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【2次】漫画SS総合スレへようこそpart50【創作】

1 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 12:49:42 ID:g0g/wokH0
祝! パート50!!

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1178266038/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss


2 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 12:51:42 ID:g0g/wokH0
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
戦闘神話 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html


3 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 12:56:16 ID:g0g/wokH0
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
狂った世界で (proxy氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/181.html  
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
ドラえもん のび太と真夜中のバンパイア (店長氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/78.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html
ドラえもん のび太と天聖導士 (うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tennsei/01.htm


4 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 12:58:09 ID:g0g/wokH0
自分で立てておいてなんだけど、パート50おめでとうございます
掲示板で連絡あったみたいなので、個人的に大好きな職人のうみにんさんの
作品もテンプレに入れました。現スレで復活するといいなあ・・

5 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 14:49:53 ID:dwzTHTyt0
スレたて乙!

パート50に、うみにんさんは勿論、パオさんやサナダさん、
ミドリさんやかまいたちさんなど、しばらくご無沙汰の職人さんたち
帰ってくるといいですね。

6 :ふら〜り:2007/06/11(月) 22:25:56 ID:1f7IV6sG0
>>1さん、おつ華麗さまです。そして……
とうとう辿り着きました50! 思い返せば幾星霜、いろんなことがありましたよね……。
自分が辛い時でも皆を楽しませる作品を書ける、皆に楽しい気持ちをくれる、って本当に
尊敬できることだと思います。今も昔も、そういう職人さんたちがスレを支えて下さいました。
で私もそうありたい、そういう人になりたいと願い、時々SSに挑戦してますが道は遠く。うぅ。
ともあれ。楽しい作品と尊敬できる人と笑い合える仲間たちに会えるこの場所が、
末永く賑やかでありますように……これからも、よろしくお願いしますっっ!

>>クリキントンさん(調子良いようで、ありがたく嬉しいです)
DBIF
強くて威厳のあるボスキャラ(ラスボスでなくても)、いいですねぇ……ターブルの場合は実力
と迫力と極悪ぶりに加え、意味ある肩書きまで装備。戦いの行方、見守りがいがあります。
再会
>パチンコ玉のような頭で、鼻の潰れた味も素っ気もない顔。
18号との物語でクリリンが↑こういう言われ方をするのはもはやお約束か。本作の18号は
倫理観がまだ壊れてるけど、これからクリリンに影響され、で彼を見る目も変わって……と。

>>ハロイさん(感想は、SS以上に「書きたい時だけ」書くべきもの。どうかお気になさらぬよう)
真っ向からの敵対勢力ではないにしろ、やはり主人公サイドから見れば一種「黒幕」といえる
彼ら。そんな面々の策謀渦巻きを描いてるはずの今回ですけど、やはり侵食されてますね。
原作知らずの感触としては、ブラック以外は全員レッド側に行ってしまいそうですが。さて?

>>今スレ中には
またSSを献上させて頂きたく奮闘中です。『刻』がなかなかまとまらないので、
別の短編になりますが何とか、かんとか。

7 :作者の都合により名無しです:2007/06/11(月) 22:44:05 ID:9A9kKSDQ0
パート50おめでとうございます。
ふら〜りさんやバレさんや職人の方々の力で、5年半も続いたんですなぁ

8 :作者の都合により名無しです:2007/06/12(火) 01:10:22 ID:ObBp0SLE0
しかし前スレ後半から急にペースが落ちたね。
ちょっと心配だ

9 :作者の都合により名無しです:2007/06/13(水) 00:21:19 ID:nRieKEkb0
サイト持ってる3人の方がみんな不調で心配。

10 :六十一話「久々なパイレーツ」:2007/06/13(水) 00:33:51 ID:SOAHQpqN0
〜海〜

眠りから覚め、爽やかな朝日に包まれながら、
少し強めの磯の香りの漂う潮風のシャワーを浴びる。
目を擦りながらテーブルへと近づいていき目蓋を開けば豪華な海鮮類が出迎えてくれる。
口いっぱいにそれを頬張ると魚や貝、海藻や塩の本来の旨味が口に溢れだしてくる。
そして次の食事に備えて釣りに興じる、みんなで大物を釣り上げ喜びを分かち合い・・・

「まだ続くのか?」
「大体こんな船旅が理想的だな。」
目の前にいる筋骨隆々とした逞しい若者が純真な目で夢を語る。
別に悪い事ではないのだが少しメルヘンが入り過ぎているような気がした。

「おめぇ何歳だ、船旅とかした事はあるのか?」
「いや・・・一応あるんだが忘れてた。で、ここの海はイクラは取れるのか?
食糧庫にはカレールーはあるのか?ビーフが好きなんだがシーフードでもいけるな。」

一度体験したら分かるだろ、と言いたい所だったがアホらしくなってしまった。
カレーも幸い、食糧庫にカレー粉があった気がするのでそれで作ればいいだろう。

「・・・いいから、さっさと網引っ張ってこい。」
そう言い残してデッキに上がる、掃除係のスペックが居ないので大分汚れている。
爽やかな朝日、という事は次は潮風のシャワーか。
風が吹き荒れ帆がバタバタと音をたてる、シャワーなものか、これでは滝だ。
数日に一回洗う程度の服(海賊では清潔な方さ・・・多分)には常に磯と汗が混じり合った香りが漂っている。

「こいつも中々に年季が入ってきたな。」
自分の服の臭いを嗅ぎながら思わず、誰に話しかける訳でもなく言葉が出てしまう。
ゲラ=ハは、この時間は操舵士として舵を任せている。
そろそろ交替して飯でも作ってもらうとしようか。

11 :六十一話「久々なパイレーツ」:2007/06/13(水) 00:34:47 ID:SOAHQpqN0
船の後部で巧みに舵を扱い、波風を操る一人の青年がいた。
最も、外見では一目見た所で青年とは分からないが。
「おや、キャプテン。お目覚めでしたか。」

人型に巨大化したトカゲ、彼を表すにはこれ以上の言葉は無いだろう。
「まだ見えねぇ様だな、ちっとばかし遅すぎるぜこの船は。」
「我々の島に寄る人間は、商人が大半です。一般人には需要が低いので船賃は安くなってますが、
大量の荷物に耐えるだけの船底を作るので、速度を犠牲にしたのでしょう。」

海賊船は強度より速度だ、大砲での撃ち合いなんて海軍の演習くらいな物である。
相手の船に素早く乗り込み、奇襲を仕掛けられなくてはホークにとって船とは言えない。
「メルビルに乗り込んで帝国海軍の高機動船を頂戴するか。」
「この船のボートで我慢して下さい、また弓矢の雨に追われますよ。」

予測の範囲内の返答である、だが肝心の返す言葉は予測してなかった。
海を飛び跳ねる魚の群れを見つめながら無理に話を続ける。
「この船だってメルビルの物だぜ、どうせお尋ね者だって。」
「ボートについていたメルビルの紋章は外しました、普通の船と変わりませんどうぞ使って下さい。」

ホークの言葉を受け流しながら懐に手を伸ばし、小包を引き出す。
片手で舵を取りながら口で包みを開くと、彼の朝ごはんが飛び出した。
巨大な甲殻類のモンスターを乾燥させた物、ようするに虫の干物である。
見てるとゾンビ系の魔物を思い浮かべるが、人のミイラの方がまだマシと思える程にグロい。

口一杯に干物を頬張る、表面はカラカラなのに完全に血が抜けていないらしく汁が飛び散る。
この光景も大分慣れたつもりだったが、やはりキモい。
段々と気持ち悪くなってきたので仕方なく、一旦ゲラ=ハの説得を諦めた。

12 :邪神?:2007/06/13(水) 01:08:30 ID:VwMrrRXBO
公開プロキシがどうとかでカキコ無理ぽ。初心者板回ってきま…

13 :作者の都合により名無しです:2007/06/13(水) 01:48:04 ID:nRieKEkb0
ありゃ?
でも、3レス書き込めたのにね。
公開プロキシは漫画喫茶とかで書き込むとよくなるね

14 :作者の都合により名無しです:2007/06/13(水) 15:58:34 ID:lF5wNTJv0
なんか中途半端だねw
続き待ってます>邪神氏

15 :11:2007/06/13(水) 18:01:30 ID:SOAHQpqN0
「ったく、あのお堅い所が無ければなぁ・・・。」
愚痴を洩らしながら網にかかった獲物を見に行く。
ケンシロウは力だけは確かなので引き千切らないように注意しておけば問題はない。

体中に白い煙を纏いながら、千切れた尻尾を持ったケンシロウが立っていた。
「キャプテン、この世界の魚はどうなっているんだ。爆発したぞ。」
「バクレツアロワナか、最近見かけるようになった魚だがそりゃ食用じゃない。
だが取っておけよ、爆薬として使えるからな。後大きめの金魚みたいなのはカクサンデメキン・・・」

ケンシロウに取れた魚についてくわしく教えている内に異変に気づく。
こいつの引き上げた網には食える物が一つもないのだ。
黄金魚、ハレツアロワナ、古代魚から魚竜と呼ばれる魔物の鱗。
ここまで素材を引き上げると狩人だったら泣いて喜ぶ所だが、
生憎とこちらは海賊である、爆薬は便利だが武器の製作に態々狩りなどしていられない。
金銭面では黄金魚を引き上げているので中々の金額にはなりそうだ。

「かなりの大物揃いだったがどれも食えるもんじゃ無い。
今夜は具なしのカレーだな、嫌なら素潜りだ。」
そういってケンシロウへと目を向けると、銛(モリ、と読む。とったどー!でお馴染みのアレ)
を構えた海パン一丁の逞しい拳士の姿がそこにあった。

「ちょっと待て!錨を下ろさないと・・・」
全部言い終わる前に飛び込むケンシロウ、晩御飯の為に危険な海へと単身乗り込んでしまった。
急いでデッキに駆け上がるホーク、遅い船だが泳いで追いつくのは無理がある。
錨を下して停止させなければいけない。

「ゲラ=ハ!錨を下せ、ケンの奴が海に飛び込みやがった!」
それを聞くと、舵から手を離して海へと錨を放り投げる。
「なんだか嫌な予感がしますね、キャプテン。」
「ああ・・・船に穴の開かない程度の予感だとありがたいんだがな。」

16 :↑11の続きってやろうとして失敗:2007/06/13(水) 18:02:41 ID:SOAHQpqN0
それは潜ると呼べるものでは無かった。
闘気によって周囲の水分を蒸発させ、塩と水蒸気に変える。
本来の常軌を逸した肺活量に加え、水蒸気から酸素を取り込む。
更には巻き起こるオーラによって浮力まで得ているので飛行しているのに近い状態だ。

闘気によって魚が逃げていくが、暗殺者としての英才教育を受けた北斗の使者からは逃れられない。
手にした銛を標的に投げつける、水をかきわけて海の幸へと真っすぐ突き進む。
魚類とは水の些細な動きを感じ取る事で外敵の攻撃をかわす事を可能としている。
だが、水の動きを感じた時には手遅れである。

深々と銛が突き刺さる、腕力のみを用いた漁の技巧など寸分も無いというのに水の抵抗がない。
通常の人間とは異なった筋肉を最大に生かした結果生まれた奇跡の投槍。
だが、威力も尋常ではなかった。

魚を木端微塵に吹き飛ばし、近くにあった島の地層を粉々に砕いて行く。
島が数センチ程沈んだが、幸いにも無人島だった。

「おいおい、アレと殴り合ったのか俺達・・・。」
「今生きていることを神に感謝したくなりますね。」
「バカ言うな、ゲッコ族の神はサルーインじゃねぇか。次は殺されるぞ。」
「次?キャプテン、もう一度彼とやる気なんですか。では私から伝えておきますね。」

二度も奇跡の生還は果たせない、そんな事になったら今度は筋肉痛じゃ済まないだろう。
慌てて弁明しようとする様子を見てニヤニヤしているゲラ=ハ。
普段は生真面目を通す男なのでそれを冗談と見破るのに数秒かかった。

「このっ・・・いいからケンシロウを呼び戻すぞ!」
そういって海の方へと目を戻すと、一匹の魔物がケンシロウに迫っていた。
見た目は牙がやたらと長い事以外、普通の魚である。
問題なのは、そのサイズであった。

「化石魚・・・生まれて初めて見たぜあんなヤバい魚・・・。」

17 :邪神?:2007/06/13(水) 18:04:21 ID:SOAHQpqN0
ついに50スレ、めでたいですなぁ、プロバイダーとの契約が切れてて沈黙していた邪神です(0w0)
財布を落として米だけで生活してました、ヘルプミー(;0w0)
なんとかしてバイトを見つけようとしてたのですが○ロム○ナビで幾つか同時に探したらいざこざが・・・。
実家は現在、経済的に厳しいので家賃以上の物を期待するのは流石に酷。
せめて水道水が飲める水に変わって欲しい今日この頃。
さて、それでは講座に移りましょうかね・・・。

〜今回でてきた海の幸は化石魚以外はみんなモンハンから出典な講座〜

化石魚      魚類モンスターの中では、ほぼ最強であろう雑魚。↓は化石魚初体験した時の自分。
         強力な単体攻撃用水術、当たればほぼ即死の単体攻撃、通常の攻撃も2回で大体殺される。
         そして2回行動が可能。ある程度HPがあれば雑魚の中では技の閃きに最適な魔物。

ハレツアロワナ  衝撃を与えると破裂するアロワナ、もちろん食べれない。
         爆弾や銃の弾の素材にどうぞ。

バクレツアロワナ 衝撃を与えると爆裂するアロワナ、もちろん食べれない。
         爆弾や銃の弾の素材にどうぞ。

カクサンデメキン 衝撃を与えると拡散するデメキン、もちろん食べれない。
         爆弾や銃の弾の素材にどうぞ。

古代魚      古くから生態を変えていない魚、体のほとんどが素材になるらしい。
         これまた食用ではない、見た目がほとんどアロワナなので、
         釣りをしまくって微妙な形の違いを覚えないと狙って釣れない困った魚。
         人によっては手に入れるのがめんどいので諦める人も。
         PSPでは釣堀を拡張すれば村で釣れる、網での漁でも取れる。売って金にしてもいい。

黄金魚      金色のめずらしい魚、出現確率が数%のこの魚を5匹釣れと言われる事も。
         一人だと暇なので協力プレイ推奨、ソロクエストにも出てくるがそっちは気合いで。
         協力プレイでも暇だけど、比較的だが早く終わるし会話を楽しみまったり釣ると良い。
         やはりというかなんというか食べれないが、クエストの内容を見ると金持ちは食うらしい。

18 :作者の都合により名無しです:2007/06/13(水) 23:36:14 ID:nRieKEkb0
お疲れさんです邪神さん。
邪神さんもパート50までの主戦力の一人、これからも頑張って下さい!

19 :DBIF:2007/06/14(木) 00:51:13 ID:hqIXlKnp0
意識を失ったベジータを床に横たえ、トランクスは改めて周囲の面々を見渡した。
あの3人を迎え撃った場所から遠く離れた、神の住居に一同は場所を移していた。ベジータを起こさなかったのは、余裕の笑みを浮かべる
ターブルを前にして、例え一時的にでも撤退することを彼が選ぶとは思えなかったからである。
「・・・最悪の事態になったな。まさか連中の実力があれ程とは」
「しかも、あの神聖樹まで持ち出して来やがって。クソ!」
歯噛みして悔しがるクリリンに、トランクスが疑問をぶつけた。
「その神聖樹というのはどういうものなんですか?確か連中の仲間らしいターレスとかいう奴のことも悟飯さん達は知っているようでしたが」
「時間がないんで簡潔に話そう。神聖樹というのは本来神だけがその実を食べることを許された樹だそうだ。俺と融合した神の奴はこの
地球ではよそ者のせいか、その存在は知らなかったがな。そいつは食べる者に絶大な力を与える実を付ける代わりに、一度星の地に根付くと、
大地の全ての滋養を吸い尽くし、その星を死の星に変えてしまう」
「何ですって?!」
「以前そんな物騒なものをターレスというサイヤ人が持って来たんだ。その時は孫悟空が撃退したが、奴は神であるターブルに種を与えられた、
単なる使用人に過ぎなかったわけだ。あの時は何故奴がそんなものを持っていたのか、考えもしなかったがな」
言いながらピッコロは悔しそうに顔を歪めた。今となっては仕方ないこととはいえ、ターブルを撃破した後、その後ろに黒幕がいることも考慮に
いれず、彼の宇宙船を処分してしまったのは、他ならぬピッコロ、いや彼と融合した神自身なのだ。そのことが今、彼に身を灼(や)くような
後悔として押し寄せていた。
「神聖樹が育ち切ってしまうのはいつなんですか?その前に何とかしなくては」
「・・・神聖樹が育つスピードは恐ろしく早い。恐らく24時間、たった1日でこの星は死の星に変わる」
「な・・・!」
余りに絶望的なピッコロの言葉に、トランクスは絶句した。


20 :DBIF:2007/06/14(木) 00:52:51 ID:hqIXlKnp0
たった1日では、例え『精神と時の部屋』を使用しても、まともに修行できるのは二人が限界。それも、あの3人との戦闘する時間を
考えれば、引き伸ばされた時間にしても半年間できるかどうか。
「・・・・・・!」
トランクスの固く固く握り締められた指が手の平の皮を指が突き破り、拳から血が流れ出す。それでも彼は必死になって冷静さを
取り戻そうとしていた。
「・・・それなら、部屋には俺が入ります。後のことは、皆さんで話し合って決めて下さい」
と、それだけ言い残してトランクスは悟飯達に背を向けた。
「お、おい待てよトランクス」
クリリンが慌てて掛けた声に、トランクスは足を止め、そのまま振り返ることなく言った。
「タイムマシンのパワーを充填するには、どんなに早くてもあと三日はかかります。まして、資源が枯渇するとなれば、充填できるか
どうかも怪しいでしょう。それでも皆さんにはまだ希望はありますが、俺には・・・今、強くなるしか道がないんです!」
トランクスの背を向けたままの叫びに、誰もかける言葉を失っていた。
切羽詰った状況とはいえ、自分達は過去から来た存在である分、ある意味で時間があると言えないこともない。資源枯渇の問題は
あるが、非常用の備蓄エネルギーをかき集めるなどすればエネルギーを確保できる可能性はかなりあるだろう。一度過去に戻ること
さえ出来れば、最悪自分達の世界にやがて訪れる危機に備えることは出来る。
しかしトランクスはこの未来世界の住人である。猶予はターブルの言葉通り、神聖樹の実が熟すまでの時間しかない。それを考えれば、
そんなわずかな時間でどうするのかなどと言うこともできなかった。
「ピッコロさん・・・僕、悔しいです」
トランクスが部屋へと消えるまで、うつむいたままだった悟飯の口から、搾り出すようにそんな言葉が漏れた。自分がターブルに
かなわないこと、そして今トランクスに何の言葉もかけてやれないことが、悟飯の身を震わせていた。
「悔しいのは皆同じだ。だが、悔しがっているだけでは何も解決しない」
「取り合えず、そこのベジータを起こして、部屋に入るもう一人を誰にするかも含めてこれからのことを話し合おう」
スパッツの意見に異論を挟む者はいなかった。

21 :DBIF:2007/06/14(木) 00:54:20 ID:hqIXlKnp0
意識を取り戻したベジータにこれまでのいきさつを説明すると、当然自分も部屋に入るといきり立つという皆の予想に反して、ベジータは無言で
座っていた。
「あと1日。いや、もう後20時間もないかもしれんが、残されたわずかな時間、それでも『精神と時の部屋』でならばある程度の修行は出来る。
問題は誰が入るかだが」
「・・・・・・」
いよいよピッコロが核心の話題に入っても、何故かベジータの口は開かない。
「あの・・・僕が、行っていいんでしょうか」
「待て」
試しにおずおずと悟飯が名乗り出ると、そこで初めて制止の言葉をかけたものの、その後はまた沈黙する。
どうしていいか分からず、皆が注目する中、うつむき加減だったベジータの顔が上がった。
「いいだろう。お前が行け」
「え・・・・・・?」
「ええええええ?!」
その口から出た言葉に、呆けた声を上げる悟飯や、当然とも言うべき驚きの声を上げるクリリンばかりでなく、全員が眼を見開いてベジータを見た。
「何だ?!さっさと行け!」
「あ、はい・・・」
不機嫌そうに睨みつけながらそう言うベジータの勢いに呑まれるように、悟飯は慌てて立ち上がると部屋に向かって走り出した。
「どういう風の吹き回しだ?俺はてっきりお前が入るものだと思っていたが」
「入る入らんは俺が決めることだ。勝手に俺の行動を決めつけるな」
突き放すようなベジータの言葉に、しかしピッコロは食い下がった。
「まさか貴様、ブロリーの時のように相手がサイヤ人の神だからと怖気付い・・・」
「黙れ!!」
火を吹くような眼で睨みながら、ベジータが叫んだ。
「二度とそんな口をききやがったら、瞬時に粉々にしてバラまくぞ!」
かつて彼こそが伝説で語られる真の超サイヤ人と目された、ブロリーという名のサイヤ人との対決の際、その余りに圧倒的な戦闘力を前にして、
戦う前に戦意を喪失してしまったことは、ベジータにとって恥ずべき過去であった。

22 :DBIF:2007/06/14(木) 00:56:08 ID:hqIXlKnp0
「ならば理由を言え。何故自分でなく、悟飯に部屋に行かせた」
しかし激昂したベジータを前にしても臆さず、ピッコロは冷静に訊ねた。理由もなしにこのプライドの高いサイヤ人の王子が、例えほぼ
不可能とはいえ、憎い相手を倒すことを他人の手に任せるはずがない。
「・・・ふん。神聖樹とやらが育ち切るまで時間がないなら、その前に破壊すればいいと思ったまでのことだ」
「そんなことを連中が許すわけもあるまい。先程の反応を見る限り、奴らの要求を呑むわけでもないだろう。どうやって破壊するつもりだ?」
「・・・奴らの要求を呑む振りをする。もし信じるならそれが一番だが、もし試すようなことを言い出してもそれはそれでいい。その時は奴らと
話し合う奴以外の人間が、交渉の場から離れた違う場所から神聖樹を破壊するだけだ」
ピッコロはベジータの言葉にしばし黙考した。要求を呑むと見せかけ、3人の気を引いた隙に神聖樹を破壊する。出来ないこともないが、もし
要求を呑むことが「振り」であることを疑われれば、もし破壊が成功しても奴らはすぐに神聖樹を育て直すだろう。そうなれば稼げるのは
精々1日。しかもその場にいる者は恐らく殺される−
「ベジータ、貴様まさか」
「あのガキは、例えドラゴンボールで復活は出来るとわかってても反対しそうだからな」
ピッコロは、信じられないものを見るような顔でベジータを見ていた。確かにドラゴンボールを復活させる際、万が一を考えて始めは3つ願いを
叶え、複数人をまとめて生き返らせることは出来ないが、何度でも生き返らせるタイプにしてはいる。しかし生き返るがあるとはいえ、犠牲を
必要とする無謀な延命策の中心とも言うべき役を買って出るなど、彼の性格を考えれば想像の遥か外だったのである。
3人の来訪者と会う前の行動といい、明らかにベジータの心に変化が生まれている。そのわけを聞こうとして、しかしピッコロは思い留まった。
かつて彼も、悪に浸りきった心を一人の子供に変えられた存在なのである。だからこそ、おぼろげにだがその理由に見当はついていた。
「いいだろう。もしもの時の破壊役は俺がやる」
質問の代わりにそう言いながら、ピッコロは微かに笑った。ベジータは嫌がるだろうが、それは同じような道を辿った同志に向ける笑みだった。

23 :DBIF:2007/06/14(木) 00:57:43 ID:hqIXlKnp0
その頃、まだ地球からかなり離れた宙域を、サイヤ人の乗っている宇宙船とは違うものの、やはり巨大な宇宙船が地球へと向かって飛んでいた。
その中の一室。中央奥に巨大な何かの装置が置かれた広間の扉が開き、一人の人間が現れた。
その顔を見れば地球の戦士達は驚いただろう。以前ゾレというフリーザタイプの異星人に会ってはいるが、今現れた異星人はフリーザに余りにも
似ていた。違う所といえば、胸に硬質的な輝きを見せる部分がないくらいである。
「どうした、スノウ?」
そのフリーザ似の異星人に向かって、奥の装置のある場所から重苦しい声がかけられた。装置の中央には入り口らしき扉があり、大きなガラスの
ようなものがはめ込まれている。その内部から光が漏れているにもかかわらず、中の状態は良くわからない。時々気泡らしきものが上っている所から、
中には液体が詰まっているのだろう。
スノウと呼ばれたフリーザ似の異星人は、その装置の扉に向かって一礼した。
「あのサイヤ人共の目的地と思われる宙域に、神聖樹の反応が現れました」
「ふん、やはりな」
装置の中にいると思われる人物が、その報告を聞いて吐き捨てるような声で言った。
「だが、これで連中の足は止まる。後は追いつくだけだな」
「はい」
応じながら、スノウは口の端を吊り上げた。
「今頃は奴らも異常に首を傾げているでしょう」

「妙だな」
悟飯がトランクスの後を追って部屋に入ってから3時間余りが経った頃、スパッツがそんな言葉をつぶやいた。
「どうした?何が妙なんだ?」
「神聖樹の成長のスピードが遅い。1日で育つ樹とは思えんスピードだ」
スパッツの言葉に、質問したピッコロが下界を眺めてみると、確かにターレスが植えた時に比べてはるかに成長が遅い。これは一度ターレスがこの
星で神聖樹を育てたことが関係しているのだろうか。
「あくまでこの地球全土の面積から土地の枯死スピードを基に計算した結果だが、このスピードならば、地球全土の滋養が神聖樹に吸い尽くされるまで
7日はかかる」
「ということは・・・」
「どういう理由かは知らんが、まだ望みはあると言うことだ」
クリリンの言葉に合わせて、ピッコロがにやりと笑いながら言った。

正しく運命のイタズラによって、悟飯達は犠牲を強いる時間稼ぎをすることもなく、貴重な時間を得ることが出来た。しかしこれが更に最悪な事態の
呼び水となることを、この時点で知る由もなかった。

24 :クリキントン:2007/06/14(木) 01:03:33 ID:hU4dnMN10
今回はここまで。

前スレ
418さん
419さん
420さん
ふらーりさん
感想感謝です。18号は個人的に自分に惚れてるけど恋愛面には疎いクリリンを
からかってる内にじわじわと好きになった感じがするんであのSSになりました。

25 :作者の都合により名無しです:2007/06/14(木) 01:28:55 ID:feHeXuXH0
>邪神?さん
お疲れさんです。久しぶりにホークチーム見るような気がするな・・w
ケンシロウもずいぶんとメンバーになじんでいますな。
化石魚対北斗神拳とか、面白そうな組み合わせですな。

>クリキントンさん
好調なペースお疲れ様です。ベジータとピッコロの間に奇妙な空気が
生まれていますね。友情とまではいかないけど。
最も潜在能力の高い悟飯の為に先陣を切る覚悟ですな。


26 :作者の都合により名無しです:2007/06/14(木) 12:44:48 ID:7auWrgo70
>邪神?さん
乙です
>魚を木端微塵に吹き飛ばし、近くにあった島の地層を粉々に砕いて行く。
海の幸喰えねぇwww

>クリキントンさん
フリーザ一族(?)はどんなタイミングで登場してくるんでしょう?
楽しみです。

27 :作者の都合により名無しです:2007/06/14(木) 19:31:06 ID:tixAgG0E0
お疲れ様です、お2人さん。

>邪神氏
久しぶりに主人公サイドの話ですね。実質はスタンたちが主人公ですけども。
そういえばケンシロウとブルーの原キャラが出てるんですね、このSS。
ケンシロウのヒコウ突きってモンスターに利くのか?

>クリキントン氏
べジータがやられて、次はトランクスか・・。ターレスはあまり知らないけど
映画キャラって原作より微妙に強く設定されてるんで、敵サイヤ人も強いんでしょうね。
他の異星人も現れて、神聖樹争奪戦か。

28 :作者の都合により名無しです:2007/06/14(木) 23:10:39 ID:ltT0Ojnv0
クリキントンさん頑張ってるね。
このペースでお願いします

29 :作者の都合により名無しです:2007/06/15(金) 11:02:41 ID:tAkQf2Wx0
更新回数多かった方々が揃って不調なのが痛いね・・

30 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:20:28 ID:AyF4C2+Q0
【常】─I was Born to Kill─



 この世界は謎に満ちている、と思う。
 ──だからこそ、こいつはこの世界にやってきたのだから。
『ペロ……これは青酸カリ!』
 わたしの目の前に大迫力で展開された銀幕の向こう側の世界で、身体は子供頭脳は大人な名探偵が深刻そうな口調でそう告げていた。
「そんなもん舐めたら普通は死ぬんじゃない……?」
 わたしは膝に抱えたLLサイズのポップコーンを頬張りながら、たった一つの真実を求め真っ赤な蝶ネクタイが映える不審人物に向けて小声でツッコミを入れた。
 その次の瞬間、後頭部に常軌を逸した力が加えられた。
 なす術も無く、わたしの頭部は膝の上のバケツ並みの紙容器に押し込められ、顔面が満遍なく醤油バター味で味付けされた。
「はぶっ!?」
「黙れ」
 なおも万力のような怪力でわたしの頭を押さえつけながら、そいつはひどく涼しげに言った。
「貴様の下らぬさえずりのせいでせっかくの台詞を聞き逃したではないか」
 言っている間にも、わたしの首から上とポップコーンの器の底との距離がどんどん縮まってゆく。
 必然的にわたしの顔面と容器に詰め込まれたポップコーンは容赦なく押し潰されているわけだが、こいつはそんなことなどお構いなしのようだった。
「それに──青酸カリそれ自体は毒でもなんでもない。人間の胃酸と化学反応を起こすことによって、世にも恐ろしい猛毒となるのだ」
 せっかくのトリビアなのだが、正直言って、わたしはそれどころではなかった。
 ──だって、山盛りのポップコーンに顔を埋めて窒息死寸前だったのだから。
 悲鳴を上げようとしても、口の中にまでポップコーンが詰まってしまって声にならない。
(人生の最後は食べ物に囲まれて死ぬのが夢だけど乾き物オンリーっていうのは嫌だ! せめて飲み物をー!)
「むぐ、むー!」
 わたしは全身をばたばたさせて、今まさにわたしに引導を渡そうとしている相手に向かって窮状を訴えるが、
頭蓋骨をがっちりつかんだその手が緩む気配は無かった。
 身体中の力を振り絞ってその縛めに抗おうとしても、常識外れの圧力がわたしの頭を直径二〇センチの円筒形に押し込めてびくともしない。
 こいつに単純な力勝負を挑んでも勝ち目が無いのは、火を見るより明らかだった──なぜなら、『こいつ』は人間ではないのだから。

31 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:22:07 ID:AyF4C2+Q0
「ふむ? いきなり抵抗が失せたな。死んだのか? 憐れ、たかだか菓子ごときに生き埋めになるのが貴様の末路か。
まあ、貴様らしいと言えば貴様らしいな。安心しろ、墓には毎年ポップコーンとやらを供えてやる」
 などと、なんの悪びれもの無い言葉が頭上から響いてくる。
「誰が死ぬか! しかも死因の凶器をお供えするってどんだけの嫌がらせだよ!?」
 わたしは叫び、紙製の容器を引きちぎって一分三十秒ぶりに新鮮な空気を吸った。
「ほう、まさか自力で脱出するとはな。中身はどうした?」
「食べたさ! そりゃもう死にもの狂いでね!」
 膝にぱらぱらと落ちた食べ残しのポップコーンのカスを払い、乱暴に言い返す。
「もう! いきなりなにすんのよ、わたしがなにしたっての?」
 油でべたべたになった顔面をウェットティッシュで拭きながら恨めしさを込めて呟くと、
「おお、思い出した」
 そいつはぽんと手を打ち、
「さっきから騒々しいぞ。奴隷の分際で我が輩の芸術鑑賞を妨げるとは許しがたい」
 強烈なボディーブローをわたしのみぞおちに叩き込んだ。
 ぐぼごぼごほ、と変な呼吸をするその横で、そいつはもう何事も無かったかのように映画の世界に没頭している。
 わたしは釈然としない気持ちで、その横顔を睨みつけた。
(てゆーか、アンタが騒ぎを大きくしてるんじゃん……)


『そうか……分かったぞ! おっちゃん、ゴメン!』
 スクリーンの中ではすでにクライマックスシーンが始まっているようだった。
 陸の孤島となった洋館で起こった連続殺人の犯人を暴くべく、主人公の男の子が傀儡の探偵に麻酔銃を撃ち込んでいる。
(……なんか、身につまされる話だな)
 映画の内容にそんな感想を抱きながらふと横を見、思わず息を呑んだ。
 隣の『そいつ』は、いつもの怜悧な無表情をわずかに緩ませ、うっとりとしたような面持ちで銀幕に見入っていた。
 それだけならまだしも──そいつは口元から鋭い牙をのぞかせ、涎を垂らしていたのだ。
 それはそう、まるで、わたしがテレビの美食番組を見ているときにそうするように。
(ミステリのアニメを観てそんな風になるのは、世界広しと言えどアンタくらいなモンだろーけどね)

32 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:23:52 ID:AyF4C2+Q0
 やれやれ、と首を振り、遅ればせながらわたしも大人しく映画の世界に浸ることを決意する。
 そして、九十八個目のLLサイズのポップコーンを膝の上に置き、思い切り頬張った。
「おい、あの子まだ食べる気だぜ」「さっき売店のお姉さんが泣いてたぞ。『もう明日の分の在庫まで消えた』って」「くそう、気になって映画どころじゃねーよ」
 などといった囁きが背後の席から聞こえてきたような気がしないでもないが、理性の力で無視する。
『そう……犯人はあなたです!』
 ポップコーンの醤油バター味に舌鼓を打つわたしの目の前で、今、殺人事件の謎が解かれようとしている。
「見るがいい、ヤコ。虚構の産物と言えど、『謎』が解かれる瞬間を目の当たりにするのはやはり心が躍るものだな」
「興奮しすぎて正体を現さないでよ、ネウロ」


 『そいつ』の名前は脳噛ネウロ。
 人間ではない。人の世ならぬ魔界の住人であり、『謎』を主食とする極めて特異な存在である。
 魔界の『謎』を解き(たべ)尽くしてしまったネウロは、『謎』を求めて人間の世界へとやって来た。
 そして不運にもネウロとファーストコンタクトを果たしてしまったわたし、桂木弥子を傀儡の探偵と仕立て上げ、
自分はその助手に収まることで、数々の事件を解決に導いている。
 事件の『謎』を解くことで解放される『悪意』がネウロのエネルギー源であり、それを得るためにネウロは『謎』を解く。
 つまり、ネウロにとって『謎解き』とは『食事』と同義なのだ。
 もしもネウロがこの世界の『謎』をも解き(くい)尽くしてしまったら、そのときこの世界は一体どうなってしまうのだろうか。
 それは誰にも分からない。少なくとも、わたしには想像もつかない。
 ただ一つ言えることは、


 この世界は謎に満ちている──今は、まだ。

33 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:26:22 ID:AyF4C2+Q0


 世界は謎に満ちている、と思う。
 だからなんだと訊かれても困る。それはただの感想であり、それ以上の意味はないからだ。
 謎を解くのは俺の仕事ではない。(かと言って俺が謎を解かなくてもいい理由にはならないが。解くか解かないかは単に個々人の意志の問題だ)
 初夏も半ばに差し掛かったある日の午後、退屈な大学の授業を終え帰宅したとき、ワンルームのドアノブが開錠されていることに気がついた。
 俺は出かける前にはちゃんと鍵をかける習慣がある。かけ忘れ、ということは有り得ない。こと『習慣』という行為に関して、俺は常に徹底している。
 つまり、俺以外の何者かが俺の意向を無視し、意図的に且つなんらかの手段で鍵を開けたということだ。
 そして、その条件に該当する可能性と言えば──ここまで考えて、面倒になったので思考を打ち切った。
 部屋に誰がいるか、そしてどんな意図と手段でもって不法侵入を果たしたのかは、中に入ればすぐに分かることだ。
 泥棒の可能性も考えないでもなかったし、部屋の住人の登場で空き巣が居直り強盗に進化を果たすということも十分にありそうな話だが、
もし仮にそうだとしても俺にとってはなんら脅威ではない。
 だから俺はなんの躊躇も無くドアを開いた。まず、隙間からひんやりとした空気がまず溢れ出してきた。
 図々しくも侵入者は冷房を付けているようだ。もちろんこれは俺が出かける前に空調を消す、という習慣に基づいた仮定だ。
 わずかに注意をみなぎらせてドアを全開にし、そして俺は大仰にため息を付いた。
 よりにもよってこいつが侵入者だとは──
ある程度予想の範囲内だが、まったくの話、泥棒のほうがまだしもましだった。警察でもなんでも呼んで追い返せるからだが、
「──全死さん。俺の部屋でなにをしているんですか」
 たいして広くも無いワンルームの中心に、そいつは腰に両手を当てて仁王立ちしていた。
「よう、辺境人(マージナル)。調子はどうだい?」
「さっきまで絶好調でしたが今は絶不調ですよ。とりあえず土足で部屋に上がるのは止めてくれませんか」
 ノンフレームの眼鏡の奥に光る凶悪な瞳に笑みを浮かべ、そいつ──飛鳥井全死は軽く肩をすくめた。
「なんだ、細かいことを気にするやつだな。そんなんじゃ出世できないぞ」
「俺は学生ですからね。出世とやらに興味はありません」
「ははあ、そうだろうよ。辺境人(マージナル)は考えない、成長しない、謎を解かない。世界はあるがままで我が友──それがお前のモットーだもんな」
「勝手に俺に変なモットーを与えないでください。それから辺境人(マージナル)なんて珍妙な呼び方も」
「馬鹿言うんじゃないよ。わたしはただ、お前の生き様を言語化してるだけだ。
珍妙だと言うならお前の存在自体が珍妙なんだよ。なんならワシントン条約で保護してやってもいいぞ」
「なにを言ってるんですか、もう……」
 ──まったく、泥棒のほうがまだしもましだった。

34 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:29:26 ID:AyF4C2+Q0
 飛鳥井全死という女は魔女に似ている。
 内面の話ではない。外見の話だ。
 黒のノースリーブのキャミソールに、下は黒のフレアスカート、西部開拓時代のようなごついベルトを腰に巻いて、フェルトの鍔付き帽子も黒である。
 魔女と称するにはややワイルドな服装だが、このままワルプルギスの夜に出張してもなんら違和感は無いだろう。
全死のことだから一度や二度くらいはサバトに顔を出してるのかもしれない。(もちろんそんなことは有り得ないことだが)
 で、内面はというと……魔女よりタチが悪いのは確実だろう。
「全死さん、頼みますからブーツを脱いでくださいよ。日本家屋の常識を知らないんですか」
「知ってるに決まってるだろうが。そんなことも分からないのか、この愚鈍」
「なら脱いでくださいよ」
「嫌だね」
「駄々をこねないでください。なんの意味があるんですか」
「意味のあることが全てじゃないだろう、辺境人(マージナル)」
「じゃあなんの意味もなく、俺の部屋に不法侵入した挙句勝手に冷房入れてあまつさえ土足だと言うんですか?
……あ、そうだ思い出した。全死さん、どうやってドアの鍵開けたんですか」
「内側からだ」
「はあ?」
「はあ? じゃないよ馬鹿。隣の部屋からベランダ伝いに入って内側から開けたんだよ」
「なんてことするんですか。無茶苦茶ですよ。隣にはなんて言い訳したんですか?」
「ええと……世を忍ぶ仲の恋人だと言ったな、確か」
 思わず天を仰ぐ。二重のリングをなす蛍光灯の一本が切れていた。
「どうしてそういう根も葉もないことを言うんですか」
「別にいいじゃないか。減るもんでもなし」
「俺の信用という隠しバロメータが減ってるんですよ。
全死さん、以前は管理人に妻だと言いましたよね。そして近所の人には俺の妹だとも詐称していたはずですよ」
「ああ……そんなこともあったっけか」
「まるで整合性が取れてないじゃないですか。どう話に折り合いをつけるんです。俺の近所付き合いを根絶させるつもりですか」
 俺の切実な訴えも全死にとってはどこ吹く風のようで、
「そんな瑣末の文脈なんぞどうでもいいだろ」
「どうでも良くないから言ってるんですよ。俺の平穏な日常を破壊しないで下さい」

35 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:40:39 ID:7yEeS4ql0
「あー、うるさいな。話に筋道通せばいいんだろ」
 と全死は犬でも追い払うように手を振り、しばらくぶつぶつとうなった挙句に、
「オナニーだよ」
「は? なに脈絡の無いこと言ってるんですか」
 どうでも良いが、いくら四捨五入すれば三十路とは言え、(一応)若い女がそういう単語を平然と吐くのはどうかと思う。
 恥ずかしいのは俺ではなく全死なので、全死さえなんとも思わなければ別に構わないのだが。
「いやだからさ、あるだろ。語源だよ。えーと、思い出せないがなんか膣外射精がどうのこうのと」
 この際全死の臆面の無さには目を瞑ることにして、言葉の意味だけを掬い上げることに専念する。
「……ああ、『オナンは地に流した』ってやつですか。兄の亡き後に兄嫁を娶った男が、子供を作ることを拒否したって話ですよね」
「そうそれ。兄貴が死んだら、弟は兄貴の嫁さんをもらい受けて兄貴のために子供を作らなきゃいけないんだろ?」
「いわゆるレビテート婚ですね。それで?」
「その逆パターンだよ。お前も相当に鈍いな」
 しばしの時間を費やし、脳内の保存記憶に検索をかける。
「もしかして、ソロレート婚のことを言ってるんですか? 妻が死んだらその妹を娶るんでしたっけ?」
 俺が愚鈍で馬鹿で相当に鈍いことは敢えて否定しないが(もちろん俺は愚鈍でも馬鹿でも相当に鈍くもない)、
それでも全死のロジックラインがおぼろげに見えてきた。
「あー、と、つまり……俺と全死さんはソロレート婚で結ばれた夫婦だと」
「やっと分かったか」
 全死は満足そうに頷き、その凶眼を細めた。
 他の人なら恐怖なり反感を抱きそうな目つきだが、俺としてはそんなことよりさっさとブーツを脱いで欲しかった。
「……ですが、それで妻と妹はフォローできますが、世を忍ぶってのはどうするつもりです?」
「それこそどうとでもなるだろうが。『お姉様の陰でずっとお慕い申し上げておりました』とかでいいだろ」
「でも、それ、事実無根の嘘ですよね」
「人間、真実だけじゃ生きていけないものさ」
 そう言って全死は薄く笑った。
 全死がこういう埒もない話をするのは機嫌の良い証拠だ。
 俺がその恩恵にまったく与れないというのは誠に遺憾であるが。機嫌が良いときくらい俺に迷惑をかけずにいてもらいたい。
全死の機嫌が悪いときにその被害を一身に受けるのは他ならぬ俺なのだから。
 なにより俺は全死ほど暇ではない。昼間っからそこらへんうろつき回ってる全死とは違い、俺には生活がある。
酔狂もいい加減にして欲しいものだが、言っても無駄だろう。

36 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:41:46 ID:7yEeS4ql0
「……で、そろそろご用向きの程を教えていただきたいものですね」
 ブーツの件は諦めた。俺が全死に対して強制力を発揮できる状況など皆無だし、そもそも全死は人の言うことなどまったく聞かない。
「用? ああ、用ね。──なあ、いちゃいちゃしようぜ」
 それに対する答えは決まりきってるので即答する。
「嫌ですよ」
 その突き放したような態度(実際突き放しているわけだが)が気に入らないのか、全死はフローリングの床に唾を吐く。
 他人の家でどうしてそんな非常識な真似が出来るのか、ぜひその秘訣を教えて欲しいと思う。素直に感心した。
「なんでだよ。今日はお前の好みに合わせてやる。ホテルでも屋外でもいいぜ?」
「今日だろうが明日だろうがビルの屋上だろうが世界の果てだろうがお断りします。俺は真面目な学生なんです。用件はそれだけですか?」
 再度唾を吐き、全死は忌々しげに舌打ちした。
「ったく……この鈍色鮪が。その愚鈍さは一度死ななきゃ直らないか? まあいいや、残念なことにな、本題は別の所にあるんだよ」
「だったらそれをさっさと言ってください」
「嘆かわしいね。そんなに生き急いでも寿命は縮まないぞ。──辺境人(マージナル)、お前に仕事を頼みたいんだ」
「仕事、ですか。了解」


 時々思う、なぜ俺は、全死のような破滅的な人間と交流を持っているのかと。
 いや──答は分かりきっている。
 それがレギュラーだからだ。
 俺は習慣に忠実に生きている。レギュラーを好み、イレギュラーを遠ざけて日々を送っている。
 全死と付き合っているのも、それが既成事実として成立している習慣だからだ。
 全死の振る舞いや、全死が持ち込む難題はイレギュラーであるが、それを包括するレギュラーとして全死の存在がある。
 全死の奇行に頭を痛める日々も、それが定常化されればそれは単なるルーチンワークのレヴェルにまで落とし込める事象となる。
 そう──習慣に従って生きることで、俺は幸福に近づいていける。
 それはちょうど、飛鳥井全死が不幸へと真っ逆さまに転落しているのと同じ確実さで。

37 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:45:14 ID:7yEeS4ql0


 映画館を出ると、月が空のてっぺんに昇っていた。
「あー、食べた食べた。あそこの映画館のポップコーンは知る人ぞ知る逸品なのよねー」
「ふむ……たまには他人が『謎』を解くところを観るのも気晴らしにはなるな」
 わたしとネウロの会話は思いっきり噛み合ってなかったが、満腹でご機嫌のわたしにはあまり気にならなかった。
 繁華街から一本離れた通りは人気がなく、どこかうら寂しい感じがする。
 夏の夜の熱気もここでは少しだけ和らいでいて、たまに涼しい風が頬を掠めている。
「──む?」
 ふと、ネウロが足を止めた。
「なによ、どうしたの?」
 ネウロは答えず、ただじっとビルとビルの隙間の路地を凝視していた。
「ヤコよ、『謎』の気配がするぞ」
 その表情が極めて極端な変化を見せていた。
 口元は裂けて耳まで届こうとしており、奇妙にねじくれた角が後頭部から二本のぞいている。
 普段は爽やかな好青年を装ってはいるが、実は人間以外の存在──魔人であるネウロが、その本性を剥き出しにしかけていた。
「ちょ、ちょっとネウロ! こんなところで!」
 こんな怪物そのまんまなネウロが人の目に付いたなら、きっととんでもない大騒ぎになるだろう。
「ネウロってば! アンタいい加減で通報ぐへぇ」
 小声で、だけど激しくネウロに詰め寄ったわたしのアゴに綺麗なクロスカウンターを決め、ネウロはぼそり呟いた。
「これは確かに上質な『謎』の気配だ……だが、しかしこれは……」
 アスファルトに横たわってこの身の不運を嘆くわたしの視界に、『なにか』が映った。
 ──それは、先ほどからネウロが注視している路地の中ほどにあった。
 二つの人影だった。
「…………?」
 もっとよく見ようと目を凝らしたわたしは、
「────っ!」
 二つの人影、その片方が、拳大の石のようなもので、もう片方の人影を──力いっぱい殴打していた。
 その直撃を受けた影は、頭部のシルエットが──月のように欠けていた。
 頭蓋骨が凹むほどのダメージを受けているようにしか見えない。
 そして、二発、三発。四発目が振り下ろされる前に、その無残な頭に成り果てた被害者は、糸の切れた人形のように地面に臥した。

38 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/16(土) 03:46:09 ID:7yEeS4ql0
 思わず悲鳴を上げかけたわたしの口を、ネウロの手が強引に塞ぐ。
「黙るのだヤコ。今度こそ息一つ漏らしたらその場で目と耳と鼻と口を魔界のボンドで溶接してやるぞ」
(溶接ってボンドの仕事じゃねえ!)
 耳元で囁くネウロに内心でツッコみつつ、必死で息を殺す。
 ──わたしの目の前で、殺人が実行されていた。それは完璧なまでにシンプルで無駄のない殺人だった。
 『謎』の気配がする、とネウロは言った。
 おそらく、この瞬間から『謎』が発生するのだろう。
 人の『悪意』が自己防衛のために構築し、それに守られて高純度に圧縮される、『悪意』の揺籠である『謎』──。
(……あれ?)
 ここで、わたしはあることに気付く。
 加害者が今の殺人を隠蔽するためにトリックを施したところで、その一部始終をネウロが観察していては、
それはネウロにとって『謎』たりえるのか、という疑問に。
 口はネウロに塞がれているので(てゆーかネウロの指先がありえないくらいに尖っていて今にも頬を突き破りそうなのだが)、目顔でそのことを訊ねる。
 ネウロはわたしに一瞬視線をよこし、独り言なのかわたしに言ってるのかよく分からない調子で言う。
「実に奇妙だ……『謎』の気配はあれど、我々の目の前で発生した殺人事件に対して『謎』が発生する様子がない……」
 それはどういう意味なのだろうか。外界から『悪意』を保護する『謎』が発生しないということは、あの殺人者は自分の犯罪行為を隠すつもりがないのだろうか。
 ──いや、それとも、あの人には、もしかして……。
 きらきらと洩れ入るネオンの照り返しを受けて赤黒く光る石を投げ捨て、加害者は周囲を見回した。
 その視線が、わたしの視線とかち合った。それは錯覚だったかもしれない。錯覚だと思いたかった。
「──ふぅ」
 だが、殺人者はわたしに視点を合わせたままで、ため息をついた。まるで「見つかっちゃったか」とでも言いたげな調子で。
 わたしとネウロの背後を一台の車が通り過ぎる。そのライトに照らされて、殺人者の姿が一瞬だけ明るみに浮かび上がった。
 それはどうしようもないくらいに普通な感じの、どこにでもいそうな若い男性──おそらく大学生くらい──だった。
「まいったな。目撃されるのはイレギュラーだ」


 ……これが、『辺境人(マージナル)』こと香織甲介との初めての出会いであり、
 『域外者(アウトサイダー)』飛鳥井全死と出会う切っ掛けであり、
 彼女を巡る奇妙な『謎』の始まりだった。

39 :作者の都合により名無しです:2007/06/16(土) 14:40:28 ID:dbpFSXHO0
むむ、これは面白そうな新作だ。
ネウロの話が好きな俺にとっては非常に展開が気になる。
どなたが書いているか知らないけど、期待しております。

既存の書き手さんかな?
新人さんだったらお名前をぜひ。

40 :作者の都合により名無しです:2007/06/16(土) 16:38:31 ID:soKmKPzS0
>脳噛ネウロは間違えない
一瞬スターダストさんかかまいたちさんかな?と思ったけど違うみたい。

お疲れ様です。最初のヤコの拷問シーンから原作そのままですw
魔女対魔人か・・想像を超えた頭脳合戦になりそうな・・。
まだまだお話の全貌は見えていないけど、すっごく楽しみです。

でも、レビテート婚なんて言葉初めて聴いたよw


41 :作者の都合により名無しです:2007/06/16(土) 23:08:30 ID:P87nL4/D0
いや、やっぱりカマイタチさんじゃないか?
物語の作り方とか、個性的な通り名のつけ方とかそんな感じ。
でも、もし新人さんならまた凄い筆力の方が出てきたな。
応援してます。頑張って下さい。

42 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 00:51:57 ID:qAGPvBLC0
原作っぽくていいですね。挿入部も凝っていていい。
辺境人との偶然にして奇妙な出会いと、ゆくゆく待ち受ける
域外者の謎がどうなるか楽しみです。

SS書くのが上手い人は、キャラ間の会話がちょっとシャレてるね。



43 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 02:45:04 ID:ZmCZYl2k0
微妙にトリップが違うかもしれんが勘弁な。

4月22日 午前10時45分
授業の合間の短い休み時間。
少しの間の自由を満喫しているのか、教室から廊下まで、ざわざわと騒がしい。
しかし、その中で唯一、張り詰めた緊張感を漂わせているクラスがあった。
高等部2年F組である。
その緊張感の理由。それは少しばかり教室内の声に耳を傾けてみれば理解できるだろう。

「次の授業は・・・あれだよな」
「ああ・・・生物だ」
「休み・・・・・・とか、ないかな?」
「・・・俺、部活の朝錬で早めに出てきたんだけどさぁ。
その時、学校に来てるの見ちまった・・・」
「お前・・・空気読めよ・・・。俺らのかすかな望みを吹き消すなよ」
「・・・ワリィ。でも早めに覚悟しといたほうが良くねぇ?」
「まさか、自分のクラスに『リアル女王の教室』みたいな教師が来るとは思ってなかったわ」
「男だから『帝王の教室』か・・・?」
「響きがより怖いのは何でだろうね・・・」
「何でよりによって、私達クラスが最初の授業なわけ?
事前情報がなくて対応取れないよ・・・」

そう、空条承太郎の最初の授業に当たる、哀れな子羊たちのクラスだ。
昨日の一喝を受け、生徒たちは承太郎を、最恐の新任教師と評価していた。

44 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 02:46:54 ID:ZmCZYl2k0
そんな周りを見て小声で順平がゆかりに漏らす。

「・・・なんか、皆すげぇビビッてんな」

ゆかりは軽く溜め息を吐いて、同じく小声で返す。

「でも、仕方ないんじゃない?第一印象がアレじゃあさ」

思い浮かべる昨日の光景。

「まぁ・・・確かに」

天道の言葉に、2人はそろって頷いた。
新任の挨拶の一発目に一喝である。どれだけ肝が据わっていればできる事であろうか。

キーンコーンカーンコーン。

そんな生徒達を余所に、無情にも授業再開の鐘が鳴る。
教師を待つ室内の生徒は、まるで処刑を待つ囚人のようだ。
時計の秒針の動く音が響く教室の静寂を破るように、ガラリと扉を滑らせ、巨体が教室に入ってくる。
そのままツカツカと教壇に進み、ピタリと止まって、生徒に向き合う。

「自己紹介は昨日もしたが・・・空条承太郎だ。
これから一年、お前達に生物を教える。では出席を取るぜ・・・」

45 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 02:50:49 ID:ZmCZYl2k0
張り詰めた空気の中、授業が進行していく。
生徒は、その殆どが、カチンコチンの堅苦しい授業になると思っていた。

だが・・・実際はその逆であった。
授業の本筋を進めつつ、承太郎自身が海洋調査の時に見た美しい光景や、
面白い生態をもつ海の生物の話などを挟む、飽きの来ない授業だった。

そうして、授業が終わる頃には、一番受けたくない授業筆頭から
次の授業が一番楽しみな授業に格上げされる事になった。
が、やはり甘くはないと認識させる事もあった。それは授業が中盤に差し掛かった頃の事。

(ふぁ。やっべぇ。タルタロス行かなくて暇だったからって、夜更かししすぎたかぁ?
漫画って読み出すと止まらなくなんだよなぁ)

窓の外を見つつ考えているのは、今回の出来事の主役、スチャラカ高校生代表の伊織順平である。
そして何かを思いついた顔で、間を挟んだ隣に座る天道を見る。

(そうだ、後でコイツにノート見せてもらえばいいじゃん。
ゆかりッチは見せてくんねーけど、こいつならいけんじゃねぇ?)

46 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 02:57:23 ID:ZmCZYl2k0
と、勝手にノートを見せてもらえる事を前提にした考えを完結させると、机に伏せて眠りに落ちた。
だが、その行動はすでに、承太郎の監視下に置かれていた。
承太郎は、すっとチョークを顔の前に構え、狙いをつける。

「オラァッ!」

気合と共に打ち出されたチョークは、棒手裏剣のような軌道を描き、
順平の頭部に直撃すると同時に粉々に砕け散った。

「ギニャーーー!!?」

順平は当たった場所を押さえて飛び起きた。
かなりのパワーが乗ったチョークを食らったせいか、少し涙目になっている。

「多少の私語は黙認するが、居眠りだけは見逃さねーぜ。
聞いてりゃ多少なりとも頭に入るが、寝ちまったらそうはいかねーからな」

そしてその後も居眠りする生徒は一人の例外もなくチョークの洗礼を受ける事になった。
後日、承太郎の知らないところで『ツキコーのゴルゴ』と呼ばれるようになるのはまた別の話である。

47 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 02:59:35 ID:ZmCZYl2k0
同日 午後5時47分
昼間のうちにSPW財団のスタッフが、荷物や足りない家具などを運び終えている手はずなので、
学園での仕事が終わった後、承太郎はまっすぐ巌戸台分寮に向かった。
寮に着くと、S.E.E.S.のメンバー全員がロビーで承太郎を待っていた。

「ようこそ、巌戸台分寮へ。・・・これから宜しくお願いします、空条先生」

代表して美鶴が承太郎に挨拶をする。
そのほかのメンバーも口々に歓迎の言葉を述べる。

「こちらこそ宜しく頼むぜ。タトゥーとドラッグ以外は口出ししねぇから安心しな。
酒やタバコなんかは、学校以外じゃとやかく言わねーぜ」

堅物そうに見える承太郎から飛び出した言葉に、目を丸くするメンバーたち。
自分の高校時代に、かなり好き勝手やっていたので、その辺は寛大な承太郎であった。
その後、歓迎会も兼ね、皆で少しばかり豪華な夕食をとることになった。
その席で、2年F組の3人が承太郎の授業がとても面白かった事を承太郎に言うと、
『イバルだけで能なしな教師にはなりたくねえだけだぜ』と、小さく笑ってそう返したそうだ。
夕食後は、影時間までそれぞれ自由な時間を過ごし、0時前に学園の正門前に集合する事になった。

48 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 03:01:19 ID:ZmCZYl2k0
同日 影時間
承太郎を含むS.E.E.S.のメンバーがタルタロスのエントランスに集まっている。
戦いの前の緊張を解す為の準備運動(ちなみに真田が提案した)をしている時に、順平が声を上げた。

「あっ、そうだ!そう言えば空条先生の、その・・・スタンドでしたっけ?
それの――『能力』、教えてもらえる約束でしたよね?」

その言葉に、全員が運動をやめ、承太郎を見る。

「そうだったな。皆、集まってくれ」

承太郎が声を掛けると、5人は承太郎の前に集まる。
集まったところで、美鶴が質問する。

「先に一つお聞きしておきたいのですが、『近距離格闘タイプ』と仰られましたが、
実際にはどれくらいの力があるのですか?
ナビゲートをする立場としては戦力の把握はしておきたいので」

それを聞き、承太郎は軽く腕を組み、少しの間考える。

「そうだな・・・、測ったことが無いから数値で言う事はできんが・・・。
パワーは鉄格子をブチ折って、真っ二つに引き裂ける。
後は猛スピードで迫ってくるコンボイトラックを殴り飛ばした事もある。
スピードは・・・至近距離で発射された銃弾を弾く事くらいは容易い。
精密機械以上の正確な動きも可能だ。
ああ、一度聞いているだろうが、俺のスタンドは『スタープラチナ』と言う」

スタンドの身体能力、とでも言うのか、ともかくスペックを聞き、一同は唖然とする。

49 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 03:03:18 ID:ZmCZYl2k0
「な、何だその反則的な強さは・・・」

驚きの中に悔しさの混じった声で、真田が呟いた。

「じゃ、じゃあ改めて能力のほうをお願いします」

呆然としてしまいそうな空気を変えるため、ゆかりが話を戻した。

「解った。能力は・・・理解しにくいだろうが『最大で5秒間時間を止める事ができる事』だ。
時の止まった空間でなぜ5秒と感じるかは解らんが、ともかく最大5秒だ」

その説明に、順平が不満そうな声を上げる。

「えぇ?たった5秒なんスか?だって、いち、にぃ、さん、しい、ご!
って、これだけっすよ?何もできないじゃないっスか」

その言葉に、承太郎は少し苦笑を浮かべる。
そんな順平に真田が呆れた声で言う。

「順平、お前それを本気で言っているのか?」
「え?俺なんかおかしいこと言いました?」
「その前の話を聞いてなかったのか、お前は。
銃弾を弾けるスピードと、猛スピードのトラックを殴り飛ばす力の前に、5秒間『も』無防備でいるんだぞ?
5秒間に何発拳を喰らうかなんて考えたくも無い」

真田の言葉で順平は初めてスタープラチナの能力の恐ろしさを理解し、血の気が引く感覚を味わった。

「む・・・無敵じゃないっスか」

50 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 03:04:34 ID:ZmCZYl2k0
その言葉に承太郎は首を振る。

「強くはあっても、無敵と言う事は有り得ない。相性というものがある。
これはどんなスタンドでも、そしておそらく、お前達のペルソナにも当てはまるだろう。
『調和する二つは完全なる一つに優る』―――お前達の学校にあるオブジェに書いてある言葉だ。良く覚えておくといい。
重要なのは、欠けた部分を補える仲間を持つ事、そして自分の長所を発揮できる闘いのスタイルを持つ事だ」

承太郎が話し終えてから、おずおずとゆかりが口を開く。

「あ、あのー。私からも一つ聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
「なんだ?答えられることなら答えるぜ」
「何で、学校に赴任するのが遅れたんですか?」

ゆかりとしては普通の、戦いには関係ないごく普通の質問をしたつもりだった。

「昔の仲間の・・・墓参りのために、フランスにな・・・」

懐かしさと悲しさ、そして寂しさのこもった声が、エントランスに響いた。

「あ・・・ごめんなさい」
「いや、いい。知らなかった事だし、聞きたくなるのも理解できるからな」

重苦しい空気がエントランスを支配する。その空気を破るように、バカ明るい声で順平が美鶴に尋ねる。

「きっ、桐条先輩!この前までは、俺とゆかりッチと阿虎でタルタロス攻めてましたけど、
今日からはそこに空条先生を加えるって事でいいっスか?」

51 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 03:08:52 ID:ZmCZYl2k0
順平の頑張りを無駄にしないように、美鶴も明るめの声を心がけて話す。

「あ、ああ。そうだな。その通りだ、伊織。後は現場のリーダーだが・・・」

ゆかりもそれに続く。

「やっぱり、最年長って事で、空条先生?」

そう言われた承太郎に皆の視線が集まる。

「いや・・・。リーダーはころころ変えないほうがいいだろう。
今までやった奴がそのままリーダーでいいと思うぜ」

承太郎は普段通りの声で提案する。
その言葉を受けて、真田が、阿虎の肩をぽんと叩く。

「それじゃあ、これまで通り、お前に任せたぞ。やれるな?」

阿虎は、少し考えるような仕草をした後、力強く頷いた。
その場を締めるように美鶴が一歩前にでて、力強く言う。

「それでは、ここに改めてタルタロスの攻略を宣言する!!」

―――この瞬間から、真のタルタロス攻略がスタートした―――

To Be Countinue ...

52 :エニア ◆dQavwiTBjo :2007/06/17(日) 03:18:36 ID:ZmCZYl2k0
以上、投下した!
感想にレス返してないけど、読ませてもらってますし、力にもなってます。
平凡な言葉だが、ありがとうと言わせていただく。

53 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 09:08:06 ID:bjXHnPXKO
>>52
GJ!
そりゃあタバコぐらい大目に見なきゃなww

54 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 09:23:54 ID:8P6HB4sP0
腹の底から“GJ&待ってました”の笑いが出てしょうがねーぜッ!

55 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 12:27:58 ID:Peya8mEv0
承太郎の授業、俺も受けてみたいなあw
あの寡黙だけど口の上手い彼がどんな話をするのかが楽しみだ。
承太郎の授業中に早弁とかしてたら入院だろうなw

学園モードから次はシリアスモードに移行ですな。
こっちも楽しみ。

56 :ふら〜り:2007/06/17(日) 19:23:58 ID:9lrqUlmb0
>>邪神? さん
全くもって久々な光景ですな。そして忘れがちな「ケンシロウは暗殺者」。あれだけ豪快な
殺し技の数々、暗殺もクソもないって気もしますが。でも確かに、能力的には戦い以外にも
いろいろできるはずの彼。治癒とか攻撃補助とか。あの外見で僧侶系ってのも何ですけど。

>>クリキントンさん
お、来ましたね次の連中も。のっけからサイヤ人側と噛合ってるらしいのは地球側にとって
吉報。そしてベジータがえらく大人しく協力的、かつ知能的になってて頼もしく、今のところ
見通し明るいですね。けどスノウはもちろんターブルとて、まだまだ底を見せてはいない、か。

>>ネウロさん(御名前何卒)
ムダに深い知識を駆使して無意味に会話を掘り下げていくのは好きなパターンですけど、
本作はなかなか徹底してますねぇ。内容は生々しいのに双方共に態度が乾いててその
ギャップがまた楽しい。どうやら唯一普通人(に近い)ヤコに突っ込みを頑張って貰わねば。

>>エニアさん
帝王の教室、気合入りつつも楽しそう。あと承太郎、確かにいろんな面でゴルゴっぽい。
そういや先生のあだ名付けについて、妙にセンスいい奴っていたなぁとほのぼのしつつ、
>重要なのは、欠けた部分を補える仲間を持つ事、
>そして自分の長所を発揮できる闘いのスタイルを持つ事だ
含蓄あり過ぎなお言葉。それができなきゃ、今この時この場所で生きてませんもんね彼は。

57 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 22:21:08 ID:qAGPvBLC0
お疲れ様です、エニアさん。

承太郎の厳しさと優しさがほのぼのとした授業から伝わってきますな。
何処へ行っても中心となってしまう天性のスター性を持つ完璧超人。
彼が先生なら、校内暴力とか学級崩壊とか絶対に起こりませんなw



58 :作者の都合により名無しです:2007/06/17(日) 23:05:47 ID:xbG+5TWE0
とりあえず「伊織」「順平」って名前に笑ったw

あとネウロのssいいね。
味が良く出てる。

59 :作者の都合により名無しです:2007/06/18(月) 01:00:58 ID:k53kX7ka0
やっぱり承太郎は見てると爽快感あっていいわw

60 :作者の都合により名無しです:2007/06/18(月) 08:13:35 ID:rib3qQFr0
ネウロの人、凄く文章うまいな。
色々と豆知識とか織り交ぜて、読ませる工夫をしてる。
やっぱりカマイタチさんかな?
新人さんなら凄いや。

61 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:18:20 ID:ENXEjinu0
第017話 「忍法無銘伝(後編)」

「忍法火消し独楽。(ひけしごま)──」
くの字に体を折り曲げた根来の襟首から、するすると出てきて、首のうしろで回りだした物が
ある。
独楽だ。幅も高さも二寸ほどのそれは、びゅうびゅうと速度を上げて風をまきおこし、迫りく
る真赤な五本の稜線をことごとくあらぬ方向に吹き飛ばした。互いを打ち合いながらもつれ
あい、とりとめなく垂れた指かいこは、すでに炎を失っている。……
「いかに繕おうと所詮は炎と糸。防ぐ事などあい容易い。そして」
ふたたび腕を振り下ろさんとした無銘ではあるが、根来の水死人のように生白い唇から何や
らびゅびゅっと吹きかけられると、名状しがたい苦鳴をもらしながら墨染めの裾をひるがえし、
眼を抑えたきりぴたりと動きをとめた
「忍法逆流れ(さかながれ)。──」
傍観する千歳にはわからなかったが、この時、無銘の視点は天地が逆転していたのである。
目はどうして見えるのか。それは物体に反射する光が、角膜、眼房水、水晶体、硝子体の中
で順に屈折し、最後に網膜で像をむすぶからだ。むろんそれは光学上倒立しており、事実、
乳幼児期においては、天地倒立した映像を見るという。……
むろん人間は、成長の過程で、倒立した映像を脳によって直立させることを学習するが、しか
るに根来の唾液は、人の目に入れば角膜に浸透し、その内側の眼房水を逆三角形のプリズ
ムのように凝結させ、いわゆる逆さメガネの特殊な光の屈折をもたらし、視界を逆転させるの
だ!
かかる忍法により無銘は、眼前で床が天にのぼり天井が地上におち、まるで倒立して頭をた
れたみたいに脳髄へ血流が逆行するような錯覚すらおぼえ、混迷をきわめた。
根来は金色に光るシークレットトレイルを床につきたてると、それを支点にばっと天井におど
りあがった。
そのまま天井へ蝙蝠みたいにはりつくと、顔右半分にひた垂れた三角の前髪も元のまま、
冷然とした面持ちで無銘をみおろした。

62 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:26:04 ID:ENXEjinu0
もとより今いる無銘は、ヘルメスドライブからあらわれいでた影にすぎない。ならばある程度
忍法をつかわせた方が得策なのだ。……いかなる物であろうと、ひとたびその正体を白日
にさらせば、ベールがみるみるはぎとられ敵意をもろに受けてしまう。というのは、最近のあ
る省庁に対する国民感情をみれば明らかであろう。
と同時に、根来の心中にふつふつと耐えがたい欲求が生まれた。
もとより任務第一の根来であるが、幻妖のわざをふるう無銘を前に、思わぬ欲が出た。
どうせゆるゆると闘って、手の内をひきだした方が得なのだ。もとより先ほどの偽防人の最
期を見てもわかるように、ヘルメスドライブよりあらわれいでた影どもは、一撃で屠られるよ
うできている。だがあえて斃さず根来自身の忍法を囮に、かかる相手が持つわざをことごと
く暴きたて、仲間が無銘の本体と有利に戦えるよう、対策を練るべきではないのか? いや
いやしかし、当面の任務達成は病院地下に侵入した敵の撃退あらばこそ。付記するに自分
が入院中なのを思わば、短期決戦こそ望ましい。……
以上のような軽い懊悩を覚えた根来は、実に手早い行動に出た。
唇を尖らせるなり、ひゅーっと息を吸ったのだ。
刹那、無銘も文字どおりの異口同音を発し、床と天井、ナナメに相対する彼らの中間点で見
えざる空気の奔流がばしりと爆ぜた。あとは甲高い音が千歳の耳に残響するのみ。……
忍法吸息かまいたち。──息を吸う事で真空の渦を作りだし、相手の顔を血味噌と化す驚く
べき魔技だ。根来はこれによって無銘が斃れればよし、よしんば斃れずとも何らかのわざを
引きだす事を期待してはいたが、まさかまったく同じ技を使われようとは! そして忍法逆流
れに幻惑しながらも、正確に迎撃しようとは!
臍の緒切って初めて直面した意外な事態に、根来は無愛想な三白眼をすうっと細めて愉悦
の色をうかべ、腕組みしながら唇の端を猛禽類のようにニンマリ引きつらせた。
──できる!
平素冷然としている彼ではあるが、脳髄のほとんどを占めているのは、たとえば芸術家や音
楽家がみずからの才覚をもって何らかの芸術品を生みだそうとする、はなはだ社会不適合な
いびつで苛烈な気魄なのだ。根来も武装錬金や忍術を縦横に駆使して、任務を合理的に達

63 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:27:49 ID:ENXEjinu0
成する事こそ喜べど、倫理はひどく薄いから奇兵として戦団から扱われ、再殺部隊という場
末に追いやられている。ただし、
──やれば際限がない。
──やらねば際限なく悪くなる。
と、無尽蔵に生まれるホムンクルスに対して、最大97人の錬金戦士しか擁せない戦団の
圧倒的不利、物理的不合理を千歳に語りながらも、戦団自体にはしたがっている奇妙な点
もあるが、しかしこの場においては、生来の自制のなさ、忍法勝負への甘美な誘惑が、春の
夜のように脳髄をしびれさせつつある。ああ、まだ二十歳とうら若い根来にとっては、術技を
ふるう事こそ法悦。……
「忍法紙杖環。(しじょうかん)──」
懐から誓いのように真赤な一塊をほうり投げつけると、それは中空で幾重にも分裂し、蓮の
実みたいにばらばらと拡散しつつ、無銘に襲いかかった。
一口にいえば環だ。大樽に使えそうな大きなものもあれば、子供の頭がようやく納まるぐらい
の中ぐらいのやつもある。指一本かろうじてくぐり抜けそうな小さな輪もあり、大小さまざまな
それらは、黒子のような無銘の頭や胴体、山鳥竹斎みたいにとびあがった足にからまりつい
て、皮膚にべとりとつくやいなや、環同士びったりと膠着した。
……これは根来自身の血にひたした観世縒(かんぜより)なのである。縒はこよりを指し、観
世縒というのは仏像奉納用の縒だ。寺社建立の金品を集めた者が、その名を記し納めると
いう。
さらには忍法紙杖環、錫杖の頭部にかかっている数個の環になぞらえられているというが、
頭からつま先まで真赤な環におおわれ、芋虫みたいに身動きことごとく封じられている無銘
には、知るべくもない。
「拘束完了」
根来の薄黒い血がふつふつと湧き立った。当夜の忍法争い、いよいよ極致に達さんとしてい
る! はたしていかなる怪奇のわざが現れいずるのか!
「さあ、貴様の忍法」
とくと見せてもらおう、そういいかけた根来は、たまぎる思いでみずからの肩口を見た!
そこには円錐形の物体が、深々と突きささっていた!
その正体は何か! 目で緩やかに観察した根来は、細い瞳をみるみると驚愕に見開いた!
天井! 彼が足をつき、逆さに垂れている天井が、奇怪な円錐状に変化して、肩口をつらぬ
いている!

