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げんしけんSSスレ12
- 1 :マロン名無しさん:2007/01/14(日) 02:09:36 ID:???
- 「・・・・・・こーゆう疎外感はスーにはきっとわかんねよ。」
「スーは自分がSS書いててどうしようって思ったこと無いっしょ?」
「だからもうわかんねままSS書いて」
「それでいいと思うけどね。」
「スーの好きなように書いてさ」
「その方がみんな楽しいだろうし」
「私もきっと楽しい」
というわけで新年あけましておめでとうな第12弾。
未成年の方や本スレにてスレ違い?と不安の方も安心してご利用下さい。
荒らし・煽りは完全放置のマターリー進行でおながいします。
本編はもちろん、くじアンSSも受付中。←けっこう重要
☆講談社月刊誌アフタヌーンにて好評のうちに連載終了。
☆単行本第1〜9巻好評発売中。オマケもすごかった!
☆作中作「くじびきアンバランス」漫画連載&アニメ放映終了!いい出来でした!
- 514 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:40:44 ID:???
- 3月25日。金曜日の夕方。(有)桜管工事工業の事務所。
斑目は、単純な仕事をこなしながら、頭の中で前夜のスージーとの電話を何度も何度も再生していた。
そして、(あれで良かったんだよ、きっと)と、自分に言い聞かせる。
そんなことを朝からずっと繰り返していた。
また、仕事の合間に、『ウルトラセブン』『史上最大の侵略(後編)』の検索結果を読んだ。
………長い戦いの末に心身ともにボロボロになったウルトラセブンことモロボシダン。彼はM78星雲の上司から、次に変身すれば命を落とすと警告される。
それでも、ウルトラ警備隊の同僚アマギ隊員が侵略者に捕われており、彼の命を助けるためにも最期の変身を決意する。
その直前、お互いに淡い恋心を抱き、自分の体を心配してくれたアンヌ隊員に、自らの正体を打ち明けるのだ。
「アンヌ、僕はね、人間じゃないんだ。M78星雲からきたウルトラセブンなんだよ!」
………この作品を調べるなかで斑目は、『演出の巧みさも相まってシリーズの中でも屈指の名作』『沖縄という“異邦”から東京へやってきた脚本家の疎外感と博愛主義への幻想』などと、賛辞や論評を目にした。
しかし、昨夜のスージーとの電話の後では、そんなものは意味をなさないと斑目は思っていた。
- 515 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:42:26 ID:???
- そんなことを1日考えているうちに、時計は4時を指しつつあった。
(あと1時間……早く帰りたい。今日はもう何もしたくない)
斑目がそう思っていると、女子職員が彼の名前を呼んだ。
「斑目さん、斑目さーん、お客様ですよ」
「俺に?…………ってエエッ!?」
デスクから受付の方へと顔を上げた斑目は、我が目を疑った。
そこには、高坂姓となってまだ2か月も経っていない咲が立っていたのだ。
茶系統のロングスカートとセーター。コートとハンドバッグを小脇に抱えている。ブラウスの明るい色調はアクセントになって、彼女自身の美を引き立たせている。
斑目は上司に目を向けた。上司からも受付前に立つ美人が見えた。
「……あ、あのう……課長」
「斑目くん、そうだったのか〜」
「はい?」
「最近集中力に欠けているとは思ったが……。正直に言ってくれればよかったのに」
課長はウンウンと納得した表情。
斑目は、「いや…、そんなんじゃないんすけど……」と苦笑いで返す。だが課長の頭の中ではすでにストーリーが出来上がっているようだった。
「ここでも何だから、しばらく外してもいいよ。もう4時もまわったし、早くひけてもいいよぉ(ニヤ)」
- 516 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:44:41 ID:???
- 斑目は(課長も結構妄想癖あるんじゃねーの)と思いつつ、頭をかきかき何度も頭を下げた。
「じゃあ、す、スミマセン。ちょっと外します」
ワイシャツにネクタイ、スラックスに、(有)桜管工事工業の刺繍が胸に入った作業着を着込んだまま、斑目は携帯と財布を手にして受付に小走りした。
「ええっと……何か用?」
もう高坂真琴と結婚をしたものの、咲は咲だ。斑目は緊張感いっぱいで彼女の前に立った。
咲は急にクネッと体をよじらせて、甘ったるい声をあげた。
「ハルノブゥ〜! 急にやってきてゴッメ〜ン(はあと)」
「ブッ!(激汗)」
斑目はエクトプラズムを吐き出して意識が遠のきそうになった。
事務所の方から「ヒューヒュー!」と、同僚たちの指笛が聞こえてくる。
咲はその方向へウインクし、愛想良く手を振りながら、「ほんとにすみませぇーん。晴信お借りしますぅ!」と笑顔を見せた。
そのまま斑目の手を取って、外へと出て行った。
「どーぞどーぞ!」
課長が皆を代表するかのように手を振り返した。
- 517 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:46:58 ID:???
- (俺いま、『かすかべさん』と手をつないで歩いてる!)
斑目の頭は、全く予想外の展開に混乱しまくっている。強く握られた手の、温かく柔らかい感触が、彼の胸を熱くさせた。
しかし、近くにある京王線の某駅まで来た時、その手は離れた。
咲の口調も、さっきまでの甘いものではなくなっていた。
「斑目ごめん、ああでもしないと外で話せないと思ったから……」
「え…?」
「ちょっと駅まで付き合って。私、話終えたらそのまま新宿へ帰るから」
斑目は咲の後について、駅の入場券を買ってホームに入った。
ホームは上りも下りも人影はなく、咲と斑目の二人だけ。ホームには、次に入ってくる車両を案内するアナウンスが響いている。
「コーヒーでも、飲まない?」
「あ、うん」
ガコン! ガコンッ!
咲はホームの自動販売機からホットコーヒーを取り出して、その一つを斑目に手渡す。
二人はどちらが勧めるでもなく、ホームのベンチに並んで座った。二人の間には、一人分ほどの間隔が開いていた。
- 518 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:48:27 ID:???
- 咲は早速、缶コーヒーを飲んでいる。
隣では斑目が、缶を空けないまま、手の上で転がして温かさを感じている。落ち着かない手の動きに、沈黙に耐えきれない様子が見て取れる。
「……ね 斑目……」
ビクッと反応して缶を落としそうになった斑目は、動揺を悟られまいとコホンと咳を一つして、「え、え、何?」と聞き返す。
「スージー、今夜成田から出国する予定だよ」
「こっ、今夜!?」
思わず声を上げてしまう斑目。しかし一瞬の間をおいて何かに気づき、驚きの表情で咲の横顔を見つめた。
「知ってた…の?」
「夕べ、聞いたのよ」
咲は缶コーヒーを傍らに置いて、斑目に向き直った。
「スージーはね、居場所がほしいんだって」
「居場所……」
「それが今まで、『荻上』だったり、現視研だった。今、あの子は、『ココに居てもイイヨ』って、誰かに言ってほしいの」
「そんなこと言ったって、帰国しなきゃならないじゃないか」
「帰らない理由なんてどうにでもなるよ。要は、自分が求められているって感じたいのかもしれない……」
- 519 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:49:57 ID:???
