじゃねーっての。
 リヤカーの上で、武に言ったのは嘘だったの? 
 武の友達を、闘えない人たちを守ってやるって言葉は嘘だったの?
 武が命を張って助けたのは、こんな腑抜け野郎だっていうわけ?」
 
 ――武

 自分を庇って死んでいった少年の名を聞いて、劉鳳の顔色が変わった。
 だが、唇をふるわせながら劉鳳は力なく言った。
「……俺には誰かを守ることなんて、救うことなんて、できはしない……」
「そうじゃねーわよ!!」
 セラスの両腕が力を増した。
「できる、できないかじゃなくて、守りたいのか、守りたくないのかどっちだって聞いてんの!!」
 セラスの言葉が耳の奥に届いた瞬間、劉鳳の中で何かが切れた。
 いつも心の奥底にあったものが強烈に叫んだ。

「守りたいに決まっている!! ずっと……。ずっとそう思ってきた!!」

 ネイティブアルターの攻撃で壊滅した町。
 体がねじくれて死んでいた母。吹き飛ばされた絶影。泣くことしか出来なかった自分。
 あまりも突然に、あまりにも理不尽に、奪われた。
 あんな奪われ方をしていいものではなかったのに。
「全ての人が理不尽な暴力に曝されることなく、正しく生きられる場所が欲しかった!!」
 だから力を求めた、力が欲しかった。
「今も……。そうだ」
「だったら!!」


109 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:14:00 ID:Ng1CXYXk
「だが、俺には……。その場所をつくるだけの力がない。信念を貫く、力がない……」
 一度燃え上がった炎が急速に弱まっていく。
 そう、結局自分はあの頃のままだったのだ。
瓦礫の上泣いているしかなかった、あの頃のままで……。
 無力感と徒労感が湧き上がり、諦めが再び劉鳳の心を支配していく。
「力ならあるでしょ! 少なくとも、私達は五体満足でしょ!?」
 劉鳳の顔に困惑の色が浮かぶ。
 紅蓮の輝きを瞳に宿し、セラスは続ける。
「地に立てる足がある! 怒りをぶつける拳がある! それで十分でしょ!?
あの子は、武は、足が折れてた……。それでもあんたを守ったじゃない! 
力があるとかないとかじゃなく、守りたいと思って行動するかどうか……。
それだけよ!!」
 劉鳳の体が震えた。
「だが……。だがまた……。失敗……したら……」
「そりゃ失敗したら悔しいわよ!! すっげー悔しい……わよ……」
 セラスの声に嗚咽が混じり始めた。 
「ごめん……。武……ふう……みくるちゃん……」
 セラスの体から力が抜けた。
 劉鳳の足元に崩れ落ち、吸血姫は顔を覆って涙を流していた。

 ――ごめん

 何故かその言葉が劉鳳の耳に残った。

「すまない……」
 劉鳳の唇は無意識にその言葉を紡いでいた。
「すまない……武。俺……守るって……言ったのに……。すまない……」
 劉鳳の目から涙がこぼれた。
 泣きながら、劉鳳は今まで守れなかった者達に詫び続けた。
 

 
 激情の熱が去り、座り込んだまま並んで壁にもたれかかりながら
「つくづくみっともねーわ……。いい歳こいてさぁ」
 セラスはため息をついた。
「仕方ないだろう……。俺達はこの程度の人間だ。体裁を取り繕っても仕方ない」
 自嘲するように劉鳳は言った。
「そうだね……」
セラスは苦笑した。
 この世界に飛ばされてからどれだけ失敗したことか。
 思い出すだけでも馬鹿馬鹿しい。
「っとにどーしようもないわねー」
「この体たらくでは、誰かを守ろうとすることなど、度台無理なのかもしれん」

 誰かを守ろうなどと、おこがましいのかもしれない。


110 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:15:11 ID:Ng1CXYXk
 また失敗するかもしれない。
 失敗した時に襲う、絶望や苦しみを考えると逃げ出したくなる。
 二度と味わいたくないと思う。

「でも私は……」
「それでも俺は……」

 ――自分の手で守れる人は、絶対に守り抜きたい

『守りたい』という思いだけはどうしても捨てられない。

 ――ならばどうする?

「……行くぞ、セラス」
「うん、行こう。劉鳳君」
「君はやめろ。呼び捨ててでいい」
「おっけー」
 二人は同時に立ち上がった。
 
 ――立ち上がるしかない、前に進むしかない。
 
 ――それに。

「セラス、あの女は『絆とかいう下らないユメに縋るのはやめたほうがいい』とぬかした」
 怒気を込め、劉鳳は低い声で言った・
「あれは、すさまじくムカついたわ……」
 嘲るような女の声が耳の奥に蘇り、セラスの犬歯が怒りに反応してすっと伸びた。
「ああ。俺達だけならばまだいい。だが奴は、俺達につながった者、全てを否定した! 侮辱した! 
 この借りは……。返させてもらう!!」
「ええ。兆倍にして返してやりましょ!!」

 ――許せない奴がいる。

 だから行く。
 
 決然とした足取りで歩を進めながら、
「ねえ……。さっきの話だけど……」
「くだらん。クーガーがあれだけ肩入れしていた子と、あの胡散臭い人形。どっちを信じるかなど、考えるまでも無い」
 一刀両断に切り捨てる劉鳳に
「だよねー」
 セラスは同意しつつ小さく笑った。やっと元の劉鳳が出てきたな、と思う。
「だが、凛は別だ。彼女はきっと……」
「そうね。多分、水銀燈に騙されてると思う。けど、どうやらゲームの開始ぐらいからずっと一緒らしいし……。
 なかなか難しいわね。こっちがやいのやいの言ったら、意固地になりそうだし」


111 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:16:47 ID:Ng1CXYXk
 嘆息しつつ、セラスは頭をかいた。
「とりあえず……。何しよっか?」
「君には悪いが、とりあえず俺は、眠らせてもらう」
「……へっ?」
 思わずセラスは間の抜けた声を上げた。
「何をするにしても、今の俺は疲れすぎている。少しでも体調を戻さなくては、あの女のような敵に対抗できん」
 体力が回復しないことは、話にならない。
「確かにね。劉鳳には休息が必要かも」
「俺が寝ている間、すまないが見張りを頼みたい。俺もそうだが、のび太も、ドラえもんも頼む。
武の友達は守りたい、武の分もな」
「……確かに胡散臭いけど、あの人形、大して強くないし……。いきなりしかけてくるってことはないんじゃない?」
 セラスは首を捻った。
「だが、どうにも引っかかる。あの女と人形の仕草やしゃべり方が似ているのは、君も気づいているだろう?」
「劉鳳もそう思ったんだ?」
 似ていると感じたのが自分だけではないとすると、話は変わってくる。
「当然だ。気づかないほうがどうかしている。それに、俺達の取り越し苦労だとしても寝首をかく方法はいくらでもある」
「そうよね……。気をつけるわ」
 セラスは大きく頷いた。

「よし……。征くぞ、セラス」
「あいよっ!!」
 
 扉を開け、二人は病院の中へと歩を進めたのだった。


112 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:17:44 ID:Ng1CXYXk
【D-3 病院(裏口) 2日目・黎明】

【劉鳳@スクライド】
[状態]:全身に大程度のダメージ、かなり疲労、病院のベッドに横たわっている
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(-2食)、SOS団腕章『団長』、ビスクドール
[思考]
基本:自分の正義を貫く。
  仲間、闘う力のない者を守ることを最優先。
  悪の断罪は、守るべき者を守るための手段と認識。
0:眠って体力回復に努める
1:のび太とドラえもんを守る(対水銀燈を含む)
2:病院で凛の手当てを受ける。
3:ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
[備考]
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※朝倉涼子については名前(偽名でなく本名)を知りません。
※凛は信用している
※水銀燈は全く信用していない。自分達を襲った犯人もひょっとしたら? と思っている
ジャイアンの死の原因となった戦闘は自分の行為が原因ではないかと思っています。

【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:全身打撲、裂傷及び複数の銃創(※50%回復、現在も回復中)、疲労
[装備]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:6/6発)、アーカードの首輪
   13mm炸裂徹鋼弾×36発、スペツナズナイフ×1、ナイフとフォーク×各10本、中華包丁
    銃火器の予備弾セット(各40発ずつ、※Ak-47、.454スカール、
   S&W M19を消費。デバイスカートリッジはなし)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(×2)(メモ半分消費)、糸無し糸電話
[思考]
基本:トグサに従って脱出を目指す。守るべき人を守る。
0:劉鳳、のび太、ドラえもんの護衛(対水銀燈と他の優勝狙いの参加者)
1:劉鳳のフォロー。
2:食べて休んで回復する。
3:病院を死守し、トグサ達を待つ。
[備考]
※セラスの吸血について

通常の吸血
その瞬間のみ再生能力が大幅に向上し、少しの間戦闘能力も向上します。

命を自分のものとする吸血
少しの間、再生能力と戦闘能力が向上し、その間のみ吸った相手の力が一部使用できます。
吸った相手の記憶や感情を少しだけ取り込むことができます。
※現在セラスは使役される吸血鬼から、一人前の吸血鬼にランクアップしたので
初期状態に比べると若干能力が底上げされています。
※凛を全面的に信用しています。偽凛は敵だと判断。水銀燈は敵だと判断し、要警戒だと思っている


113 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:19:11 ID:Ng1CXYXk


 暗い部屋の中でキョンはため息をついた。
 目の前にいるのは、昼間に会って分かれたロックだけ。
 魅音は、北条沙都子という子の顔を見に行き、ハルヒは玄関の所で膝を抱えている。
(あいつのあんな姿を見ることになるなんてな……)
 信じられない光景だった。一番見たくない光景だった。
 もう一度キョンはため息をついた。
(……トウカさん、大丈夫かな……)
 ロックの判断で、アルルゥのことを告げる役目はトウカに決まり、再会の挨拶も
自己紹介もそこそこに、トウカはエルルゥをつれて外に出ている。
(トウカさんも、辛いだろうに……)
 あの時。
 映画館と電話がつながった時に、映画館へ向かっておけばよかったと悔やんでいるに違いない。
 トウカの泣いている姿を思い出すと、心が重くなる。
 あれほど傷ついているのに、もっと傷つくであろう人に告げなくてはならない。
 顔をしかめ、キョンは下を向いた。

 ――疲れた

 心底疲れた。
 このまま横になって何もかも忘れて眠ってしまいたい、そう思う。
 ふと顔を上げると、闇の中、ロックが何かを取り出し弄っているのが目に飛び込んできた。
「……なんですか? それ」
「さっき言った、顔写真付参加者名簿さ……。それに、どうもそれだけじゃなさそうなんで調べてるんだが、どうにもね」
 前向きな行為だと思う。おそらくロックのやっていることの方が正しい。
 だが、何故かキョンはロックに猛烈に反発したくなった。
「すごいですね……。こんな時にそういうことができるなんて、尊敬しますよ」
 気がつけばそう口にしていた。
 そして当然の如く返事は返ってこなかった。
「……すいません。今のは……その……」
「気にしなくていい。子供は大人の余裕を期待してつっかかっても、許されるさ」
 気まずい沈黙が満ちた。
 ロックが頭をかきむしっている気配があって、
「すまない……。今のは……」
「気にしてませんよ。誰だってこんな状況で大らかに構えてられるわけ、ないじゃないですか。
 考えれば考えるほど……。腹立ってきますから」
「……心の底から同意するよ」
 ロックの声を聞いて、闇の中でキョンはロックと今の自分は同じような表情をしているだろうと思った。
 怒りの表情を。
 ギガゾンビに対する、優勝狙いの参加者に対する、そして無力な自分に対する怒りで歪んだ表情をしているに違いない。
(だってそうだろ? 何で、死ぬべきでない子が死んで、悲しまなくていいはずの人が悲しまなくちゃならないんだ?
 そりゃ元の世界にも理不尽なことぐらいあることは知ってる。
 だけど幾らなんでも起こりすぎだろ。不幸と悲哀のバーゲンセールなんぞ誰も喜ばん。
 そんなものをやってる所があるんなら、即刻閉店を求めたいね)
 そう、即刻、だ。
 怒りを燃料にしてキョンは立ち上がり、ロックに近づいた。


114 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:20:13 ID:Ng1CXYXk
「それ……見せてもらっていいですか?」
 ロックは黙ってそれを渡してきた。
 それを手に取ったキョンの瞳が一気に拡大した。
 Ipod。それは、音楽を聴ける、画像を見ることが出来る機械。そして。

 PCの外付けHDとして利用できる機械

(これが長門が残した脱出のための『鍵』と関係ないと思うほうが、どうかしてるな……)
 ノートPCを起動し、手早くキョンはロックに事態を説明した。
 魅音に説明した時にまとめた文書を残しておいたので、非常にスピーディーに物事が進んだ。
 しばらく黙っていたロックだったが、
『なるほどな。これは文字通り、『天』から授かった金の鎖ってわけか……。
 引っ張ってみない手は無いな。上った先がどんな世界でも、ここより悪い世界は思いつかない』
 ロックからipodを受け取り、PCに接続して――
 キョンはふと思いつく。
「ロックさん。少しだけでいいんで、時間をくれませんか? 助っ人を呼んできたいんですけど」
「……今は、一人にしてあげた方がいいじゃないのか?」
「さあ……。だけど、その時に比較的余裕のある奴が、余裕の無い仲間を支えてやらなきゃならないって、
 さっき改めて学んだんですよ。そりゃ相手が『いらん』というなら別ですけど、
 俺はまだ『いらん』って言葉を聞いてないですから」



 玄関のところで膝を抱えてうずくまっているハルヒの姿はとても小さく見えた。
 かける言葉を一応乏しい経験からピックアップしようとしてみるが、思いつかない。
 黙ってキョンはハルヒの隣に腰を下ろした。
 夜の闇より深い沈黙の後、
「……何か用?」
 聞いたことも無いような弱弱しい声が響いた。
「聞きたいことがあってな」 
「……他の人に聞いた方がいいわ」
 これもまた信じがたい言葉であった。
 何よりまず自分に相談しろと言って聞かないハルヒの言葉ではない。
 打ちひしがれた小さな体を見ていると、キョンの胸にある衝動が湧き上がってくる。
 だが、キョンはその衝動をねじ伏せた
(ラブコメをやってる時じゃないないだろう)
 そして、そんなものに乗ってくる涼宮ハルヒなど見たくもない。
 小さく息を吐き、
「……長門と『射手座の日』、この2つはつながると思うか?」
 冴えないというか意味不明な質問だなと、キョンは少し呆れた。
 だがしかし。
「……『射手座の日』って、コンピ研と勝負した時に使ったソフトの名前じゃない。
 有希……あの時は大活躍だったわよね……。楽しそうだったし」
「……そんな名前だったか? 確か英語だったと……」
 あまりの即答に驚愕しつつもキョンは念のために聞いてみる
 ハルヒが顔を上げた。
「何なのよ、あんた……。一体どういうつもりで――」
 その声にははっきりと怒りが滲んでいた。
 だが、かまわずにキョンは続けた。
「教えてくれんか? すごく大事なことなんだ」
 キョンの口調に何かを感じたのか、
「英語で『THE DAY OF SAGITTARIUS III"』だから、和訳すると『射手座の日』になるでしょ!


115 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:21:10 ID:Ng1CXYXk
 だから……何でこんなこと聞くのよ? 答えなさい!」

 ――それだ

 名前を聞いて、完全に思い出した。

――間違いない。
 
 何か言おうとして、キョンは何度も大きく息を吐いた。
 感情が荒れ狂って言葉にならない。ノートPCを開き、手早く説明を始める。
 そして、少し迷ったが、
『これは全部長門がお膳立てしたことだ』
 最後にそう打ち込んだ。
「……有希が? でも、どうやってそんなこと?」
 驚きの色を瞳に浮き上がらせながら、ハルヒが尋ねてくる。
『俺には分からん。何をどうやったのかさっぱり分からんし、どうして出来たのかもわからん。
だが、長門は確かにそう言った』
「じゃあそうなのよ」
 間髪を入れずにハルヒは言ってのけた。
「あんたならともかく、有希はそんなハッタリだの嘘だの言う子じゃないもの。
 そっか……。有希ったら、こんなにすごいことやってたんだ……。
 ああもうっ。知ってたならちゃんと、ドラえもんに……」
 ハルヒの瞳に光が蘇ったのをキョンは確かに見た。
「……随分とあっさり信じるんだな。これだけ突拍子もないことを」
「はあ? あんた有希の言うことが信じられないの?」
 疑う様子など微塵もみせないハルヒに、思わずキョンは笑みを浮かべた。
「……信じたさ。だからこうやってお前に聞いている」
「じゃあ言わなきゃいいでしょ」
 言い捨てて、ハルヒは立ち上がる。
 続いて立ち上がりながら、こんな時だというのにやたらと心が高揚するのをキョンは感じた。
(『有希の言うことがしんじられないの』、か。らしい台詞だぜ)
 まったく嬉しいことを言ってくれるではないか、うちの団長様は!
 ロックがいる居間への短い廊下の途中で、急にハルヒが立ち止まった。
「有希は……。苦しんだ?」
 その声は、小さく震えていた。
「一瞬のことだったからな……。多分……苦しまなかったと、思う」
「……そう」
 すぐにバレるかもしれないし、気づいているかもしれないが、これぐらいの嘘は許されるだろうとキョンは思う。
「アル……ちゃん……は……。苦しんだ……かなぁ?」
本当に苦しげな声だった。
「……分からん」
 気の利いた言葉一つ思いつかない自分を嘆きつつ、キョンはそう口にするしかなかった。
「……今のは忘れなさい。馬鹿なこと聞いたわ。あんたに聞いてもしょうがないのにね……」
 拳で目元を拭い、ハルヒは歩き出す。


116 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:22:46 ID:Ng1CXYXk
ほらっ!! さっさと来なさい! やることは山ほどあるんだからね!
 ロックさんの機械を使ってアルちゃんの仇を捜して……。有希の……」
 そこまで言って、ハルヒは辺りを見回す仕草をした後、
「有希の命は絶対に無駄にしないわ! 有希の遺志はあたしが継ぐ!! 
 団長であるこのあたしがねっ!!」
 見えない誰かに宣戦布告するかのように、堂々と宣言した。
 眩いばかりの意思の炎を双眸に宿し、ハルヒはロックの待つ部屋へと足を踏み入れていく。
 無論悲しみが消えたわけでも、心の整理がついたわけでもないだろう。
 今は、死んでいった長門有希の残したものを無駄にしたくない、という思いが強いだけだ。
 大事な人を失うことは、そんな軽いものじゃない。
 ふとした瞬間に襲い掛かり、心を噛み砕こうとする魔物だ。だから。
(もし、余裕があったら肩ぐらいかしてやるさ。その時に余裕があるかどうか分からんから断言はしてやれんが、
 努力すると誓うくらいで勘弁してくれよな)
 心の中でそう呟きながら、キョンはハルヒの後を追った。
 そして居間へと続くドアに手をかけ、

(長門……。お前のメッセージ、確かに受け取ったぞ!!)

 一気に引き空けると中へと体を滑り込ませたのだった。



(武……。ごめんね、酷いこと言って。会ってちゃんと謝りたかったよ……)
 偽遠坂凛に殺されたという武に、魅音は語りかけた。
(どうして、ここに集められた奴はろくでもない奴ばっかりなんだ!)
 数時間前にホテルで分かれたばかりだというのに、武の命はもう失われてしまった。
 沙都子の隣で眠っているイガグリ頭の少年は、両親を失ったのだという。
 酷すぎる、あまりにも酷すぎる。
(何とかしないとね……。少しでも早くさ)
早くこのゲームから脱出したい。
 脱出のお膳立ては整っているのだから、後はそれを力を合わせて解くだけだというのに。
 その力を合わせようとしていた人間達の一部とは、分かれてしまった。
(セラスさん……大丈夫かな……)
 眠る北条沙都子の顔を見ながら、魅音は嘆息した。
 あの人形が眠るセラスに襲い掛かったらと思うと、心配でたまらない。
(何とか連絡つけて、あいつ等が悪党だってこと、教えないと……。でも聞いてくれるかなあ?)
 どうやらセラスは完全に騙されてしまっているようだった。
(セラスさん、人がいいから……。あの劉鳳とかいう奴は単純馬鹿っぽいしなあ)
 どうやら、水銀燈とカレイドルビーこと遠坂凛は、今は集団の中に紛れ込むという方針を取っているようだから、
 すぐにどうこうということはないだろうが、やはり心配なものは心配だ。
 よく考えてみれば、圭一やレナを水銀燈達が殺したというのは、考えてみればまったく根拠がない思い込みだった。


117 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:23:54 ID:Ng1CXYXk
 そもそも水銀燈達とレナや圭一が接触したかどうかすら、自分には分からないのだから。
 だが、カレイドルビーこと遠坂凛が、水銀燈を使って参加者を襲わせていたのはまぎれも無い事実。
 この事実がある限り、遠坂凛と水銀燈が悪党だということは揺らがない。
(多分、偽遠坂凛と遠坂凛は対立してるんだ。だから、本物の遠坂凛は偽名を名乗り、なるべく表にでないようしてた。
 偽遠坂凛は、あてつけに遠坂凛の名前を名乗った……。とまあこんな感じかな?
 ちぇっ! 悪人同士、殺しあって共倒れになればよかったのにさっ)
 その偽遠坂凛凛が誰なのかは、ロックの支給品を使えば、分かるだろう。
 名前を突き止めてもあまり意味があるとも思えないが、情報はあればあっただけいい。
(トウカさんは仇を討ちたいって言うだろけど……)
 あまり無理はして欲しくない。
 道の途中にあったクレーターの大きさ、そしてハルヒの言を聞く限り、二人の遠坂凛はどちらも強い。
(あいつらの腐りきった命とトウカさんの命じゃ、全然つりあわないよ)
もう誰にも死んで欲しくない。
 涼宮ハルヒも加わったことで、首輪の解除や脱出に向けて一気に展望が開けるかもしれないという期待はある。
 脱出できるなら、ここにいるメンバー、そしてセラス達と何とか連絡をつけて脱出してしまえばいいと思う。
「それにしても、キョンとハルヒって……」
 再会した時の二人の顔を思い出し、魅音はクスリと笑った。
不器用だなあ、と思う。
(まあ、私が言えた義理じゃないんだけどさ……)
 圭一の顔が瞼に浮かび、魅音の視界がわずかに滲んだ。
(圭ちゃん、レナ、梨花……)
 帰っても、元の日々は戻らない。それは知っている。
 でも、あの日々の最後の欠片だけは。

「沙都子……。あなたは、私が守る。私の命に代えても、必ず守るから」
 
 眠る沙都子の髪をなで上げ、静かに笑うと魅音は立ち上がった。
 居間の方で複数の声がする。
 どうやら、何か会議か調べものが始まったようだ。
「もう……。おじさん抜きで始めるなんてさっ!」
 自分も参加しようと居間へと急ぎながら、もう一度魅音は沙都子の寝顔に笑いかけ、そっとドアを閉めた。


118 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:24:54 ID:Ng1CXYXk
【C-4・山間部と市街地の境目付近にある民家(居間)/2日目・黎明】
【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:若干疲労
[装備]:ルイズの杖@ゼロの使い魔 、マイクロ補聴器@ドラえもん、i-podのイヤホン(片耳)
[道具]:支給品一式×2、ipod(電池ほぼ満タン)、黒い篭手?@ベルセルク?、現金数千円
 :びっくり箱ステッキ@ドラえもん(10回しか使えない。ドア以外の開けるものには無効)
[思考・状況]
1:力を合わせて長門有希(ipodも服む)が残したものを解析し、脱出に努める
2:エルルゥが心配
3:沙都子を助けたい。
4:アルルゥの仇を捜す
6:しんのすけ、君島、キョンの知り合いを探す。
7:しんのすけに第一回放送・第四回放送のことは話さない。
8:一応、鞄の件について考えてみる。

[備考]※ケツだけ星人をマスターしました
  ※病院での一件をエルルゥにまだ話していません
  ※i-podの顔写真付名簿に一通り目を通しました
  ※キョンがノートパソコンから得た情報、及びキョンの考察を聞きました。

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:疲労、全身各所に擦り傷、ギガゾンビと殺人者に怒り、強い決意
[装備]:バールのようなもの、スコップ
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-1)、わすれろ草、キートンの大学の名刺
  :ロープ、ノートパソコン+ipod(つながっている)
[思考]
基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る
1:『射手座の日』もしくはTHE DAY OF SAGITTARIUS III というタイトルのゲームに
   心辺りが無いか全員に聞く。
2:長門の残した物(ipod含む)を解析し、脱出を目指す
3:アルルゥを殺したという『偽遠坂凛』をipodでチェックする。
4:トウカが心配
5:あれ? そういえばカズマってどこかで聞いたような……

[備考]
※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照。
※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「仲間を探して」参照。

【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:疲労(中)、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り)、クーガーの死による精神的ショック、空腹
[装備]:AK-47カラシニコフ(30/30)、AK-47用マガジン(30発×3)
[道具]:支給品一式、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着(一部破れている) パチンコ
[思考]
基本:バトルロワイアルの打倒
1:キョン、ハルヒに協力して脱出を目指す
2:沙都子を守る         
3:何とか病院にいるセラスと連絡を取りたい
4: クーガーの仇を取りたい(シグナムが対象)。
[備考]
※キョンがノートパソコンから得た情報、及びキョンの考察を聞きました。

119 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:25:53 ID:Ng1CXYXk
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し)
[装備]: なし
[道具]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回) 、
  着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、
[思考]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。
1:アルルゥの仇を捜す
2:ipodの調査も含め、長門有希の残したものを解析し、脱出に努める。
3:ドラえもんの言っていた『ディスク』が何か気になる

[備考] :
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました
※キョンがノートパソコンから得た情報、及びキョンの考察を聞きました。


120 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:27:00 ID:Ng1CXYXk
 扉が閉まると同時に、沙都子の目が開いた。
「魅音さん……」
 
 ――殺すと決めていた。
 
 部活のメンバーであろうと殺し、最後まで生き残るつもりだった。
 でも、魅音の言葉を聴いてしまった。
 優しくて、慈しみの気持ちに満ちた声を聞いてしまった。
 沙都子の胸には迷いが生まれた。
 
――あの魅音を殺す? 本当に?
 
 それとは別に、沙都子の心の水面を揺らしているものがあった。
(魅音さん……。一体どっちが本当のあなたなんですの?)
 いつぞやの鬼のような魅音と今の魅音はまったく違う、違いすぎる。
 あの時の鬼のような魅音も、今の魅音も、どちらも真実に見える。
 鬼のようなあの時の魅音も、今の優しい魅音も、
 どちらも演技ではありえないほど、表情に、声に、
 真実がみなぎっていた。
(分からない……。にーにー。私いったいどうすればいいんですの?)
 暗闇の中で、沙都子は答えの出ない問いを繰り返していた。

【C-4・山間部と市街地の境目付近にある民家(居間ではない部屋)/2日目・黎明】
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:睡眠中、全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、歩き疲れ(睡眠により回復中)
[装備]:ニューナンブ(残弾4)、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2
[思考・状況]
1:朝まで寝る。
2:お兄さん(ロック)とお姉さんについて行く。
3:みさえとひろし、ヘンゼルのお姉さんと合流する
4:ゲームから脱出して春日部に帰る。
[備考]放送の意味を理解しておらず、その為に君島、ひろしの死に気付いていません。
  第四回放送を聞き逃しました。

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:若干疲労(睡眠により回復中)、右足粉砕(一応処置済み) 、魅音への対応が決まらず激しく動揺中
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:基本支給品一式、トラップ材料(ロープ、紐、竹竿、木材、蔓、石など) 簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬@ドラえもん
  エルルゥの薬箱@うたわれるもの(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考・状況]
1:魅音について考え、行動方針を決める
2:ロックとしんのすけ、エルルゥを『足』として利用し、罠を作るための資材を集める。
3:十分な資材が入手できた後、新たな拠点を作り罠を張り巡らせる。
4:準備が整うまでは人の集まる場所には行きたくない。
5:生き残ってにーにーに会う、梨花達の分まで生きる。 。
[備考]第四回放送を聞き逃しました。


121 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:28:12 ID:Ng1CXYXk

 
 ロック達のいる民家少し離れた家の軒下に、二つの影があった。

「トウカさん。お話って……」
「ああ……。いや……そのあの……」
 さっきからずっとこの調子だ。
 トウカの人生の中で、エルルゥとアルルゥほど仲の良い姉妹は見たことが無い。
 伝えた時、どれほどエルルゥが嘆き悲しむことか。
 それを考えると。
 
 ――とても言えない

 そもそも、確実に守れる機会をみすみす逸した自分に何が言えよう?
『エルルゥと同じ時間をすごし、死んだ子の記憶を共有しているあなたが最適なんです』
 ロックはそう言っていたが、とてもそうは思えない。
(恨みますぞ、ロック殿……)
 思わずトウカは、心の中で恨み言を口にした。
「トウカさん……」
「は、はい!?」
トウカのリアクションに驚いたように目を丸くしたが、エルルゥはトウカの額に手を伸ばした。
「こんな所にコブが……。帰ったらすぐに、手当てしますから」
「こ、こんな傷。傷のうちには入らぬ。わざわざ、エルルゥ殿の手を煩わせるほどのものではない」
「ダメですよぉ。トウカさんも女の子なんですから……」
「そ、某は!」
 トウカは顔を伏せ、手をわななかせた。
「エルルゥ殿にそのようにしてもらう資格が……無い……」
 鉛のような沈黙が二人を捕らえた。

「あの子に……。アル……ルゥに……何か、あったんでしょうか?」

 びくんっとトウカの体が反応し、そのまま震えは全身に広がっていく。
「すまぬ! エルルゥ殿、すまぬ! 某が、某がいたらぬばかりに……」
 がばっと地に膝と手をつけ、トウカは叫んだ。
 そして一気に全てを語った。
 語り終え、トウカはおそるおそる顔を上げ、エルルゥの様子をうかがった。
 月に照らし出されたエルルゥの顔は穏やかで、それが逆にトウカの不安を煽った。
「エル……ルゥ殿……?」
「……分かってました。ロックさんと一緒にみなさんが入ってきた時に、みなさんが私の顔をみて
目をそらしたから……。
ロックさんが本当に辛そうな顔をしてたから。トウカさんがとっても言いにくそうにしてたから……」
エルルゥはしゃがみこむと、トウカの肩に手を置いた。
その声はとても静かで、透き通っていた。
「ありがとうございます、トウカさん。話してくれて……」
「エルルゥ殿……」
 トウカの頭の中で警報が鳴り響いていた。
 おかしい。あまりにも冷静すぎる。
「ありがとうございます……。これで、あの子がたくさん泣く前に、側にいってあげられる……」
「……エルルゥ殿?」
 言葉の意味を理解できずに、トウカの顔に困惑の皺が刻まれた。
「ロックさんに、お礼を言っておいて頂けると助かります。ロックさんにはとってもお世話になりましたから……。
 本当はちゃんと面と向かってお礼をいいたいんですけど……。私、すぐにでも行ってあげないと……」
「エルルゥ殿!」
 ようやくエルルゥの言葉を理解したトウカは、蒼白になって叫んだ。
「トウカさん……。今までありがとうございました」
 微笑ながらエルルゥは懐から何かを取り出し、喉に押し当てた。


122 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:30:08 ID:Ng1CXYXk
 
 包丁。

 脳がその固有名詞を認識すると同時にトウカは地を蹴った。
 エルルゥの手に力が込められようとした瞬間、打撃音が響き、エルルゥの手から包丁が打ち飛ばされた。
「エル……ルゥ……殿……」
 荒い息を吐きながらトウカは、きょとんとした顔で手を見つめているエルルゥを見つめた。
 エルルゥの体が動いた、迷わずに包丁に駆け寄っていく。
「エルルゥ殿! それだけは! それだけはいかん!!」
 トウカはエルルゥに飛びついた。
 腰に飛びつかれ、エルルゥの体が止まる。
「離してください……」
 身を捩るエルルゥを必死でトウカは抑えつけた。
 幸いにも、薬師であるエルルゥよりも武人であるトウカの方が力で勝った。

「離して……。離してぇぇっっ!!」

 悲痛な絶叫がトウカの心を切り刻んだ。
「すまぬ! エルルゥ殿! すまぬ!」
 目に涙を滲ませ、謝罪の言葉を口にしながら、トウカは暴れるエルルゥを抱きとめ、押しとどめる。
「どうしてっ!? どうして邪魔をするんですか!?」
「落ち着かれよっ!!」
 やむをえない。
「御免!」
 トウカはエルルゥの足を払い、投げを打った。
「うっ……」
 小さな悲鳴を上げて、エルルゥの体が地面に横倒しになる。
「しっ……失礼を……」
 息を切らせながら、それでもトウカは油断なくエルルゥを見下ろし、隙を見て地面に落ちている包丁を鞘の先で宙に跳ね上げ、
斬鉄剣で切り刻んだ。
「ああ……」
 バラバラになった包丁が地面に落ちるさまをみて、エルルゥの口から吐息が漏れた。
 力なくエルルゥは地面に両手をつきうな垂れた。
「どうして……邪魔をするんですか……」
 その声には恨みすらこもっているように、トウカには聞こえた。
「もう……。私には、生き続ける理由なんか、ないんです……。
 アルルゥも……ハクオロさんも、いないのに……。これ以上、生きていたって……」
 エルルゥを見下ろしながら、どうすれば思いとどまらせることができるかと、必死にトウカは考える。
 その時、自分を思いとどまらせてくれた少年の言葉が蘇った。
 
――そんな軽々しく死のうとして……そんな事を、そのハクオロって王様やカルラって友達は望んでいるんですか……?

(キョン殿……。某に力を貸してくだされ!)


