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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart49【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:07:18 ID:PJcKt63h0
元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1175563943/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss



2 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:08:02 ID:PJcKt63h0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦(スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html
『絶対、大丈夫』  (白書氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/85.html

3 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:11:08 ID:PJcKt63h0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
ブルーグラード外伝 (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/215.html
カシオスの冒険 (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/221.html
涼宮ハルヒの正義 (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/232.html
傷跡の記憶 (流花氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/246.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm


4 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:25:19 ID:xxvTWf7a0
一瞬エロパロ板に来たのかと思った

5 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:34:24 ID:nSYvWOr20
何故にw

6 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 17:41:53 ID:PJcKt63h0
>しぇき?さん
相変わらず一気投稿ですねw 3から6を続けてうぷとはw
ハルヒの能力に右往左往させられる皆が滑稽で可愛いです。
朝比奈さんの色気にヒーロー登場して元の世界に、とは
上手くなりそうにないですね。まだまだ波乱がありそうです。

結構間が空いて一気投稿より、何回かに分けての
安定供給の方が個人的に嬉しいかな?
オーガとかも好きなので待ってます。しぇきさんですよね?


>ハイデッカさん
毎度毎度テンプレお疲れ様です。「氏」に直しておきました。
でも、そろそろ聖少女の続きを読みたいな。

7 :作者の都合により名無しです:2007/05/04(金) 21:53:43 ID:DZgj/gmJ0
          ,. -- 、 ,. --r ‐、 __/   \_____/:   ヽ、
        /     ⌒ヽ   \   `                   }
        /           ヽ    \  \__              /
     / /   /  /Yヽ  , │     ',.   ヽ    ̄ ̄ フ   /
   /   /     ,'  i'´ `|  | |        !    ト.     /  /
   | , '|     | ||│  | ハ ∧    ヽ│   │   /   /
   |,/ | │  | |ィ|′ j'ナ|十|‐     |    ,.   /   /         、
   |  | /'   | |,.=i   ィj/=iハ      |    /   /   /            |\
   |  | |│  V化j     辷ン |   || |   ハ    ,'   /              |  \
       ヽハ   ゝ// ,  ////ィ  |∧! ,/    i:  :{              |   ヽ
        | | ハ r‐'⌒ヽ / |  /ィイ       {  丶_______.ノ    }
          ヽ |ゝ  \ ー‐‐'    | ,く,.        ''.:                /
           \  ` ┬ '   |/           \ ________イ
                  Y イLr'「 ̄ ̄|           
           , ─r '|/ 「:::| ||_.. ==_j_           
         / l / / /:::イ -_イ´   `ヽ        
        l  V ノ ':::::/-'’ |      V        こ、これは乙じゃなくてポニーテールなんだから
          '´イ/:::::/j O  ハ       |       変な勘違いしないでよね!
        i'Y l!,/::: / /     |/         l      
        | i  |l::::::::! /     /        イ      
       ハ ||:::::: |l     /       /|      
        │ ヽ! :::: ||    ∨         |      

8 :作者の都合により名無しです:2007/05/05(土) 01:23:41 ID:cInRC71R0
1氏、ハイデッカ氏乙。

しぇきさん、俺はハルヒ好きなのでしぇきさんのハルヒ世界を捕らえたSSが好きです。
グゥは知らんけどw
どうやったら帰還出来るのか、どのように物語が着地するのか。
また一気呵成の投下があるのかw
楽しみです。

9 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/05(土) 02:10:24 ID:7aBBgryF0
《EPISODE11:Hear the trumpets,hear the pipers,one hundred million angels singing》

走る。ただ走る、走り続ける。飛ぶが如く、飛ぶが如く。
サムナー、火渡、千歳の三名は広い廊下を駆け抜ける。
ここは三つ巴の闘争劇が繰り広げられているビルの四階。
長い廊下の右手には大きめの窓、左手には各部屋へのドアが延々と続いている。
「これ以上の階を中央階段で上るのは危険だ」というサムナーの判断で、三人はフロア内を抜けて
非常階段に向かっていた。
サムナーは再びインヴィジブルサンを透明化させ、今はその饒舌な口を閉じて黙々と走っている。
千歳は、ホムンクルスと戦う為に一階に残った防人の事がずっと気にかかっている。
それは自分でも気づかない、いや気づいてはいるが押し隠している彼への恋心がさせているに他ならない。
残る火渡は――
火渡はこの先に待ち受けている敵との戦いしか頭に無かった。防人への心配など微塵も無い。
彼は防人の強さを信じている。鍛え上げた肉体の強さを、無双の防御力を誇る武装錬金の強さを。
総じて、錬金の戦士としての強さを。
ただし、“俺の次に”という認識は片時も忘れない。防人は仲間であると同時に、あくまでも戦友(ライバル)
なのだから。
そして、待ち受けている敵。火渡が決着を熱望する敵。
ただの人間であるNew Real IRAの首魁パトリック・オコーネルには用は無かった。
火渡が雌雄を決したい人物はただ一人。サムナーに邪魔をされ、中断を余儀無くされたあの車上の血闘。
彼はここにも現れるだろう。必ず。絶対に。
火渡はその時を心待ちにしている。

ふと、急にサムナーが立ち止まった。
二人に背を向けたまま、無言で身じろぎひとつしない。
遅れて火渡と千歳も立ち止まり、周囲を警戒した。サムナーが敵の存在を感じ取ったと、
二人は判断している。
「どうされたんですか……? サムナー戦士長」
周囲に注意を払う事を怠らず、千歳がサムナーに声を掛ける。
火渡も無言のまま、近くのドアや窓に眼を配る。

10 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/05(土) 02:11:11 ID:7aBBgryF0
そう。
当たり前ではあるが、二人とも“指揮官であるサムナー”そのものには無警戒だったのだ。
突然、サムナーの周囲から派手な射出音と共に、眩いばかりの閃光が発せられた。
眼にも止まらぬ速さで三条のレーザーが火渡の胸板を、一条のレーザーが千歳の左大腿部をそれぞれ貫く。
光学迷彩により透明化しているサムナーのインヴィジブルサンから放たれたものだ。
「あうっ!!」
「なっ!? 千歳ェ!!」
千歳は脚を押さえてその場に倒れ込んだ。あまりの予想外の出来事に我が身に何が起きたか理解出来ず、
苦痛と驚愕の表情が同居している。
千歳に駆け寄る火渡は何一つダメージを受けていない。
ビルの前で車を降りた際に武装錬金を発動させてからは、常にその身を火炎同化させているからだ。
つまり今の火渡は“火渡の形をした炎の塊”と言っても過言では無い。
実体を持つ筈もないその炎にレーザーが効く道理があろうか。それは拳にも銃弾にも言える。
そしておそらくは銃剣すらも。
「テメエ! 何しやがんだァ!!」
「フン、やはりな……。お前に物理攻撃はまったく通用しないか」
激怒を露にした火渡の声に振り向いたサムナーは、嫌悪感に満ちた眼差しで彼を睨む。
だが、すぐにその顔は圧倒的優位に立つ勝者の笑みへと変わった。
「しかし――」
サムナーは多分に気取りを交えた仕草でゆっくりと右腕を上げ、パチリと指を鳴らす。
「――これではどうかな?」
合図と同時に、二機のビットが青白い電光を発しながら、千歳の顔を両脇から挟む形で姿を現した。
まるで千歳の愛らしい顔をじっくりと観察するかのように、ビットはフワフワと浮かびながら
射出口を細かく動かしている。
「クッ……!」
火渡は今更ながらの思いに歯噛みした。
そうだ。もしコイツが敵ならこうやって俺達を攻撃するだろう。
“俺達が気を抜いている時を狙い、透明化させた武装錬金を忍び寄らせて攻撃する”
けどよ、それは“コイツが敵だったら”の話だぞ。
やられちまった。なんてこった。ちきしょう。どういう事だ。

11 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/05(土) 02:12:15 ID:7aBBgryF0

火渡の表情から何事かを感じ取ったのか、サムナーが多少ヒステリックに声を上げる。
「私がレーザー乱射一辺倒の能力バカとでも思っていたのか? このインヴィジブルサンにかかれば
暗殺、騙撃もお手の物なのだよ。君達とは“ここ”の出来が違うのだ!」
欧州第二の実力を持つ戦士長は、自らのこめかみ辺りを指でトントンと叩きながら傲然と胸を張った。
「ひ、火渡君……」
千歳が自分の非を詫びるような色を込めた眼差しを火渡に送る。
火渡は何とも言えないやるせなさに襲われた。
馬鹿野郎。そんな眼をすんじゃねえ。オメエが悪いワケじゃねえだろ。
しかし、満足感に酔ったサムナーはそんな二人にはお構い無しだ。
「いくら下品で粗野で低能な君でもわかるだろう? 君が炎を発するのが早いか、私のインヴィジブルサンが
レーザーを放つのが早いか」
「クソッタレが……!」
火渡なら一瞬でサムナーを業火に包んで灰燼に帰せるだろう。いや、その気になれば一瞬で
このフロア全体を火の海に変え、焦熱地獄と化す事も不可能ではない。
だが、“一瞬”のレベルが違う。サムナーのインヴィジブルサンは文字通り光の速度だ。
火渡が千歳を助け出そうと、サムナーを攻撃しようと行動を起こした瞬間、レーザーが千歳の頭に
大きな穴を開けるに違いない。
「さあ、戦士・楯山。ゆっくりこちらに来るんだ。まあ、どのみちその脚ではゆっくりとしか
来られんだろうがねェ……」
レーザーは千歳の大腿骨を股関節付近の骨幹近位部で焼き砕いている。たしかにそんな脚では歩くどころか、
動かす事や体重を支える事さえ不可能だろう。
「うっ……」
千歳は右脚だけで立ち上がり、左脚を引きずりながらヒョコヒョコと片脚跳びでサムナーの元に近づいていく。
火渡は拳を握り締め、ただ見ているしかない。
やがて千歳が手に届く位置と確認するや、サムナーは彼女の胸倉を掴み、手荒く引き寄せた。
「きゃあっ!」
左腕で千歳の首を締め上げるようにその身をしっかりと抱え込む。
いつの間にかビットは四つに増え、いつでも鼻や口以外の孔を増やせるように千歳の周囲を漂っている。

12 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/05(土) 02:13:14 ID:7aBBgryF0
「フハハハハハッ! 無敵の『ブレイズオブグローリー』を操る戦士・火渡も、人質を取られては形無しだな?」
剥き出しの犬歯をギリギリと軋ませながら、火渡は当然かつ唯一の疑問をサムナーにぶつけた。
「一体、何のつもりだ……? 何で俺達を裏切りやがる!?」
サムナーはお得意の芝居掛かった調子で、「これは心外」とばかりに肩をすくめる。
「『裏切る』だと? 失敬な。裏切り者は君達の方だよ」
「んだとォ!?」
千歳を抱えたままのサムナーは、空いている方の掌を気障ったらしくヒラヒラと宙に舞わせた。
「筋書き(シナリオ)はこうだ。戦士・キャプテンブラボーは敵の開発したホムンクルスの襲撃によって
命を落としてしまった。そして、顔を合わせた当初から徹底的に私と不仲だった戦士・火渡赤馬は
戦闘中の裏切り行為により粛清される。この私にな……」
そこまで言うと彼は千歳をグイと引き寄せ、汗の匂いと若い女性特有の香りを楽しむように
彼女の耳元に顔を近づける。
「や、やめて……」
「戦士・楯山千歳は……そうだな、裏切り者である戦士・火渡に手を貸そうとした為、
やむなく私が殺さざるを得なかった。……こんなところだろう」
わざとらしく残念そうな表情を浮かべているが、それもまったくの嘘とも言い切れないのかもしれない。
彼は今まで東洋人の女性などは、抱いた事はおろか興味を持った事も無かった。
この場で殺すのが少し惜しくなっているようにも見受けられる。
「テメエ、頭がおかしくなったのかよ……?」
火渡の罵りに片眉をピクリと上げるも、サムナーの顔は未だ余裕の微笑を形作っている。
「本当に貴様は失敬、いや無礼な奴だ。私の頭脳は至って正常だよ……。いや、それどころか
“計画”完遂の為に人生最高のフル回転をしていると言ってもいい。君達の任務参加やテロリストの
阿呆共の失敗で狂ってしまった計画の為にね……」
「計画、だと……?」
「そう、“計画”だ。誉れ高き錬金戦団大英帝国支部が、再び世界の盟主(リーダー・オブ・ザ・ワールド)になる為の
壮大な計画……。その一環なのだよ、これは……」

13 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/05/05(土) 02:15:24 ID:7aBBgryF0
どうも、こんばんは。GWいかがお過ごしでしょうか。
やっとここまで来ました。いわゆる“終盤”いわゆる“核心”。登山で言うと、やっとお弁当が
食べられるとこが見えてきた感じです。
あと、前回・今回・次回と場面転換が多いですが構成上、こうするしかなかったもので。すみません。
では、失礼します。
あ、>>1さん乙です!

337さん
だいぶ前から「終盤、終盤」言ってましたが、ホントに終盤まで来ました。
たしかにバトルの連続なんですが、書くのが少々疲れてしまいますw
それと“熱い”に“凄惨”と“狂気”も付け加えておいて下さい。パンドラの箱……。(ニヤリ

前スレ353さん
「さんさん」は全然気にしてませんよ。むしろ面白かったですw 面白ければ何でもOK!
死人……。いっぱい出るかもしれません。“闘争”ですので。
ジュリアンは頑張らせます。いろんな意味で。

前スレ355さん
8連休と言っても特にする事もなーくー。執筆するかネットをさまようぐらいしか……orz
たぶんGW中にもう一回投稿すると思います。SS職人だからSS書かなきゃ。
>サイトの日記も
最近は日記も動画日記も阿呆な事ばかりなので、皆さんあきれてると思います。

ふら〜りさん
そうなんですよね。人間の非力さ、弱さ、それに愚かしさといった部分をジュリアンには込めています。
なんだか書いててかわいそうになってくるんですが……。それにホントこの上司はアレでもう。
あと苦戦中の防人(おまえ)・火渡(コイツ)・千歳(べるの)もかわいそうな事になってます。

ハイデッカさん
いつもテンプレご苦労様です。あとサイトにも遊びに来て下さり、いつもありがとうございます。
身体には気をつけて下さいね。バキスレでお待ちしておりますので。

14 :作者の都合により名無しです:2007/05/05(土) 02:42:43 ID:cInRC71R0
さいさん、新スレ一番乗りお疲れさんです。

サムナーの裏切りというかシナリオに火渡と千歳が大ピンチ。
いよいよ最終局面が近いことを感じさせてくれます。
サムナーと神父は繋がっているのかな?
神父のキャラ的にそれはないか・・

あと、副題がいつも英語で意味がわかりませんw


15 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/05(土) 10:05:50 ID:QNmGg1dq0
『赤ん坊を待ちながら A』


 六時限目終了のチャイムが鳴り、数学教師が次回の授業の内容を予告して退出すると、教室は俄かに騒がしくなる。
 放課後の開放感というものはどこの世界でも共通らしく、早々に帰り支度を済ませて廊下に駆け出していく者や
当番が回ってきていることに悪態をつきながら掃除を開始する者、額をつき合わせて寄り道の行き先を相談する者など、
つい数分前まで教室中に蔓延していた、どうしようもない倦怠感がまるで嘘のように活気のある光景が広がっていた。
 もちろん静も例外ではなく、先程の授業の尾を引いてオーバーヒート気味の論理回路を強制的に遮断し、
微分が微かに分かり積分を分かった積もりになっている左脳をフラットな状態に復帰させつつ窓際の席の一つに歩み寄る。
「ねえ、帰ろ」
 返事はなかった。
 それもそのはず、その席の主である遠野十和子は机に突っ伏してすうすう寝息を立てていたのだった。
「十和子ってば。起きてよ」
 肩を揺すると、十和子は「あ、ん……」などと無駄に色っぽいうめき声を上げて半分だけ瞼を開く。
「授業、終わっちゃったよ」
「──ん?」
「授業、終わった」
「あら、まあ」
 なにが「あら、まあ」なんだ、と心のうちでぼやく静のそばで、十和子はむっくりと起き上がって伸びをし、口元と机についた涎をハンカチで拭き取る。
「六時限目、なんの授業だったっけ?」
「……数学」
 それすらも知らないということは六時限目の全てを睡眠に費やしていたということだが学生としてそれでいいのか、
とツッコみたい衝動に駆られるが、その穏便な表現が具体的に思いつかなかったので断念する。
「数学ね……どこまでやった?」
「えっと、ええとね──」
 なんとか今日の授業内容を簡潔に総括しようと必死になって脳内をフル回転させる静に、
「あっあー、範囲だけでいいのよ。何ページまでとかそういうの。──あ、なんだまだ黒板に残ってるじゃん」
 そう言い、ほんの数秒ほど黒板を眺めた十和子は次いで机から落ちかけていた教科書を取り上げてぱらぱらめくり、
「ふーん……オッケ」
 と、それを鞄に放り込んで立ち上がった。

16 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/05(土) 10:07:18 ID:QNmGg1dq0
 その十和子の一連の行動が理解できなかった静は、思わず首を傾げた。
「……なにが『オッケ』なの?」
「ん? だから数学」
 ますます分からなくなる。
「え、今日の授業の範囲が分かったってこと?」
 だが十和子はそれに答えるようなことはせず、顔をしかめて静の額を指で弾いた。
「あ痛」
「ベンキョーの話なんかもういいじゃん。だって授業は終わってんだから」
「……寝てたくせに」
 デコピンされた額に手をやりながら口を尖らせるが、そうした静の不満げな態度などどこ吹く風で、
十和子は今日一番の朗らかな笑みを見せた。
「よし、帰ろうか。ケーキの美味しい店を教えてあげよう」
 ケーキと聞いて心が動かされる静だが、
「あ、あの、十和子。実は、その──」
「遠野さん」
 振り返ると、そこには一人の男子が立っていた。
 それは大人しそうで真面目な感じで、控えめで目立たなそうで影が薄い、つまりそんな雰囲気の人だった。
 その無害そうである意味如才のない佇まいに、静はかすかに好感を抱く。どことなく自分に似ている気がしたのだった。
「あら秋月。なに? このあたしに告白?」
「違うから」
「あ、じゃあ静に告白だ」
「……もし『そうだ』って言ったらどうする気だよ」
「全力で阻止するね。まあ目の付け所の良いのは褒めてあげるわ」
 文字通りの頭越しに言葉を交わす二人の顔をおろおろと見比べる静は、不意に彼と目が合う。
「え、あの」

17 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/05(土) 10:08:19 ID:QNmGg1dq0
 頬の筋肉が音を立てて引き攣る。
 訳の分からない緊張に身を竦ませる静だったが、彼は静かな眼差しを向けているだけだった。
 ふと、その瞳から表情が消えたような気がした。
 だがその違和感もすぐに薄らぎ、
「……はあっ」
 その男子は盛大に溜息をつかれた。
「──遠野さん、悪いけど今日の保健委員の仕事代わってくれないかな」
「やだ」
「いや、頼むよ遠野さん。僕、これから用事があるんだ」
「今度昼飯奢ってよ。こーゆーのってギブアンドテイクでしょ。現金でもいいわよ」
「君、保健委員じゃないか。いつも君の分まで委員の仕事をしてるのは僕だよ」
「頼んだわけじゃないもーん」
「たまには委員として当然の義務を果たしてくれって言ってるんだけど」
「だからぁ、なんかくれたらその義務とやらをやってやるって言ってんのよ、あたしは。
しかも秋月は、さっき『頼むよ』って確かに言ったわ。義務の押し付けと頼みごとは違うんじゃねーの?
さいばんちょーさいばんちょー弁護側は故意に論旨を摩り替えて本件を自己に有利な方向へと誘導しようとしていまーす」
「揚げ足を取らないでくれよ……」
 なおも駄々をこねる十和子と、それをなだめすかす彼の交渉をぼんやりと眺めながら、静は自分の顔が赤くなっていないか心配になる。
(自意識過剰……)
 先のやりとりが単なる冗談だとは分かっていたが、それなのにうろたえてしまった己の子供っぽさを恥じ、そして、
(『はあっ』ってなによ『はあっ』って……その溜息はなによ……)
 と、わずかにプライドを傷つけられた静だった。


 結局、十和子に非常に有利な条件で交渉は成立したようだった。
 彼が学生鞄の他に茶色のケースを手に持ちながら、顔色悪くまるで財布でも落としたかのような暗い足取りで
教室を後にする一方、十和子は上機嫌に手を振ってそれを見送っていた。
「つーわけで、もう一働きしてきますか。……ところで静、さっきはないを言いかけたの」

18 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/05(土) 10:09:09 ID:QNmGg1dq0
 今のごたごたで忘れかけていたことが瞬時に思い起こされ、静は十和子に言わなければならないことをも思い出すが、
その勇気はすでに挫けてしまっていた。今更改めて言うには──ちょっと重すぎた。
「……え。べ、別に」
「別にってこたないでしょ」
「もう忘れちゃった」
「思い出せよ」
「ううん、きっとなんでもないことだから」
 十和子はキナ臭そうな顔をするが、浅く息をついて静の両頬を指先でつまむ。
 そして思いっきり引き伸ばされた。
 面食らって「やめて」と言う静だったが、左右に引っ張られる唇からは「ふぁふぇへ」という意味のない息が漏れるだけだった。
「静ちゃん。あんたねえ、そんな捨てられた子犬みたい目をして『なんでもない』はねーんじゃねーの?」
 わたわたと両腕を振る静へ、十和子は不機嫌と意地の悪さがない交ぜになった視線を向けてくる。
「言ったでしょ、『カスタード・パイ』に嘘はつけないって。つーか、あんたの場合はそれ以前の問題よね。
そんな分かりやすい顔していったい誰が騙されるっていうのよ? 
嘘をつくなら完璧につかなきゃ意味がないのよ。口先だけの嘘なんて最低よ、紙切れ一枚の価値もない。
それこそ自分の心の全てすら騙すような、魂からの嘘でもなければ、『カスタード・パイ』は突破できないわ」
 頬を引っ張る力が消え、そして静は本日二度目のデコピンを食らう。
「痛」
「お仕置きよ。あたしは保健室入ってくるから、一人で帰りなさい。帰れるわよね?」
「か、帰れるよ。子供じゃないもん」
「さあ、どうだか。ケーキはまた今度ね」
 十和子はそれきり静に目もくれず、自分の鞄をつかんで教室を出て行く。
 静は「さよなら」を言うべきか迷ったが、結局その言葉は喉を通らなかった。
 十和子が戸口で一度立ち止まり、振り返った。
「静」
「なに?」
「『嘘』のプロフェッショナルとして、一つ教えてあげる」
 そう言い、十和子は両手の人差し指をぴんと立てて顔の横まで持ち上げた。
「──笑いなさい」
 と、口の両端を押し上げた。

19 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/05(土) 10:11:43 ID:QNmGg1dq0


「はあ……」
 静は沈んだ気持ちに苛みながら、放課後の廊下をとぼとぼ歩く。
 その原因は考えるまでもなく、十和子のことだった。
 彼女を前にすると、静はなんとも言えない劣等感を抱いてしまう。
 軽薄を装ってはいるが自分とは比べ物にならないほど大人びた態度もそうだし、
それになにより、彼女の眼差しは決定的に静のそれとは一線を画していた。
 夜の闇すら見通すような、この世界の全てを敵に回しても怖じることのない、といった瞳。
 わずか一週間ばかりのつきあいだが、それでも静はよく思う。
 十和子は地に足を付けて立っている、と。
 静が日頃から感じている、自身への不安感や内面の情緒不安定などとは全く縁のない場所に、十和子は存在しているような気がする。
「わたし、やっぱり子供なのかな」
 背も低く、実年齢よりさらに子供に見られがちな(一度、十和子にファミリーレストランに連れて行ってもらったとき、
ウェイトレスから明らかにエレメンタリースクール向けの安っぽい玩具をもらったのはさすがに落ち込んだ。十和子はげらげら笑っていたが)
静とは真逆で、十和子は「二十四歳の雑誌記者です」と言っても通用しそうなスタイルと容貌の持ち主だった。
 そして、十和子はよく笑う。
 それは意地の悪いチャシャ猫笑いから、女の自分ですらどきりとするような爽やかで屈託のない笑顔まで多岐に渡っており、
生きることの喜びをすべてそこから発散しているように感じられる。
 静は窓にうっすらと浮かぶ自分の顔を見た。
 窓と校舎の境界の、半透明の世界の中には、浮かない表情をした辛気臭い童顔の少女がいた。
「はあ……」
 再び溜息をつこうとしたとき、窓に映る朧の像の、その自分の背後を黒い影が横切るのを見た。
「────?」
 振り返ると、そこは視聴覚室で、扉はわずかに開かれていた。
 こんこんこん、と硬い靴が床を叩く音が聞こえる。
 その音のするほうに首を向ける。
 階段の踊り場へ続く廊下の曲がり角の向こう側に、今見た黒い影が吸い込まれるように消えていくところだった。
 学校指定の上履きとは似ても似つかない異質の靴音は、どんどん遠ざかっていた。
 ──階上へ。

20 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/05(土) 10:30:07 ID:QNmGg1dq0
今更ですが新スレ乙です。
ここ最近忙しいので投下遅めです。
感想も今回は割愛。できれば次回に書きます。
バイオレット姉さまのほうがなかなかまとまらなくて、そっちが滞っているのが忸怩たる思いです。

21 :作者の都合により名無しです:2007/05/05(土) 19:39:37 ID:4awGR4Zm0
>さいさん
このSSの主役はどうみてもアンデルセンですが黒幕はサムナーだったか。
今までの仮面を脱ぎ捨てて、いよいよ本性発揮というところですね。
終盤という事だけど、まだ真のクライマックスは先と思うので最後まで飛ばして下さい!

>ハロイさん
なんか静は十和子のおもちゃというか。2人は仲のいい友だち?だろうけど
その間には確固たるヒエラルキーが存在しているような気すらしますね。
ジョースター一族の人間すら、手玉に取るような魔性の女の十和子、カッコいい!

22 :ふら〜り:2007/05/05(土) 20:56:30 ID:RajWa2s10
>>1さん&ハイデッカさん&ゴートさん
いよいよ次ですね50! 今の賑わいっぷり、一体どれぐらいの人がここの作品を読んで
おられることか。で、その中からまた「よぉし自分も書くっ」という人が出て来られて更に
賑わっていく……皆が楽しく読み書きできる場所を支えて下さり、おつ華麗さまです!

>>邪神? さん
>回復して力尽きるよりも、スタンを強化する事で戦闘の短縮を試みたのだった。
普通、回復・攻撃補助魔法使いの援護担当ヒロインといえばもっとこう優しいというか、
おしとやかなものかと思いますが。ルーティの場合は朝、乱暴に起こしに来る世話焼き
幼馴染キャラですな。お互い信じ頼りにしているからできること、信頼で結ばれた相棒、か。

>>三部外伝さん(三部ゲーは、純粋にゲームとしての出来も良かったですよねぇ)
承太郎は! 君らの想像を絶するような修羅場を潜ってきた超ベテラン戦士なんだっ……と
思い続けてきたところで魅せてくれましたスタープラチナ! 溜めが長かった分、爽快感が
格別で。とはいえペルソナ組とて、それなりの場数は踏んでるはず。魅せて貰いましょうぞ。

>>しぇきさん(でしょうか?)
>まさか、前にハルヒを元の世界に帰りたいと思わせた・・・・、
この辺は「ナデシコ」の最終回を思い出しました。宇宙規模の戦争も異常現象も何もかも、
たった一組のラブコメに敵わない。とはいえ本作の場合、その相手に怪人役押し付けてる
ってのが……それはそれで彼女なりの好意の表れなのか照れ隠しなのかただの趣味か?

>>さいさん
おぉ……これは意表刺突。いや、サムナーが火渡たちに害を為すだろうなというのは予測
してましたが、こう来るとは。もともと読者に好感を持たれてない奴、主人公たちもあまり
信頼してない奴が裏切る、って灯台下暗し。裏切りにおける「まさか」の意味が独特でした。

>>ハロイさん
>二十四歳の雑誌記者です
ここでモデルだのグラビアアイドルだのが来ない辺りが十和子なんですねぇ。まあ正確には
静の抱く彼女のイメージですが。現実の十和子はただキレイなだけではなく、そこに知性
が加わっただけでもなく、まだまだ底知れぬ存在。今はまだ敵に回すと不気味って印象です。

23 :作者の都合により名無しです:2007/05/05(土) 23:36:40 ID:PIb83hCK0
さいさん・ハロイさん、お疲れ様です。

>さいさん
裏切りというかシナリオ通りというか、一気に物語の核心に踏み込んだという感じですか。
さいさんもおっしゃる通り、もうすぐこの作品もラストになるという事なんですかね。
寂しいですけど、衝撃の展開を期待しております。まっぴーの次回策も楽しみですがw

>ハロイさん
静が見る十和子像と、実際の十和子は違うんでしょうが、やはり静からすると
同年なのに圧倒的な猛者って感じでしょうか。静もポテンシャル高そうですけど
相手が悪すぎる、みたいな。容姿がモデル級ってのも静の劣等感に火に油を注いでいるんでしょうねw


24 :作者の都合により名無しです:2007/05/06(日) 00:27:05 ID:P8NX3e8/0
カスタード・パイって物凄く高度な洞察力のような気がしてきた。
るろうにの斉藤一みたいな・・。でも、やっぱり特殊能力でしょうね
どちらかというと見た目ロリ系で性格は優等生タイプだろう静香と
すらっとしててどこか超然とした十和子のコンビは絶妙ですな

バイオレット姉さんで苦労されていますか。
彼女はアームズの中で一番大人で奥深いキャラですからね。

25 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 01:58:38 ID:OrgPlqxi0
ガリバー旅行記という物語をご存知だろうか?
冒険者ガリバーが、現実世界にはありえない国々―――例えば巨人の国などを旅行する物語だ。

「ちょっと有希!みくるちゃんに古泉くん!?何でそんなに大きくなっちゃたのよ?
いいえ、それよりもあの蜘蛛男は一体どこに・・・。」

そんな絵空事でしかない出来事が、俺の目の前で現実として起こっている。
しかも三人の巨人が、一人の巨人と闘うという、ちょっと卑怯な情景なのは内緒だ。
無論、この巨人達は、全てSOS団の提供でお送りしている訳だが。

「すいません理由は聞かないでください。でも仕方ないんです。こうなっちゃったんです。
だから・・・・、へ〜んしん!!」
朝比奈さんは本当に申し訳なさそうな顔をしながら、自分なりの変身ポーズ。
―――左手を天に向かって掲げた・・・が!
「へ、変身ってみくるちゃん?何も起こらないんですけど・・・。」

しかし何も起こらなかった!!

「ほえ?あ、あれ?おかしいな・・・。魔法少女って手を天に掲げれば変身出来るはず・・・。
・・・・あっ、そうか!すいません涼宮さん。少し待っていただけませんか?」
「えっ!?ああ・・・、はい・・・。」
朝比奈さんはその場で自己完結した後、ほんの少し頬を赤らめながら長門の元へ走り出す。
そして長門の元に着いた矢先、開口一番にこう言った。

26 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 01:59:36 ID:OrgPlqxi0
「あ・・・、あのう・・・・。
グウさんが先程言っていた強化スーツって・・・、どこですか?
わ、私・・・、持って無いんですけど・・・。」

渡してないのかよ!!
って、ハルヒの朝比奈さんを見る目付きは一体なんだ?
あれか!この状況で、またよからぬ事を思いついたのか?
このままだと、この話は100kバイトを超えてしまうぞ!!

作者の奴も、最初はすぐに終わるだろうと構成を考えて書いていったら、
俺の喋りのせいで、ここまで長くなるとは思わなかったみたいだからな!

「これ。」
「あ、ありがとうございます。じゃあ、これに着替えて闘えば・・・。あれ・・・?」
あっ、朝比奈さん。今気付きましたか。
そうですよ。貴方がそのスーツを着て闘う以上、その場で着替えなくちゃいけないんです。
いくら状況が状況でも、流石に花も恥らう年齢の女子(おなご)の生着替えは・・・。

ほらっ!ハルヒの目が、まるで獲物を捕らえた狼のように。


27 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:00:05 ID:OrgPlqxi0
「あ、あのう・・・、涼宮さん。キョンくん。」
「はい?」
「なあ〜に?みくるちゃん。それにキョンって言うけど・・・、アイツはここに居るの?
さっきから姿が見えないけど。」
当たり前だハルヒよ。お前の身長は、いまや20m級の巨体なのだぞ。
スモールライトの効果によって、害虫クラスの大きさになった俺の姿が目視できるか?

答えはNO。目視できるはずが無い。

何故ならお前は大きくなった分、目の分解能がガクッと堕ちたはずだ。
例えお前の視力が両目1.5だとしても、せいぜい地面に落ちている千円札を目視するのが精一杯だろうからな。

「えっ・・・?あっ、キョンくんは、涼宮さんがさっきから蜘蛛男だと思っている・・・。
え〜と・・・、どこかな・・・。キョンくん小さくなっちゃったから。」
そんなハルヒの問いに答えようと、人の良い朝比奈さんが余所を向いたその刹那!
「ふふ、隙を見せたわね!!そ〜れ!!」
「はわ!?涼宮さん?」
ハルヒは朝比奈さんの背後へこっそりと回ると、予想通り胸を鷲掴みしながら制服の上を脱がす。
おいおい、古泉もそこにいるのだが。

ったく、ハルヒの奴・・・、古泉のことが見えてないのか?
いや、むしろそういう事をして楽しんでるのか?

ん・・・?おい!ちょっと古泉!
全く見てない振りをして、『実は指の隙間から見てました!』なんてベタな事をするんじゃない!!

・・・・・おっと、律儀に心の中でツッコんでいる場合じゃない。
早くハルヒを止めなければ。


28 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:00:37 ID:OrgPlqxi0
「おいハルヒ!やめるんだ!朝比奈さんが嫌がってるじゃないか!!」
「キョンく〜ん!助けてくださ〜い!このままだと私、ダメにされちゃいま〜す!」
「ちょっとみくるちゃ〜ん。そんな言い方はないんじゃな〜い?
せっかく脱がしてあげてるのに。ほら!どんどん脱ぐのよ!」
俺や朝比奈さんの叫びに全く聞く耳持たないハルヒは、とうとう彼女のスカートへと手を伸ばす。
脱がす!そこまで脱がすのか。ハルヒよ!
地上波では無理だった難題も、創作SSでいっちゃうんですか!?
「や、やめてください。後生ですから!涼宮さん〜!」
「ふふふ・・・。みくるちゃん、人間諦めが肝心よ。
さあ!見せるところまで見せちゃいなさい〜〜!!」
そして、遂にハルヒは朝比奈さんのスカートのホックを・・・。
「ダメ〜〜〜!!」
PTA会議モノの描写まで行く寸前、遂に朝比奈さんが動く!
何と彼女は、スカートのホックに手をかけたハルヒを突き飛ばしたのだ。
いや、まあ普通の人間ならば当たり前の反応なんだが、彼女が動いた事自体が正に奇跡。
あの全自動受身人間―――朝比奈みくるが拒否という行動をとったのだから。
「うわっ!みくるちゃん!?」
そして、朝比奈さんの反撃を無防備に受けたハルヒは、そのまま俺の方へ勢い良く倒れる。
「あ、危ない!!」
これが条件反射というモノなのだろうか。
俺は無意識のうちにハルヒを受け止める。
「だ、大丈夫か?」
「あたたた・・・。まさか・・・、みくるちゃんが反撃してくるだなんて。
って!蜘蛛男!
そうよ、すっかり忘れていたわ。アンタを踏み潰して倒す予定が・・・・。あれ?」
ハルヒは俺の顔見て、一瞬あっけに取られた表情を作る。

29 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:01:07 ID:OrgPlqxi0
俺の顔・・・、そんなに変か?
まあ、確かに今の俺は怪人の姿をしているから、人間目線で考えたら変だろうが。
「アンタ・・・、いつの間に大きくなったの?
まさか、今時の怪人は全て巨大化できるっていうの!?
これは迂闊だったわ・・・。一歩間違えたらウルトラマンと被っちゃうじゃない。」
何言ってんだハルヒの奴。
俺はグウのスモールライトのせいで、害虫サイズにされてるんだぞ。

・・・あれ?

俺って・・・、ハルヒの奴を受け止めたよな?
そういえば、ハルヒの大きさがいつもと同じように見える・・・。
「キョンくんも大きくなったんですね〜。良かった〜。」
朝比奈さんの言葉で俺は全てを理解する。
俺は・・・、大きくなってる!

一体いつの間に・・・?
確か、スモールライトの効力は一週間くらいだったはずだが。

「いや〜、そろそろ作者が展開を進めろと五月蝿いんでな。
不本意ながらビックライトを使わせてもらった。」
「だからそういったネタは安易に入れるな!一回も使えば読者はお腹満腹なんだよ!
大体ここまで読んでもらってるかもわからねーのに、それ以上読者人口を減らすよーなことをするな!!
後、ありがとうグウ!やっと話が進みます!」
やはりグウのおかげ―――いや、せいか。
ともかくこれで話は振り出し・・・、まだ振り出しか・・・。

まあ、後はどうにかして、蜘蛛男=キョンだということ。
後、この世界を『ハルヒにとって居たくない世界』にすればいいんだ。

―――後者が最も厄介なんだが・・・。


30 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:02:37 ID:fCUCc2bn0
「みくるちゃん?何で蜘蛛男に向かってキョンだなんて言っているの?
えっ・・・、もしかして本当にその姿・・・、キョンなの?」
しかし、前者の方は案外早く達成できそうだ。
やはりノーマークである朝比奈さんの意見は、非常に耳へ通りやすいとみえる。
普段は受身マシーンのような人だからな。
「えっ?ああ・・・、グウの奴に突然改造―――みたいなことをされてな。」
冷静な言葉と裏腹に、俺は内心小躍りしながらハルヒと話す。
何しろ、やっと状況が前進したのだから。

「そうなんだ、グウちゃんに・・・。」
ハルヒは何か思うような表情で、俺のことを見つめ始める。
「どうしたんだよ。そういえばグウの事を知ってんだよな。何でだ?
昔からの知り合いなのか?」
個人的には姉妹だという展開を押したい。
何といっても性格が同じだからな。
「さあ、いつの間にか知ってた。普段は知らないわ。でも今日は知ってたの。」

えっ・・・、ハルヒさん。貴方は一体何を言っているのですか?
『いつの間にか知ってた』って、まるで漫画みたいに・・・。
と、ともかく、ここは話を進めなければ。
これ以上の後退は、本当に元の世界へ帰れなくなる気がするぞ。

「えっ?そうなんだ。いや〜、それにしても、この姿は困っちゃうものだな。
お前にも誤解されちゃうし。」
俺はグウとの関係を聞き出すのは諦めて、どんどん別の話題を振る。
アイツとの関係は確かに気になるところだが、それは帰ってから聞けばいい。
今はそれよりも、この世界に嫌悪感を持って欲しいところだからな。

――――俺達皆で元の世界に戻るために・・・。

31 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:03:20 ID:fCUCc2bn0
「そうね。誤解してた。でも、本当のキョンならば体育館で私を投げたりしないよね。
私を虐めたりしないわよね。実際はそうじゃない。つまり・・・、敵なわけだ。」
「ああ、そうなんだよ。俺ってば怪人になっちゃったからお前を投げて・・・、っておい!
何でだよ!何で俺が敵になるんだよ!」
この瞬間、俺はループ地獄というもの恐ろしさを初めて知った。
行けども行けども同じ事を繰り返す地獄。
それは決して体験しているものに安息の地を与えず、常にあらゆる状況に擬態して、こちら苦しめる暗黒の事象。

せっかくハルヒに言葉が通じたというのに・・・・。

そこで体育館での出来事を持ち出してくるか?
全く・・・、何でコイツは、こんなにも正義の味方にこだわるんだ!?

「だって・・・、だって私はライダーだもの!正義の味方だもの!!
怪人相手に引くわけにはいかないわ!!」
「だから何だ。その正義の味方って!俺が何か悪い事をしたか?
確かに俺は怪人の姿をしているが、決して何も悪い事はしていないぞ!
それに世の中には『人は見かけじゃ解らない。』という言葉がある。
だから考え直せハルヒ!俺とお前が闘っても意味なんてないんだ!!
別にお前が正義の味方とやらになる必要なんかないんだ!」
俺は思いつく限りの言葉を並べて、ハルヒの説得に入る。
はっきりいって、ハルヒの正義の味方への執着は異常だ。
唯の気まぐれで始めたのではないのか?

確かに今までにハルヒがした奇行は数え始めればキリが無い。
しかし、その奇行はどれも一つの信念―――『普通の生活からの脱却』もしくは、
『宇宙人とか未来人とかと遊ぶ』を目指したものだった。
ところが今回は、全くそれとは逸れている。

はっきりいって何の信念も見えない!感じない!!
ハルヒよ。一体お前はどうしちまったんだ?
これじゃあ、唯の子供の駄々っ子と同じだぞ。

32 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:03:57 ID:fCUCc2bn0

「ふふん、言いたい事はそれだけ?じゃあ、こっちからいくわよ。」
「お、おい!待てハルヒ!俺の話を!!」
しまった!また現実世界をおろそかに・・・。
「そう〜れっ!!」
おいおい、俺は何の体制もとっていないぞ。
このままではハルヒの攻撃がダイレクトに・・・。

「とうりゃああ〜〜!!」

そして、無防備な俺に向かって繰り出された拳は、無常にも顔面へと一直線に撃ち貫・・・、

「だめ。」
「な、長門!?」

・・・かなかった。
なんと横から割って入った長門の手が、ハルヒの拳をしっかりと受け止めたからだ。
「ちょ、ちょっと有希!何で止めるの?何で怪人の味方になるの?」
「今の貴方は原因不明の興奮状態に陥っている。それに貴方が殴ろうとしているのは・・・・。」
「そんな言葉は聞きたくないわ!そうなの!有希・・・、貴方の事を信じていたのに。」
何だか・・・、変な方向に話が展開してないか?
このままだと、ハルヒは近づく者、逆らう者、全てを『悪』だと断定しそうだぞ。
「じゃあ有希も敵ってワケね・・・。わかったわ!容赦しないから覚悟しなさい!
この仮面ライダーセブンハルヒRXが、正義の名において成敗してくれるわ!」
「だからお前は人の話を聞けって!!それにいつのまにRXが!!
あれか!?そのうちロボットとかバイオとか、無駄に機械化したり、液体状になったりするのかお前は!」
「うっさい!!」
俺が叫んだ後、ハルヒはそれに意を返さず、怒声と共に右ストレートを放つ。
「どいて。」
・・・が、その右ストレートは、再度長門の手によって防がれる。

33 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:04:33 ID:fCUCc2bn0
「長門!!」
「大丈夫。特に損傷は無い。貴方はここでじっとしていて。」
「はん!いつまで耐えられるかしら!正義の力の前にひれ伏しなさい!」
ハルヒは俺よりも長門の方が脅威だと感じ取ったのか、今度は彼女に向かってマシンガンの如くパンチを放つ。
―――高速と形容するのは忍びない程の速度で。
「・・・・。」
しかし、そんな常識外れの速度を持つパンチにもかかわらず、
長門はいつも通り無表情な面持ちで的確に防御する。

それにしても・・・、長門さんは余裕のある表情で防御するものだ。
まさか・・・、この速度を見切ってるとか言うんじゃないだろうな。
俺には拳の動き始めすら判らないのに・・・。

いやまあ、長門ならありか・・・。

「ったく!まったく亀のように硬いわね!有希!たまにはアンタも攻撃しなさいよ!」
無茶言うな。長門が攻撃したらお前は死んでしまうだろうが。
「わかった。」
「おい!長門!」
長門の予想外の言葉に、俺は思わず彼女を羽交い絞めにする。
当たり前だ。いくらハルヒが超人的強さを手に入れたらとはいえ、
物質の構成そのものを改変する長門の能力に適いっこない。
それとも、ハルヒの望んだ世界では、長門の能力はハルヒに通じないのか?
「大丈夫。この世界に来る前に説明した通り、
私の力は彼女の前では発揮できないようプログラムされている。」
「えっ・・・、それって・・・。」
「そらっ!隙だらけよ!!」
闘いの最中にお喋りという三流な行動をしている俺と長門に、今度はハルヒの容赦ない前蹴りが襲う。
ヤバイ!このままじゃ俺達二人に当たるぞ!!

34 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:05:30 ID:fCUCc2bn0
「しゃがんで。」
「えっ。おお!!」
長門の言葉に従った途端、ハルヒの前蹴りが俺達の頭の上を過ぎていく。
危機一髪とは正にこのことだ。
しかも、僅かに掠った頭髪の残骸が黒焦げに・・・。

どうみても当たれば即死です。
本当にありがとうございました。

「よけるのは・・・、上手いみたいね。
この正義の味方の決め技であるライダーハルヒキック(唯の前蹴り)を避けたのは貴方達が始めてよ。」

当たり前だ!そんなキックが、そうそう他の人に炸裂してたまるか。
ただでさえ日本は少子化だというのに、これ以上人口を減らしてどうする!

「しかし次は無いわ!観念しなさい!そう、正義の味方の前には悪は無力なのよ!」
ハルヒは天高くジャンプする。
次は大技か?いや、あのジャンプの高さは・・・・。
「レオキック。」
「えっ、そこ?何か微妙な・・・・。というか長門!
どこでそんなことを覚えてきたんだよ!!」
いやいや、いちいちツッコんでいる場合じゃない。
今のハルヒがする攻撃は本物の必殺技。読んで字の如く必ず殺す技なのだから。

35 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:06:34 ID:y5iUeNGH0
「じゃあ行くわよ!ライダー・・・、雷光・・・。」
「えっ?レオキックじゃないの?それよりも、またのその技!
あれだって!死ぬって!そんな足に力を込められたら!ねえ長門さん?
貴方もあの人になんか言ってやってくださいよ!」
「右から来る。」
長門は文字通り一言だけコメントすると、俺の体を左に突き飛ばした。
するとその刹那、俺の居た場所は一瞬の閃光が走ったと同時に大爆発を起こす。
「す、凄い威力だ・・・。あれ・・・?そういえば・・・。」

そう、俺の足元ってショッカー基地だったはずでは・・・。
じゃあグウは!?

アイツはどうした?

アイツは確か巨大化していないはず。
まさか・・・、ショッカー基地と共に・・・。

「大丈夫だ。ここにいる。」
俺の思いに反応するかのように、グウはちゃっかり巨大化した状態で俺の横に現れる。
無事なのは嬉しいが、やっぱり居なくなっていた方が状況を引っ掻き回さずに済みそうな・・・。
「グウちゃん・・・、確か貴方がキョンのことを怪人に改造したのよね。」
「そうだ。しかし勘違いしてもらっては困る。
グウは決してお前を苦しませたくてキョン吉を改造したわけではない。
ハルハル。お前を救うためだ。」
「何を戯言を、グウちゃん!そんな言葉では私の正義は揺るがないわ!」
「やはり解らないか・・・・。
まあ、似た者同士という事だし、心をぶつけないとダメなだろうな・・・。」
ハルヒを助けるって・・・。

アイツは苦しんでいるのか?
一体何に?それに似た者同士って誰だ・・・?

36 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:07:25 ID:y5iUeNGH0

グウか・・・?

「じゃあ、行くぞ似た者同士。
先程言ったとおり、著作権を無視した放送コードぎりぎりの展開を今見せてやるぞ。」
「似た者同士って・・・、俺か?おい!一体どういう・・・。」
俺はそこまで言ってグウの言葉の意図に気づく。

『何もかも自分で抱え込んで被害者面して騒ぐあたりがな。』

そうか、俺とハルヒが似ている点。
それは・・・・。

「では、そろそろ変身しましょうか?朝比奈さん、長門さん。そしてグウさん。」
「古泉・・・。それに変身って本当にするのか?スーツに着替えるには時間が足りないぞ。」
「問題ない。」
「長門!?」

何もかも自分で抱え込んで・・・、

「さっきのスーツは偽者。演出の都合上実体化した普通のスーツ。
本物はこのベルトを身に付けて次のポーズをすればいい。」
「ふえ〜、じゃあ私の苦労は・・・。」
「ご苦労様です。では、皆さん!
長門さんからベルトを貰ったら、彼女がこれからするポーズを真似してください!」

――――誰にも相談せずに悩むところか。


37 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:09:05 ID:y5iUeNGH0
「変身。」
長門はポツリとそう言葉を漏らすと、右斜め上に凛と右腕を伸ばす。
そして同じく左腕も右腕の位置まで持っていくと、その左腕で右腕を高速で擦り始めた。
「何か・・・、かっこいいポーズですね。」
「朝比奈さん・・・。そ、そうですね。
あの摩擦っぷりなんて惚れ惚れしますよね・・・。ははは・・・。」
なんなんだ?この変身ポーズ。
はっきり言って格好悪い。

死ぬほど格好悪い・・・が、今は状況が状況。やるしかない!

「まさか古泉くんや、みくるちゃんまでが敵だったなんて・・・。悪夢だわ。
でも!そんなことで私の正義は揺るがないわ!覚悟しなさい!!」
「ええい!もはや滅茶苦茶でワケが解らないが、ハルヒの攻撃が来る前に変身だ!
行くぞ皆!!へ〜んしん!!」
俺は、半ばやぶれかぶれに長門と全く同じポーズをとる。
「な、何よ!この光は!!眩しい!!」

そして・・・。

各々の腰に着けたベルトは、変身ポーズに呼応するかのようにまばゆい光を放つと、
俺達5人を瞬時に包み込んだ!

――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・7――――――――――

38 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:10:33 ID:y5iUeNGH0
遂にハルヒと闘うために変身した、俺達SOS団とグウ。
死ぬほど格好悪い変身ポーズを取ったんだから、それ相応の価値はあるはず。
さあ!この俺達を包む光が消えたならば、早速その姿お披露目だ!!

「鳥人戦隊ジェットマン!!」

そう、俺達は天空に飛び立つ他かの如き力を・・・。

「って、まんまじゃねーか!!少しは捻れよグウ!それに長門!!」
俺ことレッドホークは、右手に持ったブリンガーソードを振り回しながら二人に問い詰める。
はっきり言って、まさかここまで東映に睨まれそうな展開になるとは思わなかったぞ。
「トレンディー。」
「相変わらず文句が多いな〜。キョン吉は。」
しかし二人はまったく悪びれた様子も無く、俺の言葉を華麗にスルーする。
ったく、グウの奴は当たり前として、まさか長門がそんなキャラになっちゃうとは・・・。

二次創作、おそるべし・・・。

「二人で俺の言葉を軽く流そうとするなよ!!
ともかくこの姿はダメだ!!大体、俺達は六人じゃないか。
一人多いんだよ、一人!せめてダイレンジャーにするとか、人数くらいは合わせろよ!
特に長門!紫って何だ!?ジェットマンに紫のキャラはいないぞ!!キャラ名はどうなるんだよ。」
「パープル鳩。」
「帰れ。」

ああ〜〜!! まったくもう!!
これじゃあ、また変身しないと・・・。


39 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:11:46 ID:y5iUeNGH0
「は〜い、そろそろ攻撃してもいい〜?」
「お前も少し黙ってろ!それに、変身中は攻撃しちゃいけないのがお約束だろうが!
悪の軍団だって、それは守るぞ。守らないはバイキンマンくらいだ。
よしっ。じゃあ次!さっさと変身シーンは終わらすぞ!!
グウ、長門!頼んだぞ!!」
俺は場の空気でハルヒの言葉を一蹴すると、グウと長門に変身のやり直しを促(うなが)す。
「了解。」
「では、次はジャッカー電撃隊で。」
「だ・か・ら!!人数が合わないだろうが!初期は三人だぞ!!
オリジナルでいいんだよオリジナルで!!」

うむ。オリジナルこそが一番無難なのである。
それこそセンスが重要だが、別にこの場しのぎの戦隊ゴッコなのだから、多少のダサさは問題ないだろう。
例えばSOS戦隊キョンレンジャーとか。

「では何だ、こっちはSOS戦隊キョンレンジャーとかでもやるのか。」
うおっ!いきなり急所とは・・・。
くそう!ハルヒに続いてグウの奴もニュータイプか!?
「い、いや・・・、別にオリジナルといってもそう言ったものでは・・・・。」
「じゃあどういったモノだ?」
「え、え〜と・・・・、そ、そうだ朝比奈さんはどういった名前が良い?」
「逃げたな。」

うるさい。

ともかくこんな変身する戦隊の名前など適当でいいのだ。
俺達の目標は、このハルヒが無意識のうちに創り出した世界から元の世界に戻る事。
だから変身後の名前など・・・。


40 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:13:35 ID:VODrF4uc0
「えっ、えっ?わ、私ですか・・・?そんな・・・、いきなり言われても・・・。」
無茶振りでスイマセン。
確かにどんな人でも、唐突に『カッコいい戦隊モノの名前を考えろ』なんて無理なもの。
せめて、そのことを常に考えている人間じゃないと・・・・。
「では僕が。う〜ん・・・、そうですね。ジャパン戦隊フジヤマファイブなんかどうですか?」

居たよここに!
速攻で俺の問いに答えてくれる奴が!

「よしっ!それを採用だ!古泉、よくやった。」
「え〜、グウは光戦隊マスクマンになって、プールサイドで踊りたかったん・・・。」
「版権モノは却下だ。長門、グウの変わりによろしく頼むぞ。時間が惜しい。」
グウの意見は即座に却下して、俺は古泉の案を採用する。
確かにセンスの欠片も無い名前だが、姿やイメージが浮かびやすく、意外と秀作とも言えるのではないか。

そうだな、例えば俺がフジヤマカミカゼ。
朝比奈さんがフジヤマゲイシャ。古泉がフジヤマハラキリといった具合に・・・。

41 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:15:17 ID:VODrF4uc0
「分かった。愛國戰隊大日本をモチーフに構成する。」
お〜い、長門さーん?
貴方は毎日図書館で何を読んでいるんですか〜?

――――いやいや今は変身して戦う状態まで持っていくことが大切だ。

「そ、それで良い長門・・・。ともかく俺達を変身させてくれ。
じゃあ皆!もう一度変身ポーズを!!」
「OK!キョン!!」

こうして俺達は、無事に二回目の変身をするのだった。

はあ〜・・・・、やれやれ終わるのか?
この話・・・。


――――――――――涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン・8――――――――――

42 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:16:27 ID:VODrF4uc0
〜前回までのあらすじ〜

一般的な高校生であるキョンは、グウという不思議な少女に怪人の姿へと変えられてしまう。
しかし怪人キョン吉は、決して状況を絶望せず、苦悩と戦い、逞しくなっていく。
怪人キョン吉は今日も正義の為に闘うのだ。

「ではもう一度・・・。へ〜んしん!!」
俺達は紆余曲折の結果、再度変身する事にした。
愛國戰隊大日本とかいうアレなモノに・・・。

「変身終了まで・・・、10・9・8・・・。」
―――おっ、もうそろそろ変身が終了する頃だな。
ハルヒの奴がつまらなそうに手遊びしているが、そこら辺は我慢してもらおう。

「3・2・1・・・。」
よしっ!!変身完了だ!!


43 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:17:47 ID:VODrF4uc0
「爆竜戦隊アバレンジャー!!」
「遠藤正明!!もう一度!!」

「特攻野郎Aチーム!!」
「外国!!人数もあわん!!Try Again!!」

「電光超人グリッドマン!!」
「ウルトラマンとどう違う?もういっちょ!!」

「美少女戦士セーラームーン!!」
「アニメ!!後、俺は男!!お願い次で!!」

「宇宙猿人ゴリ!!」
「後半がスペクトルマン!!しかもまた一人!!お願いだってばグウ、長門・・・。」

「ウルトラマン!!」
「そこだけは触れたら・・・。」

「ウルトラQ!!」
「もはや一般人!!」

はあ・・・、はあ・・・。
グウと長門の奴・・・・、絶対わざとやってるだろ。元の世界に帰る気が無いだろ。
い〜や。これは絶対帰る気が無いな。
それになんだ。全部人数が一致しないものばかりじゃないか。

俺、長門、朝比奈さん、古泉、グウ。そして戦闘員・・・。
合計六人。確かに六人の戦隊モノは数が少ないが・・・。


44 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:18:48 ID:VODrF4uc0
・・・あれ?
六・・・人?

「いや〜、私もうっかり巨大化しちゃってね〜。はっはっはっは。」
「数の面でややこしくしてたのはお前か〜〜!!」
俺は変身が上手くいかない原因の一つを見つけ出して、思わず心の底から絶叫する。
まさか・・・、こんな所に伏兵がいたとは。
「キョンくん・・・、テンションが高い。」
「まったくです。僕達じゃついていけませんね。」
お前達にも、若干その原因があるんだがな。

ともかく!再度変身を!

「グウ!長門!!」
「ふう〜、これだけ変身してやったというのに、まだ文句ですか。
キョン吉は本当に偉いですな〜。

―――ぶっ殺すぞ・・・。

と言いたい所だが仕方ない。
このままでは、このSSの進行に支障がきたすので一気に進めてしまおう。
長門っち、いくぞ。」
「ラジャー。」

おい。最初からそうしろグウ、長門よ。
特に長門さん。貴方は親指を立てて合図するキャラでしたっけ?

・・・まあ、ともかくこれで状況が進むんだから・・・・って!!


45 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:20:25 ID:cugBmayb0
「何でいきなり巨大ロボットに〜〜〜!?」
「何でって・・・、今さっき一気にSSを進めるといっているであろう。
特撮―――特に戦隊モノの最終兵器といえばこれ!」
「巨大ロボ。キョン吉ロボ。」
何故か阿吽の呼吸でグウと長門は言葉を繰り出す。
いやいや、そんなところでシンクロしなくて良いから。

俺の気持ちとシンクロしてください。

「と、ともかくこれでハルヒと闘うってんだな。センスないけど。」
「無論だ。ほら見ろ、ハルハルも嬉しそうな顔で立ち上がったぞ。お前よりセンスあるけど。」
「おお〜、本当だ。本当に嬉しそうに・・・、って!
あいつを喜ばしたら、元の世界に戻れないんじゃ・・・。」
そうなのだ。俺達の目的はあくまで元の世界に戻る事。
確かに普段はハルヒの機嫌をとる為に奔走するが、今は元の世界に戻るために、
それとは逆の行動を取らなくてはいけない。

だからハルヒを喜ばせるのは・・・。

46 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:21:59 ID:cugBmayb0
「問題ない。とりあえずはハルハルとガチンコ勝負をし、その勢いに任せてこの世界を考えた理由を探る。
そして解決へ・・・。というフローチャートだ。
今現在の問題は、ハルハルがこの世界を創り出した理由を知るべきだろう。」
「理由って・・・。確かに、今回のハルヒは色々と変な言動ばかり取っているけど、
どうせアイツのことだから、結局は唯の『気まぐれ』だろ?」
俺はグウの言葉に軽はずみな返答をする。
アイツの『非日常』を好む性格からして、この世界も別に大した考えで創っていないとは思うんだが・・・。

しかし、グウは俺の心を見透かしていたのか、いつもよりも抑揚の無い声でこう言った。

「それはお前の『決めつけ』だろう。人は決めつけられるのが一番嫌いな生き物だ。
どうして彼女の事をもっと考えてやらない。
こんな世界を無意識で、しかも無自覚で作り出せるのは何か理由があるはずだ。
いや、この場合は『この世界を無意識のうちに欲した理由』だがな。」
「グウ・・・・。」
俺は自分よがりな考えを辱めながらグウの言葉を重く受け取る。
勿論、朝比奈さんや古泉もだ。
グウの言葉を聞いて、胸を押さえながら真剣な顔で下を見ている。

「俺は・・・、何だかんだ偉そうなことを言って結局・・・・。」

そうなんだ。

俺達はハルヒとずっと一緒にいるのに、彼女が『非日常』を求めて止まない本当の理由など、
毛の先も知らなかった。

いつもの彼女の言動。行動。
そして彼女の喜怒哀楽の激しさに、俺達は勝手な解釈をして、勝手に厄介をしていただけなんだ。

それじゃあ、アイツがこの世界を求めた理由なんて分かりやしない。
元の世界に戻る事すら出来ない。

47 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:23:16 ID:cugBmayb0

俺は気付いた・・・。いや、俺達は・・・。

「グウ・・・。俺は・・・。」
「キョ〜ン!!!これでも喰らいなさ〜い!!」
会話の流れをぶった切る程の巨大な脚が、俺達の乗るロボットに向かって真っ直ぐ飛んでくる。
勿論、操縦方法も知らないこの状況で、ハルヒの蹴りを避ける術もなく・・・。

「総員!!対ショック!!」
「どうりゃああ〜〜!!!」
俺達が乗るロボットの左腕は、跡形も無く吹き飛ばされた。
「へっへ〜ん。ギブアップするならば、少しは考えてあげても良いけど・・・どうする?」
「どうするってお前・・・。」
俺は始めてハルヒの事を真剣に考えながら、彼女の顔をじっと見つめる。

俺だけじゃない。
朝比奈さんや長門、もちろん古泉もだ。

「な、何よ。突然押し黙っちゃって・・・。」

ハルヒは俺達の視線を感じ取ったのか、少し困惑した表情を浮かべながら後退する。

本気でその人の事を思えば、例え直接伝えられなくとも通じる。
まるで漫画の世界の言葉だが、俺はこの時だけは夢物語を信じる事にする。
今は何よりもまず、彼女を知る事。

彼女がこの世界を欲した理由を知る事。
決して個人の『決めつけ』でなく、彼女の事を考えて知る事。

自分が正義の味方になって怪人を倒す世界を欲した理由を。


48 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:24:12 ID:cugBmayb0
「じゃあ行くぞ皆!!」
「分かりました!!」
「いつでも良いですよ!!」
「了解・・・。」
「グウはいつでも良いぞ。」
「アイアイサー!!」

約一名ほど関係ないのもいるが、ともかく俺らの心とは一つ!

「行くぞハルヒ!!勝負だ!!うをおおおおおおお!!!」

俺は心の底から咆えながら、ロボットの操縦桿であろうレバーを思いっきり前へ倒すのだった!!

「それは自爆スイッチだ。」
「ウソっ!?」


――――――――――涼宮ハルヒの正義・4――――――――――

49 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:24:46 ID:cugBmayb0
「おい、ハルヒ!目を覚ませよ!おい!!」
「う、うーん・・・。キョ、キョン・・・?」
結局、ハルヒが『自分が正義の味方になって怪人を倒す世界を欲した理由』が分からなかった。
しかし結果として、俺達は元の世界―――学校の体育館に戻っている。

そう、互いに最後の一撃を繰り出したあの刹那、ハルヒの笑顔と共に急に意識が暗転したのだ。

全ては唐突に始まり、そして終わる・・・。

まあ、短時間で人の心を知ろうなんて虫の良い話だが、そんな俺達の行動は決して間違ってはいなかったはずだ。
「あれ・・・?アンタ、蜘蛛男になってなかった?」
ハルヒはようやく目を覚ますと、毎度の調子で話しかけてくる。
無論、今の俺の姿は、長門のおかげでちゃんと人間に戻っている。
「いや、よく言っていることが分からんが・・・・。夢でも見ていたんじゃないか?」
「えっ?ほら、グウちゃんが出てきて・・・。ん、グウちゃん?誰それ?」
「俺が聞きたいくらいだよ。やっぱり夢でも見てたんだろ。
ほら見ろ、お前が体育館で暴れたから後掃除が大変だったんだぞ!」
俺は荒れ果てた体育館の様子を、ハルヒに見せる。
彼女には悪いが全て夢だともらおう。

悪いがグウの存在も。

そうそう。
グウの奴はこの世界に戻ってきた途端に、どこかへ消えてしまった。
全く最後までやってくれた奴だが、いないとなると寂しい気も・・・、

「うおっす!」
「だからお前は出てくるな!!」

―――前言撤回。

50 :涼宮ハルヒの正義改め、SOS団はいつもハルヒのちキョン:2007/05/06(日) 02:25:32 ID:nqb4+iWn0

何故か俺の脇からにょろりとソイツ顔が出てくる。
一体・・・、どこまで事をかき回すつもりだ?

「ちょっとキョン・・・、その頭は一体何なの・・・?」
「へっ!!これは・・・・。」
俺は回答に詰まる。
当たり前だ、突然脇から出てきた『頭』を一体なんと説明すれば良いのだ。

どうする?どう言えば良い?

「ハルハルよ、グウの事は気にするな。キョンの脇に生えたキノコのような物とでも思えばよい。」
「無理ありすぎ!!」
「そうね。解ったわ。」

そこで納得するな。
もういい。とりあえずグウには退場してもらうぞ。

「帰れ。」
「あいあい。グウの出番は終了っすね〜〜!!」
「あっ、引っ込んだ。」
引っ込むな。
ふう〜。最後までやかましい奴だったわ。
さて、これから一体ハルヒにどうやって今までのことを夢だと思わせるかは・・・。
「なあ・・・、ハルヒ。さっきのことなんだが・・・。」
「・・・・まあいいわ!!じゃあ、私は帰るから!!
後はキョンが片付けておいてね!!じゃあね〜〜!!」
「お、おい!」
俺が静止する間も無く、ハルヒは自分勝手に帰ってしまう。
相変わらずの唯我独尊っぷりだが、これはこれでハルヒらしくて若干安心出来る。

彼女が今日の出来事を、夢だと思ってくれたかは分からないが・・・。

51 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:26:45 ID:nqb4+iWn0

「心配ない。」
「長門?」
俺が一人でハルヒの事で悩んでいると、横からそれを解消するかのように長門が喋り出す。
「先程の戦闘員の件でも分かる様に、彼女は『非日常』を心から望んではいるが、
『非日常』が『日常』になることは心から信じてはいない。
そのことを涼宮ハルヒの思考パターンに当てはめると、
『今日の出来事は夢だ』と自己完結する確率が一番高い。
もしくはこれを現実と認めても、彼女自身が否定する可能性が大きい。
だから、問題ない。」

サイですか・・。
まあ、長門が言うならば、恐らく問題が無いのだろう。
これも・・・、勝手な『決めつけ』だがな。
「ま、なんにしろサンキューな長門。閉鎖空間の後片付けとか、体育館の修理とか色々。」
「・・・・。」
長門は相変わらずの無言で、肯定の旨を伝えてくる。

・・・そういえば、何で俺を中心に閉鎖空間が発生したんだろう?
長門もそのことをやたら気にしていたな。

う〜む。彼女はこの事に関しては、究明出来たのだろうか?