- (そんな無茶な)と思った斑目は、納得の行かない表情でホームの正面を見据えた。
「……じゃあ何で……」
「?」
「何で卒業のことや帰国のことを俺に話してくれなかったんだよ。学部の奴らとは何でも話してるのに、俺にはちっとも……。どうせ大事な相手じゃないって……」
斑目が文句を言い終わる前に、「あははははははは!」と、咲が腹を抱えて笑い出した。
「何だよ」
「馬鹿だねあんた。大切なのはそんなコトじゃないのよ。しかも男の嫉妬なんて恥ずかしい」
ムッとしている斑目の表情を見て、咲は、「ごめん」と手を合わせた。そして、ホームを囲う屋根を見上げながら話を続けた。
「スージーにとってはさ、あんたはこの屋根みたいなもんじゃないのかな」
「はい?」
「外で雨に打たれたり、風に吹かれたりしていたのが、この屋根の下でなら雨風からも守ってもらえてホッとするような……」
「ハァ……」
「卒業や帰国については誰にだって相談できるけど、ストレスを癒してくれたり、一緒にいるだけでもいい相手って、なかなか居ないんじゃないかな。私も『真琴』とは趣味も話題も噛み合わないけど、一緒にいられるだけで嬉しくなるし……」
「………」
斑目は黙っている。
- 520 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:51:12 ID:???
- 「あんた自身はあの子と過ごして、どうだったのよ。スージーはさ、あんたとアキバ行って、何もせずのんびり過ごしたのが一番楽しかったって言ってた……」
斑目は、スーと二人で秋葉原の大通りの一角に腰掛けて、夕方まで雑踏を見つめ続けたことを思い出した。
大したことは何も話さなかった。
でも、気持ちは満たされていた。
(『コユキ』も、俺と同じ思いでいたんだ……)
(俺は、あの子と一緒に、いたい)
斑目の脳裏に、あの日のスージーの表情がハッキリと浮かんできた。
愛おしいと思えた彼女の姿が、ぼやけた映像ではなく、鮮やかな色彩で浮かんでいた。
黙り込んだ斑目に向かって、咲が話し続ける。
「あ、それにね、一番大事なコトはバレンタインにメッセージとして送ったみたいよ。ほら、『ウルトラマンセブン』ってやつ」
「ウルトラセブンだよ」
「どっちでもいいわよ。斑目、あんたはそのメッセージに応えるべきだと思う。その話をしっかり思い出しな」
- 521 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:52:56 ID:???
- ホームに再び車両到着のアナウンスが流れた。
咲は時計に目をやり、立ち上がった。
斑目はまだ黙って座っている。
「アメリカン航空のボストン行きは毎日一便。時間は夜7時。今なら間に合うわ」
「………」
「黙ったままじゃ、手遅れになるじゃないの!」
こちらを見下ろしている咲の言葉に、斑目の体がピクっと反応する。彼の腰はまだ重い。過去の経験からくる諦めの心境が、足かせになっていた。
「お……俺……」
斑目の言葉が途切れた。
車両がホームの向こうから近づいてくるのが目に入った。斑目は咲を見上げて、ようやく言葉をつないだ。
「それに俺……手遅れっつうか、そういうの『慣れてる』から……」
次の瞬間、咲が斑目の作業着の襟を掴み引っぱり上げた。その体は抵抗することもなくホームの乗車位置まで引っぱられていった。
驚く斑目を、咲が睨みつける。まるで1年生の頃の横暴な『春日部咲』に戻ったかのように厳しい目だ。
彼女は、意を決したかのような表情で言葉を投げかけた。
- 522 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:55:51 ID:???
- 「そうやって、『また同じように』何もせずに諦めてしまうわけ!? 『今度の相手』は、あんたが踏み込んでくれれば応えてくれるんだよ。あんたはその気持ちを考えてない!」
(『また同じように』『今度の相手』……!?)
斑目の頭は混乱する。思わず咲を旧姓で呼んで、問いただそうとする。
「『春日部さん』、同じようにってまさか……」
斑目は、それ以降の言葉をつなぐことができなかった。
話すことも、息を吐くことすらできなかった。
それは咲が、斑目の胸ぐらを掴んだまま自分の方へと引き寄せて、彼の唇に自分の唇を重ねたためであった。
咲は両手を、硬直する斑目の背中にまわして身体を密着させた。
瞬間、電車がホームに入り、キスを交わす二人のもとに到着した。
電車のドアが開いた。
同時に、咲が唇と身体を離した。
咲は頬を染め、目線を横にそらしている。
「……人妻のキスよ。この果報者……」
「かっ、かか、かすかべさん!?」
「もう私、高坂よ……」
斑目は、気を失ってしまいそうになった。そんな彼の動揺をよそに、咲はハンドバッグから封筒を取り出して彼の作業着のポケットにねじ込んだ。
- 523 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:58:22 ID:???
- 「……あたしね、斑目とじゃれるのも、嫌いじゃなかったよ。あんた最初は嫌〜な奴だったし、あたしがコーサカ一筋なのは変わらないけど、………今まで結構楽しかった……」
「!!」
「でも、それも今日でおしまい! あんたは前を向け!」
咲は斑目を強引に突き飛ばした。彼の体は電車の車内へと転がり込む。
斑目が車内で身を起こし、ずれたメガネを整えて咲を見た時、すでにドアは閉じられていた。
ドアに張り付くようにして車内からホームを見ると、咲は笑顔で手を振っていた。
電車が走り出す。
斑目は、遠ざかる咲の姿をできる限り見つめていたかったが、すぐにその姿を見失った。あとは緑と民家のシルエットが、車窓を行き過ぎるだけである。
周りの乗客が、何事かとざわついている中、斑目はその場に座り込んでしまった。咲がねじ込んだ封筒に気づき、作業着のポケットから引っ張り出すと、封筒の中には成田空港までの乗車券・特急券と、スージーが出国するゲートの地図が入っていた。
彼は、その場に座り込んだまま、券と地図を握りしめて震えた。
「『春日部さん』……ありがとう……………さよなら……」
電車は新宿に到着し、斑目は急いで乗り換えホームに走りながら、携帯電話を掛けてみた。しかし、スージーの携帯にはつながらなかった。
斑目は、成田エクスプレスに飛び乗った。
- 524 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 01:59:56 ID:???
- 成田空港。午後6時50分。
斑目は、慣れない空港内を、地図を片手に走った。
スージーが出国するゲートに何とかたどり着きたいとの思いで、胸に会社名の入った作業着姿のまま、広い空港内を走っている。
しかし、国際空港という足を踏み入れたことのない不慣れな場所で、焦りもあって、ゲートを探すのに時間が掛かってしまった。
出国ゲートの前にたどり着いた時、もう時計は7時を回っていた。
斑目は顔面蒼白で、空港の女性職員に声を掛けた。
「あの、アメリカン航空のボストン行きは?」
「ちょうど離陸したところです。何かご用事でも……」
空港職員の言葉を、斑目は最後まで聞くことができなかった。
(間に合わなかった。結局、手遅れにしてしまったのかよ……)
斑目はしばらくの間、その場に立ち尽くし、呆然としていた。空港内を行き来する人たちの姿を、うつろに眺めている。
失意のうちに帰路につこうと、踵を返した時、大きな荷物を山積みにしたキャリーカートが正面から斑目にぶつかってきた。
「ぐわ痛ッ!」
カートを睨む斑目だったが、山積みの荷物の向こうから、見慣れた人物がヒョッコリと顔を出した。
スージーだった。
- 525 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 02:04:07 ID:???
- スージーはコートを羽織り、彼女には不釣合いな大きめのマフラーをかけている。金髪の上にベレー帽をかぶり、いつもの感情を表に出さない瞳を斑目に向けている。
「な……何で? 何でまだ空港にいるんだよ!?」
思わず叫んでしまう斑目。しかし、スージーは答えない。
「スー?」
スージーは2歩3歩進んで、改めて斑目の正面に立つと、彼の目を見据えて低い声で語り掛けた。
「ワタシハ『コユキ』ジャナインダ。ユナイテッドステイツカラキタ、スザンナ・ホプキンスナンダヨ」
この言葉を聞いた時、斑目はスージーが『ウルトラセブンのビデオ』を送り届けた理由を納得した。
スージーの言葉は、モロボシダンが最期の変身を前に、アンヌ隊員に自分の正体を告げた場面によく似ていた。
斑目は、スージーの問いかけの意味を理解した。
彼女は尋ねているのだ。
(コンナワタシデモ、オマエハアイシテクレルノカ?)と。
- 526 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 02:06:40 ID:???