123 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:31:19 ID:Ng1CXYXk
「エルルゥ殿が死を選ばれることを……。聖上やアルルゥ殿が望んでいると、思うのか!?」
 その言葉を吐き出した瞬間、トウカの中で何かが湧き上がった。
 それは激しい怒りにもにた感情だった。
「エルルゥ殿は……言ったな……。アルルゥ殿のために行かねばならぬと……。
 アルルゥ殿が、あの優しい子が……。寂しいからと言って大好きなおねえちゃんの死を喜ぶと思われるのか!!」
 トウカの怒声に、空ろだったエルルゥの瞳に感情の光が走った。
 体を震わせるエルルゥに、
「……エルルゥ殿……。死を選ぶ理由に、他者の名を使ってはならぬ……」
 トウカはひざまずき、エルルゥの体を抱きしめた。
 エルルゥを現世に縫いとめようとするかのように、強く、強く。
「某はエルルゥ殿に生きていて欲しい! 生きていて欲しいのだ!! 
 ウルトリィ殿も、ユズハ殿も、クロウ殿も、オボロ殿も、ベナウィ殿も、ユズハ殿も、カミュ殿も……。
 トゥスクルに残った者達の中に、エルルゥ殿の帰りを待っていない者達など……おらぬっ!!
 エルルゥ殿が死んで悲しまぬものなど、おらぬ!! 我等では、エルルゥ殿が生きる理由にならぬのか!?」
 エルルゥの瞳がゆれ、その大きな目から涙が溢れ出した・
「……でも私……。会いたいんです……。アルルゥに……。ハクオロさんに……」
 トウカの目からも涙が溢れ出した。
「某も……会いたい。聖上に、アルルゥ殿に、カルラ殿に……」
 会いたい。
 今すぐ会いたい、声が聞きたい。
「だが……。まだ、それは許されぬ。望まぬ死を与えられた聖上の、カルラ殿の……アル……ルゥど……」
 トウカの口からも嗚咽が漏れた。
 あれほど泣いておいたというのに、涙は尽きることをしらず溢れ出てくる。
 無理矢理嗚咽を飲み込み、奥歯を食いしばるとトウカは叫んだ。
「アルルゥ殿のためにも……。某たちは生きなければならんのだ!!」
 思考も何も無かった。
 トウカの言葉は、そのままトウカの心の叫びだった。
 その叫びは、エルルゥの心を覆っていた絶望の壁に亀裂を入れ、光を差し込ませた。
「でも……だいじょうぶ……でしょうか……。あの子……一人で……」
 泣きながら、心底心配そうにエルルゥが尋ねてくる。
 トウカは、抱きしめる腕に力を込めた。
「一人ではない……。聖上とカルラ殿がおられる。お二人なら、よきように取り計らってくれる!
 それに……。それに、こんな地獄(ディネボクシリ)のような所でなくば、
 アルルゥ殿のように愛らしい子を害しようと思うものなど、いるものか!!」
 小さく、本当に小さく、エルルゥの泣き濡れた顔に笑みが浮かんだ。
「……ありがとう、ございます。トウカさんに……褒めてもらって、きっと……あの子、喜んで……」
「世辞などではない!! あんなに可愛らしい子は、トゥスクル中を捜してもおらぬっ!!
 異世界のものですら、アルルゥ殿を褒めておったのだから、当然のことだ!!」


124 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/03(火) 23:33:00 ID:Ng1CXYXk
「そうなん……です……か?」
 トウカの胸に顔をうずめ、嗚咽を繰り返しながら、エルルゥは切れ切れに言った。
「ああ! あんなに健気で、優しい子はいないと、そう言っていた!!」
「……姉馬鹿……ですけど……。友達に優しい所は……人に自慢してもいいかなって……思える子で……」
「ああ。ユズハ殿やカミュ殿と……いつも楽しそうに遊んでおられたな……」
 アルルゥ、ユズハ、カミュの3人が仲良くしている様は、見るもの全てが心を和ませる光景だった。
「某もたまに、その輪に加えてもらった……」
 たまにだが、アルルゥはトウカを誘いに来ることがあった。
 そしてトウカは、武人という立場上大きな声では言えなかったが、その時間が大好きだった。
「ご迷惑……じゃなかったですか? あの子……トウカ……おねーちゃんと遊ぶとか言って……
 すっかり友達……扱いして……」
「何を言われる!! 某は、アルルゥ殿に友と呼んでもらえたこと、心底嬉しく思っておりまする!!」

 ――トウカおねーちゃん

 初めてそう呼ばれた時の嬉しさが蘇り、熱いものがトウカの胸を埋め尽くした
「アルルゥ……。アルルゥ……」
「アルルゥ殿……。アルルゥ殿……」
 
二人はアルルゥの名を呼ぶ。
 自分達の声に答える、愛らしい声を最早聞くことはできないと知っていても、呼び続ける。
 何度も、何度も、何度も……・。




【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:疲労、左手に切り傷、全身各所に擦り傷、額にこぶ  精神疲労(大)
[装備]:斬鉄剣
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料-1)、出刃包丁(折れている)、物干し竿(刀/折れている)
[思考]
基本:無用な殺生はしない。だが積極的に参加者を殺して回っている人間は別。
  特にセイバーは出会うことがあれば必ず斬る。
1:ロック達の待つ家へと戻る。
2:エルルゥを守る
3:アルルゥの仇を捜す
4:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョン、魅音、エルルゥを守り通す。

【エルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:自殺は思いとどまったが、かなりの精神的ダメージ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(ロックから譲渡)
[思考・状況]
1:悲しい、何も考えられない(自殺はやめる)
2:沙都子を助けたい。
[備考]※ハクオロの死を受け入れました。
  ※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました


125 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:37:25 ID:REBgUGRa
>>79に引き続き


 ◇ ◇ ◇


「なに! それは本当か!?」

 ――グリフィスがギガゾンビへのアプローチを図る少し前。舞台の裏側では想定外のアクシデントが発生していた。
 怪しげな空気を漂わせる悪の根城にして座標不明の異空間世界。その王室。
 中央に置かれた玉座に座るのは、此度のバトルロワイアル主催責任者である精霊王ギガゾンビだ。
 会場内で今も行われている死闘、惨劇、騙し合いを楽しむための巨大モニターは忙しなく映像を送り続け、それを管理するツチダマたちも緊急事態にどよめきを見せる。

『本当ですギガ〜。第四放送を境に、G-8モールからの監視映像がプッツリ途絶えてしまいましたギガ〜。
 その後数時間待ちましたが現在も復旧の目処は立っておらず、担当のモールダマとも通信不能。亜空間破壊装置の状況も不明ですギガ〜』
「ええい、何をやっているのだこの無能共が! もしモール内の装置が破壊されたとなれば、6つある内の半分が破壊されたことになるのだぞ!
 今も既に空間の歪みは広がってしまっている。このまま装置の破壊が続けば、いずれはタイムパトロールに気づかれてしまうではないか!」
『ギガゾンビ様はアオダヌキたちや派手なバトルばっかり見てるから、隅で何が起こってるか把握できないんだギガ〜』
『まったくだギガ〜。そのくせ「私が施した禁止エリアのブラフは完璧だ!」なんて過信してるしギガ〜』
『困ったご主人様ギガ〜』
「ええい貴様等、聞こえているぞ!」
『ギガ〜!?』

 ひそひそ囁かれる小言に腹を立てたギガゾンビは、反抗意志を見せるツチダマたちに容赦なく制裁を加えていく。

「まったく、高度な管理能力を求めるあまり自己再生機能を犠牲に知能と個性を向上させるよう改良したはいいが、
 どうにも反抗的な態度の奴が多くてかなわん。貴様等の主人は誰だと思っているのだ」

 民衆は、傲慢な独裁者には従わないものである。
 これらバトルロワイアルの監視運営を行っているツチダマたちには、状況に応じた対処と複雑な機械類も扱えるよう改良を加えている。
 その代償として自己再生機能を失ったが、ギガゾンビの命令がない非常時でも適切な行動が行えるようになった。
 が、個々の人格を強めすぎたせいか、どうにもギガゾンビに対し反抗的な輩が出回っているようで困る。
 そういった連中は片っ端から制裁を加えてやっているが、その傲慢な支配体制ゆえに、反乱分子の数が全体の5割を越すことには気づいていない。

『ギガ〜! 大変ですギガゾンビ様〜!』
「今度はなんだ!?」
『交代のため会場に向かった運転士ダマが参加者番号73番グリフィスと接触しましたギガ〜』

 巨大モニター一面に運転士ダマとグリフィスの映像がピックアップされ、ギガゾンビの直接監視下に置かれる。
 どうやらグリフィスは運転士ダマがギガゾンビの手下であるということを知り、情報を聞き出そうとしているようだった。
 そして運転士ダマとグリフィスのすぐ側で、決して無視することのできない惨状が広がっていることに気づく。

126 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:38:26 ID:REBgUGRa
「おい、電車が破壊されているぞ! 取り付けておいた亜空間破壊装置はどうなった!?」
『分かりませんギガ〜』
「分かりませんで済むか馬鹿者め! しかしなんということだ。まさか、このグリフィスが亜空間破壊装置の仕掛けに気づいたとでも言うのか……?」
『報告しますギガ〜』
「今度はなんだ!?」
『参加者番号73番グリフィスが、ギガゾンビ様へ向けて何か喋っているようですギガ〜』

 ツチダマの報を受けるや否や、どこでもドア越しに叫ぶグリフィスの姿が映し出された。
 同時に、ギガゾンビに向けメッセージが伝えられる。

『――ギガゾンビよ! 先ほどまでの会話は聞こえていたか! そしてオレのこの声が聞こえているか!?
 オレの意志を反逆とみなし、首輪を爆破させるのもいい!
 だがその前に一つ、俺の我侭を叶えて欲しい! どうせ死ぬ命、王として粋な計らいを見せる気はないか!?』

 その内容は、下賎な民が王に意見するよりもおこがましい、大胆極まりないものだった。
 やれ武器を遣せだのやれ情報を遣せだの、普通なら逆鱗にも触れかねない図々しい物言いではあったが、その王をも恐れぬ度胸が逆にギガゾンビの興味を惹いた。

「ククク……言いよるわ」
『ど、どうしますギガ〜? ギガゾンビ様』

 監視を担当していたツチダマに返事を返すことはなく、ギガゾンビは徐に手元にあったコンソールキーを弄り出す。
 すると、目の前に通信用のマイクらしい機具が現れ、それを通して高らかに喋り出した。

『その願い、叶えてやろうではないか!』

 途端、モニターの中に立体映像で構成されたギガゾンビが現れた。


 ◇ ◇ ◇



127 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:39:21 ID:REBgUGRa
『我が名は精霊王ギガゾンビ! 貴様等の命を握る、絶対君臨者だ!』
「……これはこれは。その姿、果たして実態ですかな?」

 二度目の邂逅。突然現れたギガゾンビはグリフィスの剣の間合いに立っていたが、闘争はすぐには生まれなかった。

『ホログラム……といっても分からんか。なに、未来の技術を使った単なる虚像だ。剣を振っても意味はないぞ』
「さすがは王を名乗るだけのことはある。私のような愚者の考えることなどお見通しですか」

 嘲笑と高笑い。向かい合う二者の間には何とも言えぬ空気が流れ、近くにいたツチダマはすっかり蚊帳の外だった。
 グリフィスの願いとはなんなのか。それは誰にも分かりえない。

『一つ訊こう、参加者番号73番グリフィスよ。幾多の亜空間破壊装置を潰して回っていたのは貴様か?』
「……アクウカンハカイソウチ、とはこの物体のことでしょうか?」

 グリフィスは視線を傍らの電車に向けるが、鉄道などとは無縁の世界を生きてきた彼にとっては、仕方のない勘違いであった。
 ギガゾンビはそれを肯定するでも否定するでもなく、返答を待たずにグリフィスが言葉を続ける。

「あいにく、私がここに踏み込んだのはまったくの偶然。
 これが損壊した現場は目撃しましたが、この人形にも述べましたとおり犯人の姿は暗闇で不明確でした」

 フェイトの情報は、あえて与えない。
 質問の意図が飲み込めぬ以上、不用意に答えを喋っては相手に利用される恐れがある。

『そうか、つまらぬことを聞いたな。では再度訊こう、グリフィスよ。お前の「我が侭」とはなんだ?』

 その問いに、グリフィスは静かに微笑んだ。
 ギガゾンビにも分からないほど小さく、また自嘲気味の笑みというわけでもない。
 確かなる、暗躍者の笑みだった。

「私めを、あなたの家臣に加えていただきたい」
『……ほう!』

 立体映像に跪き、ミッドランドの王に見せたものと同様の振る舞いを見せるグリフィス。
 即ち、忠誠の態度。ギガゾンビはその行動を素直に「面白い!」と評し、会話を続ける意志を見せた。

「私は主を持たぬ騎士ゆえ、仕える主人というものをずっと探し求めていました。そして、此度の余興であなた様という絶対の力を持つ支配者にめぐり合えた」
『首に輪を繋がれた駄犬の分際で、このギガゾンビの家来になりたいというか! ククッ……愚かなり。愚かすぎて笑いが止まらんわ!』
「恐れながら、力を持つ者に惹かれるのは男の性です。あなた様の所業は私の世界にいた英雄達のどれと比較しても釣り合わない。
 その神とも称せる力の恩恵を、ぜひ私めに与え分けて頂きたいのです」

 跪いた状態のまま、頭を下げる。絶対服従のポーズ。
 グリフィスの行いにギガゾンビの高笑いは留まる様子を見せず、一頻り笑ったところで更なる言葉を紡いだ。

『グリフィスよ! お前は実に面白い! その忠誠を見込み、一度だけチャンスを与えようではないか!』
「――チャンス、とは?」

128 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:40:20 ID:REBgUGRa
『なに、簡単なことだ。そこで壊れている物体だが、それはこの余興を続けるのに大切なものでな。
 同様の意味を持つ施設が会場内に計六つあるのだが、度重なる戦闘でそれも残り二つとなった。お前にその施設の防衛を任せたいのだ』
「容易いことです。恥ずかしながら、私には幾多の戦場を渡り、数々の砦を守り抜いた実績があります。
 しかしながら、それは頼れる兵がいたからこその結果。この戦場では、私など及びもつかない力を保持した者がごまんといましょう。
 願わくば、お力添えを頂きたい。ギガゾンビ様のその、絶対的な力の――」
『……力が欲しい。そう申すかこのいやしんぼめ! いいだろう、いいだろう! その願い叶えてやる!』

 グリフィスの提案に相変わらずの高笑いで応えたギガゾンビは、その空間に一つ、不思議な宝石を落とした。

「……これは?」
『私が「ある世界」で調達した魔の宝石だ。一度その宝石に力が欲しいと願えば、お前の身はこれまでと比べ物にならない力を得ることだろう。
 だが、それがお前の手に負えるものとは限らんぞ? 使うと言うならば、ここぞという時に使うのだな! 
 手駒となる兵が欲しいというなら、そこにいる運転士ダマと寺にいる住職ダマ、温泉にいる番頭ダマをよこそう!
 個々の戦闘能力はイマイチだが、お前の手腕ならば有意義に扱えるだろうな!』
「ありがたき幸せ――」

 グリフィスは授かった宝石を身に抱き寄せ、心の底でギガゾンビ以上の高笑いをしていた。
 すべては計画通り……偶然が運んでくれた不測の事態。だがそれは、グリフィスの漆黒の脳細胞によって確実に好転しつつある。

『貴様が向かうべき場所へは、そこの運転士ダマが導くことだろう! 他の参加者の眼を欺くため、次の放送からは死亡の扱いにしてやる!
 お前は死にながらに活動を続ける影の兵士として、このギガゾンビを守るのだ!
 ――だが、忘れるな! 貴様はどこまでいっても首輪で繋がれた犬に過ぎん! 
 少しでも反抗的な態度を見せればどうなるか……分からぬわけはなかろうな!?』
「心得ております。あなた様も、人間同士の殺し合いとその結果による死を望まれることでしょう。
 つまらぬ死をお見せする気はありません。どうかその玉座を離れず、高みの見物をお楽しみください」
『……フッ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
 グリフィスよ、貴様は本当に面白いな! よかろう! 
 見事施設の防衛を果たし、他の参加者を始末した上で最後の一人となったならば――その時は改めて、精霊王の側近として迎えてやる!』
「その時を夢見て、精進することにいたします……」

 ――ギガゾンビの高笑いが、グリフィスの耳を延々と跋扈する。
 その虚像が消えるまで、グリフィスが顔を上げるまで、不快な声は響き続けた。


 ◇ ◇ ◇



129 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:41:36 ID:REBgUGRa
『通信、切れましたギガ〜』
「……フン、あの若造め!」

 再び悪の根城に戻り、仮面の王ギガゾンビはグリフィスの思わぬ動向に身を震わせていた。

『ギガゾンビ様〜、あんなこと言っちゃっていいギガか〜? あいつ、きっと裏切る気満々ギガ〜』
「裏切る? 何を馬鹿なことを! 所詮奴は首輪付きの飼い犬、あとでどうにでもできるわ!
 だが奴を面白いと言ったのは紛れもない真実だ。どうせならその身が朽ちるまで、この私が利用してやろうではないか!」
『あんな奴使わなくても、寺と温泉に近づく奴の首輪を片っ端から爆破していけば、残りの装置は守れますギガ〜』
「確かにな。だがそれでは私が面白くない! 私が見たいのは人間共の醜い血肉と狂気、その喰らい合いだ!
 逆らわぬ限りは遠隔爆破などというつまらぬ真似もせんわ。ゲームというのは、ルールを守って楽しくが円満に続けていくコツだからな!
 だからグリフィスよ……このギガゾンビを怒らせぬ範囲で、せいぜい悪巧みに励むがいい。
 フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ〜!!!」


 ◇ ◇ ◇


『それでは、グリフィス様一名、椎七寺までご案内しますギガ〜』

 運転士ダマの先導を受け、グリフィスはどこでもドアを越えてC-7に位置する寺に辿り着いた。
 その懐には禁忌の宝石を宿し、その腹は主催者の及びがつかないほどに黒く、鷹は裏方に回る。

(首輪で繋がれた駄犬か……確かにな。だが、それでも生き抜く術があるのだとしたら、その待遇も甘んじて受け入れよう。
 生き残りさえすれば、この先奴を出し抜く機会は必ず訪れる。それに、奴の力に興味を持ったのは事実だしな)

 あらゆる世界を繋ぎ、隔離するギガゾンビの所業は、グリフィスの知るどんな王にも成し得ないものだった。
 国を手に入れるという野望は、ギガゾンビの力を利用すれば容易く達成できる。
 いや、国どころではない。空間を操る技術を用いれば、世界すら手に入れることが容易だろう。

(そして、俺は目論見どおり力を手に入れた。この宝石に眠る力がどんなものかは知らないが……こんなもので俺を利用できると思うなよ)

 風流な感性を与える日本寺院を前にして、グリフィスは託された宝石をじっと見つめる。
 その宝石から蔓延する悪質な雰囲気を瞳に宿し、寺の全景を睥睨しながら運転士ダマに尋ねた。

「一つ尋ねたい。この映像は今もギガゾンビ様の目に映っているな?」
『当たり前だギガ〜。少しでもおかしな真似をすれば首が吹き飛ぶと思ったほうがいいギガ〜』

 運転士ダマへの確認を取ると、グリフィスは僅かに微笑み、腰に下げている剣を抜いた。
 その刃の切っ先は、守るべき拠点に向ける。

「――ギガゾンビ様、私の声が聞こえるでしょうか!? 恐れながら、これから私が働く無礼をどうか静観してお許し頂きたい!」

130 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:42:46 ID:REBgUGRa
 高らかに叫び、スパイセットを通してギガゾンビへ伝える。
 それは勘違いをして早まった行動を取らないで欲しいという旨であり、これからやらかすことへの弁明でもあった。
 グリフィスの意図がまるで理解できない運転士ダマは、その細い瞳をしどろもどろさせるだけしかできない。
 傍らで挙動不審な態度を取る人形には目もくれず、グリフィスは懐の宝石に手を翳し――

『ぎ、ギィガ〜ァ〜〜〜〜〜!!?』

 ――次の瞬間、グリフィスの全身が青白く発光し、解き放たれた魔力の波動が運転士ダマを吹き飛ばす。
 荒れ狂う暴風の中心に立つグリフィスは、これまでは知らなかった、知る由もなかった力の存在に身を震わせ、その変化を受け入れていく。
 次第に収まっていく魔力の波の向こうで、運転士ダマは露になっていくグリフィスの姿を見た。
 ――鷹だ。鷹がそこにいた。
 傭兵時代に彼が愛用していた、鷹を模す甲冑にも似た風格溢れる姿――しかしてその色は、対極に位置する漆黒。
 フルフェイスの兜から覗く眼光は未知の力にも動じる様子を見せず、自身の確かな変化に歓声を上げている。
 変身とも、進化とも形容しがたい身体の変革。グリフィスは今、念願だった力を手に入れた。
 また、今の彼の姿をかつての旧友が見たならば、こう称すことだろう。
 ――闇の翼、フェムト。
 それは本来彼が手に入れるはずだった姿であり、歴史の変わった今では得ようにない姿でもあった。

『あ、あぁ〜……ギガゾンビ様にここぞっていう時に使えって言われてたのに、どうしていきなり使っちゃうんだギガ〜?』
「オレの生きた時代では、己の腕と信頼できる武器、そしてそれらを繰る頭脳こそが力だったからな。
 願うだけで力が手に入る宝石などというものを渡されても、眉唾物に感じてしまうのは仕方のないことなのさ。
 しかしこれは……なるほど。確かに素晴らしい『力』だ」

 黒き鷹と化したグリフィスは、寺に向けていた剣の切っ先を雄々しく振り上げて、なんの躊躇いもなしに振り下ろした。
 あの時と同様に、騎士剣に秘められた真名を解放する。

「約束された勝利の剣」

 短く言い放った言葉は刃に宿る光を増長させ、切っ先の向こう側にあった寺を容易く飲み込んでいく。
 光の洪水に襲われた、とでも言えばいいだろうか。
 エクスカリバーの力の奔流は古ぼけた建築物なぞ一瞬で破壊してしまい、周囲に轟音が響き渡った。
 しかし真名を解放したグリフィス本人に、あの時のような疲労の色はない。
 業者に解体される豚を眺めるような眼で、消え滅びていく寺を見つめていた。

(かつてのような疲労感はないな……だが、それ故に『底が見えない』。ギガゾンビが警告していた通り、ヒトが乱用するには過ぎた力ということか……)

 ――慣れない武器に命を預けるものじゃない……強力な武器であるならなおさらのことだ。

 故ウォルター・C・ドルネーズの教え通り、『願うだけで手に入った力』などに頼りきるのは愚の骨頂。
 それが、自分を利用しようと企むギガゾンビから与えられたものだということを考えれば、尚のこと。
 エクスカリバーは強力な『剣』ではあるが、それ以外の要素を過度に信頼する気にはならなかった。

『ぎがががが……あああんたた! いったいなんてことしてくれたんだギガ!? 裏切るにしてもちょっと早すぎじゃないかギガ!?』
「裏切る? 違うな。これは理論に基づいた上での戦略。我らが主ギガゾンビ様も、それが理解できているからこそオレの首輪を爆破しない」

 落ち着いた物腰でいるグリフィスの言う通り、首輪に変化は見られない。
 守れと言われた拠点を早々に破壊するというとんでもない反逆行為を行ったにも関わらず、ギガゾンビはそれを静観していた。

131 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:43:50 ID:REBgUGRa
「ギガゾンビ様。私の声が聞こえますでしょうか? 私が防衛を命じられた拠点はここと、ここより北に位置する二つ。
 戦の定石に従うならばまずこの地に陣を引き、将はさらに山奥に位置する拠点にて防衛線を張るのが最良と言えましょう。
 しかしながら、今の環境ではそれを満足に行えるほどの兵が足りず、どうしても不本意な結果を想定せざるを得なくなる。
 ギガゾンビ様のこれまでの話によるならば、六つあるという拠点は既に四つが破壊されたとのこと。
 ならば、今さら一つ減ったところで支障はありますまい。ここれより北に位置するもう一方を死守すればいいのですから。
 少ない人員で防衛戦を行うというならば、守るべき拠点は一つに絞った方が守りやすい。そう考えての結果です。
 …………私が反逆者として処分されないところから推測しますと、今述べた戦略を理解して頂けたと取って構いませんかな?
 フッ、さすがは精霊王。私のような若造が出しゃばる必要もありませんか」

 ギガゾンビに言葉が届いたのか否かは不明だが、今も生存しているグリフィスを考えれば、この行為は反逆と見なされてはいないのだろう。
 事が終わった後も、グリフィスの姿に目立った変化は見当たらない。
 漆黒の鷹は依然として健在であったし、その精神が何者かに支配されるようなこともなかった。
 願いどおり力を手に入れ、その存在はフェムトではなく、あくまでもグリフィスとして君臨している――――今は、まだ。

『ギィガ〜、酷い目にあったギガ〜』
『あぁ……ギガたちのお寺が壊れてしまったギガ〜』

 完璧な損壊を見せる寺の脇の方で、嘆きの声を上げる遮光器土偶の姿が二体見られた。
 どうやら、寺内にいた住職ダマの生き残りらしい。

『ちょっとアンタ! 話は聞いていたけど、警告もなしに寺ぶっ壊すなんて酷いじゃないかギガ!』
『おかげで二十一体いた住職ダマも、ギガたち二体を残してみんな壊れちゃったギガ!』
「それはすまないことをした。だが、過ぎたことに文句を言い続けてもギガゾンビ様の怒りに触れるだけだぞ。
 お前たちにはこれからオレの部下として働いてもらう。生き残った者を含めて三人……北の拠点にいる者も含めると四人か」
『運転士ダマと住職ダマAと住職ダマBと、温泉にいる番頭ダマだギガ〜』
「呼びにくいな……」

 三体並んだツチダマたちの顔を眺め、グリフィスはしばし考え込む。
 統率を図るなら、手駒となる者の力量と性格は把握しておきたい。その上で、個々の名前というものはとても重要になってくる。
 ならば、命令の出しやすいよう新たな名前を付ける必要があるだろう。
 部下となる四人のコードネーム……すぐに思いついたのは、ジュドー、リッケルト、コルカス、ピピンといった、旧鷹の団の親しい面々の名だった。
 しかしその名は既に捨てたもの。『   』、そして『キャスカ』と一緒に。
 必要なのは、新生鷹の団を結成する上での新たな呼び名だ。昔への未練などではない。
 思案を重ね、やがてその四つの名前は導き出された。

「……ボイド」運転士ダマには、偽りの魔名を。
「……スラン」住職ダマAにも、偽りの魔名を。
「……ユービック」住職ダマBにも、偽りの魔名を。
「残りの一人は、コンラッド」まだ見ぬ番頭ダマにも、偽りの魔名を。

『ギガ〜、なんかコードネーム格好いいギガ〜』
『他のツチダマたちが泣いて喜ぶようなイカした名前ギガ〜。あとで自慢してやるギガ〜』
『しかし番頭ダマは番頭ダマのままでもいい気がするギガ〜』

132 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:45:23 ID:REBgUGRa
 何故それらの名前が思いついたかは分からない。
 もちろん今のグリフィスには、それらの名前が四人のゴッドハンドのものであることなど知り得ない。
 偶然の上での神秘、いや運命とでも言おうか。グリフィスは深い意味もなく、部下となるツチダマたちに新たなる名を与えた。
 時代は暗転しようとしているのかもしれない。引き返すことの許されぬ道は、グリフィスに新たな決意と野望を抱かせる。

(これは戦だ。戦場に観覧席など存在しない。戦場で死ぬのは王族でも貴族でも平民でもない――敗れた者が死ぬんだ。
 それが分からぬようでは精霊王……お前は大した器ではないさ)

 ギガゾンビから与えられた、異界の産物――『ジュエルシード』という名の、願いを叶える宝石。
 それはどこか、あの『覇王の卵』にも似た印象を感じ、グリフィスの懐で鳴動を続けている。
 それが彼の手に負えるものかどうかは、誰にも分からない。


 ◇ ◇ ◇


「――あやつめ、やりおったわ!」

 残り二つの亜空間破壊装置――それを寺ごと破壊すると言うグリフィスの暴挙を目の当たりにし、ギガゾンビはこれまでにない喜びの表情を見せていた。

「力を与えた早々にこれとは……グふふふっ、予想以上に楽しめそうだわ!
 だが、全て思い通りにいっていると過信するのは危険だなぁ……今は大人しくしているが、果たしてその力が貴様の手に負えるものかどうか……」

 ギガゾンビがグリフィスに与えた魔の宝玉――ロストロギア『ジュエルシード』。
 全21個とされるそれは、時空管理局が封印した12個とプレシア・テスタロッサが自らの野望のために使用した際に失われた9個に分けられる。
 それを何故ギガゾンビが持っていたのかは分からないが、グリフィスの手に渡ったジュエルシードは、決して贋物とは言えないほどの膨大な魔力を秘めていた。
 もっとも、この『願いを叶える宝石』は……人の手に負えるものなどではない。
 今現在はグリフィスの力として働いているが、いつ暴走するとも限らぬ第一級危険物であることは変わりなかった。
 ギガゾンビの言うとおり、ジュエルシードの輝きがグリフィスに幸を齎すかは……まだ、誰にも分からない。



 一人の戦士が表舞台から退き、主催側に回る。
 憩いの湖を最後の砦とし、鷹はその守り手につく。
 いずれ訪れるであろう勇敢な戦士たちの希望を阻むため、そして自らの野望を果たすため。
 ここに、バトルロワイアル最大の『転機』が訪れる。

133 :『転』 ◆LXe12sNRSs :2007/04/04(水) 00:46:37 ID:REBgUGRa
【C-6・寺跡地/2日目/早朝】
【新生鷹の団】
【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:魔力全快?、全身に軽い火傷、打撲
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、耐刃防護服、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、フェムトの甲冑@ベルセルク
[道具]:マイクロUZI(残弾数6/50)、やや短くなったターザンロープ@ドラえもん、支給品一式×7(食料のみ三つ分)
   オレンジジュース二缶、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に
   ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ、ハルコンネンの弾(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾4発 劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING
[思考・状況]
1:温泉へ向かい、亜空間破壊装置の防衛。近づく参加者は始末する。
2:ジュエルシードの力を過信、乱用しない(ギガゾンビが何らかの罠を仕掛けていると考えている)。
3:そして――

【運転士ダマ(ボイド)、住職ダマA(スラン)、住職ダマB(ユービック)、番頭ダマ(コンラッド)】
[思考・状況]
1:グリフィスの手駒として働く。
2:グリフィスが何かしようものなら即ギガゾンビ様に密告。


【???/2日目/早朝】
【ギガゾンビ@ドラえもん】
[思考・状況]
基本:ゲームを楽しむ。
1:グリフィスの監視は徹底して行う。
2:基本、首輪の遠隔爆破は行わない。反乱分子はグリフィスに始末させる。グリフィスが敗れた場合は、その限りではない。
3:もちろんグリフィスが何か不審な行動を取ろうものなら、首輪を爆破する。


【寺の亜空間破壊装置 機能停止】
【住職ダマ×19@ドラえもん 機能停止】
【グリフィス@ベルセルク 死亡『扱い』】
[残り22人]


※グリフィスの名前は次の放送で呼ばれます。
※隔離された空間にかなりの歪みが生じています。『魔法』による手段を用いれば、あるいは外部との連絡も可能かもしれません。
※電車と寺のスパイセットは機能していません。補充要員のツチダマも派遣される予定はなし。
※ジュエルシードについて。
 グリフィスに齎したものは、身体能力と魔力の向上、フェムトの甲冑のみです。原作に基づく能力等は一切ありません。
 現在は特に異変はありませんが、暴走する可能性は十分に孕んでいます。
 また、封印されたものか既に失われたものか詳細がハッキリせず、そもそも本物か贋物かも不明確なため、ギガゾンビが何か仕掛けを施していないとも限りません。
※『約束された勝利の剣』について。
 現在のグリフィスは魔力の向上により再度エクスカリバーの力を引き出す事を可能としていますが、威力は前回使用したものとなんら変わりません。
 消耗に関してもやや効率が良くなった程度ですが、グリフィスはその変化量を見定められておらず、また警戒して乱用を避ける思考にあります。

134 :ひめられたもの(修正)  ◆WwHdPG9VGI :2007/04/04(水) 01:44:16 ID:xgt4GPm2
>>91
修正

「そうだったわね……。ったく、あの年増女!」
 ハルヒは腹立たしそうに悪態をついた。
 あの女のせいで、ヤマトとアルルゥという二人の特別団員と別れ別れになってしまった。
 ドラえもん達の仲間が助けに言ってくれているといるが……。
(探したいけど、手が足りないわ……。アルちゃんを早く見つけてあげないといけないし)
 となるとやはり、ドラえもん達の味方に期待するしかない。
 聞けば超能力者だというから、アテにしていいだろう。
(無事でいなさいよ、ヤマト……)
 とにかく、こちらへ向かってくるキョンとその仲間と合流すべきだ。
 セラス達は信用ならないが、キョンの仲間達なら信用できる。
 そのためにも、凛が妙なまねをしないか見張る必要がある。
「とにかく……。危ないから、部屋に入っていたほうがいいよ。ハルヒちゃん!」


>>119修正
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し)
[装備]: なし
[道具]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回) 、
  着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)、
[思考]
基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出。
1:アルルゥの仇を捜す
2:ipodの調査も含め、長門有希の残したものを解析し、脱出に努める。
3:ドラえもんの言っていた『ディスク』が何か気になる
4:ヤマトが心配(ただ、超能力者であるドラえもんの仲間に期待しているので
           一般人がいくよりは、と思っている所がある。
           また、アルルゥ、長門という死者の方に気がいきがちである)

[備考] :
※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました
※キョンがノートパソコンから得た情報、及びキョンの考察を聞きました。



135 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/04(水) 01:50:55 ID:xgt4GPm2
>>509
遅れまして失礼。

前、後で収まるようなら、
>>102の↓までで(前)としてください

月はただ光っているだけで、何も答えてはくれなかった。



前、中、後ならでお願いします
>>94まで(前)
>>112まで(中)
残り(後)

後、一部修正して、投下しておきましたのでよろしくお願いします。

136 :Macabre in muddled rabbithutch 1/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:27:01 ID:jRJ9Msad
舞台の北東に大きく広がる緑を湛えたなだらかな山。その西の麓、裾野に広がる市街との狭間。
そこに並んだ平屋の一角に全ての戸を閉じ窓を幕で覆った、目立たない中でもさらに隠れようと
している静かな一軒の民家があった。
その、あまり立派だとは言えない一軒の民家の中には八人の男女が潜んでいる。

電灯も点けず、外からの月明かりさえも取り入れていない家の中は真に暗かったが、いくつかの
人が集まる場所は、布を被せたランタンの最低限の光で淡く照らされていた。
その内の一箇所、この家の中で最も広い部屋である居間に幾人かの人間が集まっている。


涼宮ハルヒ、ロック、園崎魅音……、そして外から戻ってきたトウカとエルルゥ。
彼女達に見守られながらキョンはノートPCが検索を終えるのをじっと待っていた。

「やっぱり、ないか……」
射手座の日――THE DAY OF SAGITTARIUS III。
正式名が解ったことでもう一度ノートPCの中を洗ってみたが、結果は芳しくなかった。
長門有希が残していった脱出のヒント――射手座の日を越えていけ。
これをクリアするにはまだ材料が集まっていないらしい……。