64 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:29:09 ID:ENXEjinu0
天井は、まるで絵を紙ごと引っ張ったような不自然な形に尖っている。すなわち、建築材の
硬度などまるで無視し、飴細工を加工するがごとく、なめらかに尖っている!
ダークブルーの再殺部隊の制服がじんわりと湿り、床に赤い珠をふらせていく。
すばやく円錐を抜きさった根来だが、と同時に見慣れた稲光がバチバチと根来の足元から立
ち上り、再度天井が隆起した!
とっさにシークレットトレイルの特性を以て、亜空間に退避した彼ではあるが、今度は真暗な
空間が、ぎりぎりと錐みたいに尖って彼を襲う。しかも天井とは違い、四方八方から際限なく
極太の円錐針がせまってくるのだ! ああ、こうなってしまっては、かえってこの万能の退避空
間のほうが、現世よりも危険きわまりない。
以上の判断で、亜空間をとびだした根来ではあるが、天井に足をつけば天井が尖り、壁に
随身すればまた尖る。床もしかり。あたかも地獄の針山がここに現出したかのごとく。……
どうやら、まずは根来の作った亜空間が錐と化し、現実空間をも巻きこんでいるらしい。
「古人に云う」
くぐもった声を皮切りに、無銘を覆いつくしていた環がめらめらと燃え盛り、火の粉がちった。
忍法赤不動。体温を上昇させ、炎を巻きおこす驚くべきわざ!
「忍とは、いかなる修行にも、いかなる秘命にも、刻苦隠忍、ひたすら耐え忍ぶこと」
根来が不愉快そうに片眉をはねあげたのは、この異常事態や傷の痛みによるものではなく、
「忍」を名にもつ彼への痛烈なるつらあてに聞こえたのだ。
ああ、忍法争いに心うばわれ、かかる窮地に陥った迂闊さ!
一撃で倒していればこうはならなかった!!
「我が初撃、何故に忍者刀に火花を散らしたか」
無銘のいうのは、根来と彼がばっと交差した後のことだ。編笠から矢がミサイルランチャー
みたいに轟々と射出されたのより少し前のこと。……
「無銘が弐たる鉤縄が掠ったゆえにや、特性はいま見事発動せり。忍法争いなど所詮はそ
の時間稼ぎ。……」
根来はシークレットトレイルで、襲い来る極太の円錐針に応戦する。
されどもとより入院中の根来だ。万全でないゆえに、襲いくる針山を思うように迎撃できず、
しかし針山地獄は稲光とともに彼を襲い、収まる気配など到底見えぬ。

65 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:30:33 ID:ENXEjinu0
しかしかかる騒ぎに、はたして千歳はどうなっているのか。
彼女を振りあおごうとした根来の左掌に、壁からの針山が刺さり、ざくりと裂けた。
シークレットレイルを握っていた右手の指にも、床の針山が刺さり、ざくりと裂けた。──
根来は、陰鬱な瞳を苦鳴にけぶらせながら、すううっと身を浮きあがらせた。
そう、彼の身はまさに地面と水平にうきあがり、天井すれすれの位置を滑空した!
なんという怪異! 端倪すべからざる魔人のわざ!
そうやって彼は、肩口や両手から血をぼたぼたと床におとしながら無銘の頭上をとおりすぎ、
少し距離って着地するやいなや、両腕に約五十センチばかりの間隔をとって前へ突き出した。
左手は北へ二十センチ、それから東へ二十五センチ、さらに北へ二十センチ。
右手は西へ二十センチ、それから北へ二十五センチ、さらに西へ二十センチ。
やがて巨大な卍の真赤な文字が、床にえがきだされたのは、上記の根来の腕の動きにつれ
て、赤いしずくがぽたぽたとしたたり落ちたからである。──

■■■  ■       注:■□はいずれも一辺につき五センチとする。
   ■  ■
■■■■■
■  ■
□  ■■□←右手初期位置。

左手初期位置      みんなも北を向いて実際にやってみよう!

もとより整然としたよく透る声を、しかしこの時ばかりはやや消沈させつつ、根来は叫んだ。
「忍法火まんじ。──」
すると卍の中心から、蒼然とした炎がメラメラと燃えあがり、やがてそれは先ほど根来がおと
した血痕を、導火線をつたう炎みたいに疾駆しながら、無銘に迫る!
もはやかかる羽目におちいった以上、無銘の影を断つほかない!
「乾坤一擲、されど余技にすら至らず」
無銘はくいっと編笠をなおすと、キラキラ光る薄氷をゆるやかにまたいで、そのまま壁の前
に立った。そこには根来の血痕があるから、いずれ炎に呑まれるのは必定だ。

66 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:42:47 ID:ENXEjinu0
また間違えたorz ネゴロ終盤から全然訂正してない。

>>65の8行目以降は、

少し距離って着地するやいなや、両腕に約六十センチばかりの間隔をとって前へ突き出した。
左手は北へ二十五センチ、それから東へ五十センチ、さらに北へ二十五センチ。
右手は西へ二十五センチ、それから北へ五十センチ、さらに西へ二十五センチ。
やがて巨大な卍の真赤な文字が、床にえがきだされたのは、上記の根五来の腕の動きにつれ
て、赤いしずくがぽたぽたとしたたり落ちたからである。──

■■■  ■       注:■□はいずれも一辺につき十センチとする。
   ■  ■
■■■■■
■  ■
□  ■■□←右手初期位置。

左手初期位置      (また間違えるなんて)ついてないね! 紙ヒコーキ先生に命中ぅ!


67 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:45:19 ID:ENXEjinu0
しかし無銘は迫る炎など意に介さず、掌を壁にあてるとツルリとひとなでした。
するとどうであろう。まるで水滴にくぐもる鏡をなでたように、無銘の手の軌跡だけが、まばゆ
い銀を露出し、暗い廊下にキラキラと光を反射した。
「忍びの水月。──」
つぶやく無銘の掌にはいかな作用が起こっているのか、銀の塗膜にうっすら湿り、幻惑的な
光をはなっている。そして彼は右手のみならず左手の指からもビラビラと指かいこを伸ばすや
いなや、腕全体を指揮者のように振りまわしはじめた。
名が示すとおり、指から伸びる指かいこだ。だから掌と同じく銀の塗膜にうっすら湿っている。
それが稲妻のようなはやさで、床をほうきのように這いずりまわる、天井になすりつけられる、
壁へぐにゃぐにゃと押しあたる、手すりをこすり蛍光灯をもなでる。
あらゆる病院施設がそうされるものだから、あたった場所は先ほど掌でなでた壁のように燦
然と銀光まぶしい鏡と化してゆく。──
やがて無銘の手の動きがとまると、千歳も根来も息をのむ思いでその光景を見た。
床、天井、壁、手すり、蛍光灯。
鏡の破片をむぞうさに打ちすてられたように、無銘を映し出している。
もはやこの一帯は万華鏡のるつぼだ。鏡が無銘を映し出し、鏡は鏡を映し出し、無限とも思
える反射のループが大小さまざまの無銘を無数に映し出している。 
そしてこれは幻覚などではない。なぜなら、疾駆する忍法火まんじの蒼いかがやきすら乱反
射し、千歳や根来の頬に水面のようなさざなみを浮かべたからだ。
やがて火まんじは、ぱっと無銘を呑みこんだが、しかしそれは鏡に映った無銘の虚像であり、
鏡をむなしく割ったにすぎない。
「我が師父・総角主税の厭いし物、それは鏡。よって彼の前では禁じているこの術……攻め
込むコトは困難。我はすでに鏡中に在り。姿はあれど実体は見せず」
声こそするがはたして無銘はどこに消えたのか。いや、彼の姿じたいは無数に見えてはいる
が、一つをのぞけばすべて虚像であるから、根来は彼の姿を見失っているといえよう。
「そう、厳密なる意味においては、亜空間からの姿一つ見せない攻撃、こちら側に攻め入る
コトができない以上、防ぐコトしかお前に手立てはない」

68 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:46:25 ID:ENXEjinu0
これまた根来にとってはつらあてだ。この台詞はかつて彼が、横浜外人墓地で剛太に投げ
たものではなかったか?
そうこうしている間にも、床がぎりぎりとねじり尖って根来を襲う。無銘のいわくの「攻撃」だ。
疲弊し、無銘のつらあてに気をとられていた根来だから、これはさすがに避けきれない。胸
にせまる円錐を、半ば諦観の眼差しでぼうっと眺め。──
「真・鶉隠れよ」
目の前に立ちはだかった人影の、まろやかな匂いに、しばし心をうばわれた。
千歳だ。ヘルメスドライブでがっきと円錐を受けとめている所から察するに、先ほどの騒ぎも
これでしのいでいたと見える。
そして先ほど根来からわたされたマフラーを首にまいているのは、余人には理解できぬコス
プレ癖によるものだ。彼女は蝋燭の炎に誘引される羽虫のように、奇抜な服装に心うばわ
れてしまうのだ。そして羽虫が炎熱を知覚できずやがて破滅に身を焦がすように、千歳も自
らの年齢と衣裳の釣りあいを考慮する機能をまったく喪失している。そも、まともなファッショ
ンを考えたところで、アニメ版の設定画のように黒タイツを履いてガニ股をする千歳だ。
ならばあれこれ口出しして機嫌を損ねるよりは、好きにやらせておけばよい。婦人とうまく
やるコツは結局それなのだ。──
「私の仮説が正しければ、この状況はそれで収まるわ」
「承知。──」
一瞬根来は、彼らしからぬ表情を少しうかべたが、すぐさまシークレットレイルを床に突きたて
稲妻とともに埋没させた。この時、何かが焼き切られるような音がしたが、それも気にする暇
があらばこそ。──この状況では気にしようもない。
やがてシークレットトレイルは、やや離れた場所より戛然と飛びだし、金の残像をびゅうびゅう
と引きながら、鏡を次々に割り砕き始めた。
ふしぎな事に、それとほぼ時を同じくして円錐の攻撃は止み、同時に千歳がマフラーをしゅる
しゅると解いて、ヘルメスドライブを手から外して、マフラーで布ぐるみにしたのもふしぎな話
だ。
彼女はちょっと考えてから、根来をふり返り、それからがしゃがしゃ割られる鏡の中の無銘を
見て、ぽつりと呟いた。
「忍法無銘。──という所ね。あなたたち風にいうと」

69 :永遠の扉:2007/06/18(月) 21:48:26 ID:ENXEjinu0
千歳は思わぬ行動にでた! 根来のマフラーで布ぐるみにしたヘルメスドライブを、亜空間に
投げいれたのだ!
投げいれた? いや、もとより、根来のDNAを含んだもの以外は排除するシークレットトレ
イルの亜空間だ。対するヘルメスドライブは、しょせん千歳の精神の具現物にすぎない。な
らばその両者がぶつかればどうなるか? かつて剛太が外人墓地でされたように、ヘルメス
ドライブは、亜空間の入り口で稲光にはじかれるのみで終わったであろう。
しかるに、ああ、はたせるかな! この一見不可侵に見える亜空間も、根来のDNAをふくむ
ものでさえあれば、いかなる凶器をもとおしてしまう!
かつて剛太も、自分の武器に根来の血液を付着させ、亜空間にひそむ根来をねらいうった。
そして根来は亜空間でも脱げぬよう、着衣にくまなく毛髪を縫いこんでいる。マフラーとて例
外ではない。
そして千歳は、自らの武装錬金が亜空間に沈み込んだのを見はからい、手首を微妙にくい
くいと返すと、マフラーのみを引きぬいた! 結果、ヘルメスドライブは稲光とともに亜空間
より排除され、からからと床にころがった。
はたしてこの行動が何を意味するのか。余人にはとうてい伺い知ることはできない。
だがどうであろう。あれほど一帯を占めていた鏡は、すべて忽然と消えうせた!
残ったのは、廊下の中央にぽつねんとたたずむ無銘だけだが、彼自身もさらさらと風化を始
めている。
不可思議きわまりない。いったいいかなる現象が巻き起こり、こうなったのか?
「……見抜いたようだな」
「ええ。ヘルメスドライブからの敵の出現。シークレットトレイルの亜空間の錐への変化。この
二つはあなたの武装錬金の特性によるものね? つまり元を断たない限り、同じ事が繰り
返される。だからこうしたわ」
「明察。……」
うなる無銘を前に、千歳は傍らの根来をそっと促した。
「助けてもらった事だし、とどめはあなたに譲るわ」
「捨て置け。放っておいてももはや消え去る影なのだ。大体にして元を正せば貴殿の手柄だ」
「でも」
「譲る事で礼とする」
根来はしばしの仇敵がチリと消えゆくさまを、寂然と眺めた。
(お礼? 何の?)と千歳は小首を傾げた。
それはともかく、根来・千歳、勝利。──

70 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/06/18(月) 21:50:09 ID:ENXEjinu0
>>66もミスってるorz なんだよ全然訂正してないって。成長してない、だ。
誤植訂正で間違えるとか、これなんていうゲーメスト? なスターダストですお久しぶりです。

今回の忍法の元ネタ一覧。いいたいコトはいろいろあるけど、そっちはブログで。

忍法火消し独楽           … 忍法双頭の鷲の根来忍者 五明陣兵衛
忍法逆流れ              … 忍法しだれ桜の根来忍者 本多織部
忍法吸息かまいたち(根来)    … 海鳴り忍法帖の根来法師 雲取坊
忍法吸息かまいたち(無銘)    … 甲賀忍法帖の伊賀忍者  筑摩小四郎
忍法紙杖環              … 忍法蛸飛脚の根来忍者  可児千七郎
地面と水平に浮かび上がる忍法 … 忍法しだれ桜の根来忍者 風祭兵蔵
忍法火まんじ             … 伊賀忍法帖の根来法師  空摩坊と破軍坊
忍びの水月              … 風来忍法帖の風摩忍者  累破蓮斎(かさね はれんさい)

前スレ>>349さん
あの陰鬱な感じが風太郎世界にぴったりですね。ムッツリスケベだしw 性欲があるというの
はあの世界にとっては重要なファクターですよ。ところで忍法のチョイス、マイナーすぎでしょうか。
どうも根来がメインな作品は絶版される向きがあるので(卍、海鳴り、双頭の鷲)、知名度低し……

前スレ>>350さん
ぜひコレをきっかけに! 入門としては甲賀忍法帖がいいですよ。個人的には忍法月影抄ですね。
短編連作で読みやすく、ドラマもバトルもテンポがいい。絶版ですが忍びの卍も蝶・おすすめ!
根来は爆爵や秋水についで好きなので、どうしてもw けど忍法満載なのはちょっと強すぎていけないかも

前スレ>>351さん
いやいや、新設定に喜びながらプロットを変えるのもなかなか。ちなみにムーンフェイスは
極力描写を避けております。というのも、何か描いたあと、小説やらアニメで公式設定が出
てきたらとても恥ずかしくなってしまうので…… 千歳根来は、乾いた感じが愛おしい。

前スレ352さん
エニアさんにほとんど言われたw あ、AA系の板の練習スレに貼って確認してみるのも手ですね。
まー、それをやりつつ文章で間違ってる自分です。だから罵ってください。

71 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/06/18(月) 21:52:46 ID:LC5kjChL0
ふら〜りさん
振り返ってみれば、冷静キャラ三人のバトルってバランス悪すぎですなw すさまじい心情の
吐露もなければ熱い気迫の炸裂もない。うーむ。本当に映像にしたら囲碁中継みたいに静
かな戦い。あ、でも、貴信が喚きまくってた後にこういうのがあるから、バランスとしてはいいのかも。

銀杏丸さん
>抗争など、損害ばかり大きくて利益が少ないのだから。
まったくそうです。そしてそこに思い至る紫龍はもはやただの露出狂じゃないのだとしみじみ。
だいたい聖闘士に喧嘩売るコトじたい自殺行為。まだ錬金の戦士を襲う方が合理的ですよ。
核鉄奪って発動させれば、いろいろスゴいの出てきますしw 

雛苺はあんないいコなのにorz 設定の共通化は、自分の構成力では無理ですね。
どうしても好きな作品への愛情が出すぎて、他の作品をないがしろにしてしまうので……
スパロボはその点いろいろ凄かった。下手すると最後に「それも私だ」が出てきますがw

ハロイさん
うむうむ。やはり作られた存在は心のなさに悩まないと。この欠如した感じがツボですね。
それから紅茶を飲むシルバーのツンデレっぷりが、脇役大好きな自分にはナイスです!
似たような味とか渋いとかいいながら飲んでるのが可愛い。作中で一番好きかも。

72 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:05:19 ID:A2+f/5E30
「まいったな。目撃されるのはイレギュラーだ」
 ──まったく、ついてない。
 その日の夜、俺は全死の持ってきた『仕事』──殺人の依頼に従って有栖川健人という高校生を殺害した。
 殺害自体は遅滞も瑕疵も無く完了した。背後から襲って拳大の石で殴殺。まったく楽なものだった。その後が問題だった。
 こともあろうに、その犯行現場をリアルタイムで目撃されていたのだ。
 全死のもたらす『仕事』は、全死の示したプラン通りに遂行する限りに於いてはまず絶対に露見しない。その点に関しては全死を信頼している。
 だとしたら、これはいったい何の間違いだろうか。
 全死だって人間だもの、時に間違いもするだろう──などといった牧歌的な解釈は即座に消えた。
 俺としてもそうであって欲しいのはやまやまだが、飛鳥井全死は間違えない。
 つまり『人間』の定義をそこに求めるなら、全死は人間ではないのだ。(まあ俺はそんな意味不明の指標で人間性を測ったりはしないが)
 ならば、いったい間違えたのは誰だろうか。
 俺はややうんざりした気持ちで目の前の二人組を見た。
 なんとも不釣合いな男女のカップルだった。
 女のほうは一目で学校の制服と分かる衣装に身を包んだ十代後半で、すなわち女子高生だ。女というよりは少女氏としたほうが正確な表現だろう。
 制服を着ているからといってそれが女子高生と必ずしもイコールではないことは承知しているが、それは措く。正直どうでもよかった。
 男の方はといえば──今ひとつよく分からない。
 まず会社人には見えない雰囲気を漂わせているが、かと言ってじゃあなんだと聞かれても俺にはさっぱり見当もつかない。
 やはり「どうでもいい」というのが本音である。
 現状の問題は、このイレギュラーにどう対処するか、ということに尽きる。
 そして、俺の方針はすでに決定していた。
 一度捨てた石を拾い、十歩の距離を五歩で駆けて少女へと近づく。
 俺の意図を理解しかねているのか、俺という絶対的な脅威の接近にも関わらず、少女は身じろぎひとつしなかった。
 その頭部めがけて石を無造作に振り下ろそうとしたとき、背筋のあたりに敵意を感じた。
 ほとんどなにも考えずに屈んだその真上を、風を切る勢いで手刀が通り過ぎていった。
 バランスを崩しかけるが足を踏ん張り、体勢を保つ。その反動で二、三歩たたらを踏み、少女の脇をすり抜けるようにして背後に回った。
 顔を上げた瞬間、その視界に拳が飛び込んでくる。今しがたの手刀と同じく、カップルの男の方が俺に攻撃を仕掛けていた。
 首を捻ってそれをかわし、内心でわずかに感心する。
 ──へえ、自分の身よりも彼女を守るのか。

73 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:06:25 ID:A2+f/5E30
 だったら、俺はなおさら少女を優先的に殺さなければならない。
 ここで男に攻撃目標を切り替えたら、少女に逃げられる可能性が大きいからだ。
 逆に、俺が少女に狙いを定めている限りは、男は彼女を置いて逃げるような真似はしないだろう。
 そう判断し、男と俺の間に少女を挟むような位置に移動する。
 少女を盾にするとは我ながら卑怯な発想だと思うが、
今のこの状況に騎士道精神を持ち込むほど俺は不真面目な人間ではない。これは遊びでやってるわけではないのだから。
 だが、そこで、俺の想像を超える事態が発生した。
 男が再度拳を振り上げ、それに備えて身体の力を抜いた俺の目の前で、男は少女を──殴り飛ばした。
 げふ、などという間抜けな息を吐き、少女は地面を転がって道路脇の電信柱に激突した。
「邪魔だ、ヤコ」
 目を回している少女に向かって、男はひどくあっさりした口調で告げた。
 この男が彼女を守っている、という見解は誤まりだったのかも知れない。
 さすがに唖然とするが、新たに敵意が生じるのを感じ、軽くスウェーバックする。眼前一センチを男の指が掠める。
 先程から男の動きには淀みが無い。その猛攻に、俺は手にした石を振り下ろす機会を見出せないでいる。
 だが、俺は少しも焦ってはいなかった。
 どうやら男は俺を倒そうとしているらしい。ならば、俺はその攻撃をかわし続けるだけだ。
 たとえ今は隙が無くとも、永遠に攻撃を回避していればいずれ隙が出てくるだろう。
 俺にはそれが出来る。なぜなら、俺は──。
「……貴様は何者だ?」
 ふと、男が攻撃の手を休め、そんなことを聞いてきた。
 答える義理は無いが、おしゃべりに付き合うのも様子見くらいにはなるだろうと思い直す。
「個人的な身分を明かすほど微温的な関係じゃないと思いますけど、お互いに」
 男はふむ、と軽く頷き、
「ならば質問を変えよう。貴様の戦闘技術……いや、違うな。そう、回避技術だ。
我が輩の攻撃をそこまで凌ぐ人間など、そうザラにいるものではない。それはどこで身に着けた?」
 なんと答えたらいいか迷い、頭を掻くが、用意してある答は一つしかないのでそれをそのまま言う。
「物理的攻撃は俺には通用しませんよ。それが俺の『能力』です。
俺は『不可触(アンタッチャブル)』なんです。『敵意』に敏感な体質なんでね、自動的に回避してしまうんです」

74 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:08:14 ID:A2+f/5E30
 そう──俺は『不可触(アンタッチャブル)』だ。
 『能力』という表現を用いているが、それは他人に説明するときの便宜的なものであり、実際はこの世界の法則──摂理に根ざしている、いわば『現象』だ。
 俺の意思やスペックとは無関係のところで、俺は敵の攻撃を完璧に回避できるのだ。
 それはこの世界の根源によって設定された絶対的な法則であり、この世界がこの世界として存在する以上、俺は無敵なのだ。
「『不可触(アンタッチャブル)』か。実に、実に面白い……」
「そうですかね。俺はあまり面白くありませんが」
 肩をすくめてみせようとするが、手にした石がどうにも邪魔だった。
「そんなことより、あなたの連れの女の子、目を覚ましそうですよ」
 嘘である。俺の期待通り、男はそちらへ首を巡らせ、ほんのわずかではあるが俺に対して隙をさらけ出した。
 それで充分だった。
 俺はくるりと踵を返し、後も振り返らずにその場から立ち去った。
 男と少女の口を封じることはとっくに諦めていた。
 摂理は俺に『不可触(アンタッチャブル)』という真に無敵の能力を与えた。
 無敵とはどういうことか。
 それは言葉通り、「敵を作らない」能力である。戦闘に勝利するためではなく、そもそも戦場に上がらないための能力なのだ。
 目撃者を二人も残していては不安といえば不安だが、 あのままだらだらと戦闘を続けていても、
時間の経過とともに人目を忍ぶことが難しくなり、危険は増大するだけである。
 ならば、さっさと見切りをつけて逃走を図ったほうがまだ建設的な選択だろう。
 俺は戦闘狂でもなければ殺人狂でもない。合理的な理由もなしに人を殺すほど攻撃的な人間ではないのだ。
 走りながら時折振り返るが、追っ手がついている様子は無い。
 歩調を緩め、周囲を見回して現在地を確認する。JRの駅に続く通りに出ていた。
 出来るだけ何気ない風を装って凶器の石を身体の陰に隠し、駅前のターミナルの正面の交番の裏手にそれを捨てた。
 呼吸を整え、立ち番の警官の前を通り過ぎ、suicaで改札を抜ける。
 ホームで電車の来るのを待ちながら考えることはと言えば──全死は俺の部屋にまだいるのだろうか、ということであった。
 いなくなっていたらいいな、というのが俺の希望だ。
 本日分の俺の許容値はもう限度いっぱいである。これ以上のイレギュラーは勘弁して欲しかった。

75 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:10:16 ID:A2+f/5E30


 ──なにか、「今すぐ目を開けないときっと死ぬ」という猛烈な悪寒を感じ、はっと目を覚ますと、そこには小鳥がいた。
 ただしその小鳥はハリネズミのように全身から鋭い針を無数に生やしており、今まさにわたしの顔に降り立とうとしていた。
「うおおおい!」
 反射的に振り払い、手の甲に鋭い痛みとぐさぐさぐさっという嫌な感触が走る。
「痛ぁぁぁぁぃ!」
 七転八倒しながらなんとか身体を起こすと、ネウロがつまらなさそうな顔をしていた。
「なんだ、起きたのかヤコ。せっかく我が輩が特製の目覚ましで貴様の意識を呼び戻してやろうと思ったのに。
その鳥は魔界の愛玩動物でな。口から楔型の針を吐き、ホチキスにもなる優れものだ」
 剣山みたいな小鳥がコココココココと気味の悪い鳴き声をあげた。その嘴から飛び出すコの字型の針がコンクリートの塀に突き刺さる。
「…………」
 なんかもうツッコむ気力も失せた。
「──あの人は?」
 ネウロは答えなかった。
 恐る恐る路地を覗くと、やはりそこには死体があった。
 ぐちゃぐちゃの挽き肉みたいになってしまった顔の中央の二つの窪みが、恨めしそうに虚空を見上げている。
「笹塚さん……呼んだほうがいいよね」
 わたしはポケットから携帯電話を取り出し、知り合いの刑事さんに連絡を取ろうとする。
「ヤコ」
「え?」
「『謎』の気配は確かにあったのだ。だが『謎』は生まれなかった」
「……それなんだけどさ」
 と、わたしはちょっと言葉を切った。
 その先を言うには、それは──あまりにも不可解すぎた。
 だけど、『あの人』を……あの殺人者を見て、わたしが思ったのは、
「あの人……『悪意』が無かったんじゃないのかな。だから『謎』が生まれなかった」
 やはり、ネウロは答えなかった。ただ、どこを見るでもなく空へ視線を移しただけである。
 携帯からは「もしもし……あー、弥子ちゃんか?」というどこかだるそうな感じの声が聞こえていた。

76 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:12:53 ID:A2+f/5E30


「どうした、ヤコ。なにをそんなに浮かない顔をしている」
 ネウロが目の前の『謎』を取り逃がした日から数日経ったある日の昼下がり、わたしとネウロは繁華街の喫茶店にいた。
 ネウロは定期的に『謎』を解く(くう)ために、わたしを矢面に立たせたかたちで「桂木弥子探偵事務所」というなんとも剣呑な事業所を開設している。
 そこに持ち込まれる雑多な事件の中からネウロのお気に召す『謎』を見繕っては、わたしをそこまで引きずり出すのだ。
 「我が輩は魔人ゆえ人間界で目立つのを好まない」という傍迷惑な理由でもって、それらの『謎』はわたしが解決したことにされている。
 今日も、その『謎』を一つ解決したばかりである。
 主食であり好物である『謎』を解いた(くった)ばかりのネウロは上機嫌だった。
 だが、わたしは少しも面白くなかった。
「うっさい」
 言ってから失言に気付くが遅かった。
 ネウロはにこにこ笑いながらわたしの飲みかけのコーヒーカップを手に取る。
 と、すでにぬるくなっていたはずのコーヒーがネウロの手の中でごぼごぼと活発な沸騰を始めた。
「なにが不服なのだ?」
 相変わらず満面の笑みを崩さず、その煮えたぎった漆黒の液体をわたしの口に注ぎ込もうとする。
「え、ちょ、唇、熱、熱いっていうか痛──ぎゃー!」
 半狂乱でお冷を飲み干し、なんとか生きた心地を取り戻したわたしは、まだ喉に違和感を残しながらも唇を尖らせる。
「だって訳分かんないよ! なんで笹塚さんに連絡したらダメなの?」
 あの日の夜、わたしとネウロは殺人現場に遭遇した。おまけに、(多分、口封じのために)殺されかけた。
 わたしはなぜか気を失ってしまったので詳細は分からないが、ネウロはその殺人犯を取り逃がしてしまったらしい。
 息を吹き返したわたしが警視庁捜査一課に所属する知り合いの刑事さんに電話しようとしたら、ネウロはいきなりそれを妨害したのだった。
「結局、他の誰かが警察に通報したみたいだけどさ……わたしたち、犯人の顔を見てるんだから笹塚さんに教えてあげた方がいいと思うんだけど」
「このペンペン草め」
 ペンペン草。学名、知らない。和名、ナズナ。春の七草の一種であり、おかゆはもちろんお浸しにしても美味い。
意外と知られてないがレモン汁を垂らした醤油と和えると乙なものである。
「だ、誰がペンペン草だ!」
「我が輩が誰か忘れたのか? 『謎』を解く(くう)ことこそを至上とするこの我が輩が、
何ゆえにみすみす『謎』を刑事ごときの手に渡さなければならないのだ?
それを、動物並の知能を持ち合わせていない貴様が愚かにもあの刑事に協力しようとしたから、やむなく制止したまでだ」

77 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:34:09 ID:A2+f/5E30
「口で言えよ口で! なんでわたしのケータイ逆折りにすんのよ、なんでそんな乱暴なわけ!?」
「失敬な。きちんと折り目を合わせて四つ折りにしたではないか。これほど礼儀正しい魔人も魔界にはそういないぞ」
「なおさら悪いわ! ケータイショップに持っていったらね、『こういう故意による破損は補償の対象外です』って言われたのよ!」
 そんな抗議に耳を貸さず、ネウロは椅子の前足を浮かせてギシギシやっていた。お前は授業に退屈してる中学生か。
 わたしがさらなるツッコミスキルを発動させようとしたとき、
「なあ、そこのお嬢ちゃん」
 と、背後から肩を叩かれた。
「?」
 振り向くと、それは見知らぬ女性だった。帽子からブーツまで黒づくめの異様な風体の、怖いくらいの美人だった。
 いや、実際、物凄く怖い目をしていた。
「お嬢ちゃん、あんた辺境人(マージナル)の知り合い?」
「……マ?」
「いやさ、あの愚鈍のメタテキストがちらっと見えたもんだから」
「……メ?」
「メタテキストはメタテキストさ。そいつの視座っていうのかな。わたしにはそれが見えるんだ」
 意味が分からず黙っていると、女性はこっちのことなどお構いなしでしゃべりだす。
「ん、いやま、あんなうすのろのことはどうでもいいわな。しかし──あんた、中々面白いメタテキストしてるね。
ランク付けするならBダブルプラスってとこかな。五段階評価ね。普通に生きてりゃ滅多に会えない逸材だよ。
なあ、お嬢ちゃん、わたしとお茶しない? あ、そっちの席に座ってもいい?」
 ついにはナンパまがいのことを言い出した。
「名前教えて? わたしは飛鳥井全死」
「へ、あの?」
 状況が飲み込めずに目を白黒させるわたしへ、飛鳥井全死と名乗る女性は軽く手を振った。
「言いたくないなら別にいいさ」
 そして、何事かをぶつぶつつぶやき出した。
 わたしは困惑してネウロに視線を向ける。
「……ネウロ、店出よう」
 そう言って立ち上がりかけたわたしを、ネウロは鬼のような力で椅子に引き戻した。そして、千切れんばかりの勢いでわたしの耳を口元に引き寄せた。
「待つのだヤコ。……この女から件の『謎』と同じ匂いがする。我が輩が逃した『謎』の気配だ」

78 :脳噛ネウロは間違えない:2007/06/19(火) 03:35:01 ID:A2+f/5E30
 驚くわたしの横で、飛鳥井全死はなおも何事かを口の中でつぶやき続けている。
「仔牛のブイヨン(フォン・ド・ヴォー)……鳩の血(ピジョン・ブラッド)……紅海(エリュトゥラー・シー)……オーケー、把握した」
「なにを……ですか?」
「んん? だから名前だよ。桂木弥子ちゃん、か。いい名前じゃないか」
 今度こそはっきりと意味不明だった。
「どうしたい、そんなリョコウバトが散弾銃喰らったような顔して。言ったろ? わたしはメタテキストが読めるんだ。
弥子ちゃんのメタテキストをちょっと読ませてもらったのさ。メタテキストが読めれば、名前を言い当てるんなんざわけはないよ。
名は体を現すって言うだろう。逆もまた然り。その相関関係を読み取る術さえあれば誰にでもできることさ」
 返す言葉を無くしてわたしが途方に暮れていると、ネウロが横合いから朗らかな声で割り込んできた。
「おお! 先生のお名前をご存知ですか! テレビ・雑誌・新聞で売名行為にいそしんだ甲斐がありますね、先生!」
 と、外面のよさを表に出して、にこやかに飛鳥井さんに語りかける。(それにしてはあんまりな言い様だけど)
 彼女は急に不機嫌そうになってネウロを一瞥する。
「お前には話しかけてないよ。黙ってろ。それにな、わたしはマスコミだなんて屑の塊に興味はないよ。
わたしの言ったこと聞いてなかったか? 弥子ちゃんのメタテキストを読んだって言っただろうが」
 そして、再び、何事かをつぶやく。
「絶対零度(アブソルート・ゼロ)……琥珀雷(エレクトロン)……恋の炎(ゲヘナ・フレイム)……紙片(ペイパーカット)……。
おっと、こっちはこれまた変な名前だな。漫談師でもやってるのか? なあ──脳噛ネウロ」
 ──ネウロの顔から取って付けたような笑顔が消えた。
 その代わりに、心底から嬉しそうな、そして邪悪さに満ちた……本物のネウロの笑みが浮かび上がる。
「ク……ククク……ヤコよ、これだから人間は面白い……先日の『不可触(アンタッチャブル)』とやらに続いて、今度はこの女だ」
「なんだよ、やっぱり辺境人(マージナル)を知ってるんじゃないか。そうならそうと、もったいぶってないで言えよ。
……ん? 『不可触(アンタッチャブル)』まで知ってるってことは、それなりに深い仲なのか?」
 深い仲というか、殺されかけた訳ですけど。
「フハハ……それこそ貴様の言う『メタテキスト』とやらを『読ん』だら良かろう。
その能力がいったいどういう類のものかは特定できぬが、おそらくは個人の本質に関わる情報を表面から解読出来るようだな……違うか?」
 その言葉に、飛鳥井さんも──実に禍々しい笑顔で応える。
「当たらずとも遠からず、と言ったところかな」

79 :作者の都合により名無しです:2007/06/19(火) 08:13:47 ID:puV+Olzs0
>スターダスト氏
お疲れ様です。氏が山田風太郎ファンだというのがよくわかる今作ですなw
根来が激闘している間に傍観しているだけと思った千歳が、意外と活躍し、
見事な?連携で決着したのが良かったです。千歳ガニ股なのかー。

>ネウロ作者氏
有栖川、という名前から氏はミステリ好きかな?と思いました。
作風もそんな感じだし。「アンタッチャブル」かー。恐ろしい能力だな。
原作のヤコ虐待が作内ではますます拍車が掛かってて面白いw


80 :作者の都合により名無しです:2007/06/19(火) 09:18:31 ID:dL9YEcE/0
>永遠の扉
趣味丸出しの山田風太郎忍法帖全快ですなw
前作よりも前作っぽいです。作品内作品って感じで楽しい。
また、こういう趣向を楽しみにしてます。

>ネウロ
話が進むたびに、怪しい感じが増していきますね。
ヤコはヤコっぽく、ネウロはネウロっぽい。下手したら原作より。
魅力的なサブキャラも一杯で楽しい。


81 :作者の都合により名無しです:2007/06/19(火) 22:33:45 ID:tnxo6/qM0
お2人さんともお疲れ様です。

・永遠の扉
山田風太郎といい、横山光輝といい、スターダストさんは本当にシブい趣味ですねw
前作の主役たちが鉄壁のコンビネーションで敵を撃破。
忍法合戦は派手なのに、あくまで冷静な根来がらしくていいですね。
でも、そろそろ本来の主役とヒロインにも活躍してほしいな。


・脳噛ネウロは間違えない
原作では「完璧過ぎて諦めの視線が入る」といわれるネウロにも
勝るとも劣らないオリジナルキャラですね。
人を五段階評価しながら、不気味な単語を並べながら近づき、
ネウロに興味を持たせる・・。対決の時が待ち遠しい。


82 :作者の都合により名無しです:2007/06/20(水) 00:17:25 ID:lP51jC8o0
ネウロ書いている人、絶対にカマイタチさんと思うな・・
そろそろ正体を明かして下さいよ、応援してますから

83 :作者の都合により名無しです:2007/06/20(水) 08:19:15 ID:unB/V0v80
スターダストさんはスランプ脱した感じだね
精神的に参ってたみたいだからよかった。

84 :DBIF:2007/06/20(水) 22:15:12 ID:adssJt5Q0
「神聖樹の成長速度が遅くなっている?」
「ああ。どういう理由かは知らんが、スパッツの計算上、今回の神聖樹が育ち切るまでにはまだ一週間の余裕があるらしい」
ピッコロのその言葉に、トランクスは脱力したように膝をついた。
『精神と時の部屋』の入り口である。スパッツの予測を聞いたピッコロは、トランクスを安心させるべく即座にここへ来ていた。
「ハハ・・・良かった」
「とも言ってられん。時間が出来たとはいえ、あのベジータを苦もなく倒したターブルというサイヤ人を倒せなければ、結局は
同じことだ。修行の方はどうなっている?」
「それは・・・」
ピッコロの言葉に、トランクスは口ごもった。実際のところ、気ばかりが焦って思ったように力をつけることができない状態
だったのである。
「悟飯、お前はどうだ?」
「僕も、今のところ特別に強くなった感じは・・・」
そう言いながら悟飯もまた口ごもる。しかし考えてみれば無理もなかった。この二人は悟空やベジータと違い、戦闘経験は
ともかく、自ら創意工夫を重ねて力を上げることには慣れていないのだ。強くなる過程には必ず、独力で自らの力を跳ね上げる
ことに長けた人物が側にいたのである。それをいきなり自分達の力のみで飛躍的なパワーアップをしろと言っても、そう易々と
出来るはずもない。
現にこの世界での悟飯は悟空やベジータの不在により、セルはおろかこの世界における人造人間17(19)号、18(20)号の
二人にも及ばないまま死んでしまっているし、トランクスが強くなったのもベジータとの修行の成果である。
「そうか・・・」
ピッコロにしてもこの二人とは力の上げ方がそもそも違っているため、気の利いたアドバイスをすることも出来ない。
仕方なく外へ出ると、ベジータが立っていた。


85 :DBIF:2007/06/20(水) 22:16:14 ID:adssJt5Q0
「どうだ?様子は」
「芳(かんば)しくないな。それなりに力はつけているようだが、正直伸び悩んでいるといったところか」
「バカ共が・・・!」
言いながらベジータは、ぎり、と歯を噛み締めた。彼にはもう次のレベルへ進むために必要なことがわかっているのだろうか。
それを見て、ピッコロは思わず頬をほころばせた。
「教えてやりたそうな顔をしているな」
「何?」
「強くなるための方法を掴んでいるなら教えてやれ。出し惜しみをする余裕など俺達にはないだろう」
「く・・・!」
相変わらずの難しい顔をしてその場にしばらく立っていたベジータだったが、やがて舌打ちを一つすると、傍らの壺を掴んだ。
それは過去の世界から神龍の雛形と共に持ち出した、仙豆の詰まった壺であった。
それを片手にずかずかと部屋の扉の向こうに消えていくベジータを横目に、ピッコロは悟られないくらいに小さく、くすりと笑った。
「ふん、随分と楽しそうじゃないか」

ピッコロと入れ替わるように(実際には『精神と時の部屋』の作用で数時間が経過しているが)現れたベジータの姿を見て、
トランクスが駆けつけると、ベジータは無言で睨みつけた。
「貴様ら、いつまで甘えるつもりだ」
少し遅れて悟飯がやって来てからも、変わらずトランクスを睨むベジータが発した第一声がそれだった。
「甘えてなんか・・・」
「ならばピッコロの奴に言った言葉は何だ。弱音じゃないなら言ってみろ!」
ベジータの断ち切るような恫喝に、二人はぐうの音も出ず顔をうつむける。
「今回だけは手助けしてやる。こいつを使え。どう修行するかは奴らの強さがどういうものかを考えればすぐにわかる」
そう言いながら、ベジータは片手に掴んだ壺を床に置いた。
「いいか、俺はカカロットじゃない。そう毎度貴様らの手を引いてやるつもりもない。それでも強くなりたいなら、自分で探し出す
能力を見に付けろ」
最後にそう言い捨てて、ベジータは部屋を出て行った。
少しの間、ベジータの言葉に消沈していた二人だが、やがておずおずと覗き込んだ。
「仙豆だ」
「これを使うって・・・」
壺に収められた仙豆を見つめながら、二人はしばらく考えた。


86 :DBIF:2007/06/20(水) 22:17:17 ID:adssJt5Q0
翌日、部屋から現れた二人を見て、ピッコロは違和感を覚えた。以前に部屋を利用した時のように髪型が変わっている以外に、二人とも
特別に変わったようには見えないのに、どこか違って見える。
「ふん、気付いたか」
しかしベジータにはその違いが分かるのか、皮肉な笑みを浮かべながらそう言った。
「えっと・・・どういう風に強くなったんだ?セルの時みたいに、もっと凄い変身が出来るようになったとか」
クリリンの質問に、悟飯とトランクスは一度笑みを交わしてから、二人同時に
『こうなりました』
と言った。しかし言葉とは裏腹に二人の外見に変化はまるで見られない。しかし、
「うおっ!」
二人の言葉自体に弾かれたようにクリリンが後ずさった。ピッコロも移動はしないまでも片足を引いている。
違うのだ。
超サイヤ人でもない普通の外見でありながら、二人から発せられる気は普通のサイヤ人と同等か、それ以上の大きさを持っていた。
「あの時闘ったラニというサイヤ人は、第二形態にすらなっていない状態で悟飯さんより強い力を持っていました。それは神聖樹の実を
食べ続けたから、と言っていましたが、神聖樹の実が、あくまで食べた者の眠っている力を引き出すものだと考えるなら、俺達も本来
同じだけの力が持てるはずなんです」
「でも、僕達には神聖樹の実はありません。だから、父さんやベジータさんが以前やった方法で自分の基本能力を引き上げたんです」
「え、それってまさか、フリーザの時にベジータが俺にやらせた、アレ?」
「はい」
おののいた声で聞くクリリンに、悟飯は笑って答えた。
彼らが取った方法とは、お互いに気を極限まで抑えた状態で互いの攻撃を受け、瀕死の状態になったところを相手に仙豆を飲まして
もらって回復するというものだった。
「ハハ・・・(あんなのを一年間。俺なら最初の一回でやめるな)」


87 :DBIF:2007/06/20(水) 22:18:18 ID:adssJt5Q0
次に入るのはベジータ一人ということになり、ベジータの修行の間、他の者達で今後について改めて話し合うことになった。
「俺としては、孫悟空を連れて来るべきだと思う。異星人がいつ来るかはわからんが、あの3人だけでも手に余る状況だ」
「そうですね。お父さんなら、今の状況を伝えればきっと来てくれると思います」
ピッコロの意見に悟飯を始めとした全員が同意する。唯一トランクスの表情が複雑なのは、例え今の状況であれ、他人の助力をあてに
するのを快く思わないであろう父親のことが頭にあるせいだろう。
「それじゃあ、皆さんは三日後に一旦過去に戻るということですね」
「その必要はない」
トランクスの言葉に、何故かスパッツが異を唱えた。
「俺が一人で行こう。元々、過去の世界のブルマさんが俺を参加したのは、今回のような事態を考えてのことだからな」
「一人でって、お前一人であのマシンに乗るのか?」
当然の質問をするクリリンに、スパッツは笑みを向けながら胸に手を当てて言った。
「俺にはタイムマシンの機能も内蔵してある」
「いいっ?!」
「ホ、ホントですか?」
「ああ。俺一人のパワーでは精々2、3日を往復するのが限界だが、俺達が乗って来たタイムマシンの残エネルギーも加えれば、
俺一人ならすぐに過去に戻ることが可能だ」
スパッツを全員が信じられないものを見る眼で見つめた。中でも一番驚いているのはトランクスだろう。スパッツは確かに大柄な人間の
姿をしているが、あのタイムマシンの機能がスパッツの身体に収まるとは思えない。
そんなトランクスの心を察したのか、スパッツは人間が時を超えるためにはシートや計器も含めたスペースが必要な上、過去の世界に
戻るための膨大な燃料も必要なためにあの大きさになってしまうこと。スパッツの場合は元々永久エネルギー回路が内蔵されている上、
飛ぶのは本人だけなので、彼のボディ程度の中に収まるのだということを説明した。
「そうですか。向こうの母さんも、やっぱり天才なんですね」
「そうだな。俺も正直こういう身体で皆と再会出来るとは思わなかった」
「では、孫悟空さんのことはお願いします」
「ああ」
トランクスの言葉に、スパッツは頼もしい笑みを浮かべた。それはどこか以前の姿−16号−を思わせるものだった。


88 :クリキントン:2007/06/20(水) 22:20:18 ID:adssJt5Q0
今回はここまで。

25さん
26さん
27さん
28さん
レス感謝です。仕事が少し忙しくなってきたんでペースが落ちるかもですが、
これからもよろしくです。

89 :クリキントン:2007/06/20(水) 22:37:25 ID:Fj8ZoLHJ0
>>87のスパッツのセリフミスです。

誤:過去の世界のブルマさんが俺を参加したのは
正:過去の世界のブルマさんが俺を参加させたのは

90 :作者の都合により名無しです:2007/06/20(水) 22:55:39 ID:unB/V0v80
お疲れさんです!
ピッコロさんはやはり大人ですな
ベジータの方が強いんでしょうが格は上の感じだ。

そしていよいよ悟空も動き出すか。

91 :作者の都合により名無しです:2007/06/21(木) 08:26:23 ID:0M4AsefW0
お疲れさんですクリキントンさん。
スパッツ、ドラえもんみたいw
バトルはもう少し先みたいですね。
悟空の登場楽しみにしてます。

92 :力の開放:2007/06/21(木) 22:09:34 ID:B098iDN0O

*文中の表現に下ネタが有ります。お食事中の方はご注意ください*

 ここら一帯は我が縄張りである、と言わんばかりに堂々と歩く野良猫が、小さな建物を目の前にして急に引き返した。
毛を逆立てて牙を剥き、何かから逃げるような必死の形相で、あっと言う間にそこから見えない遠くまで走り去っていった。
そこは、圧倒的な重圧を孕んだ気に覆われていた。
まるで炎に炙られているかの様に歪んでいる空間。
その中心に、男はいた。

 暗がりの中、鬼が泣いていた。
本当に鬼がいたわけでも、鬼が泣いているわけでもない。
そこにいる男の背中の筋肉が、まるで鬼の貌のように膨れ上がり、それを伝う大量の汗が涙を形作っていた。
常人とは生まれついての構造から違う打撃用筋肉(ヒッティングマッスル)。
その圧倒的な筋力から生み出される一撃は正に必殺。
そして、それを持つ生物は長い生物史の中でもほんの一握りにも満たない。
今、この狭い一室にいるのはその中でも最凶の怪物。
範馬勇次郎。
暗く、狭い一室の中。
名を出しただけで国家が揺らぐ程の凶人が、持て余すその大量のエネルギーを破裂せんばかりに体中に巡らしていた。

 勇次郎の額を汗が伝う。
汗とは人間ならば誰しも必ずかくものだが、彼に関してはそれは当てはまらない。
人間の身体構造を逸した無尽蔵のスタミナ。
理不尽なまでに我を保つ、絶対の自信と凶悪なエゴイズム。
それらを凌駕して彼に汗をかかせる事の出来る環境など地球上を探してもどれほどあるものか。
隅から隅まで力みを加えられた体中の筋肉。
その筋肉に滞りのない酸素を伝達するために拡張された血管。
それでも、まだ足りない、もっと強大な力が要るのだと燃焼されるエネルギーが、彼に滝のような汗を流させた。
範馬勇次郎の体は、限界の無い力を込めればどこまでも壊れずに絞れる弓のようなものだ。
しかし、開放の瞬間は必ずやってくる。
稲妻の炸裂音のような音とともに、それは放たれた。

93 :力の開放:2007/06/21(木) 22:12:02 ID:B098iDN0O

 範馬勇次郎という男は非常に美味そうに肉を喰う。
嬉しそうな顔で口一杯に頬張ってモニュモニュと咀嚼するその光景は見てるだけでも涎垂ものだ。
しかし、彼はあまり野菜は食べない。食べるシーンは見た事がない。
ところで、快便には三つの要素がある。
水分。
多量の水分は便を柔らかく保ち、腸管を通りやすくする。
油分。
腸壁に分泌される油分は便と腸との摩擦を少なくし、円滑な運搬を可能にする。
そして食物繊維。
便を柔らかく大く保ち、極度に圧縮され固まった大きな便を出来にくくする。
食物繊維は野菜、果物、穀物等に多く含まれるが、彼が飲み食いする肉以外のものなどコカ・コーラくらいのものだ。
ほとんど食物繊維の含まれない食事と、彼の胃腸まで達する究極の力みは、圧倒的な密度・硬度のう〇こを生み出した。
しかし、地上最強の肛門はそれ以上だ。
炸裂音とともに射出され、便器を蹂躙したそれをもってしても傷一つ付きはしない。
勇次郎は言った。
力みなくして開放のカタルシスはありえねぇ。
極限まで力んで開放したそれは、いかほど満足感をもたらしたのだろう。
帰り行く勇次郎の笑顔だけがそれを表わしていた。

ちなみに、後から来た清掃員は地上最強のう〇こに敗北した。

94 :作者の都合により名無しです:2007/06/21(木) 22:13:29 ID:B098iDN0O
サナダさん復活祈願にうんこSS書いてみました。

95 :ふら〜り:2007/06/21(木) 23:09:57 ID:vG7erLM10
>>スターダストさん
100%余裕ぶって楽しんでいるわけではなく、後の仲間のことも考えてのこととはいえ、
トドメ刺せる時に刺さず「お前の技はその程度ではないだろう! 見せてみろ!」で反撃
喰らうって完全に敵キャラですな。でもそこから逆転できたのは……やはり最高のコンビ。

>>ネウロさん
ヤコ、期待通り威勢のいいツッコミが心地よい。つーか今回分を読んだだけでも、彼女が
ネウロと身近に接していながらツッコミできるほど無事に元気なのは才能か強運かと感心。
でもそのネウロに勝るとも劣らなさそなのが接触してきて。結論はトラブル体質、かなヤコ。

>>クリキントンさん
独力でタイムワープ可能とはスパッツ凄し! いずれその能力、というか機能が戦闘中に
使われる日が来るのかも。でもそれは少々DB=本作らしくない気も。でも面白そうな気も。
一方ますます頼りになる感が増してきたベジータ、でもそれがまた危険フラグにも感じる……

>>94さん
>力みなくして開放のカタルシスはありえねぇ。
しばし、突っ伏しました……いやまぁ人間だれでも経験があるというか。絶対万人に共感
得られるフレーズというか。快食快眠快便は健康の証し、勇次郎ほどの超絶健康優良人
ともなるとさぞ、ですな。サナダさん風具体的描写で笑わせてくれた手腕、お見事でした!


96 :作者の都合により名無しです:2007/06/21(木) 23:42:54 ID:M/K3dOXe0
>力の解放
サナダムシさんと名を騙ったら絶対にわからんw
いや、サナダさんの領域に近い作品ですよ。
勇次郎の排泄物は恐ろしいな。

>DBIF
サイヤ人グループと異星人、Z戦士の三つ巴になるのかな?
5対5の勝ち抜き戦とかもジャンプっぽいね。
トーナメントはさすがにやらんだろうがw


97 :作者の都合により名無しです:2007/06/22(金) 01:36:09 ID:HqP6/9f40
>>94
お疲れ様です!
うんこで人が殺せるだろうな、裕次郎W

本当にサナダムシさん復活しないかねえ。

98 :作者の都合により名無しです:2007/06/22(金) 08:25:28 ID:uOOMGnJ20
うんこ新人さん乙
サナダムシさんの特徴をよく捉えてて面白かった
次はあなたのオリジナルを読みたいな。

99 :作者の都合により名無しです:2007/06/23(土) 14:44:34 ID:cIY68o0Z0
サナダさんとうみにんさん帰ってこないかなー。

100 :作者の都合により名無しです:2007/06/24(日) 01:45:22 ID:s74niL4D0
ハロイさんやNBさん来ないかな

101 :作者の都合により名無しです:2007/06/24(日) 02:25:21 ID:bzMoQlHX0
さいさんも心配だ。サイト見る限りずいぶん悩んでいるし・・・

102 :宿命:2007/06/24(日) 22:57:52 ID:bWwglazQ0
 オラの前に、いきなりフリーザの奴が現れやがったんだ。
 いくらオラがナメック星の時とは比べ物にならねぇほど強くなってるっていっても、や
っぱびっくりしたさ。あいつにゃあんだけ手を焼かされたんだもんな。
 んでも、もうフリーザはオラの敵じゃなかった。
 超サイヤ人にちょいと変身して、パンチ一発でぶっ倒してやった。
 でもよ、次の日またあいつはオラに挑んできやがったんだ。
 たしかに気は消えたはずなのに、と思いながらオラは挑戦を受けた。いくら簡単に倒せ
るとはいえ、あんな奴が地球で暴れちゃ大変だからな。今度はキックで倒した、と思う。
わりぃ、オラ細かいところまで覚えてねぇや。
 とにかくこれで終わったと思ったんだけどよ、朝起きたらまたフリーザが飛んできやが
った。びっくりしたというか、うんざりしたというか、よく分かんねぇ気分だったな。
 で、もう復活させまいと、今度はフリーザをかめはめ波で消し飛ばしてやった。そこま
でやる必要はねぇとも思ったけど、やっぱあいつはきちんとあの世で反省してた方がいい
と思ったんだ。
 これでフリーザはちゃんと死んだはずだったんだけどよ……次の日、なぜかまたあいつ
はやって来やがった。
 どうなってやがんだ、と思いつつまたかめはめ波で消してやった。
 大変なのはこっからだ。
 来る日も来る日も、あいつはやって来やがった。来るペースもだんだん早くなってきて、
一日置きだったのが、一日に二度三度と、どんどん増えていきやがった。でも、来るのは
必ず一人ずつなんだよな。
 最初はなんかの幻覚だとか、クローンってやつなのか、昔戦った忍者みてぇに兄弟なの
か、とか思ったけどやっぱちげぇ。来る奴はみんな同じ気で、絶対にあのフリーザなんだ
よな。
 とにかく、オラはあいつを倒して倒して倒しまくった。
 でもとうとう、オラも疲れてたし、不意を突いてあいつは地球を消しちまったんだ。

103 :宿命:2007/06/24(日) 23:01:13 ID:bWwglazQ0
 こうしてオラは負けちまった。
 ま、あの世は何度も経験してるし、オラの家族もベジータやピッコロたちも死んじまっ
たから、あまり悔しさはなかったってのが率直な感想かな。結局肉体さえつけてもらえば、
この世とあの世の差は頭に輪っかがあるかねぇかの差だしさ。
 そしたら、またフリーザの奴はオラの前にやってきたんだ。
 あの世ってのは、いくらフリーザでも地球みたいに消しちまうことはできねぇ。ようす
るに、もう宇宙にオラを放り出すことはできなくなったんだ。
 こっからが長かったぜ……。
 フリーザは何度も何度も襲いかかってきた。そのたび、オラは何度も何度もあいつをぶ
っ飛ばした。
 あいつにゃ輪っかはなかったから死んではいねぇと思うんだけど、でもどうやってあの
世に来たんだろうとか考えたら……ま、いっか。オラ難しい話は苦手だ。
 何回くらい倒したか、とても数えきれねぇくらい、フリーザは死んだ。でも、倒したと
思ったら次のがやって来て、また倒してやった。
 で、どっかの段階でオラが油断しちまってな。あいつも学習してきたみたいだったしよ。
 クリリンの気円斬によく似た技で、ばっさりと体を斬られちまったんだ。
 オラが死ぬ瞬間、あいつは高笑いしてたのをよく覚えてる。

104 :宿命:2007/06/24(日) 23:03:14 ID:bWwglazQ0
 で、あの世で死んだ奴はどうなるかってえと、無になっちまう。つまり、オラはこの時
点で無になっちまったってことだ。
 無ってのを説明すると、平たくいうと何もできねぇ。何もさわれねぇ。腹も空かねぇし、
声を出したりすんのも無理だ。
 それでも色々と考えることくらいはできるみてぇで、さてこっからどうすっかなぁ、な
んてのんきにしてたらあの野郎がやって来たんだ。
 「汚らわしい猿め」とか「俺が宇宙最強だ」とかわめきながら、フリーザは無になった
オラに挑んできやがった。さっきもいったけどオラは無だからあいつの姿や声を見たり聞
いたりできるわけじゃねぇんだけど、なんとなく分かるんだよな。わりぃけど、どういう
感じなのかはオラには説明できねぇ。とにかく分かっちまうんだ。
 無になったオラに、あいつはがむしゃらに攻撃を仕掛けてきた。
 オラは反撃しようにも、無になっちまってるからどうにもできねぇ。ただ黙ってフリー
ザに攻撃されてるだけだ。
 やられねぇし、やっつけられねぇ。分かんねぇけど、多分ずっとこれが続くんじゃねえ
か?
 フリーザが攻撃してくるってことはつまり、オラ戦ってるってことだ。腹が空かねぇっ
てことはつまり、オラ満腹だってことだ。戦いも飯も、オラ大好きだ。
 最近じゃ、オラこういうのも悪くねぇかなって思い始めてる。

                                   お わ り

105 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2007/06/24(日) 23:06:24 ID:bWwglazQ0
色々あって離れていましたが、お久しぶりです。
いつぶりだか自分でも覚えていませんw
そして、part50おめでとうございます。
またマイペースで書こうと思うので、よろしくお願いします。

106 :作者の都合により名無しです:2007/06/25(月) 08:17:49 ID:qAr9rUbD0
サナダムシさん復活した!!
すっごい嬉しい!
今回の読みきり面白かったけど、やさぐれもお願いします。

107 :作者の都合により名無しです:2007/06/25(月) 12:29:04 ID:BHJR0/SX0
復活!サナダムシさん復活!

お疲れ様です。ご復帰本当にうれしいです。
今作もフリーザの執念みたいなものが出ててよかったです。
また書いてくださいね。

108 :作者の都合により名無しです:2007/06/25(月) 18:52:42 ID:OX4Tu9s/0
サナダムシサンキターーーーーーーーーーー!!!!

109 :作者の都合により名無しです:2007/06/25(月) 19:22:59 ID:WpkorRYRO
サナダさんヤターーッッ!!
相変わらずオチの付け方が巧いなあ。

110 :作者の都合により名無しです:2007/06/25(月) 20:38:44 ID:icxiuE2C0
サナダムシさん復活して嬉しい。
今回の作品もさすがに美味いオチだけど、
まだまだサナダムシさんの力はこんなもんじゃないはず。

うんこややさぐれ獅子、お待ちしております!

111 :DBIF:2007/06/26(火) 00:41:34 ID:dP/pMe/30
「ザード将軍、目的の星に後4ビクト程で到着致します」
地球へと向かう宇宙船内部にある巨大な装置の扉の前に向かい、スノウが淡々とした声で報告すると、装置から含み笑いが漏れた。
「いよいよか」
「はい」
スノウの口に邪悪な笑いが浮かぶ。地球に着いてからのことを想像してのものか。
「あの忌まわしい『星の寄生虫』共を叩き潰す時が来ました」
「ふふ・・・だが、まだわしの調整には時間がかかる。直接奴らと戦うのはまだ控えろ」
「承知しております。まずは例の五人をあの星に放す予定です」
スノウの言葉を聞いて、装置にいるザードは楽しそうに笑った。
「アレか。ならば精々、星を破壊せんよう念を押しておかんとな」
「その点はお任せ下さい。将軍にご迷惑をかけるようなマネは致しません」
「任せよう」
と、それきり沈黙した装置に向かって頭を下げると、スノウは部屋を出た。
宇宙船内とは思えない通路歩き、やがて通路の端にある大きな扉の前で立ち止まる。名前と階級と暗号らしき言葉を言った後扉に右手を
押し付けると、重々しいロックの外れる音がして扉が左右にスライドした。
扉を抜けたスノウの前には5つのカプセルが並んでいる。その中にはやはり異星人らしい、異形の姿をした人間が見受けられた。
「まさかコイツらをこんな目的で使うことになるとはな」
そう言いながら軽く笑うと、スノウは部屋の隅にある機械に向かった。ディスプレイにはエメロー、サフィア、ガネット、パル、ジストの名が
並んでいる。
スノウが機械を操作して数分後、恐らくはコールドスリープのカプセルであろう筒の蓋に付けられた窓から覗く、内部の人間に生気が宿る。
「おはよう」
スノウは楽しそうな笑みを浮かべながら、装置に取り付けられたマイクに向かって語りだした。

112 :DBIF:2007/06/26(火) 00:42:47 ID:dP/pMe/30
「まだ身体の感覚が戻らない状態だろうが、そのままで聞け。まず今の状況を説明しよう。ここはお前達が暴れていた星ではない。
ある星に向かう宇宙船の中だ。そして私はお前達の命を預かる者。名前はスノウという。
お前達は我々の管理する星で好き勝手に暴れた無法者揃いだ。実力の高さから、我々の軍の訓練用員にしようと凍結して持ち帰る
予定だったが、事情が変わった。これから出す条件をクリア出来れば、開放することを約束する。
その条件とは2つだ。今から4ビクト後に到着する予定の星で、毛の生えた尾を腰に巻いた人間3人の首を俺の前に持ってくること。
いいか?あくまで首を持って来ることだ。現地の人間を殺そうが建物を破壊しようが自由だが、星を破壊して殺したと言っても認めん。
それだけは肝に銘じておけ。これが1つ。そしてもう1つは、同じ星で育つ、最も巨大な樹を破壊することだ。
なお、お前達自身の性格を考えればわかると思うが、好き勝手な行動をしないよう、お前達の身体には爆弾を仕掛けさせてもらった。
これは俺の解除ワードと摘出手術がなければ、例え俺を殺しても4オプト後には爆発する仕組みになっている。条件をクリアした
時にはこれも外してやる。精々頑張ってくれ」
長い説明を終えると、スノウは次の準備に取り掛かるべく部屋を出た。
「果たして奴ら相手に1日持つか。まあ、例え数十分でも奴らの目を引ければ充分だがな」

思ったように成長しない神聖樹の様子を見ながら、ラニは退屈を持て余していた。
「ちっ」
舌打ちしながら拳と足とを振り回す。そのこと如くをリセロが無表情に受けていた。
「この星は重力も軽くて、加重装置をつけなきゃ身体を動かした気にもなれん。それも1日で済むと思っていれば、肝心の神聖樹の
成長スピードが遅いとはな」
申し合わせているのか、リセロが無言のまま返してくる拳を紙一重の距離で全てかわしながら、ラニの独り言のような会話は
止まらない。
「ターブル様も次に奴らが来るまで眠ると言って宇宙船に入ったきりだ。あの様子では再びあのベジータとかいう奴クラスの気でも
感じない限り姿をお見せになるまい」
ラニの突き出した右手から次々とエネルギー弾が放たれる。これもリセロは全て腕で弾き飛ばした。
「まったく妙な星だ。この私が油断したとはいえ一撃を食らう程の実力者がいたかと思えば、そいつが引き連れた連中以外にはゴミ程の
戦闘力も感じない。これでは奴ら以外の人間をいくら殺しても暇潰しにもならん」
最後にもう一度忌々しそうに舌打ちをすると、ラニは一息ついて首にはめていた装置を外した。
次の瞬間、その顔が弾かれたように彼方の空の方を向く。リセロもまた同じ方向を無言で見つめていた。
「・・・ほう、どうやら格好の暇潰しの相手がご到着のようだ」
ラニの顔に嬉しそうな笑みが浮かんだ。


113 :DBIF:2007/06/26(火) 00:44:05 ID:dP/pMe/30
「!」
「この気は!」
ピッコロ、悟飯、トランクス、クリリンの顔が一斉に同じ方向を向く。それはラニとリセロが向けた先と同じ空を捉えていた。
「くっ・・・よりによって、ベジータも悟空もいない時に」
「どうしますかピッコロさん?」
「・・・奴らとの接触は避けたいところだが、そうも言っていられん。気を消しながら近付くぞ」
ピッコロの指示に従い、4人は気を消しながら異星人がやって来る予定の地へと向かった。
幸いにも着陸予定の地点付近に人の住む街は存在せず、樹木や岩の多い、様子を伺うには格好の地形であった。
「!奴らの気が動いた。視界に入らないよう隠れろ!」
その声に全員が目立たない位置に隠れるのと、遥か遠くにいたはずのラニとリセロがやって来るのとはほぼ同時だった。
(何というスピードだ・・・)
心の中でピッコロがそっと毒づく。ラニとリセロはまだ超サイヤ人−彼らの言葉を借りれば戦闘形態−になってはいない。それでいて
このスピードであった。
二人はぐるりを見回した後、にやりと笑うと叫んだ。
「どうせこの辺りに潜んでいるんだろう?!出てきたらどうだ」
そんなことを言われようと容易に出て行けるはずもない。躊躇する4人に、ダメ押しのようにラニが再び叫んだ。
「つい先程まで遠くに感じられたお前達のパワーが消えていることに気付かない私だと思っているのか?!何ならこの辺り一帯を
吹き飛ばしても構わないんだぞ」
「く・・・!」
にやにやと楽しそうに笑うラニの言葉に、4人は隠れ続けるわけにもいかず物陰から離れた。
「ふふ、やはりな。私達を相手に自分達の星を守ろうとしたお前達だ。パワーは感じられなくとも、あの時と同じように着陸する場所には
来ていると思ったぞ」


114 :DBIF:2007/06/26(火) 00:45:06 ID:dP/pMe/30
「姿は見せた。次はどうするつもりだ?」
ラニ達の背後にいるターブルのことを考えれば、今彼女達と闘うわけにもいかない。なればこそ気を消したのであり、あわよくばやがて
来る異星人と彼女達が衝突する可能性をも考慮したのだが、それも読まれてしまっては意味を成さない。今の状況で出来ることと言えば、
相手の意図を確認することくらいであった。
「別に」
「何?」
「ターブル様がおられない場で、お前達に返答を迫る気はない。あぶり出したのは、こそこそ覗かれるのが好かんというだけの理由だ」
ピッコロは無言でラニを見た。敵の言うことをすんなりと信じるわけにもいかないが、彼女の口調からして、嘘とも思えない。
「疑いたければ好きにしろ。それよりも、来たぞ」
ラニが顎で示した通り、遥か上空に黒い点のようなものが見えたかと思うと、見る見る内に大きさを増していった。
ラニ達の乗ってきた宇宙船より更に大きい。トランクスの調査では大物が二人ということだったが、この大きさからすると兵隊を連れて
来ているのかもしれない。

バシュウッ!