- もう斑目は躊躇したり、ごまかすことはなかった。
彼は、アンヌのダンへの返答を思い返して、自分の言葉に置き換えた。
「アメリカ人でも日本人でも、コユキはコユキに変わりないんだ」
そして、もう一言だけ、緊張して真っ赤になりながら付け加えた。
今度は、自分の言葉だった。
「……お、俺がコユキの『居場所』になるから、コユキも、俺の『居場所』になってくれないかな。一緒にいてくれるだけでいいんだ……」
スージーは斑目から視線をそらして、ほんの少しだけ頬を染め、そのままコクリとうなづいた。
そして、コートのポケットから、もう離陸してしまったボストン行きの航空券を取り出して、その場で破り捨てた。
- 527 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 02:12:36 ID:???
- 京王線の某駅のホーム。時刻は8時になろうとしていた。
高坂咲は、斑目を強引に電車に乗せた後もホームにとどまり、ベンチに腰掛けて、3時間ちかくも電車を乗り降りする人たちの姿を見続けている。
彼女は、未開封の缶コーヒーを手元で転がしていた。斑目が飲むことなく、ベンチに起きっぱなしになっていたコーヒーだった。
もう、冷たくなっている。
咲の携帯が鳴った。田中加奈子からの着信だった。
『咲さん、ありがとうございます。さっきスーから連絡があって……グスッ……』
感極まったのか、加奈子は途中で言葉に詰まってしまった。咲は苦笑いしながら電話の向こうの加奈子を励ました。
「オイオイ泣くなよ。うまく行ったんだろ?」
『……はい!……咲さんのおかげです』
咲の顔に、ようやく安堵が広がって行く。
その一方で、彼女の胸中は、ある種の切ない想いにとらわれていた。
斑目の気持ちは、ある程度は察していた。ある時はおちょくり、ある時は怒りつつ、日々を楽しんでいた現視研時代。
今日、その決着がついたことに不思議な喪失感があり、彼女は駅のホームでその余韻を受け止めていたのだ。
「……ちょっと、強引だったかな」
自分の唇に指先を当てた。その時の感触を思い起こす。
「……ま、いいか。私は私の居場所に帰るよ。………バイバイ……斑目……」
咲は、再び携帯を手にして、愛する夫に電話を入れた。これから貴方のもとへ帰ります、と。
そしてほどなくして到着した電車に乗り、新宿への帰路についた。
- 528 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 02:15:33 ID:???
- 3月26日。土曜日。秋葉原の大通り。
前夜、成田空港から帰って来た斑目とスージーは、結局片時も離れることなく、一晩を一緒に、ただ一緒に過ごした。
そして、この日は朝から秋葉原にやってきたのだ。
スージーのカタコトの説明によれば、彼女は咲や加奈子、千佳のアドバイスを受けて、3月25日のボストン行きに敢えて搭乗せず、斑目が駆けつけて来るのを信じて待っていたのだという。
しかしスージーは、留学ビザの関係で一度は帰国しなければならない。
ボストン行き航空券をドタキャンした分、代わりの航空券代金は、新宿に集まった現視研の仲間たち、OB・OG、現役も含めた20人あまりに呼び掛けてカンパしたのだ。
(もうこれは、みんなに知れ渡っているということか……。みんなには頭が上がらないな)
そう思いながら、斑目は自分の隣に座っているスージーを見つめた。
二人はいま、歩道脇の手すりに腰掛けて、大通りを行き交う人の波をただ黙々と眺めている。
スージーの、いや、斑目にとっては『コユキ』の帰国までは、まだ数日のゆとりがある。それまではお互いに一緒にいるつもりだった。
特別な会話はない。
ただ、こうしているだけで満たされる感じがした。
澄み渡った空の下、斑目とスージーは陽が陰るまで同じ場所で寄り添っていた。
<おしまい>
- 529 :koyuki ll(最終回):2007/02/19(月) 02:23:38 ID:???
- 以上です。
お粗末様でした。
第2話の時のご感想で、>>469氏が「この話、結末が問題なのではないのだろう」と、書かれている通り、実は、咲と斑目との決着がテーマでもありました。
1話以降、斑目の思考にはたびたび、「春日部さん」が登場します。
その想いが決着(咲の側も)した先に、スージーへの告白があると思ったのです。
長々と湿っぽい話を続けてしまい、申し訳ありませんでした。
最後は、面白愉快に短編の「結婚式編」に突っ走りたいと思います。
妄想しすぎやで……。
どうも遅くまで失礼しました。
- 530 :マロン名無しさん:2007/02/19(月) 04:20:26 ID:???
- >koyuki最終話
読みました。すごく良かったです。
>咲と斑目との決着
すんません、咲と斑目の電車ホームでのアレで頭がいっぱいです。
また落ち着いたら感想を…。
イーケネェ マータ トッツァンダァー……
- 531 :真っ赤な誓いの中の人:2007/02/19(月) 15:22:59 ID:1R3oXK7D
- な・・・何だ・・・
目から水が溢れてとまらねえ・・・。
- 532 :マロン名無しさん:2007/02/19(月) 23:23:12 ID:???
- >koyuki
面白かった。GJ
3回目と4回目とをまとめて読んだ。舞台設定がうまいなと。特にホームの咲とマダラメ。
キスが唐突な感じがしたけどマダラメに対する劇薬としてアレ以外ない感じもした。 あとスーはもっと楽天的なきがするけど、どうだろう。
- 533 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 00:48:36 ID:???
- >ラジオのおじかん
こういう時事的な漫画やアニメの批評する会話、げんしけんメンバーには
ずっと続けてほしいですねー。DVDレンタルになってから観る派なので、
タイムリーなレビューに疎い身としては楽しいかぎりです。bloo 以下略
>koyuki最終話
がはー、スーが、スーがせつねえよおおお。絵板の大人の哀愁を帯びた
かんじのスーをイメージさせていただきました。やはり咲は偉大だった(違
ええと、長編投稿します。二万五千字くらいになっちゃいましたorz
流れに背いたかなり異端な内容です。かなり自分の好き勝手に書いた
内容ですがご容赦ください。背景はアン・斑です。
こちらのスーは無敵少女(?)になってます。
長引く場合には2分割するかもしれません。では十分後に投稿します。
- 534 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 00:55:49 ID:???
- これは絵板起源の「セカンドジェネレーション」-双子症候群-の独自設定
です。一応、「初期設定」とされるキャラクターの設定を拝借していますが、
独自に改編した部分もあります。
ここだけで完結されたバラレル設定ですので他のSS師さんたちや絵師さんた
ちの設定との差異はご了承ください。
□舞台設定
げんしけん最終回から二十年後の世界の東京郊外の新興都市
□登場人物設定
旧世代の登場人物は斑目晴信、アンジェラ・バートン、スザンナ・ホプキンス
のみの登場。その他メンバーは名指しも登場もしない方針。
□物語設定
物語はオムニバス形式で独立しており各自主人公が異なりますが、
前作の設定を一部引き継ぐ場合があります。一応、時間系列順に列挙して
おきます。
:げんしけんSSスレまとめサイト 「その他」カテゴリー収録
@「ぬぬ子の秘密」 主人公 服部双子(ぬぬ子) A.C.2026年
A「斑目晴信の憂鬱」 主人公 斑目晴信 A.C 2026年
B「アンの青春」 主人公 アンジェラ・バートン A.C 2010年
C「千佳子の覚醒」主人公 田中千佳子 A.C.2026年
D「春奈の蒼穹」 主人公 高坂春奈 A.C.2026年
E最終話 タイトル未定
- 535 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 00:56:48 ID:???