52 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:27:48 ID:nqb4+iWn0

「キョンくん〜〜!帰りましょう!!」
入り口付近でゴミを片付けていた朝比奈さんが声をかけてくる。
そうだな。そんなことを考えていても仕方がない。
無事に元の世界に戻って来れたんだし。

後片付けも終わった事だし・・・・、帰りますか。
古泉はゴミ捨てに行っているから、部室の方へ戻ってくるだろう。

「長門。とりあえず部室に帰ろうぜ。」
「・・・・・。」
俺は長門にそう言うと、足取りも軽く朝比奈さんのいる体育館の出口へ歩き始める。
さあ、家に帰えるとしますか。

――――――――――涼宮ハルヒの正義・5――――――――――

53 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:29:54 ID:nqb4+iWn0
真っ赤な夕日が地平線へ低速で落ちていく。
さながら、一つの世界が終わるかのような光景だ。

そして時刻は午後五時ジャスト。
普通の学生ならば、部活という非日常を終える時間である。

それにしても、今日は色々――――いや、一生分は気苦労したな・・・。
病み上がりなのに。
そうだよ。俺は昨日まで高熱を出して学校を休んでいたのに・・・。
まさか復帰一日目からこの騒動とは・・・。

あっ・・・、何だか気分が・・・。―――などと都合良く具合が悪化するはずも無いか。

「キョンくん、長門さん。お待たせしました。」
俺と長門は、部室に忘れ物をした朝比奈さんを待って、校門の前で暫く佇んでいた。
そういえば、三人で帰ることなど今まで無かったな。
朝比奈さんと長門が一緒にいる風景も・・・。

何だか・・・、レアな状況に立ち会っているな。

「ああ、大丈夫だよ朝比奈さん。じゃあ帰ろうか。」
「そうですね。」
いつもより帰宅時間が遅いせいもあって、俺達は少々足早に通学路を歩く。
「カラスが鳴いていますね・・・。」
夕日が俺達を照らして大きな影を作る。
一番背の低い長門が一番大きな影を持っているのは、まるで心の身長を表しているかのようだ。
「あっ、ちょうど信号が赤になっちゃいましたね。」
「そうですね。まあ、帰るときだからいいんじゃないんですか?」
差し掛かった交差点が丁度赤になった為、俺達は他愛も無い会話で時間を潰す。
それにしても、長門は本に関する話ならば良く喋るんだな。
―――しかも恋愛小説やらミステリーまで読むとは・・・。

54 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:31:45 ID:nqb4+iWn0
「あっ、青です。渡りましょう。」
「相変わらずココの信号は長いな。」
話し始めてから数分後。やっと信号が青になる。
すると、夕日がまた俺達の真正面に来たのか、目の前にまた影が出来る。
「そういえば・・・。」
俺はその影を見て、不意に長門が疑問視してた事を思い出す。
閉鎖空間へ行く直前、俺を中心に出来た黒い何か。
それが閉鎖空間への入り口だったのは確かだが・・・。
「そうだ長門。俺を中心に閉鎖空間が出来た理由は・・・、分かったのか?」
「分からない。」
「そうか・・・・。お前が分からないのならば、仕方ないな。」

やっぱり分からないままなのか・・・。
結局、何だかんだで何も理解できない事ばかりだったな。

ハルヒのことも。元の世界に戻れた理由も。
俺を中心に閉鎖空間が出来た理由も。

何一つ・・・。

「あれ・・・?あれって・・・。」
「えっ?」
俺は朝比奈さんの言葉を聞いて、思わず彼女の視線の先を追う。
追った先にあったのは、いつもだったら見向きもしない萎(しな)びた公園。
ついでに言うと、近くには公立の小学校もある。

そして、そこに居るのは・・・。

「涼宮・・・?で、一緒にいるのは・・・、小学生?」
「パーソナルコードを照合・・・・、100%の確率で涼宮ハルヒと断定。」
本当に何をやってんだハルヒの奴。
しかも小学生と一緒に。

55 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:33:53 ID:nqb4+iWn0
「何をしているんですかね〜。」
「さあ・・・ね。近くに行ってみますか?」

そして俺が朝比奈さんと長門に向かってそう言った途端、

「ちょっと!諦めるの?」

―――ハルヒと一緒にいる小学生は、少し大きめの声で喋り始めた。

「お姉ちゃん。やっぱり仮面ライダーなんてこの世にはいないよ。
学校の皆はいないって言うし、ママやパパもいないって言うんだ。」
「だから諦めんの?だってアンタの夢は、仮面ライダーになって世界の平和と正義を守るんでしょ?」

おいおい、仮面ライダーってハルヒよ。お前は一体幾つだ?

「でも・・・、僕は喧嘩弱いし・・・。この前もお姉ちゃんに助けてもらったばかりだし・・・。」
「もしかしてアンタ・・・、この前のイジメっ子が言っていた事を気にしているの?」
「う、うん・・・。」

小学生はハルヒの言葉に申し訳なさそうな顔でうなずく。
本当にコイツは何の話を・・・。

「あ〜んなのは無視よ無視!!
この前みたいにイジメっ子に言われたって、孤立したって信じ続けるのよ!
だって・・・、それが貴方の夢なんだから!!」

(ハルヒ・・・、お前もしかしてこの子と自分を・・・。)

俺はハルヒの言葉を聞いた刹那、コイツがやけに正義の味方にこだわった理由の確信を得る。

56 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:34:48 ID:nqb4+iWn0

(そうか、そうだったのか・・・。ハルヒ、お前は・・・。)

しかし、俺はそこまでの確信を得ているのにも関わらず、現在の思考を打ち切る。
そう。所詮これも、俺が勝手に彼女の行動の裏を『決めつけ』ているに過ぎない。

例え本心がどうであろうと、今日のハルヒは正義の味方になって怪人と闘いたかった。
いつも通り彼女が求めてやまない、『非日常を探求した結果』なのだ。

うん。それだけなんだ。

「じゃあ、帰りますか。」

俺は振り返って朝比奈さんと長門にそう言う。

「そうですね。」
「・・・・。」

必死で小学生を説得しているハルヒを後目に、俺達は今度こそ各々の帰路へ足を向ける。
夕日は俺達の背中を照らして、またそれぞれの影を作る。
今度は俺の影が一番大きい。
このことは別に意味など無いが、一番大きいと少し嬉しくなるのは、気のせいでない筈だ。

57 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:36:36 ID:+4n56E340
「じゃあ、ここでお別れですね。また明日。朝比奈さんに長門。」
暫くして、俺達は分かれ道に差し掛かる。
この珍しい組み合わせでの道中も、これでおしまいだ。
「うん。」
「はい・・・、それでは・・・。
あっ!そうだ。私・・・、お二人に言っておきたかった事があったんですよ。」
「はあ・・・、なんですか?」
俺が別れの挨拶を言った後、朝比奈さんは突然思い出したかのように口を開く。
一体・・・、何なんだろうか?
「さっきキョンくんや長門さんが言っていた『キョンくん中心に閉鎖空間が出来た理由』。
私には分かりますよ。」
「えっ!本当ですか!」
「びっくり。」
長門よ。それがお前なりの驚き方なのか。

まあいいか。
ともかく今は・・・、

「で、理由って何ですか?」
「ふふふ。それはですねえ〜。・・・あっ。」
朝比奈さんは俺の質問に答えようとした瞬間、何かに気付いたような顔と、
僅かだが悲しそうな顔の両方を覗かせる。
そして、俺が瞬き一つし終わるくらいの間に、その表情は元に戻っていた。

58 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:38:10 ID:+4n56E340
「・・・・。」
俺と長門は、そんな朝比奈さんを無言で見つめる。
何だか今の彼女の様子は、前に喋った未来の朝比奈さんを髣髴とさせた。
「いえ・・・。ごめんなさい。やっぱり禁則事項です。
では、お疲れ様でした。」
朝比奈さんはそう言って人差し指を口元へやると、一礼の後に帰ってしまった。
その場に取り残される俺と長門。

珍しく朝比奈さんに振り回された図でもあった。

「結局なんだったんだ?」
「知らない。」
確かに長門の言う通りだ。
だが、それでも一つだけ分かったことがあった。

それは――――朝比奈さんは、どんな表情や仕草をしても可愛いという事だ。


――――――――――涼宮ハルヒの正義・6――――――――――

59 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:38:57 ID:+4n56E340
平穏というのは忘れた頃にやってくる。
しかし、その平穏というのは、肉体的・精神的疲労に基づく対価があってこそ成立するものである。
自堕落に過ごす日々は果たして平穏と呼べるのだろうか?

まあ、少なくとも俺が昨日体験した事は、決して自堕落でルーチンワークのような生活ではなく、
実りある一日だった信じている。

だから・・・。

「うぇっくしょい!!」
「キョンくん〜。お薬持ってきたよ〜。」
学校から帰宅した直後に高熱でダウンしたことも、神様がくれた平穏への招待状かもしれない。
せめて、鼻風邪くらいにして欲しかったが。
「一昨日も風邪ひいてたのにね。ぶり返したのかな〜?はい、お水。」
「さ、さあな。おっ、ありがと・・・。お前も早く学校へ行けよ。」
妹の言う通り、この風邪は昨日の無理が祟ったせいだろうが・・・。
「分かってるよ!じゃあ行って来るね〜♪」
「おう。いってらっしゃい。」
まさかとは思うが、一日だけ風邪が治ったのもハルヒの能力のせいじゃないよな。
いやいや、まさかそんなことまで・・・。
「あっ!そうだキョンくん!!」
一度部屋から出て行ったはずの妹が、物凄い勢いで戻ってくる。
おいおい。早くしないと遅刻するぞ。
「ん?なんだ。」
「そういえば、昨日ハルヒさんから電話がかかってきてね。
『昨日は病み上がりでありがとう』だって。」
「ブホッ!!」
俺は、妹の言葉に思わず薬を飲むための水を吐き出してしまう。

60 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:39:57 ID:+4n56E340

ま、ましゃか・・・。
まさかハルヒがそんな事を・・・。

「う、嘘だろ?と、ともかくそんな冗談はいいから、早く学校へ行きなさ・・・ぶわっくしょい!!」
「そんなことないよ。キョンくんが寝ている間に・・・。あっ!時間だ。
じゃあ、お大事にね!キョンくん!」
おいおい・・・。マジかよ。
まあ、心配されて嫌な気はしないが・・・。

「お母さん!行ってきます!!」

下の階から妹が慌しく家を出る音が聞こえる
一方、俺は病人らしく、部屋の天井の染み一個一個数えている最中だ。

「ハルヒの奴・・・、やっぱり昨日のアレが理由だったんだろうか・・・。」

俺はシミを数えるのと同時に、昨日のことを少し考えてみる。
考えれば考えるほど、全く奇妙な事だらけだ。
あのグウって奴の正体も分からずじまいだったし・・・。
そういえば、ハルヒは何でグウの奴を知ってたんだ?

―――また謎が一つ増えたのか・・・。


61 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 02:40:58 ID:+4n56E340
「うおっ、何だか頭を使ったら急に熱が・・・。」
この場合は知恵熱だと信じたい。
少なくとも昨日は人一倍頭は使ったはずだ。

でも・・・。

「まあいいか。過ぎたことだし。」

これ以上、昨日のことは考える必要はないか。
俺は病人。
病人は黙ってこの平穏を噛み締めているべきなのだ。

さあ、今日もゆっくりと惰眠を貪りますか。
はあ・・・、やれやれ・・・。

〜涼宮ハルヒの正義・了〜

62 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 03:06:50 ID:+4n56E340
これで終わりです。長さがメモ帳で100k超えました。
オチはハルヒを読んことがあるか、アニメの一話を見ないと分からないかも。
読んで分からない文章を書くようじゃダメなんですけどね。

>ハイデッカさん
テンプレ&スレ立てお疲れ様です。いつもありがとうございます。
自分はハルヒをアニメしか見た事がありません。だから、口調や語りが多分違うんですよね。
聖少女の続き、ジャンヌと慶次の今後が早く読みたいです。

>6さん
読んでくださってありがとうございます。
本当は小出しにしたいんですが、実生活との兼ね合いで、書くだけ書いて投稿できない状態が続いたもので
一気投下した次第です。自分なりのハルヒの能力の解釈なので、原作と違っていたらスイマセン。

>8さん
グウはジャングルはいつも晴れのちグウという作品のキャラで、唯我独尊な性格だけど、掴み所がない。
そんなキャラです。一応、ハルヒと小学生の会話から物語の着地点を書いたつもりですが・・・。

>ふら〜りさん
あんまり特撮について深くかけませんでしたが、途中の変身ポーズはストロンガーのつもりです。
仮面ライダー全員集合という、昔のビデオで残っている記憶を頼りに書いたものですが・・・。
本当はもっと大暴れをさせたかったんですが、それじゃあ長編になってしまうので、都合上+グウの力でカットさせてもらいました。


63 :涼宮ハルヒの正義:2007/05/06(日) 03:07:28 ID:+4n56E340

>さいさん
カッコいい戦闘シーンをかける人はうらやましいです。
裏切り者がベラベラ事件の全容をしゃべる展開は個人的に好きなので、凄い続きが楽しみです。
ノート通りに、悪が滅びるのか?実はバットエンドか?

>ハロイさん
前々から気になっていたんですが、十和子ってう○おと○らのアレじゃないですよね?
やっぱりハロイさんのように上手い方のSSは台詞に躍動感があると思います。
どんなキャラの掛け合いでもとっても本物っぽく感じて、物語に引き込ますね。

では失礼・・・。

64 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 13:58:20 ID:aTpSXCUQ0
「おいザック! 五階はどうなってる!? アーバイン! ムーア! 一階は!? 答えろ!」

六階。彼の他は誰もいないフロア。暗くて広い、逃げ場の無い最上階。
パトリックは無線機に向かい、五階と一階、それぞれの部下達に状況の報告を求めていた。
精神的支柱である指導者の怒鳴り声から少しの間が置かれた後、銃声と悲鳴をBGMにしながら
副官ザックの応答が響いた。人生最後の。
『パトリック! 聴こえてるかパトリック! 逃げろ! コイツは本物の化物だ! 早く逃げ――がはァ!』
「な、なな、何だって……!?」
肺から出発し、気管を通り、声帯を震わせて紡がれた言葉が、口の中で詰まる。つっかえる。
上手く喋ろうとすればする程、DJのスクラッチに似た滑稽さを含んでしまう。
「お、おい! ここ、こ、こた、答えろ! ザ、ザザザ、ザッ、ザック! じょ、じょう、じょう、
状況を、ほ、ほう、ほほ、報告しろ!」
いくら呼びかけようと返事は無い。交信は完全に途切れている。
胸が高鳴る。精神が高揚していく。
それに合わせるかのように、パトリックの発するアイリッシュ・ゲール語はどんどん捻れ歪み、
聞くに耐えないものに変わっていった。
「みみ、み、皆、し、しん、しん、死んだのか……? こここ、こ、ころ、殺されたのか?
お、おお、俺も? お、お、俺、お、俺も、ころ、殺されるのか?」
パトリックをどもらせているのは怒りではない。恐怖でもない。では闘士としての使命感だろうか?
それも違う。似て非なるものだ。
彼は興奮しているのだ。これ以上無いくらいに。それは“歓喜”と言い換えてもいいだろう。
部下が上げた黄泉路の叫びが彼に感じさせる。脳天から爪先まで。まるでアルフレッド・サウスウィックの
電気椅子が生み出す2000Vの電圧のように。
抗う術など無い強大な“敵”の到来を。阿鼻叫喚の“闘い”の始まりを。己の確実なる“死”の予感を。
血と炎と硝煙の記憶に満ちた彼の神経回路を、殺意と死の誘惑が入り混じった狂気の情報が伝導されていく。
「ヘヘ、ヘヘヘ、ヒヒヒヒヒ、ヒィハハハハァハハ……」
人生最高であろう喜びに、パトリックは口を大きく玉鉤の月にしながら自室に駆け込んだ。

彼は何事かをブツブツと呟きながら、アーマライトに弾倉(マガジン)を押し込み、ストラップを肩に掛ける。
続いてもう一丁、机に立て掛けてあったアーマライトの銃身(バレル)を引っつかみ、同じように
ストラップを肩に掛けた。

65 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 13:59:06 ID:aTpSXCUQ0
更に、震える手が机の引き出しに仕舞われていた手榴弾を取り出す。
どこからともなく足音が聞こえてきた。コツリ、コツリと。
そんなものはまるで耳に入らないのか、パトリックは呟き続ける。

「かか、か、彼、彼は、こ、こ、こぶしで、ぐ、ぐぐ、ぐいぐいと、は、は、はし、柱を、
お、おお、押し、ゆ、ゆ、ゆう、ゆう、幽霊が、み、みみ見えるとしつこく言い張る」

小学校の時にオブライエン先生に習った、どもりを治す為の魔法の言葉(マジック・スペル)。
ああ、懐かしいな。いい先生だった。俺をよく可愛がってくれた。
禿げ頭で大酒呑みだったが、優しくて生徒達に人気があった。
少しの間しか通えなかったが、学校も友達も先生も大好きだった。
なのに、パパ、ママ。何で学校に行っちゃいけないのさ。

「か、か、彼は、こ、こぶ、こぶしで、ぐぐぐ、ぐいぐいと、は、柱を押し――」

「か、彼はこぶしで、ぐ、ぐいぐいと柱を、お、押し――」

「彼はこぶしでぐいぐいと、はし、柱を押し――」

繰り返す。何度も何度も繰り返す。あきらめずに何度でも繰り返す。
徐々に、徐々に、その魔法の言葉は聞き取りやすい正確なものとなっていく。
上手く言える度に、狂気に引きつる笑いは、無邪気な少年の笑顔に変わっていった。
コツリ、コツリ。足音はこの部屋に近づいてくる。

「彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し、幽霊が見えるとしつこく言い張る」

言えた。ちゃんと言えたぞ。そうだ。こう言えばいいんだ。
先生が褒めてくれる。上手く言えた時、先生はいつも大きな声で褒めてくれた。
『goooood! Patrick,very gooooooood!!』って。俺は嬉しかった。
もうパパにもママにも怒られない。邪魔にされない。夕食だって食べさせてもらえる。

66 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 13:59:59 ID:aTpSXCUQ0

へへん、と鼻の下を指で擦り、彼は自慢げに呟き続ける。
この言葉なら世界中の誰よりも上手に言える気さえする。
「彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張る彼はこぶしでぐいぐいと
柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張る彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとし
つこく言い張る彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張る彼はこぶし
でぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張る彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊
が見えるとしつこく言い張る彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張
る彼はこぶしでぐいぐいと柱を押し幽霊が見えるとしつこく言い張る」
息継ぎも忘れ、取り憑かれたように呟き続ける。

コツリ、コツリ、コツリ、コツリ。
鳴り響く足音は次第に大きく、近くなり――
「彼は! こぶしでぐいぐいと柱を押し!」
――やがて、この部屋のドアの前で止まった。
「幽霊が見えると!! しつこく言い張る!!」
魔法の言葉を大音声で高らかに唱えながら、パトリックは二丁のアーマライトの銃口をドアに向け、
引き金(トリガー)を引いた。
二つの銃口が火花を吹きながら、大量の弾丸を撒き散らす。
毎分1800発の銃弾の前に、木製のドアは煙を上げながら砂糖菓子のように簡単に砕けていく。
そして砕け散っていくドアの向こうにチラリと人影が見えたが、すぐに煙の中に消えていった。
銃身の排莢口から無限の勢いでバラバラと薬莢が吐き出される。
床に落下した薬莢が立てる金属音が、野暮ったい銃声の中で心地良い。

そのうちに、銃声も薬莢の落下音も文字通り打ち止めとなった。カチリ、カチリと引き金を引く音だけが
僅かに聞こえるだけ。
だが、それもパトリックが大きく息を吐いて、弾倉が空になったアーマライトを下ろすまでだった。
彼の周りは耳が痛いくらいの静寂に包まれている。
「ヘヘ……終わりかよ……」
首を傾げて、ガキ大将のように鼻息を荒くしながら、弾倉を交換するパトリック。

67 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 14:01:06 ID:aTpSXCUQ0

不意に、濛々と煙る中から何か丸いものがこちらに投げ込まれた。
続けて二個、三個と。次々に四個、五個と。
その光景を見たパトリックは危うく吹き出しそうになってしまった。
どうにも気の利いたコメディのようだった。顔見知りが床を転がってくるのだから。
ザックを始めとした二十年来の部下達が、採れたての果実となって転がってくるのだから。

なんだ、お前ら。そんなとこにいたのか。持ち場を放っぽり出して、何やってるんだ。

そして、オマケだと言わんばかりに勿体振った間を空けて、最後の一個が投げ込まれた。
まだ記憶に新しい。いや、記憶から抜け落ちていく筈だった、フリル付きカチューシャとリボン。

やあ、ブリギット。さっき出て行ったのにもう戻ってきたのか。悪い子だ、俺の言う事が聞けないなんて。

指揮官と少女が“再会”を果たしているその前方で、煙の中を幽かに人影が揺らめいた。
刹那の煌きの後、その人影から幾本もの“銃剣”がパトリックに向かって放たれた。
銃剣は彼の左肩、胸、腹、両膝を一度に深々と刺し貫く。
「ガハッ!」
パトリックは跪くかの如く座り込み、赦しを乞うが如く手を突いた。
床に転がるブリギットと眼が合う。

まあ、見てろよ。今からが一番楽しいとこなんだから。

煙にたゆたう人影は、今は鮮明なものとなっていた。大きい。尋常ならざる長身だ。
突如、抑揚の無い無機質な低い声が廊下に、部屋中に響き渡る。早口に、こちらを追い立てんばかりに。
「我らの神の救いと力と国と、神のキリストの権威とは、今既に来たれり。我らの兄弟を訴え、
夜昼我らの神の御前に訴うるもの落とされたり。兄弟達は子羊の血と己が証の言葉とによりて勝ち、
死に至るまで己が命を惜しまざりき。この故に天と天に住める者よ、よろこべ」
一呼吸を置き、声はそれまでとは打って変わって、憤怒と激情に満ち満ちたものとなった。
審判の日に現れる四つの生き物が上げる雷鳴のような声とは、もしかしたらこういう声なのかもしれない。
「しかして地と海とは禍いなるかな、悪魔は己が時の暫くなるを知り、大いなる憤りを抱きて
汝らのもとに下りたればなり!

68 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 14:03:06 ID:aTpSXCUQ0
影が動いた。
木屑やコンクリートの欠片を踏み締め、その常人離れした体躯の持ち主は一歩、また一歩と部屋に
足を踏み入れる。
ついに来た。ここまで辿り着かれてしまった。
いや、違う。
来てくれたのだ。命の奪い合いを渇望する男の招待に応じたのだ。両手には主の祝福を受けた
剣をしっかりと携えて。
“御主に伏する死徒”“刺客(イスカリオテ)のユダ”“神の代理人”“銃剣(バヨネット)”
ヴァチカン特務局第13課、アレクサンド・アンデルセン神父。
彼は床に這いつくばるパトリックを見下ろし、銃剣を握る手でクイと眼鏡を押し上げる。
パトリックもまたアンデルセンを見上げた。

ああ、神父様。丁度いいところに来てくれた。聞いて欲しい事があるんだよ。
とりあえずこの銃声を聴いてみてくれ。すごく気持ちいいから。すごく響くから。

パトリックは笑いを含んだ無言のまま、身体を起こして素早く銃を構える。
二丁を構えたつもりだったが左腕は動かない。右腕だけだ。
人差し指に力を込めて、パトリックは再度、発砲を開始した。
今度は標的がハッキリと見える。しかも、先程よりも更に近距離だ。狙うのは簡単だ。
弾は命中している。血も飛び散る。だが、倒れない。顔色も変えていない。銃創は瞬時に塞がっていく。
何もかもがアーマー市警襲撃作戦の時に、モニターで見たとおりだった。
「そんな玩具(オモチャ)で、この私がどうにか出来るとでも思っているのか……」
アンデルセンはまるで瞬間移動を思わせる素早さで、一足飛びにパトリックの目の前まで近づくと、
銃剣を大きく一振りした。
パトリックの右腕がドサリと床に落ちる。
「ぐぅおおッ!」
「パトリック・オコーネル。貴様は我らが神に背を向け、堕落し、人ならざるものを使役した。
貴様の罪は重い……」
アンデルセンは両手に下げる、銀色に鈍く輝く銃剣と真新しい血が滴る銃剣を、厳かな手つきで
膝立ちのパトリックに近づけた。

69 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 14:04:32 ID:aTpSXCUQ0
「この私が神に代わりて罰を下してくれる。貴様がその罪を贖うには、一度死ぬだけでは足りん――」
静かに、ゆっくりと二本の銃剣を交叉させ、その長い刀身でパトリックの首を挟む。
「――七度の七十七倍、殺してやろう。その肉を滅し、その霊を亡ぼし、その魂が永劫の時を以って
地獄の牢に繋がれるようになァ……」
「ヘ……。ヘヘヘ、ヘェアハハハハハ……ヒヒヒヒヒ……」
聖なる断頭台に掛けられたパトリックは調子外れの笑い声を洩らす。
死刑執行人(アンデルセン)が両腕を横に広げるだけで、その39年の人生が幕を下ろすというのに。
「何がおかしい」
問い掛けるアンデルセンの声を聞きながら、パトリックはまるで場違いな下らない事を考えていた。
“今の俺ならハリウッドデビューだって出来そうだ。監督はジョン・マクティアナンじゃなきゃ
OKしないがな”などと。
「ヘヘ、ヘヘヘッ……。テ、テメエも死ぬんだ、糞垂れ野郎(マザーファッカー)……!」
何かが床に落ち、転がった。
下を向いたアンデルセンの足元には、ピンが抜かれた手榴弾が二つ。
「ヌウッ!?」
爆破の閃光が僅かに一瞬、アンデルセンとパトリックを照らしたが、すぐに何もかもがわからなくなった。
部屋のガラスが外に向かって砕け散り、強烈な爆発音が六階全体に轟く。
爆発の中心にいたアンデルセンは衝撃と爆炎の直撃を受けた。

部屋中に黒煙が立ち込めている。
パトリックは爆風に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられていた。
「グゥエエッ! ガハァ! ハァ、ハァ、ゴホッ……!」
壁にもたれるように座り込み、うつむいたパトリックはまるでボロ雑巾だ。
どこもかしこもに炎によって焼け焦げ、手榴弾の破片によってズタズタになっている。
身体中に突き刺されたままだった銃剣は、爆発の際にパトリックの身体を大きく切り裂いて
どこかに飛んで行ってしまった。
特に腹からは生命維持に必要な器官がゴッソリと顔を覗かせている。
そして閉じられた両眼からは、涙のように止めど無く鮮血が流れていた。
パトリックはそれでも尚、してやったりと勝ち誇った笑い声を血反吐と共に吐き出し、動かない腕で
ガッツポーズを決めようと力を込める。
「ガアッ、ガハッ! ヒヒ、ヒヒヒ、ヒハハハハハ! ゲホォ! ザマぁ見やがれ(イピ・カイ・イェー)!
ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

70 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 14:06:15 ID:aTpSXCUQ0

楽しい。楽しいなあ。
こんなに楽しいのは、ああ、いつ以来だろう。
そうだ。初めての時だ。初めての組織(IRA)の仕事の時だ。
小学校を爆破した時だ。俺の通ってた小学校を。あれは凄かったな。
みんなバラバラだった。校舎も机も教壇も生徒も先生も。
オブライエン先生の禿げ頭もパッカリ割れて、脳味噌が花を咲かせたようだった。
綺麗で、滑稽で。ああ、楽しかったなあ。

「フフフ……ヒヒヒ……」

いやあ、あんなもんじゃない。
今度は俺が殺されるんだ。みんなが俺を殺すんだ。
俺が殺すんだ。俺を殺すんだ。俺が神父を殺すんだ。俺が殺されるんだ。
さあ、みんな殺しに来い。協力者も、英軍も、神父も、警官も、先生も、パパも、ママも。
俺が、俺が、俺が殺してやるから。
楽しいぞ。死ぬまで殺すんだ。殺されるまで死なすんだ。楽しいぞ。

まだだった。パトリックの望み通り、まだ闘い(ゲーム)は終わってはいなかった。
立ち込める黒煙の中からアンデルセンが姿を現したのだ。
「流石に少し時間がかかったな……」
無傷だ。
厳密に言えば爆発によって致命傷に近い傷を負ったのかもしれないが、再生者(リジェネレーター)である
彼にとっては致命傷になど決してなり得ない。
うつむくパトリックはアンデルセンの生存を感じ取ると、頭をもたげてカッと瞼を開いた。
赤く煮えたぎるマグマを湛えた眼窩から、それまで以上の大量の血涙が溢れ出る。
血塗れの泣き笑いで声の聞こえた方へ顔を向けるパトリック。
それに応じるようにアンデルセンも法衣の懐から新しい銃剣を取り出す。
「ククク……。どうした? やけに楽しそうじゃないか、パトリック・オコーネル。
まるで化物だ。まるでワラキアの夜だ。人の形をしているくせになんて様(ザマ)だ」
と罵ってはいるものの、そのアンデルセンの顔にも狂喜の笑みが貼り付いている。

71 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/06(日) 14:07:59 ID:aTpSXCUQ0

パトリックは立ち上がろうとしていた。両膝を射抜かれたその脚で。
それでは終わらず、残った腕で銃を構えようとしている。肩を射抜かれたその腕で。
「さ、さァ……殺、ろう……ぜ……」
息も絶え絶え、指で押せば倒れそうな程に頼りない。
全身を震わせながら立ち上がったパトリックは、銃を構えたまま動かずにいる。
「シィイイイイイアァアアアアア!!」
アンデルセンは少しの慈悲も憐れみも無く、動かないパトリックに突進した。
振り払うようにして銃を握る左腕を斬り落とす。
そして、間髪入れず首筋に横薙ぎの一閃を放った。

「――AMEN!」

パトリックは何を考えていたのだろうか。それは宙を舞う彼の表情から推し量るしかない。
最期まで歓喜の笑いを崩さなかった彼の表情を見る事が出来るなら、誰もが同一の印象を受けるだろう。
その表情は今にも「more!(もっとだ!)」と叫びだしそうだった。

死は勝利にのまれてしまった。死よ、お前の勝利はどこにあるのか? 死よ、お前の棘はどこにあるのか?

湿った音を立てて“片方の”パトリックが床に転がった。少し遅れて“もう片方の”パトリックも
床に倒れ込んだ。
パトリック・オコーネルは、死んだ。
彼は遂にその最後の瞬間まで、この闘争劇の主役である“錬金戦団”や“錬金の戦士”の存在を
知る事は無かった。
彼は何も知らなかったに等しい。彼の元にいたホムンクルスの正体も。彼を殺した神父の真の敵も。
闇の世界に生きていた筈の彼も、さらに深い闇の中で戦い続ける存在の前には、その一抹を触れたに
過ぎなかったのだ。
彼はカトリック信徒として生を受け、テロリストとして闘争の中を生き抜き、背信の徒として処刑された。

ただの、人間として。

72 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/05/06(日) 14:09:35 ID:aTpSXCUQ0



今回は長い上に、グロかったり、ワケわからなかったりの独りよがりな描写が多くて申し訳ありません。
パトリックを通して表現したかったのは二つ。一つは、戦いや死に憑かれた狂人の心理描写。
もう一つは、アーカードの旦那に「素敵だ。やはり人間は、素晴らしい」と言ってもらえるような
“人間”の闘いっぷり、です。
GWも終わり、またゆっくりとした更新ペースになるとは思いますが、皆さん今後ともよろしくお願い致します。

>>14さん
サムナーと神父は繋がっておりませんw 神父にしてみれば異端者と手を組むなんてあり得ないのでしょう。
副題の意味は、今回が『トランペットの音を聴け、角笛の音を聴け。億万の天使達が歌っている』です。
他についてはこちら(´・ω・)つhttp://plaza.rakuten.co.jp/saisaimappy/diary/200704040003/

>>21さん
そうです、黒幕はサムナーです。ただの面白戦士長では終わりません! 何せ“最低の悪役”として書いてるんで。
やっぱ主役は神父に見えちゃうか……orz い、いや、いいんですよ! “裏”の主役にして、“真”の主役ですから!
そして、マイペースにフルスロットルで頑張りますので、これからもよろしくお願いします!

ふら〜りさん
そんな予想外でしたか! いやあ、サムナーには徹底的に悪役になってもらいたくてw
確かに愛着はありますが、キャラの造形上、サムナーは皆さんに嫌われた方が私は嬉しいんです。
神父や千歳は好かれてますしねw あと、他の「まさか」も幾つか用意してあります。

>>23さん
そうなんですよね、もうすぐラストなんです。今回で勢力の一角が壊滅しましたし。
衝撃の展開ですか?ん〜。誰もが「え゙え゙〜!?(;´Д`)」となるような衝撃を用意、出来れば、いいな……。
まっぴー&婦警は私も早くお届けしたいw

73 :さい ◆Tt.7EwEi.. :2007/05/06(日) 14:14:10 ID:aTpSXCUQ0
涼宮ハルヒの正義作者さん
お疲れ様でした! キョンの語りや長門の口調など原作を彷彿とさせられましたよ。
高い技術に裏打ちされた作品というのは読んでいて楽しいし、面白い!
ちゃんとキョンの妹が出てきてくれたのは嬉しかったですしw
ハレグウは知りませんでしたが、ハルヒ好きとしてめちゃめちゃ楽しませて頂きました。
次回作を楽しみに待ってますね。





では失礼します。

74 :作者の都合により名無しです:2007/05/06(日) 23:41:52 ID:P8NX3e8/0
>しぇきさん
これは、バキスレ至上最も長い投下かも・・w
ハルヒを知っているだけにニヤニヤしました、オチw
しぇきさんのこういうノリが大好きなので、
またいつか投下してほしいですね。他作品の続きもお願いします。

>さいさん
今回は神父サイドのお話ですね。
前回の千歳たちの運命も気になりますが、やはり主役の神父が
出張ると作品も緊張感に溢れますね。
パトリックの「生贄」っぷりも素敵でした。

75 :作者の都合により名無しです:2007/05/07(月) 01:46:14 ID:nu0rntra0
バレさん復帰おめ!
バレさんといいゴートさんといい、バキスレは良い方々に恵まれてますね。

・涼宮ハルヒの正義
ハルヒ知らんけど、久しぶりのしぇきさんの作風を楽しませてもらいました。
ジェットマンとか出てきて笑いました、朝比奈さんの一人勝ちみたいな終わり方でしたね。
次は「オーガの鳴くころに」と「フリーザ野球軍」の復活をお願いします!

・WHEN THE MAN COMES AROUND
ちょっとグロかったりもしましたが、アンデルセン神父好きとしては納得の暴れ方ですね。
AMENといいつつ転がった首の傍らで不敵に笑う神父のマッドな表情が目に浮かぶようだw
もうすぐラストという事ですが、次のまっぴーと婦警の作品早くも楽しみにしてますw

76 :作者の都合により名無しです:2007/05/07(月) 10:32:33 ID:geuI73mt0
さいさん、いよいよラストスパートですか。
パトリックが首チョンパされてアンデルセンの真骨頂といったところですが
もうすぐ終わりは寂しいなあ。
サイトとか見ると、さいさんほどSSにまじめに取り組んでいる方も珍しいし。
(こんな言い方すると他の職人さんに失礼か)
でも次作もあるみたいなんで、WHEN〜も最後の一行まで楽しみにしてます。


それから、バレさんバイク事故で入院だったのか。
痛ましい。復帰されたのは嬉しいですが無理なさらないでね。




77 :作者の都合により名無しです:2007/05/07(月) 16:14:49 ID:fxugDvfN0
しぇき氏なげえw最後まで名を明かさなかったねw
読むのにも結構かかったです。楽しかったけど。
またぜひ遊びに来てくださいw


さいさんは相変わらず好調ですなー
このSSのラストスパートで筆がのってるのかな?
神父がどんなラストを迎えるか楽しみにしてます

78 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:20:16 ID:UJNPMxlo0
【解説】貴信の流星群について

・彼は掌より生体エネルギーを放出して、攻撃に転化するコトが可能!
・が、生体エネルギーはいわば血や水分と同じ。
・大量に放出すれば衰弱する。(例えば学校で桜花に放出した後は、しばらくぐったりした)
・そこで彼はハイテンションワイヤーの「物体からエネルギーを抜き出せる」特性に着眼。
・物体のエネルギーであれば疲労は少ない。(若干はある)
・掌の穴に鎖を接続。抜き出したエネルギーを避雷針のように伝わせ、体内に吸収。
・肩の部分にある「貴信ぶくろ」に蓄積し、必要に応じて放出している。
・「貴信ぶくろ」はニラと一緒に味噌で炒めるとうまい。一番合うのはビール。
                                                  以上。

核鉄。
武装錬金を織り成す六角形の金属片の名称である。
剛太たち錬金の戦士にとり 得るコトは戦団から認められたという得がたい証である。
よって紛失などはもってのほか。
まして敵に奪われるようなコトがあれば戦士失格の烙印を押されても仕方がない。
また、核鉄には一から百までの固有のシリアルナンバーが割り振られており、剛太の物は──…
「LV(55番)か」
貴信は掌にある核鉄を、残念そうに眺めた。
剛太は気絶し、闘争本能の具現たる武装錬金が解除され、核鉄として敵の手中にある。
上記だけで軍配がどちらに上がったか、既に明瞭である。
「惜しいなぁ。LXXXV(85番)なら80番台がコンプで、もりもり氏も喜んだろうに」
斬られた手首はすでにひっつけてある。まだ痛む。流星群の放出も無理そうだ。
「はぁ…… 男だから放出直後はダルいなぁ。だんだんいろいろ減退して、二十五歳ぐらいに
は二日に一度ぐらいが限度になるんだろうなぁ」
『何の話してるのご主人』
(なぜに香美を鬱陶しく思ってしまうのか。好きだがたまには離れててくれないかなあ。事後
はすり寄ってこないで欲しいなあ。隣でぐーぐー寝てて欲しいなあ。あーしんどい)
微妙な男の機微など、香美には分かろうはずもない。
ともかく、ポケットに核鉄をすべりこませてテンション復帰させる男が一人。
そう、いかに辛かろうとも頑張らねばならんのが男なのだ!

79 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:20:49 ID:UJNPMxlo0
「さてまずは核鉄を手に入れた。次は割符のコトを忘れて貰おうか!! 手当は最後だ!」
治りたての掌から鎖を引き抜き、持ち手を変える。金属の輪がやかましく垂れた。
「これは総ての真髄を捉える! 真髄たるエネルギーを抜き出せるのは直撃の一瞬だけだ
が、読むだけなら触れるだけでもOKだ!! 例えば、パソコンからある銀成学園生徒の情
報を読むコトも可能。というか早坂桜花と遭遇したあの夜、現にした!!」
貴信の声はうるさい。山びこにすら化している。
近隣に住居があれば、血相を変えた住民が文句をいいに駆けつけてくるかも知れない。
『えーと。ひかり副長のためだっけ。忘れたけど』
「そしてコレは人の記憶とて例外では……ないッ!!」
星型の分銅をくしゃくしゃの剛太の頭に当てる。
貴信から漏れるふいごのような息。瞳孔も忙しく収縮して興奮を外界に散らしている。
「やろうと思えば記憶総てを知るコトもできるが! それは礼に反するから記憶のみ頂く!!」
『ごめんね垂れ目。でも仕方ないじゃんこれは』
「でりゃあああ!!」
手につられて鎖がたわみ、分銅が直撃。といっても威力は弱く、小石が当たった程度の衝撃だ。
(記憶は……そこだあ!!)
ハイテンションワイヤーを薄い火花が駆けあがり、やがて反対側の手首からバチリと放出された。
これで。
剛太のつかんだ、彼が斗貴子たちに伝えるべき重要情報は……露と消えた。
その深刻さを知らぬ香美は髪の中でざらざらした舌を出して、へぇへぇと呼吸を始めた。
猫は暑さに弱い。無風となれば直だ。
余談だが、猫は基本的に鼻で呼吸を行う。
口での呼吸ももちろん可能ではあるが、それは重大な病気・ケガ(例えば肺に穴があるなど)
がほとんだ。
もっとも、香美のように暑いだけで口呼吸をする猫もいる。あと激しい運動の後にもだ。
だから一概には危険視できないが、まぁ、参考までに。
香美はせめてもの慰めに、遠くに涼しい音を求めて耳をそばだてた。
幸いというか、かなり先の方で枝葉がこすれあう音を察知。
(あっちで風吹いてるってコトは、もーすぐこっちでも吹くってコトじゃん。やた!)
「おぉっと! 危うく忘れるところだったな!! 割符っ、割符の回収だあああ!」

80 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:23:14 ID:UJNPMxlo0
そういいながらしゃがみ、剛太をひっくり返し、いざポケットをまさぐろうとした所で。
貴信は悄然と動きを止めて軽くうめいた。
「妙だな!」
『何がよ』
「彼の手だ!!」
先ほどの流星群により傷つき、うっすらと血をにじませている。
それ自体はいい。他の部分と同じだ。だが。
腰のあたりに不自然な形で吸い付いている。
そこにはポケットがあるから、ちょうど覆い隠す形だ。
『割符をまもってるんだと思うけど。壊れたら困るし』
「いや! ならばポケットに手を突っ込むべきだろう!! ……何か引っかかるな!」
風のない夜だ。晩夏であれど、まだ大気から熱が撤退する気配がない。
太陽の見えざる残り火が闇をジワジワと沸き、不快指数を高め、人の思考力を奪っていく。
貴信も然り。
短気を起こしたのか。無遠慮なしぐさで剛太の手を払いのけ、ポケットに掌を突っ込んだ。
「ふはは! 考えても仕方ない! どうせ割符を探すついでだ!」
磊落に笑い飛ばして石のような拳を乱雑に抜き取ると、小銭が巻き添えでこぼれ落ち、銀や
銅の光が地上に芽吹いた。
香美はそのちゃりちゃりという音に混じって、木々が再びざわめくのを聞いた。
(んにゃ? さっきより近いのに風ふいてないじゃん。なんで? てかどっかで聞いたよーな)
不思議に思ったが、貴信の大声に吹き飛ばされた。吹き飛ばされて、しまった。
「予感的中! コイツを守っていたらしい! だが何だコレは!!」
掌を開いた貴信は喜悦と戸惑いを順序よく浮かべた。
割符を見つけ、核鉄同様しまったまではいい。
問題なのは剛太の掌に残した不可解な物体だ。
目当ての割符よりかなり大きい。掌の半分ほどだ。
無機質な楕円形で、色はシルバー。端からは、小指ほどの長さの筒が伸びている。
その対辺上には蝶番(ちょうつがい)のような切れ込みがある。
首を捻りながら、むんずとつかみとった。
不用心だが、まさか爆弾などの危険物ではないだろう。戦士の武器は核鉄だけで十分だ。
第一、仮に危険物であったとしてもホムンクルスの貴信には通じないというのもある。

81 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:23:48 ID:UJNPMxlo0
「む! 徐々に分かってきたぞ!!」
”それ”をぱちりと開く。
『な、何なのご主人!!』
「携帯電話だ!!」
貴信の頬がホオジロザメのようにニンマリ裂けた。我が意を得た、というところだろう。
しかしこの夜はまったくもって、暑い。
天気予報も、夜半からはまったく風がないとお茶の間に伝達している。
さて。貴信の額からこぼれた汗が画面に付着したのは、果たして暑さのせいだったのか。
「はっはっは! 香美、一つ重大な事実が判明したぞ!」
少し離れた樹上では青々とした葉っぱがざざざと宙を舞う。
無風の夜でありながら、吹き飛ばされるように。まるで貴信の大声に向かうように。
『なーにご主人』
「やられた! あの新人戦士、戦闘中にこっそりメールで知らせていた!」
『なにをよ?』
「貴様たちが残りの割符を総て持っているコトをだ!」
突如として!
怖気をもたらす黒い暴風が貴信を背後から貫いた!
するとなぜか彼の視界は天空に向かって跳ね上がり、枝を数本ヘシ折ると反転!
わずかな急下降を経て、鼻先が地面に激突。
鈍痛激しく地面をもんどり打ちながら、彼はようやく気づいた。
ありえぬ声に。
視界の異常に。
または上記の疑問に捻るべき首が、その機能を失っているコトに。
香美も気付き、しっぽがあれば膨らまさずにはいられぬおぞましい気分になった。
毛が逆立つ。
なぜなら、視界いっぱいに広がるショートヘアーの隙間から見てしまったからだ
首のない、自分の体を。
無風の夜に風が吹く。
翻り、明確な攻撃意思を孕み、直立不動の首なしを狙い。
いや。風そのものが、ではない。正確にいえば風を生む元凶たる──…
処刑鎌(デスサイズ)!
「ようやく見つけたぞホムンクルス!! よくも剛太を!!」

82 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:24:33 ID:UJNPMxlo0
踵を返した風は4条の青白い狂乱光をまとう影と化し、貴信に殺到!
「首は飛ばした! 後は章印を貫くだけ!!」
津村斗貴子の絶叫に山鳥の飛び立つ音が重なり合い、辺りはそれきり静寂に包まれた。

「フ。昔の俺なら口笛の一つでも吹いているところだな」
おおげさに肩をすくめると、あたりの惨状を見回してみる。
ひどいものだ。
せめて動物型や植物型なら印象は違ったのだろうが、あいにくここにいるのは人型ばかり。
だからひどい。
散らばっているパーツがどれも人間めいているからそぞろに戦慄を禁じえない。
手や足、それからもろもろの臓物が散乱している。
それらはあちこちに生い茂る茂みの中や、近くの橋柱の陰にもあるかも知れない。
すでに塵と化した死骸はまだ空気を漂っているようだ。
自分でも形のいいと自慢の鼻を引くつかせてみる。
流れ込む死臭の濃度と散らばる屍骸の数で、見当がついた。
「総勢五十六体、か。よくもまぁこんな短時間でやったな。セーラー服美少女戦士」
河原にたたずむ総角は、山に向かって拍手(かしわで)を打ってみた。
もちろんこの河原は斗貴子と剛太が先ほどまでいた場所で、散らばる死骸は一人になった
斗貴子に攻撃をしかけたL・X・Eの残党たちだ。
それをことごとく返り討ちにしているところに、斗貴子の恐ろしさと凄まじさがうかがえる。
「お前はおそらく貴信には勝てるだろう。貴信には、な」
意味深な言葉を発してから、あたりをぐるりと余裕のある仕草で見まわしてみる。
すると右側頭部が処刑鎌の形に陥没した死体が目についた。
ちょうど左大腿骨頚部(骨盤と太ももの付け根)から右大腿骨の中ほどをナナメに薙がれた
うつ伏せの死体もあった。
珍しいので総角は歩み寄り、検視官のように観察してから微苦笑を浮かべた。
これまた酸鼻をきわめている。
背中一面を執拗に刺されているのだ。二十余傷はあろうか。
足を失い倒れた相手への仕打ちとしては古今まれにみる残虐さである。

83 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:26:55 ID:Y7uFE6+z0
「数では圧倒的不利の戦いでよくコレだけ刺せたな。普通なら邪魔が入るだろうに。残党ども
は怯えて遠巻きに見ているだけだったのか? そういえば社会心理学では困った人間を助け
る時の条件を五つぐらい上げていたが、何だったかな。少なくても残党共にはなかったから、
こういう死体ができあがると思うのだが」
一人ごちりながら歩みを進めると、仲間の生首が鼻っ面にめり込んでいるのも見つけた。
これは刎ねられた勢いでなったのか意図して突き刺したのか、もっと偶発的な事態が起こっ
たのか。よくわからない。
陥没した顔面に、つぶれた顔面が埋まって、引き剥がすのは困難そうだ。
もっともできたとして、不快な光景を見るだけだが。
ともかく乱戦であり、されど一方的な虐殺だったのは、口をぱくつかせながらかすれた声をあ
げる一ダースほどの生首が証明している。
総角に助けを求めているらしい。まるで蜘蛛の糸にすがる亡者だ。
「フ。無駄だ。もはや長くはない。ところで」
認識票を握る。黒い蝶が背後で閃くと、一メートル八十センチほどの火柱が地面に刺さった。
轟々と燃え盛るそれは、奇妙なコトに手を生やし、何事かを喚きながら右往左往してから力
尽き、どうっ! と横に倒れこんだ。
「詰めが甘いな。あのセーラー服美少女戦士も残党も」
いまや消し炭になった火柱は、かろうじての生き残りらしい。
斗貴子が剛太との合流を焦るあまり、見逃したのだろうか。
「俺が前者なら一気呵成かつ百パーセント確実に全滅させる。後者ならうまく統制を取って
消耗させ、隙をつく。少なくても何らかの策は錬るな。力押しは下策。運頼み数頼みは論外」
憎々しいほど余裕たっぷりの総角の前で、消し炭の粒子が闇に散っていく。
「それと。生首どもの呻きは俺の注意を引きつけるための囮と見たが…………違うか? 
なぁ、そこの連中」
眼には見えなかったが。
一瞬だけ空気に奇妙な震動が走った。それは恐怖や驚愕、絶望といった感情の波だ。
まだ隠れているのがいたらしい。おそらく斗貴子をやり過ごしたはいいが、入れ替わりに総角
がやってきたから、ひとまず隠れて様子を見ていたのだろう。
あわよくば倒して核鉄を奪おうとも。

84 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:27:45 ID:Y7uFE6+z0
「やれやれ。剣士相手に動揺するから位置を悟られる」
また微苦笑の総角から、感情の波めがけて蝶が飛ぶ。
「策は悪くなかったが、緊張状態が災いだ。不意打ちを悟られ、簡単なカマにすら乗る。策
を成すには静かな精神と余裕こそが重要だ。俺はそう思っている。まぁ、強要はしないが」
立ち込める新鮮な火葬臭を黒い蝶が飛び交って、あちこちで爆発と断末魔が巻き起こる。
生首どもにも引火して、彼らは作成途中のポップコーンのようにポンポン飛び上った。
さすがホムンクルスだけあって、首だけでもそういう芸当ができるらしい。もっとも芸は身を
助けるというが、この場合は正反対。なまじ生命力があるせいで、生首が燃え尽きるまで炎
熱地獄をのたうち回らなければならないから。
やがて一ダースほどのポップコーンが炎に喰い尽され、そこかしこの断末魔も途切れた。
「これで全滅。フ。ホムンクルスの俺が街の安全に一役買うというのもおかしな話だがな。
そういえば条件の一つは『自己中心的じゃない人間』だったか。社会心理学上、人助けをす
る人間の条件は。なるほど。人間という要素を除けば部下思いの俺に当てはまるな。やは
りさすがだ。俺は誰よりカッコいい」
アゴに手を当てて目もとにキラリと光を浮かべる総角の周りでは、紅蓮の炎が河原いっぱい
に伝播して黒い水面にゆらゆら揺れているる。
「さて。小札はうまくやっているかな。できれば早く戻ってこい。離れているのは寂しいからな。
お前も、俺も」

郊外。2kmほど先に大きな病院が見える場所。
「ときをこえろっ! そらをかけろ! このほっしのためぇ! デテンテンテン!」
舌っ足らずの歌声に混じり、ぽかぽかと珍妙な音が響く。
路上を小さな影が走っていた。
影は自転車ぐらいならすいすい追い抜ける速度で、ゴミ捨て場の前を通りすぎ角を「うおおー、
激突するかも知れませぬぅー!」と必死に曲がり、行き止まりを飛び越え屋根を踏みつけ、路
上に着地。
何の変哲もない道に出た。
歩道はなく、あまり舗装されていない2車線道路が申し訳程度に伸びている。
人家よりは畑が多く、街の光もやや程遠い。

85 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:28:20 ID:Y7uFE6+z0
そこに佇む影は、手にしたロッドをバババッ! といたるところに向けて何かを確認している
ようだ。
背丈も顔も体型も小学生ほど。かぶったシルクハットも背丈を誤魔化せないほど小学生。
それらが瑣末になるほど奇妙な造型をしている。足が四本あるのだ。無機的なロバの足が。
さながら神話上のオノケンタウロス。ぽかぽかという珍妙な音は、蹄の響きらしい。
「君は見たかっ! あーいが! 真赤に燃・え・る・のを!」
少女──小札は叫んだ。
「探索モード! ブラックマスクドライダー!」
するとロッド尖端、六角形の宝石部分から黒い光が稲妻のように迸り、道の向こうに消えていく。
「なるほど! 不肖の探し物はあちらとゆーワケですね! ならば不肖は駆けるのみ!」
速度が上がった。暴走族と並走してもぐんぐん引き離せるだろう。
「ちなみに不肖のセリフはすべてふだんより小さき声。ゆえに睡眠中の皆様方をお騒がせさせる
コトなきサイレントボイス。うぉおという接続詞ならびに、やさしい目をしただれかに逢いたいと
助詞をつけるべきサイレントボイス!」
小札の両脇に家屋が現れ小規模なビルが現れ、やがて十字路を渡ると茶色の壁が出現した。
ここで小札は速度を緩め、壁沿いに歩き出す。
1分もしない内に壁は途切れ、五十メートルほど先に大きな建物が現れた。
すかさず彼女は茶目っ気のある仕草で、マシンガンシャッフルを口に当てた。
「皆さま左手をご覧下さい。あちらに見えまするは聖サンジェルマン病院であります」
左手を慣れた調子で突き出す彼女はもちろん一人。皆様というのはノリなのだろう。
「昭和63年に建てられましたこの病院は、ベッド数100、 当初の目的は二次医療が主では
ありますが、夜間・休日などの一次救急も総て受け入れるべく数少ないお医者さん形と職員
さん形が日夜奮闘いたしております! 医療というものはかくも素晴らしきもの。さー、不肖の
声にも熱が篭ってまいりましたぁっ!」
くるりと踵を返して走りだしたところをみると、どうやらココは目的地じゃなかったらしい。

86 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:29:14 ID:Y7uFE6+z0
「探し物を見つけるまで、銀成市各所を一人ガイドいたしましょう。香美どのほど暗所を恐れて
はおりません不肖ではありますが、いやいやしかしそこは一応女の子。この頃はやりではあ
りませんが女の子。……きゅう。お尻は小さくありますが、いやいやしかしそれに言及しては
テンションが下がる一方、一人で走る夜道に寂しさが募る一方。よって不肖は実況ガイドを
ぐぎぇ!!」
突如として奇怪な現象が小札の体にまき起こった。
彼女は前足を軸に勢いよく傾き、長方形の石を敷き詰めた歩道へ吸い込まれ、顔面をぶつ
けた。
要するにすっ転んで顔面を打ちつけた。
幸い、ホムンクルスだから鼻血は出てない。むしろ歩道に軽いヒビが入ったぐらいだ。
「ててて敵襲でありますか! し、しかし不肖のマシンガンシャッフルとてそれなりであります
よ! ありますから! ぬををー! あくりょーたいさん、あくりょーたいさん!」
素早く身を立て直し女の子ずわりであわあわと目を白黒させてロッドを振る小札の前には
何もいない。ただ、歩道のヒビはなぜか淡い光の糸で結ばれ始めているが、彼女はあまり
気にしていない。むしろ当然だと認識しているようだ。
とりあえず小札はぱちぱちと瞬きをしてから、「きゅう?」と首をひねった。
転蓮華をかけられて2秒目ぐらいのセルゲイ・タクタロフぐらいにひねった。
やがて「これは」とか「しかしそれでは……」とか「ぐぬぬぅ」とかひとしきり呟いてから、マシン
ガンシャッフルの先っぽで鼻をぽりぽりと掻いた。
そして転んだ個所から2mほど東を確認すると、何があったのか「こきん」と首をうなだれた。
肩にかかった可愛らしいおさげの先で両手をブルブルさせる。
太もものあたりで布を握りしめるもんだから、パリっとしたタキシードに皺が走った。
震える声が夜道に響く。
「不肖は重大事実に気がつきました。アレをご覧下さい。そう。空き缶です! スチール製
の空き缶が転がっております! 爆走中の不肖はあれを踏みつけ転倒した模様。ぐむむ。
ここはゴミを捨てる心無き人に怒るべきでしょーか。いやはやしかし踏みつけたのは不肖。
不覚を反省すべきでしょう。ともかく第二第三の悲劇を防ぐべく……」

87 :永遠の扉:2007/05/07(月) 18:30:34 ID:Y7uFE6+z0
ぱっぱかぱっぱか空き缶に歩み寄り、拾い、首を左右にせわしなく振る。
はす向かいにタバコ屋さんにジュースの自動販売機とゴミ箱が備え付けてあるのを発見。
空き缶を捨てて、走り出す。
先ほどガイドした聖サンジェルマン病院地下で、妖気をはらんだ戦いが展開されているとは
つゆ知らず。

一方。河原。
総角はバケツに汲んだ川の水を、バサー、バサーと燃え盛る炎にかけていた。
「フ、こうなるなら他の武装錬金を使えば良かったな……」
消火と水汲みの単調な繰り返しに、彼の背中は哀愁を帯びていたという。

以下、あとがき。
むむ。今回はブレミュ勢がメインすぎる。斗貴子さん出番少なっ。
もともと今回で千歳と根来のパートをひと段落させたかったのですが、それは次回に。
なんというかですね。新機軸をやる時は、それだけに集中してないと無理ですね。

さいさん(ぬは。なんという不覚。前回は感想忘れておりました。てなワケで増量ッ!)
>WHEN THE MAN COMES AROUND
おお。まさに防人。真赤な誓い2番の人! 超人的な能力も健在! こんな人なので、確か
に苦戦を描こうと思ったら難しいかも。てなワケで、神父戦での大腿部損傷はお見事! 
ジュリアン君は前門の虎後門の狼状態。寄生を免れても銃殺され、よしんばどちらがなくて
も、失血死orz 助かって欲しいのですが、キャラは話の流れに命運を決定される存在。見守るしか……
>私がレーザー乱射一辺倒の能力バカとでも思っていたのか?
思ってた! (3巻のカズキと斗貴子風に) だんだんこの人が自己陶酔しているだけの人に
思えてきましたねw まぁ、そこに武装錬金キャラたる「悪人でもどこか憎めない」要素があ
るのでしょう。しかし、”黒幕”で”女性を人質”で”性欲丸出し” ジュリアンとは正反対の爽快
な死亡フラグがもうビンビン。こりゃ、神父戦を迎えれるかどうかも怪しいw
パトリックは今回冒頭の、葛藤から逆襲に転じる部分がおみごと。欧州的な背景に何とも
濃いどもりの治し方を絡めて、攻撃の口火とする。静と動の切り替えが決まってますね。

88 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/05/07(月) 18:38:17 ID:Y7uFE6+z0
神父は怖いw 生首持ちすぎ。圧勝すぎ。でもそんな相手にあがく姿があらばこそ人間が引き立つ。
テーブル拭き拭きのシーンは「弁士往来」ですね。「背水の陣」冒頭で、レキ生に木陰を作って
やってる場面も好きです。友情がよく出てます。

前スレ>>353さん
可愛いのに可愛くない行動をとるのが可愛いと思うのです(力説) やはりまひろはヘンなコ
であるべき。それでいて他人思いで懸命ならばなお良し。あと、投下途中で滞ってしまい申し
訳ありません でも、気に入って頂ければ嬉しいです

前スレ>>354さん
なかなかの手ごたえでした。ただ、過密といえなくもないですねw 新キャラ新武装錬金の説
明だけでも良かったかも。もともと秋水とまひろはさわり程度だったのが、なんだかノってきて
しまい。この二人は可愛くて仕方がないのです。

前スレ>>355さん
そもそも彼、「ヒロインを狙う脇役」なのに、えらく同情されてるのが変わってますね。SSでも
原作の「不遇だけど頑張るコトはあきらめない」彼の姿勢を感じとっていただければ幸いです。
……今回は負けてしまいましたが。あと、小札のプロフは楽しかったですw

前スレ>>356さん
小柄なコはああでなくては。貴信は自分のプラスな部分を投影しています。香美は「めんどう
くさがり」だったのが、元気なコになってますね。

ふら〜りさん(自分は「ひえい」世代ですね)
姫から騎士へのねぎらいはいずれ必ず。剛太はどうしても展開上負けさせざるを得なく。け
れども戦略的勝利(割符のコトを連絡)だけはプレゼント。本当いうと、貴信がメール連絡に
感づいて〜てな展開も予想してましたが、やっぱオリキャラは出し抜かれるぐらいがいいのです。

ハロイさん
うぅむ。このディティールの細かさ。読んでて垂涎&すごく参考になります。十和子はプロシュー
ト兄貴に一番近いかも。静の「幼児体型童顔勉強苦手」はナイス! 女主人公かくあるべし!
自身への不安感は、親がいない彼女らしい葛藤ですね。この欠如あらばこそ物語を動かせる筈。

89 :ふら〜り:2007/05/07(月) 23:03:08 ID:kKrGSwmf0
>>しぇきさん
ん、ストロンガーの変身ポーズは解りましたよ。名が出てきて一番驚いたのはグリッドマンかも。
で終わってみれば全ての原因は「いじられっ子てぇのは一人ぼっちじゃねえ、一匹狼だ!」
だったワケで。この怒涛の展開を、その勢いだけで押し切らず綺麗に締めたのはお見事!

>>さいさん
突っ込み役のいない、ボケ倒しのギャグってのは時々見かけますが。今回の本作は常人の
いない、狂人ばかりのスプラッタ。加害者も被害者もどっちもイッてて、もはや読者視点の
入る余地なしというか。「強い悪人」の枠を超越してる神父、ホント最期が想像つきません。

>>スターダストさん
かなり久々な気がします、総角の完全シリアス威厳顔。と思ってたら消火活動、で恋人は
ゴミ捨てしてるし。やはり、の二人ですねぇ。でもそんな中で本当に完全シリアスな美少女
戦士、人道弁えたるネコが心配、で根来&千歳も待ち遠しく……あっちもこっちも魅力満載。


90 :作者の都合により名無しです:2007/05/07(月) 23:21:26 ID:nu0rntra0
スターダストさんお疲れ様です。

貴信の技、意外と弱点が満載ですね。剛太は残念だったけど・・w
トキコさんは自分の役どころを弁えてますが、
小札は出てくるとどんな場面でもまったりしますねえ。
ちょっと妖艶なところもある香美との差は、ネコとロバの差かな?

91 :作者の都合により名無しです:2007/05/08(火) 01:26:16 ID:LcoUK1W10
スターダスト氏乙です
鬼神・斗貴子と小札がなんとなく対比されてる感じですな
そんな小札を総角がかなり気に入っているのがわかります
次は千歳サイド、それからまひろと秋水サイドかな?