突然、その宇宙船から5本の筒のようなものが発射された。方向はバラバラである。
「な、何だ?」
「わからん。だが放っておくわけにもいかん。俺が確認しに行こう」
そう言ってピッコロが発射された5つの内1つの向かった方向へと飛んでいった。
「ふん。何か小細工でもするつもりか」
ラニがつぶやく。その間にも宇宙船は降下を続け、やがて一同の前に着陸した。
しばらくして入り口の扉が開いていく。その向こうから現れた姿は−
「フ、フリー・・・!」

かくして役者は揃い、この時より地球は敵味方入り乱れる未曾有のバトルフィールドと化すのであった。


115 :クリキントン:2007/06/26(火) 00:46:13 ID:dP/pMe/30
今回はここまで。次回からとうとうバトルロイヤルが始まります。

90さん
91さん
ふらーりさん
96さん
感想感謝です。ようやくメインの役割が書けましたが、スパッツは
舞台が未来なだけに、悟空を呼ぶために用意した存在なんですね。
もちろんそれだけじゃないんですが。

116 :作者の都合により名無しです:2007/06/26(火) 08:31:15 ID:/NUk0MvK0
お疲れ様です。また敵増えるのかw
三つ巴という感じになるのかな?
悟空がいない状況をどうするか楽しみです。

117 :作者の都合により名無しです:2007/06/26(火) 13:23:23 ID:44U7CJOI0
クリキントンさんお疲れ様です!
強い敵が増えているのにZ戦士の対抗力が追いつかない状態ですが
ベジータはともかく悟空がきたら逆転できますね、きっと。
ピッコロにも1人くらい倒してほしいな。ベジータはカマセでいいけど。



118 :作者の都合により名無しです:2007/06/26(火) 22:21:03 ID:sQAugeH50
お疲れさんです。
切り札を温存したまま、ピッコロたちがどこまで奮戦できるか
悟空はどう美味しく登場するのか楽しみにしてます。

119 :似た者同士:2007/06/27(水) 22:14:14 ID:Rcdi3tLn0
「ぼくはタヌキじゃないっ!」
 発端は、なんてことのないのび太の軽口であった。
 激昂するドラえもんをのび太がなだめ、すかし、おだてる。これで済む話のはずだった
のだが。
「もうぼくを二度とタヌキだなんて呼ばせないぞ!」
 彼の血走った、ではなくオイル走った目を見てようやくのび太は異常を察知した。今の
彼は、いつもの彼ではない。風船よりも割れやすく、猛毒よりも恐ろしい、爆弾。
「落ち着けよ、ドラえもん。ぼ、ぼくも悪かったからさ」
 のび太の言葉には耳を貸さず、いや彼には耳はないのだが、とにかく耳を貸さずドラえ
もんはポケットからライフル銃を取り出した。むろん、現代のそれとは比較にならない威
力を誇る。
「タヌキさえ……」
「お、おい……」
「タヌキさえこの世からいなくなれば、もうぼくがタヌキと呼ばれることもなくなる!」
 自由の女神でも気取るかのように、銃を天に掲げるドラえもん。さらにそれをのび太へ
向ける。
「のび太君、君には目撃者になってもらう。ぼくがタヌキと呼ばれなくなる瞬間のね」
 銃口の奥に潜む、底知れぬ闇。のび太はせわしなく首を上下に振り、服従を誓った。
「よし。じゃあ行くよ」
 タヌキを地上から絶滅させるため、玄関から旅立つドラえもんとのび太。
 ──だが、家の外には恐るべき光景が広がっていた。

120 :似た者同士:2007/06/27(水) 22:15:54 ID:Rcdi3tLn0
 野比家を取り囲む、夥しい数のタヌキ。
 二人のうち、明らかにドラえもんだけに殺意を向けている。
 ほんやくコンニャクを使うまでもなく、ドラえもんには分かっていた。
「どうやら君たちもぼくに消えてもらいたくなったようだね……」
 のび太の家に居候するドラえもん──彼の存在は一般化してはいないが、半ば都市伝説
のような形で日本中に伝わっていた。
 この国のどこかに不思議な力を使う青いタヌキがいるらしい、と──。
 当然、タヌキたちもこの噂を耳に入れていた。そして大いに憤った。
 こんな訳が分からぬ馬の骨のために、我ら一族が引き合いに出されるなどあってはなら
ない。許されることではない。排除せねばならない。
 一触即発。
 ここでは町の人々を巻き込む。ドラえもんはどこでもドアで、タヌキたちを名もなき無
人島に招待した。
 ドラえもん対タヌキ軍団。
 武器はドラえもん優勢、数はタヌキ優勢、五分と五分。
 両陣営が憎悪に満ちた眼差しを向ける。
 同じ姿形と目的を持ちながら──。

『ドラえもんがタヌキに似ているなどと言わせない』

 ライフルを肩に構えるドラえもん。一斉攻撃の態勢に入るタヌキたち。未来の火力が焼
き払うか、野性の多勢が喰らうか。二つに一つ。
「待ってよ!」

121 :似た者同士:2007/06/27(水) 22:18:01 ID:Rcdi3tLn0
 ひしめき合う殺意に割り込む、何者かの声。
 皆の注目がひとりの少年に集まる。
「おかしいよ、こんなの!」
 声を張り上げたのはのび太であった。
 この心優しき少年が親友と動物による殺し合いの傍観者となれるはずがなかった。
「似てるって言われるのがイヤなだけでわざわざ戦う必要なんてないじゃないか!」
 拙いが、身振り手振りで必死に熱弁を振るうのび太。言葉が通じていないはずのタヌキ
たちでさえ聞き入っている。
「それに考えてもみてよ。どちらかがいなくなったとしても、似てるって言われなくなる
と思う? もう死んじゃってる人に似てるって言われる人なんていくらでもいるじゃない。
テレビで恐竜に例えられてる人だっていたよ。もう恐竜はいないのに」
 少年の言うとおり、仮に自分に似た相手を排除したとして、ではもう自分と比べられる
ことはなくなるかというと、そうとは限らない。死人に口なしとはいうが、むしろ相手が
死んでしまったことにより、よりいっそう比較の度合いが強固になってしまうケースすら
ある。
 皆、押し黙った。
 周囲を渦巻いていた殺気が急速に鎮まっていく。
 言いたいことをぶちまけ、肩で息をするのび太にドラえもんは微笑みかける。
「のび太君、君が正しいよ。ぼくたちは間違っていた」
「ドラえもん……」
「ぼくたちは“戦う相手”を間違っていたんだ」
「え?」
 突然、鎮まっていた殺気が勢力を取り戻し始める。いやそうではない。殺気は最初から
鎮まっていたわけではなく、対象を変えていただけだった。
「そもそも誰と誰が似てるかなんて話題にするのは地球上で人間くらいのもんだよ。ぼく
たちは君のおかげでようやく共通の敵を発見できた」
 タヌキ軍もまた一斉にのび太に振り向く。
「じゃあ、まずは君からだ」
 ドラえもんはのび太に銃口を向け、ゆっくりと引き金を引いた。

                                   お わ り

122 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2007/06/27(水) 22:21:15 ID:Rcdi3tLn0
梅雨SS二発目です。

123 :作者の都合により名無しです:2007/06/27(水) 22:54:58 ID:EyAFlXao0
>タヌキさえこの世からいなくなれば、
>もうぼくがタヌキと呼ばれることもなくなる

しかしまあよくこんな発想ができるもんだw
そろそろサナダムシさん全快ですね。嬉しい

124 :作者の都合により名無しです:2007/06/28(木) 00:40:58 ID:qmPyNXXR0
サナダムシさん、休養中に書き貯めしてたのかw

125 :作者の都合により名無しです:2007/06/28(木) 08:33:01 ID:XYHvU9ZR0
お疲れ様ですサナダムシさん。
薄暗いドラえもんですね。
でもドラえもんってタヌキに似てるかな?

126 :作者の都合により名無しです:2007/06/28(木) 13:18:47 ID:djrkGyck0
珍しく正論を語るのび太が頼もしいな
そういえばドラえもんはねずみがいると言うだけで
地球破壊爆弾を使おうとしたマッドだったっけ

127 :ふら〜り:2007/06/29(金) 00:18:57 ID:dhmtm6AR0
>>サナダムシさん(充電完了のご様子ですな。長編もお待ちしておりますよっ)
・宿命
結局、フリーザについて何の解明もなかったのがまた……不思議感を増してます。悟空なら
深く考えないのも自然だし、だから素直に不思議感を楽しめる。構成が見事な短編、流石。
・似た者同士
>ここでは町の人々を巻き込む。
↑DBっぽい迫力の後、のび太の正論にドラもきっちり正論で反撃してるのが面白かったです。
が、そういや未来にはドラの同型機が山ほどいるはず。彼らもタヌキ呼ばわりされてるのかな。

>>クリキントンさん
命をガッチリと握って働かせつつ、捨て駒にする気満々。「こいつらにかかれば、ひとたまりも
あるまい」的な強さ強調よりスノウたちの残虐さをアピールか。で無論、彼らはスノウたちに
敗れてる以上、彼らが今後強さを見せつければスノウたちはそれ以上……気が遠くなりそう。

>>私信御免
気力落ちてた今日。が、復活・即・好調なサナダムシさんと、まだまだ壮大なクリキントンさん
の作品を読み、「よぉし私も」感が復活、で執筆。他の職人さんもこんな風に、落ち込んでも
読んで復活! して書いてるのかな……とか思ったり。何とか今スレ中にはっっ。

128 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/06/29(金) 05:55:16 ID:LaY/Y05B0
『迂回と焼菓 B』


「どういうことだ……僕のせいで小狼くんが死にかけているだと?」
 ラウンダバウトは信じがたいものを見るように、揺れる視線を十和子に注ぐ。
 女のものとは思えぬ力で彼女を壁に押し付けている十和子が、吐き捨てるように答えた。
「そんなに信じられないなら自分の目で確かめれば? 来るの? 来ないの?
──ま、嫌だと言っても無理やり引きずって連れて行くけどね」
「君にそれが出来るとは思えないね。脅しとは相応の実力があって初めて効果を発揮するものだ。
その点、君程度の普通人が僕に敵う訳がないよ」
 明らかに気圧されている自分を認めるのが嫌で、ラウンダバウトはそんなことを言う。
 だが、その心の動きすらをも見通すように、十和子の歪んだ笑みが返ってくる。
「強がってんじゃねーわよ。あたしに本名と能力を見破られてビビってんのが滲み出てんのよ。え? ラウンダバウトちゃん?」
 ぐ、と言葉に詰まり、だが、図星を突かれたことで逆に冷静さを取り戻した彼女は、意を決して十和子を見据えた。
「……分かった。僕を小狼くんのところへ連れて行ってくれ」
「ふん。最初からそう言やいーのによ」
 十和子は突き飛ばすようにラウンダバウトの襟から手を離す。そして踵を返して放送室の出口へとすたすた歩き始めた。
 乱れた襟元を直しながら、ラウンダバウトも急いで後を追う。
 その背中を見ながら、なぜか不思議な気持ちになった。
 遠野十和子という少女の強引さ、恐れのなさは、どこかで見たような気がする、と。

129 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/06/29(金) 05:57:35 ID:N3pct7m/0


 十和子と共に向かった先の保健室には、すでに四人ほどの人間が集まっていた。
 一人は学校の職員と思しき白衣の女性、そして中等部の制服を着た男子学生、そして──。
「小狼くん、サクラさん」
 ラウンダバウトの呼びかけに応えて顔を上げたのは、ベッドの横に立ち尽くす少女──木之本桜だけだった。
 李小狼は応えなかった。……いや、応えることが出来なかった。
 ベッドに仰向けに寝かされ、目を閉じ、蝋のような顔色で身動き一つ取らずにいた。
 シーツからはみ出た彼の白い手を、サクラが縋りつくように両手で握り締めている。
 そうしていないと、今すぐにでも手の届かない遠くに行ってしまうのだ、とでもいうような切実さで。
「サクラさん、小狼くんはいったい!?」
「克巳さん……分かりません。急に小狼くん、ぐったりして動かなくなって……」
 咄嗟に本来の能力──生体波動のソナーによる対象のの把握──で小狼の状態を探ったラウンダバウトだったが、危うく叫び声を上げてしまうところだった。
 一言で言って、小狼は生きていなかった。『生きている』とはとても言えない状況だった。
 だが──その一方で、完全に『死んで』もいなかった。
「奇妙なことにね、彼の脈拍は分に二十五程度で安定してるの。人間の心拍数じゃないわ、これ」
 そう言ったのは、サクラの背後に立つ白衣の女性だった。
 彼女のことは、この学校のことを事前に調べた際に名前だけは把握していた。この学校の養護教諭である五十嵐初佳だ。
「呼吸も極度にペースが落ちている。とてもじゃないけど、生命活動を維持できるレベルじゃないのよ。
なのに……それを保ち続けているの。それ以上死に近づくこともなく、まるで──」
 初佳はそこで言いにくそうに言葉を飲み込んだ。
 ベッドの上の小狼は、それこそ死んだように眠っている。
 その手を指先が白くなるまで握り締め、サクラは震える声でラウンダバウトに言った。
「克巳さん……お願いです、小狼くんを助けてください」

130 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/06/29(金) 05:58:38 ID:N3pct7m/0
 今にも泣き出しそうなほど顔を歪ませ、それでも懸命に涙をこらえているサクラを見て、ラウンダバウトに動揺が走る。
(僕が小狼くんに『能力』を行使したのは断じてこのような状況を呼び寄せるためではないのに……。
僕は、また間違えてしまったのか……!? くそ、いったいなんのための『迂回』だと言うんだ……!)
「──来たわね」
「ええ、約束どおり連れてきたわよ、魔女さん」
 その一瞬、ラウンダバウトは奇妙な感覚に襲われた。
 今の会話──後者は遠野十和子の声であるが、前者の声がどこから聞こえてきたのか掴み損ねたのだった。
 声のしたほうに首を巡らると、そこには真っ白く塗られた壁があり、そこに女性の肖像が映し出されていた。
 光の縁の中の女性はわずかに身じろぎしながら静かな視線をこちらに注いでいる。
 反対側を見る。そこには白いぬいぐるみのような物があり、その額にはめ込まれた宝玉から光の像が放たれているようだった。
 映写機にしては変わった形をしている、という感想が脳裏を掠めたが、それどころではないので即座に意識から消える。
「あなたが『迂回』の『ラウンダバウト』ね」
 壁に映る全身黒ずくめの女性は、そう口火を切った。
「わたしは壱原侑子。『次元の魔女』『極東の魔女』とも呼ばれているわ。あなたの呼びやすいように呼んで頂戴。
変な呼び出し方をして悪かったわ。だけど、ただ呼び出したのじゃ警戒されて出てこない可能性があるから、
絶対に食いつく罠を仕掛けよう──というのが、そこの遠野十和子さんのアイディアよ」
 ランダバウトは十和子をちらりとを見、その視線に気づいた十和子が軽く肩をすくめた。
「……時間はあまり残されていないから、簡単に状況を説明しましょう。
まず──あなたは、そこの二人を監視していたわね。『羽』の情報を得るために」
 ややためらった後、ラウンダバウトはゆっくりと頷いた。サクラと小狼の方を見ることは出来なかった。
 うなだれるように目を伏せ、話の続きを待つ。
「結論から言うと、あなたが小狼を通じて得た情報はおおむね正しいわ。
この子達は失われた『羽』を取り戻すために、数々の異世界を──水面の向こう側の、似て非なるセカイを渡る旅人よ。
その異なる次元を渡る術は、私が与えたものよ。相応の『対価』と引き換えに」
 ここで、初佳がおずおずと手を上げる。
「あの、壱原さん。やっぱマジなんですか、それ? はっきり言うとちょっち話に付いていけないって言うか、ねえ」
「五十嵐初佳さん、あなたの知るセカイだけがこのセカイの全てではないわ。見えないからといって、『それ』が存在しない理由にはならないものよ」
 彼女にもこちら側の映像が届いているのか、侑子は向こう側の世界からはっきりと初佳を視線を定めて言う。
「それに、常識を『突破』した概念が──他の者にはとても信じてもらえないような、
アンバランスで不気味な存在が、この世には確実に『ある』ことを、あなたもまた知っているはずよ。そうでしょう?」

131 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/06/29(金) 06:00:19 ID:LaY/Y05B0
 そう言われて思い当たる節があるのか、初佳はちょっと微妙な顔をして口を閉じた。
 ラウンダバウトについて言えば、思い当たる点はかなりある。
 なにしろ、彼女はかつて世界を裏から牛耳る正体不明の組織のエージェントで、彼女自身は造られた生命、いわば有機的ロボットなのだ。
「さて──ラウンダバウト。あなたの『能力』を今この場で説明してもらえる?」
 言われて、ラウンダバウトは躊躇した。
 合成人間にとって、『能力』を他人に教えることは自分にとって非常に不利に働く。
 殊に、ラウンダバウトの『能力』は敵をハメることに特化した能力だ。それを教えるということは、致命的な弱点を教えることとまるで変わらない。
「あるものを得るためには常に対価が必要だわ。あなたの生命線とも言うべき『能力』、それがあなたが今の状況を把握するために要求される対価よ。
もちろん、あなたがどうしても教えたくないと言うなら、それはそれで仕方のないことだわ。それを決めるのはあなたで、わたしたちが口を挟むことは出来ない」
 その理屈は理解できる。
 この世界にはリスクが満ちている。それを『迂回』するためには、それに見合った努力を払わねばならない。
 だが──。
「う、うう……」
 ラウンダバウトの逡巡を見澄ましたように、それまで黙っていた十和子が口を挟んだ。
「黙ってたって無駄よ、奈良崎。あんたが嫌がってもあたしがバラす。あたしは小狼くんを助けるわ。
それであんたがどんだけピンチになろうと、まあ──知ったこっちゃないわね。泣いて頼むなら、あんたも助けてあげてもいーけどさ」
 ラウンダバウトは弾かれたような勢いで十和子を見た。
 彼女の目には、疚しさも開き直りの色も無かった。
 ただ、純粋に彼を助けるという意思だけがそこにあるように見える。
 『それ』をするためには躊躇もなにも無い、そのことで気後れを感じてしまうようなら、そんな『心』など要らない──それはそんな感じの目だった。

132 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/06/29(金) 06:01:57 ID:N3pct7m/0
「──サクラさん」
「……はい」
 ラウンダバウトはサクラに向き直った。
 その澄んだ瞳が、ラウンダバウトを射抜く。
「僕は君と小狼くんに謝らなければならない。僕は君たちを騙していた。君たちに近づいたのは『羽』の情報を得るためだった。
友達になった振りをして、君たちを見張っていたんだ」
「やっぱり……克巳さんが『迂回』の『ラウンダバウト』だったんですね」
「それはどういう意味かな?」
「あなたとお話していると、いつもそんな言葉が心の中に響いてくるんです。
意味は分からなかったけど、きっと克巳さんにとって大事な言葉なんだろうって思ってました。
小狼くんが倒れて、次元の魔女さんが『迂回』の名を持つものを探せ、というヒントをくれたとき、やっぱり思い浮かんだのはあなたの顔でした」
「──その子は『夢見』のチカラを持っているわ。不完全ながらも、未来を見通す稀なるチカラよ」
 と、横から侑子が注釈を入れてきた。
「そうか……ならば、僕はそのことに礼を言わなくてはならないね。
覚えているかな? 『困ったことがあるならいつでも僕のところに来るといい』と言ったことを」
「はい」
「それもただの口から出た社交辞令だったのだけど、今この瞬間だけは……その『嘘』を『真実』に変えてみせる」
 ラウンダバウトはそっとサクラのそばに跪き、その小さな手を取って口を付けた。
「必ずや小狼くんを助けることを君に誓うよ」
 そして立ち上がった彼女は、身を振り返って壁に映る侑子を見据えた。
「壱原侑子さん……でしたね? 僕は合成人間ラウンダバウト。奈良崎克巳という名前で人間社会に潜伏しています。
『能力』に特に名前はありません。強いて言えば、僕の『迂回(ラウンダバウト)』という名前がその能力をも表現しています。
その能力は相手の『隙』を感知すること。そして、舌から発する高周波でその『隙』に『油断』という暗示を打ち込む技術を持っています」
 人生は迂回だ、とラウンダバウトは思う。
 危険は避けなければならない。障害は迂回しなければならない。
 だが──決して迂回できない危機の前に、そうした態度は脆くも崩れ去る。
 その状況を前にしてなおも『迂回』を試みるのは愚の骨頂で、本当ならそれ以前の段階で──危機と出会う前に『迂回』しなければならないのだ。
 そのことに失敗した今、自分がなすべきことは──さらなる危機を『迂回』すべく、この状況を突き進むことである。
「今なにが起こっているのか……いったい、僕がなにをしてしまったのかということと、そして……彼を助ける方法を教えてください」
 凛と響くラウンダバウトの声に、次元の魔女──壱原侑子は静かに宣言した。
「──その願い、叶えましょう」

133 :作者の都合により名無しです:2007/06/29(金) 08:25:07 ID:mzZybN+f0
ハロイさん復活おつ〜
なんかサイトで疲れてたみたいだから心配してたよ

十和子は交渉の達人だな。
少しずつ心理に近づきつつあって面白い。

134 :作者の都合により名無しです:2007/06/29(金) 09:03:17 ID:X50Uu9M+0
ハロイさんも復活キターーーー!

相変わらず十和子がかっこよい。
やはり真の主役はこの子だなw
でも、最後のコメントがないですね。
連投規制かな?


135 :作者の都合により名無しです:2007/06/29(金) 15:23:34 ID:wANm7E8F0
お疲れ様です。
異能者超能力者、ついには魔女まで続々と登場して
物語が膨らんでいきますね。
狂言回しというか、道しるべというか壱原侑子はどんな役回りなのか?
かなりの回を重ねましたけど、いまだにお話は序章なのかな?

ハロイさんもスランプを脱したみたいなので益々の話の広がりを期待してます。

136 :宇宙のジパング:2007/06/29(金) 22:05:58 ID:spAuoExR0
 黄金の惑星“アース”の伝説。
 近年、文明が進んだ宇宙の住人の間において、まことしやかに騒がれている噂があった。
 余りにも広く流布されてしまったため、噂が噂を呼び、アースに関する無数の説が乱立
してしまった。もはや、この噂の出所はどこであったのか、元々はどのような内容であっ
たのかを知ることはかなわない。
 共通していることはただ一つ、アースと呼ばれる惑星には黄金が大量に眠っているとい
うことのみ。
 宇宙広しといえど、黄金を主成分とする星は未だ発見されていない。また、金は貴金属
としての美しさはもちろんのこと、化学的な性質も申し分ない。つまり、黄金を欲してい
ない種族などいなかった。
 とはいえ、あくまで噂は噂。ただでさえ異星人との交易や戦争、眼前の開拓に忙しい彼
らには、存在すら怪しい惑星の調査などに予算と労力を割く余裕はなかった。
 しかしそんな中、偶然か必然か、黄金の惑星とおぼしき天体を発見した一団があった。

 前方に映し出されたモニターを指さし、一人の隊員が叫ぶ。
「隊長! あの黄金に光り輝く惑星……あれこそ、まさしくアースです!」
「うむ。鉱物採取などという下らない任務に回されてから、砂を噛むような日々が続いた
が、幸運の女神はまだ我らを見捨ててはいなかったようだな」
 努めて冷静を装う隊長だが、すでに心の中では人々から賛辞を受ける自らの姿を空想し
ていた。
 だがそれは、部下たちも同様であった。
 学者の手足となって、命じられた鉱物を宇宙から拾って帰るだけの日々。ようやくそん
な雑用から解放される。それどころか、宇宙中で話題となっている惑星を発見したとあれ
ば、富も名声も思いのままだ。千の敵機を落とした軍人以上の英雄になれるチャンスが、
今まさに具現化され彼らの前に転がり込んだのである。
「とにかく近づかねば話にならん。進め、全速力だ!」
 隊長の号令とともに、船の速度が跳ね上がる。光速を超え、男たちは新天地を目指す。

137 :宇宙のジパング:2007/06/29(金) 22:07:18 ID:spAuoExR0
 数時間後、宇宙船は黄金の惑星がピンポン玉の大きさとなるほどに接近していた。
 肉眼で目の当たりにすると、彼らの感動はさらに高まった。ざわつく船内。
「す、すごい……雲を除けばほとんど地表は金色じゃないか!」
「なんと美しい」
「いやはや信じられん……!」
 漆黒の海に浮かぶ黄金の塊。宇宙の神秘としかいいようがない。一瞥で一行は心を奪わ
れてしまった。だが、隊長はひとり管理職らしく我を見失わない。
「コラッ! なにをボンヤリしている!」
 この一喝で、半ば放心していた部下たちは正気を取り戻した。だが──。
「早く船を降下させんか! 他の奴らに横取りされたらどうする! あれは全て私のもの
だっ! だれにも渡さん!」
 もっとも正気からかけ離れていたのは隊長だった。

 欲にまみれた隊長に急かされるまま、操縦士は瞬く間に船を大気圏に突入させ、適当な
大地に着陸させた。
「よし降りるぞ! 遅れるな!」
「ちょっ……危険です、隊長!」
 どんな環境かも分かっていないのに、隊長は足早に外に飛び出してしまった。
「黄金だ、黄金だ、黄金だ」
 両手両足を広げ、星に抱きつく隊長。アースの感触を存分に味わう。
「うっ! こ、これは……?」
「どうしました、隊長?!」
 起き上がり、隊長は怒りと失望を吐き出す。
「ただの土じゃないか、なにが黄金だッ!」
「えぇっ!」
 大気が有害ではないと分かったため、他の隊員も続々と宇宙船を降りる。するとやはり
アースを構成しているのは黄金でもなんでもなく、ごく平凡な岩石がほとんどであること
が判明した。
「とんだ期待外れだったな……」
「でもさっきはたしかに……」
 まもなくある隊員が、この星が黄金に輝く原因を明らかにした。
「この星を光り輝かせていたのは大地ではなく、星に住む生命だったんだ……」

138 :宇宙のジパング:2007/06/29(金) 22:08:28 ID:spAuoExR0
 さて、ここでこの惑星の正体について説明しよう。
 この星の正式な名は、地球。
 かつて、年でいうと四桁を数えるほど昔、この惑星にある恐ろしい種族が加わった。
 サイヤ人──彼らには戦闘力がある一定のレベルに達すると超サイヤ人という変種へと
姿を変えるという特性があった。黄金のオーラに身を包んだ彼らは、名実ともに宇宙最強
に他ならない。
 ところが、サイヤ人の血には知られざる特性があった。他種族と交わり血が薄まるほど、
生まれた子にはより濃く、より強大にサイヤ人としての能力が身につくという特性が。
 これにより、超サイヤ人発現のタイミングは加速的に低年齢化。幼児が光り、赤子が光
り、胎児が光り、しまいには精子までもが金色に光るようになった。
 さらに極端に好戦的となった彼らが流した血液が動物や昆虫、さらには海洋生物、植物
にまで伝えられ──やがてこの惑星にサイヤ人の血を含まぬ生命はいなくなった。
 そして今や、この星に住まう全生命が超サイヤ化してしまった。
 
 もちろん、このような事情をやって来たばかりの彼らが知るはずもない。
「この星のあらゆる生物から噴き出ている謎の黄金(こがね)色の光。それが黄金の惑星
の正体だというのか!」
「はい。現状ではそうとしか考えられません」
「……まぁいい。黄金はなかったが、それでも我々がアースの第一発見者という事実には
変わりない。いい土産話ができただけでもよしとするか」
 落胆を少しでも抑えるため、自身を慰める隊長。
 力なく宇宙船に乗り込む隊員たち。
 しかし、彼らが無事にこの星から脱出できる可能性は限りなく低そうだ。
 船内には、血肉を好む超サイヤ蚊と超サイヤ蟻が無断で何匹も入り込んでいた。

                                   お わ り

139 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2007/06/29(金) 22:09:44 ID:spAuoExR0
梅雨SS三発目。
感想ありがとうございます。励みになります。

140 :作者の都合により名無しです:2007/06/29(金) 22:19:00 ID:JAXnMBXq0
サナダさん、冬眠から覚めたと思ったらターボかかっているなw

しかしサナダさん、短編でも本当に話を練っているなあ。
最後の1レス、最後の1行に集約する技術は見事だ
これも最初は何の漫画が下敷きになってるかわからなかったよ
原作で「サイヤ人のバーゲンセール」と呼ばれてた事を
SSにするのはすごい


141 :作者の都合により名無しです:2007/06/30(土) 00:25:06 ID:mpadUBfB0
・ハロイ氏
「失われた羽」?この作品はキーワードが多く、そして全てが思わせぶりなので
読み応えがあるな。しかし、十和子の方が壱原より魔女っぽい。いや、小悪魔か。

・サナダムシ氏
復活してから好調ですね。この調子でやさぐれ獅子も是非。短編長編ともに好きです。
サイヤの血族は死してなお星を滅ぼすのかw迷惑な宇宙人だな。流石、戦闘民族。

142 :作者の都合により名無しです:2007/06/30(土) 08:28:46 ID:Rg13bSKh0
サマダムシさん乙。
うんこねたのインパクトに隠れがちだけど
サナダムシさんのドラゴンボール物は秀逸だなー。
必ず一ひねり2ひねりしてある。

143 :作者の都合により名無しです:2007/06/30(土) 12:39:45 ID:piS8MeYv0
サナダムシさん本格復活みたいだね。ヨカタ。

144 :作者の都合により名無しです:2007/07/01(日) 21:43:17 ID:qSHmsW7t0
サナダさんは調子よくなったけどほかの方がなあ

145 :DBIF:2007/07/01(日) 23:00:14 ID:Xq8zLM410
フリーザ似の異星人は不敵な笑みを浮かべながら一同の前まで来ると、大仰に一礼してみせた。
「大勢でのお迎えに感謝します。私の名はスノウ。元ウェザー星軍親衛隊長です」
「ウェザー星、ねえ。星の名前はともかく、その姿は覚えがあるな。あちらの銀河で私達に最も抵抗して見せた連中だ」
スノウの挨拶に、嬉しそうな顔でラニが応じた。それを見るスノウの顔がわずかに怒気をはらむ。
「その姿。ザード将軍と私の不在の間に我らが母星を滅ぼした連中の仲間だな」
この言葉に驚く悟飯達をよそに、ラニはその顔に浮かぶ笑みを深くした。
ゾレを尖兵としたフリーザタイプの異星人がラニ達を狙うのは、恐らくは今回の地球のように神聖樹を植えつけられ、自分達の
母星を滅ぼされたからだったのだ。
トランクスとの戦いで見せたゾレの怨念めいた怒りも、そこから来ていたのだろう。

一方ピッコロは、スノウの宇宙船から発射された筒の落ちた場所に着いていた。
縦約3メートル、横1メートル程の筒は、図ったように垂直に地面に食い込み、直立している。その扉の上部には窓のようなものが
あり、その下に大きく「エメロー」の字が書かれていた。
「こいつは・・・」
つぶやくピッコロの前で蒸気のようなものを上げながら扉が開く。その向こうから、フリーザタイプとはまた違う異星人が姿を現した。
極端に長い禿頭の下から3つの眼がスノウを睨んでいる。人間型のロボットのような黒い身体をしており、左手は普通の人間に
近いが、右手は鋭く伸びた槍のような形状をしている。
(悟飯!打ち出された筒はやはり奴らの兵だ。すぐに残りの筒の飛んだ方向へ向かってくれ!)
離れた位置でも通じる念話でそう呼びかけると、ピッコロは目の前の異星人に意識を集中した。
「シけた星だな。俺のいた星の10分の1も文明が進んでなさそうだ」
左右を見渡した後、エメローが金属をこすり合わせたような声でつぶやいた。


146 :DBIF:2007/07/01(日) 23:01:23 ID:Xq8zLM410
「シけた星で悪かったな」
ピッコロの言葉に、エメローは3つの眼を器用にばらばらに動かして全身を観察した。
「毛の生えた尾はなし、か。さしずめ現地の人間だろうが、別に殺すなとは言われてなかったはずだな」
そう言いながら槍状の右手を振りかぶった。
「チッ!」
飛び退がるピッコロに向けて振られた槍は、何とそのまま右手から離れて彼を襲った。
「つぁっ!」
すかさず左手で弾くと、無線でコントロールされているかのように不自然な軌道で右手に戻る。
「はっ、意外とやるな。俺の奇襲をかわすとは」
余裕の声を上げるエメローを前に、しかしピッコロは笑みを浮かべた。
「丁度良かった」
「何がだ?」
「未来(こっち)に来て以来、他の連中に出番を譲ってばかりで、正直うずうずしてたんだ。神の奴と合体はしても、やはり
俺は戦闘タイプということだな」
言いながらピッコロはターバンとマントを脱ぎ捨てた。常に身体に負担をかけて鍛えるために、重い材質で作られたそれらが、
衣服とは思えない音を立てて地面に落ちる。
軽くなった身体の感覚を確かめるように首を軽く左右に振ると、ピッコロは改めて構えた。
「さて、続きをやろうか」


147 :DBIF:2007/07/01(日) 23:02:22 ID:Xq8zLM410
「ピッコロさん!」
悟飯が突然上げた声に、一同の視線が集まる。それに構わず悟飯はピッコロから念話で伝えられたことをトランクスとクリリンに教えた。
「くそっ!やっぱりかよ」
「とにかく行きましょう」
そう言って、それぞれ先程発射された筒の方角へと飛んで行く3人を、スノウとラニ達は横目で見送った。
「お前達は行かなくていいのか?」
「私達はこの星がどうなろうと知ったことじゃない。クズのような雑兵相手にするよりは、お前を相手にした方が面白そうだしな」
あくまで平然と答えるラニに対し、しかしスノウもまた笑みを崩さなかった。
「くく、奴らが神聖樹を枯らすとしてもか?」
「何?」
「何故ここに植えた神聖樹が中々育たないか疑問におもわなかったのか?あれは、俺達があらかじめ送り出した奴が細工したからだ。
その気になれば永久に育たないように土地を変えることも出来るぞ」
「・・・チッ!リセロ、行け」
スノウの言葉に今度こそ笑みを消したラニの指示に、リセロは無言で頷くと、悟飯達がそれぞれ追いかけた方向でない、最後の1本の
方向へと飛んで行った。
「さて、これで1対1だ。満足か?」
「正直に言えば、先程飛ばした連中にお前達を任せ、もう少しこの地で下準備をしたかったが。しかし念願の相手を前に何もせずでは
つまらんな」

ゴッ!

突然スノウを中心としてエネルギーの波が広がった。それと共に身体が一回り膨れ上がる。
ゾレが見せた戦闘形態への変身ではない。超サイヤ人の悟空と闘ったフリーザの見せたものに近い。
「!・・・ほう、私達をわざわざ追いかけてまで倒そうとするだけはあるな」

グアッ!

にやりと笑いながら、ラニもまた己の気を高める。しかしまだ超サイヤ人にはなっていない。
「ふふ、向こうでも戦いが始まったようだ。その内残り4つでも始まるだろう。まるで祭りだな。お前も精々私を楽しませてくれ」
「それはもう存分に」
両者共に余力を残したまま、それでもなお凄まじいオーラをまといつつ、二人は笑みを交わした。


148 :DBIF:2007/07/01(日) 23:03:39 ID:Xq8zLM410
「す、すげえ気だ。あのスノウって奴も、やっぱり化け物かよ」
宇宙船から発射された筒の1本に向かいながら、クリリンは驚きの声を上げた。
余りにも次元の違い過ぎる闘いである。仮にどちらかを相手にすることがあれば、自分などただの一撃で命を落とすことになるだろう。
それはこれから向かう筒にいる相手であっても同じかもしれない。
力が及ばないことは誰よりも自分でわかっているが、それでも出来ることはあるかもしれないとついてきたものの、未来について早々
見せられたゾレとトランクスとの激闘に、改めて自分の無力を突きつけられた。
それでも今回のような形で自分も動くことが出来たのは良かった。問題はこれから戦闘になるであろう相手に、自分の力がどれだけ
通用するかである。
「18号と修行して、アレも身につけたし、うまくやれば勝てると思いたいんだけどな・・・」
自然に弱気な口調になってしまうのは、人造人間との戦い以来、自分の力が役に立った場面が一つもないことから来ていた。
「まあ、やるだけやってみるか」
そう言いつつ、地面に突き立った筒の前に着地した。ガネットと書かれたその筒の側には既に中から出て来ていたらしい異星人が
立っている。
大柄な体格を持った人間タイプだが、両肩に硬質的な突起がついている。それ以上に目立つのは、髪のない頭の前部から後ろに
向かって長く伸びた黒い日本の角だ。鋭い光を放つ眼が、着地したクリリンを見据えていた。
(せめて悟飯達が他の奴を倒すまで時間を稼ぐくらいしないとな)
そのまましばらく無言で睨み合っていた二人だが、不意にガネットが笑みを浮かべた。
「どうやらあちこちで闘っているようだな。それも相当な実力者同士が」
「・・・・・・」
「そして俺の相手はお前というわけだ」

ギャウッ!

そのつぶやきが終わらない内に、ガネットの身体がクリリンの眼前に飛び込んできた。


149 :クリキントン:2007/07/01(日) 23:04:56 ID:Xq8zLM410
今回はここまで。

116さん
117さん
118さん
ふらーりさん
感想感謝です。やっとスノウ達を出すことが出来て、三つ巴のバトルロイヤルに入れました。
例の5人については、スノウ自身の言葉通りラニ達相手では正に捨てゴマです。
実際には悟飯やピッコロがいたことでアテが外れてますが。

150 :クリキントン:2007/07/01(日) 23:14:46 ID:bW0YwVHj0
またもミスです。すいません。
1つめの文章で

×:3つの眼がスノウを睨んでいる。
○:3つの眼がピッコロを睨んでいる。

です。

151 :DBIF:2007/07/01(日) 23:23:52 ID:bW0YwVHj0
もう一つミスがありましたorz 推敲しろよ自分。
最後の文章で

×:黒い日本の角だ。
○:黒い二本の角だ。

です。

152 :作者の都合により名無しです:2007/07/01(日) 23:26:20 ID:qSHmsW7t0
切り込み隊長のピッコロさんが早くもカマセになりそうな悪寒
でも、クリリンも気円斬に続く必殺技を身に着けたみたいだから
とりあえず死にはしないかな

153 :作者の都合により名無しです:2007/07/02(月) 00:09:23 ID:WIBhCc9k0
お疲れ様ですクリキントン氏。
クリリンがなんとなく活躍しそうですね。
ピッコロやベジータに負けないくらい
魅力的な脇役だから活躍させて欲しいです。

ここでも、クリリン好評価だし。
ttp://www.oricon.co.jp/news/ranking/45878/

154 :作者の都合により名無しです:2007/07/02(月) 08:27:51 ID:7rL8KLVI0
クリキントンさんお疲れ様です。
そろそろ登場人物もオールキャスト揃ったかな?
ベジータや悟空が復活するまで、みんながどう凌いでいくか。
一人極端に力量の劣るクリリンが鍵でしょうね。

155 :ふら〜り:2007/07/02(月) 23:55:30 ID:BvjKCsY30
>>ハロイさん
前半の十和子は、態度も言ってる内容も殆ど悪役のノリというか迫力でしたが……しかし
その真剣さの目的はというと、で後半の彼女に繋がって戻ってきました。今回は何だか、
謎を抱えあってる者同士の会話ばかりって印象でしたね。読者視点はやはり静と再認識。

>>サナダムシさん
確かに、言われてみれば……のレベルで原作の設定にきちんと忠実でありながら、原作とは
似ても似つかぬパニックホラー物語のブラック落ち。最初は千年に一人とか言ってましたよ
ねぇ。やはり、フリーザが超サイヤの出現を恐れたのは間違いではなかったということですな。

>>クリキントンさん
ナメック星編を思い出す、三つ巴の絡み合い。ここはクリリンの活躍に期待です。気円斬に
象徴されるように、彼はDBらしからぬ「単純な戦闘力の差を他の要素で埋める」ことが
できる人ですし。きっと18号に見てもらえないのが残念なくらい活躍する! と信じてます。

156 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 00:56:47 ID:B0NsTG0u0
「こっちです、香織さん。全死さんを見つけました」
 荻浦嬢瑠璃の指差した先には、確かに全死の姿があった。
 見紛うはずもない。あんな奇抜な服装を平気でできる三十路近くの女など、この世にはそういない。
視点をもっと上のレヴェルへ引き上げればそういう人間など佃煮にするほどいるだろうが、それは俺の知っている世界ではない。
俺にとっての『この世』とは極めて限定された範囲の中の話だ。
「やれやれ。虱潰しに大通りの店を覗いて回った努力がやっと実を結んだわけだ」
 俺がため息混じりに呟くと、嬢瑠璃は心外そうに異を唱えてきた。
「絨毯爆撃と言ってください」
「どっちでもいいよ」
 とりあえず、嬢瑠璃と肩を並べて全死がいるオープンテラスのカフェへと歩いていった。
 「肩を並べて」というのは言葉の綾だ。嬢瑠璃の身長は百四十センチそこそこ、俺の肩より下に嬢瑠璃の頭がある。
 だが俺は習慣を重んじる人間だ。「肩を並べて」という慣用句が存在するならそれに敬意を払わなければならない。
 全死は呑気にもチキンカツサンドを頬張りながらビールを飲んでいた。
 俺の目を引いたのは、そのテーブルに並べられた料理の山だ。
 所狭しと敷き詰められた皿の数は、見てるだけで食欲を削がれる。過ぎたるは、という典型例だろう。
 なんだこれは、と思いながら、全死に呼びかける。
「全死さん。こんなところにいたんですか。探しましたよ」
「よお、辺境人(マージナル)。それから嬢瑠璃ちゃんも。なんだい、ずいぶんと遅かったな」
「遅かったって……待ち合わせ場所から勝手に離れて気ままにウィンドウショッピングを楽しんで
エウリアンを冷やかして無駄に時間をつぶして挙句の果てに昼間からビールかっ食らってる全死さんがそんなことを言うんですか」
「なんだ? ずいぶんと事細かにわたしの行動を把握してるじゃないか。ストーキングか? いい趣味してるな」
「足取りを追ったんですよ。全死さんを探して文字通りの右往左往です。
俺はローレシアの王子じゃないんです。こんな徒労は好みじゃありません。もちろん趣味でもありませんからね。
なにが悲しくて探偵業の職業訓練に励まなければならないんです。俺の進路にはそういう予定はありません。
そもそも将来の展望なんて持ってないんですから、俺の進路を決定させるような行動は慎んでください。
端的に言うなら勝手にちょろちょろ動き回らないでください」

157 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 00:57:55 ID:B0NsTG0u0
 ここまで一気呵成に述べ立てて一息つき、ふと、あることに気がつく。
 テーブルの上の料理が減っていた。
 考えてみれば当然の話だが、ここに並べられた料理は食べられるために存在してるのだ。
 つまり、この牛の餌のごとき量を平らげてるやつがいるということである。
 全死は関脇とでも同席してるのか? と思い、今まで全死と料理に取られていた気を取り戻して全死の対面に差し向ける。
 ──軽く眩暈がした。「あ」とかなんとか、その類の声を上げたかもしれない。
 つい先日に起こったイレギュラー中のイレギュラー、『仕事』を目撃されたその張本人たる目撃者であるところの女子高校生と職業不詳の男がそこにいた。
 男は極めて無表情に俺を眺めていた。少女は俺の存在に気づいていないらしく、無心に数々の料理に食らいついている。
「どうしたんですか、香織さん。犯行現場を目撃された犯罪者のような顔をしていますよ」
 嬢瑠璃がそう言って、固まってる俺の顔を覗き込んできた。
「……それ、君は分かってて言ってるのか?」
「なんのことでしょうか?」
「いや、そんなことより──全死さん、この人たちは誰ですか」
 全死は「はあ?」というような顔をし、それから大儀そうに答える。
「桂木弥子ちゃんと脳噛ネウロ」
 聞いてるのは名前ではない。そんな識別子は今現在必要とされている情報ではない。
「全死さんとの関係性を聞いてるんです」
「完璧に徹頭徹尾の全然まったく無関係だ。
それに、どっちかと言うとお前の知り合いじゃないのか? お前のメタテキストが弥子ちゃんに引っ掛かってたぞ、辺境人(マージナル)」
「話したでしょう。『仕事』を目撃されたって。この人たちですよ」
 つまらなそうに耳をほじりながら応答していた全死が、ここで初めて興味を示した。
「あ、なになに? そうなの? そりゃ大変だ。よし、今すぐ口を塞げ。わたしが許す。
おい、どうするよ脳噛ネウロ。今からこの辺境人(マージナル)がお前を相手に白昼堂々公開殺人を敢行してくれるそうだぞ」
 声が大きい、と思ったが今さら言っても遅いので黙っておく。
 少女はまだ料理を食べることに夢中になっていた。餓鬼道にでも落ちているのだろうか。前世の業とは恐ろしいものである。
「ほう……我が輩を殺すのか? やってみるがいい。遠慮はいらない」

158 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 00:59:09 ID:B0NsTG0u0
「貴方もこの人の言うことを真に受けないでくださいよ。──ああっと、脳噛ネウロさん」
「……漫談師みたいな名前ですね」
 嬢瑠璃が俺の耳元でそんな感想をぼそっと漏らした。
 この子は日に日に物言いが全死に似てきているような気がする。
 ペットは飼い主に似る、というやつのヴァリエーションだろうか。
 全死に毒された美少女女子中学生の末路がこれとは、彼女の親も草葉の陰で泣かずにはいられないだろう。
「そっちの小娘は何者だ? 貴様たちの同類か?」
 と、脳噛ネウロは顎をしゃくって嬢瑠璃を示す。
 嬢瑠璃はともかく、全死と同類項で括られるのは甚だ不本意な話だった。俺は全死のような社会不適合者とは違う。
「荻浦嬢瑠璃です。全死さんの同類というよりは……その、妹分です」
 嬢瑠璃は不審感を露わにしながらも、形だけは礼儀正しくお辞儀をして見せた。
「自己紹介が恙無く済んだところでそろそろ話を本題に戻していいですかね。──全死さん、なにをやってるんですか?」
「なにって、食事さ」
「どういう経緯でこの人たちと食卓を囲んでるのか、伺ってもいいですかね」
「弥子ちゃんが可愛かったから今さっきナンパした。それでお近づきの印に食事を奢っているのさ。聞いて驚け、なんとBダブルプラスだぞ」
 相変わらず言うこと全てが意味不明な女である。
「……Bって?」
「人間の格の話だよ。嬢瑠璃ちゃんといい勝負だよ、この子は。嫉妬しちゃうかい、嬢瑠璃ちゃん」
「いいえ、毛の先ほども。全死さんが誰をどのように評価しようとも、わたしと全死さんとの間にはなんの影響もありません」
「あらら、ちょっとくらいはジェラシー感じてくれてもいいんじゃないの?」
「そういう情緒的な反応をわたしに求められても困ります」
 嬢瑠璃は硬質な声音でぴしゃりと言い放った。さすがというべきか、素面で全死の会話についていけるのは彼女くらいだろう。俺も見習いたいものだ。
 嘘だが。

159 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 01:00:42 ID:B0NsTG0u0
「……しかし、辺境人(マージナル)とやら。我が輩と我が輩の下僕を始末しなくていいのか?」
 脳噛ネウロはそんなことを言いながら、テーブルの中央に置かれたタバスコの壜を取り、いとも容易くその首をへし折る。
 そして、あろうことか──その中に満ちる真っ赤な液体を、今なお旺盛な食欲で食べ続ける少女の目の前の皿にぶちまけた。
 そして、あろうことか──少女はそれに気づく素振りも見せずに料理を口いっぱいにかき込み、
「…………」
 ポクポクポクチーンという効果音が聞こえてきそうな沈黙が五秒、その後、
「ぶぼぉっ!!」
 朱を入れたような顔色の少女が喉を押さえて悶絶し始めた。それはたっぷり三十秒ほど続いた。全死はげらげら笑っていた。
「な、なにすんのよネウロ!」
「注意力散漫だぞ、ヤコ。前を見ろ」
 犬のように舌を出してひいひい言う少女の前で、ネウロは俺を指差す。
「はあ? なにがよ──って、あーっ!」
 少女も口を丸くして俺を指差した。


 開いた口が塞がらないとはこのことだった。
 あの日の鮮烈な映像がわたしの脳裏に甦る。
 映画館からの帰り道、あの路地裏の、死体と、石と、生まれなかった『謎』と、殺人者と──。
「さて、もう一度訊くぞ、辺境人(マージナル)とやら。我が輩と、この食い意地の張った我が輩の下僕を始末しなくてもいいのか?」
 なんで彼がここにいるのか前後関係がさっぱり分からないが、ただ一つ言えることは、大ピンチということだった。
 わたしは目の前の青年が殺人を犯すところを目撃してしまった。
 ネウロの個人的な理由により、警察にはその旨を届け出ていないが、そんな事情など相手にはお構いなしだろう。
 『探偵』として数多くの犯罪者を目の辺りにしてきたわたしは知っていた。
 『悪意』には防衛本能があるということを。
 だから、悪意をもって誰かを殺すとき、行為の痕跡は隠蔽される。
 その機構が『トリック』を生み、『謎』を生むのだ。
 その原理原則に従うなら、「見られたからには生かしておけない」という考えが彼に沸き起こるのは当然の成り行きだろう。
 事実、あの晩、わたしは殺されかけたのだ。

160 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 01:02:08 ID:B0NsTG0u0
「さあ、どうした。我が輩を殺さなければ貴様の殺人行為が露見してしまうぞ」
「ちょ、ネウロ! なに挑発してんの!?」
 そりゃネウロは魔人だし、べらぼうに強いからいいだろうが、わたしは普通の人間なのだ。
 これまではなんとなくのノリのような雰囲気で何度かわたしを危険から守ってくれたネウロだが、今このときも守ってくれる保証などない。
 日々の虐待の憂き目を思うに、やはり最後は自分で自分の身を守らなければならないのだ。
 逃げる算段をしようかそれとも武器になるものを探そうかとパニックになりかけたわたしだったが、
「──全死さん」
 彼は、わたしに食事をご馳走してくれた飛鳥井全死さんの名前を呼んだ。
 どうやらこの二人は知り合いのようだった。そういえばそれっぽいことを全死さんが言っていたような気がする。
「なんだ? 今はわたしの出る幕じゃないぞ。ずっとお前のターンだ。戦闘レヴェルでならお前に勝てるやつはいないよ。自信を持て」
「それはまあ自覚してますが……俺がここでこの二人を殺した場合、『保証』してくれますか?」
「オーケイ。有象無象のメタテキストくらい、二十人でも三十人でもいじってやるよ。
お前がこの場でなにをしようとも、一切合切『なかったこと』にしてやる。良かったな、後顧の憂いなく殺しまくれるぞ。武運を祈る」
「そうですか。なら──」
 と、青年は首を振り、
「帰りましょう」
「そうそう、お前のエレガントな殺しの芸術を──って帰るのかよ!?」
 ……現実にノリツッコミをする人を見るのは、(自分以外では)初めてだった。
「なんだあ、この根性なし! 素人童貞! 鈍色鮪! 連続殺人鬼! お前はそれでも辺境人(マージナル)か!」
「全くだ。失望したぞ。この虫ケラめ、プラナリアにも劣る」
 なぜかネウロも一緒になって彼を罵倒していた。なにをしたいんだアンタは。
 二人の十字砲火を受けて、彼は憂鬱そうに深いため息をついた。
「はあ……どうしてみんなそう血の気が多いんですかね。温厚な俺が馬鹿みたいじゃないですか」
「だってお前馬鹿だろ」
「馬鹿で結構ですから、とにかく帰りますよ。……脳噛ネウロさん、俺の目は節穴じゃないんです。
どうしても俺の『不可触(アンタッチャブル)』のスペックを確かめたいようですけど、その手には乗りません。
俺は『敵意』を伴った攻撃を自動的に回避できます。それが『不可触(アンタッチャブル)』です。
でもそれは、戦わないための『能力』です。戦場の境界線上に、勝者と敗者の狭間に留まり続けるためのものです。
ご期待に沿えず誠に残念ですが、俺にはあなたと戦う理由が存在しません」
「我が輩が貴様の情報を警察機構に漏らす──と言ってもか?」

161 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 01:19:47 ID:B0NsTG0u0
「ですが、今のところ司直の手が俺に伸びている様子はありませんよね。
何故かは知らないけど、貴方たちは俺の存在を公けにするつもりがないようです」
 わたしは、はっとなってネウロを見た。
 彼の言っていることは図星だった。
「……我が輩の気が変わったらどうするつもりだ?」
「物事には自走性があります。慣性と言い換えてもいいですけど、一度決めたことは、そう簡単には覆らないものです。──それに」
 彼は全死さんの方に視線を送り、
「今、確認しました。全死さんの『保証』は有効のようです。つまり、遡って有栖川健人の件すらも『保証』の有効範囲だということです」
「はは、そこまでわたしを信頼してるのか。感動ものだな。愛してるよ、辺境人(マージナル)」
「茶々を入れないでください、全死さん。それに信頼じゃなくて信用です。……ま、とにかくそういう訳です」
 そして、今度はわたしを見た。
「桂木弥子、だったっけ? 心配しなくても君に危害は加えない。目撃されたあの瞬間ならともかく、今となっては殺す意味があまりないからな」
 はあ、そうですか、としか言いようが無かった。
「はあ、そうですか」
 話の筋はよく分からないけれど、とにかくわたしの口を封じる意思はないらしい。
 ──しかし、なにかが引っ掛かる。
 わたしはネウロの操り人形として、様々な犯罪者、様々な『悪意』に出会ってきた。
 そのいずれにも、彼は当てはまらないような気がした。彼のような犯罪者は初めてだった。
「ふん……まあ良かろう。この場は見逃してやる。しかし、貴様等には『謎』の気配が付いて回っている。
いずれそれを解い(くっ)てやるから覚悟しておくがいい」
 ネウロはネウロで一人で勝手に納得していた。なにか満足できる結果は得たらしい。
「どういう種類の覚悟かは分かりませんけど、了解しました。ほら、全死さん、帰りますよ」
「やだ。もっと弥子ちゃんとお話しするんだ」
「子供ですか、もう……。なあ、君もなんとか言ってやってくれよ」
 気が動転して今まで見えていなかったけれど、彼の背後に中学生くらいの女の子が立っていた。
 青年の頼みに応じ、その女の子はまるで子供をあやすように語りかける。
「帰りましょう、全死さん。途中で唐揚げ弁当買って差し上げますから」
「じゃあ帰る。バイバイ、弥子ちゃん。近いうちにまた会おうぜ」
 全死さんは拍子抜けするくらいにあっさりと立ち上がった。
 女の子はわたしにぺこりと頭を下げ、小走りに全死さんの後を追っていった。

162 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 01:20:55 ID:B0NsTG0u0
「じゃあ、俺もこれで」
 と、軽く会釈して立ち去りかけた青年の背中へ、
「あの」
 わたしは思わずそれを追いかけ、呼び止めていた。
「……なに」
 大通りの信号が赤になっていたのが幸いしたのか、彼は歩みを止めて振り返った。
 呼び止めたはいいが、なにも思い浮かばなかった。
「えーと、その、名前、聞いてもいいですか」
 何も考えずに口から出るに任せて、そんなことを言った。
「どうしてだ? はっきりさせておくけど、俺は君たちとは交渉を持ちたくない。
俺はレギュラーを重んじる性質なんだ。君たちのようなイレギュラーとこれ以上関わるのはご免だ」
「でも、あなた、わたしの名前を知ってます。それって不公平ですよね」
 言ってる本人ですら無茶苦茶な理屈だったが、意外にも彼は少し考えてそれに頷いた。
「なるほどね。条件を同じにしておこうという訳か。そのディフェンス観念は理解できる」
 彼は財布を取り出し、そこから一枚名刺を抜き取って、それを裏返しにしてわたしに渡した。
「え、あ、どうも」
 わたしも慌てて『探偵』用の名刺を取り出し、彼に差し出す。
 名刺交換なんて慣れないことだったので動きがぎこちなかったけれど、彼は特には気にしてないようだった。
「……ひとつ、訊いてもいいですか」
「答えられることならね」
「さっき、全死さん、あなたのことを『連続殺人鬼』って言ってましたけど、本当ですか」
「世間的にはそういうレッテルが貼られるな、鬱陶しいことに。まあその通りだと自分でも思うけど」
「だけど、自分の『能力』は勝者と敗者の狭間に留まり続けるためのものだって言いましたよね。
なら……どうして人を殺すんですか。勝者になるつもりが無いなら、人を殺す理由、ないと思いますけど」
 言いながら、わたしはあの晩に抱いた感想を思い出していた。
 彼には『悪意』が無かったのではないだろうか。だから、『悪意』を保護すべき『謎』が生まれなかった。
 しかし、『悪意』が無いのなら、どうして彼は人を殺すのだろうか。
 わたしは固唾を飲んで彼の答えを待った。それほど時間は掛からなかった。
 彼はちょっと肩をすくめ、いとも簡単な口ぶりで言った。

163 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/03(火) 01:25:31 ID:B0NsTG0u0
「習慣だからな」
「……え?」
「俺には人を殺す習慣がある。その習慣に則って定期的に人を殺している。
人を殺すのが好きなわけじゃない。中毒でもない。
朝起きたら歯を磨くようなものさ。面倒くさいけど、習慣だからそれをやる。ただそれだけのことだ。
俺にだって道徳観はあるし、人の命が失われるのは残念に思うけど、優先順位の問題だ。俺はレギュラーを優先する。
ただまあ、もちろんこれは犯罪行為だから、あまりおおっぴらにやれることじゃない。
全死さんが持ってくる『仕事』のターゲットは安全だから、今は彼女の『仕事』を請け負うことでその習慣をこなしている」
「安全って……どうして『安全』なんですか?」
 まるで訳が分からなかった。
 『安全な標的』というのものが存在できるなら、この世に『謎』の存在する余地は無くなるのではないだろうか。
 ネウロの主食である『謎』がこの世から消えてしまったら、ネウロはいったいどうするのだろうか。
「あの人はメタテキストをいじれるからな。……言っておくけど、『メタテキストってなに?』って質問は禁止だ。
俺にだって良く分からない。本人は『そいつの視座が見えるんだ』とかなんとか言ってるけど、俺にはメタテキストが見えない。だから分からない」
「全死さんとはどういう関係なんですか? なんか、傍から見ててすごく奇妙なんですけど」
「あの人とは……子供のころに家が近所だったんだ。幼馴染と言えばそうだろうけど、そんな牧歌的な表現は微妙に違和感があるな。
関係がレギュラー化したのは、俺が中二のとき、俺が同級生を殺したことをあの人がどこから嗅ぎ付けてきて、
面白がって密室殺人に仕立て上げたのが馴れ初めってやつさ。……そのお陰で俺は逮捕されかけて精神病院に送られそうになったけど」
 信号が青になった。
「他に聞きたいことは?」
 わたしが黙っていると、彼も黙って横断歩道を渡っていき、やがてわたしの視界から消えていった。
 手に触れる紙の感触で、わたしは彼の名刺のことを思い出す。ひっくり返して表を読むと、そこにはこうあった。
『初めてでも安心 趣味の殺人者 香織甲介』
 確信はないけれど、このロゴは全死さんが考えたのではないかと直感的に思う。彼女はこういう悪ふざけが好きそうだ。
 悪意なく人を殺す青年と、『悪意』の塊のような女性と。
「なんなのよ、もう……」
 動く人の波に揉まれながら、わたしは途方も無い脱力感に襲われてその場にへたり込んだ。


 ──世界は謎に満ちている。今は、まだ。

164 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 01:27:17 ID:B0NsTG0u0
以下の点について認識を統一させておきたいので、付記します。

・これは松井優征「魔人探偵脳噛ネウロ」と、元長柾木「飛鳥井全死は間違えない」のクロスオーヴァです。
飛鳥井全死、香織甲介などの主要人物は断じてオリキャラではありませんからして悪しからず。
ss中に意味不明のロジック・単語が頻発することもありますが、あまり気にしないでください。
八割がたは俺の筆力の問題ですが、残りの二割は「飛鳥井全死は〜」特有のブッ飛んだ作風に由来するものです。

・カマイタチ氏の名誉の為に明言しておきますが、自分はカマイタチ氏ではありません。

165 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 01:34:25 ID:8TlNj7ti0
お疲れ様です〜
ネウロは大好きですが、飛鳥井全死というのは知りません。
けれども、作品から感ずるゾクゾク感は素晴らしいです。
趣味の殺人者や、魔女のような女と、魔人ネウロ。
それを突っ込みながらもある意味達観して語る、ヤコ。
物語の終着点は想像もつきませんが、期待しております!

>『敵意』を伴った攻撃を自動的に回避
ジョジョの無敵スタンドのアレ(名前失念)みたいなもんかな?




166 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 08:23:24 ID:uaW0Gd0u0
お疲れ様です。
特異な存在なのに、なんか可愛らしい感じもする全殺。
嬢瑠璃といいコンビですね。ネウロと弥子みたいな感じかな?
ネウロとどう決着つくかわかりませんが、
ネウロはその無敵な能力の壁をどう乗り越えるんだろう。

167 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 10:50:50 ID:A3EkT12J0
GJ!ネウロ好きにはたまらん作品だな。
このクオリティのまま最後までいってほしい。

168 :不殺:2007/07/03(火) 21:26:51 ID:iGS0k3Fj0
 緋村剣心、三十五歳。
 たった今、人を殺してしまった。
 道場に押し入った強盗を、近くにあった木刀で一撃。打ち所が悪かった。
 飛天御剣流を封印し肉体も衰えたとはいえ、かつては日本最強とも謳われた剣客。賊一
人を打ち殺すなど訳はない。長らく戦いと無縁の生活を送っていたため、格下に対する力
加減を誤ってしまった。
 事件が発覚すれば人斬り抜刀斎の雷名をちらつかせるまでもなく、正当防衛で無罪放免
は間違いない。
 だが、剣心にとってそんなことはどうでもよかった。
 真夜中。うつ伏せに沈む強盗を見下ろしながら、剣心はある思いに打ちひしがれていた。

 “不殺(ころさず)”を破ってしまった──。

「しまったでござる」
 軽いパニックのためかまるで他人事のように呟く剣心。
 深夜にあるまじき物音と気配。まもなく妻と息子が布団から出てきた。
「ちょっと剣心、何があったの!?」
「どうしたの、こんな夜中に」
「拙者、人を殺めてしまったでござる」
 またしても他人事のように呟く。
 彼の足もとでぐったりしている男を一瞥し、全てを察した薫は励ますように言った。
「諦めないで剣心! まだ死んだって決まったわけじゃないわ!」

169 :不殺:2007/07/03(火) 21:28:39 ID:iGS0k3Fj0
 緋村一家は一致団結し、あらゆる蘇生処置を試みた。
 耳元に大声を浴びせ、心臓をマッサージし、薫特製の味噌汁を口に流し込む。
 途中、人工呼吸を決行しようとする薫を剣心が男心から「拙者がやる!」と突き飛ばす
などのハプニングも起こった。
 彼らは夜通しで力を尽くしたが、残念ながら男は生き返らなかった。
 暁光は強盗の色彩を残酷なほど鮮やかに描き出す。血の気は全くなく、肌は雨が近い空
のように白んでいる。
 がっくりと肩を落とす剣心。
「やはり拙者は不殺を破ってしまったのか」
「いいえ、まだよ! そうよ剣心、恵さんを呼べば──」
「今、恵殿は会津にいる。いかに彼女が名医といっても、とても間に合わぬよ」
 男は明らかに息絶えている。たとえ恵がこの場にいたとしても、医師として彼の死亡を
宣告することしかできなかったにちがいない。
 いよいよ不殺破りが固まりつつあり、ますます沈み込む剣心と薫。
 まだ幼い剣路も、両親から放たれる暗雲からこの事件が持つ意味を彼なりに感じ取って
いた。
「じゃあどうするの、剣心? 警察に届ける?」
「………」

170 :不殺:2007/07/03(火) 21:30:11 ID:iGS0k3Fj0
 剣心は頭をフル回転させていた。
 不殺の誓いは剣心が“抜刀斎”から脱却するための絶対条件。たとえ過失とはいえこん
なところで破ってしまっては、剣と心を賭してまで成し遂げようとした彼の人生は全て無
に帰す。
 かといって、ここから不殺を貫くのはもはや不可能に近い。人を生かすのは、人を殺す
よりはるかに難しい。妖術使いでもなければとても──。
「……妖術使い」
 ふと、剣心は過去に戦ったある男の存在を閃いた。そしてそれを神速で名案へと昇華さ
せる。
「薫殿! 今から拙者の言うとおりに葵屋に手紙を書いてくれ!」
「どうしちゃったの剣心。いくら御庭番衆でも死者を生き返らせる方法は知らないと思う
けど……」
「百も承知。蒼紫には人探しをしてもらうでござる」
「人探し?」
「剣路は眠っている彼を物置まで案内してやってくれ」
「うん、分かった!」
 あくまでも強盗を生きている人間として扱うところからも、剣心の不殺に対する並々な
らぬ執念が分かる。
 それから妻と子は大黒柱の指示に従い、きびきびと働いた。

171 :不殺:2007/07/03(火) 21:32:06 ID:iGS0k3Fj0
 一週間後、神谷道場を二人の男が訪れた。
 一人は御庭番衆御頭、四乃森蒼紫。そしてもう一人。
 剣心と蒼紫は二度も剣を交えた戦友。ましてや久方ぶりの再会である。にもかかわらず、
蒼紫の言動は普段と変わらず事務的かつ無感動。さすがは現実主義の隠密、といったとこ
ろか。
「すまん、遅くなった。少々手こずってな」
「いやご苦労でござった、蒼紫。で、そちらの青年が──」
「あぁ。あのいまわしき外法の機巧(からくり)師、外印と同じ流れを汲む機巧師だ。さ
すがに腕は奴に劣るが、貴様の望みを叶えるくらいは可能だろう」
 剣心を戦闘で苦しめ、さらには落人群へと陥れた外印の機巧術。知らぬ者が見れば妖術
としか表現しようがない魔技。外法とはいえあれほどの技術がひとつの流れだけに収まっ
ているわけがないという剣心の読みは当たっていた。
「よろしくお願いします」
 青年が口を開く。
 見た目はひ弱で頼りないが、蒼紫によれば外法機巧を身につけている数少ない人物。も
っとも今は片田舎で機巧人形を作り平和に暮らしているという。鬼才新井赤空の息子、青
空を思い起こさせる生い立ちだ。
 とにかく事態は一刻を争う。さっそく剣心は来客たちを物置に案内した。

 鼻をこじ開け、侵入し、蹂躙する悪臭。
 剣心に成敗された強盗はとうに腐り果てていた。まとわりつく蝿、ドロドロに溶けてふ
やけた皮膚、転げ落ちそうな眼球。今にも崩れてしまいそうだ。
「これは、まさか……」
 驚く青年に剣心が説明する。
「拙者が打ち倒した男でござる。おぬしを呼んだのは他でもない。おぬしの機巧技術で、
彼を治療して頂きたい」
「なんですって!」
「できぬでござるか」
「いや、彼を機巧人形にすることはできますが、果たしてそれを治療と呼ぶかどうか……」
「治療でござるッ!」
 往年の気迫が込められた剣心の眼光に、青年は瞬時に屈服した。
「ヒッ! ……は、はいっ! 分かりました、治療しましょう!」

172 :不殺:2007/07/03(火) 21:33:19 ID:iGS0k3Fj0
 緋村一家、蒼紫、弥彦と燕。彼らが見守る中、青年の“治療”が開始された。
 まず防腐処理が施され、体の中に詰まっている異物、つまり内臓が全て摘出された。
 次にがらんどうとなった男の体内に、内臓の役割を果たす機巧が次々に組み込まれる。
剣心たちは外法機巧の製作現場を見るのは初めてだが、青年の手さばきはまさに妖術を髣
髴とさせるものであった。
 仕上げに腐敗で醜くなった外観を細工や化粧で整え、治療は完了した。
 全工程に要した時間、およそ半日。青年は額の汗を拭い、達成感に満ちた笑顔を振りま
いた。
「終わりました。ねじを巻けばちゃんと動きますよ」
「ご苦労だった」
「では、ぼくはこれで……」
「いや」すでに蒼紫は両手に小太刀二刀を構えていた。「そうはいかん」
「え?」
「あの手際の良さ、過去に死体を弄んだ経験が数多くあるはずだ。外法の悪は外法の力を
もってさらなる闇へと葬り去る。これが俺の使命だ!」
 ──回天剣舞六連、発動。

 カタカタカタカタカタカタ……。
 ねじ動力で、ぎこちなく歩き回るツギハギだらけの強盗。
 庭の隅で細切れの肉片になっている青年をよそに、仲間は歓声を上げた。
「これで万事解決ね、剣心!」夫に抱きつく薫。
「やったね!」バンザイする剣路。
「口封じは済ませておいたから安心しろ」小太刀の血を拭き取る蒼紫。
「やっぱり剣心に不可能なんかないぜ!」拳を振り上げ、喜ぶ弥彦。
「おめでとうございます。剣心さん!」拍手する燕。
 見事不殺を貫き通した剣客は、照れ臭そうにしながらも誇らしげに笑っていた。

                                   お わ り

173 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2007/07/03(火) 21:36:55 ID:iGS0k3Fj0
梅雨SS四発目。
原作とはかけ離れております。

174 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 21:51:15 ID:CXCnFsfq0
>脳噛ネウロは間違えない
小説も漫画も好きなのでこの作品は今一番楽しみかも。
確かに、お互いのキャラ同士の世界観は共通している部分はあるねw

>不殺
サナダムシさんのるろうに剣心ネタって初めてだったっけ?
どこまで深いんだ、あなたはw 休養終わって絶好調になったみたいで嬉しい。


ちなみに、「飛鳥井全死は間違えない」を知らない方の為に。↓
ttp://homepage1.nifty.com/stratosphere/appendix/teslagirl.htm

175 :作者の都合により名無しです:2007/07/03(火) 23:29:36 ID:8TlNj7ti0
お疲れ様ですサナダムシさん〜

どこが梅雨SSかわかりませんがw楽しかったです。
サイボーグにでもなるオチか、と思いましたが。
斉藤ならあっさりと殺して終わりそうですが検心は悩みますね。
あれだけ殺しておいて、今更不殺もないもんだと当時思いましたw


176 :作者の都合により名無しです:2007/07/04(水) 01:22:15 ID:P7LH1t4x0
>>174
サナダムシさんはけっこうるろ剣ネタ書いてますよ
志々雄とか、バキドラえもんの二重の極みネタとか

177 :作者の都合により名無しです:2007/07/04(水) 08:22:32 ID:wmIIti0z0
サンダムシさん乙。蒼紫は死神ですな。
復活後に短編4連発でうれしいです
そろそろうんこも来るかな?