『”射手座の日”や”THE DAY OF SAGITTARIUS V”という名前に心当たりは?』

キョンはキーボードを叩きそれを打ち込むと、ノートPCを彼を見守る周囲の人間の方へと向けた。
だが、誰もそれを知ってはおらずただ首を横に振るだけだった。

「それが解るとどうなるんだい?」
尋ねたのはロックだった。確かにそれは気になるだろう。だが、
「……いえ。具体的には俺もどうなるかわかりません」
キーボードを叩きディスプレイの方へと言葉を続ける。
『だけど、これを残した長門はここからの脱出に必要なものだと』
それを見てロックは静かに頷いた。
「OK。他に縋る手もないからな。それを追う方向で行こうか」

薄暗闇の中で他の一同もそれに同意する。

137 :Macabre in muddled rabbithutch 2/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:27:54 ID:jRJ9Msad
さてと、キョンはさらにノートPCを操作する。
やらなければならないことはたくさんある。状況が落ち着いているうちに済ませなければならない。
操作を進めロックが持っていたi-podから、その中のデータをノートPCへと転送する。
参加者全員の名前付き画像、意図が不明な音声データ――これはロックによるとほとんどが日本の
アニメソングらしきものだったらしい。……そしてi-podでは再生できなかった謎のデータ。

本命である謎のデータ。そのアイコンの上にカーソルを置いたところでキョンは動きを止めた。
(まさか、ギガゾンビの用意したウィルスってことはないだろうな……?)
長門有希はいくつかの情報をここに残したらしい……、だが逆に考えればほとんどはギガゾンビが
用意したものだ。万が一だが、これが罠という可能性もある……。
(いや、長門を信用しよう)
この場合の信用とは、例えこのデータが罠であろうと長門が用意したPCならセキュリティは完璧
だろうという意味だ。
キョンは意を決してキーを叩いた……そして、

『ERROR!! このファイルは再生することができません』

メッセージと共に鳴り響いたエラー音に肝を冷やす。
だが、幸いにもPCに害を与えるものではなかったようだ。

「どうしたのキョン?」
エラー音に、ハルヒとロックがPCのディスプレイを覗き込む。
「いや、ロックさんのi-podに入ってたデータなんだが、このPCでも開けないようなんだ」
「じゃあ、なんでなら開けるって言うのよ?」
ハルヒはキョンに詰め寄るが……、
「……俺に言われてもな」
開けもしないとなったらもうお手上げ……と、あることに気付いてキョンは操作を再開した。

『製作者(U):長門有希 コメント(M):9課へ』

謎のデータはやはり長門有希の残したものであった。
データのプロパティには彼女の署名、そしてこのデータの宛先が書かれていた。

「9課って……、トグサさんのこと?」
「ああ、多分そうだよな……って、ハルヒ。お前、トグサさんとは再会してないのか?」
「何言ってるのよ。あんたこそ有希と会ったんならトグサさんとも会ってるでしょう?」
「いや、トグサさんはお前達を迎えに映画館に……って」
「「……あ」」

「映画館に電話してくる!」
言うが早いかキョンは居間を飛び出し電話機へと走った。

138 :Macabre in muddled rabbithutch 3/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:28:48 ID:jRJ9Msad
「で、どうだった?」
再び戻ってきたキョンはハルヒの言葉に力なく首を振る。
「トグサさんはいなかったみたいだ」
映画館で受話器を取るものはおらず、返ってきたのは以前に残されていたメッセージのみであった。

トグサは一体どこに行ったのか?
「トグサさん、私達を探しているのかも?」
「かも知れないな……、けどそれでも一度は病院には戻ってきそうなものだが」
ハルヒも、そしてキョンもトグサと別れてかなりの時間が経過している。この状況、自然と想像は
悪い方向へと進むが……、
「……もしかして、ヤマトを誘拐したヤツを追っているのかも?」
唐突なハルヒの言葉にキョンは眉をひそめる。
「なんで、そうなるんだ?」
「ヤマトをさらったヤツは私達が使ってたトラックに乗って逃げたのよ。
 だから、もしトグサさんがそれを見たとしたらそのまま追いかけたかも知れない。
 放送が始まる直前だったし、時間も合うわ」
成る程と、キョンは頷いた。確かにありえる話だと。
「それだと、どうしようもないな。トグサさんもヤマト君も無事を祈るしか……」
「……悔しいけどそうね。カズマってヤツも追っているらしいし、大丈夫だとは思うけど」
すぐにでも外に出て探しに行きたいというのが二人の本音ではあったが、逆にそうすれば余計に
事態はこじれるということも二人は解っていた。
そんな風に自分を納得させている二人に、先程から置いてけぼりにされているロックが声をかける。
「なんだか色々とあったみたいだけど、その情報を交換し合わないか?
 どうやら生き残っている人間のほとんどとなんらかの接触があったみたいだし、それを共有できれば
 もう無駄な争いもしなくてすみそうだ」
ロックの後ろには、さらに魅音、トウカ、エルルゥと今の話に加われなかった三人がいる。
「すいません。俺達二人だけで」
じゃあ、と言うとキョンは再びノートPCのキーボードを叩いた。

ディスプレイに新しく三つのウィンドゥが開かれる。
ひとつは、参加者の名前付き画像。
ひとつは、ギガゾンビのホームページにある詳細地図と死亡者リスト。
そして最後のひとつは、ツチダマ掲示板。

「みんなの証言と、これらを合わせて検証すれば位置や時間なんかも正確になると思います」
それらを集まった人間に簡単に説明するとキョンはノートPCを全員が見やすい場所に動かした。
「じゃあ、始めましょうか」

こうして、長い夜を使った昨日の検証が始まった。

139 :Macabre in muddled rabbithutch 4/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:29:40 ID:jRJ9Msad
最初に説明を始めたのはハルヒだった。地図と参加者の画像を指しながら行動を振り返る。

「私は最初、山の中……多分ここら辺りだわ、から始まって、すぐにルパンとアルルゥと出会えたの。
 で、図書館の方へ行こうとゆうことになったのね。途中、ここの橋で……そう、このシグナムって
 ヤツに襲われて、アルルゥちゃんと助けを求めに戻ったところで有希とヤマトに出会ったの。
 それですぐにヤマトが運転してたトラックでルパンの元に戻ろうとしたんだけど……、
 車が事故?かなんかにあって横転したのよ。それからしばらくは気を失っていたわ。
 次に気づいたのが病院の中で、そこであの凛と水銀燈、そして……そう、このセイバーってヤツに
 襲われたの。なんとか逃げ出せたんだけどぶりぶりざえもんとははぐれちゃって……、でもあいつ
 生きてたのよね?」
「ああ。今は次元さんと一緒にいるはずだ」

キョンの言葉に頷くと、ハルヒは説明を続けた。
「……で、途中私達はその次元さんに出会って――彼はこの後キョン達と会うのよね?
 その後すぐに映画館に着いたわ。そこでキョンと電話で会話して、映画を見た後しばらく休もうって
 ことになったんだけど、気付いたら有希とトグサさんが出て行ってて……。
 私達も出て行ったんだけど、病院でこの……峰不二子。こいつに間違いないわ。こいつに眠らされ
 ちゃって気がついたら…………、ヤマトとアルルゥちゃんが…………」

進むにしたがってハルヒの言葉から力が失われていっていた。SOS団の団長を名乗っていても
この場では何もできなかったどころか常に皆の足を引っ張っている。それどころか、自分の責任で
アルルゥやヤマトを……。

「……ハルヒ」
「……大丈夫。続けるわ。それで私達はアルルゥちゃんを探しに出たんだけど……、変ね? あの
 遠坂凛の名を騙ったヤツが参加者の中にいないわ」
ハルヒはノートPCを操作して80人全員を確認するが、あの偽凛の姿はその中にはなかった。
「変装してたんじゃないのか? でなければ、80人以外にも人がいるってことになってしまう」
そう言葉を発したのはロックだ。確かに……とハルヒも思った。峰不二子もあの後変装していたと
聞いている。そして自分の持っている着せ替えカメラ。変装できる者が何人かいても不自然ではない。

「そうね。その問題は置いておくとするわ。
 ……で、そこにいたその偽凛とのび太君とドラえもんとでアルルゥを探そうってことになったんだけど、
 偽凛が一人で勝手に先に行って、近くまで来ていた連中と戦い始めたのよ。この、劉鳳とセラスだわ。
 そしてそこに本物の遠坂凛も現れて、結局偽凛はどこかへいなくなっちゃったってわけ」
「その時に武が……」
言葉を挟んだのは魅音だ。
「ええ。偽凛が殺したって、そう聞いている。……ごめんなさい。これも私のせいだわ。
 なんであいつの勝手を許したんだろう? それにあいつは味方だってのび太君に……」

ハルヒはさらに後悔を重ねた。今考えればどう考えてもあの偽凛は敵だ。なのにあの時はアルルゥが
いなくなった焦りからあいつを頼ってしまった。さらにその後、本物の凛を見て反射的に偽凛を自分の
味方側だと考えてしまった。
敵の敵は味方――しかし冷静に考えればそんなはずはない。これはバトルロイヤルなのだから。

140 :Macabre in muddled rabbithutch 5/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:30:36 ID:jRJ9Msad
「謝らないでよハルヒさん。ハルヒさんは悪くないよ。だから謝らないで……」
――謝られると責めてしまうから。そんな暗い感情を魅音は押し殺す。
強くなくてはならないと、そうクーガーに誓ったのだから。
この圧迫される状況に、感情を荒ぶらせ諍いを始めればそれこそギガゾンビの思う壺だと。

「ありがとう魅音。
 で、その後はさっきあった通りよ。あの怪しい二人からあなた達を連れて逃げた。
 私からは以上」
次は誰? というハルヒの言葉を受けて語り出したのは同じSOS団出身のキョンだった。


「俺は……というか、俺とトウカさんはすぐに出会えたんで合わせて話すよ。いいですかトウカさん?」
顔を見やり尋ねるキョンにトウカはコクリと頷く。
「では。まずは、俺達はこの橋の向こう側からスタートしたんだ。
 それで河の向こうに火の手が上がっているのが見えたからそこに向かおうとして橋を渡った。
 そこで、病院でハルヒ達を襲ったというセイバーという女性と出会ったんだ。
 その時、彼女はかなりの重症を負っているように見えたんだが……」
「私達を襲った時はそんな風に見えなかったわ」
早くも食い違いが出た。だが、キョンはつい最近に見ている間に傷を回復してしまう化物を見ている。
まるっきりファンタジーの世界の住人だ。もう今更魔法や回復アイテムなんてものが出てきても
驚きはしない。そして彼の見たセイバーの出で立ちはまさにファンタジーのそれだった。

「まぁ、それで俺達は病院へと着いたわけだが、これはハルヒ達よりかは前だったみたいだな。
 そこでロックさんと君島さん、そしてしんのすけ君と出会った」
確認するように顔を向けたキョンを見て、ロックが肯定する。
「ああ。俺達はそこで出会った。
 その後すぐに別れたわけだが、君島は……件のセイバーに殺されたよ。
 そして、しんのすけも一度セイバーに襲われたことがあったらしい。」
ロックの言葉にトウカが身体を振るわせる。
「申し訳ない。やはり某があの時に切り伏せていれば……」
「いや謝るのはなしだトウカさん。悪いというならこのセイバー……、 どうやら彼女は最初から
 かなり殺る気だったらしいな。
 こんな風に情報を合わせることで解ることもある。キョン君続けてくれ」

ロックに促されキョンは説明を再開する。
「じゃあ、続けます。
 俺達はあの後南下して、商店街でロックさんが残していったころばし屋を回収しました。
 それから、放送で聞いた身動きの取れない人ってのを探してこのE-4エリアに入ったんだが
 そこで劉鳳さんとカズマって人との戦いに巻き込まれかけて、……その後気絶しちゃったんですけど、
 そこはトウカさんにお願いできますか?」
トウカは頷き、受け継いで続きを語る。
「あの時、急に起こった大爆発に某とキョン殿は吹き飛ばされ、キョン殿は打ち所悪く気絶されたのです。
 某はキョン殿の身を隠すべく手近な建物へと入りました。キョン殿が気絶されていたのはそれから
 四時間程になりますが、その間は別段変わった事はなかったように思います」
そこまでを一言で言うと、トウカは再びキョンへと返した。

141 :Macabre in muddled rabbithutch 6/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:31:34 ID:jRJ9Msad
「起きた俺はそこでこのノートPCを見つけました。
 多分、そこで亡くなられていた侍……この井尻又兵衛由俊さんの物だったんだと思います。
 それからすぐに武少年と出会って、彼の探していた魅音さんと翠星石を一緒に探すことに」

キョンのその言葉に魅音の心が痛む。武はあの後からずっと一人で魅音と翠星石を探していたのだ。
それなのに自分は……ずっと彼を仇だと思い込んでいた。再開した時にも酷い言葉をぶつけてしまった。
それが彼をどれだけ傷つけただろうか……、
(ごめんね。武……)
魅音は今は亡き剛田武に、一人心の中で詫びを重ねた。

「……で、その後すぐに次元さんとも会えて、彼からハルヒ達の伝言を受けて映画館に電話を。
 それから掲示板に書かれた情報を元に翠星石を探して四人でホテルに行ったんです。
 園崎とはそこで。他にも劉鳳さんとかセラスさんとかが一緒にいて、このアーカードっていう
 怪物と闘っていました。トウカさんや次元さんも加勢して、最後はトグサさんが止めを……」
「有希はそのアーカードってのに殺されたの?」
「……ああ。そうだ」
ハルヒの問いに、キョンは心苦しくもそれを肯定する。彼女はそれにただ微かに「そう」とだけ返した。

「その後はトグサさんの提案で病院へ向かうということになったんですが、俺達はクーガーさんを
 待ってその場にしばらく残ることに……で、さっき病院の前でハルヒと会ったわけです」
そして、これで終わりです……とキョンは説明を終えた。


じゃあ、次は私の番だね。と魅音が語り始めた。
「私はこの端っこの方、山の中からスタートしてすぐにクーガーと出会った。
 で、散々クーガーに振り回されてね。結局また山の中に置いてけぼりにされて……、
 その後は一人でこの山の奥にある温泉に行ったんだ」

魅音は思い出す。温泉から出て眩しい朝日を浴びたあの時のことを。
あの時は、まだこんな風に――幾人もの大切な人々が失われてしまうなんて考えもしていなかった。
これも日常の部活の延長。自分がそして部活の仲間達で必ず打倒できると信じていた。
そして、自分のそんな考えを打ち砕いたのがあいつだった。

「仲間を探そうと山を降りた私は、途中であの水銀燈っていう人形に襲われたんだ。
 荷物も捨てて命からがら全力で走って……、それで偶然なんだけど町の中で武と梨花、翠星石に
 会うことができた。それから街中で仲間を探し回って……、私達もキョン達と同じようにE-4の場所に
 向かったんだよ。私達が行った時にはあそこは瓦礫だらけだったからそれは爆発の後だったと思う」

そこで言葉が詰まる。あの地獄の様な光景、そして――それから――……、思い出したくないこと
ばかりだ。いっそ狂ってしまえば、殺されればと思った――けど、止まってはいけない。
(クーガーが……、私は強いと言ってくれた)
魅音は少しだけ大きく息を吐くと、また再び言葉を紡ぎ始める。

「その瓦礫の山の中で、どうしてか梨花は翠星石に殺された。私もあいつに撃たれて……、
 その時も命からがら逃げ出したよ。武も敵だって思ったし……。
 それで、すぐその後に光となのはちゃんに出会って、ホテルに人が集まっているから一緒に
 行こうって……、でも途中でホテルが襲われているのがわかって、なのはちゃんが空を飛んで
 先に行ったんだけどそれっきりに……。私と光も後で着いたんだけどその時にはホテルは
 崩れ始めてて、それであの化物が……」

142 :Macabre in muddled rabbithutch 7/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:32:27 ID:jRJ9Msad
不意にフラッシュバックした光が死んだ時の光景に、魅音は手を口に当てた。
出会ったばかりの自分を守るために命を犠牲にした少女。頭を潰され無残に死んでしまった。

「大丈夫、魅音?」
心配そうにハルヒが声をかける。そしてトウカやキョン達も魅音を心配そうに窺っている。
「……大丈夫。みんなごめんね」
込み上げた酸っぱい胃液を飲み込み、魅音は力無く微笑んだ。

「そのアーカードって化物がホテルの中にいたんだ。光は私を守ってそいつに……殺された。
 私も殺されそうになったんだけど、そこでクーガーが助けてくれてあいつを倒した……はずだった
 んだけど、次にセラスさんと風ちゃんと一緒に戻って時にはまだ生きてたんだ。
 それで、光の友達だった風ちゃんも殺されてまた駄目だって思った時に今度は劉鳳さんが
 助けに来てくれたんだ。その後はキョン達も駆けつけて……それからはキョンと一緒だったよ」


「結局、ホテルに集まっていた人達とは出会えなかったのかい?」
少し酷ではあるが重要なことだとロックが魅音に質問した。
「それが……結局誰とも。ホテルは私達が見ている目の前で崩壊しちゃったし……、
 それに誰があの中にいたのか詳しくは知らないんだ。ゲインって名前は聞いたんだけど」
その言葉にロックはディスプレイに表示された死亡者リストを確認する。
「その人はどうやら助かったみたいだな。逃げ出すことができたんだろう。
 このゲインという人と面識のある人は?」
だが、ロックの質問に頭を縦に振るものはいなかった。
「そうか……、じゃあ次は俺が話すよ」


デイバッグから取り出した水を飲んで口を湿らすと、ロックは昨日の経緯を淡々と語り始めた。

「俺がスタートしたのはここ――商店街のある場所だ。アンラッキーなことに君達が倒した
 化物にすぐに出会っちまってね……まぁ、なんとか逃げおおせたよ。
 それで逃げている途中にエルルゥと出会ったんだけど、すぐにエルルゥから逃げられて
 しまったんだ」
そこでロックは自嘲気味に笑った。その隣ではエルルゥが身を縮こまらせている。

「まさか、あんた彼女になんかセクハラめいたことしたんじゃないでしょうね」
突っかかっるハルヒの剣幕に苦笑しながらロックは答える。
「まぁ、当たらずも遠からずかな……」
曖昧な回答にハルヒがむくれると、エルルゥがロックへと助け舟を出した。
「私が悪いんです。間違ってロックさんに惚れ薬を飲ませちゃって……、それで怖くなって……」

143 :Macabre in muddled rabbithutch 8/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:33:20 ID:jRJ9Msad
「惚れ薬っ!?」

一際大きく反応したのは魅音だ。だが、キョンの隣のハルヒもそれには興味を引かれたようである。

「そんなものがあるの? 本物だったのソレ?」
詰め寄る魅音とハルヒに、ロックは吐き捨てるように答えた。
「……ああ。効果覿面だったよ」
続く、”死にたくなるぐらいね”という口の中だけで囁かれた言葉はハルヒと魅音には届かなかった。
彼女達は今度はエルルゥへと詰め寄ってその薬の所在を確認している。が、
「荷物をどこかで失くしてしまって……だからあれがどこにあるかはわかりません」
エルルゥの言葉に大きく落胆した。

「まぁ、そういうことがあって俺は一人で近くの病院へと足を運んだんだ……」
ここから先は彼にとって誰にも話したくない人生で最悪の過ちだ。だが、ここで隠していては
フェアじゃない――と、彼はあえてそれを語った。

「そこで一人の少女と出会った。すでに死んでいた少女とね。そして、すぐに惚れたよ。
 それから俺は死んでしまった彼女の仇を取るために、関係の無い子供を一人……殺した」
衝撃的な告白に、すでにそれを知っていたキョンも含めて凍りつく。とりわけその原因を作ったとも
いえるエルルゥは大きなショックを受けていた。

「これは弁解できることではないし、ましてや償えることでもない。だが、それが本位では
 なかったことだけは信じて欲しい。そして、エルルゥ。……今まで黙っていてすまない」
エルルゥは告白したロックよりもさらに蒼い顔をしていた。
幼いアルルゥを探す一方で、まさか自分が他の幼い子供が命を落とす原因を作っていたなんてと。
「エルルゥ、気に病まないでくれ。元々は俺の不注意がいけなかったんだ。君に落ち度はない」
だが、その言葉もエルルゥの空虚な心を通り抜けるだけだった。彼女の心は今、内へ内へと堕ちて
いっている。ただ辛うじて「はい」と言葉を返すのみだった。

「そして、その直後に君島とキョン君達に出会った。それからはさっき言った通りセイバーに
 襲われて、逃げるように山を登ったよ。そして山の中で沙都子ちゃんと、エルルゥに会ったんだ。
 それからは山の中で隠れていたんだが、そこが禁止エリアに指定されてね。山から出てきた
 所を君達と出くわしたというわけさ」

これで終わりとロックは手のひらを広げて見せた。


残りはエルルゥのみと全員が彼女に注目するが、まるで抜け殻と言わんばかりに彼女は
自失しているように見えた。
だが、それでも思考は働いていたらしい。最低限の言葉で彼女なりの経緯を語り始めた。

「私の荷物の中には”たずね人すてっき”という人を探せる道具が入ってたんです。
 だからそれを使ってハクオロさんを、アルルゥを探していました。
 どこを歩いていたかは……あまり覚えていません」

彼女の語る経緯はとても短い物だった。だがその短さが逆に、彼女がどれだけ一心であったかを
表している。そして最後にもう一言だけ付け加えた。
「みなさんの言う。遠坂凛と水銀燈、そしてのび太という子供には見覚えがあります。
 よく覚えてはいませんが、明るい内のことだったと……」

144 :Macabre in muddled rabbithutch 9/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:34:27 ID:jRJ9Msad
全員の証言が一段落したところで、居間に集った六人は少し休憩を取ることにした。
台所で見つけたお茶を淹れ、それと火で炙ったパンで痛んだ身体を温める。

更なる詳しい検証の前に、憔悴したエルルゥを子供達と一緒に寝かせトウカをその番に立たせた。
二人が去った居間には、キョン、ハルヒ、魅音、ロックの四人が残っている。


「腹が立つわね人事みたいに」
ハルヒが腹を立てているのはツチダマ掲示板のことだ。
そのログを今一度、四人で最初から見直していた。

「朝倉さんって、頭脳も運動も抜群だったけど……、人を殺せる人だなんて思ってなかったわ」
と、ハルヒが溢す。

「新しい書き込みはホテル周辺のことばかりだな。それに俺に対するネタバレ禁止って……」
新スレをチェックしたキョンは溜息をついた。
あれから新しく立ったスレッドのテンプレには”キョン君に対するネタバレは禁止ギガ”という
一文が加えられていた。書き込みは続いているが、固有名詞の数は減りいまいち要領を得ない
ものへとなっている。

「口振りからすると、このツチダマってのが私達を監視してるってことになるのかな」
そう言うと、魅音は辺りを窺うように首を振った。だが、もちろんそういった気配は感じられない。

「ツチダマというのがどんな存在かは解らないが、ホテルでの騒動を見に集まったとか、
 そのせいで巻き込まれて故障した……なんて書き込みを見ると、ある程度自律した存在らしいな」
書き込みを冷静に分析するのはロックだ。
始まってから間もない内に監視と盗聴の可能性には気付いていたが、まさかこんなものとは
想像していなかった。ギガゾンビの科学力は、ある意味ロックの予想以上であったと言える。

「しかし、情報にムラがあるわね」
「ここに書き込まれているのは監視の結果じゃなくて、このツチダマ達が注目したものだからな」
不満を洩らすハルヒをキョンが宥める。

「じゃあ、私達にはあんまり意味がないんじゃない? 書かれているのは終わったことばかりだし」
「いや、そうとも言えないさ。彼らの監視体制を推察する材料にはなる」
魅音の言葉にロックはこう返し、さらに例えばと言葉を続けた。
「ここの書き込みには屋内の情報はほとんどない。病院やホテルでもロビーや廊下なんかの
 開けた場所だけで個室の中を見たものはなかった。
 つまり、ツチダマ達は俺たちには見えないが、逆に間近くにいれば気付かれる可能性もある
 ってことさ。だから、不用意に閉じた空間へとは進入してこない」
「つまり、この家の中とかだと安全だってわけ?」
「少なくとも、このツチダマとか言うヤツラに対してはね……」

――そうは言っても。
安心はできないとロックは思う。監視や盗聴の手段がツチダマだけなら問題はないが、そうでは
ないだろう。ツチダマの監視には穴が多く見受けられることから、それを補完する手段があるはずだ。
ギガゾンビが参加者の位置を把握しているのは今までの放送から明らかだ。
つまり参加者の証――首輪から何らかの信号が発信されているということになる。
この信号の中に音声や映像などが含まれてないかと言えば確率はゼロではない。

145 :Macabre in muddled rabbithutch 10/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:35:20 ID:jRJ9Msad
ロックの口から小さい溜息が漏れる。
元からギガゾンビの掌の上で始まったゲームであり、不公平は承知の上の反逆だがそれでも
ギガゾンビの掌は広い。
だが、諦めはしない。諦めの悪さこそが彼の最後の意地であり。それでもって悪漢犇めくロワナプラを
渡り歩いているのだから。



掲示板をあらかた検証し終えると、四人は次に生き残った参加者の検証を始めた。
まずは生存者をいくつかのカテゴリーに分類する。

前回の放送で明らかになった現在の生存者は29人。
すでに死亡が確認されている剛田武と、生存が絶望視されているアルルゥを抜けば27人。

そこからここにいる、
ハルヒ、キョン、魅音、沙都子、しんのすけ、ロック、エルルゥ、トウカの8人を除けば19人。

さらに面識があり安全な相手であると確信できる、ドラえもん、のび太、劉鳳、ぶりぶりざえもん、
次元、レヴィ、セラス、トグサ、ヤマトの9人を除けば残りは10人。

残りは、
危険な存在であると確信できる、水銀燈、峰不二子、シグナム、セイバー、遠坂凛の5人と、
全く面識のない、カズマ、フェイト、グリフィス、ゲイナー、ゲインの5人になる。



「水銀燈、峰不二子、シグナム、セイバー、遠坂凛……、こいつらはどいつも間違いなく悪人よ。
 5人全員に襲われた私が保証するわ」
「そんなことは胸を張れるもんじゃないだろう……」
ディスプレイ上に打ち込んだ表を見て胸を張るハルヒにキョンは嘆息する。

「問題は遠坂凛の名を騙った何者かだな。この中で直接彼女を見たのはハルヒちゃん、君だけ
 だけど他の人間の写真を見て引っかかることはないかい?」
ロックに言われて、ハルヒはじと目でディスプレイと睨めっこをするが……、
「うーん。どうとも言えないわ。黒い羽とか雰囲気は水銀燈って性悪人形と近い気が
 するんだけど、体格が違いすぎるし……」
やはり決定的な結論に達することはできなかった。

「そもそも、その偽凛は一体何がしたかったんだ? 最初は力の無い振りして近づいてきたのに
 最後は見られるのもお構いなしに大立ち回りを演じたんだろう? 支離滅裂じゃないか」
「それに、劉鳳とセラスを一緒に相手できるぐらいの強さだったんだよね。
 だったら、どうしてハルヒさん達全員でなくてアルルゥちゃんだけを狙ったんだろう?」
「アルルゥちゃんを探しに行こうって言った時も、どうしてか急に一人でもいいとか言い始めたし。
 それに、その後すぐに本物の遠坂凛が現れたっていうのもなんかできすぎだわ」
キョン、魅音、ハルヒとそれぞれの疑問を呈する。客観的に見れば、偽凛の行動はキョンの
言うとおり支離滅裂なもので、彼女が何を狙って行動していたのか甚だ不可解なものだった。

146 :Macabre in muddled rabbithutch 11/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:36:24 ID:jRJ9Msad
喧々囂々と意見をぶつけ合う三人とは対照的に、ロックは一人静かに頭の中でパズルの
ピースを組み立てている。

――アルルゥだけを狙って殺し、わざと彼女がいなくなったことを皆に伝えた偽凛。
――ハルヒ達には隠していたにも関わらず劉鳳やセラスには見せたその実力。
――タイミングよく現れた本物の遠坂凛。
――それから遅れて現れた彼女のパートナーである水銀燈。
――そして結果的に病院組の中に彼女達が入り込んでいるという現状。

さらに情報交換によって得た知識。それらが彼の頭の中で交錯し、少しずつ形を作っていく。
――そして、それは最終的に一つの形へと組み立てられた。


「ハルヒちゃん。もう一度確認してもいいかい?」
唐突に上がったロックの声に、三人の動きが止まる。
「遠坂凛と水銀燈は組んでいて、二人とも悪党なんだな?」
「……ええ、そうよ。私と魅音が何度も言っているじゃない」
ロックはその答えに満足するとさらに質問を重ねた。
「遠坂凛、そして水銀燈。彼女達二人の悪党に必要なものはなんだか解るかい?」
「なによもったいぶっちゃって、私を差し置いて探偵気取りのつもり?」
ロックは苦笑する。どうやら、このノリは彼女に受けが悪いらしい。

「OK。ストレートに行くよ。彼女達二人の悪党に必要なのは”利害の一致”さ」
目の前の三人の反応は芳しくない。何を当たり前のことを……という感じだ。
「この場合の利益――つまりは彼女達の目的は何だと思う?」
「そりゃあ、自分達以外の全員を殺してこのゲームに優勝するってことじゃないんですか」
キョンの回答にロックはゆるく首を振る。
「そうじゃない。彼女達はペアだ。それは成り立たない。
 それとも最後の二人になるまでは協力し合いましょう? これも考えられないね。
 そんな約束は、マラソンの前に同級生に一緒に最後まで走りましょうって言うのと同じだ。
 どちらか片方がよほどの間抜けでない限り成立しないよ」
「じゃあ、何だって言うのよあいつらの目的って」
魅音の言葉にロックはそれをいかにも簡単げに言い放った。

「――簡単さ。彼女達二人の共通目的は”脱出”だ」

それは彼女達にとってはコペルニクス的に意外な回答だった。
「じゃ、じゃあ、あいつらはなんで他人を殺し回ってるのよ。必要ないじゃない」
魅音の言葉にはにわかには信じられないというニュアンスがこもっている。
だが、それにロックはまた首を横に振った。
「彼女達の方が現実主義者(リアリスト)なのさ。
 ここには実際に優勝を狙って周りの人間を殺しまくっているヤツがいる。だったら、必要の
 ない人間――足を引っ張る人間はどんどん切り捨てていった方が安全で効率的だ」

147 :Macabre in muddled rabbithutch 12/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:37:15 ID:jRJ9Msad
ロックの言葉に三人の顔が青褪める。
「じゃ、じゃあ……、アルルゥちゃんは……」
「そう考えると、何故彼女だけが狙われたのかが説明できる。その後の剛田君もだ」
その冷酷な回答にハルヒの顔が青から一転して真っ赤に染まった。

「ゆるせるわけないじゃないっ! そんなこと!」

怒声が居間の中の空気を、そして魅音やキョンの心を振るわせる。
「自分達が生き残るために、子供や役に立たない人間は殺すの……? そんなことで……?」

怒りに肩を震わせるハルヒ達とは対象にロックは至極冷静だ。
「ハルヒちゃんが生きているのは不幸中の幸いだったと思うよ。寝ている人間を運び出して
 人知れず殺すのは骨が折れるからね」
ガッと、キョンがロックの襟を締め上げる。
「てめぇ……、言っていいことと悪いことってのがあるだろう!」
「すまない……、今のは失言だ」
怒るキョンの後ろには自分の肩を抱いて震えるハルヒの姿があった。

「私の代わりにアルルゥちゃんが殺されたの?」
「いや、そうじゃあないよ。彼女達に”代わり”なんて概念は存在しない。必要か不必要だ」
「じゃあ、のび太君やドラえもんは?」
「彼らはギガゾンビと同じ世界から来た、技術基盤を同じくする貴重な人間だ。簡単に殺されは
 しないだろう。実際、あの二人がのび太君をずっと保護していたことがその証拠だ」
ハルヒの震えていた掌が硬く結ばれ、再び怒りに身体が震えた。
「許さない……、あいつら……よくも……」

「じゃあつまり、病院に現れた偽凛ってヤツは……」
「……ああ。十中八九、水銀燈の変装だろうな」
その一番重要な部分をロックはさらりと言ってのけた。

「つまるところ自作自演というわけだ。偽の遠坂凛で怪しい騒ぎを起し、それを本物の遠坂凛が
 追い払うことで、そこにいる人間に遠坂凛と水銀燈が敵ではないと印象付ける。
 水銀燈は人形だったという話だけど、だったらこそ容姿には自由が利くのかもしれない。
 そして、このタイミングでアクションを起したということは、どこかで病院に脱出派の人間が
 集まることを知った可能性も考えられる」

ハルヒ達三人の顔に影が射す。ロックの言うことが真実だとしたら、まんまと遠坂凛や水銀燈の
術中に嵌ったことになる。のび太やどらえもんは彼女達を信じ、セラスや劉鳳もそうである可能性が
あるのだ。

148 :Macabre in muddled rabbithutch 13/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:38:08 ID:jRJ9Msad
「早く病院に戻った方がいいんじゃない? そしてあいつらを……」
魅音のその提案はロックによってにべもなく否定された。
「いや、それはよした方がいい。
 彼女達も脱出の算段がつくまでは必要な人間は保護するはずだ。だったら、他の外敵からの
 盾として利用すればいい。それにここにいる人間のほとんどは彼女達に取って不必要な人間だ。
 ヘタに暗殺される可能性を高めるよりは離れた場所で隠れている方が安全だ」

「私達には何もできないってわけっ!?」
またしても突きつけられる己の不甲斐なさにハルヒが激昂する。
「今は……ね。
 重要なのは最後の脱出の瞬間にどちらが相手を出し抜けるかってこと。
 数では圧倒的に俺達の方が勝っているんだから、それまでは身体を休めて力を蓄えればいい。
 それに、まずは脱出の算段を整えることが重要だ。その前提条件が整わないことには俺たちにも
 先は無い」
ロックの冷静な声に、自身がただの子供であるとハルヒは痛感させられる。
だがそれでも他人を省みない悪党への怒りを静めることはできなかった。


「絶対に……ッ! 最後に吠え面かかせてやるわ!」


ロックの立てた推論はハルヒ達に怒りの炎を点した。
それが正しいのか間違っているか、今の時点では誰にもわからない。だがそれでも彼女達は
それを信じた。もしかしたらそれは、恐ろしい過去はもう二度と振り向きたくないという焦りに
追われていたからなのかもしれない。
だが、そんなこととは無縁に時は過ぎてゆく。

窓の外には彼らを照らす、新しい陽の光が山の尾根からその姿を覗かせていた。



【C-4・山間部と市街地の境目付近にある民家(居間)/2日目・早朝】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:眠気と疲労、全身各所に擦り傷、憤りと強い決意
[装備]:バールのようなもの、スコップ
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-3)、わすれろ草、キートンの大学の名刺
   ロープ、ノートパソコン+ipod(つながっている)
[思考]
 基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る
 1:とりあえず休ませてもらう。
 2:トグサと連絡を取る手段を考え、連絡が取れたら凛と水銀燈のことを伝える。
 3:トグサと直接会えたら、謎のデータを検分してもらう。
 4:射手座の日に関する情報をどうにかして得られないか考える。
 5:落ち込んでいる女性達のフォローができるよう努力する。