92 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/08(火) 02:35:01 ID:A0fs/Ca40
『赤ん坊を待ちながら B』


 静は階段の手すりから身を乗り出し、上へ続く階段を見上げた。
 コの字状にループする階段の、中空となっているその隙間から、先程目にした黒い影が風のような速さで駆け上ってゆくのがちらちら見える。
 その影は静の視線に気がついているふうには見えなかった。脇目も振らずに、二段飛ばしで駆けている。
 後を振り返るような臆病さもなく、先へ先へと急ぐような焦りもなく、ただ一己の自然現象として昇っているような、
それはそういう無頓着さだった。或いは幽霊かなにかにも似た、頑ななまでの周囲への無関心だった。
「…………」
 静は手すりに片手を置いたまま、ゆっくりと段を踏む。足元を確かめるように、そして目線は上のままに。
 一段、また一段と上がっているうちに、その足取りは速さを増していた。半ば無意識的に足音を殺している。
 自分が黒い影の後を追っているのだと気がつくころには、すでに最上階である四階への階段へ差し掛かっていた。
 影を追うこと、そこになにかの深い考えがあったわけではなかった。
 ただ、ひとつの漠然とした期待があった。そのささやかな怪奇に対し、静はある種の引力を感じ、求めていた。
 四階の踊り場に辿り着く。そのとき、さらに上から「ぎい、ばたん」という軋む金属の音がした。
(──屋上)
 今や、足音だけではなく、息も気配も完璧に殺しており、それどころかスタンド能力である『アクトン・ベイビー』によって
己の姿さえも半透明化していたのが、静自身はそのことにまだ気がついていない。
 階段のどん詰まりである塔屋に足を踏み入れる。階段と正反対の位置に屋上へと通じる扉があった。
 スチールのノブに触れると、微かに錆びた金切り声を響かせる。
 そろそろと扉を引き開けると、濃密な湿気をはらんだ生暖かい空気が静の脇をすり抜けて流れていく。
 静はわずかな隙間に半身を滑り込ませ、後ろ手で戸を閉めた。
 一瞬、眩暈がした。
 日に日に強くなる直射日光が、日本列島を縦断する高気圧が、夏の本格化するのを教えている。
 容赦のない陽光に晒されるコンクリートは受けきれぬ熱を放射させ、陽炎が静の視界を歪ませる。
 ふと、足元を見る。
 不完全な状態で発動している『アクトン・ベイビー』が、ゆらゆらと不透明に揺れる影法師を形作っている。
 それはもうひとつの夏の陽炎だった。
 静・ジョースターの作り出した夏の幻影だった。

93 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/08(火) 02:36:06 ID:A0fs/Ca40
「──そこにいるのは誰だい?」
 静の背後から、男とも女ともつかない声が掛けられた。
 静は反射的に周囲を見回すが、声の主と思しき人影はない。
「振り返って上を見たまえ」
 言われたとおりにする。
 静が今しがた出てきた塔屋の平屋根には校舎全体の上水を賄う大型の貯水タンクが設置されており、
その頂上──時計塔を除いて、この学校で最も高いその地点に、そいつは立っていた。
 静が追ってきた黒い影の正体は──やっぱり黒い影だった。
 そいつはこの暑さにも拘らず、全身黒ずくめだった。
 筒状の黒帽子をすっぽり被り、くるぶしあたりまで伸びる黒のコートを身に纏い、その隙間から見えるブーツも黒かった。
全身にダークな色調のなんだかよくわからない装飾品をじゃらじゃらつけていて、一見したところ『怪しい人』としか思えない。
 太陽を背にして立つそいつをよく見ようと、逆光に目を細めた静ははっと息を呑んだ。
 毒々しいまでの黒のルージュを唇に差したそいつの顔には見覚えがあった。
 それもつい最近──ほんのちょっと前に、十和子と話をしていた──。
「ああ、君は……秋月貴也の同級生だったな──名は確か、静・ジョースター。合っているかな?」
 そいつは、まるで他人のことに触れるように、自分の名前を口にする。
「秋月、くん……なの?」
 知らず、語尾が疑問形になっていた。その煮え切らない疑問文に応えて、
「今は違う」
 と、そいつはおよそ意味不明なことをのたまう。
「え、じゃあ、誰?」
 我ながら間抜けな質問だと思いつつも、静はそう聞いてしまう。
 だが、それほどまでに、十和子に良いように言いくるめられていた弱気そうな少年と、目の前にいる黒帽子の怪人との印象は噛み合っていなかった。
 確かに同じ顔をしているのに、同一人物であるのはずなのに、別人──そんな違和感が、そこにはあった。
「私はブギーポップ。なんというのかな、秋月貴也の『別人格』──そういう解釈が、もっとも理解しやすいと思う」
 秋月貴也の柔和な面影など微塵も残さず、氷のような無表情で、そいつはそう自己紹介した。

94 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/08(火) 02:38:02 ID:A0fs/Ca40
「に、二重人格? あの『ビリー・ミリガン』みたいな?」
 静が口にしたのは、実在する解離性同一性障害患者に材を取った、米国で一世を風靡したベストセラー小説のタイトルだった。
確か日本でも大ヒットし、この本をきっかけにいわゆる『多重人格』という概念が世界中に浸透したはずだと静は記憶している。
 そいつは肩をすくめた。能面のように硬化した表情でそれをやるので、とても不気味だった。
「いや、私にはああした人格間の相互扶助や問題意識は極めて希薄だ。私はあくまで『居候』の身の上なんでね。
──それに、私は自動的なんだ。『なにか問題が起こったからそれに対処できる人格を呼び出そう』という潜在意識的なプロセスは存在しない。
ある種の外的条件が成立することで、私は『浮かび上がっ』てくるんだ。それは反射的と言っていいほどで、私は常に受動的なんだ。
どちからというと貴志祐介の『ISOLA』に登場する人格『範子』に近い。興味があるなら一度読んでみるといい。こっちは完全な創作だがね」
 そっちの方は知らなかった。それも多重人格者の物語なのだろうか。
 それはともかくとして──正直、話についていけなかった。
 ついさっきまで普通の学生服を着ていたクラスメートがいきなり変なコスプレをして「私は二重人格者です」と言われても、
どうリアクションを返したらいいのか分からない。
 最も問題なのは、そいつ──ブギーポップが嘘や冗談を言っているようには見えず、静自身もそう受け取っていないことだろう。
 「彼はちょっと妄想の激しいアレな人なんだ」と片付けてしまうのが一番楽なように思えるのだが、
ブギーポップの真摯な眼差しや、しゃんと伸びた背筋は、そういう夢見がちな態度を超越していた。
 そいつは、しっかりと静を見据えていた。
 思春期にありがちな誇大妄想の「登場人物」としてでなく、この世界に確かに存在する一個の人格として、
あくまで対等な目線で静を捉えていた(物理的には高所から見下ろしてるわけだが)。
(秋月くんは今は秋月くんじゃなくておかしな格好をした『ブギーポップ』で……えっと……つまり……?)
 頭がウニになりそうだった。もし脳が筋肉組織で出来ていたとしたら、きっと前頭前野のあたりが痙攣を起こしているだろう。

95 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/08(火) 02:42:17 ID:A0fs/Ca40
「──まあ、好きなように解釈すればいいさ。ただの頭のおかしい人間だと思ってもらっても私は構わない。
むしろ、その通りだと自分でも思うね」
 と、またも他人事のように言ってのける。その口ぶりに、静はどことなく「寂しさ」を感じ取った。
 顔はやはり無表情で、その皮膚感覚に確信を持つには至らなかったが。
「ところで、君──どうしてそんなに影が薄いんだい」
 静は、それを最初「お前は地味で存在感のないやつだな」という意味に捉えて鼻白みかけたが、
そこでやっと自分が『アクトン・ベイビー』を発動させてたことに気がつき、自分のほうがはるかに異常人物だということに今さら思い至る。
 だが、ブギーポップはあくまで無機質で怜悧な面差しを固持していた。
 あまつさえ、さも当然といった口ぶりで感嘆する。
「なるほど……『透明になる』、それが君の『才能』か」
「え、あの、驚かないの?」
「驚いて欲しいのかい? 申し訳ないが、その手の特殊能力者には慣れていてね、あまり驚異には感じないな」
 『特殊能力者』、『慣れている』──?
 こいつはいったい何者なんだ、という問いが今更のように持ち上がってくるが、それをどう言葉にしたらいいか分からないのがもどかしかった。
 分からないままに、静は空に一番近いところにいるブギーポップを凝視している。
「ブ、ブギーポップ? って、呼んでもいい?」
「好きなように呼べばいい。どう呼ばれようと、私は私だ。主体のない、ただの不気味な泡だ」
 端から見ると、それは奇妙な光景だろう。
 ロミオとジュリエットのような位置関係で、ただし男女は逆で、片や半透明の奇人、片や黒ずくめの怪人。
真夏の夜の夢に見るにはぴったりのちょっとしたホラーだろう。
(でも……嫌な感じじゃない)
 今ここだけが世界から切り離されたような、不思議な感覚だった。時間が止まっているようだった。
 静の真っ直ぐな視線を受け止めて、ブギーポップは凪のように静謐な瞳でそれを撥ね返していた。 
 見ようによっては、それは「じっと見つめ合っている」というリリカルな表現も可能かもしれない。
 上向きの首が少し痛くなってきたが、そんなことはまるきり問題外だった。

96 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/08(火) 02:43:36 ID:A0fs/Ca40
「なにか言いたそうな顔をしているな」
 だしぬけに、ブギーポップが呟く。
「え、そ、そんなことない」
 慌てて否定してから、思い直して、おずおずと上目遣いに訊ねる。
「……聞いていい?」
「私に答えられることなら」
「こんなところで、なにしてるの?」
 ブギーポップはそこで静から視線を外し、眼下に広がる校庭に目を移した。
「見張っているのさ」
「……なにを?」
 西日に傾き始めた日光の加減で、ブギーポップの横顔になんとも言えない陰が走る。
 こうして澄ました顔をしてれば意外と端正な目鼻立ちなんだなあ、と静は場違いなことを思った。
「『dis beet disrupts(崩壊のビート)』」
「え?」
「この学園には怪物が潜んでいる。それは世界を滅ぼしかねない、真に危険な──『世界の敵』だ」
 そして、ブギーポップは静を見た。
「笑えるだろう?」
 当の本人はこれっぽちも笑っておらず、かと言って自分が笑い飛ばすには、その声には絶望が深すぎるように思えて、
 ──静は途方に暮れた。

97 :作者の都合により名無しです:2007/05/08(火) 04:04:13 ID:MX39orKd0
規制かな?
支援

98 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/08(火) 04:18:04 ID:A0fs/Ca40
>邪神?氏
魔剣妖刀の類はけっこう好きなので、こういうネタは大好物です。
よく考えるとファンタジー世界の加工技術って恐ろしいですよね。
火竜の息を鍛えてとか、太陽光を集めて溶鉱炉にするとか。とても正気とは思えない。
でも谷間に吹く風をふいごにした鍛冶場は実在したそうで、古代人の発想恐るべし。
余談に余談で返しますが、中二病ってネット上(特に2ch)では
つまらない、幼稚、底が浅い等の作品を指すためのネガティブな使われ方をしていますが、
中二病それ自体は、それなりに意味のある概念だと思うのです。

>銀杏丸氏
まあ、聖闘士の格好は日本の小市民からすれば浮きまくりでしょうねw
錬金術と薔薇乙女とアテナの聖闘士、どれも神秘主義的な論理が根底にあるので、
一見意外なようでよく噛み合ってるように思います。
ここまで多作品のコラボは大変でしょうし、その苦労も如実に伺えますが、濃ゆい展開にwktkしてます。
キャラの絡ませ方とか登場のさせ方は常に参考にしています。書き写す勢いで。てゆーか換骨奪胎?

>サマサ氏
いつ見てもノリノリで羨ましい限りです。錆白兵って凄ぇ名前ですねw
さすが西尾だーッ! 俺たちに出来ないネーミングを平気でやってのけるッ! そこにシビれるッ! 憧れるーッ!
ドラえもんとのび太の真面目でありながらどこかおかしいやりとりも大好きです。
あー、いましたね熊虎鬼五郎。あのメタルクウラみたいに大増殖したやつら(でしたよね?)。

99 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/08(火) 04:20:58 ID:A0fs/Ca40
>さい氏
ノンストップ怒涛の展開というか、気の小さい俺には刺激が強すぎるというか、とにかくサムナーを殺したいです。
あとアンデルセン神父がイくところまでイッてしまってなんというか。めちゃくちゃ輝いてるなー。
この圧迫感は読んでて腹にキます。誰が最後に立っているのか、予想がつきません。

>涼宮ハルヒの正義作者氏
お疲れ様でした。
改めて長門は俺の嫁、みたいな? 質の高いSSを読めて大変勉強になりました。
なんとなく俺と同世代の香りがします。小ネタがいっぱいで大満足です。もうニヤニヤです。
長門の意外な側面がまた可愛かったりするわけで。
うしとらの斗和子とはあんま関係ないです>十和子
三文字で○○子、ってのが好きなんです。
斗貴子とか沙世子とか。あ、津村繋がりだ。

>スターダスト氏
斗貴子さん、相変わらず残虐超人顔負けの大活躍ですね。
最近、小札が可愛く思えてしょうがないんですが、これって……恋? ……そんな目で見るなっ。
まあつまり、俺もこういう愛くるしいキャラ書けたらいいな、と思う次第です。
仮面ライダーブラックとダブルぜータは分かりました。

>>97
すいません寝てましたorz

100 :作者の都合により名無しです:2007/05/08(火) 15:03:20 ID:dZP5x4xC0
ブギーポップと静、いよいよ邂逅しましたね
いままで十和子に隠れがちだった主人公も、そろそろヒロインらしく
事件に巻き込まれて生きそうな感じ。
でも、十和子やブギーポップに比べて静の能力はやや弱い感じがするけど大丈夫かな?
アクトン・ベイビーが半自動で発動するのはちょっと意外でしたけど。

101 :作者の都合により名無しです:2007/05/08(火) 16:35:28 ID:883j6JLo0
>スターダストさん
斗貴子さんは愛する人を失い、昔の自分に戻っている感じですね。
荒みつつあるというか。でも、小札たちがいるから作品上、決して
暗い雰囲気にはならないのはいいですね。剛太はもう少しガンバレ。


>ハロイさん
静、十和子みたいな強かさが加われば十分に凄いと思うけどな
でも正統ヒロインらしく、素直で純潔のまま行って欲しい気もする
ヒロインと重要キャラの出会いは話のターニングポイントですね。

102 :作者の都合により名無しです:2007/05/08(火) 23:12:39 ID:LcoUK1W10
ハロイさんお疲れ様です

静は巻き込まれ型のヒロインかと思いきや、結構行動的ですね。
自分から怪奇へと走っていくとはw ま、得意能力の持ち主ですから
そういうのには免疫あるのかも。 ジョセフの影響もあるのかな?
のんびりとした静が世界の危機に相対するとどう確変するのか楽しみですw

103 :作者の都合により名無しです:2007/05/09(水) 01:41:32 ID:J8+jilgz0
お疲れ様ですハロイさん。
今回は悩める静の前に王子様登場ですね。
不気味で底知れない相手ですが。
お互い異能同士、意外と気が合うのかもしれない。
しかし、どんどんと話が膨らんでいきますね。

ハロイさんってオリジナルのショートも凄く上手いですね。
サイトの作品、思わず読み耽ってしまった。

104 :作者の都合により名無しです:2007/05/09(水) 09:09:56 ID:+DKQqvb00
バレさんも復帰したんだから
サナダムシさんやミドリさんたちも復活してほしいものだ。

105 :作者の都合により名無しです:2007/05/10(木) 08:16:59 ID:+ClCXtAk0
もうすぐパート50なんだよね。
ここまで続くとは思わなかったな。
もう6年半だw

106 :作者の都合により名無しです:2007/05/10(木) 10:23:10 ID:LdaLek2m0
当時の小6が浪人生になるだけの時間が流れたわけか

107 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 15:47:43 ID:lOGkbPL20
前スレ43から
「馬鹿な………こんな、馬鹿なッ!!」
スピード、パワー、剛性、装備、全てに於いて生身を上回るコンツェルトの分隊長は、眼前の状況を力の限り否定した。
彼らの外殻装甲に通常の銃弾は通じない。なのに次から次と、手足や首を舞わせて隊員が斃れる。
理由はトレイン=ハートネットだった。彼の手が霞むたび、頑強を頼んだ鋼の体が悪夢の様に破壊されていった。
「おおおぉッッ!!!」
迅、と逆袈裟にハーディスが奔るや、思わず受けの態勢を取った隊員の腕が斜めに切断された。明らかに銃器に有り得ぬ一撃だ。
その答えは、銃身下部の大仰なスタビライザー(反動による銃口の跳ね上がりを緩和する為の重りとなる無垢部分)に有る。
先刻それが獣の顎さながらに開き、中から肉厚で幅広なタントーポイント(貫通力重視の和製短刀状の切っ先)の銃剣が飛び出したのだ。
ハーディスの刺殺形態、牙(ファング)。これによって彼の銃は短剣に等しい間合いと殺傷力を得た事になる。
………広い意味で言って彼の愛銃は銃器に有らず、銃殺の咆哮(ロア)、撲殺の爪(クロウ)、絞殺の尾(テイル)、そして
刺殺の牙(ファング)の四形態を持つ複合武器なのだ。

「死ねッ!」
斬り倒された仲間越しに腕に仕込んだニードルガンを放つ――――前に、ピンヘッドが顔面装甲ごと頭を貫く。
「畜生ッッ!!」
背後からダイヤモンドダストロッドを突き込む――――よりも速く、銃撃の反動と腕力で高速となった銃剣が振り向き様に首を刎ねる。
「う…お……!!」
格闘用パイルガントレットで攻撃を受ける――――ものの、それごと頭を唐竹に割られる。
「ふざ…けるな、この野郎オォッ!」
巨大なヒートナイフで、大上段でトレインに迫る――――が、ワイヤーに足を掬われ、弾みで仲間を斬り捨てた後銃床が頭を砕く。

108 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 15:48:45 ID:lOGkbPL20
「何だ……これは…」
――――圧倒的、だった。勝てぬまでも腕の一本は貰うつもりにも拘らず、傷一つ負わせられない。
確かにまだ試作段階に有るとは言え、それでも人間に倍する力のサイボーグボディで、しかも数まで多い。
だが所詮中身は、当たり前の戦場に於ける定番に慣れた傭兵だ。彼らに単騎で圧倒する怪物との戦闘経験は全く無い。
善戦しようにも反応速度の差と経験の無さ、そして相手が彼では奇跡でも起こらない限り夢のまた夢だ。
これがクロノナンバーズなのか? これが、黒猫(ブラックキャット)なのか? 何より、総身を鋼としてもまだ届かないのか?
……最後の部下が斃れる音が、彼を思考の迷路から引き戻した。
「お前で終わりだ」
彼らの身勝手に憎悪を滾らせて、最強のイレギュラーナンバーは銃剣からオイルを振り落とした。勿論それが、切れ味を鈍らせる要素に
はならない。だからこそのオリハルコンなのだ。
「ち………」
残った分隊長の両腕には何の武器も無い……が、精一杯の威嚇の様に肘から指先にかけて超振動を展開する。
「畜生オォッ!!!」
触れれば鉄をも粉砕する腕を振り上げ、トレインに飛び掛った。しかし待ち受ける彼の掌中で、ハーディスが食指を支点に回転した。
一閃―――――、二人は擦れ違い様に激突する。

双方を背後に置いて、互いに武器を振り抜いた形のまま固まった。
最初に動いたのは…………超振動を掠めたらしいトレインの頬に流れる血だ。
しかし、言葉を発したのは…………
「クリード…様………」
分隊長の胴は、回転を加えたハーディスの銃剣に袈裟懸けに斬られていた。生命維持ユニットの大部分が、その斬撃で損傷している。
「こいつは……危険で………す…」
それを遺言に、分隊長は斃れた。
……その亡骸を、トレインは何処か悲しげな眼で見詰めていた。
「最後まであいつかよ………馬鹿野郎共が」
クリードと自身はかつて仕事のパートナーだった。しかし誰一人寄って来ない自分に対して、クリードは損得や策略的信頼で常に
誰かが傍に居た。セフィリアやジェイドに到っては、彼をまるで弟や息子の様に扱ってさえいた。
あの時は何とも思わなかったが、今となっては彼の求心力が羨ましい。それが例え、嘘偽りであっても。
しかしそれを、敢えて彼は自嘲する。
「……行くか、皆の所に」
携帯の発信機モードでGPS画像を見れば、リンス達の位置も判る。今は仲間が待っている、何はともあれ其処に急ぐのが今の仕事だ。

109 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 15:49:44 ID:lOGkbPL20
「…意外でしたね、ハートネット」

―――――トレイン自身、意外な声に驚きを隠さず振り向いた。
そして其処には誰有ろう、アウトラウンドを侍らせたセフィリアが居たでは無いか。
「てめえ……」
「まさか貴方が人助けばかりか、あんな有り得ない台詞を言ってのけるとは……正直少々驚いています」
服装は私服だが、腰には愛用の剣を佩いている。収めてはいるが、恐らくは星の使徒の手勢を幾人も切り捨てた事だろう。
彼女はトレインの憎悪に反応しないが、アウトラウンド達はそれぞれの武装で身構える。
「しかし……誤算でしたね。貴方が居ればクリード自ら出向く物かと思っていたのですが………やはり莫迦では有りませんね」
その言葉だけで充分だった。それに現状に於ける何もかもが集約されていた。
まるで黒い炎さながらに何か≠ェ彼から沸き立つのを、セフィリアを始め一同が肌で感じる。
「…そうかよ」
「止せ! 止さねえか、ハートネット!!!」
誰一人呻きすら上げられない殺気の中で、ナイザーが割り込む形でセフィリアを庇う。
「…どけよ、ナイザー」
「駄目だ、来るんじゃねえ!! おめえ其処まで先代に不義理働く気か!!!」
成る程言い分の筋は通っているが、それでもトレインは静かに歩を進める。ナイザーが身を挺して守っているのは、この状況
を自分一人の算盤で作った許し難い悪党なのだ。それなのに何処吹く風と涼しい貌で居るのが、彼には一層腹立たしい。
「不義理…だ? この鉄火場に義理もクソも有るか…?」
「落ち着け! お嬢にだってこんなのは予想外だったんだよ!!
 そもそもクリードさえ来りゃあ何もかも最小限で済んでたんだ! それが……たまたま、こんな…」
「もういい、さっさとどけ。今オレの獲物はセフィリアだけだ、庇う奴は殺す」
彼の瞋恚の程が理解出来るだけに、ナイザーもこれ以上強くは制止出来なかった。
正直此処まで怒ったトレインを見た事が無い。彼の怪物振りを知るだけに、自分一人なら早々に逃げ出したい気分だ。
「…お前ら……ここは俺が食い止める。お嬢を……!!」
「逃がしたら、そいつもまとめて殺す。オレの邪魔をしたら、一匹も逃がさねえ」
アウトラウンド達は構えた武器を取り落としそうだった。彼に抵抗すれば絶対に死ぬ、しかし立場は敵前逃亡を許さない。
かつてクロノス本部からオリハルコン武装を奪い逃亡した際は、当時のナンバーズを九割方蹴散らした怪物なのだ。そんな
相手に単なる候補生の彼らで、如何に抗する事が出来ようか。


110 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 15:50:48 ID:lOGkbPL20
「―――トレイン!!」
…唐突な呼びかけに、彼の殺意が一瞬で掻き消えた。
「こんな所で何やってんのよ!? ちょっとこっちが大変……!」
駆け寄って来たリンスだったが、トレインの前に居る集団を見るや必死だった貌に疑問を差す。
「…………どういう事、これ」
感情は一気に右肩下がりとなり、沈黙して足を止めるトレインの後ろまでやって来た………が、坊主頭の男が庇う女を見た途端、
口元にとても微かな微笑を見せた。
「ああ……成る程。そっか…………そういう事なんだ…」
その微笑のままトレインの横を過ぎようとしたその時、トレインの手が彼女の肩を捕まえた。
「…止めろ」
「止めろ? 何で?」
彼女は、貌も言葉も穏やかだった。しかし、それが何を指しているのか判らないのは一人としていない。
「オリハルコン武装を持ってる。お前じゃ無理だ」
「関係無いわよそんなの。良いから、離しなさいよ」
その落ち着き様は、凪、だった。これから嵐が吹き荒れる前兆だった。
「良く考えろ、今はこいつに構ってる暇なんか無い。大変って何なのか………」
「うるさいわね……離せって、言ってんでしょ」
ついに表情が消えた。アウトラウンドの面々も、報告で道士を圧倒したと聞いているだけに改めて身構えた。
「いいから、もう放って……」

「………放って置ける訳無いでしょ! こんなクソ女!!!」

111 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 15:51:21 ID:lOGkbPL20
怒りが弾けるや、トレインは彼女を羽交い絞めにした。それでもリンスはセフィリアに飛び掛らんと暴れに暴れる。
「アンタ頭のネジ何処に置いて来やがったの!!? それともお眼々はガラス球か節穴!!?
 舐めてんじゃないわよこのクソ女!!!」
トレインを振り解こうともがくも、彼の拘束は鉄の様に堅牢だった。
「放しなさいよ!! アンタムカつかないの!!? この女がこの状況作ったから、此処に居るんでしょ!?
 良くそんな涼しい貌してられるわね! 気は確かなの!!?」
彼女の罵声に、ナイザーは流石に気分の悪い貌をした。全くその通りだ、反論のしようも無い。
「アンタあのイカレ野郎と良い勝負よ! アイツとアンタだけで、どっか人の居ない山奥か海の上かで死ぬまで殺し合ってりゃ
 それで世の中大団円だわ!!! 
 血や涙が通ってるなら………今すぐ死ね! この売女!!!」
噛み付きそうな怒りに、アウトラウンドですら直視に堪えなかった。
――――悪党である、と言う事を真剣に向き合える人間は居ない。
悪とは、別視点で言えば「非難されても何を言う資格も無い存在」の事を指す。後は非難が心に届くかどうかの問題だ。
然るに、それを弁える人間は進んで悪になりたいと思うまい。それしか道が見えないのならまた別な話だが、そうで無いなら
まずその重圧には耐えられない。誰でも自分が正しいと信じて行動するからだ。
三下が悪を気取った所で、それは上辺だけでしかない。単に罪悪感と矜持が欠如しているだけの話だ。
だが、「世界を救う」という矜持が有る彼らにとって、悪し様になじられるのは苦痛以外の何物でもなかった。

…思う様に猛り、ようやく怒鳴り疲れたリンスを開放したトレインもまた、疲れていた。この、救い難い現実に。
力だけではどうにもならない人の世に、彼はほとほと嫌気が差していた。詮無く、彼の人に会いたいとも考えてしまう。
彼女ならきっと、これさえ笑い飛ばすのだろうと思うと、それが容易に出来ない彼はますます肩に重いものが圧し掛かった。
だが、怒り狂うリンスのお陰で冷静になれたのも間違い無い。言いたい事は彼女が殆ど言ってしまった。
それでも、最後に一つだけ―――
「セフィリア………あんた、オレが変わったって言ったよな…」
戦意を収める形で、銃をホルスターに仕舞う。
「オレも言わせて貰うぜ。あんたも…変わった、どころか変わり過ぎた。
 昔は気に食わないほど規律人間だったのに………今は気に食わないほど腐れ外道だ」
勿論この程度では、彼女の眉一つ動かないのを彼も知っている。だが、それもこの決め手に持って行く為の布石だ。
今彼に出来る精一杯の皮肉を込め、かつ恨みたっぷりに―――しかし全くその色を見せず次句を紡ぐ。

112 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 16:15:06 ID:lOGkbPL20
「昔のオレも……そんな奴だったのか?」

一見彼女の鉄面皮は変わらない様に見えた。だが流石に堪えたらしく何一つ答えようとはしなかった。
訪れるのは重苦しい沈黙。その長さが、セフィリアが受けた衝撃を物語っていた。
しかし、それとは別に突然湧き上がった耳をつんざく爆発音に、一同正気に引き戻された。
「!?」「な…んだ、ありゃあ!!」
候補生達が遠くに渦巻く巨大な爆炎に驚愕を零した。
「………どうやら、クリード級の道士が来ているようですね」
それに沈黙の帳を払われたのか、ようやくセフィリアが口を開いた。
「ハートネット、私達はあそこに向かいます。貴方達は出来る事をおやりなさい」
それを短く告げると、彼女は部下達を引き連れて足早に場を去った。
…居なくなればこれ以上怒り狂う必要も無い、一息長く吐くと、それで平常心を弾丸の様に胸に込めた。
「で…リンス。何が大変なんだ?」


113 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 16:16:21 ID:lOGkbPL20
「…何………あれ…?」
イヴもまた、爆炎の大きさに戦いの最中にも拘らず愕然としていた。
「あらら、可哀そうに。エキドナだな、ありゃ」
全く慈悲など含有しない口調で、リオンは呟いた。
「星の使徒でな、クリードやシキに次ぐ危なさの道士だ。あんまり危ないもんだから、部下を持てないんだよ。巻き込むから」
さも当然の様に、イヴにとっての絶望を伝えた。
「だって、戦艦並みの火器を一人で使えるって言うんだから、仕方無いよな。
 誰と闘ってんだか知らないけど、今頃バラバラか消し炭だな」
勿論闘っているのは一行の誰かだ。それを考えるだけで心が騒ぐ。
「でもな………今お前が闘ってるのは、オレだぜ。
 集中しろよ、オレを………倒したいなら」
負傷を感じさせぬ踏み込みで、リオンがイヴに肉薄した。
「!」
それに反応したイヴは、ブロンドの拳を見舞った――――が、
「防げッ!」
現れた盾を構える鎧が、それを手堅く受け止める。
だが、彼も其処で終わりでは無い。消える前の鎧を足場に、上からイヴへと追撃する。
「刺せェッ!」
騎兵槍を持った鎧が、リオンの背後に生じた。巨大な円錐はこれまでに無い正確で彼女の額を突くが、それをもう一つの副腕が
握って受け止めた。
「〜〜〜〜〜〜ッッ!!!」
如何に一瞬とは言え、気を抜けば押し切られそうなほどに重い。だが此処で、身体を固定する訳には行かない。
「叩き割れェッ!!」
槍の鎧が消えるより僅かに早く、イヴは先刻盾に止められた腕を伸ばし噴水の縁を掴まえた。そして高速で縮めるのと、薙ぎ払いの
大斧の旋回半径を逃れるのはほぼ同時――――では無い、僅かにふくらはぎを重い刃が掠めた。

114 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 16:18:38 ID:lOGkbPL20
「…っくぅ…」
斬られたが歩けないほどではない。傷にナノマシンを廻せばすぐに塞がる程度の物だが、それを見逃すほど今のリオンは甘くない。
彼は積極的に攻め手に回る事で、かつ無節操に出さない事で出鼻を挫き辛くなった。
そして何より、半端な負傷が彼から全ての油断を取り去っている。
近過ぎでも無ければ遠過ぎでもない微妙な距離を確保しながら、彼の猛攻は次第に容赦無くなって行く。
だがそれ以上に彼を鋭くするのは、その窮地に有ってもなお折れないイヴの眼光だ。
「だからってオレも…負けてやらないぜ」

115 :AnotherAttraction BC:2007/05/10(木) 16:42:19 ID:lOGkbPL20
……セフィリアが見たいと仰るご貴兄の為に…遂に登場!!(挨拶)
くく……だが素直に喜べまい。
などとサディスティックな発言をしつつ、こんにちわNBです。

いやしかし、何て言うか………彼女もかなり一人歩きしてて、やばくね?
なんか今、ひょっとして一部の彼女ファンを敵に回してるかも。
だが今回最大の反省点は、メインの戦いが酷くあっさりって所ですかね。
でも仕方ないんだよなあ、此処で出さないと彼らが薄くなっちゃうから。
文章やテーブルゲーム、つまるところ虚数実数の狭間は奥が深い。そういう意味では
俺はまだまだ甘いと言うことですね。
宮本武蔵が五輪の書で言う様に、「敵八方より来る、我八方の構え有り」みたいな
風には行かないものですが、せめて前方三方くらいは構えが出来ると良いな。

と言う訳で、今回はここまで、ではまた。

116 :NBです:2007/05/10(木) 17:49:51 ID:lOGkbPL20
114、ちょっと文体ミス発見。
>彼は積極的に攻め手に回る事で、かつ無節操に出さない事で出鼻を挫き辛くなった。
ではなく、
>彼は積極的に攻め手に回る事で、かつ無節操に出さない事で出鼻を挫き辛くした。
と、でも読んで頂ければこれ幸い。

117 :作者の都合により名無しです:2007/05/10(木) 23:01:02 ID:SwLCBtEO0
お疲れ様ですNBさん!

セフィリアが出てくると締まるというか、優雅さ漂うというか。
しかしセフィリアは大人の女の黒い部分も持ってて素敵ですね。
リンスがただの小娘に見えるくらいです。
それにしてもイヴ、健気でかわいいですねw

でも、

118 :作者の都合により名無しです:2007/05/10(木) 23:27:21 ID:SwLCBtEO0
妙なところできれちゃったw
でも、は関係ないですw

119 :作者の都合により名無しです:2007/05/11(金) 01:37:18 ID:AnOrjcE20
NBさんお久しぶり!
一ヶ月に一度投稿というペースをストイックに守られてますなw
個人的には月2回くらいにして欲しいんだけど…

好きなセフィリアが出てきましたけどどこか雰囲気が変わった?
きれいなバラにはトゲがあるということか。

今回はセフィリア、リンク、エキドナ、イヴと
いい女が目立って男性陣が影が薄いですなw

120 :作者の都合により名無しです:2007/05/11(金) 17:47:45 ID:BpxVCpBy0
NBさん乙。
セフィリアが出てきてうれしいです。
ますます男前(?)になりましたね〜
イブ戦ともどもセフィの活躍を期待しております。

121 :作者の都合により名無しです:2007/05/12(土) 12:15:22 ID:GQ1hJVyP0
NBさんの影響で黒猫読んだけど、
基本的にこのSSは原作に沿っているんだね

原作は絵だけは綺麗だったけど中身はスカスカだったなあ。
いろいろとNBさん流の味付けがしてて、こっちの方が楽しい。


122 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/05/12(土) 13:28:20 ID:wHV/L3du0
第五話「第三勢力」

それは、こことはまた違う世界で。
―――深い闇の中、巨大な影が鎮座していた。
彼は何をするでもなくたった一人、ただ目を閉じて座っている。やがてその口が開いた。
「―――この世には、百八の地獄あり」
その声をどう表現したらよいのだろう。憎しみ、軽蔑、怒り―――あらゆる負の感情を煮詰めたようなそれを。
天突くような巨体に燃え上がるように逆立った髪、四本腕の異形。インドの古い神話あたりに登場する邪神さながらの
不気味な影。
「このワシが…このマンダラ王が治めしこのマンダラ地獄は序列にして八番目の地獄!―――そして」
マンダラ王と名乗った男の声が、ますます大きくなっていく。
「バサラ王が治めし地獄など…たかだか百一番目の地獄にすぎぬ!」
あまりにも衝撃的な事実―――それを彼は、あまりにも唐突に、あっさりと告げた。
「それだけならばいい―――所詮は取るに足らぬ連中だ。放っておけばよい…だが奴らはあろうことか!人間のような
虫ケラと手を取り合って暮らしておるというではないか!」
怒りと共に吐き捨てる。同時に天が奮え、雷鳴が轟く。その怒りは、自然と呼応しているのだ。
怒りを覚えた―――ただそれだけのことで、彼は大いなる自然すらも従えるのだ。
「人間に敗れ、あまつさえ手を組むとは―――腑抜けた鬼共め!」
マンダラ王は立ち上がった。そして、嗤う。嗤い続ける。
「ハーーーーーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!ハッハハハハハハ…ハーハッハッハ!」
嗤いながら、そのどこにも楽しげな様子はない。天がそれに応えるように、さらに激しく雷鳴を轟かす。
「そのような堕落した鬼族など、もはや鬼族ではないわ!そのような者共―――ワシが懲らしめてくれる!」
マンダラ王は巨大な四本腕を振り翳し、叫んだ。
「いでよ、マンダラ地獄界最強の戦士―――四天王よ!」
同時に、まずは地面が裂けた。そこから吹き出したのは、灼熱のマグマ。全てを焼き尽くす煉獄火炎。
―――その灼熱地獄の中に、彼は平然と佇んでいた。その姿はまるで東洋の神話にのみ存在する伝説の怪物。
そう―――<龍>と呼ばれる幻獣そのものだ。

123 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/05/12(土) 13:29:08 ID:wHV/L3du0
「―――<龍神>バラム!絶対なる炎の使い手!」
「グゴガガガガガガン!マンダラ王様!わしら四天王をお呼びとは、何事ですかな!?」
凶悪な唸り声と共に緑色の巨体をくねらす<龍神>。その口からは、絶え間なく炎が溢れ出している。
―――続いて、辺りを妖しい気配が包み込んだ。それは魅入られた者を究極の快楽に誘うような、それでいてこの上ない
悪夢の中に誘い込むような、形容し難い瘴気。
それを撒き散らしながら現れたのは、長身痩躯の美女だった。雪よりも白い肌に、ウェーブのかかった長い髪。だがその
瞳は限りなく鋭く冷ややかだ。視線で人が殺せるのなら、彼女は一晩で数千人を殺してのけるだろう。
「―――<鬼女(きじょ)>ランバ!華麗なる地獄の舞姫!」
「オ〜ホッホッホッ!マンダラ王様!わたしたち四天王に収集をかけるとは、大きな戦の始まりかしら?オホホホッ!」
高飛車な笑いを響かせる<鬼女>。その姿はまさに地獄の舞姫と言うに相応しかろう。
―――そして、辺りに腐臭が漂い始めた。同時に世にも恐ろしい光景がその場を支配した。
半透明の人間や鬼たちが、周囲を飛び交っているのだ!それは死した時そのままの表情を貼り付けた亡者の魂だった。
彼らは苦しそうな呻き声を漏らしつつ宙を漂い続けている。それはいつまで続くのか、あるいは永遠にそのままなのか。
そんな地獄絵図を意に介さず、一人の男が鼻歌交じりに歩いてくる。まるで鯰のように真ん丸く、気味の悪い顔をした
その男は、キョンシーのような服装に身を包んでいる。
「―――<死神>マンダラ!ワシと同じ名を与えられし呪いの使い手!」
「呼んだか?呼んだか?マンダラ王様がわしら四天王を呼んだぞ!呼んだぞ!」
山彦のように同じ言葉を連呼する男。その不気味な様は、まさに<死神>としか言いようがない。
「これで三人揃ったか―――最後は」
「ボクならもうここにいるよ、マンダラ王様」
―――最後の一人は、さも当然のようにそこにいた。派手な登場もなにもなく、当たり前のように。
驚くべきことに、その場の誰にも―――マンダラ王にすら―――その存在を悟られることなく。
「実は一番最初に到着してたんだけど、誰も気付いてくれなくて寂しかったよ。ま、気配を消してたボクのいうこと
じゃないけど、ね」
「くはははは…相変わらずだな―――<戦士>ハヌマン!四天王最強の男よ!」
王である自分を前にしても飄々とした態度のその男を、むしろ好ましく眺め回し、マンダラ王は笑った。
ハヌマン。猿人類と人間を掛け合わせたような、どことなく愛嬌のある風貌。身に付けているのは簡素な腰巻一枚だけ。
その姿と物腰からは、四天王最強などとは到底信じられまい。
だが、その肩書きは事実である。己の実力に絶対の自信を持つ他の四天王でさえも、それだけは認めている。
ハヌマンの、最強を。故に―――<戦士>。彼に、それ以外の呼び名など必要ない。

124 :ドラえもん のび太の新説桃太郎伝:2007/05/12(土) 13:30:01 ID:wHV/L3du0
「四天王よ―――お前たちを呼んだのは他でもない!ワシと共に、百一番目の地獄へと攻め入るのだ!」
「グゴガガガガガガン!百一番目の地獄ですと!?」
<龍神>バラムが巨体を奮わせる。
「オホホホッ!あそこはバサラ王の力だけで持っているような弱小の地獄!何故わざわざ?」
<鬼女>ランバが高笑いしながら疑問をぶつける。
「知ってるか?知ってるか?知ってるぞ!知ってるぞ!バサラ王は人間と手を結び、共に暮らし始めたと!」
<死神>マンダラがそれに答える。
「ふふふ…ついでに彼には初孫ができたそうだよ。それ以来、すっかり骨抜きとのもっぱらの噂だね。本当なら全く、
一つの地獄を治める王とも思えない甘っちょろさだ!」
<戦士>ハヌマンが無邪気とさえ思える口調で嘲る。
「―――そうだ!しかも奴らは愛だの!勇気だの!つまらぬ戯言を触れ回っているそうだ!そんな鬼が存在している
というだけでも腹立たしいわ!」
マンダラ王が天に向かって怒りの雄叫びをあげ―――同時に、いくつもの落雷が発生した。
「奴らは現在、妙な連中と小競り合いをしているという―――モノのついでだ、そやつらもまた我らの刀の錆にして
くれようではないか!」
そしてついに、マンダラ王が悪しき命令を下す―――!
「百一番目の地獄を制圧し―――人間も、鬼も、何もかも皆殺しにするのだ!」

かぐや姫が予言した異世界からの侵略者―――それをドラえもんたちは、ギガゾンビの事だと解釈した。
それは間違ってはいない。だが、それだけでは不十分だった。
侵略者は、さらにいたのだ。
その名も第八地獄―――マンダラ地獄界―――!
ドラえもんたちはまだ、それを知ることはない―――!

125 :サマサ ◆2NA38J2XJM :2007/05/12(土) 13:48:49 ID:wHV/L3du0
投下完了。前回は前スレ321より。
まずは一言。バレさん、お帰りなさい!
マンダラ地獄。彼らは桃太郎伝説外伝・夜叉姫伝説の敵キャラです。
知ってる人は果たしてこのスレに存在しているのか…。
この物語における彼らの主な役割は…刀語におけるまにわにです(爆)。
分からん人が大半だろうからぶっちゃけちゃうと、カマセ要因です(非道)。
キ○ガイ科学者や自由の女神を破壊した90代じいさんとかにカマされます(大ネタバレ)。
それはそうと最近のサマサは<仲良し悪党集団>がやたら萌えです。
漫画ならH×Hの幻影旅団や、ラノベならBBBの九龍兄弟とか…
まあ、あまりにも趣味に走りすぎなので、この辺にしときます。

前スレ325 えんま様ピンチはもはや桃伝お約束だと思います(というほどシリーズが出てないけど…)。
前スレ326 あまりにもJOJOパロが多すぎて、これでいいのかとも思いましたが、己の妄想を形にするのが
        SSなのだから、これでいーのだ!

>>ふら〜りさん 期待以上ならなにより。テンション高い変態は書いてて楽しい。

>>邪神?さん 虎牙破斬の使い勝手のよさは確かに異常。ちなみに僕が一番好きな技は殺劇武荒剣
           (こんな字であってたっけ?)。新シリーズの度にナースのこだわりのグラフィックには
           全僕が涙します。

>>ハロイさん ブギーポップ、実は一巻だけ読んで挫折したんですが、再トライしてみようかと思う…。
           西尾維新のネーミングセンスの中じゃ、錆白兵ですら大人しい方だという恐るべき事実!
           右下るれろとか、思いついても実際に書けねーよ!
           熊虎鬼五郎は、まさにそれ。造物主とか出てきたのに、何故敵のスケールはあそこまで
           小さいんだ、ねじ巻きシティー!

126 :作者の都合により名無しです:2007/05/12(土) 17:37:29 ID:NeL/L1QO0
>>自由の女神を破壊した90代じいさんとかにカマされます
スペックですか。

127 :作者の都合により名無しです:2007/05/12(土) 21:55:13 ID:y3eKJkvZ0
>その名も第八地獄―――マンダラ地獄界―――!

おおっ!!
…………と思ってたら、

>>125
>この物語における彼らの主な役割は…刀語におけるまにわにです(爆)。
>分からん人が大半だろうからぶっちゃけちゃうと、カマセ要因です(非道)。

ちょwwww



128 :作者の都合により名無しです:2007/05/12(土) 23:55:25 ID:6hVheXyH0
お疲れ様ですサマサさん。
敵四天王とは、王道っぽい敵が現れましたなw
どんどん趣味に走ってくださいw

129 :作者の都合により名無しです:2007/05/13(日) 01:04:03 ID:Mg7YfVpc0
今回、まったくドラえもん出てないなw

130 :作者の都合により名無しです:2007/05/13(日) 02:45:34 ID:ulhUs7vE0
サマサさん、お久しぶりなのに本文3レスはちょっと寂しいです・・w

131 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:22:49 ID:wsf2nXos0
海風とかもめの声が、辺りを賑やかす。
こういった海辺に近い場所は、黄金の麦が存在するのをご存知だろうか?
そう、ライ麦畑という黄金の畑。

「少し腹が減ったな。んっ、喫茶店か・・・。」

そんな美しいライ麦畑の目の前に、一件の喫茶店が存在していた。
日本では珍しいこの光景も、アメリカの地方へ行けば別段当たり前のことだ。

そして、太陽が頭上に照らされる正午の頃。
そんな辺鄙なところに一人の成人男性が来店した。

「ヤレヤレ。研究のためとはいえ、まさかこんな所まで来る羽目になるとはな。」
男はバルコニーにある椅子に腰をかけると、手に持っていた真っ黒な鞄をテーブルの下へ置く。
「・・・店主、注文だ。」
長ランという奇抜な服装をしているその男は、店のメニューを一通り見た後(のち)、
疲労感を漂わせる様子で店の主人を呼び寄せた。
「お客さん。何をご注文で?」
「そうだな、アメリカンコーヒーにサラダだ。」
男は軽めの食事なつもりなのだろう。
成人男性が昼に食べる量を考えれば、遙かに少ないのだから。
しかし店側からすれば、もっと金を落として貰いたいのが普通。
店主はそんな素振りを見せながら、男に向かってこう言った。

132 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:24:38 ID:wsf2nXos0
「ハンバーガーはいかかがですか?この店自慢の一品ですよ。」

―――辺鄙な場所にあるハンバーガーなど不味いに決まっている。

男は瞬時にそう軽視する。
『味だけは三ッ星』という言葉があるくらいのアメリカの食文化。
確かに美味しい店に関して言えば、他の国と遜色はそうない。
だが、不味い店はとことん不味いのだ。
しかも郊外にある店ならば、集客の様子でその店の味が分かるというものだ。

そして、この店には昼だというのに男一人しかいない。
これ以上、男がこの店の味を軽視した理由があるだろうか。

「いや、いい。コーヒーとサラダ。それだけだ。」
そんな考えの下、男は店主の提案を彼なりにやんわりと断る。

しかし・・・。

「そんな美味しいですから。食べてみてくださいよ。
目の前のライ麦畑のように、こんがりと黄金色のしたハンバーガー。
本当に美味しいですから。ねえ、お客さん。」
「・・・おい、店主よ。俺はいらないと言ったはずだが?」
断られたというのに、店主は尚も食い下がる。
「いやいや、美味しいですから。一度食べてみてくださいよ。」

133 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:27:53 ID:wsf2nXos0
 「おい・・・。」
 仏の顔も三度までという言葉がある。
 これには様々な意味があるが、概ね『どんなに穏やかで寛容な人でもやりすぎたら怒る』
という解釈が解り易く一般的だ。
 当然、普段は冷静沈着が売りの男も、二度目までは店主の押し売りに耐えていた。

 ―――が、旅疲れと多少の空腹のせいか、彼は二度目までしか仏になれなかった。

 「聞いてるのか!!この距離で俺の声が聞こえるはずがないだろう。」
 そう。この三度目の押し売りに、とうとう彼の頭の中にあるヤカンが一気に沸騰したのだ。
 それも、目の前にあるライ麦畑全体に響き渡るほどの声で。
 「親父!!その不味そうなハンバーガーはいらないと、今さっき言ったはずだ!!
   それに、俺はこの店で食事を取らなくてもいいんだぜ。」

 『失敗した・・・。』
 店主の顔にはしっかりとそう書いてあった。
 きっと久しぶりに来た客を前に、思わず欲が出てしまったのだろう。
 店主は少し項垂れながら男の言葉に従うと、たった一言だけ残してから店の奥へ引っ込んでいった。

 ――― この店の主としての言葉を。


134 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:28:51 ID:wsf2nXos0
「スイマセンお客さん。
ですが・・・、うちのハンバーガーが美味しいの本当です。
それだけは譲れませんよ。
では・・・、コーヒーとサラダ。少々お待ちください。」
(ヤレヤレ・・・。)
店主が奥へ引っ込んだ後、男は椅子に深く腰をかけながら眼前に広がる美しいライ麦畑を見ながら、
自分がした行動について考えていた―――いや、後悔していた。
店主へ投げつけたあの言葉を。

『その不味そうなハンバーガーはいらないと、今さっき言ったはずだ!!』

考えてみれば当然の事であるが、店側として―――いや、店主として、
味というものに自信が無ければ個人経営は中々しないもだ。

それを『アメリカという国柄だけ』で、店の味に関してのプライドを傷つけてしまったかもしれない。
だから男は後悔していた。

自分の軽率さに・・・。

「お客さん。コーヒーとサラダです。」
男が後悔をし終える間も無く、店主がコーヒーとサラダを持ってくる。
「あ、ああ・・・。そこに置いてくれ。」
「はい。では、ごゆっくり・・・。」
店主はコーヒーとサラダをテーブルの上に置くと、いそいそと店の奥へ引っ込む。
恐らく、久しぶりに来た客を怒らせてしまったことに、大きな後悔の念を感じているのだろう。
店の奥―――厨房へ引っ込む直前に、男の顔をほんの少し見たのがその証だ。

135 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:31:57 ID:wsf2nXos0
「さて・・・。」
男は店主が店の奥へ引っ込むと同時に、テーブルの上に置かれた品々を見る。
彼の魂が篭っているはずのコーヒーとサラダ。

――― 一時の感情でその魂を侮辱した自分に、果たしてこれらを食す資格はあるのか?

そんなことを考えながら、男はコーヒーカップの取っ手に手をやった。
男の嗅覚を刺激する――珈琲豆の芳醇なの香り。
決して強く挽きすぎず、かといって中途半端に加減せず。
一寸の狂いもない力加減が生み出した、大平原を感じさせる香りだ。
「・・・。」
男はその香りに心底感動しながら、心の中で店主に謝る決意をする。
これは店主の押し売りに激怒した事を謝罪するのではない。
その際に傷つけた、彼のこの店の味―――矜持に関して謝罪するのだ。
(・・・まずは食事を終えてからだな。)
考え事をしながら食べるのは、店側に最も失礼な態度。
とりあえず男は、コーヒーとサラダが新鮮な内に食す事にした。

男はコーヒーを飲む度に。サラダを食べる度に。小さな感嘆の声を挙げる。
美味いとだけ表現するのは下賎だと感じながら。
子供がプレゼントを貰う時のような高揚感を感じながら。

その一口ごとに・・・。

136 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:33:02 ID:2U5Z9Hg50

「・・・・。」
男は遂にサラダの具材の一つである、真っ赤なトマトを食す時が来た。
そして、彼はその事を心の底から悲しみながらトマトにフォークを突き刺す。

――――ピチュッ!!

突き刺す時に感じる弾性力を破壊した感触――このトマトの故郷であるアンデスを思わせる匂い。
これは確実に、男の中で最高のトマトであろう。
「・・・・。」
彼はトマトから感じた全ての五感に感謝しながら、ゆっくりと口の中に・・・・。

「ビュミーーーー!!!」
突如、人間でも動物でもないような奇声がライ麦畑から響き渡る。
(何だ?今の声は。)
その声に言い知れぬ危機感を感じた男は、少し身をかがめて声の主を探し始める。
男が奇声の主を探す視線の先には黄金色をしたライ麦畑。
太陽で十分に光輝くそれは、彼に一瞬の錯覚を覚えさせる。
(気のせいか・・・?)
「びゅ、ビュミ?ビュミーーーー!!」
声が先程よりも近い場所から聞こえる。
これは幻聴ではない。―――現実である。
そう思わせるほどの大きさで。

137 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:35:50 ID:2U5Z9Hg50
(うっ・・・、やはり知る必要があるか・・・。
これは厄介ごとの可能性が高そうだからな。
本当は・・・ただの動物ならいいが。)
もう一度聞こえたその声によって、男は錯覚の世界から現実の世界へと戻される。
美しく光り輝くライ麦畑は健在だが、そこに得たいの知れない何かがいる。
やはり最初に感じた危機感は、決して勘違いではないと確定付ける程に。
(探すか。確か・・・、声はあそこから・・・。)
男はバルコニーから地面に降りると、下にある手ごろな大きさの石を何個から拾い上げる。
そして、その奇声が聞こえた方向に向かって投げた。
「オラァ!!」
いや、正確に言えば、その小石を投げたのは男自身ではない。
なんと男の背中から突如現れた幽霊が投げたのだ。
―――幽霊の投げた石が、高速でライ麦畑内に突き刺さる。

だが・・・、何も起こらなかった。

(手ごたえはあった・・・。が、何も反応がないということは外れたのか・・・?
いや、違う。意に返していないのか。それとも気のせいか・・・。)
男は後者であって欲しいと思いながら、ライ麦畑への警戒を高める。
すると外の騒ぎが気になったのか、店の奥に引っ込んでいた店主が出てきた。
「お客さん。どうかしましたか?」
「店主?身を低くしろ!!」

138 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:39:50 ID:2U5Z9Hg50
男は瞬時に店主の方へ向くと、彼の頭を押さえつける。
「ちょ、ちょっと!何をするんですか!!」
突然の事に少し乱暴に男の手を振り払いながら、当たり前の反応をする店主。
どんな人間だって、知らない男に頭を押さえつけられたら暴れるのが普通だ。
そして、これは男の決定的なミス。
彼らしくない。軽率でお粗末な行動だった。
いくら店主へ後悔の念があったとしてもだ。

店主の安全を確保しようとライ麦畑に背を向ける―――という、軽率な行動は。

「ビュミーーーーー!!」
奇声が男の背後から聞こえる。
(しまった!!)
だが、奇声の主は男が反応するよりも早く、バルコニーにあるテーブルで男を目一杯『挟む』。
―――テーブルが大きな音をたてて四散する。
「びゅ、ビュミーー!!ビュミーー!!」
これが奇声の主の勝ち名乗りなのだろうか。
モンキーダンスに似た踊りをしながら、バルコニーの上を楽しそうに駆け回っている。
「な、な、何もないのに、何が起こっているんだ?テーブルがぶっ壊れた?
お、お客さん、お怪我が!?」
「黙ってろ。すぐ片付く。」
奇声の主の背後から、『挟んだ』はずの人間の声が聞こえる。
当然、その声を聞いた奇声の主は踊りをやめて振り返る。
「びゅ、ビュミ?」
そう。その振り返ったその先には・・・。
「全く・・・、昼時だってのに。ヤレヤレだぜ。」
全く無傷の男が悠然と立っていた。

――――――――ハンバーガーにライ麦を・1――――――――

139 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:40:41 ID:2U5Z9Hg50
ライ麦畑が太陽によって光り輝く。
その美しさは、まさに桃源郷。
見るもの全てを魅了し、また、生への渇望を生み出させる。

だが、そこでも争いは起こるものだ。
人間と奇声を上げ続ける何かの・・・争いが。

「変な風体な奴だぜ。」
男は奇声の主を間近で見て、ポツリと感想を呟く。
何故なら目の前に居る奇声の主は、浮浪者のような汚らしい格好な上に、
頭部が二枚重ねの黄金色の円盤というなのだから。
「びゅ、ビュミ・・・。」
「まあ、姿なんて関係ねえ。すまないがこれで終わりにさせてもらうぞ。」
男がそういうと同時に、背中から先程の幽霊が出す。
いや、それを幽霊というには些かの侮辱であるかもしれない。
なぜならその幽霊は、まるでアポロンのように力強く、ミノタウルスのように屈強な戦士に見えるからだ。
「オラァ!!」
「びゅ、ビュミイイイーーー!!」
そして彼の背中から出た屈強な戦士は、奇声の主に向かって力強い突きを見舞う。
―――その速度はまさしく高速。
当然見るからに鈍そうな奇声の主は、その突きに全く対応できず、
ライ麦畑の方へすっ飛んで行ってしまった。

140 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:41:56 ID:2U5Z9Hg50
「終わった・・・か。」
「お、お客さん?一体何が!!」
店主は目の前の不思議現象に心底怯えながら尋ねる。
すると男は少し笑みを浮かべながら、店主に向かってこう言った。
「安心しな。おそらく、たちの悪い野犬だろう。」
「や、野犬って・・・。す、姿は見えませんでしたが。」
店主は納得できない様子のまま、ライ麦畑の方を見る。
当然であるが、男が言った野犬という発言は嘘である。

そう、男と店主を襲った者の正体は・・・。

(変な『スタンド』だったな。
全く手の内が分からなかったが、早いとこ勝負に出て正解だった。)

―――スタンドである。

スタンドとは、人間・動物の闘争心や防衛本能が具現化したもの。
つまり人や動物が操る、精神力から生まれた戦士なのである。

「とりあえず店主。もう一回、コーヒーをくれ。後、サラダもだ。
野犬のせいで、すっかりぐちゃぐちゃになってしまったからな。」
「えっ?ああ、はい。分かりました。」
男の言葉に少し落ち着きを取り戻したのか、店主はゆっくりと立ち上がり厨房へ戻る。
数分後。厨房――店の奥からコーヒーの香ばしい匂いが辺りに立ち込めた。
(良い匂いだ。)
だが、そんな安息の時間も長くは続かなかった。

141 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:44:04 ID:BVJLOUVZ0
何故なら、倒したはずの黄金色したスタンドの声が、またライ麦畑から聞こえたからだ。
勿論、その声を聞いた男は体勢を低くして臨戦態勢を整える。
(大したダメージではなかったのか?確かに手ごたえはあったんだが・・・。)
先程の突きは、彼のスタンドが繰り出せる最高の攻撃。
この突きで仕留めきれないとなると、あのスタンドは相当な強度を持つことになる。
男はそれらを瞬時に理解し、再度睨みつけるかのようにライ麦畑を凝視する。
「びゅ、ビュミーーー!!」
奇声の主――謎のスタンドの声が、もう一度男の耳に入る。
(どうやら、かなりすっ飛んでいったみたいだな。最初聞いたときよりも、遥かに小さく聞こえる。)
先程から聞こえる敵スタンドの声の大きさから、男は自分と敵スタンドの距離を確認する。
どうやら男のスタンドが放った突きは、相手スタンドを相当遠くまでぶっ飛ばしたようだ。
(遠隔操作タイプ・・・、だが攻撃方法は接近型か。
いや、それともアレ自体はスタンドではなく、付属品だという可能性も・・・。)
相手スタンドがこちらへ来るまで、男は相手の事を冷静に考察する。

そして、男は相手の場所を特定しようとした瞬間、自分の考察が間違っていた事に気づいた。

(もしや・・・・。)
ライ麦畑の右端と左端。
当然、彼の肉眼で見える範囲だが、その畑の色――いや輝きが僅かに違う。
確かに目の前に見えるライ麦畑は黄金色だ。
それは大変美しく、いずれ世の中の大人が大好きな飲料物になる。
しかし普通ならば、太陽光によってライ麦畑全体が光り輝いた筈なのに、
今はどう見ても右端から中心にかけて全く輝く様子はない。

―――つまり答えは唯一つ。

142 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:47:53 ID:BVJLOUVZ0
(敵のスタンド色も黄金色だった。
・・・あの太陽で輝いていない部分は全て敵のスタンドという訳か。)
額からゆっくりと汗が流れ落ちる。
男は緊張していた。
数々のスタンド闘って来た彼だったが、あれほどの数を一度に―――
しかも見える距離で相手した事は無かったからだ。
(本体を叩かなくてはな。)
男はそう考えると、一瞬だが店の方を見る。
おそらく、この店の店主が襲われまいかと心配なのだろう。
自分が注文したコーヒーとサラダを作るため、まだ中にいる彼を。
(とりあえずは、ここから離れるか。)
となると、尚更ここに居る訳にはいかない。
敵は明らかに自分を狙っていたのだから。
(あの数だ。まともにやったら、こちらが圧倒的に不利。
いくら俺のスタンドでも、あの数を一度に相手にするのは困難だからな。)
男はさらに数秒ほど考えて、ある一つの結論に達する。
(だが、隠れて各個撃破することもできそうにないな。
やっぱり、あのスタンドを操っている人間・・・。
もしくは動物を直接叩くしかないか。ヤレヤレ・・・、手間がかかりそうだ。)
彼のすべき方針は決まった。
後は、後腐れのないよう闘うだけである。
「店主。美味いコーヒーとサラダだった。それと・・・、すまない。」
男は独り言のようにそう言うと、懐から財布を取り出し、コーヒーとサラダ―――
計二人前の代金をテーブルの上に置く。
「また飲みに来たいものだ。」
そして、そのまま力強い歩みと共に一人ライ麦畑へ行くのだった。

―――全く居場所の分からない『敵』を倒しに・・・。

――――――――ハンバーガーにライ麦を・2――――――――

143 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:52:06 ID:BVJLOUVZ0
男は店を一歩出た瞬間から相手スタンドの攻撃を受けていた。
左右から繰り出される、スタンドごとの『挟み撃ち』という単調な攻撃を。

普通、挟み撃ちとは前後だけでなく、左右からも―――つまり四方八方からするものである。
周りに障害物があるならば別だが、今はライ麦畑しかない。
それなのに、左右四匹程度でただひたすら『挟み撃ち』とは・・・。
(単調だな・・・。)
おそらくスタンド自体の知性は低いのだろう。
これは遠距離複数型のスタンドに見られやすい傾向だ。
(攻撃は難なく避けてはいるが・・・。)
男は、雪崩の様に連続して起こる挟み撃ちを直進する事で避けつつ、
敵の攻撃があまりに単調な事を疑問に思っていた。
確かに敵スタンドの知性は低いのだろう。

だが、本体の方はどうだろうか?
これだけの数のスタンドを一度に使える相手である。

これらの材料から、男は単調な攻撃の裏に何かあるのではないかと考えていた。

「ビュミーーー!!!」

そして、暫く同じ攻撃続いた後。
喫茶店を出てから僅か3分という間に、男はいつの間にかライ麦畑の中心付近へ来ていた。

144 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:57:39 ID:BVJLOUVZ0

―――見渡す限り一面のライ麦畑。

太陽の光によって美しく黄金色に輝くそれは、この戦いなど知らぬといわんばかりの雄大さを誇っていた。
そして男はその光景から、ある重大な事に不意に気付く。
(本体が見当たらない。まさか、ここではないのか?)
そう、このライ麦畑の半分は見たいうのに、敵スタンドしか見当たらないのだ。
もしも敵スタンドの射程距離が何百キロもあるならば、この探索は始めから無駄である。
―――が、敵のスタンドが『喫茶店にいる自分しか狙わなかった』事から察するに、
それの可能性は低いと男は踏んでいた。
(どういうことだ。敵のスタンドは確かに俺を狙っている。
確かあの時、店主は狙われなかった。)
男は自分の考えを完全に否定するのが嫌で、もう一度冷静に考える。
「ビュ〜ミーー!!」
考えてる隙を狙ったのか、敵スタンドの単調な『挟み撃ち』攻撃が繰り出される。
(・・・。店主がスタンド使いという事も考えられるが、あの様子から見てそれは考えにくい。)
男はその攻撃を前に進む事であっさりと避けながら、店主が敵スタンドの攻撃で震えていた事を思い出す。
(確かに店主は男のスタンドが見えていなかった。
何が起こったかすらも理解していなかった。
俺のスタンドも見えていないようだった。となると店主はシロ・・・。)
「ビュミーーー!!ビュ、ビュミーーー!!」
今度は、十二匹同時に左右から『挟み撃ち』をしてくる。
(まるで猿のような奴だ。全く同じ攻撃を・・・、まさか!!)
男は敵の攻撃からある仮説を思いつく。

145 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 03:59:12 ID:BVJLOUVZ0
そして、辺りを見回す事で核心を得た。

(もしや・・・、本体は人間ではないのか?)

そうなのだ。
ライ麦畑―――ライ麦の高さは、平均的に成人男性の身長より低い。
つまり敵が人間ならば、ライ麦畑の中で丸くなるかうつ伏せの構えをしなくてはいけない。
しかし、そうなると極端に視界が悪くなる。
喫茶店のように距離が離れていれば問題はないが、同じフィールド―――ライ麦畑に入られると、
自分も移動しなければ常に相手を捕捉することが出来ない。
それでも敵のスタンドは、男に動いた素振りすら悟られる事無く、完璧にターゲットを捕捉し続けている。
(それに加えて、あの単調な攻撃の連続・・・。
そうなると相手は・・・、動物。加えて賢くなく、俺を常に補足する動物となると・・・。)
男が考え終える寸前、地面の中から敵スタンド数匹が襲い掛かってくる。
正に奇襲としては完璧なタイミング。
完全に不意を突かれた男は、一瞬血の気の引いた顔になる・・・が。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
男の声がライ麦畑全体に響く。
するとその瞬間、男に攻撃しているはずの敵スタンドは、半ば地面に埋もれた状態で動きを止めた。

そう、まるで時が止まったかのように・・・。


146 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:00:56 ID:bFa8i0Cb0
「ふう・・・、当たらない同じ攻撃なら、地中からとはな。
流石、動物の学習能力―――といったところか。」
男は自分のスタンド――スタープラチナの突きを、相手スタンドに放つ。
「オラッ!!
・・・止めていられる時間は0.4秒・・・と言ったところか。ヤレヤレ・・・。
そして時は動き出す。」
そして男がそう言うと、彼を囲んでいたはずのスタンドは間髪入れず同時に破壊される。
「ビュミ〜?」
今の一部始終を見ていた相手スタンドの一匹は、頭部である二枚重ねの黄金の円盤を左右に振りながら不思議がる。
きっとこのスタンドにとっては、今の一撃で仕留めたと思っていたからだろう。
しかし、その考えとは正反対の事実が目の前で起きた。
「鳥か・・・、ウサギか。どちらにしても巣を見つけないことにはな。」
やはり知能が低いこのスタンドでは、考えても分からなかったのだろう。
今度は走り始めた男を尻目に、相手スタンドはそれに追従しながらもう一度頭を振るのだった。

――――――――ハンバーガーにライ麦を・3――――――――

147 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:02:56 ID:bFa8i0Cb0
(どこだ。どこに巣はある。)
相手スタンドの居場所を探して既に十分。
男は心底焦っていた。
何せ相手スタンドの攻撃を避けながらの、この捜索劇。
いくら強力なスタンドを持つ彼でも、敵の本体を殴らなければどうしようもない。
何しろ相手スタンドの数は数え切れないほど多く、一人ではどう考えても無理だからだ。
「びゅ、びゅ、ビュミーーー!!」
今度はタイミングをずらす事を覚えたのか、一秒ずつずらしながら『挟み撃ち』をしてくる相手スタンド。
しかし、左右からの攻撃は変わらないので、前へ進む事によって簡単に避けられてしまう。

―――それでも、十分な疲労は誘えているが。

(ウサギは・・・、ないな。穴はない。
そもそも、野良ウサギはライ麦畑を住処にすることは無いしな。
すると鳥だが・・・、ライ麦畑は海辺に近いのが通説。
ここもそれにもれず、東に十キロも行けば大西洋だ。
すると海鳥の可能性も・・・。)
男は走りながら必死に考える。
―――止まり木を探す。
だが、どうみても止まり木―――いや、木すら見つからない。
ならば相手スタンドの本体は、一体何なんだろうか?

「ビュミーー!!」
「うおっ!!」
男は・・・、遂に相手スタンドの攻撃を喰らう。
あれほど単調な、左右から繰り出されるスタンドごとの『挟み撃ち』攻撃を。
「くそったれ・・・。」
自身のスタンドでガードだけはしたが、流石に左右からの攻撃は完璧には防げない。
右脇腹。左肩関節。
どちらも暫くは安静にしなくてはいけないダメージだった。

148 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:04:20 ID:bFa8i0Cb0
(くそっ・・・、思ったよりもダメージがでかい。
そういえば、奴が喫茶店で攻撃してきた時、テーブルを木っ端微塵にしていたな。
迂闊だった・・・。)
男は自分の不甲斐無さを嘆きながら、次にすべき事を考える。
(どうする。敵の本体の居場所は分からない。今のところ全くのお手上げだ。
しかも仲間はここにはいない・・・。
―――どうする!!)
しかし男の思考は終わりきる前に、相手スタンドの攻撃によって中断される。
「ミュギイイイイ!!!」
相手にとって、これはトドメのつもりなのだろう。
一度に数百匹のスタンドが、同時に男へ襲い掛かる。
(くっ、仕方ない。今は逃げるしか・・・。)
男は咄嗟に思考を打ち切ると、自身のスタンド―――スタープラチナを出した。
「スタープラチナ・ザ・ワールド!!時よとまれ!!!」
男の声と同時に、時はまた止まる。
(距離を取らなくては・・・。)
もう何回も時は止めれないのだろう。男は肩から息をしながら脇を押さえてライ麦畑の中を走ろうとする。
―――が、彼の止めれる時間は僅か0.4秒。
敵の攻撃地点から三歩後ろに行くのが精一杯だった。
(くそっ!この時間では身を捻る事しか・・・。時は動き出す。)
男がそう思うと同時に、相手スタンドが一斉に彼がいた場所に飛び掛る。
そう、時が動き始めたのだ。
「グッ!!」
いくら後ろに下がったいえど、やはり完全には避けることは出来ない。
敵の攻撃の余波から、彼は後ろに吹き飛ばされた。

――――すると・・・。

(何だ?この穴は。)
男は吹き飛ばされ地面に叩きつけられた際に、地面に小さな穴があることに気づく。

149 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:06:54 ID:bFa8i0Cb0
その穴はとてもモグラが入るには小さく、蟻が掘るには大きすぎる穴だ。
しかも、その穴の底は鋭角に尖っている。

まるで『矢でも突き刺さった後』のように。

(ま、まさか・・・。)
男はその穴を見て、この土壇場であることを閃く。
いつもならば決して信じ切ることが出来ないこの閃き。
しかし、この極限状態だからこそ賭ける価値はある。
(遠距離型・・・、あの数・・・、単純な行動パターン。そして本体が全く見当たらない・・・。
おかしい。こんな考えに全てを託す俺はどうかしてる。
――だが、このままではどうせ長くは耐え切れまい・・・。
ならば・・・、俺はこの閃きに賭ける!!)
男は始めて天に運を任せながらスタープラチナを出す。
「ミュギ!ミュギーー!!」
するとその光景が相手スタンドの一匹に発見されたのか、大騒ぎしながら群れの中に戻っていく。
もはや一瞬の猶予もない。
「くっ、これ以上躊躇する暇はないか・・・・。」

そして・・・。


150 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:08:01 ID:bFa8i0Cb0
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』

―――スタープラチナは、力の限りその穴を殴り続けた!!

穴が 凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!凹む!!
土が飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!飛び散る!!

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!』

全てを!!全てを!!全てを!!全てを!!全てを!!全てを!!全てを!!全てを賭けて殴り続けた!!