178 :作者の都合により名無しです:2007/07/04(水) 11:38:15 ID:c+ZNRGax0
サナダムシさんは書き始めると連打凄いなw
またふっと休まれるような気もするけど・・
もしかして学生の方なのだろうか?

179 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:13:36 ID:OihRHhOw0
化石魚、寿命を無視し過酷な海で生き延びる事で生まれる巨大な魚類モンスター。
見た目はただの巨大な魚に見えるが知能は高く、ある程度の術技を使いこなす。
顎の筋力も見た目以上に発達しており、サメやクジラの子供も食い千切る事が可能。

「水中じゃ不利だ、銛を打ち込んで甲板に引き上げるぞ!」
太く丈夫な縄を銛に括りつけ、船から身を乗り出す。
澄んだ美しい海の中では、ケンシロウ以外の生き物は化石魚を恐れて逃げてしまっていた。

化石魚も一筋縄ではいかない相手である事は見抜いていたのだろう。
長い年月を生き延びた経験が、ケンシロウに近寄る事を拒んでいた。
周囲をグルグルと廻り様子を見ると、口を開け、何かを吐き出した。
高速で打ち出される水弾、これを続けざまに五発撃ちこむ。
すべて闘気によって蒸発させる、恐らくこんな経験は初めてだろう。
動揺したのか動きを一瞬止めたが、すぐ泳ぎ出し先程の様に廻り続ける。

今度は急激に距離を取る、逃げたかのように思えたがそうではない。
術の詠唱に入ったのである、水の攻撃術ウォーターガン。
水の術では数少ない攻撃術だが、威力に秀でてはいない。
それも、使用者の知力しだいではあるが。

魔力で出来た魚が集まる、一般的な術師は1匹出して終わりである。
だが、化石魚は上位に位置する悪魔と同等の知能を持ち合わせている。
文字通り海に住む悪魔なのである。

カジキマグロのように逞しい魔魚が3匹生み出された。
巨大な魔力の塊が猛スピードでケンシロウへと突撃する。
魚の姿をしていても魔力で生み出された生物なので、
魔力で出来た盾を張らない限り防ぐ事は出来ない。一部の例外を除いて。

人の体内には「気」、チャクラとも呼ばれる力が存在する。
それは物理的な物ではなく、霊的な物に近く、
術者次第では善にも悪にも、時として光にも闇にもなる。

180 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:15:21 ID:OihRHhOw0
この気を用いて使われる術は、他の術とは使用法が異なり、
攻撃よりも己の力を増幅させるのに用いられる。
非力な魔術師でも並の戦士と同程度の能力を得る事が出来る。

だが、ケンシロウは術者ではない。それは化石魚でなくとも分かる。
彼からは魔力の様なものは一切感じられず、術については素人を通り越して無能である。
見た目からは様々な武器を操り、その上、己の四肢までもを武器と出来る武芸家と呼ばれるクラスが近い。
このクラスを習得するのにも気術が必要なのだが、使い方は放出するか肉体強化に限定されていた。

人が水中で手足を動かさずに沈まない、そんな事がある筈がないのだ。
退化した目では捉える事が出来なかったが、徐々に男の危険性に気付き始める。
そして気づいた最も危険な事実、この男は『気』術に限定して言うなら『未知』の領域まで達している。

3匹のカジキマグロはケンシロウに触れる前に壁に阻まれていた。
闘気によって生み出された壁が、魔力によって生まれた魚をかき消す。
最初に撃った水弾が蒸発していたのを考えると物質的、魔導的な両方の熱を備えている。

今まで永く海で過ごしてきた、生き延びるのに必要な勘は、
他の仲間に比べ、ずば抜けていたのは自分についた化石魚という名称が示している。
群れをなした所で勝てない相手、そんな事も分からなずに挑む仲間を不思議に思っていた幼魚の時。
ちょっと長く生き残れば群れのリーダーになるのは簡単だった。
消極的になる事が多かった、実力をわきまえていたからだ。
サルーインの復活による影響で気性が荒くなっていき、冷静を保てない者は死んでいった。

今まで一度として強敵を見抜けないことはなかったが、男の異変と共に感じた物。
己の死期、天命ではなく戦って死ねる、邪神の復活のせいか魔物としての本能か、
全力で逃げれば生き延びられるかもしれないのを、体がそれを拒み戦いを望んだ。
いつも以上に冷静を保ちながらも、身体は海に包まれているとは思えな程に熱い。
男への畏怖と同等の期待を胸に膨らませながら、鮫よりも鋭い歯をケンシロウへと向け猛スピードで突進する。

181 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:17:23 ID:OihRHhOw0
真っすぐに突っ込んでくる化石魚に、腕を振り下ろす。
岩山両斬波、北斗真拳には珍しく秘功への攻撃ではない、鍛え上げた肉体から放たれる手刀。
人外の硬さを誇ってはいたが、魚鱗にヒビが入っていく。
だが化石魚の勢いを止めるには至らない、軌道を逸らしながら身をよじってかわそうとするも、
鋭い牙による裂傷を負う。
丸かじりになるのは避けたが、こちらの方がダメージが大きい。

(秘功が・・見えん!)
飛龍リオレウスとの戦いでもそうだったが、人間と生態系の全く違う生き物は血管の位置も全く違う。
拳を全力で握りしめる、寒気が筋繊維の一本一本を縛り付けて力が抜けていく。
闘気が薄れていく、暗殺者として鍛練された肉体に不備は無い。
現に水中で激しく動き回ったにも関らず、息苦しさは感じない。
理由は一つ。

『愛』に代わって『失望』をその身に刻んでしまったケンシロウからは闘争心が失われていた。

悪人を容赦なく殺し続けてきた日々への疑問、それは強敵達の死を無意味と捉える事に近かった。
罪のない人々を守るために数多の屍を荒野に野ざらしにして来たが、
己の強大な力は同等の力を持つ者を呼び寄せ、失われる筈のない命まで失われていった。
悪党を放っておけば更なる被害が出る事は解っていた、否、解っていたと思っていた。
本当に罪のない人々だったのか、死の死者と呼ばれる自分の旅立ち。
それを感謝の言葉で見送ってくれる優しい人々の背後にいつも不安を感じていた。

思いすごしと村を後にし、3日後に戻ればそこは廃墟。
悪の気配を放つ者が言う事を聞かず抵抗すれば、罪を犯す前でも殺すことにした。
血塗られた手を見る度に、殺してきた者達の呻き声が聞こえる気がした。
このままではいつか狂ってしまう、そんな不安を感じた時、光が包んだ。
そしてこの見知らぬ大地、マルディアスへと辿り着いた。

この土地で過ごす内に、気づき始めていた自分の本心に気づいてしまった。
元の世界へ帰って、心正しい人々を救う北斗の使命の裏で、
終わりのない人殺しを止めたいという己の弱き思いに。

182 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:19:26 ID:OihRHhOw0
目の前に居る男の闘気が激しく揺らぎ、強まる、弱まるを繰り返している。
勝機を感じる、死を運ぶと思われた男から勝利を奪い取る。
長く生き延びる事で野生には存在しない筈の『執着』が生まれた。
生き延びるためなら徒党を組み、無様に死を装い、地形を上手く扱い隠れ逃れる。
陸、海、空、全ての生物に言える事。

だが化石魚は勝利を欲しがった、目の前に居る最強の武芸者を餌にしたい。
尾を激しく動かして突撃する、泳ぎながら強力に発達した顎の動作を確認する。
今まで大抵の獲物を甘噛み程度で食い千切って来たが、本気で獲物を噛み切ろうと試みたのは初めてである。

(ここまでなのか・・・強敵よ、もう一度だけ俺に力を・・・!)
そう思い再び手を握りしめる、だが寒気が収まる事は無かった。
もう数秒で化石魚の歯が身体にくい込む位置まで来たその時。
真上から化石魚に銛が突き刺さった。
突然の事に驚き、その場で暴れまわった際に尾ビレでケンシロウを吹き飛ばし距離が離れる。

「手応えあったぜっ・・・ケン、今そっちにゲラ=ハが向うからなんとかしろ!」
銛から延びたロープはマストに括りつけられていおり、化石魚の動きを制限していた。
丈夫に編み込まれた魔物の捕獲用の物が災いしたのか、メキメキとロープが食い込んでいった。
「げぇっ、修理代が・・・くそっ、本当に海軍から船でも盗むか。」

予想外の出費にオロオロしてしまうキャプテン・ホーク。
非常事態だというのに、船員が少なくて恥しい場面を見られるのを回避したのに安心を感じてしまう。
すぐに船から海を見下ろし、ゲラ=ハの小型ボートの姿を捉え、そこに向かって飛ぶ。
勿論、直接乗ったら粉々になってしまう恐れがあるので正確には海の上だが。
ゲラ=ハは船の上で水中を見つめ古代魚の動きを追っている。
船が錨を下しているにも関わらず動いている、初めての経験だった。

「ケンシロウはどこだ?さっきまで身体中を光らせてたくせにどうしたってんだ!?」
水面を見まわしてみると不自然にブクブクと泡が浮き上がっている。

―暗い・・・また俺は強敵達の居る所へ来てしまったのか?―

183 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:45:47 ID:OihRHhOw0
―強いな、レイ。美しく軌道の読めない、しなやかな動き。俺の力押しの戦いとは大違いだ―

―サウザー、やはりお前こそ皇帝だな。身体の秘密は判ってるのに全然勝てる気がしない。―

強敵達と延々と組み手をし続けた、不思議と体は疲れない。

―シュウ、フドウ、ファルコ・・・―

―シャチにヒョウ、カイオウまで来てくれたのか・・・俺が勝てそうな奴は居ないな―

「嫌味のつもりか?私と立ち会った時よりずっと強くなったように見えるぞ。」
「あのラオウを倒した男が、俺より弱い訳ないだろう。」
「義足の男をおだてた所で、何もでぬぞ。」
「フフ、シャチの不意打ちがなくとも俺には勝てたさ。」
「ヒョウまで嫌味か、肩身が狭いぜ俺は。」
「フン、今度は真っ向から戦場で鍛え抜かれた拳と戦ってみるとしよう。」

―みんな・・・そういえばユダが居ないな。レイ、あいつも強敵だろう。一緒に・・・―

カッ・・・カッ・・・カッ・・・
足音が響き渡る、目の前にはユダが立っていた。

―久し振りだな、どうする?レイにリベンジするのか?ウォームアップに俺が・・・―

パンッ

乾いた音が響いた、顔が何故か横を向いている。
何が起こったのだろうか。

「目を覚ませケンシロウ。今のお前では、レイ相手のウォームアップにもならん。」

184 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:48:01 ID:OihRHhOw0
そういって去っていくユダ、その背中を唖然と見つめる。

「ケンシロウ、あんなのは気にせず続けるぞ。」
ラオウが目の前で構えている、顔に笑顔を浮かべながら。
何か・・・変だ。

―北斗剛掌破―
気の抜けた、闘気というよりは空気の固まりのような物がラオウにヒットする。
「どうしたのだケンシロウ?そんな気の抜けた攻撃では、俺は倒せんぞ。」
そう、ラオウはそう言う筈だ、だが何故ニヤニヤしている?
ラオウなら本気で怒る筈だ、手加減されることは拳士として侮辱されていると同じ。

「おい、大丈夫かケンシロウ?」
「ケン、ギブアップか?お前らしくないぞ。」
「ハッハッハ、戦いすぎて疲れただけだろう。ちょっと横になるといい。」
みんなが声をかけてくる、優しく穏やかに。
しかし、何かが・・・いや、何かどころではなく優しさ以外の何もかもが欠けている。

―そうだ、俺は狂っていたのだ―

笑顔の兄へと視線を向ける、優しい顔をして立っている。
他人に、いや、何よりも自分に厳しい男だった筈。
最強で、最大で、最高で、誰も上回る事の出来ない巨人。
お互いに最後の一撃を放ったあの時を思い出す、血まみれだが涼やかで見たこともない晴々とした笑み。
プライドの塊の様な兄、その兄が自分を称えてくれたあの笑顔。
この世で最も強く、偉大な男がこんな安っぽい笑顔で迎える筈がない。
全てを察したとき、熱い涙が頬を濡らすのを感じた。

―失せろ、お前達はもう、死んでいる・・・―
吐き出すようにそう言うとみんな機械のように無表情となって消え去った。
後ろを見るとただ一人、ユダだけが少しキザな笑いを浮かべていた。

185 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:50:12 ID:OihRHhOw0
〜???〜
精神の制御に失敗したようだ、死者の魂から姿だけ投影し、幻影を見せるのに成功した。
ユダの魂はデスの支配下にあるが、何故か一切の精神制御がされていない。
もしやデスの裏切りだろうか、我が主君である破壊心の兄であっても主に逆らうならば許す訳にはいかない。
だが、これでサルーイン様に逆らう愚か者共の心にプレッシャーをかけられる。
心身共に弱っている必要があるが、これから先も奴等を無事に済ませる気は無い。

側にある巨大な砂時計を模した何か、生物の肉と骨で出来ている不気味な物体から、
ザラザラと大粒の砂が降り注ぐ、それを蔑むような眼で見ながら赤衣の男が尋ねる。
「ジャギの灰が戻ったようです。如何なさいましょう。」
眠りについた邪神がドクン、と大きく鼓動すると同時に灰が黒い光となった。

「役にたたぬ男でしたな、まぁアサシン如きにしては良くやった方でしょうか。」
眠っていた邪神の目が半分ほど開かれ、口元に薄っすらと笑みを浮かべる。
黒い光は消える事無く、再び一つになって人の形を成した。

「なんと・・・!あの役立たずにチャンスを与えなさるとは、なんと慈悲深い・・・。」
そうして生まれた新たな生命が、産声の代わりに憤怒の雄叫びを上げた。

〜海〜
目を開けると、眩しい光が視界を閉ざそうと襲いかかってくる。
次にコンマ2秒ほどして気づいたのが、喉、肺、呼吸の違和感。
「・・・ゲボォッ!」
腹部に圧力が掛かると同時に、飲み込んでいた水を大量に吐き出す。

「よし、目が覚めたな。今ゲラ=ハが船の下をカバーしてくれてる。」
目を擦り、海水と涙の混じり合った生暖かい水を拭う。
そうだ、今は迷う時ではない。

「すまなかった、キャプテン。」
「礼なら後だ、ゲラ=ハは爬虫類だからな。息は長続きだが魚にゃ勝てねぇ。」

186 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:52:13 ID:OihRHhOw0
懐から石斧を取り出し、海へ飛び込む準備を始める。
「お前は体力を回復させたら援護に回ってくれ、しばらくは俺とゲラ=ハで・・・。」
ホークの肩に手が置かれた、異様に熱く大きい手だ。

振り返ると、先程まで溺れていた人間とは思えない覇気に満ちた形相の男がいた。
「俺に任せてくれ。」
そういってホークをそっと押しのけて、海へと飛び込んだ。
海の中では、ゲラ=ハが泳ぎながら槍を船のスクリューのように振り回し、高速で化石魚から逃げていた。

(不味いですね、反撃は出来ませんし息継ぎをする余裕も与えない様です。)
水圧で槍を振り回すのも、地上以上に体力を消耗する。
このままではジリ貧である、反撃の手筈をなんとかして整えなければ。

海に何かが飛び込む音が聞こえる、化石魚がそれを聞きつけ音の方へと向きを変える。
一体何があったのか、目を向けると真っ赤な光を体中に纏った男がそこにいた。

(ラオウ兄さん、今の俺がこの技を使う資格があるかは分からない。だが、見ていてくれ!)

男の胴体を守っていた闘気は全て腕へと集められた、勝った。
水中で勢いもつけず殴りかかるのは、スピードが遅過ぎて話にならない。
先程のチョップのスピードを考えれば、勢いをつけた今なら間違いなく喰える。
サメを上回る巨体で船よりも速く海を一直線に進んだ。

男の手が動いた、闘気が腕から消え、体のどこにも光が見当たらなくなった。
海で生き続けてきた古代魚、温暖な海で暮らしていたので寒さなど知らなかった。
視界が歪む、最後に見たのは自分の体から噴き出した血で染まった真赤な海水だった。
―やはり、兄さんの天将奔烈には届かないか。だが・・・―

ボートに上がり、船に戻り、化石魚を引き上げ、マストを補強し、飯を食う。
そして改めて思った、荒野で戦い続けられたのは自分の力ではなかった事を。
「先の戦いでは助かった。ありがとう、キャプテン。」
ホークは笑顔で、化石魚の頭を丸ごと入れたカレーを机に置いた。

187 :六十二話「戻れないあの日」:2007/07/04(水) 19:53:38 ID:OihRHhOw0
久々の邪神です、決してサボってた訳では(ry
なんだかプロキシの奴がまだ済んでないようですが、停滞してるので頑張ってみました。(0w0)
頑張って9レスかよ、と言うなかれ。バイトの面接に受かったのでようやく安心して書き出したのです。
しかしケンシロウのイメージが変ですね、爽やかボイスに変換すると筋肉マンしかでてきません。(;0w0)
少しヘタレな感じがしてますが、原作のケンシロウを大切にしたい方には申し訳ない事をした。反省している。
まぁフラグ立つまでこのままですけどね。それでは本日の講座。
ちなみに化石魚の設定は脳内設定なので本気にしないで下さい、大きさも自分の思い出の中での確認です。

〜感謝と講座〜

天将奔烈 今日の講座はこれだけ、両手から奔流の様に闘気を噴き出す技。
     北斗剛掌破とどっちが強いか検証してほしい所。見た目的にはこっちかも。

>>ふら〜り氏 >あれだけ豪快な殺し技の数々
       確かにあんだけ派手に殺しちゃったら吹き飛ぶ音で気づかれますな。
       実力はともかく、暗殺拳としては 南斗>>>>>>>越えられない壁>>北斗
       なんでしょうか、気付かれずに記憶奪ったりしてましたけど殺害時はいつもボンッ!
       ですからね。

>>25氏 本当に久々です、可哀想なのでホークは長めに続けようと思ってたり。

>>26氏 黄金伝説の海の幸生活への参加も当然、不可能ですね。(ノw0)アチャー

>>27氏 血管なんて体中に張ってますから一撃死ではなくても効きはすると考えました。
     スライムみたいに完全に血管のない生き物には無力ですね。(0w0)
     水竜も水生生物だけど身体は水で出来てるから多分無理。
ゲームでは効いてるんですけどね(0w0)

188 :邪神?:2007/07/04(水) 19:56:51 ID:OihRHhOw0
肝心なの抜けてた・・・>>182の次に

「よう、また来たなケン。」
懐かしい声、共に闘いの荒野を駆けた強敵の声が聞こえる。
―レイ・・・すまない、俺はまた負けてしまった・・・―

「仕方あるまい、ユリア亡き今、無理をしてまでお前が戦う必要はないのだ。」
同じ女を愛し、修業時代を共にした強敵の声が聞こえる。
―シン・・・そうだ、俺がトキ程に医療に長けていればユリアは天命を・・・―

「ケンシロウ、お前の拳は戦って人を守る拳だ。」
義兄弟ながらも実の兄のようにして時を過ごした強敵の声が聞こえる。
―トキ兄さん、だが・・・―
「無理をするな、お前は今までよくやった。」

「そうだケンシロウ、俺の唯一無二の強敵よ。」
たった一度だけ超える事の出来た、義兄弟にして最強の男、そして最大の強敵の声が聞こえる。
―ラオウ兄さん?意外だな、ぶん殴られると思ってたよ―
「いいのだ、もう苦しむ必要はないのだ、見てみろ、お前の胸を。」
そう言ってシンのつけた北斗七星の形に刻まれた七つの痣を指さす。
―傷が・・・消えている!?―

「お前はもう解放されたのだ、北斗の使命から。」
「お前は心優しい男だ、無駄な殺戮は好まぬ筈。」
「お前はこれで自由なのだ、幼き日を思い出せ。」

ラオウ、トキと無邪気に走りまわる子供が見える。
ラオウ、トキと組み手をする無道家の卵が見える。

―ああ、懐かしい、こんな楽しく充実した日々に学んだことを殺戮に使うなんて―

―俺はやはり狂っていたのだ。うおっ、流石シンだな、手も足も出ない―

189 :作者の都合により名無しです:2007/07/04(水) 22:39:11 ID:TUXWjRo40
お疲れさんです邪神さん。
ちょっとケンシロウが情けないなw
この世界でも無敵でいてほしかった。
でも、重要キャラみたいなので
友の心を胸にこれからの巻き返しを期待。

190 :作者の都合により名無しです:2007/07/05(木) 00:03:44 ID:TUXWjRo40
邪神さんおかえり。またちょくちょく楽しませて下さい。
ケンシロウと化石魚の対決はなんとなく笑う。真面目なシーンなんだろうけど。
でも流石に北斗に講座はいらんでしょ。メジャー過ぎる。

191 :永遠の扉:2007/07/05(木) 00:07:30 ID:dBppRKdD0
第018話 「歪(前編)」

割符の大半を敵に奪われていると知ったいま、斗貴子としては敵の情報が欲しい。
けれど、戦略的劣勢にある以上、少しでも敵の数を減らさねば立ち行かないというのもある。
つまり、敵を生け捕りにすべきでもあり、敵を確実に殺すべきでもある二律背反の状況だ。
よって彼女は、貴信の首をまず刎ねた。
しかるのち、貴信と香美の章印の位置を確認し、片方は刺し片方は捨て置く。
片方を殺し片方を生け捕りにせねばならないというのは、斗貴子自身にももどかしく、正直
いえば背後からの奇襲で両者とも殺しておきたかったが、しかし貴信らを殺したところで肝
心の残る割符の所在が分からなければ、いずれ『もう一つの調整体』なる正体不明の怪物
の跋扈を許すはめになる。それでは勝利とはいえない。
ともかく。

森の中。六歩も横に動けば木に当たりそうな、狭い木立の中。
首なしの体の手が動いたと見えた瞬間、りりーっと甲高い音が鳴った。
斗貴子は落ち葉で柔らかな地面を咄嗟に蹴り上げ、大きく跳躍した。しばし自由な浮力が全
身にみなぎり、やがて夜露まみれの青葉にまで頬が達した。
その眼下では互い違いの鎖輪どもが月光に陰影をけぶらせながら、一直線に疾駆している。
形容としては踏切を過ぎる列車のそれを、貴信は首なしでありながら、果敢にも放ったとみえる。
「少しは動けるようだな」
『僕のエネルギーを舐めてもらっては困るな!! 毎日毎日全身隅々まで充溢して火中の水
素ガスより爆発寸前の輝かしさだ! 叫んで散らさねば回遊をやめたマグロのように僕の呼
吸器系を自壊させかねん騒々しさだッ! だから首切断など動きを止める理由にはなりえん!
なりえんのだああああああ!!!』
首を斬られているというのに、貴信の声は割れんばかりにやかましい。
『伯耆星よ! 不落を穿てぇぇぇぇ!』」
型分銅の後方四か所にライトグリーンの光が点火すると、上空の斗貴子の背後めがけ、爆発
的にはねあがった!
自然、鎖は分銅に誘導される形で斜め四十五度にはねあがる。
しかし哀れなるかな、バルキリースカートにぐわんと弾かれ木の葉の中を舞う。
と同時に斗貴子は残る三本の処刑鎌を地面と水平に旋回。

192 :永遠の扉:2007/07/05(木) 00:09:25 ID:dBppRKdD0
青い光が扇状に尾を引いたとみるや、大気を重圧するぶきみな風切り音がぶぅん響き、周り
の木々をまるで大根のように切り飛ばした。
青々とした枝葉が満天の星空をざわざわとすべりおち、やがて地面に重苦しく激突。
地響き響くたび、下敷きになった枝が折れ、バチバチと燃えるような恐ろしい音が重なった。
この間、斗貴子は背後を一顧だにしていない。
音と気配だけで攻撃を読み取り、迎撃したのだ。
そして鎖分銅は瞬時に断ち切られた十数本の木に埋もれ、攻撃を封じられている。
斗貴子の狙いはコレ。いかに縦横無尽に動く鎖も、木の下敷きでは動けない。
『もっとも、こうするコトは予想していたがな!! はーっはっは!』
その正体を判断した瞬間、さしもの斗貴子も背中に鳥肌が立つのを感じた。
生首だ。
香美の生首が、処刑鎌に唇を密着させつつそこにいた!
どちらかといえば強気な美少女然とした香美ではあるが、貴信との交替の影響で顔一面に
びっしりとはりついてた茶髪から、ビー玉のようにすきとおったアーモンド型の瞳だけがキラ
キラとのぞいていて、いやはや凄惨な色気のようなただ凄惨なだけか、ともかくも異質な光を
放っている。
『そう来ると思っていたからな! 回避がてら首だけでジャンプして噛ませて貰った!』
香美はというと気楽な調子で、鎖を噛んだり鎌を舐めたりしている。
『その武装錬金おいしいか! どうだ香美おいしいか!』
「うん! なかなか!」
「ええい、鬱陶しい……」
斗貴子は青筋をひくつかせながら、香美の髪をむんずとつかんだ。
「人の武装錬金を舐めるな!!」
「えー、やだやだ。コレおいしいし! 鉄分とりたいじゃん鉄分! ほらネコってさ鉄」
「離れろぉぉぉぉぉぉ!!」
風呂に入れられるのを嫌がるネコみたいにもがく香美を強引に引き剥がす。
投げられた香美はすごい音を立てながら林間をピンボールのようにべこべこ反射。
斗貴子はなんとか倒木の上に着地するなり、ぜぇぜぇと肩で息をした。

193 :永遠の扉:2007/07/05(木) 00:10:45 ID:dBppRKdD0
「しまった。ついいつものクセで。クソ…… 今のは突っ込むより殺すべきだった」
足場のぐらつきや軽い酸素不足があいまって、かすかに眩暈がする。
その時である。
木々の間から黒い球が飛びだしたとみるや、それは貴信の胴体の首に乗っかってひゅるひ
ゅると豆電球をねじこむように回転した。
「ふっふっふー、ご主人の計算通りっ! やっぱ投げると思ってたじゃん!」
『木の間をバウンドしたぞ! 普通に胴体に向かってちゃ、攻撃の的だからなぁ!!』
復活をとげた胴体は、グーを元気よく天に突き上げ喜びを表現した。
ただし顔は香美のそれだ。
体もふっくらと丸みを帯び、タンクトップの中で豊かなふくらみがゆったりと息づいている。
「ええい調子が狂う! とにかくブチ撒けだ、ブチ撒け!」
『悪いが!』
木の下で金属が分解する軽やかな音が響いた。
「さんじゅーろっけーなんたかかんたか!」
香美は無邪気な笑顔で手をひらひらさせると、勢いよく踵を返した。
見ればその手には核鉄。
「武装解除。逃げる気か!」
『ふはは! 木の下敷きになった鎖を回収するヒマはなさそうだしな!』
「うんニャ。さんじゅーろっけーなんたかかんたかぁー!
逃走はさせじと突き出された処刑鎌をひらりと柔らかく避けると、香美は跳躍し逃げ去った。
(追うか? しかし剛太を放っておくワケにも……)
倒れた後輩を見る斗貴子に逡巡の光が射したのも無理はない。
さすがに倒されたとあっては、どれだけの重傷を負っているかも分らない。
斗貴子にとっては弟のように思える少年だ。あくまで後輩で、弟みたいな存在だ。
「先輩……」
仰向けに倒れてた体が、か細く震えながら首だけが所在無げに斗貴子を見た。

どうも意識が戻っているらしい。
もともとだらしない垂れ目の少年が、疲労と消耗でさらに眠たそうに歪んでいる。
「剛太! 大丈夫か剛太!」
慌てて斗貴子が駆け寄ると、剛太はちらりと彼女の太ももを盗み見て、さりげなくスカートの
中まで見ようとした。あくまで見ようとしただけで、ちゃんと思い直してやめたが。

194 :永遠の扉:2007/07/05(木) 00:12:17 ID:dBppRKdD0
「俺のコトより、アイツを追うのを優先して下さい」
目をつぶって深く息を吐いたのは、合わせる顔がないと思ったからだ。
(畜生。さっき「しばらく戦いから離れてて下さい」とか思っておいて)
血がかすかに滲む掌で両目を覆うと、やるせない嘆息が漏れた。
(このザマかよ。結局俺は先輩を頼るしかないのかよ)
「だが」
困惑したように呟く声を遮って、剛太は手短に貴信の戦闘方法を報告した。
いわく、吸収したエネルギーを放出できるコト。
いわく、ハイテンションワイヤーの特性が、ヒットの一瞬だけエネルギーを抜き出せるコト。
そして。
「俺さっき、アイツの足にモーターギアを当ててやりましたから、そんなに早く逃げれないと思
います。鎖分銅だって俺が斬りおとした手首がひっつくまで、十分には」
「一理ある。その上、私からのダメージがあるし」
「切り札だって割れてますから、斃すなら……」
いいかけてから、剛太は自分でも得体のしれない感情に襲われた。
香美はホムンクルスだ。人喰いの化け物だ。だのに、枝に止まったカナブン一匹を殺すまい
として、地上に落ちかけていた。それも高いところが苦手で、落ちる時はすごく涙目だったと
いうのに、彼女は自分の落下防止よりカナブンの命を優先した。
そして無事を確認すると、心底安心したような顔をしていた。
貴信もやかましいし、ちょっと小ずるい嘘吐きの気もあるが、基本は正々堂々とした男だ。
敵を手当しようと申し出るようなホムンクルスはちょっとお目にかかれない。
両者とも今まで見てきた連中とは違う。なのにホムンクルスという理由だけでためらいなく殺
そうとする姿勢は、はたしてどうなのか。
以前、カズキとの会話で芽生えた疑問が、また心で渦を巻く。
ホムンクルスに両親を殺された剛太ではあるが、それは物心つく前の出来事だから、ホムン
クルスに対する憎悪そのものは薄い。
ただ斗貴子が戦士をやっているから剛太も戦士をやっているだけで、斗貴子が「敵を殺す」
コトを当然と捉えているから、剛太自身もそう考えているだけだ。
でも、今の剛太の感情と憧憬に基づく姿勢はひどく矛盾していて、ぐわぐわと痛む頭がもっと
深く痛んでくる。
「どうした?」

195 :永遠の扉:2007/07/05(木) 00:13:18 ID:dBppRKdD0
「い、いえ。斃すにしろ捕獲するにしろ、今はチャンスだから、追ってください」
剛太は慌てて言葉を柔らかい方向に変換した。
「確かに奴らにはさんざん探索を妨害された。ここで捨ておけば堂々巡りだ。しかしキミの手」
気絶している間にもかなりの血が流失したらしく、あたりの地面は血でぬかるんでいる。
「早く手当てしないと命にかかわる」
「それなら大丈夫!」
意気込んで上体だけを跳ね起きさせると、剛太は周囲を見回した。
「これ、モーターギアでやったんスよ。なら今度は核鉄に戻して当て……」
太ももの横を見下ろす。ない。首をちょっと無理して捻り、斜め後ろまでくまなく見る。ない。
貴信の立っていた辺りに、山肌へそぐわぬ無機質な物体を発見し、一瞬それかと喜んだが
自分の携帯電話だと分かって落胆した。
血相を変えて傷の浅い手でおたおたとポケットをまさぐってみるが、もちろんある筈がない。
それだけやって、剛太はようやく事態を把握した。
核鉄を取られている。
「くそ。さんざん奇麗事いっておいて、結局ホムンクルスかよ……」
それを認識すると、どうしようもない寒気が剛太の裡から湧き始めた。
アバラも思い出したように熱を持つ。全身の微細な傷も、尻馬にのって騒ぎ出す。
「分かっただろう。キミは歩くコトもできない。私の核鉄を貸すから、止血しながら下山しよう」
「けど、それじゃせっかくのチャンスが……」
ピンク色の影が木立を縫って出現したのは、この時だ。
「おー、いたいた! いろいろあったけどゴーチン発見! ってか」
しわがれた声の主は、宙をプカプカ浮きながら、剛太をじろじろ観察して
「何があったか分らないけどボロ負けじゃねーか! そんなんだからカズキンに勝てねーんだ!
勝手に怒り始めた。
実に不細工で珍妙な人形だ。
巨大な肉まんに自動車のライトをはめ込んで、適当な体をひっつけたという感じである。
エンゼル御前。彼女と面識のある剛太は一瞬面食らったが、すぐにすさまじい反撃のマシン
ガントークを唇から射出した。
「誰かと思えばこの間の似非キューピーかよ! お前にゃ関係ない話だからちょっと
黙ってろ! というかなんでお前までココにいるんだ。
斗貴子も腕組みしながら、あたふたする剛太と好き勝手いう御前の口喧嘩に割って入った。
「そうだ。御前、どうしてお前がココにいるんだ?」

196 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/07/05(木) 00:15:43 ID:dBppRKdD0
どうも書きあがったのが長かったので、実験的に5レス前後を目指してみました。

それからすみませんハロイさん。諸事情により時間が差し迫っているので感想は後日…… 
というか明日か明後日ぐらいに。

>>79さん
千歳のガニ股映像はこちら
ttp://www.busourenkin.com/img/gallery/c-sendan01_03.jpg
それはともかく、戦闘力はなくても観察力で戦局をくつがえすというタイプは好きです。
似たようなのだと、伊賀の影丸の若葉城編に出てくる犬丸という忍者。本人の実力は低くて
も、犬を操るという能力だけで影丸たちを追い詰めるのがカッコいい。千歳もそんな風に描いてみました。

>>80さん
前作終盤で根来の立ち位置がこんな風に定まってしまいましたw 前作といえば、根来がちょっ
といってた「壊れ甕」という忍法も使いたかった…… どんなのかというと、切断された体の部
位をひっつけるという能力。アニメ星のカービィのキッタリハッタリという魔獣みたいな能力です。
で、キッタリハッタリとはこんな奴。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/anime/83/1048421787/396

>>81さん
以心伝心で状況打開ができる。そんな戦友ぽさを彼らで出してみたいですね。もちろん根来
は冷静で冷徹で。されどちょっと突っ込むと「ん? 千歳にはちょっと対応が違う?」ぐらい
微妙に違うのが理想。秋水とまひろにつきましては、この章がひと段落したら一山設けております。

>>83さん(くしくも自分のコテにゆかりの深い数字! 0083!)
ご心配をおかけしました…… でも、友人のアドバイスでなんとか立ち直れました。友人に感謝。

ふら〜りさん
根来の陥ったパターンは、理知分:バトルマニア分が6:4ぐらいのボスキャラ(スパロボなら
説得して仲間にできるタイプ)がよく陥る奴ですなw 。反面、千歳は理知分90%(残りは情感)
なので、いい感じに根来を補えてます。それを根来が自覚したりしてたら燃えるかも。萌えでも可。

197 :作者の都合により名無しです:2007/07/05(木) 08:27:31 ID:PV1TOdMB0
邪神さん、スターダストさんお2人とも結構お久しぶりですな。

>邪心さん
人間的なケンシロウですな。圧倒的な力がこの世界では通じないので思い悩んでる。
まあ、力量的にはトップなのでこの世界に順応したらラストバトルまで絡みそうですね。

>スターダストさん
貴信と香美は勿論マッドだけど、斗貴子さんもこう見るとかなりマッドですね・・。
戦闘に呪われているというか。カズキを失ってから余計に。剛太が一般人みたいだ。


198 :作者の都合により名無しです:2007/07/05(木) 10:33:21 ID:Te50qrLy0
スターダストさん乙
トキコのある意味残虐な感じと敵側の不気味な感じがよかった
剛太、次は活躍できるといいな

1回の分量はこの位の方が読み易いかな。
投稿規制にもかからないだろうし。
1週間に1回10レスよりも
1週間に2回5レスずつの方がお得な感じ。

199 :作者の都合により名無しです:2007/07/05(木) 18:34:28 ID:5k/YHmBx0
5レスでも書き込んでいるからボリュームありますよ、スターダストさん。

200 :ふら〜り:2007/07/05(木) 22:31:44 ID:3dy1GKFm0
>>ネウロさん
弥子、本作唯一の普通人かと思いましたがそうでもなさげ。それでも他の面々と比べれば
比較的常識はありそうですが。喰いっぷりとボケっぷり、そして自覚してなさそな度胸を披露
してくれましたが、これからはさんざん命懸けで振り回されそう。でも生き抜く子ですね、彼女。

>>サナダムシさん
前作と同じく、やってることはスゴいけどなぜか納得してしまう。原作でもそうなったらそうなる
のかもとか思ってしまう。原作から、かけ離れてるはずなのに遠くない。自分の作品の展開に
合わせて原作改変をしない(充分してるんだけど感じない)のは二次創作の鑑。見習わねば。

>>邪神? さん
かなり少数派でしょうが、私はケンシロウにはもう少し悩んだりするシーンがあっても良かった
のでは? 派なので、今回のは楽しめましたよ。古き良きジャンプの王道、♪倒れるたび傷つく
たび、俺を強くする♪のは強敵と書いて友。今回を境にきっとレベルアップしたことでしょう。

>>スターダストさん(むしろあえて二回に切り分けてくださっても。待つのも楽しいものですよ)
出だしで「あぁいくら可愛くてもやっぱりバケモノっ」とか思ってたら、後の剛太のモノローグで
「あぁいくらバケモノでもやっぱり可愛いっ」と思い直し。あと根来千歳や総角小札と違い、
香美には剛太がいる分、貴信の見せ場というか立場というか、がちょっと可哀想かもとか。

201 :作者の都合により名無しです:2007/07/06(金) 01:04:56 ID:RfEuToGD0
でもケンシロウはやはり孤高の存在であってほしいと思ったり。
原作でも結構悩んだりとかするけどね。
デスあたりとタイマンで戦って欲しかったりもする。

202 :作者の都合により名無しです:2007/07/06(金) 08:20:17 ID:Lp7VJaFx0
スターダストさんは不調を脱したようだし
ハロイさんも前回更新してくれたけど
さいさんのサイトの更新が止まってる。心配だ

203 :NARUTOのあがき:2007/07/06(金) 20:30:30 ID:xsJ44+zs0
「くそったれ、オレのミスだ・・・」
ヤマトを新たに隊長に迎え、サイを借り、効率の良い4人体制でサスケを助け
に来た所までは良かったものの・・・3年の年月で如何ともしがたいレベル
まで開いてしまった実力の差は、この状況では最悪の結果を招くことになり
そうだった。
一発の破壊力を追求しているナルトに対し、サスケは更に複雑なコントロー
ルを物にしていた。
現に、雷切を進化させた技で、隊長共々あしらわれたといった感じだ。
正直な所、元々の素質は九尾を飼っているのと、無尽蔵のスタミナ以外には
大したことの無いナルトと、素質「には」恵まれているサスケでは役者が違
ようだ。
3年という期間で天才に熱心に努力されたのでは、当然の結果なのかも知れ
ない。
(ギリギリで九尾が起きてくれたらしいが・・・)
この状況で暴走することは選択できなかった。

204 :NARUTOのあがき:2007/07/06(金) 21:12:38 ID:oWSWDFOx0
協力してもらっている立場のサイには、自分の無鉄砲な突撃で手傷を負わせてしまい
(もっともサイ自身はそこまで恩着せがましくは考えていないだろうが)
さらにカバーで入ったヤマトまで、雷切流しで一緒に感電してほぼ壊滅状態にされている
この状況で、大蛇戦のように暴走したら仲間は下手したら皆殺し、それでサスケを倒せれ
ばまだマシだが、逃げられる可能性が大だ。もし5代目にそんな報告をしようものなら、
確実にその場で始末されるだろう。
(どうやら、殺す気は無いみたいだが・・・)
サスケがその気なら、こんな無防備な状態を見逃すはずもないが、唯一付け入る隙が
あるとすれば、その甘さに付け入るしかない。
しかし、自分の取り柄である九尾の力を引き出せない状態では、正直殺すのも至難。
捕らえるなど絶対に不可能だろう。
(あの屋上での戦闘がサスケを止める最後のチャンスだったか・・・。くそっ、そもそも
里を抜けた人間を呼び戻そうなんて考えたこと自体、オレの判断ミスだったか)
こんな状況まで、仲間を追い込んだのは間違えなく自分の責任だ。しかし・・体が動かぬ。
そんなむどかしさを感じながら、囁くような九尾の声に吸い寄せられるように、ナルト
は光の一切届かぬ、深い闇の底へと落ちていった。
(306話〜309話 第2部ナルトvsサスケにおいて雷切流しを食らって落下してる描写中
のナルトの思考〜捏造〜)

205 :七人の超将軍!:2007/07/06(金) 21:47:56 ID:2mwhKZ/j0

頑強なる心を持ちて
悪を駄(の)せし輩を
無に帰せしめし者━━━


天宮の国を治める新世頑駄無大将軍の頑駄無結晶(がんだむくりすたる)が八つに砕け散った日、
閃光結晶(びーむくりすたる)に選ばれし七人の武者が超将軍となった!
力を失った大将軍!再び跋扈した闇の者たちから無辜の民を護る為の、頑駄無たちの戦いが始まったのである!

そして!新世闇軍団本陣と化した伝説の地・悪無覇域山(あなはいむさん)についに七人の超将軍が結集!
決戦の火蓋は切って落とされた!

そして━━━

「千力ぃいいいい!!」

闇魔神吏偶遮光(やみまじんりぐしゃっこう)の攻撃から新世大将軍の子・飛駆鳥(びくとりー)をまもって、
嘗ての千生将軍(せんなりしょうぐん)、千力頑駄無超将軍(せんりきがんだむちょうしょうぐん)は地に伏した!
その姿に怒り心頭となったのは彼の朋友・爆流頑駄無超将軍である!(ばくりゅうがんだむちょうしょうぐん)

「よくも千力を!
 喰らえ!」

爆流の叫び声と共に、彼の両手が蒼く光り輝きだした!

「爆狼!疾風拳!」


206 :七人の超将軍!:2007/07/06(金) 21:55:08 ID:2mwhKZ/j0
自らの潜在能力を限界まで引き出す支援メカ・魂嵐乱打(コアランダー)を装着する事により、
爆流頑駄無は超エネルギーの打撃を放つことが出来るのだ!
それこそが彼の超必殺技!爆狼疾風拳!(ばくろうしっぷうけん)
闇魔神にダメージこそ与えることこそできたものの、
闇魔神の創り出した「闇の結界」によって爆流もまた倒れてしまった。
いや、ここは闇の結界下でここまでの威力の攻撃を放つことが出来た彼を讃えるべきだろう。
大将軍の代行であり、大将軍の約十分の一の戦闘力を持つとされる超将軍だからこそ、
通常の武者では、たちどころに行動不能となってしまうこの「闇の結界」で、ここまでの攻撃を繰り出せたのだ!

同胞の超将軍たち、そして大将軍の子・武者飛駆鳥もまた闇の結界の前には伏したままだ。
その姿に、元新生闇軍団という異色の出自をもつ超将軍・鉄斗羅は覚悟を決めた。
覚悟とは、暗黒の荒野を切り開く光り輝く道だ。
かつては闇の者であり、十五年前の戦役以後、頑駄無軍団に組してきた鉄斗羅にとっては、
頑駄無たちこそが、大将軍こそがその光り輝く道であった。

「今、なら…。
 今ならば!禁じ手を使えば闇魔神を倒すことが、出来る…ッ!」

そう、大将軍に罪を許され、以降十五年封印してきた闇の力を持つ彼だからこそ!

「大将軍さま…。
 お許しください!」

大将軍によって光の力を与えられ、光と闇の力を持つ彼だからこそ!
闇魔神を打倒す一撃を放つことが出来るのだ!
頑駄無軍団の末席を許されたその時から、彼は自らの闇の力を封じて生きてきた。
だが、今こそその封をやぶらねばならぬ。

207 :七人の超将軍!:2007/07/06(金) 21:57:54 ID:2mwhKZ/j0

「闇ッ!変ッ!幻ッ!」

鎧を突き破って現れる刃と衝角!それは闇の者の証!

「…そう、俺の名は鉄斗羅。
 もと新生闇軍団・氷魔の牙忍だ!
 闇魔神よ、受けるがいい」

左からから突き出した衝角に、彼本来がもっていた闇の力が宿る。

「闇の力と…」

右から突き出した衝角に、彼が持つはずの無い力が宿る。
それは━━━

「大将軍さまにいただいた光の力をぶつけあう」

黄金に煌き光るそれは、光の力だ。
闇の者を滅し清める大いなる力だ。
今は光に身をおいている鉄斗羅だからこそ扱うことが出来るが、本来闇の者にとっては猛毒に等しい力なのだ。

「決死の技を!」

覚悟を決めた彼を、闇魔神は嘲る。
彼は死兵の恐ろしさを知らない。

「馬鹿者めが!
 裏切り者めが!
 そんな事をすればお前も死ぬぞ!」

208 :七人の超将軍!:2007/07/06(金) 22:04:53 ID:2mwhKZ/j0
今の鉄斗羅は死兵だ。
その彼を止めることは、誰にも出来ない。

「もとより承知よ!
 負け戦で頑駄無たちに取られたはずの命だ!
 今ここで頑駄無たちにかえしてやるのさ!」

荒鬼頑駄無。もっとも若輩でありながら、曲者ぞろいの超将軍をまとめ、ここまで誰一人欠けることなく連れてきたリーダー。
雷鳴頑駄無。精密無比の彼の砲術には何度も助けられた。もっと腹を割って話していればよかったかもしれない。
獣王頑駄無。修験者あがりで理性よりも感性に重きをおいたその性分とは馴染めなかったが、いい奴だ。
天地頑駄無。陽気で裏表ない性格には助けられた。できたらもう一度一杯やりたかった。
千力頑駄無。一緒にいた期間は短かったが、この極地で立ち上がることの出来たその姿は、まさしく正義の武者だ。
爆流頑駄無。そのからくりの力はきっとこれからの天宮の為になるだろう。ここで死んではならない。
舞威丸君。古の機動武者に認められた貴方は、きっと大きな武者に成られるのでしょう、どうか御武運を。
武者飛駆鳥君。あなたには無限の光の力がある。これからの天宮を担うのは貴方なのです。
鉄斗羅はそう心の中で同胞たちに呼びかける。
こんなナリのこの俺を、仲間と呼んでくれた皆に呼びかける。
きっと届いているだろうと思いながら。

「そうだ、俺はきっとこの時の為に超将軍に選ばれたに違いないのだ!
 光の武者たちよ、貴方たちならきっとこの困難を打ち砕けるはずだ!
 闇魔神ごときに、屈っするんじゃない!」

鉄斗羅の言葉によって、飛駆鳥の瞳にふたたび光が宿った。
それを満足げにみると、鉄斗羅は微笑んだ。
不器用な男の笑みだった。

「…みんな、あばよ」

静かな一声と、天地を覆わんばかりの閃光、そして大爆音。

209 :七人の超将軍!:2007/07/06(金) 22:13:20 ID:2mwhKZ/j0
「俺のために…。
 千力どの…。鉄斗羅どのまで…。
 俺に、もっと力が…。
 力があれば…!」

滂沱の涙とともに、武者飛駆鳥の中から大いなる光の力があふれ出す。
雄叫びとともに、武者飛駆鳥は新たな姿へと孵化を始めたのだ!

「うぁああああああああああああああああああ!」

光が!光の力が!飛駆鳥の中からあふれ出す!

「ッ死ンでたまるぅかぁ…!
 この目で!この目で天宮の最期を見るまでは!死んでたまるかぁあああああ!」

なんという事か!鉄斗羅の決死の技をもってしても、闇魔神は倒れなかったのだ!

「小僧ぉぉぉう!
 貴ィ様ぁをぉ!殺す!」

その巨体から繰り出す槍の一撃は、しかし、光の力を覚醒させた飛駆鳥の掌によって止められていたのだ!

「な・ン・だ・トぉ!
 この力ぁ!この力はああ!」

驚愕と恐怖に目を見開く闇魔神━━「飛駆鳥!」━━脅威の覚醒を遂げた若武者に驚愕の超将軍!

「見つけたぞ俺は…!
 自分自身の血に流れる!
 無敵の光の力を!」

━『飛駆鳥、覚醒!? 次回を待て!』━

210 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/07/06(金) 22:19:15 ID:2mwhKZ/j0
NARUTOのあがき作者さま、30分過ぎても投下がないのでお先に失礼させていただきました

こんな事いうとまじめに仕事してるみたいで嫌なんですが、ちょっと忙しくて
先月はお休みしてました、ごめんなさい。
さて今回は祝!バキスレ50スレ突破記念第一弾といたしまして、戦闘神話をお休みしまして
この銀杏丸が一番すきなガンダムシリーズ
「新SD戦国伝・七人の超将軍」編クライマックスを描いてみました
「次回を待て!」のとおりに前後編です
鉄斗羅頑駄無超将軍が見つからなくて探し回ってたなんていえやしないw

ご存知ない方も多いと思いますが、バンダイから発売されております模型シリーズの
「BB戦士・SD戦国伝」シリーズの第六作になる「七人の超将軍」編の二次創作です
組み立て説明書に記載されている漫画、といえばピンと来る方もいるのではないでしょうか?
武者頑駄無も20周年、月日が流れるのって早いですねぇ…

211 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/07/06(金) 22:27:01 ID:2mwhKZ/j0
湯桶読みの漢字表記ばっかでワケワカメだとおもわれるので
用語集をば

・頑駄無
闘将!ラーメンマンの悪役ではなく、SD戦国伝世界におけるガンダムの名称

・武者、将軍、超将軍、将頑駄無、副将軍、大将軍(だいしょうぐん)
SD戦国伝世界における階級。ノーブレスオブルージュなんです。
偉さは、大将軍>副将軍>将頑駄無>超将軍>将軍>武者
戦闘力に関しては不明
歴代超将軍の中にはあきらかに大将軍に匹敵するような奴もいるので、言及は避けます

・頑駄無結晶(がんだむくりすたる)
大将軍の光の力の源。時代毎に形が変化している。
劇中では自由意思をもった存在である結晶鳳凰(くりすたるふぇにっくす)へと進化している。


212 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/07/06(金) 22:32:40 ID:2mwhKZ/j0
・闇軍団
頑駄無ら光の武者たちに敵対する集団。
混沌と荒廃を望み、常に頑駄無たちと死闘を繰り広げる運命にある。
鉄斗羅は「七人の超将軍」編の前日談になる「伝説の大将軍」編での敵軍・新生闇軍団から離反し
頑駄無たちの側へ寝返ったという異色の存在

・天宮(あーく)
武者たちが暮らす戦国時代の日本風の世界。
余談だが、この名称が明らかになったのはなんとシリーズ第四作だったりする
他に、中華風の世界観の「影舞乱夢(えいぶらむ)」、インド風の世界観の「赤流火穏(あるびおん)」があり
天宮は火砲、影舞乱夢は戦術思想、赤流火穏は機械工学が発達しいている

・闇魔神(やみまじん)
ヤミの権化。歴代の大将軍たちが命がけで打倒してきた存在。
異次元からの侵略者ともいわれている。
ヤミが支配する平行世界の天宮からやってきたとも言われている。

・機動武者大鋼(きどうむしゃだいはがね)
もとは発掘兵器であったが火炎の駄舞留精太が
武者頑駄無たちのような2.5等身から
八頭身のモビルスーツ体型への変形機構を有する変形機構を付加するなどの
想像を絶する大改修を行った後、大将軍誕生の聖地・悪無覇域夢山に封印されていた。
武者飛駆鳥の弟・舞威丸の魂に呼応して復活した。

・闇の結界
光の武者の力を封じ、闇の者たちの力を増す結界
これにより超将軍たち超ピンチ!

以降は後編の際にでも書きますので
では、またお会いしましょう

213 :作者の都合により名無しです:2007/07/06(金) 23:54:04 ID:RfEuToGD0
>ナルトのあがき
なんかどっかのコピペっぽいなw本編のお話のキャラの心情変化を書いてるのか。
こういうのは新しいかも。次はあなたの本当のオリジナルSSが読みたいです。

>七人の超将軍!
銀杏丸さんお久しぶり。SDガンダムはわからないけど、擬人ガンダム(かな?)の
熱血的なノリは楽しめました。先頭神話ともども後編も楽しみにしてます。

214 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 00:36:18 ID:ulNXuFrx0
銀杏丸さんも帰ってきたか。復活ブームとなるといいね。
お疲れ様でした。

215 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 08:28:54 ID:sW6znCQV0
初代の好きな俺としてはSDガンダムはなんとなく辛いものがあるが・・
SSは熱くていいね。銀杏丸さん乙。

216 :昨日の飯は今日の武器:2007/07/07(土) 09:05:23 ID:uHquvmuD0
 見渡す限り、草木ひとつ生えぬ不毛な荒野。かつて戦争で撒かれた毒ガスが、この大地
から色を奪った。乾いた風が、無気力な大地を哀れむように寂しく吹き抜ける。
 だがガイアは何も感じることなく平然と野糞をしていた。
 火炎が木を焼こうが、毒ガスが土を汚そうが、核爆弾が何もかもを消し飛ばそうが、彼
は全て受け入れる。戦争が生活の一部である彼にとって、戦争が引き起こす害悪もまた自
然に他ならないのだから。
 排便中は無防備に近い。ゆえにガイアの排便はすばやい。
 肛門からボトボトと、かつての食物が落とされる。
「ふぅ……」
 宿便まで入念にひねり出し、一息つくガイア。
 個数は三つ。サイズ、配色、硬度、匂い、どれをとっても健康そのもの。人体に関して
非凡な知識を持つガイアは、自らの作品をそう値踏みした。さらに、このうちの一つから
クロワッサンを連想してもいた。
 糞をこのままにしてはおけない。放置しておけば敵に居場所を察知される可能性がある。
「これはノムラに始末させるか」
 上官らしく、汚い仕事は部下に任せようとするガイア。が、人格を入れ替えようとした
瞬間──。

217 :昨日の飯は今日の武器:2007/07/07(土) 09:06:26 ID:uHquvmuD0
 ナイフ一閃。
 スマートな軌道で喉を目指して飛来する。これを必要最小限の動作でかわすガイア。
 もしノムラにチェンジしていたら、殺られていたかもしれない。少なからず油断をして
いた自分に、ガイアは腹を立てた。
 不意打ちの主はサングラスをかけた兵士であった。
「さすがはミスター戦争(ウォーズ)。クソしてる最中でも隙がなく、やっと隙を見せた
と思いきやあっさりかわしやがった」
 只者ではない。男はガイアからノムラに替わろうとする瞬間を的確に狙ってきた。おそ
らく自分の二重人格を知らないにもかかわらず、だ。また、攻撃に移るまで完全に気配を
絶っていた点もあなどれない。
 教師が生徒を諭すような口ぶりで、ガイアは男に話しかける。
「私をガイアと知っていて挑むとは……若いな、君たち」
「君たち? 俺はこのとおり単独行動──」
「下手な芝居はよせ。ナイフをかわした瞬間、私はすでに君以外の気配も手中に収めてい
る。とうに見抜かれている伏兵よりも、三人でのコンビネーションの方が勝率は高い」
 すると隠れている必要はないと判断したのか、地面を掘り、残る二人が地上へと姿を現
した。
 ガイアの洞察力に舌を巻くサングラス。
「偽装を見破り、なおかつ人数までピタリと当てるとは……噂にたがわぬ化け物め」
 二人目。十字架のチョーカーをつけた兵士が高揚感を伴った微笑みを浮かべる。
「だからこそ挑む価値がある。彼を仕留めれば、我々の傭兵としての価値もまた飛躍的に
高まる」
 日本刀を得物とする異色の黒人兵士。三人目は憎しみを込めて言葉を紡いだ。
「師匠(マスター)の仇……」
 個々の思惑はどうあれ、彼らは敵として出会ってしまった。白黒をつけねばならない。
 ──戦争勃発。

218 :昨日の飯は今日の武器:2007/07/07(土) 09:07:25 ID:uHquvmuD0
 彼らは元々同盟を組む旧知の仲なのか、それともガイアを倒したい腕自慢が結成した急
造チームであるのか。特にフォーメーションを用意している様子もないことから、どうや
ら後者のようだ。首尾よくガイアを倒せれば過程に関わらず手柄は山分け、ただしお互い
を守る義務はない。このような約束が背景にあるにちがいない。
 しばらく三人はガイアを遠巻きにしていたが、やがて功名心に突き動かされたサングラ
スの男がアーミーナイフ片手に飛び出してきた。
「戦争は名前でするもんじゃねぇってことを教えてやるぜ!」
 迫るナイフを、ガイアはなんの武器も持たずに待ち構える。ナイフも携帯しているが使
わない。なぜなら必要がないから。
 環境──これさえあれば他はいらない。
「私は自分の名声に実力が伴っているかなどどうでもいい。戦争のルールに従い、君たち
を殲滅するまでだ」
 両手にこんもりと盛られた茶色。
 汚い臭いなどというおよそ文明的な嫌悪感は、生死を左右する原始的な局面では全て吹
っ飛ぶ。枯れた大地は役に立たない。ガイアは迷わず排泄物を武器とした。
「どうする気だ、そんなもんッ!」
 フェンシングに似た、鋭い突きが繰り出される。一方ガイアは突きなど眼中になく、無
造作に汚物を投げ落とした。
 ずるっ。
「え」
 足もとにぬかるみのような感触を味わったと同時に、サングラスは激しく転倒した。そ
して二度と起き上がることはなかった。
 不運にも、彼が手にしていたナイフは主人の顔面を脳まで貫いてしまっていた。
 あっけない死に様だった。だが兵士など、死ぬ時は大半があっけない。ドラマチックな
最期など滅多にない。だから生き残りもいちいち心を揺らしはしない。
「……アーメン。君は優秀な戦士だったよ」
 まだ血を垂れ流している死体に歩み寄り、祈りを捧げる十字架の兵士。
「──優秀な武器でもなッ!」
 突如、十字架は死体をガイアめがけて蹴り上げた。視界を奪うために。
 されどガイアは見切っていた。死体を横にかわし、一気に間合いを詰める。

219 :昨日の飯は今日の武器:2007/07/07(土) 09:08:51 ID:uHquvmuD0
 パイ投げの要領で顔に叩き込まれる汚物。目、鼻、口が瞬く間に褐色の粘着質に支配さ
れた。視界のみならず、味覚と嗅覚、呼吸までもが奪い去られた。
 四苦八苦する十字架の背後に回り込み、裸絞め。ガイアはためらいなく首をへし折った。
 残るは一人、刀を持った黒人のみ。残る汚物もあと一つ。
「日本人でもないのに日本刀とは、珍しいな」
「師(マスター)はサムライソードであらゆる戦場を駆け抜けた日本人(ジャパニーズ)
だった。師は私に傭兵として生き延びる術を与えてくれた。師は私にとって最強の兵士だ
った。しかし三年前、師は貴様によって殺された……」
「ほう、弔いというわけか」
「師曰く、現代でも白兵戦ならばサムライソードは銃をも制す。ここで俺に殺され、あの
世で師の復讐を受けるがいい!」
 三年分の怒りが解放される。頭上に日本刀を構え、黒人は突進する、が。
 折れた。高速で飛んできた何かにぶつかり、日本刀は砕け散った。
「WHAT?!」
 半分以下のリーチになった刀を手に、当惑する外人。刀を破壊したのは、むろん汚物。
「排泄物はほとんどが水分だ。たとえ水でも速度を加えれば鉄と化ける。私にかかればあ
んなものでも銃以上の弾丸にすることも難しくない」
「……よくも師の形見をッ!」
 逆上し、戦力差を省みずガイアに飛びかかる黒人。
 叫び声、飛散する大便、去っていく足音。勝敗は決した。

 激戦から一ヵ月後、老人がこの地を独りさまよっていた。
 無残な灰色がどこまでも続いている。
 だがそんな中、
「おぉ……」
 老人はほんのわずかな抵抗を目の当たりにした。
 今後五十年は死に絶えているとされたこの地に、一輪の花が咲いている。目を凝らすと
他にもいくつか息吹いている芽を確認できる。
「大地の神が、奇跡を与えて下さったのか……?」
 老人の推測はほぼ正しかった。奇跡ではなく肥料であるという点を除いては。

                                   お わ り

220 :サナダムシ ◆fnWJXN8RxU :2007/07/07(土) 09:12:15 ID:uHquvmuD0
おはようございます。
梅雨SS五発目にしてラスト。
主役はアドレナリンと環境が大好きなあの方です。

またいつかお会いしましょう。

221 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 12:28:41 ID:/6WsZnZU0
ラストはやはりこのネタですかw
でも、またしばらく消えちゃうのか、サナダムシさん?
たまにでいいから書いてくださいね

222 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 16:01:45 ID:WhqTUy5U0
サナダムシさん消えないで・・

223 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 22:42:50 ID:a8s4pd7d0
>銀杏丸さん
お久しぶり。SDガンダムはコミカルなイメージだけどなんか熱いな。
後編も頑張って下さい。あんまり間をおかないでね

>サナダムシさん
確か原作でもノムラはうんこしてたシーンがあったなw
久しぶりにサナダさんのうんこSSを読んだ。またすぐ復活してね

224 :DBIF:2007/07/07(土) 23:13:06 ID:srrL5Ldb0
「ど・・・」
振り上げられた拳が、前もって警戒していたことでかろうじて反応できたクリリンの顔面数センチ横を、唸りを上げて通り過ぎる。
「わああぁっっ!!」
のみならず、その風圧のみでクリリンを数メートル後方に吹き飛ばした。
「ほう、取るに足りないパワーしか感じなかったが、よける一瞬パワーが随分と跳ね上がったな。パワー操作型、それも相当熟練しているようだ。
面白い」
「ヘ・・・ヘヘ・・・」
(界王拳習っといて良かったあ。危なく死んでたとこだぜまったく)
未来に来る際、クリリンは18号との修行と並行して、未来行きを辞退した天津飯から界王拳を習っていた。わずか半年の修行ではあるが、
ナメック星やそれ以降の修行で力をつけていたこともあって、始めから8倍まで可能となっている。しかしそれをもってしてなお、ガネットの攻撃は
紙一重でしか対応出来なかった。
(いきなりアレで行くしかないな。もう避けるのも難しいだろうし)
「次は本気で行く。今度も凌いで・・・」
と、そこまで言って、ガネットは目の前の小男が両手を頭の横に添えているのに気付いた。
「太陽拳!」

カッ

クリリンの掛け声と共に、まるで文字通りその場に太陽が生まれたかのような光が生まれ、ガネットの網膜を貫いた。
「ぐあっ!」
(今だ!)
咄嗟のことにうろたえたとは言え、他所の闘いの気を感じていた以上、気で自分を捉えることは出来るはず。即座にそう判断して、クリリンは気を
一度消して少し離れた位置にある岩の上まで後退すると、右手を突き上げた。


225 :DBIF:2007/07/07(土) 23:15:49 ID:srrL5Ldb0
「はあああ〜〜〜っ!」
その右手の上に、薄い円盤のような気の塊(かたまり)が浮かぶ。クリリンの得意技である気円斬だ。
「あああああ〜〜〜っ!」
しかし充分な大きさになったにもかかわらず、クリリンはさらに気を込めた。それに合わせて円盤の大きさもどんどん大きくなっていく。
「ちいっ!そこか!」
眼を閉じたまま、膨れ上がったクリリンの気を捉えてガネットがそちらを向く。それを見ながら、クリリンは軽く笑った。
「気円斬・改!」
その声と共に、最早直径20メートルを超えるかという程に大きくなった気の円盤をクリリンが放った。
「何っ?!」
しかしいくら巨大な円盤とはいえ、気を捉えることの出来るガネットに易々と当てられるはずもない。案の定ガネットは自分に向かってくる円盤を
ジャンプしてかわした。
「つあっ!」
クリリンはすかさず放った右手の指を細かく動かし、円盤を反転させた。しかしそれで動きの速いガネットに当てられるわけもない。しかし−
「ばっ!!」
クリリンが突き出した右手を思い切り開くのと同時に、ガネットに迫る円盤が十数個の小さな円盤に分裂した。
「な?!」

ズドドドドドッ!

分裂した円盤が、さながら散弾銃の弾のようにガネットを襲う。1つの円盤のみに気を取られていたガネットに、これを避ける術はなかった。
「やった!」
思わず快哉(かいさい)の声を上げるクリリン。
しかし結果は彼の期待を裏切るものだった。
「ぐ、うう」
円盤はガネットを切断することは出来なかった。両腕で身体の前面をカバーし、なおかつ己をフルパワーの気で包むことで円盤の威力を削いだの
だろう。円盤は彼の両手と脚に半ばまで食い込んで止まっていた。
「はは・・・お見事・・・」
「この・・・チビがああああ〜っ!!」
と、最早視力も回復したらしく憤怒の形相でクリリンを睨みつけるガネットが、次の瞬間クリリンの目の前に現れ、蹴りを放った。


226 :DBIF:2007/07/07(土) 23:18:55 ID:srrL5Ldb0
「ぎゃっ!」
界王拳をもってしても反応できないスピードで繰り出された蹴りに、為す術もなく吹き飛ばされたクリリンになおもガネットの拳と脚が連続して襲う。
「まだまだあっ!」

ベキィッ!