[備考]
 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照。
 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「仲間を探して」参照。
 ※ハルヒ、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。

149 :Macabre in muddled rabbithutch 14/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:39:00 ID:jRJ9Msad
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:頭部に中度の打撲(動くのに問題は無し)、激しい憤り
[装備]:なし
[道具]:クローンリキッドごくう(使用回数:残り2回)、着せ替えカメラ(使用回数:残り17回)
[思考]
 基本:SOS団のメンバーや知り合いと一緒にゲームから脱出する。
 1:休んでいる皆をケアする。
 2:トグサと連絡を取る手段を考え、連絡が取れたら凛と水銀燈のことを伝える。
 3:射手座の日に関する情報をどうにかして得られないか考える。
 4:ヤマトの安否を気遣う。(が、今のところはカズマに任せる)
 5:そういえば……ドラえもんが何か言ってた気がする。
 6:遠坂凛と水銀燈は絶対に許さない。

[備考] :
 ※腕と頭部には、風の包帯が巻かれています。
 ※偽凛がアルルゥの殺害犯だと思っているので、劉鳳とセラスを敵視しなくなりました
 ※キョン、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
 ※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。


【園崎魅音@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:眠気と疲労、右肩に銃創(弾は貫通、応急処置済、動作に支障有り)、強い悲しみ。
[装備]:AK-47カラシニコフ(30/30)、AK-47用マガジン(30発×3)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(-1食)、スルメ二枚、表記なしの缶詰二缶、レジャー用の衣服数着、パチンコ
[思考]
 基本:バトルロワイアルの打倒
 1:とりあえず休ませてもらう。
 2:右肩の傷をちゃんと手当てしなおしたい。
 3:沙都子の面倒を見て、必ず守り通す。
 4:皆と協力してバトルロワイアルからの脱出方法を模索する。
 5:遠坂凛、水銀燈、シグナムは絶対に殺す。

[備考]
 ※キョン、ハルヒ、トウカ、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。
 ※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。

【ロック@BLACK LAGOON】
[状態]:眠気と疲労
[装備]:ルイズの杖、マイクロ補聴器、i-podのイヤホン(片耳)
[道具]:デイバッグ×2、支給品一式×2(-1食)、黒い篭手?、現金数千円、びっくり箱ステッキ(使用回数:10回)
[思考]:
 基本:力を合わせ皆でゲームから脱出する。
 1:しばらくはここに留まり、全員の体調が回復するのを待つ。
 2:射手座の日に関する情報をどうにかして得られないか考える。
 3:うまく、遠坂凛と水銀燈を出し抜く方法を考える。
 4:エルルゥ、沙都子、しんのすけを気づかい。保護する。
 5:君島の知り合いと出会えたら彼のことを伝える。

[備考]
 ※しんのすけに両親が死んだことは伏せておきます。
 ※顔写真付き名簿に一通り目を通しています。
 ※参加者は四次元デイバッグに入れないということを確認しています。
 ※ハルヒ、キョン、トウカ、魅音、エルルゥらと詳しい情報交換を行いました。
 ※キョンの持つノートPC内の情報を得て、考察しました。

150 :Macabre in muddled rabbithutch 15/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:39:55 ID:jRJ9Msad
【C-4・山間部と市街地の境目付近にある民家(居間ではない部屋)/2日目・早朝】

【トウカ@うたわれるもの】
[状態]:疲労、左手に切り傷、全身各所に擦り傷、額にこぶ、精神疲労(大)
[装備]:斬鉄剣
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料-2)、出刃包丁(折れている)、物干し竿(刀/折れている)
[思考]
 基本:無用な殺生はしない。だが積極的に参加者を殺して回っている人間は別。
 1:眠っているエルルゥ、沙都子、しんのすけを守るために番をする。
 2:エヴェンクルガの誇りにかけ、キョン、魅音、エルルゥを守り通す。
 3:アルルゥの仇を討つ。
 4:セイバーを討つ。

[備考]
 ※ハルヒ、キョン、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。


【エルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:睡眠中、深刻な精神疲労
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(―1食)
[思考]
 基本:……………………
 01:……………………
 02:沙都子を守ってあげたい。

[備考]
 ※ハクオロの死を受け入れました。
 ※フーとその仲間(ヒカル、ウミ)、更にトーキョーとセフィーロ、魔法といった存在について何となく理解しました
 ※ハルヒ、キョン、魅音、トウカ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。


【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:睡眠中、全身にかすり傷、頭にふたつのたんこぶ、腹部に軽傷、空腹
[装備]:ニューナンブ(残弾4)、ひらりマント
[道具]:デイバッグ、支給品一式 、プラボトル(水満タン)×2
[思考]:
 基本:家族揃って春日部に帰る。
 1:朝まで寝る。
 2;ロック、または綺麗なおねーさんについて行く
 3:みさえとひろしを探す。

[備考]
 ※放送の意味を理解しておらず、その為に君島、ひろしの死に気付いていません。
 ※第四回放送を聞き逃しました。

151 :Macabre in muddled rabbithutch 16/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 00:40:48 ID:jRJ9Msad
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:空腹、睡眠中、右足粉砕(一応処置済み) 、魅音への対応が決まらず激しく動揺中
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:基本支給品一式、トラップ材料(ロープ、紐、竹竿、木材、蔓、石など) 簡易松葉杖、どんな病気にも効く薬
   エルルゥの薬箱(筋力低下剤、嘔吐感をもたらす香、揮発性幻覚剤、揮発性麻酔薬、興奮剤、覚醒剤など)
[思考]
 基本:生き残ってにーにーに会い、そして梨花達の分まで生きる。
 1:魅音について考え、今後の行動方針を定める。
 2:ロックとしんのすけ、エルルゥを『足』として利用し、罠を作るための資材を集める。
 3:十分な資材が入手できた後、新たな拠点を作り罠を張り巡らせる。
 4:準備が整うまでは人の集まる場所には行きたくない。

152 :修正 1/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 20:37:12 ID:jRJ9Msad
舞台の北東に大きく広がる緑を湛えたなだらかな山。その西の麓、裾野に広がる市街との狭間。
そこに並んだ平屋の一角に全ての戸を閉じ窓を幕で覆った、目立たない中でもさらに隠れようと
している静かな一軒の民家があった。
その、あまり立派だとは言えない一軒の民家の中には八人の男女が潜んでいる。

電灯も点けず、外からの月明かりさえも取り入れていない家の中は真に暗かったが、いくつかの
人が集まる場所は、布を被せたランタンの最低限の光で淡く照らされていた。
その内の一箇所、この家の中で最も広い部屋である居間に幾人かの人間が集まっている。


涼宮ハルヒ、ロック、園崎魅音……、そして外から戻ってきたトウカとエルルゥ。
彼女達に見守られながらキョンはノートPCが検索を終えるのをじっと待っていた。

「やっぱり、ないか……」
射手座の日――THE DAY OF SAGITTARIUS III。
正式名が解ったことでもう一度ノートPCの中を洗ってみたが、結果は芳しくなかった。
長門有希が残していった脱出のヒント――射手座の日を越えていけ。
これをクリアするにはまだ材料が集まっていないらしい……。

『”射手座の日”や”THE DAY OF SAGITTARIUS V”という名前に心当たりは?』

キョンはキーボードを叩きそれを打ち込むと、ノートPCを彼を見守る周囲の人間の方へと向けた。
出会ったばかりのロックもエルルゥも首を振って知らないことを示したが、同じSOS団出身で
団長でもあるハルヒは手を上げて知っていると答えた。

「それって、あの時のゲームでしょう? だったら病院に残ってるドラえもんってのが
 それらしいディスクを持っているって言ってたわ。多分、それじゃないかしら」
ハルヒの言葉にキョンは考える。ゲームディスクなんて物がそもそも支給品としては似つかわしく
ないものなのだ。だとするなら、やはりそれは長門が用意した物だと考える方が自然だろう。

「それが解るとどうなるんだい?」
尋ねたのはロックだった。確かにそれは気になるだろう。だが、
「……いえ。具体的には俺もどうなるかわかりません」
キーボードを叩きディスプレイの方へと言葉を続ける。
『だけど、これを残した長門はここからの脱出に必要なものだと』
それを見てロックは静かに頷いた。
「OK。他に縋る手もないからな。それを追う方向で行こうか」

薄暗闇の中で他の一同もそれに同意する。

153 :修正 4/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 20:38:05 ID:jRJ9Msad
最初に説明を始めたのはハルヒだった。地図と参加者の画像を指しながら行動を振り返る。

「私は最初、山の中……多分ここら辺りだわ、から始まって、すぐにルパンとアルちゃんと出会えたの。
 で、図書館の方へ行こうとゆうことになったのね。途中、ここの橋で……そう、このシグナムって
 ヤツに襲われて、アルちゃんと助けを求めに戻ったところで有希とヤマトに出会ったの。
 それですぐにヤマトが運転してたトラックでルパンの元に戻ろうとしたんだけど……、
 車が事故?かなんかにあって横転したのよ。それからしばらくは気を失っていたわ。
 次に気づいたのが病院の中で、そこであの凛と水銀燈、そして……そう、このセイバーってヤツに
 襲われたの。なんとか逃げ出せたんだけどぶりぶりざえもんとははぐれちゃって……、でもあいつ
 生きてたのよね?」
「ああ。今は次元さんと一緒にいるはずだ」

キョンの言葉に頷くと、ハルヒは説明を続けた。
「……で、途中私達はその次元さんに出会って――彼はこの後キョン達と会うのよね?
 その後すぐに映画館に着いたわ。そこでキョンと電話で会話して、映画を見た後しばらく休もうって
 ことになったんだけど、気付いたら有希とトグサさんが出て行ってて……。
 私達も出て行ったんだけど、病院でこの……峰不二子。こいつに間違いないわ。こいつに眠らされ
 ちゃって気がついたら…………、ヤマトとアルちゃんが…………」

進むにしたがってハルヒの言葉から力が失われていっていた。SOS団の団長を名乗っていても
この場では何もできなかったどころか常に皆の足を引っ張っている。それどころか、自分の責任で
アルルゥやヤマトを……。

「……ハルヒ」
「……大丈夫。続けるわ。それで私達はアルちゃんを探しに出たんだけど……、変ね? あの
 遠坂凛の名を騙ったヤツが参加者の中にいないわ」
ハルヒはノートPCを操作して80人全員を確認するが、あの偽凛の姿はその中にはなかった。
「変装してたんじゃないのか? でなければ、80人以外にも人がいるってことになってしまう」
そう言葉を発したのはロックだ。確かに……とハルヒも思った。峰不二子もあの後変装していたと
聞いている。そして自分の持っている着せ替えカメラ。変装できる者が何人かいても不自然ではない。

「そうね。その問題は置いておくとするわ。
 ……で、そこにいたその偽凛とのび太君とドラえもんとでアルちゃんを探そうってことになったんだけど、
 偽凛が一人で勝手に先に行って、近くまで来ていた連中と戦い始めたのよ。この、劉鳳とセラスだわ。
 そしてそこに本物の遠坂凛も現れて、結局偽凛はどこかへいなくなっちゃったってわけ」
「その時に武が……」
言葉を挟んだのは魅音だ。
「ええ。偽凛が殺したって、そう聞いている。……ごめんなさい。これも私のせいだわ。
 なんであいつの勝手を許したんだろう? それにあいつは味方だってのび太君に……」

ハルヒはさらに後悔を重ねた。今考えればどう考えてもあの偽凛は敵だ。なのにあの時はアルルゥが
いなくなった焦りからあいつを頼ってしまった。さらにその後、本物の凛を見て反射的に偽凛を自分の
味方側だと考えてしまった。
敵の敵は味方――しかし冷静に考えればそんなはずはない。これはバトルロイヤルなのだから。

154 :修正 10/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 20:38:58 ID:jRJ9Msad
ロックの口から小さい溜息が漏れる。
元からギガゾンビの掌の上で始まったゲームであり、不公平は承知の上の反逆だがそれでも
ギガゾンビの掌は広い。
だが、諦めはしない。諦めの悪さこそが彼の最後の意地であり。それでもって悪漢犇めく
ロアナプラを渡り歩いているのだから。


掲示板をあらかた検証し終えると、四人は次に生き残った参加者の検証を始めた。
まずは生存者をいくつかのカテゴリーに分類する。

――前回の放送で明らかになった現在の生存者は29人。
――すでに死亡が確認されている剛田武と、生存が絶望視されているアルルゥを抜けば27人。

――そこからここにいる、
――ハルヒ、キョン、魅音、沙都子、しんのすけ、ロック、エルルゥ、トウカの8人を除けば19人。

――さらに面識があり安全な相手であると確信できる、ドラえもん、のび太、劉鳳、
――ぶりぶりざえもん、次元、レヴィ、セラス、トグサ、ヤマトの9人を除けば残りは10人。

「このレヴィって人はロックさんの同僚なんですよね。ちょっとおっかない感じがしますが」
「ああ。……まぁ、確かに凶暴ではあるけどね。それでもまだ人間の範疇にいる……と思う」
トライバルタトゥーを大きく入れた風体は、キョンでなくても恐怖の対象であろう。
ロックの同僚であると聞いてなければ、要注意人物確定である。

――そして危険な存在であると警戒される、水銀燈、峰不二子、シグナム、セイバー、遠坂凛の5人。

「水銀燈、峰不二子、シグナム、セイバー、遠坂凛……、こいつらはどいつも間違いなく悪人よ。
 5人全員に襲われた私が保証するわ」
「そんなことは胸を張れるもんじゃないだろう……」
ディスプレイ上に打ち込んだ表を見て胸を張るハルヒにキョンは嘆息する。

――最後に、全く面識のない、カズマ、フェイト、グリフィス、ゲイナー、ゲインの5人。

「カズマって人はヤマトを探してくれてるからいい人ってことでいいとして……って、キョンは
 彼が暴れている所見たんだっけ?」
「ああ。でも、あんまり殺し合いって印象じゃなかったな、どちらかというとただの喧嘩みたいな」
「アルター使いって、みんなこんななのかかな……」
カズマ、劉鳳、クーガー……、異世界の住人である彼らに三人は肩を落とした。


「問題は遠坂凛の名を騙った何者かだな。この中で直接彼女を見たのはハルヒちゃん、君だけ
 だけど他の人間の写真を見て引っかかることはないかい?」
ロックに言われて、ハルヒはじと目でディスプレイと睨めっこをするが……、
「うーん。どうとも言えないわ。黒い羽とか雰囲気は水銀燈って性悪人形と近い気が
 するんだけど、体格が違いすぎるし……」
やはり決定的な結論に達することはできなかった。

「そもそも、その偽凛は一体何がしたかったんだ? 最初は力の無い振りして近づいてきたのに
 最後は見られるのもお構いなしに大立ち回りを演じたんだろう? 支離滅裂じゃないか」
「それに、劉鳳とセラスを一緒に相手できるぐらいの強さだったんだよね。
 だったら、どうしてハルヒさん達全員でなくてアルルゥちゃんだけを狙ったんだろう?」
「アルルゥちゃんを探しに行こうって言った時も、どうしてか急に一人でもいいとか言い始めたし。
 それに、その後すぐに本物の遠坂凛が現れたっていうのもなんかできすぎだわ」
キョン、魅音、ハルヒとそれぞれの疑問を呈する。客観的に見れば、偽凛の行動はキョンの
言うとおり支離滅裂なもので、彼女が何を狙って行動していたのか甚だ不可解なものだった。

155 :修正 12/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 20:40:19 ID:jRJ9Msad
ロックの言葉に三人の顔が青褪める。
「じゃ、じゃあ……、アルちゃんは……」
「そう考えると、何故彼女だけが狙われたのかが説明できる。その後の剛田武って子供もね」
その冷酷な回答にハルヒの顔が青から一転して真っ赤に染まった。

「ゆるせるわけないじゃないっ! そんなこと!」

怒声が居間の中の空気を、そして魅音やキョンの心を振るわせる。
「自分達が生き残るために、子供や役に立たない人間は殺すの……? そんなことで……?」

怒りに肩を震わせるハルヒ達とは対象にロックは至極冷静だ。
「ハルヒちゃんが生きているのは不幸中の幸いだったと思うよ。寝ている人間を運び出して
 人知れず殺すのは骨が折れるからね」
ガッと、キョンがロックの襟を締め上げる。
「てめぇ……、言っていいことと悪いことってのがあるだろう!」
「すまない……、今のは失言だ」
怒るキョンの後ろには自分の肩を抱いて震えるハルヒの姿があった。

「私の代わりにアルルゥちゃんが殺されたの?」
「いや、そうじゃあないよ。彼女達に”代わり”なんて概念は存在しない。必要か不必要だ」
「じゃあ、のび太君やドラえもんは?」
「彼らはギガゾンビと同じ世界から来た、技術基盤を同じくする貴重な人間だ。簡単に殺されは
 しないだろう。実際、あの二人がのび太君をずっと保護していたことがその証拠だ」
ハルヒの震えていた掌が硬く結ばれ、再び怒りに身体が震えた。
「許さない……、あいつら……よくも……」

「じゃあつまり、病院に現れた偽凛ってヤツは……」
「……ああ。十中八九、水銀燈の変装だろうな」
その一番重要な部分をロックはさらりと言ってのけた。

「つまるところ自作自演というわけだ。偽の遠坂凛で怪しい騒ぎを起し、それを本物の遠坂凛が
 追い払うことで、そこにいる人間に遠坂凛と水銀燈が敵ではないと印象付ける。
 水銀燈は人形だったという話だけど、そうであるなら容姿には自由が利くのかもしれない。
 そして、このタイミングでアクションを起したということは、どこかで病院に脱出派の人間が
 集まることを知った可能性も考えられる」

ハルヒ達三人の顔に影が射す。ロックの言うことが真実だとしたら、まんまと遠坂凛や水銀燈の
術中に嵌ったことになる。のび太やどらえもんは彼女達を信じ、セラスや劉鳳もそうである可能性が
あるのだ。

156 :修正 14/16  ◆S8pgx99zVs :2007/04/07(土) 20:41:11 ID:jRJ9Msad
「早く病院に戻った方がいいんじゃない? そしてあいつらを……」
魅音のその提案はロックによってにべもなく否定された。
「いや、それはよした方がいい。
 彼女達も脱出の算段がつくまでは必要な人間は保護するはずだ。だったら、他の外敵からの
 盾として利用すればいい。それにここにいる人間のほとんどは彼女達に取って不必要な人間だ。
 ヘタに暗殺される可能性を高めるよりは離れた場所で隠れている方が安全だ」

「私達には何もできないってわけっ!?」
またしても突きつけられる己の不甲斐なさにハルヒが激昂する。
「今は……ね。
 重要なのは最後の脱出の瞬間にどちらが相手を出し抜けるかってこと。
 数では圧倒的に俺達の方が勝っているんだから、それまでは身体を休めて力を蓄えればいい。
 それに、まずは脱出の算段を整えることが重要だ。その前提条件が整わないことには俺たちにも
 先は無い」
ロックの冷静な声に、自身がただの子供であるとハルヒは痛感させられる。
だがそれでも他人を省みない悪党への怒りを静めることはできなかった。


「絶対に……ッ! 最後に吠え面かかせてやるわ!」


ロックの立てた推論はハルヒ達に怒りの炎を点した。
それが正しいのか間違っているか、今の時点では誰にもわからない。だがそれでも彼女達は
それを信じた。もしかしたらそれは、恐ろしい過去はもう二度と振り向きたくないという焦りに
追われていたからなのかもしれない。
だが、そんなこととは無縁に時は過ぎてゆく。

窓の外には彼らを照らす、新しい陽の光が山の尾根からその姿を覗かせていた。



【C-4・山間部と市街地の境目付近にある民家(居間)/2日目・早朝】

【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:眠気と疲労、全身各所に擦り傷、憤りと強い決意
[装備]:バールのようなもの、スコップ
[道具]:デイバッグと支給品一式×4(食料-3)、わすれろ草、キートンの大学の名刺
   ロープ、ノートパソコン+ipod(つながっている)
[思考]
 基本:殺し合いをする気はない、絶対に皆で帰る
 1:とりあえず休ませてもらう。
 2:トグサと連絡を取る手段を考え、連絡が取れたら凛と水銀燈のことを伝える。
 3:トグサと直接会えたら、謎のデータを検分してもらう。
 4:ドラえもんが持つというディスク(射手座の日)を入手する方法を考える。
 5:落ち込んでいる女性達のフォローができるよう努力する。

[備考]
 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「ミステリックサイン」参照。
 ※キョンがノートパソコンから得た情報、その他考察は「仲間を探して」参照。
 ※ハルヒ、トウカ、魅音、エルルゥ、ロックらと詳しい情報交換を行いました。

157 :王の手の平の王 ◆LXe12sNRSs :2007/04/07(土) 23:07:33 ID:L0rQQwe8
 夜の帳は明朝を向かえ、下ろした黒幕をまた白の世界へと譲っていく。
 物語は終焉を迎えつつある。この世界で三度目の朝日を見ることはあるのか、はたまたその前に決着は着くのか。
 私はあと幾度、あの主催者の傲岸不遜な様を見ればよいのだろうか。

 ――此度の濫觴は、主催者ギガゾンビの急な招集にある。
 集った参加者は老若男女隔てりはなく、それこそ闘争とは無縁の人生を歩むはずであった幼子もいたことだろう。
 どんな人間とて、良識はある。
 あのギガゾンビがヒトの範疇に収まる生物であるというのなら、そこに良識を凌駕するほどの悪意が秘められているのは明白だった。
 私も含め、この余興では数多くの人間がその悪意に身を歪められながら生き、そして死んでいく。
 最終的に残るのは一人。ギガゾンビに見定められた、勝利者のみだ。
 この場合の勝利者とは、縁も所縁もない、もしくはそれすらも断ち切り、他者を殺し尽くせた者を指す。
 世間ではそういった者を外道と総称し、皆の嫌悪を一身に受ける悪役に仕立て上げられるのだろう。
 私は、王でありながらにその未来を受け入れる覚悟を持った。
 守るべき多くの民がいるというのに――いや、いるからこそ――私は剣を取ったのだ。
 憐憫の情を無へと流し、屠殺を行うような気構えで人間の命を奪ってきた。
 力を持たぬ子供を屠ることを些事としか捉えず、あえてギガゾンビの傀儡となることを受け入れた結果が、今の私。
 だが、これは軽挙などではない。その裏には、確かな不抜の精神が鎮座している。
 王の選定をやり直す。言ってしまえば、それは私個人の我侭に過ぎない。それも、79名の犠牲を伴う壮大な我侭だ。
 王に必要なものは、教養と慈愛、民を慈しむ心、何者にも侵されぬ気高き自我、国を守れる単純な力……それこそ、挙げていけば切りがない。
 私は国を滅ぼした駄目な王だ。その上過去の失敗にとらわれ、やり直しの機会を与えられただけで誇りを投げ捨てる愚者でもある。
 そんな私の政策が、一度のやり直しでどうにかなるなど誰が思おうか。
 放送のたびに姿を現すギガゾンビを見ていると、常々思う。
 いつの世も、王とは聖人か愚か者かのどちらかなのだと。

「……ん…………朝、ですか」

 明るみを増してきた視野に起き抜け特有の不快感を感じながら、私はいつの間にか眠ってしまっていたらしいその身を起こした。
 これまでの疲労が積もり積もった結果なのだろう。睡眠を取れたことは幸運に思うべきだが、些か気が緩んでしまっていたようだ。
 時計を取り出し、現在の時刻を確認する。短針は南の方角を示し、周囲の明るさを妙に感じさせない結果を教えてくれた。
 睡眠中に何事もなかったことは不幸中の幸いと言え、放送を聞き逃すことなく目を覚ますことが出来たのもまた、不幸中の幸いだった。
 近くの川で適度に洗面を済ませ、立ち去ろうとしたところでその見事なせせらぎに女性ゆえの欲望を滾らせてしまう。

158 :王の手の平の王 ◆LXe12sNRSs :2007/04/07(土) 23:08:22 ID:L0rQQwe8
「…………これからまた、長い一日が始まるのですね」

 私はそのような言葉を述べた後、気がつけばいそいそと脱衣に取り掛かっていた。
 身を清めるというのは、神聖でいてとても意味のある行為だ。
 睡眠により身体に蓄積された疲労は取れようとも、外皮に積もった垢までは除けない。
 何より、汚れとは精神的疲労の蓄積に繋がる。
 故にそれを洗い流す意味合いは非常に大きく、また私の場合は数々の決闘で染み付いた血の臭いもあるため……。
 と、言い訳がましい文句を述べながら身を河川に浸す最中、切創を抉る痛みに緩んだ気を引き締められ、私は何かを思い出したかのように我が身を眺めた。
 ……お世辞にも美麗とは言えない。土埃と血に汚れ、傷だらけとなった肌。
 勇敢な戦士からしてみれば勲章とも取れる激戦の爪痕だが、その裏には死屍たる者たちの怨嗟が蠢いている。
 望みながらに散っていった佐々木小次郎は別格として、君島邦彦とヴィータの命、その抗いの功績はこの身に刻まれ消えることはない。
 弱者の命など、覇業の礎としては極有り触れたものだ。
 それが絶望的と思われた悲願を叶えるためのものというならば、尚のこと。
 だからといって、私はそれを軽視するつもりはない。
 この願いは誰にも譲れないが、私が奪った命はこれから先の未来、私自身の教訓として背負っていく覚悟だ。
 償いにもならない自己満足であるということは、私が一番よく分かっている。
 所詮、私は民を思わぬ愚鈍な王。見知らぬ者には慇懃無礼を貫き、欲に縛られ命を奪う。非道な略奪者だ。
 だがこれは私がこの世界を周旋して得た結論であり、今さらそれを曲げるつもりもない。
 殺し、生き延び、勝利を掴む。ここで私が成すべきことは、ただそれだけでいい。
 犠牲となった者へ弔詞を読むことも、若い命を散らした勇者のために墓石を立てることも、全ては事後で済む。
 自分の都合のために動き、戦う。反吐が出る。
 この、身を焦がすほどの嫌悪感こそが、殺し合いというものなのだろう――と、私は今さらながらに理解した。

「あの者たちは、まだ生き延びているでしょうか」

 清めの儀式を終えた私は、回復した体力を衰えさせぬため食事に取り掛かった。
 相変わらず不味い。栄養価も低い。
 だが、世の中には貧困に苦しむ人間がごまんといる。それを思えば、味に文句など言えるはずもない。
 ただ胃にものを溜めるための行為に没頭しながら、私が思い出したのは、私とは相対する位置に立つ者たちの素顔。
 ギガゾンビに反抗の意志を示した幼い少年。
 ヒトの域を脱しながらに、気高い信念を掲げていたぶりぶりざえもんなる豚。
 それら脆弱な民の他にも、エヴェンクルガのトウカやシェルブリットのカズマといった難敵もまだ残っている。
 彼等の活躍如何によっては、ギガゾンビの目論見は崩れ去るかもしれない。
 愚者の野望は、図らずとも潰えるもの。しかしそれでは私が困る。
 彼の王には、我が悲願を叶えて貰わねばならぬのだから。

159 :王の手の平の王 ◆LXe12sNRSs :2007/04/07(土) 23:09:23 ID:L0rQQwe8
「さて」

 私は立ち上がり、新たに我が武器となった大剣、ドラゴンころしの柄を握った。
 食後の運動――というほどの量は摂取していないが、慣れない武器では実戦において不利が付きまとう。
 不安要素を少しでも取り除いておくため、この剣の特性を知っておく必要があった。
 胸の辺りまで持ち上げ、その確かな重量感に握り手の筋肉を収縮させる。
 ……なるほど。これは大したじゃじゃ馬だ。
 隻腕でこれを振るっていた佐々木小次郎が、いかに凄腕の剣士だったか改めて思い知らされる。
 私は決闘の末にこれを小次郎から落手し、新たな得物とすることを決めた。
 斬るというよりは叩く、突くというよりは潰すといった効果の見られる鈍器のような剣だが、振るう分には問題ない。
 これが人の手に渡ることを想定して作られたというのなら、サーヴァントである私は雑作もなく操れるだろう。
 意識集中。
 振り上げ――振り下ろす!
 風を切る豪快な音が、地を生えずる雑草に衝撃の波濤を送る。
 腕に支障はない。カリバーンを振るっていた頃ほどの速さは求められないが、代償として倍以上の破壊力を得た。
 ドラゴンころしとはよく言ったものだ。これほどの重量を誇る剣、容易く振るえれば確かに竜とて斬り殺せるだろう。
 使いこなせる者は限られてくるだろうが、適した使い手に渡ればこれ以上ない強力な武器だ。ギガゾンビも中々に面白いものを提供してくれる。
 ……いや、これも全てはギガゾンビの企みどおりと言ったところか。
 何しろこれだけの大剣、人間に振り下ろせば木っ端微塵の肉塊と成り果てるのは目に見えている。
 残酷な死を見たい者からすれば、これ以上なく都合のいい悪趣味な武器だ。
 おそらく、私が休息を取っていたこの場を禁止区域としなかったことも、全ては謀を円滑に進めるための処置に違いない。
 ただでさえ、身動きの取れない参加者を禁止区域の罠で追い詰めるような輩だ。
 そんな腐った思考を持つ者が、暢気に休息を取る私を見逃す理由があるとすれば一つ。私が殺し合いに積極的だからだろう。
 これは推測だが、おそらく残り人数が減るのに相応して、殺し合いに臨む者の数も減少の傾向にあるのだ。
 だからこそ力のある殺人鬼たちに安息を与え、また満足に戦えるよう促している。
 大した贔屓ぶりだ。力のない者が駆逐されていくのを楽しみつつ、企画が破綻しないよう内部をうまく操作する。見事としか言いようがない。死ねばいいのに。

「……もっとも、今の私が言えたものでもありませんが。
 さぁ、ギガゾンビよ。あと幾度、私はあなたの手の平で躍ればいい?」

 訪れた定期放送の時間に、視線を空へと移動させる。
 いつもと変わらぬ演出で現れたギガゾンビの像。あれを斬り伏せられたら、どれだけ気持ちが晴れやかになるだろうか。
 考えても仕方がない。今の私は、愚者に操られる傀儡の王。滑稽すぎる大馬鹿者でしかないのだから。
 願わくば、できるだけ多くの名が呼ばれますように。
 この手を汚す機会が少なくなりますように。
 そしていつの日か、あの仮面に天誅を。

 常々思う。
 こんなもの、さっさと終わってしまえばいいのに。


160 :王の手の平の王 ◆LXe12sNRSs :2007/04/07(土) 23:10:14 ID:L0rQQwe8
【C-2/二日目/早朝(放送開始)】
【セイバー@Fate/ Stay night】
[状態]:全身に軽度の裂傷と火傷、両肩に傷(ほぼ完治)、魔力消費(中)
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク、アヴァロン@Fate/ Stay night
[道具]:支給品一式(食糧なし)、スコップ、なぐられうさぎ(黒焦げで、かつ眉間を割られています)@クレヨンしんちゃん
   コンバットナイフ、鉈@ひぐらしのなく頃に
[思考・状況] 
1:放送を聞き終えた後、出発。
2:エクスカリバーを探してみる。
3:優勝し、王の選定をやり直させてもらう。
4:エヴェンクルガのトウカに預けた勝負を果たす。
5:迷いは断ち切った。この先は例え誰と遭遇しようとも殺す覚悟。
※アヴァロンが展開できないことに気付いています。
※防具に兜が追加されています。ビジュアルは桜ルートの黒セイバー参照。

161 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:40:34 ID:MAoDqTEN
「――ったく! せっかくこっちまで来たのにまたホテルの方に向かうってのかい、アタシ達は」
「仕方ないでしょう。フェイトちゃんと約束していたんですから」
病院とその周囲で、嵐のような一悶着があったことなど露知らず。
レヴィとゲイナーは、病院をあっさり通過して、フェイトと約束していたイイロク駅へと向かっていた。
「時間は4時半……うん。これなら間に合うかな」」
「なぁ、やっぱ6時に電話して、あのガキにこっちに来てもらえばいいんじゃねーのか? その方がアタシらも楽できるし――」
「却下です。年上の僕達が、年下のフェイトちゃんにばっかり、そんな無理強いしてどうするんです」
「あー、はいはい、分かりました分かりました。流石、紳士のゲイナー少年は言う事が違いますねぇ」
ゲイナーに皮肉たっぷりにそう言ってやると、レヴィは彼よりも前へと出て、歩き出した。
そして、ゲイナーを置いてこうと早足で歩き出す。
「――って、ちょっと待ってくださいよ! まだ、時間はありますからそんなに急がなくても……」
「るせぇ! 歩き方くらいあたしの好きにさせろ!」
レヴィは、そう言うと更に足を進める速度を上げ、ゲイナーはそれを追うために仕方なく駆け足になる。
「あのですねぇ、こんなところで無駄に体力を使わないほうが後々の為にも……」
背後から聞こえてくるゲイナーの言葉。
それを聞いて、レヴィの頭は瞬間湯沸かし器の中の湯の様に即座に沸騰、彼の方を振り返るとその襟首を掴む。
そして、お約束の怒り心頭な目つきでゲイナーに啖呵を飛ばしだす。
「あのなぁ、何か勘違いしてるみたいだから言っておくぞ。いいか? アタシは別にテメェの小間使いになったわけじゃないんだ。
 だから、そうやって一々アタシのすることに細かく口出しはすんな。いいな!?」
街にいる三下クラスのチンピラだったら、尻尾を巻いて逃げ出しそうな威圧感のある睨み。
それを見て、流石のゲイナーも全くたじろがないわけがなく、やや顔をひきつらせる。
「わ、分かりましたから! 分かりましたからこんなところで言い争いするのはやめましょう!」
「――チッ。張り合いのない奴だな。少しくらい言い返してみろっつーの」
「いや、確かにレヴィさんは別に僕の召使いでもなんでもないですから、今言ったことも別におかしい事ではなかったですし……」
ゲイナーは掴まれた胸元を整えると、彼女へと向き直る。
レヴィは、そんな彼の様子を見て、改めて舌打ちをして、自分のフラストレーションが一向に解消されていないことを自覚する。

いくら、空腹が解消されたからといっても。
グラーフアイゼンによる謎の魔法少女ルックを解除したとしても。
ゲイナーやトグサが脱出の為のブレーンとして機能してくれそうだとしても。
レヴィ本人の中に元からあった“暴れ足りない”という不満・欲求は満たされることはなかった。

今回もそれが一時的に爆発して、あのような突発的な怒りになったことにレヴィは気付いている。
(――ったく! 本当にどうにかしちまいそうだぜ……)
彼女としては、早いところ敵と認識できるような相手を見つけたかった。
そうすれば、自分の中でも納得した上で、心置きなく暴れられるのだから………………。