- □登場人物(○旧世代 ◎新世代 ☆オリジナル △シリーズ登場人物)
○斑目晴信
新世代たちの中学校に用務員として赴任。過去にアンジェラと短期間交際し
ており、認知していない息子が一人いる。最近、その存在を知った。
○アンジェラ・バートン (アン、アンジェラ)
米国にて社会心理学研究をしている。斑目との間に一子あり。
○スザンナ・ホプキンス (スージー、スー)
新世代の中学校に英語教師として赴任。容姿は昔と変わらない。
◎千里(ちさ) 十四歳以下同
笹荻の娘。妹の万理と二卵性双生児。性格は積極的で物事に頓着しない。
漫画、アニメ好き。
美少女愛好趣味もある。どちらかというと消費系オタ。叔母や親友の春奈と
ファッションやゲームの話題で気が合う。
オンラインゲーム「GX−ガノタックス」ハンドル名「サウザンド」搭乗機「ブラック・ラグーン」
◎万理(まり) 前作でうっかり万里の変換せずにいましたので他の方々の
設定との区別の為に万理で通します。
同じく笹荻の娘。性格は消極的で思慮深い。納得のいかない細事に拘る面も
ある。腐女子趣味で創作もする。漫画、アニメ好き。創作系オタ。親友の
千佳子と気が合う。
オンラインゲーム「GX−ガノタックス」ハンドル名「ミリオン」搭乗機「スノーホワイト」
◎千佳子
田大の娘。温厚で大人しい性格。父親に似て凝り性で几帳面な面も。漫画、
アニメ好き。消費系オタ。腐女子趣味。コスプレは嫌い。
思春期の難しい年頃で母親のコスプレ趣味には嫌悪感。その後何かの
きっかけで目覚める可能性あり。
- 536 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 00:57:38 ID:???
- ◎春奈
高咲の娘。ボクササイズをしている。オタク趣味は無いが、父親の影響で
オンラインゲームの格闘ゲームが好き。
ファッションにも興味があり、アバターの服などのデザインを趣味にして
いる。
父親の天才性?は引き継いでいないが、母親のリーダーシップの素質の萌芽
がありそう。
オンラインゲーム「GX−ガノタックス」ハンドル名「アップルシード」搭乗機「キングクリムゾン」
◎服部双子(ぬぬ子)
突然、転校してきた厚底メガネのおさげの少女。メガネを取ると絶世の
美少女という古典的設定。その他にも秘密が多そう。
☆アレクサンダー・バートン(アレック) 十五歳
このパラレル設定での完全なオリキャラ。斑目とアンジェラの息子。
無責任な父親を拒否。
その反動でオタク趣味も寄せ付けない。しかし思いっきり素養がある。
母親似のスポーツマンで格闘技を習得。
オンライン格闘ゲームには興味がある。
△ミハイル・ゴットルフ 十四歳
「春奈の蒼穹」のみ登場 日本の大阪出身の母親と某国人とのハーフ 双子の妹がいる。
ガノタ オンラインゲーム「GX−ガノタックス」ハンドル名「大佐」搭乗機「レッドフォックス」
△アナスタシア(アニー)・ゴットルフ 十四歳
「春奈の蒼穹」のみ登場 日本の大阪出身の母親と某国人とのハーフ 双子の兄がいる。
あやしい大阪弁を話す。「GX−ガノタックス」ハンドル名「中尉」搭乗機「グリーンラクーン」
- 537 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 00:59:09 ID:???
- 第一章 春奈の独白
私の名は春奈。
冬休みを迎えようとする直前、みんなは長い休みの日をどのように過ごそうかという話題で持ちきりに
なりますよね。私たちの通う中学校もまた例外ではありません。
でも私たちには今年の冬休みには特別な事が待ち受けてました。私たちというのは私と千里の事。
そしてそれを思うと私の心は浮き立つ。と、同時に悩ましい事柄も私の心をとらえている事も
否定できないのです。
一つは楽しみにしているイベントが保護責任者を二名必要とするというのに、私の両親が多忙で同行
できないという事、そしてその為にそのイベントへの私の参加に難色を示しているという事でした。
そして千里の家でも同様に難しいらしい・・・。
そしてもう一つは・・・。と、その前にそのイベントについて説明しなきゃいけませんね。
私、今、国際公式競技として認められて久しい競技の校外活動サークルに参加しています。
スポーツか何かですって? ちょっと違うなー。私が参加しているサークルの競技種目は
オンラインのバトル・シュミレーションゲーム。チームを組んでバーチャルでのサバイバル
を競い合う競技。
私たちは厳しい予選を勝ち抜き、とうとう国際予選に出場する事が決まりました。国際予選は
遠征先で行う。これまでのバーチャルとは違い、AIが搭載された最新機種を操作して、
戦い抜く栄誉を与えられたのです!!
千里はチームの要で主力。彼女の力で勝ち残ってきたと言っても過言ではありません。
そして遠征期間はその「機械」の操作訓練も含めたものとなります。
私は天にも昇る気持ちになりました。でもここで問題が発生。一つは先に述べた事。
そしてもう一つは・・・。チームの主力というわけではありませんが、これまで私たちと一緒に闘ってきた
レギュラーが急に家の用事で参加できない事が分かりました。
- 538 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:00:23 ID:???
- この問題に私は頭を抱えました。何故ならこの競技は、公式に公共機関に正式なID登録を取得
しなければ参加できないからです。
オンラインゲームという性質上、本人証明が重要となるので、網膜スキャンのID登録が必須と
なります。
そこで私はぬぬ子ちゃんに代理の頭数でいいからと拝み倒して登録申請してもらいました。
よく分かりませんが、この網膜スキャンシステムは何でも個人個人違う網膜の文様を、数字化、暗号化して
瞬時にコンピューターが解析してしまうという最新機能を備えた機械でするといいます。
ところが・・・。
ぬぬ子ちゃんと一緒にきていた私は、審査の間、数学オタらしい審査員の訳の分からない
「語り」を聞く羽目になってました。
「いいかね、数字には『黄金比率』というものがあってだねえ・・・一見無秩序に見える自然界にも
この『黄金比率』が存在していて・・・完璧な美を・・・網膜スキャンはその芸術的数学美を・・・」
この審査員の「語り」をハイハイと空返事で聞いていると、なにやら異変が起きたらしく、奥で
騒ぎが起きました。どうやら何億桁という天文学的数字を解析できる網膜スキャンの機器が、
ぬぬ子ちゃんの網膜を解析できなくて動作不全を起こしたらしい。
要するに、ぬぬ子ちゃんの『魔?聖?眼』は数千万円する機器を破壊したのです・・・。頭痛てえ・・・。
「力になれなくて、ごめんなさいです〜。」
と、ぬぬ子ちゃんは申し訳なさそうに謝った。ぬぬ子ちゃんのせいではないので仕方が無い (涙)
とにかく数少ない登録申請所の機器が使用不能になったので新規の登録が近辺ではできなくなって
しまいました。
こうなったら、最初のサークルの立ち上げの時に「無理やり」数そろえの為に部員にした千佳子と万理しか
いません。二人はすでに空登録だけしていますから。
- 539 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:01:12 ID:???
- ゲームに興味が無い二人を説得するのは難しい。そこで私は計略、陰謀を用いて二人を参加させようと
しました。
しかし千佳子はおっとりしているようで案外抜け目無い・・・。即座に「罠」の匂いを嗅ぎつけ、「罠」を軽く
かわしてしまいました。あっあの腹黒女・・・。
しかしめげている場合ではありません。双子の一人、万理は逆にしっかりして警戒心が強そうに見えま
すが、とても抜けてます。まんまと騙されて「罠」に引っかかってくれました。
ああ、なんて人のいい愛らしい双子たち!!