右腕の骨の折れる嫌な音と共にクリリンの身体が横に吹き飛んだ。そのまま岩に激突するが、何故か岩は砕けなかった。ガネットがわざと加減したのだ。
「そう簡単には殺さん。俺が受けた痛みの万倍も味わわせてやる」
怒りの表情に、拭いきれぬ残忍な喜悦をにじませながら、ガネットはかろうじて岩によりかかって立つクリリンにゆっくりと近付いていった。
しかしその顔がまたも怒り一色に染まる。もう対抗する力もないはずのチビが、あろうことかこの状況で笑っていたためである。
「へへ・・・」
「何がおかしい!」
怒りの声と共に、今度は左腕を折られて吹き飛び、倒れた所に両膝を落とされ、左右の脚の骨も折られる。それでもなおクリリンは笑みを消さなかった。
(ち・・・ちったぁ、時間稼ぎには・・・なったよな。悟飯、トランクス、後は・・・頼むぜ・・・・・・)
激痛に襲われながら、なおも笑みを浮かべるクリリンの意識が、やがて闇に塗り潰されて行った。

「クリリンさん!」
突然、弾かれたように悟飯の顔が右−クリリンの向かった方向−を向いた。目の前には、今は眼下に小さく見える「パル」と書かれた筒から出て来た
異星人が浮かんでいる。短い黒髪の完全な地球人タイプに近いが、指は3本しかなく耳が尖っている。背は低いが顔はいかつかった。
(気が、どんどん小さくなってる。このままじゃ・・・)
「何をよそ見している!」
と、悟飯の背後からパルの蹴りが襲った。防御する暇もなく地面へと叩きつけられる悟飯を、さらに空中からパルが放つ気弾の連射が襲う。
「そらそらそらそら〜〜〜っ!この俺と闘おうなんざ、1000オプト早いんだよ!」
なおも気弾の連射を続けながら、しかしパルの顔が急に強張った。小規模な爆発に隠れた中心に感じられる気が、小さくなるどころか、どんどん
膨れ上がっていくのを感じたためである。
「こ・・・この!!」
焦ったパルはミスを犯した。思わず惑星破壊級の気を込めたエネルギー砲を放ってしまったのだ。しかし−
「バカヤローーッ!!」
爆煙から叫び声と共に放たれたエネルギー砲は、パルのそれを遥かに圧倒する威力で押し返し、更にはパル自身も光の中に呑み込みながら空の彼方へと
消えて行った。


227 :DBIF:2007/07/07(土) 23:21:25 ID:srrL5Ldb0
「クリリンさん・・・・・・くっ!」
トランクスもまた、クリリンの気が弱くなって行くのを感じていた。その足元には既に異星人が倒れている。
(間に合ってくれ!)
焦りの表情を浮かべて猛スピードで飛び立ったトランクスの身体が、突然急制動をかけて止まった。
「この気は・・・」

死を覚悟し、一度はなくした意識が戻ったことにクリリンは驚いた。
(あれ?これは死んだ時の感覚じゃないよな)
戸惑うクリリンの耳に、聞き覚えのある懐かしい声がかけられた。
「危なかったなー、クリリン」
「え?」
かつて何度も修行の場や闘いの場で聞いた声。圧倒的な力を持つ敵を前にして、それでも自分のなけなしの勇気を支えた声。それは1年前に
もう聞けなくなったはずの声だった。
「ご・・・」
「いやあ、こっち来たらいきなりあっちこっちで闘ってて、しかもおめえの気がどんどん弱くなってたもんだから、びっくりしたぞ。あっち(過去)から
予備の仙豆もらってなかったら、瞬間移動でも間に合わなかったかも知れねえ」
「悟空!!」
跳ね起きて声の方を向いたクリリンの視線の先に、1年前と何ら変わらない笑みを浮かべた、懐かしい道着姿が立っていた。
「バ・・・バカヤロウ、こんなタイミングで、来るなんて・・・反則だろ」
「ハハ、オラもこんな具合にまた会えるとは思わなかったぞ」
それまで死を覚悟したところで、またも自分達と地球を救うべく来てくれたことと、懐かしさが混ざり合って、クリリンは思わず泣き出してしまいそうに
なるのを必死にこらえた。
本当に変わっていない。何らかの方法で死んだままの状態でこちらに来たのか、頭の上に小さな輪が浮かんでいるが、それ以外は口調も姿も
まるで変わらない。
過去幾度となく訪れた破滅的な危機を救った戦士は、舞台を未来と変えて再び訪れた危機を救うべく、時を越えてやって来たのだった。

228 :クリキントン:2007/07/07(土) 23:26:13 ID:srrL5Ldb0
今回はここまで。

152さん
153さん
154さん
ふらーりさん
感想感謝です。
クリリンは自分的にはこれくらいが精一杯かな、という感じです。今のところは。

229 :作者の都合により名無しです:2007/07/07(土) 23:50:35 ID:a8s4pd7d0
お疲れ様ですクリキントンさん。
クリリン、よくやったと思うな。死ななかっただけで十分だ。
悟空参戦が思っていたより早かったw

230 :作者の都合により名無しです:2007/07/08(日) 00:16:37 ID:MW8q/2OC0
悟る空がまだ敵が沢山いる
このタイミングで現れたということは
もう一度引っ込むんだろうか

231 :永遠の扉:2007/07/08(日) 00:34:21 ID:4KE04/490
「御前様もいってるでしょ? 色々あったのよ。最初は敵に飛ばされちゃった千歳さんを探し
てたんだけど、ついさっき、聖サンジェルマン病院にいるって連絡があって」
艶やかな声に遅れて歩いてきたのは、黒い髪を腰まで伸ばした長身の女性。
もちろん、いうまでもなく早坂桜花だ。
「そっちにゃ例の出歯亀ニンジャがGO! で、今度はブラ坊の奴からゴーチン探せって命令!」
生意気な声に、剛太は眼をはしはしと瞬かせると、小声で斗貴子と相談し始めた。
(え? ブラボーは知ってるんですか? 俺たちが分断されたって)
(当然だ。私が連絡しておいたからな。報告と連絡と相談は基本だぞ)
(その点はバッチリ。ホラ、何か忘れちゃいましたけど、重要なコトを連絡したでしょ?)
グッと親指を立てて嬉しそうに白い歯を見せる剛太に、斗貴子は鼻白んだ。
(ったく。キミは昔から何か手柄を立てるとすぐ調子に乗るな)
(はは。すいません)
(本当は戦士・千歳に探してほしかったんだがな、敵襲を受けていたせいで)
「俺サマたちが探すハメになったってワケだ! まったく大変だったぞ。桜花はか弱いんだか
ら、夜の山の中を歩くのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!!」
「あ、それは、まぁ、スイマセン」
剛太は桜花を見ると、不承不承謝った。
それはいかにも「うるさい奴に説教されたから仕方なく」という様子で、斗貴子との温度差が」
露骨すぎる。
男性諸子にもてはやされるコトこそあれ、邪険に扱われるコトはなかった桜花だ。
適当に扱われて面白い筈がない。
「ともかく、剛太クンの保護は私たちがやるから」
桜花はニコリと笑うと、森の奥を指差した。
「分かった。追撃に移……」
いいかけた斗貴子の頭が一瞬ぐらりとゆらめいたのはその時だ。
この変調に一座はみな顔色を変え、御前などは頬を両手で押えて驚愕を示した。
「先輩! 大丈夫ですか!」
「気にするな。ちょっと息が……切れただけだ」」
支え替わりに処刑鎌を地面に突き立て、軽く息をあげる様子はとても言葉通りには見えない。
実際のところ、彼女は河原で五十六体ものホムンクルスと闘っているのだ。
いかに錬金の戦士といえど、十七歳の少女。消耗は激しいようだ。
「ところで剛太」

232 :永遠の扉:2007/07/08(日) 00:35:08 ID:4KE04/490
「……すみません。俺、肝心な時に斗貴子先輩の力になれなくて」
「気にするな。キミは十分よく戦った。奴らが残りの割符を総て持っているコトを知らせてくれ
ただけでも、十分偉い。よく知らせてくれたな」
フッと女副部長のような柔和な笑みを浮かべて褒める声は、剛太の心に沁みてしまう。
乾いた土に慈雨が浸透するという意味でも、申し訳ない心痛が起こるという意味でも。
負けてなお褒められるコトは正直辛い。まだ怒鳴られた方が気楽だ。
「核鉄なら私が取り返してやる。だからキミはゆっくり休め。いいな」
地面からバルキリスカートを勢いよく抜き出すと、斗貴子は森の奥へと駆けていく。

その足音が遠ざかったころ、剛太は俯き、軽く打ち震え始めた。
(なー、桜花、ひょっとしてゴーチンへこんでね?)
(でしょうね。核鉄取られちゃったんですもの。戦士なら当然)
桜花の返事を得た御前は、猪よりも不格好で短い首をうんうんと縦に振った。
桜花や秋水もL・X・E時代、核鉄の希少性をいやというほどムーンフェイス(酷薄な性質から
は意外な話になるが、彼は子供の信奉者を育てるのをよく好み、進んで教育係を引き受け
ていた)から教え込まれたので、それを奪われた剛太の失意は察するに余りある。
(せっかくだし桜花、ゴーチンなぐさめてやれ)
え? と奇麗な瞳をあどけなく見開いて、桜花は自分の武装錬金を見た。
(トボけたって無駄! お前、ホントはゴーチン落としたいんだろ!)
御前の瞳には湯たんぽみたいにミラージュな起伏がある。そのまなじりを恵比寿みたいに両
脇に垂れ唇を尖らすと、御前の顔は創造者の桜花の気にすら召さないだらしなさを醸し出した。
(あらあら。それは誤解よ御前様。あたしはただちょっかいが出したいだけだし)
桜花はやれやれと肩をすくめて、いかにも御前が的外れな意見をいっているという雰囲気を
作り出した。それからわざと偽悪的な笑みを浮かべて
(あ、でも、ここで慰めておいた方が、後々のためかしら。だから一応)
などともったいつけてはいるが、その実本心では、つい慰めたくなっている。

233 :永遠の扉:2007/07/08(日) 00:36:18 ID:4KE04/490
腹黒い彼女にしては驚くほど純粋な気持が湧いてきているのは、近頃秋水の心がまひろに
向いているがゆえの孤独感だろうか。
(それとももっと別の、何か?)
とくとくと柄にもなく心臓を高鳴らせ、頬に紅差し、ためらいの色を一生懸命払拭してから、
深呼吸。と同時に剛太がようやく面を上げた。それをきっかけに声をかけ……
「やった! 先輩に褒められた!」
桜花はその気楽な大声に肩からコケそうになった。
「色々あったけど、やっぱいいなぁ。スパルタンじゃない先輩っていいなぁ」
えへえへと白い歯をむき幸福そうに笑う剛太に、桜花は頬をちょっとむくませた。
そこからの対応は残虐にして神速であった。
「核鉄取られたクセに喜んでるんじゃねー!!」
御前が垂直一直線にスピンしながら剛太のみぞおちへ蹴りを叩き込んだ。
その後、剛太がしばらく海老みたいに腹を丸めて痙攣した後、御前と口論したのは割愛。

「とにかく、まず傷の治療から。アレ使うのもいいけど、ゴメン御前様。ちょっとだけいい?」
と自分の武装錬金に呼びかけた。
「しょーがねーなぁ。やいゴーチン。今回だけは特別だからな! ちゃんと恩に着ろよ!」
「うっせ。誰が感謝するか似非キューピー。さっさと核鉄に戻……え?」
剛太は目をまんまるくしながら、御前が核鉄に戻る光景を見た。
腹をさすっていた手が止まる。
そりゃ武装錬金なんだから、核鉄に戻るのは当然といえるだろう。
だが。
「ちょっとまさか、あの似非キューピーの創造者って!?」
傷の痛みも忘れて目を白黒させる剛太の掌に、桜花はにこやかに核鉄を乗せてやる。
「あ。言い忘れてたかしら。私の武装錬金はエンゼル御前。形状は弓と自動人形よ」
剛太の掌からじわじわと熱が広がるのは、治癒効果のせいだけではない。
今までの桜花に対する引っかかりが一つの結論へ昇華し始めている高揚感がある。
(そうか。あの似非キューピーが俺の逃避行を見てたもんな。いやに事情に詳しい筈だ)
カズキも「人型ホムンクルスと元・信奉者の仲間がいる」といっていた。で、桜花も元・信奉者。
「そーいえばニュートンアップル女学院で、あなたの声を聞いたような」

234 :永遠の扉:2007/07/08(日) 00:36:50 ID:4KE04/490
「あら、やっと思い出してくれた? あの時は災難だったわね。パピヨンの服なんか着る羽目
になっちゃったんですもの。流石に思わず

『やめてー!! 気持ちは分かるけど、人としての最低限の尊厳は捨てちゃダメッ!!』

とか叫んじゃって」
満足そうに笑う桜花を、剛太は持て余し気味に眺めた。
(そういや、自動人形の武装錬金って創造者の人格を反映するんだったよな。確か講習で
聞いた話じゃ、だいぶ前に坂口大戦士長と戦った共同体の中にいた軍医だったか看護婦
だったかの自動人形も、創造者とは百八十度逆の医療精神溢れる奴とか何とか。とはいう
けど…… ギャップありすぎだろ!!)
片やお世辞にもカワイイとはいえない、似非キューピー。
片や斗貴子一筋の剛太ですら、油断すれば目を奪われかねない楚々とした美女。
満面の笑みでいろいろなコトを誤魔化している桜花に、剛太は慄然たる思いをした。
「ともかく町まで連れてくわね」
「え、大丈夫ッス。もうちょっと休めば一人で歩けますから」
「まぁまぁ」
剛太を支えようとしゃがみ込む桜花の制服は、ところどころ破れてて、かすり傷が見えている。
あちこち泥や葉っぱもついている。
きっと彼女は山歩きに不慣れなのだろう。何度転んだか分らない。
(ったく。自動人形使えるなら、創造者が山道歩く必要ないっての。なのになんでこんな効率
悪い方法とるんだ? あの似非キューピーで俺達見つけ出してから、核鉄に戻せばいいん
じゃねェか? これだから元・信奉者はワケわかんねェ!)
それを抜きにしても、桜花が華奢な体で剛太を支えようとするのは無理が見える。
というか策略の匂いすらしてきたので、
「さっき体調悪そうだったでしょ。だから別にいいですよ」
ともっともらしい理由をでっちあげた。
「……違うの」
「え?」
「その、実は、弟のコトで悩みがあって。だからホラ、体調とかは大丈夫だから」
ちょっと悲しそうな影を湛えて笑う桜花に、共感のような感情を覚えてしまう剛太である。


235 :永遠の扉:2007/07/08(日) 00:38:28 ID:4KE04/490
「追いついたぞホムンクルス!」
香美は「うげっ!」と背筋をのけぞらしながら後ろを振り返った。
この一帯には木がない。代わりに、規則正しく節くれだった緑の影が、数百本と天に向かっ
て伸びている。
竹林。
桜花たちがいる所よりは麓に近い。あと十分も歩けば下山できるだろう。
ちなみにココは銀成市でも有名なタケノコ堀りのスポットで、春ともなれば多くの市民がこぞっ
て訪れるという。
そのせいか、山中に比べるとずいぶん歩きやすい。
竹が伐採されちょっとした広場ができあがっているからだ。
その中心で振り返った香美は、汗ばみながら激しく息をつく斗貴子を認めた。
「うあ。えちぜんもーもーは、しどーふかくごとかいうけどさ」
『敵前逃亡は士道不覚悟、だ! ふはは! 逃げるような奴は追いつかれるのが定めか!
できれば割符のコト、もりもり氏たちに知らせたかったが……』
香美の両脇は、それこそネコの子一匹通さなそうな竹藪。
唯一の広場の入口、つまり香美の後ろには斗貴子。
そして正面には八メートルほどの岩肌厳しい切り立った崖がそびえている。
いくらタケノコ堀のスポットといえど、崖を削って階段を設けるコトまではしなかったらしい。
崖の上を見れば、転落防止用の柵や看板が設けてあるのでその点は評価できるが、灰色
の崖それ自体は貴信たちにとり、監獄の壁のようにおぞましい。
万全の態勢なら一気呵成に駆け上がって逃げれただろうが、今の貴信・香美では無理だろう。
ふくらはぎへの傷のせいでスピードが出ない。だから斗貴子に追いつかれている。
手首が癒着するまで鎖分銅の威力は半分以下。例の掌からの物体射出も使用不可。
『……悪いな。一度ならずも二度もお前を死なすコトになるかも知れないが、……いいか?』
「なにいってるのさ。ご主人に拾われなければ、あたし赤ちゃんのころに死んでたしさ、ま、恩
返しとゆーコトで異論ナシ!」
『よし! ならば……』
斗貴子が踏み込んでバルキリースカートを打ち下ろす瞬間、貴信は首を回転させ、剛太と
闘っていた時の姿へ変貌した。つまり、豊満な猫娘から短髪奇相の男へと。

236 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/07/08(日) 00:40:26 ID:qRJhfg3j0
銀杏丸さんが七人の超将軍を描かれたので小躍りしております。
あのシリーズは各超将軍の過去キットとの連動がいいんですよ。鉄斗羅が復活闇将軍の闇
のカケラを装着できたりとか。シリーズ内での取りまわしがうまいのは超機動大将軍。
でも號斗丸を完全形態にするのに天鎧王(天の神具)と武零斗(肩のシールと兜飾り)と羽
荒斗(石破天驚剣)がいるってどんなものでしょうね銀杏丸さん。武零斗は「飛」「武」の二個
買いが基本なので、シールとか余りはしませんでしたか銀杏丸さん。三国伝はお好きですか銀杏丸さん。

>ハロイさん
次元の魔女とも面識があるというコトで、ますます深まる十和子の謎。
うーむ。スタンド持ってるってコトはジョジョ世界の出身なのでしょうが……
それはさておき、『迂回』という要素で一貫しているラウンダバウトの造形が素晴らしい。

>>197さん
カズキを失った斗貴子さんというのは手負いの獣より怖いと思うのです。ハイ。アニメ25話
じゃ衆人環視の中で叫んだり都合良く通りかかった蝶に殺ホム衝動をかき立てられたりとと
もかく怖い。そんなスクールデイズならバッドエンド一直線な鬱屈状態を描いていきたく。

>>198さん
首だけで動き回れるってのは怪物ならではですね。といってもあまりグロく描いてしまうと原
作から外れてしまうので、ややギャグ分を入れてみました。まぁ、それでも映像を喚起すると
怖いのですが。剛太は活躍させたいのですが、……モーターギアで上手い戦闘って描けるのだろうか。

>>199さん
どもです。なるべく無駄のないようギチギチに詰め込んだらこうなりましたw

ふら〜りさん
貴信と香美。彼らの過去話の構想はあるんですが、絆はあれど恋愛感情には発展しそうに
なく、「ふはは! 早くいいお婿さんを貰うんだ香美!」って見守ってる感じでしょうか。……う
わ。この人だけ恋人できない立場じゃないか。ロマンス用意してやらないと。

>>202さん
自分は回復しましたが、さいさんが心配。仕事って簡単に暇になりませんから……

237 :作者の都合により名無しです:2007/07/08(日) 15:05:31 ID:JUu8r4lC0
スターダストさんお疲れ様です。
自分的にはこの位の分量のほうが、繰り返し読めるので好きいです。
桜花の腹黒い悪女振りとトキコさんのさり気ない優しさの対比がいいなあw
剛太のちょっと悲しい一途さも。

238 :作者の都合により名無しです:2007/07/08(日) 18:51:14 ID:sPzrULTh0
>クリキントン氏
クリリンはあくまで支援キャラだと思っているので僕もこのくらいだと思います
でも、悟空が意外に早く到着しましたね。敵の数が多いからちょっと減らすのかなw

>スターダスト氏
健康な男子ならば桜花を無視するのは不可能だと思いますが、ある意味剛太の
精神力(鈍感力?)は無敵ですねwそれにしても戦乙女の斗貴子は勇ましいなあ。

239 :ふら〜り:2007/07/08(日) 19:13:16 ID:08+6Dcqz0
>>銀杏丸さん
模型とかで目にしてはいましたが、男塾ばりのネーミングセンスですなこのシリーズ。で原作
の内容は知らないのですが、このSSを読む限り男塾ばりに熱い物語の様子。あのコミカル
っぽい外見で、これほどのバトルをやっていたとは少々驚き。星矢にも負けてなさそうで。

>>サナダムシさん
またしても、律儀に原作を踏襲しつつギャグもシリアスも含んだ傑作。ガイアは本来、状況
によってはもっともっと強さを見せ付けられるキャラだと思うんですよね。寂や三崎も同様。
本作はガイアのガイアらしい強さと、サナダさんらしいネタで楽しませてくれました。ぜひまた!

>>クリキントンさん
太陽拳で目潰しから気円斬、しかもパワーアップ版。クリリンで想像し得る最強のコンビ
ネーションだったのに及ばず、か。それはそれでクリリンらしいかもしれない、と思ってたら
あまりにも自然に悟空が来ましたね。とはいえこのまま一気呵成とはいかなさそう……さて?

>>スターダストさん(「早くいいお婿さんを〜」……これはこれで凄ぇぇ萌えます)
えい、斗貴子・香美に続いて今度は桜花まで匂わせるか剛太。しばらく姿を見せてない、
某剣道少年に次ぐギャルゲぶりだぞ剛太。まあ本人の本命はキッパリ斗貴子でしょうが、
私としては香美が惜しい。貴信も交えての賑やか奇妙なラブコメバトルが面白そうで。

240 :作者の都合により名無しです:2007/07/08(日) 22:32:00 ID:dHNAutNq0
スターダストさんは本調子になったみたいですね。
氏のSSには大抵、女の子が毎回活躍しているから華があっていいな。
今回は斗貴子の活躍パートですね。桜花と御前がなんかやらかしそうだけど。

241 :永遠の扉:2007/07/10(火) 00:22:14 ID:FXEQ2/hy0
一本の処刑鎌がどうっと袈裟斬りに貴信の胸に吸い込まれ。
一本の処刑鎌が貴信の左脇を斬り上げ肩の付け根から吹き飛ばし。
一本の処刑鎌が地をすべったとみるや、それは貴信の両膝を伐採し。
一本の処刑鎌が貴信の目を狙う途中で鎖に絡みつかれた。
「悪いな! 元飼い主としちゃあ、元飼い猫がいたぶられるかも知れん時に、のほほんと後
ろばかり見てるワケにはいかない!! 傷を受けるなら僕の方がまだ心痛は少ない!!」
叫びと共に砕けんばかりの握力で鎖を握りしめ、背後に向かって振りぬける!
足を伐採されたにも関わらず、驚異的な力が湧いたのは、精神力のなせる技だ。
そして当然のコトながら鎖はバルキリースカートに絡まっている。
バルキリースカートは斗貴子の大腿部に装着されている。
よって彼女は成すすべなく宙を舞い飛び、上下逆さで崖の四メートル地点に叩きつけられた。
「今はさすがに即死させる威力はないが、どうだぁ!!」
「ぐっ!」
痺れた肺腑から苦しい息が搾り出される。ひび割れた崖を背中がなすすべなく滑り落ちていく。
「僕と香美は一心同体だから、受ける痛みは同じだが!! 力がある分僕が表立つ方が!」
「……ホムンクルス風情が」
斗貴子は意外な行動に出た。頭から落ちながらもバルキリースカートに絡みついた鎖を、残
りの処刑鎌で上向きに叩いたのだ。
一瞬のたわみに遅れて、猛烈な力が鎖を伝導。それを持ってる貴信を空に跳ね上げた。
ちゃりちゃりとうるさい音の中、風船が引かれるような沈降感の中。
貴信は見た。
着地した斗貴子を。見たコトもない殺意の光を瞳に充満させる斗貴子の姿を。
「ホムンクルス風情がその言葉を、一心同体などと口にするな!! 口にするなァァァ!!」
狂乱にも近い叫びをあげる斗貴子に、貴信も香美もまったく気押され、茫然とした。
彼らは知らない。斗貴子がかつて武藤カズキに『一心同体』と誓ったコトを。
そしてその誓いを破られ、カズキを手の届かないところを失ったコトを。
彼女にとってその言葉がいかに逆鱗かを。
「生け捕るのはもうやめだ!」
斗貴子は跳躍した。貴信はその姿を一瞬失念した。彼女の動きは人間としての運動性能を
はるかに逸脱していたからだ。それも負の情念のなせる技。

242 :永遠の扉:2007/07/10(火) 00:25:15 ID:FXEQ2/hy0
だから背中を斬りつけられ、香美の短い呻きを聞く時まで、斗貴子が一瞬で貴信の背後ま
で飛んでいるとは露ほども気付けなかった。鎖もいつの間にやらほどけている。
「私らしく、地獄の痛みの中で吐かせてやる!!」
バランスを崩して地面に叩きつけられた貴信の背中に上空から四本もの処刑鎌をブッ刺す
と、そのままピアノの鍵盤でも叩くような速度で断続的に刺しはじめた。
香美の口からネコ科特有の絞り出すような叫びが迸る。貴信も苦鳴を漏らす。
それでいて斗貴子は賞印を貫こうとしないから、いやはやまったく恐ろしい。
「さぁ、早く楽になりたくば、さっさと貴様たちの仲間の居場所を吐けッ!」
突っ伏す貴信はさすがに絶望を始めていた。
(駄目だ……抜け出そうにも隙がない。ふはは。あまり大声出さなかった方が良かったか?
でもせめて香美だけは助けてやりたかったが……都合良く救援なんて)
意識が遠のいていく。香美の声も聞こえなくなっていく。
指先から力が抜けて、痛覚さえ風の中で薄れていく。

「死んだか」
斗貴子は処刑鎌の動きを止めると、無感動につぶやいた。
「いや、まだだ。死体が消滅していない。ならば……」
斗貴子の内心にはうら寂しい風が吹いている。
敵を殺す。かつてはその理念を貫くのが総てだった。
でも斗貴子はカズキと出会ってしまい、敵を殺すコトでは得られない暖かな感情を貰っていた。
けれど彼はこの地にいない。
取り戻せるなら取り戻したい。けれどその術が絶望的なまでに見つからない。
一体、ホムンクルスを斃した所で何になるというのか。
そうした所で斗貴子の抱える葛藤に光明など射さない。
荒れ狂った傷が世界にバラ撒かれるだけだ。
(けれどどの道、カズキにできるコトなんてこれぐらいしかない……! してやれるコトなど……!)
バルキリースカートを四本ともカマキリのように構えると、貴信の背中越しに章印を狙う。
そして。
貴信を取り囲むように六角形の輪郭が地面に現出した。
それは一瞬にして穴となり、レンガ壁を覗かせながら貴信の体を地下へと落としていく。
この現象に、斗貴子は見覚えがある。どころかこの春先と夏に二度も体験した。

243 :永遠の扉:2007/07/10(火) 00:28:51 ID:FXEQ2/hy0
「……アンダーグラウンドサーチライト! ヴィクトリアの武装錬金か!!」
声に呼応するように、背後に人が現れる気配がした。
偶然、停止中のバルキリースカートにちらりと金髪が映って見えた。
冷えた目つきの小柄な外人少女の姿を瞬時に想起しながら、斗貴子は怒鳴りつつ振り返る。
「どういうつもりだヴィクトリア! 敵を助けるとは! 理由によってはただでは……」
「人間的な楽しみというのはそれこそ無数にある。未知の武装錬金を扱うのも然り」
いやに余裕ぶった声に息を呑む。同時に果てしのない怒りと屈辱の記憶が蘇る。
「また貴様か」
風が軽く吹いた。頭上に響くさらさらという音は、笹がこすれる音だろう。
「戦いもいいが、人間的な楽しみに浸るのもまた格別。さて、組織の長は代表者だ。難物う
ずまく共同体と折衝し、部下の不出来に悩み、分の悪い計画を成就させんと徹夜で頭をフル
活動させるのも、まぁよくあるコト。苦労は多いがやりがいもある」
生暖かくも緩やかな大気の呼吸が、斗貴子の短髪をなびかせ、笹の葉を流していく。
それを心地よさそうに捉えながら、金髪の乱入者は子どもに昔話でも聞かせるようなのどか
な調子で斗貴子に話しかけている。
「俺がいるのはなんとも人間的な楽しみの多い立場だ。徹夜の後に机に伏して寝たふりを
すれば、小札が毛布を掛けてくれもする。まったく優しくて可愛い、天使のようなロバさんだ。
そして」
悠然たる歩みを止め、その男・総角主税は、額に二本指を立てわざとらしいため息を吐いた。
「……やれやれ。この救援は特別だぞ。そうだな……嫌がる香美を無理やり駆り出したコト
への詫び料としておこう。いちおう女のコだから、な」
「貴様!」
「怒るな怒るな。代わりの獲物は用意してある」
声と同時に、斗貴子の首に何かがからみついた。
どこにでもあるような縄だ。崖の上から斗貴子に向かって伸びていて、首のあたりで鉤がミチ
リと縄に食い込んでいる。
「危険 柵を越えるな 銀成市役所」というまったく面白みのないシンプルな看板の横で、縄の
使い手はひゅうっと息を吹きつつ斗貴子を釣り上げた。
腕は一般人の太もものように太い。男はその太さに見合うだけの巨躯である。
そして頭にはあかぎれて古びた編笠。

244 :永遠の扉:2007/07/10(火) 00:31:27 ID:FXEQ2/hy0
鳩尾無銘。影が千歳と根来を苦しめていた男だ。
なお、彼の足もとでは、この前総角が拾ってきたチワワが今にも崖からこぼれそうな勢いで
ピョンピョンと跳ねまわったり地面の匂いをくんすかくんすか嗅いだり吠えたりしている。
「どうせ殺るなら、活きのいい方がいいだろう? それがお前の人間的な楽しみらしいしな」
瞬時に処刑鎌を背後に巡らし、縄を斬り裂いたのはさすが斗貴子という所か。
しかし地響きとともに彼女のこめかみに激痛が走り、なすすべなく宙に浮いた。
無銘だ。崖から斗貴子の眼前にずしりと着地するなりこめかみを掴み上げている。
万力のような力に締め付けられ、斗貴子の口からひきつった呻きが漏れる。
白い足が中空をバタバタともがき、処刑鎌が不快気にこすれあう。
「フ。お前の楽しみは見抜いているが、大事な部下を与えて叶えてやるほど甘くはないぞ。
俺にとって人間的な楽しみではないどころか、組織の長として許し難い」
総角は涼しい顔で例の六角形の穴を作成し、その中へ消え始めた。
「舐め……るなァ!!」
黒装束から覗く瞳がゆらめいた。下から繰り出された斗貴子の拳が、肘にめりこんでいる。
ホムンクルスから目玉を抉りだせる膂力の炸裂に、ほどけるアイアンクロー。
「どの道、貴様たちの手に割符があるとわかった以上、戦いを避ける理由もない!」
地面に踵がつくより早く、処刑鎌で地面を叩いて総角へ躍りかかる。
が、一拍遅い。変哲ない地面から土くれを巻き上げたのみに留まった。
(潜るなり入口部分を実際の空間に変えたか! ヴィクトリアより使いこなしている!)
からくりさえ見抜けば、根来のシークレットトレイルより侵入がたやすい避難壕(シェルター)だ。
(しかし、一体奴はどうやってこの武装錬金を……?)
軽い疑問が生じたが、本題ではない。
「まぁいい。殺せる奴から順番に殺して割符を奪い取るだけだ! そして最後は貴様の番だ!
首を洗って待っていろ!」
「フ。戦士らしからぬユーモラスな意見をありがとう。小札への小噺ができた」
総角の声に次いで、鳩尾の瞳が青白く光った。
「聞き及ぶ範囲において早坂秋水と比肩せし強者。されど堂々の姿勢を崩す事なかれ」
「行くぞ!」

津村斗貴子 vs 鳩尾無銘 開戦!

245 :永遠の扉:2007/07/10(火) 00:34:10 ID:FXEQ2/hy0
昆布はおいしいですよね。今度は熱いお湯でさらさらーっとかきこんでみたい。
ちなみに斗貴子さんの名誉のために断わっておきますが、彼女はコレぐらいはヤリかねん
人だと思うのです。いやむしろ、コレぐらいやらなければならない。
何せ、悲しい過去を打ち明けた桜花と秋水に
「二人仲良く一緒に死ね!」
と言い放ったお方なので。そんな人がヒロインやってる武装錬金。もう大好き。

>>237さん
斗貴子さんはああいうさりげなさがいいんですよ。1巻ラストのアレなんかは連載当時から今
までずっと萌えてます。ただし、それだけじゃない部分も大好きなので、今回は「こう」なって
しまいました。ああ、この人強すぎる。ゲームじゃ一人だけ経験値20万とか持ってますし。

>>238さん
ラブコメでよくある「意中の人以外にはまったく興味なし」「そんな相手にやきもきする」という
王道を彼女たちでやっておりますが、これがまた楽しい楽しいw やっぱ剛太は斗貴子さん
だけを好きじゃないといけませんぜ。さて、今回の斗貴子さん、いかがでしたでしょうか?

ふら〜りさん(思わぬ好反応に驚きながらも嬉しく思っております)
剛太はですね、「恋のライバルポジでありながら、その空回りっぷり不遇っぷりに却って同情
されて応援される」てな特異なキャラなんですよ。だからSSの中ぐらいじゃモテモテであって
欲しいなぁと常々。ちなみに原作では、千里(ちーちん)すら匂わしてますw


>>240さん
これでストックがまだある! なら心強いんですが、今回投下分にてひとまず残弾数ゼロ。頑張らねば。
>氏のSSには大抵、女の子が毎回活躍しているから華があっていいな
言われてみれば! 女の子出てないのって、総ての序章ぐらいかも? ああ、なんかそう認識
すると、急に男ばかりの骨太な話が描きたくなってきた。また爆爵描こうかなぁ。

246 :スターダスト ◆C.B5VSJlKU :2007/07/10(火) 00:38:52 ID:FXEQ2/hy0
コテ失念。

関係ないですが、今週のワンピースに秋水が出てて大喜び。
刀の名前なんですが、尾田さんは和月さんのアシだったので狙ってるんじゃないかと、つい。
そういえばるろうにで、外印がワンピースのロゴ入り爆弾使ったのもいい思い出。
……あれから十年ぐらい経つのに、まだワンピースやってるのか。

247 :作者の都合により名無しです:2007/07/10(火) 14:34:12 ID:WjhCHu1/0
スターダストさんお疲れ様です。
ここ最近のバトルシリーズ、ついに本命のトキコさん出陣で嬉しいですね。
超燃えでお願いします。


なんか、人大杉が全然解除されないね。

248 :作者の都合により名無しです:2007/07/10(火) 18:50:00 ID:7xhZnuMm0
斗貴子はこのくらいはやるでしょうw
そこがまた魅力であるわけで。
完全にスターダストさん、元のペースに戻りましたね。
嬉しいです。

249 :作者の都合により名無しです:2007/07/10(火) 21:23:47 ID:ou7FZrt80
実際に存在するとしたらトキコより香美の方が好きになるだろうな。
トキコは怖い上に生臭そうだw

スターダストさんはどちらかといえば桜花とか脇役の方が
好きそうな気がしてたけど、やはりヒロインもお好きなんだな。

トキコ凛々しくてかっこいいです。

250 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 02:42:50 ID:xT2wI0gr0
【死】─The Strangers─


 学校が終わると「桂木弥子魔界探偵事務所」に顔を出すのが、最近のわたしの日課になっている。
 それが、『あの日』を境にして組みかえられた、わたしの日常だった。

 ──わたしの『日常』は一度崩壊している。
 わたしの父親は殺された。しかも、『密室殺人』という世にも奇妙な手段によって。
 ミステリの世界にしか存在しなかったと思っていた『謎』という概念と、わたしは間近に接してしまったのだ。
 それは、今まで信じて疑わなかった『日常』という一つの世界が崩れ去った瞬間だった。
 その後、わたしは『謎』を解く(くう)という魔人ネウロと出会い、そいつが『トリック』を暴くことで事件は解決した。
 かくして平穏な『日常』がわたしの元に戻ってきた。
 だがそれは、決して以前の『日常』ではなかった。
 わたしはこの世界の『悪意』を、「世界には『謎』が満ちている」ということを既に知ってしまった。
 この世に永遠に変わらないものなんてない。『謎』と出会うことで、わたしの『日常』はまったく新しいかたちに変貌したのだ。

 ──そしてわたしは今、『女子高生探偵』桂木弥子として、魔人脳噛ネウロの協力者(奴隷)として、日々『謎』に接している。
 それが、一度崩れた世界の中からわたしが組み上げた、わたしの『日常』だった。


 繁華街の一等地のビルの最上階に「桂木弥子魔界探偵事務所」は居を構えている。
 それは、ネウロがその筋の金融会社の事務所だった部屋を乗っ取って設立したものだ。
 この事務所を拠点として、わたしは「探偵役」をやらされ、ネウロは「助手役」という立場に隠れて『謎』を解い(くっ)ている。
「ただいまー、アカネちゃん」
 応接用のソファーに鞄を投げ捨て、わたしは壁からぶら下がる黒髪のおさげに向かって挨拶をした。
 傍から見るときっと間抜けな光景だろうが、わたしは冗談でやっているわけじゃなかった。

251 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 02:44:57 ID:xT2wI0gr0
 壁から垂れる一房の三つ編み──『彼女』はこの部屋の『先住者』であり、わたしたちがこの部屋に入居するはるか以前に何者かによって殺されている。
 その死体はポーの黒猫よろしく壁に埋められていたのだが、ネウロの発する魔界の瘴気に当てられて髪の毛部分だけ蘇生してしまった。言わばリビングデッドだ。
 以来、彼女は週三回のトリートメントを報酬として、事務所の秘書として内務を担当している。
「……あれ? ただいま、アカネちゃーん」
 いつもはぶんぶんと髪の毛を振って応えてくれるアカネちゃんが、今日はなぜかぴくりとも動かなかった。
 キューティクルの調子でも悪いのだろうか。それとも、なにか動くに動けない理由でもあるのだろうか。
「なにやってんだ、探偵」
 驚き、背後を振り返ると、見るからにチンピラ丸出しの男が立っていた。
「あ……吾代さん。こんちわ。どうしたの?」
「あの助手に呼ばれたんだよ。つーか、誰だアカネって」
 彼はネウロが魔人であることを知らない(普通の人間ではないことには気づいてるだろうが)。
 だから当然、ネウロの影響で蘇ったアカネちゃんのことも知らない。
「わ、わたしの友達。……脳内の」
「お前……そんなに友達いないのか?」
 なんか痛々しい目を向けられた。
 物凄い誤解なのだが、アカネちゃんのことを説明するわけにもいかないので、黙ってその視線に耐えるしかなかった。
「そ、それでネウロに呼ばれたってなんのこと?」
「あ? 例によってテメーらのパシリだよ。ったくよ、あの化物、人使いが荒いったらねえ」
 彼は元々はこの部屋の住人だった(アカネちゃんの後であるが)。
 悪徳金融会社の社員として清く正しく真面目に働いていたのだが、
なんの運命のいたずらか社長を殺され、その『謎』を嗅ぎつけたネウロに事務所を奪われ、
挙句の果てに「桂木弥子魔界探偵事務所」の雑用(奴隷二号)としてネウロにこき使われているのだ。
 今は民間の大手調査機関に副社長として出向しており、全国津々浦々に広がる情報網でネウロの主食である『謎』を集めている。
「おお、揃っているな」
 なんかいろいろ入った紙袋を腕に抱え、ネウロが悠然とした足取りで事務所に現れた。
 これで「桂木弥子魔界探偵事務所」のスタッフが勢揃いしたことになる。
 もっとも、あくまでネウロを中心としたネウロのためだけの人材なわけであるが。

252 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 02:46:16 ID:xT2wI0gr0
「おいコラ助手。人を呼びつけておいてテメーは気楽にお買い物かよ」
 いかにも買い物帰り、といった感じのネウロを見咎め、吾代さんがネウロに文句をつけるが、
「まあそういきり立つな吾代よ。酒のつまみに特売品のドッグフードをくれてやろう」
「いらねーよ!」
「なぜだ? テレヴィのCMでは『犬まっしぐら』と謳っていたぞ。貴様もまっしぐらなのだろう?」
「テメェ……いつか殺す……」
「ほほう、貴様のような犬ころが我が輩を殺せるかな? 出来もしないことを言うものではない」
「上等だコラ……!」
 このままだと血を見る結果になりそうだった。もちろん血を見るのはネウロで流すのが吾代さんだ。
 いくら吾代さんが鬼のように喧嘩が強くても、所詮は魔人ならぬ身の上、
本当の意味で鬼のように強いネウロには敵わないのは火を見るより明らかだった。
 青筋をぴくぴく言わせる吾代さんをとりなすように、わたしは二人の間に割り込む。
「ね、ねえネウロ。吾代さんになにを調べてもらったのよ」
「そうだったな。吾代よ、我が輩が命じた件はどうなっている? 餌を与えるのは言いつけられた仕事をこなしてからだ」
「だからドッグフードなんざいらねえっつーの! ……クソったれが、お望みどおり調べてやったよ。ほら、これ返すぜ」
 そう言って、吾代さんは小さな紙片を投げて寄越した。
 それは一枚の名刺で、そこに書かれている文字には見覚えがあった。
「ネ、ネウロ! これって……!」
「そうだ。その名刺は先日貴様があの『辺境人(マージナル)』とやらから受け取った物だ。貴様の財布から抜き取って吾代に調べさせた」
「ちょ、なんてことすんのよ! 人の財布を漁るな! アンタねえ、プライバシーって言葉知らないの!?」
「固いことを言うな。貴様の物は我が輩の物、我輩の物は我が輩の物だ。ジャイアニズムと言うそうだな。
なかなか洗練された思想ではないか。人間の中にもそれなりに進歩的な者がいるらしい。我が輩に相応しい概念だと思わぬか?」
「相応しいっちゃあ相応しいけどなんかダメだろそれ!」
「そんなことより吾代よ、さっさと結果を述べろ」

253 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 02:47:20 ID:xT2wI0gr0
 わたしとネウロの応酬に取り残されて手持ち無沙汰だった吾代さんが、意を得たように頷いて手元の書類に目を落とした。
「お、おう。……テメーの言う『香織甲介』『辺境人(マージナル)』って名前で殺し屋をやってるヤツは、その筋の業界にはいないぜ。
人相風体でもそれらしい人物に心当たりがあるやつは見つからなかった。
社長のコネで警察関係にも当たらせたけどよ、そういったヤツがマークされてるって情報はない。前科持ちでもないみてーだ。
住民登録とかで調べる手もあるが、名前だけじゃ身元を割り出すのに時間が掛かりすぎる」
「ふむ……」
 吾代さんの報告を聞きながら、ネウロは顎に手を当てて何事かを考えているようだった。
「吾代よ、一つ確認しておく。『なにも見つからなかった』のだな?」
「ん? ああ、そうだよ。……言っとくけどな、手抜きなんてしてねーぞ。なんの情報も洗い出せなかったぜ。
テメーの気には食わないだろうけどな、ないもんはないんだ。なにかっつーとテメーはゴミだのクズだの言うけどよ──」
「フン、被害妄想も甚だしいぞ。いつ我が輩が貴様をゴミ呼ばわりした? それに、貴様は充分な働きをしている」
「なんだと? だって、なにも調べられなかったんだぞ?」
 その点はわたしも意外だった。
 てっきり、「この低能」だの「役立たず」だの「地球に優しくない二酸化炭素製造機」だの好き放題に言い散らすと思っていたのだが。
「いや、貴様は立派に我が輩にとって必要な情報を入手してきた。
浅薄で無知蒙昧で愚劣極まりなく知能の覚束ないゴミでクズの貴様には理解できないだろうが──」
(今言った! 『ゴミ』って言った!!)
「『なにも無い』──それも一つの真実だ。不在は存在と同等の価値を持つ。全ての存在認識は対なるものの不在を知ることから始まるのだ」
 などと、分かるようで分からないことを言う。
 わたしがクエスチョンマークを頭上に浮かべていると、
「例えば、だ──『アリバイトリック』はその認識に立脚したトリックだ。『そこにいない』ことを擬装することで、不可能犯を演出している。
また、ある種の科学実験や数学証明に於いては、ある命題を否定することで逆説的に別の命題を肯定する手法が取られることも多い。
吾代が情報を持ち帰られなかったということは──吾代の目の届く範囲にヤツはいないということだ。今回の調査でそれが判明したのは大きな前進だ」
「おお、なるほどね」
 わたしの頭上に豆電球が閃いた。思わずぽんと手を打つ。
「こんなことも即座に理解できないとは、やはり貴様たちはダンゴムシ並の頭脳の持ち主だな。
だが安心しろ、貴様らの知恵など当てにしていないからな。三人寄ってもまだ我が輩のレヴェルに達し得まい」
 ……一言多いんだよアンタは。

254 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 02:48:41 ID:xT2wI0gr0
「さて……ご苦労だった、吾代よ。望み通りに犬まっしぐらのドッグフードをくれてやろう。思うさま貪り喰らうが良い」
「そのネタをいつまでも引っ張ってんじゃねえ!」
「いいから帰れ」
「ぐごぉっ!」
 ネウロの投げたドッグフードの缶が吾代さんの眉間に命中した。
 なんか「めこっ」って感じの嫌な音がして、彼は仰向けにぶっ倒れてしまう。
「ご、吾代さん!?」
 慌てて駆け寄って抱き起こすと、吾代さんはわたしの肩につかまってよろよろと起き上がりながら苦々しげにつぶやいた。
「……お前、よくあんな凶暴なやつと一緒に探偵やってられるよな。身体が幾つあっても足りねーぞ」
「うん。わたしもあと三つくらい自分の身体のストックが欲しいなって最近よく思うの」


 吾代さんが帰り、わたしとネウロの二人きりになった(アカネちゃんもいるけど)事務所で、ネウロは椅子に深く腰掛けながら窓の外の夕日を眺めていた。
 わたしはおやつのソフトせんべいをさくさく食べていたが、ふと、その手を止める。
「ねえ、ネウロ」
「なんだ」
「本当に……あの香織さんと全死さんを探すの?」
「無論だ」
「でも、見つけてどうするの? 『謎』は生まれなかったんでしょう?」
「『謎』の気配は確かにあった。奴等自身の手によるものではなくとも、遅かれ早かれ『謎』が奴等の身辺に発生するのは間違いない」
 わたしに顔を背けて応えていたネウロが、ここではじめてこっちを見た。
 窓を背にした逆光のせいで、その表情はよく読み取れなかった。
「ヤコよ。なにを怖れているのだ」
「べ、別になにも」
「そうか?」

255 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 04:12:52 ID:xT2wI0gr0
 ──それは、きっと嘘だった。
 わたしは、怖かったのだと思う。
「……香織さんが人を殺す理由、ネウロに言ったよね」
「『習慣』、だそうだな」
「そうだよ。習慣だから人を殺すんだって。信じられる?
わたしが家に帰ったらまず靴を脱ぐみたいに、ドアを開けたら閉めるように、そんな理由で人を殺してるんだよ?
それに、全死さんは『メタテキストをいじれる』って言ってた。
その意味はよく分からないけど、そうすれば『安全な標的』……安全に人を殺せるんだって」
「なにが言いたいのだ、ヤコ」
「だから……ネウロ、大丈夫なの?
『謎』を生む『悪意』がなく人を殺せる人間がいて、『謎』の生まれる必要のない『安全な標的』を作れる人がいて、
今はあの二人だけなのかもしれない、でも、もし、そんな人たちが他にもいて、それでそんな人たちが増えたりしたら……。
いつか、この世界から、『謎』が消えて無くなっちゃうんじゃないの? そしたら、ネウロはどうする気?」
「なんだ……貴様は我が輩の食料危機の心配をしているのか?」
「だ、誰がアンタの心配なんか!」
 さらに言い募ろうとするわたしを手で制して、ネウロはふわりと椅子から浮かび上がった。
 そして宙で身を反転させ、そのまま天井に降り立つ。
「だが、貴様にしては珍しく良い着眼点だ。
そう──まさにその故に、我が輩は奴等を見定めなくてはならない。
奴等が我が輩にとっての『天敵』になりうるかどうか、是非とも確認しておく必要があるのだ。
もしも奴等が『謎』を否定するような存在であるならば、早めに排除せねばなるまい。
理論上は存在するであろう、我が輩の脳髄の飢えを満たす『究極の謎』に到達するためにも、な」
 夕暮れの中で逆さに立ちながら、『謎』喰いの魔人はそう言って不敵に笑った。

256 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 14:37:17 ID:AGcT883B0
お疲れ様ですネウロ作者さん。
今回は幕間といった感じですが
こういう日常的なやり取りが僕は好きですね。
この4人の関係、好きだなあ。

257 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 18:41:30 ID:p5u8haMJ0
吾代大好きだから活躍させてほしいな・・

258 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 20:06:08 ID:nZSKQ1WP0
このSSは本当にネウロのキャラが書けているな。
ヤコといい、ネウロといい。五台といい。
それに、異分子の全死たちがどう絡んでいくか楽しみだ。
(こちらは原作知らないが・・)毎度楽しみにしてます。



あと、全然関係ないけどイチローすげえ!

259 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 21:31:42 ID:xT2wI0gr0
 今となってはどうでも良い話だが、俺は中学生の頃、同級生の少女を殺した。
 彼女に対してなんらかの恨みや欲望があったわけではない。ただ、俺には人を殺す習慣があり、その習慣に従って殺した。
 だが、殺人という行為のリスクに鑑みるなら、見知った人間を殺すべきではなかった。
 案の定というかなんというか、その殺人は幼馴染の女に嗅ぎつけられる仕儀に陥った。
 それだけならまだいい。その女は(多分、面白半分で)俺の行為を勝手に『密室殺人』に仕立てあげたのだ。
 俺は『習慣』を、日常を、レギュラーを大切にして生きている。
 それまで俺は、自分の殺人行為にそんなミステリ風の茶目っ気を導入したことなど一度も無かったのだ。
 まったくの話、余計なお世話もいいところだった。そのお陰で、俺は危うく司直の手に落ちる寸前まで行ってしまった。
 俺の習慣を破壊したその女が悪いのか、それとも同級生という身分の人間を殺した俺が悪いのか。
 それは俺には分からない。

 ──はっきりとしているのは、このエピソードは習慣の重要性を改めて俺に教示する寓話であり、
飛鳥井全死という傍若無人で無軌道な女が俺の『日常』に組み込まれることとなった、その切っ掛けであるということだった。


 いつものように大学の授業を終えて部屋に帰ると、(不本意なことに)いつものように全死がそこにいた。
「お帰り、辺境人(マージナル)」
 ビールの缶を掲げる全死はそう言って笑ったが、元の面構えが凶悪なので、とてもじゃないが俺の帰りを歓迎しているようには見えなかった。
 また勝手に人の部屋に上がりこんで──という抗議は胸中だけに留めておいた。言うだけ無駄であり、口を動かすカロリー分だけ損をするからだ。
「また昼間からビールですか。いいご身分ですね」
 テキストやらノートやらを入れている鞄を床に投げ捨てながら思ったままを告げると、全死は「ふん」と唇を歪ませた。
「わたしがいいご身分なのは当たり前さ。それに、ドイツ人は昼間でもビール飲んでるぞ」
「ここは日本です。そこまで言うならドイツに帰化したらどうです? その方が俺も肩の荷が降りるというものです」
「馬鹿言うなよ。愛するお前を置いてそんな遠くに行けるもんか」
「それはどうも。身に余る光栄ですね」
 そんなことは微塵も思っていないのだが、とりあえず自動的にそんな言葉を吐く。
 見ると、テーブルの上にはビールの空き缶が散乱しており、おまけにだらしない全死が辺り構わずビールをこぼしたせいでべたべたに汚れていた。
 ちょっと眉をしかめそうになるが、敢えて無表情を装って全死の向かいに腰を下ろす。

260 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 21:33:28 ID:xT2wI0gr0
「それで、今日はなんの御用ですか?」
「まあ、とりあえず飲めよ。まだまだあるぞ」
「それは俺の家の冷蔵庫に入っていたビールでしょう。全死さんに『飲めよ』と勧められる筋合いはありません。
むしろここは、俺が怒ってもいい場面ですよ。他人の家の冷蔵庫を開けるのは礼に反します」
「飲まないのか?」
「……飲みますよ。俺のビールですからね」
 全死はつまみもなしにビールを七缶も空けていた。変なところで器用な女である。
 冷蔵庫になにかつまみになりそうなものがあったはずだと腰を浮かしかけたとき、チャイムが鳴り響いた。
「どうぞー、開いてるよ」
「全死さんに来客の応対をする権利はありません」
 そう言いつつ、冷蔵庫へと向かっていた足を玄関口へと軌道修正した。
 ドアを開けても、そには誰もいない──と思ったら、視界の底辺に小柄な人影が辛うじて引っ掛かっていた。
 目線を下げてそこに焦点を合わせると、それが誰であるかは即座に判明した。
「こんにちわ。全死さん、いらっしゃいますか」
 荻浦嬢瑠璃だった。薄地のセーラー服を折り目正しく着込んで、首筋にうっすら汗をかいていた。
「……なんであの人がここにいると思うんだ? 言っておくけど、ここは全死さんの家じゃないぞ。
俺が賃借契約をしている部屋だ。俺が全死さんと同棲してるとか気色悪いことを考えてるんだったら即座に改めてくれ」
「それは把握しています。ですが、全死さんから連絡がありましたので。ここに来い、と」
「なるほどね。納得した」
 全死が呼んだというなら否も応もない。仕方なく嬢瑠璃を招じ入れる。
 嬢瑠璃は律儀に「お邪魔いたします」を礼をし、「差し入れです」とスーパーの袋を差し出した。中を覗くと鳥の唐揚げだった。
 この年頃の少女にしては実に気の利いた態度だろう。
 いい歳こいて無断で他人の部屋に上がりこむどこかの誰かに、彼女の爪の垢でも煎じて飲ませたらいいと思う。
 だが現実はいつだって悲しい。実際はその真逆で、この荻浦嬢瑠璃は全死の悪影響をモロに被る立場にあり、日々全死に毒されているのだ。
「やあ、嬢瑠璃ちゃん、早かったね。褒めてあげよう」
「お褒めいただかなくとも結構です。わたしは全死さんの奴隷ですから」

261 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 21:37:29 ID:xT2wI0gr0
 ──そう、全死と嬢瑠璃の間には、およそ現実離れした『主従関係』が成立しているのである。
 以前はおおむね普通の女子中学生だった彼女は、不運にして不条理なことに全死に目を付けられた。
 「あの子をわたしのものにする」という自己中心的な全死の意向により、彼女の人生計画は大きく狂ってしまった。
 数ある全死の悪癖のなかでももっとも過激なのが、この「気に入った少女を支配下に置く」というやつだろう。
 果たして全死の常軌を逸した過干渉を受け、挙句に上手いこと言いくるめられ、終には全死の目論見どおりに全死の奴隷になってしまった。
 本人は「嬢瑠璃ちゃんのメタテキストを改変したんだよ」と称しているが、その現場を傍観していた俺からすれば妙なロジックで言いくるめているようにしか見えなかった。
「香織さん、お皿を拝借します」
「ん? ああ、勝手に使えばいい」
 嬢瑠璃は甲斐甲斐しくも全死のために鳥の唐揚げを皿に取り分けていた。
「──あ」
 と、嬢瑠璃の手から箸がぽろっと落ちる。
 咄嗟に伸ばした手がその小さな手と触れる。他人と手を触れ合わせる経験など大して持ち合わせていないが、
それでも嬢瑠璃の手には、はっきりと感覚できる違和感があった。
 彼女の手には、薬指が無かった。
 それは事故によるものではなければ自分で切り取ったものでもない。強いて言うなら、彼女の両手の薬指は全死にもぎ取られたのだ。
 「強いて言うなら」という奇妙な表現なのには理由がある。実際には全死がその手で嬢瑠璃の指を切断したわけではない。
 嬢瑠璃が全死の奴隷になった日──全死の言葉を借りれば「嬢瑠璃ちゃんのメタテキストが改変された」その瞬間、
嬢瑠璃の薬指がなんの前触れも無くパージされたのだ。
 全死は「メタテキストをいじって他人を味方につけると稀にこうなるんだ」と説明したが、まるで意味不明だった。
 メタテキストうんぬんを信じるにしても、それと嬢瑠璃の指が吹き飛ぶことの間に、どんな因果関係があるのか。
 しかしまあ──結局はそんなことはどうでもいいことである。事実として嬢瑠璃の指は欠落してしまったのだ。
 そうなっているのだから仕方が無い。世の中とはいつだってそういうものだ。
 とりあえずの確定事項として、荻浦嬢瑠璃は全死に『飼われて』いる。
 それだけしっかりと把握しておけば俺の生活にはなんの支障も無かった。薬指が無くて困るのは俺ではない。
 彼女がエンゲージリングを填められない身体になっても、それは俺の知ったことではなかった。

262 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 21:41:59 ID:xT2wI0gr0
「あの、離してくれませんか」
 言われて我に返る。思考に気を取られて嬢瑠璃の手を握ったままだった。
 顔を上げると、嬢瑠璃の平静で無感動な瞳が俺を捉えていた。
「おっと、悪い」
「いえ」
 嬢瑠璃は顔色一つ変えずにそう述べた。まあここで頬を染められても俺が困るわけだが。
「おいおいおい、なにやってんだよ辺境人(マージナル)。わたしの嬢瑠璃ちゃんにセクハラなんて許さないぞ」
「人聞きの悪いことを言わないでください。ちょっと考え事をしていただけです」
「ふん、どうだか。──そういやお前、あの子どうするつもりだ?」
「あの子って?」
「桂木弥子ちゃんだよ」
 さっぱり心当たりが無かった。さて、誰だっけ──と考え始めたところで、嬢瑠璃がそっと耳打ちする。
「『目撃者』ですよ」
「ああ、『探偵』の。言われてみればそんな名前でしたね」
「ん? なに、あの子、探偵なのか?」
「少なくとも受け取った名刺にはそう記されてましたはずです。ちょっと待ってください。
ええっと……あった。『桂木弥子魔界探偵事務所』──なんだか、ずいぶんとプログレッシブな名前の探偵事務所ですね」
「そんな枝葉はどうでもいいんだ。お前はあの子をどうするつもりだって聞いてるんだよ」
 正直に言って、全死の質問の意味が理解できなかった。
 なんの必要があって、自分の殺人行為を目撃された少女と交渉を持たなければならないのか。
 探偵だかなんだか知らないが、民間人である彼女は現行犯以外の逮捕権を持ち合わせていない。
 つまり、彼女の証言によって俺の行為が明るみに出ても、それは別の証拠物件によって俺が逮捕されるのとなんら変わりが無い。
 そして証拠隠滅とは行為の直後に行うものであり、「あ、消し忘れた」とのこのこ隠滅しに戻るものではないのだ。
 下手に動けば動くだけ、自分の存在を外の世界に知らしめることになる。
 こういう場合は何食わぬ顔をして日常を過ごすのが最上だろう。
「どうするって……どうもこうもありません。没交渉です」

263 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 21:50:37 ID:xT2wI0gr0
「なんだよ、なにもしないのか? ──というか、お前鬼だな」
 俺は鬼ではない。これでも自他共に認める人間である。
「俺は鬼じゃありません。れっきとしたホモ・サピエンスです」
「だってそうだろう? そんな鉄板もののフラグ立てておきながら、しれっとした顔してそいつをへし折るんだもの」
「……言ってる意味が分かりません」
「あん? この愚鈍が。孤高の殺人者とそれを目撃した少女なんてこれ以上ない純愛フラグじゃないか」
「全死さんはエロゲのやりすぎじゃないでしょうか。そもそも俺が孤高だってのはどこから発生した説ですか」
 しかしというかやはりというか、全死は俺の意見など聞く耳持たずに好き勝手なことを並べ立てる。
「まあ、問題なのはお前が『辺境人(マージナル)』だってことだな。生粋のフラグブレイカーだよ、お前は。
こっち側とあっち側の境に立って、どっちにも引っ張られたくないっていう、どうしようもなく我侭な人種さ。
──ふん、まあいいさ。お前にその気がないってのなら、わたしも遠慮がいらないからな。
いや、もちろんお前にその気があっても遠慮しないけど」
「はあ、そうですか」
 なにか、とてつもなく嫌な予感がした。
 それは俺の頭痛の種が増えるような予感であり、俺のレギュラーが乱される予感であり、その感覚には覚えがあった。
 無意識的に傍らの嬢瑠璃を見る。彼女は呆れているような困っているような、なんとも言い難い微妙な目線を返してきた。
「決めたぞ、辺境人(マージナル)。わたしは弥子ちゃんを自分のものにする」
 そう言い、全死は実に悪意に満ちた──気の弱いやつなら思わず目を逸らしてしまいそうな禍々しい笑みを顔いっぱいに浮かべた。
 「自分のものにする」という言葉の定義は場合によって様々である。
 嬢瑠璃のように名実ともに完全に支配下におくこともあれば、ただお茶をするだけのこともある。
 だが──どの道、全死に狙われた少女に最悪の災難が訪れるのは免れないだろう。
 全死のような無秩序で破滅的な人間と関わりをもつということは、即ちそういうことである。
 俺としては、『女子高生探偵』桂木弥子に降りかかるであろう空前絶後の災害を胸のうちで悼むことしか出来ない。
 ただまあ、その前に一言だけ全死に苦言を呈しても罰は当たらないだろう。
「──またそれですか。もう少し自重したどうです。嬢瑠璃の日常を目茶苦茶にした失敗からなにも学んでいないじゃないですか」
 すると、全死は意外にも真面目そのもの、といった口調で返してきた。
「なにを言ってるんだ。嬢瑠璃ちゃんの件でわたしは失敗なんてしていないぞ。──いや、『失敗できなかった』というのが実相に近い。
いつも言ってるだろう。わたしは常に正しいんだ。完璧なんだ。完全無欠で無謬で絶対に間違えないんだ」
 それに対し、俺は精一杯の溜息をついてこう答えるだけに留めた。
「はいはい。そうでしょうとも」

264 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 22:05:55 ID:acBufp0G0
ネウロさん乙です。
弥子は可愛いがなんとなくHな雰囲気がありますな。
原作にもこのSSにも。そう感じるのは俺だけか?w

あと素朴な五問なんだが『香織甲介』『辺境人(マージナル)』とかは
ネウロに対抗出来るほどの力の持ち主なのだろうか?
一度そっちも読んでみるか・・

265 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 22:07:42 ID:acBufp0G0
うお、昨日の奴の感想書いている間に、今日の分の続きが来たw
ごめんなさい、ネウロさん。

266 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 22:19:08 ID:xT2wI0gr0


 ある意味犯行予告とも取れる全死の宣言の後も、酒盛りはしばらく続いた。
 気の抜けてぬるくなったビールを口に運びながら、全死がぽつりと漏らした。ついでにビールも口の端から垂らしていた。
「なあ、辺境人(マージナル)。お前、弥子ちゃんと脳噛ネウロに『仕事』の現場を見られたと言っていたよな?」
「はい。その通りですけど」
 全死の依頼を受けて有栖川健人という高校生を殺害した夜、いったいなんの間違いか、俺はあの二人にその現場を目撃された。
 実に遺憾なことに、すべての元凶はそこにある。
 それさえなければ桂木弥子も全死に見初められることもなかっただろうに。
 そのささやかな偶然のせいで、俺と彼女はどうしようもない厄介ごとを抱え込む破目になっている。世の中とはままならないものである。
「それなんだけどさ……お前、誰を殺したんだ?」
「はあ? ……有栖川健人という男子高校生ですよ。全死さんが持ってきた『依頼』じゃないですか」
「そいつ、生きてるぞ」
「はあ?」
 知らず、声がわずかに大きくなっていた。
「だからさ、生きてるんだよ、そいつは。依頼主からクレームが来たぞ。『まだ殺してくれないのか』ってな」
 ふと気がつくと、いつの間にか夜になっていた。
 嬢瑠璃は床に横になってすうすう寝息を立てている。
 神経質が服を着て歩いているような嬢瑠璃のこんな姿を見るのは、ネッシーを肉眼で確認する程度には希少ななシチュエーションだった。
 だが今はそれころではなかったので、そのレアケースに対してはなんの感想も抱かなかった。
「それは……つまり……どういうことですか?」
「まあ単純に考えるなら『人違い』だろうな。そりゃ目撃されるわな。だってわたしの保証外だもの」
 ──なんということだ。

 間違えていたのは、俺だった。

267 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/11(水) 22:20:55 ID:xT2wI0gr0

「でもおかしいですよ、それ。俺はちゃんと相手の家から尾行して殺したんですから。
それに、なら……俺が殺したのは誰だったんです?」
 状況を整理するべく脳のフル回転を始めた俺の眼前に、全死の顔が近づいてきた。
 窓から差し込む月光を照り返して、ノンフレームの眼鏡がきらりと光る。
「おいおい、まさかとは思うが、お前この『謎』を解こうとか考えてるんじゃないだろうな。
辺境人(マージナル)は考えない、変化しない、成長しない、謎を解かない、世界はあるがままでわが友──それがお前のモットーだろう?」
「勝手に俺に変なキャッチコピーを付けないでください」
「そんなことより……いちゃいちゃしないか?」
 そう言って、あぐらをかいた俺の膝に全死が座り込んできた。そして、俺の耳たぶを軽く噛んでくる。
 それへの答えは一つしかない。

「──嫌です」

268 :作者の都合により名無しです:2007/07/11(水) 23:00:49 ID:acBufp0G0
ここで終わりかな?ネウロさん連夜乙です。
割り込みしてすいません。

辺境人と全死、嬢瑠璃と魅力あふれるキャラですな
非常に興味がわいたので一度原作も調べて読んで見ますわ。
ネウロと下僕たちと、全死と奴隷たちがどうなるか楽しみです。

269 :作者の都合により名無しです:2007/07/12(木) 08:24:42 ID:EcLFnXkg0
ネウロサイドと全死サイドに交互にスポットあてて
両サイドのキャラを立たせているのがうまいなー

270 :作者の都合により名無しです:2007/07/12(木) 13:41:51 ID:ZXK4zW7b0
お疲れさんです。
全死も少女収集の趣味があるなんて十分に変態だな。
人外のものは内面もそうなるのか。
あと、有栖川って人は推理作家の人から名前取ったんだろうか
それとももとからの登場人物だろうか?