162 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:42:27 ID:MAoDqTEN


ゲイナーはそんなレヴィの苛立ちを肌で感じると、その大人げのなさに呆れつつも、もう一つの感情を抱き始めていた。
それは“焦り”。もしくは“恐怖”。
だが、それは決して、レヴィが自分を撃つのではという保身の為の恐怖ではない。
彼が恐れているのは、彼女がいざという時、どこまでも暴走してしまい、身の安全を考えなくなってしまうのではという事だった。
実際、彼女はカズマと最初に出会った時の一件では、まさに相打ち覚悟で暴れていた。
また何者かと戦闘になった際に、あの時のようになってしまうと今度こそレヴィはその身を滅ぼしかねない。
だからこそ、ゲイナーはそんな彼女の暴走を助長するような苛立ちの増大を恐れていたし、いざという時自分がどう対処するべきかを考えていた。
(あの時みたいに出来ればいいんだけど……)
ゲイナーはカズマとの戦闘の際にレヴィの暴走を止めた酒瓶での一撃を思い出す。
あの時は確かにあれで、彼女を止めることは出来た。
――だが、それと同時にそれを行ったことにより、ゲイナーは彼女に後々酷い目に遭わされるわけなのだが……。
(……思い出しただけでも情けない)
裸同然の格好でずっと放置されていたことを思い出した彼は、深い溜息をつく。
……彼女の暴走を止めることで、また半裸にされたら堪ったものではない。
ゲイナーは気分を憂鬱にしながら、出来れば暴走を起こす前に何かしらの形でストレスを発散して欲しいものだと願う。

――が、そんな彼のささやかな願いは、橋を渡り終えた瞬間に聞こえた一発の銃声によりあっけなく打ち砕かれるのであった。

「がぁっ!!」
「レヴィさん!?」
いきなり聞こえた銃声。
それは、当然の事ながら銃弾の飛来を伴ったものであり、銃弾はレヴィの右上腕を抉っていた。
「何だ、一体誰がこんな……」
ゲイナーは辺りを見渡し、レヴィを撃った犯人を捜す。
するとレヴィはそんなゲイナーにいきなり足払いを食らわせ、彼を転倒させる。
「――うわっ! ちょっと、何するんですk――」
ゲイナーは起き上がろうとした瞬間、頭上を通過する銃弾が空気を切っていったのを感じる。
「このウスノロ! 今こんなところで立ち止まってたら格好の的だろ!」
そして尻餅をついたままのゲイナーにレヴィは背を向けたまま怒鳴る。
どうやら、レヴィはゲイナーを狙う銃撃を危惧して、彼の姿勢を低くさせるべく、足払いをしたらしい。
そして彼女はそんな事を言いつつ、持っていたイングラムを暗闇の方向目掛けて撃つ。
「――ったく! 闇討ちとは粋なことをしてくれるヤローもいるんだなぁ、おい……」
「レヴィ……さん?」
起き上がりながらゲイナーは、そんなレヴィの底冷えするような……それでいてどこか嬉しそうな声に嫌な予感を感じる。
「……だが、そいつにゃ少し感謝しないとな。………………あたしも暴れたりなかった所だからよぉ!!!」
そう言うとレヴィは唐突にデイパックをゲイナーに向けて投げ渡すと闇の方目掛けて走ってゆく。
「ゲイナー! そいつは動くのに邪魔だからテメェに預けておく! だからとっととテメェは逃げな!!」
「レヴィさんはどうするんです!?」
「決まってるだろ。あの闇討ちヤローに腕の傷の借りを返しにいくのさ。ついでにあたしに暴れる口実作ってくれたお礼もたっぷりとプレゼントしてやる!」
――マズい。
遂にゲイナーが予期していた悪い事態が起こってしまった。
こうなってしまっては、彼女はどこまでも突き進む。
事実、既にレヴィの姿は闇の向こう。
既にその闇の方向から何発も銃声が聞こえてきている。
残されたのは、デイパックを持ったまま呆然とするゲイナー少年ただ一人。
「――これだから大人は勝手なんだ!! そんなこと言われても置いていけるわけないでしょう!! 」
そんな彼がレヴィをそのままにしておくわけにもいかず、彼もまた銃声が鳴り響く闇の中へと飛び込むのであった。

163 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:43:49 ID:MAoDqTEN


橋で待ち伏せをしていた不二子の元に近づいてきたのは、ゲームが得意で引きこもっていそうな眼鏡で色白の少年と、口が悪くチンピラ風情な刺青の女性だった。
彼女が見る限りでは、2人の武装は女性の方が持つ銃器らしきもののみ。
しかも、2人(特に女性の方)は大声で話しており、あまりに無防備・無警戒であった。
あの様子では、待ち伏せをしている相手がいるなどとは露にも思っていないだろう。
故に、彼女は2人を自分の銃の餌食になってもらおうと決めた。
「……恨むなら自分達の不運さを恨んで頂戴ね」
彼女が最初に狙うのは、女性の方。
彼女を不意打ちで仕留めさえすれば、見た目からして戦闘慣れしていなさそうな眼鏡の少年が慌てるのは確実であろうことだし、料理してしまうのは容易い。
もし仮に、一撃で仕留められないとしても、動揺を誘えることは必至で、その隙をついて両者を改めて撃つ事くらいは不二子にとっては朝飯前だ。

……そう、自分はこのような修羅場に慣れているプロであり、相手は引きこもり風の少年とチンピラ風の女。

間違いなど起るわけがない。
そう確信を持って、あの時の彼女は建物の影から引き金を引いていたのだ。


――だが、その読みが大きな間違いであった。
「オラァッ、待ちやがれ、この糞野郎! 逃げてんじゃねーよ!!」
そんな口汚い言葉とともに、背後から発砲音が聞こえる。
「……な、何なのよ、あれは!」
橋の袂から北へ進み、林の中に逃げ込んだ不二子を待っていたのは、腕を撃ち抜いた筈の女の追撃だった。
「なんで腕撃たれてるのにあんなに撃てるの? ……というよりも普通、仲間を置いてこんな遠くまで追いかけてくる!?」
思えば、第一射目で腕を撃ち抜かれた女性に案の定驚いて動きが止まっていた少年を撃とうとした時から彼女の様子はおかしかった。
その女性は、少年に向けて放った銃弾の存在に気付いたかのように少年の姿勢を強制的に低くさせた。
そしてそのまま彼女は、銃弾の放たれた方向を特定したかのようにこちらへと向かってくると、その左手に持ち替えたその銃を撃ちながら自分を追いかけてきて、今に至るのである。
まさに、その一連の動作は銃に並に慣れているだけでは到底出来ないもので、故に彼女は常日頃から銃や銃撃戦に慣れ親しんでいた女性であることが推測できた。
しかも、雑木林という障害物が多い場所で走っているにも関わらず、彼女の追撃の手は衰えない。
その様からは、相手は相当身軽で、かつ反射神経がいいということが伺える。
更に付け加えるならば……
「おいおいおいおい! いつまで逃げて回る気だぁ? このあたしに火をつけたのはアンタなんだぜ?」
声から察するに、彼女はその今の状況からは想像できないくらい、実に楽しそうだった。
まさか彼女は自分が撃たれているという事実よりも、今起こっている銃撃戦を楽しもうとしているのだろうか。
だとすれば、彼女はとんでもなくクレイジーな人間に喧嘩を売ってしまったことになる。
(この私が人選を間違えるなんてね……!!)
人を見る目はある――そう勝手に自覚していた不二子は、そんな自惚れに苦笑する。
だが、峰不二子という女はこんな失敗如きで倒れるような女ではない。
自分をどこまでも追いかけてくるというのならば、迎え撃つまで。
確かに彼女はただのチンピラではないようだが、かといってカズマや劉鳳のようなアルター能力があるわけでもないようであるし、流れる血を見る限りでは真っ当な人間のはず。
ならば、まだ勝算はある。
こちらには、自分を優位に立たせるだけの道具が揃っているのだから。
(さてと。どうしてあげましょうかね……)
林の中という街灯どころか月の明かりすらも殆どが遮られる闇の中へと更に進みつつ、彼女は次なる謀略を張り巡らせ始めていた。


164 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:45:34 ID:MAoDqTEN


(さてと。どうするかね……)
襲撃者を追いかけ、林の奥へと進んでいったレヴィは、木の陰に隠れながら一息をついていた。
いや、一息ついているという表現は間違えているかの知れない。

――ズギュンッ!

銃声と共に彼女の寄りかかっていた木の幹に銃弾がめり込む。
「――クソッ! またかよ!!」
舌打ちをすると、レヴィはその木から離れ、別の木の陰へと隠れる。
――追撃が終ったかと思えば、掌を返したような襲撃者による銃撃の連続。
先程からこの調子であった。
普段の彼女ならば、そのような状況になれば、嬉々として前へと飛び出て、アクロバティックな銃撃を見せているだろう。
だが、今回は状況が悪い。
暗闇という視界が殆どない状況で不用意に飛び出て銃撃を行えば、その音とマズルフラッシュにより自分の居場所を教えてしまうことになる。
故に彼女は木の陰に隠れ、相手の動向をうかがい、確実に仕留められる機会を狙っていた。
「らしくないよなぁ、こんな戦い方はよ……」
レヴィは文句を垂れながら、イングラムとベレッタの弾倉を交換する。
常に前へ前へと出ながら銃を撃ち続ける戦法を得意とする彼女からすれば、今回のような相手の動きを待つ戦い方は性には合わない。
「……だが、しかし何だ? 何で向こうはこんな暗い中であんなにあたしの居場所を特定できるっていうんだ?」
背後でまたも銃弾が木の幹を抉る音を聞きながら、彼女は疑問を抱く。
レヴィを狙う相手は、人物どころか障害物の存在すら殆ど把握できない中で、確実に彼女の隠れている木を狙ってきている。
しかも、正確な間合いと射撃精度を保ったままで。
「向こうの目は猫かなんかか? それとも…………」
このような暗がりでこそ活躍する道具をレヴィは知っている。
そして、相手がそれを持っていて、自分にはそれがない場合、相手がどれだけ優位に立つのかも。
だが、彼女は諦めない。
――喧嘩を売ってきた以上、決して逃げはしない。その場を去るのは相手を再起不能にした時のみ。
彼女は、そう心に決めていた。
その考えが、いつかケリをつけようとしている少年と似たり寄ったりであることなど、彼女は露にも思っていないであろうが。
「――ハッ! 弱い考えなんて持っても何の役にも立ちゃしない。……そうさ、あたしは“二挺拳銃(トゥーハンド)”。相手が何を持っていようと潰すまでさ」
今の彼女は、撃たれた痛みを殆ど感じないほど、この状況に気分が高揚していた。
「……さぁ、楽しいパーティの再会だ」
怪我をしているにも関わらず。
銃撃戦という命のやり取りをしているにも関わらず。
彼女のその声は、ますます楽しげになっていた。
それは、まさしく“水を得た魚”の如く。

時たま撃たれる銃の発砲音により、レヴィは徐々に相手のいる位置や距離を把握しだしていた。
「さぁさぁさぁ、チェックメイトまで後もう少しだぜぇ……」
木の陰を移動しつつ、レヴィは笑顔を見せる。
ここにたどり着くまでに大分音が大きくなってきたはずだ。
あと、もう少し。
もう少しで、自分の中のスイッチを入れた張本人の顔を拝める……。
そんな走る気持ちがあったからだろうか、彼女は敵が暗闇を覗ける道具を持っているにも関わらず、こちらが接近していることを知りつつ移動をしないのかという疑問を抱くことはなかった。
そうだからこそ、銃声ではない、何かが飛び出る音を耳にした瞬間、彼女は木の陰から飛び出てその音の方向に立つ人影を確認、そこへと反射的に銃弾を撃ちこんだ。
銃弾は正確に音の方向へと命中する。
……だが、その感触はどこか人を撃った時とは違うようにレヴィは感じる。
「……まさか」
撃った方向を目を凝らして見ながら近づくと、そこに倒れていたのは人のような形をしていたが人でもなんでもなかった。
あえて言うなら、水田にポツンと置かれているような不恰好な案山子。
「チクショウ!! 囮のつもりってか!? ――ってことは、まだどっかに……」
案山子を蹴っ飛ばすとレヴィは周囲を見渡そうとする。
……だが、その刹那、破裂音と共に彼女の脇腹に刺すような痛みが走り――――

165 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:47:18 ID:MAoDqTEN


「――あぐぁっ!!!!」
脇腹に銃弾が命中したレヴィが転がる様を、不二子は暗視ゴーグル越しに覗く。
「……上手くいったみたいね」
彼女が今いるのは、案山子が置かれた場所からそう離れていない場所。
案山子を囮に、その位置まで彼女は移動していた。
ちなみに、案山子は所持していたボディーブレードや森の中で事前に拾っていた太い枝を包帯やらリボンで固定し、そこに銭形警部変装セットの服装を着せ、顔の部分にはロボのオモチャに変装セットのマスクを被せたものをくっつけたもの。
ルパンがよく逃走する際に、警察や敵を欺くのに使っていたおとり人形をアイディアに事前に作っていたのだ。
(ルパンとはもう決別したはずなのに皮肉ね……)
死して、そして決別して尚、あの男の世話になるとは夢にも思わなかったが、生き残る為、勝つ為なら何でも利用すると決めたのだ。
そして、それが実際に役に立っているのだから、何も問題はない。
あとは、蹲り隙だらけの目の前の女性に止めを刺すのみ。
「それじゃ、さようなら。……恨むなら自分の運の無さと単純な脳みそを恨んで頂戴ね」
遺言を遺させる時間も、お祈りをする時間も与えない。
不二子は、離れた位置から照準を定め、まるで練習用の的を撃つようにその女性目掛けて引き金を――――

「レヴィさん!!! こんなところにいたんで――――って、うわっ!!」

――と、その時だった。
いきなり、あの女性と行動を共にしていた眼鏡の少年が現れた。
「……? まさかあのボウヤなの?」
目に映るのは武器を持たない、いかにも戦闘慣れしていないインドア派な少年。
……そんな彼がここに近づいてきているのだとすれば、それは不二子にとってもチャンスだ。
先程までの女性のような銃を持った危険人物ならともかく、あの大人しそうな少年ならば出てきた瞬間に仕留めることもできる。
「――飛んで火にいる夏の虫ってことわざを知らないのかしらね」
そうと決めたら、負傷して動けないでいるレヴィを後に回しても構わないだろう。
彼女は、少年に銃口を向けると今度こそ引き金を引こうとするのだが…………
「この馬鹿っ!! 何やってんだ!!」
今度は倒れていた女性が起き上がり、いきなり少年に飛び掛ると彼を強引に引っ張り、木の陰へと連れてゆく。
「――チィッ!!」
不二子はそんな彼女を止めようと発砲するが、焦りの為かそれらは外れてしまう。
「……まさかまだあんなに動けたなんてね……」
不二子は悔しげに彼女らのいる方向を見る。
……これで、再び状況は膠着状態に戻ってしまった。
違うところいえば、向こうに一人非戦闘員が加わったことと、女性の方に無視できないダメージがあるという事。
相変わらずアドバンテージはこちらにある。
彼女は虎視眈々と彼らを狙っていた。
「さぁて、次はどう出てくれるのかしら?」


166 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:48:40 ID:MAoDqTEN


銃声を頼りにレヴィを追ってきたゲイナーを待っていたのは、彼女からの熱い歓迎であった。
「……なんで、ここまで来たんだ? アァ?」
先程まで脇腹に銃創を作り地に伏せていたというのに、今の彼女はゲイナーの胸倉を掴み物凄い形相で睨んでいた。
「何で……って、そりゃ当たり前ですよ。レヴィさんは僕やフェイトちゃんの仲間なんですし……」
「ハッ、仲間だから助ける、か。そりゃ大層なことだ。……だがな、あたしは一度も助けなんざ呼んだ覚えないぜ?」
「そんな頼まれなくたって、いきなり僕達を襲ってきた犯人を追ってどこかに消えちゃったら、心配になって追いかけますよ」
これまでに様々な人が死んでいった。
フェイトの親友だというなのは、短い付き合いだったものの明るく人懐っこかったタチコマ、カズマの知人だったかなみという少女やストレイト・クーガーという男……。
もう、誰かが死ぬのは嫌だった。
バトルロワイアルというシステムに人が殺されてゆくなどという事は、あってはならないことなのだ。
だが、そんな悲痛な思いのゲイナーにレヴィはあくまで冷たく声を掛ける。
「……で? そんで、そんな正義感たっぷりのゲイナー坊やは、この後一体どうするつもりだい? テメェが来たら、この場は一発逆転――なんてアメリカの安っぽいカートゥーンみたなことになるのか?」
「それは…………」
「ほれ見たことか。いいか? テメェがここに来ても何も変わらないんだよ。むしろ足手まといが増えちまった」
足手まとい、という言葉を聞いてゲイナーは顔を暗くする。
……確かに自分はオーバーマン無しでは、格闘戦も銃撃戦も並かそれ以下しかこなせない。
生身で出来る人より優れたことといえば、ゲームくらいだろうか。
ゲイナーが無言になると、レヴィは呆れたような表情になって掴んだ胸倉を下ろし、その場に腰掛ける。
「……ったく。こちとら脇腹やられて、っつつ――あたし一人でも結構しんどい状況だってのに、テメェまで加わって一体どうすりゃいいんだ? 下手に動きゃ、向こうは暗視ゴーグルと銃であたし達を狙い撃ちだしよぉ」
脇腹を押さえながら、悔しそうに呟くレヴィの言葉をゲイナーは聞き逃さなかった。
「……暗視ゴーグル、ですか?」
「ん? あぁ、そうさ。あっちはこんな暗がりだってのにあたしの隠れた位置をどんどん当ててきやがったんだ。あんなこと出来るのは猫や梟、もしくは暗視できる道具を持ったヤローくらいだよ」
向こうが暗視できる装置を持っているということは、レヴィの言葉からも大体想像がつく。
それに、それを持っていることによるアドバンテージも。
……だが、もし相手が暗視を道具に頼っているのだとすれば、そこには何かしら隙があるはずである。
そして暗視装置に出来る隙といえば――――――
「レヴィさん。……ちょっといいですか?」
「どーした、ゲイナー坊や? 命乞いの相談か? あいにくあたしはそんなことをする気は毛頭無いかr――――」
「違いますよ。僕に一つ案があるんですけど…………いいですか?」
小声でレヴィに話しかけるゲイナー。
その彼の手には、彼女から預かっていたデイパックが握られていた……。

167 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:50:24 ID:MAoDqTEN


「……長いわね」
レヴィとゲイナーが隠れてからというものの、暗視ゴーグルで覗くその木の裏側では何も変化が起こってない。
ゴーグルでずっと監視していて変化が無い以上、こっそり逃げ出したという事は無いだろう。
ならば、2人は一体何をしているのだろうか。
暗い場所で男女がするありがちな行為? ――当然却下だ。
命乞いの準備?  ――少年がそれを考えていたとしても、女性の方が承諾しそうに無いから却下だ。
……ということは、何か作戦を練っていると考えるのが濃厚か?
だが、負傷した女と鈍そうな少年が2人集まって、一体どんな策を練るのだろうか?
見たところ武器は女性の銃二つしかないようだったが…………
「何か他に武器でもあるのかしら?」
自分の奪ったデイパックに実に多様な道具が入っていたことを考えると、その可能性も否めない。
先程のような油断は、もうしてはならないのだ。
ならば、と不二子は気を引き締めて、監視を続ける。
……すると。
「うおおおぉぉおおおお!!!!」
何といきなり、木の陰から少年が叫びながら飛び出してきた。
「……!? な、何なの!?」
こちらに向かってくるわけでもなく我武者羅に走る少年を見て不二子はその意図がつかめず戸惑う。
だが、これが何かの作戦の一部なのだとしたら、いち早く彼を撃って動けなくするべきだ。
不二子は躊躇いなく引き金を引く。
「――うわっ!!!」
だが、その弾は全力で走る少年には命中せずに、闇の中へと消える。
そして、次の瞬間――――
「そっちかぁっ!!!!」
突如聞こえてきた女性の声。
それに振り返ると同時に、彼女の視界は白一色に染まってしまう。
「……!!?」
視界がゼロになる感覚に不二子は慌てるが、その原因にすぐに気付く。
(――光っ!)
何かしら強い光を受けると暗視機能を持った装置は一時的に故障する。
それに気付いた不二子は、咄嗟にゴーグルを外し、目の前で光を発する道具を持つ刺青の女性を見る。
すると、彼女は既に銃を構えていて――――
「何だ、女だったのか、テメェ」
「……女で悪かったわねっ!!」
不二子はそう言うや否や、女性がその引き金を引く前に一気に間合いを詰め、その傷ついた脇腹に横から蹴りを入れる。
「――ってぇー!!!」
女性は傷口をモロに蹴られ、吹っ飛ぶ。
(今度こそ――)
今度こそ仕留める。
そう心に決めると彼女は銃を取り出す…………
「そんなことさせるかぁぁぁ!!!!!」
が、気付けばすぐ傍まで少年が近づいていた。
そして、その少年は手に持つ何かの瓶のようなものを不二子目掛けて投擲する。
「……こんなものでどうしようっていうの?」
瓶は不二子によって、あっけなく銃で撃ち砕かれてしまう。
すると、その瓶の中に入っていたであろう液体が飛び散り、慣性の法則に従い不二子の体にもそれは降りかかる。
降りかかった箇所には当然、ゴーグルを外した顔も含まれているわけで、その液体を被った瞬間、彼女の視界は――――

赤く染まった。

168 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:51:23 ID:MAoDqTEN


「き、ぎゃぁぁぁああああ!!!!!!!」
瓶の中の液体を被った目の前の女性は、そんな悲鳴を上げながら闇の中へと消えてゆく。
レヴィはそんな彼女の様子を痛みを堪えつつ見るしか出来なかったわけだが。
すると、そんな彼女にゲイナーが手を差し伸べてきた。
「……ほら、今のうちに逃げますよ!」
「な、何言ってやがる!! その前にこいつをぶっ殺さないとあたしの気が…………――っあだだだっ!!」
レヴィは威勢のいい声を出そうとするも、その声によって腹部の痛みが蘇る。
「それだけ傷ついた体でよくそんなこと言えますね。褒めてあげます! ですが今はその怪我を治すほうが先です。それにフェイトちゃんを待たせてるんですよ?」
確かに今のこの体では、追跡するのも精一杯だろう。
今、また先程のような蹴りを食らえば、今度こそ追いあがれなくなってしまうかも知れない。
……ゆえにゲイナーの言葉も正しい。
腹が立つくらい正しい。
「はい、変な意地張ってないで、さっさといきますよ。いいですね!?」
「――わーったよ。今回はテメェの案のお陰であの女に一泡吹かせることが出来たから、それでよしとしてやるよ」
レヴィの言葉を聞いて、ゲイナーは呆れるような表情をしながらも、どこか安堵したように見える。
「それじゃ、こんなところ早く出ましょう。……肩貸しましょうか?」
「んなお情けを坊やなんかにかけてもらう筋合いは――――っいつつ!! …………ま、まぁ、テメェがそんなに貸したいって言うなら別に断らねーけどよ」
「…………はぁ」
溜息をつきながらも、ゲイナーはレヴィの腕を掴み立ち上がると、歩き出す。
「……それにしても、坊やの案でこうも上手くいくとは思わなかったよ」
「悪かったですね。どうせ、そういう作戦立案とかがダメそうな見た目ですよ、僕は」
飛び出したゲイナーを囮にして銃を撃たせ、その銃声やマズルフラッシュで敵の位置をレヴィが大まかに特定。
それから、レヴィがその目星をつけた範囲をテキオー灯の強烈な閃光で照らし、敵の持つであろう暗視ゴーグルを故障させ、それに戸惑っている隙に仕留める…………それがゲイナーによる立案だった。
振り返ってみると、最後こそ敵の思わぬ格闘戦により失敗したが、大方は成功している。
ゲイナーも内心は、その事実に安堵していた。
「お、怒ったのか? へへ、やっぱ子供だな、テメーは」
「うるさいですね! 僕が子供なら、あなたは汚い大人ですよ!」
「あぁ、そうさ。あたしは汚い大人のお姉さんさ。文句あっか?」
「…………べ・つ・に・ありませんよ!」
ゲイナーはそう言うとそっぽを向いてしまう。
そんな彼の様子を見て、レヴィは面白がって笑うと、ふと思い出したように彼に今一度尋ねた。
「――そういや、思い出したんだがお前が投げたあの瓶、何なんだ? あんなのあたしのバックに入ってた覚えないんだけどよ」
「あぁ、あれですか? あれはですね、グルメテーブルかけっていう道具を使って出したんですよ」
「ふぅん。てことはあれ、飲み物だったのか。……んで、結局中身は何なんだ?」


「……チリソースですよ。しかもとびきり辛いのを出してみました」

169 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:53:03 ID:MAoDqTEN
【D-4・南東部/2日目・早朝】

【魔法少女ラジカルレヴィちゃんチーム】
【レヴィ@BLACK LAGOON】
[状態]:戦ってやや気分爽快。脇腹、及び右腕に銃創、頭にタンコブ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い。
[装備]:イングラムM10サブマシンガン(残弾13/30 予備弾倉30発 残り2つ)、ベレッタM92F(残弾10/15、マガジン15発)
   グラーフアイゼン(待機状態、残弾0/3)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:テキオー灯@ドラえもん
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。物事なんでも速攻解決!! 銃で!!
1:不本意だが駅に向かいフェイトと合流。
2:フェイトと合流後、病院で再びトグサと合流する。
3:見敵必殺ゥでゲイナーの首輪解除に関するお悩みごとを「現実的に」解決する。
4:魔法戦闘の際はやむなくバリアジャケットを着用?
5:カズマとはいつかケジメをつける。
6:ロックに会えたらバリアジャケットの姿はできる限り見せない。
[備考]
※双子の名前は知りません。
※魔法などに対し、ある意味で悟りの境地に達しました。
※ゲイナー、レヴィ共にテキオー灯の効果は知りません。
※トグサから聞き逃した第四放送の情報を得ました。


【ゲイナー・サンガ@OVERMAN キングゲイナー】
[状態]:風邪の初期症状、頭にたんこぶ(回復中)、頭からバカルディを被ったため少々酒臭い
    腹部と後頭部と顔面に相当なダメージ
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料一日分消費)、ロープ、フェイトのメモ、画鋲数個、首輪の情報等が書かれたメモ1枚
    レヴィのデイパック(※1)
[思考]
基本:バトルロワイアルからの脱出。
1:E6駅でフェイトと合流。できなければ電話をかける。
2:フェイトと合流後、病院で再びトグサと合流する。
3:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。
4:フェイトのことが心配。
[備考]
※名簿と地図を暗記しています。また、名簿から引き出せる限りの情報を引き出し、最大限活用するつもりです。
※なのはシリーズの世界、攻殻機動隊の世界に関する様々な情報を有しています。
※トグサから聞き逃した第四放送の情報を得ました。
※顔面の腫れは行動に支障がない程度には回復しました。

※1:レヴィのデイパックの中身
デイバッグ×2、支給品一式×2、NTW20対物ライフル(弾数3/3)
グルメテーブルかけ(使用回数:残り16品)@ドラえもん、ぬけ穴ライト@ドラえもん
バカルディ(ラム酒)×1本、割れた酒瓶(凶器として使える)

170 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:53:58 ID:MAoDqTEN


「はあっ、はぁっ、はぁっ………………」
そのチリソースを目や鼻、それに口にまで被った当の本人である不二子は、今川辺まで戻っていた。
理由は簡単。
顔に付いたソースを洗い流す為である。
「はぁっ、はぁっ……あの坊や、やってくれるじゃない……」
顔を何度も水で洗うものの、その刺すようなチリソースの刺激は中々消えない。
彼女はその刺激に堪えつつ、近くにあった岩に腰掛ける。
「やっぱり、どんな相手だろうと油断は禁物ってことね……」
例え、相手がチンピラ風情の女であろうと。
例え、相手がいかにも引きこもっていそうな少年であろうと。
このような場所に呼ばれているからには、何かしら他の普通の人間とは違うものを持っているのかもしれない。
ならば、弱者優先といえどその能力や本質をきちんと見極める必要がある。
そうしなければ、到底この地で生き残ることなど不可能であることが、今回の一件で改めて思い知らされた。
(……それで、と。これからはどうしようかしらね)
不二子は銃弾を補充しながら、今後の事を考える。
勿論、生き残る為に優勝を目指す方針は変わらない。
だが、暗視ゴーグルが故障し、これから夜が明け始めている今、闇討ちで参加者を殺害するという方針は変えざるを得ないだろう。
そして、奇襲のような相手の力量を図る前から手を出してしまう戦術では、今後生き残っていけない可能性が高い。
――ということは、残された道は、どこかしらの集団に潜入して、チャンスを待つ方法のみか。
幸いに、話術ならば人を騙せるだけのスキルを持っている。
上手くいけば、自分が直接手を下さなくても仲間同士で潰し合いをしてくれる可能性もある。
――弾薬に限りがある以上、そういった自滅の道を誘導するのも有効だ。
だが、その際は自分の顔を知っていてかつ自分が優勝狙いであると勘付かれないようにしなくてはならず、あのハルヒというセーラー服の女子高生やカズマと呼ばれた少年、先程の2人の男女にはなるべく顔を見せないほうがいいだろう。
――となると、女子高生のいた病院や、カズマが追ってきた映画館方面、更には先程の2人組が向かおうとしていたと思われるホテル方面には近づかないほうがいいことになる。
(……って、それってここから行ける大体の場所じゃない)
現在地であるD-4を中心に、各方面に会いたくない人物がいるであろう現状に、不二子は自分の運の無さを恨む。
(……だったら、ここで何もせずに待っていたほうが得かもしれないわね)
どうせ、自分以外にも優勝狙いの参加者はいて、彼らに任せておけば自分が何もしなくても勝手に人は死んでゆく。
そう、自分が何もしなくても、このゲームは勝手に進むのだ。
ならば、ここは一度、体を休める為にもこの辺りで身を潜めていて問題ないのではないのか。
それが彼女の下した決断だった。

そして、そう今後の方針を決めると彼女は何気なく空を見上げた。
すると、真っ黒だった空には、次第に青が混ざり始めていた。
――また、夜が明けようとしているのだ。

「……さてさて、残りは何人になっているのやら」

岩に腰掛ける不二子が見上げる空に、死者を告げる仮面が現れるまであと僅か……。


171 :暗闇に光る目 ◆lbhhgwAtQE :2007/04/08(日) 00:55:24 ID:MAoDqTEN
【D-4・北東部川沿い/2日目・早朝(放送直前)】

【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:軽度の擦過傷、生き残ることへの執念、目鼻口等にチリソースによる刺激、体の各所にソースが付着
    テキオー灯の効果持続中
[装備]:コルトSAA(弾数:6/6発/予備弾:6発) 、コルトM1917(残り6発/予備弾無し)、暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)
[道具]:デイバック×7、支給品一式×7(食料6食分消費、水1/5消費)、ダイヤの指輪、
   高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)、のろいウザギ@魔法少女リリカルなのはA's
   鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
   USSR RPG7(残弾1)、RPG-7スモーク弾装填(弾頭:榴弾×2、スモーク弾×1、照明弾×1)
   ハーモニカ、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、真紅のベヘリット@ベルセルク、ぶりぶりざえもんのデイパック(中身なし)
   タヌ機(1回使用可能)、クロスボウ、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)、トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
[思考]
基本:優勝して生き残る。自己の安全を最優先。利用できるものはなんでも利用する。
1:顔の刺激が治まるまで、なるべく身を潜めておく。
2:参加者を殺害し人数を減らす。
 ※弱者優先。仲間割れなどの効率の良い手法を取りたい。ただし、明らかな弱者を見つけたとしても警戒は常に怠らない。
3:ハルヒやカズマ、2人組(レヴィ&ゲイナー)との接触は回避する。
4:カズマや劉鳳など、人間を超越したような輩には手出ししない。
5:F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
[備考]
※E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
※「なくても見つけ出す!」にて、ドラえもんたちがしていた会話の一部始終を盗聴していました。
※着せ替えカメラの効果が解除され、元の格好に戻っています。

[全体備考]
※不二子製作の囮案山子がD-4の林の中に放置されています。なお、案山子の材料として用いた道具は以下の通り。
〜銭型変装セット@ルパン三世(衣服、変装マスク)、ボディブレード、かなみのリボン@スクライド
 スーパーピンチクラッシャーのオモチャ@スクライド、包帯(半分程度)、スコップ、その他山で拾った枝等

172 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/09(月) 14:13:58 ID:Fx8qhGi4
かなや

173 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 00:36:51 ID:2/axzyeu
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174 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 22:02:36 ID:zB/XoRji
とんだ糞キモスレだな
これから毎日VIPにリンク貼ってやるよwwwwwwwwwwww

175 :プリズムライト 1 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:53:55 ID:hF/DeXLd

  人間は光が無いと生きてはゆけない
  昇りつつある朝日を見ながら、遠坂凛は唐突にそう悟った。

  闇が嫌いな訳ではない。闇に包まれて安らぐことができるのもまた、人間だ。
  でも、闇だけでは駄目なのだ。
  闇の中で、自分を照らし、世界を照らし、自分の歩む道を照らす。
  そんな光がなければ、人は前には進めない。
  ほんのひとすじの光でいいのだ。
  その光さえあれば、人はそれを頼りに前に進んでゆける。
  そして人は火を手にし、闇の中でも前に進もうとする。
  だがその火は、自らの手で熾さなければならない。
  だから、私は火を熾す。
  幽かに揺れる種火を消すまいと、必死に薪をくべる。
  そうすれば、もしも私が倒れても、きっと誰かがその火を受け継いでくれる。
  そして何時の日か、その火は闇夜を明々と照らす大火に成るのだ。


「……話って、なんですか」 
  東の空を眺めたままの凛に痺れを切らしたのか、青色の自称猫型ロボット――ドラえもんが口を開いた。

  ここは病院の屋上。
  病院に集まった人間の中で最も疲労が少なく、
  且つそれに適した能力を持った凛が見張りを買って出た為、凛はそこにいた。
  そして、その凛に呼ばれたために、ドラえもんはそこにいた。
  改めて見ると、本当に大きな口だ。人の頭ぐらいなら飲み込んでしまえそうな程に。
  尤も、そんな不穏な考えを相手に抱かせない不思議な安心感をこのロボットは持っている。
  だからこそ凛は、敢えて不信感の漂う水銀燈を遠ざけて、ドラえもんを選んだわけでもあるのだが。

176 :プリズムライト 2 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:54:41 ID:hF/DeXLd
「ええ、話、それも大事な話なんだけど、どこから話したらいいかしらね……」
  凛がドラえもんと話さなければならないことは無数にあった。
  ドラえもんの科学技術とやらについて。
  あのギガゾンビの能力について。
  凛の魔術について。
  レイジングハートの魔法について。
  そして、それらの情報を最大限に駆使して首輪を外し、主催者を倒し、この世界から脱出する方法について。
  これらの全てを話しきるのに、一体どれだけの時間が必要なのか。凛には見当もつかなかった。
  だが、やらねばならない。
  ここに希望という名の種火があり、情報と言う名の薪が有るのだから。

「そうね。話ってのも色々あるんだけど、――最初に『魔法』と『魔術』のことを話して置くわ」
  魔法? とドラえもんが怪訝な表情を浮かべたが、凛は気にせず話を続ける。
「魔術と、魔法。貴方達は混同してしまうかもしれないけれど、我々はこの2つを明確に区別している。
その違いを簡単に言えば……そうね、
『火を起こす』『空を飛ぶ』といった、今現在の科学技術で実現可能な事を魔力で実現させるのが、魔術。
そして、『死者を蘇らせる』『時空を超える』などの明らかに実現不可能な奇跡を起こしてしまうのが、魔法。
ここまではいい?」
  ドラえもんは黙って頷いた。
  それを確認して、凛は語調を強める。
「つまり私たちにとっては、ドラえもん……あなたは魔法使い、否、魔法そのものなのよ」
「ええっ?」
  それを聞いたドラえもんが素っ頓狂な声を上げる。
「まあ、驚くのも無理は無いのかも知れないけれど、考えてみれば簡単なことよ。
未来の世界の常識も、私たちにとって見れば奇跡そのものであることあるし、
現在の常識が過去では魔法を駆使しなければ実現不可能だったこともある。ただそれだけのことよ」

177 :プリズムライト 3 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:55:47 ID:hF/DeXLd
「……ふうん。確かに、その理屈ならなんとなく分かる」
「つまり、この世界では貴方は魔法使い。そして、ギガゾンビって奴も魔法使い。OK?」
「分かった。それで?」
「そして、この魔法なんだけど……魔法にも幾つかの種類があるのよ。
例えば……貴方達の得意な時間旅行や、空間移動。これらはそれぞれ別の魔法と言えるわ」
「でも、タイムマシーンやどこでもドアにも、共通する技術があるんだけれど……」
「そうね。貴方達から見れば、同系統になるのかもしれない。でも、私たちから見れば全く別のモノなのよ。
これが何を意味しているか分かる? 」
「えっと……??」
「じゃあ、もう一歩踏み込んで言うわね。
私たちが積み上げてきた『魔術体系』と、貴方達が作り上げた科学技術という名の『魔術体系』、
それぞれが独立して成立したように見えるけど、
だからこそお互いの技術を摺り寄せれば、予想外のブレイクスルーが生まれる可能性が高いのよ。
わかる?」
「!?!?!?」
  凛の言葉の意味を理解しかねるのか、ドラえもんの返答が途切れる。
  その返事に窮したドラえもんに向かって、凛は一枚の紙切れを突きつけた。

『私たちがお互いの情報を共有し活用できれば、ギガゾンビにも付け入る隙ができる、ってことよ!』

「!!!」
「いいわ、答えは自分で考えておいて。私は見張りに集中する」
『そのまま喋らないで。首輪に盗聴器が仕組まれている可能性があるから、ここから先は筆談にしましょう』
  そうして凛はドラえもんに話す隙を与えずに別の紙切れを見せると、一方的に会話を終えた。
  もちろん“口先だけ”のことである。
  凛は黙って、メモ用紙の上に鉛筆を走らせる。


178 :プリズムライト 4 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:56:41 ID:hF/DeXLd
『今まで私が確認した限り、この世界には少なくとも4つの魔術体系が存在するわ。
一つは、貴方達の“未来科学”
一つは、私の“魔術”
一つは、この杖――レイジングハートの “自称・魔法”
一つは、水銀燈のような“ドール”
これらそれぞれの体系は、一部は重複するものの、その大部分はお互い独立しているように思える。
そして、それらにはそれぞれ得意分野があると考えられるのよ。
未来科学は“時間旅行”
魔術は“霊魂”
自称・魔法は“平行世界”
ドールは“生命”
……これはちょっと乱暴な分類だし異論もあるかもしれないけれど、今は名義上こう位置づけておくわね』

  凛は次々に書き記してゆくメモをドラえもんに渡してゆく。
  どうやらドラえもんはそのスピードについてゆくのもやっと、といったところだが、
  凛もそれをゆっくり待つつもりは無かった。
――頼むわよ、ドラえもん。ギガゾンビの裏をかくにはアンタの知識と理解が必要不可欠なんだから……!