空港で、にこやかに「がんばってー」とハンカチを振って見送りした千佳子を後にして、そして飛行機に
乗る時にも「?????」マークを頭にたくさんつけて搭乗した万理と千里と他の部員たちと一緒に
私たちは空港を飛び立ちました。
保護者の件? それは斑目さんとスージー先生を保護者に仕立てあげて何とかなりました。
そして私たちは、遠征地の北海道のさらに北、最果ての国境の島、武無知島に降り立ちました。
暖冬ぎみの天候は北辺に来た事を感じさせてくれませんでした。でも北の蒼穹は澄みきって輝いてました。
「よっしゃー!! まあ贅沢は言えんか!!」と私は腰に両手を当てて、遠征施設の建物の前に仁王立ち
して、武者震いする気持ちを抑えながら言いました。
「おいおい、それは無いだろう・・・。」と斑目さんは苦笑しながら言います。
「ナ・・・ナンナンデスカ?
ココドコデスカ?
ナンデアタシ
ツレテコラレタンデスカ?」
とスージー先生は両手を握りしめ腰を振りながら、夕比奈みるくの真似をしています。
万理はこめかみに「怒」のマークつけながらいきりたってます。
「ここはどこ?! 家に帰せー!! 私の冬休み返せー!! 納得イカネー!!」
- 540 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:03:28 ID:???
- 第二章 GX−ガノタックス
斑目はその立派な施設を見上げながら思わず感嘆の声を上げた。
「すごい!! 何この無駄な立派さは!!」
「ふふん、当然よね。全国から選抜されたチームが出場する国際公認公式オンラインゲーム・・・、
『GX−ガノタックス』の本選会場ですからね!!」
と春奈は自分に関係ないのに誇らしげに言った。
「あのねえ・・・、今日ここに全国から私たちのチームのメンバーが集まるんよ。」
と千里は不機嫌な万理をよそにはしゃいでいる。
「え? チームの人たちと今日初めて会うの? ああ、そうかあ、オンラインゲームだものねえ。
俺たちの時代とは違うか。それにしてもゲームの割には仰々しいくらい立派な・・・。」
すると施設から職員と思われる女性が出てきて言った。
「ああ、チーム『GENSIKEN』の方々ですね、ようこそ。私はあなた方の担当です。あら、こちらの
金髪の可愛らしいお嬢さんも出場者ですね。」
職員は子供たちと一緒になってキョロキョロしているスージーの方を向いて言った。
「いえ、違うんです。この人は保護責任者の一人です。」と斑目は言った。
「え? この人が?!」
その当の本人は子供たちとワーとはしゃぎながら施設内に駆けていった。
「スージー先生!! 子供たちと一緒にはしゃいでどうすんです!!」
そう斑目は叫んだが、スージーはお構い無しで立ち去っていく。
(ナンデ俺が本人に代わって説明せにゃならんのだ・・・。)
斑目はシブシブそう思ったが正直こういう説明するのにも慣れた。スージーも説明する事に飽き飽きして
いるし、本人より他人に説明してもらった方が手っ取り早いのも事実だった。
そしてスージーは都合が悪いときには子供の振りをして面倒な事は斑目に押し付ける。
そんな役割が当たり前のようになってきている。
- 541 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:04:26 ID:???
- 斑目は本来ならスージーと一緒に聞かなければならない保護責任者の役割について、職員からレクチャー
を受けた。仕組みはいまいちピンとこなかったが問題が無ければ特に面倒な事は無かった。
要するに名目上、未成年者が多いために外部の建前と形式上必要との事だった。
ロビーで職員から説明を受けていると、そこに春奈たちが戻ってきた。
「だから、わたしはゲームには参加しないからね!!」と万理は叫んでいる。
「ごめんねー。だから形だけ参加している振りすればいいって!!」と春奈は手を合わせて謝っている。
なだめ役は千里にまかせて春奈はフーと息をついてロビーの斑目の座っている椅子の隣に座った。
双子たちは他の施設を見学しに離れていった。
「斑目さん、説明終わった? ごめんねー、面倒事に巻き込んで。」
「春奈ちゃんこそ色々大変そうじゃない?何か飲む?」と自動販売機で飲み物を買おうとした。
「あ、ありがとう。他のメンバーとも顔合わせしたし、後はチーム編成と実際の『機体』を選定して演習する
予定をリーダーたちと打ち合わせるだけね、今日の予定は!!」
「さすがあの『お母さん』の娘だけの事はあるよ、リーダーシップあるよね。」
「アハッ 母さんも言ってたけど別に特別じゃないよ。斑目さんの時は素直な人たちばかりだったからって
笑ってたよ。それよりも気を使う事が多いよ。皆、今日初めて会った人たちばかりなんだもの。」
「そっそうかい。それにしてもすごいゲームだね。時代が違うなあ。こんなの誰が考えるんだろうね。」
「父さん。」
「へ?」
「だから父さん。といってもその事知っているのは少ないんだけどね。」
- 542 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:05:29 ID:???
- 斑目は初めてこのゲームの背景と目的を聞いた。
要するにこういう事だそうだ。元々ゲームは軍事用に開発されたシステムの転用で開発された。
しかし軍事兵器の近代化によって白兵戦の機会は減った。しかしテロ対策や市街戦での死傷者が
無くならない訳では無い。そうしたエキスパートを長い時間とコストをかけて育てても一瞬にしてその
苦労は潰える。死傷者が増えると反戦の機運が高まる。
そこで遠隔操作の白兵戦兵器の開発が各国で研究された。
結局、市街戦等の建物や施設への潜入に最も適した形は人型という合理的な結論に帰結した。
そして開発された兵器のAIの開発やモニター等の情報収集に、逆にゲームからのシュミレーションの収集
するシステムが採用され、軍需産業がそれをバックアップしているという。
「はー、彼がねえ・・・、てっきりエロゲーや格闘ゲームの仕事していると思ってた・・・。」
斑目は驚いた表情でポカンとしていた。
「それだけじゃなく、各地の施設も領土問題が曖昧な軍事中立地帯に設立されて、各国の技術力の
デモンストレーションの場になってるってわけ・・・。ここの勝敗が直接影響するわけじゃないけど、領土交渉
の影響力も無視もできないって事!!とりあえずここは『連邦』の管轄地帯で、むこうが『ゼノン社』の管轄。」
「『連邦』!?」
「『重機連合邦栄産業』の略。国産の『機体』の開発を目指してるの。」と春奈。
「さっきから聞く『機体』って?」と斑目は聞いた。
「そのうち分かるよ。こういう父親を持つと大変よ、娘は!!」
「やっぱり、春名ちゃんのゲーム好きもお父さんの影響かい?」と斑目は少し曇りがちな春奈の顔を
覗き込みながら聞いた。
「・・・んー、まあねー。子供の頃に父さんとゲームで遊んで・・・三秒で撃沈されて・・・私が泣き出して・・・
そういや母さんが激怒して父さんが動揺して謝ってるの見たのあれだけか・・・。」
(あいかわらず容赦ないというか・・・鬼だな (汗))
追憶に心を奪われている春奈の表情を覗き込みながら斑目は思った。
- 543 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:06:32 ID:???
- そして春奈がそのうちわかると言われた『機体』について、斑目はすぐ知る事になる・・・。
演習中にそれは起こった。『相手チーム』、すなわち仮想敵のR国代表の『MANKEN』の斥候部隊が
予想だにしない地点を襲撃したのだ。つまり新型の国産機の試作機が収容されている倉庫を!!