271 :作者の都合により名無しです:2007/07/12(木) 22:02:47 ID:Cn/tgBVj0
うーん、エロ描写ないのにこの作品はどことなくエロいなw

272 :ふら〜り:2007/07/12(木) 22:24:02 ID:FGNAEeTo0
男も女もバランスよく、濃厚なのが続いてます。やはりごはんに漬物・パンにジャムってな
もので、双方が双方の魅力を引き立て合ってるのが自然で理想で一番の萌えです。

>>スターダストさん
>傷を受けるなら僕の方がまだ心痛は少ない!!
泣けるでぇぇ! いやホント漢の鑑・ヒーローの境地。こういうのを日本語じゃあ『健気』って
いうんですってば。香美がその辺を自覚できるかどうか。いや、したらしたでどうなるか不安
でもありますが。そして久々、可愛いロバさんのご主人様登場か。こっちの2人もまた見たい。

>>ネウロさん
あっちもこっちも、軽快なリズムで凄い内容の会話してますねぇ……立場的には殺人犯と
探偵、主人公チームと敵チーム、文句なしに善悪の対立図式なのに。なのに空気が互角
なのはナゼ。非常識の柱とツッコミ役とが丁度男女逆なので、対比もきれいにはまってます。

>>265
わはは。職人さんが熱意溢れておられる時には、よくあることですぜぃ。で書き直そうとして
自分の感想を読み返すと、展開予想が当たってたり外れてたり。それも楽しかったりして。

273 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 01:50:07 ID:o7Yh/g7J0
「──さて、ヤコ。昨日のおさらいだ。
吾代の情報によれば、『辺境人(マージナル)』こと香織甲介がいわゆるアンダーグラウンドの世界の住人である可能性は低い。
つまり、貴様の出番が回ってきたという訳だ」
「……え? わたし?」
「そうだ。『表の世界』は貴様のフォロー範囲内だ。
先日、奴等と遭遇した場所を覚えているな? 貴様が意地汚くも飛鳥井全死のオゴリで昼食を貪っている間、
香織甲介とその連れの小娘──荻浦嬢瑠璃といったな──は飛鳥井全死を探して周囲の店舗に聞き込みを行ったフシがある」
「え、そうなんだ」
「豚のごとく目の前の料理に食らいついていた貴様は知らぬだろうが、香織甲介自身がそのように言っているのだ。
貴様はそこにさらに調査を被せろ。香織甲介が飛鳥井全死の足取りを追ったその道を逆に辿り、奴等の活動半径を突き止め──なんだアカネ。
今、我が輩はこの無能で指示待ち人間でイエスマンの下僕に命令を──」
 朝っぱらから元気溌剌と、香織さんと全死さんを探し出すための会議(実際はネウロの独演会も同然だったけど)を始めたネウロだったが、
アカネちゃんが自慢の黒髪でちょいちょいとネウロの肩を突き、議事進行を中断させた。
「どうしたの、アカネちゃん」
 アカネちゃんはデスクの上のパソコンを指差し──じゃなくて髪差していた。
 その動作には、なにか慌しい雰囲気がある。
「まったく、なんだと言うのだ」
 わたしとネウロは同時にパソコンの画面を覗き込み──わたしの表情は凍りついた。逆に、ネウロは晴々とした笑顔を浮かべた。
 アカネちゃんはメーリングソフトを立ち上げていたのだが、その受信フォルダがこの三十分の間に送られたメールでパンクしていた。
 なにかの凶悪なスプリクトでも使っているのだろうか、こうしている間にもどんどんメールが送られてくる。
 空恐ろしいことに、ざっとリストを見る限りでは、その件名は一つ一つ異なっている。
 そして、だが、件名の最後に付けられた署名はどれも同じだった。
 ──『飛鳥井全死』。
「な、なによ、これ……」
 生理的な嫌悪感に思わず後ずさったわたしのポケットの中で、ケータイの着信を知らせるメロディが鳴る。
 掛かってきたのは知らない番号からだった。
 手の中でそれは不気味なまでの高音質でシューベルトの『魔王』を奏でている。多分これはネウロが勝手に設定をいじったのだろう。
 猛烈に嫌な予感がするのだが、恐る恐る通話ボタンを押して耳に当てた。

274 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 01:53:13 ID:o7Yh/g7J0
「……も、もしもし?」
『あ、弥子ちゃん? わたしわたし』
「今さらオレオレ詐欺は流行遅れでしょう──ってツッコんでる場合じゃねえ! 全死さんですよね!? なんなんですか、あのメールの山!」
『あ、読んでくれた? 嬉しいな』
「いやいやいや、読んでませんよ!? あんな量を読める訳ないでしょ!?」
『そんなことよりどう、今から会わない?』
「そ、そんなことぉ!? そんな一言で片付けないでくださーい! 依頼のメールとか流れちゃってたらどうしてくれるんですか?」
『奢るよ。なんでも好きなもの食べさせてあげる』
「え、ホントですか? だったら最近噂のパスタ屋に──あぶねえぇー! 釣られるところだった!」
「フハハ、自ら餌に喰らいつく浅ましさはむしろ尊敬に値するな。さしもの我が輩もその方面では貴様に負ける」
 わたしのケータイに変なコードを刺して通話を傍受するネウロがそんなことを言うが、とりあえず無視する。
「……と、とにかく、こんな変なことはもうしないでください! 怒りますよ!?」
『弥子ちゃんの怒った顔も見てみたいな。だったらもっと怒らせてみようかな?』
「あのですねえ!」
『冗談さ。それで、何時にどこで待ち合わせようか?』
(話……噛み合ってないや……)
 ピ。
 なんかもうやるせない気持ちになったわたしは、黙って通話を切った。
 電話中にそういうことをするのはとても失礼だと分かってはいるが、相手が相手だし場合が場合だ。
(……あ、でも、ネウロの目的を考えるなら今の誘いに乗ったほうが良かったんだよね……)
 わたしに食事を奢ることで向こうになんのメリットがあるのかはちょっと分からなかったが、
せっかくのチャンスをフイにしたことでネウロは怒るだろうか。
 そう思って背後を振り返ると──ネウロはこの上なく上機嫌だった。
 全死さんとのコネクションを断ち切ってしまって腹が立たないのか──そう言いかけたわたしだったが、すぐにその発想の愚かしさを悟る。

275 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 01:55:29 ID:o7Yh/g7J0
 パソコンの画面では相変わらずのスピードでメールが舞い込んできていて、その前でアカネちゃんがおろおろしている。
 そして再びケータイが『魔王』を鳴り響かせ、事務所の電話もけたたましくベルを鳴らし始めた。
 彼女とのつながりは、これっぽちも断ち切れていない。飛鳥井全死との関係は現在進行形で発展中なのだ──。
 実にうきうきとした口調で、それこそ歌うように朗々と述べるネウロの声がわたしの耳にこだました。
「ククク……フハハハハ! これは想像以上だ……実に面白いではないか!
こともあろうに『桂木弥子魔界探偵事務所』の営業を妨害するとは!」
「嬉しそうだね……」
 ちなみにわたしは少しも嬉しくない。
 だがネウロにはそんなことは関係ないようで、びしっと鋭い指先をわたしに突きつけた。
「ヤコよ、分かっているな? この魚を消して逃がすなよ。わざわざ探す手間が省けたのは貴様にとっても幸運だと言わざるを得ない」
 ……やっぱりこういう展開か。
「我が輩がこの女に世間の礼儀というものを教育してやる」


「ほんとにもう……全死さんは世間の礼儀というものを勉強したほうがいいと思いますよ」
「馬鹿。そんなもの、とっくに履修済みさ」
「とてもそうは見えませんけどね。スパムメールを送りつけるどの辺りが礼儀に適ってるんですか。それからイタ電も」
「なに、こんなのはただの威力偵察だ。これで相手の出方を見てから本格的に対策を練るんだよ」
「それならそれで、もう少し穏便にやったらいいんじゃないですか? これじゃ無駄に相手を警戒させるだけじゃないですか。
 大学の教室で演劇史の授業のノートを取りながら、俺は全死の言葉に耳を傾けていた。
 俺は真面目な学生なので、授業はきちんと受けている。全死の話はほぼ右から左である。
 だから仮になにか意見を求められたら答えようがないのだが、全死は他人の意見を求めるような謙虚な人物ではないので、その心配は無用だった。
 ついでに言うと全死はこの大学の学生ではない。ならなぜここにいるのか。その疑問に答えられる者はどこにもいない。
 まあ、大学というものは全死みたいな不審人物すら許容できる懐の広さを持った機関であるということははっきりしている。
「全死さんはデリカシーという言葉をご存知ですか?」
「え? 知ってるよ? 珍味のことだろう?」
「それはデリカッセンです。──参考までにお聞きしますが、『役不足』の意味は把握していますか?」
「四飜縛りなのにタンピンドラ一でロンするような馬鹿のことだろ?」
「……はい、もう結構です」

276 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 02:00:40 ID:o7Yh/g7J0


 演劇史の講義が終わると次の講義までは間があるので、在籍している思想インフラ研究会の部室で時間をつぶすことにした。
 なんのつもりか、そこに全死ものこのこ付いて来た。俺としては一人で考え事に耽りたかったのだが、生憎俺には全死の行動を制限する能力がない。
 しかしそれもある意味杞憂というか、無駄な思い煩いに終わった。
 部室には嬢瑠璃が待ち構えていたからだ。
「どうした、ここは君みたいな中学生の来るところじゃないぞ」
「わたしはもう学校には通っていません」
「ああ……そうだったな。いつもセーラー服着てるから、たまにそのことを忘れるよ」
「これは全死さんの趣味です」
 と、嬢瑠璃は胸元のタイをちょっと持ち上げてみせた。
 趣味、ね。
 無理やり学校を辞めさせたくせに未だに学生服を着せ続けているとは、まったくもってけしからんというかいい趣味をしていると思う。
「いい趣味してますね」
 なにを勘違いしたのか、全死は得意そうに薄い胸を張った。
「だろう?」
「褒めてませんから。悪しからず。──で? 君はなんの用なんだ?
君も全死さんみたいに意味も無く人の生活エリアに土足で踏み込む遊びに目覚めたのか?」
 俺が皮肉交じりにそう言ってやると、嬢瑠璃は不思議なものでも見るように首をわずかに傾けた。
「残念ですが、わたしもまだ全死さんのレヴェルには到達できていません。本日お伺いしたのは、貴方に情報をお持ちする為です」
「情報? もしかして、俺が殺した『人違い』の件か?」
「はい。ですが、もったいぶるほどの情報ではありません。一般的な社会人なら誰でも知りえるような内容です。
香織さんは新聞をお読みにならないんですか? すでに警察が被害者の名前を公表していますよ」
 かすかに見下した色を瞳に宿らせ、嬢瑠璃は四つ折にした新聞を俺に差し出した。
「それはまあ読むけど、舐めるようには読まないから見落としだって当然あるさ。自分の殺人を新聞で確認する習慣はないしな」
 弁解する必要はまるで感じないが、社交上の儀礼としてそんな言い訳を口に載せ、新聞を受け取る。
「結論から申し上げますと、貴方が殺したのはやはり有栖川健人ではありません。被害者は有栖川健人の双子の妹で、名は──」

277 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 02:05:05 ID:o7Yh/g7J0


「被害者の名前は有栖川恵。十七歳。近辺の私立校に通う高校生だ」
 笹塚衛士は警視庁捜査一課に所属する刑事である。
 彼はつい先日発生した通り魔事件の捜査についての会議に出席していた。彼もこの事件を担当する捜査員に任じられたのだ。
 そして今、捜査員の認識を統一するために説明を行っているのが、彼の上司であり本件の捜査本部を指揮する笛吹直大警視である。
「死亡推定時刻は深夜の二十三時頃から前後一時間。今のところ目撃証言は無い──聞いてるのか笹塚! 寝るな!」
「……起きてますし聞いてます。すいませんね、どうも徹夜明けはテンションが低くて」
 すらりと伸びた腕を力なく振って答えると、笛吹はまだ不服そうに笹塚を睨んでいたが、咳払いをひとつして説明に戻った。
 それらの情報をしっかりと記憶に刻み込む一方で、笹塚の脳は別のことをも考えていた。
(死亡推定時刻は二十三時頃、か……)
 その一点が彼の意識に引っ掛かる。
 それは、彼の知り合いであり、彼の良き協力者である『探偵』桂木弥子が不審な連絡を寄越した時刻と一致してた。
(まさかとは思うが……弥子ちゃん、事件現場に遭遇してるんじゃないだろーな……あの子、妙にトラブル体質だからな……)
 可能性は低いだろうが、彼女のこれまでの行状を顧みるに、決して否定できない部分もある。
(ま、この会議がはけたら軽く電話してちょろっと探りを入れてみるか……)
 そんなことを考えながら隣を見ると、後輩の石垣筍がなにかのプラモデルを鋭意製作中だった。
「…………」
 こいつは近いうちにしばく必要がある。
 とりあえずそのプラモデルは床に投げ捨てて踏み潰した。
「ああっ! 宇宙戦闘機(コスモファイター)『マバロハーレイ』があああぁぁっ! 酷いですよ笹塚さん! 僕がなにをしたって言うんですか!?」
「いや……今はなにかしないとマズいだろ。メモとか」
 大の男がプラモデルごときで涙目というのも情けない話だが、その男泣きに免じてそれ以上の折檻は止めておくことにする。
 そうこうしているうちに、捜査会議も締めの段階に入っていた。
 会議室の前方の壇上に立つ笛吹が捜査員に向かって檄を飛ばしていた。
 笹塚はそういう熱いノリは嫌いではないが、いかんせん身体が受け付けない。
 煙草に火をつけてそれを聞き流す。
 窓の外はいい天気だった。

278 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 02:15:35 ID:o7Yh/g7J0
「えー、さて……最後になってしまったが、諸君らに紹介しておきたい人物がいる」
(…………?)
 五本目の煙草に火を付けようとしていた笹塚は、その手を止めて笛吹を注視する。
「特例ではあるが、今回は私の他に彼女が本件の指揮を取る」
(『彼女』ってことは女性か……)
「もちろん指揮権は私にある。捜査方針は全て私が決定する。だが、現場では彼女の指示に従ってもらいたい」
 笛吹はそこで、少しばかり言葉を切った。まるでなにかを躊躇っているようだった。
 そうした煮え切らなさは、切れ者で知られる彼には似つかわしくない態度だったので、笹塚は少しだけ訝しく感じる。
「ええい、くそ、なんで私が──紹介しよう、虚木藍警部補だ。……入りたまえ、虚木くん」
 笛吹の声に応じて、会議室のドアが開け放たれた。
 そこに現れた人物を見て、その場の捜査員のほぼ全員が「こいつはとんでもないやつがやってきた」という感想を抱く。
 誰も一声も発しなかった。笹塚もぽかんと口を開け、くわえ煙草を落としそうになる。
 その中で、空気の読めない石垣が、ありったけの、心からの歓声を上げた。
「うわー! すっげえー!!」
 こつこつ、と靴音を響かせながら笛吹に近づく彼女へ、石垣は失礼にも興奮気味に指を差して叫ぶ。
「メイドさんだ!」
(お前、ストレートすぎるだろ!)
 捜査員全員の内心での総ツッコミなど気にも留めず、石垣は「すげえすげえ」とはしゃいでいた。
 しかし──その通りだった。
 丈の短い黒のワンピースの下には過剰なレースで装飾された純白のシャツを着込み、
その上には見ていて恥ずかしいくらいフリフリのフリルエプロンを身にまとっている。
背中まで伸びるストレートヘアの天辺には、やはり過剰なフリルのカチューシャがちょこんと乗っかっていた。
 どこからどう見てもメイドさんである。
「皆様、お初にお目にかかります。わたくし、虚木藍と申します」
 そう名乗って、メイドさんは優雅にお辞儀をした。
 さらに優雅な動作で身を起こした彼女は、見定めたように笹塚に視線を合わせた。
「あなたが笹塚さんですね? ご活躍はかねがね耳にしておりますわ」
 いきなり名指しされて笹塚はちょっと驚くが、ご指名とあればシカトもできない。
 だるさを訴える手足に活を入れてのっそりと立ち上がった。

279 :脳噛ネウロは間違えない:2007/07/13(金) 02:17:39 ID:o7Yh/g7J0
「どーも、笹塚です。……あー、と……どこかの洋館に潜入捜査でもしてたんですかね?」
 周囲の「服装にツッコめ!」という無言のプレッシャーに負け、笹塚は一応聞いてみた。
「いいえ。これは私服です」
「そう……そりゃ失礼」
 さも当然のように堂々と答えられたので、笹塚にはそれ以上の追求が出来なかった。
「あ、そうそう。わたくし、貴方にお願いしたいことがあるのです」
 虚木は胸の前でぽんと手を打ち合わせた。
 タイトな服装に絞られて強調された彼女の胸が、その動きに合わせて大きく左右に揺れた。
「頼み……?」
 笹塚はつい眉根を寄せる。
 いくら階級が上で本件の指揮者で女性でおまけに美人でも、
初対面の相手になにかを頼まれて二つ返事で引き受けるほど、自分が男気に溢れた人間でないことは自覚していた。
「はい」
 と、彼女は笹塚の耳元にまで口を寄せる。かすかに上品な香水の香りがした。
「あなたのお知り合いでいらっしゃる、可愛い探偵さんを是非ともご紹介いただきたいのです」
「なんだって……?」
 問い返すと、虚木藍警部補はにこやかに微笑んだ。
「是非ともよしなに」

280 :作者の都合により名無しです:2007/07/13(金) 02:51:51 ID:o7Yh/g7J0
よく考えたら石垣の一人称「俺」で笹塚の呼び方は「先輩」だったような気がします。
脳内でてけとうに補完しておいてください。

281 :作者の都合により名無しです:2007/07/13(金) 04:31:55 ID:9hhFZ1Wb0
なかなか面白い展開になってきましたね
この後デスノートのキラや地獄少女の閻魔あいも出てきそうな感じですね
期待しています

282 :作者の都合により名無しです:2007/07/13(金) 13:08:27 ID:PdEfRoNF0
お疲れ様です
絶好調モードですね。
ネウロサイドもうオールキャストそろったかな?
いよいよ本格的にお話が動き出しそうで楽しみです。

283 :作者の都合により名無しです:2007/07/13(金) 16:09:10 ID:C77IRvTO0
最近この作品好きになった
楽しみにしてます
でも俺がネウロで一番好きな流石にサイは出ないよね?

284 :作者の都合により名無しです:2007/07/13(金) 22:22:15 ID:5O06qF880
ネウロ作者さんはこいだけ面白い作品書くんだから
そろそろコテハンを名乗ってくれまいか。
虚木かわいいなあw

285 :作者の都合により名無しです:2007/07/14(土) 08:22:11 ID:WtF1Z4ZS0
今回の人大杉は長いな・・

286 :作者の都合により名無しです:2007/07/15(日) 11:10:48 ID:1fs5TBuV0
サマサさんとうみにんさん来ないかな

287 :作者の都合により名無しです:2007/07/16(月) 10:49:35 ID:QTXtw6eQ0
ネウロさんの招待はマジで誰?

288 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/16(月) 18:36:00 ID:12SrYEoP0
『迂回と焼菓 C』


「しっかし、夕暮れの校舎ってばなんか気味が悪いわね」
「そうかい。僕はそう思わないね。静かでいいじゃないか」

 ──ラウンダバウト、あなたは小狼に『油断』の暗示を掛けた。ただそれだけなら、なんということもなかったでしょう。
自分の能力のことは自分がよく知っているのだから、匙加減を間違えることなど有り得なかった──

「……そういやあんた、なんで男装なんかしてんの?」
「どうして君にそんなことを教えなければならないんだ?」
「か、可愛くないわね、あんた」
「お褒めに与り光栄だよ」
「うっわー、マジで可愛くないわ。そんなんじゃ彼氏できないわよ。ねえ南方くん、あんたはどう思う?」

 ──ただ、あなたは或る一つの可能性について見落としがあった。それは、『別の誰かが小狼を攻撃する』ということよ。
それも、ほんの僅かな……あなたが小狼から情報を聞き出し易くする程度の、そんなささやかな『油断』すら命取りになるような、
容赦のない攻撃が加えられる危険性を、果たしてあなたは予測していたかしら──

「どうって……なにがすか」
「だーかーらー、この奈良崎克巳ちゃんを彼女にしたい?」
「はあ」
「はあ、じゃないわよ。年上で男装趣味で生意気で時代掛かったしゃべりかたであまつさえ貧乳の女は好きかと聞いてんだよ」
「やめたまえ、彼は困ってるじゃないか」

289 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/16(月) 18:38:26 ID:12SrYEoP0
 ──小狼は、『羽』の探索中に何者かの襲撃を受けたわ。見ての通り、外傷はまるでない。
それがどういうことか、あなたには分かるわね? なにかの特異な攻撃方法によって彼は襲われたということよ。
そして、あなたと謎の敵の攻撃の、その両方を一身に受けた小狼の肉体は、その身を守るために、
本人の意思とは無関係のところで最後の手段に出た──

「遠野先輩はあの『次元の魔女』っていうのと知り合いなんすか?」
「まっさか。あんな変な人、知人に持った覚えはねーわよ。つーか、あの場にいた全員と初対面よ。
ついでに言うとね、奈良崎。あたし、あんたの名前を当ててみせたけど、あれはね──」

 ──それは、動物の究極的な防御行動……『擬死』よ。
五十嵐さんは今の小狼を『まるで冬眠しているみたい』と表現したわ。ある意味ではそれも間違っていない。
彼は本能的に仮死状態になることによって、『攻撃』を凌いでいるの──

「分かってるさ。サクラさんが言ったことをさも自分が言い当てたようにしたんだろう?」
「あら、気がついてた?」
「それは、ね。いくらなんでも僕のコードネームを知りえる人間が何人もいるとは考えにくい。
とすれば、そのルーツがはっきりしている──『夢見』、と言っていたね──サクラさんが『流出元』と考える方が自然だ。
君の『カスタード・パイ』とやらがどの程度の『能力』かは知らないが、そうした個人情報まで把握できるものではないんだろう?」
「あの。……『能力』ってなんの話すか」
「奈良崎ちゃんによれば、このあたしは『進化しすぎた人間』らしいわよ、って、それだけのくだらねー話よ」

 ──敵の『攻撃』の秘密も、或いはそこにあるのかも知れないわ。
こういう極端な行動に出なければ耐えることのできない、おそらくは『死』に直結する『能力』──

「……南方くん。君はどうして僕たちと一緒に? あの壱原女史の言ったことを聞いていただろう?
『敵』は非常に危険な存在だ。僕程度の戦闘能力では君の身の安全は保障できないよ」
「いや……だって、あいつとは友達だから」
「その志は立派だと思うが──」
「いーんじゃないの、奈良崎。本人がやりたいって言ってるんだから」

290 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/16(月) 18:40:40 ID:12SrYEoP0
 ──ラウンダバウト……いえ、奈良崎克巳さん、そして遠野十和子さん。それでも決意は変わらない?
自分の存在を脅かされかねない重要な情報を他人に漏らし、その上自らの命そのものを賭けて、それでも小狼を助けるというのかしら──

「そういう君こそ、なぜ小狼くんを助けようとするんだ? 初対面なんだろう?」
「あら、正しいことをするのに理由がいるの? 困ってる人がいるなら助けるのって、当たり前のことじゃない」

 ──そう、決意は揺るがないのね。ならば行きなさい。『敵』を倒し、その『能力』を解除させれば小狼は目を覚ますでしょう──

「ところで……遠野先輩、奈良崎先輩。あんたらさっきからなにやってるんですか?
小狼を『半殺し』にしたあいつを探すんでしょう? ダベりながら校内ぶらぶらしてる暇なんかないっすよ」
「あらら、心外だわね。ちゃんと探してるわよ。ねえ、奈良崎」
「もちろんさ。小狼くんの意識を回復させるには、『そいつ』を排除するしかないようだからね」
「俺には、あんたらがあいつを探してるようには見えないんすけど」
「ん、まー、そいつ本人を探してるって言うとちょっと語弊があるかもね。──あ、奈良崎、あの美術室はどう?」
「……いや、駄目だね。西日が差し込んで具合が悪い」
「は? ならなにを探してるんすか?」
「場所ですよ、南方くん。本人の方を探す必要なんかまるでないんだよ。なぜなら……奴はすぐ近くで僕たちを観察している」
「──え!?」
「やだね、気付かなかった? さっきからずっと見られたのよ。だから、問題は『そいつ』を探すことじゃなくて、『どこで』おっぱじめるか、ってコトなのよ。
で、どーする、奈良崎? アンタに任せるわ。あたし、アンタと違ってお淑やかだからさ、そーゆーの分かんないんだわ」
「良く言うよ。──まあ、逃げ場を封じる意味では『上』を目指したほうが都合が良いかも知れないな」

291 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/16(月) 18:42:09 ID:12SrYEoP0

 ──そして、南方航は目の前のドアを開けた。
 彼の視界を埋めたのは、真紅に染まった空と、地に溶けるように沈みつつある太陽と、赤く照らされた校庭だった。
「屋上、ね……まあ『待ち』のステージとしちゃあまあまあなんじゃない?」
 と、彼の背後から首を突き出したのは高等部の制服に身を包んだ年上の女性だった。
 遠野十和子と名乗るその先輩は、どうやら普通の人間ではないらしく、その言動からも『普通じゃなさ』が滲み出ているような感じがする。
「トラップが仕掛けにくいのは残念だが、どの道相手も警戒しているだろう。次善としては申し分ない」
 そう言ったのは、同じく高等部の、ただし男子の制服を着た先輩だった。
 ただし、驚くことにこの先輩は実は女性であるらしい。
 それどころか彼(彼女?)には「奈良崎克巳」という名前の他に「ラウンダバウト」という名前があるようだった。
 それだけでも充分に意味不明な話なのに、さっきから彼の頭越しに交わされる会話は「合成人間」だの「統和機構」だの、
彼の理解力を振り切るような単語ばかりが羅列していた。
(いったいなんなんだ、この人たち……)
 だが──それは今に始まったことではなかった。
 彼のクラスに転入してきた李小狼と木之元桜と出会ってから、彼の世界は微妙な『歪み』を見せ始めていたのだ。
 小狼とサクラは『羽』と呼ぶなんだかよく分からないものを探していた。
 そして、それはどうやら『とんでもないもの』らしくて──。
 そこのところを航が聞いてみても、小狼は言葉を濁すだけで突っ込んだことを教えてはくれなかった。
 極めつけが、今回の件だ。
 いきなり倒れた小狼を保健室まで連れて行ったら、なにを思ったかサクラは彼女の愛用のぬいぐるみに切羽詰った表情で話しかけたのだ。
 小狼が倒れたショックで精神のバランスが崩れたのか? と思ったのも束の間で、
そのぬいぐるみが口を利いたかと思ったら、そいつが保健室の壁に謎の映像を映し出したのだった。
 そこから先は驚きの連続だった。
 『次元の魔女』、『敵』、『対価』、『ラウンダバウト』──。
 呆然としてなにもできなかった航の目の前で、遠野という先輩は恐ろしいほどの冷静さで小狼を救うための手続きをこなしていった。
 そして今に至るわけだが、航は、今進行している状況の半分も理解していないのではないかと自分でも思う。
 どうして、遠野と奈良崎という二人の先輩はまるで『迷い』がないように振舞っていられるのか。
 誰かに教えて欲しかった。
 この世界の全てを。今まで自分に見えていなかった、その裏側を。
 今ここで、いったいなにが起こっているのか。自分はなにをするべきで、なにをしないべきなのか。

292 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/16(月) 18:44:04 ID:12SrYEoP0
(──ええい!)
 航はそうした心のもやもやを振り払うように首を振る。
 自分の思惑とは関係なしに世界は動いている。なら、その中でできることをするしかない。
(そうだ、俺は小狼を……)
 その瞬間、航の視界を奇妙な『影』が横切った。
 咄嗟にそれを目で追う。
「──いた! 貯水タンクの陰だ!」
 小さく叫ぶと、二人の先輩が即座に反応した。
「ふふん、やっとこお出ましってワケね」
「南方くん、君は僕の背後に」
 息の詰まりそうな沈黙を孕んで、そこに潜む『敵』と対峙する──
「……なあ、南方くん」
 彼を背後に庇ったまま、そして緊張の糸を切らさずに、奈良崎が航に問う。
「僕からでは位置が悪くて良く見えないらしい──いや、気配は感じているんだ。だが、『そいつ』の姿は──どこだ?」
 「え?」と不審に思った航は、奈良崎のほうに向けた視線を前方に戻す。
 まさか、見失ったのか、という心配は杞憂に終わった。
 『そいつ』の姿はこれ以上なくはっきりと見えていた。
 いや、今や貯水タンクの陰から出てきて、明らかにこっちへと向かっていた。
 こうなってはどこもくそもないだろう、と思い、身を強張らせる航だったが──。
「姿を見失ったのかい? くそ、意外と素早いやつだな──」
 と、てんで見当はずれの呟きが彼女の口から漏れた。
「な、なにを言ってるんすか!? ほら、あの屋根の上ですよ! まっすぐこっちに向かってきてます!」
 たまらず大きな声を上げるが、
「──どこよ?」
 遠野までもが、不可解そうにそんなことを言った。
 ──『敵』は、目の前まで迫っていた。

293 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/07/16(月) 19:02:07 ID:12SrYEoP0
えー、私生活で思うところありまして、色々停滞してました。
まだまだ色々停滞します。
相変わらず読みにくいというかなんというか、オリキャラ入れたのがまずかったかな。
話が広がる分、逆に収拾つかなくなる。

>邪神?氏
どこか不甲斐ないケンシロウを見てるとなんか切ないっすね。
もっと理不尽なまでに無敵なケンシロウが好きです。
まあ応援のし甲斐があるというものですけど。
化石魚のカレーって美味いん?

>スターダスト氏
斗貴子が相変わらずTQNでなんかもー最高です。
あんま関係ないけど美神とかそっち系のサドキャラが大好きです。
つーか、その緊迫した場面にチワワを入れるセンスに脱帽です。ぼくにはとてもできない。


あ、ダメだ力尽きた。
勝手ですが感想ここまで。

294 :DBIF:2007/07/16(月) 23:25:00 ID:3w+9MmEM0
「さて・・・」
と、悟空はそれまで呆気に取られてやり取りを見ていたガネットの方を向いた。その顔はクリリンに向けたものとは180度変わった厳しいものである。
「おめえらが何をしに来たのかはまだ良くわかんねえが、これ以上オラの仲間を傷つけるつもりなら容赦しねえぞ」
まだ超サイヤ人になっていないため、その温厚な顔つきから感じられる迫力は薄い。しかしその裏側にある何かに気付いたのか、ガネットはその
言葉に押されるように数歩後退った。
「く・・・聞いてねえぞ。ターゲット以外にこんな連中がいるなんてよ」
しかし気を無理矢理奮い立たせたのか、気勢を上げ始めるガネットを無言で見据えながら、悟空は額に人差し指と中指を揃えて当てた。
「え?」
その直後、目の前から悟空の姿が消えるのを見て、ガネットが思わず間の抜けた声を上げた次の瞬間、

トンッ

気を改めて探る間もなく首の後ろに悟空の手刀が吸い込まれ、ガネットは崩れ落ちた。


「くくっ・・・」
遠くにどこか懐かしい気が現れたのを感じ取ったピッコロの口が、我知らず軽い笑い声を漏らした。
(まったく。もう1年も前に死に別れた、しかも今の敵のレベルからすればまだ到底及ばないであろう人間だというのに、頼もしさを感じてしまうとはな。
つくづく存在の大きい奴だ)
「何がおかしい?」
一進一退の攻防の中、突然笑い出したピッコロを見て、エメローが不審な声で訊いた。
「気にするな、こちらのことだ。それより急に時間が惜しくなったんでな。悪いが早めに片付けさせてもらうぞ」
「ほう」
その言葉を聞いて、エメローは明らかな嘲りを含んだ声で言った。これまでの闘いで相手の実力はある程度推測できている。確かに侮れる相手では
ないが、それでも自分が言葉通りたやすく倒されるほど実力が離れているとも思えなかった。
「はあああぁぁ・・・」
エメローの嘲笑も気にせず、ピッコロは気を練りだした。全身から噴き上がる膨大な気が、やがてその右手に集中していく。彼の最強のエネルギー砲で
ある魔貫光殺砲に似ているが、指先ではなく手首から先全てが気をまとっている所が違っている。


295 :DBIF:2007/07/16(月) 23:26:02 ID:3w+9MmEM0
「ふん、大したパワーの集約力だが、そんな単純なエネルギー砲を俺が食らうと思っているのか?」
「思っているさ」
「ならば撃ってみるがいい。俺はただかわして、逆にお前を仕留めるだけだ」
あくまでバカにした口調でせせら笑うエメローを見ながら、しかしピッコロもまたにやりと笑ってみせた。
「言っておくが、これから出す技はパワーが強いとか、スピードが速いとかいうわけじゃない。相手を定めて出す以上、同じ技で返さない限り
絶対に食らう」
そう言うと、ピッコロは何故か気を集中した右手ではなく、左手を軽く引いてからエメローに向けて手の平を真っ直ぐ突き出した。
「魔封波!」
ピッコロの掛け声と共に、突き出された左手を中心として不可解な渦が巻き起こった。
「な、何だこれはああああっ!」
慌てて超スピードで移動しようとするも、既に渦はエメローの身体を捉えていた。
「お・・・おおお・・・おおおおおおおぉぉ〜〜〜〜っ・・・・・・」
為す術もなく渦に巻き込まれたエメローの身体が、渦の回るスピードに乗ってどんどん細く引き伸ばされて行く。
「普通はここで壺か何かに封じるが」
と言いながら、ピッコロは前方に突き出した手の平を、ぐっと閉じた。それに合わせて渦もまた消滅する。
「おぉぉ・・・お?」
「ずあっ!」

ドンッ!

突如として不可解なパワーに巻き込まれたショックからまだ立ち直れないエメローを、ピッコロの放ったエネルギー砲が直撃した。
「が・・・・・・」
小規模な爆発が収まったその後には、金属質の身体のあちこちからくすぶった煙を上げて倒れるエメローの姿があった。
「名付けて魔封砲といったところか。実戦で使うのは少し不安があったが、修行した甲斐はあったな」


296 :DBIF:2007/07/16(月) 23:27:22 ID:3w+9MmEM0
その頃、ラニとスノウはお互いに笑みを浮かべたまま、目まぐるしく拳と脚とを交差させていた。
どちらもまだ本気を出していないのは、その姿がまだ変わっていないことからも知れる。お互いウォーミングアップの感覚で闘っているのだ。それでも
一つ攻撃がぶつかり合うたびに重い鋼を打ち合わせたような音が響き、パンチや蹴りの風圧が極小規模の台風よろしく周囲の木を震わせている。
そんな中、一際大きな音が鳴ったかと思うと、両者は申し合わせたように退いた。
「やはり少しはできるな。そろそろ本格的にパワーを上げていこうか」
ラニの言葉に笑みを深くしたスノウだったが、不意にその肩がぴくりと動いた。
(打ち出した5人中4人の反応がもうなくなっている。どうやらこの辺りが潮時か)
「ではそろそろ・・・」
と、思わせぶりに構えを取るスノウに、ラニもまた笑みを深くして構えるが、しかし次の瞬間、突然スノウが大きく口を開けたかと思うと、すぐに歯を
噛み締めた。

ドドドドッッッッゴォォォォ!!

それに合わせて複数の、恐らくは筒を発射した方向全てから爆発音が響いたかと思うと、四方から爆煙がラニ達に向けて押し寄せてきた。
「チィッ!」
一瞬視界をふさがれたものの、ラニは冷静に相手の気を探った。しかし、
「消えた・・・・・・?まさか、逃げた?逃げただと?!」
即座に気による上昇気流を作り出し、視界を取り戻したものの、ラニの見える範囲にスノウはおろか、彼の乗ってきた宇宙船の姿も存在しなかった。
「ぐ・・・・・・おおおおお〜〜っ!!」
中途半端に手を合わせただけの状態で相手に逃げられた怒りから、ラニは相手もいないのに超サイヤ人となって、余波だけで周囲全てを吹き飛ばす
爆発的な気を上に向けて放った。
「こんなすっきりしない闘いで気が治まるか!もう私の我慢も限界だ」
明らかにイライラの募った表情で叫ぶと、ラニは何を思ったのか突然どこかへと飛び立った。

(くく、確かに相当な実力だが、勝てない相手ではないな。ザード将軍が調整を終えるまであともう少し。お前達を倒すのはそれからだ)
ラニの放つエネルギー砲を遠くに見ながら、草木に隠れつつ進むスノウだったが、不意にその身体が止まった。
(だが奴らはともかくとして、あの場にいた連中は何だ?ウェザー星から受けた最後の報告では奴らは3人のはずだが、他にも手下がいたということか)
しばらく思案に顔をしかめていたスノウだったが、やがてその口が邪悪な笑みに歪んだ。
(まあどうでも構わんか。いずれにせよ奴らに関係する者は皆殺しだ)


297 :DBIF:2007/07/16(月) 23:28:36 ID:3w+9MmEM0
その頃、悟空とクリリンはいきなり爆発したガネットの起こした爆風をやり過ごし、後に残されたクレーターを呆然と眺めていた。
「ひでえ・・・。悟空に負けたからかどうか知らねえが、これじゃ完全な使い捨てじゃねえか」
つぶやくクリリンも、その隣に立つ悟空も怒りの混じった苦い顔をしていた。
「許せねえ。こんなことする奴は、人間じゃねえ」
悟空はまだターブル達やスノウに会っているわけではない。しかし目の前の一事だけでも、相手が憎むべき『悪』であることはわかる。スノウは
確かにターブル達に自分の星を滅ぼされた被害者ではあるが、決してそれだけではないのだ。
「お父さん!」
と、その時上空から声がかけられた。
「おお、悟飯」
「来てくれたんですね」
言いながら悟飯はふわりと悟空の目の前に着地した。その眼には薄い涙の膜が張っている。セルゲーム以来、あるいはもう自分が死ぬまで
会えないのではないかと思われた父親と再会したのだから無理もない。
トランクスとピッコロもすぐに来るだろうと思われたその時、遠くで途轍もない気が膨れ上がると同時に、天に向けてエネルギー砲が放たれた。
「すげえ気だ。あれがターブルって奴か?」
「ち、違います。あれは多分、ラニっていうターブルの仲間の・・・」
「!!こっちに来る!」
悟空の言葉通り、エネルギー砲の撃たれた方角から巨大な気がやって来るのをその場の全員が感じた。
「くっ・・・・・・」
「何のつもりだ」
遅れて来たトランクスとピッコロが着地するのとほぼ同時に、オーラの塊がラニの姿となって一同の前に着地する。
その顔は明らかに不機嫌なものだったが、不意にそれが変わった。その眼は悟空を捉えている。
「ターレス・・・ではなさそうだな。何者だ?」
「オラはこの地球に送られたサイヤ人、孫悟空だ」
「ソンゴクウ?サイヤ人にしては変わった名前だな。まあいい、要するにお前もこの星側の人間ということだろう。ならばある意味都合がいい」
そう言うと、ラニは笑みを浮かべながら改めてその場の一同を見渡した。

298 :DBIF:2007/07/16(月) 23:29:38 ID:3w+9MmEM0
「実はさっきスノウとかいう奴に逃げられてな。折角の戦闘が中途半端に終わって物足りないから、お前達の1人に代役を務めてもらうことにした」
「何だと?!」
「なに、殺しはせんさ。下手にお前達の誰かを殺せば、ターブル様の罰を受けることになるからな。これはあくまで余興だ。何なら全員でかかって
来ても構わんぞ」
突然の意外な申し出に、一同を困惑が襲った。しかし、その中でただ一人、困惑から逃れていた者が声を上げた。
「なら、オラがやろうか」
「え?ち、ちょっと待って下さい悟空さん」
慌てて引き止めながら、トランクスはラニに聞こえないように小声で話した。
「悟空さんの実力を過小評価するわけじゃありませんが、あの人を相手に勝算はあるんですか?」
「いや、勝てるかはわかんねえけど、殺さねえって言ってるから大丈夫だろ?」
「そんな言葉が信用出来るような相手じゃないでしょう!」
思わず引き止める腕を放しそうになり、慌てて体勢を取り戻しながら、トランクスは器用に小声で叫んで突っ込んだ。
「大丈夫大丈夫。いざとなりゃおめえや悟飯がいるだろ?それよりオラ、相手の実力を直に知っておきてえんだ。その方が修行に気も入るからな」
それでも悟空は少し未練がありそうな顔で黙っていたが、やがて確認するようにつぶやいた。
笑顔でそう言って来る悟空に、さすがにトランクスも引き止め続けるわけにもいかず手を離した。
「相談は終わったか?」
「ああ。おめえの相手はオラがする」
スノウを相手に消化不良だった戦闘を再開できる期待からか、軽い笑みを浮かべて言ってくるラニに、悟空もまた笑顔で向き合った。

299 :クリキントン:2007/07/16(月) 23:31:19 ID:d2cv4SGT0
今回はここまで。

228さん
229さん
230さん
238さん
ふらーりさん
感想感謝です。悟空が戦うってことで次回は長めになりそうです。

300 :作者の都合により名無しです:2007/07/17(火) 08:30:19 ID:xZIx08sr0
・ハロイさん
お帰りなさいませ〜。サイトの日記も更新してないので心配しておりました。
まだまだスランプみたいですが、ちょくちょく気分転換に書いて下さいませ。
オリキャラに関しては元々ハロイさんの世界を楽しんでいるという感じなので
全然Okです。みんな可愛いですしね!

・クリキントンさん
クリキントンさんも1週間ぶりくらいかな?ちょっとお久しぶりです。
真打の悟空が登場して全てを持っていくと思いましたが意外とピッコロさんも
頑張ってますね。その分クリリンが解説役に回りそうだけどw



301 :作者の都合により名無しです:2007/07/17(火) 12:31:57 ID:VlVrAQK/0
ハロイさんやっと復活されたか。嬉しい。

302 :作者の都合により名無しです:2007/07/17(火) 17:32:12 ID:Hc8lI17J0
ハロイさんキター
相変わらずクオリティ高くていい!
年末年始みたいなペースは望まないけど、週1位はお願いしたいな。

クリキントンさんは安定してるね。
悟空の活躍、楽しみにしてますぜ。ベジータ結構美味しい所取りか?

303 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/17(火) 21:08:38 ID:dR+uhlFI0
『迂回と焼菓 D』


 『そいつ』はとても奇妙な姿形をしていた。
 背丈はひょろ長く、深い紫色の外套をすっぽりと被り、漆黒の仮面をつけている。
 だが、もっとも奇妙な点は、『そいつ』の『存在感』だった。
 日が落ちかけているとはいえまだ強い陽光の中にありながらも、『そいつ』はまるで薄闇の中にあるような希薄な雰囲気しか持ち合わせていない。
 ややもすると向こう側まで透けて見えそうな異質の佇まいを身に宿し、『そいつ』は静かに立っていた。
(この二人には……見えていないのか!?)
 南方航の目には明らかな『そいつ』の異形が──遠野十和子と奈良崎克巳の両名にはまるで認識できていない。
 そのことを訝しがる暇もなく、『そいつ』は行動を起こした。
 外套の下に隠していた二本の長い腕を伸ばし、未だに事態を把握できていない遠野と奈良崎の首筋へと、その手先を近づけようとしていた。
(『おそらくは死に直結する能力 』──!)
 航の脳裏に、魔女と名乗った女性の言葉が甦る。
 次の瞬間には、ほとんど反射的に二人を突き飛ばしていた。
「うわっ」
「きゃっ!」
 緩慢に伸ばされていた『そいつ』の腕は目標を失って空しく宙を薙ぐ。
 『そいつ』は動きを止め、こちらを見た。
“お前……『見えて』いるのか? この『ダーク・フューネラル』が……”
 その声はガラスを摺り合わせたように嗄れていて、人のものとは思えぬ声音だった。
“『能力』は発現させていないようだが……少なくも素質はあるようだ……”
 なにが起こっているのかまるで分からなかった。教えてもらえるものなら教えて欲しいと、心から願う。
「『素質』……だと? なにを言ってんだよ!?」
“『スタンド使い』の……!”
 そう言うや、『そいつ』は真っ直ぐに航へと向かってくる。
「『敵』は……『敵』はどこにいるんだ、南方くん!」

304 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/17(火) 21:11:29 ID:dR+uhlFI0
 航は『そいつ』──『ダーク・フューネラル』の魔手から逃れようと後ずさるが、すぐにフェンスに背中をぶつける。
 行き止まりだった。
 だが、『ダーク・フューネラル』の侵攻は決して止まることなく、
「見えねーけど、そこにいるのね!?」
 突き飛ばされたままの、屋上の床に伏したままの格好の遠野が懐から取り出したカッターナイフを投げつけるが、
“無駄だ……『スタンド』には『スタンド』でしかダメージを与えられない……”
 その刃は呆気なく『ダーク・フューネラル』をすり抜けて遠くへ飛んでいき、
「うわあああっ!」
 『ダーク・フューネラル』の異様に伸びた両腕に掴まれた航はそのままフェンスを突き破り、淵の向こう側へと落ちていった。


「南方!」
 十和子は叫び、南方航が落ちていったフェンスの穴へと駆け寄った。
 下を覗くが、遥か下方の地面には彼の死体もなければ人の墜落した痕跡もない。
 その代わりに、十和子のいる場所の真下の部屋の窓ガラスが大きく割れていた。
 窓枠の淵に残るガラス片が落日の光を反射し、赤く輝いていた。
「奈良崎! この下はなんの部屋!?」
 茫然自失となりかけていたラウンダバウトは、その言葉にはっと我を取り戻し、ややうろたえながらも答える。
「せ、生物室だが……なにをする気だ、遠野さん」
「決まってるでしょーが、あの子を助けに行くのよ!」
「そ、それは分かっている。だが、どうやって!? 僕たちには『敵』の姿が見えないんだぞ!
いや、見えないどころじゃない、僕の『能力』でも『敵』を感知できなかった……つまり相手は生物ではない!
君の『カスタード・パイ』にもなにも引っ掛からなかったんだろう!?」
「──だったらなに」
 その言い草に、ラウンダバウトは唖然とした。
「だったらって──」
「見えません、匂いません、出来ません、そんな馬鹿みてーな理由がなんだっつーの?」
 十和子は苛立たしげにつかつかとラウンダバウトに歩み寄り、その胸倉を掴み上げた。
 小柄で細身とはいえ決して軽くはない彼女の身体が、十和子の細腕によってかなり高いところまで引きずり上げられる。

305 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/17(火) 21:15:27 ID:dR+uhlFI0
「奈良崎、あんた──あんたの『能力』をあたしに使いなさい」
「……な、なにを言っているんだ?」
 唐突過ぎるその命令口調に、ラウンダバウトは目を白黒させる。
「そんなことをしてなんになるんだ? それに──危険すぎる!
忘れたのか、この騒動の発端は僕のこの『能力』なんだぞ! 同じ過ちを僕に犯せと言うのか?」
 ほとんど鼻がこすれあう距離に十和子の顔があった。
 彼女はわずかの間、じっとラウンダバウトを見つめていたが、やがて思い定めたように瞳を閉じ──「ふぅっ」と息を吐く。
「あたしはね、小狼くんを助けるって決めたの、だからやるしかねーのよ。
だからあんたの力が必要なの。小狼くんを助けたいんでしょう?」
 それには異論がなかった。
 そう──ラウンダバウトは、己の過ちを、自分のせいで生死の淵にある友人を、そして今また死に近づきつつある少年を、
 ──どうしても救いたかった。
「僕は……失敗を犯しやすい人間だ。それでもいいのか?」
「ああもう、じれったいわね。いいからさっさとやりなさい。命令よ」
(『命令』、か──)
 ラウンダバウトはどこか諦めたように首を振り、目の前の少女に向けて『能力』を行使する。
 バイオリズムの波から絶対不可避の『隙』を感知し、そこに『油断』の暗示を打ち込む、回りくどくも確固たる『迂回』の『能力』を。
 ふと、つい先だっては十和子にこの『能力』が通用しなかったことを思い出し、あれはなんだったのだろうと微かに考える。
 十和子の身体から徐々に力が抜けていった。今度はおおむね正常に『能力』が作用しているらしい。
 倒れたりしないよう、ラウンダバウトは彼女の二の腕をとって支えてやる。
 ラウンダバウトから発散される高周波に身を震わせる十和子が口を開いた。
「ねえ──」
「なんだい。仕込みには瞬時に、という訳にはいかない。もう少し待ってくれ」
「違うわよ……あんた、『統和機構』ってところにいたんでしょう? どうしてそこ、辞めちゃったの?」
「正確には辞めてはいないんだがね……任務に失敗したのさ」
「どんな失敗?」
 そこまで聞くか? と思わないでもなかったが、彼女に対してはなぜか反抗する気持ちが無くなっていた。
 なので、問われるままに答える。

306 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/17(火) 21:17:01 ID:dR+uhlFI0
「僕はある組織を監視する命令を受けていた。だが、僕はそこを勝手に壊滅させてしまったんだ」
「どうして?」
 十和子の瞳孔からは活発な反応が失せていた。
 だがそれでもラウンダバウトの決定的な洗脳下には入っていない。
 やはり彼女は自分の『能力』の影響を受けにくい体質なのか──とラウンダバウトは改めて驚嘆する。
「その組織は大規模な人身売買を行う犯罪組織だった。
そして僕は……幼い少女が『商品』として扱われているのを目の当たりにして、自分を見失ってしまった。
個人的な感情に流されて、任務を放棄してしまったんだ」
「──ふふん」
 腕の中で、十和子が笑った。
「馬鹿ね、あんた」
「そうさ、君の言うとおりだ。だから僕は『迂回』の名を以って我が身を戒めているんだ」
「──違うわよ、馬鹿」
「……なんだと?」
 ラウンダバウトが眉をひそめるのへ、
「そんなことを『失敗』だと思うからあんたは馬鹿だってのよ。あんたは間違っちゃいない。このあたしが保証してあげる。
それが『失敗』だってんなら……間違ってるのはこの世界よ」
「僕が……なんだって?」
 任務に絶対服従することが大前提である合成人間に向かって、そんなことをきっぱり言い切る人間なんて──。
「……ま、いいわ」
 完全とは言い難いが、ラウンダバウトの『能力』は十和子に十分に浸透していた。
 それを見澄ましたように、十和子がゆっくりと身を起こす。
「あんたが自分の『正しさ』を信じられないんだったら、代わりにあたしを信じなさい」
 やはりそれは、断固していて反論を許さない命令口調だった。
「そしたら──あたしがあんたの『正しさ』を証明してあげるから」

307 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/17(火) 21:20:08 ID:dR+uhlFI0


「う、うう……」
 南方航は力なくうめきながら、教室の壁に背中を押し付けていた。
 彼の足元には、なぜか蛙やら烏やら蜥蜴やらの死骸がいくつも転がっている。
 それはぴくりとも動かないから「死んでいる」と判別できるようなもので、見た目には生きているとき──それ以上の瑞々しさを保つ、奇妙な死骸だった。
“ここまでやっても『スタンド』を発現させないのか……或いは俺たちの仲間として引き込めるかもと思ったが……”
 航を追い詰めいてる正体不明の『なにか』──『ダーク・フューネラル』は残念そうなんだかそうでないのか分からないような声でつぶやき、
“仕方ない……『ダーク・フューネラル』の糧として……そして我が下僕たる『墓守』となるために……”
 腕の先につく異様なまでに鋭い爪が、航の首を掻き切る直線軌道に乗り、
“死ね……!”
 瞬間、ガラスを割る音と共に、なにかが窓から飛び込んできた。
 その『なにか』は床をごろごろと転がりながらも、その勢いを利用して流れるように立ち上がった。
「と、遠野先輩!」
「はーい、まだ生きてるみたいね」
 たった一人で追い込まれていた圧迫感から開放されたことで思わず歓声を上げた航だったが、すぐにその『異常』に気付く。
 今や日は完全に落ち、闇が校舎内を支配しつつある最中に威風を払って立つ彼女は──
「な、なんで目隠しを!?」
 ──襟に巻かれたタイを解き、あろうことかそれを顔面に巻きつけていた。
 航の首に触れていた『ダーク・フューネラル』の指先がすうっと引かれる。そして、『ダーク・フューネラル』はゆっくりと、だが確実に遠野へと接近していた。
“なんのつもりか知らないが……『見えない』お前に用はない……我が『墓守』となれ……”
 航以外には決して聞こえないであろう台詞を吐き、『ダーク・フューネラル』はその魔性の指先を遠野へと叩き込んだ。
 だが──。
“なんだと……!?”
 遠野は思い切り膝を折り曲げ、その踏み込みを利用して『ダーク・フューネラル』の脇を駆け抜け、その背後に回った。
「み、見えてるんすか……!?」
 恐る恐る発した航の質問に、赤い布切れで目を塞ぐ彼女はいとも簡単そうに言葉を返した。
「もちろん──見えてねーわよ」
 だがそう言いつつも、彼女の姿勢は『ダーク・フューネラル』に対して正面を向いている。
「昔の人は言いました。──『考えるな、感じろ』、ってね」

308 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/07/17(火) 21:27:09 ID:dR+uhlFI0
見苦しい真似を仕出かしてしまったこと、お詫びします。
腹の一つでもかっさばいて謝罪したいと思いますが、それは嘘なので止めておきます。


>クリキントン氏
ピッコロの新技強いですね。
原作でのピッコロさんの扱いの微妙さはちょっとアレだったので、ここでは是非とも頑張ってもらいたいものです。
気になってたんですけどラニってニラですか? いや、個人的な話ですがニラが大好物で。

309 :作者の都合により名無しです:2007/07/17(火) 22:02:35 ID:WS/769Pu0
>ハロイ氏
ハロイさん復活乙。しかも2日連続か。嬉しいな。
なんとなく読んだ感じ、十和子って承太郎に似てるかも。
性格とかは真逆なんだけど、内面的な「揺ぎ無い根っこ」みたいなものが。
ブルースリーの決め台詞もかっこいいなw

>クリキントン氏
やっぱり主役の悟空が前線に出ると締まるな。
この辺りが悟飯やピッコロとは格の違うところだ。
でも悟空の一人舞台はちょっと嫌なので
いつかベジータとタッグ組んで戦ってくれないかなあ。


310 :ふら〜り:2007/07/18(水) 00:01:26 ID:NHtlyLQ80
>>ネウロさん
迷惑メールとはまた陰険且つ効果的な攻撃手段を。ネウロはネウロで動じるどころか楽しん
でるし。強敵にケンカ売られて楽しむ様は悟空みたいなキャラを彷彿とさせますが、この男の
ことだからさぞ陰険な反撃に出るのでしょう。火に注がれそうな油も来たし、楽しみ楽しみ。

>>ハロイさん
性格的にも能力的にも一筋縄ではいかない面々ばかりですから、非戦闘解説パートに入っ
ててもまだ隠し事・腹の探り合いという感じ。気が抜けません。で十和子、一人で「勇敢な
ヒーロー」と「勇気付けるヒロイン」をこなしてますね。貫禄があるというか、本作の大黒柱。

>>クリキントンさん
二次創作をするに当たってアレンジの効かせにくいZ戦士たちの技ですが、魔封砲は見事!
ピッコロにとっては因縁深い技、しかも人間なら命と引き換えの大技、それを自分のものに
して応用、発展させてしまうとは。で悟空も敵連中もまだまだ本気を見せぬ様子、先は長し。

>>自分に追い込みをかけるべく予告
近々、またSSを献上させて頂きます。例によってアレな題材ですが、主人公だけは
福本伸行先生の作品から引っ張って来たのでさほどマイナーではない……かと。

311 :作者の都合により名無しです:2007/07/18(水) 08:26:29 ID:koh6oWL70
静は完全に十和子に主役の座を明け渡しているなw
周りのサブキャラたちも静より目立ってるし。

312 :作者の都合により名無しです:2007/07/18(水) 12:33:47 ID:2GYG7lIk0
ハロイさん、いつもクオリティ高い作品ありがとう。
十和子たちの活躍、いつも楽しみにしてます。
ヴィクテムも連載再開してくれると嬉しいな。

313 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:31:59 ID:EMcfQz1h0
『迂回と焼菓 E』


 遠野は『ダーク・フューネラル』の攻撃を着実にかわし続けていた。それも、ぎりぎり紙一重の距離で。
 あと数センチでもずれていれば眼球や耳が抉られているだろうに、見えていない者の強みか、遠野は冷静そのものだった。
 それ以前に、見えていないのになぜ『ダーク・フューネラル』と対等に渡り合えるのかが大きな問題だったが。
 そもそも、『見えない敵』に対してなぜ『目隠し』をする必要があるのだろうか。
 いや、見えている敵に対して目隠しをする必要もまるでないが、これはそれ以上に不可解だった。
 ともあれ、航ははらはらし通しだった。彼には『ダーク・フューネラル』が見えていて、そいつの容赦ない攻撃が休まることのないのを目の辺りにしているからだった。
「中国武術の世界には──ま、中国武術に限った話じゃないけど──
『本来持っている力をわざと消失させることで、潜在的な力を引き出したり外在するより大きな力を取り込もう』って考え方があるわ。
マンガなんかでよくある自分の目を潰すとか鎧を脱いで裸になるとかいうアレよ」
 航の焦燥を知ってか知らずか、遠野はそんなことを言う。それどころか、
「あたしが目隠ししてるのも、『それ』よ──しかも、ちょっとした裏技で本当のぎりぎりまで自分を追いこんでるから、
今のあたしには『余分な力』ってやつがこれっぽちもないの。まさしく自然体そのものよ」
 などと、かなり無茶苦茶なことまで言ってのけた。
「見えはしないけど……充分に『匂う』のよ。あんたの魂の香りがね。黴と檜の匂いがするわ。胸のむかつく辛気臭い匂い。
ねえ、南方くん。『こいつ』に名前はあんの?」
「だ、『ダーク・フューネラル』って本人は言ってる。……人だかなんだか分かんねーけど」
「ふーん……『暗黒葬送(ダーク・フューネラル)』、か──ぞっとしないわね」
 いつしか、『ダーク・フューネラル』の攻撃は止まっていた。
 そいつは、棒のように直立して遠野と相対していた。攻めあぐねているようにも見えたし、彼女を観察しているようにも見えた。
 それはまるで、彼女の価値を、そこに秘められた力を値踏みしているように。
「あんた……『スタンド使い』?」
 遠野がその単語を口にした瞬間、『ダーク・フューネラル』の姿が大きく歪んだ。
 それは、電波干渉を受けたテレビの像が乱れるのにも似ていた。
 そして同様に、航も驚きの眼差しで遠野を見た。
 『スタンド』とは、ついさっき『ダーク・フューネラル』が口にした単語だ。自分には『スタンド使い』の素質がある、と。

314 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:33:45 ID:EMcfQz1h0
「『スタンド』ってのは……『消える』能力なの? いや──違うわね。『消える』ってのは『あいつ』の『能力』なだけであって……
『スタンド』は普通の人間には見えない、そして『スタンド』は個別に特殊な『能力』を持つ……そんでもって……
あたしの目の前にいるであろう『こいつ』とは別に、これを操っている『本体』とでも言うべき『誰か』がいるというところかしら?」
 彼女の言は、『ダーク・フューネラル』が彼に語ったことと微妙に噛み合っていた。
「ったくよ……『あいつ』も『スタンド』について教えてくれてたらこんな風に足りねー頭を捻る必要なんかなかったのに、よ──。
でもまあ、だいたい図星でしょ? え?」
“お前……何者だ! 『スタンド使い』を知っているのか!?”
 『ダーク・フューネラル』が耳障りな声で吠える。
 赤いタイで隠された顔からは今ひとつ判断しがたいが、遠野にそれが届いた様子はない。
「『スタンド使い』を知ってるのか、って聞いてるけど」
 航が通訳すると、彼女はひょいと無造作に肩をすくめた。
「ん、まー、友達に若干一名。つっても、『スタンド』がどんなモンかまでは知らなかったけど。
あんたのお陰で少しは理解できたわ。『あいつ』に面と向かって聞くのもちょっと恥ずかしかったから、手間が省けて良かったわよ。
ありがとね、『ダーク・フューネラル』さん」


 『そいつ』はやや息を切らしながら無人の廊下を駆けていた。
 向かう先は決まりきっていた。──生物室である。
(あいつは危険だ……!)
 最初、『それ』を言いつけられたときは簡単な仕事だと思っていた。
 『羽』を追う者を殺せ──『そいつ』の分身たる『ダーク・フューネラル』にとって、それは造作もないことのはずだった。
 だが──。
 『殺した』はずの少年は、なぜか未だに死にきれていない。
 その上、彼を救おうとするべく動き出した数人の生徒……その一人は、普通人でありながら極めて短時間に『スタンド』の実態に肉薄していた。
 もはや滅茶苦茶だった。
 なにがどうなっているのか、自分がなんのために動いているのか、真の敵は誰なのか──そのすべてがごた混ぜになっていた。
 この混乱した状況を制するには──状況を単純なかたちに整理するしかない。
(『死』だ……それこそが最も単純な世界だ……!)
 『そいつ』は階段を二段飛ばしで駆け上り、なおも走る。

315 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:35:03 ID:EMcfQz1h0
 なぜだか知らないが、あの女は目隠しをしながら『ダーク・フューネラル』と戦っている。
 いや──戦っているのではない。ただ単に自分の攻撃を回避しているだけだ。
 『スタンド』は『スタンド』でしかダメージを与えられない。それがルールだ。
 つまり、今なお圧倒的にこちらが有利なのだ。
 それに、まだ『ダーク・フューネラル』は真の『能力』を発揮していない。
 それを使えばあんな女など瞬殺できるだろうが、『スタンド』が見える南方の前で『能力』を使うのはわずかに不安が残る。
 続けて殺せば問題ないだろうが、リスクは最小限にしておくに越したことはない。
(ここは確実に……)
 視界が塞がれているならそれを逆手に取ってやる。
「『同時攻撃』だ……!」
 いくらなんでも、『本体』である自分と『スタンド』の両方の殺意を、盲の状態で捌けはしないだろう。
「あの女を殺す……それから南方を殺す……そしたら屋上に戻ってもう一人殺す……最後に李と木之元を殺す……」
 『そいつ』は熱に浮かされたように、口の端から言葉を漏らしていた。
 目指す生物室は目の前にあった。
 制服の内ポケットに右手を差し入れ、その中に潜む小振りの、だが切れ味だけは本物のナイフに手を触れさせる。
「殺す……殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す──」
「──忠告しておこう。君は『油断』している」
 生物室のドアに手をかけたその背後から、不意に声が掛かった。
 咄嗟に振り返ろうと──出来なかった。
 なぜか身体に力が入らず、背中と首を捻じ曲げるという簡単な動作すらも不能な状態に陥っていた。
「例えば──針に糸が上手く通らないとき、君はどう対処する?」
 淡々と述べる背後の声は、どこか聞き覚えがあった。
「そう──そういうとき、普通は『眼を近づけて良く見ようと』する。君もそうだろう? 『だから』ここに来た。違うかな?
だが、いやはや……ここまで遠野さんの思惑通りだとさすがに気味が悪くなるな。
なにせ、彼女の読みに違わず、痺れを切らした『本体』がのこのこ現れたのだから、ね──」
「罠……だったのか?」
 さあっと顔から血の気が引くのが感じられた。
 ただ自分を誘き寄せるためだけに、あの女はあそこまでのことをやってのけたとでも言うのだろうか。

316 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:37:29 ID:EMcfQz1h0
「しかし、さて……君は今、聞き捨てのならないことを言ったな。
僕や遠野さんと違い、南方くんや小狼くん、そしてサクラさんのことをきちんと苗字で呼んでいた……。
つまり君は、この学園の生徒で……少なくとも中等部の、そして彼らと同じ学年だという可能性が極めて高い」
 『そいつ』の肩が背後から鷲掴みにされる。
「その顔……見せてもらおう!」


 『本体』を無理矢理振り向かせたラウンダバウトは、その異様な相に思わず息を呑んだ。
「か、仮面……?」
 首から下はまったく普通の学生服なのだが、その顔面にはのっぺりと黒光りする無表情の仮面が貼り付けられていた。
「──これは儀式だ。『ダーク・フューネラル』を使うときの。
お前、『黒のオルフェ』を観たことあるか? オルフェウスとエウリディケの話だ。イザナミとイザナギの話は?
『死』は『仮面』だ……誰も、その下に隠された実相を覗くことは出来ない。それが出来るとき、人は死ぬ。
仮面を被ることで、俺は『死』と一体になれるんだ。そうすることで『ダーク・フューネラル』を自在に操れる」
 冷え切った声音で電波話を語る『本体』を、ラウンダバウトは背後から羽交い絞めにして腕を捻り上げる。
 力加減に容赦はなかった。『本体』のわずかばかりの抵抗がなければ、そのまま肩甲骨を外していたかも知れなかった。
「いやに饒舌じゃないか。君は自分の立場を自覚しているか?
今は身体の自由だけだろうが……すぐに精神の自由すらも僕の制御下に置かれるんだぞ」
「……立場? ……自覚?」
 覆われた仮面の上からでもはっきりと分かるくらい、『本体』は全身を痙攣させて──嗤った。
「それはこっちのセリフだ」
「──っ!?」

317 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:39:15 ID:EMcfQz1h0


“オ、ォオオ……”
 航の目の前で、突如として『ダーク・フューネラル』がその様相を一変させる。
 フォルムが変形したわけではないが、それ以上の……凄惨なまでの禍々しさが、その痩躯に集中し始めていた。
“ウウウウゥゥゥオオオアァァッシャアァァァァッァ!!”
 棒の身体を文字通りに弓形に反らし、『ダーク・フューネラル』は咆哮する。
 その死の呼び声に呼応するように、生物室の──その部屋の責任者である生物教諭の純然たる趣味によって蒐集されている──
生物標本の陳列棚が、がたがたと震えだした。
 『ダーク・フューネラル』が見えない遠野にもその異変は察知できたのか、火を見た猫のように警戒心を露わにして構えをとる。
 航はそこで、自分のとんでもない失態に思い至る。
 『ダーク・フューネラル』の『能力』──彼女が生物室に飛び込んでくる直前に見たその異能を伝えていなかったことに。
「遠野先輩、ダメだ!」
 なにが駄目なのか言ってる自分ですら把握できていなかったが、それでも「ダメだ」と言うしかなかった。
「こいつは……『死体』を『完璧な死体』に復元できるんだ!」
“もう遅い……! 我が『ダーク・フューネラル』の生み出し『墓守』の手に掛かって死ね!”
 その刹那、ガラスケースに飾られていた、一つの骨格標本が内側から破裂した。
 そして、中からまろび出た骨の集合体は、見る見る間に肉付けされていった。
 まるで異次元から搾り出しでもしているかのように、なにも無い空間に血管が、神経が、筋肉繊維が生えて互いに絡み合っていく。
「なによ、これ……」
 やがて、かつて骨格標本だったもの、遥か以前に死を迎えて骨だけとなっていた『それ』は、完璧な姿を取り戻した。
 ヘビ亜目クサリヘビ科アメリカハブ属──ヤジリハブだった。
「死体が……蘇った……?」
 そいつは通常のヤジリハブを遥かに超える敏捷さで、しゅるしゅるとどこか小気味のいい音を立てながら牙を剥いて遠野に飛び掛る。
 航は知らないことだったが、ハブ属、またはその近所に属するヘビは眼と鼻の中間に位置する部分に『ピット』と呼ばれる赤外線探知器官を備えている。
 その器官によって精密に獲物を感覚するハブは──そのほとんどが牙に猛毒を仕込んでいる。
 殊に、ヤジリハブの毒は極めて強力で、その出血毒は一撃で成人男性の致死量の数十倍に匹敵する。
 そうした生物学的知識を持っていない航だったが、その茶褐色の鱗と斑模様は、一目で『毒蛇』という連想をさせる。
 数メートルはあったはずの距離を一瞬で飛び越え、ヤジリハブが遠野に襲い掛かる。
 身を捻ってそれを避ける遠野だったが、構えなおした彼女の頬には一筋の赤い血が垂れている。

318 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:48:27 ID:EMcfQz1h0
「遠野先輩!」
「『敵』から眼を逸らすな!」
 思い余って遠野に駆け寄ろうとした航だったが、その意思を拒絶する怒声が飛んできた。
「だ、だけど、血が! 毒が!」
「避けた拍子に机に擦っただけだ! ぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねーわよ!
あたしじゃ『ダーク・フューネラル』に攻撃できない、なら──あんたがやるのよ!
あんた『スタンド』が見えてるんでしょう!? あんたが一番『スタンド』に近いのは間違いないんだから!」
「そ、そんな──」
 ヤジリハブはまるでなにも無かったかのようにさっきと同じ体勢に復帰していた。
 その上で、次なる攻撃の機会をその油断無く窺っている。
 タイに視覚をうばわれている遠野がもどかしかった。
 きっと、今は「下手に動けない」のだろう。変に動いて『隙』を見せてしまったら、そのときこそ──。
 今すぐにでも彼女の覆いを剥ぎ取ってやりたかった。
 だが──今自分がすべきことは、『それ』ではないような気がした。
 ちろちろと舌を蠢かしながら警戒を強めるヤジリハブの前を、その毒蛇の脅威をものともせずに『ダーク・フューネラル』が通り過ぎる。
 遠野は動けない。動けるはずがない。『敵』は見えず、そして、見えるはずの脅威も今は見えないのだ。
「うおおおおっ!」
 航は叫び、ほとんどなにも考えずに走り出した。視界の隅でヤジリハブの飛翔を捉えるが、そんなことはどうでも良かった。
 そして航は、その両手で、今まさに遠野に爪を突き立てようとしていた『ダーク・フューネラル』の腕を──押さえ込んだ。
“『スタンド』を……素手で掴んだ……だと!?”
 耳に刺さる高音の声音が、少しばかり震えてるような気がした。

319 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:49:30 ID:EMcfQz1h0
 航は目を固く閉じて毒蛇の襲撃に心だけ備えていたが、
「…………?」
 別にどこにも痛みを感じないので、こわごわと眼を開ける。
 そこには、白い煙を立てながら地面に縮こまっているヤドクハブの姿があった。
 視線を転じると、電気剃刀程度の大きさの黒い箱を手にした遠野がこちらを見ていた。
 航の眼差しに応え、彼女は手の中の『それ』を軽く振る。
「スタンガン。あ、違法改造のね。清い乙女の標準装備よ。
『完璧な死体』だかなんだか知んねーけど、物理法則で動いてるならこいつの敵じゃねーわ。
ちゃんと『スタンド』押さえてる? 絶対に離さないでよ。離したら殺すから」
 顔に巻かれたタイをするりと解いた彼女の顔は、冷や汗一つかいておらず、
「どこにそんなもの隠し持ってたんすか……?」
「ひみつ。切り札は最後まで隠しておくものよ。そうでしょう?」
 いたずらっぽく細められた瞳が航に向けられているだけだった。


「汗をかいているな。冷や汗かい? どうした……『それはこっちのセリフ』なんじゃなかったのか?」
 ラウンダバウトがそう言っても、『本体』たる仮面の少年は返事をしなかった。
「もう無駄な抵抗はやめたほうがいい。僕や君程度の器じゃ、彼女には敵いそうにないからな」
 やはり、仮面の少年は無言のままだった。
「聞いているのか? それとも──」
「いや、聞いている」
 と、今度はいきなり即答した。
 その語調には余裕があった。絶対的な勝利を確信している優越感の響きがあった。
「やっぱり、『それはこっちのセリフ』、だ。そっくりそのまま返してやるよ。あの女……とうとう『油断』したぜ」

320 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/18(水) 15:57:58 ID:EMcfQz1h0


 ふわり、とタイが宙を舞い、床に落ちた。
「な……」
 航は愕然と、遠野の首根っこを握り締めている『ダーク・フューネラル』の腕を眺めていた。
 びくんびくんと不規則にのたうつ遠野の身体は、その腕に持ち上げられて床から十数センチ浮いていた。
 『ダーク・フューネラル』の二本の腕は、今もなおしっかりと捕獲している。
 だが……だが、もう一本の、三本目の腕が紫色の外套の下から遠野まで伸びていた。
“『隠し腕』だ……! 札の切り合いは俺の勝ちだ……! そして……!
見せてやる! 我が『ダーク・フューネラル』の真の『能力』を……!”
 遠野を宙吊りにする『隠し腕』から、幾本もの棘が次々と突き出される。
 航の目の錯覚でなければ……その先端から、物凄い勢いで黒い霧が噴出していた。
 そして航は思い知る。小狼を『半殺し』に至らしめた……『次元の魔女』が警告した『死に直結する能力』とは、
先ほどの『死体復元』のようなチャチな『能力』では決してないことを。

“『終わりの儀式(ファイナル・リチュアル)』!!”