『次に、ギガゾンビの魔術に関して考えてみるわね。
奴は時間移動だけでなく、空間の管理も、平行世界から人物を召還することもやってのけている。
正直、奴の“魔法”には感服しちゃうけど……
でも、すべての面で奴が私たちを上回っているかと言えば、決してそんなことは無い。
例えば奴はサーヴァントを召還したとは言え、それ以外の霊的な魔術を一切使っていない。
それに、失礼だけどドラえもんと水銀燈の質感を比べてみれば、水銀燈の方が“生き生きと”して見える。
そして平行世界の管理と言う点で見れば……レイジングハートの言う“自称・魔法”なら、
貴方達の平行世界への干渉技術と比べても遜色無い。寧ろ秀でているようにも思える。
以上のことから、レイジングハートの“自称・魔法”を掘り下げていけば、
この世界から脱出できる可能性もゼロでは無いと考えられるわ。
わかる!? これらのアドバンテージをうまく利用できれば、
絶対にギガゾンビにも一杯食わせてやることが出来るはずなのよ!』

179 :プリズムライト 5 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:57:42 ID:hF/DeXLd

  ……だが残念なことに、凛の決め台詞がドラえもんの目に映るには、まだ少し時間が必要なようだった。
  ドラえもんは、うんうんと唸りながら凛の渡したメモとにらめっこをしている。
  この様子だと、お互いの情報を交換しきるにはかなりの時間を必要とするのは明らかだった。
――ドラえもんって、本当に未来のロボットなんだろうか? その割にはとぼけていると言うか、鈍臭いと言うか……
頭の中に最新鋭のコンピューターが詰まっているとは、どうしても思えない。
未来の技術とは言えそこまでの力は無いのか、それとも何らかの機能に特化しているのか。
はたまた故障でもしているのか……?

『す、すごいね凛ちゃん。独りでよくここまで……』
『独りじゃないわよ。レイジングハートもいたし。それに、これからはドラえもんもいるんだしね。
……そう。悔しいけれど、私たち一人々々の力だけじゃ、ギガゾンビには勝てないわ。
だから、力を貸して。
3人寄れば文殊の知恵って言うけれど、ここには各分野のエキスパートが揃ってるんだから、
きっと何か名案が浮かぶはずよ。
だから……難しいかも知れないけど、ドラえもんにも協力して欲しいのよ。
参加者の中で一番ギガゾンビに近しい貴方だからこそ、アイツの足元を掬えるかもしれないの』

  凛のメモを読むうちにドラえもんの表情が引き締まってゆくことに、凛は僅かに安堵していた。
  ドラえもんは自分の持つ重要性と責任を理解し、それを受け止めてくれたのだから。
――大丈夫。彼なら、きっと、力になってくれる。
もし私が駄目でも、彼がきっと他の誰かに伝えてくれる。私が熾した小さな火を。
……って、縁起でも無いわね。

  そして、メモを読み終えたドラえもんが決意のこもった目で私を見る。
『う、うん。分かった。頑張ってみるよ!』
『頼むわよ? じゃあ、まずは貴方の“科学”でいうところの時間移動の理念を教えて貰えるかしら?』
『う〜ん、いきなり難しいなぁ。えっと、おおまかに言うとね……』


180 :プリズムライト 6 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:58:34 ID:hF/DeXLd


  朝日が、私たちを照らしていた。
  でも私たちは、太陽とは別の、小さな、でも力強い光を感じていた。




               ☆



  うっすらと目を開けると、外の光がカーテンの隙間から見えた。もう朝みたいだ。
  昨晩はほとんど眠れなかった。いつもなら何処でもすぐに眠れていたのに、どうしても眠ることができなかった。
  そして、眠れなかったのは僕だけではなかったようだ。

  今、この病室には、僕――野比のび太の他に、3人の人がいる。
  水銀燈と、劉鳳さんと、セラスさん。
  劉鳳さんとセラスさんが病室に戻って来てから、僕らはほとんど何も喋らない。
  なんだか、空気が張り詰めて緊張しているのが僕にも分かる。
  お互いがお互いを見張っていると言うか……
  これなら、ドラえもんと一緒に見張りに行けば良かったかもしれない。
  どうして、みんな仲良くできないんだろう。

「もう朝みたいねぇ。で、貴方は何時まで私のこと睨んでるつもりなのかしら?」
  張り詰めた空気の中で、水銀燈が面倒臭そうにそう呟いた。
「……」
  それに対して、壁際で座っているセラスさんは黙ったままだ。
  セラスさんは、昨晩部屋に戻ってから今までの間、ずうっと水銀燈を睨み続けている。
  それはまるで、『少しでもおかしな真似をしたらただじゃおかない!』って言ってるみたいだった。

181 :プリズムライト 7 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 22:59:35 ID:hF/DeXLd
  劉鳳さんは傷が痛むのか、ベッドでずっと横になっていた。
  目を閉じて眠っているみたいだけど……この状況で寝られるなんて感心する。
「全くもう、そんな露骨に邪険にしなくてもいいじゃないのぉ。私が貴方達になにかしたぁ?」
  返事をしないセラスさんに、水銀燈はゆっくりと喋りだす。
  こういうのを“挑発的”って言うのだろうか。
  セラスさんの額がピクピクと引きつる。
「何か、ですって? ミオンに――あたしらの仲間に攻撃しといてよく言うよ! あれでもしあの子に何かあったら、ただじゃおかなかった!」
「ふぅん、貴方はあの娘に心底騙されてるのねぇ、お人好しさんなんだから。よくそんなので今まで死ななかったものだわ」
「なッ、まだ言うかッ、この嘘吐きの呪い人形!!」
  顔を真っ赤にして怒っているセラスさんだったけれど、水銀燈は全く怯まない。
  それどころか、むしろ嬉しそうにすら見えるのは僕の気のせいなんだろうか?
「酷い言われようねぇ。でも、貴方だけには言われたくないわね『嘘吐きの化け物さん』。」
「な、なにをっ……!」
「あら、やっぱり? なんだか普通の人っぽくなかったからカマかけてみたんだけど、図星だったみたいねぇ。
それを黙って私たちに近づくなんて……油断させておいてガブリ、ってつもりだったわけぇ?
ああ、それで一晩中私のこと見てたんだぁ。ああ怖い怖い」
「ち、違うっ! 私はアンタが悪さしないようにって!」
「悪さって何よ? 私は貴方とちがって嘘なんかついていないわよ?
私はただ、自分の身を守るために、“しかたなく”応戦しているだけ。
あなたがあのミオンって娘を信じるのは勝手だけど……私が嘘をついているって言う証拠はあるの?」
「それは、その……無いけど……」
「あきれた! 証拠も無いのに人を嘘吐き呼ばわりしてたのぉ? これはこれは、とんだ名探偵さんねぇ」
「あ、アンタとミオンだったら、どう考えてもミオンの方が信じられるんだよ!」
「はいはい。おばかさんは煩いから、もう黙っていてくれるぅ?」
  セラスさんはその後も何か叫んでいたけれど、水銀燈はそれらをまるっきり相手にしなかった。
  もう、セラスさんはどうでも良い、という風だった。
  セラスさんもただの悪口を言ってるだけみたいだったし……
「全く、騙されるのは勝手だけど、人に迷惑をかけないで欲しいわねぇ。
それより、私はそっちの男の人に用があるんだけど。貴方、ちょっと起こしてくれない?」

182 :プリズムライト 8 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:00:44 ID:hF/DeXLd
「だ、駄目よ! 劉鳳は疲れてるんだからまだ寝かせておかないと……」
  そこまで言ったセラスさんの口が、男の人の手で塞がれる。
「いや、もう十分休ませて貰った。奴の相手は俺がする」
  目を覚ました劉鳳さんが、体を起こした。

「で、何を俺に聞きたいと言うんだ?」
  劉鳳さんが水銀燈を見る。
  いや、やっぱり睨みつけている。セラスさんと同じだ。
「……まったく、どうして貴方達はこう刺々しいのかしらねえ?」
「愚問だな。俺達は貴様を敵と認識している。貴様に隙を見せる訳には行かない」
  劉鳳さんは、そのとき確かに、はっきりと言った。
  水銀燈は敵だ、と。
  理由も何も告げずに、ただその結論だけを。
「あらあら野蛮ねぇ。一方的に『お前は俺の敵だ』なんて。私は何にも悪いことなんかしてないのに」
「フン、貴様の言葉など信じるに足りん。貴様は俺達の仲間を攻撃した。それだけで十分だ!」
  劉鳳さんはそう言いながら、ゆっくりとベッドから起き上がる。
「ちょ、ちょっと劉鳳、今ここで戦う気なの? のび太君がいるのに……」
  そう言ってセラスさんは劉鳳さんをたしなめるが、
  一方でセラスさん自身もいつでも戦えるように身構えている。
  この人達は、始めるつもりなのかもしれない。
  新しい殺し合いを……
  でも、対する水銀燈は相変わらず不敵に笑っている。
「全く、こっちは戦う意思が無いって言うのに。そんな私に襲い掛かるんだ?」
  水銀燈は微塵も動じずに話続けるが、
  もう劉鳳さんは聞いていない。
「俺は、俺の信じる『正義』を貫くだけだ! もう語ることは無いのか? ならば行くぞ! 絶――」



183 :プリズムライト 9 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:01:37 ID:hF/DeXLd
「そうやって、真紅も殺したの?」

「何ッ!?」
  劉鳳さんが止まった。
「貴方が真紅の遺体から何か――ローザミスティカを盗ったって言うのは本当だったのね」
「貴様……貴様も真紅を知っているのか?」
「真紅はね……私の妹よ。私が聞きたいって言ったのは、真紅のことなのよ」
「……!」
  劉鳳さんの勢いが、目に見えて弱くなっていくようだった。
  なんだか顔も青い。
  そして、水銀燈の顔からは、いつの間にか笑みが消えていた。
「真紅には……すまないことをした。俺が不甲斐無いばかりに……確かに、俺が殺したのも同然なのかもしれない」
  その言葉を聞いたとたんに、水銀燈の目が変わる。
  今度は水銀燈が劉鳳さんを睨みつけて、叫んだ。
「その“すまないこと”って言うのは、真紅を見殺しにしたってこと?
遺体はほっといてローザミスティカだけ盗ったってこと?
それとも……真紅を殺して、ローザミスティカを奪ったことなの? 答えなさい!」
  それまでとはうって変わって、水銀燈が劉鳳さんを責め立てる。
  劉鳳さんは……なんだか歯切れが悪い。何か、やましいことでもあるのだろうか。
「ち、違う! 俺はただ、真紅を保護しようとしただけだ!」
「そして、勢い余って殺しちゃったって言うの!?」
「違う! 保護するために探していたが、見つけたときには真紅はもう既に死んでいたんだ!」
「その割にはちゃっかりローザミスティカを盗んでいったのよね? 真紅のことは置き去りにして」
「あ、あの時は急いでいたから、仕方なく……!」
「下手な言い訳ねぇ。私の言うことは信じない癖に、そんな世迷いごとは信じろっていうの?
貴方達、人の悪口言いふらすんなら、きちんと『証拠』を見せなさいよ。貴方達が嘘吐きじゃないのならね!」
「証拠……ああ、そのとき同行していた人物なら……いや、しかし……」
「なによ、まどろっこしい。嘘ならもっと上手くつきなさいな?」
「嘘ではない! 俺は、確かに峰不二子と一緒だった……!」
  そう言った劉鳳さんは、
  『しまった』という顔をした。
  でも、僕はそれをはっきりと見ていた。
「……不二子って、あの中年に変装してた女?」
「……そうだ。太一少年を殺したと言う女だ」

184 :プリズムライト 10 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:03:30 ID:hF/DeXLd


  ……え?


  ……太一くんを殺した女の人……?


  その人と、劉鳳さんは、一緒にいた……?


  それじゃあ、劉鳳さんとその女の人は……もしかして……


     ナカマナンジャナイノ?


「あきれた! 自分の無実を証明してくれるのが人殺しだけですって? そんな言い訳が本当に通じるとでも思っているの!?」
  水銀燈の言うことがとてもまっとうに聞こえる。
  でも、劉鳳さんは劉鳳さんで開き直っている。
「信じてくれとしか、俺には言えない。水銀燈、お前の妹を護れなかったのは俺の責任だ。すまなかった」
  相変わらず横柄なまま、劉鳳さんが水銀燈に頭を下げた。
  白々しい。
  当然、水銀燈はそんな程度では収まらない。
「茶番、ねぇ。それにね、私が聞きたいのはそんな薄っぺらい謝罪じゃなくて、真紅がどうして死んだか、なのよぉ?
あと、私の他の妹について何か知っていたら教えて欲しいわねぇ。みんな、もう死んじゃったけど。
案外、アンタが皆を殺して回ってるんじゃないのぉ?」
「あんた、黙って聞いてりゃあ!」
  セラスさんがいきり立つ。
  ……セラスさんも、劉鳳さんの仲間なんだろうか。
  ということはやっぱり……?
  水銀燈は、相変わらずセラスさんを無視し続けたまま話し出す。

185 :プリズムライト 11 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:04:27 ID:hF/DeXLd
「劉鳳、って言ったっけ? あなた、口では『正義』とか『仲間』とか綺麗な言葉を並べてるけど……
そういうのって、口で言うだけじゃなくて行動で示すものなんじゃないのぉ?
だのに、貴方はさっきから『お前は嘘吐きだ』『お前は敵だ!』とか勝手に決め付けて襲ってこようとするしぃ。
貴方、本当は正義だなんだって言いながら、ただ純粋に暴れたいだけなんじゃないのぉ?
『正義』を言い訳に使っちゃだめよぉ? 暴れん坊さぁん」
  そして、水銀燈はわらった。
  劉鳳さんとセラスさんを、心底馬鹿にするように。

「貴様ッ!! 俺の正義を愚弄するかッ!!」
「ふざけんなッ!! それ以上言うとぶっ飛ばすよ!!」」
  反射的に、2人が水銀燈に詰め寄った。
  怒りに震える2人とは対照的に、水銀燈は身じろぎ一つしない。
  そして先に水銀燈に掴みかかったのは、セラスさんだった。
  水銀燈の胸元を掴むと、小さな水銀燈の体は軽々と持ち上がる。
「自分の嘘を棚に上げて好き勝手言いやがって……訂正しろ!」
  セラスさんの目は、赤く、獰猛な獣の目そのものだ。
  それでも水銀燈は怯まない。
「なぁに? 反論できなくなったら暴力で解決するのぉ? ホント野蛮ねぇ、あんたたちの『正義』って。
……悪いんだけど、服にシワが付いちゃうから離してくれない?」
「コイツ……!」
  セラスさんの空いているほうの手が、強く握りしめられる。
  そして、水銀燈の顔面に向かって、
  振りぬかれ――

「止めなさい! 何やってるのよ!!」


186 :プリズムライト 12 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:05:33 ID:hF/DeXLd
  病室内に、凛さんの声が響いた。
  病室の入り口には、見張りに立っていた凛さんとドラえもんの姿があった。
「……!」
  セラスさんの拳が、水銀燈の目の前で止まる。
  その余勢が、水銀燈の髪を揺らす。
  そして、次の瞬間――
「ああ、怖かった……ちょっと凛! もっと早くに助けに来てよぉ……」
  今までからは信じられない、とても儚げで弱々しい泣き顔で水銀燈は凛を見た。
「あんたたち2人にならここを任せておけると思ったのに……残念だわ」
  凛さんの表情は、とても険しかった。
「……セラス、水銀燈を離して。話はそれからよ」 


「何があったの?」
  その凛さんの言葉は、この部屋にいる全員に対してのものだった。
  間髪いれずに水銀燈が喋りだす。
「聞いてよ凛、この人達、私とお喋りしてたらいきなり怒り出して殴りかかってきたのよぉ」
  セラスさんも黙ってはいない
「よくも出任せをいけしゃあしゃあと! コイツはあたし達の仲間と、劉鳳の正義を侮辱したんだ! 劉鳳に謝れ!」
「謝るのはそっちでしょぉ? 証拠も無いのに人のことを『嘘吐き』だの『敵』だの……
それに殴りかかってきたのはあんたじゃないの。私は何もしてないわよぉ?」
「コイツ、まだそんなことをッ!」
  反射的に水銀燈に伸びたセラスの手を、途中で凛が止める。
「止めなさい。それ以上やると私が相手になるわよ」
「ちょ、ちょっと! 凛はソイツのことを信じるの!? いい加減騙されてるって気付きなさいよ!!」
「冷静にいまの状況だけを見れば、セラスが水銀燈を殴ろうとしている。それだけよ。
理由が何なのかは知らないけど、それすら知らないまま、目の前で仲間が喧嘩するのを黙って見過ごす訳にはいかないわ」
「だ、だから私たちの言ってる方が……」



187 :プリズムライト 13 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:06:29 ID:hF/DeXLd
「水銀燈の言ってることの方が本当だよ!!」


  部屋中の、全ての目が僕を見つめていた。
「の、のび太君、それってどういう……?」
  ドラえもんの言葉を最後まで待たずに、僕は話し出す。
「水銀燈は、自分の妹がどうなったのか、どうして死んだのか、それを劉鳳さんに聞いていただけなんだ。
なのに、2人とも水銀燈のことを嘘吐きだ、敵だって決め付けて……
それに水銀燈の妹が死んだのって、劉鳳さんのせいなんでしょ!? 水銀燈が怒るのも当然だよ!!
なのにセラスさんは水銀燈のことを殴ろうとするし……
正しいのは水銀燈だよ! その2人は喧嘩が、殺し合いがしたいだけなんだよ!!」
  そう、一気に言い切った。

――そうだ。劉鳳さんとセラスさんより、凛さんと水銀燈の方が信じられる。
凛さんと水銀燈は、昨日はほとんど僕と一緒にいて、怪我を治してくれて、僕のことを護ってくれた。
でも、劉鳳さんとセラスさんは、ついさっき会ったばかりなんだ。
しかも、水銀燈が襲われたミオンっていう人と仲間だって言うし、
それに不二子っていう人とも……!
  口の中が乾く。喉がひりひりする。
  自分が、肩で息をしていることに気付く。
  肺の中の空気が空っぽになったみたいだった。
「の、のび太君、私たちは貴方達のことを思って……」
「じゃあ、なんで嘘吐いてたの!? 化け物だって、なんで黙ってたの!?」
  『化け物』という言葉に、セラスさんの表情が陰る。
  それと同時に、酷いことを言ってしまったのだという罪悪感で、胸が締め付けられる。
  でも、僕は悪くない。悪いのは、嘘を吐いていたセラスさんの方なんだから。


188 :プリズムライト 14 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:07:19 ID:hF/DeXLd
  重苦しい空気が病室内に充満していた。
  誰も話し出そうとしなかった。
  自分の荒い息の音だけが、いやにうるさく聞こえていた。
  でも。
「Master!」
  何処からともなく聞こえてきた無機質な声が、病室内の静寂を乱した。
  そして、レイジングハート――という名の魔法の杖に急かされたように、凛さんが話し出す。
「ありがと、レイジングハート。皆に先に言っとかなきゃならないことがあるから、それを先に言うわ。
――この病院に近づいてくる人間がいます。それも、一人で」
  凛さんの言葉に、みんなの表情が強張る。
「一人って、それって……」
「ええ、偽凛のこともあるけど、この時間帯で単独行動をとるような奴は……人を殺して回っている、凶悪な殺人者の可能性が低くない。
新たな獲物を探して徘徊しているのかもしれない」
「さ、殺人者!?」
  ドラえもんと、僕が震え上がる。
  でも、ううん、それは違う。
  僕はもっと前から震えていたんだから。
――だって、僕はずっと、人殺しかも知れない人と一緒にいたんだから……。
  凛さんが話を続ける。
「そいつは結構なスピードで、まっすぐここに向かってきてたんだけど、さっきから急にスピードが落ちたわ。
もしかしたら、戦闘の痕跡を見て警戒しているのかもしれない。……油断はできないわよ」
「ちょっとまって、そいつ、もしかしたら敵じゃなくて私たちの仲間かもしれないよ! 集合場所はここなんだし!」
「Master! The target is coming into the enter! (マスター、対象が玄関に到達します!)」
「わかった、セラス。アンタの仲間のことならさっき聞いたから大丈夫。じゃあ、私が玄関で対象と接触します。水銀燈、ついてきて!
非戦闘員と怪我人と頭に血が上ってるアンタはここで待機! でも何かあったら頼むわよ!」
  凛さんのテキパキと指示を出していく様子が、緊迫した状況を際立たせていた。
  水銀燈を連れて行くのは……やっぱり凛さんも他の2人よりも水銀燈の方を信用しているということなのだろうか。
「じゃあ、行って来るから! でも、危なくなったら私たちのことは放って、逃げて!」
  そういい残すと、凛さんは水銀燈を連れて廊下を走りだした。
  2人分の足音が、どんどん遠くへ消えてゆく。


189 :プリズムライト 15 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:08:07 ID:hF/DeXLd
  そして、病室内はまた、静かになった。

  ドクン。
――ちょっとまった。
  ドクン。
――今ここにいるのって、
  ドクン。
――僕と、ドラえもんと、
  ドクン。ドクン。
――劉鳳さんと、セラスさん。
  ドクン。ドクン。
――でも、劉鳳さんとセラスさんが、
  ドクン。ドクン。ドクン。
――僕の思っているとおりに、人殺しと仲間だったなら。
  ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。
――それどころか、人殺しそのものだったなら。
  ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。
――こんなところにいたら、殺されてしまうじゃないか!!!!
  ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン
「ど、ドラえもん、僕たちも行こう!!」
  そう叫ぶや否や、僕はドラえもんの手を掴むと、一気に病室の外へ走り出した。
「お、おいのび太君!?」
  背中で劉鳳さんが僕を呼ぶ声が聞こえたけれど、気にしない。
「の、のび太君、一体どうしたんだ!?」
  ドラえもんが叫ぶけど、あとまわし。
  いまは、とにかくあの2人と離れないといけない。それだけを考えていた。

  なんだか息が苦しくて、喉を押さえた。
  そして、喉を少し引っ掻いた。


190 :プリズムライト 15 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:09:18 ID:hF/DeXLd

                      ★


  遠坂凛と水銀燈は、病院玄関の物陰に隠れ、様子を窺っていた。
  カズマという異能者が破壊したという病院のロビーは惨憺たる光景ではあったが、瓦礫のせいで死角が多い。
  決して油断はできない。
「どう、レイジングハート? 相手は今どの辺りにいる?」
  凛がレイジングハートに問いかける。
「Around the entrance door. But I can’t find out exactly.(玄関ドアの周辺と思われます。細かい場所までは分かりません)
  そして、レイジングハートは即座に答える。
  このやり取りも何度も繰り返すうちに、ずいぶんとスムーズに行われるようになっていた。
  これを信頼の賜物、というのは過剰な表現なのだろうか。
「いい、水銀燈、いつかみたいに先制攻撃するのは無しよ。平和的な交渉が第一。一応、万が一には備えておいて欲しいけど」
「分かってるわよぉ、心配いらないわぁ」
  水銀燈が答える。こちらもスムーズに意思疎通が図られる。
  では、彼女らの信頼は如何ほどのものなのだろうか?
  この病院において、凛の水銀燈に対する信頼が大きく揺れているのは、
  もはや火を見るよりも明らかな事実である。
  だが一方で、凛は水銀燈を完全に敵だと、自分を騙し誑かす獅子身中の虫であると断定できずにいる。
――もし、もっと早く水銀燈のことを凛に打ち明けていれば、凛も素直に聞き入れてくれたのだろうか?

「……来るわよ!!」
  凛の体が緊張する。だが――
「そこに誰かいるのか!? 待ってくれ! 俺は敵じゃない! 警官だ!」
  ロビーの中に聞きなれない男の声が響き渡った。
「ちょっと、凛どうするつもり?」
「シッ、黙って!」
  男の声は続く。

191 :プリズムライト 16 ◆B0yhIEaBOI :2007/04/10(火) 23:11:40 ID:hF/DeXLd
「俺の名前はトグサ! 人を探している! 仲間がこの病院に居るはずなんだ!
こちらから危害を加えるつもりは無い! 話だけでも聞いてくれ!!」
  
「トグサ? トグサって、セラス達が言ってた仲間の中にいたわよね?」
「確かにね。でも、偽名だってこともあるわよ? ついさっき自分の名前を使われたの忘れたのぉ?」
「うるさいわね、分かってるわよ! でも、タイミングが良すぎる。やっぱり本人の可能性も……」
  だが、そんな凛と水銀燈が躊躇するのを見越したかのように、男が先手を打ってきた。
「わかった。ほら、俺が先に姿を出す。ほら、手を上げたぞ。危害は加えない。だから話だけでも聞いてくれ!」
  物陰から窺う限り、確かに男は両手を上げて、無防備な姿を晒している。
  一見して、敵対心が無いのが見て取れた。
  少なくとも、凛にとっては。
  凛が、男に呼びかける。
「わかった。私は凛。私も無駄に争うつもりは無いわ。待ってて、今そっちに――」
  そう言いながら凛が物陰から姿を現した瞬間だった。
  凛は、男の顔が見えなかった。東向きの玄関から差し込む朝日に包まれて、男の顔が光の中に紛れてしまっていたからだ。
  でも、男は凛の顔が良く見えたに違いない。
  そして、凛が太陽光に目を細めている間に。

  男は、凛めがけて発砲した。

  その銃声に僅かに遅れ、水銀燈の黒羽が男に襲い掛かる。
  そのおかげで、男は次弾を発射する暇なく物陰に退いた。
「ぐッ、やっぱりアイツ、敵だったみたいね……!」
「人の言葉をホイホイ信じるからそうなるのよ。おばかさぁん」
  物陰に身を潜めた凛は、痛みに顔を顰めながら右肩に触れる。
  大丈夫、バリアジャケットのお陰て貫通はしていない。
  でも、右手が痺れる。衝撃を完全には吸収仕切れなかったようだ。
  これでは、当たりどころによっては致命的な傷を負ってしまうかもしれない。
「でも、どういうことなの!? あいつは確かにトグサと名乗ったけど……やっぱり偽名だったの?」
「かもねぇ。それとも、あのトグサって奴がもともとそういう危険な奴なのかもしれないわよぉ?
気付かない? アイツ、前にここ、病院で戦った奴じゃないの?」
「……そういえば、あんな顔してたっけ。武器も銃だった。
それに、アイツいい腕してるわね……初めから肩を狙って撃ってた。あの僅かな間で正確に」
「さしずめ、戦果を上げて根城に戻ってきた、ってところじゃないのぉ?
油断してると、貴方も撃墜マークの一つになっちゃうわよぉ?」
「冗談!」

192 :プリズムライト 17:2007/04/10(火) 23:34:18 ID:/NZmozhg
「……なるほどね。どっかで見た格好だとは思ったワケだわ。でもあの銃の腕は厄介ね。迂闊にここから出られない」
「そうねぇ。どうしたものかしら……」
  
  凛は、ギリッと歯を食いしばる。
「……こんなところで……私は止まってる場合じゃないのよ。」
  凛の口から漏れるその言葉は、独り言なのか、それとも凛の決意表明なのか。
「私の熾した火を、絶対消させたりなんかしない……絶対に!」
  そして、凛が私――レイジングハートを強く握り締めた。
――さあ、行こう。マイマスター。

  そして、その私たちをを嘲笑うかのように、ギガゾンビの姿が空に浮かび上がった。
  6度目の放送が響き渡る――


【D-3 病院 2日目・早朝】
遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:魔力小消費、疲労、水銀燈と『契約』、右肩打撲
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(アクセルモード・全弾再装填済)@魔法少女リリカルなのは
 バリアジャケットアーチャーフォーム(アーチャーの聖骸布+バリアジャケット)
 デバイス予備カートリッジ残り33発
[道具]:支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、ヤクルト一本
:エルルゥのデイパック(支給品一式(食料なし)、惚れ薬@ゼロの使い魔、たずね人ステッキ@ドラえもん、
:五寸釘(残り30本)&金槌@ひぐらしのなく頃に
:市販の医薬品多数(胃腸薬、二日酔い用薬、風邪薬、湿布、傷薬、正露丸、絆創膏etc)、紅茶セット(残り2パック)
[思考]基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
0:襲撃者(トグサ)の撃退。
1:水銀燈を監視する
2:劉鳳とセラスの治療を続行(だが、2人に僅かな疑惑を持っている。)
3:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
4:セイバーについては捜索を一時保留する。
5:リインフォースとその持ち主を止める。
6:自分の身が危険なら手加減しない。
[備考]:
※レイジングハート同様、水銀燈に対して強い疑心を持ち始めました。
ただし、水銀燈を信じたいという気持ちもあり、中途半端な状態です。
※緑の髪のポニーテールの女(園崎魅音)の判断は保留。
※夜天の書の持ち主が水銀燈ではないかと疑い始めています
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
[推測]:
ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い(推測)
膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能(推測)
首輪には盗聴器がある
首輪は盗聴したデータ以外に何らかのデータを計測、送信している

193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 23:37:14 ID:/NZmozhg
【水銀燈@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:服の一部損傷、消毒液の臭い、魔力小消費、疲労、凛との『契約』による自動回復
[装備]:真紅のローザミスティカ
[道具]: デイパック、支給品一式(食料と水はなし)
  ストリキニーネ(粉末状の毒物。苦味が強く、致死量を摂取すると呼吸困難または循環障害を起こし死亡する)
  ドールの螺子巻き@ローゼンメイデン、ブレイブシールド@デジモンアドベンチャー、照明弾
  ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON、夜天の書(多重プロテクト状態)
  くんくんの人形@ローゼンメイデン、ドールの鞄@ローゼンメイデン 、透明マント@ドラえもん
[思考]基本:魔力補給を考慮して、魔力を持たない強者を最優先で殺す。
1:凛が偽名を使っていたことや見解の相違を最大限利用して仲たがいさせる。
2:チャンスがあれば誰かを殺害。しかし出来る限りリスクは負わない。
3:凛との『契約』はできる限り継続、利用。殺すのは出来る限り後に回す。
4:ローザミスティカをできる限り集める。
5:凛の敵を作り、戦わせる。
6:あまりに人が増えるようなら誰か一人殺す。劉鳳に関しては、戦力にするか始末第一候補とするか思案中
7:青い蜘蛛にはまだ手は出さない。
[備考]:
※透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。また、かなり破れやすいです。
※透明マントとデイパック内の荷物に関しては誰に対しても秘密。
※レイジングハートをかなり警戒。
※デイパックに収納された夜天の書は、レイジングハートの魔力感知に引っかかることは無い。
※夜天の書装備時は、リインフォース(vsなのは戦モデル)と完全に同一の姿となります。
※夜天の書装備時は、水銀燈の各能力がそれと似たベルカ式魔法に変更されます。
真紅のローザミスティカを装備したことにより使用魔法が増えました。
※リインフォースは水銀燈に助言する気は全くありません。ただし馬鹿にはします。
※水銀燈の『契約』について:省略
※水銀燈ver.リインフォースの『契約』について
魔力収奪量が上昇しており、相手や場合によっては命に関わります。