「みゅ、ミュギーーー?」
「ちっ・・・、何ともないか・・・。」
スタープラチナが全ての力を使い果たし消えうせた後、男の周りを相手スタンド数千匹以上が取り囲む。
完全に追い込まれた獅子と追い込んだハイエナの図。
もはや結果は見えた。

そう、この闘いの結末は・・・・。


151 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:09:37 ID:5iLJ/u3C0
「ミュ、ミュミュミュミュミュミュ!!!」
正に数千匹の相手スタンド全てが男に襲いかかろうとした寸前、急に彼らは痙攣を起こし始める。
酸欠で死に行くような悲壮な表情で。

そして数秒の後。
彼らは金色の液を辺りに飛び散らせながら、男から近い順にその体を四散していった。


相手スタンドは―――消滅したのだ。
一匹残らず。

「ふう・・・、俺の考えは正しかったようだが・・・。
紙一重だったな。」
男は心底疲れた様子でゆっくりと立ち上がると、辺りを見回す。
――― 一応の警戒をしながら。
(綺麗だな。)
しかし、彼の目に映ったのは長く連なるこのライ麦畑のみ。
それは先程までの戦いが嘘のように静かで、黄金色一色の絶景であった。
「おーい!!おーい!!」
男の背後から、つい最近知った声が聞こえる。
「はあ・・・、はあ・・・。こんな所に居たんですか。
まあ、大体のお客さんはここが珍しくて入っていきますけど。」
何とその声の主は、男が食事を獲った喫茶店の店主であった。
しかも両手には見覚えのある真っ黒な鞄を抱えている。
きっと、この鞄を渡すためにここへ来たのだろう。
男はそれに内心感謝しつつも、一応の警戒―――店主がスタンド使いの可能性を否定せずに言葉を発した。

152 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:11:26 ID:5iLJ/u3C0
「店主?どうしてここへ。」
「ど、どうしてってお客さん。この鞄、お客さんのでしょう?
貴方が座っていたテーブルの下に置きっぱなしでしたよ。」
店主はそう言って、持ってきた真っ黒な鞄を男に渡す。
「あ、ああ。俺のだ。すまない、世話をかけた。」
これは確かに男が自分でテーブルの下に置いた物。
中身も彼が研究で使用する資料が入っている。
「いえいえ。こちらこそ色々と不手際があり、本当に申し訳ございません。」
店主は深々と頭を下げながら、男に謝罪の念を伝える。
「いや、こっちもだ店主。」
すると男も店主の言葉に答えるように、先程は伝える事が出来なかった事。
―――料理を侮辱した事に対する謝罪の念を伝えた。

どうやら彼は本当に一般人のようだ。
しかも気の良い、立派な店の主。

「こちらこそ、貴店の味を侮辱した事を謝ろう。
出してきたコーヒーとサラダは格別だった。すまない。」
「いえ、褒めていただいて光栄です。」
店主はその言葉に、嬉しそうな・・・・。
恥ずかしそうな顔をしながら人差し指で頬をかく。

そして一陣の風が彼らを―――ライ麦畑を包んだ後(のち)、店主は思い出したかのような声でこう言った。

「そういえばお客さん。このライ麦畑に来て、何かありませんでした?」
「どういうことだ。店主。」
男はその言葉で自分の考えの正当性を確信する。
そう、彼を襲った相手スタンドの正体の事だ。
「いえ、今から十年くらいでしょうか・・・、あっ、立ち話もなんですから、店に戻りましょう。
丁度、コーヒーとサラダもありますし。」

――――――――ハンバーガーにライ麦を・4――――――――

153 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:12:50 ID:5iLJ/u3C0
「で、店主。十年前―――1987年のライ麦畑で何かあったのか?」
男はそう言ってコーヒーを一口すする。
口の中に広がる、芳醇で大平原を思わせる濃厚な味。
相変わらず、どこをどう取っても最高に冠に相応しいこのコーヒー。
少なくとも男にとっては、今までのんだ中で最高のモノだ。
「はい・・・、十年前。
私はそこにあるライ麦畑の栽培だけでなく、この店を始めました。
で、開店してまもなく一人の老婆が来店しまして・・・。」
店主は憂鬱な顔で自分用のコーヒーを一口すする。
そして徐にライ麦畑の方へ目をやると、ゆっくりと話を続けた。
「初めてのお客さんでしたから、それは張り切って接客しました。
元々農家育ちな物ですから、満足のいく接客は出来ませんでしたが・・・。」
「で、その老婆がどうかしたのか。」
男は店主の話下手さに少し呆れながら、話を進ませようと声を挟む。
「えっ!?ああ、そうです。
こんな風にちょうどコーヒーをお出しした時なんですが・・・。」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

154 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:14:22 ID:5iLJ/u3C0

「お主!心からの安堵感と、圧倒的な幸福感を手に入れたくはないか?」
「えっ?安堵感って・・・、なんです?あっ、コーヒーです。」
店主は老婆の言葉に少し呆気に取られつつ、持って来たコーヒーを差し出す。
「ふん!痴れ者め!もういいわ。ん・・・、あれは・・・。」
老婆は店主の反応に今日が削がれたのか、店の目の前に広がるライ麦畑に目を移す。

時刻はちょうど正午。
太陽光はライ麦畑に降り注ぎ、黄金色の綺麗な桃源郷を作り出していた。

「ああ、美しいでしょう?私はこの光景が大好きなんです。
それでこのライ麦畑にちなんだ、黄金色に焼けた美味しいハンバーガーをメニューとして作ったんですが・・・。
どうですか?お一つ。」
「ふん、老婆にハンバーガーは重過ぎるわ。
それにしても綺麗じゃの〜。」
口の悪いこの老婆も目の前の光景に心打たれたのか、笑顔で店主の言葉に答える。

するとその刹那。
ライ麦畑の上空に一匹のハヤブサが現れた。

「あっ、ハヤブサですね。ここは海岸に近いから彼らもよくここに来るんですよ。
きっとこのライ麦畑に惹かれてくるんでしょうね。」
店主は上空を優雅に飛ぶハヤブサを感慨深く見つめる。

そして、彼もまた、笑顔で老婆の方へ振り返ると・・・。


155 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:15:36 ID:5iLJ/u3C0
「しゃしゃしゃしゃ!!これよ、人間でダメなら動物。動物が居たわ!」
気色悪い声で笑い始める老婆の姿があった。
「お、お客さん?」
「うるさい!!・・・これでよし。」
店主の怪訝な様子にも全く気にも止めず、老婆は自分の荷物から古い『弓と矢』を取り出すと、
空に向かってそれを構える。
「な、何を持ってるんですか!!危険ですよ!!」
「話しかけるでない!!ワシは今忙しいんじゃ!!」
老婆はそう言って、構えた『弓と矢』の狙いを空――――ハヤブサに向ける。
そう、この老婆は撃ち落とす気である。このハヤブサを。
「や、やめてくださいよ!可哀想じゃありませんか!!」
店主は必死になって老婆を引き止める。

ある時は口で。
ある時は羽交い絞めにして。

しかし、老婆は年齢とは裏腹に物凄い腕力――脚力で店主の行為を振り切ると、
とうとうハヤブサに向かって矢を射った。
(ああ・・・、矢が遂に・・・。で、でも・・・。)
老婆の力に驚愕しつつも、店主は内心安心していた。
何故なら、どんな人でも『弓と矢』でハヤブサを撃ち落とす事などほぼ不可能だからだ。
これがアーチェリーやピストルだったら可能かもしれない。
だが、これは古臭い『弓と矢』である。
物語上の名手ならともかくとして、唯の老婆が天空の王者であるハヤブサを打ち落とすなどという事は・・・。
「ギィーーー!!」
―――打ち落とした。
あの天空の王者をいとも容易く。
ゆっくりと自由落下していくのが、その何よりの証拠。
老婆の矢に撃ち落されたハヤブサはライ麦畑の中へ落下していった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

156 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:23:23 ID:CaLE9vb/0

「で、それがどうしたんだ?」
男は店主の話を一通り聞いた後、直感によって気付いてしまった。
その老婆の正体に。その『弓と矢』の正体に。

そして、自分の母を救うためにした―――あの旅を思い出していた。

「え、ええ・・・。確かに老婆の放った矢は、上空に居たハヤブサを撃ち落しました。
普通なら・・・、いえ。見たことが初めてだったのでよく判りませんが、・・・死ぬと思います。
矢に打ち抜かれたら・・・。で、でも・・・。」
「死ななかった・・・だな。」
「は、はい・・・。」
怯えた様子でそう言う店主を尻目に、男も内心穏やかでなかった。
確かに今の彼は一人の学者である。
この場所にも、研究の一環としてきたのだから。

しかし、彼にはもう一つの使命があった。
スタンド能力を突き刺された物に宿す―――『弓と矢』の捜索。
あの旅の元凶の力を更に高めた、あの忌まわしき存在。

こんな所でそんな話を聞けるとは、男にとっても心底意外だったに違いない。


157 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:25:31 ID:CaLE9vb/0
「そ、それから変なことが立て続けに起こったんです。
いつもライ麦畑に見られている様な気もしましたし・・・・。
な、何よりこの店に立ち寄った人が、怯えたように逃げ出すこともありました。」
「そうか・・・、だが、俺には何もなかった。何もな。」
先程の戦いで負傷した脇腹と左肩を悟られないにしながら、男は冷静に言葉を紡ぐ。
「そ、そうですよね。スイマセン。変な話をして・・・。
あっ、お客さん。コーヒーが無くなってますね。宜しければ、もう一杯持ってきますが。」
「そうだな・・・、頼む。」
店主は男の言葉を受けるとすぐに店の奥に引っ込む。
―――コーヒーの香りがバルコニーに広がる。
本当に心地よい香りだ。
(ふう・・・、まさかこんな所で昔の話が聞けるとはな・・・。
にしても、あのスタンド・・・。一つ確認しておくか。)
男が丁度そう考えたと同時に、店主がコーヒーを持って出てくる。
「店主。あっ、スマン。で、一つ聞きたいのだが・・・。」
「なんですか?」
店主はテーブルの上にコーヒーを置くと、男の方に顔を向ける。
「ああ、そのハヤブサを撃ち落した後、地面には『矢の跡』があったか?」
「えっ・・・?いえ・・・、分かりませんでしたが・・・。
でも、地面に落ちたハヤブサは矢によって地面に支えられていましたから、
多分『矢は突き刺さった』と思います・・・・。」
店主は自身なさそうにそう言う。
しかし、一見歯切れの悪いこの言葉も、今の男にとっては十分だった。

158 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:27:04 ID:CaLE9vb/0
(そうか・・・。
そうなるとあのスタンドが俺を襲ってきたのも、その攻撃方法が『挟む』オンリーなのも納得がいくな。
『主人とハンバーガーを馬鹿にしたら怒る』訳だ。)
男は全てを『完璧に』理解すると、座っている椅子に深く腰をかける。
そして全身の力を抜いた後、店主に向かってこう言った。

もう一度謝罪を込めて。―――ライ麦畑の心と店主のプライドに。

「ハンバーガーをくれ。この店の名物なのだろう?」
「は、はい!!」
店主の顔は男の言葉を聞いた途端、心からの笑顔に変わる。
それは――――ライ麦畑のように美しい笑顔だった。



スタンド名:スタンド名:A Hamburger Full of Rye(ハンバーガーにライ麦を)――― 消滅
本体名:ライ麦畑―――矢の跡のみ消滅。ライ麦畑自体は無傷

―――――――――→to be continued

――――――――ハンバーガーにライ麦を・了――――――――

159 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:29:54 ID:LmxTHTwi0
どうも。今回はJOJOモノです。
先駆者の方がたくさん―――今も連載している方が居ますが、
なるべく話は被らないようにしたつもりです。
時系列的には、三部と四部の間。DIO戦から8年後くらいでしょうか。
以下に敵スタンドの説明。

スタンド名:A Hamburger Full of Rye(ハンバーガーにライ麦を)

パワー:B スピード:D 射程距離:∞(ライ麦の花粉が飛ぶ距離による)
持続力:A 精密操作性:E 成長性:E

能力―このスタンドは、とある喫茶店前方にあるライ麦畑のライ麦全てが使用可能である。
そのため、スタンドの出現数はライ麦畑に存在するライ麦の数と同じである。
ただしライ麦の為に知性は低く、火や暴雨といった自然現象にめっぽう弱い。
また、このスタンドの発動条件として、喫茶店の主人―――自分達の世話人が作る
ハンバーガーを馬鹿にした場合のみ発動する。

160 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:30:57 ID:LmxTHTwi0
>さいさん
やはり神父は熱い――カッコいいですね。
ヘルシングはやはり神父とセラスが最高です。
いずれ自分のSSでも首切りがしたいものです。

>74さん
そう言ってもらえると嬉しいです。
長いのは申し訳ありませんでした。
本当に本SSはノリのみでできております。

>75さん
ジェットマンとグリッドマンは私の青春でした。
正確に言えば、ターボレンジャーやライブマンも含みますがw
また投稿した読んでやってください。

>77さん
読んでいただきましてありがとうございます。
また来ます。

>ふら〜りさん
結構無理な気がしましたが、そう言っていただけると嬉しいです。
ふら〜りさんもまた特撮系の話を書いてください。
ウルトラマン&勇次郎のあれは、かなり好きでした。きた〜ぞ、わがま〜ま、ゆう〜じろ〜う〜♪

>ハロイさん
ありがとうございます。
静かも遂に話の核心に入っていったのかな?と思う話でした。
確かに普通の人が、世界の崩壊話を聞いたらとりあえずは途方にくれますね。

では失礼・・・。

161 :ハンバーガーにライ麦を:2007/05/13(日) 04:41:33 ID:LmxTHTwi0
>バレさん
復帰オメデトウございます。
ずっと心配していましたが、本当にご無事でよかったです。
ともかくはお体をご自愛してください。

162 :作者の都合により名無しです:2007/05/13(日) 21:25:07 ID:rhG8zeVN0
ここってドラゴンボールの続編考えるとかやってもおkなの?

163 :ふら〜り:2007/05/13(日) 23:03:04 ID:9/B0w9o+0
>>ハロイさん
静の反応、こんな状況でも取り乱さないのは流石。しかしブギーの言うことをスルりと飲み
込む柔軟性は無いか。もうちょっと彼女の性格が荒んでいるか、謎の敵からの襲撃とかに慣れて
いれば「敵か?」って発想もあったでしょうが、今はまだ単にアヤしい人ってだけですしね彼。

>>NBさん
ならば、次回はスヴェンを見たい私の為に何卒。リンスとトレインより、スヴェンとイヴの方が
いろいろ気になってしまって……目先の戦闘も今後の関係も。やはり貫禄というか、トレイン
はあまりピンチになりませんし。あとこれだけ人数いれば、濃い薄いは出るのが自然ですぜぃ。

>>サマサさん
これだけハデに登場して、ただ名乗っただけでもう作者から噛ませ要員宣言とは無残。今回
見た限り、能力も性格も口調個性もハッキリしてて充分メイン敵キャラ張れそう……それだけ
に噛んだ側はさぞ引き立つでしょう、と噛まれぶりに期待。でなきゃ不憫な彼ら、さぁ如何に?

>>しぇきさん
鳥か、モグラか、まさかミミズか? と予測が二転三転しましたが、まさかこういうオチとは……
ここまで来ると、ほとんど妖怪ですな。本作は敵の不気味さと地味な強さ、そしてそれらとは
アンバランスなほのぼのとした真相が面白かったです。戦闘終了後の「ほっ」が何だか深くて。

>>162
よろしいかと。DBは既にいろんな職人さんがいろんな作品を書いておられます故、
お暇でしたら過去作品をご一読されるのも良いですぞ。ご力作お待ちしてますっ!

164 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 00:22:07 ID:A9VYUNgK0
セル・ゲーム……ドクター・ゲロの作った人造人間「セル」が開いた武道大会である
その光景を見ていた科学者がいた。
科学者の名はDrスパイク。あのドクター・ゲロと同じ元レッドリボン軍の科学者である
「やはり、ゲロの作った人造人間では無理だったか……」
スパイクはそうつぶやき、セル・ゲームの場から去った。
そして、7年の月日がたった

エイジ767
魔人ブウの襲来から半年が過ぎ、人々は平和な暮らしを取り戻していた。
しかし、ドクター・スパイクの恐ろしい計画により平和が崩れることを知っている人間は誰もいなかった。
そう……一度未来から来て悟空とともに戦ったZ戦士「トランクス」以外は。

165 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 00:23:40 ID:A9VYUNgK0
とりあえずさわりだけ投下してみました。

アニメの敵であるクウラとかブロリーも出すかも知れませんがご容赦を。

166 :作者の都合により名無しです:2007/05/14(月) 00:41:30 ID:TWrQK5dB0
>「聞いてるのか!!この距離で俺の声が聞こえるはずがないだろう。」
>頭部が二枚重ねの黄金色の円盤というなのだから。
ミス?

>いずれ世の中の大人が大好きな飲料物になる。
マニアック

いやしかし面白かったな。本体。
荒木だと収穫後のライで作った飲み物のトピックを添えそうだ。


167 :作者の都合により名無しです:2007/05/14(月) 15:46:50 ID:6qVucF5O0
>しぇきさん(本格復帰うれしいです)
しぇきさんがジョジョも手の内だとはしりませんでした。
内容も面白かった!
でも、連載してるやつの復帰はまだまださきかな?

>ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵作者氏
さわりすぎるでしょw
でも、ブロリーとかクウラとか出るのは楽しみです。


168 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 23:47:19 ID:A9VYUNgK0
第一話「始動!人造人間22号」
 エイジ790
 タイムマシーンで過去に戻ろうとしたセルをトランクスが倒してから三年がたった。
 人造人間達の破壊した街並みも破壊される前のように戻り、人類は再び平和な暮らしを取り戻していた。
 しかしある日、ドクター・スパイク率いる新たなる人造人間の集団が現れた。
 彼らの目的は世界征服。しかし、彼らの目的を破り地球を守ろうとした戦士がいた。
 そう……トランクスである。
 トランクスは人造人間達の前におりた
 「貴様、トランクスだな?」
 ドクター・スパイクがトランクスに話しかける
 「ああ、そうだ。お前達、いったい何をするつもりだ!」
 トランクスがそう問いかける
 「ふん、知れたこと。世界を征服する。それが我々の目的だ」
 ドクター・スパイクは笑いながらそう答えた。
 「そうか……。だが、お前達はその野望を達成することはない」
 トランクスはそういった
 「ほう……なぜだ?」
 「俺がここで、貴様らの野望を絶つからだ!!」
 トランクスがそういうとトランクスの体から金色のオーラが出て髪が金色になった。
 トランクスはスーパーサイヤ人に変身したのだ

169 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 23:49:30 ID:A9VYUNgK0
 「貴様らの野望は、ここで俺がうち砕く!」
 トランクスはそういって構えをとった
 「ほう……。戦闘力がどんどん増えていく……。すばらしいパワーだ。貴様のその体、いただくぞ」
 ドクター・スパイクはそうつぶやき自らの傍らにいた人造人間22号に命令を下した
 「いけ、人造人間22号よ」
 「了解いたしました。ドクター・スパイク」
 22号は構えを取りトランクスへ突撃した。
 トランクスも突撃し二人の戦いは猛烈な撃ち合いとなった。
 「フッフッフ、ドクター・スパイクの言う通り、すばらしいパワーですね」
 そう22号は言った
 「戦闘中におしゃべりとは対した余裕だな。俺が貴様ら全員バラバラにしてやるぜ。ハァッ!!」
 トランクスはそういってさらに気を増幅させ22号をはじき飛ばした。
 「くらえ、フィニッシュ・バスター!」
 トランクスはフィニッシュ・バスターを22号に向かってはなった。
 しかし、22号は焦る様子もなく手をあげエネルギー波を放った
 「フッ、スーパーデッドリーキャノン!」
 なんと、22号はフィニッシュバスターの軌道を変えフィニッシュバスターの直撃を防いだ。
 「何ッ!?」
 トランクスは驚愕した
 「フフフフフ、今のがあなたの全力ですか?それなら少しがっかりですね。では、これで終わりにしてあげましょう」
 そういって再び22号は構えをとった

170 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 23:51:14 ID:A9VYUNgK0
今日はこれで終わりっす。

悟空や悟飯、ベジータ、ピッコロ、現代トランクス、悟天、クリリン、ヤムチャたちはもうちょい後に登場することになりそうです

171 :ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵:2007/05/14(月) 23:54:16 ID:A9VYUNgK0
あ、後プロローグ?の訂正でエイジ767のとこはエイジ774にしといてください

172 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/15(火) 02:03:37 ID:S0zaUgOJ0
『赤ん坊を待ちながら C』


 静は校庭を見た。
 眼下に広がるそこには、帰途に着く生徒たちの群れ、日陰にたむろして間近に迫る期末考査に備えてヤマを確認しあう者たち、
来たる地方大会へ向けて最後の特訓を行う野球部員──なんということのない、ごくごくのどかな学園風景しか見えなかった。
 ブギーポップの言うような『怪物』の影など、どこにも見当たらない。
「君はこの世界をどう思う?」
 黒帽子の怪人はいきなりそんなことを聞いてきた。
「ど、どうって……」
「よく分からないかい?」
「……うん、まあ」
 訳もなく、静は恥ずかしく思う。なにか気の利いたことでも言えれば良かったのだが、なにも思い浮かばなかった。
 考えなしの浅薄なやつだと思われただろうか。十和子ならどう答えただろう。
 そんな静の考えを読み取ったのか、ブギーポップは肩をすくめてさらに言う。
「なにも恥じることはない。『よく分からない』、つまりこの世界に対する態度が決定していないということは、それだけ多くの可能性を残しているということだ。
もちろん、いつまでも態度を保留し続けることは誰にも出来ない。いつかは必ず、自分と世界のありようを整理する必要に迫られるときが来る。
問題なのは、『そのとき』になって自分がどういう立場を取るか──全てを諦めてしまって『世界の敵』になるか、
それとも『生きていく能力』を絶えず試されるような過酷な試練(ディシプリン)に身を置き続けるか、
或いは、いまだこの世に顕れていない、名も無き『可能性』に全身全霊をかけて挑むか──ということなんだと私は思うね」
 そのやや難解な言い方に、静は眉根を寄せる。
 さっぱりと言っていいほど理解できていなかったが、それでも──その言葉にはひとつの『正しさ』が込められているような気がした。

173 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/15(火) 02:05:07 ID:S0zaUgOJ0
「まあ、結局は、自分に出来ることをするしかないのさ。失敗や挫折を繰り返し、そうしたものを通じて己の可能性を試していく──
自分になにが出来るか、なにが出来ないかを見極めながらね。みんなそうやって生きているんだ。ただ待っているだけじゃ、なにも変わらない」
「あなたは──」
「うん?」
「あなたは『自分の出来ること』ってやつを分かってるの?」
「私かね? 私の使命はただひとつ──『世界の敵』を倒し、『崩壊のビート』を止めることさ。その他にはなにも出来ない」
 風が静の首筋を撫ぜ、わずかな冷涼感がもたらされる。
 ブギーポップのマントがばたばたとはためいていた。
 その格好は暑くないのだろうか、と心配になるが、黒のルージュが映える白い顔には汗ひとつ浮かんでいない。
「世界はとんでもなく微妙なバランスの上に成り立っている。それは一昔前の東西冷戦のようなダイナミズムに限ったものではないんだ。
それどころか、『崩壊のビート』は常に身近にこそ潜んでいるものだ。
何気ない日常の会話の中、ささやかな躓き、街の片隅、学校の屋上──
『それ』を越えたら二度と後戻りできないような、そういう一線が、この世には満ち溢れているんだよ。
だから、私のような『泡』が存在を許されているのだろう。『世界の敵』の敵として、それを打ち倒すためにね」
「倒すって……戦っているの? その、世界の敵、っていうのと」
「暴力に頼ることもしばしばある。どうしようもなく歪んだビートを停止させるには、時として必要なやり方だ」
「誰かに頼まれてやってるの?」
「まさか」
「頼まれもしないのに、世界の敵と戦ってるの? なんで?」
「なんでとは随分だな。そうしないと世界の破滅だからだよ」
「じゃあ、その、つまり、いわゆる人類のため、とか?」
「そうさ。我ながら損な役回りだとは思うがね」
「……うーん」
 要領を得ない問答の末、静は悟った。
 これは自分の手には余る、と。

174 :シュガーハート&ヴァニラソウル :2007/05/15(火) 02:06:31 ID:S0zaUgOJ0
 仕方ないので、静はそれ以上考えるのを止め、そっくりそのまま受け入れることにした。
 秋月貴也が『世界の敵』と戦う『ブギーポップ』だと主張するなら、それでいいのではないかと思う。
 その認識を改める必要が生じたなら、それはそのときに考えればいいことである。
 それに──。
(なんかそういうの、ちょっと素敵かも)
 世界を救うために人知れず戦う孤独のヒーローというのは、とてもロマンチックなように思えた。
 そんな甘ったるい思考を、ブギーポップの涼やかな声が打ち破る。
「今度は私のほうから聞いてもいいかな?」
「あ、ど、どうぞ」
「君はどうしてここに来たんだい?」
「それは──」
 痛いところを突かれたと思う。
 あの時見た黒い影を追って屋上まで昇ってきたのは、ただの好奇心とかそういうのでは全然なかった。
「──待ってるの」
「なにをだね?」
 ブギーポップの目的を静が問いただしていたさっきとは、まるで真逆の構図だった。
 だがもちろん、静が待っているのは『世界の敵』ではない。
 そんな、世のため人のためといったものとは大きくかけ離れた、極めて個人的な目的だった。
「赤ん坊」
「ふむ?」
「昔、この街に捨てられた赤ん坊がいたの。どうして自分は捨てられたのか、彼女はずっと考えていた」
 後を続けるかどうか、一瞬迷った。だが、ここまで来たら全部話してしまいたかった。
「その赤ん坊は奇妙な能力を持っていたわ。──『だから』、だから捨てられたんじゃないかって、彼女は考えている。
普通じゃなかったから。他の人と同じような赤ん坊じゃなかったから。だから、捨てられた」
 うつむき加減だった顔を持ち上げ、真正面からブギーポップを見据える。
「──これ、笑えるかな?」

175 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/15(火) 02:08:35 ID:S0zaUgOJ0
 ブギーポップはそれに首を振った。
 その仕草はどこか悲しそうな感じだった。
 なんでもないことのように笑い飛ばしてくれるのを心のどこかで期待していた静だったか、
「──世界は誤りに満ちている、私はそう思う」
 ブギーポップは笑わない。
「人間が生まれて最初に出会う『敵』とは他でもない『親』だ、という見解がある。
親は自分の思い通りに子供を処し、子供は親の庇護を得るためにそれを受け入れなければならない、と。
簡単に言えば親の躾に適応できない子供は死に至るということさ。だがそれは──究極的に底のない発想だ。
この世界に蔓延する悪意を赤子にまで背負わせる、情け容赦のないその考え方を、私は認めない」
 声音や表情からはまったく伺えないが、その言葉は非常に苛烈なものだった。
「も、もしかして怒ってるの……?」
「私はなにかに対して怒ることは出来ない。決まりでね」
 そうは言うものの、言葉の端々から『許せない』という雰囲気を漲らせているような気もするのだが、
ブギーポップにとってそれは『怒った』うちには入らないのだろうか。
「話の腰を折って悪かったね──それで?」
 促されるままに続ける。
「……成長した彼女は、わずかな手がかりを頼りに再び街に戻ってきたの。そのことを確かめるために。
本当の両親に会うために。捨てられたその理由を、捨てられた赤ん坊の面影を探すために。
だから……だから、彼女は待ってる。捨てられた過去が浮かび上がってくるときを」
「だから、自ら怪奇に首を突っ込むというわけだね。
平穏でなんの変哲のない世界に身を置いていては、その見失った運命の糸を手繰り寄せることは出来ない、ということかな?」
「──うん」
 ブギーポップは深く、長く息を吐いた。それは吐息というよりはむしろ「フーッ」と口で言ってしまっているのに等しかった。
「なるほど──君にとっての避けがたい『戦い』とは、自分自身が相手のようだね。それはそう、まるで『カーメン』に挑む者のように、ね──」
 文脈的に意味不明の単語を吐かれ、静は目を丸くする。
「……ラーメンが、どうしたの?」
「いや、なんでもない。ただの戯言さ」

176 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/15(火) 02:10:43 ID:S0zaUgOJ0
 静が理解できなかっただけで、それはもしかしたらブギーポップ流のジョークで、自分の気持ちを和ませてくれようとしたのだろうか。
 その可能性はとても低い気がするが、それでもそう思うと少しおかしかった。
「──こんなこと話したの、あなたが初めて」
「それは光栄だね。君は友人にそうしたことを話したりしないのかい?」
 またしても痛いところを突かれる。
「い、言えないよ」
「なぜ」
「だって……こんな話しても、きっと負担にしかならないと思うから。その人、とても優しくて、つい甘えたくなっちゃうような人だから」
 そう言うと、ブギーポップは大仰に肩をすくめてみせた。
「ははあ、なるほど。私は優しそうには見えなかったわけだね。君の言うことなど思い切り聞き流す奴だと」
「え……そういうわけじゃ、ないんだけど」
 こいつは拗ねてるのか? と静は思うが、ブギーポップはどこまでも真面目な顔をしていた。
「いや、おそらくその通りだ。私は『世界の敵の敵』だからね。君の個人的な悩みに対して他人事であることには自信がある」
「そんなこときっぱり断言されても困るよ……」
 半眼でそう呟く静だった。
 その時、奇妙な音が周囲に響き渡った。
 それは学園施設の至るところに設置されているスピーカーの共鳴音だった。
 きぃぃん、という甲高い音の後に「ばしゅ」というなんか気の抜けた感じの、回線の接続音がした。
『あ、あー、テステス。五十嵐先生、これもうしゃべっていいの?』
 割れたその声を聞いて、どこか夢心地だった静は我に返る。
『お、繋がってるわ』
「……十和子?」

177 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/15(火) 02:13:38 ID:S0zaUgOJ0
『えーと、中等部の李小狼くん、木之本桜さん、これを聞いたら今すぐ放送室まで来なさい。
繰り返します。中等部の李小狼くん、木之本桜さん、これを聞いたら今すぐダッシュで三分以内に放送室まで来い。以上』
 なんとも倣岸不遜な内容を一方的に流し、マイクの向こうの声は途切れた。
「な、なにやってるの十和子……」
 誰にとなく訊いてみるが、その場にいない十和子に答えられるわけもなく、またブギーポップが答える道理もない。
 ために、静の疑問は沈黙を以て返された。
「わ、わたし、もう行くね」
「今のが君の『優しい』友達かい?」
「う、うん」
「私がよろしくと言っていたと伝えておいてくれないか」
 朴念仁丸出しのブギーポップにしては、分かりやすくて気の利いた冗談だと思う。
「分かった」
 一度は塔屋のドアに向かいかけた静だが、
「……また、会える?」
 そう聞くと、素っ気無い首肯で応えられた。
「しばらくは、放課後ここで見張りを続けるつもりだ」
「じゃあ、またね。世界を救うお仕事、頑張ってね」
 今度こそドアをくぐった背後から、声がかけられた。
「静・ジョースター」
「え?」
「私は『世界の敵』と戦うことが出来る。だが、世界を救うことなど決して出来ない」
 予想外の告白に、静は後ずさって塔屋から首を出す。
 世界の滅びを食い止めることが世界を救うこととイコールでないのなら、いったいなにが『救い』なのだろうか。
「なぜなら、私は怒りも喜びもない、自動的な泡だからだ」
 振り仰ぐ給水タンクの上には、もはや誰もいなかった。
「──世界を救うこと、それは君たちの仕事だ」

178 :作者の都合により名無しです:2007/05/15(火) 02:47:22 ID:z42tvaw30
投稿規制?
支援

179 :作者の都合により名無しです:2007/05/15(火) 03:15:05 ID:z42tvaw30
ハロイさんは寝ちゃったのかな?
じゃあ感想を書こう

>DB 恐怖!新たなる敵
これは未来トランクス世界が舞台かな?
スパイクとか22号とかオリキャラを出す場合はどういう風体なのか
描写をされた方がわかり易いかな。
まだまだ始まったばかりだと思うので期待してます。

>シュガーハート&ヴァニラソウル
哲学者のようなブギーポップの前の迷える子羊の静。
なんか無垢な少女と海千山千の古強者、っていう感じの会話で深いですな。
最後の「戦う事は出来ても救うことは出来ない」というのも
ゆくゆくの伏線かも。道化師や道しるべのような存在が沢山いて楽しい。

180 :作者の都合により名無しです:2007/05/15(火) 15:25:54 ID:+37KhIsa0
保守

181 :作者の都合により名無しです:2007/05/15(火) 16:01:19 ID:MqmJZ8Ht0
シュガーソウルは毎回、思いもよらない展開で面白いな
特にキャラクター間の言葉のキャッチボールがいい。
面白いだけじゃなく、一言も無駄がないのが凄い。

182 :作者の都合により名無しです:2007/05/15(火) 23:16:38 ID:7uJ5usDg0
>しぇきさん
うまくなりましたね、文章も構成も。
読んでいるうちに引き込まれました。
こんな感じのジョジョネタ、また読みたいですね!

>ドラゴンボール作者さん
正直、文章面とかはまだ読み辛いですが
期待感はあります。ニューDBワールド期待しております。

>ハロイさん
人物造詣がとても素晴らしいですね。
静といい十和子といい、オリキャラなのに滅茶苦茶魅力ある。
ブギーポップの達観振りも最高。

183 :項羽と劉邦:2007/05/15(火) 23:25:45 ID:KUXfs7pp0
前回までのあらすじ。
敗走中に現われた〜 妾の戚だけ愛してる農民出の皇帝・劉邦太祖〜♪
正妻呂后を殺すため、3つのしもべに命令だ! やぁ!
丞相蕭何ぁ〜 ナスを食え〜 張良子房は輪を撃て! 韓信、元帥! 股くぐれ〜

という事で本編。

森の霧はいよいよ強い。
そこへ影のように佇むのは劉邦一派と呂后である。
「笑うな!」
蕭何の一喝と共に、文字はアゲハ蝶に姿を変え、呂后の周りを飛び回る。
「アウアウアウー!」
それを振り払う女の顔は、絶叫してヨダレを撒き散らしていて、醜い事この上ない。
と劉邦が思っていると、状況に変化が起きた。
中空を殴りまわす呂后の動きが、目に見えて遅くなりつつある。
『この蝶どもは』
呂后の背後六メートルほどの地点に色とりどりの蝶が集結し、渦を巻いたとみるやそれは
だんだんと人の形にもつれあった。
蝶の人形がふむとアゴに手を当て、呂后をゆったりとねめつけた。
『ふれるとしばらく体がきかない』
やれやれというようにわざとらしく首をすくめると、懐に手をやった。
呂后の体に緊張が走る。玲瓏なる空気を悟ったのだろうか。
一体にしてどうであろう。蝶に取り巻かれた空間より蒼く光る刃がするする出ずる。
ただにして蝶が密集するだけの空虚な空間より、二尺八寸ほどの刃がするすると。
『必死に縄を解いた挙句に動けない。皮肉だな』
蝶の人形、刃を浅く構える暇すら惜しみ、呂后めがけて駆け込んだ。

184 :項羽と劉邦:2007/05/15(火) 23:28:41 ID:KUXfs7pp0
蝶が散る。熱戦を浴びたロプロスが機械部を露にするように、張良の姿が現れる。
彼はやがて呂后の背後に肉薄。呂后の動きは鈍い。体がようやく振り返り始めたといった
様子だ。そこへ容赦なく白刃が振り下ろされる。
『終わりだ』
その時、比嘉の殺し屋が動いた。
呂后の体が妖しく瞬いたかと思うと、ガイアーよろしく光のつぶてが全身から放たれたのだ。
彼女と張良の距離はこの時、ほぼ零といってよかった。小札ではない。メートルだ。
いわば密着状態のカウンター。当たるべくして当たる攻撃といえよう。
だが!
光のつぶては不自然な軌道を描くとことごとく張良から逸れ、あらぬ方向にかき消えた。
「いかな手段(て)を打たれようと既に守りは固めてあります」
韓信はぼーっとしたまなざしで霧を見た。
「これ、私が出した霧なんですよ。霧というかチャフ。かつて地球にやってきた宇宙人たち……
要するに魔界衆の残した道具です」
「ああ、あの上巻が面白いのに下巻がいまいちな……違うわ! 武装錬金ネタ混ぜんな!」
「ははは。漢王はおかしなコトを申される。どこからどう見ても魔界衆の道具ではありませぬ
か。そりゃ確かにHPの武装錬金長編SSに間違ってこのSS追加しましたが、別に帳尻合わ
せで武装錬金ネタふってるワケじゃないですよ。好きだからやってるんです」
「結局認めてどうする!! 本当お前、たいがいにせいよ! 二年前はあんなに横山作品一
本だったの……いや、VSさんぽい作品紹介とか作っていたから既にあの頃から横山作品一
本じゃなかったのか!? つか早いな時の流れるの! バキスレに来てもう二年かよ!」
怒りの劉邦は韓信の胸倉を掴んで、一気にまくし立てた。
「さぁ。作者にでも聞いてください。ところで鉄人完全版の最終巻発売日は二〇〇〇年七月
二十八日ですが、土曜日なので変わってしまう恐れがありますね。早く買えればいいですが、
遅くなったらがっかりかも」

185 :項羽と劉邦:2007/05/15(火) 23:29:54 ID:KUXfs7pp0
「誰がそんな微妙な横山情報をよこせといった! 聞く耳持たずもたいがいにせいよ! どう
せなら闇の土鬼文庫版上巻売ってる場所をヤフオク以外で教えろ!」
「ははは。無理ですよ。どこもかしこも品切れ。でもいいじゃないですか。どうせ買っても土鬼
土鬼ナースのフラッシュを作る時間なんてないんですから。去年の年末だってポケモンルビー
に夢中で何もできなかったではありませんか。あ、ジグザグマにまひろとかつけるセンスは
どうかと」
「ぐぬぬ。キモリが秋水だとか、またどうでもいい楽屋落ちを…… もうええわ! 好きなよ
うにやれ! わしは知らん! 後がどうなろうと自業自得じゃ!! 鉄人最終巻も月曜日の
夕方に買うはめになってそれまで仕事中悶々としてろ!」
社会人はえてしてそういうものである。武装錬金のDVDも発売日に買えたためしがねえ。
「つか発売日を合わせるぐらいなら巻数も二十八にしろよ!」
蕭何を蹴りまわし始めた劉邦を、心底不思議そうに見ながら韓信は解説を続けた。
霧のコトである。
「拡散状態の特性は、方向感覚を狂わせるコト。この霧の中では一メートルの距離から狙っ
たとて、張良どのには当たりません」
『それともう一つ。誰も気づかないならわざわざ言う必要もないと黙っていたが』
蝶を一匹、唇の上にひっつけた張良がニヤリと笑う。まるで蝶のヒゲを生やしているようだ。
『狂わせるのは方向感覚だけでなく”距離感”もだ』
しまったとか呂后が呟いたかはわからない。
ただ、光のつぶてはことごとく呂后の背面に吸い込まれ、大爆発を起こした。
そのころすでに張良は背後に飛びのいて、『フム』などとつぶやいていたという。

186 :項羽と劉邦:2007/05/15(火) 23:31:10 ID:KUXfs7pp0
攻撃は終わらない。

──俺は強くなれるだけ強くなりたい。漢王のために! 俺たちの望みのために!!

爆煙が晴れると、なんと呂后の腹部から刃が生えているではないか。
たぶん肝臓のあたりだ。背後から日本刀に貫かれている。

「勝つ! 俺はここで負ける訳にはいかない!!」
刺したのは……蕭何。いったいいつ目覚めたのかはわからないが、すごく爬虫類じみた
顔で(中の人・きっしーは顔真似ができるらしい)呂后の肝臓をブチ貫いて爬虫類じみた
顔で(きっしーの名前の元ネタのおっさんがこの前都知事選に出てた。負けたけど)笑って
いた。目が濁っていた。要するに秋水だ。
「蕭何ァァァァ!」
劉邦は喜色満面で手を広げながら、その男に駆け寄った。

ピュル-z_☆ カン コンカン
♪ こたえはいつも わーたしのむねにー……

「さぁ! さっさと死にやがれですぅー! いつになったらコイツは死にやがるですかピチカー
ト! クレッシェンド!(もっと強く) クレッシェンドぉー!!(もっと強く)」
蕭何は呂后の体内に空気を注入すべく、忙しく手を動かしている。
医学はよくわからないが、空気を入れられると人は死ぬらしい。
「死ねや死ねや漢朝のために!」
そして次の戦争のために。次の次の戦争のために。
やがて呂后は斃れた。おお、ネトラジは途切れがちだがさすがVista。斃れたが一発で出た!
駆け寄ったきた主に拱手をすると、蕭何は冷静に呟いた。
「へい! へい! わっしょいわっしょいサンシャイン!」
「やかましいわ!」
劉邦の右ストレートが蕭何のアゴを打ち貫いた!

187 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/05/15(火) 23:38:13 ID:KUXfs7pp0
毎度おなじみスターダストです。
すっかり横山作品から逸脱しております。
というかマジでバキスレに来てから二年経過でして

ttp://ss-master.hp.infoseek.co.jp/kakorogu/26.htm ここ参照

>17 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2005/05/14(土) 23:02:09 ID:6MHiHH1a0
>錬金戦団にはいくつかの副業がある。

時の流れはマジに早い。そりゃ鉄人28号の完全版ももうすぐ最終巻だわ。
まー、それはともかく

>バレさん
復帰おめでとうございます!! あぁ。再びレスが見れようとは(;∀;)グス
ログ保管、よければお手伝いいたします。というか自分の作品についてはなる
べく全面的に、率先して、ログの提出を!! まずはお体の方、お気を付けください。

ふら〜りさん
総角の「剣士相手に〜」は前回の剣道のくだりと掛けております。つまり「剣に熟達している 
→ 相手の機微に敏感」。あまり人物描写に行数を裂くとテンポが悪くなりますので、既出の
情報と絡めて見ました。何気に新機軸。あ、新機軸は千歳パートにも用意しております。乞うご期待!

>>90さん
やはり強力な攻撃には致命的な欠陥があるべきなのです。そして発動条件はわかりやすく!
剛太はごく初期には勝つ予定だったのですが、それより面白そうな展開を思いついたので、ついw
ロバな女の子は割と希少かもw でも可愛くて優しい動物ですので、小札にもそういう良さを出してみたいです。

188 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/05/15(火) 23:39:39 ID:KUXfs7pp0
>>91さん
ポジション的には割とそうなのかも。そこそこ強く、ブレミュの話では中核になる予定ですので。
身体・容姿的には桜花との対比も入ってますね。幼児体型童顔でちょいコンプレックス持ち
という。そこを気に入る総角は、さながら少女マンガの王子様。けしてロリコンとかではなく。

ハロイさん (゚д゚)ジー
>シュガーハート&ヴァニラソウル
何かと小難しいカンジのブギーポップですが、自分の原則や限界を知ってるという点が好きです。
ひたすらに無機。欠落内蔵。そんなヒーローには情感たっぷりの静のようなヒロインがお似合い。
>「──こんなこと話したの、あなたが初めて」
静も自分のバックボーンをスラリと話しておりますし。コレは恋愛フラグですよ。鉄壁な。

やっぱ斗貴子さんは暴れ回ってこそですな。で、時たまやさしいお姉さん要素を覗かすべき!
それを忘れ、ただカズキカズキと連呼するようになったから再殺編は(ry ピリオドは(ry
小札を気に入っていただけると、すごく……嬉しいです。ところでブラックのOPって板尾の声に聞こえませんか?

>>101さん(横山ファンとしては見逃せないレス番! いや、バビル2世の続編にその名は101というのがありまして)
カズキがいないともう荒む一方ですね彼女。しかし……どうも自分の描く彼女というのは怪物
属性かガム噛んだりガンプラのランナー齧ってたりと、ろくな印象がw ともかく小札らは武
装錬金の敵っぽく、どこか和やかで憎めない雰囲気があって助かっております。そして剛太はもっとガンバレ。

えー、皆様。これからもよろしければご愛顧のほどを。では〜

189 :作者の都合により名無しです:2007/05/16(水) 03:18:00 ID:F6WeatMv0
スターダストさん乙です。
項羽と劉邦は本宮ひろしの漫画でちょっと知ってるくらいですが
今作は永遠の扉のギャグパートをメインにした感じの作りですね。
氏の肩肘張らずに楽しんで書いているのが伝わってきていい感じです。

しかし2年というともうベテランの領域ですねー。
まだまだこれからも楽しませて下さい。

190 :作者の都合により名無しです:2007/05/16(水) 11:48:30 ID:9cUVbcnv0
スターダストさん2年間お疲れ様です。
これからも楽しい作品をお待ちしてます!
しかしもう横山光輝の匂いが全然感じませんなw


191 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:29:26 ID:vWdLMmLa0
part.3
「…、アドニス?」

「どうかしたのか?瞬」

誰何の声はアステリオンではなく、紫龍だ。
ベルリン国際空港に降りたつや否や、瞬とアステリオンは、
紫龍の待つシュバルツバルトへと文字通り飛ぶようにして向かい、
紫龍たちと合流した。

「いや、アドニスの小宇宙が一瞬消えてまた現れたんだ。
 戦闘でもしたみたいだ」

瞬にとって、アドニスは「黄金聖闘士を育てた」というよりは、
「黄金聖闘士の素質のある聖闘士を育てた」といった風に近い。
師・ダイダロスのようにはいかないと、瞬は日々思う。
門弟を多く抱え、来月四人目の聖闘士が彼の元から誕生するが、
まだ、「聖闘士の素質のある人間を育てている」という気がしてならない。

「なんですって?」

瞬の声に色を失ったのは、麒星である。
アドニスは未熟とはいえ黄金聖闘士であり、黄金十二宮最後の守護者なのだ。
麒星は過去、アドニスが黄金聖闘士になりたての頃、
ついうっかり出自の事をからかったが為、
彼によって足腰立たなくなるまでぶちのめされた経験がある。
それも素手でだ。

192 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:33:39 ID:vWdLMmLa0
アドニスの強さは、麒星自身が聖衣を半壊させられた事もあって、身をもって知っているのだ。
その彼が敵にぶつかったという可能性に、麒星は狼狽した。

「落ち着け、麒星。
 戦闘状態に陥ったとは限らない。」

紫龍は、麒星の妄動を諌めた。
平時なら良いのだが、現状は作戦行動中だ。
うろたえては話にならない。

「そうだよ、麒星。
 それに、神でもなければあの向こう見ずが負けるなんて事ないさ。
 …まぁ、魔鈴さんあたりならぶちのめしそうだけど」

肩をすくめて見せ、冗談で締めて麒星を宥めてやるのは瞬の役目だ。
瞬も紫龍も就職一年目でいきなり管理職になったようなものだ、苦労は多い。
特に気を割らねばならなかったのは、言葉である。
ちょっとした冗談一つで聖域を揺るがしかねないデマが発生した事もあるのだ。
自然、慎重にならざるを得ない。
沈黙は金とはよく言ったものだ。
黄金聖闘士たちが年齢不相応の重厚さを身に着けざるを得なかった理由を、瞬たちは理解した。
瞬の言葉に取り乱した自分を省みて、自己嫌悪を芽生えさせるのが麒星だ。
彼の本来の師は、リザドのミスティだった。

193 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:38:59 ID:vWdLMmLa0
白銀聖闘士五強の一画であり、
星矢に敗れるまで一度たりとも戦傷を負わなかったという凄腕の聖闘士である。
無論、実力に見合った精神を備えていた。
麒星は、師・ミスティがうろたえた姿など一度たりとも見た事が無かったし、
声を荒げた事すら記憶になかったのだ。
ナルシズムに傾倒してはいたが、人品卑しからざるそのたたずまいは、
サガの信も篤く、同僚たちからも慕われていた。
そんな偉大な師の姿が記憶に新しい麒星にとって、
自分の軽挙妄動に嫌悪を覚えても仕方が無いものだった。

ごつん、と麒星の頭に拳骨が落とされた。
紫龍の拳だ。
紫龍は麒星に多くを語らない。もとより麒星は一人前の聖闘士なのだ。
ただ、麒星がどうしようもない間違いを犯したときだけこうして拳骨を落とす。
聖闘士にとって言葉よりも拳こそが最も重要なコミニュケイションツールなのだ。
この場合は、冗談を冗談と見抜けず動揺した事。
今でこそ泰然自若としている紫龍たちだが、
聖戦当時は何でもかんでも動揺するばかりだった。
無論、これは経験が無かったからだが、未熟なりとて戦闘において情報の取捨選択は必須だ。
動揺を敵に覚られることほど危機を呼び込むことは無い。
だからこそ、紫龍は彼を戒めたのである。
そして拳骨を貰った麒星は、すみませんでした、先生。と紫龍に詫びる。
これで大抵は落着するのだ。
聖域の影の諜者を知る麒星だ、動揺を表に出さないに越したことは無い。

194 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:45:06 ID:vWdLMmLa0

「アドニスの事だ、またぞろ黄金聖闘士らしからぬ振る舞いをしたのだろう。
 瞬。今度こそきつめに叱ってやれよ」

師として、聖域中枢の者として、紫龍もまた慣れぬ冗談など言う必要もあるのだ。

「あははは、拳骨なんて落としたら只でさえ悪い頭が更に悪くなるから止めておくよ」

瞬も言うときは言う。

元々、瞬たちの任務は紛失文書の探索だ。
地元の協力者との交渉や、紫龍から現状報告を受けて今後の方針を決めねばならない。
不用意な一言から場が乱れたが、本来の任務に戻るべく話を戻したのだが、
神ならぬ彼らに、貴鬼とアドニスがそろって海皇と戦闘した挙句敗れ、
空間を跳躍してギリシアの高級住宅地から、日本の閑静な住宅街へと飛んだなどという、
瓢箪から駒のような事実が分かるはずも無かった。

「紫龍」と、瞬は短く呼びかけた。

「ごめん、つけられてたみたいだ」

彼らが今いるのは、街道からかなり外れた森の中だ。
争っても人が駆けつける事が出来ないくらいの。

「いや、これは俺のミスのようだ…」

195 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:53:09 ID:vWdLMmLa0
紫龍に瞬を慰める意図は無い。
影の集団が未熟だっただけの事なのだ。
紫龍たちの外延をなぞるようにして、影の集団が居たのだが、
敵は彼らを突破して方位陣形を完成させていた。
聖闘士の位をなもたずとも、聖闘士の厳しい修行に耐えた人間たちである。
その彼らを突破したのだ、舐めてかかれば痛い目にあう。
紫龍と瞬だけなら鎧袖一触で蹴散らせるだろうが、この場にはアステリオンと麒星がいる。
下手に光速戦闘でも行おうものなら、彼らは無事ではすまない。
黄金聖闘士や神聖闘士が下位聖闘士と連携戦闘ができないのは、その高すぎる実力によるものなのだ。

「変わった衣装だな…?
 制服か?」

アステリオンは猟犬座の名の通り、探知能力に優れている。
サトリの法を会得しているのも勿論だが、視力も非常に高い。
このうっそうと生い茂った森の中で先ず最初に彼らの姿を確認できたのは、アステリオンだった。
濃紺のジャケットに、緩やかな角度のエンジ色Vラインが四つ、
スラックスは白、黒いブーツは恐らく鉄仕込だろう。
だが、顔は分からない。
V字を横切る四本線という特徴的なマークをつけた黒いマスクで覆われているからだ。

196 :戦闘神話・第三回―宣戦布告―:2007/05/16(水) 18:54:28 ID:vWdLMmLa0
アステリオンの超人的な視力は、
その四本線がスリットであり、スリットを移動する四つの赤い光点が存在する事も見抜いていた。
制服の集団は、統制のとれた動きで四人の聖闘士たちの目の前に姿を現した。
「錬金戦団か」と、紫龍は口中で呟いた。
紫龍の呟きに併せたわけではないだろうが、彼らは一斉にライトセーバーを構えた。

「友好的な態度じゃないですね」

言う麒星の声音にも、戦士としての歓喜に震えていた。
右手を手刀の形に変え、半身を引いたその姿は、まるで抜刀術のそれだ。
アステリオンも、ボクサーのようなステップを踏んでいた。
瞬はすっ、と、目を細め、紫龍もまた拳を握り締めた。
戦の空気が立ち込めていた。

197 :戦闘神話キャラクター紹介:2007/05/16(水) 19:01:15 ID:vWdLMmLa0
続きまして、続きましてー。キャラクター紹介第二回・Rozen Maiden編をお贈りします
キャラクター名の下のURLはアニメ版の設定画で、本SSとは一部異なることがあることをお詫びします

・水銀燈(すいぎんとう)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part1/menu/chara/suigin.html
ローゼンメイデン第一ドール
黒い羽を変幻自在に操り、また剣もつかうオールマイティ
繊細にして機微な心をもつ彼女たちにとって、
鉄拳をもって闘う聖闘士の存在は思考の埒外以外の何者でもない
自分こそが至高の少女「アリス」に相応しいと思っているが、
他六体の姉妹たちの存在が己の否定ではないかという不安に常に苛まれており、
他のドールに対する憎悪はそれが一因でもある
父・ローゼンを強く思うが余り、憎悪に近しい感情へと変わりかけている。
父の愛情が最も強く注がれた真紅を敵視している
イメージカラーは黒と銀
クーデレ

・金糸雀(かなりあ)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/kanaria.html
ローゼンメイデン第二ドール
ソレント共々ジュリアン・ソロの最後の支えとなる少女
ローゼンメイデン一の頭脳派・策士を名乗るも、実際は行動派でちょっと間の抜けた行動が多い
第二ドールだけあり、高出力の音波攻撃を使い、近接攻撃にも対応できる
常に明るく、前向きなその姿勢は、容姿もあってジュリアン・ソロの亡き妹を思い起こさせる
イメージカラーはカナリアイエロー
アホの娘

198 :戦闘神話キャラクター紹介:2007/05/16(水) 19:02:42 ID:vWdLMmLa0
・翠星石(すいせいせき)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/suisei.html
ローゼンメイデン第三ドール
妹・蒼星石と常に同時にあったが、今回は彼女とは別離せねばならない事情が発生する
互いのアイデンティティを揺るがす問いかけに迷った彼女は、真紅の元へと身を寄せる
イメージカラーはエメラルドグリーン
庭師の如雨露を使い、人の心を富ませる事ができる能力をもつ
ツンデレ、語尾にですぅをつけてしゃべる

・蒼星石(そうせいせき)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/sousei.html
ローゼンメイデン第四ドール
姉・翠星石と常にともにあったが、姉の保護下にいる自分に対して少なからず思うところがあったらしく、
ドクトル・バタフライをミーディアムに選んだ際に、自立の意味をこめて翠星石とは離別する
ヴィクターの心のしがらみを切らんと彼の心の中へと入り込むことになるのだが…
イメージカラーはマリンブルー
庭師の鋏を使い、人の心のしがらみを断ち切ることができる
実は家庭的・ボクっ娘


199 :戦闘神話キャラクター紹介:2007/05/16(水) 19:05:52 ID:vWdLMmLa0
・真紅(しんく)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/shink.html
ローゼンメイデン第五ドール
ローゼンの愛情が最も注がれたドールにして、最も気位の高いドール
第五ドールと「妹」でありながらも、姉たちよりも上のように振舞うが、
それは彼女がそれだけ己を信じている証拠なのだろう
良くも悪くもマイペース
原作どおりジュンがミーディアム。
イメージカラーはスカーレット
ローズテイルというバラの花弁を操ることで攻撃する
水銀燈にとっては宿敵
紅茶がすき・ツンデレ

・雛苺(ひないちご)
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/hina.html
ローゼンメイデン第六ドール
最も幼い外見をしたドールであり、その精神もそれに順ずる
ミーディアムは柏葉巴
イメージカラーはストロベリーピンク
苺大福と巴とジュンが大好き

200 :戦闘神話キャラクター紹介:2007/05/16(水) 19:07:49 ID:vWdLMmLa0
・ジュン
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/jun.html
不登校児童・14歳
弱く、脆く、繊細で優しい少年
聖戦当時の紫龍・氷河と同年だが、聖闘士とは異なりその心身はとても脆弱である
無神経な教師のせいで不登校に陥り、今に至る
通販してクーリングオフを楽しむという暗い趣味をもっている
真紅のミーディアムとなり、止まっていた精神が少しずつ成長していく予定

・柏葉 巴
ttp://www.tbs.co.jp/rozen-maiden/part2/04chara/tomoe.html
中学二年生・14歳
ジュンとは幼馴染だったが、家庭の都合で小学校高学年時に引越し
中学進学を期にもどってきた
周囲の期待に応えようとするあまり、
断る事が出来ない自分がいやで悩んでいる。
貴鬼という突然の来訪者に見舞われ、少々困惑気味
一番気になるのはジュンである模様
意外性のある少女・素直クール

201 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/05/16(水) 19:11:03 ID:vWdLMmLa0
なんだかんだで連載一周年。大して進んでねぇで申し訳ないです、銀杏丸です。
NBさんを吸血大殲の人のサイトのBBSで見かけたのがバキスレを知った最初でございます
あれからはや三年。
長々と居座らせていただいておりますが、少しでも皆さんを楽しませようと日々精進の毎日です

前スレ>>307さん
申し訳ございません…、不肖銀杏丸、冥王神話が連載開始する以前に
このSSやりはじめたり、前作を書き上げたりしたために
戦闘神話の各キャラクターのバックボーンと冥王神話とは辻褄があわないのです
アスミタやアルバフィカ、先代アルデバランなどの存在する聖戦とは
パラレルワールドだと思っていただきたいです

前スレ>>325さん
いやもう、キャラのたちっぷりはホント見事ですのでご一読のほどを…
投稿レスって難しいなと思っております、はい

>サマサさん
リザドのミスティと来ましたか!
冷静に考えると白銀最強格なのに、それすらすっとばすネタキャラぶりが僕も大好きです
すきすぎて自作品にもひっぱってきたりしてます。彼の弟子っつう設定で
個人的に聖闘士聖衣神話で出てほしいキャラ2です
PS2のゲームだと、対戦相手がムウだとけっこう面白いリアクションをとってくれるのでオイシイやつです

>さいさん
セルや音速丸みたいなハイテンション系よりも、
カウボーイ・ビバップのビシャスみたいなクール系の方がすきなんですよ、若本御大の演技は
無論、パワフルな御大も大好きなんですが
ジュリアンがついに寄生されてしまいましたが、
やっぱりクライマックスでペラペラ悪事を暴露する悪党がステキです
芳忠氏はチボデーみたいな陽気なやつから陰湿な悪党まで芸の幅が広くて好きですが
僕の中ではミラウー・キャオだったりするからいただけない…

202 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/05/16(水) 19:12:52 ID:vWdLMmLa0

>スターダストさん(すみません、それ巴です…)
ローゼンメイデンを読まれたそうでなによりです、が、バーズの馬鹿編集者のせいで…
なんだかんだいって、武装錬金は生命力の強い作品、カズキのサンライトハートのように
たとえ打ち切られようが何しようが、力強く光り輝いているからこそ、
これだけ人を惹きつける事ができるんだと思っています
武装錬金/Zでは果たしてヴィクターの過去が明かされるのかどうかが心配です
表紙でカズキと陽気に肩組んで笑ってるのが火渡だとしたら、ちょっとイメージかわりそうです

>ふら〜りさん
社会人になって視野と視線が変わるおかげで変化のあるものが書けていると自負しているのですが、
その分投稿が減ってアリャリャな感じです。サービス業にGWなんて関係ないですからねぇ…
リアル生活に力いれにゃ毎日のお飯の食い上げですし、趣味に力も入れられない、難儀なもんですw

>バレさん
復帰おめでとうございます。お怪我なされていたとは…。
僕の友人も4年ほど前に交通事故で亡くなっており、人事ではないです。
命あってのものだね、ご自愛ください。僕のは暇な時でいいです

次はもっと早めに更新しますので、ではまた…

203 :ふら〜り:2007/05/16(水) 21:58:32 ID:37K95wtr0
>>DB続編さん(御名前を何卒)
他作品とのクロスオーバーではなく、DBだけでDBらしさを保ったままDBの続編ってのは
難しそう。昨今流行のややこしい超能力とかはあまり使えませんしね。本作も、そういう
DBらしさをきちんと意識しておられるようで安心。人造人間ズもどんな連中か楽しみです。

>>ハロイさん
ブギーが相手にしてきた「敵」がどんなものかは知りませぬが。静も本人はいざ知らず、彼女
の縁者は何度も世界の敵と戦ってますよねぇ。本作のブギーはそのことを知ってるのかな。
あと十和子のことを話してる部分、そこだけ見ればどうみても彼氏です。一種のノロケかっ?

>>スターダストさん
脱線暴走しまくりのギャグに惑わされそうになりますが、何気にやってるバトルはハイレベル
なんですよねこれが。とはいえ双方、何をどうされてもゾンビのように立ち上がりそうなんで
危機感はないですが。でも一度、番外編で「永遠〜」との共演も見たいと思ってしまった今回。

>>銀杏丸さん
>黄金聖闘士たちが年齢不相応の重厚さを身に着けざるを得なかった理由
昔から言われてるのは、光速移動によるウラシマ現象ですな黄金。13年前とか計算すると、
いろいろ凄いことになります故。で下位聖闘士と共闘不可、か。言われてみればその通り。
あとミスティが人格的に持ち上げられてるとこ、銀杏丸さん独特のリアルな視点を感じます。

スターダストさんも銀杏丸さんも、長らくお疲れさま。今後ともよろしくです。つーか、もう
そんなに経つんですねぇ。でバキスレ自体が間もなく50。何だか信じられない気分です。
♪一日は長いのに 一年は短くて……♪

204 :作者の都合により名無しです:2007/05/16(水) 23:00:38 ID:9cUVbcnv0
お疲れ様です銀杏丸さん。銀杏丸さんももうベテランの書き手さんですね。
本編、いよいよ紫龍たちが動き始めましたね。物語りも激動の予感です。
正直、星矢以外は未読なんで人物紹介はありがたかったです。
4年、5年と頑張って書き続けて下さい。

205 :作者の都合により名無しです:2007/05/17(木) 01:25:55 ID:hqKoSk820
瞬がやたらと物語内でいいポジションですな
あと、ローゼンメイデン知らなかったんでキャラ紹介は役に立った。
予想通り萌え漫画だったかw

206 :作者の都合により名無しです:2007/05/17(木) 01:27:57 ID:59NWq68r0
おいおい…

207 :クリキントン:2007/05/17(木) 05:01:58 ID:2q5GFTgu0
こんなとこあったんですね。
自分も粗末な文章ながら、「DBIF(ドラゴンボールイフ)」てのを書かせて頂きます。
こいつはブウ編読んでて少し不満があって、こんな続き方なら良かったのになあ、
と妄想を膨らませたものなんで、年代的にはセルゲームの半年後。さらに戦いの
舞台はトランクスのやって来た未来という、DB続編さんとちょっと舞台が被ってしまう
ものなんですが、内容は多分全然違うものになってると思います(劇場版キャラは
名前以外出て来ませんし、ブウ編のキャラも出ません。スーパーサイヤ人の設定も
ブウ編から追加されたものとは違ったものになります)。

208 :DBIF:2007/05/17(木) 05:06:55 ID:2q5GFTgu0
セルゲームでセルを撃破してから半年。
一時期恐慌に包まれた世界は平和を取り戻し、悟飯もまた平和な日々を過ごしていた。
そんなある日、悟飯の見覚えのあるタイムマシンが空から降りてきた。未来から遊びに来たのかと
悟飯が駆け寄るが、タイムマシンは扉を開こうとしなかった。
「トランクスさん?どうしたんですか?」
ぼんやりとした呼びかけに応えるようにようやく扉が開くと、セルゲームの時よりかなり成長した
姿のトランクスが姿を現した。
しかしその身体には所々に包帯が巻かれ、今にも倒れそうな程重症なのが見て取れた。
「ど、どうしたのその怪我は?!」
「お久しぶりです、悟飯さん。申し訳ありませんが、もう一度助けてもらいたくて、来ました」
それだけ言うとトランクスは意識を失った。

翌日、仙豆によって回復したトランクスは、すぐにブルマを含めた皆を集めると、衝撃的な事実を
語りだした。
「今、俺達の時代に大変な脅威が訪れています。俺は、恐らくそいつらの尖兵に過ぎない奴にも
勝てませんでした」
「おいおい、お前が勝てないって・・・もしかしてまだ人造人間の生き残りがいたのか?」
周りがざわめく中、クリリンが発した問いに、トランクスは静かに首を振った。
「俺が勝てなかったのはフリーザ。いえ、正確にはフリーザと同じタイプの異星人です」
『フリーザ?!』
その場のトランクスを除いた一同の声が見事に揃った。
かつてベジータをはるかに超えた戦闘力を誇り、スーパーサイヤ人と化した悟空と死闘を繰り広げ、
その後サイボーグとして地球を襲った異星人であり、その場の誰もが忘れずにはおれない名前であった。
「で、でも、こっちに初めて来たばかりのお前でも倒せるくらいの奴だっただろ。フリーザって」
「あいつは、そんな生易しい奴じゃありませんでした。それに・・・」
ヤムチャの質問に苦りきった顔で答えるトランクスを、ベジータは変わらぬ仏頂面で見ていたが、
「何があったのか話せ。尖兵とかいうそいつの背後にいるらしい奴のことも含めてな」
と、つまらなそうに言った。
「はい。では、奴が来た時のことから・・・」

209 :DBIF:2007/05/17(木) 05:12:57 ID:2q5GFTgu0
そんなある日、悟飯の見覚えのあるタイムマシンが空から降りてきた。未来から遊びに来たのかと
トランクスが未来のセルを倒してから2年。人造人間の脅威が去った世界は規模こそ縮小しながらも、
ほぼ元の姿を取り戻そうとしていた。
トランクスは人造人間を倒した英雄でありながら、そのことを誰に告げるでもなく母ブルマのもとに
戻り、その能力を生かして復興に力を注いでいたが、そんな手助けももうほとんどする必要がなくなり、
ようやく彼にとっても休息が訪れようとしていた。
そんなある日、地球に接近する巨大な気を感知したトランクスはその気が降りる場所に向かう。
しばらく待っていると、見たことのない宇宙船らしきものが降りて来た。
「異星人、か。好戦的な奴でなければいいが」
そんなことをつぶやきつつ、物陰から宇宙船を見ていたトランクスだが、宇宙船から現れた人影を
見て絶句した。
「あいつは・・・!!」
頭髪がなく、それでいて黒い光沢を持つ頭。のっぺりとした顔。明らかに人間とは違う真っ白で体毛の
一本もない身体に、頭と同じく光沢を放つ黒いものが所々についている。そしてその腰からは、やはり
白い尾が伸びていた。
「フリーザ・・・じゃないな」
トランクスの言葉通り、その異星人は所々がフリーザとは少し違っていた。
球状だった頭の黒い部分は銀杏の葉のような形になっており、肩のそれも細長いものになっている。
上腕と脛の部分は逆に黒いもので覆われ、胸にあるそれもやや小さい。
「小さな星だな。『奴ら』が欲しがる程のものとは思えんが」
フリーザに似た異星人はざっと周りを見渡してからそうつぶやいたかと思うと、トランクスの隠れる
場所で顔を止めた。
「そこに隠れている奴。ここは何という星だ?」
トランクスを軽い衝撃が襲った。あの異星人は隠れているはずのトランクスの存在を捉えていた。
つまり気を感じ取れるのだ。

210 :クリキントン:2007/05/17(木) 05:16:19 ID:2q5GFTgu0
すいません、>>209の一文目ミスです。

211 :DBIF:2007/05/17(木) 05:25:49 ID:2q5GFTgu0
敵らしい敵のいない世界でしばらく過ごしていたせいか、気を消すのを怠っていたことに心で
舌打ちをしながらトランクスは異星人の前まで飛んで着地した。
「ここは地球という星だ。見たところ異星人のようだが、何をしに来た?」
「ふむ、地球か。見たところかなり文明の遅れた星のようだが、俺のような異星人の存在に驚かんと
いうのは珍しいな。俺のようなタイプの異星人はここでは見慣れているのか?」
異星人はトランクスの質問を無視し、逆に問い返してきた。傲岸不遜なのはフリーザタイプの異星人
共通なのだろうか。
「何をしに来たのか、と聞いている」
多少苛立った声で再度トランクスが訊ねると、異星人は軽くため息をついた。だが次の瞬間

ボッ!