321 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/07/18(水) 16:01:05 ID:EMcfQz1h0
なんか「迂回と焼菓」、だらだらやってたら長引きそうなのでちょっと駆け足で。
静のことを忘れられてもアレなんで。

「ダーク・フューネラル」はスェーデン(だったかな)のブラックメタルバンドです。
「Final Ritual」はその楽曲。邦題は探してみたところ無かったので、ほぼ直訳です。うは、センスねーw

322 :作者の都合により名無しです:2007/07/18(水) 20:16:41 ID:YU7N3zMD0
おお、鬼更新復活かな?
静は流石にちょっと影が薄くなってきたなw
いいとこのお嬢だから仕方ないか。

でもまさかこの作品で小宇宙の解説を見れるとはw
戦闘シーンの描写もうまいね。

323 :作者の都合により名無しです:2007/07/19(木) 08:00:04 ID:ozpEZBPV0
ハロイさん、最近好調ですね。
この作品は女連中の方が強くて活動的だな。
終わりの儀式ですか・・。ここからどう逆転していくか。
そして静は主人公に復権できるのかw楽しみだ。


324 :作者の都合により名無しです:2007/07/19(木) 12:21:13 ID:mprVh2Wo0
ハロイ氏乙。
こういう激闘シーンも好きだけど
十和子に弄ばれる静も好きなんで
早期主役復活を望むw

325 :作者の都合により名無しです:2007/07/19(木) 16:23:56 ID:KKSzrxa/0
この作品も好きだけどそろそろヴィクテムレッドもお願いします。

326 :作者の都合により名無しです:2007/07/20(金) 16:53:58 ID:O62CyXwt0
>ふらーりさん
アカギとかならメジャーだけど天馬とかは普通の人はわからんからなw

327 :七人の超将軍!!:2007/07/20(金) 17:23:03 ID:HC9xEv/a0

飛駆鳥はもはや未熟な若武者ではない。
新芽でしかなかった彼の光の力は、いまや完全に開花した。
額に輝くは太陽の閃光結晶(さんびーむくりすたる)!胸に煌くは頑駄無結晶!
光の超将軍、飛駆鳥超将軍へとその姿を変えたのだ。
雄叫びと共に繰り出された飛駆鳥の鉄拳は、そのまま巨大な闇魔神を殴り倒す!
光り輝く両の拳での、ラッシュ!ラッシュ!ラッシュ!

「これは国土を焼かれた影舞乱夢の民の怒り!」

飛駆鳥が闇魔神の顔を殴り飛ばした瞬間、彼の兜ははぜ割れた。

「これは国土を焼かれた赤流火穏の民の怒り!」

飛駆鳥の蹴りが突き刺さるや否や、闇魔神の胸甲が砕けた。

「これは冥府から呼び戻され戦わされた武者たちの怒り!」

抜刀一閃!飛駆鳥の太刀の前に闇魔神の右腕は裁たれた。

「これは理不尽に晒された者たちの怒り!!」

飛駆鳥必殺の飛燕竜巻返しが闇魔神を打ちのめす!
千力の必殺技、爆流の奥義、鉄斗羅の捨て身の一撃、
彼らの魂の込められた攻撃で既に闇魔神の鎧は亀裂が入っていた、
飛駆鳥の攻撃はその亀裂を繋げるように討ちこまれていく。
光の力の前に、難攻不落の城砦の如き闇魔神の装甲が、悲鳴をあげて崩壊を始めたのだ。


328 :七人の超将軍!!:2007/07/20(金) 17:28:19 ID:HC9xEv/a0

「図ゥにッ!ゥ乗るゥぬぅあァあア亜ぁアあァあ!」

しかし、黙って成すがままにされる闇魔神ではない!
ラッシュの途切れた一瞬の隙をついて再生を果たすと、
背から生やした八つの禍々しい爪から、闇色の電撃を光の超将軍に放つ!
受けてはたまらずとばかりに避ける飛駆鳥だったが、闇色の電撃は意思を持っているかのように飛駆鳥に追いすがる!
腰にはいた太刀を引き抜き、闇の電撃を切り払うも、多勢に無勢。
電撃を喰らってもんどりうつ飛駆鳥!
追撃せんとする闇魔神だったが、飛駆鳥の剣技の前にその手を阻まれる。
事此処にいたって恐れていた事態が発生した。
拮抗してしまったのである。

新生闇軍団の手によって、嘗てスペースコロニーと呼ばれた天の島が影舞乱夢や赤流火穏に落ちた。
締めは闇の者にとっては仇敵の住まう地、天宮であることは明々白々。
この計画を察知した新生大将軍だったが、この危機的状況下において彼の力の象徴・結晶鳳凰は砕け散り、
閃光結晶となって天宮中に散らばってしまった。
閃光結晶に選ばれた七人の武者が超将軍となり、この窮地を挽回すべく、
新生闇軍団本拠地・悪無覇域山にむかって旅に出たのであるが、
事態は一刻を争うのだ。
大将軍側には天の島が何時落下してくるのか分からない。
それに加え、光の力を失った新生大将軍は病に伏したままである。

それが、この土壇場になって闇邪神と飛駆鳥超将軍の力が拮抗したのだ。
闇邪神の布いた闇の結界は、その効果を薄れさせつつある。闇邪神もまた限界が近づいているのだ。
だがしかし、その限界は少なく見積もっても天の島が天宮に落ちるその時まではもつだろう。
その事実に気が付いた超将軍たちは、知らず歯噛みしていた。


329 :七人の超将軍!!:2007/07/20(金) 17:33:40 ID:HC9xEv/a0

「あ…、あれこそは。
 胸に光り輝くはまさしく頑駄無結晶!」

爆煙と共に散ったはずの男の声によって、超将軍たちは歯噛みするのをやめた。

「鉄斗羅!
 無事だったのか!?」

真っ先に反応したのは、一行のリーダーである荒鬼である。
いまだ鉄斗羅捨て身の一撃の爆煙の晴れない戦場だ。こちらに向かって歩いてくる鉄斗羅の姿は、
左半身しか見えていなかった。

「…ッ!その姿は…!」

のこり右半身が荒鬼の目に入った瞬間、こんどこそ彼は驚愕の声を上げた。

「…すべての闇の力を使い果たしたとき、閃光結晶が…。
 いや、大将軍様が新たな命を下さったのだ」

闇の鎧の下のそれは、彼らと同じ『頑駄無』の顔!

「新たな姿とともに!
 鉄斗羅頑駄無超将軍!ここに推参!」

力強い言葉とともに、鉄斗羅を覆う闇の鎧は砕け散り、彼は新生した!
鉄斗羅"頑駄無”超将軍へと!

「荒鬼どの!いまこそ我らが授かった力をひとつにする時!」

鉄斗羅の言葉に呼応し、光り輝くは七つの閃光結晶!
鉄斗羅の紫色の閃光結晶が先陣を切って飛駆鳥のもとへと飛んでいく!

330 :七人の超将軍!!:2007/07/20(金) 17:40:51 ID:HC9xEv/a0
「おう!
 閃光結晶よ!今こそ光を!」━━荒鬼から蒼白に煌く閃光結晶が!━━

「閃光結晶よ!飛駆鳥に新たな力を!」━━雷鳴からは若草色の閃光結晶が!━━

「閃光結晶よ!鳳雛を鳳凰へと変えたまえ!」━━獣王からは山吹色の閃光結晶が!━━

「閃光結晶よ!あの坊主に大いなる力を!」━━天地からは緋色の閃光結晶が!━━

「閃光結晶よ!闇をはらう灯明をもたらしてくれ!」━━千力からは黄金色の閃光結晶が!━━

「閃光結晶よ!新たな光の子の誕生の時だ!」━━爆流からは青鋼色の閃光結晶が!━━

そして、機動武者大鋼からも閃光結晶が飛駆鳥に向かって飛ぶ。
八つの閃光結晶が集ったとき、伝説は蘇る!

「みろ!結晶が円陣を組み始めた!」

獣王の声に、超将軍たちは歓喜を含んだ声で叫ぶ!

「おお!あれこそは伝説の『八紘の陣』だ!」

331 :七人の超将軍!!:2007/07/20(金) 17:49:33 ID:HC9xEv/a0
だれともなく、宙に浮かんだ陣形をみて叫ぶ。
八紘の陣。それは光の力を最大限にひきだす頑駄無軍団の秘奥である!
かつてこの地・悪無覇域山において完全覚醒し、強大な黒魔神闇皇帝を打倒した
初代大将軍が背負っていた八紘の光輪(はっこうのこうりん)に象徴されるように、
八人の光の武者の力によって頑駄無大将軍に力を与えるものだ。
今、超将軍たちの前に姿を現した八紘の陣は、あたかも意志を持っているかのように飛駆鳥を陣形の中央へと誘う。
そこには、一羽の鳳凰が居た。
否、鳳凰の形のエネルギーがあった。

「大いなる力をたたえよ…」

鳳凰は囁くように、語る。

「新たなる光の主に」

鳳凰は謳うように、語る。

「この名を授ける」

八紘の陣の中心で、飛駆鳥は光の鳳凰と己が同化していくことを実感していた。
四肢に漲る光の力、細胞の隅々にまで染み渡るようだった。

「飛駆鳥大将軍の名を!」

鳳凰が一際大きく輝くと、そこには新たな大将軍が光臨していた!

━━誕生!飛駆鳥大将軍!次回を待て!!━━

332 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/07/20(金) 17:52:27 ID:HC9xEv/a0
誠にすみません、前後編の予定が前中後編になってしまいました!
申し訳ないです
武者頑駄無発祥の地・コミックボンボンが廃刊だそうです。
ニュースとしてはだいぶ前から知ってましたが、事実だとは思いたくはなかった…
超戦士ガンダム野郎直撃世代なもんで、千生がキット化されたり、
飛天頑駄無超将軍が発売されたりのニュースはうれしかったなぁ…

>213さん
ガンダムの擬人化というか、擬ガンダム化というべきか、意思をもったガンダムたちの物語なんですよ
こればっかりはリアルタイムで追っかけてた思い出がないとノリに乗れないと思います、申し訳ない

>214さん
すいませェん。先週はお休みがつぶれて投下できませんでした。
なんとか週一のペースで投下していきたいなと思っております

>215さん
ガンダムのアニメがなかった時、紛れもなくSDガンダムこそがガンダムだった。
そんな時代があったんだなと思っていただけたら幸いです
…しかしまぁ、SDガンダムのコミックスってほとんどが絶版なんですよねぇ

>223
なんというか、アイアンリーガー的といいましょうか?2.5頭身に熱い魂を秘めた連中です
予断ですが、
プラモ狂四郎やガンダム野郎でもあったガンダムの顔が主人公の顔に置き換わるっていう演出が
Gガンダムでもあったのが非常に思い出深いです。
石破天驚拳をぶつけあうドモンと東方不敗とかテレビで見てて、おお!プラ狂!とか思ってました
偶然見た無印種最終回で壊れた装甲の中から無傷のガンダムが出てきて敵撃破!って流れもキましたがw

333 :銀杏丸 ◆7zRTncc3r6 :2007/07/20(金) 17:58:27 ID:HC9xEv/a0
>スターダストさん
語るに及ばず!三国伝が嫌いなはずがありませんよ、はははは(横山笑い)
ストーリー的には超機動大将軍編、キット的には七人の超将軍編、キャラクターとしては天下統一編が好きです
荒五郎が少年武者荒烈駆主になり、地の鎧を得て初代大将軍誕生に立ちあい、
そして時空を超えて黒魔神闇皇帝の魔の手から天宮の未来をもぎ取る!
タイムパラドクスネタなんてトンデモナイものを使いながらも見事完結した初代三部作が思いいれデカイです
勉強大好きな舞威丸が熱血漢號斗丸になったのは物凄く驚いた思い出があります
あんな素直なガキに何しこんだんだよ!獏流!
武零斗が二人!?もひっくり返しました
原作と戦国伝設定をうまくあわせてて実に見事でした、キョウジ・カッシュとシュバルツ・ブルーダーが
武零斗(彗月)と飛駆鳥ってのは今みてもうなるしかない見事な設定ですよ
当時ガンプラ禁止令が家で出ており、未だに飛駆鳥大将軍もってないです…
なので、社会人として小金もっている今、レアキットだろうがなんだろうが買いあさっております
鉄斗羅が2600円とか武零斗が2000円とか馬鹿みたいですが、再販しない万代が悪いんだ!
今は技術あるのでプラ板切り出して「武」と「飛」のシール張って差し替えできるようにしたりしてます
以外とBB戦士のシールは細かい模様が多いから塗装大変ですよ

>ふら〜りさん
あのドロドロ欝展開だったVガンダムが熱血少年漫画になるコミックボンボン発祥の武者頑駄無なのでもうすごいですよ
「仲間など持ったことのない俺に大将軍など勤まるわけがない!」と涙ながらに叫ぶやつがいたり
「意思亡き天鎧王を救ってくれ…」と親友をかばって命散らす人造武者がいたり
最大の問題はコミックワールドを全部読むのにはレアキット化してるやつも多いので出費がかさむということなんですがw
戦闘力云々は武者連中はまだいい方で、コマンドガンダムシリーズだと
「銀河一個分のマイナスエネルギーとプラスエネルギー」をぶつけて敵を消し飛ばすなんてやつがいたり
騎士ガンダムシリーズだと全身金色の龍の神様が出てきたりとかして
DB並にカッとんでいってますw

では、今度こそ後編でお会いしましょう!

334 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:03:59 ID:cqiP91K+0
『迂回と焼菓 F』


「あ、ああ……」
 まるで意味を成さない、音だけの呻き声を上げて遠野は宙ぶらりんになっている。
 掻き毟るように首の辺りを引っかいていた手も、ついにだらんと力なく垂れ下がった。
“『墓守』を生み出す『能力』が『ダーク・フューネラル』の『能力』だと思っていたのか……お生憎さまだな……”
 そううそぶく『ダーク・フューネラル』の力が、徐々に強まっていた。
 それは、そいつの腕を押さえつけている航の手を今すぐにでも弾き飛ばしてしまいそうなほどに膨れ上がっていた。
“あんなものはただの『食事』の副産物だ……この『ダーク・フューネラル』は……
遠隔操作型でありながらにして強大なパワーを得るために……ある『エネルギー』を外部から摂取している……”
 ぱん、とひときわ大きな破裂音とともに、ホルマリン漬けのヤモリが飛び出した。
 そこから連鎖反応のように、鳩が、蛙が、得体の知れない深海魚が……この生物室で深い眠りについていた、
ありとあらゆる『死体』が、次々に目覚めて蠢きはじめた。
“『死』と『怨念』だ……! 死せるものが生きるものへと向ける憎悪のエネルギー……いわば『呪詛』こそが……
『ダーク・フューネラル』を衝き動かす原動力なのだ……!”
 ごとん、と遠野の身体が床に落ちる。糸の切れたように崩れる彼女は、乱れた衣服もそのままにひっそりと呼吸を止めていた。
 顔面どころか全身が蒼白となった彼女の……その『死相』を見て、知らず、航は身震いした。
 ぞっとするくらいに──死せる遠野十和子は美しかった。
 この世から切り離された存在となった──少なくとも、その領域に近づきつつある──彼女には、永遠を思わせる輝きがあった。
“『ダーク・フューネラル』が死体を通じて『死』と『怨念』を吸収するとき……『そいつ』はもっとも美しい姿になる……。
なぜなら……『死』こそが完璧な状態だからだ……! ちょっと大きな視点で世界を見渡せばすぐに分かる……!
『死んでいる』ことが普通の状態で……『生きている』ことこそが異常な状態だとな……!”
 ゾンビとなった生物標本どもが、わらわらと航の周囲に集ってくる。
 その数が増えれば増えるだけ、『ダーク・フューネラル』により強い力が漲ってくる。
“その『完璧な死』を与えるのが、我が『真の能力』だ……。
『終わりの儀式(ファイナル・リチュアル)』はその名の通り、『死』の儀式……。
その臨終の儀式を身に受けたものは……暗黒の霧にその身を蝕まれ……すべからく『完璧な状態』を取り戻すのだ……!”

335 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:06:04 ID:cqiP91K+0
 それを聞き、航は背筋の凍るような戦慄を覚えた。
 こいつの言う『完璧な状態』とは取りも直さず『死ぬ』ということであって、つまり……こいつの『能力』は……。
(『必殺』……!)
“この女が完全に死に絶えたら、次はお前の番だ……。我が『隠し腕』より撒かれる暗黒の霧によって……お前も死んで『墓守』となる……!”
(俺の……『番』?)
 恐怖によって停止していた航の思考が、その一言によって機能を復活させる。脳裏に一筋の閃光が走った。
「待てよ……」
 つい、それを口に出していた。
「お前のその『必殺技』は……『順番』なのか? 遠野先輩が死ななきゃ、俺を殺せないのか?」
 口にしてしまってから、そうとしか考えようがないことに気づく。
 実際、『ダーク・フューネラル』は例の『隠し腕』を自分に使ってこないのだ。
 二本の腕を押さえるのに手一杯で、他は隙だらけであるにも関わらず、である。
「い、いいところに気がついた、わね──」
 足元から、そんなか細い声が聞こえてきた。
 それは、遠野の声だった。
 床に横たわる彼女は、弱々しくも──それでもはっきりと──『美しさ』とは程遠い、だが奇妙な魅力に満ちた、歪んだ笑みを頬に浮かべた。
「こ、こいつは、ね……小狼くんに使った、の、『能力』を……、一度に何人もの相手には、つ、つつ使えない、のよ……」
 唇を動かすのも苦痛だろうに、それでも遠野は喘ぎあえぎに必死で言葉を紡いでいた。
「だって……それが出来るなら……あた、したち、は……で、出会い頭に、殺されていたはずで、でしょ、う?
最低でも……、一人くらいは殺しておかしくないはず……そうしなかった時点で、ね……『能力』の、地金は割れてんのよ……。
一度『能力』を使ったら……相手が完全に死ぬまでは新しく『能力』は使えない……。
だか、だから……あたし、は、『待つ』、だけだった……」

「君は……なぜ彼女と戦っているんだ? そんなに彼女を殺したくてたまらないのか?
違うだろう? 君には確固たる目的があって、小狼くんを『殺し』た。だが、彼女を決定的に敵対する理由はないはずだ。
この戦闘は、単なる行きがかり上の、もののついででしかないはずだ。──なら、なぜ君はそこまで必死になっているのだろうな?
ささやかなプライドや意地のせいで、手段が目的に摩り替わってはいないか?
その点、僕たちの目的ははっきりとしている──さっきから、そして今も、僕らの最優先は『小狼くんを蘇生させること』さ」
 そのラウンダバウトの声は、今度こそ仮面の少年の耳には届いていなかった。
 傍目にも一目瞭然な程に、そいつは呆然としていた。

336 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:08:35 ID:cqiP91K+0

「……そう、あたしは待っていた。こいつが、あたしに、その『能力』を使うときを……小狼くんへの『能力』を解除する、その瞬間、を──」

「小狼、こっちだよ! こっちに克巳がいるよ!」
 この緊迫した場面にはまるで不釣合いな、幼い子供のような声が廊下に響き渡った。
 仮面の少年は我に返って周囲を見回す。
 今さっきまで自分を拘束していた、男なんだか女なんだかよく分からないやつの姿はいつの間にか消えていた。
「さて、僕はこれで失礼させてもらうよ。正直、彼女が心配で気もそぞろだったんだが、とにかくまあ僕の役目は済んだからね」
 と、どこからか姿無き声が聞こえた。
「──とんでもない『回り道』だったけれど、これで状況は振り出しに戻った。
そう、この奇妙にして迂遠な状況の『最初』、すなわち……君と小狼くん以外は誰も知ることの無かった、そのファーストコンタクトに、ね」
 風に乗って過ぎ去ったその声に促されるように、仮面の少年はある一点を見る。
 ちかちかと瞬く蛍光灯に照らされて、がらんとした廊下の突き当たりに、一人の少年が立っていた。
 小柄な少女に肩を借りながらも、そいつは真っ直ぐに仮面の少年を見据えていた。
「李小狼……」
 仮面の少年がつぶやく一方で、そいつ──小狼は、良く通る澄み切った声を放った。
「『羽』を、返してくれ」
 小狼は体重を預けていた少女から身を離し、慎重ともいえるゆっくりとした足取りで歩を前に進めた。
 と、ぐらりと身が傾ぐ、慌ててそれを支えた少女が、なにごとかを小狼の耳に囁いた。
「大丈夫です、姫。あなたの『羽』は俺が取り戻します」
 そして、再び歩き出す。
「必ず……この命に代えても」
 揺ぎ無い足取りでこちらに向かってくる小狼の歩調は、少しずつ速くなっていた。
「『羽』はどこにある? 今も君が持っているのか?」
「……さあな。言うと思うか?」
「君は、あの『羽』がなんだか知ってるのか?」
「知っている。常識では測れないほどの強大な力を、この世界の姿を歪ませるほどの力を秘めた……、
手にしたものの望む世界を生み出す『世界の中心』、だ」
「違う!」
 小狼は断固とした口調でそれを否定した。

337 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:12:31 ID:cqiP91K+0
 次の瞬間、小狼は跳んでいた。
 空中で振りかぶった脚が、仮面の少年目掛けて振り下ろされようとしていた。
 『スタンド』を呼び戻して防御──出来ない。
 『ダーク・フューネラル』は南方航の手によってがっちりと封じ込まれていた。
 今や疑いようも無く、航は『スタンド力(パワー)』を発現させて『ダーク・フューネラル』の行動の自由を奪っていた。
 懐からナイフを取り出して、眼前に迫る小狼の脚に突き立てる──が、小狼はそれに怯む様子も無く、そのまま全力で脚を振り切った。
 横に薙ぐ蹴りを受けて、仮面の少年の身体が吹き飛ぶ。
 遠のきかけた意識に、小狼の声が届く。
「あれは、サクラの……俺の大切な人の、記憶の欠片なんだ。だから、絶対に返してもらう」
 ぱき、と不吉な音がした。
 仮面の少年は咄嗟に顔に手をやる。
 彼の顔を完璧に覆っていた仮面の一部が、蹴りの衝撃によって欠けていた。
 その隙間から除く彼の素顔は……憤怒と恐怖と悲哀と……例えようも無い諸々の感情によって、ぐちゃぐちゃに歪んでいた。
「う、うああ……! 俺の仮面が……『死』の仮面が!」
 半ば錯乱気味に仮面の欠けた部分を手で隠す彼は、きっ、と小狼を睨みつけた。
 指の間から覗くその瞳は、憎悪によって爛々と光っていた。
「殺す……お前たち、いつか必ず殺してやる! この場にいる全員! この学校の全て! この世界の一人残らず!」
 峻烈に迸る彼の声は、さっきまでの冷えた調子と打って変わって、剥き出しの感情が込められていた。
「殺してやる……! 『羽』は俺たちの物だ! 誰にも渡さない!」
 そう言い捨て、欠けた仮面を後生大事に顔に押し付けたままの少年は、廊下の窓から身を乗り出して、そのまま落ちていった。
「待て!」
 後を追って窓枠に手を掛けた小狼の背中に、軽く、そして柔らかいなにかがぶつかってきた。
「やめて、小狼くん」
「ですが、姫」
 そう言いつつも、少女──サクラ──にすがりつかれた小狼の身体からは、これ以上の追跡を行おうという意思が消えていた。
「『羽』は明日も探せるわ……。この学校にあるのは分かったんだもの、きっと見つけられる。……でも」
 と、サクラは身を屈め、ナイフが突き刺さったままの小狼の脚にそっと手を当てる。
 慌ててそれを助け起こそうとする小狼とサクラの視線が、ふと交わる。
「あなただけがこんなふうに傷つくのは、とても見ていられない、から」

338 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:15:40 ID:cqiP91K+0
「姫……」
 小狼は淡く眼を閉じ、それから頷いた。
「──分かりました。ありがとうございます」
「ううん。お礼を言わなきゃいけないのは、わたし。わたしのせいで、いつもあなたは傷ついている」
「いいんです。俺が望んでやっていることですから」
 そうしてしばらく視線を重ねていた二人だったが──。
「ひゅーひゅー! 小狼とサクラ、見つめあってる! ちゅーするの!? ねえ、ちゅーするの!?」
 いきなり飛び出してきて半畳を投げ入れた声に、二人の顔が一瞬で真っ赤になる。
 その声の主は、白いふかふかのぬいぐるみ──みたいな姿をした魔法生命体『モコナ』だった。
「……と、とにかく手当てをしないと」
「……そ、そうですね」
 と、どこかぎこちない調子で会話を交わす小狼とサクラだった。


 ラウンダバウトが律儀に屋上から階下の窓へというルートを使って生物室へ入った頃には、十和子は完全に生気を取り戻していた。
 床の上にあぐらをかいて、なにかの携帯ゲームに興じていた。
 やや呆れながら彼女の前に立つと、「ハイ」と軽いノリで手を振ってきた。
「遠野さん、生きてますか? ……と訊くのも愚問のようですね」
「当たり前でしょ、と言いたいところだけど……はは、さすがに厳しかったわね。もうちょっとで死ぬとこだったかも知んない」
「まったく、無茶をして……」
「でも、あんたの『能力』のお陰よ。礼を言わなきゃならないわね」
「……なぜ、そこで僕の『能力』が?」
 結果的に見て、ラウンダバウトが十和子に施した『処置』はほんの気休め程度にしかなっていないと思うのだが──。
 その答は一瞬で閃いた。
「まさか、君……小狼くんの身に起こった現象の再現を狙っていたのか!? だから僕に『油断』の暗示を掛けさせたのか!?」
「だって、他に思いつかなかったんだもの。仮死状態とは言え、辛うじて『死んでない』っていう『実例』があったんだから、それに乗らない手はねーわよ」

339 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:21:49 ID:cqiP91K+0
「じゃあ、僕に言った『自分を追い詰める』うんぬんは!?」
「嘘」
「嘘、って……」
 ラウンダバウトは言うべきを知らず、ただ口をぱくぱくさせていた。
「だって、じゃあ、『今からちょっくら死んでみるから協力しろ』って言ったらやってくれた?」
「す、する訳ないだろう!?」
「でしょう?」
 ラウンダバウトは悩む。自分は怒るべきなのか、呆れるべきなのか、喜ぶべきなのか、と。
 その考えはまだまとまりそうもなかったので、とりあえず、思いついたことを口にした。
「……なら、『目隠し』の意味はなんだったんだい? あれもやはり、自分を追い詰める意図によるものではないと?」
「当たり前でしょーが。なにが悲しくてわざわざ自分に不利なことをしなくちゃなんねーのよ。
いいこと、奈良崎ちゃん。『若いうちの苦労は買ってでもしろ』なーんてのは嘘っぱちなんだから。この世の苦労なんざ、しないに越したこたぁないの。
あれはね、そのままの意味よ。『目』を『隠し』てたの」
「目……? 『目線』かい?」
 すると、十和子は黒板に板書きされた問題を解いてみせた生徒を褒めるような感じで、にっこり頷いた。
「そう」
 整理すると、こうなる。
 十和子は『ダーク・フューネラル』との戦闘に於いて、なにがしかの視覚情報を頼りにしていた。
 そしてそれは、『ダーク・フューネラル』に感づかれるとまずいものでもある。
「分からないな……君はなにを『見て』戦っていたんだ?」
「目、よ」
 誰のだよ、と突っ込みそうになるが、見るべき『目』を持つものは、あの場には一人しかいなかった。
「南方くんの『目』を見ていたと言うのか?」
「イエス。正確には、あの子の目線とか姿勢とか、その他諸々の反応を、だけどね。
別に攻撃する必要は無かったんだから、大体『どこらへんにいるか』ってことさえ掴んでれば良かった訳よ」
 それまで黙って聞いていた航が口を挟む。
「え、するとなんすか。遠野先輩がギリギリの紙一重で避けてたのは、無駄な動きが全く無いからとかじゃなくて──」
「そりゃ、本当の意味でのギリギリ紙一重だったんでしょーね。あたしゃ塚原卜伝かっつーの。そんな器用な避け方出来ません。
つーかなに、そんなにヤバかった? まあ考えてみればそれも当然か。なんとなくの適当で避けてたんだから。
あはは、あたしも運が太いわ」

340 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:28:24 ID:cqiP91K+0
「あははじゃないだろう──って、ちょっと待ってくれ。今の、おかしくないか?」
「なにがよ?」
「だってそうだろう──目隠しをしたら、君は前が見えないじゃないか! 南方くんの目も姿勢も見える訳がない!」
 ラウンダバウトがそう詰め寄ると、十和子は心底呆れ果てたように「はあっ」と息を吐く。
「ねえ奈良崎ちゃん。それマジで言ってんの?」
「そ、それはどういう意味だい?」
 十和子は黙って手招きし、それに応じて身を屈めたラウンダバウトの顔にタイが押し付けられた。
 次の瞬間、ラウンダバウトは絶句した。
「あんたね、やっぱたまには女の子の格好もしてみるべきだわ」
 赤く靄のかかった視界の向こうで、少しだけ輪郭のぼやけた十和子がそう言うのを、ラウンダバウトは見た。
「透け……透けてるじゃないか!」
「そうね。薄い生地なのね」
「ああっ……これは酷い……なんてペテンだ……!」
 なぜか、ラウンダバウトは逆上気味に叫んでいた。
 その剣幕に、さしもの十和子もたじろぐ。
「な、なによう。そんな興奮しなくてもいいでしょうに」
「…………」
 盛大に脱力したラウンダバウトはがっくり膝をつき溜息をもつく。
 ──だが、その一方では妙に納得していた。
 遠野十和子という少女なら、きっと『それ』ができるのだろう、と。
 自分の『油断』の暗示が彼女にはあまり効かなかったことを思い出す。
 ラウンダバウトが『油断』の暗示を使うのは、それが相手にとって無理のない暗示だからだ。
 だが、彼女にとって、『それ』はとても我慢のならないことなのだろう。
 『油断』が彼女にとって苦痛や不快を伴うものならば、効き目が薄れるのも当然だった。
「『油断』も『隙』も無いとはまさにこのことだろうな」
 そう呟くと、十和子は「?」という風にラウンダバウトを見た。

341 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/20(金) 18:40:55 ID:cqiP91K+0
「いや……なんでもないよ」
「ところで気分はどう?」
 意味が分からず、小首を傾げる。
「『正しいことをした』気分だよ」
 ラウンダバウトは目を閉じて、その質問について考えてみた。
 答えは一つしかないような気がする。
「正直言って……心臓に悪いね。どうやら僕には『正しいこと』が向いていないようだ」
「なに、すぐに慣れるわよ」
 あっけらかんと言ってのける十和子に、ラウンダバウトは内心で首を振る。
(それはどうだろうね……ストーブの上に座り続けていたら、熱さに慣れるのか、という問題と同じ次元の話だと僕は思うが)
 だがそれを言う気にはなれず、
「あ」
「なによ」
「最初に見たときからずっと思ってたんだが……君、誰かに似てると思ってたんだ」
「へえ、誰?」
「僕のマスターさ」
 その「向かうところ敵なし」とでも思っているような無鉄砲さや、強烈を通り越して苛烈とでも言うべき意思の強さ、
それになにより、世界を敵に回しても動じなさそうなその瞳は、まるで彼女の主人たる──。

「君はレインに似ている」

 わずかに涼しくなった夏の夜の始め、まるで十和子に跪いているような姿勢で、ラウンダバウトはそっと呟いた。

342 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/07/20(金) 19:18:40 ID:cqiP91K+0
急ピッチの突貫工事で「迂回と焼菓」終了です。
次回はそろそろ忘れられてそうな静と、ほぼ間違いなく忘れられているであろうユージンの話を予定しています。

以下、馴染みの薄いキャラのための登場人物紹介



ラウンダバウト(人間名 奈良崎克巳)
登場作品 「ビートのディシプリン」

統和機構の合成人間でありエージェントでもあったが、監視対象である人身売買組織を義憤に駆られて壊滅させ、裏切り者として処分されそうになるところを、
統和機構の幹部でありながらこれっぽちも服従していない少女「レイン・オン・フライディ」こと九連内朱巳に内密に拾われる。
レインに心酔というかむしろ崇拝しており、自分の人間名も彼女にあやかっている。
女の癖に男みたいな格好をしたり、もって回ったような口調を好んだりと、一見やや複雑な性格であるが、
統和機構を抜けた件からでも分かるように本質は直情径行の激情家。それがコンプレックスのようで、わざと『迂回』を名乗っている。

原作ではレインの命令で『カーメン』の謎を追う者に制裁を加えるべく、合成人間「ピート・ビート」を襲撃する。が、その後彼の味方になる。
登場回数はそんなに多くないながらも、その中でピート・ビートに対して鬼のような勢いで片思いフラグを立てまくってたが、
今のところそれが報われる様子はない。頑張れ女の子。

343 :ハロイ ◆3XUJ8OFcKo :2007/07/20(金) 19:19:46 ID:cqiP91K+0
小狼
登場作品 「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」

様々な異世界に飛び散ったサクラの『羽』を取り戻すべく、異世界を渡り歩く旅人。
考古学者の養父を持ち、自身も考古学を学んでいる。
思慮深い性格、たゆまぬ強い意志、どんなときも勇気と優しさを忘れない、と、絵に描いたようなヒーロー像。
片目が見えないため拳を使った格闘は好まず、星史郎という青年から習った蹴り技主体の格闘術を使う。
また、旅の同行者である黒鋼からは剣術を習っている。
ゲームの世界で得、現実に戻ったときに実体化した刀「緋炎」が愛刀。
幼馴染で最愛の人であるサクラを救うために旅を決意するが、
その際に次元の魔女に「サクラとの関係性」を対価として差し出したため、サクラとの関係は一度白紙に戻る。
そのことに傷ついたりもしたが、サクラの記憶を取り戻すために旅を続ける健気な子。
出生に秘密がある。

原作では今現在、心を失ってバーサク状態。


サクラ
登場作品 「ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-」

砂漠の国「玖楼国(くろうこく)」の王宮に住む、正真正銘のお姫様。
天真爛漫で清純で温和で深い慈愛の心を持ち誰からも愛される、絵に描いたようなヒロイン像。
お姫様なので体力的には難があるが、常識を超えた強運、霊能力、「夢見」と呼ばれる予知能力がある。
小狼とは相思相愛で告白未遂までいったが、その直前、謎の敵の魔手により、彼女の記憶は『羽』となって異世界に飛び散ってしまう。
それを取り戻すため、小狼、黒鋼、ファイ、モコナの助けを借りて、『羽』を探して異世界を渡り歩く。
たが、小狼が「サクラとの関係性」を次元の魔女に差し出したため、どれだけ『羽』を取り戻しても、
その中に小狼との思い出は含まれない。自分で思い出そうとしても、その端から消去される。
だが、自分には分からない理由でありながらも、ひたむきに彼女を守り続ける小狼の姿に徐々に惹かれてゆく。

原作では今現在、肉体と精神が分離状態。

344 :作者の都合により名無しです:2007/07/21(土) 08:12:02 ID:6wXjNkz90
>銀杏丸氏
伸びるのは大歓迎ですよー。後編も期待してます。
しかし、ガンダムってこんな和風の奴もあったんか。
アレンジ風味で面白いです。決着がどうなるか楽しみ。

>ハロイさん
静は勿論覚えているけど、ユージンは忘れてたw
ほとんどオリキャラだと思ってたらみんな元があったんですか。
十和子は世界の頂点にいそうな感じだな。


345 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:22:06 ID:ikzmAcgh0
狭くて暗くて汚い我が屋、安ボロアパートの一室で、いつものように目を覚ます。
男・黒沢、厄年も通り過ぎた44歳、妻も子供もいやしない。というか……そんなものには
縁のカケラもない44年……ガタイがいいといえば聞こえはいいが、単に図体がデカいって
だけで……取り柄ゼロ、むしろマイナス……そんな野郎だ、オレは。
ま、こんなことダラダラ考えてても仕方ない。早いとこメシ喰って、仕事行かねえと。
《では、次のニュースです。八朗ヶ岳遺跡の発掘を行っていた調査隊が、熊に襲われ
全員死亡という痛ましい事件が起きました。また事件直後、遺跡の近くに埋まっていた
と思われる不発弾が爆発し、現場の惨状は……》
何だそりゃ? 随分ハデというか偶然にしちゃ出来すぎな事件だな。実は熊も不発弾もウソで、
何かミステリアスな事件があって警察が報道管制してるとかじゃねえのか? 例えば、
そうだな……本当は伝説の戦士が施した封印を調査隊が解いてしまって、魔物たちが復活。
調査隊は一番に出てきた魔王に惨殺されて、一般人のパニックを避けるために
警察は秘密に……って、おいおい。今時の若者のゲーム脳かよオレのバカ……。
大体、仮にそんなことがあったとしても、今時魔物なんか出てきたって警官隊が包囲して
一斉射撃すりゃ終わりだっての……ったく。
さ、そろそろ仕事に行くか。遺跡で何があったとしても、どうせオレにゃ関係ない話だ……

【死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死 死
 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告
 戦士の 屍に 触れること なかれ 
 戦士 姿を 消す 時 
 死と 邪悪の 恐怖 再び 大地に 蘇らん】

346 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:24:35 ID:ikzmAcgh0
自転車をギコギコ扱いで、高校卒業以来四半世紀勤めている穴平建設へ。そこから
トラックにガタガタ揺られて、今日から働き始める山奥の現場に到着する。
黒沢はトラックを降りると、う〜ん、とひと伸びして仲間と共に仕事にかかった。
まずは荷降ろしだ。セメント袋や各種機材をトラックの荷台から黙々と運び出していく。
「ひぁ〜怖い。ねーねー黒沢さん、見て下さいこっちの崖。これって落ちたら死ねますよ。
見下ろしたら何だかこう、吸い込まれるみたいな気分。いやほんとに怖い。ふらふらする」
「なら近づくなよ」
いつもながらムダに元気なのが約一名。今時の若者丸出しな頼りない顔と髪と言動、
最年少最下っ端の浅井である。
「でも下は川だしな〜。流れはエラく速いみたいだけど、これなら助かるかな? あ、
そういや例のアレ、確かこの川の上流なんですよね」
「アレ?」
「ほら、熊とか不発弾とか。ニュースでも新聞でも大騒ぎしてたでしょ?」
ああアレか、と黒沢も思い出す。
「あの事件、何だか胡散臭いですよね。僕、思うんですけどね、実は発掘調査隊が
魔王の封印を解いてしまって、魔物たちが復活して……な〜んて、冗談ですよ冗談。
今時の若者のゲーム脳じゃあるまいし。キャハ」
『……………………オレってコイツと同レベルなのか?』
軽く鬱になりながら作業を続ける黒沢であった。
そんなこんなで人が動いて重機も動いて工事が進んで。いつも通りに時が過ぎ、やがて
昼休みとなった。黒沢は地べたに座り込んで、弁当を広げる。割り箸を手にして、まず
卵焼きを口に放り込んだところで、浅井が妙に嬉しそうな顔をしてやってきた。
右手に弁当を持ち、左手でセメント袋を引きずっている。袋の中にはいろんな形のいろんな
大きさのものが詰まっているようで、工事に使って空になったところへ何か入れたらしい。
確か浅井は、何人かの仲間と一緒に崖下での作業に廻っていたはず。何かあったのか?
「いや〜大収穫でしたよ黒沢さん。ほらほら」
黒沢の向かいに座った浅井は、袋の中から次から次へと石ころを取り出した。
「これ全部、化石ですよ化石。僕、小学生の頃にちょっと凝ってましてね。担任の先生と
一緒に貝とか魚とかの化石、掘りに行ったりしてたんですよ。でね、その先生ってのが
そりゃもう美人で、実は僕の初恋の人なんです。キャハ」

347 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:26:51 ID:ikzmAcgh0
『……聞いてねえよ、んなことはっ。というか仕事中に化石集めなんかしてんじゃねえっ』
しかし黒沢の反応などどこ吹く風で、浅井は嬉々として化石を一つ一つ解説し始めた。
『はぁ……多分今まで、付き合ってやる奴がロクにいない……というか、いなかったんだろな。
その美人の先生とやら以外は。オレだって、趣味の話で誰かと盛り上がったことなんて……
いやまて、そもそもオレに趣味なんて……あぁ、そういえば美人の先生ってのに当たったこと
もねえし……そもそも、美人とか以前に女という生き物との接近遭遇自体が……ん?』
ふと。なにやら妙な感じがして、黒沢は改めて浅井に意識を向けた。
その手にあるのは、化石? いや明らかに違う、石ではあるが魚や貝などではない。
「おい。何だそれは」
「あ、これはより分けて捨てようと思ってたんですけど、間違えて持ってきちゃったんです。
多分、例の事件があった遺跡から流れてきた、原始人が作った装飾品か何かでしょ」
そう言って浅井がぷらぷら振って見せるのは、確かに装飾品らしきもの。石造りで、形から
するとベルトに似ている。何だかじっと見ていると、バックルの辺りが微かに光っている
ような? その中に、何か見える……このベルトを着けた若者と、異形の怪物が戦っ……
「黒沢さん? 黒沢さんってば」
「……ん、あ、あれ、何だオレ。今寝てたか?」
「どうしたんです。ぼ〜っとしちゃって」
「うぅむ。疲れてるのかな、妙な夢を見た」
やがて昼休みも終わる頃。二人は弁当を食べ終えて立ち上がった。
と、大きなブレーキ音がしたので黒沢が振り向いてみると、現場の入り口に大型トレーラーが
停車していた。明らかに工事車両ではない、白と黒のペイントはどう見ても……とか思って
いたらそれを証明するかのように、パトカーが数台やってきてトレーラーの後ろに停まった。
「け、警察か? 何で警察がここに? しかもあのトレーラー、あれってもしかして」
「へえ〜っ! 僕、本物を見たのは初めてですよ」
パトカーから降りた制服警官たちが歩いてくる。トレーラーから降りた二人もそれに続くが、
こっちも制服姿とはいえオレンジ色で何だか涼しげで、パトカーの連中とは随分違う。
それもそのはず。なにしろトレーラーの荷台に横たわって積まれているのは、身の丈およそ
8mの鋼鉄の巨人。れっきとした人型兵器、警察所属の対犯罪者用巨大ロボ。
この二人は、そんなシロモノの関係者なのだから。


348 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:28:48 ID:ikzmAcgh0
警察官たちは手分けして工事現場の面々に聞き込みを始めた。黒沢と浅井には、トレーラー
の二人がやってくる。この二人が運転席と助手席にいたんじゃ、車体が傾いてたんじゃない
かって思うぐらいの凸凹コンビだ。黒沢より明らかにデカい、2mを越してると思われる巨漢
(人相は柔和でむしろ気弱そうに見えるが)と、ギリギリ黒沢の胸まで届くかってぐらい小柄な、
「警視庁警備部特車二課、第二小隊の泉 野明(いずみ のあ)といいます」
その婦警さんは、ぴっ! と敬礼して名乗った。続いて巨漢の方も、山崎とか何とか
名乗ったのだが黒沢の耳には届いていなかった。耳も目も心も、吸い寄せられていたから。
「お仕事中すみません。先日、山奥で起こった事件についてなんですが、朝からこちらで
作業されていて何か気付いたことは……」
野明というこの婦警さん、世間的にはいわゆる美人とかセクシーとかいうのとは違う。視線を
顔から落としてみれば、プロポーションは十人並かむしろ貧弱だ。顔立ちの幼さとショートカット
も相まって、少年のようにさえ見える。だがそれより何より、今黒沢と浅井に向けられている
大きな瞳……「疑うことを知らない無垢な輝き」に近いが違う。そういうものを知って
いながらも、それでもなお信じていたいという強さを感じる。どこまでも澄んでいて、綺麗だ。
これこそ本来警察官としてあるべき正義の味方ってやつなのかも……というか
要するに早い話、思いっきり黒沢の好みのタイプなんであり……
「……もしもし? どうされました?」
野明が一歩前に出て、黒沢の顔を覗き込んで来た。心中を見透かされた気がして
黒沢は後退、しようとして躓いて、無様にドスンと尻餅をつく。
そんな黒沢を浅井が呆れ顔で引き起こしながら、野明に答えた。
「いやあ、僕たちは何も見てませんよ。ねえ黒沢さん。遺跡から出てきた魔物なんかにゃ
出くわしてませんよね。あ、もしかして特車二課さんがいるのは、遺跡から出てきた魔物を
警戒して? イザって時はあのレイバーで魔物と戦うつもり? な〜んちゃって、キャハ」
「こらこら、アホかお前は。すみませんね、どうも」
と言いつつ黒沢は気付いた。目の前の警察官二人が一瞬、異様に表情を強張らせたのを。
『? 何だ?』
「あの、えと、何かありましたらすぐに警察までご連絡下さい。ひろみちゃん、行こう」
「はい。では、お忙しいところ失礼しました」
二人は黒沢たちに一礼して立ち去ると、他の警察官たちと合流して何やら話し合っている。

349 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:30:09 ID:ikzmAcgh0
「やれやれ。まあ真面目な話、あのお巡りさんたちが山狩りして熊を射殺して終わりで
しょうね。レイバーが来てるのは、遺跡を壊さないよう掘り起こす作業の為とかで」
「……」
「黒沢さん? どうしたんです? あ、もしかしてあの婦警さんに見惚れてるんですか?
やだなぁもう、親子レベルの歳の差ですよ。こ〜のロリコンっ」
浅井が肘でつついてくる。いや、実際この時の黒沢は野明のことを見つめてはいたのだか、
頭の中はそんな華やかなものではなかった。さっきの、一瞬だけ見せた野明の表情……
『何だ……? どういうことだ……? もしや本当に……警察が何か、隠し事をしている
ってのか……? オレや浅井が考えたみたいなことを……? あの警察用レイバー、大層
強ぇって評判の、『イングラム』でなきゃ対処できないようなバケモノが出た……とか?』
いや、まさか、そんなことが現実にあるわけない、と黒沢は首を振って自説を否定した。
「さ、さあ浅井。仕事だ仕事! バカなこと考えてないでなっ」
浅井の背中を威勢よく叩いて、元気良く歩き出した黒沢。その目の前に、突然
パトカーが突っ込んできた!
「どわああぁぁぁぁっ!?」
間一髪、黒沢は転がって身をかわす。パトカーは猛スピードで蛇行し、ダンプカーに
激突して爆発炎上。燃え上がる炎に、黒沢の顔が熱く照らされる。
「だ、大丈夫ですかっ!? お怪我は?」
野明が駆け寄ってきた。だが黒沢は両手をついてぼうっとしたまま、そちらを見もしない。
見てしまったからだ。今、すれ違いざまにパトカーの中を。だから体が震え、歯が鳴る。
「あ、あ、あ、あ、あれ、あれっ……」
ガタガタ震えて、黒沢は燃えるパトカーを指差す。野明や浅井、警察官たちもそちらを見る。
パトカーのドアが開いて、運転席から誰か出てきた。手に何か持っている。大きさは
バスケットボールくらいの、丸いもの…………きちんと制帽を被った、警察官の生首だ!
「っ!」
息を飲んで絶句する一同を、そいつはゆったりと見渡した。
彫刻のように筋骨隆々の体躯、土くれのように不気味な質感の肌、猛獣のような手の爪、
そして大きなクモ(生きてる。動いてる)を丸ごと一匹被っているかのような頭部、顔。
ボタボタと血の滴る生首をその場に放り出し、クモ男は歩き出した。黒沢たちに向かって。

350 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/21(土) 10:38:39 ID:ikzmAcgh0
「ひっ……!」
「く、黒沢さんっ……!」
警察官たちは慌てて銃を抜き、
「あれだ! 例の、全滅した調査隊のビデオに映ってた奴! あいつの仲間に違いない!」
「発見次第、射殺の許可は出てる! 撃て撃てええええぇぇっ!」
一斉射撃! 映画なんかで聞くのとは違って意外と地味な、しかしそれだけに生々しい
銃声が、黒沢のすぐそばで豪快に鳴り響いた。
思わず耳を塞いでしまう黒沢だったが、撃たれた当の本人、クモ男はというと、
「ザボゾロザ・ギベ!」
(ザコどもが。死ね!)
全く効いていない様子で、警察官たちに向かって突進してきた。
「うわああぁぁぁぁっ!」
悲鳴を上げた一人めの喉が、クモ男の爪で切り裂かれた。噴水のように血しぶきが吹き上がり、
空中でキノコのように広がってから降り注ぐ。その雨の中で、クモ男が走る。斬る。噛む。抉る。
引き千切る。握り締める。殴り潰す。蹴り壊す。踏みにじる。絶命する警察官たち、新鮮な肉塊が
ゴロゴロ転がり、瞬く間に辺りの土が血でぬかるんでいく。
黒沢の同僚たちはとっくに逃げ出していたが、黒沢は完全に腰を抜かしてへたり込んでいた。
『……に……人間ってのは、極限の恐怖に……出くわすと……失禁、気絶、そういうの全部
忘れて……何も、できなくなっちまう……もんなんだなあぁあぁ……』
「く、くくくく黒沢さん、黒沢さぁぁんっ」
隣で浅井があうあうしている。こいつも逃げることすらできなかったらしい。そういえば、
あの婦警さんはっ!? と黒沢が思ったその時、大きな機械の駆動音がした。
見れば、あの大型トレーラーの荷台が起き上がるところだった。そこに積まれていた荷、
すなわち鋼鉄の巨人・警察用レイバー『イングラム』が立ち上がる。
「ゴロギゾゴクザ・バ……」
(面白そうだ、な……)

351 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/07/21(土) 10:45:03 ID:ikzmAcgh0
ttp://www.youtube.com/watch?v=K0N2OFJ4ghQ
てなわけで始まりました。とりあえず↑野明&イングラムです。そーいえばイングラムって、
「98式」なんですよね……サンデー連載当時は年上のお姉さんだった野明も今やもう……
巨大ロボの格納庫で「電話線が切断されてる! 外部と連絡が取れない!」と大騒ぎ
してた、そのリアル描写に手に汗握ったあの頃……時の経つのは早いもんですな。ふっ。
(例えば「寄生獣」で登場人物全員が携帯電話持ってると、結構いろいろぶち壊し)

>>ハロイさん
殴る蹴る斬るの肉弾戦ではなく、ギャンブル・ロジックな知能バトルでもなく。戦闘能力
は高くない、むしろ低めであろうに、アクションとトラップで勝ってしまう。十和子凄い……
彼女を見てると彼を思い出します。「俺、ヒジョーに好きなのよ騙しの手品が」ねぇ静?

>>銀杏丸さん
前回から思ってましたが、頑駄無たちって頭身といい掲載誌といい……なのに、中身は
子供ではなく熱血ヒーローでもなく、本当に「武者」ですね。口調も思考も。骨太野太い。
アイアンリーガーもなかなか見かけによらずでしたが、あれより更に大人っぽいというか。

352 :作者の都合により名無しです:2007/07/21(土) 11:31:48 ID:Lh4rpVHx0
大好きなハロイさん絶好調、お久しぶりの銀杏丸さんに続いて
ふらーりさん新作かー。
また楽しみになってきたな。

353 :作者の都合により名無しです:2007/07/21(土) 14:18:55 ID:IPMfDNes0
黒沢とパトレイバーと仮面ライダークウガ…なんというカオス
いろんな意味で楽しみだなあ。

354 :作者の都合により名無しです:2007/07/21(土) 16:29:07 ID:Ewy+VU0z0
>銀杏丸氏
ガンダムと武者って組み合わせがあまり好きではないから原作は読んでないけど
みんなが集まって戦う、というシチュは好きですね。後編も頑張って下さい。

>ハロイ氏
十和子の能力は決して戦闘用ではないのに、世界をかしずかせるような雰囲気。
やはり静は十和子には及ばないんでしょうが、この領域に近づけるのか楽しみ。

>ふら〜りさん
新連載お疲れ様です。黒沢できましたか。
でも、黒沢とパトレイバーを組み合わせるのは世界でふら〜りさんだけだろうな。
世界観真逆過ぎw


355 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:00:05 ID:wUAysO2G0
『液状と透明 @』


 私立ぶどうヶ丘学園に、放課を告げる鐘が鳴る。
 その音の源泉たる時計塔の、『立禁止』というちょっと奇妙な看板が備え付けられた機関室の中央に『そいつ』はいた。
 すぐ身近で大音声で鳴り響く鐘の音にも、『そいつ』はまるで反応らしい反応を見せない。
 身じろぎ一つせずに、人が見たら死んでいるのではと思われそうな静謐さで、『そいつ』は床に横たわっていた。
 だが──その騒音の中で機関室のドアが開けられたときだけは、『そいつ』の四肢がぴくりと動いた。
「やほー、優くん」
 鐘が静まってからそう挨拶したのは、白いスーツの若い男だった。その傍らには、対照的に黒ずくめの大男が立っている。
 『そいつ』は本格的に身を起こし、今入ってきたばかりの二人組みを見やった。
「──お前たちか」
 『そいつ』は、なんの感情も篭っていなさそうな声音で呟いた。
「しかし、お前──よくこんなうるせー場所で寝てられるな」
 黒ずくめの大男が言うのへ、『そいつ』は冷たい一言で切り捨てる。
「お前には関係のないことだ」
 ぐ、と大男が苛立ちを見せると、それをとりなすようにさっきの優男が肩をぽんぽんと叩く。
「まーまー。いいじゃないの黒さま」
「お前は黙ってろ! 黒さまって言うな!」
「いやーん、怒らないでー。く・ろ・さ・ま」
「うがー!」
 口論してるんだかじゃれ合ってるんだか今ひとつ良くわからない二人組みに、『そいつ』は呆れた素振りで息を吐く。
「それに──寝ていたというのは正確じゃない。いわば『待機状態』だ。
僕の身体は特殊なんでね。代謝機能を極度に低下させることで長期間の生命維持が可能なんだ。
動物の生態に当てはめるなら『冬眠』といったことろだな。
──いや、実際、ここは『隠れ家』としては都合がいい。この場所を教えてくれたことには感謝している」
 と、『そいつ』はまるで感謝なんてしてない口ぶりで言う。

356 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:01:45 ID:wUAysO2G0
「どもどもー。お礼なんていいんだよー」
「それで、お前たちがここに来たということは……『目星』がついたということだな?」
「……ああ。テメーの言う『怪しいやつ』ってのに一番近いのが、こいつだ」
 黒づくめの男が寄越した書類に目を落とし、『そいつ』は軽く頷いた。
 その瞳はどこまでも乾いていた。
 それは、これまで一度も涙を流したことのないような……
そして、その横顔は、まるで血の通っていないような、透き通った白さを保っていた。
 顔の造形は良く整っているだけに、その冷え冷えとした雰囲気にはある種の『凄み』さえあった。
「分かった。それでは……この少女を鹵獲して尋問にかける。お前たちも協力しろ」
 その大人しそうな風貌から、そんな過激な単語が飛び出すのに、大男はかすかに眉をひそめた。
 だが『そいつ』はそんなことは意に介さず、書類を読み進める。
「静・ジョースター、か……。ニューヨークの不動産王の養女で、先週、この学園に短期留学を名目で編入……。
ふん、いわゆる『いいとこのお嬢様』がこんな地方都市の学校に留学だと? いよいよ怪しいな」
「ねー、優くん。ホントにやっちゃうの?」
「なんのことだ?」
「だから、さ。あんま手荒なことはやめといたほうがいいと思うんだけどなー」
 優男のへらへらした笑みに、『そいつ』は軽蔑したような視線を返した。
「嫌なら手を引けばいいさ。僕は構いやしない。お前たちは『羽』を手に入れたいんだろう?
僕は『パンドラ』に予言された『羽を追うもの』を排除するために動いている。
そして、お前たちはどうやら僕が追っている者とは違うらしい。
その点で両者の目的は両立し得ると判断したから、こうして協調路線を採っているだけのことだ」
 その声は、やはりどこまでも淡々としていた。まるでなにかのライン作業に従事しているかのような気のなさに聞こえる。
 だが、黒づくめの男は、その印象とは逆のことを言った。
「──優。お前、なんでそんなに殺気立ってるんだ?」
 その言葉に、『そいつ』は初めて感情らしいものを顔に浮かべた。
「……な、なにを言ってるんだ? 僕は冷静そのものだ。変な言いがかりはやめろ」

357 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:02:58 ID:wUAysO2G0
「ふん──」
 その抗弁を取り合わずそっぽを向いた大男へ、『そいつ』はさらに言い募った。
「聞いているのか、黒わんこ」
「誰が黒わんこだぁっ!」
 くるっとこっちを振り返って絶叫する大男を見て、『そいつ』はわずかに溜飲を下した。
「ったくよ──テメーはマジで性格悪ぃな。そこの魔術師といい勝負だぜ」
「そうかい。褒め言葉だと思っておく」
「テメーらはみんな『そう』なのか? ──『合成人間』とかいう野郎どもはよ。え? ユージンとやら」
 『そいつ』──合成人間ユージンは、ちょっと考えてからそれに答えた。
「さあね。僕はあまり他の合成人間とは接触していなかったし──それに、僕は『裏切り者』の身だ。
正常な、普遍的な合成人間のメンタリティのことなど分かる訳がない」


「──世界を救うこと、それは君たちの仕事だ」
 その声に、振り返って仰ぎ見ると、ブギーポップはもうそこにいなかった。
 静はなんとなく不安な気持ちになり、きょろきょろと辺りに視線を彷徨わせる。
「……あれ? ブギーポップ?」
 その呼びかけに応える声は無かった。
「あ、秋月くん?」
 ブギーポップの『正体』である少年の名前を口にしても、やはり反応は出てこない。
 えっちらおっちらと屋上の塔屋の給水タンクによじ登ってみたが、もはや人っ子ひとり見当たらなかった。
「ど、どこ行っちゃったの……?」
 つい数秒前までは、確かにこの場所に、謎の怪人『ブギーポップ』がいて、静と会話を交わしていたというのに。
 ふと、首筋に涼しい風を感じる。

358 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:04:42 ID:wUAysO2G0
「うわあ……」
 眼下には、放課後の学園風景が大パノラマで広がっていた。
 遮るものがなにも無い視界には、学園内にいる生徒たちの姿が驚くほどはっきりと見えていた。
 校庭ではたくさんの運動部が思い思いの種目で汗を流していたし、
校門あたりでは何人かの女子生徒がたむろして井戸端会議に花を咲かせているようだった。
 それらを見るともなく見渡しながら、静は感慨深げに溜息を漏らす。
「なんか……すごいな……」
 ブギーポップの視点というものを実感して、なんとなく静は嬉しくなった。
 これが彼(彼女?)の見てる世界なんだなあ、と、妙にこそばゆい気分になる。
 視線を転じると、太陽がいつの間にか西へと転じていた。
 さっきまでは直視できない眩しさを放っていたものが、うっすらと赤味を帯びて静の目に映る。
「……あ。こうしてる場合じゃなかったんだ」
 我に返ってそろそろ降りようと思い立つが、さて、
「あ、あれ? どうやって登ったんだっけ?」
 猫かよ、と自分に突っ込みつつも、降りれなくなったことに途方に暮れる。
 給水タンクのほうは梯子がついてるから問題なかったが、塔屋の梯子は錆びて崩れかけており、しかも上半分で途切れていた。
 下を覗いてみると、登るには適した足場がいくつもあったが、それを使って降りられるか、というのには自信が無かった。
「……でも、登れたんだから降りられるはずだよね……?」
 そう自分に言い聞かせ、四つん這いになって塔屋の淵に膝を置く姿勢から、一番近い足場へ恐る恐る脚を伸ばす。
 足の裏に確かな感触があるのを確認し、そこにゆっくりと重心をかける。
 と、
「きゃ」
 ずるっと滑り、静の身体がバランスを崩す。
 なんとか淵にしがみついてこらえようとしたが、足場を得ようと脚をばたつかせたのが災いし、すぐに支えを失ってずり落ちた。
 咄嗟に頭を庇い、落下に備えた。一瞬遅れて、どん、という衝撃が静の胴体に走る。
 だがそれは、想像していたよりもずっとソフトなものだった。
 痛みという点でなら、まるきりなにも感じなかった。

359 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:05:42 ID:wUAysO2G0
「……あれ?」
 不思議に思う静だったが、
「……あ。あーっ!」
 痛みがなかった原因を理解し、そして真っ青になった。
 厳密に言うなら、静は着地していなかった。コンクリートの床と静の身体の間に、緩衝材が挟まっていたのだ。
「い、痛た……」
 ──それは人間だった。
 もっと言うなら、見ず知らずの男子生徒だった。
 静のお尻が、大の字に伸びた彼の背中にちょこんと乗っかっていた。
「ご、ごめんなさい!」
 泡を食ったように彼から飛び降り、その腕をつかんで引き起こす。
「だ、大丈夫ですか……?」
 静が謝意を前面に押し出して訊くと、その男子生徒は気弱そうな微笑を見せた。
「はい。大丈夫です。あなたのほうこそどうなんですか? 怪我は?」
「え、あの……はい。あの、お陰様で」
 気恥ずかしさと申し訳なさとで混乱した静は、馬鹿みたいになんども首を縦に振った。
「いやあ、でも驚きましたよ。屋上に出たら、いきなりあなたが落ちそうになってたんですから」
 と、彼は塔屋に設置されたドアを指差す。開けられたドアの向こうには、階下につながる階段が見えた。
 なるほど、と静は思う。
 そりゃ、屋上に出てふと上を見たら誰かが落下寸前だった、というシチュエーションは驚くしかないだろう。
(……あれ?)
 静は『あること』に気がつく。自分は塔屋の淵に上半身だけでしがみついていて、彼はちょうどドアのところにいて、
 つまり、その、なんと言うか自分の下半身と彼の目線の位置関係的に──。
(み、見えてた!?)
 ぼっ、と顔が瞬時に赤くなるのが自覚される。
 問いただそうと咄嗟に思うが、
(き……訊ける訳ない!)

360 :シュガーハート&ヴァニラソウル:2007/07/21(土) 17:10:13 ID:wUAysO2G0
「ところで……どうしてあんなところにいたんですか?」
 一人で勝手にオーバーヒートしていた静は、その質問でやっと冷静さを取り戻した。
「は、はい?」
「ですから、なんであんな高いところに?」
 冷静になったのはいいが、それはそれで答えに困る問いだった。
 『世界の敵の敵』を自称するコスプレ少年との交流を、なんと言って説明したらいいのだろうか、と。
 なんか適当なことを言って誤魔化せたらいいのだろうが、そんな都合のいい言い訳はすぐには浮かんでこなかった。
 こうなると十和子の口の上手さが羨ましくもある。
「えーと、それは」
「言いにくいことですかね」
 と、その男子生徒は静の困惑を汲み取って先回りした。
「まあ、誰にだって秘密はあるものですよね」
 それはどこか達観しているような口振りだった。どこと知れぬ場所を見つめているような遠い目で、彼は静かに言った。
「端から見れば、大したことの無いように見えても、本人にとっては『それ』が大切だということもあります。
そうした場合、『それ』はどうしても秘密にせざるを得ないでしょう。この残酷な世界から、『それ』を守り通すために」
 最初はあまり気にしていなかったが、改めて見ると、ちょっと見は女の子と見間違えてしまうくらいに、整った顔立ちをしていた。
 なんとはなしに、静は彼が話す横顔をぼうっと眺めていた。
 なので、彼が、
「だが──この状況に限っては話が別だ」
 と、がらっと口調を変えたときもすぐに頭を切り替えることが出来なかった。
「静・ジョースター」
 名前を呼ばれ、静は心臓を鷲掴みにされたような衝撃を受ける。
 フルネームを知られてることに驚いたのではない。彼のその声音に、なにも感じられなかったからだ。
 人が人として当然持ちうるべきもの──感情が、彼の言葉から消えていた。
 彼は流れるような動作で立ち上がり、そして静のセーラー服の襟に手を掛け、そして──。
「……ぅぁっ!」
 無造作に、そしてその細い腕からは想像も出来ない力で、静の身体は弧を描いて塔屋の壁に叩きつけられた。
「なにがなんでも吐いてもらうぞ……。君は──なぜここにいる? 君は何者だ?」
 乾いた響きが、静の耳元で囁かれた。

361 :作者の都合により名無しです:2007/07/22(日) 00:31:07 ID:DxTXV2fK0
GJ!

362 :作者の都合により名無しです:2007/07/22(日) 10:45:17 ID:Od/7/V530
ハロイさん冬眠から目覚めて確変したかw
また冬眠されたくはないが・・
いよいよ本当の?主人公を中心に動き始めましたね。
俺のイメージでは静がヒロインで十和子がヒーローみたいなイメージだw


363 :作者の都合により名無しです:2007/07/22(日) 18:56:05 ID:68qBboeG0
静はいいとこの嬢ちゃんだから修羅場には弱いんだろうな
でも、ジョースター家の血筋は土壇場になって覚醒するだろう
最後いきなり危ない場面だが、一人で何とかしてほしいな

あとふらーりさん新連載乙です!
見事に全部知らないが(名前だけは3つとも聞いたことがあるけど)
楽しみにしております。

364 :作者の都合により名無しです:2007/07/23(月) 08:16:35 ID:VvZI+Co50
ハロイさん、凄いな。
ひょっとしてまとめて50レス分くらい書いてあるんだろうか?
静は能力持ってる割に、普通の子の所がいいな。

365 :DBIF:2007/07/23(月) 22:33:18 ID:blPQv2gi0
「ターレスタイプの新顔が相手か。一つ聞くが、お前とあのベジータとかいう奴、どちらが強い?」
「さあな。直接闘ったのは、もう随分前だからわかんねえ」
どちらも軽い笑みを浮かべたままゆっくりと腰を落として構える。どちらもまだ超サイヤ人にはなっていない。しかしトランクス達は、ただ笑みを
浮かべて構えているだけの二人の身体の中で、星をも吹き飛ばすエネルギーが解放を待っていることを感じ取っていた。

ズ・・・ズズ・・・

そんな重苦しい音が聞こえそうな程、見た目は静かな両者の間で気が膨れ上がっていく。ほんの一瞬気を逸らした瞬間に動き出してもおかしく
ない気がして、その場の誰もが瞬きすら出来ない。
そんな状態の中、ふ、と突然笑みを深くしたラニが動いた。
拳と脚が、どう繰り出されたのかを言葉で表していたのでは到底追いつかない速度でかわされる。まだ超サイヤ人化していない状態でありながら、
それらのどの一撃であっても直撃すればその部分の骨をへし折られ、数百メートルは弾き飛ばされそうな威力を持っている。それでいて、周囲に
響くのはごく普通の組み手のような軽い音ばかりである。ラニも悟空も、相手の攻撃の威力を消す技術においても長けているが故の現象であった。

ビシィッ!

そんな中、ようやく両者の動きが止まった。ラニが悟空の右上段蹴りを左腕で受けた状態で止まっている。
「よし!」
思わずそんな言葉がトランクスの口から漏れた。今の状態は、取りも直さず、ラニが悟空の攻撃を受け流し切れなかったことを示していた。つまり、
攻防の技術で悟空が相手の一枚上を行ったのである。
「ふん」
それでもなお、ラニは嬉しそうな声で短く笑うと、飛び退がって距離を空けた。

366 :DBIF:2007/07/23(月) 22:34:21 ID:blPQv2gi0
「ウォーミングアップはこれくらいにして、そろそろパワーを上げていこうか」

グァッ!

言葉と同時に、ソニックブームのようなエネルギーの波がラニを中心に広がった。それでもまだラニは超サイヤ人化はしていない。しかし、
それにもかかわらずその気は悟飯がセルゲームで見せた気をわずかながら超えていた。
(何て気だ。超サイヤ人にもならずにあそこまで気を上げられるものなのか)
トランクスは呆然とラニを見つめながら心の中でつぶやいた。『精神と時の部屋』で悟飯と共に基礎能力を跳ね上げたものの、基礎能力だけで
言えばそれでもまだラニとは歴然たる差が存在した。
「すげえな。スーパー、じゃねえ、戦闘形態になってもいねえのに、そこまで力が上がるのか」
悟空は感心した声でそう言った。しかし相手の実力に気圧された気配はない。
(・・・妙な奴だな)
そんな悟空の様子に、ラニは笑みを消して、改めて悟空を観察した。
(ターレスに似ているというだけで、中身は全然別だというのはわかる。だが、私を前にして緊張も余裕も見せるわけでなく、まったく自然のままだ。
こういう奴もいるのか)
「それじゃ、オラもいっちょ気合入れっか」
そんなラニの考えをよそに、悟空はそう言いながら両手で軽く自分の頬を挟むように、ぱん、と叩いた。
「はあっ!」

ゴッ!

悟空の掛け声と共に、先程のラニと同じくエネルギーの波が走った。しかし悟空もまだ超サイヤ人にはなっていない。
「ほう」
ラニが感心した声を上げた。悟空もまた変身することなく、彼女と同程度の力を見せたためである。ただ、その姿は変身こそしていないものの、
赤いオーラに包まれていた。

367 :DBIF:2007/07/23(月) 22:35:20 ID:blPQv2gi0
「界王拳だ。すげえ、一体何倍まで上げてるんだよ」
自身同じものを身につけているクリリンが、それゆえに驚きを込めてつぶやいた。元の力自体が並外れているため、数倍でもかなりの上昇では
あるだろうが、目の前の悟空のそれは何倍かと推測するのさえ空しくなりそうなものであった。
「んじゃ、第二ラウンド行ってみっか」
そう言うと、悟空は地を蹴った。
「ふっ」
カタパルトから発射された機体のように、瞬く間にラニの目の前に飛び込み、拳を突き出す。
それを皮切りに、今度は明らかに重く鈍い音が周囲に響いた。両者の実力を持ってしてなおそれだけの威力でのぶつかり合いになってしまうのだ。
「だだだだだっ!」
「む、くっ、せいっ!」
お互いの拳と脚が嵐の如く行き交う。その内の1つか2つがヒットするものの、相手を吹き飛ばすには至らない。これだけの力を出してなお、
食らいながら相手の攻撃の威力を削ぐだけの余裕があるのだ。
「はは・・・はははははは!」
突然ラニが大きな声で笑い出した。
それにほんの一瞬気を取られた悟空の頭を、ラニが両手を組んで放った打ち下ろしが襲った。
それでも地面には激突せず、そのまま何回もバック転を繰り返して、今度は悟空が距離をとる。
「いちちち・・・何だおめえ急に笑い出して」
訝しげな声で言う悟空に対し、ラニはそれでもまだ少しの間嬉しそうに笑ったあげく、ようやく口を閉じた。
「これが笑わずにいられるか。隣の銀河中を巡ってもそうは巡り会えなかった実力者が、よりによってこんな辺境の小さな星にゴロゴロしているの
だからな。笑うなという方がおかしいだろう」
そう言うと、ラニはまだ嬉しそうな笑みを浮かべたまま、改めて構えた。

368 :DBIF:2007/07/23(月) 22:36:29 ID:blPQv2gi0
「もう小出しはヤメだ。まったく、これだけの相手ならば始めから手を抜くんじゃなかったな」

ブオッ!