※水銀燈の吐いた嘘について。
名前は『遠坂凛』。
病院の近くで襲われ、デイバックを失った。残ったのはドールの鞄とくんくん人形だけ。
一日目は、ずっと逃げたり隠れたりしていた。


【ドラえもん@ドラえもん】
[状態]:中程度のダメージ、頭部に強い衝撃
[装備]:虎竹刀
[道具]:支給品一式(食料-1)、"THE DAY OF SAGITTARIUS III"ゲームCD@涼宮ハルヒの憂鬱
[思考・状況] ジャイアンの死にかなり動揺したものの、のび太がいることもあり外見上は落ち着けている。
1:の、のび太くん!?
2:アルルゥを探す
3:自分の立てた方針に従い首輪の解除に全力を尽くす
4:
基本:ひみつ道具と仲間を集めてしずかの仇を取る。ギガゾンビを何とかする。
[備考]
※Fateの魔術知識、リリカルなのはの魔法知識を学びました。
※凛とハルヒが戦ってしまったのは勘違いに基づく不幸な事故だと思っています。
偽凛については、アルルゥがどうなっているか分かるまで判断を保留。


194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 23:38:36 ID:/NZmozhg
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:ギガゾンビ打倒への決意、左足に負傷(行動には支障なし。だが、無理は禁物
[装備]:強力うちわ「風神」
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料-1)、翠星石の首輪、エンジェルモートの制服
[思考・状況] 精神が不安定。疑心暗鬼に陥り始めている
1:劉鳳とセラスから離れたい。
2:ドラえもん達と行動しつつ、首輪の解除に全力を尽くす。
3:なんとかしてしずかの仇を討ちたい。
[備考]
※劉鳳とセラスを殺人者だと思い込んでいる。
※凛もひょっとしたら? と思い始めている。ただし、偽凛は敵だと判断している。
ハルヒへの反感は少し緩和。


【劉鳳@スクライド】
[状態]:全身に重いダメージ、若干の疲労が残る。
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(-3食)、SOS団腕章『団長』、ビスクドール
[思考]
基本:自分の正義を貫く。
仲間、闘う力のない者を守ることを最優先。
悪の断罪は、守るべき者を守るための手段と認識。
1:のび太とドラえもんを守る(対水銀燈を含む)
2:病院で凛の手当てを受ける。
3:ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
[備考]
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※朝倉涼子については名前(偽名でなく本名)を知りません。
※凛は信用している
※水銀燈は全く信用していない。自分達を襲った犯人もひょっとしたら? と思っている
ジャイアンの死の原因となった戦闘は自分の行為が原因ではないかと思っています。


【セラス・ヴィクトリア@ヘルシング】
[状態]:全身打撲、裂傷及び複数の銃創(※ほぼ全快)、
[装備]:対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(残弾:6/6発)、アーカードの首輪
 13mm炸裂徹鋼弾×36発、スペツナズナイフ×1、ナイフとフォーク×各10本、中華包丁
  銃火器の予備弾セット(各40発ずつ、※Ak-47、.454スカール、
 S&W M19を消費。デバイスカートリッジはなし)
[道具]:デイバッグ、支給品一式(×2)(メモ半分消費)(食料-2)、糸無し糸電話
[思考]
基本:トグサに従って脱出を目指す。守るべき人を守る。
0:銃声……!?
1:劉鳳、のび太、ドラえもんの護衛(対水銀燈と他の優勝狙いの参加者)
2:劉鳳のフォロー。
3:食べて休んで回復する。
4:病院を死守し、トグサ達を待つ。
[備考]
※セラスの吸血について:略
※現在セラスは使役される吸血鬼から、一人前の吸血鬼にランクアップしたので
初期状態に比べると若干能力が底上げされています。
※凛を全面的に信用しています。偽凛は敵だと判断。水銀燈は敵だと判断し、要警戒だと思っている


195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 23:39:46 ID:/NZmozhg
  トグサは、改めて自分の武器を握り締める。
  銃の残弾は5発、リロードのロスを考えると、乱射するだけの余裕は無い。
  一発で無力化しようと試みたのだが……相手の特殊な防弾具と仲間の存在から、失敗に終わってしまった。
――今のが少佐にばれたら、またどやされちまうな。
  だが、自嘲気味に口元を緩めるトグサの目は、笑わない。

  トグサは、この病院に来るまでに無数の戦闘の痕跡を目にしてきた。
  そして、この病院の玄関もまた、盛大に破壊されている。
  そして、その戦闘痕は、トグサ仲間のもの――劉鳳やセラスとは、別の何者かによるもののようだった。
  ということはつまり、自分の知らない何者かがここで戦闘行為を行った、と見て間違いない。
  さらに問題なのは、トグサの仲間……劉鳳たちは先に病院へ向かったはずだし、
  ドラえもんとのび太の2人もここに居たはずなのだ。
  だが、その病院で待っていたのは、戦闘のあった跡と、かつて自分たちを襲った二人組。
  トグサは確信していた。
  『俺の仲間は病院でこの2人と出会い、戦闘行為に巻き込まれたのだ』と。
  以前にもこの2人組は、問答無用でトグサ達に襲い掛かってきた。
  ならば、この2人組みがトグサの仲間と出くわしたなら、どうなるか?

――こいつらに躊躇など無用だ。
  なんとかこの2人組を撃退し、仲間の無事を確認しなければならない。
  それに、俺が時間を稼げばトウカ達が病院に来るかもしれない。
  今俺にすべきことは……ッ!!
  「クソっ、皆、無事でいてくれよ……!?」

【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾5/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク
[道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S&W M19の弾丸(34発)、警察手帳(持参していた物)
   技術手袋(使用回数:残り16回)@ドラえもん、首輪の情報等が書かれたメモ1枚(内部構造について追記済み)
   解体された首輪、フェイトのメモの写し
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:以前襲撃してきた「2人組」を撃退。その上で病院内に仲間がいないか探索。
2:病院にて@ドラえもん、のび太、劉鳳、セラス、ジャイアンと合流。カズマの行動についての経緯を問い質す。
Aハルヒとアルルゥがいるかを確認。いないようなら彼女らを捜索。
3:病院に人が集まったら、改めて詳しい情報交換を行う。
4:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。
5:ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。
6:情報および協力者の収集、情報端末の入手。
7:エルルゥの捜索。
[備考]
※風、次元と探している参加者について情報交換済み。


196 :プリズムライト(修正):2007/04/10(火) 23:41:19 ID:/NZmozhg
>>192
以下の二行は不要。

「……なるほどね。どっかで見た格好だとは思ったワケだわ。でもあの銃の腕は厄介ね。迂闊にここから出られない」
「そうねぇ。どうしたものかしら……」


197 :プリズムライト(修正):2007/04/10(火) 23:53:07 ID:/NZmozhg
【トグサ@攻殻機動隊S.A.C】
[状態]:疲労と眠気、SOS団団員辞退は不許可
[装備]:S&W M19(残弾5/6発)、刺身包丁、ナイフとフォーク×各10本、マウンテンバイク
[道具]:デイバッグと支給品一式×2(食料-4)、S&W M19の弾丸(34発)、警察手帳(持参していた物)
   技術手袋(使用回数:残り16回)@ドラえもん、首輪の情報等が書かれたメモ1枚(内部構造について追記済み)
   解体された首輪、フェイトのメモの写し
[思考]
基本:情報を収集し脱出策を講じる。協力者を集めて保護。
1:以前襲撃してきた「2人組」を撃退。その上で病院内に仲間がいないか探索。
2:病院にて@ドラえもん、のび太、劉鳳、セラス、ジャイアンと合流。カズマの行動についての経緯を問い質す。
Aハルヒとアルルゥがいるかを確認。いないようなら彼女らを捜索。
3:病院に人が集まったら、改めて詳しい情報交換を行う。
4:機械に詳しい人物、首輪の機能を停止できる能力者及び道具(時間を止めるなど)の探索。
5:ハルヒからインスタントカメラを借りてロケ地巡りをやり直す。
6:情報および協力者の収集、情報端末の入手。
7:エルルゥの捜索。
[備考]
※風、次元と探している参加者について情報交換済み。



  トグサは、改めて自分の武器を握り締める。
  銃の残弾は5発、リロードのロスを考えると、乱射するだけの余裕は無い。
  一発で無力化しようと試みたのだが……相手の特殊な防弾具と仲間の存在から、失敗に終わってしまった。
――今のが少佐にばれたら、またどやされちまうな。
  だが、自嘲気味に口元を緩めるトグサの目は、笑わない。

  トグサは、この病院に来るまでに無数の戦闘の痕跡を目にしてきた。
  そして、この病院の玄関もまた、盛大に破壊されている。
  そして、その戦闘痕は、トグサ仲間のもの――劉鳳やセラスとは、別の何者かによるもののようだった。
  ということはつまり、自分の知らない何者かがここで戦闘行為を行った、と見て間違いない。
  さらに問題なのは、トグサの仲間……劉鳳たちは先に病院へ向かったはずだし、
  ドラえもんとのび太の2人もここに居たはずなのだ。
  だが、その病院で待っていたのは、戦闘のあった跡と、かつて自分たちを襲った二人組。
  トグサは確信していた。
  『俺の仲間は病院でこの2人と出会い、戦闘行為に巻き込まれたのだ』と。
  以前にもこの2人組は、問答無用でトグサ達に襲い掛かってきた。
  ならば、この2人組みがトグサの仲間と出くわしたなら、どうなるか?

――こいつらに躊躇など無用だ。
  なんとかこの2人組を撃退し、仲間の無事を確認しなければならない。
  それに、俺が時間を稼げばトウカ達が病院に来るかもしれない。
  今俺にすべきことは……ッ!!
  「クソっ、皆、無事でいてくれよ……!?」

198 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/13(金) 19:38:30 ID:y0roHPk5
夜明け前。
夜空に浮かぶ漆黒の雲は、徐々にその色合いを変え始めていた。
やがて、太陽が山間から顔を出し、世界は変貌を始める。
光線が山の稜線に沿って空を分断し、空は一面の茜色に染まってゆく。

朝が来たのだ。

生きとし生けるものが目覚め、行動を始める朝が。
登ってゆく太陽は、命の輝きと温もりを、見るものに感じさせる。
だが、赤い太陽を背に浮かび上がった黒い影は、集められた者達にとって、真逆の存在だった。
悪鬼が読みあげる死者の名。それは、悲劇と絶望の象徴。
もう十分だ。
聞きたくない。耳を塞ぎたい、
だが、生者達は不安を募らせ、怒りに身を震わせながらも、耳をすまさずにはいられない。
どうかもうこれ以上はと、頼りにならぬ神に祈りながら、固唾を呑んで待ち続ける。


▼ ▼ ▼


グゥゥウッッツド、モォォオニィィィングッッ!! 
清清しい朝だな、畜生諸君!! 
昨夜は、良い寝心地であったろう!? 古来から、下等な人間にとって他人の不幸は蜜の味だ。
他人の血肉を喰らい、屍を枕にして眠った、野蛮極まる劣等人種諸君は、さぞかし良い夢が見られたことだろう。
最っ高にハイ! という気分なのではないのか!?
さあ、遠慮はいらん。
特別に許可を与えてやるから、私を拝め! 
貴様等に、極上の快楽を味わう機会を作ってやったのは、この私なのだからな!
私に対する感謝の念を忘れることなく、殺し合いに励むように!!
 
――では、これから禁止エリアを発表する!
食用豚より細胞の少ない貴様等の脳味噌ではもう限界だろうから、1ついいことを教えてやろう。
覚えきれないときは、『紙に書いて』覚えるものなのだ。
知らなかったろう? 
愚劣極まる貴様等をみかねて、このギガゾンビ様がわざわざ知識を分けてやったのだ。
必ず実行するのだぞ!!
クークックッククックック…………。


199 : ◆WwHdPG9VGI :2007/04/13(金) 19:39:34 ID:y0roHPk5
では発表する。

禁止エリアは――

7時より  H-7
9時より  A-7
11時より  B-6

――だ!

そして死亡者だが――

剛田武
ぶりぶりざえもん
次元大介
シグナム
アルルゥ
グリフィス
石田ヤマト

――以上7名!

フフフ……フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ
一夜で21人!!  残りわずか22人!!
やりおった! やりおったな、貴様等!!
嬉しいか? 楽しいか? 
この血に飢えた殺人鬼どもめ!!
何? 嬉しくて楽しくてたまりませんだと?
そうであろう、そうであろう。
貴様等の本性が鬼畜の類でなければありえぬ数だからな。
かまわん! いっっ向にかまわん! ここに貴様等を縛るものは、何も無い!!
衝動を飲み込むな! 解き放て!!
本能の赴くままに行動し、欲望のままに、ぶちまけるがいい!!
斬り殺せ! 撃ち殺せ! 殴り殺せ! 蹴り殺せ! 刺し殺せ! 焼き殺せ! 潰し殺せ!
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!!
奪い合って、憎み合って、裏切り合って、欺き合って、狂い合って、喰い合って――

死ねっ!!

アーハッハッハッハ!! ヒィィィィハッハァ―――――ッツ!!


▼ ▼ ▼


けたたましい狂笑を残し、影は消え失せた。
影が消えた後も太陽は登り続ける。
強さを増した光が世界を満たしていく。
そして――


デスゲームの1日が始まる。

200 :tribute 1/4  ◆S8pgx99zVs :2007/04/15(日) 01:42:38 ID:ZhygO6ct
死者の名前を告げ哄笑を空に響かせて、ギガゾンビは日が昇ったばかりの薄紫の中に消えた。
その足元には女――峰不二子が一人。
木陰へと身を潜め、今しがた得た情報を手持ちの地図やメモへと書き込み考え込んでいる。


――次元大介が死んだ……か。
ギガゾンビによって読み上げられた七人の死者。その中に彼の名前があった。これでルパン一味は
自分を残して全員が死んだことになる。
だが、感傷はない。むしろ、自分を知る人間が減ってありがたいぐらいだ。
思ったとすれば、ルパン一味がこんな事態に巻き込まれ最後を迎えたということに意外性を感じた
ぐらいだが、それは今考えることではない。今必要なのは己の身を守るための情報だ。


峰不二子は次元大介と死んだ仲間達のことを頭から振るい出し、思考を進める。


――ぶりぶりざえもん。
劉鳳と分かれる直前に合流し、彼と同行していたはずの喋る豚。
豚が死んだと言うのは峰不二子にとって重要な問題ではない。重要なのは同行しているはずの劉鳳だ。
誰かに襲われた結果、豚だけが死んでしまったのだろうか? まさか劉鳳が殺したということはないだろう。
ともかく、彼は今一番会いたくない人物である。
どこかで襲われたのならまだ病院には辿り着いてはいないかもしれない。だが、もし着いていたなら
確実に自分は彼の言う”断罪”の対象となっているだろう。だが、どちらなのかは判らない……。

峰不二子は俯き小さな溜息をついた。
どうしてあんな化物に追われるはめになるのか。しかも化物は劉鳳だけではない。カズマという男もだ。
拳銃では歯が立たないだろう。かといって、デイバッグの中の二本のRPGでもそれは難しそうだ。
威力は申し分ないが、そもそも彼らに当てることはできないだろう。それに使えば非常に目立つ。
今の自分の方針上、無闇に人を集めたりしたくはない。これを使うのは最後の最後だ。


ともかく彼らから逃げ続けて自滅や相討ちを待つしかない。そう結論付けて峰不二子は思考を次へと進めた。


――アルルゥ……、それと石田ヤマト
ヤマトというのは自分が病院から連れ去った少年の名前だ。同じくその場で撃ち殺した少年が彼を
そう読んでいた。
そして、ヤマトという少年がアルルゥ、ハルヒという名前は口にしていたことを覚えている。
具体的に誰を指すかは解らないが、あそこにいた二人の少女の名前であることは想像に難くない。
だとすれば、あの後あそこでまた何かの騒動があったということだろうか……?
カズマという化物は自分を追ってきていたから、あそこには少年少女しか残っていなかったことになる。
もし襲われればひとたまりもないだろう。

だからといって、自分もそこへ戻ろうなどとは思えない。先の劉鳳やカズマが戻って来ている可能性も
あるし、何より彼らの荷物は自分がすでに全部頂戴したのだ。メリットがない。
それに、橋を渡り病院の方へと向かった三人組。あれと会う可能性もある。

見逃した……、ではなく手を出せなかったあの三人組。
一人は獣のような耳をした剣士。もう一人はライフルを構えた少女。そして学生服の少年。
彼女達はその次に襲った者達とは逆に周囲を警戒しており、結果こちらの存在を気取られた。
無理に襲えば返り討ちにあっていただろう。
もしかしたら、アルルゥという少女を殺したのは彼女達かも知れない。なら尚更病院へ行くと言う選択は
考えられない。

201 :tribute 2/4  ◆S8pgx99zVs :2007/04/15(日) 01:43:31 ID:ZhygO6ct
病院――西へと向かう選択肢は消えた。ならば逆に東はどうか……?

これも考えられない。先刻、奇襲したあの二人組。その特に女の方。あんなトリガーハッピーと
やりあうのはもうゴメンだ。
ああいう自らの命を顧みない人間を相手にしていたのでは、こちらが上手であっても命が危ない。
幸い傷を負わせることには成功した。ならば他の人間に特攻して自滅するのを待った方が得策だ。

あの女と忌々しい少年。二人の急いだ足取りからどこか東の方へ目的があったであろうことが解る。
それが人か物かは知れないが、無理に追って藪から蛇を出すこともない。


西も東も消えた。ならば次は南はどうか……?

南端に広がる遊園地――そういえばそこが出発地点でもあった――は、隠れる場所には適さない。
では、南西の橋を経て孤立した場所へ向かうのはどうか……?
そこなら申し分ないように思える。それに駅前の崩れたビルにいくつかの荷物が埋まっていることも
知っているのだ。
……だが、残念ながらそれも諦めざるを得ない。なぜなら、病院へと向かう途中で出会った少女と
人形の二人組――彼女達にそちらへと大切な物を持った劉鳳が去ったと言ってしまっている。
こんなことならば、正直に劉鳳を追わせておけばよかったが、今更言っても後の祭りにすぎない。


ここに来てからつき続けている嘘――自らの処世術。それが今の自分を窮地に追い込んでいる。
だがしかし、ここまできたら毒皿で行くしかない。泥を啜っても生き残れば勝ちなのだ。死んでしまえば
奇麗事もプライドも何もない。


南へ向かうという選択肢も消えた。ならば北か? それともやはりここに留まるか?

北へ――つまり山間の中へと進むにあたって懸案事項となるのが、件のカズマという存在だ。
彼はヤマトを押し込んだ禁止エリア(A-4)の前で自分を見失っている。ならば、そこから山の中へと
自分が逃げたと推測することは容易だろうし、今頃山中を跳び回っている可能性もある。

――だが。
不確定だが、彼が自分を認識していない可能性もある。あの時はマスクこそ脱いでいたがまだ
銭型警部の衣装を着ていたし、月明かりはあっても暗かった。

――それに。
今回新たに追加された禁止エリア。その中の二つであるA-7とB-6が山間を二つに割り、さらに
禁止エリアで囲まれたA-6を死に地にしている。分断されている東側は端に接しているということもあり、
さらに一つか二つ禁止エリアに指定されれば閉じ込められてしまうという状況だ。

山中は勾配もあり移動に時間がかかる。こんな状況で好き好んで入り込んでくる物好きはいない。
――逆に言えば人を避けるには絶好というわけだ。
先に挙げたようなリスクもあるが、市街地を劉鳳や他の化物に追われながら逃げ回るよりかは
遥かにましだ。自分が取り得る手段はもう少ない。ならばここは降りの一手に限る。


峰不二子はもたれていた樹から背中を浮かせると、山頂の方へと向けて足を進めた。

202 :tribute 3/4  ◆S8pgx99zVs :2007/04/15(日) 01:44:24 ID:ZhygO6ct
すでに禁止エリアに指定されているC-5の南側を回り込み、東へと峰不二子は足を進める。

「……あれは」
峰不二子の眼下に見えるのは倒壊し、瓦礫の山となったホテルの成れの果てだ。
改めてこの殺し合いに自分が加わることの馬鹿馬鹿しさを確認すると、溜息一つを残して彼女は
さらに山の中へと歩を進めた。


まだ陽の届かない薄暗い木々の間を進みながら峰不二子は考える。ある一つの賭けについて。

もう間もなく禁止エリアに囲まれて死に地と化すA-6。そこに入ってしまうという手がある。
もちろん普通に考えればそれは自分を追い詰めることに他ならないが、自分にはある情報がある。

『禁止エリアに入ってから首輪が爆発するまでには30秒の猶予がある』

荷物に紛れていたメモに書かれた真偽不明の情報だが、もしそれが本当ならば禁止エリアと
禁止エリアの触れ合う角の部分なら、その30秒で抜けられるかもしれない。

……どうするか?



禁止エリアに囲まれた中に逃げ込む――大きなメリットがある手ではあったが、山の低い部分を
北上し、川に沿って進路を北東に変える頃には、峰不二子はその考えを捨てていた。
一つに、A-7とB-6が触れ合う角には、現在沿って歩いている川が流れていること。
一つに、市街地の中ならともかく自然の地形である山の中ではエリアの境界が判別しにくいこと。
一つに、そもそもメモに書かれていた情報が信用できないこと。逆に罠の可能性もありうる。

そしてなにより、彼女は温泉に入りたかったのだ。

先程の戦闘で少年にかけられたチリソースは全身に付着しており、その刺激――いやそれよりもその
匂いが彼女を不快にさせていた。
そんな時に、向かう先に温泉があるというなら彼女ならずともそこへ行こうとするのは無理もないだろう。

とはいっても慎重な峰不二子である。彼女は真っ直ぐに温泉に向かうなどという真似はせず、まずは
禁止エリアに指定されているA-7エリア――その北東の端に腰を落ち着けた。
すぐに向かっては、もしかしたら篭っていた人間と鉢合わせするかもしれないからだ。


陽光を反射する水面の傍ら、片手に時計。もう片手で粘る髪を弄りながら峰不二子はゆっくりと時が
過ぎるのを待っている……。

203 :tribute 4/4  ◆S8pgx99zVs :2007/04/15(日) 01:45:18 ID:ZhygO6ct
 【A-7(北東の端)/2日目・午前】

 【峰不二子@ルパン三世】
 [状態]:顔面及び全身に激辛のチリソースが付着、テキオー灯の効果持続中
 [装備]:コルトSAA(弾数:6/6発-予備弾6発) 、コルトM1917(弾数:6/6発-予備弾無し)
 [道具]:
  デイバック×8、支給品一式×7(食料6食分消費、水1/5消費)、
  鶴屋の巾着袋(支給品一式と予備の食料・水が入っている)、
  RPG-7×2(榴弾×3、スモーク弾×2、照明弾×1)、クロスボウ、タヌ機(1回使用可能)
  暗視ゴーグル(望遠機能付き・現在故障中)、インスタントカメラ×2(内一台は使いかけ)
  高性能デジタルカメラ(記憶媒体はSDカード)、携帯電話(各施設の番号が登録済み)
  ダイヤの指輪、のろいウザギ、ハーモニカ、デジヴァイス、真紅のベヘリット
  ホ○ダのスーパーカブ(使用不能)、E-6駅・F-1駅の電話番号のメモ、
  トグサが書いた首輪の情報等が書かれたメモ1枚
  【薬局で入手した薬や用具】
  鎮痛剤/解熱剤/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
  抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ/注射器)/虫除けスプレー
  ※種類別に小分けにしてあります。
 [思考]
  基本:最後まで生き残って優勝する。安全を最優先。利用できるものはなんでも利用する。
  1:9時直前までA-7エリアで粘り、それから温泉へと向かう。
  2:温泉に着いたら身体と服に付着したチリソースを洗い流し、くつろぐ。
  3:次の放送まで身体を休め、次の手を考える。
  4:弱っている者や確実に自分より弱いと思える人間を見つけたら殺害する。(それでも慎重に)
  5:すでに出会っている人間とは極力接触を持たないようにする。
   ※劉鳳、水銀燈、凛、ハルヒ、のび太、ドラえもん、カズマ、レヴィ、ゲイナー
  6:劉鳳やカズマなどの人間離れした連中とはやりあわない。
  7:F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
 [備考]
  ※E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
  ※「なくても見つけ出す!」にて、ドラえもんたちがしていた会話の一部始終を盗聴していました。
  ※着せ替えカメラの効果が解除され、元の格好に戻っています。

204 :運命に反逆する―――――――!! ◆fsB2AEW3Cw :2007/04/15(日) 20:13:55 ID:pO3m0eaZ
映画館を出たカズマはこれから自分が追う人間のことを考えていた。
(あいつの逃走ルートで山は無い。
トラックがねえのに山まで行くのは労力の無駄だ。ああゆう狡い野郎が無駄を好むはずもねえ)
こういう事は相方の仕事であるが、眼の前で死んだ二人の仲間の仇を討つためにも、便利屋として動いてた彼の経験を働かせている。
(橋も無い。
待ち伏せされてたら逃げ場もねえし、あいつにとっちゃリスクが高すぎる場所だ。これで北と南西もない
だとするとあいつが行ったのは限定された南方面。
ぶっ壊された遊園地には変人ぐらいしか出ねぇだろうから、ある意味危ねえ、これも無し)
誘拐犯の行動を考えると、見た中では殆どが自分の命を優先していた。
となると消去法で考えていけば少々苦しいが、納得できる理由はカズマにも思いつく。

「考えられるのは南東・・・!」


205 :運命に反逆する―――――――!! ◆fsB2AEW3Cw :2007/04/15(日) 20:15:46 ID:pO3m0eaZ
カズマは珍しく頭を使って考え(合っているかは別として)、相手の進路を絞り市街地を通り、森を通り南方へと移動し始めた。
その足取りは一歩一歩重い。疲れが手伝って体が思うように動かないからだ。
まるで全身が泥沼に埋まってしまったようなダルさ。だというのにたぎる闘志が眠ることを許さない地獄。
それでも何とかD-4の小川まで移動したとき、頭上の闇は薄まっていた。

が、意思とは反しここにきて、体が前のめりに倒れこんでしまう。



206 :運命に反逆する―――――――!! ◆fsB2AEW3Cw :2007/04/15(日) 20:18:00 ID:pO3m0eaZ

映画館での僅かな休憩で隠れていた疲れが溢れ出したのか、今更レヴィによる攻撃の影響か。それとも小川を見た瞬間気が緩んだのか。
いずれにせよ足は震え、自由が利くのは両腕だけだ。
(・・・情けねえ)
動かない体に右の拳で鞭を入れようとした矢先、放送が始まった。

赤子のようにわめき散らし、狂った仮面は消えた。
カズマは忌々しい放送を聴き、理解した。
豚で、恩着せがましかったが、憎めないぶりぶりざえもん。
顔も声も違うのに、どこか自分の家族に似た少女。アルルゥ。
短い付き合いだったが知った一人と一匹が
鶴屋のように、君島のように、兄貴のように、なのはのように、

――――――かなみのように

俺の知らない所で死んじまった。
結局この放送の前からギガゾンビをぶちのめすって夢物語は、誘拐犯が出端を挫いてくれたけどよ…

「だけどよ・・・今はそんなことでなよってる暇はねぇーんだよっ!!」

それでもカズマは折れず、瞳は一層輝きを増し、魂を燃やし続ける。
ギガゾンビが最も嫌悪するその瞳で、夢物語を掴み取るまでは。

「刻んでやるよ!ぶりぶりざえもん、アルルゥ!!」

激情に身を任せ吼えた。
天を仰げば薄い黒は消え、青のみが広がっていた。

次に考えたのは病院で何かが起きていること。
思い出すのは鶴屋の死。
もしかしたらあの変装ヤローは俺を撒いたことを確認して、再び病院に戻ったのではないか?
いや病院とは行かないまでも、付近で救援目的でやってきた非戦闘員を狩って、どっかの猪野郎にでも吹き込んでいるんじゃねぇのか…!

(劉鳳・・・!)

脳裏に浮かぶのは絶影でドラえもんを、のび太を、そしてアルルゥを痛めつける劉鳳の姿。
湧き上がってくるものはあくまで仮定の、躍らされている劉鳳に対する怒り。しかしカズマにとっては充分説得力のあるイメージだ。
夢でも見たネイティブアルター狩りの時のように、こちらの事情を理解しようともせずに狩る宿敵の姿を想像するのは容易だった。
「はっ…だったら尚更こんな所で呑気に寝てる場合じゃねえな…」
気がつけば足の震えは治まっていた。
カズマは立ち上がる。何かが起きた病院へ戻るために。

もう何も考える必要は無い
俺がやるか、死ぬかだ



207 :運命に反逆する―――――――!! ◆fsB2AEW3Cw :2007/04/15(日) 20:19:44 ID:pO3m0eaZ

病院でドラえもん達と自分の帰りを待っていたアルルゥ。

死んだ。

太一の怪我を治すために動いていたぶりぶりざえもん。

死んだ。

死の運命とは強く生きた彼らにそうであったように、皆が共有するもの。
それは俺にもあてはまるのか?
カズマは急ぐ中で最後に自分に問いかけ、すぐに否定する。
俺は認めない。
自分には逃れられない死の運命。だが逃げるなんて柄にも無い。それなら真っ向からぶつかり合って破壊するまでと考えているからこそ、足掻き抗い続ける。
「証明したいんじゃねぇ…するんだよ!」
もう減速はしない。余計なタイムロスは拳の勢いを僅かにでも弱め軽くする。
だからアクセル全快ブレーキ破壊。
クーガーでさえも舌を巻くような速さで、ありったけの力を込めたこの拳を

ギガゾンビに

邪魔する奴に

死を掲示する運命に叩きつけてやる

ロストグラウンドでは、邪魔をする奴はだれかれ構わずぶちのめした。
それはこの舞台でも変わらず、運命だろうと例外ではない。
斯くして彼は運命に喧嘩を売り、病院へ向かう。

刻んだ名前、想いによって創られた一本道。
青年は現実を踏みしめ、果てしない未来へと手を伸ばす
その果てに待っているのは運命か、それとも―――

【D-4/2日目/午前】
【カズマ@スクライド】
[状態]:中程度の疲労、全身に重度の負傷(一部処置済)、西瓜臭い
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:気にいらねぇモンは叩き潰す、欲しいモンは奪う。もう止まったりはしねぇ、あとは進むだけだ!
1:病院の近くで変装ヤローを見つけ次第ぶっ飛ばす!
2:ドラえもんやのび太とは一旦合流。
3:気にいらねぇ奴はぶっ飛ばす!
4:レヴィにはいずれ借りを返す!

[備考]
いろいろ在ったのでグリフィスのことは覚えていません。


208 :修正 9  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:12:24 ID:KU1caBQr
「そうやって、真紅も殺したの?」

「何ッ!?」
  水銀燈が呟いた一言で、劉鳳さんが止まった。
  劉鳳さんが真紅を殺した……? あれ……?
「貴方が真紅の遺体から何か――ローザミスティカを盗ったって言うのは本当だったのね」
「貴様……貴様も真紅を知っているのか?」
「真紅はね……私の妹よ。私が聞きたいって言ったのは、真紅のことなのよ」
「……!」
  水銀燈が喋るにつれて、劉鳳さんの勢いが目に見えて弱くなっていくようだった。なんだか顔も青い。
  よっぽど劉鳳さんが話したくないことなんだろうな、と思った。
  そう思いながらも、僕は記憶を掘り返す。
  確か……真紅って、ドラえもん達と一緒にいたんだよね?
  そして、女の人と戦って、死んだんだ……ってドラえもん達は言ってたはずだ。
  劉鳳さんが殺したっていうのは……違うんじゃないのかな??
  でも、それなら劉鳳さんもちゃんと『違う』って言えばいいのに……
  そう思う僕に答えるように、劉鳳さんが話し出した。
「真紅には……すまないことをした。俺が不甲斐無いばかりに……確かに、俺が殺したのも同然なのかもしれない」
  でも、その言葉を聞いたとたんに、水銀燈の目が変わる。
  今度は水銀燈が劉鳳さんを睨みつけて、叫んだ。
「その“すまないこと”って言うのは、真紅を見殺しにしたってこと?
遺体はほっといてローザミスティカだけ盗ったってこと?
それとも……真紅を殺して、ローザミスティカを奪ったことなの? 答えなさい!」
  それまでとはうって変わって、水銀燈が劉鳳さんを責め立てる。
  劉鳳さんは……なんだか歯切れが悪い。何か、やましいことでもあるのだろうか?
「ち、違う! 俺はただ、真紅を保護しようとしただけだ!」
「そして、勢い余って殺しちゃったって言うの!?」
「違う! 保護するために探していたが、見つけたときには真紅はもう既に死んでいたんだ!」
「その割にはちゃっかりローザミスティカを盗んでいったのよね? 真紅のことは置き去りにして」
「あ、あの時は急いでいたから、仕方なく……!」
「下手な言い訳ねぇ。私の言うことは信じない癖に、そんな世迷いごとは信じろっていうの?
貴方達、人の悪口言いふらすんなら、きちんと『証拠』を見せなさいよ。貴方達が嘘吐きじゃないのならね!」
「証拠……ああ、そのとき同行していた人物なら……いや、しかし……」
「なによ、まどろっこしい。嘘ならもっと上手くつきなさいな?」

  嘘……じゃない。きっと、これは誤解なんだ。僕はそう信じたい
  劉鳳さんも水銀燈も、きっと勘違いをしているだけなんだ。
  水銀燈はきっと、真紅が死んだことが悲しくて、こんなに怒ってるんだ。
  劉鳳さんも、真紅を守れなくて悲しいだけなんだ。
  劉鳳さん……ジャイアンとも一緒だったんだし、きっと劉鳳さんが人殺しだなんて、何かの間違いに決まってる。
  誰かが嘘を言って、誰かが誰かを騙そうとして……そんなの、もう嫌だ。
  きっと、ほんのわずかな行き違いなんだ。大切なパズルの1ピースが抜けているだけなんだ。
  きっと、その一枚がきちんとはまれば、みんな仲良く協力できるはずなんだ……!
「水銀燈、ちょっと待って……」
  でも、そう言いかけた僕の言葉は劉鳳さんの一言に掻き消された。

「嘘ではない! 俺は、確かに峰不二子と一緒だった……!」
  そう言った劉鳳さんは、
  『しまった』という顔をした。
  僕は、それをはっきりと見ていた。
「不二子? ……それって……」
「……そうだ。太一少年を殺したと言う女だ」
  その言葉を聞いた瞬間に、僕の劉鳳さんを庇う言葉は、のどの奥へと飲み込まれていった。

209 :修正 10  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:13:31 ID:KU1caBQr


  ……え?