斑目は施設の見学室でそれを見た。それは斑目の良く知る姿だった。あれは・・・。
「ザ・・・○ク?!」
「違います。『サク』です、『サク』!! 駄目ですよ、間違えちゃ、権利関係とか煩いんですから!!」
と職員は斑目を注意した。
- 544 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:07:40 ID:???
- 第三章 奇襲攻撃
そのよく見知ったのに酷似している『機体』はモニタールームのスクリーンにはっきり映っていた。
CGでも何でもないリアルな存在として・・・。しかし大きさは人間と同じ等身大で、遠隔操作に
よって動いてはいたが。
モニタールームの職員たちがざわめきだした。
そして演習に出ている春奈たちに連絡を取った。春奈たちは実際にはモニタールームの隣のコントロール
ルームに各自隔離されている。「操縦」期間はロックされて外には出られない。彼らは、輸入品の『機体』、
A国製の「バトルスーツ」、『イーグルM0079型』を操縦して演習中だった。
『アップルシード』をハンドル名にする春奈が叫んだ。機体は[キングクリムゾン]と名付けていた。
[キングクリムゾン]=【春奈】『何々?どういう事? 規定の演習期間が延びるかもって話じゃ?』
『それがついさっき「開戦」通告がきたんだよ。規定には違反していない。』と職員。
[キングクリムゾン]=【春奈】『きっ汚ねー。救援に間に合わないよ。新型機のモニターってまだ着かないの?』
『到着、遅れている。こうなったら登録している彼女に動かしてもらうしかないね。』と職員。
モニタールームにいる人々の視線が見学室でのんびり落書きをして遊んでいる万理に一斉に注がれた。
万理は状況が飲み込めずにきょとんとしている。やがて意味を理解して大騒ぎした。
「ムリ!! ムリ!! あたし操縦できるわけないじゃん!! 一っっっっっ回も触ったこと無いんだよ?!」
[キングクリムゾン]=【春奈】『万理しかいないのよー。操縦は大丈夫。AI化されているし、移動して逃げて
くれるだけでいいから。』
[ブラック・ラグーン]と呼ばれるバトルスーツを操作し、『サウザンド』をハンドル名とする千里も懇願した。
[ブラック・ラグーン]=【千里】『まり〜。たのむ〜。アイスおごるから〜。負けちゃう〜。』
- 545 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:08:39 ID:???
- 「ムリ!! ムリ!!」とかぶりを振って嫌がったが職員一同、周囲の雰囲気からも断りきれずに嫌々
スーツを着用した。
「何これ? オムツまでするわけ? 嫌だ〜。」
ブツクサ言いながらコントロールルームに万理は向かった。新型機のコントロールルームは万理の網膜ID
を認証した。
「問題は・・・一度登録するとパイロット変更できないんだよな・・・。」
「まっ、しょうがないんじゃね? ここで破壊されるよりは・・・。実戦装備は先の話だったし元々。」
職員たちの話し声をそばで聞きながら斑目は思った。
(これって・・・本当にゲームでつか(汗))
モニタールームのスクリーンには『それ』が動き出す姿が見えた。よろよろと不器用に立ち上がろうとして
転んでいる。斑目は目を疑った。あれはまるで・・・。
[スノーホワイト]と名付けられたその白い機体のバトルスーツはゆっくりと立ち上がった。『ミリオン』の
ハンドル名で登録している万理は叫んでいる。
[スノーホワイト] =【万理】『ぎゃー、それから?どうすんの?これ?』
しかし逃げだすのが遅かった。対戦相手の斥候バトルスーツのサク三体が万理の前に現れた。
[スノーホワイト] =【万理】『だから嫌だって言ったのに〜。どうすんの?どうすんの?』
パニックになった万理に必死に通信で支持を春奈は出し続けた。
[キングクリムゾン]=【春奈】『前のボタンに機銃の発射ボタンがあるから!自動標準で押すだけだから!!』
[スノーホワイト] =【万理】『どれ?これ?ああ、わかんないよー』
しかしどうにか機銃は発射された。頭部から!! サクの一体が機銃に破壊された。
しかしすぐに機銃は壊れて弾丸が出なくなった。
- 546 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:09:34 ID:???
- 「あー、やっぱり壊れた。だから無理だって言ったんだよ。頭部に装着しても砲身が短すぎるんだって!!」
「いや、あれは譲れないだろうー。間接部のデザインは妥協したんだから。デザインのとおり造るとプラモ
みたいにぶっ壊れるって技術屋どもが騒いだし。」
職員たちは他人事のように話している。
「あのー、すいませんー。あれはどう見ても機○戦・・・」
斑目は職員に話しかけた。
「あー、駄目駄目!! いいですか!! あれはN本「『重機連合邦栄産業』製、『連邦』製、国産初号機、
重装機兵、バトルスーツ「頑春」です!! いいですか!! 最近、権利関係が・・・」
「あ・・・ソウデスカ・・・。」と斑目は引っ込んだ。
サクの機銃の攻撃は[スノーホワイト]には通用しないようだった。
万理は春奈の指示で慌てて背中のライトサーベルを引き抜いて、サクに振り下ろした。サクはあっさりと
やられている。また無我夢中で振り回した手が、サクの機体を紙のように引きちぎっていた。
「さすが純国産、部品の一つ一つを特注、オーダーメイドで作った甲斐があったってもんだ。」
職員たちは感心したような様子でその戦闘シーンを見ていた。
斑目はといえば、リアルなそのシーンに呆然としていた。だからその様子をいつの間にか、老齢の紳士と
スージーが、傍で食い入るように見ていた事に斑目は気付かなかった。
「かっ会長!!」と職員は叫んだ。
その知的そうで気難しげな紳士はその試作機が圧倒的勝利を成した事を確認するや、とたんに表情を
崩して、となりにいたスージーの手を取って「やった!!やった!!」と飛び跳ねて喜んだ。
そしてスージーもそれに合わせてキャッキャッと飛び跳ねて喜んだ。
- 547 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:10:53 ID:???
- その様子を斑目と供に唖然として見ていた職員が「かっ会長?! その方、お孫さんかどなたかですか?」
と聞くと、『会長』はハッと我に返ってスージーの手を離して咳払いをした。
スージーも手を離すや知らん振りをしてスクリーンの様子に目をやっていた。
『会長』は顔を赤くしてチラチラとスージーの顔を見ながら言った。
「ごっごほん。いや知らない。とにかく・・・君たち・・・よくやった。」
『会長』に褒められて職員たちは大喜びで、スージーとの一件はすぐに彼らの念頭から去っていた。
しかし斑目はどこかでその様子を前にも見た気がしたが思い出せなかった。
斑目はスクリーンに目を移して思った。
子供たちが戦闘を終えて戻ってくる・・・。さあ、俺は何て声をかけてあげればいいだろう?
【私もよくよく運のない男だな】かな?それとも・・・。
*******************************************
同じようにその光景を見ている男女が遠く離れた地にいた。少年の方はつぶやいてこう言った。
【認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを・・・】
隣にいる少女は言った。
「いつもの事やん、にいちゃん。ホンマ間抜けやわー。」
- 548 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:12:30 ID:???