トランクスの立っていた空間を異星人の繰り出した手刀が貫いた。
「ほう」
だが異星人の口から感嘆の声が出た。トランクスは数歩分飛び退がることで異星人の手刀をかわして
いたのだ。
「こんな星に俺の手刀をかわす人間がいるとはな。今まではパワーを抑えていたというわけか」
なおも余裕の口調で話す異星人を前に、トランクスを困惑が襲っていた。
超サイヤ人になっていないとはいえ、今の自分であればもう少し余裕持ってフリーザ程度の手刀なら
かわせていたはず。しかし今の手刀をかわしたのはギリギリのところだったのだ。
「今のをかわしたことに敬意を表して教えてやる。この星は『奴ら』が来る前に、俺と、後から来る
方々に有利になるよう改造させてもらう」
「奴ら?」
「お前が知る必要はない。どうせ『奴ら』との戦いが始まればこの星程度の人間は全て死ぬ」
ニヤリと笑う異星人を睨みながら、トランクスは静かに背中の剣を抜いた。
「どういういきさつかは知らないが、お前達にこの星を好きにさせる気は、ない!」
言葉と共にトランクスの身体を光が包んだ。同時に頭髪が銀から金へと変わり、湧き上がる光に
吹き上げられたかのように逆立つ。

212 :DBIF:2007/05/17(木) 05:57:57 ID:BNyriBhD0
「何?!」
「はあああーっ!」
驚く異星人に超サイヤ人となったトランクスが斬りかかる。しかしフリーザをあっさりと両断した一振りを、
異星人は動揺したままでいながらかわしていた。
「くっ!」
当然来るであろう反撃に剣を構えつつトランクスが振り向くと、しかしそこには呆然と自分を見つめる
異星人の姿があった。
「ま・・・まさか、ここは『奴ら』の・・・しかしこの星全体を通してもそんなパワーは・・・」
「何をわけのわからないことを!」
再度飛び込み、今度は連激を繰り出す。しかし異星人はその全てをかわし、逆に尾でトランクスを
吹き飛ばした。
(こいつ、フリーザとは明らかに違う。パワーもスピードもはるかに上だ。)
最後に激突し、崩れた岩の破片を押しのけて再び異星人を対峙する。目の前の敵は手加減する
余裕などない実力を持っていた。
「一つ聞きたいことがある」
「?」
「ここは『奴ら』・・・サイヤ人の星なのか?」


213 :クリキントン:2007/05/17(木) 06:03:51 ID:BNyriBhD0
今回はここまで。次回は多分回想終了まで書きます。

214 :作者の都合により名無しです:2007/05/17(木) 13:52:49 ID:1bE1jcP30
お疲れ様ですクリキントンさん!
セルゲーム後のトランクスとも互角に戦う異星人と、その後に来るであろう
もっと強いかもしれない奴ら。そいつらはサイヤ人関係かな?
今の悟空と戦うにはブロリー以上の戦闘力が必要でしょうね。

新連載ということで色々あるでしょうが、頑張って完結させて下さい。

215 :光の行末:2007/05/17(木) 16:56:53 ID:EsA7enRO0
生まれて初めて他の生物に背を向けた。
四方八里を焦土と化す自分の雷を自らの力と変えた鳳凰が、後ろから迫る。
熱い、溶岩ですら喉の渇きを潤す清水にすぎないと思っていたが熱さとはここまで堪えるのか。

煮えたぎる溶岩も、全てを凍りつくす凍土も自分には緑の生い茂る平原と変わりはない。
なのにすぐ後ろに迫る、この異常なまでの熱風、どうしてこんな熱を放っている?
灼熱の風が撫でるようにして皮膚を滑って行く度に、鉄よりも硬い皮が焦げていく。

どんな生物よりも速いと信じていた足で全力で駆け抜けた。
だが鳳凰の吐息から逃れる事は出来ない、熱い風が喉を通して呼吸を狂わせる。
ついに追いつかれた、岩石を消し飛ばすほどの高温が体を包み込んでいく。
雷が体中を這いずり回る、こうして自分に剣を向けた愚かな狩人を屠ってきた。
だが、無駄だった。

見ると鳳凰の翼に雷が集中していく。
自分の最大の武器を封じられている以上、成す術は無かった。
角を握りしめる魔手に、より一層の熱が注ぎ込まれる。
痛い、これまで狩人の攻撃を如何ほどにも思わなかった自分が痛みに震えている。
自分の頭から何かがポタポタと垂れてくる、それに混じった破片を見る限り自分の角のようだ。
溶けた、どんな物も貫く筈の自分の角が今では溶岩のようにドロドロになっている。

絶望に追い打ちを掛けるかのようにして体中を包む熱が温度を上げる。
嫌だ、死にたくない、生き延びて子を残さなければ種族が滅んでしまう。
熱が引き始めた、願いが通じたのだろう、苦しみから解放される。
開かれた眼には『光』が見えた、殺された仲間の光と全く同じ光。
迎えが来たのだ、これでようやく楽になれる。
そして獣は、眼を閉じた。
二度と開くことのない眼を。

216 :光の行末:2007/05/17(木) 16:57:58 ID:EsA7enRO0
不思議だ、ディムロスが居ないのに体中が熱く煮えたぎる。
放たれた雷で麻痺したのか、体が存在しないかのようにさえ感じられ、羽根の様に軽く浮き上がった。
燃え上がる闘志は翼を形作り、ついに独力で空を飛ぶまでに至った。
背を向けて走り出す幻獣が気のせいかスローモーションを見てるかのように遅い。
少し遠いが今なら追いつける、そう思って翼を動かしてみる。

唯の一度の羽ばたきで背後に暴風が巻き起こったのが分かる、近づくのが速すぎて、
見えない手がキリンを引っ張ってるかの様にさえ思えた。
真後ろから炎の翼でキリンを包み込み、焼き焦がしていく。
驚くキリンが体中に電撃を這いまわらせているが、全て紫電を通して吸収している。

鳳凰の翼から炎で出来た羽が舞い散り、それを一枚握ってみた。
美しい羽が手に溶け込んでいき、灼熱の拳を作り上げた。
苦しみ、悶えている幻獣の角へと手を伸ばす。
厳格だった畏怖すべき雷角は、まるでゼリーの様にドロドロになってしまった。

巻き起こる熱風で呼吸困難に陥り、恐怖でパニックまで引き起こしている。
これで終わりにしよう、爆炎の魔手に神からの贈物の様に聡明で優美な光が集う。
灼熱から灼光へと変貌を遂げた英雄の拳で、頭部を包み込む。
力強い閃光が周囲を照らしたと同時に、美しい獣の吐息が消えた。

戦いの終わりと同時に、鳳凰の翼は飛び去り、獣の雷も一部を紫電に残し四散した。
自分でも信じられないくらいの力、背後に残った戦いの跡を見て唖然としてその場に座り込むスタン。

「俺が・・・やったのか?」
鳳凰の翼が溶かした床には巨大な穴が出来上がり、穴の向かい側に仲間の姿が見えた。
穴を覗き込むと一階の床には円形に地面を残し、その周りで溶岩が沸々と湧き上がっていた。
熱の中心地は蒸発したので、溶岩が下に落ちなかった為にこのような形状になったのだろう。

217 :光の行末:2007/05/17(木) 16:59:29 ID:EsA7enRO0
「シィット!よく見たら熱で焦げるわ、雷落くらっちまうわで穴だらけじゃねぇか!」
(おーおー、お気に入りのお洋服が台無しだなお坊ちゃまよぉ。)
すっかり焼け焦げてしまったコートから武器を抜き取り、肩に担ぐ。

(ブルー、ありゃメルビル図書館の武術書に載ってる奥義って奴だぜ。
確か『鳳凰天駆』って奴だ、闘気を体に巻きつけて敵に突っ込むんだがよ。)

だが、って事はまだ何かあるかと思い聞こうとしたがそれより速くファッツが答える。
(アレにはもう一段階上の秘奥義ってのがあるらしいぜ。)
「そいつぁ・・・ファンタスティックな話だぜ、アレ以上強くなっちまったら本当に化物だな。
だがよ、確か秘奥義の文献は探したけどなかった筈、残念な話だ。」
スタンの方へと目を向ける、既にルーティが座り込むスタンに駆け寄り、声を掛けているので心配はいらない。
休んでいたテオドールとラファエルも周囲を警戒しながらスタンに近寄る。

「スタン!アンタ、ディムロスも無いのにどうやったの?」
聞いてはみたが返事が返ってこない、意識がハッキリしていないのだろう。
まずは休ませることにして、スタンを横にしてやった。

周囲に散らばった溶けかけの瓦礫を足でどかしながらスタンの方へと近づいて行く。
「それにしても今日はバテちまう奴が多いな。しかも張り切り過ぎて。」
途中で嫌味を言うのも忘れない、ブルーとの決闘で力尽きたラファエルには耳が痛かった。
横で笑いを堪えるテオドールから視線を移し、頬を赤くしながら恨めしそうに見ている。
横になって一分も経っていないのにいびきをかいて眠り込んでいるスタン。
とても先程まで闘っていた人物とは思えないほどだらしない顔を晒している。
裏表のない、真っすぐな心を持った男の顔だった。

「さてと、残念だがここでお別れだぜ。」
振り返るとブルーが壁を背に銃を構えていた。
無愛想だがジョークを言う時はいつも笑っていたブルー。
いまはその顔に笑みは浮かんでいなかった。
咄嗟に武器を構えるラファエルとルーティ。
だが、瞬時に己の無力を悟る。

218 :光の行末:2007/05/17(木) 17:00:46 ID:EsA7enRO0
距離が開き過ぎている、ソーディアンの下級晶術なら間に合うかもしれない。
だが、キリンの雷にも耐えるブルーを一撃で倒せる筈はない。
「・・・やはりな、なんとなくこうなる気はしていた。」
老騎士の鋭い眼光がブルーを見据える、その手に剣は握られてはいなかった。
「スタン君が眠ってしまったのは、君にとって好都合だったな。」
「テオドール様、何を・・・?」
困惑してブルーに背を向け、テオドールの方へと振り向く。

銃声が廃墟の中に響き渡ると同時に、ラファエルの足もとに無数の弾痕が刻まれる。
「ボーイ、覚えておきな・・・戦場では、本当に信頼できる人間以外には背を向けるな。
例え仲間であってもだ、背を向けるならそれなりの力と覚悟を身につけてからにしな。」
足もとに放たれたサラマンダーの砲撃へと目をやると、分厚い石で出来た床を貫通していた。
無理だ、鋼鉄の盾をもっても、いや龍鱗で作られた盾をもってしても防げそうにない。
足が自ずと後ろに下がっていく、離れるほど剣の間合いが遠ざかり、
不利になるのが分かっていても、サラマンダーの驚異的な威力と連射能力を知ってしまった今では逆らえない。

「アンタの目的は何?私達をどうするつもり?」
ルーティが足を少しずつ滑らせるようにして前へと出る、
軽い装備と本人の身軽さを最大限に生かして飛び込む気だろう。
「止めときなお嬢ちゃん、俺は早撃ちだって得意だぜ。」
その言葉にピクリと体が動く、ブルーがその動作の内にサラマンダーを分離し、
二丁の銃へと変形させて左右に構える、ラファエルは知っている。
前方180度の敵を全て粉々に砕く無敵の銃。
サラマンダーがあの姿になった時、逃げ場はどこにもない事を。

進む事も退く事も出来ない窮地に追い込まれ、沈黙するしかない二人。
だが、この状況下で老騎士だけが口を開いた。
「二人とも止めるんだ。何もしなければ彼の方から撃つことは無い。
ブルー・・・別れの前に教えてくれ、君は一体何者なんだ?」
テオドールの言葉にいつもの笑みを口に浮かべるブルー。
武器を下ろす気はないようだが、問いには答えてくれるのか口を開いた。
「俺は人間さ・・・ちょっと進化しただけのな。」

219 :光の行末:2007/05/17(木) 17:10:25 ID:EsA7enRO0
最近は美味しんぼの動画を深夜まで見てて朝に弱くなりがちな邪神です(0w0)
ノートパソコンでヴィスタでも出来るMMOなゲームを友人に紹介されてハマってました。
更新の遅さはそのためです申し訳ない・・・(;0w0)
やること多すぎて手が回りませんな、宿題したり、テッカマンブレード見たり、美味しんぼ見たり。
でもテッカマン見たり美味しんぼ見たりしてる時は隅っこにメモ帳出してちょびちょびやってますよ。
それでは講座は引き続きテイルズ、そして続いて感謝コメコーナーとなります。

P.S 改行多すぎてエラー続出のため文を無理に繋げたりして読みにくくなってます。
  ゴメリンコ。(コリン星は速く滅びろ。)

〜講座〜

鳳凰天駆 テイルズシリーズお馴染みの技。使い勝手がいいか悪いかはシリーズによる。
     特筆するのは威力の高さ。全シリーズ通してかなりの高攻撃力である。
     グラフィックも中々カッコいい、お勧めはエターニアのリッド君の鳳凰天駆。

灼光拳  名前は出してないが一応それっぽいのを文中で使ったつもり。
     声優と相まってどう聞いても○ャイニング○ィンガーなのだが、
     今では喉をやられてしまっているので婦女子の好物、
     種ガンガルのイ○ークのように聞こえてしまう。

220 :光の行末:2007/05/17(木) 17:40:36 ID:EsA7enRO0
〜感謝〜

ふら〜り氏 >ルーティの場合は朝、乱暴に起こしに来る世話焼き幼馴染キャラですな。
      優しさ重視は一作目のヒロインと被っちゃうから世話焼きキャラでいったんでしょうね。
      しかしそれを今のツンデレブームに乗せるとはナムコ恐るべし。

ハロイ氏 >谷間に吹く風をふいごにした鍛冶場は実在したそうで、古代人の発想恐るべし。
     すごい発想ですねこりゃ。現代でもビル風吹きまくってんだから
     発電以外にもっと利用すればいいのに。
     中二病の意義ですか、考えた事もありませんでしたね、深いですな。(;0w0)

サマサ氏 自分も武と思ってたら殺劇『舞』荒剣のようです。
     テイルズ数年やってて気付かないとは・・・まだまだ未熟でした。(0w0;)
     自分はナース萌ではないのでそんなに歓喜しませんな・・・。
     やはりテイルズに足りないのは触手としか(ry

前スレ370氏 ルーティは確かにトラブルメーカーですな。
       でもファッツは中身しかないのでトラブル起こせません。
       そしてペースダウンしちゃいましたスマソ・・・。

前スレ394氏 >確かブルーはいろんな能力取り込んだり進化したりしたと思ったけど
        サルーインに対しての切り札的存在になるんでしょうか?
       ブルーはサルーイン戦に直接参加するかはハッキリしませんね。
       つーかまったく戦闘メンバー決まってないな・・・。

前スレ397氏 ルーティ好き・・・やはり時代はツンデレか(;0w0)
       個人的にテイルズで一番好きなヒロインはファラですかね。
       料理上手で逞しマッスルという(ry

221 :作者の都合により名無しです:2007/05/17(木) 22:26:53 ID:hqKoSk820
>クリキントン氏
新連載乙。ドラゴンボール物は人気があって
もしかしたらプレッシャーあるかも知れないけど頑張って下さい
トランクスが主役になるのかな?当然悟空たちも出るよね

>邪神氏
ブルーはスタンパーティと共闘するかと思ったらそうでもないのか。
まあ、色々と便利そうなキャラだから後々まで出てくるでしょうな
意外とキーキャラかな?


222 :DBIF:2007/05/17(木) 23:20:31 ID:TUR+US2r0
>>212の続き

「サイヤ人だと?!」
それまで沈黙したまま聞いていたベジータが驚きの声を上げた。
「俺達以外に、まだサイヤ人の生き残りがいたというのか?!」
「あいつの言葉からすると、そのようです」
トランクスの周りが再びざわめきだした。ベジータ星が破壊され、全滅したはずのサイヤ人。
だがベジータや悟空以外に、まだ生き残りがいたというのか。
「ま、まあいてもおかしくないよな。今までだってターレスとか、ブロリーとかいたんだし」
「そういえばそうだな」
クリリンの言葉に天津飯がうなずく。ベジータは忌々しそうにふん、と鼻を鳴らした。
ターレスとは、以前神聖樹を持って地球を壊滅寸前まで追い込んだ、悟空同様に辺境の星に
送られていたことで生き残ったと思われるサイヤ人であり、ブロリーとは、ベジータ王に恨みを
持つ、同じくサイヤ人の生き残りであるパラガスの息子であり、超サイヤ人となった悟空や
ベジータをも圧倒した、絶大なパワーを持つサイヤ人である。
「取り合えず続きを聞こう」
ピッコロの言葉に異議を挟む者もなく、再び注目がトランクスに集まった。


223 :DBIF:2007/05/17(木) 23:26:43 ID:TUR+US2r0
「その反応からすると違う、とも言い切れんようだな。お前を見る限り『奴ら』と同じタイプの人間としか思えんし、
お前以外にそれらしいパワーをこの星のどこからも感じない。さしずめ『奴ら』の偵察係と言ったところか」
トランクスは異星人の推測を、ただ呆然と聞いていた。
『奴ら』とは悟空やベジータ以外に存在したサイヤ人のことだったのだ。余りにも不意に聞いた「サイヤ人」という
言葉を聞いたショックに、トランクスは否定することも忘れていた。
先程とは逆に異星人が落ち着きを取り戻し、トランクスがうろたえる中、突然異星人の姿が移動し、トランクスに
蹴りを浴びせた。
「ぐうっ!」
咄嗟に両手を交差して受けたものの、時間差で放たれた拳に再度吹き飛ばされる。だがさらに来るはずの
追撃は来なかった。
「妙だな。『奴ら』の仲間にしてはパワーが低過ぎる。手を抜いているのか、それとも『奴ら』が特別なのか・・・」
訝しげに言いながらこちらを見つめる異星人から眼を逸らさず、トランクスは口中に溜まった血を吹き出した。
「こっちも一つ聞かせてもらう。フリーザという名に聞き覚えがあるか?」
「フリーザ?ふん、知らんな。大体こんな離れた別の銀河までやって来ることなど今回が初めてだ。知るはずもあるまい」
「なるほど。つまりお前らも、お前の言うサイヤ人も、別の銀河の住人ということか」
トランクスの言葉に異星人は一瞬、不審そうな顔をした後、
「どうやら『奴ら』の仲間というわけでもなさそうだな。確かに、あんな離れた場所から偵察を送るというのも不自然か」
と一人納得したようにうなずいた。
「だが、どちらにせよ、『奴ら』と関わりのある人間であることには違いない」
と、突然異星人を包む気が大きく膨れ上がった。その顔はまるで両親を殺した仇を見るかのように憎しみに満ちている。
「未だに事情は飲み込めないが、事情なんてどうでもいい。俺はただ、この星をお前達のような奴らから守るだけだ」
静かにそう言うトランクスの身体が膨れ上がり、その身を包む金色のオーラもまた勢いを増した。
人造人間17号を取り込んだセルと戦った時の、超サイヤ人第二形態である。


224 :DBIF:2007/05/17(木) 23:29:42 ID:TUR+US2r0
「はあっ!」
「なっ!」
これまでとは比べものにならないスピードで突っ込んで来たトランクスに異星人が驚愕の声を上げた
次の瞬間、トランクスの拳がその顔に叩き込まれた。さらに吹き飛ぶ身体を肘打ちが打ち落とし、地面に
バウンドした所を蹴り上げる。
「がぁっ・・・!」
空中で体勢を立て直そうとする異星人を捉えつつ、地上で構えるトランクスの両手に膨大なエネルギーが
集約していた。
「消し飛べぇーーーーっ!」

ヴォッ

トランクスの放ったエネルギー砲が、かろうじて防御の体制を取った異星人に直撃した。
核爆発さながらの轟音を立てて視界が光に塗りつぶされる。
「!」
しかし光が薄れ、消えた後には、あのエネルギー波を受け切った異星人の姿があった。
「まさかさらにパワーが上がるとは。防御に全パワーを注ぎ込むのが一瞬でも遅れていたら危なかった」
「しぶといな・・・」
エネルギー砲を受けきられても、トランクスにはまだ余裕があった。今のはまだ全力で打ったわけではないのだ。
「やはりサイヤ人というのは油断出来んな。例えこんな星の住人でも」
わずかに距離を空けた位置に降りながら、異星人はトランクスを睨みつつ言った。
トランクスの方は無言で構える。次で決めると、その構えが伝えていた。
「だがやはり、『奴ら』とは比べものにはならん。これなら俺でも何とかなる」
ニヤリと笑うその姿が突然変形した。頭の黒い部分の周りが鋭角な角となって斜めに伸び、顔全体が
マスクのように覆われる。肩の黒い部分が延長して肩当てのような形になり、胸の黒い部分を中心に胸、
腹もまた鎧のように変形する。それに合わせるように身体全体が一回り大きく膨れ上がった。
かつてフリーザの兄、クウラが見せた「もう一段階の変身」を、この異星人も出来たのだ。


225 :DBIF:2007/05/17(木) 23:31:56 ID:TUR+US2r0
「何だと?!」
「何だ、知らなかったのか?どうやらフリーザとやらはこの戦闘形態になれなかったようだな」
言葉と同時に異星人の姿が消えた。
「!!」
「遅い!」
後ろを振り向いたトランクスの顔面を、異星人の肘が打ち抜いた。さらに先程トランクスのした攻撃を
なぞって空中に蹴り飛ばす。
「ぐっ・・・・・・うっ・・・・・・」
「くたばれ」
静かな、それだけに殺気のこもった言葉と共に、トランクスの放ったものとは比較にならない巨大な
エネルギー砲が放たれた。
「うっ・・・・・・ああああああぁぁぁぁーーっ!!」
光の消えた後、上空にトランクスの姿がないのを確かめると、異星人はそれまでの姿に戻った。
「さて、『奴ら』が来るまでに出来るだけ手を加えんとな」
そう言いながら宇宙船の中へと姿を消す異星人を見たのを最後に、ボロボロになりながらもかろうじて
爆発の光に紛れて姿を隠したトランクスの意識が途切れた。


226 :クリキントン:2007/05/17(木) 23:41:34 ID:TUR+US2r0
以上、回想の終わりです。

次回はいよいよ現代のDB戦士が未来へと乗り込みます。

>>214さん
>>221さん
読んでくれてありがとうございます。
頑張って書いていきますんでこれからもよろしくお願いします。


227 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 00:18:08 ID:pajl4UMj0
『赤ん坊を待ちながら D』


「ブギーポップが『よろしく』って言ってたよ、十和子」
 翌日の通学途中、朝の挨拶を交わした直後にそう言ってやると、十和子は訝しげに首をひねった。
「ブギーポップって、あの伝説の? 誰からその話聞いたのよ」
 てっきり「誰だよそいつ」というような答が返ってくるものと思っていたので、その返事はちょっと意外だった。
「あ、伝説なんだ」
「そーよ。女の子の間にしか伝わらない都市伝説。……で、なんでその殺し屋があたしに『よろしく』って言うワケ?」
「さて、なんででしょう?」
 ブギーポップの意味不明系の冗談に加担していることがなんとなく嬉しくて、静はくつくつと笑う。
「まさか、そいつと会ったとか言うわけじゃないでしょーね」
「秘密」
「うわ、すげぇむかつくわこの子」
 お仕置きよー、と叫ぶ十和子のデコピンをきゃーきゃー言いながらかわしていた静は、ふと足を止める。
「秋月くん!」
 その呼びかけに、曲がり角の向こうから歩いてきていた、朝っぱらから冴えない顔をした男子がこちらを振り返った。
「あ……ジョースターさん、だっけ」
 古ぼけたスーツケースを重そうに掲げる秋月貴也は、煮え切らない表情で会釈した。
「おはよう」
 自宅を出る前に何度も練習した精一杯の笑顔を向けると、秋月はきょとんとした顔になる。
 だが、すぐにその不可解な顔色も消えうせ、控えめながらも自然な笑みがそこに取って代わる。
 それは昨日見たブギーポップの巌のような無表情とは似ても似つかなくて、
彼が『ブギーポップ』ではなく、今は『秋月貴也』なのだということを如実に物語っていた。
 隣に寄って歩調を合わせると、彼はとても困った顔になった。
 その怯えたような態度に、おそらく女の子と並んで歩くといった経験に乏しいのだろう、と、静はかなり失礼な想像をする。

228 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 00:19:18 ID:pajl4UMj0
「え、えーと……が、学校は慣れた?」
「うん、慣れた、かな。友達も出来たし」
「あ、そう……良かった」
「?」
「クラスに馴染めてないんじゃないか、って心配してたんだ。初佳さ……じゃなくて、五十嵐先生が。保健の」
 なぜ担任でもなんでもない、それどころか顔も知らない教師が自分の心配をするのか、静はわずかに不審に思う。
 その沈黙を別の意味に取ったのか、秋月は慌てて手を振る。
「あ、これは別に僕が君のことをまったく気にしていないということじゃなくて。気にはなっていたよ。
いやもちろん変な意味じゃない。ただのクラスメートとして、あー、ただのというのは失礼か。とにかくまあ、なんというか」
 そこで言葉が弾切れを起こしたのか、彼は口を半開きのままで頭をかく。
 そして場の空白を埋めるように弱々しく笑った。
 弾の再装填は意外なところから行われた。
「あ・き・づ・き・く〜ん」
 音も立てずに背後から忍び寄っていた十和子が、秋月を羽交い絞めにしたのだった。
「ずいぶんとセーシュンしてるじゃないっすかー。んー? あたしの静と仲良くお喋りたぁ、いい度胸してるじゃーん」
「ちょ、遠野さん、放してくれよ」
「あたし昨日言ったわよー、『全力で阻止する』ってさー」
「せ、背中に当たってる! 当たってるって!」
「なにがぁ?」
「な、なにがじゃないだろう!? 分かっててやってるんだろ、ねえ、遠野さんってば!」
 見ていて可哀想になるくらい、いいようにあしらわれていた。
 顔を真っ赤にしてわたわたと両腕を振る彼をよそに、十和子は静へ向けてにやけた視線を投げかける。
「静も気をつけたほうがいいわよ。こいつ、見た目に反して学年内じゃ有名なタラシだから」
 十和子のその発言に、秋月は金切り声ともいえる悲鳴を上げる。

229 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 00:21:47 ID:pajl4UMj0
「と、遠野さん!?」
「タラシって……なに?」
「えー、なんつったかな……そうそう、『womanizer』とかそんなん」
 昨日の『slut』もそうだが……よくもまあそんな俗語まで知っているものだと静は半ば呆れながら感心するが、
目の前の人畜無害を絵に描いたような彼がその『タラシ』なのかと、秋月に対しても半ば感心しながら呆れる。
 知らずしらずのうちに彼からわずかに離れて歩いている自分がいた。
 その距離感の変化に気づいた秋月が慌てふためいて異論を唱える。
「ち、違うから。遠野さん、なんでそういう根も葉もないこと言うんだよ」
「あるぇー? 根も葉もあることじゃねーの? 学年中の女子に片っ端から告白しまくってたのはどこのどいつでしたっけ?」
「あ、秋月くん……そんなことしてたの?」
「そーなのよ、静。こいつは女と見れば見境のないやつなの。だからうっかり騙されちゃダメよ」
「いや、あれは世界のて……あー、えーと、とにかく離れてくれよ!」
 じたばた暴れる秋月はついに身体のバランスを崩し、それを一瞬先に察知していた十和子が
彼を突き放すようにして背中から離れたために、いっそう重心を失って前のめりに倒れる。
 地面に落ちそうになった彼を受け止めたのは、白いスーツに身を包んだ教師だった。
「おっとっとー。大丈夫かにゃー?」
 そのホストかなにかみたいな出で立ちの教師は、片腕に秋月を抱えたままで静を見、にっこりと笑みを浮かべた。
「おはよー、静ちゃん」
「あ、おはようございます、ファイ先生。昨日はありがとうございました。……あの、黒鋼先生は?」
「んんー? 黒ぴんは授業の準備してるようー。なんだかんだ言いながら根が真面目だからねー、彼」
 秋月を立たせたそいつは、静に「それじゃーねー」と気の抜けるような軽い調子で手を振り、校舎へと向かって行った。
 十和子はそれを眺めながら、指先で静の肩を叩く。
「あの人、新任の教師でしょ? いつの間に知り合いになったのよ」
 一言では説明しづらいことだったので、静は曖昧に言葉を濁す。

230 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 00:23:20 ID:pajl4UMj0
「うん。ちょっとね」
「なにそれ」
「後で話すよ」
 十和子はそれでも少し納得のいかないような顔をしていたが、「ふん」と鼻を鳴らすと、急に思い出したように両手を合わせた。
「っと、いっけね、保健室行かなきゃ。昨日のゴタゴタがまだ片付いてないんだった。あたし先に行くわよ、静」
 と駆け出しかけた十和子だったが、三歩進んだところで思い直したように戻ってきた。
「──あのさ、ここだけの話、秋月となんかあった?」
 秋月を背中でブロックするようなかたちで静の肩に手を回し、十和子はそんなことをこっそり聞いてきた。
「な、なんで?」
「昨日よりもいい顔してるわよ、あんた。今までのおっかなびっくりな感じの作り笑いとはえらい違い」
 他人からはそういうふうに見えていたのか、と静は目を見張る。
 だが言われてみれば、思い当たる節はある。
 心の中の鬱屈した感情を一人で抱え込んでいた自分は、さぞかし引き攣った顔をしていたのだろう。
「そんでそんで、なにがあったの? マジで告白されたとか?」
「え、秋月くんとは、別になにも」
 これは嘘ではない、と思うが、じゃあ本当のことかと聞かれても少し困る。
「『とは』? 『とは』、ねえ。ふーん、ま、いいわ。後で根掘り葉掘り聞いてやるから。昼休み、覚悟しておきなさいよ」
 十和子はにやりと片頬を吊り上げて、そして踵を返し再び走り出した。
 ──どうやら、昼休みまでに覚悟を決める必要があるようだった。
 なんのための、そしてどういう類の覚悟なのかは、静自身にも今ひとつ判然としなかったが。
「仲、いいんだね」
 十和子の後姿を見送る静のそばで、秋月は感心したように呟いた。

231 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 00:24:16 ID:pajl4UMj0
「──ありがとう」
 なんの気なくそう言ってから、静はその言葉が自分の口からこぼれ出たことに驚く。
「あり、がとう……」
 今度は意識して口の端に乗せてみた。意識している分さっきよりぎこちないが、それだけ自分の気持ちがこもっていると思う。
「え、どうしたの?」
 秋月が不思議そうに静の顔を覗き込む。
「そうだ……わたし、あなたにお礼が言いたかったんだ……」
 十和子にでもなくブギーポップにでもなく、なぜ秋月貴也にお礼が言いたいのか、
その辺りのことは自分でも理路整然とは説明できなかったが、
それでも、静は彼にお礼を言いたかったというその心だけは──はっきりと存在していた。
「ありがとう、秋月くん」
「僕、君になにかしたっけ?」
 真面目くさってそう聞き返す秋月へ、静は晴々とした笑みとともに首を振る。
「ううん。なんでもない。ただ言ってみたかっただけ」
 ふと、思う。
 ブギーポップは笑わない。そして、世界を救うことも出来ないらしい。
 とすれば、もしかしたら、世界を救うたった一つの方法とは──笑うことにあるのかも知れない、と。

232 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/18(金) 00:35:21 ID:pajl4UMj0
ただいま他の方への感想を書いています。
SSと一緒に書いて投下しろよ、とお思いの向きもあるでしょうが、なぜかそれが出来ないんですね俺。
毎度毎度支援カキコしてくださっているかた、申し訳ありません。
連続投稿規制を食らってるわけではないのです。
SSを投下し終えた時点では他になにも書いていないから、途絶えるだけなのです。

233 :作者の都合により名無しです:2007/05/18(金) 01:08:21 ID:ZfMTIPc10
>クリキントン氏
頑張ってますなあ〜。その姿勢に好感が持てます。
回想編が終わり、いよいよ本編へ突入ですか。
悟空やピッコロたちの未知との敵とのバトル、期待しております。

>ハロイ氏
毎度高クオリティの連載本当に驚かされます。
今回はなんとなく青春コメディみたいなノリの会話ですが、そこかしこに
後々になって影響するレトリックがあるのかなあ、と思ってしまいます。
そこが凄い。でも楽しそうな雰囲気だなあ・・


234 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/18(金) 01:38:09 ID:pajl4UMj0
>NB氏
こうして見るとトレインってかなり強いんですね。
原作だとあんま凄みを感じなかったのが嘘みたいです。
オーフェンみたいなアウトローっぷりがたまりません。

>サマサ氏
ご自身でネタバレされている通り、威勢はいいけど小物っぷりが滲み出てますね、マンダラ地獄勢。
元ネタは知りませんけど(そればっかやな俺)。
それはそれとして、バリエーションに富んだ敵勢力だと思うので興味は尽きません。
いったいどんなかたちでドラえもんたちの前に現れるのか今から楽しみです。
西尾のネーミングセンスはあれですね、俺の場合は病院坂黒猫にやられました。

>ハンバーガーにライ麦を作者氏
えーと、涼宮ハルヒの正義を書かれた方と同じ方でしょうか?
新参なもんでその辺の空気が読めないので、なんか失礼なこと聞いていたらお詫びします。
お話はとても面白かったです。なんていうか、新機軸みたいなものを感じました。
戦闘描写が苦手で日常群像に走ってる俺からすれば大変に羨ましい筆力です。
話の落ちも好みでした。

>ドラゴンボール 恐怖!新たなる敵作者氏
トランクスが主人公のようですね。
原作での彼がいきなり剣振り回してフリーザ父子をぶった切ったときは度肝を抜かれました。
ARMSの美沙ママがいきなり拳銃ぶっ放したシーンと並んで俺の脳裏に焼きついているマイベストシーンです。
そんなトランクスを圧倒する22号にwktkです。激しいバトルを切望しますです。

235 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/18(金) 01:39:29 ID:pajl4UMj0
>スターダスト氏
前回のあらすじだけで吹きましたww
いつにも増して楽屋落ちや武装錬金、横山ネタが縦横無尽に駆け巡ってますね。
あとヘルシングネタもみつけました。他にもまだありそうですが不勉強なもんで分かりません。
こんなんで感想になってんのかな? と我ながら思いますが、
パロディ作品には元ネタ探しこそが最上級の賛辞であるという信念のもと、これをもって感想と代えさせていただきます。

>銀杏丸氏
青銅のなかでは紫龍が一番好きです。
脱いで小宇宙を高めるネタ性はもとより、冷静沈着な態度や性格が。
ちゃんと先生やっているようで、なんか嬉しいです。

>クリキントン氏
おお、こちらもDBでトランクスですか。
謎の敵から只者ではない、べらぼうに強い雰囲気がバシバシ伝わってきます。
回想が終わり、これからどう話が転がるのか期待大です。

>邪神?氏
>ボーイ、覚えておきな・・・戦場では、本当に信頼できる人間以外には背を向けるな。
このセリフに痺れました。なにこのカッコイイ文句。
こういう系のセリフは場が締まりますね。俺もこんなん言わせてみたいです。
ちなみに谷間の風のふいごの補足ですが、聖書によるとそれを発明したのは、あのソロモン王だそうです。



感想以上です。

236 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:16:31 ID:pajl4UMj0
『迂回と焼菓 @』


 夕暮れの迫る校舎の中、防音加工を施された壁に囲まれた放送室に強い西日が差し込んでいた。
 その光の具合で、長く伸ばされた少女の黒髪はうっすらと茶味を帯びてきらきら光っている。
「つまり……『迂回』の『ラウンダバウト』……それがあんたなワケだ。ねえ、奈良崎克巳くん」
 合成人間ラウンダバウト──人間名『奈良崎克巳』は、はっきりと困惑していた。
 その原因も馬鹿らしいまでにはっきりとしていた。他でもない、今目の前に立つ少女にがその『原因』そのものだった。
「とすりゃ、あたしもそれっぽく自己紹介とかしたほうがいいのかしら? んん?」
 少女は、まるで合コンでもしているかのような気安さでそう言ってのける。
 彼女はこの状況を理解していないのだろうか、とラウンダバウトは不可解な不安に襲われた。
 『ラウンダバウト』というコードネームを知っていると言うことは、自分が普通人でないということをも当然に知っているはずである。
 自分は普通人ではない──『天から降りてきた者』の情報を基に造りだされた合成人間──
組成的なレベルで人類と一線を画した身体能力を持ち、それに加えて独自の特殊能力を備えた超人なのだ。
 もちろん、合成人間が普通人より優れた能力を持っているというのは、総合的な面に限った話である。
 例えばラウンダバウトは普通人よりも遥かに卓越した戦闘技術を有しているが、
だからと言ってオリンピックで金メダルが取れるとかそういう話とはまったくの別問題である。
 だが、それにしても、その自信はどこから来ているのかとラウンダバウトは思う。
 まるで、自分のことをこれっぽちも怖れていないかのように、少女はラウンダバウトに視線を向けていた。
(合成人間と戦闘で渡り合える普通人、というのは例が無いわけではない……だが……彼女の恐れの無さは異常だ……!)
 合成人間が普通人に対して抱いている圧倒的な優位性の一つに『特殊能力』というファクターがある。
 組成的に人類以外の存在であるからこそ為し得る、常人には決して再現不可能な『能力』。
 その異能を目の当たりにした普通人は、大抵はなす術も無くその能力の前に敗れ去る。
 それもある意味当然の話で、合成人間の用いる攻撃方法というのは、
そのほとんどが普通人の持つ『戦闘』の概念の枠の外から繰り出されるのだから。

237 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:17:51 ID:pajl4UMj0
 かつてのネイティブアメリカンが、騎兵隊の使うウィンチェスター銃に手も足も出なかった──
少なくとも『銃』という概念を理解するまでに夥しい量の血が流された──歴史的事実と同じことである。
 合成人間対普通人、という構図の場合は、事情はさらに単純だった。
 『理解不能』の攻撃に対応できない相手を一方的に倒せばそれで済むのだ。
 それは相手の意表を突いた騙まし討ちに近いものであり、だからこそ、そういう『能力』を持っている合成人間が戦闘任務に就くのである。
 そうした絶対的とも言えるアドバンテージを埋める可能性はそう多くない。
 その最たる例は──。
 ラウンダバウトの混迷を極める思考は、少女の澄み切った声によって遮られた。
「『カスタード・パイ』」
「……なんだと?」
「だから自己紹介だってば。人の話はちゃんと聞いてなきゃダメよ。
人間には隠そうとしても隠せない『芳香』があるの。魂から発せられる真実の『匂い』がね。
あたしはそれを感じ取ることが出来るってわけ。それが『カスタード・パイ』。オーケー?」
(やはり……そうなのか……!?)
 ラウンダバウトはかつて『統和機構』と呼ばれることもある巨大なシステムに所属していた。
 ある任務の失敗のために、現在のラウンダバウトは生死不明を装ってそのシステムからの追跡を逃れているのだが──
統和機構は、ある特定の人間の探索と抹殺のために、その組織力のほとんどを費やしていた。
 そう、それこそが、合成人間と対等に戦える『可能性』──人類の進化の方向を制御するために存在する統和機構の、絶対の敵──。
(『進化しすぎた人間』……!)
「君は、『MPLS』なのか……!?」
 ラウンダバウトの詰問に、少女は目を細めて肩をすくめた。
 その捉えどころの無さに、ラウンダバウトは業を煮やして声を荒げる。
「答えろ!」

238 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:19:23 ID:pajl4UMj0


 ──事の発端は、校舎に響き渡った校内放送だった。
 正確に言うなら、それはラウンダバウトにとっての発端である。
 ラウンダバウトがこの後巻き込まれる奇妙な状況は、すでにずっと前から開始されており、
その意味では、ラウンダバウトがその発端に触れたことで、その状況は世界の水面に浮かび上がったとも言える。


 その日の放課後、ラウンダバウトは私立ぶどうヶ丘学園の敷地内を調査をしていた。
 調査対象は──『なんだかよく分からない羽』である。
 ここ数日、ラウンダバウトは李小狼という中等部の生徒に自分の『能力』を使い、幾つかの情報を引き出していた。
 それを総合すると、こうなる。
『李小狼の友人である木之本桜、最近赴任してきたファイという英語教師、そして黒鋼という体育教師は
実は異世界からの旅人であり、彼らは木之本桜の記憶の欠片を求めて様々な世界を渡り歩いている。
その記憶は羽のかたちをとって具象化されており、それはあらゆるものに作用する強力な影響力を備えている』
 ──正直なところ、眉唾物の話だとラウンダバウトは考えていた。
 だが、それを言うならラウンダバウトの存在自体も相当に『怪しい』。
 なにしろ、人の手によって生み出された有機的戦闘兵器なのだ。
 それに──とラウンダバウトは己の主人のことを思った。
(レインが……あのお方が僕に調査を命じられたのだ。僕はその期待に応えなければならない)
 ラウンダバウトは、自分が失敗を犯しやすい性質を持っていることを自覚している。
 そのために、事は慎重に運ばなければならない。
 事を慎重に運ぶ、とは、物事を疑ってかかるということとそのままイコールではない。
 何事も頭から信じるのも危険だが、その逆も然りである。
 『羽』の存在がいくら荒唐無稽だからと言って、それが理由で調査に手抜きがあってはならない。

239 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:21:17 ID:pajl4UMj0


 ラウンダバウトの主人──『レイン・オン・ザ・フライディ』と名乗る少女は、薄暗い部屋の中でラウンダバウトにこう言った。
「あなたは『カーメン』という概念についてどう思うかしら?」
 『カーメン』なるものが一体なんであるかは見当もつかないが、それがあなたの敵になるのなら命を懸けて排除してみせる、
というようなことをラウンダバウトが答えると、レインは「頼もしいわね」と笑い、続けて言った。
「でもね──『それ』はあたしの敵になるようなものじゃないのよ。あたしに取ってはなんの価値も無いの。
『それ』が問題となるのは、あなたのような合成人間だったりするのよ。
あなたは気が付いてないのかも知れないけれど、あなたは一度、『カーメン』に肉薄しているわ。
言ってること、分かるかしら? 合成人間に災厄をもたらし、絶望と希望の源である『カーメン』──。
あなたは、それに不用意に接近したと言っているの。『迂回』の異名を取るあなたら、それがどんなに危険なことか理解できるわよね?」
 そして、レインは一束の書類をラウンダバウトに手渡した。
「あなたはそこに行き、『羽』について調べて来なさい。
そいつは、統和機構の中枢(アクシズ)のセンサーに引っ掛かる可能性のある、とても危険な代物よ。
そう──ある種のやつらに言わせれば『世界の敵』の条件にぴったり適合している、これはそういうものなの。
だけど、それもまた一つの『カーメン』──死者を甦らせ、過去現在未来すべての対極に位置する『概念』の欠片よ」
 『カーメン』について知ることがあなたの望みなら、それを叶えてみせる、とラウンダバウトが宣言すると、レインは今度こそ満足そうに頷いた。
「ならば行きなさい──自らの足元に口を広げた陥穽を『迂回』するためにも」
 その時、部屋のドアノブががちゃがちゃ音を立てた。
 次の瞬間にはドアが開け放たれる。差し込む光が室内を照らし、こじんまりとした、だが品のいいホテルの内装が明るみにでる。
「あ……いらしたのですか……」
 ドアから入ってきた中年の掃除婦は、慌てて頭を下げた。
「ノ、ノックしたのですが……あ、あの……お部屋のお掃除です。し、失礼しました……また後で出直して来──」
 言いかけた言葉を飲み込み、掃除婦は呆気に取られて顔を上げる。
 ──そこには誰もいなかった。
「…………」
 しばらく呆けたように立ちすくんでいた掃除婦だったが、
「……あたし、なにしに来たんだっけ? あ、そうだ……掃除よ。掃除だよ。さっ、お仕事、お仕事……」
 胸に去来した違和感を振り払うように、彼女は自分の職務を開始した。

240 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:22:39 ID:pajl4UMj0


『えーと、中等部の李小狼くん、木之本桜さん、これを聞いたら今すぐ放送室まで来なさい。
繰り返します。中等部の李小狼くん、木之本桜さん、これを聞いたら今すぐダッシュで三分以内に放送室まで来い。以上』
 その放送を聞いたラウンダバウトは眉をひそめた。
「……誰だ、これは?」
 誰が、ということも重要だが、それ以上に問題なのは、なんのために、ということだろう。
 転校生である李小狼と木之本桜に対してなにかしらの伝達事項があるのかも知れない、という可能性も考えたが、
今このときというタイミングで呼び出している以上、警戒しなくてはならない。
 或いは、『羽』を狙う勢力──もしかしたら、ラウンダバウトの『前職』、統和機構のエージェントということも十分にありえる。
 ラウンダバウトは頭の中で素早く計算した。
 彼我の距離からして、一分弱ほどあれば放送室に先回りして潜伏し、いくつかの簡易トラップを仕掛けることは十分に可能だった。
 もちろん、この放送の主が放送室にいることは承知しているが、ラウンダバウトの『能力』を用いればそんなことはまるで問題にならない。
 『そいつ』が一体なんのつもりで彼らを呼び出したのか見極め、場合によっては『そいつ』も排除する必要があるだろう。
 そのためにもトラップの設置は必須だ──下手に近接戦闘にもつれ込めば、あの二人に害が及ぶかもしれない。
 我ながらまだるっこしいやり方ではあるが、非戦闘員である彼らを守りながら戦うにはそれが最善だろう──と判断する。
 任務のために李小狼には自分の『能力』を行使しているが、個人的な感情としてはあの二人には好感を寄せているラウンダバウトだった。


 予想よりも早く、ラウンダバウトは放送室に到着した。
 中に足を踏み入れ、すぐさまラウンダバウトは異変に気付く。
(……誰もいない、だと?)
 放送室に人を呼び出しておいて、誰もいないとはどういうことだろうか。
 小用を足しに出て行ったのだろうか、それならそれで今の内にトラップを──そこまで考えたラウンダバウトは、『その』可能性に思い至る。
(『トラップ』……まさか……僕を嵌めるための……!?)
「あんた、李小狼くん?」
 我に返って振り向くと、一人の女生徒がいた。
 その少女は、なんとも形容しがたいにやにや笑いを浮かべ、入り口に立ってラウンダバウトを眺めていた。

241 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/18(金) 07:49:37 ID:pajl4UMj0
「え、ああ……そうです……僕が李小狼です」
 試しにそう言うと、少女は「あら、そう」と、にこにこしながらラウンダバウトに近づいていく。
 ラウンダバウトは同級生の男子に比べると背丈はやや低く、顔立ちもそれほど歳経た感じではないので、
中学生だと言っても十分に通用する背格好であることは自覚していた。
「木之本桜さんは?」
「後から来ます。もう間もなくです。それで……なんの御用でしょうか?」
 少女はさらに笑みを浮かべながらラウンダバウトへ近づいてくる。
 そして、鼻と鼻がくっつきそうな距離で、その綺麗な笑みを崩さぬまま、少女は吐き捨てるように言う。
「──んなわけねーだろ、間抜け。あんた、高等部の学ラン着ておいてそれはねーでしょ」
 ……まあ、想定内のことではあった。ラウンダバウトは即座に頭を切り替えて、次の行動に移ることを決断する。
 すなわち、『能力』を発動させて、この少女を自分の影響下に──。
 その瞬間、少女はある言葉を呟いた。
 それはとてもさらりとした口調だったので、一瞬聞き逃すほどだった。
 だが、彼女は確かに『それ』を口にした。
「『ラウンダバウト』──」
 驚愕のあまり絶句する。ラウンダバウトは、この学校では徹頭徹尾『奈良崎克巳』で通してきた。
 まかり間違っても、そのコードネームをここの誰かが口にするなど、ありえないことだった。
 そんなラウンダバウトの心情などお構いなしに、少女はさらに続ける。
「つまり……『迂回』の『ラウンダバウト』……それがあんたなワケだ。ねえ、奈良崎克巳くん」


「君は、『MPLS』なのか……!? 答えろ!」
 だが、少女はそれに答えるようなことはせず──、
「ねえ、奈良崎くん。あたし、さっきからずうっと気になっていたんだけどさあ──」
 逆に、ラウンダバウトに向かってとんでもないことを言い放った。
「なんで、あんたは男の格好をしているのかな?」
「──な」
 ランウダバウトはほとんど自動的に問い返していた。
「なぜそれを……?」

242 :作者の都合により名無しです:2007/05/18(金) 08:59:31 ID:rXLl8c6s0
さるさん食らったそうなので、語ろうスレより転載

今回の『迂回と焼菓』、時間軸が多少錯綜して読み辛くなるとは思いますが、こういうのもやってみたかったのでご容赦ください。
四レス目後半、ジョジョ厨の方ならピンと来るものがあるかも知れませんが、
ラウンダバウトは非常にジョジョネタが大好きな(?)やつなのです。
原作では、主人であるレインと一緒になって、DIOとヴァニラ・アイスの「ドアくらい開けて出て行け」を再現したほどです。
いや、本人たちは極めて真面目にやってるんですけどね。

243 :作者の都合により名無しです:2007/05/18(金) 09:41:56 ID:/U7bZuHu0
ハロイさん、これだけキャラが多いのに全て魅力的なのがすげえ!
また奇怪なニューワードが現れたけど、どんどん世界が広がっていくんだろうな
進化しすぎた人間や、魂の力を具現化したスタンド使いたちがどう活躍していくか非常に楽しみだ。

クリキントンさん、序盤から飛ばしてますなー
トランクスですら互角くらいの異星人の後に、もっと強いサイヤ人関係がいそうですな
まだまだ始まったばかりですが、新ドラゴンワールド期待しております

244 :作者の都合により名無しです:2007/05/18(金) 20:34:04 ID:ys+8+/jm0
>シュガーソウル
ハロイ氏、動きのない会話とか説明とかなのに面白いのが凄いな
たまに埋まってるジョジョネタ探しとかも楽しい。
この作品もヴィクテムも大好きなので頑張って下さい。

>DBIF
クウラ一味の眷属が敵サイヤ人の部下なのかな?主従逆転だな。
でもトランクスの奮闘が、いずれ出てくる悟空やベジータの激闘を
感じさせて期待できる。無理せず自分のペースで頑張って下され。


245 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/19(土) 00:32:30 ID:MxIRHIF30
何事もなければ20日にネット開通。
続きは出来てるので、投下すると思う。

唐突だが、何故『P3と承太郎』なのか。
それはP3の主人公の周りにいる大人は、どっかが駄目な大人ばかり。
まだ未登場のあるキャラは大人が信用できなくなりそうになるまで。

そこでそんな空気をぶっ壊すには誰がいいのか。
強く、厳しく、そして優しい。4部承太郎が思いついたわけで。
で、P3はタロットが深く関わっていて、そう言えば3部はタロットだったなぁ
と思い、3部外伝に。

まだ先になるけども、他のジョジョキャラもスポット登場気味に出てきます。

あー、あと。捏造設定も出てくるんで、その辺は大目に見てやってください。
それでは。

246 :六十話「死神の星」:2007/05/19(土) 07:04:21 ID:IN/c+hwH0
「地球の移民星、惑星ティノス。 移民星ってのは地球から離れた住める星の事だ。
空気は地球の半分ほどしかねぇ、どこまでいっても砂漠、クソ寒い気候。
生命維持装置がない奴は数時間でポックリ逝っちまう最低な星だ。」

星?空に浮かぶあの星の事だろうか、異常な武器、風貌から変人だとは思っていたが。
ここまですっとんだ話をされるとは思いもしなかった。
茫然とする3人を見て笑いながら話を続けるブルー。

「おいおい、俺はイカれちゃいないぜ?イカれてるのは、
俺の相棒の『こいつ』だけさ、でていいぞファッツ。」
そう言うと銃を一つに戻し、手を前へと突き出す。
すると突然、ブルーの腕から光が伸びる。
何かの攻撃かと思ったら違っていた、何か汚い石柱のような物が見える。

『ファーーーーック!誰がイカれてるんだよ赤ちゃん野郎が!
俺はイカれてるんじゃねぇ、イカしてるんだ!』
石柱から何か訳の分からないピーという、うるさい音と同時に騒がしい声が漏れだす。
機械の事を何も分からない二人の騎士は、夢でも見てるかのように目を丸くしている。

『フゥーッ、小便臭ぇガキかと思ったら案外イイ女じゃねぇか。
俺とお喋りしようぜ、へへへ・・・。』

ルーティの方に目(のようになっている丸い物体)をチカチカ光らせながら近寄る。
石柱を物色するかのように見回すと、容赦ない一言が口から飛び出した。
「アンタ、オベロン社の人間?こんな小汚いドラム缶みたいな物売れるの?
分かった、冷蔵庫?にしても開く部分がないわね・・・売れないわよこれ?」

『ファ、ファーーーーーーーック!このアバズ・・・!』
これ以上しゃべらせまいと光を閉ざしてファッツの姿を消す。
脳で文句を言い続けているが無視して話を戻す事にした。

247 :六十話「死神の星」:2007/05/19(土) 07:06:07 ID:IN/c+hwH0
「あんまり驚いたりしないんだな譲ちゃん。
オベロンなんて企業しらないが、こいつは商品じゃなくて友達さ。」
そういって腕をポンポン叩く、ファッツも少し照れたのか脳内が静かになる。

「話を続けるぜ、住む環境が最悪だからか、単に人間が腐ってるのか治安も最低でな。
300年前のポンコツコンピュータを売り付けられたり。
まだ物心もついてないような子供を麻薬の売人に仕立て上げる市長。
町中に溢れかえる汚職警官は、子供に愛や勇気を教えただけで老人を撃ち殺す。
平和な地球行きのチケットを巡って日夜、罪もない人が死ぬ地獄の様な星だった。」

銃を持つ手が怒りに震えているのが分かる。
ふと顔を見ると、普段の無愛想な彼からは考えられないような哀しい目をしていた。

「そこで俺はな、一度死んじまったんだ。
市長に騙されて罪もない人間を撃ち殺して現行犯逮捕、すぐ処刑さ。」
まさか幽霊系の魔物なのだろうか、なら雷も聞かない訳である。

「そうですか・・・幽霊になってまで復讐しようとしたのですね。」
ラファエルが憐みの目でブルーを見つめる、
ファッツが頭の中で笑い転げていて少しムッとしたのか口調が強くなる。

「何すっとぼけてんだボーイ?足はしっかり二本ともついてるぜ。
っと、この世界の幽霊は足のついた奴もいるんだったな・・・。
まぁ、ともかく俺は生き返ったんだよ。
お譲ちゃんの言う『売れない冷蔵庫』のお陰でね」

そう言うとブルーはサラマンダーを自分に向けるとトリガーを引いた。
たとえ一発でも場所が問題だ、そこは人間の急所『心臓』である。
幾らなんでもこれでは生きている筈がないと思ったが、
ブルーは倒れることもなくケロリとしていた。

248 :六十話「死神の星」:2007/05/19(土) 07:10:30 ID:IN/c+hwH0
コートの下につけていた服が破けて、逞しい胸板をさらけ出す。
そして、バチバチと電流を流した機械が胸に開いた穴から見えた。

「どうだい、信じてくれたかい?ファッツはポンコツに違いはないが、
300年生き延びて知識をため込んだ、そのお陰で死体と合体して生き返す事まで出来るようになったのさ。」

ファッツの事を語るブルーは、悪口を交えているのにどこか誇らしげだった。
機械という概念を今一つ理解できないラファエルとテオドールも、
ブルーがどれほどファッツを信頼しているのか一目で分かった。

「ですが・・・摂理に反しています。死から蘇るなんて神への、生への冒涜です!」
ラファエルの訴えに、ブルーは笑顔で答えた。
いつものジョークを言う時の笑みに哀しい瞳を浮かべながら。

「ボーイ、見たことがあるか?
人に騙されて自分で自分の足をぶった切った兄弟を。
そいつの足にくっついてたのは不細工な機械の足だ。
ちゃっちい機械一つを求めて、小さな子供を八つ裂きにする腐った豚は?
神の名を語り、信頼を寄せ集めて子供を盾にする神父は?
冒涜?結構だぜ、神でもなんでもティノスに住む死神共を俺は絶対に許さない!
いつか奴等を皆殺しにする時まで、俺は何度だって生き返ってみせる!」

いつも軽口を叩いているブルーが、本気で激昂していた。
話し終わる頃には笑みは消え、額にしわを寄せ歯を食いしばっていた。
深い優しさから生まれた純粋で、悲しげな怒り。
何も言う事は出来なかった、ブルーの口から語られる悪行、悲劇の数々は、
城で剣術に勤しんでいただけの見習い騎士に、残酷な世界の一部を見てしまった。

「俺はティノスでいつもみたいに死神退治してたらいつの間にかこの世界に来ちまっててな。
ここには本物の神がいるって聞いたらよ、ムカついて仕方がねぇんだ。光の神?破壊神?
何が光の神だ、貧しい子供にパン屑の一欠けらも分けてやれないファック野郎だぜ。
何が破壊神だ、大昔に負けたのをいつまでも引きずりやがって、女々しいファック野郎だよこいつも。」

249 :六十話「死神の星」:2007/05/19(土) 07:12:19 ID:IN/c+hwH0
自分とはまったく無関係の、この世界の事を思いやっている。
少し捻くれているが、誰よりも優しい青年なのだ。
他人の痛みを知り、弱きを守る慈愛に満ちた新人類。

「神でもなんでも、子供一人救おうとしないファック野郎は許せねぇ!
人間様の力で叩きのめしてやる、その為に俺は進化したんだ。
コンピューターの電子の力と、人の進化する力を併せ持ったサイバービーイングとして!」

突然、壁が爆風で吹き飛ばされる。
風圧で後ろへと吹き飛ばされそうになる。
目をあけると、空を飛ぶ機械にまたがった長髪の男がいた。

「ローニィ!ジョーのバイクを復元出来たのか。」
ライオンのタテガミのような金色の髪を風になびかせたローニィと呼ばれた男は、
その巨躯に似合わない少年のような笑みでブルーを迎えた。

「苦労したよ、設計図だけ渡されてファッツも居ないのにこんなもの造れだなんて」
浮力を得るために熱風を排出している機会が奇妙な音響を作り出す。
「待ちたまえ!」
去りゆくブルーを老騎士が引きとめる。

「ブルー、君の名の由来を知りたい。」
その場に突っ立ち、キョトンとした表情で老騎士を見つめる。
笑顔のテオドールに、ブルーも笑顔で答えた。

「俺の母さんが付けてくれたんだよ、宇宙から見た地球の色、俺の故郷の色だ。」
「そうか、私の孫にはブルーとは名づけないようにしとくよ、お行儀が悪くなりそうだからな。」
「おいおい、こう見えてもティノスじゃ紳士なんだぜ?」

ふて腐れるブルーの後姿を笑顔で見送るテオドール。
ブルーは「じゃあな」と言ってバイクの後ろにまたがり、男と共に去って行った。

250 :邪神?:2007/05/19(土) 07:13:30 ID:IN/c+hwH0
前回話数入れるの忘れてた・・・前回は一つ減らして59話、邪神です(0w0)
美味しんぼ見ながら書いてたら中々早めに出来あがっちゃったので投下。
締めをミスった感があるかもしれないけどまぁ気にしないで(;0w0)
しかし美味しんぼがこんなに中毒性のある物だとは知らなんだ。
見てると腹が減ってくるからとても経済的に悪影響です。
さて、それでは講座。

〜講座〜

エアーバイク ジョーのバイク。原作を見てないとジョーって誰よってなる。
       北斗の拳のシンがなんかサイバーな服着てスカウターつけてると言えば姿は浮かぶ。
       バイクの原理がよく分からないので設定は捏造。
       まぁ空飛ぶバイクである。

ローニィ   この作品でのローニィのボディはガルゴの物。
       原作を知らない人はやはり分からないだろう。
       ロン毛のラオウ様なのに中身が『シュウの息子』
       どっちの例えも北斗を知らないとさっぱりですが、
       他に浮かばないのでこれで堪忍してください。

〜感謝コメ〜

>>ハロイ氏  >ちなみに谷間の風のふいごの補足ですが、聖書によるとそれを発明したのは、あのソロモン王だそうです。
       マジンガー?と思ってウィキペディアで探してみたら民間伝承で風の精霊ジンを操るってあった(;0w0)
       しかし博学ですなぁ、ファンタジー物のゲームプレイしてるのにその手の知識が身につきませぬ。
       どっかのHPで見たファンタジーによくでる魔物の紹介みたいなのでちょこっとかじった程度。
       うーむ、本格的に学んでみるか・・・。

>>221氏   キーキャラ・・・そういえば物語に絶対必要なキャラって
       実はロマサガキャラ以外特にない・・・(;0w0)
       しかし活躍はする予定。

251 :作者の都合により名無しです:2007/05/19(土) 13:44:26 ID:p8aXOmjU0
>ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志作者氏
おー、もうすぐですね。楽しみです。
承太郎は厳しいながらも暖かい教師、って雰囲気もあるので
先頭に立って導くのにぴったりのキャラと思います。

>邪神さん
サイバーブルーのファッツの口調は覚えているけど、
こんなにナイスガイだったっけ?ただの丸っこいロボットだと思ってたけど。
とりあえずブルーとファッツのコンビは重要キャラみたいですね。
最終決戦用のキャラでもあるのかな?

252 :作者の都合により名無しです:2007/05/19(土) 22:29:16 ID:EgBwNs9D0
>ジョジョの作者の方
とても楽しみにしてます。
ペルソナ3はやった事はないですが、ジョジョオタなので・・

>邪神氏
復活されてからかなりのペースで書いてますね。嬉しいです。
まだ60話、このペースで行くと100話でも終わりませんねw
それともブルーたちが現れた事で、急展開していくのかな?