  ……太一くんを殺した女の人……?


  その人と、劉鳳さんは、一緒にいた……?


  それじゃあ、劉鳳さんとその女の人は……もしかして……


     ナカマナンジャナイノ?


  バラバラだったパズルのピースが合わさると、それまでとは全く違った答えが浮かび上がる。まさにそんな感覚だった。
  そうだ。太一君を殺した女の人……その人が、真紅を殺した人だとしたら?
  それなら、ドラえもん達の言ったこと、水銀燈の言うことも間違っていない。
  それに、それでなくても劉鳳さんの周りには危険な人が集まっている。
  人殺しの女の人、化け物? のセラスさん。水銀燈を襲ったミオンって人と、その仲間。ハルヒさんもそうかもしれない。
  じゃあ、ジャイアンは? ジャイアンもまさか!?
  ……そうかもしれない。ジャイアンはいつも僕を苛めていたし、なんでも力ずくだったし……
  それとも、ジャイアンもこの人達に騙されていたのかもしれない。
  そう、ついさっきまでの僕みたいに。
「あきれた! 自分の無実を証明してくれるのが人殺しだけですって? そんな言い訳が本当に通じるとでも思っているの!?」
  そうしてみると。なんだか水銀燈の言うことがとてもまっとうに聞こえる。
  でも、劉鳳さんは劉鳳さんで開き直っている。
「信じてくれとしか、俺には言えない。水銀燈、お前の妹を護れなかったのは俺の責任だ。すまなかった」
  相変わらず横柄なまま、劉鳳さんが水銀燈に頭を下げた。
  白々しい。
  当然、水銀燈はそんな程度では収まらない。
「それにねぇ、私が聞きたいのはそんな薄っぺらい謝罪じゃなくて、真紅がどうして死んだか、なのよぉ?
あと、私の他の妹について何か知っていたら教えて欲しいわねぇ。みんな、もう死んじゃったけど。
案外、アンタが皆を殺して回ってるんじゃないのぉ?」
「あんた、黙って聞いてりゃあ!」
  セラスさんがいきり立つ。
  ……セラスさんも、劉鳳さんの仲間……。
  ということはやっぱり、水銀燈が言ってることは、本当なの……?
  でも、水銀燈はセラスさんを無視し続けたまま話し出す。

210 :修正 11  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:14:22 ID:KU1caBQr
「劉鳳、って言ったっけ? あなた、口では『正義』とか『仲間』とか綺麗な言葉を並べてるけど……
そういうのって、口で言うだけじゃなくて行動で示すものなんじゃないのぉ?
だのに、貴方はさっきから『お前は嘘吐きだ』『お前は敵だ!』とか勝手に決め付けて襲ってこようとするしぃ。
貴方、本当は正義だなんだって言いながら、ただ純粋に暴れたいだけなんじゃないのぉ?
『正義』を言い訳に使っちゃだめよぉ? 暴れん坊さぁん」
  そして、水銀燈はわらった。
  劉鳳さんとセラスさんを、心底馬鹿にするように。
  そのとき、僕には水銀燈の声が聞こえた気がした。
  『貴方たちの嘘はお見通しよ』って。

「貴様ッ!! 俺の正義を愚弄するかッ!!」
「ふざけんなッ!! それ以上言うとぶっ飛ばすよ!!」」
  反射的に、2人が水銀燈に詰め寄った。
  怒りに震える2人とは対照的に、水銀燈は身じろぎ一つしない。
  そして先に水銀燈に掴みかかったのは、セラスさんだった。
  水銀燈の胸元を掴むと、小さな水銀燈の体は軽々と持ち上がる。
「自分の嘘を棚に上げて好き勝手言いやがって……訂正しろ!」
  セラスさんの目は、赤く、獰猛な獣の目そのものだ。
  それでも水銀燈は怯まない。
「なぁに? 反論できなくなったら暴力で解決するのぉ? ホント野蛮ねぇ、あんたたちの『正義』って。
……悪いんだけど、服にシワが付いちゃうから離してくれない?」
「コイツ……!」
  セラスさんの空いているほうの手が、強く握りしめられる。
  そして、水銀燈の顔面に向かって、
  振りぬかれ――

「止めなさい! 何やってるのよ!!」

211 :修正 12  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:15:10 ID:KU1caBQr
  病室内に、凛さんの声が響いた。
  病室の入り口には、見張りに立っていた凛さんとドラえもんの姿があった。
「……!」
  セラスさんの拳が、水銀燈の目の前で止まる。
  その余勢が、水銀燈の髪を揺らす。
  そして、次の瞬間――
「ああ、怖かった……ちょっと凛! もっと早くに助けに来てよぉ……」
  今までからは信じられない、とても儚げで弱々しい泣き顔で水銀燈は凛を見た。
「あんたたち2人にならここを任せておけると思ったのに……残念だわ」
  凛さんの表情は、とても険しかった。
「……セラス、水銀燈を離して。話はそれからよ」 


「何があったの?」
  その凛さんの言葉は、この部屋にいる全員に対してのものだった。
  凛さんは、喧嘩を始めた2人に怒っているようだった。
  間髪いれずに水銀燈が喋りだす。
「聞いてよ凛、この人達、私とお喋りしてたらいきなり怒り出して殴りかかってきたのよぉ」
  セラスさんも黙ってはいない
「よくも出任せをいけしゃあしゃあと! コイツはあたし達の仲間と、劉鳳の正義を侮辱したんだ! 劉鳳に謝れ!」
「謝るのはそっちでしょぉ? 証拠も無いのに人のことを『嘘吐き』だの『敵』だの……
それに殴りかかってきたのはあんたじゃないの。私は何もしてないわよぉ?」
「コイツ、まだそんなことをッ!」
  反射的に水銀燈に伸びたセラスさんの手を、途中で凛が止める。
「止めなさい。それ以上やると私が相手になるわよ」
「ちょ、ちょっと! 凛はソイツのことを信じるの!? いい加減騙されてるって気付きなさいよ!!」
「冷静にいまの状況だけを見れば、セラスが水銀燈を殴ろうとしている。それだけよ。
理由が何なのかは知らないけど、それすら知らないままに目の前で仲間が喧嘩するのを黙って見過ごす訳にはいかないわ」
「だ、だから私たちの言ってる方が……」


212 :修正 13  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:16:05 ID:KU1caBQr
「水銀燈の言ってることの方が本当だよ!!」


  部屋中の、全ての目が僕を見つめていた。
「の、のび太君、それってどういう……?」
  ドラえもんの言葉を最後まで待たずに、僕は話し出す。
「水銀燈は、自分の妹がどうなったのか、どうして死んだのか、それを劉鳳さんに聞いていただけなんだ。
なのに、2人とも水銀燈のことを嘘吐きだ、敵だって決め付けて……
それに水銀燈の妹が死んだのって、劉鳳さんのせいなんでしょ!? 水銀燈が怒るのも当然だよ!!
なのにセラスさんは水銀燈のことを殴ろうとするし……
正しいのは水銀燈だよ! その2人は喧嘩が、殺し合いがしたいだけなんだよ!!」
  そう、一気に言い切った。

――そうだ。劉鳳さんとセラスさんより、凛さんと水銀燈の方が信じられる。
凛さんと水銀燈は、昨日はほとんど僕と一緒にいて、怪我を治してくれて、僕のことを護ってくれた。
でも、劉鳳さんとセラスさんは、ついさっき会ったばかりなんだ。
しかも、水銀燈が襲われたミオンっていう人と仲間だって言うし、
それに不二子っていう人とも……!
  口の中が乾く。喉がひりひりする。
  自分が、肩で息をしていることに気付く。
  肺の中の空気が空っぽになったみたいだった。
「の、のび太君、私たちは貴方達のことを思って……」
「じゃあ、なんで嘘吐いてたの!? 化け物だって、なんで黙ってたの!?」
  『化け物』という言葉に、セラスさんの表情が陰る。
  それと同時に、酷いことを言ってしまったのだという罪悪感で、胸が締め付けられる。
  でも、僕は悪くない。悪いのは、嘘を吐いていたセラスさんの方なんだから。

213 :修正 14  ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:17:13 ID:KU1caBQr
  重苦しい空気が病室内に充満していた。
  誰も話し出そうとしなかった。
  自分の荒い息の音だけが、いやにうるさく聞こえていた。
  でも。
「Master!」
  何処からともなく聞こえてきた無機質な声が、病室内の静寂を乱した。
  そして、レイジングハート――という名の魔法の杖に急かされたように、凛さんが話し出す。
「ありがと、レイジングハート。皆に先に言っとかなきゃならないことがあるから、それを先に言うわ。
――この病院に近づいてくる人間がいます。それも、一人で」
  凛さんの言葉に、みんなの表情が強張る。
「一人って、それって……」
「ええ、偽凛のこともあるけど、この時間帯で単独行動をとるような奴は……人を殺して回っている、凶悪な殺人者の可能性が低くない。
新たな獲物を探して徘徊しているのかもしれない」
「さ、殺人者!?」
  ドラえもんと、僕が震え上がる。
  でも、ううん、それは違う。
  僕はもっと前から震えていたんだから。
――だって、僕はずっと、人殺しかも知れない人と一緒にいたんだから……。
  凛さんが話を続ける。
「そいつは結構なスピードでまっすぐここに向かってきてたんだけど、さっきから急にスピードが落ちたわ。
もしかしたら、戦闘の痕跡を見て警戒しているのかもしれない。……油断はできないわよ」
「ちょっとまって、そいつ、もしかしたら敵じゃなくて私たちの仲間かもしれないよ! 私達の集合場所はここなんだし!」
「そうだ! それに敵が襲ってくるというならば、この俺がッ!」
「待って!」
  今にも病室の外へ飛び出そうとする2人を凛さんが呼び止める。
「劉鳳、アンタは怪我人でしょ。……悪いけど戦闘になったら足手纏いよ。
セラスもここに残って。劉鳳とドラえもん、のび太を任せるから。もしものときは皆を守って頂戴」
「で、でもっ、私達の仲間なら、私達が行ったほうが……! それに、凛一人だけだと危険かもしれないしっ!」
  それでも食い下がるセラスさんにも、凛さんは譲らない。
「大丈夫よ。アンタ達の仲間の情報なら、既に教えてもらってる。
それに……一人で心配なら、水銀燈も連れて行くわ。いいわね、水銀燈?」
「わたしはいいけどぉ?」
「ちょ、ちょっと! そいつなんて連れて行ったら余計にややこしいことに……」
「今の頭に血が上ってるアンタを連れて行くよりはまだマシよ」
  セラスさんの不満も、凛さんが一蹴した。
  そうだ。凛さんの言うとおりだ。
  人殺しの仲間なんて連れて行ったら、凛さん達の方が危なくなってしまうに違いない。
「Master! The target is coming into the enter! (マスター、対象が玄関に到達します!)」
「わかった、レイジングハート。セラス……水銀燈と何があったのかは知らないけど、話は後でちゃんと聞くからね。
じゃあ、私が玄関で対象と接触します。行くわよ水銀燈! 病室の皆は、何かあったら頼むわよ!」
  凛さんのテキパキと指示を出していく様子が、改めて緊迫した状況を際立たせていた。
  でも、水銀燈を連れて行くのは……やっぱり凛さんも他の2人よりも水銀燈の方を信用しているということなのだろうか?
  凛さんにも早く教えてあげないと。この2人が危険だって言うことを。
「じゃあ、行って来るから! でも、危なくなったら私たちのことは放って、逃げて!」
  そういい残すと、凛さんは水銀燈を連れて廊下を走りだした。
  2人分の足音が、どんどん遠くへ消えてゆく。

214 :修正   ◆B0yhIEaBOI :2007/04/15(日) 22:19:48 ID:KU1caBQr
以上の各レスを差し替え。

のび太の状態表を修正。

[備考]
※劉鳳とセラス、及びその仲間を殺人者だと思い込んでいる。
※凛のことも疑っているが、他の人よりは信頼している。ただし、偽凛は敵だと判断している。




215 : ◆A.IptJ40P. :2007/05/20(日) 00:29:59 ID:x768Vwkq

【D-3・病院裏口/2日目/午後】

【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に中程度の傷(初歩的な処置済み)、中程度の魔力消費、バリアジャケット装備(ソニックフォーム)、リインフォースと融合中
[装備]:バルディッシュ・アサルト(アサルトフォーム/弾倉内カートリッジ残り3/予備カートリッジ×12発)
    夜天の書(消耗中、回復まで時間が必要/多重プロテクト)
[道具]:デイバッグ、支給品一式、クラールヴィント、西瓜×1個、ローザミスティカ(銀)、エクソダス計画書
[思考]
基本:戦闘の中断及び抑制。協力者を募って脱出を目指す。
1:目の前の人物(グリフィス)を足止めor倒してジュエルシード回収。
2:後でトグサにタチコマとのことを謝っておく。
3:光球(ローザミスティカ)の正体を凛に尋ねる。
4:遠坂凛と協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
5:ベルカ式魔法についてクラールヴィントと相談してみる。
6:念のためリインフォースの動向には注意を向けておく。
7:カルラや桃色の髪の少女(ルイズ)の仲間に会えたら謝る。
[備考]
※襲撃者(グリフィス)については、髪の色や背丈などの外見的特徴しか捉えていません。素顔は未見。
※首輪の盗聴器は、ルイズとの空中戦での轟音により故障しているようです。
※リインフォースを装備してもそれほど容姿は変わりません。はやて同様、髪と瞳の色が変わる程度です。

【遠坂凛@Fate/stay night】
[状態]:中程度の疲労、全身に中度の打撲、中程度の魔力消費、バリアジャケット装備(アーチャーフォーム)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン(/修復中 ※破損の自動修復完了まで数時間必要/カートリッジ三発消費)
    予備カートリッジ×11発、アーチャーの聖骸布
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料残り1食。水4割消費、残り1本)、石化した劉鳳の右腕、エクソダス計画書
[思考]
基本:レイジングハートのマスターとして、脱出案を練る。
1:ルールブレイカーを回収。
2:セイバーの再襲撃に備えて体力と魔力はある程度温存。
3:フェイトと協力して魔法による首輪解除の方法を模索する。
4:ベルカ式魔法についてリインフォースと相談してみる。
5:カズマが戻ってきたら劉鳳の腕の話をする。
6:変な耳の少女(エルルゥ)を捜索。
[備考]:
※リリカルなのはの魔法知識、ドラえもんの科学知識を学びました。
※リインフォースを装備してもそれほど容姿は変わりません。はやて同様、髪と瞳の色が変わる程度です。
[推測]
※ギガゾンビは第二魔法絡みの方向には疎い。
※膨大な魔力を消費すれば、時空管理局へ向けて何らかの救難信号を送る事が可能。
 その為にジュエルシードを入手する。

216 : ◆A.IptJ40P. :2007/05/20(日) 00:30:54 ID:x768Vwkq
【グリフィス@ベルセルク】
[状態]:魔力暴走、全身に軽い火傷、打撲、左腕が肩口から落ちた、自我崩壊
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、耐刃防護服、ジュエルシードもどき、フェムトの甲冑@ベルセルク
[道具]:マイクロUZI(残弾数6/50)、やや短くなったターザンロープ@ドラえもん、支給品一式×6(食料一つ分、ディパック五つ分)
   オレンジジュース二缶、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に
   ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ、ハルコンネンの弾(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾4発 劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING
[思考・状況]
基本:殺す。
1:目に付く存在を殺す。
[備考]
※グリフィスは生存者の名前と容姿、特徴についてユービックから話を聞きました。
※A-8エリア全域、及びA-8周辺エリアはスパイセットで監視しています。
※スラン及びユービックがノートパソコンの入手を目的としている事は知りません。
[ジュエルシードの暴走について]
※グリフィスは現在自我を失っており、己の戦闘本能に従って行動しています。
 剣術などの身体に染み付いた技能は例外として、デイパックにしまった銃を使うなど、頭を使った戦法は取ることは出来ません。
『約束された勝利の剣』は使用可能ですが、直前で既に一回使っているため、これ以上の乱用は自己崩壊の恐れがあります。
 なんらかの形でジュエルシードの機能を停止させれば、グリフィスの自我も元に戻ります。
 また、このジュエルシードは『もどき』のため、これ以上の変化(外見の変貌など)が起こることはありません。
※常に全身から魔力を垂れ流しています。純粋魔力弾の射撃はそれに相殺されるためまず通用しません。
 また、それを利用した高速機動の方法を学習しつつあります(よって、動作の効率化によって更に強くなることも考えられます)。

217 : ◆A.IptJ40P. :2007/05/20(日) 21:50:44 ID:x768Vwkq
修正版です。




上空から、真下を見据える視線がある。
(……私達が、勝つ為です)
黒鉄の戦斧を右手に掴む。金髪を風に流した彼女は迷いを振り払い、ただ一言を呟いた。

「―――ユニゾン・イン」

金髪が、青白い燐光を放つ稲妻じみた白へと転ずる。
同時、眼下の黒衣に向けて動力降下。
自由落下に背の四翼と四肢のフィンを加えたその速度が、音速の壁を打ち破った。
右手一本で構えた戦斧が紙を引き裂く音を立て、水蒸気の霧を曳く。

『Load cartridge』

リボルバーが回転、定位置に移動したカートリッジが強烈な衝撃を受け圧縮魔力を解放する。

選択する魔法は一つ。術式構造は極めて単純、刀身に魔力を乗せるだけだ。
射程距離を切り捨て一撃の威力に特化した、ベルカ式の基礎にして真髄たる魔法。
それはヴォルケンリッター烈火の将が振るった魔焔の一閃。
だが、刃が纏うのは緋桜色の焔ではない。
鋭角を以って天をも穿つ黄金の色。
雷だ。

叫ぶ。その技の名を。かつて己の武器を断ち切った、その名を。

「――――――紫電、一閃!」

振り下ろした。
直撃―――ではない。敵の回避の方が一瞬だけ早い。
だが劫雷の余波が、その鎧たる魔力を吹き飛ばす。

そして、フェイトの左手にはあるものが握られている。
雷によって編まれ、しかし幅広の刃と鍔を備えたそれは一振りの長剣。
サンダーブレイド。

速度はフェイトが手に入れた。
敵の防御を剥ぎ取ったのはバルディッシュ。
ならば―――それを解き放つのが、彼女の持つ役割だ。

218 : ◆A.IptJ40P. :2007/05/20(日) 21:52:08 ID:x768Vwkq

『リインフォース、蒼穹を渡る祝福の風。そして今は―――』

彼女の独白。それもまた決意を告げるようで。

『―――雷の元へと集う風の名だ……!』

応えるように、彼と彼女が声を挙げた。

「疾風、迅雷……!」

風を纏った雷の刃、それが得るのは加速ではない。

『Jet Zamber』

光を放つ切先が雷鳴を上げて伸長し、黒衣の腕を、左肩から切り落とす。

「今です!」
「ええ!」
フェイトの声に応え、凛は駆け出した。黒衣の横を飛翔によって抜け、病院へと飛び込んで行く。

優秀な猟犬は得物を逃さない。鎧の男はそれを追おうと足裏から魔力を放ち加速。
「追わせない……!」
だが、残像さえも残さず正面に回り込んだフェイトが、その進撃を停めさせる。

「私達の役目は足止め、だね……やるよ、バルディッシュ、リインフォース!」
『Yes,sir.』
バルディッシュがコアを明滅させ、応えた。
『ああ、それが私の贖いであり―――』
リインフォースもまた、


『―――そして何より、私の主が望んだことだ』


迫り来る刃を見据え、肯定の言葉を放った。

219 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/03(日) 09:28:13 ID:rjuUK8Tc


220 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 10:11:08 ID:QmYj2Ve3
あたしは自分がどこか特別な人間のように思ってた。
 家族といるの楽しかった。
 自分の通う学校の自分のクラスは世界のどこよりも面白い人間が集まっていると思っていた。
 でも、そうじゃないんだって、ある時気付いたてしまった。
 あたしが世界で一番楽しいと思っているクラスの出来事も、日本のどこの学校でもありふれたものでしかない。
 そう気付いたとき、あたしは急にあたしの周りの世界が色あせたみたいに感じた。
 あたしのやってることの全部は普通の日常なんだと思うと、途端に何もかもがつまらなくなった。
 あたしは抵抗した。できるだけ違う道を行こうとしてみた。
 あたしなりに努力してみた。訴えてみた。足掻いてみた
 
 けれど何も変わらなかった。何も起こらなかった。
 
 そうやってるうちに高校生になった。
 高校なら何かが変わるかと思った。
 でも、高校に入っても何も変わらなくて。結局全てが平凡に見えて。
 あたしの世界は灰色のままだった。

 ――SOS団を作るまでは。

 ううん、違う。
 
 ――あいつと、会うまでは。



「……うっ」
 頭に響く鈍痛に、涼宮ハルヒは思わず呻き声をもらした。
 体が熱い。視界がぼやけて、状況が分からない。
 息が苦しくて、頭も回らない。
(ここは……。あたし……何、を……)
 混濁する意識をハッキリさせようと、ハルヒは頭を振った。

「――ようやくお目覚めかい? お姫さんよ」

 突然耳元で響いた聞き慣れない声に、ハルヒの意識は急速に覚醒に向かう。
「……あ、あんた……誰?」
 だが、エンジンのかかりきらない頭ではその問いを発するので精一杯だった。
 鼻を鳴らす音がし、
「はっ! 危ねぇ所を救った上にここまでつれてきてやった恩人に対する第一声がそれたぁ泣かせてくれるぜ。
 ジャパニーズは礼儀正しいって聞いてたんだが……。あたしの勘違いだったみてぇだな」
 悪態と皮肉の成分が含有された声が響いた。
(……危ない所……救って……)
 鈍痛と熱さを苦労して意識の隅に押しやりながら、ハルヒは必死で思考を巡らした。
(……あの金髪、セイバーに襲われて、しんちゃんと分断されて……トウカさんが……足止めに残って……。
なのにあの女が現れて……その後――)
 思考が乱れいくつもの顔が、声が、頭の中で明滅する
(この人……キョンと一緒に……)
 間違いない。
 ラフな格好とショートの黒髪、確かにキョンと一緒にこっちへ走ってきた――。

 ――キョンは?

 総毛立つような感覚がハルヒを襲い、その感覚に追いたてられるようにハルヒは叫んだ。
「ねえ! あいつは! キョンは!? 」
 一呼吸あって、
「……いてぇよ」
 不機嫌極まる声音が返ってきた。

221 : ◆WwHdPG9VGI :2007/06/05(火) 10:12:14 ID:QmYj2Ve3
 ハルヒははっとして手をみやった。包帯が巻かれた箇所を握ってしまっている。
 慌てて手を放し、
「ごめんなさい! 謝る、謝るわ! だから、だから教えて! あいつは……。キョンはどこ!?」
 みっともなく声がひっくり返っているのが分かる。
 でも抑えることなんか出来ない。
 心臓が耳元にでも移動したんじゃないかと思うくらいうるさくて、変な汗が吹き出てくる。
 喉がカラカラだ。

 ――どうして答えてくれないの?


 ハルヒの心の壁を恐怖が這い登った。
 全身が勝手に震えだし、心臓が万力で締め上げられたように痛む。

「お願い! 答えて!! 答えなさいよ!!」

 悲鳴のような声が赤く染まりつつある無人の町に響き渡った。
 はあっと大きなため息が聞えた。
「そんなに知りたきゃ教えてやる。とりあえず、あたしの背中から降りな。そんだけ喋れりゃ歩けんだろ」
 言われるままにハルヒは黒髪の女性の背中から滑り降りた。
 足がついた瞬間、視界が回転しそうになり、ハルヒはたたらを踏んだ。
 身体に力が入らない。
 頭痛は治まらないし、体が熱くて熱くてたまらない。
 それでもハルヒは必死に目に力を込め、レヴィに視線を送った。
 そんなハルヒの様子に、レヴィは思わず髪をクシャクシャと掻き回した。
(っとによぉ……。着いてからにすりゃあ良かったぜ)
 ここで事実を告げれば面倒くさいことになるのは間違いなさそうだ。
 どう見てもこの制服姿の少女は、人死に慣れているタイプには見えない。
(その上、この取り乱し方からすっと……。まあ、答えは一つっきゃねえか)
 場末の映画館なら、優しい大人がヒロインを労わりながら沈痛な面持ちで告げる場面だろう。
 音楽もさぞかし物悲しく流れ、悲劇の場を演出するに違いない。
 だが目の前の少女にとっては不幸なことに、場を演出する音楽は風だけ。そして告げる大人は自分だ。

 ――ハルヒを……よろしく、お願いします……

 ワリィな、とレヴィは記憶の中の死に行く少年に向かって言葉を返した。
(あたしに慰める役割なんか期待されても困るぜ。あたしゃただの運び屋だ。
中華料理屋でパスタ頼んでも出てきやしねえことを、あの世で勉強するんだな)
 心の中で悪態をつき、レヴィは口を開いた――。

222 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 10:14:36 ID:QmYj2Ve3



「――レヴィさん!」
 レヴィは黙って声のした方に顔を向けた。
「おめーか……。何やってんだ? こんなとこで」
 レヴィは顔をしかめた。
 凛の格好はこういっては何だが、あまりまともとはいえない。
 ありていに言えばボロボロだ。
 顔は煤け、目には疲労の光が宿っている。
「その、まぁ……色々、あったのよ。レヴィさんこそ――」
「スト〜ップ! まず、てめぇからだ。
人に物を聞くときは、まず自分からだとママに教わらなかったのか?」
 凛は首をかしげた。
(なんか違うような気がするんだけど……)
 とはいえ、別に抗弁する必要もないし、くだらない言い争いをする気もない。
 凛が先に経緯を話すと、レヴィも口を開いた。
「――ってわけだ」
 レヴィが話し終えるのと同時に、凛の形のよい眉がひそめられた。
「じゃあ今、カズマさんは単独でセイバーを追ってるのね?」
 凛の声は石のようで、その表情には暗いものがありありと浮かんでいた。
 何故か面白くないものを感じ、
「まぁ、確かにあの女はバケモンだがな…。カズマの野郎もそれなりのもんだ。
ンな簡単に負けるヤツじゃねえぜ、あいつはよ!」
 乱暴に言い捨て、
(何であたしが、こんなこと言わなきゃならねーんだ?)
 レヴィは思い切り舌打ちした。

 ――俺が戻るまでにくたばってんじゃねぇぞ!

 不敵なカズマの顔がレヴィの脳裏をよぎった。
(さっさと片付けてさっさと戻ってきやがれ! 一発殴ってやっからよ!)
 自分の弁護料としては破格の安さだ、と思う。
 レヴィは小さく口元を歪めた。
「……あの」
 きょろきょろと辺りを見回しながら、凛が物問いたげな視線を向けてくる。
「あん?」
「その……。レヴィさんが連れてきた……。ハルヒはどこに?」
 レヴィの口から嘆息が漏れた。
 面倒くさそうに、レヴィは無言で一点を指し示した。
 息を呑む気配がし、
「……え?」
 聞こえてきた凛の呻くような声に、レヴィはもう一度嘆息した。
「キョンっつのうが死んだって教えてやったら、あーなっちまった……。
おめぇ、なんとかできねぇか? 同じジャパニーズで、同じくれぇの歳だろ?」
「無理よ……私、そういうの苦手だし……。それに私、ハルヒにはまだ疑われたままだと思うし……」
 凛は目を伏せた。
(そういや、ロックの野郎も始めはこいつのこと疑ってやがったんだっけか?)
 クソっとレヴィは地面の石を蹴り飛ばした。
(かったりぃな……。クソっ!!)
 何故こうも次々と問題ばかりが起きるのか。
 レヴィは苛立たしげな視線を後ろに向けた。
 その先には、空虚な瞳で民家の壁にもたれかかる涼宮ハルヒの姿があった。

223 : ◆WwHdPG9VGI :2007/06/05(火) 10:17:02 ID:QmYj2Ve3



 何も聞えない。何も感じない。
 無音の世界に囚われたようにすら感じる。
 
 ――死んだ。

 キョンが死んだ。
 レヴィという女の発した音が鼓膜を震わせ脳がその意味を認識した瞬間、
 世界が真っ白になり音が消えた。

 ――嘘だ。
 
 そう怒鳴って生死を確かめに駆け出すところなのかもしれない。
 或いはひたすら号泣するところなのかも。
 涙が流れない。
 ただ何処かに大きな穴が開いて、そこから何もかも抜けていく、そんな感じがする……のだと思う。
 
 ――分からない。

 何も分からない。分かりたくない。
 だって。
 キョンがこの世にいないことを認めてしまったら。
 ようやく色と音を取り戻した世界が、世界を形作るピースが壊れてしまったと認めたら――。

「おい! いつまで呆けてんだ!!」
 
 大声と共に身体を引き摺り上げられた。
 レヴィと名乗った女の怒ったような顔が間近にみえる。
「おらっ! 行くぞ!」
 前に引っ張られた。

 ――どこへいくんだろう?

 そんな疑問が頭をかすめるが、ハルヒは引っ張られるままに歩き始めた。
 何もかもどうでもよかった。
 何も考えたくなかった。
 しかしハルヒの空虚の瞳の中にある人間の像が形作られた時、 
 ハルヒの心に炎が生まれた。漆黒の炎が。

 ――遠坂凛。

 殺意。
 そんな名で呼ばれる漆黒の炎は瞬く間にハルヒの心を覆い尽くした。
(こいつは、アルちゃんを殺した!)
 水銀燈という人形とグルになってアルルゥを殺した。
 足手まといがいると生き残るのが難しから、という理由で殺した。

 ――こんなヤツがいるから。

(みんな死んでいくのよ……)
 遠坂凛がたじろいだようにこっちを見ている。
(何よ? その理不尽だと言わんばかりの目は!?)
 身体を蝕んでいた疲労も、体にこもった熱も、気にならない。
「おい? どうした?
 耳元で声がする。ハルヒは掴まれた手を振り払った。

224 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 10:19:54 ID:2hKM4Xez
 

225 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 10:20:03 ID:x2MF4GpJ
 

226 : ◆WwHdPG9VGI :2007/06/05(火) 10:25:27 ID:QmYj2Ve3
「離れてて! あの女は、敵よ!!」
「はぁ? 何を言ってやがん――」
「あいつは、アルちゃんを殺した! だからあいつは、私の敵!!」
 ハルヒの絶叫が大気を震わせた。
「待って! それは誤解よ!」
「黙れ!!」
 この期に及んで言い逃れをするか。
 ハルヒの心の炎は猛烈にその火勢を強めていく。
 
 ――今の自分には力がある。
 
 あの桃色の髪の女に襲われた時はアルルゥの手を引いて逃げることしかできなかった。
 映画館では戦力外と評価され、長門有希とトグサにおいていかれた。
 病院ではあの女にまったく歯が立たなかった。
 エルルゥが撃たれた時、ただ立ち尽くしてたいだけだった。
 セイバーに襲われた時、トウカを援護することはできなかった。
 でも今は違う。今の自分には――

 ――そう? 本当にそう?

 心の中に沸き起こったそんな問いが、一時殺意の炎を吹き払った。
 
 ――じゃあどうして、キョンは死んだの?

 震えだそうとする体を抑えつけようとするように、
 ハルヒは左肩を右手掴んで握り締めた。
(うるさい! うるさい!)
 
 ――今度こそ。

 今度こそは守ってみせる。
 生き残った仲間を守ってみせる。
 アルルゥのように、ヤマトのように、トウカのように――キョンのように。
(殺させたり、しない!!)
 そのためなら、命なんか惜しくない。
 漆黒の炎がハルヒの双眸から噴出した。

 ――殺意が、全てを、塗りつぶしていく。

「あんたは……。あんただけはぁぁぁっ!!」
  
 ハルヒの怒りを体現するように巨人が空間からぬっと姿を現した。
 青い巨人、ハルヒの世界の人間達が神人と呼んだそれは、腕を振り上げた――。
 


227 : ◆WwHdPG9VGI :2007/06/05(火) 10:26:34 ID:QmYj2Ve3


「なっ!?」
 驚愕の槍が凛の心を貫いていた。
 いきなり襲いかかってこられたという事実に。
 そしてハルヒの力に。
『protection』
 何とか発動させることができた盾は――。
 あっさりと砕け、無音の拳が凛の視界を埋め尽くす。
 咄嗟に地を蹴り、転がって緊急回避。
 一刹那遅れて巨人の拳が、一刹那前に凛がいた場所激突。
 爆風と砂煙が来た。
「くっ……」
 顔を覆いながら、凛は戦慄する。
(結構な、威力ね……)
 砂煙を引き裂いて巨人がぬっと姿を現した。
 意識を集中。
『Protection Powered』
 凛の作り出した桃色の力場と巨人の拳が激突。
「くっ……」
 凛は奥歯を噛んだ。
 巨人の拳と凛の作り出した力場の接触面から粒子が飛び散る。
 なんとか相殺に持ち込め――。
 
 怖気が凛の背筋を駆け抜けた。

『Flier fin』
 効果の発動と巨人がもう片方の手を振り下ろすのはほぼ同時。
 一刹那の差で凛が競り勝った。
 無音の拳が地面に突き刺さり、爆風が発生。
 その煙を肝を冷やしながら眼下に見下ろし、凛は距離をとって着地した。
「チョコまかと……。逃げんなっ!!」
 ハルヒの怒声と共に、巨人がゆらりとこちらを向いた。
(どうする……)
 こういっては何だが、ハルヒを無力化するのはそう難しくない。
 ハルヒの一挙一動からは、まだまだ「戸惑い」が見られる。
 明らかに能力を使いこなしてもいない。絶対的に錬度が足りていない。
 とはいえ、あの巨人の力自体はなかなかものだ。
(勝つは易く、傷つけずに無力化するは難し、か)
 凛の顔に苦渋の皺が刻まれた。

 ――何を迷うことがある。
 
 相手がこちらの話を聞かずに、攻撃を仕掛けてきているのだ。
 反撃してもそれは正当防衛の範疇だ。
 凛の冷徹な部分はそう言っていた。
 けれど――。
「レヴィさん!」」
 凛は我関せずとばかりに離れた場所に突っ立っているレヴィに声を飛ばした。

228 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/06/05(火) 10:27:37 ID:s8fJV1Zw


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