これまでと比較にならない気がラニから湧き出した。その髪も、溢れ出るオーラも金色に変わっている。いよいよ彼女が本気を出したのだ。
「それじゃあオラも」

ドンッ!

悟空もまた姿を変える。違うのは彼女がただの超サイヤ人なのに対して、悟空のそれは悟飯やトランクスがなれる、超サイヤ人の限界を
超えたものであることだ。
「悟空さんも、やはり超サイヤ人の限界を超えていたんだ」
「それに、お前達のように普段の状態でのパワーアップもしていた。まったく、敵わんなあいつには」
トランクスとピッコロがそんな声を上げる中、二人は改めて構えると、今度は同時に地を蹴った。

ゴガアッ!

もはや肉体同士が立てるものとは思えない音を立ててお互いの肘が激突する。さらにピッコロの眼をもってしても追い切れない速度で手足が
行き交い、その折々にけたたましい音が響く。
「だっ!」
「ぐ!」
その内の一つが当たったのか、突然ラニの顔が後方に弾け飛び、そのまま吹き飛んだ。
「はあああっ!」
悟空はそれを追わず、気を集中させた手で輪を描き、その輪をラニに向けて投げつけた。
「くうっ!」
吹き飛ばされた体勢を整えたラニに追いついた輪が、その身体を通り過ぎた瞬間、ぎゅっと握った悟空の手の動きに合わせてその輪が縮まった。

369 :DBIF:2007/07/23(月) 22:37:50 ID:blPQv2gi0
「何だ、この輪は。ぐうっ」
「もう3つ」
さらに悟空が3つの輪を飛ばすのを見ながら、ラニは冷静に細く息を吐くと、
「ふんっ!」
その身を拘束する輪を引きちぎった。次の瞬間には他の輪もエネルギー弾で相殺する。
「あちゃー、惜しい」
「ふふ、今の攻撃は中々だった。技も多彩なようだな。ますます面白い」
楽しそうにそう言いながら軽く髪をかき上げ、ラニはその手に気を集中させた。
「そういう技ならば私も得意だ。こういうのはどうかな?」
その手がすばやく左右に動き、瞬く間に6本の大きな針のようなものを作ると、それらを放射状に交差させて巨大な気の手裏剣を作り出した。
「はあっ!」
クリリンの気円斬と見まごうばかりに回転させたそれをラニは投げつけた。それに対して悟空もまた一瞬でやや小さめの気の円盤を作って投げる。
「ふふ」
それに対し、ラニは円盤が激突する寸前にぱちんと指を鳴らした。それに合わせてそれまで回転していた針が、元の6本に分裂して悟空の円盤を
すり抜け、そのまま悟空を襲う。
「んぬぁっ!」
咄嗟に飛んでかわすと、何と針は再び手裏剣状に戻って悟空を追いかけた。
「くっ、仕方ねえっ!」
そう言うと、悟空は追いかけてきた気の手裏剣に対して何をするでもなく、代わりに額に二本の指を当てた。
「?」
何をしているのかと悟空の様子を見ていたラニは、次の瞬間自分の眼を疑った。一瞬たりとも眼を離したはずはないのに、悟空の姿が視界から
消えたのである。しかしその理由を考える暇はなかった。その前にどこからか突然現れた両腕が彼女の身体を羽交い絞めにしたためである。

370 :DBIF:2007/07/23(月) 22:39:03 ID:MwLw2yAW0
「な、んだと?!」
「悪いな、オラは瞬間移動が出来るんだ。こういう腕試しじゃあんまり使いたくなかったけど、これも技の一つってことで勘弁してくれ」
「く・・・瞬間、移動だと・・・?!」
渾身の力で解こうとするものの、ラニに匹敵する力を持った悟空に、しかも背後から絞められてはどうしようもない。
「今回は力比べだからこうするだけにした。でもその気になればどうなったかわかるだろ。今回はおめえの負けだ」
「・・・・・・!」
ふざけるな、と思わず叫びそうになりながらも、ラニはその言葉を飲み込んだ。余興だから殺しはしないと言い出したのは自分なのだ。
今の状態からでも、もしその代わりにより過酷なダメージを受けたとしても、これが殺し合いも含めた実戦であるならば勝負はつかない。
しかし互いの命を保証する余興であるならば。
(ふ・・・自分の力を過信していたか)
心の中で自嘲的に笑い、ラニが抗うのをやめようとしたその時、

ドウッ!

突然上空から飛んで来たエネルギー弾が、ラニの背後にいる悟空を直撃した。

371 :クリキントン:2007/07/23(月) 22:40:08 ID:MwLw2yAW0
今回はここまで。明日から少し長めの旅行行くんで
次回を書きこむのはかなり先になります。

300さん
302さん
ハロイさん
309さん
ふらーりさん
感想感謝です。自分で書いててなんなんですが、
悟空はホントにおいしいとこ取りの名人だと思います。

372 :クリキントン:2007/07/23(月) 22:47:13 ID:MwLw2yAW0
>ハロイさん
ラニはそちらの推測どおりニラが元です。
あと、一応リセロはセロリが元です。

373 :作者の都合により名無しです:2007/07/23(月) 22:51:15 ID:/iH+G5yN0
お疲れ様ですクリキントンさん。
悟空の反則技のひとつ、瞬間移動もしっかりと反映されてますな
まあ、主人公だからおいしい所取りも仕方ないですな
気をつけて旅行にいってきて下さい

374 :作者の都合により名無しです:2007/07/24(火) 08:24:26 ID:EQCvAQQm0
悟空の方がラニよりは強いのか。ラニはピッコロクラスかな?
どうしてもメインはサイヤ人にはなるだろうけど、
ピッコロさんにもこれから一人くらいは倒してほしいな。
クリリンとのコンビでもいいけど。

375 :作者の都合により名無しです:2007/07/24(火) 15:52:38 ID:oOUaSgs+0
クリキントンさん長期旅行か。いいなあ…
銀杏丸さんももうすぐ職から解放されるみたいだし羨ましい。

ピッコロが解説役になるのだけは勘弁w

376 :作者の都合により名無しです:2007/07/24(火) 22:54:12 ID:Y2FGPJTi0
クリキントンさんはいいペースだね。
ちょっと旅行で間が空くのが残念だけど。

結局うみにんさん現スレで復活は無しか。
ミドリさんはもう完全引退だろうなあ・・

377 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:44:25 ID:yCWPhfIJ0
第017話 「歪(後編)」

竹藪の中に甲高い金属音が数合響き、影が何度目かの交差をした。
舞い飛んだのは一縷の黒きれ、一縷の白きれ。
掠め取られた黒装束からは浅黒い鉄のような肌がのぞき、裂かれたセーラー服の肩口から
白い鎖骨に切れ込んだ一条の傷が覗いた。
「少しは手練れた化物のようだが予定に変更はない! 貴様を殺して割符は貰うぞ!」
肩の流血に怯まず眉に皺寄せ睨む斗貴子はなかなかに凄然としているのだが、しかし無銘
はたじろいだ様子もなく、懐に手を入れると割符を見せた。
「我、偽らざる…… 欲するのであれば狙うがいい。我はただ守るのみ」
無銘の懐から筒のようなものが飛んだ。
それは竹笛を穴ぼこにしたような形状で、火を吹いている。
「古人に云う。S・O・S、S・O・S、平和が壊れる」

「むむっ!」
同時刻、食堂でまひろが何やら反応したが、秋水にはよく理由は分らない。

ともかく、無銘の投げた物体の名前は打竹という。
忍びは火器を使うために、火種を常に携帯する必要がある。
その火種を入れる入れ物を差し、「打竹」という。
だから本来ならばこういう火薬のような使い方はしないのだが、そこは処刑鎌が大腿部から
生え、風船爆弾にヘンな顔がついてアフンアフン鳴いて原作とアニメではまったく特性が異な
ったりする武装錬金だ。多少の齟齬はあって当然といえよう。
爆炎に軽く身を焦がされた斗貴子は、いよいよ疲弊と憤怒の濃さを形相に高めていく。
そこへ無銘は、印籠を取り出すやいなや、薬液を吹きかけた。
もちろん避けた斗貴子だが、地面に降りかかった薬液は白煙を巻き上げ、ふしゅうふしゅうと
化学的な臭いを辺りに散らした。
(書物によっては、「打竹」ではなく「火種」が、「薬」ではなく「印籠」が忍六具に挙げられてい
るが、本SSではそれぞれ前者を採用する)
きゅっと小鼻に走った痛覚にいよいよ形相を悪鬼のようにゆがめながら跳躍し、宙返りをし
ながら鉈のように重い処刑鎌を四本全て垂直に降らした。
それを腰だめで半歩後退して避けると、指を口に当て甲高い音を鳴らす無銘。

378 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:48:39 ID:yCWPhfIJ0
「忍六具(シノビロクグ)の武装錬金・無銘が肆。忍犬」
同時に崖の上から降り立ったものがある。それは中型犬の形状こそしているが、全身に金
属のベールをまといひどく無機質な殺気を斗貴子に対して振りまいている。
かつて無銘が再殺部隊の一同と戦った際、火渡を抑えていた自動人形である。
(桜花のように複数のパーツから成る武装錬金か。が!)
飛来する忍犬が、しかし轟然と竹の幹へはじき返されたと思う暇もあらばこそ。
「犬の自動人形(オートマトン)なら、あの再殺部隊の男の方がまだマシ!」
白煙をあげる地面が根こそぎまくり取られて、無銘の瞳に吹きかかった。
それらはもちろんバルキリースカートによるものではあるが、しかし相手がはなった薬液を
土くれとともに眼つぶしに用いようとは。常人なれば着想あれど実行できよう筈もない。
残虐さに満ち満ちている。
「ならば」
口を覆う黒くブ厚い布の下ですぅっと息を吐くと、無銘は左手に印籠、右手に打竹をあらん
限り出現させ、一気呵成に投げつけた。
「勝負を賭けたか!」
斗貴子から見て右端の処刑鎌から水けぶりが、左端の処刑鎌から爆炎が、それぞればしゃ
あと巻き起こった。
刃の腹が薬液や打竹を弾いたのはいうまでもない。
あたりに燃焼と溶解の硫黄臭まみれの白い煙がうっすらたなびき。
それらをつっきるように矢の雨が襲来した!
斗貴子は知らないが、根来に対してはミサイルランチャーのように注いだ驟雨である。
かつて相対した桜花の矢など比類にならない。
彼女のはせいぜい屋上の床に穴を空ける程度だが、無銘のは壁を爆砕する。
その威力の違いが分らぬほど斗貴子は短慮ではない。
足首に力を入れ前方に跳躍……
しようとした瞬間、押さえつけるような違和感を両足のはるか外側に感じた。
「っの……!」
原因を見とがめた斗貴子は切歯しながら”それら”を見た。
先ほど薬液と打竹を捌いた両翼の鎌に巻きついているものがあった。
右は三尺手拭。左は鉤縄。
無銘はそれらを右手に束ねつつ、左手で編笠を胴体の中心に備えていた。
回避も不可。跳躍も不可。普通に考えれば残る対処は二つ。

379 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:50:29 ID:yCWPhfIJ0
残り二本の処刑鎌で矢を捌ききるか、防ぎきるか。
しかしそのどちらも実効性が薄いのを、斗貴子は発案と同時に認めた。
捌くには無数の矢に対して二本の鎌は少なすぎる。防ぐには範囲が狭く、強度がもろ過ぎる。
屈辱にわななく金の瞳に、業火放つ矢たちが吸い込まれていき──…

斗貴子に備わっている種々の要素のうち、もっとも恐るべきものをあげるとすれば何か?
ホムンクルスへの憎悪? 残虐性? それともバルキリースカートの特性そのもの?
否。
空間把握力だ。
人は包丁さばきやマジックハンドの扱いにすら四苦八苦する。
例えば、すぐ手元にある魚の腹にさえうまく刃を入れられなかったり、マジックハンドで一メー
トル手前のタバコを取るにももどかしい思いをしたりする。
手に持っている道具ですらそうなのだ。
まして、大腿部から生えた四本の処刑鎌を高速かつ精密に操り、敵に当てるなどという芸当
は実は恐るべき事象といっていい。
なぜならば彼女は、手ではなく生体電流などという漠然した信号で、手の数の二倍もあるバ
ルキリースカートを操っているのだ。
それも高速かつ精密に、殺意を持って動く敵というまな板の魚や部屋のタバコよりも難解な
対象相手にだ。
よほどの空間把握力がなければ、これらの困難な条件の下で戦えはしないだろう。
余談だが、後にこの銀成市で悲劇的な末路を辿る『剣持真希士(ケンモチマキシ)』という戦
士も、斗貴子同様なかなかに空間把握を要する武装錬金の持ち主だが、本題でないゆえに
詳細は省く。

蒼い影が横殴りに猛然と飛び交う矢の下を、平蜘蛛のように奔った!
斗貴子だ。
彼女はするすると身をかがめるや否や、残る二本のバルキリースカートで地面を叩き、四足獣
のように地面すれすれを吶喊していた!!
彼女はとっさに見つけていた。足元の空白地帯を。
無銘が丸い編笠から矢を射出する以上、それは必然ともいえる空白である。
胴体を狙えばどうしても足元には矢が飛ばない。
それを斗貴子の空間把握の感覚がとっさに捉え、そして一挙にくぐり抜けた。

380 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:55:47 ID:yCWPhfIJ0
跳躍よりは体重が沈み込む分、行動の自由があるのだ。
こうなれば無銘の三尺手拭や鉤縄による拘束は逆効果。
斗貴子は地面との反発を利して、細い体からは想像もつかぬ強烈な力で以て拘束途中の
バルキリースカート後方に向かって最大馬力で稼働した!
当然のコトながら、逆(さかしま)に翻った無銘の視界の先には自らが放った矢が無数に迫っ
ており……
耳をふさぎたくなるやかましい音があたりに充溢。
黒装束の巨体が焦げて爆ぜつつ吹き飛んで行き、、十数本の竹をメシメシとへし折り終わ
ったところでようやく地面に解放された。
その体たるや達磨のように四肢が吹き飛び、顔を覆う黒装束も雑巾のように燃え尽きてお
り、そこから全身に灯る小さな炎のチロチロは、斗貴子の遠目にボロクズのような無銘を映
し出すサーチライトの役目を果たしている。
「とりあえず……まずは……一体」
息絶え絶えに呟きながら立ち上がると、膝がかすかに笑った。
疲労感がどっと押し寄せてきた。
心にみずみずしさを持った戦士ならば、それをもしのぐ任務達成の喜びがあるのだろうが、
斗貴子にはそういうプラスの感情がない。
(いや、これでいい筈なんだ。今は敵を倒して割符を回収するコトが先決……! そうすべ
きなんだ。どうせいくら手を伸ばしても、彼に届きはしない……)
黒い海の上でほどかれた手の感覚がじわりと全身に広がり、口の中を苦くする。
暇はなかった。

斗貴子はまったくそういう前兆を感じてはいなかった。
しかし感じているべきだった。警戒を怠るべきではなかった。
総角たちへの殺意に囚われ重要なコトを失念すべきでは、なかったのだ。
この町で争う勢力は、戦士と総角たちばかりではないというコトを。
現に先ほどはその勢力の手だしにより、剛太と分断されてしまった。
斗貴子は、覚えておくべきだったのだ。
L・X・E。超常選民同盟残党の存在を!!

闇を帯びた紫電が天蓋の笹を瞬間の中で焼き切りながら、斗貴子の体を貫いた!
声にならない呻きを上げながら、斗貴子は膝をつき、訳も分らないという様子で倒れた。

381 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:58:09 ID:yCWPhfIJ0

「ザ・ブレーメンタウンミュージシャンズのうち、一名を殺害。一名は戦闘不能、か。さすが銀
成学園で調整体の群れを屠っただけのコトはある」
竹藪をのそりとかき分けながら、褐色肌の巨漢が現れた。
無銘とは違い、黒装束の類は一切まとっていない。
骨ばった顔と裸の上半身に西部の荒野を走る部族を思わせる真赤な刺青を入れている。
ホムンクルス浜崎。いうまでもなくL・X・Eの残党である。
その足もとにやわらかい感触が走った。
見ればチワワがまとわりつき、浜崎の足元を噛んだりひっかいたりして遊んでいる。
「ふむ」
浜崎は巨体を丸めるとチワワのうなじをなでようとして、やめた。
「私を舐めるな……!!!!」
まるで幽鬼だ。
わななく肢体を懸命に直立させながら、がくりと下げた頭で激しい吐息をつく少女が一人。
青い短髪は暴風にさざめく枝のように今にも吹き飛びそうな勢いだ。
「貴様はオレたちによほど災厄をまき散らしたいらしいな。思わば先ほどの新人戦士とネコ
型ホムンクルス、貴様さえ来なければ消耗したところを討てたものを。しかしむしろ、ある意味
では早坂桜花同伴の新人戦士ではなく貴様に狙いを変えたのは正解ともいえような」
「……消耗したところを狙い打つ。化物らしい汚い手段だな」
呼吸を整えながら雷による損壊を確認。
視覚はほぼゼロ。聴覚はかろうじて残っている。
下半身はバルキリスカートが偶然にも避雷針のように電撃を放流したせいか、ほぼ無傷に
近いが、首から背筋に走った電流は無慈悲にも足への神経情報を著しくロスしている。
両腕はさらに悪い。火傷と痺れで持ち上げるコトもかなわない。
「雑言結構。ココで貴様を討ち、復仇を成すのみ」
「たかがホムンクルス一体に何ができる! 先ほど斃した仲間の後を追わせてやる!」
斗貴子は初撃にかけた。焦点定かならぬ瞳で泳ぐように駆けた。
果たして蒼茫鮮やかな処刑鎌は浜崎の体表に達し。
赤いまだらのついた皮膚に芽生えた、ライトパープルの巨大な六角形の鱗にはじかれた。
細やかな六角形の光が浜崎の体表に散らばり、衝撃で斗貴子の重心が後方にブレた。
「くっ!」
「確かに何もできはしないなァ。『たかがホムンクルス』ならばなァ〜ッ!」

382 :永遠の扉:2007/07/24(火) 23:59:28 ID:yCWPhfIJ0

変調。
浜崎の小さな白目はドロドロの汚濁にひくつき、肉厚の顎が暗い愉悦にアングリと開いた。
開いた口からは腐臭が漂い、斗貴子の攻撃本能を刺激した。
「切り裂け! バルキリースカート!!」
一気呵成に振りかざした処刑鎌が、六角形の鱗をあらん限り吹き飛ばし、ついで浜崎の
上半身を微塵と切り裂いた。
「口ほどにもない」
「いいや、無意味よなァ」
斗貴子の回復しつつある視覚は、異様な光景を捉えた。
高さ二メートルはある黄色い粘塊。それが浜崎の下半身を土台にうねっている。
生皮を剥いだコブラの生首のように粘膜生々しく光るそれの背後には羽が浮かんでいる。
「繋がって」いるのではなく、「浮いている」のだ。
大小様々のひし形の断片がいかなる原理か宙に浮き、自然に群れを形成する小魚の群れ
のように左右一対の巨大な蝶の羽を形成しているのだ。
それらはオレンジから水色へ、水色から再びオレンジ色へと絶え間ないグラデーションを繰り
返し、唖然とする斗貴子の顔を照らしている。
「真・蝶・成体! 試作品だがいまの貴様程度にはすぎる代物よ! さァ、ムーンフェイス様よ
り頂いたこの力、とくと見るがいい!」

あとがき
すいません。ちょっと目が不調なもので、感想はまた後日……
それから今回は「第019話」ですorz

383 :作者の都合により名無しです:2007/07/25(水) 08:23:41 ID:qsz/Nce90
お疲れ様です。目は大変ですね・・

それにしてもまひろは久し振りに見た気がする。
一行だけだけどw
斗貴子さん大暴れだけど、彼女に戦闘でのカタルシス解消や
任務達成の喜びは無いみたいですね。
カズキがいないと壊れていく一方なんだろうなあ。

384 :作者の都合により名無しです:2007/07/25(水) 09:50:10 ID:WNjXToZk0
戦乙女の本領発揮ですね。
原作に留まらず、様々な戦闘を考える熱意に頭が下がります。
目、大切にして下さいね。

385 :作者の都合により名無しです:2007/07/25(水) 13:03:45 ID:2ai34F0y0
スターダストさん乙。
トキコ主役パートは嬉しいけど、人が修羅場なのに
まひろと秋水のバカップルはイチャイチャしてるのかw


386 :作者の都合により名無しです:2007/07/25(水) 17:34:01 ID:HY81LaUh0
GJ!
相変わらず修羅な姐御だw
眼は大切にしてください。眼科はひたすら待たされますよね……。
ムーンフェイス、まだ妙な力を持ってたんですね。No.2は伊達じゃあなかったてことでしょうか。
期待してお待ちしますが、まずはお体を大事にしてください。

387 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/25(水) 18:39:36 ID:5ZBzqt2Z0
>>350
返り血にまみれた体で、クモ男が走った。トレーラーに取り付くなり簡単にドアを壊して、
運転席にいたひろみの喉を掴んで引きずり出し、その巨体を地面に叩きつける。
更に追撃を加えようと爪を振り上げるクモ男に、頭上から拡声器越しの大声が轟いた。
《させるかああああぁぁっ!》
イングラムに乗っている野明の声だ。横殴りに拳を振るって攻撃をしかける、がクモ男は
身軽に跳躍してそれをかわすと、口から糸を吐き出した。糸、と言っても登山用ロープ
ぐらいの太さがあるそれは、まるで意思ある蛇のように伸びてイングラムにまとわりつき、
両腕両脚の間接部に絡みついた。
糸を引きちぎろうと、イングラムが四肢を踏ん張る。それと綱引きをする形で、クモ男も
糸を手に持ち替えて握り、踏ん張る。身長2mと8mの力比べだが、
《っ! き、切れない……? どころか、あいつを全然引っ張れない!? そ、そんな、そんな!》
クモ男は動かない。驚愕のあまりイングラムの操縦席で野明がパニックに陥る、と糸が
絡んでいるイングラムの肘・膝・足首の関節から一斉に火花が散った。あっという間もなく
それは爆音と共に火柱に変わって各関節部を壊し、焼く。クモ男が糸から手を放すと、
イングラムは地響きを立てて仰向けに倒れ込んだ。破壊された各所の亀裂が広がり、
衝撃で頭部のアイカメラが歪む。
クモ男は、動かなくなったイングラムの胸板に跳び乗った。そこで高らかに足を踏み鳴らし、
勝利の雄叫びを上げる。
その足の下、胸板の下には操縦席があり、野明がいる。歪んだアイカメラが映す、
ノイズだらけの映像で、クモ男を見ている。板一枚隔てた自分のすぐ目の前で、
その板を踏み鳴らして狂喜し跳ね回る殺人鬼を。想像を絶する力をもつ怪物を。
「……う、ぅ……ぁ…………」
恐怖に凍りつく野明。今自分がここにいることを、知られているのかいないのか。
知られていて嬲られているのか、知られてないとしたら知られた途端に襲われるのか。
だがそんな野明に負けず劣らず、黒沢たちとて絶望のどん底だった。ほんの数分前まで
平和で退屈な職場で弁当喰ってたのに、今や揺れる炎に照らされて、肉塊の群れに
囲まれているのだから。
やがて、クモ男はイングラムの上で跳ね回るのをやめた。その場でしゃがみ込み、ハッチの
凹みに爪をかけ、持ち上げようとして……開ける気だ、やはり野明に気付いている!
「やめろおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」

388 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/25(水) 18:41:25 ID:5ZBzqt2Z0
叫び声にクモ男は振り向き、そちらを睨みつけた。
つい、勢いで叫んでしまった黒沢は慌てて逃げ出そうとする、が、腰が、腰で、立てない。
「く、黒沢さん、し、し、しっかりっ……!」
浅井が、膝を揺らしまくりながら根性で立ち上がった。そして黒沢に肩を貸そうとする。
だが自分一人でさえまともに立つのが厳しい状態なので、ただよろめくばかり。
「お、おい、お前……その……の、ののの」
舌がもつれる黒沢。
『……ここで、「オレのことなんかほっといて、お前一人でも逃げろ!」とか言えりゃあ
カッコいいんだろう……けど、それを言って本当にそうされたらどうなるっ……?
間違いなくオレ、あのバケモノに殺されるじゃねえかっ……!』 
「僕、昔、言われたんです、ほ、ほら、例の、化石の、初恋の、先生に」
浅井は膝と声を筆頭に全身を震わせながら、必死に黒沢を立ち上がらせようとしている。
やはり怖いのだろう、ボロ……ボロ……と涙をこぼして。いや、黒沢もこぼしている。
『あ、浅井……っ! お前って奴は、お前って奴は……お前のこと、ただのバカだと
思ってたオレは、大バカっ……天下無双の大バカ野郎だった……っ!』
「先生は、いつも、言ってました、お年寄りには、親切にしなさいって、だから、」
「って、ちょっと待て! オレはまだ44……」
ドン! というのは着地の音。
「リグスギギバ」
(見苦しいな)
クモ男だ。イングラムのところからひとっ跳びで、ここまで……
「ひ、ひいっ!」
クモ男が、顔面蒼白な浅井の襟首を掴んで引き寄せた。浅井の全身から力が完全に抜け、
クモ男に掴まれている襟で首吊りをするような状態になる。当然、黒沢は支えを失って落下。
その目の前で、ボロボロ泣いてる浅井が左手一本で吊られている。クモ男は右手の爪を
カチカチ鳴らしながら、それをゆっくりと浅井の目の前に翳した。
『あ、浅井……っ! く、くそっ、何とかしないと、何とか、何とか……っ!』
その時。クモ男と浅井の向こう側から、ひと筋の光が伸びて大きく広がって、黒沢を照らした。
その光の中、また謎の映像が黒沢の脳裏に浮かぶ。光を放っているもの、あのベルト状の
装飾品を身に着けた若者が、異形の怪物たちと戦っている姿が。
『まただ……何だ、何なんだ? もしかして、オレに何か伝えたいのか? だとしたら……』

389 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/25(水) 18:43:37 ID:5ZBzqt2Z0
「バンザ・ボセバ?」
(何だ、これは?)
クモ男も手を止め、光の方をじっと見ている。……今しかない!
「うおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
黒沢は叫び、腰が抜けて立てないので四つんばいのまま、ゴキブリのように駆けた。
浅井とクモ男の脇を抜け、エサに喰らいつくノラ犬のように装飾品に跳びついた。そして、
「何が何だか全然わからねえが、わかったよっ! 着けてやる、着けりゃいいんだろっっ!」
装飾品を、ベルトのように腰に当てる。するとその輝きがより一層激しく、強くなった。
クモ男は堪らず浅井を放して顔を覆う。地面に落とされた浅井は、何とか薄目で黒沢を見た。
「え!? う、嘘……あのベルト、黒沢さんの中に吸い込まれ……入っ……ちゃった?」
光が消えた時、石でできていたはずのベルトは消えていた。ただ黒沢が一人、苦しそうに
腹を押さえて呻いているだけで。
「ガセザ……!」
(あれは……!)
クモ男が突然、顔色を変えて(浅井にはそう見えた)黒沢に駆け寄った。
そして、まだ転がっている黒沢をサッカーボールのように蹴り上げる!
「ぅおぐうぅぅっ!」
悲鳴を潰されながら黒沢は飛び上がり、地面に叩きつけられ、転がった。間髪入れず
クモ男がまた駆け寄り、蹴り上げる。落ちてきたところを殴りつける。
抵抗も逃走もできずボコボコにされながら、黒沢の意識は段々と薄らいでいった。
『な……なんだよ、これはっ……あのベルト、何の意味もなかったのか? じゃあ、あの
意味深な映像は何だったんだっ? こう、パアーッとスーパーヒーローに変身して、手から
ビィィーム! でこのバケモノをやっつける……とか、そういうのじゃないのかよ……っ!』
だが黒沢は気付いていない。このクモ男は全高八メートルの戦闘用ロボット、警察用レイバー・
イングラムと綱引きをやって勝つ。一発、二発も殴れば人間を肉塊にできるバケモノなのだ。
で今、黒沢はそのバケモノに「ボコボコにされている」。
そのことに、浅井は気付いた。
『さ、さっきのベルト……か? 黒沢さんの何かが、変わったのか……?』

【心清く 体健やかなるもの これを 身に着けよ さらば 戦士クウガと ならん】

390 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/07/25(水) 18:46:14 ID:5ZBzqt2Z0
なんだかんだで文武両道、機転は利くし体力あるし根性あるし背も高いし力も強い。
困った人は見過ごせず、優しくされたら深く恩に感じ、悪は許せぬ黒沢さん。五代君のいない
本作なれば、黒沢さんがクウガの適格者として選ばれるのも道理! と思うわけです。
実際、黒沢さんに足りないものなんて少ない。ほんのちょっと顔と、ほんのちょっと財産と、
ほんのちょっと若さと、ほんのちょっと体型と、ほんのちょっと自制心と、ほんのちょっと……

>>ハロイさん(質・量・ペースの三拍子ですな)
何かの生贄にされそな匂いに満ちてる謎会話、少年と衝突の瞬間のスカート覗かれ(疑惑)、
それに対する恥じらい、平和な光景への感動、人を疑わぬ心、その他諸々。非戦闘ヒロイン
要素がドカドカ積もってきたぞ静。十和子があれだけ獅子奮迅してる今、どこへ向かうっ?

>>クリキントンさん(旅行にて鋭気を養い、ご帰還の折に力作を。お待ちしてますぞ)
やはり流石ですね悟空。ああ見えて全然パワーバカではなく、技も術も判断力も超一流。
修行も実戦も実績も積み重ねた百戦錬磨の貫禄。皆が頼りにするのも当然というもの。
しかし本作では、敵方とて単純なパワー野郎どもではなく。悟空の苦戦にも期待してます。

>>スターダストさん(眼のダメージは日常生活全てに辛いもの。御自愛下され)
>よほどの空間把握力がなければ、これらの困難な条件の下で戦えはしないだろう。
力でも技でも術でもなく、機転とか策とかでもなく。「超」や「異」がつく類の能力ではなく、
普通の人間としての能力の凄さ。個人的に本作の女性陣では一番「萌えより燃え」な
ヒトだと思ってます故、流石です斗貴子。男性陣と絡む間もなく次から次へと戦って……

391 :作者の都合により名無しです:2007/07/25(水) 22:38:52 ID:BuY63d9G0
ふらーりさんだけの世界ですね、この作品はw
どんなオチになるかわからないけど、期待しておりますので
頑張って下さい。

392 :作者の都合により名無しです:2007/07/26(木) 01:06:45 ID:BJXz8An/0
黒沢はいい作品だったよな…
ラストは納得いかんが

393 :作者の都合により名無しです:2007/07/26(木) 08:21:39 ID:1zCpuy5O0
一応、黒沢はヒーローの役回りなんだな
よく泣く奴だが。ふらーりさんGJ。

394 :作者の都合により名無しです:2007/07/26(木) 12:39:26 ID:uIgcEHvq0
クウガがわからん・・

395 :Macソフト「童女畜獄矯正 生と性の究極」大好きっ子:2007/07/27(金) 00:37:35 ID:1fZ66UMi0
オレ、じつわサイバイマンの中でも全宇宙最強と言われる「スーパーサイバイマン」なんだ。
生まれた時、ベジータ、ナッパとかいうおれより格下の連中の手下として誕生しちまったもんだから
しかたなく命令に従って地球のやつらと戦う事になった。
オレの他に5人の栽培マンがいたんだけどこいつらは普通の栽培マン、強さもたいしたことはない。
一番手のヤツは相手の三つ目地球人にあっさりやられちまいやがった。
で、2番手はこのオレ。
ベジータの野郎がエラそうにこのオレに指図しやがって、てめーなんざこのオレがちょっと小突けばあの世逝きだっつーの。
まあオレは大人だから軽く聞き流してやったけどね。
で、オレの相手はヤムチャとかいうヤツだったわけよ。
軽くひねってやろうとしたら、とんでもない。
ヤツを見くびっていたぜ、攻撃をくらったオレは地面に陥没、あやうく死ぬところだった・・・
とんでもない!ベジータなんかよりはるか格段に上の実力者じゃねーか。
オレは己のプライドにかけてヤムチャを倒す事を決意した。
ベジータごときの命令があったからじゃない、オレのスーパーサイバイマンとしての血が騒いだんだ。
オレは最後の力をふりしぼり、全力でヤムチャに抱きついた。だがヤツは凄まじい力でオレを振りほどこうとした。
このオレの全力をだ。
もしベジータごときがこのオレに抱きつかれたなら、たちまち全身の骨を抱き砕かれてあっというまに死んでしまっただろう。
そんなオレのパワーをヤツは恐ろしいチカラで振りほどきにかかった。
もはやオレの抱きつき攻撃もここまで、オレは観念した。
プライドにはかえられぬ。
最後の執念で自爆し、オレは強敵ヤムチャをやっとの思いで引き分けに持ち込んだ。
最強の敵が居なくなってその後ベジータたちは地球人たちに圧勝。
ヤツらは自分達の実力だと勘違いしていたようだがな、笑わせやがるぜ。

396 :作者の都合により名無しです:2007/07/27(金) 07:57:11 ID:dNvs4O3X0
ヤムスレで見た気がするネタだな
サイバイマンとヤムチャっていい組み合わせだ
お互い捨て駒同士で

397 :作者の都合により名無しです:2007/07/27(金) 19:37:03 ID:0Ki397eL0
http://bubble6.2ch.net/test/read.cgi/sepia/1184891421/l50
架空の横綱、SS職人やなりきりも多い漫画ファンの皆様に協力を要請いたします。
レイアウトは>>5にて修復しました。

398 :作者の都合により名無しです:2007/07/27(金) 20:10:14 ID:nrxtHn920
スーパーサイバイマン、か・・
凄いような、凄くないような

399 :六十三話「愛を取り戻せ!前編」:2007/07/28(土) 11:33:01 ID:+/sIpHVt0
〜バファル帝国主要都市メルビル〜
今日も吟遊詩人の語る歌を効きながら、昼夜を問わず酒を飲み明かす者達が居た。
「あぁぁぁ〜〜〜っ!うめぇ!」
豪快にジョッキに注がれたビールを一気に飲み干す中年のオヤジ。
その名もキャプテンホーク、相方のゲラ=ハは船の修理のため船大工と交渉中だ。

横でちびちびとオレンジジュースを飲む、逞しい男。
北斗神拳伝承者ケンシロウである、パブでジュースとはけしからん、どうにも食への意欲も貧相である。
テーブルには、サラダは残しても肉は残すなと教わらなかったのか、この…ド低能がァーッ!
「ケェーン!何してるんだ、お前も飲め!」
そう言ってジョッキをテーブルに叩きつける。

「酒は勘を鈍らせる・・・それに、俺の居た世界ではジュースすらも贅沢だ。」
そういってジュースの注がれたグラスを見つめる、北斗の使命。
戦いが終われば、また迷うのか俺は。
頭に纏わりつく靄を払う為、ジュースを飲み干すとビールへと手を伸ばした。

「なんだ、飲むんじゃねぇか。」
嬉しそうにケンシロウを見つめながらも、店主に酒の追加を頼む。
ビール、核戦争が起こる前は庶民の出来る贅沢の一つだった。

「がっ、はぁ・・・はぁ・・・。」
なんとも苦い、だが不思議と不快にならず心地よい気分にさせられる。
すっかり忘れきっていた味を今一度、思い出す。

飲み干して一息ついた途端、店主によってビールが注がれる。
横には、顔色一つ変えずにジョッキを空にするホークが居る。
「酒って奴はな、上品に飲むなら着飾って女の話でもしながらワインでも口にすりゃいい。」

「だがよ、俺達みたいな馬鹿は武勇を語り、それをコケにし、時には殴り合いながらビールを飲むんだぜ。」
そう言って、ホークはケンシロウの肩に手を置くと、ケンシロウも悟ったのか。
お互いに乾杯、と叫びながら、ビールがこぼれるのも気にせずジョッキをぶつけ合った。

400 :六十三話「愛を取り戻せ!前編」:2007/07/28(土) 11:34:15 ID:+/sIpHVt0
酒が回ってきた、酔っぱらうのがこんなにもいい気分とは知らなかった。
ホークがサンゴ海での仕事を話してくれた、ホークの海賊行為は正直いい気分にはなれなかったが、
近づいた船を皆殺しにするという物ではなく、武力と金だけを奪う物だった。
「船を襲い、武器とお宝を奪えば殺す意味なんて無くなっちまう、俺は人殺しがしてぇ訳じゃねぇ。」
席を立つとこちらに背を向け、窓を開けて海を見つめるキャプテン・ホーク。
実力では自分に大きく遅れを取っている筈なのに、その背中は父親のように大きく見えた。

「未開の島へ宝を目指し・・・時には海軍まで相手に戦って・・・それでどうなるというんだホーク?」
振り向いた男の顔に移る笑顔が、最大の兄と重なる。
顔も、性格も兄とはまるで違うこの男の姿が何故。
やはり酒の飲みすぎなのだろうか。

「魔物に食われて骨にならなけりゃ、御縄になって豚箱いきだな。」
「骨にもならず、海軍からも逃げ延びたら?」
ホークの答えを待つ間もなく、ゲラ=ハがパブのドアを開いて店に入ってきた。

手早くパブのマスターに船に積み込む酒樽の代金を払い、ホークに耳打ちする。
「なにぃ?そりゃ急がねぇとまずいな。ゲラ=ハ、ケンに付き合ってやれ。」
すっかり質問の事など忘れ、店の外へと出て行くホーク。
それを呼び止めようと、声をかけようとするが呂律がまわらない。

テーブルの上でテーブルに転ぶ姿は滑稽で、普段のケンシロウらしさを微塵も感じさせなかった。
「あの人はお酒に強いですから、無理するとそうなりますよ。ストロベリーサンデーを一つ。」
ケンシロウの横に座り、メニューに目を通しながら店主に注文を出す。

「奇遇だなトカゲの兄さん、俺もそいつが大好物なんだ。奢ってくれよ。」
奥のテーブルに座った赤いコートの男が、ピザにかじりつきながら話を振ってきた。
「いいでしょう、同じ詩人の歌声の下に集う者として彼にも一つ。」

男に血の様に赤いゼラチン状のデザートが運ばれ、お礼とでも言いたいのかピザを一切れ投げてきた。
チーズを撒き散らすそれをしっかりとキャッチし口に運ぶ。

401 :六十三話「愛を取り戻せ!前編」:2007/07/28(土) 11:41:30 ID:+/sIpHVt0
「ゲラ=ハ・・・何故、お前達は海賊を続ける。」
「唐突ですね、どうしてそんな事を聞くのですか?」
ケンシロウの突然の言葉に、酒へと伸ばした手を止めて代わりにスプーンを取る。

「ホークは人殺しに興味はないと言った、だが海賊とは・・・。」
「意外と奥が深いですよ、中には義賊であったり海軍を設立する者もいます。」
だが、聞いた話ではホーク達がしている事は略奪と宝探しだ。
他人を助ける事はあっても恵むような事はしないし、前の船でも少数で活動していたらしい。

巨大な口を持つゲラ=ハにはゼリー状の食物は食べ辛いのか、不器用であるせいか、
ストロベリーサンデーを乗せた皿には固まった血の様なゼリーが散らばっていた。
「他の道はないのか、漁師でもやってける筈だ。」

散らばったゼリーをスプーンで集め、口に放り込んで飲み込む。
「失礼、食器も食べ方も人間のマナーに従うと、どうにも上手くいきませんね。」
そこそこ溶けた氷で水割り同然になったウィスキーを手に取る。

「・・・あるのかもしれませんね。こう見えても私は、村では一、二を争う戦士です。
守人となってジャングルで仲間と暮らすのも悪くはないと思います。」
では、やはり戦いを求めているだけではないのか。
平穏を望む人々の為に、旅を共にした仲間を殺さなければいけないのだろうか。
悪を憎む血が、酒の力と相まってケンシロウの体を熱くする。

「キャプテンはもっとあるでしょう。あれだけの腕ですから漁師でも食いぶちには困らず、
海軍に入れば斧も水術も使えるあの人なら出世も出来ると思いますよ。」
所詮、同じなのか。
そう、レイも元々は悪党だった。
マミヤに出会い、アイリと再会せず、正義を忘れた復讐鬼であれば殺していたかもしれない。
どいつもこいつも歩む道を間違え、救いようが無くなるまで間違いを繰り返す。
レイは運が良かった、心が腐る前に死滅した世界で肉親と会えたのだから。
奴等の断末魔を忘れる為に、今は注がれた酒を飲み干す。

402 :六十三話「愛を取り戻せ!前編」:2007/07/28(土) 11:45:06 ID:+/sIpHVt0
「私は、人間に対して閉鎖的な故郷が嫌で飛び出したのです。
ジャングルの奥深く、我々の生みの親であるサルーインを崇め続け、人を拒絶し続ける。
私はそれが嫌でジャングルを飛び出したのです、この広大な世界の一端で細々と暮らす。
そんな一生を無駄にするような生き方、勿体無いと思いましてね。」

気持ちは分かる、俺も広い世界で強敵との出会いと別れを重ねてきた。
しかし、他の道を選んでも世界を回れた筈だ、人殺しの理由にはならない。

「ゲッコ族を見慣れてない人たちからは、魔物に間違われたりしましたがね。
サルーインが作ったのだから魔物と言えば魔物ですが、我々にも人と変わらぬ心があります。
飛び出して早々に、世界の広さと厳しさを痛感して行く当てもなく彷徨ってました。」

「そこを拾われた訳か・・・。だが、お前にとっては恩返しだろうが、
その行為が人殺しに使われるというなら、俺は・・・。」
コップを強く握りしめて砕く、酒で力の制御が効かないのか、割れた事に気づく様子もなく俯くケンシロウ。

「いえ、恩返しではなく自分でこの道を進みたいと思ったのです。
私達も人間と同じなのです、破壊を望む心も持ち合わせています。
人を殺す事に躊躇いは持ちません、勿論、相手が同じゲッコの民でも敵であれば。
まぁ、少し良心が痛みますがね。あなたもそうだったのでしょう?」

そうだった、だと?一体何を・・・

「今のあなたには戸惑いがある。ワロン島で戦った時に違和感を感じました。
それに加えて、あなたの質問を聞いていれば分からなくもありません。
あなたは悪に慈悲を与えたくはないのです、ですが精神が、魂が拒否している。」

「化石魚だったか、あの魔物はこの世界で最強に近い魚類だと聞いた・・・。」
「最後の一瞬だけでしょう、まともだったのは。あなたに魔物が善か悪か、それが分かるとも思えません。」

数秒、酒場の中は時が止まっているかのように静まり返った。
その沈黙を破ったのは『声』、誰かがどこかで発した町全体に響き渡る程の絶叫であった。

403 :邪神?:2007/07/28(土) 11:55:16 ID:+/sIpHVt0
スイカカード落としてチャージしといた2000円がパァ・・・。
近頃になってジョジョ全巻が欲しい、という都合のいい願いを星に祈る邪神です。
ヒロヒコ先生は4部がお好きだとか。
彼女の手首しゃぶってる吉良は確かにかっこいい。
2部までしか読んだ事無いが、言葉ではなく心で理解出来た。多分。

〜講座なし、感謝あるのみ〜

>>ふら〜り氏 なんという筋肉マンッッッ・・・
 残念ながらレベルアップも一瞬だけ、上がったり下がったり。
 この後きっとレベルアップの予定。

>>ハロイ氏 >>化石魚のカレーって美味いん?
 海を旅して新鮮な化石化した魚に出会えば答えが見つかると思います。
 勿論、シーラカンス等に使われる意味ではなく物理的に化石化した。

>>189氏 心理的要因とは中々抜け出せないものです。
 巻き返さなきゃ男じゃないけど、ここで巻き返したらずっとケンシロウのターンに。
 そんな訳で、申し訳ありませんがまだまだ酔っ払いです。

>>190氏 >>でも流石に北斗に講座はいらんでしょ。メジャー過ぎる。
 そう思ったんですが念のため。技まで全部覚えてるかと言われると微妙な筈。
 北斗飛衛拳と言われてどんな技か分かったらアニメをよく見てるか格ゲーしてるか、の筈。
 それにしたって天将奔烈は有名だし、いらなかっただろうか。

>>197氏 力量で言ったら勇次郎でも秘功であべし、まぁ逆に殴られたら胸筋が陥没するかもですが。
 ファンタジーでもやっていけそうなリアルな映写の格闘物ってパッと思い浮かびません。

>>201氏 原作の強さでいくとデス様と本気でタイマンできそうだから怖い・・・。
 術さえ連発されなければ物理攻撃への耐性はバッチリ、加えて馬鹿げた攻撃力。
 宝石全部捧げたサルーイン様でもなんとか出来なくもない・・・かも。

404 :作者の都合により名無しです:2007/07/28(土) 15:28:51 ID:0vzLXQB60
ついに講座もネタ切れですかw

邪神さん乙。
一応化石魚はモンスターの中では最強に近いのか。
ケンシロウの面目も立つかな?

405 :作者の都合により名無しです:2007/07/28(土) 23:07:23 ID:UG+xa+x80
邪神さん乙。
一応影が薄いながらも主役パーティらしい話ですね。
ケンシロウが入ったから華も増えたけど。
ゲッコ族はトカゲの分際で立派だなあ。

406 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 13:45:36 ID:Xq4JlsCh0
邪心さんお疲れです。
ケンシロウがちょっと情けないけど
彼はリーサルウェポンになるでしょうね。

407 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/29(日) 19:22:57 ID:W4zP0Kvt0
>>389
「うぐあっ……!」
ハンマーパンチを喰らってうつ伏せに倒れる黒沢。その背をクモ男が踏みつけて、
「ゥオオオオオオオオォォォォ!」
吠えた。早々と勝利を確信してたらしい。
そして黒沢は敗北を確信していた。
『く、くそっ、くそっ……オレは死ぬのか……死ぬのかよっ……こんなところで……
こんなバケモノにやられて……そりゃあ、この先十年、二十年、長生きしたって大して
いいこともないだろうけど……それにしたってあんまりだ……ヒド過ぎる……っ』
無念で悔しさで、黒沢の目から大粒の涙がボロ……ボロ……と溢れてくる。
『安アパートで安酒飲んで、休日となりゃあ散歩ぐらいしかすることない生活……
子供の頃から今まで、女にモテたことなんて一度もなかったし……モテるどころか、
ちょっと振り向いて貰うことも……いやいや、名を呼ばれることさえなく……どうせ
自分なんか、と思ってたからハナから告白とかしなかったけど……でも、ちょっと気に
なってた女の子とかはいた……小学生の時も中学生の時も高校生の時も、そして
今も……そう、あの婦警さんだって、オレのことなんかさくっと忘れるに違いない……
オレが死んだって、みんな一週間もすりゃ顔も名前も忘れる……オレなんかその程度の
男……死んでも生きてても変わらない、今殺されても誰一人全然構わない……』
「……ぅぅおおおおおおおおぉぉぉぉっ!」
突然、黒沢が立ち上がった。踏んづけていたクモ男がバランスを崩してよろめく、
その顔面へ黒沢パンチが炸裂! クモ男の口元が切れて、僅かに赤い血が流れる。
「グアッ!?」
「冗談じゃねえっ! 死んでたまるか、殺されてたまるかっ! いいか聞けっ、
このバケモノ野郎! 一寸の虫にも五分の魂っていってだな、オレなんかでも……あ?」
ようやく、黒沢も我が身の異変に気付いた。このバケモノを、不意打ちとはいえ素手で
一発殴っただけで出血させたこと。素手で……いや、素手か、これ?
黒沢の右拳から肘にかけて、変わっていた。黒い身体に白い篭手、というか
プロテクターのようなものが着けられている。
『な、なんだこりゃあっ……? あ……もしかしてこれが、あのベルトの……か!』
何が何だかさっぱりだが、今はこれに賭けるしかない、でなきゃ死ぬ!
「こ、こうなりゃヤケだ! やってやるっっ!」

408 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/29(日) 19:24:41 ID:W4zP0Kvt0
左拳のフック、右脚のローキック、左膝蹴り、打撃を加えるごとにクモ男はグラつき、
黒沢の体は部分、部分ごとに白いプロテクターに包まれていく。
トドメ! とばかりにクモ男の顔面に頭突きを叩き込んだ時、黒沢の変身は完了していた。
「黒沢……さん……」
呆然と見つめる浅井の前に立っているのは、黒い身体と白いプロテクターの戦士だった。
どこか甲虫を思わせる各部(頭部も)のパーツと、バランス的に小さめだが額から生えた
二本の角。頭のてっぺんから顔面、胴体、爪先まで完全に包まれているので、もはや
体格以外に黒沢の面影は一切ない。そう、これは『武装』ではなく『変身』なのだ。
当の黒沢もやはり困惑の渦中、変わり果てた自分の体を見回している。ふと、顔を
上げれば視界いっぱいに土色の腕が接近!
「あぐっ!」
クモ男のダッシュラリアートを顔面に受け、倒れる黒沢。だが即座に跳ね起き、反撃に
出る。クモ男は爪を振りかざして攻撃してきたが身軽にかわし、ラリアートのお返しとばかりに
ボコボコ殴りつける。のだが……不意打ち補正が終わったからか、どうにも効いていない。
「ゴンデギゾバ!」
(その程度か!)
クモ男の拳がカウンターで黒沢の顎を捉えた。脳震盪を起こしてグラついたところに、
今度は蹴りを叩き込まれて黒沢は倒れてしまう。
更にクモ男が踏みつけにきたが、必死に転がって黒沢はよける。クモ男が追ってくる。
立ち上がる暇もなくゴロゴロゴロゴロ転がって黒沢は逃げる。と、
「黒沢さああぁぁん!」
浅井の声と重機の音。こちらに爆走してくるのは、いつの間に乗り込んだのかショベルカー!
「! ちょ、ちょっと待て、よっ、と!」
慌てて黒沢は立ち上がり、逃げようとしたクモ男に組み付いた。両手で押さえ込むように
体重をかけた首相撲から、膝蹴りを水月に打ち上げる。クモ男が少し、息を詰まらせる
ような声を漏らした。
「ビガラ……!」
(貴様……!)
「よし! 今だ、振れ浅井!」
「はいっ!」

409 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/07/29(日) 19:26:22 ID:W4zP0Kvt0
浅井が思いっきりアームを振った。黒沢はそれにタイミングを合わせつつ、素早く周囲を
見回し角度を測って、クモ男の腕を掴んでハンマースルーで投げつける。変身した黒沢の
怪力と、大型重機のパワーと、ショベルカー爆走の慣性と、諸々の力が結集した一撃が
クモ男を打つ! 
「ガァウオオォォ……」
流石にクモ男は吹っ飛ばされて宙を舞い、黒沢の狙い通り断崖絶壁へと。やった! と
黒沢が歓声を上げようとしたその足首に、クモ男の吐き出した糸が絡む。
「え……っ? お、おいっ……よせ! こら! よせってばああぁぁぁぁ…………っ!」
クモ男に引っ張られて、黒沢も一緒に落ちていく。
ショベルカーから跳び下りた浅井が崖下を見た時には、もう二人とも姿は見えなくなって
いた。一緒になって下流へ流されてしまったらしい。
「く、黒沢さん……」
途方にくれる浅井を、辺りに転がる警察官たちの死骸が見ていた。
遺跡事件の取材に来ていたのか、いつの間にか上空からテレビ局のヘリも見ていた。
そして、もう一人。
『……バケモノが……もう一匹……』
歪んだアイカメラ越しの、ノイズだらけの映像で、イングラムの中から野明が見ていた。


410 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/07/29(日) 19:28:13 ID:W4zP0Kvt0
クウガをご存じない方は、ぜひそのままで読み進めてみて下さい。それでこそ本作に
おける純粋かつ自然な主人公視点、黒沢さんの気持ちでお楽しみ頂けるかと。
もちろん、そのことしかと踏まえた上で、解りにくくならぬよう努力はする所存。何卒、
しばしお付き合い下され。ちなみに原作の主人公も、武器や必殺技やその他の名前を
ほぼ全て知らぬまま、一年間戦い抜きました。「緑の弓が金の力でビリビリで……」

>>Macソフトさん
捨て駒をメインに据えた、笑えるギャグ作品……なんだけど、サラリと出てる一言が凄い。
>プライドにはかえられぬ。
この言葉自体が「命にはかえられぬ」のパロで。命より名を惜しむって思いっきり武士してる。
で、そういう真剣みがあるからこそ笑えて。またこういう、切れのいい作品をお待ちしてます!

>>邪神? さん
酒場で酔っ払って、ぐだぐだ悩むケンシロウ。こういうのが見られる&書けるのも二次創作の
醍醐味ですな。原作では精神的にも肉体的にもそれほど大きくは成長しなかった(継承者
なんですからそれで当然ですが)彼。でも本作では青二才臭がしてるので伸びしろありそう。


411 :テンプレ1:2007/07/29(日) 19:50:24 ID:LZVum1K30
【2次】漫画SS総合スレへようこそpart51【創作】

元ネタはバキ・男塾・JOJOなどの熱い漢系漫画から
ドラえもんやドラゴンボールなど国民的有名漫画まで
「なんでもあり」です。

元々は「バキ死刑囚編」ネタから始まったこのスレですが、
現在は漫画ネタ全般を扱うSS総合スレになっています。
色々なキャラクターの新しい話を、みんなで創り上げていきませんか?

◇◇◇新しいネタ・SS職人は随時募集中!!◇◇◇

SS職人さんは常時、大歓迎です。
普段想像しているものを、思う存分表現してください。

過去スレはまとめサイト、現在の連載作品は>>2以降テンプレで。

前スレ  
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1181533782/
まとめサイト  (バレ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/index.htm
WIKIまとめ (ゴート氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss


412 :テンプレ2:2007/07/29(日) 19:51:57 ID:LZVum1K30
AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
上・戦闘神話  下・七人の超将軍 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1181533782/205−209
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html


413 :テンプレ3:2007/07/29(日) 19:53:24 ID:LZVum1K30
上・ヴィクテム・レッド 下・シュガーハート&ヴァニラソウル (ハロイ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/34.html
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/196.html
ドラえもん のび太の新説桃太郎伝(サマサ氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/97.html
ジョジョの奇妙な冒険 第三部外伝 未来への意志 (エニア氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/195.html
その名はキャプテン・・・ (邪神?氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/captain/01.htm
DBIF (クリキントン氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/293.html
ドラえもん のび太と天聖導士 (うみにん氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/tennsei/01.htm
脳噛ネウロは間違えない (名無し氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/320.html
最強伝説の戦士 黒沢 (ふら〜りさん)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/?page=%E6%9C%80%E5%BC%B7%E4%BC%9D%E8%AA%AC%E3%81%AE%E6%88%A6%E5%A3%AB%E3%80%80%E9%BB%92%E6%B2%A2%E3%80%80%EF%BC%95%EF%BC%90%EF%BC%8D%EF%BC%91


414 :ハイデッカ:2007/07/29(日) 19:57:22 ID:LZVum1K30
店長氏の「のび太と真夜中のバンパイア」とproxy氏の「狂った世界で」が
テンプレから消えてしまいました。復活待っております。
あと七人の超将軍、WIKIまとめに項目はあるんだが、
404エラーになってしまうのでとりあえず上記のアドに。
ゴート様、お手すきな時にふら〜りさんのアドともども修正お願いします。
(私は情けない事に、WIKIのやり方がわかんないので・・)

ま、人の事より自分だな。
書く気はあるが忙しくて時間がない。ラストまで頭にあるのに。
2chですら10日ぶりくらいだからなあ・・

次スレ中に1回も書かなかったら、自らテンプレから外すわ、聖少女。
すでに物語のどこまで書いたか忘れたがw
ま、2回は次スレでは書きます。
そしてそれをミドリさんに捧ぐ。でももうこのスレ見てないか・・w

おっとふら〜りさん乙です。テンプレ作成中に来るとびっくりするなw
今からじっくり読んでみます。クウガは知らんけど黒沢は好きだったので
この作品も楽しみです。

415 :テンプレ1(修正):2007/07/29(日) 20:59:01 ID:zWJLRHYf0
>ハイデッカさん
乙です。七人の超将軍を修正してみました。

AnotherAttraction BC (NB氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/aabc/1-1.htm
聖少女風流記 (ハイデッカ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/seisyoujyo/01.htm
上・鬼と人とのワルツ 下・仮面奈良ダー カブト (鬼平氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/waltz/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/258.html
Der Freischuts〜狩人達の宴〜 (ハシ氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-short/hasi/03-01.htm
上・戦闘神話  下・七人の超将軍 (銀杏丸氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/sento/1/01.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/337.html
フルメタル・ウルフズ! (名無し氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/fullmetal/01.htm
上・永遠の扉  下・項羽と劉邦 (スターダスト氏)
 http://ss-master.sakura.ne.jp/baki/ss-long/eien/001/1.htm
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/233.html
WHEN THE MAN COMES AROUND (さい氏)
 http://www25.atwiki.jp/bakiss/pages/105.html

416 :作者の都合により名無しです:2007/07/30(月) 08:31:30 ID:/iCcaa020
ハイデッカさん、修正した人お疲れ様です。

ふらーりさん、黒沢がびびりながらも
ヒーローしてますね。原作とは違うハッピーエンドを期待してます。

417 :作者の都合により名無しです:2007/07/30(月) 15:27:54 ID:T8lQA1gm0
地味に頑張るな>ハイデッカ
でもいい加減SS賭けよ

ふら〜りさん、クウガ知ってるよ
でも黒沢と競演なんてふら〜りさん以外ありえんw

418 :作者の都合により名無しです:2007/07/30(月) 19:03:27 ID:1bYkxBUu0
ふらーりさんらしい作品だなw
もちろんいい意味でw

419 :作者の都合により名無しです:2007/07/31(火) 07:58:41 ID:c9G6kSzK0
あと1本くらいで次スレ?

420 :作者の都合により名無しです:2007/07/31(火) 12:38:08 ID:koGsdKKY0
そんなもんだね

421 :作者の都合により名無しです:2007/07/31(火) 21:55:36 ID:9/UzJm1c0
結局うみにんさんとか復活しなかったか・・

422 :作者の都合により名無しです:2007/08/01(水) 00:12:21 ID:hcsbPIlY0
バレさんもね…
あのちょっと復活はなんだったんだろう…

423 :作者の都合により名無しです:2007/08/01(水) 08:25:54 ID:u2I30fXl0
サマサさんも最近来ないな
NBさんはいつものペースといえばそうだけど

424 :作者の都合により名無しです:2007/08/01(水) 22:23:59 ID:kPJim1uu0
まあそのうちまた来てくれるでしょ

425 :作者の都合により名無しです:2007/08/03(金) 08:42:19 ID:AdbU5Que0
スレ終わりになると少し止まるな、いつも

426 :作者の都合により名無しです:2007/08/03(金) 23:18:30 ID:9BndH69v0
もう少し待ってくれ
お盆過ぎると暇になるから

427 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/04(土) 01:16:58 ID:gsjX7OSp0
>>409
クモ男騒動の翌日。崖上の工事現場は、活気に包まれていた。
死者九名と重傷者三名を出した惨劇の場として警察が大掛かりな現場検証を
行っており、怪物が暴れるというショッキングな事件にマスコミが大勢詰め掛けている。
もちろん工事は中止されており職人も来ていないが、事務所兼宿舎のプレハブで
取材を受けているのは作業着姿の浅井。
「いや〜、あの時は本当に、僕も死ぬかと思いましたけどね。キャハ」
何本ものマイクを突きつけられ、眩いばかりのフラッシュを浴びて、得意満面である。
警察官たちを惨殺し、イングラムさえ倒してしまったクモ男をショベルカーで崖下に叩き込んだ
英雄、ということになっているらしい。でマスコミ各社の大挙取材攻勢というわけだ。
黒沢はその取材陣の後ろで、壁にもたれて悠然と腕を組んでいた。
『クククク……よしよし、読み通りだ……っ』

あの戦いの後。浅井は崖下に降り、川岸で倒れている黒沢を発見した。一緒に落ちたクモ男
は行方不明、黒沢は死ぬ思いで岸まで泳ぎ着き、いつの間にか変身も解けていたとのこと。
「黒沢さんが無事で良かったですけど、こんな大事件になっちゃったらもう、さすがに警察も
隠し切れないでしょうね。明日の新聞やニュース、間違いなく今朝以上の大騒ぎですよ」
「ああ……そりゃまあ……そうだろうな……」
九死に一生を得た黒沢は、もう何も考えられなかった。浅井に肩を借りてどうにか
立ち上がるが、今は何を言われてもその言葉の内容がぼ〜っとしててどうにも……
「……ん? 待てよ……テレビや新聞で大騒ぎ……そうか! それだ、浅井!」
「は?」
「ううっ……苦節44年……疎んじられることはあっても尊敬されることなどなく、
キモがられることはあってもモテたことなどなかったが……だが遂に、遂にオレが、
絶大なる賞賛のスポットライトを浴びる時が来たのだ……っ、ぅぐ、あぐ、えぐ、ぉぐっ」
感涙しながら狂喜して喘いで悶える黒沢。ブキミだ。
「あの、黒沢さん。一体何を?」
「安心しろ浅井っ、お前も一緒だ。但しオレが主役でお前は脇役、オレが孫悟空なら
お前は三蔵の馬、オレが焼肉盛り合わせならお前はレジで貰う消臭ガムってとこだが」
「だから何なんです?」
「クククク……クク……まぁよく聞け。段取りが肝心だからな、段取りが……」

428 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/04(土) 01:19:43 ID:gsjX7OSp0
で翌朝のプレハブにて。
『よしよしよしよし……っ。何もかも予定通りだ……諸葛孔明のデビュー戦、博望坡の戦い
の如く……全ての事態、全ての流れが、オレの読み通り……イケる……イケる……っ!』
記者団から浅井への質問は、まず怪物が現れた時の状況に始まり、警察官たちの惨殺シーン
へと時系列に沿って進んでいった。やがてクライマックス、浅井の戦いに辿り着く。
「え〜っと、ですね。あの時僕は一人戦ったわけではなくて、」
『よしいいぞ、浅井っ』
「今正に、あのバケモノ……クモ男に殺されそうになった時に、」
『颯爽と超人が現れた、正義のヒーローが舞い降りた、だ!』
「さっそうと……」
「ああ、第2号ですね?」
記者の一人が言った言葉に、浅井のセリフと黒沢の思考が止まった。
「ほんと、運がいいですよねえ浅井さん。イングラムを易々と潰してしまうようなバケモノが
二匹も現れたその場に居合わせて、大したケガもなく生き延びたんですから」
「え、いやあの、二匹っ……て、その、」
「あ、ほら。あれでも言ってますよ」
と記者の一人が壁際を指差した。つけっぱなしだったテレビで、ワイドショーをやっている。
《……で、警視庁が公式にその存在を発表するに到りました。こちらの映像をご覧下さい。
この糸を吐いているのが未確認生命体第1号、それと争っている白いのが第2号です。
この異形の怪物たち、仲間割れの原因は不明ですが先日の遺跡調査隊の事件と関連……》
浅井と黒沢の世界から、このテレビ以外の全てが、束の間だが消え失せた。
《この正体不明の怪物たちに対抗するため、警察は異例の武装強化を進めています。
一刻も早い事件の解決、凶悪な未確認生命体の駆除に全力を……》
番組はその後、いろんなエラい人たちのコメントだか解説だかに移っていった。
で記者たちの浅井への質問が再開されたが、
「え、え〜と、その」


429 :最強伝説の戦士 黒沢:2007/08/04(土) 01:21:51 ID:gsjX7OSp0
記者たちの後ろから、ぐるるぅ……っ! と獣の唸り声が聞こえてきそうな目で黒沢が
睨みつけてくるので、
「あ、後のことはよく覚えてないんです〜、キャハ。いやぁ無我夢中でしたから、そりゃもう」
「では未確認生命体第2号について何かありませんか? 1号との違いなど詳しく」
「え、えと……2号は、ですね……その、」
『あぁ〜さぁ〜いいぃぃっ!』
黒沢の吊り上がった目から放たれる熱々の殺気が、浅井に突き刺さる。
「し、知りません何も! 僕、2号の知り合いでも何でもないですから、彼の素性とか全然っ」
「いや、それはそうでしょうけど。ですが現場におられたわけですし、」
記者団はなおもしつこく浅井に食い下がる。少しでも未確認生命体に関する情報が欲しいの
だろう。そりゃそうだ、彼らはそれが仕事なんだから。殺人凶悪モンスターなんて、
美味し過ぎる話題だ。それこそ警察並に食いついてくるのが当然……警察? といえば、
「黒沢さん、でしたよね」
いつの間にか俯いていた黒沢に、声がかけられた。何だか可愛らしい、けど低く押さえた声。
そちらを見ると、小さな靴。そこから視線を上げると、きゅっと引き締まった表情をした
紅顔の美少年……ではなく、オレンジ色の制服を着た婦警さんがいた。野明だ。
「聞きたいことがあります。ここでは何ですから、外へ出ましょう。来て下さい」
黒沢はもう抵抗する気力もなく、フラフラと着いていった。野明の小さな肩と背を見つめて……
そう、見つめていると……何だか見える気がする……ドロドロと音を立てて渦巻き
燃え盛っている、野明の怒りだか悲しみだか憎しみだか嘆きだか、そういう類の感情が。
『ああ……そういやぁ心のどこかで……いや、結構ど真ん中で……期待、してたな……オレ。
あの時、オレが「やめろ」って叫んで、オレが変身して戦って……それでこの子が助かった……
完全に、命の恩人……正にヒーロー、白馬の王子……いや、もちろん、恩に着せてどうこう
なんて気はねえよ、だけど……だけどせめて、せめて……っ、こう、アレだ。この子の、
輝くような弾けるような笑顔で、たったひとこと……「黒沢さん、ありがとうっ♪」ぐらい……
それぐらい期待したって、バチは当たらねえだろうがよ……っ!』
今や叶わぬ夢となったそれが、野明の笑顔が、黒沢の胸の中で跡形なく崩れ去っていった。

430 :ふら〜り ◆XAn/bXcHNs :2007/08/04(土) 01:24:04 ID:gsjX7OSp0
感想下さった皆様、ありがとうございます! 『クウガ』らしさと『黒沢』らしさ、両方を
出していけるよう頑張ってゆきますっ。パトレイバーは……ほら、イングラム大破しましたし。
野明としては、最愛の彼がそんな状態の時に他の奴(レイバー)に浮気できないってことで。
……まあ実は「黒沢と違和感なく接触できて完全常人な婦警さん」っていったら野明か
「こち亀」の麗子ぐらいしか思い当たらなかったという事情もなきにしも……。

>>ハイデッカさん
おつ華麗さまです。私は今のところ、仕事が比較的楽なのでSSを書けております。
ハイデッカさんも時間が取れましたらぜひ。やはり、ヒロインを護る為に戦うヒーローこそ
最燃えにして最萌え。ジャンヌと慶次に負けぬよう、野明と黒沢も頑張ります故。
待ってますぞっ!

431 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 07:59:41 ID:GR2TVFYS0
Rozen Maiden × キン肉マン二世
http://alicewrestling.nomaki.jp/index.html

432 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 08:27:15 ID:MM1x5NWs0
お疲れ様ですふらーりさん。
黒沢が原作らしく、そして少し原作らしくなくていい感じです。
長期連載になるようにがんばってください。


433 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 11:35:13 ID:FfPz0Sg90
ふら〜りさん乙です〜
ノアと黒沢の物語楽しいです。
でもアカギは出ないですよね?w

434 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 15:14:06 ID:3MnEcrz30
正直、黒沢もパトレイバーも知らんけど
楽しませてもらってます。

そろそろ次スレ?
立てられなかった・・


435 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 17:52:37 ID:mhAvVWXa0
アホが!

436 :作者の都合により名無しです:2007/08/04(土) 22:51:35 ID:jFl/JUa30
立てたよ、次スレ。

http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/ymag/1186235428/l50

437 :作者の都合により名無しです:2007/08/22(水) 16:01:32 ID:QqnFsb3o0
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/sfx/1184066206/111-

438 :作者の都合により名無しです:2007/11/29(木) 04:12:14 ID:eSdP9Sj7O
test

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