253 :作者の都合により名無しです:2007/05/20(日) 00:41:54 ID:3HeU1P8L0
邪神さんは復活してから好調だねえ。良い事だ。
サイバーブルーってかなり昔の漫画ですよね?
名前だけは聞いた事がある…
このペースで頑張って下さい。


ミドリさんやサナダムシさんも復帰すると嬉しいな…
でも、ハロイさんのシュガーハートとともに期待してた
承太郎がいよいよ本格連載するみたいだから寂しくないか。
帰って来て欲しいけどね…

254 :DBIF:2007/05/20(日) 05:30:44 ID:Nk53Kdo20
「その後、何とか母さんの家まで戻り、応急手当だけをして皆さんの所までやって来たんです」
苦い表情で締めくくるトランクスを見るベジータの唇の端が持ち上がった。
「面白い。お前を簡単に倒せるフリーザもどきの異星人に、そいつに匹敵するサイヤ人の生き残りか」
「考えてみれば、確かに俺達ナメック星人やサイヤ人と同じく、フリーザにも同じタイプの人間が住む
故郷の星というものはあるはずだ。しかしまさか別の銀河だったとはな」
「しかも本星の奴らはフリーザどころか、トランクス以上の実力者か。そんなの反則だよなあ」
ピッコロの言葉を受けて、クリリンが情けない声で言った。
「その異星人の背後に控える、恐らくはさらに強い異星人と、どうやら複数いるらしいサイヤ人とが
地球を舞台に戦おうとしている、か。つくづく、因縁だな」
疲れたような声でピッコロがつぶやく。実際ベジータ以外の全てが同じ心境だったろう。
初めに地球を襲ったラディッツに始まり、ベジータ、ターレス、フリーザ、クウラ、ブロリーと、
フリーザタイプの異星人とサイヤ人は、絡み合う糸のように彼らの前に現れ、その度に激闘を
繰り返してきた。半年前に倒したセルも、言わば彼らの混合体のようなものだ。そして今回の敵は、
どうやら極め付きの存在らしい。
「今回ばかりは、俺一人じゃどうにもなりません。お願いします!未来に来て俺と一緒に戦って下さい!」
トランクスはこれ以上ないほどの勢いで頭を下げた。恐らくその内心は自分一人で解決できなかった
悔しさが全身に満ちているのだろう。その両手は血を吹くほどに固く握り締められ、わずかに震えていた。
「バカが。とっとと顔を上げろ。他の腰抜け共ならともかく、この俺がそんな連中がいると聞いて
行かないと言うとでも思っているのか」
「父さん・・・」
「まあ、いずれは来るであろう連中だ。少し早めに手を合わせておくのもいいだろう」
「そうですよね、僕も頑張ります」
ピッコロと悟飯の言葉に、トランクスは心の底から感謝を込めて、もう一度頭を下げた。


255 :DBIF:2007/05/20(日) 05:32:31 ID:Nk53Kdo20
「でも、肝心のタイムマシンはどうするの?あんたの乗ってきたマシンじゃ乗れても精々二人でしょ?」
ブルマが当然とも言うべき質問をすると、トランクスは懐から紙の束を取り出した。
「ここに、未来の母さんが書いてくれた大人数用のタイムマシンの設計図があります。向こうでは作る時間も
資材もないので、こちらで作ってもらうようにと渡されました。このマシンなら7人まで乗ることが出来ます」
「どれどれ?うわっ、凄い。さすが未来の私ってとこね。でもこれ、作るのに結構時間かかるわよ」
「その点は問題ありません。戻る先は未来ですから。むしろ、未来に向かってからの戦闘を考えて、より強く
なるのための期間を設ける必要があると思います」
トランクスの意見に反対するものはいなかった。あのベジータさえも。
「しかし7人か。トランクスは当然として、俺と悟飯にベジータで4人。一応あと3人まで乗れるな」
言いながら、ピッコロは背後を見た。そこには天津飯、クリリン、ヤムチャ、餃子、人造人間18号が立っている。
「どうだ、お前達の中で行きたい奴はいるか?」
ピッコロの声に、クリリンが頭をかきつつ前に出た。
「んー、まあ、正直俺程度じゃ役に立つかわかんねーけど、一応行っとかなきゃな」
「あー、俺はパス」
と、情けない声でヤムチャが手を振る。その横で天津飯は難しい顔をしていたが、やがてぼそりと、
「・・・悪いが今回、俺と餃子も辞退させてもらう」
と言った。
「ええ?!」
天津飯の意外な言葉に、クリリンが音を立てそうな勢いで振り向く。
「情けないが、俺が行っても、正直足手まといにしかならんだろう」
「そんな、足手まといだなんて・・・」
「いや、俺はクリリンのように、力がないならばないなりに工夫して役に立てる程器用じゃない。かといって、
進んで死にに行く気にもなれない」
「で、でも・・・」
「放っておけ!」
うつむきながら話す天津飯に、なおもかける言葉を捜す悟飯を、ベジータの鋭い叱咤が打った。
「そいつの言う通り、連中相手にそいつ程度の実力では足手まといにしかならん」
「そ、そんな・・・」
「悪いが悟飯、今回に限っては俺も同じ意見だ。それに、嫌がる者を無理に連れて行くわけには行くまい」
「・・・」
多少のもどかしさを感じながらも、悟飯はそれ以上食い下がることはできなかった。


256 :DBIF:2007/05/20(日) 05:34:36 ID:Nk53Kdo20
「私も行っていいか?」
と、多少気まずくなった空気を打ち消すように、18号が訊ねた。しかしそれに対してはトランクスが
苦い顔をしながら首を振った。
「残念ですが、あなたが来ると俺の世界の人間が、自分達の世界を滅ぼしかけた人造人間20号と
間違えて恐怖を抱き、あらぬ混乱が起こります。申し訳ありませんが、連れて行くわけにはいきません」
「まあ、そうだろうな」
答えを予想していたのか、さほど落胆するでもなく18号は退いた。
「なあ、悟空はどうするんだ?」
そのタイミングを見計らったかのようにクリリンの口からこぼれた言葉に、一瞬その場の時が止まった。
セルゲームの終盤、自爆しようとするセルもろとも界王星に瞬間移動して死亡し、後の事を悟飯に託して
生き返ることを拒否してからもう半年が経っているのに、いざ危機が迫ると思い浮かべてしまう。それ程に
悟空の存在は大きかった。
「一応言ってはみるが、多分参加はせんだろう。悟飯や、生き残った俺達に後を託すと言った以上、
余程のことがない限りその言葉を曲げることはするまい」
「はあ、あいつそういうことには結構頑固だしなあ・・・」
クリリンはため息をついた。今回の敵が複数であると予想出来る以上、頭数は多い方が良いのだろうが、
それだけの理由で悟空が生き返ることを選択するとも思えない。とはいえ、いざ強敵を迎えようという時に
悟空という存在がいないのは、どこかもどかしいものがあった。
「それじゃあ、未来に行くのは5人ですね」
「いや、6人だ」
確認するように言う悟飯の言葉を、ピッコロが否定した。
「え?でも・・・」
「今度の戦いが始まれば、また大なり小なりトランクスの世界の地球や人々に被害が出るのは間違いない。
それに備えて、デンデを連れて行こうと思う」
「あ、そうか。向こうにはもうドラゴンボールがないんだっけ。確かにあれがあるとなしとじゃ大違いだよなあ」
クリリンの言葉に全員がうなずいた。
「ふうん、6人か・・・」
そんな中、ブルマだけが何か別の事を考えているのか、ぽつりとつぶやいた。


257 :DBIF:2007/05/20(日) 05:41:31 ID:Nk53Kdo20
結局、大型タイムマシンが出来上がる半年間を修行の期間と定め、未来へと行くメンバーの内、悟飯、ベジータ、トランクス、
ピッコロ、クリリンの5人は各々の力を引き上げるべく鍛練に励むこととなった。


「何ですか?ここ。どこかで見たような・・・」
どこに果てがあるのかわからないような、それでいて息の詰まるような空間を見回しながら、悟飯は傍らのベジータに訊いた。
「以前作らせた重力発生機をブルマの奴に改造させて、セルゲームの時に入った『精神と時の部屋』を、可能な限り
再現させたものだ。時の流れを遅らせるのは通常の4分の1が限界だが、重力は50倍にしてある」
「ああ、なるほど。そう言えば似てますね」
「はっきり言って俺やお前のレベルの人間が、この星の環境でわずか半年程度鍛えたところで大幅なパワーアップは望めん。
ならば、俺とお前とトランクスはここで身体を鍛えるしかなかろう」
「ええ?!で、でも・・・」
「お前の母親の所には今トランクスが説明に行っている。ぐだぐだ言わずにお前は自分のパワーアップに専念しろ」
「はあ・・・(大丈夫かな、トランクスさん)」

「ピッコロさん、お帰りなさい」
「デンデ、これから俺は『精神と時の部屋』に入るが、その前にお前に伝えることがある」

「わ!わ!ちょっと、18号ちょっとタンマ!」
「わめく暇があったらよけろ。修行に付き合ってくれと言ったのはお前だろう。私は容赦はしないぞ」


258 :クリキントン:2007/05/20(日) 06:05:24 ID:Nk53Kdo20
今回はここまで。予想より少し長くなったんで、出発まで行きませんでした。

>>233さん
>>243さん
感想レス感謝です。
DBIFは一応セル編の続きのつもりで書いてるので、悟空は死んでいます。
そのせいでというか、例によってというか、悟空の出番はまだまだ先になります。

ハロイさん
ここにある小説は結構クロスワールドの形が多いんですね。
ラウンダバウトの物語、最新版のものしか読んでいないのでまだしっかりと
掴んでいませんが、これから楽しく読ませていただきます。

邪神さん
上にも書いた通り、クロスワールドになっているのを知らなかったことから
読み始めは混乱しまくりましたw
どういう具合に絡み合っているのか修正しつつ、これからも読ませて
もらいます。

259 :クリキントン:2007/05/20(日) 06:46:05 ID:TXUy/KrK0
>>244さん
抜けてました。すいません。読んでいただいて感謝です。
ちなみにDBIFは最新のレスで書いたように、トランクスや悟飯達DB戦士と
フリーザタイプ異星人、サイヤ人との最終バトルロイヤル戦になります。

260 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 18:57:33 ID:mQoHoeBr0
4月21日

今日の影時間は終わった。
タルタロスはビデオを巻き戻すように、その姿を月光館学園へと戻していく。

「ほぇー。ホントに元に戻っちまった。
タルタロスになる時もスゴかったけど、戻るときも同じくらいスゲーなぁ」

「よく考えるとさ、私たちって、寮とか以外は、殆どタルタロスのある場所で生活してんだよね…。
なんか複雑だな…」

「そう言われればそうなるな」

元に戻った月光館学園を見て、順平とゆかりがそれぞれ呟き、
ゆかりの呟きを聞いた真田が、今気付いたのか、同じように呟いた。
校門の前まで来た所で、美鶴は改めて、承太郎に頭を下げる。
「先ほどは危ない所をありがとうございました。
お聞きしたいのですが、先生の仰る『スタンド』とは…?」
『スタンド』という単語に、全員の視線が承太郎に集まる。
当然だろう。
彼らの認識では『シャドウはペルソナでしか倒せない』のだ。

「…今は、もう時間が遅い。明日、お前達の寮へ行く。
少々長くなるんでな、そこで説明する」

承太郎がそう返すと、美鶴は無言で頷いた。

261 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:00:07 ID:mQoHoeBr0
『S.E.E.S.』のメンバーが帰りの道を歩き出したところで、承太郎からの声がかかる。

「ああ、あとだな。幾月理事長には『ペルソナ使いの教師が見つかった』と、言っておいてくれ」

その言葉に順平は首を傾げる。

「えぇ?なんでっスか?先生、ペルソナ使いじゃないんっしょ?」

承太郎は諭す様に順平に言う。

「順平…だったな?確かに、俺はペルソナ使いではない。
だが、先程の通り、影時間に対応して、敵も倒せる。
ペルソナ使いと名乗ってもそう困る事はない。
それに、スタンドってのは説明も含め、いろいろと面倒だ。
正直言って、あまり大勢に知られたくはないんでな」

それだけ言って、承太郎は、さっさと校門から離れて行ってしまった。
美鶴は、しばし考え、ゆっくり口を開く。

「仕方ない。助けてもらった恩もある。
ここは空条先生の頼みを聞いておこう。みんな、いいな?」

美鶴の言葉に、4人が同意するように頷いた。

262 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:03:45 ID:mQoHoeBr0
それから時は過ぎ、今の時間は4月21日、午前10時。
高等部の全生徒が、体育館に集まっている。
理由は新たな生徒会役員の決定の報告と、新生徒会長の挨拶、
そして、遅れてきた生物教師こと、空条承太郎の紹介のためだ。

「はー。勉強しなくていいのはいいんだけどさぁ。
こう、椅子に座りッパってのも、それなりにシンドイよな?」

順平は、隣に座る阿虎に、話しかけた。

「そうだな」

阿虎は頷きとともに、一言だけ返した。
方や多弁、方や無口の二人を見て、ゆかりが呟く。

「ホント、対称的だよね、アンタと天道君って」

その呟きに、順平が突っかかる。

「なぁんだよ、ゆかりッチ。どーいう意味よ、ソレ」

「どーもこーも、そのまんまよ。あ、桐条先輩、出てくるみたい」

ゆかりは、さらっと順平の言葉を受け流すと、壇上に上がってきた美鶴を見ていった。

「おおっと、ヤッベヤベ」

順平が慌てて、前を向くと、体育館内にアナウンスが響く。

263 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:05:32 ID:mQoHoeBr0
「続きまして、生徒会から、新しい役員の紹介があります。
生徒会代表、生徒会長、3年D組、桐条美鶴さん」

「はい」

返事をして、壇の中央に向かう美鶴を見て、ゆかりが溜め息と共に呟く。

「やっぱ先輩に決まったんだ。ま…あの人の人気すごいもんね」

その呟きに答えるように順平も小声で言う。

「なんつっても『桐条』だもんな。オーラ出てるっつーか、近寄り難いっつーか。
しかも『桐条グループ』って、このガッコの母体なんだろ?」

「まぁね。あんま日頃は考えないけどね」

そんな二人の呟きを余所に、壇上の美鶴は、就任の挨拶を始める。

「生徒会長という大役を拝命するにあたり、私の所信をお話ししておきます。
学園がより良くあるために、一人一人の積極性は確かに大事です。
しかし、全員が一つの思いを一年間ずっと切らさずおくのは、簡単ではないでしょう。
大事なのは、それが途絶えても確実に回る仕組みをいかに造っておくかです。
そのために、各自の中の明日への思いを確認し、今、この青春の時をどう過ごすのか。
現実から逃げる事無く、如何にして未来を直視するのか。全てはそれに掛かっています。
私一人の視野では見えないものもたくさんあるでしょう。
充実した学園生活を共にするため、皆さんの知恵と力を貸してください。
よろしくお願いします」

挨拶の終了とともに、体育館内に拍手が響き渡る。

264 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:06:39 ID:mQoHoeBr0
そんな中、ポカンとした顔の順平が、天道に訊ねる。

「すげー…なんだあれ。天道、お前、意味分かった?」

「全然さっぱり」

天道はポーカーフェイスを保ったまま、首を横に振った。
天道の答えを聞き、納得と不安がこもった声で順平が呟く。

「だよな…。住んでる場所が同じったって、距離を感じるな…。
ヤッベー…。オレ、感想とか訊かれたら言えねぇ…」

順平が顔を壇上に戻しかけたところで、天道が言葉を付け足す。

「というか」

「アン?というか、ってなんだよ」

「聞いてなかった。何て言ってた?」

天道の大胆不敵な『聞いてなかった』発言に順平は目を丸くする。

「そ、そうか…。フリーダムだな、お前…。
つーか、訊くなよ…。言えねぇってあんなん…」

そうこうしている間に、美鶴は壇上を去り、体育館に再びアナウンスが響く。

「続きまして、事情により、赴任が遅れられた先生をご紹介いたします」

265 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:08:17 ID:mQoHoeBr0
その言葉に、順平はパッと顔色を変える。

「おッ!コレって空条先生じゃね?」

「ってか、ソレしかないでしょ。事情って何だったんだろうね?」

『事情』という言葉に首を傾げるゆかり。
そんなゆかりに対し、順平は、

「寮に来るって言ってたし、そん時聞いてみたらいいじゃん?」

と、提案した。

「うん、そうだね。そうする」

ゆかりは納得して、壇上に目を戻す。
アナウンスが、承太郎の簡単な説明を行う。

「空条先生は、著名な海洋冒険家であり、博士号も取られています。
この度の赴任は、ポートアイランドの周りの海洋調査も兼ねていらっしゃるそうです。
では、空条先生、一言ご挨拶をお願いします」

その言葉の後から、壇上に上ってくる承太郎。
承太郎の姿を見た生徒達がザワザワと声を上げる。

「スゲー背ぇ高くねぇ?2mくらいあんじゃねーの?」
「ちょっとぉ、カッコ良くない?」
「何でコートなんだ?帽子も被ってるし…」

266 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:09:12 ID:mQoHoeBr0
承太郎は壇の中央で、騒ぎが収まる様子がないのを感じると、スッと息を吸った。

「やかましいッ!短く済ませるから静かにしやがれッ!!」

雷の如き一喝である。体育館内は水を打ったような静寂に包まれる。

「やればできるじゃねーか。名前は空条承太郎。
歳は…必要ねーな。一年間、2年と3年の生物を教える。
以上だ」

そう言ってさっさと壇上から降りてしまった。

「お、おっかねぇー」

マジにびびった顔で呟く順平。

「怒らすと拙いタイプだな、あの人は」

冷静に分析しつつも、ちょっと驚いた顔を見せる天道。

「生物の時間は、なるべく静かに受けましょ。順平、アンタ、気をつけなさいよ」

騒ぎがちな順平に釘をさすゆかり。
そんな騒動がありながらも、21日の昼間は平和に過ぎていった。

267 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:12:47 ID:mQoHoeBr0
4月21日放課後、午後5時

『S.E.E.S.』のメンバーと、幾月、つまりはシャドウについて知るメンバーが、
月光館学園、巌戸台分寮に集まって、一人の人物を待っている。

「ところで、誰なんだい?そのペルソナ使いの教師というのは」

美鶴に幾月が問いかける。

「もう少しでいらっしゃる筈ですから、もうしばらくお待ちください」

その問答の数秒後に、玄関の扉が開く。

「よう」

入ってきた人物を認めて、幾月に驚きが走る。

「く、空条先生!?まさか、桐条君、空条先生がペルソナ使い?!」

「はい、その通りです、理事長」

美鶴の肯定の言葉に続き、真田も口を開く。

「それも、かなり強力な、ですよ。幾月さん。
昨日、危ない所を助けてもらいました」

「真田君、それは本当かい!?」

もう、幾月は驚きっぱなしだ。

268 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:14:45 ID:mQoHoeBr0
「と、いう事だ。いろいろと世話になるな」

全然申し訳なさそうに言う承太郎。
そんな事は気にせずに、幾月は喜びの声を上げる。

「いえいえ!戦力が整うのは喜ばしい事です!そうだ!早く召喚器を用意しなくては!
いやー、最近、いろいろ動きがあって、財布が空っぽ。それにすっかり痩せちゃいましたよ。
ほら、よく言うでしょ?『貧乏肥満なし』って」

寒い駄洒落を残し、急いだ様子で幾月は寮を出て行った。

「…なんか、すいません。あれ、理事長の趣味、というかビョーキみたいなもので…」

自分の事ではないが、なんだか申し訳ない気分になったゆかりが謝罪を述べる。
承太郎は、ロビーのソファに座り、静かに首を振った。

「…いや、いい。気にしてねーぜ。さて、約束通り、『スタンド』について話そう」

スタンドという言葉に、いち早く反応したのは順平だった。

「ハイ!ハイハイッ!スタンドとペルソナって何が違うんですか?」

その言葉に、承太郎は口元を手で押さえながら、静かに言う。

「ペルソナってのは、色々覚えたり、力が伸びたりするんだろう?
だが、スタンドってのは発動した瞬間に、能力や力なんかが決定される。
例外はあるが、目立つような成長は殆ど見られない」

269 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:18:25 ID:mQoHoeBr0
その言葉に、真田が質問する。

「なら、スタンドというのは成長するペルソナに比べて劣ると?」

その質問に承太郎は首を振る。

「いや、一概にそうとは言い切れん。確かに、一人で様々な事がこなせる、という点では劣る。
しかし、スタンドは最初から物凄く強力な力を持っていたりするからな。
スタンドは、言うなれば…一芸特化。
磨き上げた才能がスタンドとして発現する事もあれば、その才能を補助するスタンドが生まれたりもする。
その人物の心根が反映されたものもある。ただまぁ、全く関係無さそうな力が現れる事もある。
ああ、あとだな、何種類かに分類できる」

「分類?って事は、スタンド使いって一杯いるんですか?」

承太郎はゆかりの疑問に答える。

「ああ。何人も知り合いにスタンド使いが居る。
話を戻すが、分類を簡単に言うとだ。
まず、近距離、中距離、遠距離の三つ。これはスタンドの得意とする距離だ。
次に格闘タイプ、補助タイプ、特殊タイプ、後は群体タイプ。
こっちは得意な戦闘スタイルってところか。大体はこんな感じだ。
本当はもっと面倒なんだが、戦う機会も無いだろうしな、これ位でいいだろう」

270 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 19:38:39 ID:mQoHoeBr0
承太郎の言葉に何度か頷いた後で、美鶴が質問をする。

「では、空条先生はどういったタイプなのですか?」

「ん。俺か?俺のスタンドは『近距離格闘タイプ』と言った所だ」

ふと見れば、普段無口な天道が、何か言いたげな様子をしている。

「なんだ?」

承太郎が質問を促すと、少し悩む様子を見せた後で口を開く。

「先生の能力って、どんなのですか?」

その言葉に、承太郎の周りの空気が変わる。

「スタンド使いにとって、能力を知られる事は、イコールで弱みを握られる事だ。
知れば対策が取れるからな。だから、殆どが秘密にしている。
話すなら、お前達にだけ、教えようと思う。お前達は、聞いて絶対に話さないと誓えるか?」

承太郎はとても真剣な表情で、5人を見る。

271 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 20:20:56 ID:mQoHoeBr0
5人も真剣な顔で、承太郎に応える。

「秘密は守ります、必ず」「約束します、誰にも言いません」
「オレも誰にも言わないっス」「私も言いません」「誓います」

美鶴、真田、順平、ゆかり、天道が次々に言った。
それを見た承太郎は、ゆっくりと口を開く。

「わかった。だが、今ここではやめておこう。
次にタルタロスに行く時、エントランスで教える」

それを聞いた順平が不満の声を上げる。

「えぇー!?なんスか、それぇ?」

それに苦笑いしながら承太郎は、

「まぁ、そう言うな」

となだめた。
その後、暫く、これからの事を簡単に話していると、美鶴が思い出したように言う。

「ところで、空条先生。学校にお勤めになられる1年間は、どちらにお住みになられるのですか?」

「ん?辰巳グランドホテルに滞在するつもりだが?」

それを聞いた真田が、何かを思い出すような顔になる。

「確か、辰巳グランドホテルと言えば…」

272 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 20:22:17 ID:mQoHoeBr0
順平が、真田の言葉に続く。

「めちゃくちゃ高級ホテルじゃないっスか!?」

さらにそれに続くゆかり。

「そこに一年間も?もしかして空条先生ってスゴイお金持ち?」

「さあな」

口元に小さな笑みを浮かべたまま、承太郎はゆかりの質問をはぐらかした。
美鶴は、申し訳無さそうに承太郎に言う。

「あそこと比べては、かなり見劣りしますが、空条先生もこの分寮に住んでいただけませんか?
影時間は機械が動きません。有事の際に、連絡が取れないと困りますので」

それを聞いた承太郎は頷き『解った』と短く返した。

「有難う御座います。部屋は、この寮の裏にある別館の寮長室を用意しておきます」

「ホテルの方は引き払わねばならんな。済まんが、今日、タルタロスへ行くなら、お前達だけで頼む」

「あの、こちらの都合でホテルを引き払っていただくのですから、
桐条グループで、多少金額の面を保障させて頂きたいのですが…」

おずおずと言う美鶴に承太郎は、小さく笑みを浮かべて言う。

「SPW(スピードワゴン)財団はそんなにケチじゃあねぇぜ。それじゃあな」

そう言って、承太郎は寮を去った。

273 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 20:24:00 ID:mQoHoeBr0
承太郎の言い残したSPW財団と言う言葉に、ゆかりが口をパクパクさせて言う。

「き、桐条先輩、スピードワゴンって」

それに続くように、真田も言う。

「美鶴、あのスピードワゴンか?」

「ああ。空条先生はSPW財団と深い関わりがある。
何でも、御爺様が現在の代表に就いていらっしゃるらしい」

美鶴が告げると、ゆかりと真田はそろって溜め息をつく。
そして、一人だけ置いていかれた感のある順平。

「え?え?何?SPW財団ってそんなスゴイの?」

「伊織。もう少し新聞を読んだほうがいいな。SPW財団はSPW石油を母体とする財団だ。
主に、医療の発展や自然保護に尽力している団体で、その資産は桐条グループが霞んで見えるくらいだ。
と、言えばその凄さが解るか?」

美鶴の言葉に、順平は少し唸ってから口を開く。

「とりあえず、空条先生のバックにスゲー組織がついてるってのは解ったッス」

やっぱりよく解ってない順平であった。

274 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 20:25:14 ID:mQoHoeBr0
「あっ!」

っと、忘れていたものを思い出したような声を上げるゆかり。

「どうした、岳羽?」

真田はその声に、怪訝な顔をして訊ねる。

「いやその…。大した事じゃないんですけど。
空条先生の遅れてきた理由、聞きそびれちゃったな、って」

ゆかりの言葉で、順平も思い出したのか、膝の辺りをポンと叩いた。

「すっかり忘れてたぜ。桐条先輩は、なんか聞いてないんッスか?」

「いや…。海外に用事があって、としか聞いてないな。
また会うんだ、そのときに聞いてみればいいだろう」

それから暫くして、今日のタルタロスは昨日の疲れも残っている事から取りやめと言う事になり、
皆が、それぞれの部屋に戻っていった。

275 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/20(日) 20:27:32 ID:mQoHoeBr0
夜10時過ぎ、辰巳グランドホテル
承太郎は荷解きを殆どしていなかったお陰か、思っていたよりも早く、荷物を纏める事ができた。
明日からの生活と、戦いを考え、少しばかり苦笑いを浮かべて、就寝する。

その晩、承太郎は夢を見た。
黒と白のタイルの敷かれた廊下。そこを滑るような速さで動いている。
その廊下の先で、眩い光に包まれると、いつの間にか自分が椅子に座っている事に気付く。
軽く、頭を振って顔を持ち上げてみると、前に奇妙な雰囲気を纏った人影が二つ。

「ようこそ、我がベルベットルームへ」

 /l_______ _  _
< To Be continued | |_| |_|
 \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

月光館学園巌戸台分寮、別館。
そこは本館にはない、キッチンや風呂なんかがある、本館の裏にある建物である。
別館についてはキッチリ設定が存在するので、捏造ではない。念の為。

276 :作者の都合により名無しです:2007/05/20(日) 21:16:41 ID:A9tviCmW0
投下終了…ということでいいのかな?
GJ!この先の展開が楽しみだ

277 :作者の都合により名無しです:2007/05/20(日) 22:22:50 ID:3HeU1P8L0
>DBIF
お、いよいよ本題突入ですね。メインメンバーはほぼ予想通りだけど、
18号は残念だなあ。クリリンとの夫婦コンビが見たかった。
でも天津飯とほぼ同等のクリリンが行っても役に立つかな・・
個人的にヤムチャは未来へ行ってほしかった。そしてすぐ死んで欲しかったw

>ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志
期待に答えてくれる、これからの展開に関心度たっぷりの出だしですね!
シャドウとスタンドは同じタイプのエネルギー体なのかな?倒せるって事は。
壇上からの一喝が承太郎らしくていい。まだまだ老け込んでないみたいでカッコイイ!
承太郎以外の生徒たちもイキイキとしてていいですな。


278 :ふら〜り:2007/05/20(日) 22:22:58 ID:cA0kB7CD0
>>クリキントンさん(テリーの旧テーマ曲を思い出したりして)
まだプロローグが終わったばかりですけど、早くも敵の存在を二種提示。サイヤ人側とは
一時的に手を組むとかもあるのかも? でトランクスはやっぱり、こっちのバージョンが好き
なので嬉しいです。と言いつつ絵で見たいなぁと思ったのは18号のクリリンしごきだったり。

>>邪神? さん
行くかブルー。まぁキャラ的にすんなり仲間にってのも勿体無い気もしますし、能力的に便利
過ぎるってのもありますし。でも二転三転の末にまた一緒に戦うと期待。にしても鳳凰天駆
がファンタジーに強く美しかっただけに、銃器の冷たさや威圧感が際立って感じられました。

>>ハロイさん
読者視点だと、もう静って「学校に慣れた」どころじゃないですよね。なんだかんだで、男女
両方で気にかけてくれる友達もできてますし。私は派手な戦闘よりむしろ、日常風景の方が
技術いると思いますよ。そこからじわじわと不思議空間が広がっていく、静かな迫力が何とも。

>>三部外伝さん
しぇきさんが勇次郎先生を書かれましたけど、承太郎先生ってのもスゴそう。そういえば、今
でこそ学者なんてやってますけど、元々は立派な不良でしたしね。今回の赴任の挨拶なんか
見せ付けられると、「俺も昔はワルだった」とか言われても充分納得。授業風景は出るかな?

279 :作者の都合により名無しです:2007/05/21(月) 00:14:34 ID:Lq5VShNc0
>ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志
待ってたよ!ベルベットルームに承太郎…すげえ絵面だなあ…
…なんか、悪魔絵師VS岸部露伴が脳内に繰り広げられて吹いたw

280 :作者の都合により名無しです:2007/05/21(月) 00:25:39 ID:TJYXdEut0
>クリキントンさん
戦闘力はなくとも、クリリンは重要なキャラで動く予感
ベジータはまたみっともない姿を晒すんだろうか?w
(多分)遅れてくる悟空というのはDBの王道ですな。

>未来への意志作者氏
またワクワクする序章ですな。完璧超人承太郎が輝いている。
ペルソナ知らんですけど、日常の中の怪奇、というのはある意味4部っぽい。
もしかしたら承太郎VS悪魔ってのもアリかな?

281 :DBIF:2007/05/21(月) 22:54:41 ID:EfKioeBM0
半年後。
ブルマの家の前にクリリンと人造人間18号が立っていた。
「いよいよ出発だな。死ぬなよ」
「あ、ああ。まあ俺は精々フォロー役だし、死ぬことはないんじゃないかなー、なんて」
どことなく自信なさげなクリリンの前でドアが開き、その向こうから悟飯、ベジータ、トランクスの3人が現れた。
「いよー悟飯。トランクスにベジータも」
「お久しぶりです、クリリンさん」
「お久しぶりです」
「ふん、怖気づかずに良く来たな」
悟飯も、トランクス、ベジータも相変わらずの反応だった。ただ一つ違っていたのは、
「あれ?お前また少し大きくなったんじゃねーの?」
「そうですか?自分じゃ、あまり気付きませんけど」
クリリンの言う通り、わずか半年前に比べて悟飯の背が伸びていた。今ではわずかにクリリンより高いくらいになっている。
「よう、久しぶり」
続いてヤムチャが現れた。既に棄権を表明しているためか、気楽な顔で笑いつつ、服装も普段着であった。その後ろには
やはり普段着の天津飯と餃子の姿もある。
「揃っているようだな」
「お久しぶりです、皆さん」
最後に現れたのはピッコロとデンデだった。ピッコロはいつもの姿だが、デンデは両手に、容器に収まった彫像のようなものを
抱えている。おそらくは向こうで神龍となる原型だろう。
「それではタイムマシンに向かいましょう。こちらです」
トランクスの案内で、未来行きのメンバーとヤムチャ、天津飯、餃子、18号は、ブルマの家の庭にあるタイムマシンへと向かった。


282 :DBIF:2007/05/21(月) 22:56:28 ID:EfKioeBM0
個人の家の庭とは思えないほど広い土地に、以前悟空のために作られた宇宙船を思わせる巨大なタイムマシンが居座っている。
タイムマシンの入り口にはブルマの姿があったが、何故か見知らぬ男がその隣に立っていた。
茶色の髪をラフに纏め上げ、珍しい灰色の瞳をした顔はトランクス並に整っている。体格はかなり大きいが、特別筋肉質という
わけでもない。その身体にシンプルな黒いシャツを着て、その上に厚い襟のついたジャンバーを羽織っている。やや色の褪せた
ズボンからは、硬質感のある靴が覗いていた。両耳にシンプルなピアスをつけてはいるが、軽い雰囲気は見られず、むしろ
どっしりと落ち着いた気配を漂わせている。
「あ、来た来た。エネルギーはたっぷり充填したし、いつでも出発できるわよ」
「わざわざ迎えてもらってすみません。ところで隣の人は・・・」
トランクスの言葉に、ブルマは悪戯っぽい笑みを浮かべると、隣の男に目配せした。
「久しぶり、というのもおかしいな。俺はこのブルマさんに造られた、人造人間タイプCC。通称スパッツという」
「人造人間?!」
クリリンが驚きの声を上げる。他の者も声こそ上げなかったものの、クリリン同様ショックを受けた表情でスパッツを見ていた。
「以前、人造人間16号をいじくらせてもらった時に得た知識から、私が作ったのよ。もちろん人を襲うことはないわ。それにスパッツの
人工知能には、あのセルゲームでほとんど破壊された16号の人工知能から、可能な限りサルベージできた知識や記憶を入れてあるの。
言ってみれば、生まれ変わった16号ってとこね」
「はあ、なるほど・・・(外見が全然違ってるのは、完全にブルマさんの趣味か)」
間の抜けた返事を返すクリリンをよそに、ブルマは皆のリアクションに満足した笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「座席は1つ空いてるんでしょ?だったらこいつを連れて行くといいわ」
「今のこの身体でどの程度役に立てるかはわからないが、出来る限り協力させてもらう」
こうしてスパッツを加え、定員の7人となった一行はタイムマシンに乗り込んだ。
トランクスの操作で入り口のドアが閉じ、機体が細かく振動を始めたかと思うと、空高く浮き上がる。
「行ってらっしゃーい」
「死ぬんじゃないぞ」
ブルマや18号の声が飛ぶ中、タイムマシンが光に包まれ、一行は未来へと飛んでいった。


283 :クリキントン:2007/05/21(月) 22:58:33 ID:EfKioeBM0
この間書き切れなかった分を投下します。

>>277さん
ふらーりさん
>>280さん

感想感謝です。

>ジョジョ外伝作者氏
自分今P3フェスやってる上に大のジョジョファンなので
見事にすんなり読ませてもらいました。
承太郎が教師ってことは年齢的には第4部に近いのかな?
これからの展開が楽しみです。

284 :作者の都合により名無しです:2007/05/21(月) 23:22:48 ID:zO3h0zv60
スパッツはオリキャラ第一号でしょうけど、
16号を参考にした割には結構、美形っぽい?
でも18号連れて行ってほしかったな。


285 :作者の都合により名無しです:2007/05/22(火) 00:40:05 ID:emuw2QkC0
クリキントン氏、いいペースで頑張ってるね
この調子でどんどん更新してください

286 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/22(火) 02:29:24 ID:15MHX3vW0
突如、上階から爆発音が響いた。
窓ガラスは細かく震え、靴底からも地鳴りのような振動が伝わってくる。
「上が随分と騒がしいようだ……」
サムナーはわずかに天井を見上げると、またすぐに火渡の方へ視線を戻した。
怒りの形相をこちらに向ける火渡の方へ。

火渡はその場を動かない。
炎に似たる激情の男、火渡でさえも充分すぎる程にわかりきっていた。
負傷を抱えて身体の自由が利かない千歳を人質に取られている。
そして敵は、火渡の速さを遥かに凌ぐ光速の武装錬金を千歳に向けている。

敵?
そう、彼はもはや敵なのだ。
指揮官であった筈のサムナーが、今や憎むべき敵となって自分達の命を脅かしている。
彼の意にそぐわない行動を取ればどうなるかは、それこそ“火”を見るより明らかだ。
火渡は充分に自分の置かれた状況を理解していた。

さて、どうするべきか。

“憎むべき敵”マシュー・サムナー戦士長は、火渡からスッと視線を外した。
どこを見ているのか。火渡からロックオンを解除し、己の射程内全体を見渡しているようにも見受けられる。
その実、どこも見ていないようにも。
やがてサムナーはその独特の、低く渋味のある声を紡がせて、ひとつのお伽噺を語り始めた。
楽しそうに。誇らしげに。

287 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/22(火) 02:31:05 ID:15MHX3vW0

「百年前……。ほんの百年前まで我々大英帝国支部は欧州を中心とした、世界各地に存在する
錬金戦団各支部の盟主だった。
それも当然だ。本来、中世は大英帝国の錬金術師のギルドに端を発したのが、錬金戦団の始まり
なのだからな。
核鉄の管理、ホムンクルス共の討伐、そして賢者の石の精製……。すべては誇り高き我が大英帝国支部が
先頭に立って行っていたのだよ」
自尊心に満ちた声が、徐々に暗さと哀愁の色を帯びてゆく。
「だが……。それも一人の反逆者を生み出した事によって、何もかもが破滅した。
反逆者の手によって大英帝国支部は壊滅寸前にまで追い込まれ、核鉄もその多くが世に流出し、
失われてしまった。
そして、賢者の石の研究すらも永久凍結されたのだ……」

キッと眼を上げ、火渡を睨みつける。
火渡の髪を。火渡の瞳の色を。火渡の顔の骨格を。火渡の肌の色を。

「以来、大英帝国支部の権威は失墜してしまった。主導権(イニシアチブ)も日本支部に奪われた……。
あの低俗な黄色い猿共が住む島国に……! 反逆者が逃げ延びた国というだけで!」
憤りを孕んだサムナーの声は徐々に激しくなっていき、遂に爆発した。
「そんな事が許せるか!? 世界の錬金戦団の頂点に立つべきは我々、大英帝国(グレート・ブリテン)だ!!」
そして拳を握り締め、声を張り上げる。鉤十字の男さながらに。
「ならば、するべき事はひとつ……。私のするべき事はたったひとつ。錬金戦団をあるべき姿に還すのだ!
大英帝国支部の栄華を今一度、取り戻すのだ!! この私の手によって……!」
猛る胸のうちを吐き出して息を荒げるサムナー。
火渡は腕を組み、そんな彼を小馬鹿にするようにからかいの言葉を投げつけた。
「ケッ! それで? テメエの考えた“計画”ってなァ、俺達をこの場で殺して手柄を独り占めに
しようって事か? 安い野郎だぜ……!」
“この意外な程の激昂家の冷静さを失わせ、それに乗じて反撃の糸口を見つける”
火渡にも一応、“戦略”というものの心得くらいはある。

288 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/22(火) 02:32:52 ID:15MHX3vW0

しかし、サムナーは挑発には乗らなかった。
荒げた息を整え、心持ち胸を反らせて火渡を下目使いに見ながら、火渡に向かって吐き捨てた。
「フッ、おめでたい……。実におめでたい脳の出来だな、君は」
「あァん!? もっぺん言ってみろコラァ!」
どうやら相手を苛立たせる技術にかけては、この皮肉屋の戦士長の方が一枚も二枚も上手のようだ。
慣れない策を弄する火渡を、千歳は危なっかしい眼で見ているしかない。
相変わらず精神的優位に立っているサムナーは、まるで「ヒントだ」と言わんばかりに
二人にある質問を投げ掛けた。
「君達にひとつ聞きたい事がある。ゴキブリのように地下をウロウロするだけの無能なテロリスト共が、
どうやって裏の存在であるホムンクルスをテロに利用しようと思いついたのだろう?
よしんば思いついたとしても、果たしてそう簡単に開発出来るもの、かな……?」
「……ま、まさか」
千歳は首を捻って、歪んだ笑いを浮かべるサムナーの顔を凝視する。
「ハハハハハ! そうだ、その『まさか』だ。すべてはこの私がお膳立てをしてやったのだよ。
ホムンクルスも! テロリスト共の活動資金も! すべてな!」
まるで狂気の沙汰だ。行動の意図するところがまるきりわからない。
火渡と千歳の理解の範疇を超えている。一体、どういう事なのか。
「何考えてんだ、このクソ野郎が……!」
「どうして……? 何の為にそんな……――うぐっ!」
千歳の発した疑問の声が喉で詰まる。
“私の話を邪魔するな”と言わんばかりにサムナーが、彼女の細く色白な首を締め上げたからだ。
「社会の敵(パブリック・エネミー)であるテロリスト、それも大英帝国や英国国教会に敵対するIRAからの分派集団。
更には、そのテロリストがあやつるホムンクルス。
どうだ? “錬金戦団”“大英帝国支部”が討伐するには相応しすぎる相手とは思わないかね?」
火渡にはサムナーの計画がようやく理解出来てきた。
そして、その理解の度合いに比例して、激怒のメーターを針が振り切りそうになっている。
サムナーはそんな火渡の怒りさえも楽しむかのような表情で話を続ける。

289 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/22(火) 02:35:07 ID:15MHX3vW0
「どうやら残念な事に今回は芳しくない結果に終わりそうだ……。だが、悲観はしていない。
テロリスト共はNew Real IRAだけではない。私の広いコネクションを駆使して、また新たな組織と
“契約”を結んである。
彼らはNew Real IRAのような田舎のマイナー組織とは訳が違う。人員も、活動範囲も、狂信振りも。
君達も聞いた事くらいはあるだろう? イスラム系武装テロリスト・ネットワーク“アルカイダ”の名を……」
「何だと!?」
「何ですって!?」
予想だにしない事実に、火渡も千歳も眼を丸くした。
サムナーの言葉が本当ならば彼は錬金戦団だけではなく、イギリス国民として、更にはキリスト教徒として
英国国教会さえも裏切っている。
「彼らお得意の“自爆テロ”もホムンクルスを利用すれば、また変わったものとなるだろうな。
今から楽しみだよ……」

この戦いより数年後、新世紀を迎えた年の9月に起こるであろう未曾有のテロ事件。
それはこの野心家の不吉な“予言”が成就したものであろうか。

「ホムンクルスをあんな世界規模のテロリストなんかに渡したら大変な事になるわ。
奴らは普通の武器では倒せない。どんなに強い軍隊だって倒せっこない。世界のバランスが崩れてしまう……。
一体、どうするつもり……?」
千歳の問いに、サムナーは恍惚とした面持ちで答える。己の輝かしい未来を思い浮かべるよううに。
「決まっているじゃあないか! 錬金の戦士が倒すのだよ。それも我々大英帝国支部主導の下に、
戦士長であるこの私が指揮を取ってな……。
世界は感謝するだろう、絶対悪であるテロリスト共と恐ろしい化物を倒してくれた謎の存在に。
そして他国の戦団支部も大英帝国支部を、この私を尊崇の眼で見る……」
火渡の握る拳が一際強く震える。
「何もかもを自作自演するって事か……。テメエは……テメエは錬金の戦士なんかじゃねえッ!!」
サムナーはお得意の芝居掛かった仕草で肩をすくめると、フゥと短く溜息を吐いた。
「やれやれ……。いいかね? ご立派な倫理観や信仰心だけでは食ってもいけなければ、
栄光を掴み取る事も出来んのだよ。私は“プロフェッショナル”だ。“プロの戦士”だ。
大英帝国支部を再び元の姿に立ち還らせる為には、私はどんな事でもする。
いない敵を作り出すなんぞ簡単だ……」

290 :WHEN THE MAN COMES AROUND:2007/05/22(火) 02:38:29 ID:15MHX3vW0
「あなた最低だわ!!」
千歳のこれまでの人生で初めてと言っていいくらいの怒声。
己の野心と身勝手な組織愛の為に一切合切を裏切ったこの男に対しての、心底の憤怒と軽蔑が
千歳に声を上げさせた。
「フフフフフ、何とでも言いたまえ。もうこの“計画”は誰にも止められない。君達もここで死ぬ」
爆発寸前の火渡が静かに一歩を踏み出した。
「させるかよ……!」
その動きに反応して、すぐさま四つのビットが射出口を千歳の顔に集中させる。
「いいや、そうなる。私が君達を殺すのだから。それに、一階にいる戦士・ブラボーは“彼ら”が片付けてくれる。
私が新たに開発した合成獣(キメラ)型ホムンクルス“シャムロック”と、私の可愛い部下が!」
「部下……? そうか、あのクソガキもテメエの仲間だったってのか……。そんなら……」
あまりの激しい感情の嵐に、火渡は照星部隊以外の人間がすべて信じられなくなっている。
見直しかけていたウィンストンにすらも疑惑の念が止められない。
「それは違うな。私はただ、彼の望みを叶えてやっただけだ。まあ、手に入れた力をどう使うかは
彼の自由だがね……」
サムナーの言葉だけでは、防人とジュリアンの現在の状況を推し量るには難しすぎる。
千歳の脳裏には頼り甲斐のある防人のハツラツとした笑顔と、少年臭さが抜けないジュリアンの
可愛い笑顔が同時に浮かんでいた。
信じたい。二人の無事を。防人の強さを。ジュリアンの優しさを。

「防人君……。ジュリアン君……」

千歳が呟いた二つの名。防人衛と、ジュリアン・パウエル。
二人を待ち受けていた運命が、どんなに過酷で、陰惨で、悲痛なものか。
それはこの場の誰にも知る由は無い。少なくとも、今、この時は。



次回――
選択。必然。DEATH TALK。再度の対峙。
《EPISODE12:When the man comes around》

291 :作者の都合により名無しです:2007/05/22(火) 15:19:15 ID:TPpd+vWs0
さいさんお疲れさんです!

うわ、説明セリフ多!w
でもサムナーの口から薄皮を剥ぐように秘密が語られていって
物語の終着が近いことを感じさせてくれます。
火渡と千歳がカマセにならないように祈ってますw


292 :作者の都合により名無しです:2007/05/22(火) 22:35:38 ID:AnH5LKk40
さい氏、いよいよ物語のラストスパートですね。
あと5話くらいなのかな?
黒幕も発覚したし、サムナーの「冥土の土産に教えてやろう・・」みたいな
語りも今回炸裂したしw
火渡は十分戦力になるけど、千歳は補助要員みたいな能力だから
結構人質にとられて足引っ張りそうですね。

293 :作者の都合により名無しです:2007/05/23(水) 01:26:52 ID:zB1OLxZ90
千歳の陵辱シーン・・はないかw
さい氏お疲れさんです。
サムナーの悪役振りがいい感じで火渡りがナイスガイに見えてくるから不思議。

294 :作者の都合により名無しです:2007/05/23(水) 12:06:21 ID:agAvpbn40
さいさん頑張ってるな。俺も書かなきゃ…

295 :作者の都合により名無しです:2007/05/23(水) 23:02:15 ID:0+0F23Xi0
さいさんもスターダストさんも、サイト見ると
仕事テンパってるのに頑張ってるね。
294氏が誰か知らんけど、頑張ってくれ。

296 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:18:54 ID:C3S+eyNR0
 ――見える。
 悪魔が見える。魔弾を打ち破り、私に向かってきている。
 あの身体から立ち上るのものはなんだ。
 そうか。あれが死か。あれが私を奈落へ突き落とす存在なのか。
 ああ。
 おかしいな。
 速く、速く弾丸を取り出して。
 つめて。 
 狙いをつけて。
 撃たなきゃいけないのに。
 どうして。
 わたしのからだは。
 ちっともうごかないのかな。

 いや。
 うごいてはいる。
 歯の、
 腕の、
 足の、
 全身の、
 動きが、
 震えが、とまらない。

「あ、ああ。ああぁぁぁぁぁぁ……!」

 魔弾が破れたことは、彼女に多大な心的ダメージを負わせていた。魔弾は彼女の力
そのものだった。彼女の闘争者としての支えだった。その支えを、完全に粉砕された
のだ。魔弾――仲間のヴェアヴォルフ達でさえ無力化するのが至難の魔技。それを油
断していた一度目はまだしも、必殺で望んだ二度目まで破られてしまった。


297 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:21:07 ID:C3S+eyNR0
 真っ向から打ち破られた。それは、彼女にとって敗北を意味した。単純な敗北では
ない。彼女の存在を揺るがす、決定的な敗北だ。死に抵抗する手段を剥ぎ取られた
彼女は、ただ怯え泣くだけの少女に戻ってしまった。

 そこに、彼女にとって最悪な状況下の中に、男は降り立った。シグバール。
 右腕を失い、反対の腕もぼろくずのようになった男は、まさに満身創痍だった。
常の彼女ならば、嬉々としてシグバールに魔弾を撃ち込んだろう。しかし、もう魔弾の
射手はこの場に一人しかいない。その称号は今の彼女に相応しくない。

 魔弾という危険に晒されながら空中を行くデスマーチを終えたシグバール、
その後の行動は素早かった。闇の中に蠢くシルエットを確認すると同時に、左手の
ガンアローの照準を標的に合わせ、撃つ。一瞬で合計六発の、神域の早業である。
それはリップヴァーンの四肢をことごとく破損させ、彼女の戦いの道具――長大な
マスケット銃を破壊した。

「あぎっ!」
 衝撃に吹き飛んだリップヴァーンは、背後の壁に激突し、ずるずると力なく崩れ落ちた。
そのまま、立ち上がり反撃してくる気配はなく、骨の髄にまで響く痛みに煩悶するのみ。

 が、彼女は吸血鬼だ。手足を損傷したぐらいでは止まらない。傷は一瞬で再生する。
それだけではない。人をボロ雑巾のように引きちぎる力、銃弾を通さない肉体、
音速に迫るほどの身体能力、そのどれもどれこもが、吸血鬼を地上最強の生物に
押し上げていた。銃を破壊されたとはいえ、十分に戦うことが可能だった。

 ――だが、今の彼女にそれが出来るのだろうか。
「ひ……ぃ……ぃやぁ……」
 耳を凝らさなければわからないほど小さく、漏れるそのあえぎ。彼女を染める
恐怖、畏怖。心を絡めとり、奈落へといざない、虚無へと還そうとする――彼女は
それから逃れようとするが、叶わない。


298 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:22:47 ID:C3S+eyNR0
 マスケット銃は壊れてしまったから。もう魔弾は撃てないから。
 死が、恐怖が嗤い、畏怖がさえずるのを、私は何も出来ずにされるがまま。

 立ち上がろうとする気力すら湧かない。恐怖を克服する前に、四肢を破壊された
のが不味かった。十分な時間さえおけば、それこそ一分さえあれば彼女は戦意を
回復出来たろう。

 しかし、傷口から流れ出る血が零落する命を想起させ、さらに拠り所であった
マスケット銃を失ったことが、彼女から戦いの気概を削ぎ落としていた。その口端
から漏れる言葉にはすでに意味はこもってはなく、ただ恐怖によって歪められる音律
と化している。もはや彼女に勝利はない。何故なら彼女は吸血鬼ではなくなったからだ。
軍人ですらない。部屋の隅でガタガタ震えて命乞いをする類の、無力な人間だ。

「くあッ」

 対するシグバールも、余裕はない。光弾を撃った反動により、左腕に激痛が走り、
ガンアローを落としてしまった。乾いた音を立て紫の魔銃が床に転がる。

 無理もない。魔弾により肉や骨がぐずぐずになった左腕では、少しの動作でも激痛が
伴う。ガンアローを撃てたことは、まさに奇跡だった。だが、もう奇跡は必要ない。
 ――後は生き汚い俺の領分だ。

 シグバールは踵を軽く床に打ち付けた。鋭い音が鳴り、彼の靴から銀光が飛び出る。
その正体は鋭敏なナイフだ。それの使用法はたった一つ。あの吸血鬼が回復しないうちに
懐に飛び込み、心臓を一突きにする。その一点のみに集約する。

 いかに不死身の怪物とはいえ、心臓が破壊されれば、吸血鬼は灰に還る他ない。彼らとの
近接戦闘は死を意味するというが、適切なルールを踏み払うべき代償さえ払えば、たとえ
非力な存在でも不死者に死をもたらせる。シグバールは奥歯を思い切り噛み締めること
で痛みを誤魔化した。最後の一撃のために。

299 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:24:04 ID:C3S+eyNR0
 そして疾走。踏み込み。跳躍、宙に浮く身体。左足を限界まで振り上げ、狙いを
胸の辺りに定める。これで終わりだ。またいつものように、障害を排して、生き残った
だけのこと。シグバールは特に感慨を持たない。感情の激変もない。シグバールは
冷え切っていた。胸に心が入っていないのだ。

 ――だが。そのとき、彼女の顔が、シグバールの視界に入ってしまった。
周囲は暗かった故に、おおよそのシルエットは判別できたものの、その表情の機微までは
わからなかったのだ。

 彼女は――シグバールからすれば驚いたことに――泣いていた。その様は、戦い
など知らない、ただ恐怖に怯える女性にしか映らなかった。
 ああ、と、シグバールは溜め息をついた。

「泣けるお前は、幸せもんだな」
 ぽつりと呟いたその言葉には、泣くという感情を永久に失った男の、狂おしいほどの羨望
が滲んでいた。“心”の底から搾り出した、とても悲しい言葉だった。

 稲妻のように左足が振り下ろされた。


 ――かに見えた。

「ぐあ、がッ!」

 狙い過たず放たれた左足の一撃は、しかし横合いからの銃弾によって、撃墜された。
三度放たれた銃弾のうち一つはナイフを粉々にし、もう一つはシグバールの足首に着弾し、
関節を破壊。最後の一つは翻ったコートに穴を開けるのみ。
 
 着地さえままならず、シグバールは床に激突する。何が起こったのか。混乱にゆれる意識は
、今の不可解な現象と、激突の衝撃によって、なかなか回復しなかった。

300 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:25:22 ID:C3S+eyNR0
 その揺らめく視界の中に、黒い軍服を着た男がいた。
 真紅に灯った瞳で、シグバールを見ていた。


ここで時間は巻き戻る。
 喰屍鬼(グール)がおこした混乱に揺れる摩天楼を、一つの影が人知を超えるスピードで移動
していた。その影は32年型の勤務制服姿――第三帝国の制服といえばだれもが真っ先に思い浮
かべる、あの黒服を着た男だった。死が死を呼ぶ煉獄を抜け、彼はある高層ビルにたどり着いた。

「ここか」
 ぼそりと一言呟くと、彼はビルに接近し、壁の上を垂直に走り出した。重力を無視したその
行動は、吸血鬼にしか為しえない芸当だった。

 彼はリップヴァーン・ウィンクル中尉に同行してきた武装親衛隊だった。
新大陸侵攻作戦の要――吸血鬼/喰屍鬼生産工場の設立、そしてその成果を確かめるために、
彼は一人のヴェアヴォルフとともに派遣されていた。たったの二人。これほどの少数
の人数しか派遣されなかったのは、この国――アメリカにはヴァチカンなどの古く、
強大な対魔組織が存在しないためだ。もし似たような組織が存在したとしても、せいぜい
フリーの吸血鬼ハンターの寄り合いぐらいだろう。そして有象無象の吸血鬼ハンターに
遅れをとるヴェアヴォルフはいない。故にたった二人の吸血鬼で十分だった。

 しかし、その自負こそが、リップヴァーンを生と死の狭間に追いやることとなり、彼を
こうして走らせる理由になっていた。
 自分だけでいいと、彼女は引きとめようとする彼を押し留め、一人で任務へ向かった。
止めることもできたが、彼はアジトでの待機を選んだ。
 そもそも自分の存在がおかしい。この任務は彼女一人だけで十分のはずだ。
それほどに単純な力の差がある。百人の吸血鬼を相手取っても、ヴェアヴォルフは楽々と
殺戮してのけるだろう。それも、たった一人で。生前さえも人間の枠を超えた超能力者だったにも
かかわらず、最後の大隊の吸血鬼化技術は、彼らに吸血鬼の枠さえ飛び越えさせていた。
 彼にとって、ヴェアヴォルフは脅威と驚異の産物だった。

301 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:26:51 ID:AJ9KqeYeO
 だから彼女が滅ぼされるなど、想像もつかなかった。吸血鬼の超知覚が、彼女の生命の灯火
が小さくなっていくのを捉えるまでは。身体が、自然に動いていた。そしてリップ
ヴァーンの元へと急いだ。彼女を助けるために。

 そして壁を登りきり、屋上にたどり着いたときに彼が見たものは……四肢を砕かれ
地に伏すリップヴァーン中尉の姿だった。

 頭に血は上らなかった。
 冷静に動くことは出来た。
 冷静に、彼女をあんな風にしたあのクソ野郎の喉下に、牙を突きたてよう。
 そう思った。
 
 禍々しく輝くナイフの一撃をルガーで無効化。そして彼は、無様に床に転がる敵
に向かって、シュア、と呼気を漏らした。そして流れるように床を疾駆。口を大きく開け、
シグバールに迫る。シグバールは対応できなかった。リップヴァーンがそうであるよう
に、シグバールもまた満身創痍だった。
 吸血鬼の牙が、シグバールの喉元に吸い込まれるように突き立てられる。
 その刹那。

 突然、彼とシグバールの間に――身の丈ほどの大剣(クレイモア)が打ち込まれた。


 間一髪、彼は大剣と激突せずにすんだ。吸血鬼の驚異的な反射神経の恩恵だ。突発的なことに
動揺しながらも、彼は後方へステップ、距離をとった。そして深追いせずにリップヴァーンの元
へ走った。戦場で培った切り替えの速さだった。殺せぬのなら本来の目的を果たすのみ。

 リップヴァーンに接近し、その身体をすばやく抱きかかえる。そして、大剣の方へ向き直った。
突然の来襲者を確認するために。

「そいつの仲間か」


302 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:28:19 ID:AJ9KqeYeO
 ――その声は感情がことごとく抜け落ちた、うつろなものだった。
 声の主は、大剣の上にたたずみ、両の瞳で二人の吸血鬼を見つめていた。澄んだ蒼い髪
と顔全体に走った十字傷が印象的な男だった。身を包むのはシグバールのものと同じ黒いコート
で、互いが仲間であることは明白だった。音もなく大剣から降り、シグバールの傍に着地。その
間も視線は動かない。絶えず吸血鬼に注がれている。 
「よう……サイクスじゃねえか」
「しゃべるな、シグバール。傷にさわる」

 サイクスと呼ばれた男は無造作にシグバールの腕をつかみ、そのまま起き上がらせた。
「いたた」という非難めいた声を無視し、シグバールに肩を貸した。
 
 吸血鬼は背から長い棒状のものを取った。人間をたやすく切断できる、鋭く研がれたスコップだ。
腰をかがめ、敵の動向を注視する。すでに吸血鬼の凶暴性はなりを潜めていた。彼はただの吸血鬼
ではない。ただの人間が吸血鬼化したのとはわけが違う。自己を徹底的に管理し、理性によって
心身を律する兵士は、恐怖と獣性をたやすく押さえ込む。故に彼ら吸血鬼化武装親衛隊は、人間が
磨き上げてきた戦いの理知を最大限に引き出し敵を殲滅する、最高峰の暴君――吸血鬼なのである。
だがそれでも、壁というものは存在する。吸血鬼は暴君であっても、覇者ではない。

「やめておけ、死ぬぞ」

 その言葉は彼の臓腑をえぐり、心臓にまで達した。ジワリと汗が滲み、手や足が小さく震え始める。
この感覚は何度か味わったことがある。東部戦線の塹壕の中、そしてあの「大尉」の目を覗いたとき
――いずれも、絶対的な死が具現したときだ。とても抑えきれない。普段の戦場とは、まったく違った。
 敵に、恐れしか抱けない。
 彼とその敵の間には、深い深い、圧倒的な力の差があったのである。
 相対すれば殺される。
 人間の理性も、吸血鬼の獣性さえも、そう結論づけていた。


303 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:29:36 ID:AJ9KqeYeO
 それでも彼は一歩前に出た。
 わかっている。だが、絶対に退けぬ時がある。
 今がそうだった。
 彼は自分の腕の中にあるものを意識した。
 そこには少女が一人いた。死に怯えるしか出来ない少女だ。
 腕に力を込めた。彼女を安心させるために。
 彼女をこんな風にした奴らが許せなかった。だから命を懸けようと思った。
 彼は愚かな男だった。しかし、どこにでもいるような男だった。


 蒼い髪の男は、吸血鬼の葛藤など何処吹く風、というように話を進める。

「本来ならしかるべき報復を与えるところなのだが……こいつの治療が先だ」
「こいつって……ちっとはセンパイを敬え、ってハナシだ」

「フン」とサイクスは無視。シグバールの舌打ち。

 それを契機にして、サイクスとシグバールから黒煙が噴出し始めた。ノーバディたちの次元渡り
の手段――「闇の回廊」が開いたのだ。それは見る見るうちに二人の周囲に広がり、吸血鬼の視界を
侵す。吸血鬼は身構える。何が起こっているかはわからないが、少なくとも彼女だけは守らねばなら
ない。そう気負う吸血鬼に、蒼い髪の男から投げかけられる、声。

「心配するな。もうお前達をどうこうする気はない。我らの目的は十分に達成されたからな。
まあ……今回のことは、こちらもそちらも多大な損害を負ったのだ。痛みわけということにして
おけ。――――――――さらばだ」

 闇が二人のノーバディに絡みつき、その全身を被った後に、地面に吸い込まれるように収縮し、
消滅した。そして彼らという存在をこの世界から消し去った。永久に。


304 :Der Freischuts〜狩人達の宴〜:2007/05/24(木) 14:31:38 ID:AJ9KqeYeO
「――――ふは」

 唐突に、彼は息を止めていたのを思い出した。新鮮な空気を求め、急いでマスクを剥がす。
余分な肉のない、絞られた顔が出てきた。縦に一文字に走る傷が左頬にあった。
 
 彼はリップヴァーンの様態を確認した。遅々ではあるが、四肢の再生は始まっている。
パニックは尾を引いていた。もうすこしすれば常の彼女に戻れるだろう。

 ひとまずの安心。しかし油断は出来ない。ヴェアヴォルフである彼女が戦えない以上、障害は
すべて自分が掃わねばならない。通常の軍隊はいざ知らず、ハンターどもに嗅ぎつかれるのは
厄介だった。奴らの手は長く、そして諦めることを知らない。故に迅速に脱出する必要があった。
 とりあえずは、渡米の手助けをした「心棒者」の場所に行こう。「心棒者」とは「最後の大隊」
の吸血鬼化技術に魅入られた人間だ。永遠を渇望する愚者。信頼に値せぬ人種だが、点数稼ぎが好
きな奴らは、「客人」を死んでも守りきるに違いない。そこまでいけば、安心だ。ハンターも、
ただの人間――「心棒者」の大部分は人間だ、今も、そしてこれからも――には、不用意な真似はできまい。

 決断を下し、彼は再びマスクをつけ、リップヴァーンを抱え隣のビルへ飛翔。つかの間の浮遊感。着地、
そのまま次から次へとビルを渡っていく。

 グールの大群の対処に忙殺される警察や軍は、その影に気づくことはなかった。




                     End/to be contined Epilog


305 :ハシ ◆jOSYDLFQQE :2007/05/24(木) 14:43:54 ID:C3S+eyNR0
新スレ、乙です(なにー

バレさん、復帰おめでとうございます。ご無事で何よりでした。
お体のほう、大事にしてくださいね。
それから、ssのほうは……一ヶ月以上遅れて、すいませんでした
でもあとはエピローグのみ。すぐにでも書いて次のSSに取り掛かります。
では。

306 :ふら〜り:2007/05/24(木) 22:02:03 ID:2ezvaoSY0
>>クリキントンさん
参考資料ありきのことで実力オンリーではないとはいえ、平然と人造人間を造ってしまう
のかこの小娘(って歳でもないか)は。今後のスパッツの活躍次第では、ゲロの立場がなく
なりそうな。16号のあの落ち着いた声は好きだったので、も少し若めにして脳内再生です。

>>さいさん
はいはいアヘン戦争アヘン戦争……と思って読み進めてたら、過去から未来へと貫いて
くれました鬼畜英人。前回も今回も、ややこしい人物関係などを使わずして大きな衝撃を
創ってて溜息です。ダラダラ語りにならないのは千歳の存在と火渡の怒り、この辺も見事!

>>ハシさん
もうエピローグですか。寂しいですけど既に待機済みという次回作に期待。で今回は、私の
大っっ好きな「お姫様を救出する騎士様」でした。もちろん立場的には悪役ですけど、リップ
が弱っていく描写が丁寧でしたから、助けられてホッとしました。さあ傷の癒えた彼女は……


307 :DBIF:2007/05/24(木) 23:15:23 ID:XjDm0oyh0
トランクスがスイッチを入れた瞬間、辺りの景色が歪み、一瞬閃光が走ったかと思うと別の景色に変わっていた。
「あれ・・・・・・?もう着いたの?」
「はい。移動に膨大なエネルギーは食いますが、移動自体は一瞬で済むんです」
悟飯の質問に、トランクスが振り向きながら答えた。
「はあ、なあんだ。もっとアニメでやってるみたいに色んな時代の景色が通り過ぎたりすんのかと思ったのに」
拍子抜けしたようなクリリンの声に場が和やかになる中、ベジータは即座に異星人の気を探っていた。
「ではすぐに降りて下さい。念のため、破壊されないようカプセルに収納しますから」
トランクスの言葉に従って全員が外に出ると、タイムマシンを収納するトランクスと、今だにのん気なクリリン以外の
顔が全て一つの方向を向いた。
「大きな気が向こうにありますね。トランクスさんの話だと変身するらしいけど、今の状態でもかなり大きい」
「どうする?すぐに行くか?」
ベジータの問いに、全員がうなずいて返した。

無機質な機械の立ち並ぶ暗い空間の中、異星人が荒い粒子が埋めるディスプレイの前に立っている。
『では、第一段階は終了したのだな?』
「はい。結果が出次第、次の段階に進みます」
その荒い粒子の向こうから聞こえる声に、異星人は答えた。その声には緊張が詰まっている。
『出来る限り早く進めろ。こちらの計算では『奴ら』はもう30ビクト後にはそちらに向かうはずだ』
「はっ!『奴ら』が来るまでに最低第三段階まで進めます。むっ?!」
突然異星人の首が後ろを向いた。それは正しく悟飯達がタイムマシンで現れた方向であった。
『どうした?ゾレ』
ゾレと呼ばれた異星人はなおもそのまま首を固定していたが、おもむろにディスプレイに向き直った。
「申し訳ありません。先日報告した現地のサイヤ人らしき奴が生きていたようです」
『何?』
「可能な限り迅速に、今度こそ確実に殺し、第二段階に入りますのでお許し下さい」
『いいだろう。ただし、二度目の失敗は命がないものと思え』
その言葉が終わるのと同時に、ディスプレイを埋めていた荒い粒子が消え、ゾレの周囲を闇が包んだ。
「クソったれ、まだ生きていやがったか!」
ゾレの顔はこの上もない憤怒に染まっていた。それは単に生き残っていたのが気に入らないという以上のものを
孕んでいた。
「しかも今度は複数か。ふん、小ざかしい」


308 :DBIF:2007/05/24(木) 23:17:34 ID:XjDm0oyh0
悟飯達が宇宙船の前に降り立つのを見計らったかのように、宇宙船の入り口からゾレが姿を現した。
恐らく悟飯達の気を感じたのだろう。
「まだ生きていたか。それで、今度は仲間を連れて一緒に攻撃か?馬鹿め、数がいればどうにかなるとでも思っているのか!」
言うのと同時にゾレの身体が変身する。それに合わせて身体を包むオーラも一気に膨れ上がった。
しかし、わずかに動揺しているクリリン以外はそれを見ても眉すら動かすこともなかった。
「すいません、ここは俺にやらせて下さい」
と、トランクスが前に出る。その眼に恐怖のないことがゾレの頭に疑問を浮かばせた。
「何のつもりだ?お前一人では俺にかなわないことはこの間の・・・」

グワッ!

と、そこでゾレの言葉は途切れた。
目の前に立つサイヤ人は、先日自分に手も足も出なかったサイヤ人と同じ姿、同じ声でありながら、まるで別人のように凄まじい
気を放って見せたのである。
その姿は先日、二段階目の変身(?)をする前の姿に似ていたが、微妙に違っていた。ただ身体を覆うように放たれていただけの
光が、今は所々火花のような、稲妻のようなものを散らしている。
かつてセルゲームの終盤に悟飯が見せた、「超サイヤ人の限界を超えたサイヤ人」と同じ力をトランクスは半年間の修行で手に
入れていたのだ。
「バ・・・カな・・・」
「行くぞ」
信じられないものを見て硬直するゾレに静かにそう言うと、トランクスは地を蹴った。

309 :DBIF:2007/05/24(木) 23:19:22 ID:XjDm0oyh0
ドゥンッ!!