- 第四章 「赤い狐」の夜襲
遠く離れた地、すなわちゼノン社の施設のモニタールームで彼らは斥候部隊の敗北の光景を見ていた。
少年の方は痩せ過ぎとも思える体型の上、長身がなお一層その痩せ過ぎの体を弱々しく見せていた。
その細面の顔立ちは均整の取れた女性的とも見れる柔和な表情をしていた。
一方の少女の方は背が低くやや小太りではあったが、やはり目が大きく均整の取れた表情は美人の
部類に入るとも思われた。しかし意思が強さを秘めた目にむしろ男性的な印象さえ周囲に与えていた。
二人は兄妹のようであった。しかも双子の兄妹。
兄のほうは周囲から「大佐」と呼ばれている。それがハンドル名らしい。彼の本名はミハイル・ゴットルフ
という。そして妹の方は「中尉」と呼ばれていた。本名はアナスタシア(アニー)・ゴットルフ。
しかしこれも本当の名前というわけではない。兄妹には目的があった。
「緒戦から三機失うってまずいんとちゃう?」
「いつでも挽回できる。連邦の新型機の性能を確かめただけで十分だ。」
「どうするん?」
「夜襲をかける。『レッドフォックス』の力を見せてやろう。お前の『グリーンラクーン』も出撃してくれ。」
「うわ、規定違反じゃないけどエゲツないな〜。」
二人の会話をそばで聞いていたゼノン社の職員たちはヒソヒソと話をしていた。
「あの二人・・・東洋人?」
「いや、何でもハーフだそうだ。父親はほれ、例の・・・。」
「ああ!!バトルスーツの開発主任の!!」
「そうそう。父親が何でもN本のなんかのイベントに参加した時に母親と知り合ったとか・・・。」
「兄貴の方は気弱そうだよな。」
「あれが仮面被ると二重人格のように性格豹変するんだよ。『レッドフォックス』だよ。」
「あれが『リム戦役』の英雄!!」
- 549 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:13:40 ID:???
- **************************************
施設のロビーで斑目は春奈と話をしていた。
斑目は春奈に聞いた。「どう? まりちゃんの様子は?」
「いやー、もう話が違うってゴネまくり。ちさがなだめているけど協力は難しいね。」
「ははっ、元々ああいうの嫌いなんだろうね。」
「無理やり連れてきたから無理強いはできないけど・・・。新型機の登録は変更できないし・・・。」
「本当のモニター予定者って?」
「うん、ハンドル名を「ホワイトスネイク」っていうんだって。そろそろ着くって聞いてたんだけど・・・。」
「『白蛇』でつか・・・(嫌な予感・・・)」
「今、着いたらしいよ。あ!!来た来た!! あれ? アレック?」
予想だにしない人物の登場に一番驚いたのは春奈よりも斑目であったろう。そしてアレックの方も。
「ハルナ?それにマッ・・マダラメさん・・・。」 夜半にやっと到着したアレックは意外な再会に少し動揺
していた。
「やっやあ、アレック・・・君。おっお母さんは? 君一人かい?」とどもりながら斑目は聞いた。
「僕一人です。もちろん責任監督者は別にいますが・・・。」と顔を背けながらアレックは答える。
二人の関係を知らない春奈は不思議そうな顔をして二人の顔を見ながら言った。
「??? ええと、じゃああたし歩哨の当番だから行くね!!もっとも夜襲したチームなんていないから
無意味な当番なんだけどね。」 そう言って春奈は駆け足で立ち去っていった。
残された二人は気まずい雰囲気を感じて、お互い差しさわりの無い会話で間をつないだ。
「君がA国の助っ人とは驚きだ。」
「ええ、前からGX−ガノタックスには興味ありましたから。一応A国とN本は『同盟国』ですからね。
マダラメさんこそどうして?」
斑目はここにくるようになった経緯を簡単に説明した。
「へえ、どこで人が関係しているか分かりませんね。じゃあ、「ブラック・ラグーン」ってチサトのことだった
んですね。」
- 550 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:15:07 ID:???
- 「ちさちゃん、有名なの?」
「すごいですよ。シューティングでいけば世界クラスです。」
「ふーん、春奈ちゃんは?」
「個人競技では世界ランクではありませんが、接近戦の格闘技ではけっこういい線いってます。でも
この競技は近代兵器使用の白兵戦を模倣した競技ですから総合成績では普通ですね。」
「はー、世界の壁は厚いんだね。君は助っ人にくるくらいだからすごいんだろうね。」
アレックは褒められて少し照れくさそうな表情を見せながら言った。
「いえ、それほどでは無いです。格闘技なら悪くは無いですが・・・。ただ『士官』の指導検定を受けてます
から、そちらの指導を依頼されています。この競技は団体戦ですから。」
「ほっ本格的なんだねえ(汗) ナンデ遅くなったの?」
「本当は新型機のモニターも依頼されていたんですが、純国産を理想とするN本としては本当は他国の
モニターは受け入れたくなかったのかもしれません。色々手続きに時間がかかりました。それに僕の
専用機、「ブルーディスティニー」を移送するするのにも時間かかりましたから。」
「何やら『大人の事情』が渦巻いてますなー(汗) 」斑目は苦笑しながら答えた。
「慣れました。」
そういうアレックの姿に、妙に年の割りに大人びた、そして醒めた諦観を見て、自分を見ているようで
斑目は胸が痛んだ。
(俺のせいでないとは言い切れまい・・・)
その時、警報が鳴り響いた。
「何だ?! ナンデスカ?!」と斑目は驚いてキョロキョロした。
「襲撃の警報です!! まさか!! 夜襲なんて!!」
アレックはコントロールルームに駆け出した。
コントロールルームに駆けつけた斑目はそこで驚くべき光景を目にした。
対戦相手のサクが『国境線』に侵入している。そして一般機の他に隊長機と見られる赤と緑の機体が
次々と味方の歩哨をなぎ倒している姿が見えた。
- 551 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:15:57 ID:???
- 春奈と千里らしい機体は防戦一方で苦戦している。二人の乗る機体は何か昔のアニメのDVDで
観たようなデザインに似ていた。
「あれ・・・ボトム・・・。いやバイファ・・」と斑目
「駄目です!! あれはA国製『イーグルM0079型』シリーズです!!」と職員。
「はい、ワカリマシタ・・・。」 どうも触れてはいけないらしい。
「全軍ヲ指揮スル者ガ弾ノ後ロデ叫ンデイテハ、勝ツ戦イモ勝テンヨ」
ギョッとして声の方を向くと、いつの間にかスージーが隣にいる。
(一体どこにいるんだろう? 猫みたいに行動が読めないな・・・)
斑目がスージーに一瞬だけ目をそらしている間に戦況が一変した。
アレックが[ブルーディスティニー]で救援に駆けつけたのだ。
- 552 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:18:13 ID:???
- 第五章 黒い三連弾
[ブルーディスティニー]=【アレック】『こちらホワイトスネイク!! 救援に来た!!』
ブルーディスティニーの蒼い機体の後ろには後援の部隊が後続としてきていた。
[キングクリムゾン]=【春奈】『たっ助かる〜。例の「レッドフォックス」らしいのよ!!』
黒ずんだ赤色の機体のキングクリムゾンは機銃を乱射しながら敵の進撃を防いでいる。
[ブラック・ラグーン]=【千里】『こちらサウザンド!! 春・・・アップルシード!! 残弾が残り少ないよ〜』
黒色の機体の千里から泣きが入ってきた。
[キングクリムゾン]=【春奈】『すぐに後続隊と交代して!! 破損兵も一緒に連れていって!!』
「何か劣勢だな・・・。救援隊も圧倒しているぞ。噂以上じゃね?レッドフォックス?」
「だな。新型機出す?つっても素人回してもぶっ壊されるだけだしなー。こりゃ負けかー。」
白けた態度で職員たちはその戦闘を眺めている。
騒ぎに気付いてモニタールームに来ていた万理は職員たちの言葉を聞いてグッと唇をかみしめた。
それに気付いた斑目は慌てて取り繕った。
「気にする事無いよ。君は元々ゲストにすぎないんだから。」
「でも・・・でも・・・。」
「ソレデモ男デスカ!軟弱モノ!!」
スージーは無表情で例のアニメのセリフの真似をする。
「スージー!! それにまりちゃんは女の子だって!!」と斑目は怒鳴る。
万理はグッとこぶしを握りしめて言った。
「わたし、行きます!!」 そう言って万理は走り出した。
「ありゃ?!」
- 553 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:19:26 ID:???