「が・・・・・・ご・・・」
肺の空気を全て搾り出されたような声を上げながら、ゾレの身体がくの字に曲がる。その腹にトランクスの拳が深々と
めり込んでいた。
「貴・・・様・・・!がぁっ!!」
怒りの声を上げて振られたゾレの拳は空を切り、いつの間にか背後に回っていたトランクスの放った回し蹴りがその身体を
吹き飛ばす。
「ぐ・・・ああああっ!!」
相当な距離を飛んだ身体を無理矢理止め、ゾレはトランクスを睨みつけた。
「どういう、ことだ?この間のお前に、手加減をしていた様子は、なかったはず・・・」
「生憎だが、今目の前にあるのが現実だ」
そう告げるトランクスの姿が消える。
「くっ!」
「上だ」
咄嗟に振り向いたゾレを、しかし真上に現れたトランクスの、手を合わせて振り下ろした両腕が、まるでハエ叩きのように
地面に押し潰した。
「ク・・・ソォ・・・がっ・・・!」
「止めを差す前に一応聞いておく。お前のいう『奴ら』や『後から来る方々』とは、どんな連中だ?」
打ち下ろしの一撃によって作られたクレーターの中心で、半ば地面に身体を埋めながらその身を震わせるゾレを見下ろし、
トランクスは尋ねた。
「誰が・・・貴様、なぞに・・・」
「そうか」
さして残念そうでもなく、トランクスはゾレの首を無造作に掴んで空中に放り投げると、そのまま放った手をゾレに向けて伸ばし、
エネルギー砲を放った。さしてエネルギーを集中したわけでもない一撃でありながら、その威力は初めて戦った時にゾレが
放ったものよりも強い威力を持っているように見えた。
閃光と爆発。その後に残るものを確認しようともせず、トランクスは背を向けた。

だが、その判断は誤りだった。


310 :DBIF:2007/05/24(木) 23:21:19 ID:XjDm0oyh0
為す術もなく閃光に消えるはずだったゾレの身体は、ボロボロになりながらもまだ消滅していなかった。
「フフ・・・ハハハハハハ・・・」
その口から、狂気じみた笑いがこぼれる。
意外な事態に、さすがに表情を変えて振り向くトランクスの視線の先で、ゾレはなおも狂ったように高らかに笑い続けた。
「ハハハハハハ、何ということだ。この俺が、こんな星で。しかも『奴ら』の仲間でもないサイヤ人如きに・・・」
ふと、笑い続けるゾレの表情に哀しいものがよぎった。
「お許し下さい、ザード将軍。任務は果たせそうにありません・・・しかしせめて!ここにいる、『星の寄生虫』共の
一人だけでもぉぉぉぉぉーーーっ!!」
しかし次の瞬間、限りない怨念の如き怒りの表情が噴き出すと共に、その身を包むオーラが爆発的に膨れ上がった。
「何だと?!」
「ガアアアアアアアアアアアア!!」
苦悶の叫びのような声を上げながら、なおも膨れ上がるその気に押されるようにして、トランクスはエネルギー砲を撃った。
しかしその直撃を意にも介さず、エネルギーの塊のようなゾレの身体がトランクスに激突する。
「ぐぁぁっ!」
そのままゾレもろとも大地に打ち込まれた弾丸の如くめり込んで行く。驚いたことにそんな状態でありながら、ゾレは
トランクスの顔面を何度も殴りつけていた。
「調子に・・・乗るなぁっ!!」
トランクスもまた、爆発的に気勢を上げ、ゾレを吹き飛ばした。さながら火山の爆発のように噴き上がった土砂と共に
紫と金のオーラの塊が飛び出す。
さらにそのまま、大気そのものが鳴っているかのような音を立てて両者の攻撃がぶつかり合った。

「す・・・凄い」
呆然と両者の激突を眺めるクリリンと悟飯の横で、ベジータが舌打ちをした。
「バカが、あの程度の奴に手こずりやがって・・・」


311 :DBIF:2007/05/24(木) 23:22:52 ID:XjDm0oyh0
「うおおあああっ!!」
2発、3発と立て続けにトランクスの拳がゾレの顔面に叩き込まれる。しかしゾレはそれを避けようともせずに食らいながら、
重い一撃をトランクスに返してくる。
「ガアアアアアアッ!!」
最早その顔に理性の欠片も見当たらなかった。ただ目の前の存在を叩き潰す。そのため以外のものを全て捨て去ることで、
パワーを無理矢理引き出した結果であった。
凄まじい威力の攻撃がぶつかり合う中、少しずつではあるが、トランクスが押され始めた。
そもそもダメージを受けたということすら意識せずに攻撃を繰り出すゾレに対して、トランクスの方はどうしても一撃食らうごとに
顔をしかめ、眼を閉じ、避けようと身体が反応する。その差が優劣となって表れ出したのだ。
「くぅっ・・・!」
しかし決着をつけたのは、ゾレの捨てた理性であった。
猛烈な勢いでゾレから繰り出される攻撃を、トランクスは防御に徹することで耐え、その防御を崩そうと大降りになった瞬間を
狙って、両足で上空へと弾き飛ばした。
「はああああああーーーっ!!」
両者の距離が開き、わずかながら生まれた気を溜め込む時間をトランクスは逃さなかった。
その身を覆い尽くさんとするばかりの気が両手に集約する。それは、かつて完全体のセルにベジータが放ったものと
同じ構えだった。
「ファイナルフラーーーーーッシュ!!」
叩きつけるように前方に両腕が揃えられた瞬間、恐ろしいまでに集約されたエネルギーが、正に一条の光の矢となってゾレを襲う。
断末魔の声を上げることすらも許されずにゾレの身体が消滅するのを確認してから、トランクスはゆっくりと膝を突いた。

「あんな化け物でも倒せない連中なのか、『奴ら』というのは・・・」
離れた位置で膝を突いたトランクスに向かう悟飯達を見ながら、思わずそうつぶやいたピッコロの首筋を、冷たい汗が流れていった。

半年間の修行により力をつけ、誰のフォローも借りずにトランクス一人によってゾレを倒しながら、悟飯達の未来にはなおも
暗雲が広がっているのだった。


312 :クリキントン:2007/05/24(木) 23:41:38 ID:A7e3Aao80
今回はここまで。

284さん
285さん
ふらーりさん
感想感謝です。

313 :作者の都合により名無しです:2007/05/24(木) 23:52:39 ID:2b3NXN2d0
ハシさん、最後までかっこいいキャラたちでしたな
もう終わりだと思うと残念ですが、エピローグと次回策楽しみにしています。

クリキントンさん、いよいよバトルスタートですね
トランクスの青さとベジータのツンデレっぷりが作中よく出てますw

314 :作者の都合により名無しです:2007/05/25(金) 00:46:30 ID:gASRWzmS0
>Der Freischuts
正直、この作品は知らなかったけど、SS内の雰囲気がクールで楽しめました。
次の作品はどんな作品になるかはわかりませんが、期待しております。
長編連載は大変だったでしょうが、完結おめでとうございます。(まだエピがあるけど)

>DBIF
未来へ帰って、いきなり戦闘が始まるとは思いませんでした。
敵は何人構成なんでしょうか?Zチームは悟飯とベジータが現最高戦力でしょうけど、
どうも悟空の前の前座に終わりそう。ベジータに一人位倒させてほしいな。

315 :作者の都合により名無しです:2007/05/25(金) 10:53:23 ID:2BcA7G+V0
ハシさんの作品はエロかっこよくて好きだったな。
リップバーンたちの活躍を原作で見てみたいと思ったもんだ。
まだ原作読んでないけど・・w

クリキントンさん、いいペースの更新ですね。
ゾレたちオリキャラはビジュアル的にどんな感じだろう
名前も、原作どおり元ネタあるのかな?ナッパ→菜っ葉とか。

316 :作者の都合により名無しです:2007/05/25(金) 15:59:38 ID:TVAm+qNn0
>>305
ぐああ知らないうちに一番楽しみにしてたSSがオワッテルー!?
ハシさん、お疲れ様でした。両者原作中ではけして飛びぬけた力を持つわけではない二人ですが、
だからこその緊張感にヒヤヒヤさせられました。
でも後はエピローグだけなのかー……残念。

そういえばリップは死の河で、シグはKH2FMで再登場しましたね。
特にシグはなんだかますます色々知って調べてたらしいことが分かって生存フラグ?とか思ってます。
新作も期待してお待ちしております。

317 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/25(金) 22:13:45 ID:LtKK7OXU0
『迂回と焼菓 A』


「なぜ僕の名前を……それに、僕が……」
 ラウンダバウトは無意識的に、着ている学ランの胸の辺りを腕で覆った。
 だが、そうしたところで既に手遅れであることは否めなかった。
 もはや隠しようもなく、『カスタード・パイ』と名乗った少女は、ラウンダバウトの腕の下の、押し込められた『もの』を見抜いているようだった。
「僕が男ではないと……?」
 合成人間ラウンダバウト──彼、いや彼女は、女性型の合成人間だった。
 だが通常は男性的な服装を好んでするため、それを看破されることはそうそう無い。というか、ほぼ無いに等しい。
 『そのこと』を知っているのは、彼女の主人である『レイン』の他には、
ある合成人間との戦闘中に服を切り裂かれたために乳房を露出してしまった、その戦闘相手くらいである。
 女性だと見抜かれたのは、ある意味ではどうでも良いことだった。
 だが少女は、その前に自分のコードネームを言い当てているのだった。
 出来ないはずのことをし、知りえないはずのことを知る──。
「『MPLS』──」
 ラウンダバウトは再びその言葉を口にした。
 それは、統和機構内で『進化しすぎた人間』を指す呼称であった。
「は? なによそれ」
 だが少女はその単語に不可解なものを聞いたような素振りを見せる。
 その態度は嘘ではないように思えた。
「君の『カスタード・パイ』とやら……『魂の匂いを嗅ぐ能力』が本当だとするなら……それは『MPLS』の中でも飛び抜けた能力だ」
「そりゃどーも」
 気のなさそうに肩をすくめる少女へ、ラウンダバウトは首を振った。
「これは忠告だ。僕はかつて、世界中に浸透している巨大な『システム』の工作員だった。
それは世界を裏から支配し、あらゆる物事を操作しては社会を自分たちの都合の良いように誘導している」
「はは、フリーメーソンかよ」
 茶化すような口調を無視し、ラウンダバウトは続ける。

318 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/25(金) 22:15:18 ID:LtKK7OXU0
「その『システム』は、ある種の人物を敵視している。それは君のような、『ありえない』能力を先天的に持った人種だ。
システム──統和機構はそうした人間を『MPLS』と呼び、その探索と抹殺を最優先としている。
統和機構は君たちのような人種を片っ端から殺して回ってるんだ。その無慈悲なシステムは、可能性の分岐たる『MPLS』の存在を認めていない」
 そのラウンダバウトの言はやや不正確だった。
 実は、統和機構に所属するエージェントの中にも、その抹殺対象たるべき『MPLS』は存在する。
 彼女の主人たる『レイン』もその一人だ。レインは『MPLS』でありながら、統和機構の中枢(アクシズ)に近い場所にいる。
 それどころか、中枢(アクシズ)の意向を無視する好き勝手な行動をしばしば取っているのだが
(任務失敗をやらかしたラウンダバウトを『生死不明』を装って秘密裏に配下に置いたのもその一例である)、
そうした振る舞いを咎められることもなく、『レイン・オン・ザ・フライディ』こと九連内朱巳は幹部待遇として破格の扱いを受けている。
 その他にも、統和機構で最大の戦闘能力を誇り『最強』と綽名される、リィ舞阪こと『フォルテッシモ』、
そして彼と並び称される破壊的能力『モービィ・ディック』を操る『取り消し(リセット)』の雨宮世津子なども、合成人間はなく『MPLS』である。
 貴重な研究対象として、また、『使えるうちは便利に使い倒してやろう』という発想の元、統和機構は彼らを管理下に置いている。
 どちらかといえばリスクコントロールに近く、一時期はむしろ積極的に『MPLS』を取り込んでいたその統和機構のスタンスは、
ある合成人間の脱走事故『マンティコア・ショック』によって大きく路線変更する。
 それ以後は『MPLS』にしろ合成人間にしろ、ちょっとでも危険だと見做されたら問答無用で抹殺対象となることとなった、というのが真相だった。
 ラウンダバウトの説明はその辺りの事実関係を省いていた。
 言っても仕方のないことであるし、それに言ったところで理解できないだろうと踏んだためであった。
「ふーん……じゃあ、あんたがあたしのことをそのシステムっつーのにチクったら、あたしは殺されちゃうわけ?」
「いや、僕も統和機構に追われている身だ。そんなことはしないよ」
「へえ。なんで追われてんの。なんか失敗でもしたの? 裏切るとかそういう感じじゃないわよね。そんな器用なことが出来るようには見えないもの」
 その興味深々な物言いに、ラウンダバウトはわずかに拍子抜けする。
 少女は、本当にこの緊迫した状況が見えていないのだろうか。
 なにか自分だけが一人相撲を取らされているような脱力感を覚えながらも、ラウンダバウトは気持ちを切り替えてその質問を切り捨てた。
「君には関係ないだろう? それに──そろそろおしゃべりは終わりだよ」

319 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/25(金) 22:17:09 ID:LtKK7OXU0
「……なんですって?」
 キナ臭いものでも嗅いだように少女の顔がしかめられる。
(だが──もう遅い! 今すぐにでも僕の『能力』を発動させる!)
 ラウンダバウトは精神を集中させ、本格的に『それ』を探ろうとした。
 『それ』──すなわち、彼女の『能力』の領域であり、誰にも等しく存在するもの──。
(このラウンダバウトが……君の『隙』を支配する!)


 人間の精神活動、ひいては生命活動というものは『鼓動(ビート)』で成り立っている、というのがラウンダバウトの持論である。
 もっと顕著な例が脈拍であり、呼吸である。
 一見、それらは間断なく流れるように行われているようだが、心筋が収縮から弛緩に転じる刹那は確実に存在するし、
それは呼吸を支配する横隔膜の細動にも言えることだった。
 人間の精神が生命に支配されている以上、思考や感情といったものも『鼓動』という縛りから逃れることは出来ない。
 詐欺師などは相手が息を吐ききった瞬間を狙ってマジックワードを言うようにしているらしい。そのときが精神的に無防備な瞬間であると経験上知っているからだ。
 また、人は自分が常に思考を行っていると錯覚しがちだが、『なにも考えていない』瞬間はその故になかなか認識されにくいだけであって、
その割合は一日のかなりの時間を占めている。
 人は『眠り』という名の気絶状態を日常的に繰り返し、『夢』という名の幻覚を見る。それすらも周期的な鼓動の上に成り立っている。
 その鼓動が織り成す複雑な『流れ(メロディー)』の中に、『それ』はある。
 どんなに完璧で淀みのない楽曲にも存在する休符記号と同じように、生命が生命である以上は絶対不可避の『隙』。


 ラウンダバウトは、自分の身体から放出した生体波動の反射を分析することで、相手の『隙』を感知することが出来た。
 そして、ある特定の波長の高周波をその『隙』の瞬間に打ち込み、相手の意識下に催眠暗示を植え付ける──。
 それがラウンダバウトの『能力』だった。

320 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/25(金) 22:18:45 ID:LtKK7OXU0
 その催眠暗示の内容は極めてシンプルなもの──「油断しろ」である。
 催眠暗示的な能力を有する合成人間はラウンダバウトの他にも数多くいるが、その能力を受けた者のほとんどが大なり小なり日常生活に異状を来たしている。
 それはアプローチの方法が体内から分泌する合成薬物やら生体電撃やらと、かなり乱暴な手段であることも一因ではあるが、
それ以上に、催眠暗示そのものの内容が「情報を集めて来い」「自分に従え」などといった、『強引さ』の付きまとうものであるからだ──とラウンダバウトは考えている。
 その本人の意思を無視した暗示との葛藤が対象者の内面で生じるために、
対象者の性格が一変したり、命令を実行できなかったり、ふとしたことで暗示が解けてしまうのだ、と。
 だが、ラウンダバウトの打ち込む暗示は『強引さ』を排除しているため、そうした不都合が起きにくくなっている。
 相手の認識に油断を生じさせて自分を『見えにくく』したり、相手の警戒心を油断させることで大抵の質問にも答えられるようにする。
 絶対的な支配とは程遠く、場合によってはこちらから上手く誘導してやらなければ役に立たない、なんとも迂遠で手間の掛かる『能力』だが、
強引に干渉することで取り返しのつかない失敗を招くよりかは余程マシであるとラウンダバウトは思っている。


 少女の長い髪の毛先がびりびり震えていた。
 それは、ラウンダバウトの発する催眠暗示を内包した高周波が少女へと注がれていることを意味している。
 ラウンダバウトには少女の精神状態が手に取るように感覚されていた。
 少女は隙だらけで──油断している。間違いなく、ラウンダバウトの『能力』の影響下にあった。
「さあ、まずは君の名前を教えてくれるかな?」
 ラウンダバウトの問いに、少女は素直に答える。
「──遠野、十和子」
 ラウンダバウトは微かな満足感に浸りながら、次の問いを投げかけた。
「では、遠野さん。君の目的はなんだ? なぜ李小狼くんと木之本桜さんに関わろうとしているんだ?」
「──りゃ──っての」
「? なんだって?」
「そりゃ、こっちのセリフだっての、奈良崎ちゃん」
 そう言って、少女──遠野十和子は笑った。
 その笑みは、『隙』とも『油断』ともかけ離れた、ある種の悪意に満ちているような、そういう笑顔だった。
「馬鹿な!」
 反射的にラウンダバウトは叫んでいた。
「なぜ僕の暗示が効かない!? 君は合成人間なのか!?」

321 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/05/25(金) 22:20:42 ID:LtKK7OXU0
 咄嗟に思い浮かんだ可能性がそれだった。
 かつて、ラウンダバウトは自分とよく似た能力を持った合成人間と戦闘を行なった経験がある。
 あまりにも近い能力のため、互いの能力が干渉し合ってジャミングにも似た現象を引き起こし、自分の能力がほとんど通用しなかったのだ。
 そのときの経験則が思い起こされ、遠野十和子もまた合成人間ではないか、という推測が出てきたのだが、
「あっらー? おしゃべりはもうお仕舞いなんじゃなかったっけ?」
 意地の悪さを前面に押し出しながら、それでも眩しさを感じさせるような爽やかな笑顔で、遠野十和子はラウンダバウトを茶化してきた。
「ぐっ……」
 言葉に詰まるラウンダバウトの鼻先で、遠野十和子はち、ち、と指を振ってみせる。
「『MPLS』に合成人間……それから統和機構? いやいや、あんたってばイージーなやつなのねえ。
そんなことペラペラしゃべっちゃっていいワケ? 実に世話のないやつだわ、あんた」
 その言葉を半分以上聞き流しながら、ラウンダバウトは必死になって考えていた。
(確かに僕は、彼女の『隙』を感知したし……『油断』の暗示も叩き込んだ……なら、これはいったいどういうことだ?)
「最初はワケ分かんなかったけど、だいたい掴んできたわ……あんたの『能力』ってやつ、それは──催眠──いや、もっと別の……」
 そこでちょっと考え込むように人差し指を顎に当て、
「『相手に無理やり隙を作らせる』……とか、そんなんね。どう? 合ってる?」
 ラウンダバウトは懸命にポーカーフェイスを作ろうとするが、それは彼女の不得意分野であったし、
それに、遠野十和子の『カスタード・パイ』という能力が本当なら、まるで意味を成さないであろう。
 得体の知れない『なにか』が、目に見えない力となってラウンダバウトを支配していた。
 それは彼女が遠野十和子に施そうとしていたこととまるで真逆で──己の『能力』を捻じ曲げて自分に叩き返してくるように、
そして今まさに自分を食らおうとしているような、見た目だけはどこにでもいそうなその少女が、不可解で、恐ろしかった。
「う、うう……」
「ふふん、ダメよ、そんなんじゃ。『はい、その通りです』って白状してるのと同じよ」
 遠野十和子はその白い指先でラウンダバウトの頬をつつ、となぞり、それはゆっくりと首筋を這って胸元へ至り──そして胸倉をつかまれた。
「あんたの言うとーりよ。おしゃべりはお仕舞いなの。ちょっとツラ貸してくれる?」
 そのままどん、と壁際に押し付けられ、そこでラウンダバウトは遠野十和子の顔からいつの間にか笑みが消えていることを知った。
「あんたの『能力』のお陰でね……その小狼くんが死にかけてんのよ」
「──なに」
 目の前の少女への恐怖感も、己の能力への不信感も遠いどこかへ忘れ去り、ラウンダバウトは目を見開いた。
「どういうことだ!?」

322 :作者の都合により名無しです:2007/05/25(金) 22:44:51 ID:LtKK7OXU0
今回名前だけ出てきた人(本格的に登場する予定は……多分、無い)


・九連内朱巳
 登場作品「ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド」「ビートのディシプリン」

『心に鍵を掛け』、相手のその時の気持ちや感情を固定化させる『金曜日に降る雨(レイン・オン・ザ・フライディ)』の能力を持つ、統和機構の幹部。
ラウンダバウトの主人であり、ラウンダバウトの能力で自分に『隙』を見出して殺してもらうことを期待している。
好き勝手にやっているのになんの処分も受けないのは、次の中枢(アクシズ)候補だからだという噂がある。


・リィ舞阪(フォルテッシモ)
 登場作品「ブギーポップ・カウントダウン エンブリオ侵蝕」「ブギーポップ・ウィッキド エンブリオ炎生」「ビートのディシプリン」

『空間の罅』を目視し、そこに触れることで空間の断裂を自在に操るMPLS能力者。
『最強』と綽名されおり、非常に好戦的。統和機構に属しているのも「より強い敵と会えるから」という理由。
その能力に名前は無い。なぜなら、それは完璧に彼の制御下にあり、彼のコードネーム『フォルテッシモ』で用は足りるため
──だったのだが、合成人間ピート・ビートとの戦闘中に一度それが暴走し、その後、彼の能力は「ザ・スライダー」と呼ばれることになる。


・雨宮世津子(リセット)
 登場作品「ブギーポップ・アンバランス ホーリィ&ゴースト」「ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス」
       「ビートのディシプリン」「ギニョールアイの城」「アウトランドスの戀」

『手のひらから発射される物体の破壊力を自在に操作できる』という能力『モービィ・ディック』を持つMPLS。
その威力は血管一本のみの破壊から、上限は巡航ミサイル並と幅が広い。能力の依代としては拳銃(から発射される銃弾)を愛用している。
普段は官公庁に勤めているらしい。双子の姉がいる。

323 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/05/25(金) 23:24:44 ID:LtKK7OXU0
ヴィクティム・レッドが進まねえええええ!
理由は明白です。サイトやらなんやらと変な方にばっか時間を割いているからです。
他の方みたいに大したことしてるわけでもないのにね、なにやってんでしょうこの馬鹿。
まー、マイペースでのらりくらり頑張ります。


>邪神?氏
ブルーほんにカッコええわ……。いや、殺しても死にきれないやつとか大好きです。
殺しても死なないところがいいですね。だから過激なアクションもへっちゃら。
ファンタジーは俺も詳しくないんですよね……ファンタジー書くと必ずすべります。勉強しようかな。

>クリキントン氏
CCの機械工学は世界一ィィィィ!
……いや、思いも寄らぬニューキャラ(しかも頼もしそう)に、いやが上にも期待は膨らみます。
にしても敵、強そうですね。尖兵でトランクスを苦戦させるのだから、その精鋭の実力はどんだけだよ! って感じです。

>ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志作者氏
承太郎キター! って感じっすね。のどかな学園風景に強烈な存在感を放って憚らない凄みがあります。
ペルソナとスタンド、やっぱ似てる部分ありますね。差異も多々ありますけど。
つーか、承太郎、意外と教え上手ですね。教師に向いてるのかも。

>さい氏
舌戦じゃ火渡も今ひとつの実力のようですねw
しかしサムナーの鼻持ちならない選民意識は……なんつーか、蝶サイコーです。
ですが、ここはやっぱり千歳に勝って欲しいところです。頑張れ千歳。

>ハシ氏
やっぱリップ様エロいっすわ。弱っていくリップ様が見たいような見たくないような……。
でも助けが来て一安心……と思ったら次でエピローグ!? うわー、とても名残惜しいです。
次の構想がもうできてるようなので、それに期待しつつ、最終話を心待ちにしています。

324 :作者の都合により名無しです:2007/05/25(金) 23:41:59 ID:2BcA7G+V0
物語の中でも、十和子はなんか別格の雰囲気を持っているような
組織に属している訳でもないのに、不敵というか底知れないというか。
こんな美しい怪物が相棒の静はある意味気の毒w

325 :作者の都合により名無しです:2007/05/26(土) 00:30:04 ID:KqjmdaJP0
ヴィクテムは中々進みませんか。残念です。
でも、シュガーソウルも同じくらい面白いので読み手としては安心ですが。
十和子と静の能力的な差が物語が進むにつれどんどん開いていくような気がしますが
主役の静はどこかで確変するんでしょうね、主役なだけに。
今回、名前だけ出てきた人たちも凄い能力の持ち主だなあ。

326 :作者の都合により名無しです:2007/05/26(土) 10:58:45 ID:heKFLv3v0
ハロイ氏おつかれさまです。
ヴィクテムは中盤過ぎ、この作品はまだ序盤といったところでしょうか。
両方ともかなりの長編となるのは確実っぽいので嬉しいです。

十和子は小悪魔というか魔女というか、神秘的な雰囲気ですね。
普段はさばけている分だけ、非日常の場面になるとその奥深さが際立ちます。

327 :作者の都合により名無しです:2007/05/26(土) 21:56:44 ID:MUjXaXEi0
ヴィクテムもそろそろ読みたいね
この話も好きだけどね

328 :DBIF:2007/05/27(日) 03:15:19 ID:3/KyEAZQ0
一まずの平和を取り戻した悟飯達は、さっそくこの世界にドランゴンボールを復活させるべく、神の住居へと向かった。
「うわあ、もっとボロボロになってるのかと思ってましたけど、結構変わってませんね」
「はい。その・・・俺達の世界で、ピッコロさんは地上で人造人間に殺されてますから」
自分達の世界のものと同じではあるが、珍しそうに見回す悟飯達に、トランクスは多少言いにくそうにそう言った。
それを聞いてピッコロも複雑な表情になる。
「早速始めるか。デンデ」
「はいっ!」
ピッコロの呼びかけにテコテコと容器を抱えてデンデがやって来ると、悟飯達の中央の辺りにそれを置き、
意識を集中させた。
しばらくして容器が輝き出したかと思うと、上空に光が伸び、一度止まったかと思うと7つに分かれて飛び散った。
「これでドラゴンボールは復活した」
「次の奴らが来るまでに集めておかんとな」

取り合えず最優先にやっておくことが終わったので、これからどうするのかをトランクスの家で話し合うことになった。
「ここです」
と、トランクスが示したのは、悟飯達の世界とは場所も大きさもまるで違う家だった。
これは周りのものもそうだが、新築と呼べる家はまるでない。その中でも特にひどい、百年も前に作られたような
廃工場といった印象を与える家である。
「もう人造人間もいなくなって、いくらでも新しい家は建てられるんですが、母さんはどうもここに愛着が湧いて
しまったみたいで」
トランクスがフォローするものの、あんぐりと口を開けたクリリンを筆頭に、皆余りの違いに声もないようであった。
「取り合えず、母さんに紹介しますのでこちらへ」
と中へ入っていくトランクスを見ながら、
「あいつ、こんなとこからタイムマシンで来たのか」
とクリリンが呆然とつぶやいた。

329 :DBIF:2007/05/27(日) 03:18:42 ID:3/KyEAZQ0
「さて、これからどうするかだが」
一段落終えて、悟飯達に用意された大部屋の中、ピッコロがそう切り出した。
部屋の中央に置かれた大きなテーブルに、ベジータを除いた全員が座っている。
「まずドラゴンボールを回収するのが一つ。もう一つは・・・」
「奴の宇宙船から出来る限りの情報を引き出すことですね」
ピッコロの言葉をトランクスが引き継いだ。
「情報を引き出すのは俺と母さんに任せてください。ドラゴンボールの方は・・・」
「そっちは俺がやるよ。戦闘じゃほとんど役に立てそうにないしな」
クリリンが手を上げて言った。僕も、と悟飯も手を上げる。
「俺もやろう。俺の内部にはドラゴンレーダーの機能も組み込んである」
と、スパッツがとんとんと眼の横をつつきながら言った。
「俺は、こちらでも『精神と時の部屋』が使えないか試してみよう。いざとなれば、あそこはきっと役に立つ」
「え?でもあそこは・・・」
「忘れたのか?こちらの世界ではお前達はまだ、あの部屋に入っていない」
と、悟飯の言葉を遮ってピッコロは言った。
「これで決まりだな。それじゃ飯も食ったし、そろそろ寝ようか。てそういやベジータの奴はどうしたのかな。
まだ戻って来ないけど」
「ハハハ・・・」
と、クリリンの言葉にトランクスは決まり悪そうに頬を書いた。
「しかしまさか、ブルマさんが泣き出すとは思わなかったよなあ。あの時のベジータの顔、写真に取りたかったぜ」
こちらの世界のブルマに紹介すると案内され、彼らの知るそれよりもかなり年を取った姿の彼女に会った途端、
彼女は一瞬呆けた顔をした直後、泣き出したのだ。あまつさえベジータには抱きつきまでしたのである。
「まあ、この世界の父さん達はかなり前に死んでますからね。おまけに悟飯さんまで倒されてから俺が人造人間を
倒すまでは、母さんはずっと一人で頑張ってたんです。だから、あの頃のままの姿で現れた皆さんや父さんを見て、
ああなったのは仕方ないと思います」
トランクスの言葉に、その場を沈黙が占めた。この世界の現実の過酷さを、改めて実感させられたのである。


330 :DBIF:2007/05/27(日) 03:21:04 ID:3/KyEAZQ0
「守らないとな」
しばらくしてから、クリリンが言った。
「俺達の世界と違って、こっちは10年以上も経って、ようやく平和が来たんだ。その平和を、今度こそ守らないと」
「はい!」
「当然だ」
クリリンの言葉に悟飯、ピッコロが応じる。トランクスは心を込めてもう一度、ありがとうございますと言った。
「それにしてもベジータの奴、いつになったら戻るんだろうなあ」

その頃、ブルマの家から遠く離れた丘の上で、ベジータは不機嫌そうに胡坐をかいて座っていた。
「・・・クソったれめ!」


「まもなく目標の星の星系に突入します。4ビクト後に星団間航行モードを解除。亜空間超光速航行モードに移行します」
どことも知れぬ宇宙空間を飛ぶ大型宇宙船の内部。その居住空間らしき部屋に機械が発したものとは思えない声が、
滑らかな口調でそう告げた。
部屋の中には二人の人間が向かい合って座っている。
一人は緩くウェーブのかかった黒い長髪で、いわゆる美人と言えるほど整った顔をしている。半袖の、動きを制限しない
程度にゆったりとした衣服を着ており、装飾品らしいものは何一つ身に着けていない。その胸の膨らみを見るまでもなく、
一目で20代の女性と解る姿はしているが、その瞳は見る者全てを凍らせそうな冷たさを持っていた。
もう一人はやはり黒い短めの髪をオールバックにしており、鋭い眼をしたいかつい顔についた唇を固く引き締めている。
その周りは髭で覆われているが、それ程年をとっているようにも見えない。形状的には革鎧のように見えながら、それでいて
硬質的な光を放つ鎧のようなものを付けた身体はがっしりと逞しく、その下から覗く足は一振りで目の前の女性の首など
簡単に折ってしまいそうな程太く、筋肉質であった。

331 :DBIF:2007/05/27(日) 03:22:30 ID:3/KyEAZQ0
「ようやく着くな」
女の方が独り言のようにつぶやいた。実際そうなのかもしれない。目の前の男は聞こえてはいるのだろうが、
何を言う気配もなく、ただむっつりと黙り込んでいる。
「亜空間レーダーから『奴』の反応が消え、原因を探るべくこちらの銀河に戻ると決めてからもう24オプトだ。
その4分の3は眠っていたとはいえ、こうも移動だけに時間がかかると身体がなまってくる」
言いながら女は首を軽く左右に動かして見せた。男は無言ではあるが、同感だと言わんばかりに自分の右腕を
軽く回して見せた。
「正直、『奴』如きを倒したくらいで私達の相手にもなるまいが、後ろから面白そうな連中も来ているようだし、
行く先の星では退屈せずに済みそうだ」
と、女はその『面白そうな連中』が付いて来ているらしい方向をちらりと見ながら、軽く口の端を曲げて見せた。
男はやはり無言である。
「さて、無愛想なお前の顔を見るのも飽きた。どうせあと20ビクトもせん内に到着するだろう。それまで
もう一眠りさせてもらう」
そう言い残して、軽く伸びをしながら女は出て行った。
男は無言のまま、彫像のようにぴくりともせず、ただテーブルに視線を据えたまま座っていた。

332 :クリキントン:2007/05/27(日) 03:24:20 ID:3/KyEAZQ0
今回はここまで。次回ラディッツ以来久しぶりの「サイヤ人襲来」です。

313-315さん
感想感謝です。
オリキャラの外見については頭にありますが、絵が絶望的に下手なんで
ご想像にお任せします。
後、一部削ってるのでわかりにくいですが、異星人は一応雪交じりの
天候が元になってます。

ハロイさん
何かラウンダバウトの気持ちが良くわかります。
十和子さん怖いです。統和機構とか、名前だけの人の能力とかが凄いだけに余計に。

333 :作者の都合により名無しです:2007/05/27(日) 13:30:16 ID:laHG1S8w0
女のサイヤ人かー。原作ではいなかったよね。アニメではいたけど
やっぱりゴツイやつより、女の方が強いのかな?

334 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:34:58 ID:UL0yPkqG0
第016話 「忍法無銘伝」

いま、根来と千歳がいる場所は、聖サンジェルマン病院の地下である。
表立っては地上五階、地下二階からなるこの病院は、もとより名が示すとおりの病院ではあ
るが、地下には常人の人智及ばぬ錬金術の研究施設を有している。
錬金戦団がかような機関を銀成市に設置したのは、百年ほど前、この街でヴィクターの消息
が露と消えうせてしまったゆえの捜索の橋頭保としてなのか? いやいや、そうではない。
銀成市にヴィクターがいまだ残存していると判明し、討伐の手がさしむけられたのはつい四
か月ほど前であるから、戦団はヴィクターの存在を知らずして、偶然に設置したのではある
まいか。──
さて、この病院だが、/z(小説版)の話によれば、地下五十階まであるという。
地下五十階が地下百五十メートル地点にあるというから、単純に除すと一階あたりの高さ、
いわゆる階高は三メートルとなる。もっとも部屋には天井というものがあり、天井の上には床
があり、さらにその間には、上下階を区切る鉄筋コンクリートのスラブ厚も含まれるし、人が
活動する以上は床もしくは天井に電線や通信回線、水道管、それから換気用の経路といっ
たライフラインの設置空間も設けなくてはならない。それらを勘案すると、実質的に使える部屋
の高さ、すなわち天井高は二・五メートルを下回るのではないか?
一般に成人男性の平均身長が百七十一・一センチメートルであり、成人女性の平均身長が
百五十八・四センチメートルである事をふまえると、はたして如何。
さらに、いま、根来と千歳がいる場所を含めた地下二階までは、一般に開放しても支障なき
よう天井高を高くとっているというから、その分のしわ寄せを残る四十八階がくらい、試算に
よって導き出された二・五メートル以下の天井高より、より低く狭くなっている事は想像にか
たくない。
一般に成人男性の平均身長が百七十一・一センチメートルであり、成人女性の平均身長が
百五十八・四センチメートルである事をふまえると、はたして如何。──

さて、筆者はいま、いわゆる山田風太郎の文体模写に挑んでいる。しかしこれは容易ならざ
る怪異の文章であり、うかと手を出すべからざる代物ではなかろうか?

335 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:35:53 ID:UL0yPkqG0
ともかく。
つい先ほど、思いがけぬ根来の救援により、からくも偽防人から逃れた千歳だ。
真・鶉隠れ。──壁や床の中から、まるで飛び魚のごとく敵を狙いうつ恐るべき刀技がなけれ
ば、はたしてどうなっていた事か。
薄小豆色の髪はみだれにみだれ、鼻孔から上唇にかけては糸のような赤いすじがすうっとひ
かれ、月のように白いほほにはかすかな痣がついている。もし一糸まとわぬ裸体をさらせば、
雪のような肌のそこかしこに無残なる傷痕が刻まれているのが見えるかも知れない。
むろん、偽防人にさんざんとなぶられたせいだ。もっとも、壁を薄ガラスのようにいともたやすく
粉砕する拳を受けて、なお立っていられるのはさすが千歳といったところである。
だが彼女の顔に欝蒼とした感情が浮きでているのもむべなるかな。──偽防人より受けた
傷が、けして軽微でもないという事もあるが、それ以上に彼女は、自らの武装錬金の変調に
気づき、そして懊悩していた!
レーダーの武装錬金・ヘルメスドライブ!
対角線にして四十センチほどをした六角形の筐体に、はめこまれているのは、筐体と同形
にして一回り小さな画面だ。
それが三度あやしく明滅し、じじッというアブラゼミの断末魔のような音がひびいたとみるや、
妖気をはらんだ細長い黒い影がびゅーっと廊下をつっきり、千歳たちから五メートルほど手
前に着地した!
影の正体は、おそろしい巨躯に黒装束をまとった、編笠の男だ。目深にかぶった頭巾から
のぞく二顆の眼球は、冷やかな青白い光をはなっている。
鳩尾無銘! 先ほど、
「如何な些細な綻びですら、我らが決定的な綻びと化す。よってそれへの対処をいまから行う」
と千歳にいいはなち、現に一撃をみまい、ここへ飛ばした男がふたたびあらわれたのだ!
もちろん本人ではない。先ほどヘルメスドライブよりあらわれた、久世夜襲、防人衛といった
偽者連中と同じく、体の周りで、半透明なもやのような黒い光をたゆたわせている。
しかしなぜこうもヘルメスドライブより黒い影が現れ、千歳に手向かうのか。──
もとより冷静な千歳であるから、その理由をおもえば懊悩はかき消え、もしや? と内心で首
をひねり始めていた。
「きゃつか」
「え?」

336 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:38:03 ID:UL0yPkqG0
「火渡戦士長らと一戦交えたという忍びの男。なるほど確かに風体は一致しているが」
「え、ええ。あなたも聞いてたのね。そうよ。忍六具の武装錬金の使い手だから間違いなく」
思考より引き戻された千歳は、わずかに舌ッ足らずな声をあげた。平素の凛然とした彼女の
雰囲気からはかけ離れているが、消耗と、不意なる根来の声への動揺がそうさせたのだろう。
「忍六具。編笠、鉤縄、三尺手拭、忍犬、打竹、薬。……だったな」
「火渡君からはそう聞いているけど」
「なるほど」
低く呟いたきり、根来は押しだまった。忍六具について勘案しているようだが、真意はわからない。
だいたいにして、忍者然としている癖に、この話題に即答できぬというのも妙な話だ。
「ともかく現れた以上は斃すのみ。貴殿の傷や能力では無理だろう。しばし預ける。……」
何を思ったのか、根来、しゅるしゅると首回りのマフラーをぬきとると、千歳にわたした。
(鼻血を拭け、という事かしら)
それとも別の意図があるのか。よくわからないまま、千歳は、眼前の光景を見た。
舞扇をかさねたような七層の天守閣を背景に、二人の男は、じっと相対していた。
いや、違う。まったくもって違う! これは甲賀忍法帖の冒頭ではなかったか!!
ああ、当初こそ文体模写を試みた筆者ではあるが、あまりに難解、あまりに困難な作業の
前にとうとう致命的な精神疲弊をひきおこし、陽炎をみた薬師寺天膳が情欲をきたすように、
原文引用という失策を演じてしまったのだ! 
なんと恐るべき原作の魔力! なんとおそるべき筆者の怠惰か! この「忍」のなさ、忍びの
卍の虫籠右陣、筏織右衛門、そして百々銭十郎に匹敵するかも知れぬ!
閑話休題。
根来と無銘の視線が交錯するやいなや、彼らは硬質の床を蹴りあげ、両者に向かって駆け
た!
ぱっ、と両者の間に火花が散ったと見るや、彼らは数歩うしろに着地し、根来は忍者刀の武
装錬金シークレットトレイルを順手に持ちなおし、無銘は編笠の、被る方を根来に向けた!
墨をぬりこめたような病院の廊下に爆音が響き、果たして編笠のどこに隠れていたのか、
長さ六十センチあろうかという矢が数十本、根来に対し射出された。

337 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:39:07 ID:UL0yPkqG0
不可解なようではあるが、しかしこれはただの編笠ではない。忍六具の編笠といえば、内側
に矢が仕込まれているのが常なのだ。
とはいえ、はたしてこれは常軌を逸している! いかに現代科学を超越した武装錬金といえ
ど、編笠から轟々と射出されているのは、もはや矢というよりは火矢、火矢というより小型ミ
サイルというべきではないのか!
矢の尾からは、緋牡丹のような火花が噴出し、びゅうびゅうと流星群のように飛んでいるのだ!
千歳はとっさに壁際に身を寄せた。と同時に、彼女のいた場所を赤い残光がとおりすぎ、廊
下の向こうで壁が爆砕される音がひびいた。
しかし、どうしたことか矢の雨の真ん中をゆく根来には当たらない。
たとえば、磁石のN極にN極を近づければ反発するように、根来の細いからだは矢を避けて
いく。
「忍法暗剣殺。──」
筆者は高校時代、教師が丸めた教科書で、自習時間に漫画をよんでいた生徒を執拗にし
ばくのを見たことがある。その直前、不可思議な現象が筆者の身におこった。
教師が漫画読みの生徒を発見した瞬間、えもいわれぬおぞましい気配を察知し、背筋をあわ
だたせたのだ。……むろんその時の筆者は今からでは想像がつかないほど勤勉であり、漢
字練習などをしていたのだから、教師におびえる理由はなかったのだが、しかし、今にして思
えばこの時は、教師の漫画読みの生徒に対する殺気を、瞬間的に察知していたのではなか
ろうか?
現在ですら科学的に証明されてはいないが、人間には第六感なる超自然の感覚が備わって」
いるという。筆者が教師の殺気を感知したのも、おそらく第六感であり、それをさらに研ぎ澄
ませた超反射的な回避能力を、根来は備えているのだ。
「殺気を感じれば、たとえ相手に背後を向けていても、ツツーと水すましのように逃げさり、
敵陣に忍び入るときも、危険な個所はことごとくさけるのだ。殺気をはらんでさえいれば、
矢の雨ですら避けることたやすい。これぞ忍法暗剣殺。──」
三角形の前髪の横で、陰鬱な瞳が細められた。笑っているような、殺意をはらんでいるな
捉えどころのない表情のまま、瞳に古沼がごときうす暗い翠のひかりをけぶらせ、悠然と
無銘めがけて闊歩していく。──

338 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:40:21 ID:UL0yPkqG0
順手ににぎったシークレットトレイルで矢をうちはらおうともしないところが、彼の忍法暗剣殺
への絶大な信頼を物語っている。
しかし、なぜ彼はこの夏の中村剛太との戦いにおいて、この不可思議きわまる忍法を使わな
かったのか。もし使っていれば、亜空間内に侵入した戦輪(チャクラム)ごときに切り裂かれ
る事はなかったろうに。
やがて矢は尽き、無銘は軽く舌打ちした。根来と彼の距離は、当初の相対した時よりやや狭
まり四メートルといったところか。根来はその距離を一気に跳躍し、無銘の脳天から一直線
に切りかかった。
が、刃はむなしく空を切った。無銘が身を引いたのだ。よもや彼も暗剣殺の使い手か? いや
いや、彼はとっさの反射の結果として身を引いたにすぎない。……
もっとも、以前従事した任務において手傷をおい、実をいえばまだ入院中の根来なのだ。そ
の剣先はいまいち精彩を欠いている。万全であるなら、無銘の回避よりも早く、見事両断し
ていただろうに。
そう千歳が観察していると、根来の身にありえからぬ異変が起こった。着地と同時に上体を
斜め前につんのめらせ、同時に右膝より先を後ろにむかってはねあげた。
まるで何かに足をとられたような格好だ。手傷を差し引いても、戦士にして忍者マニアたる根
来がただの着地をしくじるとは、あまりに無様。……が、それが根来のしくじりでない事を、
千歳は見た。
いったいいつの間にできたのか。根来の足もとにあったのは、キラキラとくかがやく鏡のよう
な楕円形。そこより漂うのは、おおよそ夏の暑気に似つかわしくない冷気。……
「忍法薄氷(うすらい)。──」
氷! おお、その名どおりの薄氷に根来は足をとられ、バランスをくずしたのだ!
しかし氷はどこから発生したのか。それは無銘の足から薄氷に延びる銀の軌跡を目で追えば
自明の理であろう。そう、彼は足の裏から冷気を発し、床を凍らせたのである。
そも、人間の体温を調整するのは、吻側延髄腹外側野に存在する交感神経プレモーターニ
ューロンである。これは自律神経であり、常人ならばむろん体温の調節は無意識的に行うほ
かないが、無銘はみずからそれに働きかけ、体温を調節できるのだ!

339 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:42:48 ID:UL0yPkqG0
体温は三十五以下で眠気と疲労を招き、三十度以下では意識や血圧低下、不整脈、二十
五度から二十九度で救助不能温度になるという。……だがたとえば、ドライアイスに一瞬ふ
れたぐらいでは、人は凍死しない。指先だけの軽い凍傷で済むだろう。なぜならば冷やされ
る部位はしょせん末端の一部であり、冷やされた血液も静脈を通って心臓へ循環すればた
ちどころに温められ、それが動脈を通って冷やされた部位を温めるのだ。
人間にしてこうなのだから、ホムンクルスたる無銘が、自らの足を数秒だけ零下まで冷やし
たとして、生体活動に影響がでようはずもない。
そしていかな忍法暗剣殺といえど、なんら殺気をもたぬ一自然現象たる「凍結」ばかりは察知
できなかったとみえる。
根来が不覚にも足を滑らせた瞬間、無銘は右手を、掌を正面に向けたまま、天蓋にむかっ
て大きく垂直にかかげた。
すると驚くべきことに、彼の五指のことごとくから、びらびらびら……と青白い糸が伸びさかり、
手の甲に向かってまるで噴水のように折れ曲がるやいなや、無銘の腕の後ろをすべりおち、
踝のあたりに先端をだらりと垂らした。
「忍法指かいこ。──」
おお! しかしこれはなんたる事か! 筆者は蒼然たる面持ちで外道忍法帖をばらばらとめ
くった。引用だ。もう引用しかない! こればかりはいくら調べてもとんとそれらしい知識が出
てこないゆえ、外道忍法帖より引用するほかないのだ。しかしなんたる医学知識のなさ! 
胸をかきむしり切歯する思いで筆者はキーボードを叩いた!!
──これは体内の血漿中の繊維素が、汗腺より滲出するものといわれる
のだ。のだよ。すげぇェ〜 やっぱプロシュ……風太郎先生はすげェぜ! 
庭にパン屑でバカという文字をえがき、そこに鳥たちが群がってバカという文字をえがくのを、
双眼鏡で観察されているような方だが、やはり偉大なのだ! ごめんね。文体模写じゃなくて
ごめんね。
さて、無名の指さきから伸びた「テグスにも似た強靭な糸」は、もとより蚕のように青白くはあ
るが、しかし指先の根元から踝の先端へと徐々に赤い光を伝播し、なにかが焦げるような灼
熱の匂いをまき散らしはじめた。
「忍法赤不動。──」

340 :永遠の扉:2007/05/27(日) 20:44:39 ID:UL0yPkqG0
無銘が、吻側延髄腹外側野に存在する交感神経プレモーターニューロンに働きかけて、体温
を自在にあやつるというのは、前述のとおりではある。ならば薄氷のように物を冷やすだけ
ではなく、逆に炎熱させる事もできるのではないか? はたしてその通りだ。のみならず、彼は
指かいこに高温を伝達する事もできるのだ。むろん、そこはホムンクルスたる無銘の事、た
とえ体に高温を通したとしても、生命にはかかわらない。指かいこが燃え尽きないのもむべな
るかな、金属質なホムンクルスの一部だから、まるで電熱線のごとく赤熱するのみである。
そう、いまや無銘の指先からは、電熱線にも似たおぞましい器官が五本も生え、それはまる
で斬鋼線のように振りかざされた。
……文章にすれば長いが、以上の現象は一瞬の事であり、つんのめったままの根来に真赤
な五線がひゅうっと唸りをあげて襲いかかる!!

以下、あとがき。

自分の文体を抑えるって難しい。はたして山田風太郎節を再現できたかどうか……

ちなみに、各忍法の出典と使用者は次のとおり。
忍法暗剣殺    … 忍びの卍の根来忍者、虫籠右陣。
忍法薄氷     … 忍法月影抄の伊賀忍者、砂子蔦十郎
忍法ゆびかいこ … 外道忍法帖の張孔堂組、猿羽根冬心
忍法赤不動    … 忍法月影抄の甲賀忍者、不破梵天丸

基本的に無難なのをチョイスしております実をいうと山風忍法、男性のシンボルを十三本
ばかり蝋燭にしてあちこちに刺すとか、大腸を足のように操るとか、うんこを剣にするとか、
お姫様の吐しゃ物やら排泄物を食べてウジュルウジュルパワーアップとか、そんなんばっかです。
……なんだこのギャグ漫画みたいな技は。
ちなみに忍法の説明は、指かいこ以外は自分の言葉でやってます。ええ。でなければSSを
描く意味がないと思うのです! 
特に薄氷と赤不動。
原作じゃ体の構造とかの説明がなかったので、調べた知識でそれっぽく肉付けを。
それからもちろん、根来の使う忍法は、根来忍者縛りです。
しかし探してみると少ないコト少ないコト。魔界転生の根来衆、忍法使ってたかなぁ……

341 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/05/27(日) 20:46:27 ID:UL0yPkqG0
>>189さん
劉邦は秋水と違って、暴言暴力が自由にできるのが楽しいですねw おかげでスイスイやり
取りが浮かび、楽屋落ちも自在にできるという良キャラ。こちらについては、肩肘はらずに
衝動の赴くままゆきます。しかし……筆力的にはまだベテランを名乗れるかどうか。精進あるのみです!

>>190さん
こちらこそお付き合いくださり、ありがとうございます。浮世のあれやこれやを忘れられるような、
エネルギーに満ち満ちた作品を、なるべく提供できたらなと思うしだい!ただし前回はやりすぎた
ので、次回は横山作品オンリーで! てなワケでひさびさに読んだあばれ天童とか史記、やはり面白い!

銀杏丸さん(ふは。不徳の至り。雛苺可愛さに見誤っておりました……)
>戦闘神話
>ちょっとした冗談一つで聖域を揺るがしかねないデマが発生した事もあるのだ。
うーむ。管理職ゆえの責任ですな。ただ敵を倒すだけじゃなく、それ以外の環境に目を向け
ねばならんというのがなんともリアル。少年だった彼らがそういう立場にあるってのは、つい
つい子供だった頃の自分と今の自分に置き換えて、見てしまいます。さて、戦団(?)との戦いやいかに!

ローゼンは集め始めた矢先に打ち切りと知って、ショックですね。いかにいい作品でも、関わ
る人間・組織が悪いと……はぁ。ちゃんとした完結ができればいいんですが……
/zの表紙は、内容を知ってからですと、かなり切ないですね。何はともあれ、ヴィクターの過去
話がなくて安心したようながっかりしたような。明かされたら困る部分もありますが、しかし
資料としてはとても欲しいという矛盾。連載終了から一年以上経ってもまだそれに悩めるの
が、武装錬金という作品の生命力の強さともいえますが、二次創作描きとしては何とも落ち
着けないですね。だがそれがいいのかも。

342 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/05/27(日) 20:49:17 ID:UL0yPkqG0
ふら〜りさん
そんな。恐縮です。まぁ、確かに双方いろいろアレな連中なので、はたして収拾つくのかチ
と不安だったりします。こうなったらよほどの大技でいくしかない。永遠の扉との共演は……
秋水が一番影が薄くなると思いますね。ハイ。呂后vs斗貴子さんとかは良さそう。これと決め
た男性には一途だけれど、その思いを妨げるものにはとことん攻撃的なところがそっくりなので。

ハロイさん
>シュガーハート&ヴァニラソウル
徐々に静と秋月の距離が狭まりつつありますね。いいです。こういう青臭い関係。大好きです!
『理解不能』の攻撃のくだりはなるほどと頷くコトしばし。ただ撃ち合うより、虚をついて無傷で
勝とうとする戦略的思想がツボ。それを期せずして読むカスタード・パイもまたツボ。破壊力が
ないのにスゴ味がある。そんな能力は、卓越した描写力・演出力がなければできないと思うのです。
あと、キンクリとか根掘り葉堀りとかは五部好きにはたまりませんw

ありがとうございます。元ネタを指摘していただけると僥倖の極みですw あとのネタは……
ローゼンメイデン(ですぅとかピチカート)ですね。翠の子やカナが可愛いのでついつい。やり
すぎてしまった感も若干ありますが、笑いのためには多少の破綻もあるべき……でしょうか?

さいさん
>いいかね? ご立派な倫理観や信仰心だけでは食ってもいけなければ、栄光を掴み取る事も出来んのだよ。

この点は同意ですね。どうしても成すべきコトがあるなら、倫理より実利を優先すべき。もっと
もその実利は、大衆の望むものにすり合わせてなければ時流に乗れず、いつかしっぺ返しを
食らうのもまた事実。すなわち、自作自演は下策。けど、そうせざるを得なかったのは気位
ゆえの愛国心な訳で、それは彼にとっての弱みであり、また、人間らしい恐ろしさでもあると思うのです。
しかし、ここまで死亡フラグバリバリなコトをやらかしてしまった彼、ますます神父の生贄説が有効に。
あぁ。そういえば冒頭で上の騒ぎを知覚してたのに、神父が来た可能性を微塵も察してないのが
マズいといえばマズい。

343 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/27(日) 21:21:54 ID:THonmnxi0
投下させていただく。ただし短め。

344 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/27(日) 21:26:53 ID:THonmnxi0
4月22日 ???
円形のテーブルを挟んだ向かいに座るのは、ぎょろりとした目と、尖った耳、
そしてそれらのインパクトを無視させるほど、特徴的な長い鼻を持った老人。
その横に、プラチナブロンドの髪を持つ女…エレベーターガールのようなポーズを取っている。
承太郎は、その女の、猫のような金色の瞳が、満月の様な妖しい輝きを持っているように感じた。

『ようこそ、我がベルベットルームへ』

目の前の奇妙な老人が言った事から察するに、ここは『ベルベットルーム』と言うのだろう。
だが、『ルーム』と言う印象は受けない。レトロなエレベーターのような造りだ。
承太郎は考える。

(俺は辰巳グランドホテル、21階の2105号室のベッドで寝ていた。
寝ている間に連れ去られるようなヘマはしねぇ…。
こいつは、夢か、でなければ…)

承太郎が考えを巡らせていると、老人が吊り上げた口の端をさらに吊り上げて話し始めた。

「いいえ、これはスタンド能力では、ございません。貴方様の夢の中でございます。
申し遅れました、私の名はイゴール。このベルベットルームの主人でございます。
こちらは助手のエリザベス」

承太郎の思考を読んだように話し出した、イゴールと名乗る老人は、枯れ枝のような手を
エリザベスと呼んだ女に向けた。

「エリザベスでございます」

エリザベスの口調は、全く丸で、エレベーターガールそのものだった。
『で、ございます』の『で』と『ざ』にアクセントを置くやつだ。

345 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/27(日) 21:28:05 ID:THonmnxi0
「人の夢に勝手に入り込んでくるとは、マナーがなってねぇな。目的は何だ」

現状の確認が出来ず、完璧に相手のペースで状況が進んでいるにも拘らず、
承太郎の態度は崩れない、呼吸も脈拍にも乱れが出ない。
相手のペースに飲まれても、自分を乱さない限り、チャンスがある事を知っているのだ。

「それは申し訳ございません。貴方様にお会いするにはこれしか方法がございませんので。
この様な無礼を、働かせていただきました。私共の目的、それは貴方様にお会いする事でございます」

その言葉に、承太郎は、『ふん』、と不敵に笑う。

「俺に会う事?なら、もう果たされたな。そして残念ながら、俺はこれ以上ここに用はねぇ。
早いとこ、帰してくれると有難いんだが・・・?」

承太郎の言葉に、イゴールが少し慌てた調子で引き止める。

「いやいや、もう少々お待ちください。貴方様に危害を加えるような事はございません。
ですので、もうしばらく、話を聞いていただきたい」

正直に言って、この言葉のどこを信用すればいいのかさっぱりだが、承太郎は、一応従う事にした。

「手早く済ませろ。明日から教壇に立たなくちゃならねぇんでな。
それともう一つ、椅子が小せぇ」

普通の、そう、高校生くらいの平均的な体格なら、今、承太郎の座る椅子でピッタリだっただろう。
しかし、人並み以上に恵まれた体格を持つ承太郎には少々どころか、かなり小さかった。

「そ、それは申し訳ございません。ですが、代わりがありませんもので…」

イゴールはしどろもどろになりながら、弁解する。
隣のエリザベスが、少し吹き出していたのは…たぶん気のせいだろう。

346 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/27(日) 21:30:00 ID:THonmnxi0
それっきり、承太郎はだんまりを決め込んだ。
だが、口ほどに物を言う目が、『さっさと話せ、でなければ帰らせろ』というプレッシャーを放っている。
イゴールは胸元のポケットからハンカチを取り出し、汗をぬぐってから話し出す。

「今から二十年前、貴方様はタロットに導かれ、旅をなされましたな。
そこで暗黒に包まれ、終わりを迎えるはずの『世界』に、貴方様の『星』は一筋の光を射されました。
そして、貴方様は流星の如く『暗黒の世界』を切り裂き、再び『光ある世界』をもたらされました。
貴方様のご活躍がなければ、この世界はとうに終わりを迎えていたでしょう」

「…あれは俺だけの結果ではねぇ。命がけで仲間が残した遺産、そのお陰で得た結果だ…」

承太郎は軽く目を閉じる。
もう、あの時の旅の仲間は、祖父であるジョセフしか残っていない。
アブドゥル、イギー、花京院、そしてポルナレフ・・・。皆逝ってしまった。
ベルベットルームを、しばし静寂が支配する。

「・・・少々前置きが長くなりすぎましたな。
今回お招きした、本当の理由、それは世界を救って頂いた事に対するささやかなお礼をしたかったので、御座います。
貴方様には、これをお渡ししたい」

イゴールが両手を掲げると、何もない空間から、一枚のカードが落ちてくる。
それは宙を舞い、承太郎の手に落ちた。

「これは…?」

承太郎はカードを持ち上げ、裏と表を見てみた。
裏に当たる部分には模様が入っているが、表には何も描かれていない。

347 :ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志:2007/05/27(日) 21:32:46 ID:THonmnxi0
「貴方様は旅の中で決して切れる事のない、絆をお結びになられました。
そのカードは、あるべき時にあるべき場所で貴方様に『絆の力』を貸してくれるで御座いましょう。
それでは、また、お会いいたしましょう…」

イゴールが、言い終わると、ベルベットルームが眩い光に包まれる。

「待てッ!」

承太郎は椅子から立ち上がり―――、手を伸ばした先は天井。
周りを見てみれば、何の変わりもない、辰巳グランドホテルの2105室である。
いや、窓から朝日が差していることが、唯一、就寝前と違うところだ。
承太郎は上半身を起こし、呟く。

「妙な夢を見たな…。奇妙なのは日常だけで充分――ん?」

視線の先に、何かある。
それは一枚のカード、何も描かれていないブランクカードだった。

「夢じゃねぇって事か。やれやれだぜ、全く…」

 /l_______ _  _
< To Be continued | |_| |_|
 \l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

348 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/05/27(日) 21:35:18 ID:THonmnxi0
作者は「ハロイ氏のコメント」を見て考える!


   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)
. |     (__人__)   >ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志作者氏
  |     ` ⌒´ノ     って、名前長すぎすぎだろ、常識的に考えて…
.  |         }
.  ヽ        }
   ヽ     ノ        \
   /    く  \        \
   |     \   \         \
    |    |ヽ、二⌒)、          \


なのでそろそろコテを名乗ろうと思う。
私の名はエニア、今後ともよろしく・・・

349 :作者の都合により名無しです:2007/05/27(日) 22:32:59 ID:KbbguW9N0
クリキントンさん、スターダストさん、エニアさんお疲れ様です!

>DBIF
未来へ渡っていよいよ本番といったところですが、敵の全貌が徐々にわかってきましたね。
悟空とともに切り札ともいえる精神と時の部屋も出て、サイヤ人2人組みも出てきて。
多分、女の方が強いんでしょうねきっと。それとも更に強いのが控えているのかな?

>永遠の扉
相変わらず趣味に走ってますねwスターダストさんが故・山田風太郎氏や横山光輝氏など
シブいところが好きなのはHPで知ってましたが、中々風太郎節は難しそうですねw
でも、ネゴロは風太郎世界にいそうだからしっくりくるなあ。忍法もキャラに合ってる。

>第三部外伝 未来への意志(エニアってどういう意味ですか?)
ベルベットルームって悪魔合成の部屋ですよね?P3やってないんでわからないけど
多分あってますよね。あの雰囲気にあっても承太郎は決して揺れない、乱れない。
鉄人振りはどこへ行っても相変わらずですね。今回の話と最後のカードは伏線かな?

350 :作者の都合により名無しです:2007/05/28(月) 01:01:02 ID:V+6QVHVU0
・スターダストさん
山田風太郎は読んだ事ないけど、一度読みたくなった
根来は原作では大した活躍してないのに、氏の作品内では大活躍ですなw

・エニアさん
承太郎はいつでもクールで承太郎らしい。デス13みたいな
スタンド攻撃と思いきやあの部屋でしたか。きっと物語の重要な場所だろうね。

351 :作者の都合により名無しです:2007/05/28(月) 12:40:38 ID:QQJdKFUw0
>スターダストさん
錬金はDVDとか本とかがいまだに出てきてるみたいだから、
原作設定とすり合わせるのに大変そうですね。
でも、それだけ錬金ファンが全国にいるんでしょうね。連載短かったけど。
ネゴtロと千歳のコンビは前作からいい感じですね。相変わらずぶっきらぼうで。


>エニアさん
ベルベットルームで悪魔合成とかそのうちするんだろうか?
このコンビはまた出てきそうですけど、いまだ敵の全貌がよくわからない今、
どのように動くか不気味ですな。
承太郎の場合、夢より日常のほうが非日常だからなw


全然関係ないけど坂井泉水死んじゃってショックだ・・orz


352 :作者の都合により名無しです:2007/05/28(月) 18:02:43 ID:vt5ccp610
いつも思うんだがスターダストさんやエニアさんは
AAをずらさずに上手く貼れるなぁ
俺いつもずれるんだけど
SSかける人はそういうのも上手いのかな

353 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/05/28(月) 19:34:12 ID:xjpFtqGw0
>>352
あまり関係ないが、昔少々AAを描いていた。
連載の途中で想像力が創造力を超えて描けなくなった。
人には過去がある、俺にも過去がある。そういう事。

行頭の半角スペースは省略される。
連続した半角スペースは省略される。

ここさえ押さえりゃ、大丈夫だ。

354 :ふら〜り:2007/05/28(月) 20:59:56 ID:COsGmqtv0
>>クリキントンさん
原作ではロクに描かれてない、ブルマのベジータへの想い。それにもまして忘れられがちな
ベジータからブルマへの想い。トランクスの豪快な戦いぶりと新キャラ登場よりむしろ、この
二人の今後が楽しみになってきました。18号もいないし、ブルマが久々にヒロイン返り咲き?

>>ハロイさん
「ヴィクティム〜」の面々と比較するまでもなく、十和子の能力はそのまま戦闘に使えるもの
ではない。なのに得体の知れない相手と対峙してこの度胸。油断攻めといえばジョセフの
特技ですが、それも易々と跳ね返して……案外彼女こそ、他の誰よりも謎めいてるかも。

>>スターダストさん
それなりの攻防をしているのに、戦ってる双方+驚き役兼解説役をやるべき観客、の三人
が揃いも揃って寡黙なものだから、気合や苦悶や焦燥などの叫びが皆無で、唯一叫んでる
「筆者」をよそにホント静寂な戦い。動じない、というか動じても叫びませんしね根来と千歳。

>>エニアさん
敵ではなさそう……かな? いやいやまだ判らない。イゴールの説明からすると、もしかして
三部キャラが限定的に復活するとか。あるいは戦車や法皇の能力だけ拝借できるとかかも。
敵方が承太郎にとって未知(スタンド使いではない)ですし、パワーUPなら頼もしい。さて?