- 白い機体[スノーホワイト]が出撃した。
「むっ無茶じゃないか? 怪我はする事無いけどあんなリアリティーのある戦闘シーンに出くわしたら
まりちゃんショック受けちゃうよ!! それに一回乗っただけで演習もせずに操縦できるはずない!!」
スージーは平然とした表情で斑目を見て言った。
「過保護ね。」
カッと顔が赤くなった。どうしてこうスージーは俺の弱さを鋭くえぐるのか・・・。
[スノーホワイト]=【万理】『ち・・・サウザンド!! アップルシード!! 今行きます!!』
よたよたとした足取りでスノーホワイトは駆け出す。
[キングクリムゾン]=【春奈】『ミリオン?! 無茶しなくていいって!!』
[ブラック・ラグーン]=【千里】『いまミリオンに出てこられても補助できないよ!!』
[スノーホワイト]=【万理】『大丈夫、大丈夫・・・。見える・・・、私にも見える!!操縦方法が分かる!!』
[ブラック・ラグーン]=【千里】『ああ、なんか・・・ミリオンの見ているものが私にも感じる・・・。』
[キングクリムゾン]=【春奈】『えっ?! うっ、うそーーー。』
「もう何が起きても驚かないよ・・・。ホント(汗)」
驚かないと言いながらも斑目は彼女たちのやり取りを聞きながら冷や汗を流していた。そして続けて言った。
「サイコメトリー? テレパシー? 『事件』の時の力が目覚めた? ニュ・・ニュータイプでつか?」
スージーはさほど驚かずに言った。
「散々『ニュータイプ論』はサブカル系でも論じられてましたね。新人類や進化という概念について真剣に
論じる人もいたようです。でもアンジェラはこうした感応能力はむしろ『原初的』、『プリミティブ』な力と
思ってるみたいです。」
斑目は思った。
スージーがふざけた口調で話さず、しかもドキリとする名を口にした時ほど、スージーの真意を
測りかねる時は無い。何を考えているか分からないキャラがさらに不可解で不思議なものに思えた。
- 554 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:21:28 ID:???
- [レッドフォックス]=【ミハイル】『来たか!!来たか!!新型!!【見せてもらおうか、連邦軍のPEE
スーツの性能とやらを】!! わはは、先の戦闘でど素人なのはお見通しよーーーー』
[グリーンラクーン]=【アニー】「うあ、エゲツねー。勝てる相手だとさらに増長しまくりやわ。」
[レッドフォックス]=【ミハイル】『さあ、きなさーい!! あれ? ハペ、フヒ、ヒデブ、タワバ〜』
レッドフォックスはスノーホワイトに消し飛ばされた。元々AIには剣術の動作がすでに組み込まれている
が、スノーホワイトの動作は剣の達人が相手の初動動作を先読みする『先の先』を読むような動きを
見せた。
[レッドフォックス]=【ミハイル】『な!! 速すぎる!!』
「これも超能力でしょうか? まりちゃんが剣術を知ってるわけないよね〜。」と斑目
「動作はAIの助けでしょう。『達人』は相手の目の動きや筋肉の動きで先を読むと言います。日常生活
でも、人の脳は一秒先を『予測』して行動しています。それが先鋭化されれば達人と呼ばれます。」
「ちさちゃんのスナイパーの狙いも相乗効果でどんどん先鋭化してるみたい・・・。」
[ブルーディスティニー]=【アレック】『すっすごい・・・。チサトはマリの死角になる相手を確実にシュート
ヒムしている・・・。弾道の楕円軌道も読みきっている・・・。』
[キングクリムゾン]=【春奈】『万理も後ろに目があるみたいに後方からの攻撃を回避しているよ・・・。
もうあたしら凡人の出る幕じゃない・・・。』
[レッドフォックス]=【ミハイル】『にっ逃げるぞ!!【ええい!連邦軍の○Sは化け物か!!】』
[グリーンラクーン]=【アニー】『うわ、勝てないと分かると変わり身早や!! せやけどええ判断や。
退避せな〜。」
****************************************
- 555 :春奈の蒼穹:2007/02/20(火) 01:25:30 ID:???
- げげ!! 容量を考えてませんでした。新スレ準備しておきますが
テンプレ用意してなかったので、間に合わせになるやも。
すっすいませ〜ん。 建てたら貼り付けます。
- 556 :春奈:2007/02/20(火) 01:55:43 ID:???
- げんしけんSSスレ13
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1171903993/l50
時間かかっちゃいました!! 急造のテンプレですのでご容赦!!
- 557 :目眩く夢酔い:2007/02/20(火) 16:52:17 ID:???
- えっと、まだこのスレでいいのかな?
自分としては、2作目ですが書いてみました。
タイトル『目眩く夢酔い』
―荻上!!
彼女の表情が微笑みに変わったとき、私はフェンスから手を離した。
落ち際に見えたのは、微笑んでる自分の姿だった。
ハァッ、ハッ、ハァ・・・
体中、嫌な汗でベットリしてる。
荻上は笹原と付き合い始めてから、あの悪夢で目覚めたのは初めてのことだった。
それは彼女に再会したのが理由だろうか。
―荻上!?
笹原とのデート中。
懐かしい声に、荻上は振り返った。
荻上「中島っ・・・!?」
中島「やっぱり荻上だぁ、コミフェス以来じゃん」
あの悪夢以前の関係のように、中島は馴れ馴れしく接してきた。
中島は荻上に、就職活動の最中であると話した。
中島は立派な社会人の女性のように、凛々しい出で立ちをしていた。
中島「ふーん、やっぱり彼氏だったんだ」
- 558 :マロン名無しさん:2007/02/20(火) 16:54:10 ID:???
- 途中割って入って悪いが、スレ13で投下した方がよろしくないか?
げんしけんSSスレ13
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1171903993/l50
- 559 :目眩く夢酔い2:2007/02/20(火) 16:54:43 ID:???
- 笹原は一歩引いた感じで、中島と会話を交わした。
中島は、自分も東京の大学に在学してると話した。
その後。中島は強引に、荻上と再び会う約束をして去っていった。
そして今日が、その約束の日。
中島は是非、笹原も一緒にとのことだった。
荻上は、笹原の卒業式のときのような出で立ちで、笹原と共に出かけた。
中島「ごめーん、お待たせー」
その声に振り向いたとき、荻上に衝撃が走った。
中島の横には、一緒にコミフェスにきてた中学時代の腐女子仲間いた。
その後ろにいる、眼鏡をかけた男性。
荻上「えっ!ま・・・巻田くん!?」
巻田「お・・・荻上さん!?」
荻上は信じられないという感じで、両手で口を押さえた。
巻田が少し胸元の開いた、白いシャツを着てるのが印象的だった。
巻田「中島さん!これ、どういう・・・」
事情を知らなかったのか、巻田は困惑していた。
巻田は、やり切れないという表情で去ろうとした。
中島「まぁまぁ、いいじゃーん」
中島は去ろうとする巻田の腕に、両手と胸をくっつけながら引き留めた。
以前の出で立ちとは違い、キャミソールを着た中島。
巻田は視線を横に背けながら、立ち止まった。
- 560 :目眩く夢酔い:2007/02/20(火) 16:55:54 ID:???
- >>558
そっち行きます
- 561 :マロン名無しさん:2007/02/20(火) 21:05:24 ID:???
- あれ、こっちは終わり?
- 562 :必殺まとめ人:2007/02/21(水) 06:49:07 ID:???
- このスレ消化早かったなぁ〜〜w
- 563 :マロン名無しさん:2007/02/21(水) 09:40:08 ID:???
- 最後の記念カキコ
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