355 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:14:41 ID:uMDepHmO0
part3.act2
ライトセーバー独特の脈動音を呻らせながらにじり寄る集団を見て、
アステリオンが誰に言うとでもなく。

「ダンテ、ケルベロスのダンテがな、あの映画大好きでな。
 シスの暗黒卿と戦ってみたい、なんて言ってたが…。
 まさかそんな日が来るとは思っても見なかった」

なるほど、赤黒く光る刀身はシスの暗黒卿のそれと瓜二つだ。
アステリオンが妙に乗り気なのもそのせいなのだろう。

「すまない、俺は見たことが無い。」

「残念ながら僕も」

偉大な先達二人の応えで、麒星はそれが軽口だと気が付いた。
実戦経験は乏しい麒星だ。ましてや対集団戦闘などは今回は初めてなのだ。

「なんだ、そうだったのか?アドニスは面白がってくれたんだが…。
 よかったら今度DVD貸すぞ」

ダンテの供養だと思ってEP3のワールドプレミア行ったのに、
というアステリオンの呟きを聞こえないフリをするくらいの余裕は、今の麒星にあるのだが。

「…いや、ニコルの手伝いをやったほうがよっぽど供養に成るのではないか?」


356 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:25:08 ID:uMDepHmO0
紫龍のほうはどう応えて良いのか分からず、つい、その呟きに反応を返した。
それを見て、瞬はくすりと笑う。

「紫龍ってそういうところ変わらないよね…。
 そういう時は素直に借りておくのが得だよ?」

冗談めかして瞬が言う。
こういう点では、瞬に紫龍は及ばない。
それが気に障ったわけでは無いだろうが、
制服の集団は統制の取れた動きで四人を囲んで走り出した。
完成した包囲網は、少しずつ狭められていく。
その動きで瞬と紫龍は気が付いた。
目配せは一瞬、それで事足りる。

突如として紫龍が天空に向けて廬山昇竜覇を放つ。
同時に、瞬が消えていた。
みれば遥か上空に緋色の星が流れているのがみえる。
瞬と紫龍は別働隊の存在を察知したのだ。
紫龍の目くらましに乗じて、瞬がその別働隊を叩く為動く。
目配せ一つでそこまでの段取りが組みあがるのが、歴戦の猛者の証である。
紫龍の昇竜覇に恐れをなしたかは分からないが、電子音、恐らくはそれが合図なのだろう、
を響かせて四人に向かって襲い掛かってきた。

「安い連中ですね」

357 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:31:43 ID:uMDepHmO0
三人一組で四組、総勢十二人が第一派。
ライトセーバーを呻らせて襲い掛かる。

「軽口を叩くな、麒星」

挑発に乗ったわけではないのだろう。紫龍は冷徹に彼らをみている、恐らくは足止めだ。
なぜ聖闘士の邪魔をするのか?考えられる理由として竜騒動が挙げられる、
彼らもまたこの騒動を感知していたのだろう。
聖域上層部のくだらない縄張り意識に付き合ってやるつもりは紫龍には毛頭ないが、
現実、こうして目の前に差し迫ってくると意識せざるを得ない。
協議の場を設け、協定なり何なりを組んだほうが余程建設的だ。
彼らもまたそう考えるのが自然だ。
抗争など、損害ばかり大きくて利益が少ないのだから。
こうして思考に耽溺している間にも、
ライトセーバーを構えた三人が紫龍に向かって襲い掛かってきている。
だが、紫龍とて光速の住人だ。
たかだか音速程度の攻撃、目をつぶっていても避けられるし、
彼らほどのレベルになれば普段肉体に纏っている小宇宙であっても白銀聖衣を凌駕する。
さしたるダメージにはならない。だからといって喰らってやる義理もないのだが。

「ミリオンゴーストアタック!」

声と共にアステリオンの体がぶれる。
音速の蹴撃である。
たとえ対象が主力戦車だったとしても、アステリオンならば蹴り砕いてしまうだろう。
無限幻影ともいうべきこの技は、必殺の一撃のタイミングを覚らせないための技である。
それ故、見切られたが最後なのだが、
アステリオンは相手の心を読む「サトリの法」によってこれを回避していた。

「…ッ!麒星!紫龍!こいつら人間じゃないぞ!
 サイボーグか何かだ!」


358 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:36:38 ID:uMDepHmO0

アステリオンとて一流、蹴りの感触如何で硬軟重厚軽薄、
ましてや人か否かなどはわかって当たり前だ。
しかし、対象が人間のつもりで攻撃したら、
その実人外化生でしたでは、思わぬ反撃をうけかねない。
年長者の常で、つい紫龍にまで警戒の声をかけたが、
それだけ不意の反撃を危険視した証拠である。
不意の要素による敗北は未熟の証左などとよく言われるが、
それは必ずしも正鵠を得ているとは言いがたい。
強制的に不意を創り出させる技術は、世界中の格闘技に存在するし、
勝利をもぎ取る為には卑怯ともとれる手段をも講じるのが戦闘者の常だ。
三人を一蹴してのけ紫龍に目をやれば、
紫龍を取り囲んでいた三人が崩れ落ちるのが見え、
麒星を見やれば、逆袈裟に切り上げられた一人目の後から二人目が切りかかっていた。

「麒星!」

「アステリオン!下だ!」

紫龍の声にアステリオンは自分の右足が、
たおれた戦士の背から服を破って突き出たメカニカルな腕によって握り締められているのを知った。
運悪く、軸足である。

359 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:42:12 ID:uMDepHmO0
更に、斃れていたはずの一人の首が後に倒れると、そこから砲身が現れる。
ダメージを覚悟するも、その覚悟は翠の円盤によって破られた。
翠の円盤は砲身ごと切り裂くと、
その勢いのままアステリオンの脚を掴んだままだった戦士にトドメをさす。
龍星座のシールドは、取り外して投擲武器として使うことが出来るのだ。

「助かった!紫龍」

その声が紫龍に届く頃には、紫龍は麒星に切りかかろうとしていた戦士を打倒していた。

360 :戦闘神話・第三回−宣戦布告−:2007/05/28(月) 23:49:04 ID:uMDepHmO0
天秤座ライブラの童虎直伝の技、廬山龍飛翔である。
廬山昇龍覇の骨子でもあるこの技は、突撃技としても使うことが出来る、
事実紫龍は麒星の窮地を救う為に突貫していた。
亜光速の蹴撃である。
紫龍の脚が触れた瞬間に、戦士の体は四散していた。

「エクスカリバー!」

麒星の横一文字で戦士は腹を掻っ捌かれる。
これで決まりだ、と彼は思った。直前のアステリオンとの戦闘を見ていれば、
そういう思考が頭をもたげる事はなかっただろう。
崩れ落ちるかと思われた戦士は、しかし、上半身と下半身が別個に動いて攻撃しだした!
戦士の下半身は太ももに隠されたニードルガンで麒星の動きを止め、
上半身は麒星に向かって切りかかる。
麒星は、おろかにもそのアクションに呆然としていた。
麒星の未熟の証左である。
もし、これが星矢ならばそのタフネスでもって白刃取りを敢行しただろう。
もし、これが氷河ならば凍気でもってガードし、攻撃に転じただろう。
もし、これが瞬ならば敵はネビュラチェーンで粉砕されていただろう。
もし、これが一輝ならば最初の攻撃で敵は消し炭となっていただろう。
もし、これが紫龍ならばそもそも油断などしなかったろう。
だが、これは麒星だ。
未熟な青銅聖闘士だ。
麒星に、この一撃を避ける術はなかった。

361 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/05/28(月) 23:52:37 ID:uMDepHmO0
さいさん、壱万ヒットおめでとうございます。
SSは、モウチョットマッテテクダサイ
冥王神話LC、エライ強いアルデバランに銀杏丸大満足でございます。
うん、これでこそ玄田哲章ヴォイスのキャラクターだ!

>>204さん
ベテランというより、無駄飯ぐらいの穀潰しという気がしないでもないです…
完結作品つったって短編連作ですし、長編やるの初めてですし…
楽しんでいただけるようがんばります

>>205さん
瞬と星矢は原作じゃ不遇の範疇に入れていいと思う扱いなので、戦闘神話では優遇傾向にあります
第四回で瞬はあのキャラクターとガチバトル予定、こうご期待
星矢はもう、一輝同様反則一歩手前キャラなので出しどころが非常に難しいです

>>ハロイさん(前回コメント忘れて申し訳ないです)
紫龍って情に厚いし熱血だしで、いい先生になりそうな要素いっぱいあるんですよ
と、いうことで彼は先生になりました。なんだかんだいって動かしやすいっていうのもあるからなんですが
個人的に、サクラよりも木の本桜のほうが好きです、前向きで
ぜったい、大丈夫だよ!っていわれたら納得するしかないじゃないか!


362 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/05/28(月) 23:54:36 ID:uMDepHmO0

>>さいさん
コメント云々はその人のスタンスでいいんじゃないでしょうか?
実際僕も前作の時は書くのに精一杯でレスどこの余裕なかったですし
今?今も余裕なんてありゃしませんてw
調子こいたサムナーが自分の中じゃボーゾックの計略に引っかかってカーレンジャーと敵対した
シグナルマンに見えてきてエライコッチャです、何とかしてくださいw

>>スターダストさん(/z未だ未読なり!失礼!)
雛苺は原作で一番エライ目にあったキャラなんで、なんとか戦闘神話では救ってあげたいなぁとおもってます
設定の共通化というのは、実は漫画家長谷川祐一氏の「すごい科学で守ります」シリーズが参考になってたり
日本は商業ベースのクロスオーバーが少ないので、ああいう突拍子もないことされるとおおぉ!と思っちゃいます
(海外だとスパイダーマンとトランスフォーマーが競演したりなんてのはよくあることなんですがね…)
ちなみに、逆襲のギガンテスがスパロボの寺田氏にスパロボはイケると確信させたのだとか
そんなことやってみてぇなぁとか思ってたりします

>>ふら〜りさん
白銀と黄金って、精神的な対立があったと思うのですよ。
なにせハタからみてマトモなやつがアルデバラン位しかいないわけですし
上が信用できないのなら、俺たちでがんばるしかない!的意識があったんだと思います
原作ではカマセ要因として散っていった彼らをそう見ると、なんともいえない哀愁を感じてしまうのです
少なくとも、このお話では信用の置けない管理職を精神的に見限って奮起する中間管理職的スタンスで書いてますw

では、またお会いしましょう!


363 :作者の都合により名無しです:2007/05/29(火) 00:58:09 ID:PQ8p2NdO0
お疲れ様です銀杏丸さん
今回はセイントたちが大活躍でうれしかったです
(作中の他作品あんまり詳しくないんで・・)
紫龍のエクスカリバーも見れたし。
でも、アステリオンって一流かあ?w

364 :作者の都合により名無しです:2007/05/29(火) 10:40:50 ID:ZLeIGdtj0
銀杏丸氏乙。
廬山龍飛翔とか懐かしかった。これからも聖闘士を活躍させて下さい。
一輝が一番好きなんで、是非。
あと、メル欄に副題入れてたんですねw


365 :作者の都合により名無しです:2007/05/29(火) 15:09:30 ID:1YfvwblJ0
銀杏丸さんの星矢物は好きだけど、正直前作の方が好きだった・・かな?
でも、紫龍や瞬が活躍し始めてこの作品も好きになってきました。
頑張って下さい。

366 :DBIF:2007/05/29(火) 23:58:44 ID:ov1QTu0O0
ドラゴンボールの回収が終わり、ピッコロもまた『精神と時の部屋』を確認して戻って来た。
幸いなことに異常は見られず、いざとなれば使用することが出来るというピッコロの言葉に悟飯達は軽い安堵を覚えた。
もちろん、いざとなれば過去に戻ってさらに修行するという手がないこともないが、その修行中に万が一何らかの異変が
あれば、トランクスの世界の危機に専念するわけにも行かなくなる。
『精神と時の部屋』はそんな問題点を解消するための、かなり重要な存在なのだ。
「で、あいつの宇宙船から詳しい情報はわかったのか?」
今や一応の本拠地となっているブルマの家の、作業スペースの一つを客間に改造した部屋の中央に置かれたテーブルに
ついたクリリンが訊ねた。
「残念ですが、それ程重要な情報は得られませんでした」
「そうか。連中の詳しい情報があれば、少しは他の対処も考えられると思ったんだが」
ピッコロの言葉にトランクスは軽くうなずいて答えた。
「今のところわかっているのは、あの宇宙船の通信記録から、恐らく異星人の方にはあと2人大物がいるらしく、その大物は、
サイヤ人を追ってこちらに向かっているということです。それと、恐らくですが会話の内容から推測して、サイヤ人の方は
3人だろうということ。最後に、そのサイヤ人の方は、そう遠くない内に来るということです」
「ふん、望むところだ」
ベジータが馬鹿にしたように鼻で笑って見せる。しかし闘いを前に純粋なサイヤ人の血が騒ぐのか、その身体は時々わずかに
震えていた。
「あの・・・その異星人はともかく、サイヤ人の方は、何故わざわざ地球にやって来るんでしょうか」
「わかりません。その辺りの事情は本人達に聞くしかないでしょうね」
悟飯の質問に、トランクスは残念そうに首を振った。
「2人に3人か。多いと見るべきか、少ないと見るべきか・・・」
来たるべき未知の敵、その目的も強さもわからぬまま悟飯達は悶々と数日を過ごし、とうとうサイヤ人が乗っているらしい
宇宙船が地球へとやって来た。


367 :DBIF:2007/05/30(水) 00:00:08 ID:ov1QTu0O0
「!」
「来やがったな」
ブルマの家で待機していた者達全てが一つの方向を向く。まだ地球に降りてはいないが、巨大な気が確実に地球に
向かってくるのを感じたのだ。
「まずいな。このままの速度で来るなら予想着地地点は21521−6253。トランクスからもらった地図と照合すると、
その2km東に人の住む街がある」
スパッツの分析に、トランクスの顔が青ざめた。
「大変だ!すぐに住民を避難させないと」
と言うやいなや舞空術で飛び出して行く。
「お、おい待てよ」
一瞬呆気に取られたものの、クリリン達もまたトランクスを追いかけて行った。

「申し訳ありませんが、すぐにこの街から避難して下さい」
「避難って、何かあったのかい?」
「これからとんでもない連中がやって来るんです。そいつらにかかったらこんな街など一たまりもない」
「とんでもない連中って、ま、まさかあの人造人間どもがまた・・・」
「それよりもっと恐ろしい奴らです。いいから早く!」
「わ、わかった」
あちらで一人、こちらで二人とトランクスが説明して回っている。しかしトランクスに悟飯や他の者を加えても、避難は
容易に完了しそうに見えなかった。
「どうする?ある程度まとめて説明するか?」
「それでも避難が完了するのは62分かかる。宇宙船の到着予定は15分後。間に合うとは思えない」
ピッコロの意見を、いかにも機械らしい正確な予想値を基にスパッツが否定する。
「じゃ、じゃあ誰かが足止めしないと」
悟飯が言うその横で誰かが突然飛び上がった。


368 :DBIF:2007/05/30(水) 00:01:24 ID:ov1QTu0O0
「ベジータ?!」
「つまらん。ここの連中などどうなろうが知ったことじゃないが、すぐに追い出したいならこうすればいい」
皮肉めいた笑みを浮かべてそう言うベジータの手に、エネルギーの塊が現れる。ベジータはそれを四方八方へと無造作に投げつけた。
「父さん、何を?!」
トランクスが慌てて止めようとするのにも構わず、ベジータはなおもエネルギー弾を打ち続けながら思い切り息を吸うと、
「街の西に、人造人間が出たぞーーーっ!」
と、街中に響き渡る声で叫んだ。
その途端、攻撃された建物から出て来た人間ばかりか、街中の人間がわらわらと東に−宇宙船が着陸するであろう方角と逆に−
向かって逃げ始めた。
「あ・・・」
「ふん」
その様子を見届けると、ベジータは一つ鼻を鳴らして飛び去った。恐らくは宇宙船の着地予定地点に向かったのだろう。
「いやー、荒っぽいけど確かにこれならすぐにみんな逃げ出すよな」
「ええ・・・」
と応じながら、トランクスはベジータの行動に驚いていた。
トランクスが初めて出会った頃のベジータからは考えられない行動であった。思えばセルゲームの終盤、彼をかばった時から兆候は
あったが、ベジータの心に何か変化が生まれつつあるのかもしれない。それをトランクスはこの行動に感じていた。


369 :クリキントン:2007/05/30(水) 00:05:44 ID:51rEjeoT0
今回はここまで。

333さん
349さん
ふらーりさん
感想感謝です。前回ラディッツ以来なんて書きましたが、考えてみれば劇場版も
含めてるんで久しぶりでもなんでもなかったですw
ちなみに今回のサイヤ人は劇場版の敵の関係者という設定です。

駄文
さいさん、スターダストさん、銀杏丸さんなんかの書いてる話を始めから読もうと
リンク辿ったら物凄い量の文章が出て来てびっくり。
当分コメントは控えて読むのに専念します。とか書きながらリンク先にあった
不完全セルゲームとか読んだりしてて、全部読むのはいつになるのやら・・・

370 :作者の都合により名無しです:2007/05/30(水) 00:55:55 ID:ai95BGX30
クリキントンさんお疲れです。
サイヤ人2人に異星人3人か。
クリリンはお味噌としても、ベジータ、ピッコロ、トランクスに悟飯、
そして悟空でちょうど数は合いますね。
ベジータ一人くらいは倒してほしいな。

371 :作者の都合により名無しです:2007/05/30(水) 10:05:36 ID:HGCdydiD0
ベジータツンデレ化はセル編の目玉の一つでしたからねw

372 :作者の都合により名無しです:2007/05/30(水) 12:21:23 ID:kcDDByWm0
クリキントン氏は良いペースで更新してるな。
最初はちょっと読み辛かった部分もあったけど、随分と読み易くなった。

敵キャラはサイヤ人よりも他のやつらの方が強いのかな?

373 :作者の都合により名無しです:2007/05/31(木) 10:50:08 ID:YMQi4MxS0
週末にまた一気に来るパターンかな?

374 :作者の都合により名無しです:2007/06/01(金) 11:05:48 ID:LqI8o2vn0
出来れば週中にも分散してほしいと思うが、書き手さんもいろいろあるでしょうね
スターダストさんなんか仕事大変そうで心配だ

375 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 01:53:07 ID:y7zhEH5t0
なんと静かな・・・

376 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 06:33:01 ID:umMLgsUk0
昔から>>373みたいのいるけど、わざとなんだろうか?
盛り上げたいなら感想の一つでも書けよと

377 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 10:24:27 ID:gudaVD/L0
たかだか2、3日来ないくらいで心配するなよ>>373
ちょっとこのスレの住民の一部は贅沢すぎ
ま、ミドリさんやサナダムシさんは心配だけどな

378 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 21:29:45 ID:oe30UapD0
毎日来ないと気がすまないのかw

379 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 22:29:24 ID:y7zhEH5t0
そんな些細なレスに何人も突っ込まなくても・・・・。
ジョジョの人期待して待ってるぜー。

380 :作者の都合により名無しです:2007/06/02(土) 23:37:23 ID:oe30UapD0
ま、沢山作品が来るのは幸せな事だよ
スレにとっても住民にとっても
バキスレはその点すごく恵まれている

でも、クレクレ厨は正直ウザい
職人さんも困るだろう、仕事もあるだろうし

381 :テンプレ1:2007/06/03(日) 01:08:41 ID:HurkJZ8c0
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart50【創作】

祝! パート50!!

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1178266038/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss


382 :テンプレ2:2007/06/03(日) 01:11:25 ID:HurkJZ8c0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html


383 :テンプレ3:2007/06/03(日) 01:13:01 ID:HurkJZ8c0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html


384 :テンプレ3改定:2007/06/03(日) 01:16:30 ID:HurkJZ8c0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html


385 :ハイデッカ:2007/06/03(日) 01:20:24 ID:HurkJZ8c0
トリップ忘れた。まあどうでもいいか、そんなの…。

テンプレ3、下の改訂版が正しいです。
エニアさんの名前が抜けてた。申し訳ない。
今回、急いで作ったためちょっと自信がない。もし間違いがあったら指摘して下さい。

白書氏、ブルーグラード外伝作者氏、カシオスの冒険作者氏が長期連絡なしでテンプレから外れました。
ご連絡お待ちしております。次は店長氏やプロキシー氏も危ないなあ・・。
俺も書かなきゃと思いつつ、最近バカ忙しい。それにブランクあるとなんか長時間キーボードに
向かえなくなるのな。なんとなく。次スレ中には必ず書くつもりだけど。

あと連続書き込み規制50秒になったのかよ!
どんどん書き込みづらくなるな、連投レスする人間には。

386 :作者の都合により名無しです:2007/06/03(日) 11:00:01 ID:a/yxNfhT0
ハイデッカ氏いつもごくろうさん
聖少女の続きも頼む。

387 :DBIF:2007/06/03(日) 23:13:48 ID:h3XsiJc30
スパッツの予測地点で待機する悟飯達の見上げる空に、しばらくして宇宙船が現れた。
始め、気を消して様子を伺うという案も出たが、消極的な策を嫌うベジータがそんなことを承諾するはずもない。結局姿を現して
迎えることとなった一同が見守る中、宇宙船が着地すると、間もなく入り口の扉がゆっくりと開き始めた。
「どうも待たせてしまったようで、すまないな」
まだ開き切らない扉からそんな声が漏れた。
「女?」
ベジータの口から不審な声が出る。果たして、どことなくハスキーな高音の声の印象通り、開き切った扉の向こうから現れたのは
黒い長髪の女であった。その横には体格の良い髭面の男が立っている。一見すると普通の人間だが、腰に巻いた尾が、彼女らが
サイヤ人であることを物語っていた。
「ほう・・・なかなか」
女は左右に視線を巡らせてから、感嘆の声を出した。
「随分と豪勢な顔ぶれじゃないか。私達の事を知っているのか?」
「あなた達が、サイヤ人だということは」
興味深げに聞いてくる女に、トランクスが慎重に答えた。まだ必ずしも敵とは見なせない相手にいきなり襲い掛かるわけにもいかない。
ましてや女性ともなれば。
「こちらからも聞かせてもらいたい。あなた達がこの星に来た理由は何だ?」
トランクスが続けて返した質問に、女は何故か意外そうな顔をした。
「私達がサイヤ人と知っていてそれを聞くのか?ここは、ターレスの奴が最後に訪れた星なのだろう?」
『ターレス?!』
女の言葉に悟飯、クリリン、ピッコロが揃って反応した。
かつてこの地球を訪れ、星を丸々枯渇させる代わりに、その実を食する者に絶大なパワーを与えるという神聖樹を植えつけることで
地球を滅ぼしかけたサイヤ人の名が出るとは、余りにも予想外だったためである。

388 :DBIF:2007/06/03(日) 23:15:22 ID:h3XsiJc30
「やはり知っているようだな。奴は私達が他所の銀河を巡っている間、ここの銀河で神聖樹の実を増やすために残された、
言わば使用人のようなものだ。もっとも、元が下級戦士なだけにお前達の誰かにやられたようだが」
女の言葉に3人は声も出なかった。ターレスは超サイヤ人でなかったとはいえ、あの悟空が10倍界王拳をもってしてなお
歯が立たなかった程の相手である。そのターレスが目の前の二人にとってはただの使用人だったというのか。
「もうわかったな?隣の銀河での収穫はあらかた終わったんでな。奴が最後に訪れたこの星から、この銀河での栽培と
収穫をやり直そうというわけだ」
悠々と話す女を見る悟飯の身体がわなわなと震えた。目の前のサイヤ人はあの時と同じく、神聖樹によって地球を死の星に
変えようというのだ。
「そんなこと、させるもんかーっ!」
「!」
悟飯の髪の毛が逆立ち、黄金色に染まる。同時に稲妻のようなものを放つ、やはり金色のオーラがその身を包んだ。
「貴様、サイヤ人なのか?!」
「はあああーー!!」
爆発的な土砂を跳ね上げて悟飯が女に襲い掛かる。しかし、
「!」

ブォンッ!

女に殴りかかろうとした悟飯の横から、重く鋭い蹴りが飛んで来たため、やむを得ず軌道を逸らせて着地した。
蹴りを繰り出したのは、女の横に立っていた男である。


389 :DBIF:2007/06/03(日) 23:16:55 ID:h3XsiJc30
「なぜサイヤ人がこんな星に。まさか他にも−」
「そのまさかだ。俺と、隣にいるこいつもサイヤ人だ。もっとも、純血のサイヤ人は俺だけだがな」
親指でトランクスを示しながらそういうベジータを、女は少しの間ショックを受けたように見ていたが、やがてその口が
笑みを浮かべた。
「なるほど、ターレスの反応が消えたのも頷ける。まさかこんな星に戦闘形態になれるレベルのサイヤ人がいたとはな」
「戦闘形態?ふん、どう呼ぼうが構わんが、ここにはそこの奴と同じようになれるサイヤ人が3人いる。下らん考えは
捨てるんだな」
ベジータはにやりと笑いながらそう言った。戦闘民族であるサイヤ人がそんな言葉であきらめるはずもないことを知った上で、
挑発しているのだ。
だが、その反応は思いもかけないものだった。
「ふっ・・・・・・っはっはっは。たかが戦闘形態になれるというだけで、私に指図か。身の程知らずも度が過ぎると笑いを誘うな」
「何?」
「戦闘形態になれるのがお前達だけだと思っているのか?」

ドウッ!

次の瞬間、女の姿が金色に輝いた。しかしそれはあくまで普通の、第二形態ですらない超サイヤ人、のはずだった。
「な・・・」
「神聖樹の実を食べ続けた私の戦闘形態が、ただのサイヤ人のものと同じだと思うなよ」
その言葉と同時に女の姿が消えた。
「?!」

ドゴォッ!

次の瞬間、何の反応も出来ないまま悟飯が吹き飛ぶ。そこにはいつの間にか蹴りを繰り出した女の姿があった。


390 :DBIF:2007/06/03(日) 23:19:01 ID:h3XsiJc30
「ぐ・・・!」
後方の岩を砕きながらかなりの距離を吹き飛んだ後、悟飯は何とか制動をかけた。しかしその顔には驚愕が貼り付いている。
まさか第二形態にすらなっていないただの超サイヤ人が、これ程のスピードと威力の攻撃を仕掛けてくるなどと思わなかったのだ。
「ほう、しぶといな。それに良く見ると私の戦闘形態とは少し違うようだ。今の攻撃を耐えたのはそのせいか」
余裕の笑みを浮かべながら、その分析は鋭かった。
「くっ、このおっ!」
焦りの声を上げてトランクスも超サイヤ人となる。しかし、悟飯に加勢しようと飛び出そうとする彼を、横に伸ばしたベジータの手が制した。
「父さん・・・?」
「お前は手を出すな」
その声の冷静さに、トランクスは動きを止めて超サイヤ人の状態を解いた。
「お前もだ!こいつは俺一人で闘う」
と、悟飯にも叫んでから、ベジータは女の正面に立った。
「ふん、大層な自信だな。今の力を見ても自分一人で倒せると言うのか?」
ベジータは普段の彼らしくもなく、その言葉に何も言い返さずに超サイヤ人化した。勿論それは超サイヤ人の限界を超えたものである。
「ほう、あの子供よりわずかだがパワーが強いな。だが、それがどうだというのだ?」
嘲るように笑う女の気がさらに跳ね上がる。先程のはまだ本気ではなかったのだ。
しかしベジータは動じることなく、ただ口を固く結んで女を見つめている。
「ふん」
その口が不意に笑みを浮かべた途端、ベジータの身体が一回り大きく膨れ上がった。
普通の超サイヤ人の第二形態と同じパワーアップを、今の状態でして見せたのだ。
「何?!」
驚きの声を上げる女に向かってベジータが突進した。

391 :作者の都合により名無しです:2007/06/03(日) 23:27:01 ID:a/yxNfhT0
ん?投稿規制かな?

392 :クリキントン:2007/06/03(日) 23:26:54 ID:h3XsiJc30
今回はここまで。ちょっと中途半端になりました。こつこつ書いてはいるんで早めに
続きを上げようと思います。

370さん
371さん
372さん
感想感謝です。
今回は未来が舞台ということもあって、トランクスとその親のベジータはかなり出番多目です。
頑張って書いていこうと思うんでこれからもよろしく。

393 :作者の都合により名無しです:2007/06/03(日) 23:32:07 ID:a/yxNfhT0
ターレスって映画版の奴でしたっけ?
ベジータさっそくカマセになりそうな予感w
ま、DB名物が出て嬉しいけどw
派手に闘って派手に散ってほしい気もするw

394 :作者の都合により名無しです:2007/06/04(月) 01:30:47 ID:d+ZHOVFB0
お疲れ様です。
いよいよサイヤ人が動き出し、ベジータたちとの戦いが始まりましたね。
流れからいくと1回はZ戦士はやられるんでしょうが、他にも強敵は
何人もいるみたいなんで大変ですね。
悟空はいつ未来に到着するんでしょうか?


あと、うにみんさん元気みたいですね。安心しました。

395 :作者の都合により名無しです:2007/06/04(月) 14:58:56 ID:F7wnzG3S0
クリキントンさん頑張ってるな
いよいよサイヤ人2人組との本格決戦開始か
その後ろにも異星人が控えているし、長期連載になりそうですな

396 :ふら〜り:2007/06/04(月) 22:16:14 ID:Cu+2D12X0
>>銀杏丸さん(目欄、雑誌掲載時のトビラ絵の煽りみたいで良いアクセントです)
ただ会話するだけでも貫禄のあった本作の紫龍たちですが、いざ本格的に戦い始めると、
これまた年輪を感じさせますなぁ。筋肉と小宇宙だけで戦ってた頃とは大違い。戦闘力の
高さだけではない、熟練者として「後継者を導く者」の風格、かつ現役。重厚な存在感です。

>>クリキントンさん(もしや18号の代わりにヒロインを務めるのはこの女?)
>神聖樹の実を食べ続けた
ベジータはマジュニアと違って立派に「前科」があること、主人公グループ内で活躍しても
忘れまじ……てのが自論ですが、この女もなかなか。さすがは宇宙の地上げ屋サイヤ人。
といってももうとっくに雇い主(フリーザ)を超えてますけどね。さて王子様、活躍できるか。

>>ハイデッカさん
毎度おつ華麗さまです。いよいよ50……最近、新スレのたびに「50が見えてきました!」
とか言ってきましたが、遂に。重ねた年月、刻まれた名作群、集った人々。バレさんや
ゴートさん、多くの職人さん、数知れぬ住人みんなで築いた50……感慨深いです。

397 :作者の都合により名無しです:2007/06/05(火) 00:10:55 ID:p4ogcUvN0
クリキントンさんは回を重ねる毎に書き慣れていってますね。
真性のドラゴンボールみたいなやり取りですし。
これからも期待してます。

>ふらーりさん
うみにんさんが復活してくれそうですね。
パート50はいなくなった色んな人が復活してくれるといいですね。
SSだけでなく、一言だけでもいいですから。

398 :作者の都合により名無しです:2007/06/05(火) 10:10:59 ID:ThNS2rQV0
うみにん市が復活されると、なりよりのパート50のプレゼントだな

399 :作者の都合により名無しです:2007/06/06(水) 00:41:50 ID:v5cMGHpf0
うみにんさんのビックリマン、楽しみにしてたけど
急に休載されちゃったからなあ・・

400 :DBIF:2007/06/06(水) 04:33:05 ID:w+I211mS0
バキイィッ!

ベジータの拳が、女の顔面に叩き込まれる。例え相手が女であろうと彼に一片の容赦もない
「ぐあっ!」
さらに吹き飛んだ女に追い討ちをかけようとしたベジータの前に、それまで無言で立っているだけだった男のサイヤ人が立ち塞がった。
「邪魔をするなぁーーっ!」
イラついた声で叫びながらベジータが男に向かって拳を振った瞬間、
『待て』
と、どこからともなく聞いた事のない声がその場の全員の耳を打った。
それは静かな口調でありながら、激昂して攻撃を繰り出そうとしたベジータまでもがその動きを止めるほど重い響きを持っていた。
「あ・・・」
一瞬後、声の出所に気付いたクリリンが、わなないた声を上げる。
そう、トランクスの調べた宇宙船から得た情報では、サイヤ人は「3人」だったのである。
それを証明するべく、声のした方向−宇宙船の入り口−に一人のサイヤ人が立っていた。
鋭い眉の下の眼が、純粋な戦闘民族らしい刃の如き光を放っている。肩、肘、左胸、膝に金属を貼り付けた、黒い戦闘用スーツのような
ものを身につけており、その上からでも引き絞った鋼のような筋肉が浮き上がって見える。そして何より眼を引くのはその髪だ。他の
二人のサイヤ人と同じく、恐らくは純粋なサイヤ人であるはずの彼の髪は、一本一本がそれ自体から光を放ちそうな銀色だった。
「ターブル様!」
ベジータの一撃から立ち直った女が、弾かれたように叫んだ。その顔は驚きと畏怖とが詰まっている。
「俺が眠っている間に、随分と楽しそうなことをしているじゃないか」
ゆっくりとベジータ達の所へと歩きながら、ターブルは淡い笑みを浮かべて言った。
「も、申し訳ありません!ターブル様に許可を得るまでもなく、すぐに片付くと思ったもので・・・」
平身低頭して詫びる女の顔は、紙のように白かった。ターブルのことを心の底から恐れているのだ。

401 :DBIF:2007/06/06(水) 04:35:07 ID:w+I211mS0
「まあいいさ、間に合ったのだから。ところでそこのお前だが・・・」
ターブルはそこで言葉を止め、ベジータの顔をじろじろと観察するように見た後、
「似ているな。サイヤ人らしいが、ひょっとしてお前は王族の人間か?」
と聞いてきた。
「だったら何だ」
ベジータが不機嫌そうに答えると、ターブルはやはり、と頷いてからさらに質問をしてきた。
「こんな辺境の星に何故王族の人間がいる?バカンスにふさわしい星とも思えんが」
と、この質問に今度はベジータの方が意外な顔をした。
「貴様、惑星ベジータが破壊されたことを知らんのか?」
「破壊された?!ほう、それは面白い。『された』という以上はお前達が自分でやったわけでもなさそうだ。ハハ、そうか破壊されたか」
愉快そうに話すターブルの姿に、ベジータの額に青筋が浮かんだ。
「だが腐っても王族なだけはあるな。ラニに一撃を与えるとは」
「ターブル様!あれは・・・」
と、そこまで言ったラニを、ターブルの有無を言わせぬ眼光が貫いた。それ以上続けられず、ラニが再び顔を伏せる。
「面白い。ベジータと言ったか?お前、あの下級戦士の代わりに俺達の・・・」
とそこでターブルの言葉は途切れた。ベジータが攻撃をしかけたのである。
しかし不意をついた攻撃でありながら、ターブルは連続して繰り出される攻撃全てを易々と避け、さらにその拳を掴んでベジータの
動きを止めた。
「イキがいいな。さすがサイヤ人の王族なだけはある。改めて聞くが、あの下級戦士−確かターレスとかいう名前だったな−奴の
代わりにこの銀河で神聖樹の栽培をしてみる気はないか?」


402 :DBIF:2007/06/06(水) 04:37:02 ID:w+I211mS0
「な・・・に・・・?」
ベジータは有無を言わさず拳を引き抜こうとしたが、まるで固定されてしまったかのように、拳はわずかにさえ動かなかった。
「神聖樹の実を食らえば、今より更に強い力を得られるぞ。ここにいるラニとリセロよりも強い力をな。更には、永遠の若さすらも
得ることが出来る」
「サイヤ人の、王子、であるこの俺に、貴様の下、につけだと?」
なおも引き剥がそうと力をいれながらそう言うベージタの拳を、笑みを浮かべてターブルは開放した。
「お前が王子ならば、俺は神だ。神が王子の上に立つのに何の不満もあるまい?」
『神?!』
目の前のベジータはおろか、3人の来訪者以外の全ての人間が驚きの声を上げた。
以前、界王は悟空に、どの星にも神は必ずいると言っていた。ならば確かに放浪の戦闘民族であるサイヤ人にも、元々の星の神は
いたのだろう。しかし−
「その神が、何故自分の星を捨てて別の銀河などにいた?!でたらめを言うな!」
「何故?ハハハ、俺達が食べているものを考えれば、理由はすぐにわかるだろう?」
「な・・・!」
「わかったか?そもそもサイヤ人が放浪の民となったのも、俺が自分の星で神聖樹を育てたからだよ」
愉快そうに話すターブルを前に、ベジータは痴呆のように固まっていた。余りの衝撃的な事実と、それに繋がる様々なことが全て目の
前の男に繋がって押し寄せ、混乱の極みに陥ったのだ。
「じ・・・自分の守るべき惑星を滅ぼすなんて・・・」
「神なんかじゃない。あ、悪魔だ」
悟飯やクリリンの言葉など聞く耳を持たないかのように、ターブルはあくまで視線をベジータに据えて言葉を続けた。


403 :DBIF:2007/06/06(水) 04:38:11 ID:w+I211mS0
「もっとも、流浪の民となったお前達に同情がなかったわけじゃない。だから惑星プラントを乗っ取るのには協力したし、第二の故郷、
惑星ベジータとなってからはその星で神聖樹を育てることはしなかった。そして下級戦士の一人にこの銀河での栽培を任せ、俺達は
別の銀河を対象に選んだというわけだ。まあお前の話ではその惑星も長くはもたなかったらしいがな」
その言葉を聞いて、ベジータの顔がそれまで以上の怒りに包まれた。同時にその身を包むオーラも膨れ上がる。
「同情だと?!俺達サイヤ人はお前の同情で生かされていただと?!ふざけるな!!」
怒りに任せ、ベジータは右手からエネルギー弾を打ち出す。一切の加減のない、惑星破壊級の弾である。
しかしターブルは無造作に振った裏拳で、あっさりとそれを弾き飛ばした。そこにベジータが突進する。拳と蹴りが無数のパターンで
繰り出されるが、それはことごとく空を切った。
「わからん奴だな」

ドゴォッ!

その笑みを崩さずターブルの放った膝蹴りがベジータの腹に吸い込まれる。杭打ちのハンマーの如き重い音とともに、ベジータの身体が
痙攣した。続いて打ち下ろされた肘が後頭部を襲うと、あっけなくベジータは崩れ落ちた。同時に超サイヤ人の状態も解ける。
「う・・・嘘だろ?あのベジータが・・・」
「く・・・みんな、行くぞ!」
苦い顔で歯を食いしばり、ピッコロが掛けた号令と共に悟飯、トランクス、スパッツ、クリリンが動こうとした時、
「待て」
とターブルが片手を上げて制した。


404 :DBIF:2007/06/06(水) 04:39:28 ID:w+I211mS0
地球を滅ぼそうとする相手にそう言われて待つ必要もないだろうが、その一言で一同の動きが止まる。それ程にターブルの実力は
圧倒的だった。
「ここに転がっている王子は聞く耳を持たなかったようだが、さっきも言ったように、俺も一応はサイヤ人だ。同じサイヤ人が住む星で
あるならば、見逃さんわけでもない。まして第二の故郷まで破壊されたというのであれば、余計にな。」
「何?!」
ターブルの意外な言葉に、全員が困惑した表情で見つめる。まさかその効果を狙ったというわけでもないだろう。ターブル程の
実力者であればそんなものは必要ない。
「ただしその条件は、さっきも言った通り、この銀河で神聖樹の栽培をする役を引き受けることだ」
続くターブルの言葉に、その場を沈黙が占めた。彼の要求を呑めば少なくとも地球は助かる。しかしそれは同時に、地球という一つの
星を守るために、この銀河に無数に散らばる他の星々を犠牲にすることを意味する。それを考えれば到底呑める要求ではないが、
かといってターブルを倒せる可能性は、今の時点においてほぼゼロに等しかった。
「・・・少し考える時間をもらいたい」
しばらくして、トランクスがそう答えた。
(今こいつとやっても勝てない。でも、『精神と時の部屋』で修行すれば・・・)
「即答は出来んか?まあいい、待ってやろう。ただし・・・」
と、そこでターブルは地面に向けて右手を振った。

グワッ!!

一瞬後、正しくその軌道に沿って地面が深く割れると、ターブルはそこに向かって何かを落とした。
「な!」
「期限はこの神聖樹の実が熟すまでだ。承諾するなら破壊するのを見逃してやる」
と、ターブルは笑いながら言った。

ベジータをあっさりと倒してしまう実力を持ったターブルと、その部下であるラニとリセロ。3人の底知れぬ強敵を前に、地球の戦士達に
与えられた時間は余りにも短かった。


405 :クリキントン:2007/06/06(水) 04:47:28 ID:WVfXrZDm0
今回はここまで。

>>393さん
>>394さん
>>395さん
ふらーりさん
>>396さん
レス感謝です。多くのレスもらえてホントにありがたいです。

今回のサイヤ人の仲間(というか使用人)のターレスなんですが、こいつの設定が結構
面白いんです。
まず手下のセリフを聞く限り、スカウターや戦闘着を着てはいるんですが、フリーザに
組してるわけじゃない。むしろ神聖樹の実を利用してフリーザを超えようとしてるのが
わかります。
さらに界王のセリフから、この神聖樹の実が「神だけが食べることを許された実」
であることがわかります。
要するにその立場から肝心の神聖樹の種とその知識の入手法まで、結構謎を抱えた敵なんですね。

DBIFはこのターレスを始めとして、ピッコロやサイヤ人の星は出て来るのにフリーザの
星が出てきていないこと、さらにはサイヤ人が惑星プラントを自分達の星にするまで
放浪民族だったことなんかの理由が全部明らかになると共に、サイヤ人はおろか、宇宙に
存在する全ての人間にとって、正に憎むべき最凶最悪の敵と戦うことになるセルゲーム編の
続きとして考えた話なんです。

ちなみにこの話用に神聖樹の実に、
「定期的に食べている間は肉体の若さを保ち、不老の効果がある」
という設定を加えてあります。
これは今回の敵がそんな昔の人間なのに、トランクスのいる未来でなお若い姿である
理由として加えたものです。

406 :作者の都合により名無しです:2007/06/06(水) 14:56:40 ID:N67zhOqD0
やっぱりべジータはあっさりと倒されたかw
ま、べジータの役回りだから仕方ない。
彼の反撃を期待しております。

そういや、敵方のサイヤ人って3人だったね。勘違いしてた。

407 :作者の都合により名無しです:2007/06/06(水) 22:51:34 ID:v5cMGHpf0
お疲れ様です
ターレスの設定は知りませんでしたが、少なくとも現時点でスーパーサイヤ2の
べジータより強い奴がいるのはわかりました。
相変わらずのベジータのカマセぶりですが、一人くらいは倒すよな・・

408 :作者の都合により名無しです:2007/06/07(木) 00:23:34 ID:1Eu2zO3H0
パート50前の静けさか
クリキントンさんは頑張ってるなー。
ターブルはベジタブルからですね。
なんかベジータと兄弟っぽい名前だなw

409 :作者の都合により名無しです:2007/06/08(金) 01:05:18 ID:b67usRcN0
サイト持っている3人の方がみんな大変そうだ
ブログ見ると。頑張ってね・・

410 :再会:2007/06/08(金) 23:28:05 ID:+18Ls88G0
何なのだろう。
私は己に問うた。自分の身体に残された人の部分が、何かを感じさせている。
何なのだろう。
それが生まれたのはいつだったろうか。17号が吸収され、16号も破壊され、一人助かりながらも側にいる者がいないことを
知った時に、同じようなものを感じた気はするが。しかしそれとも少し違う。
何なのだろう。
ひたすらそれを考えながら、私は道をあてどなく歩く。途中、路面にタイヤがこすれる耳障りな音がして、自分の横で何かが
ひしゃげたような気もするが、そんなものに注意を向ける気にもなれなかった。
「・・・つまらないな」
そんな言葉をこぼしながら、いつもの癖で髪をかき上げた。陽の光を含んで輝く金の筋となった髪が視界を横切る。あの時
以来ろくに洗ってもいないのに、髪の艶が変わらないのを嘆くべきか喜ぶべきか。
自分を今の身体にした科学者が与えた目的であり、その科学者を17号が殺してからはただ気紛れに標的として目指した
孫悟空は既にこの世になく、17号を吸収する形で殺したセルもいない。
17号と二人助かってみれば、目の前に広がるのは、自由という名の砂漠だけだった。
いっそ、楽しむためだけに破壊と殺戮と略奪を繰り返してやろうかと思うこともあったが、今は自分などより遥かに上の力を
持った存在が立ち塞がると知りながら、ただ死ぬためだけにそんなことをするのも馬鹿げているし、第一自分の趣味ではない。
結局ただこうして、取るに足りない自分の内面に思考を沈めながら徘徊するのが関の山だった。
「そういえば、あの時から服を変えてないな」
改めて自分の服を見ると、何やらいくつも穴が空いていた。そういえば昨日、髭面の男が自分にしつこくまとわりついた後、
手に持った銃を私に撃っていた。取り上げて、丸めてから返すとすぐ去って行ったが。
「・・・新しい服でも手に入れるか」

411 :再会:2007/06/08(金) 23:29:39 ID:+18Ls88G0
「とぉってもお似合いですよお」
冗談のような顔をした店主が揉み手をしながらお世辞を言う。それ程気に入らないわけでもないが、進んで着たいとも
思えない服だ。
以前はこの程度でも妥協していたが、どうせ時間は有り余っているのだから、たまには最も好みに合う組み合わせを
探すのもいいだろうと、店内をうろつくことにした。
「あの・・・まだお決まりになりませんか?」
2時間を経過する頃、店主が額に汗をかきながらそう聞いてきた。周りには試着した服が積み重なっている。
「もう少し淡い色で、丈の短めのものはないか?」
構わず質問してみると、店主は泣きそうな顔で笑いながら、生憎と在庫がございませんと言ってきた。
「なら仕方ない。この服にしておくか」
「あ、ありがとうございますぅ〜っ」
店員は何故か涙を流して喜んだ。たかが服一着を買うのがそんなに嬉しいのだろうか。
「え〜、しめて5万4千ゼニーになります」
いそいそとレジを打つ店員の声を聞きながら、私は初めて自分のミスに気がついた。これまでは服など勝手に着て勝手に
出て行けば良かったのだが、普通の手順を踏むのであれば金が必要なのだ。
金はない。とはいえ、せっかく時間をかけて選んだのに買わずに出るのも少しもったいない気がする。ここは変に騒ぐと
面倒なことになる店主を気絶させてこのまま出て行くのがいいか。加減が難しいが、まあ死んでしまったならその時はその時だ。
早速実行しようと、相変わらず媚びた笑いを浮かべる店主の方を向いた時、表の方で爆発音が響いた。


412 :再会:2007/06/08(金) 23:31:10 ID:+18Ls88G0
「な、何なんだアイツは」
「ば、化け物だ」
次いで、そんな声が聞こえたかと思うと、銃を抱えた二人組みの男が店のドアを開けて入ってきた。
「おい!てめえら動くな!」
興奮した状態で、銃を左右に振りながらわめく男達の視線が、私のところで止まる。
「女だ。丁度いい、こいつを盾にすりゃ、あの化け物もおとなしくなるぜ」
そう言いながら私の所へずかずかとやって来ると、銃を突きつけて来た。店主の方は震え上がって店の壁に貼り付いたまま
固まっている。
むさくるしい顔だ。何をしたのかは知らないが、どうせロクなことはしていないだろう。
「姉ちゃん、悪りいがちょっと俺達のために働いてくれや」
「おとなしくしてりゃあ、殺しはしねえよ。楽しいことはするかもしれねえがなあ」
口々に下卑たセリフを吐きながら、下品な笑い声を上げる。ここまで型にはまった、頭の悪い悪党も珍しい。これならアイツの
方が100倍もマシだろう。
「ん?」
思わず疑問の声を上げていた。
何でいきなりアイツのことが頭に浮かぶのか。パチンコ玉のような頭で、鼻の潰れた味も素っ気もない顔。オレンジの道着だけは
着慣れているせいかそこそこ似合ってはいたが、身長も低い。容姿で言えばあのトランクスとかいう人間の方が余程マシなのに、
何故だろう。
「いい加減観念しろ」
そんなことを考えていると、店の入り口から二人組みとは別の声が聞こえた。
「ん?」
どこか聞き覚えのある声にそちらを向くと、今さっき頭に浮かんだ顔がそこにあった。服装こそ白のTシャツに青のズボンと普通の
服装だが、風采が上がらないという点では変わらない。
にもかかわらず、その姿を見た一瞬、胸にくすぶっている何かが大きくなったのは気のせいか。


413 :再会:2007/06/08(金) 23:32:14 ID:+18Ls88G0
「あ、あれ?」
向こうの方でも気付いたのか、相変わらず間の抜けた声をあげる。
「何だクリリン、こいつらを追っていたのはお前か?」
「え?あ、まあ」
「正義の味方も大変だな。こんな連中を一々追いかけていたんじゃ、きりがないだろうに」
銃を突きつけられながら、自分達を追ってきた化け物と平然と会話する私に向かって、二人組みが何かうろたえたことを
言っていたが、会話の邪魔になるので床に叩きつけるとおとなしくなった。悪運の強いことに加減がうまくいったらしく、
気絶しただけのようだが。
「ん・・・まあ俺の場合、こういう場合くらいしか役に立つこともないしな。ところで、18号の方は買い物か?」
「ん、ま、まあな」
まさかさっきまで店主を気絶させて服を強奪しようとしていたとも言えず、曖昧に答えると、クリリンは妙にそわそわとした後、
妙なことを言ってきた。
「えと、そ、それじゃあさ、その服の金、お、俺が出そうか?」
「何でお前が出す必要がある」
願ってもない申し出だったのだが、コイツの情けない顔を見ていると、つい反発したくなる。だが何故だろう、同時に楽しさを
感じてしまうのは。
「いや、あの、そいつらのせいで迷惑かけたからさ、そのお詫びってことで」
「・・・まあ、そういうことならいいだろう」
そういうこともこういうこともない。そもそもコイツが払わなければ強奪するか、あきらめるしかないのだから。
ともあれ服の代金はクリリンが出すことになった。


414 :再会:2007/06/08(金) 23:33:25 ID:+18Ls88G0
「え〜と、18号は、この辺に住んでるのか?」
店を出てからしばらく一緒に歩いた頃、クリリンが聞いてきた。
「そうだが、それがどうした?」
そっけなく答えると、面白いほどあたふたとする。見ていて飽きない奴だ。
「それよりあの二人は捕まえたんだ。もう用は済んだだろう?何故すぐに帰らない」
「え、いや、それは・・・」
さらに言葉を連ねると、今度は眼に見えて消沈した。その極端な変わりぶりは面白いが、少し言い過ぎたかもしれない。
「まあいいさ。服の金も出してもらったんだ。少しくらいは付き合おう」
我ながら恩着せがましい言葉だと思うんだが、それでもクリリンは顔を輝かせた。本当にころころと表情が変わる。
そんなことを考えながらしばらく話している内に、ふと気付いた。それまで、もやもやと胸に巣くっていた何かが消えて
いるのだ。これはどうしたことだろう。
「−だ?」
クリリンが何かをまた聞いたらしくこちらを見ている。
「あ、ああすまない、聞き逃した。もう一度言ってくれ」
「ん、ああ。18号は今何をしているんだ?」
「何を・・・」
それはある意味最も聞かれたくない質問だ。目的もなくふらふらと歩いているなどと答えられるはずもなく、かといって下手な
嘘は自分をみじめにするだけだ。
「まあ・・・色々とな」
結局、そう答えるのが精一杯だった。しかしクリリンの方はそんな曖昧な答えでも納得したような顔をしている。
「色々、か。まあそうだよな。ちょっと前まであのDr.ゲロに機能を停止されてたし」
「その名前は口にするな」
「あ、ああゴメン」
実際のところ、もうDr.ゲロなどどうでもいい存在ではあるが、それでも憎い名前ではある。それに、自分の曖昧な答えにあっさりと
頷くのが少し腹立たしいのもあって、つい不機嫌な声が出た。


415 :作者の都合により名無しです:2007/06/08(金) 23:37:39 ID:b67usRcN0
投稿規制?支援

416 :再会:2007/06/08(金) 23:40:28 ID:qaqKiG350
「もういいだろう。私も帰るし、この辺で別れよう」
どことなく気まずくなってそう言った時、何故か私の胸に、例の何かが再び生まれた。言い出したのは自分だというのに。
「ああ、そうだな。それじゃ・・・」
多少ぎこちなく、それでもそう言って手を振りながら、クリリンは背を向けてふわりと浮き上がった。それを見る私の胸の
何かが少し大きくなる。
「待て」
気付くとそう言っていた。きょとんとした顔でこちらを見るクリリンに、慌てて続ける言葉を捜す。
「・・・私は・・・・・・普段、大体この辺りにいる。用があったら、また来い」
かろうじてそう言うと、途端に目の前の顔が緩む。勿論行くよ、などと言ってから飛び去って行くその姿が一度止まると、
小さく右手を突き上げガッツポーズをした。
「面白い奴だ」
そうつぶやく私の顔に軽い笑みが浮かぶ。それに合わせて胸の何かもまた小さくなった。
時が経つ内にこれはまた大きくなるのだろう。それならそれでいい。その時はまたアイツがやって来て、私の言葉に
めまぐるしく色々な反応しながら、また小さくしてくれるだろうから。


417 :クリキントン:2007/06/08(金) 23:45:43 ID:qaqKiG350
どもです。
DBIFは18号はほとんど出ませんが、結構18号人気があるのと、自分もかなり18号好きなんで
こんなSS書いてみました。

406さん
407さん
408さん
レス感謝です。
ターブルは始め、ベジータにしようかとも考えたんですが、文章でそれだとかなり混乱が起こると
思ったんでターブルにしました。やっぱり神である以上、野菜全般を示す名前にはしたかったんで。

415さん支援感謝です。

418 :作者の都合により名無しです:2007/06/08(金) 23:54:12 ID:b67usRcN0
クリリンと18号が初々しくていいな。
ほのぼのとしました。お疲れ様クリキントンさん。

419 :作者の都合により名無しです:2007/06/09(土) 00:33:28 ID:jhAblmYm0
クリキントン氏乙です。
素直になれない不器用な18号と、女性には不慣れだけど
誠意あふれるクリリンの微笑ましさが良い雰囲気でした。
これからもこういう読み切りもお願いします。


しかし18号とクリリンというと人魚姫を思い出す。
パオ氏、記念のパート50に戻って来ないかな?

420 :作者の都合により名無しです:2007/06/09(土) 23:30:27 ID:yEimEDYX0
17号と18号は設定上人間の姉弟だったはずだけど、
結局最後まで名前は作中で明かさずじまいだったな。
クリりんには明かしたんだろうか。

421 :作者の都合により名無しです:2007/06/10(日) 01:56:08 ID:+x42BXpu0
今の状況はパート50で噴火する前の小休止と信じる
あと1本か2本で次スレか

422 :ヴィクティム・レッド:2007/06/10(日) 15:26:20 ID:knGFevEU0
 多かれ少なかれ、どこか俗世間とはかけ離れた人間性の持ち主揃いであるキース・シリーズの中でも、
キース・ブラックのそれはバイオレットにとって極めて不可解なものであった。
「妹よ……ドクター・ティリングハーストに『エクスペリメンテーション・グリフォン』の概要を漏らしたそうだな」
「──ええ。その通りです、ブラック兄さん」
 どこの組織でも、機密情報の漏洩といえば重大な背信行為であり、それを犯したものには厳重な処罰が下される。
それはその者の組織における地位によって左右されるものではない──それが正しい組織のあり方であり、最高責任者のとるべき態度だ。
「だが私はお前たちの意志を尊重している……このことは不問にしようと思っているのだよ」
 しかし、『エグリゴリ』のトップである彼は、そうした常識などまるで意に介さずにこの問題をその一言で片付けてしまった。


(意思を尊重している、か──)
 バイオレットは目の前の兄を見つめながら、胸に沸き起こる疑念を抑えることが出来ないでいた。
 彼は、本当にわたしたちに『意思』が存在していることを認めているのだろうか、と。
 エグリゴリのあらゆる活動は、『ARMS計画(プロジェクト・アームズ)』を中心にして動いている。
 この世の全てはその為の実験計画(エクスペリメンテーション)であり、実験場(エクスペリメント)であり──実験材料(ヴィクティム)なのだ。
 その絶対的に無慈悲なスタンスの前に、バイオレットは途方もない無力感を覚えずにはいられない。
(わたしたちは皆、運命の歯車なのだ──そこに『意思』が介在する余地があると、ブラック兄さんは本気で信じているのだろうか?)
 生まれる前から、自分の本質は決定していた。
 ナノマシン群体『ARMS』を移植されるべく調整された人造人間……殺戮兵器を身に宿す怪物……マザーARMS『アリス』の執行機関。
 それが、キース・バイオレットという存在の定義だ。
 彼女がまだ幼かった頃、彼女の所属してたラボの研究員はよくこう言っていた。
 「お前は人間ではない──人間の心が無い」、と。
 幼心に「酷いことを言うんだな」という感想を抱いたものだったが……今なら分かる。
 自分には、『心』が無いのかもしれない──ということが。

423 :ヴィクティム・レッド:2007/06/10(日) 15:27:44 ID:oaLnYVvB0
 バイオレットは泣いたことが一度も無い。
 ヒトは悲しいとき涙を流す──バイオレットにだって涙を流した経験くらいはある。
 だがそれは、ARMSの共振や物理的な痛みに対して流された、ただの肉体的な反応に過ぎない。
 心から涙を流したことが無い理由……それは単純明白に、心がないから──。
 エグリゴリのシークレットエージェントとして、バイオレットは幾多の生命をその手に掛けてきた。
 だが、涙は無い。それはきっと、生命が失われることに対してなんの感情も抱いていないからだろう。
 考えてみればそれも当然の話で、造られた生命である自分が、どうして他人の命を惜しむことが出来るのだろうか。
 『生命』の概念を理解できない、壊れた人形──それがキース・シリーズだ。
 感情の無い一個の殺人機械として、『アリス』の望む理想郷を体現させる。
 それが、唯一にして逃れがたい自分の存在理由なのだ。


「──ともあれ、レッドは最終形態を発現させた。計画は次の段階へ進めなければならない」
 ブラックのそう宣言する声で、バイオレットは現実に引き戻される。
 頭の切り替えが追いつかないバイオレットは、ややうろたえた口調で問い返していた。
「次の、段階……ですか?」
「そうだ。レッドに必要なものは──『敵』だ」
 組んだ手の隙間から、彼の口元が見える。それは、微妙に吊り上っているようにも見えた。
「バイオレットよ、次なる任務を与えよう──」


「らしくないな、バイオレットよ」
 ふと気がつくと、傍らにキース・シルバーが直立していた。
 改めて周囲を見渡すと、そこはブラックの執務室ではなく、バイオレットの自室だった。
 いつ、どうやってここまで戻ってきたのか、まるで記憶に無かった。
 籐の長椅子にもたれ掛けていた背を伸ばし、シルバーへと向きなおる。
 我ながらもどかしいくらいにその動作は緩慢だった。

424 :ヴィクティム・レッド:2007/06/10(日) 15:29:31 ID:oaLnYVvB0
「シルバー兄さん……なにか用?」
 シルバーは忌々しげに顔を歪ませ、吐き捨てるように言う。
「オレがここまで接近していることに気がつかず、あまつさえ侵入を許すとは無防備に過ぎるぞ、バイオレット。
これがオレではなく、エグリゴリの敵性存在だったならお前は今頃死んでいる」
 相も変わらず徹底的に戦闘本位な考え方だった。
 貴方は敵ではなく兄だ、と言ってやろうと思ったが、そうした論理をこのキース・シルバーともあろう男が認めたりはしないだろう。
「……グリーンが、お前の様子がおかしいと言っていた」
 その顔は、先ほどよりもいっそう苦々しく引き攣れていた。
「まったく……あいつの甘さには腹が立つ。オレたちはそれぞれ対立するプログラムを与えられた、兄弟とは言っても決して相容れない存在なのだ」
「ですが、あなたは現にわたしの様子を見に来てくれたのですよね。それからセピアの元へも」
「ふん、勘違いするなよ。たまたま用件があったからだ。そうでなければ、誰があんな出来損ないなど。
グリーンにも言っておけ。その甘さを捨てきれないようであれば、貴様もレッドやセピアと同じ、出来損ないの仲間入りだとな」
「──そうかしら」
「なんだと?」
「レッド……グリーン……そしてセピア……あの子たちは、本当に『出来損ない』なのかしら。
もしかして、わたしたちこそが『出来損ない』なのではなくて?」
「下らん。オレたちこそがキース・シリーズの純正なモデルタイプだ。やつらはその複製……しかも欠陥の多い初期生産型に過ぎない」
「欠陥、とはなにを指しているの? あの子たちを見ていると、とてもそうは思えないわ。
むしろ、シルバー兄さんの言う『欠陥』こそが、ヒトとして欠くことのできない──」
 バイオレットの言を、シルバーは手を振って打ち切った。
「バイオレットよ。愚かなことを言うな。オレたちは人間ではない」
「では、なに?」
「──『キース』だ」

425 :ヴィクティム・レッド:2007/06/10(日) 15:31:17 ID:knGFevEU0
 わずかに気詰まりな沈黙に満たされる二人だったが、気を取り直すようにシルバーが軽く咳払いをする。
「……ブラックに任務を言い渡されたそうだな」
 その一言に、バイオレットの身体が硬直した。
 それはほとんど露骨ともいえる反応で、びくんと背筋が仰け反る。瞳孔が異常なまでに収縮していた。
「やる気がないのなら降りろ。オレが引き継ぐ」
「い、いいえ……そういう訳には……」
「すでにブラックの許可は得てある」
「いいえ! やります!」
 反射的に叫んでいた。
 バイオレットにそうさせたその原動力とは──やはり、「自分はこの世界を支配する機構の歯車に過ぎない」という思いだった。
 任務を遂行できなければ──歯車らしく振舞えないなら──自分は世界から取り残される。
 心無いスピードで回る世界に追いつくためには、心無い歯車に徹するしか、道はない。
「やる、わ……」
 無意識のうちに掴んでいたシルバーの腕から手を離し、バイオレットは力無く呻いた。
「その状態で満足に任務が行えるとも思えないがな」
「でも……」
 いつもの落ち着きをどこかに置き忘れたような妹に、シルバーは舌打ちした。
「まあいい──それとは別件でお前に話がある」
「え……?」
 訝しげに眉を寄せるバイオレットの前で、シルバーは乱暴な仕草で空いている椅子に腰掛けた。
「何をしている。飲み物の一つでも出せ」

426 :ヴィクティム・レッド:2007/06/10(日) 15:33:37 ID:oaLnYVvB0


 バイオレットの差し出した紅茶を一口すすり、シルバーはつまらなそうに呟く。
「ふん……どいつもこいつも似たような味だ。こんなものに目の色を変える人間の気が知れん」
 だったら飲まなければいいのに、と思うバイオレットをよそに、シルバーは何枚かの書類をテーブルの上に置いた。
「これは元々オレに回ってきた任務なのだが……オレだって暇ではない。他にこなすべき仕事がある。
だからお前かグリーンに回そうと思っている案件だ。超心理学部門の再編成の動きがあるのは知っているな?」
「ええ。わたしもその一部に携わったわ」
「その再編の情報が漏洩している。そして……エグリゴリの監視下に置かれているESP能力者が次々と殺害されている」
「なんですって?」
「犯人の正体、所属、目的は不明だ。複数犯であること、サイボーグなどの強化人間ではないこと、くらいしか判明していない。
だが、その被害対象には共通点がある。強力な能力の持ち主であることと、社会的に知名度の高い者──能力が社会に認知されているかどうかは無関係だ。
そして、これが次のターゲットとして予測される人物だ」
 シルバーの寄越したプロフィールに目を通して、バイオレットは奇妙な既視感に襲われた。
 それは、どこかで見た写真だった。
 高齢の黒人女性で、ニューヨーク在住、そして能力は──。
「『リーディング』と呼ばれる一種の接触感応能力者だ。『ハーレムの聖母』として高いカリスマ性を獲得している。名は──」
「『ママ・マリア』」
 先回りしてその名を告げたバイオレットに、シルバーは意外そうな眼差しを向ける。
「……知っているのなら話は早い。任務は彼女を護衛……というよりは、囮として犯人グループをおびき出し、抹消することだ。
背後関係があるようなら聞き出してから殺せ。詳細はレポートに書いてある」
 それだけを言うと、シルバーはまだ熱いであろう紅茶を一息で飲み干し、席を立った。
「この任務にすら不手際があるようだったら、例の任務はやはりオレが引き受けるからな。心しておけ」
 部屋を立ち去りかけたシルバーの背中に、バイオレットは問う。
「シルバー兄さん。紅茶の味はどうだった?」
 その答えは簡潔にして明瞭だった。
「渋い」

427 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/06/10(日) 15:34:48 ID:oaLnYVvB0
真に勝手ながら今回は感想を割愛させていただきます。ごめんして。

428 :作者の都合により名無しです:2007/06/10(日) 22:59:16 ID:+x42BXpu0
ハロイさんお疲れさん&お久しぶりです

今回は久しぶりのヴィクテムですな
バイオレットとママ・マリアの邂逅がいよいよ書かれる事で楽しみですが
ただ単に逢って話をするだけでなく、ママも事件に巻き込まれる感じですな
シュガーソウルともども楽しみにしてます

429 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 00:48:50 ID:4v7SvrMQ0
バイオレットの苦悩はある意味では、人たらんとしているかも知れませんね。
人間と超越者の狭間で揺れ動いている、というか。
高槻たちオリジナルアームズたちに心情的に最も近いと思われる彼女が
マリアとの出会いでどう変化していくか楽しみです。

あと、なんかサイトでブルーでしたが、復活されましたか?


430 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 09:22:05 ID:dwzTHTyt0
ハロイさん復活乙です。
元作中でもっとも人気の高いバイオレット主役のパートで嬉しいです。
レッドの活躍より楽しみだなw

431 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 12:50:37 ID:g0g/wokH0
新スレ立てておいたよ。
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1181533782/l50
ちょっと早かったかな?

432 :作者の都合により名無しです:2007/06/13(水) 22:55:14 ID:JshdmPW00
dfsagdsa




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jghhf



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ccvnfgcn




rewerwe


433 :コメだけ残しにきた邪神?:2007/06/14(木) 15:03:05 ID:r0HkrwAI0
〜6回投稿が基本になってるような邪神?からの感謝の気持ち〜
―公開プロキシ規制再び、>>も多すぎとか言われた。―

ふら〜り氏 しばしファッツとお別れなのが残念です。
       鳳凰天駆が大袈裟だった気がするので秘奥義だす時が心配。

クリキントン氏 話がかなりごちゃごちゃです、意図的ではなくてノリでごちゃごちゃです。
         ギャグ重視でごまかしていこうか思考中。

ハロイ氏 ブルーは合体できるものが近くにあればほぼ無敵ですね。
      核とフュージョンはさすがにファンタジー(気どり)な話なので難しいですが。
      ファンタジー・・・そういやファンタジー小説ってハリポタくらいしか読んでません。
      小説でなくとも、なにか魔物の設定が凝ってる図鑑や事典が欲しいですなぁ。

>>前スレ251氏 ええ、自分の知るメカキャラではダントツでナイスガイですとも。

>>前スレ252氏 宿題が溜まっちゃってかなり空きがあったのに更新これだけ。
    申し訳ない。ブルーは気分しだいですぐ再登場するかも。

>>前スレ253氏 ペース維持出来ませんでしたorz

>>13氏 自宅でなってビックリ、一日放置で治りました。

>>14氏 書き終わっても中途半端な終わりになってます。申し訳ない。

>>18氏 この不肖なミーを主戦力と呼んでくださってうれしい限り。この先もよろしくおながいします。

>>25氏 久々の漂流者達ですねぇ、一番進んでないチームかも。
    主役な訳ですし今回は少し長めに話を続けて上げたいところ。

>>26氏 料理パートは次回、ケンシロウのお料理地獄〜ビーフのないカレーに愛は無い〜
    で収録される可能性があります、お楽しみに。

434 :バウケン:2007/07/22(日) 16:19:25 ID:vbLikbTU0
加藤の武神島のやつ、あれからどうなったんでしょうか。

 外山は、鎬がモミジではなくクレハという名前だという事を知った。併せて、クレハというのが男性だったことも。
それ以上に外山が驚いたのは、急患。大相撲横綱の金竜山が、まるで江戸明治に巡業して事故ったかのように、刀傷その他の外傷に溢れていた。
いや、溢れていたのは外傷もそうだが、赤黒い命の痕。意外にも鎬が我先に金竜山助命に向けて動きに動き、金竜山は助かった。
しかし、引退は余儀なくされた。指にも欠損しているものがあるし・・・。
 同じ頃、仏国モンパルナスにて、巨人が今度こそ帰らぬ人となった。それを見届けたのは、花田薫。この元プロレスラーはもう一方の元プロが斃れると肩を上下させ始め、
「バカにしやがって」と大小の声で何度か繰り返した。
 花田には本部が免許皆伝を授けてある。つまり、金竜山を脂肪寸前に追い遣った剣と、仏国で翻った剣は同じ武術によるもの。
格闘家が素人の凶刃に倒れたりすることまではよく知られているが、三流プロが一流プロを凶刃で仕留める事がよくあるのは知られていない。
戦闘の場で素手であるというのは、人類(霊長類)としては障害者も同然なのだ。帯刀した古流柔術家(=剣術家)は、人間の戦士にとってみれば北極熊以上A級妖怪・・・じゃなくて超巨象未満の獣。
 アライ.Jrがオランダと米国を含む大使館を追い返されて、憔悴している。短銃だけを頼りに、吉外に刃物の本部を迎撃せねばならない。【続きを御自由に】


435 :バウケン:2007/07/22(日) 16:20:33 ID:vbLikbTU0

ロブ・ロビンソンVS百識の方治、どなたかきぼり。
金竜山は、バウケン的には引退したら90kgのガリガリマッチョになって欲しいところです。

436 :作者の都合により名無しです:2007/07/23(月) 20:19:21 ID:pwQCJ/0/0
 

437 :作者の都合により名無しです:2007/08/12(日) 12:55:03 ID:fBsrClQI0
てすと

438 :作者の都合により名無しです:2007/10/28(日) 18:23:24 ID:fMncUUm/0
てすと

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